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技術 圧電組成物、圧電素子、圧電デバイス、圧電トランス、超音波モータ、超音波発生素子およびフィルタ素子

出願人 TDK株式会社
発明者 加藤浩輝秋山由美
出願日 2019年2月14日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-024494
公開日 2020年8月31日 (2ヶ月経過) 公開番号 2020-136342
状態 未査定
技術分野 圧電、電歪、磁歪装置 超音波変換器 重金属無機化合物(II) 圧電・機械振動子,遅延・フィルタ回路 機械的振動の発生装置
主要キーワード ゲルマニウム単体 高濃度相 サーモグラフィカメラ 観測強度 電極入力 放熱速度 赤外放射温度計 素子発熱
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年8月31日)のものです。
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図面 (4)

課題

自己発熱が抑制された圧電組成物と、その圧電組成物を備える圧電素子と、当該圧電素子を有する圧電デバイスとを提供すること。

解決手段

アルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、バナジウムニオブおよびタンタルからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、銅または銅およびゲルマニウムと、酸素と、を含む圧電組成物であって、圧電組成物は、主相と、主相よりも銅の含有割合が高いCu高濃度相と、を有し、Cu高濃度相における酸素の含有割合をOg、銅の含有割合をCugとしたときに、OgおよびCugが、51≦Og≦60および2.0≦Cug≦15である関係を満足する圧電組成物である。

概要

背景

圧電組成物は、結晶内の電荷偏りに起因する自発分極に基づき、外部から応力を受けることにより表面に電荷が発生する効果(圧電効果)と、外部から電界印加されることにより歪みを発生する効果(逆圧電効果)と、を有している。

このような機械エネルギー電気エネルギーとを相互に変換できる圧電組成物を適用した圧電素子は各種分野で幅広く用いられている。たとえば、圧電組成物は優れた応答性を有することから、交流電界を印加することで、圧電組成物自体または圧電組成物と接合している弾性体励振して共振を起こさせることが可能であり、圧電トランス超音波モータなどとして利用されている。

また、逆圧電効果を利用する圧電素子としてのアクチュエータは、印加電圧に比例して微少変位が精度よく得られ、かつ応答速度が速いため、光学系部品駆動用素子、HDDヘッド駆動素子インクジェットプリンタのヘッド駆動用素子、燃料噴射弁駆動用素子等に用いられている。さらに、圧電効果を利用して、微少な力や変形量を読み取るためのセンサとしても利用されている。

圧電組成物としては、鉛系圧電組成物が多く使用されている。しかしながら、鉛系圧電組成物は、融点の低い酸化鉛(PbO)が60〜70重量%程度含まれており、焼成時に酸化鉛が揮発しやすい。そのため、環境負荷の観点から、圧電組成物の無鉛化が極めて重要な課題となっている。

鉛を含有せず、高い圧電特性を有する圧電組成物として、ニオブ酸アルカリ金属系化合物が例示される。たとえば、特許文献1は、タングステンを必須とするニオブ酸カリウム系の圧電体を開示している。

一方、近年のIoTの急速な普及に伴い、小型の電子機器に搭載される圧電素子の需要が急激に高まっている。小型の電子機器は限られたエネルギーで駆動する必要があるため、小型の電子機器に搭載される圧電素子には、圧電特性が高いことと低エネルギーで駆動が可能なこととが求められる。圧電素子を低エネルギーで駆動するためには、入力するエネルギーに対して出力されるエネルギーを最大化する必要がある。したがって、圧電素子において消費されるエネルギーを少なくすることが重要である。具体的には、圧電素子自体振動によるエネルギー損失自己発熱)を抑える必要がある。

また、エネルギー損失が大きい圧電組成物は、駆動中に自己発熱による熱暴走を引き起こす可能性があるため共振周波数近傍での駆動が困難となる。そのため、適用可能なアプリケーションが制限される。

概要

自己発熱が抑制された圧電組成物と、その圧電組成物を備える圧電素子と、当該圧電素子を有する圧電デバイスとを提供すること。アルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、バナジウムニオブおよびタンタルからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、銅または銅およびゲルマニウムと、酸素と、を含む圧電組成物であって、圧電組成物は、主相と、主相よりも銅の含有割合が高いCu高濃度相と、を有し、Cu高濃度相における酸素の含有割合をOg、銅の含有割合をCugとしたときに、OgおよびCugが、51≦Og≦60および2.0≦Cug≦15である関係を満足する圧電組成物である。

目的

本発明は、このような実状に鑑みてなされ、自己発熱が抑制された圧電組成物と、その圧電組成物を備える圧電素子と、当該圧電素子を有する圧電デバイスとを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

アルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、バナジウムニオブおよびタンタルからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、銅または銅およびゲルマニウムと、酸素と、を含む圧電組成物であって、前記圧電組成物は、主相と、前記主相よりも銅の含有割合が高いCu高濃度相と、を有し、前記Cu高濃度相における酸素の含有割合をOg、銅の含有割合をCugとしたときに、前記Ogおよび前記Cugが、51≦Og≦60および2.0≦Cug≦15である関係を満足する圧電組成物。

