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技術 ヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドの製造方法

出願人 株式会社日本触媒
発明者 牧野朋未島史明
出願日 2020年2月21日 (1年0ヶ月経過) 出願番号 2020-028760
公開日 2020年9月3日 (5ヶ月経過) 公開番号 2020-137519
状態 未査定
技術分野 微生物・酵素関連装置 微生物、その培養処理
主要キーワード ドーム型形状 非接着型 流体直径 シェアストレス レーザー放出 非生物由来 本グリース 凹部構造
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (10)

課題

ヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドを製造する新規な方法、該スフェロイドの未分化状態を維持する新規な方法、及び前記方法により得られるスフェロイドを提供すること。

解決手段

開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上で培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法、及び、その未分化状態を維持する方法。

概要

背景

近年、再生医療iPS細胞等の幹細胞において未分化細胞を利用する機運が高まっており、臨床応用する上で、未分化状態を保持した細胞を培養する技術についての検討が盛んに行われている。

例えば、特許文献1の細胞培養担体は、特定の気孔を有することから、ES細胞やiPS細胞等の幹細胞の未分化細胞播種する際に、該担体の裏面側から吸引及び/又は表面側から加圧し、ウェル外に播種された細胞をウェル内に誘導して効率よく凝集させることで、未分化状態を保持しながら細胞を増殖させて、スフェロイドを形成することができると開示されている。

非特許文献1では、低接着性のV底プレートを用いて各ウェルに胚性幹細胞を播種することで、スフェロイドを形成している。

また、特許文献2には、特定の重力環境下で培養することにより、フィーダー細胞コーティング剤不在下であっても、未分化性を保持した状態でiPS細胞を増殖させ、スフェロイドを形成及び成長することができると開示されている。

概要

ヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドを製造する新規な方法、該スフェロイドの未分化状態を維持する新規な方法、及び前記方法により得られるスフェロイドを提供すること。開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上で培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法、及び、その未分化状態を維持する方法。なし

目的

本発明は、ヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドを製造する新規な方法、該スフェロイドの未分化状態を維持する新規な方法、及び前記方法により得られるスフェロイドを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上で培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドを製造する方法。

請求項2

開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上でヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞含有スフェロイドの未分化状態を維持する方法。

請求項3

開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上でヒト脂肪由来幹細胞を培養する工程を含む、インテグリン発現ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法。

請求項4

細胞接着性表面が細胞接着性を示す物質で構成される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

請求項5

細胞接着性表面がポリイミド樹脂を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

請求項6

細胞培養用シートの凹部底面平底状である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。

請求項7

請求項1〜6のいずれかに記載の方法により得られる、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイド。

請求項8

Nanog、Oct 3/4、SSEA-4、及びSOX2からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現する、請求項7記載のスフェロイド。

請求項9

接着容器浮遊培養した場合のスフェロイドと比較して、Nanog、Oct 3/4、SSEA-4、及びSOX2からなる群から選択されるマーカーがタンパク質レベルで少なくとも1.5倍多い、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイド。

請求項10

非接着容器で浮遊培養した場合のスフェロイドと比較して、インテグリンαvの発現量が1.2倍以上多い、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイド。

請求項11

スフェロイドの直径が10〜800μmである、請求項7〜10のいずれかに記載のスフェロイド。

技術分野

0001

本発明は、ヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法、該スフェロイドの未分化状態を維持する方法、インテグリン発現ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法、及び前記方法により得られるスフェロイドに関する。

背景技術

0002

近年、再生医療iPS細胞等の幹細胞において未分化細胞を利用する機運が高まっており、臨床応用する上で、未分化状態を保持した細胞を培養する技術についての検討が盛んに行われている。

0003

例えば、特許文献1の細胞培養担体は、特定の気孔を有することから、ES細胞やiPS細胞等の幹細胞の未分化細胞播種する際に、該担体の裏面側から吸引及び/又は表面側から加圧し、ウェル外に播種された細胞をウェル内に誘導して効率よく凝集させることで、未分化状態を保持しながら細胞を増殖させて、スフェロイドを形成することができると開示されている。

0004

非特許文献1では、低接着性のV底プレートを用いて各ウェルに胚性幹細胞を播種することで、スフェロイドを形成している。

0005

また、特許文献2には、特定の重力環境下で培養することにより、フィーダー細胞コーティング剤不在下であっても、未分化性を保持した状態でiPS細胞を増殖させ、スフェロイドを形成及び成長することができると開示されている。

0006

特開2017−212972号公報
特許第6421374号公報

先行技術

0007

Cell Stem Cell 10, 771-785, June 14, 2012

発明が解決しようとする課題

0008

しかしながら、特許文献1の細胞培養担体は、スフェロイドの形成は可能なものであるが、セラミックス焼成して作製される多孔質体であるために、不透明となり容器内を直接観察することが困難なものとなっている。また、非特許文献1の容器では、容器表面接着性でなく、また、1個のウェルで1個のスフェロイドを調製するために大量に細胞を取得することが困難なものとなっている。さらに、特許文献2の方法では、回転式バイオリアクターの回転速度を調整することで重力環境を実現するため、煩雑な操作が必要となることや、回転による細胞へのシェアストレス等による細胞の機能低下の懸念がある。よって、いずれも未だ改良の余地があり、更なる改良技術が求められている。

0009

本発明は、ヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドを製造する新規な方法、該スフェロイドの未分化状態を維持する新規な方法、及び前記方法により得られるスフェロイドを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の細胞培養用シートで培養することにより、意外にも、未分化性が高いヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを効率よく製造できるだけでなく、当該未分化性の維持が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。

0011

即ち、本発明は、下記〔1〕〜〔11〕に関する。
〔1〕 開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上で培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法。
〔2〕 開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上でヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞含有スフェロイドの未分化状態を維持する方法。
〔3〕 開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上でヒト脂肪由来幹細胞(インテグリンを発現する又は発現可能な細胞)を培養する工程を含む、インテグリン発現(インテグリン含有)ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法。
〔4〕 細胞接着性表面が細胞接着性を示す物質で構成される、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 細胞接着性表面がポリイミド樹脂を含む、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕 細胞培養用シートの凹部底面平底状である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法により得られる、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイド。
〔8〕 Nanog、Oct 3/4、SSEA-4、及びSOX2からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーを発現する、前記〔7〕記載のスフェロイド。
〔9〕 非接着容器浮遊培養した場合のスフェロイドと比較して、Nanog、Oct 3/4、SSEA-4、及びSOX2からなる群から選択されるマーカーがタンパク質レベルで少なくとも1.5倍多い、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイド。
〔10〕 非接着容器で浮遊培養した場合のスフェロイドと比較して、インテグリンαvの発現量が1.2倍以上多い、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイド。
〔11〕 スフェロイドの直径が10〜1000μmである、前記〔7〕〜〔10〕のいずれかに記載のスフェロイド。

発明の効果

0012

本発明によれば、未分化性が高いヒト脂肪由来幹細胞スフェロイドを簡便に効率よく製造することができる。

図面の簡単な説明

0013

図1は、本発明で用いることができる細胞培養用シートの一態様について、シート断面構造を模式的に示した図である。
図2は、本発明で用いることができる細胞培養用シートの一態様について、シート断面構造を模式的に示した図である。
図3は、本発明で用いることができる細胞培養用シートの一態様について、シート断面構造を模式的に示した図である。
図4は、本発明で用いることができる細胞培養用シートにおいて、細胞を培養した一態様を模式的に示した図である。
図5は、本発明で用いることができる細胞培養用シートにおいて、細胞を培養した一態様を模式的に示した図である。
図6は、本発明で用いることができる細胞培養用シートの一態様について、シート断面構造を模式的に示した図である。
図7は、本発明で用いることができる細胞培養用シート又は細胞培養容器の一態様について、凹部の底面側から撮影した写真である。図7aにおけるスケールバーは1mmを示し、図7bにおけるスケールバーは5cmを示す。
図8は、未分化マーカータンパク発現量を示す図である。
図9は、インテグリンαvの発現量を示す図である。
図10は、本発明で用いることができる細胞培養用シートを用いて培養されたヒト脂肪由来幹細胞の蛍光顕微鏡写真である。スケールバーは100μmを示す。

