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技術 細菌、バイオマスの処理方法、及びリグニンの処理方法

出願人 学校法人中部大学
発明者 倉根隆一郎宮田茂福田雅夫湯下佳和田中菜月
出願日 2019年3月8日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-042258
公開日 2020年9月10日 (3ヶ月経過) 公開番号 2020-141632
状態 未査定
技術分野 微生物、その培養処理
主要キーワード 木質系炭 非化石燃料 バイオ資源 製材廃材 食糧供給 オクロバクトラム 黒液中 リグニン分解活性
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年9月10日)のものです。
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図面 (8)

課題

木質系及び草本系のバイオマスリグニンを迅速、効率的、及び安価に分解することが可能な新規な細菌、並びにこの細菌を用いたバイオマスの処理方法を提供する。

解決手段

リグニン分解活性を有する酵素を産生する、受託番号:NITEP−02876にて特定されるオクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)属に属するYT151株である細菌の提供による。また、木質系及び草本系の少なくともいずれかのバイオマスと、この細菌及びその分泌物の少なくともいずれかとを接触させる工程を有するバイオマスの処理方法の提供による。

概要

背景

近年、地球温暖化防止の観点から、二酸化炭素排出量の削減が求められている。生物由来資源であるバイオマスを利用するバイオ資源非化石燃料であり、これを燃焼しても、大気中の二酸化炭素量は実質的に増加しないものとして取り扱われる、いわゆるカーボンニュートラル効果を得ることができる。

従来、バイオエタノールなどのバイオ燃料原料として、トウモロコシサトウキビなどの農作物(第1世代バイオマス)が用いられている。しかし、第1世代バイオマスは食糧としても利用されることから、バイオ燃料の原料として大量に消費されると、食糧供給量の減少や食糧価格の高騰などの弊害が生ずる。そこで、近年、食糧とは競合しない木質系及び草本系のバイオマス(第2世代バイオマス)をバイオ燃料の原料として利用するための研究及び開発が進められている。

木質系及び草本系のバイオマスはセルロースを含むので、このセルロースを酵素糖化してグルコースに分解し、さらにグルコースを発酵させることでバイオエタノールを得ることができる。しかし、セルロースは、難分解性高分子であるリグニンと絡み合った状態で存在しているため、そのままの状態ではセルロースを効率的に酵素糖化することはできない。このため、木質系及び草本系のバイオマスをバイオ燃料の原料として用いる場合には、酸やアルカリによる化学的処理、或いは水熱処理等の物理的処理などの前処理を行ってリグニンを低分子化又は除去することが必要とされている。しかし、木質系及び草本系のバイオマスを化学的に前処理すると、リグニンを含有する大量の廃液黒液)が生成する。生成した黒液は焼却処分等せざるを得ないため、エネルギーコストがかかるといった課題がある。また、木質系及び草本系のバイオマスを水熱処理する場合には、やはりエネルギーコストの面で課題がある。

そこで、木質系及び草本系のバイオマスからリグニンを効率的に除去する方法として、特定の糸状菌を用いてリグニンを分解処理する方法が提案されている(特許文献1)。また、ある種の白色腐朽菌を用いて草本系バイオマスのリグニンを分解する方法が提案されている(特許文献2)。さらに、特定の細菌を用いて木質系及び草本系のバイオマスのリグニンを低分子化する方法が提案されている(特許文献3)。

概要

木質系及び草本系のバイオマスのリグニンを迅速、効率的、及び安価に分解することが可能な新規な細菌、並びにこの細菌を用いたバイオマスの処理方法を提供する。リグニン分解活性を有する酵素を産生する、受託番号:NITEP−02876にて特定されるオクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)属に属するYT151株である細菌の提供による。また、木質系及び草本系の少なくともいずれかのバイオマスと、この細菌及びその分泌物の少なくともいずれかとを接触させる工程を有するバイオマスの処理方法の提供による。

目的

本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

リグニン分解活性を有する酵素を産生する、受託番号:NITEP−02876にて特定されるオクロバクトラム(Ochrobactrumsp.)属に属するYT151株である細菌。

