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課題

海域向け資材硫化水素抑制性能を簡便に評価できる方法を提供する。

解決手段

一定の乾燥質量を有する塊状及び/又は粉状の海域向け資材を準備すること、溶存硫化物濃度が一定(CS,0)の水溶液を準備すること、該水溶液に前記海域向け資材を一定時間接触させること、接触後の前記水溶液中の溶存硫化物濃度(CS,t)を測定すること、該溶存硫化物濃度(CS,t)の、接触前の濃度(CS,0)からの減少量(ΔCS=CS,0−CS,t)に基づいて、前記海域向け資材の硫化物抑制能力を算出すること、及び前記硫化物抑制能力が一定値以上となった海域向け資材を合格とすること、による硫化物抑制能力の判定試験を行う。

概要

背景

従来、海域環境改善藻場造成河川等の水質改善のための覆砂には、天然石天然砂が用いられてきたが、天然資源保全及び山の採掘の抑制等の観点から、代替材料として各種副産物の利用が検討されている。中でも、鉄鋼製造プロセスから生じる製鋼スラグは、形状が天然石や天然砂と類似していること、発生元製鉄所が海域に面していること、安定した供給が可能であること、及び重金属溶出がないこと等の理由から、有望な代替材料として利用が進められている。

各種副産物を覆砂用の改質材を始めとする海域向け資材として利用する際には、環境に対して悪影響がないことを事前に確認する必要がある。こうした確認方法の例としては、前述した製鋼スラグについて、含有するカルシウム鉱物からのカルシウムイオンの溶出に起因する、pHの上昇度合いを確認する方法が開示されている(非特許文献1)。

さらに、覆砂は、赤潮や青の防止といった海域の環境改善を目的としてなされるものであるため、改質材として利用される海域向け資材の環境改善効果についても、簡便な方法で事前に確認できることが好ましい。

改質材による環境改善の例及びそのメカニズムとしては、製鋼スラグを用いた場合について、製鋼スラグ中の鉄、特に2価の鉄イオンが、底泥から発生する硫化水素硫化鉄に変えることにより、硫化水素の発生を防止できることが報告されている(特許文献1,2)。
また、これに関連して、本発明者らは、全鉄(トータルFe)の含有量が多い製鋼スラグを底質に敷設することにより、水中の硫化物濃度を低減できることを明らかにしている(特許文献3)。

概要

海域向け資材の硫化水素抑制性能を簡便に評価できる方法を提供する。一定の乾燥質量を有する塊状及び/又は粉状の海域向け資材を準備すること、溶存硫化物濃度が一定(CS,0)の水溶液を準備すること、該水溶液に前記海域向け資材を一定時間接触させること、接触後の前記水溶液中の溶存硫化物濃度(CS,t)を測定すること、該溶存硫化物濃度(CS,t)の、接触前の濃度(CS,0)からの減少量(ΔCS=CS,0−CS,t)に基づいて、前記海域向け資材の硫化物抑制能力を算出すること、及び前記硫化物抑制能力が一定値以上となった海域向け資材を合格とすること、による硫化物抑制能力の判定試験を行う。

目的

以上のような状況のため、海域向け資材の硫化物抑制性能を評価するに際しては、実際の海域中に評価対象となる海域向け資材を投入して経過を観察する手法、又は特許文献3に報告されているように、実際の海域から採取した底質を用いて実際の海域を模した試験環境を準備し、これに評価対象となる海域向け資材を投入して経過を観察する手法が採用されており、性能の確認に時間、手間及びコストを要することが問題であった。
そこで、本発明は、前記問題点を解決し、海域向け資材の硫化物抑制性能を簡便に評価できる方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

塊状及び/又は粉状の海域向け資材評価方法であって、一定の乾燥質量を有する塊状及び/又は粉状の海域向け資材を準備すること、溶存硫化物濃度が一定(CS,0)の水溶液を準備すること、該水溶液に前記海域向け資材を一定時間接触させること、接触後の前記水溶液中の溶存硫化物濃度(CS,t)を測定すること、該溶存硫化物濃度(CS,t)の、接触前の濃度(CS,0)からの減少量(ΔCS=CS,0−CS,t)に基づいて、前記海域向け資材の硫化物抑制能力を算出すること、及び前記硫化物抑制能力が一定値以上となった海域向け資材を合格とすること、による硫化物抑制能力の判定試験を含む、海域向け資材の評価方法。