0014

本発明は、開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上で培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法を提供する。前記構造の細胞培養用シートを用いることにより、ヒト脂肪由来幹細胞がシート上に適度に付着し、更に細胞同士の相互作用が適宜起こることで密な細胞間コミュニケーションが可能となって未分化状態を保持した状態で増殖するだけでなく、スフェロイド(細胞塊)を形成すること(ひいては、付着スフェロイドを形成し、剥離時に酵素などの薬剤を使用せずに剥離が可能で、接着性を持ったスフェロイドを作ること)が可能になると推定される。ただし、前記推測は、本発明を限定するものではない。

0015

ここでは、前記スフェロイドの調製に用いた細胞培養用シートについて、その構造を、凹部に対して垂直方向に切断したシート断面図の一例を用いて説明する。図1の模式図に示すように、シート表面12に凹部11が複数存在し、凹部11は内側面11aと底面11bにより構成され、凹部11内でスフェロイドが形成される。

0016

シート表面12上の凹部11の個数は、シート面積や培養する細胞の種類等によって一概に設定することはできず、当該技術常識に従って適宜設定することができる。例えば、単位面積(cm2)あたりの下限個数は10個、20個、30個、50個など、上限個数は1000個、500個、300個、200個、100個などを例示することができる。また、シート表面における凹部の総数は、例えば、10個以上、100個以上、1000個以上、10000個以上、50000個以上など、適宜設定することができる。

0017

凹部の開口部の形状は、円形に限られず、例えば、多角形楕円であってもよい。開口部の孔径は直径1000μm以下であればよく、培養する細胞のサイズや所望するスフェロイドのサイズによって当該技術常識に従って適宜設定することができる。本発明において、孔径とは、対象箇所の形状によらず、対象箇所を包接するようにして形成される円の直径(最大長さ)のことであり、開口部の孔径とは、例えば、図1では、D(11)で示される長さのことである。開口部の孔径としては、例えば、10〜1000μm、10〜700μm、10〜600μm、10〜500μmの範囲内が例示される。

0018

凹部の底面の形状は、円形に限られず、例えば、多角形や楕円であってもよく、開口部の形状と同一であっても異なるものであってもよい。底面の面積としては、凹部1個あたり、例えば、1.0×10-1cm2、5.0×10-2cm2、2.0×10-2cm2、1.0×10-2cm2、5.0×10-3cm2、2.5×10-3cm2、2.0×10-3cm2、1.0×10-3cm2等が例示される。また、底面の孔径(長さ)は開口部の孔径と同一であっても異なるものであってもよく、底面の孔径が開口部の孔径より小さいものであっても、底面の孔径が開口部の孔径より大きいものであってもよい。底面の孔径とは、例えば、図1では、DB(11b)で示される長さのことであり、底面の孔径としては、例えば、10〜1000μm、10〜700μm、10〜600μm、10〜500μm、10〜400μm、10〜300μmの範囲内が例示される。例えば、底面の孔径が開口部の孔径と同じ場合、凹部の形状としては、円柱形状が形成される。底面の孔径が開口部の孔径より小さい場合、凹部の形状としては、凹部の底面側に向かったテーパー形状が形成される。

0019

底面の孔径と開口部の孔径の比(底面の孔径/開口部の孔径)は、特に限定されるものではないが、細胞の播種や回収のしやすさの観点から、5/1〜1/5、3/1〜1/3、1/1〜1/2が例示される。

0020

また、開口部と隣接する開口部との間の距離(間隙)は、例えば、図1では、D(12)で示される長さのことであり、特に限定されるものではないが、所望する大量培養に応じて、例えば、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下などの範囲内が例示され、有限値であればよい。

0021

凹部の深さは、培養する細胞のサイズによって当該技術常識に従って適宜設定することができる。凹部の深さとは、例えば、図1では、D(11a)で示される長さのことであり、例えば、10〜300μmの範囲内が例示される。

0022

開口部の孔径と凹部の深さの比(開口部の孔径/凹部の深さ)は、特に限定されるものではないが、細胞の播種や回収のしやすさの観点から、5/1〜1/5、3/1〜1/3、2/1〜1/1が例示される。前記範囲内の場合、細胞が凹部から飛び出し難く、また、細胞の回収や脱泡処理といった作業がしやすくなる。

0023

凹部の底面の厚みは、特に限定されず、当該技術常識に従って適宜設定することができる。

0024

凹部は、内側面が細胞非接着性表面を有し、底面が細胞接着性表面を有する。例えば、図1では、内側面11aが細胞非接着性表面を有し、底面11bが細胞接着性表面を有する。

0025

細胞非接着性の表面とは、例えば、培養に用いる溶液中において、細胞が当該表面上に沈降した場合に、当該細胞が、その形状をほとんど変化させず、全く接着しないか又は一時的に弱く接着したとしても自然に脱離する表面のことである。かかる表面は、例えば、細胞非接着性を示す物質が凹部を構成する基材表面に物理的又は化学的に固定されて形成されたものであればよく、基材そのものが細胞非接着性を示す物質からなるものであってもよい。例えば、細胞非接着性を示す物質が表面に固定されている場合、図2の模式図に示すように、シート表面12と凹部11の内側面11aに、細胞非接着性を示す物質21が固定されている。

0026

細胞非接着性を示す物質としては、用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質糖鎖等の細胞表面分子に対して結合しない物質であれば特に限られず用いることができ、生体適合性を有するものであっても、有さないものであってもよい。また、疎水性を示すものであっても親水性を示すものであってもよく、例えば、超撥水性超疎水性)のものや超親水性のものであってもよい。細胞の非接着性、スフェロイドの均一性および形成性等の観点から、疎水性(特に超疎水性)[例えば、疎水性又は親水性(特に疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより疎水性(特に超疎水性)]を示す物質が特に好ましいが、親水性(特に超親水性)[例えば、親水性又は疎水性(例えば、疎水性)の細胞接着性表面又は当該表面を構成する樹脂(さらにはその接触角)に対してより親水性(特に超親水性)]を示す物質も好ましい。
このような物質の一例を示すと、例えば、ポリエチレングリコール及びその誘導体MPC(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)及びその誘導体、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)及びその誘導体等を含む化合物あるいはそれら化合物の重合体、SPC(セグメント化ポリウレタン)及びその誘導体等を含む化合物や、生体から取得されたタンパク質(アルブミン等)、細胞が接着しない糖鎖(アガロースセルロース等)等を、細胞の種類に応じて適宜選択して用いることができる。なかでも、合成樹脂との接着性の観点、細胞培養用シートの製造工程を簡素化できる観点、または得られる細胞組織体の均一性が向上する観点から、MPC及びその誘導体あるいはそれらの重合体が好ましい。
なお、細胞非接着性を示す物質は、取扱性、所望の疎水性(例えば、超疎水性)・親水性(例えば、超親水性)の程度等に応じて、適宜、変性したものを使用してもよい。例えば、親水性の物質を架橋処理等することで、親水性と水に対する低溶解性両立させてもよい。また、原料となる物質(例えば、疎水性又は親水性)を、適宜、疎水化処理ないし親水化処理(例えば、疎水性基ないし親水性基の導入等)し、所望の疎水性ないし親水性の材質を得てもよい。