請求項2

前記酵素が、過酸化水素要求性マンガンペルオキシダーゼ様酵素を含む請求項1に記載の細菌。

請求項3

木質系及び草本系の少なくともいずれかのバイオマスと、請求項1又は2に記載の細菌及びその分泌物の少なくともいずれかと、を接触させる工程を有するバイオマスの処理方法

請求項4

前記バイオマスと、前記細菌及びその分泌物の少なくともいずれかとを、過酸化水素非存在下で接触させる請求項3に記載のバイオマスの処理方法。

請求項5

リグニンを含有する被処理物と、請求項1又は2に記載の細菌及びその分泌物の少なくともいずれかと、を接触させる工程を有するリグニンの処理方法。

請求項6

前記被処理物と、前記細菌及びその分泌物の少なくともいずれかとを、過酸化水素非存在下で接触させる請求項5に記載のリグニンの処理方法。

請求項7

請求項1又は2に記載の細菌又はその分泌物を含有するバイオマスの処理剤

請求項8

請求項1又は2に記載の細菌又はその分泌物を含有するリグニンの処理剤。

技術分野

0001

本発明は、新規な細菌、バイオマス処理方法リグニンの処理方法、バイオマスの処理剤、及びリグニンの処理剤に関する。

背景技術

0002

近年、地球温暖化防止の観点から、二酸化炭素排出量の削減が求められている。生物由来資源であるバイオマスを利用するバイオ資源非化石燃料であり、これを燃焼しても、大気中の二酸化炭素量は実質的に増加しないものとして取り扱われる、いわゆるカーボンニュートラル効果を得ることができる。

0003

従来、バイオエタノールなどのバイオ燃料原料として、トウモロコシサトウキビなどの農作物(第1世代バイオマス)が用いられている。しかし、第1世代バイオマスは食糧としても利用されることから、バイオ燃料の原料として大量に消費されると、食糧供給量の減少や食糧価格の高騰などの弊害が生ずる。そこで、近年、食糧とは競合しない木質系及び草本系のバイオマス(第2世代バイオマス)をバイオ燃料の原料として利用するための研究及び開発が進められている。

0004

木質系及び草本系のバイオマスはセルロースを含むので、このセルロースを酵素糖化してグルコースに分解し、さらにグルコースを発酵させることでバイオエタノールを得ることができる。しかし、セルロースは、難分解性高分子であるリグニンと絡み合った状態で存在しているため、そのままの状態ではセルロースを効率的に酵素糖化することはできない。このため、木質系及び草本系のバイオマスをバイオ燃料の原料として用いる場合には、酸やアルカリによる化学的処理、或いは水熱処理等の物理的処理などの前処理を行ってリグニンを低分子化又は除去することが必要とされている。しかし、木質系及び草本系のバイオマスを化学的に前処理すると、リグニンを含有する大量の廃液黒液)が生成する。生成した黒液は焼却処分等せざるを得ないため、エネルギーコストがかかるといった課題がある。また、木質系及び草本系のバイオマスを水熱処理する場合には、やはりエネルギーコストの面で課題がある。

0005

そこで、木質系及び草本系のバイオマスからリグニンを効率的に除去する方法として、特定の糸状菌を用いてリグニンを分解処理する方法が提案されている(特許文献1)。また、ある種の白色腐朽菌を用いて草本系バイオマスのリグニンを分解する方法が提案されている(特許文献2)。さらに、特定の細菌を用いて木質系及び草本系のバイオマスのリグニンを低分子化する方法が提案されている(特許文献3)。

先行技術

0006

特開2007−325604号公報
特開2010−35446号公報
特開2011−193848号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、特許文献1〜3で提案されたいずれの方法であっても、リグニンの分解に長時間を要する、或いはリグニンを十分に分解・除去することが困難である等の不都合があり、さらなる改善が求められていた。

0008

本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、木質系及び草本系のバイオマスのリグニンを迅速、効率的、及び安価に分解することが可能な新規な細菌を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の新規な細菌を用いたバイオマスの処理方法、リグニンの処理方法、バイオマスの処理剤、及びリグニンの処理剤を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