請求項2

前記水溶液と前記海域向け資材との接触を、該水溶液及び該海域向け資材を容器中に入れて密閉し、容器を振とう又は回転しながら行う、請求項1に記載の海域向け資材の評価方法。

請求項3

前記振とう又は回転を、前記容器を前記水溶液で満たした状態、又は前記容器内の空間を不活性ガス置換した状態で行う、請求項2に記載の海域向け資材の評価方法。

請求項4

容器中に前記海域向け資材を入れない他は、前記水溶液と前記海域向け資材との接触と同条件で処理したブランクについて溶存硫化物濃度(Cs,b)を測定し、該溶存硫化物濃度(Cs,b)の前記接触前の前記水溶液の溶存硫化物濃度(CS,0)からの減少量を、逸失溶存硫化物濃度(Closs=CS,0−CS,b)として算出し、該逸失溶存硫化物濃度(Closs)を用いて前記海域向け資材の硫化物抑制能力を補正することをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の海域向け資材の評価方法。

請求項5

一定の乾燥質量を有する塊状及び/又は粉状の海域向け資材を準備すること、前記海域向け資材を水中に投入し、一定時間静置すること、静置後に水面に浮遊する浮遊物採集すること、採集した前記浮遊物を乾燥すること、乾燥した前記浮遊物の質量を測定すること、及び前記浮遊物の乾燥質量が一定値以下となった海域向け資材を合格とすること、による浮遊物量の判定試験をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の海域向け資材の評価方法。

請求項6

前記海域向け資材が、溶銑予備処理スラグ及び脱炭炉スラグから選ばれる1種以上の製鋼スラグである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の海域向け資材の評価方法。

請求項7

海域向け資材の製造方法であって、製造された海域向け資材を請求項1〜6のいずれか1項に記載の海域向け資材の評価方法で検査し、各判定試験で合格とされたもののみを合格品とすることを含む、海域向け資材の製造方法。

請求項8

前記浮遊物量の判定試験において不合格となった海域向け資材について、粒度又は水分含有量の少なくとも一方を調整した後に、再度、前記浮遊物量の判定試験を行って合否を判定することを含む、請求項7に記載の海域向け資材の製造方法。

請求項9

前記水分含有量の調整において、水分含有量を2〜20質量%に調整する、請求項8に記載の海域向け資材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、海域向け資材評価方法及びこれを利用した海域向け資材の製造方法に関する。

背景技術

0002

従来、海域の環境改善藻場造成河川等の水質改善のための覆砂には、天然石天然砂が用いられてきたが、天然資源保全及び山の採掘の抑制等の観点から、代替材料として各種副産物の利用が検討されている。中でも、鉄鋼製造プロセスから生じる製鋼スラグは、形状が天然石や天然砂と類似していること、発生元製鉄所が海域に面していること、安定した供給が可能であること、及び重金属溶出がないこと等の理由から、有望な代替材料として利用が進められている。

0003

各種副産物を覆砂用の改質材を始めとする海域向け資材として利用する際には、環境に対して悪影響がないことを事前に確認する必要がある。こうした確認方法の例としては、前述した製鋼スラグについて、含有するカルシウム鉱物からのカルシウムイオンの溶出に起因する、pHの上昇度合いを確認する方法が開示されている(非特許文献1)。

0004

さらに、覆砂は、赤潮や青の防止といった海域の環境改善を目的としてなされるものであるため、改質材として利用される海域向け資材の環境改善効果についても、簡便な方法で事前に確認できることが好ましい。

0005

改質材による環境改善の例及びそのメカニズムとしては、製鋼スラグを用いた場合について、製鋼スラグ中の鉄、特に2価の鉄イオンが、底泥から発生する硫化水素硫化鉄に変えることにより、硫化水素の発生を防止できることが報告されている(特許文献1,2)。
また、これに関連して、本発明者らは、全鉄(トータルFe)の含有量が多い製鋼スラグを底質に敷設することにより、水中の硫化物濃度を低減できることを明らかにしている(特許文献3)。