0027

細胞非接着性を示す物質の固定化は、これらを含有する溶液を基材表面上で乾燥させる方法、当該物質を溶融させて圧着する方法、基材に塗布した当該物質をUV等のエネルギー線硬化させる方法、当該物質が有する官能基と基材上の官能基との間で化学反応(例えば、カルボキシル基アミノ基等の官能基間縮合反応等)を起こさせて共有結合を形成させる方法、又は当該物質が有するチオール基と基材に予め形成された金属(プラチナ、金等)薄膜とを結合させる方法により、当該基材表面上に固定化することができる。固定化する際の厚みは特に限定されず、0.01〜1000μmが例示される。

0028

細胞非接着性を示す表面が、凹部の内側面を占める割合としては、特に限定はされないが、培養細胞付着性を低減させる程度であることが好ましい。好ましくは内側面の面積の90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは全てを占めることが好ましい。
細胞非接着性を示す表面は、形成されるスフェロイドのサイズを均一にしたり、円形度を向上させたりする観点から、その表面特性として、例えば、静的水接触角指標として判断することができる。例えば、前記細胞非接着性を示す物質で形成された疎水性表面である場合、静的水接触角は、好ましくは90°以上、より好ましくは93°以上、さらに好ましくは95°以上である。また、150°以下であってもよく、好ましくは130°以下、より好ましくは120°以下である。
一方、親水性表面である場合、静的水接触角は、好ましくは65°以下、より好ましくは55°以下、さらに好ましくは50°以下である。また、0°以上であってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上である。
このような物質の一例を示すと、疎水性が高いMPC(又は当該MPCで形成された表面)では、静的水接触角が、例えば90°以上、100°以上のような静的水接触角を実現しうる。
なお、このような静的水接触角は、細胞非接着性表面における値であってもよく、細胞非接着性を示す物質(又は細胞非接着性表面を構成する物質)における値であってもよい。
また、静的水接触角は、例えば後述の方法等により測定してもよい。

0029

細胞接着性の表面とは、例えば、培養に用いる溶液中において、細胞が当該表面上に沈降した場合に、当該細胞が、ある一定の接着点を持って接着することである。または、ピペッティング等の液流等によって剥離可能な程度に固定化されるように接着する表面のことである。また、細胞が接着して二次元的に維持又は増殖されるような表面ではなく、層状、スフェロイド状等の立体的な又は三次元の組織体を形成することが可能な程度に接着する表面を挙げることができる。かかる表面は、例えば、細胞接着性を示す物質が凹部底面を構成する基材表面に物理的又は化学的に固定又は配置されて形成されたものであればよく、細胞接着性を示す物質が該凹部以外に配置されたものでも、基材そのものが細胞接着性を示す物質からなるものであってもよい。例えば、基材そのものが細胞接着性を示す物質からなる場合、図3の模式図に示すように、凹部11の底面11bを含む領域が細胞接着性を示す物質22からなる層で形成されていてもよい。

0030

細胞接着性を示す物質としては、培養に用いる細胞が接着するか、又は用いる細胞の細胞膜に存在するたんぱく質や糖鎖等の細胞表面分子に対して結合し得る物質であれば特に限られず用いることができる。親水性を示すものであっても疎水性を示すものであってもよいが、細胞接着性、スフェロイドの形成性等の観点から、親水性(特に、超親水性ではない親水性)又は疎水性(特に、超疎水性ではない疎水性)のものが好ましく、疎水性を示すものがさらに好ましい。また、細胞接着性を示す物質の接着性の程度は、細胞が凹部内から飛び出さない程度であってもよい。
このような物質の一例を挙げると、生体から取得され若しくは合成された物質が挙げられ、例えば、タンパク質(コラーゲンフィブロネクチンラミニン等)や、合成樹脂(フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホンポリエーテルスルホンポリジメチルシロキサン、これらの混合物等)が含まれる。合成樹脂を選択する場合、合成樹脂自体の強度や耐熱性から、取り扱い性に優れる細胞培養用シートを得ることができる。また、生体適合性の観点、スフェロイドの均一性が向上する観点、種々の細胞と適度に接着することにより培地交換作業が容易となる観点、接着性のスフェロイドが得られる観点、または得られるスフェロイドの均一性が向上する観点から、ポリイミド樹脂のような合成樹脂を選択することが好ましい。ポリイミド樹脂のような非生物由来の成分を選択することで、ポリイミド樹脂を含む細胞培養用シートにより得られるスフェロイドは、再生医療や創薬等の分野への適用が容易となる。

0031

ポリイミド樹脂としては、以下の式(I)で示される構成単位を含むポリイミド樹脂が例示できる。また、スフェロイド形成が良好であるという観点から、分子内にフッ素原子を有する樹脂が好ましく、含フッ素ポリイミド含フッ素ポリイミド樹脂)がより好ましい。本発明で用いられるポリイミド樹脂は、典型的には、酸二無水物ジアミンとを各々1種以上重合させて得られるポリアミド酸イミド化することにより得られる。ポリイミド樹脂は、ポリアミド酸を化学構造の一部に含んでいてもよい。ポリイミド樹脂を製造する方法としては、公知の手法で製造すればよい。一例として二段合成法が使用できる。ポリイミド樹脂の二段合成法は前駆体としてポリアミド酸を合成し、ポリアミド酸をポリイミドに変換する方法である。前駆体としてのポリアミド酸はポリアミド酸誘導体であってもよい。ポリアミド酸誘導体としては、例えばポリアミド酸塩ポリアミド酸アルキルエステルポリアミド酸アミドビスメチリデンピロメリチドからのポリアミド酸誘導体、ポリアミド酸シリルエステル、ポリアミド酸イソイミドなどが挙げられる。ポリイミドとしてはピロメリット酸二無水物ビフェニルテトラカルボン酸二無水物ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の酸無水物と、オキシジアミンパラフェニレンジアミンメタフェニレンジアミンベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからなるポリイミドが例示できる。フッ素原子を有する樹脂としては、例えば、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(6FDA)/1,4−ビス(アミノフェノキシベンゼンTPEQ共重合体、6FDA/4,4’−オキシジフタル酸無水物ODPA)/TPEQ共重合体、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸(BPADA)/2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニルヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、6FDA/2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)共重合体等の以下の式(I)で示される構成単位を含む含フッ素ポリイミド樹脂;エチレンテトラフルオロエチレン共重合体等が例示できる。

0032

0033

上記式(I)中、X0は酸素原子硫黄原子カルボニル基スルホニル基、または2価の有機基のいずれかを示し;
Yは2価の有機基を示し;
Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、及びZ6は互いに独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子臭素原子またはヨウ素原子のいずれかを示し、
pは0または1である。
なお、ポリイミド樹脂において、式(I)で示される化学構造は、樹脂の構成単位ごとに異なってもよく、同一であってもよい。X0、Y、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、及びZ6の少なくとも1つはフッ素原子を1個以上含むことが好ましい。

0034

上記式(I)中、p=0である場合にはX0は存在していなくても(換言すれば、左右のベンゼン環直接結合していても)よいが、p=1である場合には、左右のベンゼン環はX0を介して結合する。

0035

X0で示される2価の有機基としては、具体的には、アルキレン基アリーレン基アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基等が挙げられる。また、縮合環式の2価の炭化水素基ヘテロ環縮合環式の2価の炭化水素基、及びこれらのオキシ基、チオ基であってもよい。これらの中でも、アルキレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンチオ基が好ましく、アルキレン基、アリーレンオキシ基がより好ましく、これらはフッ素原子で置換されていてもよい。上記アルキレン基の炭素数は、例えば1〜12であり、好ましくは1〜6である。