請求項2

前記圧電組成物中における前記銅のCV値が40以上300以下である請求項1に記載の圧電組成物。

請求項3

リチウムナトリウム、バナジウムおよびタンタルが実質的に含まれない請求項1または2に記載の圧電組成物。

請求項4

請求項1から3のいずれかに記載の圧電組成物と電極とを有する圧電素子

請求項5

請求項4に記載の圧電素子を有する圧電デバイス

請求項6

請求項4に記載の圧電素子を有する圧電トランス

請求項7

請求項4に記載の圧電素子を備える振動体と、振動体と接触する移動体とを有する超音波モータ

請求項8

請求項4に記載の圧電素子が振動板に固定された振動体を有する超音波発生素子

請求項9

請求項4に記載の圧電素子を有するフィルタ素子

技術分野

0001

本発明は、圧電組成物、当該圧電組成物を有する圧電素子、および当該圧電素子を有する圧電デバイス圧電トランス超音波モータ超音波発生素子およびフィルタ素子等)に関する。

背景技術

0002

圧電組成物は、結晶内の電荷偏りに起因する自発分極に基づき、外部から応力を受けることにより表面に電荷が発生する効果(圧電効果)と、外部から電界印加されることにより歪みを発生する効果(逆圧電効果)と、を有している。

0003

このような機械エネルギー電気エネルギーとを相互に変換できる圧電組成物を適用した圧電素子は各種分野で幅広く用いられている。たとえば、圧電組成物は優れた応答性を有することから、交流電界を印加することで、圧電組成物自体または圧電組成物と接合している弾性体励振して共振を起こさせることが可能であり、圧電トランス、超音波モータなどとして利用されている。

0004

また、逆圧電効果を利用する圧電素子としてのアクチュエータは、印加電圧に比例して微少変位が精度よく得られ、かつ応答速度が速いため、光学系部品駆動用素子、HDDヘッド駆動素子インクジェットプリンタのヘッド駆動用素子、燃料噴射弁駆動用素子等に用いられている。さらに、圧電効果を利用して、微少な力や変形量を読み取るためのセンサとしても利用されている。

0005

圧電組成物としては、鉛系圧電組成物が多く使用されている。しかしながら、鉛系圧電組成物は、融点の低い酸化鉛(PbO)が60〜70重量%程度含まれており、焼成時に酸化鉛が揮発しやすい。そのため、環境負荷の観点から、圧電組成物の無鉛化が極めて重要な課題となっている。

0006

鉛を含有せず、高い圧電特性を有する圧電組成物として、ニオブ酸アルカリ金属系化合物が例示される。たとえば、特許文献1は、タングステンを必須とするニオブ酸カリウム系の圧電体を開示している。

0007

一方、近年のIoTの急速な普及に伴い、小型の電子機器に搭載される圧電素子の需要が急激に高まっている。小型の電子機器は限られたエネルギーで駆動する必要があるため、小型の電子機器に搭載される圧電素子には、圧電特性が高いことと低エネルギーで駆動が可能なこととが求められる。圧電素子を低エネルギーで駆動するためには、入力するエネルギーに対して出力されるエネルギーを最大化する必要がある。したがって、圧電素子において消費されるエネルギーを少なくすることが重要である。具体的には、圧電素子自体振動によるエネルギー損失自己発熱)を抑える必要がある。

0008

また、エネルギー損失が大きい圧電組成物は、駆動中に自己発熱による熱暴走を引き起こす可能性があるため共振周波数近傍での駆動が困難となる。そのため、適用可能なアプリケーションが制限される。

先行技術

0009

特開2010−215423号公報

発明が解決しようとする課題

0010

特許文献1では、比誘電率を高めることにより、大きな変位量を得ている。しかしながら、圧電組成物の比誘電率が高くなると、自己発熱が大きくなる傾向にある。すなわち、特許文献1に記載された圧電組成物は、依然として入力電圧に対して圧電組成物自体が消費するエネルギーが大きい。したがって、特許文献1に記載された圧電組成物を有する圧電素子は、低エネルギーで駆動することができないという問題があった。

0011

本発明は、このような実状に鑑みてなされ、自己発熱が抑制された圧電組成物と、その圧電組成物を備える圧電素子と、当該圧電素子を有する圧電デバイスとを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

上記目的を達成するため、本発明の態様は、
[1]アルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、バナジウムニオブおよびタンタルからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、銅または銅およびゲルマニウムと、酸素と、を含む圧電組成物であって、
圧電組成物は、主相と、主相よりも銅の含有割合が高いCu高濃度相と、を有し、
Cu高濃度相における酸素の含有割合をOg、銅の含有割合をCugとしたときに、OgおよびCugが、51≦Og≦60および2.0≦Cug≦15である関係を満足する圧電組成物である。

0013

[2]圧電組成物中における銅のCV値が40以上300以下である[1]に記載の圧電組成物である。

0014

[3]リチウムナトリウム、バナジウムおよびタンタルが実質的に含まれない[1]または[2]に記載の圧電組成物である。

0015

[4][1]から[3]のいずれかに記載の圧電組成物と電極とを有する圧電素子である。

0016

[5][4]に記載の圧電素子を有する圧電デバイスである。

0017

[6][4]に記載の圧電素子を有する圧電トランスである。
[7][4]に記載の圧電素子を備える振動体と、振動体と接触する移動体とを有する超音波モータである。
[8][4]に記載の圧電素子が振動板に固定された振動体を有する超音波発生素子である。
[9][4]に記載の圧電素子を有するフィルタ素子である。