0006

特開2004−116260号公報
特開2005−34140号公報
特許第5994383号公報

先行技術

0007

転炉系製鋼スラグ海域利用の手引き」,社団法人 日本鉄鋼連盟,平成20年9月,p.48-51

発明が解決しようとする課題

0008

しかし、海域向け資材の中には、トータルFeの含有量は多くても2価の鉄イオンの含有量が少ないものもあるため、トータルFeの含有量のみによって、海域向け資材全般の硫化物抑制性能を評価することはできない。また、固体状態にある海域向け資材中に存在する2価の鉄イオンの量を測定する手法は、これまでのところ明らかにされていない。
しかも、海域向け資材のうち、トータルFeの含有量によって硫化物抑制性能をある程度予測可能な製鋼スラグについては、近年、鉄の含有量が減少傾向にある。これは、主産物である鉄鋼の収量を上げるために、製鋼工程の改良や製鋼スラグから鉄分(地金)の回収が行われていることによる。このため、トータルFeの含有量を硫化物抑制性能の指標とした場合、多くのスラグが該性能に劣ると判定される虞がある。
このように、海域向け資材の硫化物抑制性能を簡便に評価する方法は、現在のところ確立されていない。

0009

以上のような状況のため、海域向け資材の硫化物抑制性能を評価するに際しては、実際の海域中に評価対象となる海域向け資材を投入して経過を観察する手法、又は特許文献3に報告されているように、実際の海域から採取した底質を用いて実際の海域を模した試験環境を準備し、これに評価対象となる海域向け資材を投入して経過を観察する手法が採用されており、性能の確認に時間、手間及びコストを要することが問題であった。
そこで、本発明は、前記問題点を解決し、海域向け資材の硫化物抑制性能を簡便に評価できる方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者は、前記課題を解決するために種々の検討を行ったところ、溶存硫化物を含む水溶液に海域向け資材を一定時間接触させた際の、該水溶液中の溶存硫化物量の減少量により、該海域向け資材の硫化水素抑制能力を判定できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0011

すなわち、前記課題を解決するための本発明の一実施形態は、塊状及び/又は粉状の海域向け資材の評価方法であって、一定の乾燥質量を有する塊状及び/又は粉状の海域向け資材を準備すること、溶存硫化物濃度が一定(CS,0)の水溶液を準備すること、該水溶液に前記海域向け資材を一定時間接触させること、接触後の前記水溶液中の溶存硫化物濃度(CS,t)を測定すること、該溶存硫化物濃度(CS,t)の、接触前の濃度(CS,0)からの減少量(ΔCS=CS,0−CS,t)に基づいて、前記海域向け資材の硫化物抑制能力を算出すること、及び前記硫化物抑制能力が一定値以上となった海域向け資材を合格とすること、による硫化物抑制能力の判定試験を含む、海域向け資材の評価方法である。

発明の効果

0012

本発明によれば、海域向け資材の硫化水素抑制性能を簡便に評価できる方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0013

本発明の一実施形態に係る海域向け資材の評価方法の手順を示すフロー
本発明の一実施形態で実施する浮遊物量の判定試験における操作の一部を示す模式図
本発明の一実施形態で実施する硫化物抑制能力の判定試験における操作の一部を示す模式図

0014

以下、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する。)を詳細に説明するが、本発明は該実施形態に限定されるものではない。また、以下に述べる作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、数値範囲の記載(2つの数値を「〜」でつないだ記載)については、下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。

0015

本実施形態に係る海域向け資材の評価方法は、一定の乾燥質量を有する塊状及び/又は粉状の海域向け資材を準備すること、溶存硫化物濃度が一定(CS,0)の水溶液を準備すること、該水溶液に前記海域向け資材を一定時間接触させること、接触後の前記水溶液中の溶存硫化物濃度(CS,t)を測定すること、該溶存硫化物濃度(CS,t)の、接触前の濃度(CS,0)からの減少量(ΔCS=CS,0−CS,t)に基づいて、前記海域向け資材の硫化物抑制能力を算出すること、及び前記硫化物抑制能力が一定値以上となった海域向け資材を合格とすること、による硫化物抑制能力の判定試験を含む。