0036

X0の例であるフッ素原子で置換されたアルキレン基としては、例えば、−C(CF3)2−、−C(CF3)2−C(CF3)2−等を例示することができる。X0の例である上述したアルキレン基の中では、−C(CF3)2−が好適である。

0037

X0の例であるアリーレン基としては、例えば、以下のものを例示することができる。

0038

0039

X0の例であるアリーレンオキシ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。

0040

0041

X0の例であるアリーレンチオ基としては、例えば、以下のものを例示することができる。

0042

0043

基材上にスフェロイドを良好に形成しうるという観点からは、X0で示される2価の有機基としては、上記b−2〜b−10およびc−2〜c−10からなる群から選択されるものでもよく、上記b−7〜b−9およびc−7〜c−9からなる群から選択されるものでもよく、b−8で表される構造であってもよい。

0044

X0の例である上述したアリーレン基、アリーレンオキシ基及びアリーレンチオ基は、各々独立して、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基よりなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基に置換している好適な置換基は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であり、好適にはフッ素原子である。アリーレン基、アリーレンオキシ基およびアリーレンチオ基は、Yにフッ素原子が含まれない場合、少なくとも1つ以上のフッ素原子で置換されることが好ましい。

0045

上記式(I)中、Yで示される2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、芳香環を有する2価の有機基が挙げられる。詳しくは、1個のベンゼン環からなる基もしくは、2個以上のベンゼン環が炭素原子(すなわち、単結合、またはアルキレン基)、酸素原子、硫黄原子を介してまたは直接結合した構造を有する基が挙げられる。具体的には、以下の基を例示することができる。

0046

0047

0048

0049

0050

Yの例である上述した芳香環を有する2価の有機基は、置換可能であれば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子または塩素原子、より好ましくはフッ素原子である)、メチル基およびトリフルオロメチル基からなる群から選択される基により置換されていてもよい。これら置換基は複数であってもよく、その場合には置換基の種類は互いに同一であっても異なっていてもよい。芳香環を有する2価の有機基に置換している好適な置換基は、特にX0にフッ素原子が含まれない場合は、フッ素原子および/またはトリフルオロメチル基であることが好ましく、より好適にはフッ素原子である。

0051

スフェロイド形成性の観点から、上記式(I)中、Yはd−3、d−9、e−1〜e−4、f−6、およびf−7からなる群から選択される構造であることが好ましく、より好ましくはe−1、e−3またはe−4の構造である。

0052

上記式(I)中、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、及びZ6は、各々同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子から選ばれ、X0およびYの少なくとも一方にフッ素原子が含まれない場合、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、およびZ6の少なくとも1つはフッ素原子であることが好ましい。

0053

スフェロイド形成性の観点から、本発明の好ましい一実施形態では、上記式(I)中、X0で示される2価の有機基が、−C(CF3)2−、上記b−2〜b−10およびc−2〜c−10からなる群から選択され;かつ、Yが、d−3、d−9、e−1〜e−4、f−6、およびf−7からなる群から選択される。本発明のより好ましい一実施形態では、上記式(I)中、X0で示される2価の有機基が、−C(CF3)2−、b−7〜b−9およびc−7〜c−9からなる群から選択され;かつ、Yが、e−1、e−3およびe−4からなる群から選択される。

0054

上記の式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンとの重合により得られるポリアミド酸を焼成する手法により得ることができる。なお、上記「式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂」のイミド化率は、100%でなくともよい。すなわち、式(I)で示される構成単位からなるポリイミド樹脂は、上記式(I)で表される構造単位のみからなるものであってもよいが、本発明の目的効果が損なわれない範囲において、環状イミド構造脱水閉環せずにアミド酸のままである構成単位が一部に含まれていてもよい。

0055

ポリアミド酸合成反応有機溶媒中で行われることが好適である。ポリアミド酸合成反応に用いられる有機溶媒としては、原料である酸二無水物とジアミンとの反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドテトラヒドロフランジメチルスルホキシドスルホランメチルイソブチルケトンアセトニトリルベンゾニトリルニトロベンゼンニトロメタンアセトンメチルエチルケトンイソブチルケトンメタノール等の極性溶媒トルエンキシレン等の非極性溶媒等が挙げられる。中でも、極性溶媒を用いることが好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用されてもよいし、2種以上の混合物として使用されてもよい。アミド化反応後反応混合物をそのまま熱イミド化に供してもよい。前記ポリアミド酸の溶液中の前記ポリアミド酸の濃度は特に限定されないが、得られる樹脂組成物重合反応性と重合後の粘度、その後の製膜、焼成での取り扱いやすさの観点から、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。前記樹脂組成物の粘度は特に限定されるものではないが、公知の測定方法に従って測定することができ、例えば、23℃において1〜20Pa・s、好ましくは3〜15Pa・sの範囲内である。

0056

前記ポリアミド酸を、熱イミド化または化学イミド化のいずれかによりイミド化して含フッ素ポリイミドを含む樹脂組成物を得る。特定の実施形態では、前記ポリアミド酸を、加熱処理によりイミド化(熱イミド化)して含フッ素ポリイミドを含む樹脂組成物を得る。熱イミド化で得られたポリイミドは、触媒の残存の可能性がなく、細胞培養用途ではより好ましい。

0057

熱イミド化によりイミド化する場合、例えば、前記ポリアミド酸を、空気中で、またはより好ましくは窒素ヘリウムアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、或いは真空中で、好ましくは温度50〜400℃、より好ましくは100〜380℃、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.2〜5時間の条件下で焼成してイミド化反応を行うことによりポリイミドを含む樹脂組成物を得ることができる。

0058

熱イミド化反応に供する前記ポリアミド酸は、適当な溶媒中に溶解された形態であることが好ましい。溶媒としては、ポリアミド酸を溶解するものであれば良く、ポリアミド酸合成反応に関して上記した溶媒を用いることもできる。

0059

化学イミド化によりイミド化する場合では、適当な溶媒中で後述の脱水環化試薬の使用によりポリアミド酸を直接イミド化することができる。

0060

前記脱水環化試薬は、ポリアミド酸を化学的に脱水環化してポリイミドとする作用を有するものであれば、特に制限なく用いることができる。このような脱水環化試薬としては、第三級アミン化合物を単独で用いるか、または、第三級アミン化合物とカルボン酸無水物とを組合せて用いることが、イミド化を効率よく促進させうる点で好ましい。

0061

第三級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミントリエチルアミントリプロピルアミントリブチルアミンピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも特に、ピリジン、DABCO、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタンが好ましく、DABCOがより好ましい。3級アミンは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。

0062

カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸無水トリフルオロ酢酸無水プロピオン酸無水酪酸無水イソ酪酸無水コハク酸無水マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも特に、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。カルボン酸無水物は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。

0063

化学イミド化においてポリアミド酸を溶解する溶媒としては、溶解性に優れる極性溶媒が好適である。例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらの中でも特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN−メチルピロリドンからなる群より選ばれる1種以上であることが均一反応をする観点から好ましい。アミド化反応の溶媒としてこれらの溶媒を用いた場合、アミド化反応後の反応混合物からポリアミド酸を分離せずそのまま化学イミド化に用いることができる。

0064

ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000〜2000000、好ましくは8000〜1000000であり、さらに好ましくは20000〜500000である。なお、本明細書において、樹脂の重量平均分子量は公知の測定方法に従って測定することができ、重量平均分子量が上記範囲であることにより、ポリイミド樹脂の合成および取扱い、フィルム化、スフェロイド形成性がより良好となる。