発明の効果

0018

本発明によれば、自己発熱が抑制された圧電組成物と、その圧電組成物を備える圧電素子と、当該圧電素子を有する圧電デバイスとを提供することができる。

図面の簡単な説明

0019

図1は、本実施形態に係る圧電素子の一例である圧電トランスを示す模式的な斜視図である。
図2は、図1に示すII−II線に沿った圧電トランスの模式的な断面図である。
図3は、本発明の実施例に係る試料X線回折チャートである。

0020

以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.圧電素子
1.1圧電トランス
1.2圧電組成物
1.2.1 主相
1.2.2 Cu高濃度相
2.圧電素子の製造方法
3.本実施形態における効果
4.変形例

0021

(1.圧電素子)
本実施形態に係る圧電素子は、本実施形態に係る圧電組成物と電極とを有している。圧電組成物の詳細は後述する。本実施形態に係る圧電素子は自己発熱が抑制されているので、種々の圧電デバイスに適用可能である。以下では、本実施形態に係る圧電素子が適用された圧電デバイスとして、圧電トランスについて説明する。

0022

(1.1圧電トランス)
圧電トランスは、圧電効果を利用して、入力された交流電圧変圧して出力する変圧器である。圧電トランスの例を図1に示す。図1に示す圧電トランス1は、平面形状が長方形である直方体形状を有する素子本体10と、素子本体10の主面である一対の対向面10a、10bに形成された一対の入力電極20a、20bとを備えている。

0023

本実施形態では、素子本体10は、長手方向の長さの中点Cを境界にして、電圧入力部11と、電圧出力部12とに区分される。電圧入力部11と、電圧出力部12とは一体化されている。

0024

図2に示すように、電圧入力部11は、本実施形態に係る圧電組成物からなる圧電体層30と内部電極20a’および20b’とが交互に積層された積層体である。すなわち、圧電トランス1は、積層型圧電トランスである。また、圧電体層30の1層あたりの厚み(層間厚み)は、所望の特性、用途等に応じて任意に設定すればよい。本実施形態では、層間厚みは50〜140μmであることが好ましい。

0025

内部電極20a’および20b’は、それぞれ、入力電極20aおよび20bと同じ形状を有している。積層方向から見た場合、入力電極20aと内部電極20a’とは重複するよう配置され、入力電極20bと内部電極20b’とは重複するよう配置される。また、内部電極20a’と内部電極20b’とは交互に積層されている。

0026

図1に示すように、内部電極20a’は引出部21a’を介して、素子本体10の端面10cに引き出され、端面10c上に露出している。内部電極20b’は引出部21b’を介して、素子本体10の端面10cに引き出され、端面10c上に露出している。

0027

入力電極20aと引出部21a’とは、接続電極20cにより電気的に接続されており、入力電極20bと引出部21b’とは、接続電極20dにより電気的に接続されている。すなわち、入力電極20aと内部電極20a’とは電気的に接続されており、入力電極20bと内部電極20b’とは電気的に接続されている。

0028

本実施形態では、接続電極20cおよび接続電極20dは、素子本体10の短手方向に沿って、短手方向の長さの中点を通る直線に対して線対称に配置されている。

0029

電極入力部11の構成は、図1に示す構成に制限されず、入力電極20aと入力電極20bとが短絡しないように、入力電極20aと内部電極20a’とが電気的に接続され、入力電極20bと内部電極20b’とが電気的に接続されていればよい。

0030

電圧出力部12は、本実施形態に係る圧電組成物から構成されている。また、電圧出力部12の主面および内部には、電極は形成されていない。本実施形態では、電圧出力部12において、素子本体10の端面10cと対向する面、すなわち、素子本体10の端面10dに、出力電極20eが形成されている。

0031

電極20a〜20eに含有される導電材は、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。本実施形態では、金(Au)、銀(Ag)およびパラジウム(Pd)等が例示される。

0032

素子本体10は、図1では直方体形状を有しているが、素子本体10の形状は、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。また、素子本体10の寸法も、所望の特性、用途等に応じて任意に設定することができる。

0033

素子本体10において、電圧入力部11は、電圧入力部11の厚み方向に分極され、電圧出力部12は、素子本体10の長手方向に分極されている。

0034

入力電極20aおよび20bに所定の周波数で交流電圧を印加すると、まず、電圧入力部11において、逆圧電効果により電気エネルギーが機械エネルギーに変換され、電圧入力部11が振動する。電圧入力部11の振動により、電圧入力部11と一体化している電圧出力部12が励振され、電圧出力部12も振動する。その結果、電圧出力部12において、圧電効果により、機械エネルギーが電気エネルギーに変換され、出力電極20eから出力される。

0035

本実施形態では、電圧入力部11が、圧電組成物が積層された構成を有しているので、入力電極間の静電容量が大きくなる。したがって、入力電圧に対する出力電圧の比である昇圧比が大きくなる。

0036

(1.2圧電組成物)
本実施形態に係る圧電組成物は、アルカリ金属元素から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素と、銅(Cu)または銅およびゲルマニウム(Ge)と、酸素(O)と、を含んでいる。本実施形態では、上述した金属元素は、主に複合酸化物または酸化物として、圧電組成物に含有されている。また、上述した元素の含有割合の合計は、圧電組成物100原子%中、99原子%以上である。

0037

本実施形態では、アルカリ金属元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)であることが好ましい。

0038

また、上記の圧電組成物は、結晶相として、主相と、Cu高濃度相と、を有している。

0039

(1.2.1 主相)
主相は、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物から構成されている。ペロブスカイト構造を有する複合酸化物は、通常、一般式ABO3で表される。