0016

評価対象とする海域向け資材は、改質材として覆砂に利用される塊状及び/又は粉状材料であれば特に限定されず、溶銑予備処理スラグ及び脱炭スラグ等の製鋼スラグの他、廃コンクリート等のコンクリート製品破砕品貝殻廃石膏ボード等の石膏を含む製品廃棄物及び石炭灰等の各種副産物であってもよく、また従来から海域向け資材に用いられている天然石や天然砂であってもよい。中でも製鋼スラグは、副産物が有効利用できることに加えて、形状が天然石や天然砂と類似していること、発生元の製鉄所が海域に面していること、安定した供給が可能であること、及び重金属の溶出がないことといった利点を有する点で、好ましいものである。

0017

試験に供する塊状及び/又は粉状の海域向け資材は、その乾燥質量を一定とする。乾燥質量が一定であれば、含水率の差により実際に水中に投入する質量が異なっていてもよい。本明細書において、乾燥質量とは、大気中、110±5℃で質量変化が無視できるまで乾燥した際の質量をいい、たとえば、厚さ5cmに堆積させた状態であれば12時間乾燥すれば十分である。

0018

溶存硫化物を含む水溶液としては、水に各種硫化物を溶解し、一定濃度としたものを用いる。
水溶液の調製に使用する水は特に限定されず、水道水蒸留水及び海水等が例示される。海域向け資材の適用海域が予め決まっている場合には、該海域の水、又はこれを模して含有するイオン種やその量を調整した水を使用することが、該海域における硫化水素抑制性能をより正確に評価できるため好ましい。人工海水を調製する場合には、水中の水素イオン濃度、すなわちpHの調整に希塩酸等を使用することができる。
水に溶解する硫化物としては、水溶性のもの、又は加水分解により硫黄を含む水溶性化合物を生じるものであれば限定されず、硫化ナトリウム硫化カリウム硫化マグネシウム及び硫化カルシウム等が例示される。中でも硫化ナトリウムは、水への溶解度が高いために高濃度の水溶液でも調製が可能である点、及び水として海水を用いる場合には、水中にナトリウムが大量に含まれているため、添加による組成の変動を小さくできる点で好ましい。
水溶液の濃度(CS,0)も、一定の値であれば限定されず、例えば硫化ナトリウム水溶液とする場合には、50〜400mg/L程度とすることができる。海域向け資材の適用海域が予め決まっている場合には、該海域の底質間隙水の溶存硫化物濃度を予め測定し、該濃度に基づいて水溶液濃度を決定することが、該海域における硫化水素抑制性能をより正確に評価できるため好ましい。

0019

溶存硫化物を含む水溶液に海域向け資材を接触させる方法は、両者が接触している時間を確認及び制御できるものであれば限定されない。したがって、溶存硫化物を含む水溶液と海域向け資材とを容器に一定量ずつ入れて一定時間静置する方法であってもよいが、硫化水素抑制性能をより短時間で評価する点からは、溶存硫化物を含む水溶液と海域向け資材とを容器に一定量ずつ入れ、密閉した状態で振とう又は回転する方法が好ましい。
容器を振とう又は回転する方法を採用する場合、容器は密封できるものである必要がある。これは、振とう又は回転のエネルギーによって水中の溶存硫化物が気化して逸失することで、硫化水素抑制能力を誤って高く評価してしまうことを防ぐためである。溶存硫化物の気化による逸失をさらに抑制する点からは、容器を満水にすること、又は容器内の気相窒素ガスアルゴンガス等の不活性ガス置換することが好ましい。さらに、海域向け資材と接触させない、溶存硫化物を含む水溶液のみのブランクについて、振とう又は回転による溶存硫化物量の変化を測定することで、振とう又は回転中に逸失した硫化物量補正することがより好ましい。
容器を振とう又は回転する方法を採用する場合、振とう又は回転の回転数を20〜400rpm程度とし、振とう時間を6〜72時間程度とすることが好ましい。振とう又は回転の回転数が小さすぎる、又は時間が短すぎる場合、資材と水の接触及びそれに伴う硫化水素との反応が十分に起こらず、硫化水素抑制性能を誤って低く評価してしまう虞がある。他方、振とう又は回転の回転数が大きすぎる場合、振とう器に負担がかかる上、摩擦熱水温が上昇し、硫化水素抑制性能を誤って評価してしまうことが懸念される。また、振とう時間が長すぎる場合、容器の密閉性能などにもよるが、添加した溶存硫化物が硫化水素ガスなどとして逸失することにより、硫化水素抑制性能を誤って高く評価してしまう虞がある。