すなわち、本発明によれば、以下に示す細菌が提供される。
[1]リグニン分解活性を有する酵素を産生する、受託番号:NITEP−02876にて特定されるオクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)属に属するYT151株である細菌。
[2]前記酵素が、過酸化水素要求性マンガンペルオキシダーゼ様酵素を含む前記[1]に記載の細菌。

0010

また、本発明によれば、以下に示すバイオマスの処理方法が提供される。
[3]木質系及び草本系の少なくともいずれかのバイオマスと、前記[1]又は[2]に記載の細菌及びその分泌物の少なくともいずれかと、を接触させる工程を有するバイオマスの処理方法。
[4]前記バイオマスと、前記細菌及びその分泌物の少なくともいずれかとを、過酸化水素非存在下で接触させる前記[3]に記載のバイオマスの処理方法。

0011

さらに、本発明によれば、以下に示すリグニンの処理方法が提供される。
[5]リグニンを含有する被処理物と、前記[1]又は[2]に記載の細菌及びその分泌物の少なくともいずれかと、を接触させる工程を有するリグニンの処理方法。
[6]前記被処理物と、前記細菌及びその分泌物の少なくともいずれかとを、過酸化水素非存在下で接触させる前記[5]に記載のリグニンの処理方法。

0012

また、本発明によれば、以下に示すバイオマスの処理剤及びリグニンの処理剤が提供される。
[7]前記[1]又は[2]に記載の細菌又はその分泌物を含有するバイオマスの処理剤。
[8]前記[1]又は[2]に記載の細菌又はその分泌物を含有するリグニンの処理剤。

発明の効果

0013

本発明によれば、木質系及び草本系のバイオマスのリグニンを迅速、効率的、及び安価に分解することが可能な新規な細菌を提供することができる。また、本発明によれば、上記の新規な細菌を用いたバイオマスの処理方法、リグニンの処理方法、バイオマスの処理剤、及びリグニンの処理剤を提供することができる。

図面の簡単な説明

0014

YT151株の一形態を示す位相差顕微鏡写真である。
YT151株の他の形態を示す位相差顕微鏡写真である。
YT151株の2,6−DM酸化酵素活性測定結果を示す図である。
YT151株の2,6−DMP酸化酵素活性の測定結果を示す図である。
YT151株の2,6−DMP酸化酵素活性の測定結果を示す図である。
YT151株の2,6−DMP酸化酵素活性の測定結果を示す図である。
YT151株の分子系統樹を示す図である。

0015

(細菌)
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明者らは、スギ)を唯一炭素源とする培地で生育する微生物スクリーニングを行った(詳細は後述)。その結果、リグニン分解活性を有する酵素を産生する細菌として、オクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)属に属するYT151株を見出した。このYT151株は、本発明者らにより、受領日:2019年2月7日に受託番号「NITEP−02876」として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された。

0016

本発明の一実施形態であるオクロバクトラム(Ochrobactrum sp.)属に属するYT151株(以下、単に「YT151株」とも記す)は、リグニン分解活性を有する酵素を産生する細菌である。リグニン分解活性を有する酵素には、例えば、ラッカーゼ(Lac)、マンガンペルオキシダーゼ(MnP)、及びリグニンペルオキシダーゼ(LiP)などが少なくとも含まれていると考えられる。