0065

細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面[疎水性(特に、超疎水性でない疎水性)の細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面]は、静的水接触角が70°以上であってもよく、転落角が15°以上であってもよく、また、静的水接触角が70°以上かつ転落角が15°以上であってもよい。細胞接着性表面がこのような条件を満たすことにより、スフェロイド形成がより一層促進される。
スフェロイド形成性の観点から、静的水接触角は、より好ましくは75°超であり、さらに好ましくは77°以上、よりさらに好ましくは79°以上、特に好ましくは80°以上(例えば80°超)である。静的水接触角の上限は、例えば150°未満であり、好ましくは120°以下(例えば、120°未満)であり、より好ましくは110°以下であり、さらに好ましくは100°以下(例えば99°未満、98°以下、97°以下、95°以下等)であり、特に好ましくは90°未満である。
一方、細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面[親水性(特に、超親水性でない親水性)の細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面]の静的水接触角は、好ましくは65°以下、より好ましくは55°以下、さらに好ましくは50°以下であってもよい。なお、下限値は、0°以上であってもよく、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上であってもよい。
スフェロイド形成性の観点から、細胞接着性を示す物質又は細胞接着性表面の転落角は、18°以上、19°以上、20°以上、22°以上、24°以上、26°以上、28°以上、30°以上の順で高いほど好ましい。転落角の上限値は、例えば80°未満であり、好ましくは70°以下(例えば70°未満)であり、より好ましくは60°以下(例えば60°未満)であり、さらに好ましくは50°以下(例えば50°未満)である。なお、前記表面特性は公知の方法に従って測定することができる。

0066

得られるスフェロイドのサイズ均一性及び円形度を向上させる観点から、細胞接着性表面と細胞非接着性表面との接着程度のバランスをとることが好ましい。よって、仮に、細胞非接着性表面が細胞に接着性を示すものであっても、細胞接着性表面より低接着性であればよい。例えば、上記の静的水接触角を指標とした場合、細胞非接着性表面(又は細胞非接着性を示す物質)における静的水接触角の差(又はその絶対値)が3°以上(例えば、5°以上)であることが好ましく、10°以上(例えば、12°以上)であることがより好ましく、15°以上であることがさらに好ましい。また、上記差(又はその絶対値)の上限は、細胞非接着性表面(又は細胞非接着性を示す物質)及び細胞接着性表面(又は細胞接着性を示す物質)の疎水性・親水性の組み合わせ等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、100°、90°、80°、70°、60°、50°、40°、30°などであってもよい。

0067

細胞接着性表面は、前記した細胞接着性を示す物質以外に、可塑剤酸化防止剤等の添加剤成分をさらに含んでもよい。

0068

細胞接着性を示す表面が、凹部の底面を占める割合としては、特に限定はされないが、凹部の底面のうち、90%以上、95%以上、99%以上、実質的に底面全てを占めることが好ましい。また、底面における細胞接着性表面は観察性の観点から平底状(平板状)であることが好ましい。

0069

凹部は前記した構造を有するが、細胞培養用シートにおいて、凹部の辺縁部でもあるシート表面は、細胞培養用シート製造の簡便化の観点から細胞非接着性表面を有することが好ましい。例えば、図1では、シート表面12として示される。シート表面の細胞非接着性表面は、凹部の内側面と同じ細胞非接着性表面であっても、異なる細胞非接着性表面であってもよい。同じ細胞非接着性表面の場合は、シート表面と凹部の内側面は連続した表面を有する。細胞非接着性を示す表面が、凹部の辺縁部でもあるシート表面を占める割合としては、特に限定はされないが、凹部の辺縁部のうち、90%以上、95%以上、99%以上、実質的に辺縁部全てを占めることが好ましい。細胞非接着性を示す表面が、凹部の辺縁部と凹部の内側面との合計を占める割合としては、特に限定はされないが、凹部の辺縁部と凹部の内側面との合計のうち、90%以上、95%以上、99%以上、実質的に辺縁部と内側面全てを占めることが好ましい。

0070

参考までに、図4及び図5に、細胞培養用シートにおける凹部でのスフェロイド形成状態を模式的に示す。本発明で用いることができる細胞培養用シートは、前記した凹部構造を複数有するものであるが、図4及び図5のように、凹部の底面を含む層と凹部の内側面を含む層を含む層状構造物であってもよい。ここで、凹部の内側面を含む層とは、層自体は貫通孔を有する層を構成している。よって、前記シートの一態様として、貫通孔を有する細胞非接着性表面を有する層と、細胞接着性表面を有する層との積層物である態様を挙げることができる。

0071

細胞非接着性表面を有する層は、細胞非接着性を示す物質を層状の基材に固定化したものであっても、細胞非接着性を示す物質からなる層であってもよいが、貫通孔を形成する観点から、または細胞培養用シートの製造を簡略化する観点から、細胞非接着性を示す物質を層状の基材に固定化したものが好ましい。このような形態とすることにより、細胞培養用シートの製造がより簡便となり、さらに例えば基材に貫通孔または凹部を形成してから細胞非接着性を示す物質を固定すること等により、細胞培養用シートの凹部形成に伴い細胞非接着表面ダメージを受けることを無くすことも可能となるため、細胞培養用シートの細胞培養特性向上の観点からも好ましい。

0072

層状の基材としては、当該技術分野で公知のものであれば用いることができる。例えば、ポリスチレンポリエチレンポリプロピレンポリカーボネートポリアミドポリアセタールポリエステルポリエチレンテレフタレート等)、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリレートポリメタクリレートポリビニルポリシクロオレフィンポリエーテルケトンポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、シリコン等の合成樹脂、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)等の合成ゴム天然ゴムガラスセラミックステンレス鋼等の金属材料等からなる板状体が挙げられる。透明基材であることも好ましい形態の一つである。

0073

層状の基材への細胞非接着性を示す物質の固定化は、前記した凹部の内側面に細胞非接着性を示す物質を固定化する方法と同様に行うことができる。なお、作業性の観点から、後述の貫通孔を形成してから、固定化を行うことが好ましい。

0074

細胞非接着性表面を有する層は、好ましくは前記シートのシート表面と貫通孔を含む。前記貫通孔は、好ましくはその壁が前記した凹部の内側面に相当するものであり、開口部やその反対の端部の孔径や形状は、前記した凹部と同様に設定することができる。また、貫通孔の深さは細胞非接着性表面を有する層の厚みに相当するが、前記した凹部の深さにも相当し、凹部と同様に設定することができる。なお、細胞非接着性を示す物質を層状の基材に固定化する場合は、細胞非接着性を示す物質の層として、例えば、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、細胞非接着性を示す物質の層と基材を含めた層全体の厚みが、前記した細胞非接着性表面を有する層の厚みの範囲内になるのであれば適宜設定することができる。

0075

貫通孔の形成は、前記したサイズの貫通孔が形成できるのであれば特に限定されず、実施することができる。例えば、穿孔加工(ドリル等)、光微細加工(レーザー(例えば、CO2レーザーエキシマレーザー半導体レーザーYAGレーザー)等)、エッチング加工エンボス加工等により形成することができる。前記加工において、貫通孔の形状がテーパー形状になるような加工であってもよく、その際に、端部の周囲が変形し、例えば、図5に示すように、開口部の辺縁部と、開口部と隣接する開口部の中間領域に位置する部分の層厚みが異なるような構造を形成してもよい。

0076

細胞接着性表面を有する層は、細胞接着性を示す物質を層状の基材に固定化したものであっても、細胞接着性を示す物質からなる層であってもよい。

0077

細胞接着性表面を有する層の厚みは、例えば、1nm以上、4mm以下であり、1μm以上、1mm以下であることが好ましく、前記した凹部の底面の厚みと同じであっても良い。