0040

ペロブスカイト構造において、イオン半径の大きい元素、たとえば、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素はABO3のAサイトを占める傾向にあり、イオン半径の小さい元素、たとえば、遷移金属元素はABO3のBサイトを占める傾向にある。また、Bサイト元素と酸素とから構成されるBO6酸素八面体が互いの頂点共有した三次元ネットワークを構成しており、このネットワークの空隙にAサイト元素が充填されることによりペロブスカイト構造が形成される。

0041

本実施形態では、主として、Aサイト元素がアルカリ金属元素であり、Bサイト元素がバナジウム、ニオブおよびタンタルからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素である。主相は、主として、上記の元素から構成されているが、銅または銅およびゲルマニウムが主相に固溶してもよい。

0042

(1.2.2 Cu高濃度相)
Cu高濃度相は、主相よりも銅の含有割合が高い相である。本実施形態では、Cu高濃度相100原子%における酸素の含有割合をOg原子%としたときに、Ogは51≦Og≦60である関係を満足する。また、Cu高濃度相100原子%における銅の含有割合をCug原子%としたときに、Cugは2.0≦Cug≦15である関係を満足する。なお、主相100原子%における銅の含有割合は、通常、2.0原子%よりも小さい。

0043

上記の圧電組成物に銅が含有されることにより、圧電組成物の機械的強度および圧電特性が向上する。しかしながら、銅が主相とは異なる相に含有される場合、圧電効果および逆圧電効果により、銅が含まれる相は主相と共に振動する。このとき、銅が含まれる相の固有振動位相と、主相の固有振動の位相とが大きくずれている場合、銅が含まれる相および主相の固有振動を互いに弱めてしまう。圧電体内部に蓄えられた弾性的エネルギーが固有振動を弱めるために消費され、熱になる。その結果、圧電組成物中を振動が伝搬するたびに、熱が発生し、圧電組成物を有する圧電素子の温度が上昇してしまう。すなわち、圧電素子の効率が悪化し、自己発熱が大きくなる。

0044

このような位相のずれを抑制するために、本実施形態では、Cu高濃度相は、ペロブスカイト構造またはペロブスカイト構造に類似の構造を有している。

0045

上述したように、主相はペロブスカイト構造を有している。したがって、Cu高濃度相の構造をペロブスカイト構造またはペロブスカイト構造に類似した構造とすることにより、電圧印加に伴う主相の固有振動の位相とCu高濃度相の固有振動の位相とのずれを小さくすることができる。その結果、圧電組成物を有する圧電素子の発熱を低減することができる。

0046

Cu高濃度相が、ペロブスカイト構造またはペロブスカイト構造に類似の構造を有しているか否かは、上述したCu高濃度相における酸素の含有割合により判断する。

0047

ペロブスカイト構造を有する複合酸化物は一般式ABO3で表される。ABO3は5原子で構成され、その内酸素が3原子であるので、ABO3中に含まれる酸素の含有割合は60原子%である。したがって、Cu高濃度相における酸素の含有割合が60原子%に近いほど、Cu高濃度相がペロブスカイト構造またはペロブスカイト構造に類似の構造を有していることになる。一方、Cu高濃度相における酸素の含有割合が60原子%を大きく下回ると、Cu高濃度相はペロブスカイト構造とは異なる構造に転移しやすい。たとえば、Cu高濃度相における酸素の含有割合が50原子%である場合には、Cu高濃度相は、CuOと同じ構造または当該構造に類似の構造を有する可能性が高い。また、たとえば、Cu高濃度相における酸素の含有割合が33原子%である場合には、Cu高濃度相は、Cu2Oと同じ構造または当該構造に類似の構造を有する可能性が高い。

0048

上述したように、Cu高濃度相が、ペロブスカイト構造とは異なる構造を有している場合、圧電組成物を有する圧電素子の温度が上昇してしまう。そこで、本実施形態では、Cu高濃度相における酸素の含有割合の範囲を上記の範囲にしている。

0049

上述したように、Ogの上限値は理論上60原子%であるが、測定誤差を考慮すると、60原子%よりも高い値、たとえば、61原子%もOgの上限値に含まれる。

0050

また、Cugは4以上であることが好ましい。また、Cugは9以下であることが好ましい。

0051

Cu高濃度相における銅の含有割合が少なすぎる場合、圧電組成物の機械的強度および圧電特性の向上が不十分となる傾向にある。Cu高濃度相における銅の含有割合が多すぎる場合、Cu高濃度相がペロブスカイト構造とは異なる構造に転移しやすくなる傾向にある。

0052

Cu高濃度相における酸素の含有割合および銅の含有割合を測定する方法は、圧電組成物に含有される元素の濃度分布を定量できる方法であればよい。本実施形態では、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)分析により、焼成後の圧電組成物を切断した切断面に対して、EPMA装置を用いて特定の領域について面分析を行い、当該領域内の測定点における各元素の含有量(濃度)の情報を得る。

0053

得られた各元素の濃度の情報から、主相およびCu高濃度相を特定して、Cu高濃度相に相当する領域に含まれる元素の合計含有割合を100原子%とした場合の酸素の含有割合および銅の含有割合を算出すればよい。

0054

また、Cu高濃度相は、圧電組成物において、所定のバラツキを持って存在していることが好ましい。Cu高濃度相が局所的に存在しているよりも、所定のバラツキを持って存在している方が、圧電組成物の発熱を抑制することができる。