0020

前記接触後の水溶液中の溶存硫化物量(CS,t)の測定方法は特に限定されず、硫化物用の検知管を用いる方法や液体クロマトグラフィー等を採用できる。測定が簡便に行える点で、検知管を用いる方法が好ましい。

0021

本実施形態では、海域向け資材と接触後の水溶液中の溶存硫化物濃度(CS,t)の、接触前の濃度(CS,0)からの減少量(ΔCS=CS,0−CS,t)に基づいて、前記海域向け資材の硫化物抑制能力を算出し、該結果に基づいて海域向け資材の硫化水素抑制能力を評価する。硫化物抑制能力は、前記溶存硫化物濃度の減少量(ΔCS)に水溶液の量を乗じて海域向け資材に固定された硫化物の総質量を算出し、これを海域向け資材の体積又は質量で除すことで算出される。水溶液と接触させる海域向け資材の量を測定毎に一定とする場合には、海域向け資材に固定された硫化物の総質量そのものを硫化物抑制能力としてもよい。

0022

海域向け資材の硫化物抑制能力を算出にあたっては、海域向け資材と水溶液との接触中の逸失溶存硫化物量を、ブランクを用いて補正してもよい。この場合、容器中に前記海域向け資材を入れない他は、前記水溶液と前記海域向け資材との接触と同条件で処理したブランクについて溶存硫化物濃度(Cs,b)を測定し、該溶存硫化物濃度(Cs,b)の、前記接触前の前記水溶液の溶存硫化物濃度(CS,0)からの減少量を、逸失溶存硫化物濃度(Closs=CS,0−CS,b)として算出し、この値を用いて溶存硫化物濃度の減少量(ΔCS)を、

ΔCs=CS,0−CS,t+Closs

とする。
逸失溶存硫化物量を補正することで、海域向け資材の硫化水素抑制能力をより正確に評価することができる。

0023

合否判定閾値は、海域向け資材を適用する海域の底質に含まれる硫化物の量や海域向け資材の適用厚み等を考慮して適宜決定できる。例えば、200g/m3の硫化物を含む底質に、海域向け資材を厚さ30cmで施工して硫化物を抑制する場合には、海域向け資材0.3m3当たり200gの硫化物を固定する必要があるから、合否判定の閾値は、200g/0.3m3≒670g/m3=670mg/Lとなる。

0024

本実施形態の好ましい態様として、海域向け資材の浮遊物量の判定試験を組み合わせたものが挙げられる。
海域向け資材は、粒度調整のための破砕運搬等の取扱い(ハンドリング)に伴う粒子衝突によって生じた微粒分を含むことが多い。この微粒分のうち疎水性のものは、水中投入時に沈下せずに水面近くに浮遊して長時間留まるため、水質汚濁の原因となる。このため、海域向け資材の評価において、水に投入した際の浮遊物量も評価することが好ましい。特に、海域向け資材として製鋼スラグを用いる場合には、含有する地金を回収する際の破砕により、多量の微粒分を含んでいることが多いため、前記浮遊物量を適切に評価することは重要である。

0025

海域向け資材の浮遊物量の判定試験は、一定の乾燥質量の海域向け資材を準備すること、前記海域向け資材を水中に投入し、一定時間静置すること、静置後に水面に浮遊する浮遊物を採集すること、採集した前記浮遊物を乾燥すること、乾燥した前記浮遊物の質量を測定すること、及び前記浮遊物の質量が一定値以下となった海域向け資材を合格とすること、により行う。