0078

前記細胞培養用シートとしては、前記した細胞接着性表面を有する層と細胞非接着性表面を有する層との間に、さらに接着層(粘着層)を含む態様も含む。例えば、図6にその一例を示すが、細胞接着性を示す物質22からなる層と、細胞非接着性を示す物質21が固定化された部分の間に、接着層23を含む態様が示される。

0079

接着層としては、当該技術分野で公知のものであれば用いることができる。例えば、アクリル系樹脂シリコン系樹脂、合成ゴム、天然ゴムなどが挙げられ、好ましくは低溶出性の接着層を用いることができる。市販の両面テープなどを用いてもよい。

0080

接着層の厚みは、特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、適宜設定することができる。例えば、0.5〜100μmが例示される。

0081

前記細胞培養用シートは、上記以外の層が積層されていても良く、空洞を有する層が積層されていても良く、細胞接着性を示す物質を有する層と該層の表面に設けられた細胞非接着性を示す物質の微細パターンを有するシート(すなわち、細胞接着性を示す物質を有する層に、細胞非接着性を示す物質の微細パターンのマスクを有するシート)とを用いるものであってもよい。

0082

また、かかる細胞培養用シートは、その製造方法は特に限定されない。例えば、製造効率の観点から、直径1000μm以下の貫通孔を複数有する細胞非接着性表面を有する層及び細胞接着性表面を有する層をこの順に積層して製造してもよい。なお、前記各層の調製や貫通孔の形成は前述の通りである。

0083

各層を積層する際には、予め調製した各層を順に積層するものであってもよく、予め調製した層上に別途、層を形成する方法であってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。具体的には、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材等の有機ポリマーフィルム、セラミックス、金属等)の上に、細胞接着性を示す物質をキャスティングスプレーコーティングディップコーティングスピンコーティングロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工して加熱することにより細胞接着性表面を有する層をシート状に成形することができる。一方、細胞非接着性表面を有する層の基材に対して、貫通孔を形成後、細胞非接着性を示す物質を表面にコーティングして、細胞非接着性表面を有する層を予め調製することができる。そして、上記で成形した細胞接着性表面を有する層の剥離シートを剥離後に、別途調製した細胞非接着性表面を有する層を積層することで、製造することができる。なお、細胞非接着性表面を有する層と細胞接着性表面を有する層の積層においては、前記した接着層(粘着層)を用いて積層してもよく、あるいは、溶着高周波溶着超音波溶着等)、圧着(熱圧着等)により積層してもよい。

0084

かくして得られた細胞培養用シートは、公知の細胞培養装置にそのまま設置して用いる観点から、対象装置の大きさに合わせて、適宜サイジング加工してもよい。その一方の表面に細胞を含む培地を載せて細胞培養を実施すればよく、該シートを培養用のプレート、プレートの各ウェル、培養シャーレ培養ディッシュ)、フラスコ培養バック等の各種細胞培養容器に収容して固定し、固定したシートの一部または全面を被覆するように該容器に細胞を含む培地を加えて細胞培養を実施することができる。

0085

前記細胞培養用シートは、厚みは特に限定されないが、取り扱い性の観点から、10〜5000μmが好ましく、100〜2000μmがより好ましい。また、シート面積も特に限定されず、例えば、0.01〜10000cm2、好ましくは0.03〜5000cm2が例示される。

0086

前記細胞培養用シートで培養される細胞としては、例えば、ヒト又はヒト以外の動物サルブタイヌラットマウス等)の任意の臓器又は組織(脳、肝臓膵臓脾臓心臓、腸、軟骨、骨、脂肪組織腎臓、神経、皮膚、骨髄歯髄骨膜滑膜筋肉胎盤組織臍帯組織臍帯血)、末梢血等に由来する初代細胞樹立された株化細胞、又はこれらに遺伝子操作等を施した細胞を用いることができる。
より具体的に、幹細胞及び前駆細胞が挙げられ、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、神経幹細胞間葉系幹細胞組織幹細胞体性幹細胞)、造血幹細胞癌幹細胞等を用いることができる。このような細胞としては、1種類の細胞を単独で用いることができ、又は2種以上の細胞を任意の比率で混在させて用いることもできる。
前記細胞培養用シートで培養されるヒト脂肪由来幹細胞としては、初代細胞、樹立された株化細胞、又はこれらに遺伝子操作等を施した細胞を用いることができる。

0087

使用する培地や培養条件は、公知のヒト脂肪由来幹細胞の条件を適宜参照にして設定することができる。例えば、10〜1000μmの孔径を有するウェル内に10〜2000個の細胞を播種し、血清不含有の培地(例えば、ADSC-2培地)で1〜30日程接着培養することで、ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを形成させることができる。なお、前記細胞培養用シートや細胞培養容器を使用する際に、必要に応じて予め脱泡処理を行うことが好ましい。脱泡処理としては、特に限定されず、霧吹き、ピペッティング、振盪、加温冷却などの温度変化遠心処理真空脱気超音波処理などの一般的な処理を行うことができ、好ましいのは、霧吹き、ピペッティング、温度変化である。必要に応じて予め拡大培養してから剥離剤で処理したものを供することができる。剥離剤としては、特に制限されないが、例えば、トリプシン、TrypLETM、アキュターゼTMなどを使用することができる。

0088

かくして得られたヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドは、その直径は特に限定されないが、例えば10〜1000μm、好ましくは10〜800μmである。ここで、スフェロイドの直径は、常法(例えば、画像解析ソフト、粒度分布計)により測定することが可能であり、例えば、流体直径円相当径として表示されうる。また、スフェロイドの形状は、球状であってもドーム型形状半球状)であってもよく、球状の場合は円形度が例えば、0.5〜1.0、好ましくは0.7〜1.0である。

0089

ヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを形成する細胞の個数としては、特に限定されず、スフェロイド1個あたり、例えば、1×101個以上、1×102個以上、1×103個以上、1×104個以上、1×105個以上、1×106個以上、1×107個以上、1×108個以上、1×109個以上含んでいてもよい。また、その上限は特に設定されず、例えば、1×1010個以下であればよい。

0090

本発明では、前記した細胞培養用シートでスフェロイドを形成させることから、コンタミネーションリスクが低減され、例えば、血清に由来する成分を含まないスフェロイドを形成させることが可能となる。一般的な細胞は、体内で細胞同士や細胞外マトリックスに接着しているが、浮遊培養用の容器内では常に浮遊した状態となっている。接着できない細胞は、アポトーシスすることがあるがそれを抑制するために血清に含まれる液性因子が必要となる。一方、本発明の方法では体内と同様に細胞が接着することができるため、アポトーシスを抑制する液性因子が不要となる。

0091

スフェロイドの未分化性は、未分化マーカーの発現を検出することによって確認することができる。
未分化マーカーとしては、例えば、Oct3/4、Nanog、Sox2、POU5F1、c-Myc、SSEA4等が挙げられるが、これらに限定されない。未分化マーカーの検出は、常法(例えば、タンパク質アレイ)により解析することが可能である。例えば、本発明の方法により得られるヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドは、細胞非接着容器で浮遊培養して得られるスフェロイドと比べて、未分化マーカーがタンパク質レベルで、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、更に好ましくは3倍以上多いものとなる。また、上限としては特に限定されないが、例えば、10倍程度が挙げられる。