0055

本実施形態では、Cu高濃度相の所定のバラツキは、圧電組成物における銅濃度のCV値として表すことができる。銅濃度のCV値は、圧電組成物における銅濃度の標準偏差σと銅濃度の平均値Avとに基づき、下記の式から算出される。
CV値(%)=100×(σ/Av)

0056

本実施形態では、銅濃度のCV値が40以上300以下であることが好ましい。また、CV値は、55以上であることが好ましい。一方、CV値は、85以下であることが好ましい。

0057

銅濃度のCV値を算出する方法としては、圧電組成物における銅の濃度分布を測定可能な方法であればよい。本実施形態では、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)分析により、CV値は以下のようにして算出することができる。まず、焼成後の圧電組成物を切断した切断面に対して、EPMA装置を用いて特定の領域について面分析を行い、当該領域内の測定点における銅の含有量(濃度)の情報を得る。

0058

得られた銅濃度の情報から、当該領域内の各測定点における銅濃度の標準偏差σと銅濃度の平均値Avとを算出して、CV値を算出することができる。本実施形態では、面分析を行う倍率としては、250倍〜2000倍であることが好ましく、このような倍率において3視野以上面分析することが好ましい。

0059

また、本実施形態に係る圧電組成物は、ゲルマニウムを含有することが好ましい。ゲルマニウムを含有することにより、圧電組成物の潮解性が抑制され、高温高湿環境下においても本実施形態に係る圧電組成物は高い信頼性を発揮することができる。ゲルマニウムは、主相に含有されていてもよいし、Cu高濃度相に含有されていてもよいし、主相およびCu高濃度相とは異なる領域に含有されていてもよい。本実施形態では、ゲルマニウムは主相以外の相または領域に含有されていることが好ましい。

0060

上述したように、本実施形態に係る圧電組成物を有する圧電素子の自己発熱の原因の1つは、主相の固有振動の位相とCu高濃度相の固有振動の位相とのずれに起因する振動熱である。この振動熱は、圧電組成物の変位量が大きいほど大きくなる。

0061

一方、圧電組成物の静電容量が大きいほど、圧電組成物の変位量は大きくなる。したがって、振動熱を抑制するには、圧電組成物の静電容量を小さくすることも有効である。本実施形態に係る圧電組成物において、リチウムおよびナトリウムは、カリウムよりも圧電組成物の静電容量を大きくする傾向にある。また、バナジウムおよびタンタルは、ニオブよりも圧電組成物の静電容量を大きくする傾向にある。したがって、圧電素子の発熱を抑制する観点から、本実施形態に係る圧電組成物は、カリウムと、ニオブと、銅または銅およびゲルマニウムと、酸素とを含み、リチウム、ナトリウム、バナジウムおよびタンタルは、実質的に含まれないことが好ましい。

0062

なお、「実質的に含まれない」とは、リチウム、ナトリウム、バナジウムおよびタンタルの合計含有割合が、圧電組成物100原子%中、0.1原子%以下であることを意味する。

0063

本実施形態に係る圧電組成物は、上述した成分以外にその他の成分を含有してもよい。たとえば、上述したバナジウム、ニオブ、タンタルおよび銅を除く遷移金属元素(長周期型周期表における3族〜11族の元素)、アルカリ土類金属元素、長周期型周期表における12族元素および長周期型周期表における13族の金属元素の内の少なくとも1つを含有していてもよい。

0064

具体的には、希土類元素を除く遷移金属元素の例は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)である。希土類元素の例は、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)である。

0065

アルカリ土類金属元素の例は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)である。12族元素の例は、亜鉛(Zn)である。13族の金属元素の例は、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)である。

0066

これらの成分の含有割合は、圧電組成物100原子%中、0.1原子%以下であることが好ましい。

0067

なお、本実施形態にかかる圧電組成物は、不純物として鉛(Pb)を含んでいてもよいが、その含有割合は1質量%以下であることが好ましく、Pbの含有割合が測定限界以下であることがより好ましい。低公害化、対環境性および生態学的の観点から、焼成時におけるPbの揮発、または、本実施形態に係る圧電組成物を含む圧電素子を搭載する電子機器が市場流通廃棄された後における環境中へのPbの放出を最小限に抑制することができるためである。

0068

本実施形態に係る圧電組成物を構成する結晶相の平均結晶粒径は、圧電特性の観点から制御すればよく、本実施形態では、平均結晶粒径は、たとえば、0.5μm〜20μmであることが好ましい。

0069

(2.圧電素子の製造方法)
次に、圧電素子の製造方法の一例について以下に説明する。

0070

まず、圧電組成物の出発原料を準備する。本実施形態では、主相を構成する複合酸化物の出発原料として、アルカリ金属元素を含む化合物、バナジウム、ニオブおよびタンタルから選ばれる少なくとも1つの元素を含む化合物(以降、ニオブ等を含む化合物ともいう)を用いることができる。アルカリ金属元素を含む化合物としては、たとえば、炭酸塩炭酸水素化合物が例示される。ニオブ等を含む化合物としては、たとえば、酸化物が例示される。

0071

銅の出発原料としては、銅単体でもよいし、銅を含む化合物でもよい。本実施形態では、銅を含む酸化物であることが好ましい。また、ゲルマニウムの出発原料としては、銅と同様に、ゲルマニウム単体でもよいし、ゲルマニウムを含む化合物でもよい。本実施形態では、ゲルマニウムを含む酸化物であることが好ましい。