0017

マンガンペルオキシダーゼ及びリグニンペルオキシダーゼは、いずれも、過酸化水素(H2O2)の存在下でリグニンやそのモデル化合物(例えば、2,6−ジメトキシフェノール(2,6−DMP))の酸化触媒する酵素である。マンガンペルオキシダーゼは、その酵素活性発現マンガンイオン(Mn2+)を要求するマンガン要求性の酵素であり、リグニンペルオキシダーゼはマンガン非要求性の酵素である。また、ラッカーゼも、リグニンやそのモデル化合物(2,6−DMP等)の酸化を触媒する酵素であるが、過酸化水素を要求しない過酸化水素非要求性の酵素である。2,6−DMPの酸化反応を以下に示す。2,6−DMPの酸化により生じた式(A)で表される化合物極大吸収を469nm(黄色)に有するため、吸光度を測定することでリグニン分解活性を有する酵素の存在及び酵素活性の強さを確認することができる。YT151株は、過酸化水素要求下及び非要求下のいずれの条件下であっても、リグニン分解活性を有する酵素を産生する細菌である。さらなる検討の結果、本発明者らは、YT151株が、マンガンイオン存在下で強い2,6−DMP酸化活性を示すとともに、マンガンイオン非存在下では極めて微弱な2,6−DMP酸化活性を示し、かつ、過酸化水素非存在下であっても2,6−DMP酸化活性を示す、これまでにないタイプのマンガンペルオキシダーゼ様酵素を産生する細菌であることを見出した。

0018

0019

YT151株が産生するマンガンペルオキシダーゼ様酵素を含むマンガンペルオキシダーゼは、2価のマンガンイオン(Mn2+)を酸化して3価のマンガンイオン(Mn3+)を生じさせる反応を触媒する。生成する3価のマンガンイオン(Mn3+)は、非常に反応性が高く、自然界ではシュウ酸マロン酸などの有機酸によりキレート化し、Mn3+−有機酸錯体を形成して安定化する。形成されるMn3+−有機酸錯体は比較的小さいため、酵素から容易に拡散し、リグニンを分解する際の酸化剤として機能すると考えられる。すなわち、YT151株が産生するマンガンペルオキシダーゼ様酵素などのマンガンペルオキシダーゼは、ラッカーゼと異なり、生成する3価のマンガンイオン(Mn3+)が、酵素タンパク質が容易に入り込むことのできないリグニン骨格構造中にも比較的容易に入り込んで、リグニンをより効率的かつ速やかに分解することが期待される。

0020

YT151株は、例えば、スギを唯一炭素源とするスギ培地を用いて好気的条件下で培養し、増殖させることができる。培養液のpHは6.0〜8.0であることが好ましい。培養温度は20〜37℃であることが好ましい。また、YT151株は、LB培地を用いて培養し、増殖させることもできる。

0021

さらに、スギ微粉末などの木質系炭素源;ケナフ微粉末トマト微粉末、稲・麦ワラ微粉末などの草本系炭素源;を唯一の炭素源とする培地を用いて培養する、すなわち、栄養要求性に基づく選択圧をかけた状態で培養することで、リグニンの分解活性を有する酵素の産生を促すことができるために好ましい。

0022

(バイオマスの処理方法)
本発明のバイオマスの処理方法の一実施形態は、木質系及び草本系の少なくともいずれかのバイオマスと、前述の細菌(YT151株)及びその分泌物の少なくともいずれかと、を接触させる工程を有する。YT151株を液体培地で培養すると、リグニン分解活性を有する酵素は菌体外分泌される。このため、リグニン分解活性を有する酵素は、培養液や培養液上清などのYT151株の分泌物を含む組成物に含有されている。したがって、YT151株をバイオマスに直接的に接触させることの他、YT151株の分泌物をバイオマスに接触させることでも、バイオマスのリグニンを酸化して分解し、低分子化することができる。

0023

YT151株は、過酸化水素非存在下であってもリグニン分解活性(2,6−DMP酸化活性)を示す、これまでにないタイプのマンガンペルオキシダーゼ様酵素を産生する細菌である。このため、バイオマスと、細菌(YT151株)及びその分泌物の少なくともいずれかとを、過酸化水素非存在下で接触させることでも、バイオマスのリグニンを酸化して分解し、低分子化することができる。すなわち、過酸化水素を用いない系でリグニンを分解可能であることから、処理工程や処理コストの削減に寄与する。勿論、コストなどに影響を及ぼさない範囲で過酸化水素を用いてもよい。なお、さらに二価のマンガンイオン(Mn2+)の存在下でバイオマスと、細菌(YT151株)及びその分泌物の少なくともいずれかとを接触させることで、より効率的にリグニンを酸化分解することができるために好ましい。