0026

試験に供する海域向け資材は、判定対象の資材からサンプリングしたものをそのまま用いてもよいが、適切な目のいでアンダーカットして使用してもよい。使用する海域向け資材は、乾燥質量を一定とする。乾燥質量が一定であれば、含水率の差により実際に水中に投入する質量が異なっていてもよい。

0027

海域向け資材を投入する水は、特に限定されず、水道水、蒸留水及び海水等が例示される。海域向け資材の適用海域が予め決まっている場合には、該海域の水、又はこれを模して含有するイオン種やその量を調整した水を使用することが、発生する浮遊物量をより正確に評価できるため好ましい。人工海水を調製する場合には、水中の水素イオン濃度、すなわちpHの調整に希塩酸等を使用することができる。
水を収容する容器は、投入された海域向け資材の浮遊又は沈降の状態を外部から観察できるものであれば、形状、材質は限定されない。容積についても、試験に供する海域向け資材の量に応じたものを適宜利用できる。試験に供する海域向け資材のかさ容積の2倍以上の容積のものを用いることが、作業性の点で好ましい。好ましい容器の例としては、容積が500mL〜5Lの筒型容器バケツが挙げられる。

0028

水中に海域向け資材を投入した後静置する時間は、投入完了時点から粗粒及び親水性微粒子の沈降が概ね完了する迄とすることができる。静置時間の例としては、24時間程度が挙げられる。

0029

静置後の浮遊物を採集する方法は特に限定されず、適切な大きさのさじ等を用いて浮遊物をすくい取った後にろ過する方法や、ポンプ等で浮遊物を水ごと吸い取った後にろ過する方法等が適用できる。

0030

採集した浮遊物の乾燥は、浮遊物粒子の表面に付着した水分及び粒子表面に開口を有する空隙(開気孔)中の水分を完全に除去できる条件で行う。乾燥方法の例としては、採集した浮遊物をシャーレ等の耐熱性の皿に移して110℃に設定したオーブン中に入れて保持する方法が挙げられる。この場合、乾燥が完了したことの判断は、浮遊物の質量が変化しなくなったことにより行えばよい。

0031

浮遊物の乾燥質量の測定は、後述する合否判定の閾値に応じた精度の質量測定手段により行う。一例として、1kg程度の製鋼スラグを試験に供した場合、合否判定の閾値は0.005g以下とされることが多いため、0.001g(1mg)まで測定可能を使用する。

0032

合否判定の閾値は、判定対象とする海域向け資材の粒度及び投入量に加えて、該海域向け資材の適用海域の実情を考慮して設定することが好ましい。例えば、0−10mmの粒度範囲の材料1000gを水中に落下させたときの浮遊物乾燥重量を0.005g以下などと設定する。

0033

本実施形態の別の好ましい態様として、pH上昇の判定試験を組み合わせたものが挙げられる。pH上昇の判定試験は、上掲した非特許文献1に記載の方法にて行う。

0034

なお、上述した以外の試験、例えば、「水底土砂に係る判定基準」などの法令に基づいた試験を組み合わせてもよいことはいうまでもない。「水底土砂に係る判定基準」は、浚渫した土砂(底質)を海面埋立又は海洋投入するにあたって、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行令第5条第1項に規定する埋立場所等に排出しようとする金属等を含む廃棄物に係る判定基準を定める省令」に定められているものである。こうした試験を組み合わせる場合には、法令等に定められた項目の一部または全部について、溶出液中の濃度を測定するなどの操作を行い、項目ごとに定められた基準値をもとに合否を判定する。