0072

準備した複合酸化物の出発原料を、所定の割合に量した後、5〜20時間混合を行う。混合する方法としては湿式混合でもよいし、乾式混合でもよい。湿式混合の場合、混合粉を乾燥する。湿式混合における溶媒としては、たとえば、水、エタノール等のアルコール、または、水とアルコールとの混合物が挙げられる。本実施形態では、湿式混合後に、スプレードライにより原料を乾燥することが好ましい。

0073

乾燥後の混合粉を仮焼して、仮焼粉を得る。本実施形態では、仮焼により形成される複合酸化物だけでなく、局所的に不安定相を含む仮焼粉を得ることが好ましい。そして、このような仮焼粉に対して、銅または銅およびゲルマニウムの出発原料を添加し、所定の形状に成形して得られる成形体を焼成する。その結果、焼成後の焼結体(圧電組成物)において、ペロブスカイト構造またはペロブスカイト構造に類似の構造を有するCu高濃度相が容易に生成される。したがって、上述したように、圧電組成物の自己発熱を抑制することができる。

0074

不安定相は、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物となるべき相であるが、仮焼時に、混合粉において、アルカリ金属元素を含む化合物と、ニオブ等を含む化合物と、の固相反応が十分にまたは均一に進行しなかった局所的な領域である。したがって、不安定相は、複合酸化物に近い組成を有するものの、複合酸化物とは異なる相であって、かつ比較的反応活性な相である。不安定相の形態は、固体液体液晶および液体が凝固した固体のいずれかであればよい。また、不安定相を構成する原子の配列は、必ずしも長距離秩序を有している必要はない。

0075

このような不安定相が、仮焼後の粉体(仮焼粉)に含まれることにより、仮焼粉に、圧電特性を高める所定の元素(たとえば、銅または銅およびゲルマニウム)の原料を添加し、所定の形状に成形して得られる成形体を焼成すると、不安定相と、仮焼粉に添加された添加物とが選択的に反応し、かつペロブスカイト構造を有する複合酸化物を形成する反応が進行する。その結果、ペロブスカイト構造またはペロブスカイト構造に類似する構造を有し、かつ添加物が当該構造に比較的多く固溶した相が形成される。本実施形態では、仮焼粉に、少なくとも銅を含む出発原料を添加するので、Cu高濃度相が形成される。

0076

不安定相を形成する手法としては、たとえば、アルカリ金属元素を含む化合物とニオブ等を含む化合物とを含む混合物をスプレードライにより顆粒化する手法、アルカリ金属元素を含む化合物とニオブ等を含む化合物との反応が進行しにくくなるように、混合粉において、アルカリ金属元素を含む化合物とニオブ等を含む化合物との距離を制御する手法が例示される。

0077

通常、主相を構成する複合酸化物の出発原料の混合粉を仮焼する目的は、複合酸化物を均一に形成することにある。すなわち、仮焼を行うことにより、アルカリ金属元素を含む化合物と、ニオブ等を含む化合物と、の固相反応を十分に進行させて、ペロブスカイト構造を有する複合酸化物の形成を促進する。さらに、混合粉を圧縮することにより、アルカリ金属元素を含む化合物と、ニオブ等を含む化合物と、の距離が強制的に短くなるので、これらの化合物がより反応しやすい環境が提供される。

0078

したがって、本実施形態では、通常行われる複合酸化物を均一に形成する手法とは逆の手法を用いて仮焼を行い、不安定相を含む仮焼粉を得ている。

0079

なお、仮焼粉に不安定相を形成しない場合、仮焼粉に対して、Cu高濃度相となる化合物を添加してもよいし、焼成時に溶解して、仮焼粉に添加された添加物と容易に反応する化合物を添加してもよい。

0080

本実施形態では、仮焼条件は、雰囲気大気中であり、仮焼温度が750〜1050℃であり、仮焼時間が1〜20時間であることが好ましい。

0081

得られた仮焼粉が凝集している場合には、ボールミル等を用いて、所定時間仮焼粉の粉砕を行い、粉砕粉とすることが好ましい。仮焼粉または粉砕粉に、所定の割合に秤量した銅の出発原料およびゲルマニウムの出発原料を添加して、ボールミル等を用いて、5〜20時間混合を行い、圧電組成物の混合粉を得る。混合する方法としては湿式混合でもよいし、乾式混合でもよい。湿式混合の場合、混合粉を乾燥して、圧電組成物の混合粉を得る。

0082

図1に示す圧電素子、すなわち、圧電トランス1を製造する方法としては、公知の方法を用いればよい。たとえば、図1に示す素子本体10となるグリーンチップを作製し、これを焼成して素子本体10を得た後、素子本体10に入力電極、出力電極および接続電極を印刷または転写して焼き付けることにより製造される。

0083

グリーンチップを製造する方法としては、たとえば、ペーストを用いた通常の印刷法シート法等が例示される。印刷法およびシート法では、上述した圧電組成物の原料粉と、バインダ溶剤中に溶解したビヒクルと、を混合し塗料化して得られるグリーンシート用ペーストを用いてグリーンシートを形成する。

0084

続いて、内部電極20a’に対応するパターンが形成された印刷用マスクを用いて、導電材と、バインダを溶剤中に溶解したビヒクルと、を混合し塗料化して得られる電極用ペーストをグリーンシート上に印刷する。同様に、内部電極20b’に対応するパターンが形成された印刷用マスクを用いて、電極用ペーストをグリーンシート上に印刷する。