0024

木質系バイオマスの具体例としては、間伐材林地残材建築廃材製材廃材などを挙げることができる。また、草本系バイオマスの具体例としては、稲ワラもみ殻、麦ワラ、青刈りトウモロコシ、牧草、葦、などを挙げることができる。さらに、海外における有望な草本系バイオマスとしては、イネ科エリアンサスネピアグラス、及び麦ワラなどを挙げることができる。

0025

本実施形態のバイオマスの処理方法によれば、リグニン分解活性を有する酵素を産生するYT151株又はその分泌物を用いることで、バイオマスに含まれる難分解性のリグニンを選択的に分解して低分子化し、バイオマスに含まれるセルロースやキシランを分解しやすい状態にすることができる。このため、本実施形態のバイオマスの処理方法は、木質系及び草本系のバイオマスを原料としてバイオエタノールを生産する際のバイオマスの前処理方法として好適である。

0026

(リグニンの処理方法)
本発明のリグニンの処理方法の一実施形態は、リグニンを含有する被処理物と、前述の細菌(YT151株)又はその分泌物と、を接触させる工程を有する。前述の通り、リグニン分解活性を有する酵素は、培養液や培養液上清などのYT151株の分泌物を含有する組成物に含有されている。したがって、YT151株を被処理物に直接的に接触させることの他、YT151株の分泌物を被処理物に接触させることでも、被処理物に含まれるリグニンを酸化して分解し、低分子化することができる。

0027

前述の通り、YT151株は、過酸化水素非存在下であってもリグニン分解活性(2,6−DMP酸化活性)を示す、これまでにないタイプのマンガンペルオキシダーゼ様酵素を産生する細菌である。このため、リグニンを含有する被処理物と、細菌(YT151株)及びその分泌物の少なくともいずれかとを、過酸化水素非存在下で接触させることでも、リグニンを酸化して分解し、低分子化することができる。すなわち、過酸化水素を用いない系でリグニンを分解可能であることから、処理工程や処理コストの削減に寄与する。勿論、コストなどに影響を及ぼさない範囲で過酸化水素を用いてもよい。なお、さらに二価のマンガンイオン(Mn2+)の存在下で被処理物と、細菌(YT151株)及びその分泌物の少なくともいずれかとを接触させることで、より効率的にリグニンを酸化分解することができるために好ましい。

0028

リグニンを含有する被処理物としては、例えば、木質系及び草本系のバイオマスを化学的に又は高温高圧水で前処理した際に生成する、或いはパルプ製造時に生成する廃液(黒液)などを挙げることができる。このような黒液は難分解性のリグニンを大量に含有するため、従来は焼却処理せざるを得ないものであった。本実施形態のリグニンの処理方法によれば、リグニン分解活性を有する酵素を産生するYT151株又はその分泌物を用いることで、黒液中のリグニンを分解して低分子化することができる。これにより、焼却処理することなく黒液を処分しうることが期待され、エネルギーコスト削減の観点で有効である。

0029

(バイオマス及びリグニンの処理剤)
本発明のバイオマス及びリグニンの処理剤(以下、単に「処理剤」とも記す)の一実施形態は、いずれも、前述の細菌(YT151株)又はその分泌物を含有する。処理剤は、固形物であってもよく、液状物であってもよい。固形の処理剤としては、例えば、従来公知の方法に従って製造される微生物製剤などを挙げることができる。また、液状の処理剤としては、YT151株を液体培養して得られる培養液及びその濃縮物などを挙げることができる。さらに、この培養液を乾燥及び製造助剤を添加して製造される固形剤としてもよい。これらの処理剤を、木質系及び草本系の少なくともいずれかのバイオマスや、リグニンを含有する被処理物と混合等して用いることができる。なお、処理剤は、二価のマンガンイオン(Mn2+)をさらに含有することが、バイオマスやリグニンの処理効率をより高めることができるために好ましい。