0092

インテグリンは、細胞膜の表面に存在するタンパク質で、細胞接着分子であり、α鎖及びβ鎖の2つのサブユニットからなるヘテロダイマーである。インテグリンのα鎖としては、例えば、α1、α2、α3、α4、α5、α6、α7、α8、α9、α10、α11、αv、αIIb等が挙げられ、β鎖としては、例えば、β1β2、β3、β4、β5、β6等が挙げられるが、これらに限定されない。
スフェロイドに発現するインテグリンは、α鎖及びβ鎖の各種サブユニットのうち少なくとも1つのタンパク質レベルを検出するものであればよく、常法(例えば、ELISA法等)により解析することが可能である。未分化性を維持する観点から、検出するインテグリンとしては、インテグリンαv、インテグリンα5、インテグリンα8、インテグリンαIIb及びインテグリンα11のうち少なくとも1つが好ましく、インテグリンαvがより好ましい。例えば、本発明により得られるヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドは、細胞非接着容器で浮遊培養して得られるスフェロイドと比べて、インテグリンαvがタンパク質レベルで、例えば1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上多いものとなる。また、上限としては、特に限定されないが、例えば、10倍程度が挙げられる。
タンパク質レベルでの1×105細胞あたりのインテグリン発現細胞スフェロイドの発現量としては、特に限定されるものではないが、インテグリンαvを検出する場合、例えば、65pg以上であってもよく、70pg以上が好ましく、75pg以上がより好ましい。また、上限としては、特に限定されるものではないが、例えば、200pgが挙げられる。

0093

本発明ではヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造することができるが、得られたスフェロイドを前記した細胞培養用シートで維持培養することで、未分化性を維持することが可能であることも見出した。よって、本発明はまた、開口部の孔径が直径1000μm以下の凹部を複数有し、該凹部の内側面が細胞非接着性表面を有し、かつ、該凹部の底面が細胞接着性表面を有する細胞培養用シート上でヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを培養する工程を含む、ヒト脂肪由来幹細胞含有スフェロイドの未分化状態を維持する方法を提供する。なお、ここで使用する細胞培養用シートや培地、培養条件などは、本発明のヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを製造する方法と同様に規定することができる。

0094

得られたスフェロイドは、未分化性を保持した安定なヒト脂肪由来幹細胞を大量に含むことから、種々の組織・臓器発生や再生などの研究に使用したり、各種細胞への分化誘導が可能なことから再生医療への応用に使用することができる。
特に、得られたスフェロイドが、インテグリンを高発現している場合、細胞接着性に優れるので、創傷部位に良好に接着可能であり、細胞死が抑制されていることから、再生医療において高い治療効果が期待される。

0095

以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、室温とは20〜30℃を意味する。

0096

製造例1
<細胞接着性表面を有する層の調製(含フッ素ポリイミドフィルムの調製)>
100mL容量の三口フラスコに、1,4−ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン2.976g(10.2ミリモル)、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物4.524g(10.2ミリモル)、N−メチルピロリドン42.5gを仕込んだ。窒素雰囲気下、室温で撹拌後、5日間保持することで、含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物(固形分濃度15.0質量%、6FDA/TPEQポリアミド酸)を得た。該ポリアミド酸樹脂組成物の重量平均分子量は18万で、粘度は14Pa・sであった。なお、ポリアミド酸の重量平均分子量と、焼成後の含フッ素ポリイミドの重量平均分子量とは実質的に同一である。

0097

上記で得られた含フッ素ポリアミド酸樹脂組成物を、焼成後の含フッ素ポリイミドフィルムの厚みが40μmとなるようにダイコーターを用いてガラス基体上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、360℃にて1時間、窒素雰囲気下で塗膜の焼成を行った。その後、焼成物をガラス基体から剥離して、含フッ素ポリイミドフィルムを得た。この含フッ素ポリイミドフィルムの静的水接触角は80.9°、転落角は23.4°であった。

0098

上記における物性の測定方法は以下の通りである。
(重量平均分子量の測定)
装置:東ソー株式会社製HCL−8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・H2O、リン酸入りNMP):0.01mol/L
測定方法:0.5重量%の溶液を溶離液で作製し、ポリスチレンで作製した検量線をもとに分子量を算出する。
(粘度の測定)
装置:アズワン製粘度計VISCOMETERTV-22
設定:VI RANGE:H ROTOR No.6 SPEED:10rpm
粘度計校正用標準液:日本グリース(株) JS 14000
測定方法:粘度計校正用標準液で校正後ワニス0.3gを用いて測定する。(測定温度:23℃)
(静的水接触角の測定)
装置:自動接触角計協和界面科学製:DM−500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性を示す物質で形成したフィルム)上に水2μLを滴下した直後の液滴の付着角度を測定する(測定温度:25℃)。
(転落角の測定)
装置:自動接触角計(協和界面科学製:DM−500)
測定方法:表面(細胞非接着性表面又は細胞接着性表面)又はフィルム(細胞非接着性又は細胞接着性を示す物質で形成したフィルム)上に水25μLを滴下した後、シートを連続的に傾けていき、流れ落ちた際の角度を転落角とする(測定温度:25℃)。

0099

<細胞非接着性表面を有する層の調製>
両面テープ(厚み25μm)の片面の剥離テープを剥離後透明なPETフィルム(厚み250μm)に貼り合わせたものに対して、CO2レーザーを用いて、直径300μm、ピッチ500μmで千鳥配置の貫通孔を形成した(形成された貫通孔:400個/cm2、24000個/シート、レーザー入射側孔径500μm、レーザー放出側孔径300μm)。その後、PETフィルム側の表面にスピンコーター(ミカサ製:MS-A150)を用いて、MPCポリマー溶液(0.5%エタノール溶液、疎水性MPCポリマー)を厚みが0.05μmとなるようにコーティングし、50℃の乾燥機内で2時間乾燥処理して、細胞非接着性表面を有する層[PETフィルムのコーティング層(MPCポリマーのコーティング層)側の静的水接触角107.5°]を得た。

0100

<細胞培養用シート・培養容器の調製>
次いで、細胞非接着性表面を有する層の両面テープのもう一方の剥離テープを除去した側の面に、上記で作製した細胞接着性表面を有する層を貼りあわせて、細胞培養用シートを調製した(シート厚み:315μm)。調製した細胞培養用シートについて凹部の底面側から観察した写真を図7aに示した。得られた細胞培養用シートを培養プレート内へ設置し、細胞培養に用いる容器を完成した。細胞培養容器全体について凹部の底面側から観察した写真を図7bに示した。

0101

実施例1
細胞は、ヒト脂肪由来幹細胞(Human adipose derived stem cell:AdSC)を用いた。AdSCはメーカー品(ロンザ社、PT-5006)を購入して使用した。

0102

<細胞の拡大培養>
凍結細胞を37℃の恒温水槽で溶解させ、5%FBS、1%抗生物質を含んだKBMADSC-2培地(基礎培地、コージンバイオ製)9mLに加えた。次いで、210×gで5分間の遠心処理を施した後、上清を除去して10mLの基礎培地に分散させた。培養フラスコ培養面積225cm2)に1.0×106細胞/30mL培地/ディッシュとなるように加えたものを2本用意し、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で培養(拡大培養)を行った。

0103

<脱泡処理>
別途、培養容器の脱泡処理を行った。具体的には、容器に1mL程度のPBSを加えてピペッティングの作業を行い、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で15分間静置した。次いで、再びピペッティングの作業を行った後でPBSをアスピレーターで吸引し、1%抗生物質を含んだKBMADSC-2培地を0.2mL加えて、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で1晩静置した。

0104

<スフェロイドの作製>
培養ディッシュから培地を除去し、細胞剥離液アキュターゼTM(プロモセル製)を5mL添加した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で5分程度保持して細胞を剥離した。次いで、剥離液を回収し、PBSを10mL加えて洗浄してチューブへ移した。210×gで5分間遠心処理を施し、4mLの1%抗生物質を含んだKBMADSC-2培地で懸濁させて、細胞数カウントを行った。その後、1.0×106細胞/mLの濃度となるように調製した。