0085

これらを交互に積層し、さらに、電極用ペーストが印刷されていないグリーンシートで挟み込み、熱プレスを行って、グリーンシート積層体を形成する。本実施形態では、熱プレスは、20〜100℃に加熱しながら、30〜300MPaの圧力で3〜15分間行うことが好ましい。得られたグリーンシート積層体を切断して、個片化したグリーンチップを得る。

0086

得られたグリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、保持温度を好ましくは400℃〜800℃、温度保持時間を好ましくは2時間〜8時間とする。

0087

続いて、脱バインダ処理後のグリーンチップを焼成する。焼成条件としては、保持温度を好ましくは950℃〜1060℃、温度保持時間を好ましくは2時間〜4時間、昇温および降温速度は、好ましくは50℃/時間〜300℃/時間程度とし、雰囲気を好ましくは酸素含有雰囲気とする。

0088

得られた焼結体としての素子本体を必要に応じて研磨し、電極用ペーストを塗布し焼き付けて入力電極、出力電極および接続電極を形成する。電極を形成する方法は特に制限されず、たとえば、蒸着スパッタリングで電極を形成してもよい。

0089

電極を形成した素子本体を所定の温度のオイル中で2kV/mm〜5kV/mmの電界を5分間〜1時間程度印加して分極処理する。電圧入力部に対しては、内部電極の積層方向に分極処理し、電圧出力部に対しては、素子本体の長手方向に分極処理する。分極処理後に、電圧入力部においては自発分極が内部電極の積層方向に揃えられ、電圧出力部においては自発分極が素子本体の長手方向に揃えられた圧電トランスが得られる。

0090

(3.本実施形態における効果)
通常、ニオブ酸系圧電組成物を製造する場合、熱処理により、酸化物同士の固相反応を促進して主相である複合酸化物を形成する。したがって、固相反応を加速させるために、たとえば、熱処理前に、酸化物の混合粉の分散性を高める操作、混合粉を圧縮する操作が行われる。その結果、固相反応が十分に進行し、熱処理後に、均一な複合酸化物が得られるので、主相以外の相はほとんど生成しない。

0091

ところが、このようにして得られた複合酸化物に圧電特性を高める添加物を添加して、さらに熱処理を行った場合、複合酸化物が安定であるため、添加物は主相にほとんど固溶しない。そのため、添加物が主相とは異なる構造を維持した相として含まれる圧電組成物が得られる。

0092

このような圧電組成物は、上述したように、主相の構造と、添加物相の構造とが異なるので、振動損失が大きくなり発熱しやすい。

0093

そこで、本実施形態では、まず、複合酸化物を形成する固相反応を制御して、複合酸化物の形成が不十分な相を局所的に生成する。そして、当該相の反応を十分に進行させ主相を形成する際に、当該相と添加物とを反応させることにより、当該相が添加物を取り込みながら主相の構造または主相の構造に類似の構造を有する相に変化する。

0094

その結果、得られる圧電組成物は、主相と、主相よりも添加物の含有割合が高い相と、を有しているが、主相よりも添加物の含有割合が高い相の構造が、主相の構造と同じまたは類似するので、圧電組成物の自己発熱を抑制することができる。

0095

さらに、圧電組成物中において、主相よりも添加物の含有割合が高い相が所定のバラツキで存在することにより、圧電組成物全体として、自己発熱を抑制することができる。

0096

また、圧電組成物の振動損失は、圧電組成物の変位量に比例する。一方、圧電組成物の変位量は、圧電組成物の静電容量に比例する。そこで、圧電組成物の静電容量を低下させるべく、圧電組成物に含まれる元素種を上記の元素に限定することが好ましい。

0097

圧電組成物の変位量は、重要な圧電特性であるが、圧電組成物の変位に伴う振動熱が大きくなると、素子自体が発熱する。特に共振周波数付近連続駆動させるような圧電デバイスの場合、放熱速度より素子発熱速度が上回ると駆動中に素子自体に断続的な蓄熱が生じ、圧電素子の熱暴走を引き起こす。このような圧電素子は信頼性が低く、変位量が大きくても圧電デバイスには適用できない。

0098

したがって、圧電デバイスに適用する圧電組成物としては、本実施形態に係る圧電組成物のような振動熱の小さい高効率な圧電組成物が好ましい。

0099

(4.変形例)
上述した実施形態では、圧電素子が適用された圧電デバイスとして圧電トランスについて説明したが、圧電トランス以外の圧電デバイスであってもよい。たとえば、超音波モータ、振動装置音響装置、超音波発生素子、フィルタ素子が例示される。

0100

超音波モータは、上述した圧電素子を備える振動体と、振動体と接触する移動体とを有している。このような超音波モータは、たとえば、撮像機器のような光学機器が備える駆動部として用いられる。

0101

振動装置は、上述した圧電素子が振動板に固定された振動体を有している。また、塵埃除去装置は、上記の振動装置を振動部として有している。

0102

音響装置は、上述した圧電素子が振動板に固定された振動体を有している。

0103

超音波発生素子は、上述した圧電素子が振動板に固定された振動体を有している。

0104

フィルタ素子は、上述した圧電素子を有している。

0105

以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。

0106

以下、実施例及び比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0107

まず、圧電組成物の出発原料として、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、酸化バナジウム(V2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化銅(CuO)および酸化ゲルマニウム(GeO2)の粉末を準備した。