0030

以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。

0031

リグニン分解菌の探索>
集積培養
以下に示す組成(残部は水)のスギ培地を500μL/well(in Deep Square Plate)に100μLずつ分注した。プレートシール封止した後、121℃で15分間オートクレーブをかけて滅菌した。

0032

[スギ培地(スギ2%、pH7.0〜7.5)]
・スギ(間伐材)40mesh:2.0%
硫酸アンモニウム:1.0%
硝酸ナトリウム:1.0%
リン酸二水素カリウム:0.5%
リン酸水素二カリウム:0.1%
硫酸マグネシウム七水和物:0.1%
硫酸第一鉄:20mg/L
塩化ナトリウム:0.1%
塩化カルシウム二水和物:0.05%
酵母エキス:0.1%

0033

岐阜県の採取した土壌サンプルを滅菌した生理食塩水に懸濁させて懸濁液を得た。スギ培地が入ったウェルに懸濁液を20μLずつ入れ、30℃、1,200rpm、1〜2週間振とう培養した。プレート遠心機を使用し、3,000rpmで10分間遠心分離した。得られた上清の2,6−DMP酸化酵素活性を測定し、活性を示したウェルの培養液50μLをLB培地に植菌した。2,6−DMP酸化酵素活性の測定とLB培地への植菌を2〜4回繰り返した後、得られた培養液を希釈してLB寒天培地に植菌した。30℃、300rpmの条件で振とう培養した後、形成された単一コロニーのそれぞれについて2,6−DMP酸化酵素活性を測定し、高い活性を示した細菌を単離した。単離した細菌を「YT151株」とし、LBA寒天培地に植菌して4℃で保存した。また、単離したYT151株の形態を示す位相差顕微鏡写真を図1及び2に示す。図1及び2に示すように、YT151株は短桿菌であると考えられる。なお、グラム染色によりYT151株を染色したところ、難染色性であることがわかった。

0034

(2,6−DMP酸化酵素活性の測定)
培養液の上清50μL又は70μLをマイクロプレートに分注し、波長469nmの吸光度を測定した。45℃で5分間保温した後、以下に示す組成の基質混合液50μLを添加し、45℃で10分間反応させた。基質混合液の色を目視で確認した後、過酸化水素(H2O2)を2mol/Lとなるように添加した。さらに、45℃で10分間反応させた後、基質混合液の色を目視で確認した。基質混合液の色が透明から黄色に変化した場合に、2,6−DMP酸化酵素活性を有すると判断することができる。単離したYT151株の2,6−DMP酸化酵素活性の測定結果を図3〜5に示す。

0035

[基質混合液]
・2,6−DMP:5mmol/L
硫酸マンガン:5mmol/L
酢酸緩衝液(pH7.0):100mmol/L

0036

図3は反応前(活性測定前)の基質混合液の状態を示す。図4は反応後(過酸化水素添加前)の基質混合液の状態を示し、図5は反応後(過酸化水素添加後)の基質混合液の状態を示す。なお、図3〜5中、左端及び中央のウェルがYT151株の培養上清に対応し、右端のウェルが対照に用いた西洋わさび由来ペルオキシダーゼ(HRP)に対応する。図4に示すように、YT151株の培養上清は過酸化水素添加前であっても2,6−DMP酸化酵素活性を示した。このことから、YT151株は、過酸化水素を要求しない酵素を産生する細菌であると考えられる。さらに、図4及び5に示すように、過酸化水素を添加して反応させたことで、基質混合液の色(黄色)がより濃厚になった。

0037

(マンガンイオン存在下と非存在下(EDTA添加区)における2,6−DMP酸化酵素活性の測定)
マイクロプレートを用いて、以下に示す組成の100μLの反応液で、室温(20℃)で1時間反応させた。陰性コントロールとして、植菌していないLB培地を用いた。2,6−DMP酸化酵素活性を目視で確認した結果を図6に示す。

0038

[反応液]
・YT151株の培養上清又はLB培地:10μL
・2,6−DMP:5mmol/L
塩化マンガン又はEDTA:1mmol/L
トリス塩酸緩衝液(pH7.5):50mmol/L