0105

37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で1晩静置して脱泡処理を行った培養容器の培地を除去し、500細胞/穴となるように細胞を播種した。安全キャビネット内で15分静置した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて4時間静置した。次いで、追加で1%抗生物質を含んだKBMADSC-2培地を加え、再び37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて3日間培養した。

0106

比較例1
実施例1で用いた細胞培養容器に代えて、ELPLASIA(クラレ製)を用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、スフェロイドを作製した。当該スフェロイドはウェル底面に接着しておらずウェル底面に非接着の状態で沈んでいた。

0107

比較例2
実施例1で用いた細胞培養容器に代えて、細胞培養用の24ウェルプレートを用い、各ウェルに1%抗生物質を含んだKBMADSC-2培地を加え、AdSCを播種して37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて3日間培養した。

0108

試験例1タンパク質アレイの実施
培養3日後に培養上清を回収した。この上清中に含まれるタンパク質をRayBio human antibody array kits(L-507、L493、RayBiotech社)で評価した。測定はコスモ・バイオ社にて実施した。得られた値をプロトコルに従って陽性対象の値で正規化し、更に、細胞数によっても正規化した(/1×105細胞)。また、プロトコルに従って、サンプル間の数値の差が1.5倍以上、又は0.65倍以下のときにそのサンプル間で有意差があるものとした。

0109

実施例1で作製したスフェロイド中の未分化マーカーであるNanog、Oct 3/4、SSEA-4、SOX2量は、比較例1で作製した非接着型のスフェロイドや比較例2で作製した2次元培養した細胞に比べて優位に多いことが明らかとなった(図8)。具体的には、実施例1で作製したスフェロイドは比較例1で作製したスフェロイドよりNanog、Oct 3/4、SSEA-4、SOX2量がそれぞれ2.7、2.8、1.8、4.7倍多いことが分かった(表1)。また、実施例1で作製したスフェロイドは比較例2で作製した2次元細胞よりNanog、Oct 3/4、SSEA-4、SOX2量がそれぞれ3.0、2.0、1.8、2.4倍多いことが分かった(表2)。

0110

0111

0112

試験例2インテグリンαvの定量
細胞は、実施例1で用いた細胞と同じものを使用した。

0113

<細胞の準備>
凍結細胞を37℃の恒温槽で溶解させ、5%FBS及び1%抗生物質を含むKBMADSC-2培地(基礎培地、コージンバイオ製)9mLに加えた。次いで、210×gで5分間遠心を施した後、上清を除去して、1mLの基礎培地に分散させて細胞懸濁液を得た。
800mL容量の細胞培養用フィルターキャップ付フラスコ(住友ベークライト製)に基礎培地を加え、そこに細胞数が1.0×106細胞/フラスコとなる量の細胞懸濁液を加えて全量30mLに調整した。フィルターキャップ付フラスコを37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で細胞の培養(拡大培養)を行った。細胞培養後、フラスコから培地を除去し、細胞剥離液アキュターゼTM(プロモセル製)5mLを添加してフラスコを室温で5分程度静置して、細胞を剥離した。次いで、細胞を含む剥離液を回収し、基礎培地を用いて全量が15mLとなるようにチューブへ移した。チューブを210×gで5分間遠心を施した後、上清を除去して、残った細胞に1%抗生物質を含むKBM ADSC-2培地1mLを加え懸濁した。細胞の数を数えて、細胞懸濁液の濃度を1×106細胞/mLに調整した。

0114

<脱泡処理>
別途、培地を含む細胞培養容器の脱泡処理を行った。具体的には、細胞培養容器に1mL程度のPBSを加えてピペッティングの作業を行い、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で15分間静置した。次いで、PBS内に新たに生じた泡をピペッティングで取り除いた後、細胞培養容器に1%抗生物質を含んだKBMADSC-2培地0.2mLを加えて、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で細胞培養容器を一晩静置した。

0115

実施例2
細胞培養容器として、実施例1で用いた細胞培養用器と同じものを使用した。

0116

脱泡処理後の細胞培養容器から培地を除去して、500細胞/穴の量の細胞を播種した。細胞培養容器を安全キャビネット内で15分間静置した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で4時間静置した。次いで、細胞培養容器に1%抗生物質を含むKBMADSC-2培地を加えて、再び37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて3日間培養した。

0117

細胞培養容器内に形成されたスフェロイドを培養3日目にピペッティングで回収した。ELISAキットアブカム社)に付属するcell extraction bufferをスフェロイドに加えて20分間氷冷して細胞抽出液を得た。次いで、細胞抽出液を12,000×gで20分間遠心し、上清を回収した。上清中に含まれるインテグリンαvをELISA法で定量(pg/1×105 cells)した(n=3)。

0118

比較例3
細胞培養容器として、三次元培養容器ELPLASIA(クラレ製)を用いたこと以外は、実施例2と同様の手法により、スフェロイドの形成及びインテグリンαvの定量を行った。ELPLASIAは、細胞の浮遊培養が可能な細胞培養容器であり、ポリスチレンからなるウェル(深さ:約400μm、開口部の形状:直径約500μmの円形、底面の形状:U字底)を備える。

0119

比較例4
細胞培養容器として、二次元細胞培養用の24ウェルプレート(開口部の形状:直径約1.6cmの円形、底面の形状:平底状、コーニング製)を用い、細胞を1×105細胞/穴の量で播種した。細胞培養容器を安全キャビネット内で15分間静置した後、37℃の5%(v/v)CO2インキュベーター内で4時間静置した。次いで、細胞培養容器に1%抗生物質を含むKBMADSC-2培地を加えて、再び37℃の5%(v/v)CO2インキュベーターに入れて3日間培養した。培養3日目にアキュターゼTMを0.5mL加えて室温で5分間静置し、ピペッティングで細胞を回収した後、1.5mLチューブ(アズワン製)に回収して510×gで5分間遠心分離した後、上清を捨てた。その後、実施例2と同様の手法により、インテグリンαvの定量を行った。

0120

<結果>
インテグリンαvの発現量を図9に示す。値は平均値±標準偏差(n=3)であり、pはp値(有意確率)であり、n.s.は有意でない(not significant)ことを指す。実施例2のスフェロイドのインテグリンαvの発現量は、比較例3及び比較例4と比べて優位に高いことが明らかとなった(図9)。具体的には、実施例2におけるインテグリンαvの発現量は、比較例3における発現量より2.8倍高く、比較例4における発現量より1.9倍高かった。

実施例

0121

試験例3細胞接着分子の蛍光観察
本発明の細胞培養容器を用いて培養したヒト脂肪由来幹細胞を蛍光顕微鏡にて観察した写真を図10に示した。インテグリンの裏打ちタンパク質のうちの一つであるVinculinが、細胞内の細胞骨格近傍に顕著に発現していることから、細胞膜表面と、細胞が接着している細胞培養用シートの底面近傍とにインテグリンが高発現していることが明らかとなった。

0122

本発明により、未分化能を維持したヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドを簡便に調製することができ、かつ、細胞培養の作業自体も効率的に行なうことが可能となるので、例えば、再生医療などの分野に好適に用いることができる。特に、インテグリンを発現するヒト脂肪由来幹細胞のスフェロイドの場合、未分化性を高いまま維持できると共に、創傷部位への接着性が高く、細胞死を抑制することができるインテグリンを含有する未分化細胞のスフェロイドを簡便に調製することができ、かつ細胞培養の作業自体も効率的に行なうことが可能となるので、例えば、再生医療の分野において高い治療効果が期待できる。

0123

1細胞培養用シート
11 凹部
11a 凹部の内側面
11b 凹部の底面
12シート表面
21細胞非接着性を示す物質
22細胞接着性を示す物質
23接着層

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