0108

準備した出発原料を、焼成後の圧電組成物(焼結体)において、主相を構成する複合酸化物が、ペロブスカイト構造を有し、主として、Li、NaおよびKから選ばれる少なくとも1つをAサイト元素として含有し、V、NbおよびTaから選ばれる少なくとも1つがBサイト元素として含有するように秤量した。

0109

秤量したLi2CO3、NaHCO3、KHCO3、V2O5、Nb2O5、Ta2O5の各粉末を、水と共にボールミルにより16時間混合したのちスプレードライヤーを用いて乾燥して混合粉を得た。得られた混合粉をプレス成形することなく、粉末の状態で、1000℃−4時間の条件で仮焼し複合酸化物の仮焼粉を得た。続いて、この仮焼粉をボールミルにより16時間粉砕し、粉砕粉を得た。

0110

得られた粉砕粉に対し、秤量したCuOおよびGeO2の各粉末を添加して、ボールミルにより16時間混合したのち120℃において乾燥して圧電組成物の原料粉を得た。

0111

得られた圧電組成物の原料粉と、固形分で8質量%のアクリル系バインダと、0.5質量%の分散剤とを配合したビヒクルと、を混合し塗料化して、グリーンシート用ペーストを得た。得られたグリーンシート用ペーストを用いて圧電組成物のグリーンシートを形成した。

0112

内部電極の形状に対応するパターンを形成した印刷用マスクを用いて、形成したグリーンシート上にAg−Pd電極用ペースト(Ag/Pd=70/30)を印刷し、内部電極パターンを形成して乾燥した。

0113

得られたグリーンシートを交互に積層し、さらに、内部電極パターンが形成されていないグリーンシートで挟み込んで、100℃に加熱しながら35MPaで5分間熱プレスを行い、グリーンシート積層体を得た。

0114

グリーンシート積層体をダイシングソーにより所定のサイズに切断し、グリーンチップを得た。得られたグリーンチップに対して、550℃、2時間の条件で脱バインダ処理を行った。脱バインダ処理後のグリーンチップを、大気雰囲気下で1050℃、2時間の条件で焼成し、焼結体(素子本体)を得た。得られた素子本体のサイズは、長さ32mm、幅6mm、厚み1.8mmであった。

0115

得られた素子本体を研磨して、銀ペーストを印刷後、800℃にて焼き付けを実施し入力電極、出力電極および接続電極を形成した。150℃のシリコンオイル中で入力電極間に3kV/mmの電界を5分間印加し、電圧入力部の分極処理を行った。続いて、150℃のシリコンオイル中で入力電極と出力電極との間に3kV/mmの電界を5分間印加し、電圧出力部の分極処理を行い、積層圧電素子の試料(実施例1〜12および比較例1〜3)を得た。

0116

得られた試料を積層方向に沿って切断し、圧電組成物の切断面に対して面分析を行った。まず、EPMA装置(JXA−8500:日本電子製)を用いて、51.2μm×51.2μm視野について、元素マッピングを行い、主相とCu高濃度相とを特定した。

0117

続いて、Cu高濃度相に相当する領域に含有される元素の含有割合の合計を100原子%とした時の酸素の含有割合および銅の含有割合を算出した。結果を表1に示す。

0118

次に、マッピング画像において、ピクセル毎の銅の観測強度から、マッピング画像における銅の観測強度の標準偏差σと、平均値Avとを算出し、下記の式よりCV値を算出した。
CV値(%)=100(σ/Av)

0119

圧電素子の自己発熱は以下のようにして評価した。得られた試料の電圧入力部に駆動用ドライバを連結し、電圧出力部に50kΩの負荷抵抗を接続した。圧電素子の駆動周波数を共振周波数に保ちつつ、実用出力を2Wに調整しながら1分間共振駆動させた後、赤外放射温度計FLIR製赤外線C2サーモグラフィカメラ)を用いて圧電素子の直上から電圧入力部の温度を測定した。圧電素子駆動後の電圧入力部の温度と、圧電素子駆動前の電圧入力部の温度と、から、駆動による圧電素子の温度上昇を算出した。結果を表1に示す。

0120

また、実施例5の試料について、XRD(X-Ray Diffraction)測定を行った。XRD測定は、X線源としてCu−Kα線を用いたX線回折装置リガク社製SmartLab)を用いた。測定により得られたX線回折チャートを図3に示す。

0121

0122

表1より、Cu高濃度相における酸素の含有割合および銅の含有割合が上述した範囲内である場合には、圧電素子の発熱が抑制されることが確認できた。なお、表1に示す各元素の含有割合の数値には、定性分析に基づく半定量分析結果であるため、分析条件分析装置バックグラウンド等の影響に起因する誤差が含まれる場合がある。

実施例

0123

図3より、実施例5の試料はペロブスカイト構造を有する相で構成されていることが確認できた。すなわち、主相およびCu高濃度相はペロブスカイト構造を有していることが確認できた。

0124

本発明に係る圧電組成物は、エネルギーが入力されても自己発熱が抑制されるので、圧電素子を利用する全ての圧電デバイスに好適に適用できる。

0125

1…圧電トランス
10…素子本体
11…電圧入力部
20a、20b…入力電極
20a’、20b’…内部電極
20c、20d…接続電極
30…圧電体層
12…電圧出力部
20e… 出力電極

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