0039

図6中、左上のウェルが、YT151株の培養上清のマンガンイオン存在下での反応後の状態に対応する。また、左下のウェルが、YT151株の培養上清のマンガンイオン非存在下(EDTA添加区)での反応後の状態に対応する。さらに、右上のウェルが、陰性コントロールとして用いたマンガンイオン存在下のLB培地に対応する。(EDTA添加区)そして、右下のウェルが、陰性コントロールとして用いたマンガンイオン非存在下(EDTA添加区)のLB培地に対応する。図6に示すように、YT151株の培養上清は、マンガンイオン非存在下では2,6−DMP酸化活性が極めて微弱であるのに対し、マンガンイオン存在下では強い活性を示すことがわかる。このことから、YT151株は、過酸化水素非要求性であるとともに、マンガンイオン要求性である、新たなタイプのマンガンペルオキシダーゼ様酵素を産生する細菌であるといえる。

0040

<単離した菌株の同定>
単離したYT151株の16S rDNAの塩基配列(約1,500bp)を解析し、菌株の同定を行った。菌株の培養条件及び16S rDNAの抽出から塩基配列決定までの手順等を以下に示す。

0041

[培養条件]
・培地:LB寒天培地
・培養温度:30℃
・培養時間:48時間
・その他の条件:好気培養

0042

[16S rDNA配列解析]
・DNA抽出:アクロモペプチダーゼ和光純薬社製)
PCR増幅:PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)
サイクルシーケンス:BigDye Terminator v3.1 CycleSequencing Kit(Applied Biosystems社製)
・使用プライマーPCR増幅;9F,1510R
シークエンス;9F,785F,802R,1510R
・シークエンス:ABIRISM3130 x1 Genetic analyzer system(Applied Biosystems社製)
・塩基配列決定:ChromasPro 1.7(Technelysium Pty社製)

0043

YT151株の16S rDNAの塩基配列は、Ochrobactrum intermediumの基準株に対して相同率99.6%であり、Ochrobactrum ciceriの基準株に対して相同率99.8%であることが判明した。この結果から、YT151株を、Ochrobactrum ciceriに近縁なOchrobactrum sp.属に属する菌株であると同定した。分子系統樹を図7に示す。

実施例

0044

Ochrobactrum ciceri Ca−34T(DO647056)の配列には40塩基以上の挿入があり、分子系統解析時に考慮されないことが知られている。また、BLAST検索時は、挿入配列部が連続する不一致箇所となってスコア計算時に減算されるため、挿入配列部を含む約170bpが削除され、比較塩基数が1,267bpまで短くなる。この挿入部分を考慮したYT151株とOchrobactrum ciceri Ca−34T(DQ647056)間の相同率は96.2%であった。図7に示すように、16S rDNA塩基配列に基づく分子系統解析の結果、YT151株はOchrobactrum属の種で形成されるクラスター内に含まれ、Ochrobactrum ciceri Ca−34T(DQ647056)と系統枝を形成した。しかし、両者の間には距離が認められ、互いにやや異なる分子系統学的位置を示した。また、その外側にはOchrobactrum intermediumCCUG 24694T(AM114411)が系統樹を形成した。YT151株は、Ochrobactrum intermedium CCUG 24694T(AM114411)の16S rDNA部分塩基配列と5塩基の相違点が認められた。また、YT151株と、Ochrobactrum ciceri Ca−34T(DO647056)の16S rDNA部分塩基配列との間には、上記の挿入以外に9塩基の相違が認められ、2塩基で挿入/欠損を認めたが、残りの7塩基は明確に異なった。以上の結果から、YT151株は、既知種ではOchrobactrum intermedium及びOchrobactrum ciceriの近縁であり、系統的にはOchrobactrum ciceriに近縁であると考えられる。よって、16S rDNAの塩基配列に基づく分子系統解析の結果から、YT151株をOchrobactrum ciceriに近縁なOchrobactrum.sp属に属する菌株であると同定した。

0045

本発明の細菌は、これまで処理が困難であったバイオマスのリグニンを迅速、効率的、及び安価に分解処理しうる菌として有用である。

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