0035

本実施形態は、海域向け資材の製造方法に適用し、製造された海域向け資材のうち各試験で合格とされたもののみを合格品とすることが好ましい。
その際、上述した浮遊物量の判定試験で不合格となった海域向け資材については、粒度調整、洗浄又は水分含有量の調整のうち少なくともいずれかを行うことで、浮遊物量が減少し、該判定試験に合格となることがある。ここで、水分含有量の調整により浮遊物量が減少する理由は、微粒子の表面に存在する水同士が架橋することで生じる表面張力によって、微粒子同士が凝集して粗大化し、水中に沈降するためと考えられる。水分含有量を調製する際には、その量を2質量%〜20質量%とすることが好ましい。海域向け資材の水分含有量を2質量%以上とすることにより、微粒子同士に作用する表面張力が凝集に十分な大きさとなる。他方、海域向け資材の水分含有量を20質量%以下とすることにより、微粒子間の空隙が水で満たされることによる表面張力の低下を抑制できる。
なお、前述した粒度又は水分含有量の調整は、別途行われるpHの判定試験において不合格と判定された場合に必要な処置である粒度調整又は洗浄を兼ねることもできるため、実際の製造方法における処置が簡易になる点で好ましいものである。

0036

以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。

0037

塊状及び/又は粉状の海域向け資材として、5種類の脱リンスラグを使用し、pH上昇の判定試験、浮遊物量の判定試験、硫化物抑制能力の判定試験及び重金属等の溶出判定試験により、海域向け資材を評価した。図1に、評価のフローを示す。

0038

pH上昇の判定試験は、上掲した非特許文献1に記載の方法を採用した。合否判定の閾値は、水質汚濁防止法に係るpHの排水基準(海域)に規定される上限値の9.0とした。

0039

pH上昇の判定試験で不合格となった海域向け資材は、再篩い処理により粒度調整を行った後、再度試験に供した。図1では2回目までの判定試験を示しているが、2回目の判定試験で不合格であったものでも、上限値に対しての超過が0.2以下と軽微なものについては、さらなる粒度調整又は洗浄を実施し、最大5回まで判定試験を行った。

0040

浮遊物量の判定試験は、以下の手順で行った。
まず、海域向け資材から、篩によって10mm以下の粒度のものを選別し、1.0kgの判定用試料を準備した。
次に、この判定用試料を、容積3Lの筒型容器中の2Lの人工海水中に投入した後、1日静置した。
次に、静置後に水面に残った浮遊物をスプーンで水ごと採集し、付着水分をろ過及び乾燥により除去した。
最後に、乾燥後の浮遊物の質量を測定し、0.005g以下となった場合を合格、それ以外の場合を不合格と判定した。
前述した判定用試料の投入から浮遊物の採集までの操作を、図2に模式的に示す。

0041

浮遊物量の判定試験で不合格となった海域向け資材は、洗浄処理を行って水分含有量を調整した後、再度試験に供した。図1では2回目までの判定試験を示しているが、2回目の判定試験で不合格であったものでも、上限値に対しての超過が0.001g以下と軽微なものについては、さらなる粒度調整、洗浄又は水分調整を実施し、最大5回まで判定試験を行った。

0042

硫化物抑制能力の判定試験は、以下の手順で行った。
まず、人工海水に、硫化ナトリウム試薬をS換算で100mg/Lとなるように溶解させた後、蒸留水で2倍に希釈した濃塩酸にてpHを8.0〜8.2に調整して、溶存硫化物を含む水溶液を調製した。
次に、この水溶液300mLと判定対象の海域向け資材10gとを500mLのガラスねじ口瓶に入れて密栓し、両者を接触させた状態で200rpmの回転数にて振とうした。振とう時間は48時間とした。
次に、振とう後のねじ口瓶を開栓し、水溶液中に川式硫化物用検知管を挿入して、該水溶液中の溶存硫化物濃度を測定した。
最後に、測定された溶存硫化物濃度(CS,t)の、初期の硫化物濃度(CS,0=100mg/L)からの減少量(ΔCS=CS,0−CS,t)から、海域向け資材に固定された硫化物の総質量を算出し、該総質量が800mg以上となった場合を合格、それ以外の場合を不合格と判定した。
前述したねじ口瓶の密栓から検知管の挿入までの操作を、図3に模式的に示す。

0043

重金属等の溶出判定試験は、水底土砂に係る判定基準に基づいて行い、定められた項目の一部について、所定の範囲内にあるか否かを確認した。
以上の試験結果を、まとめて表1に示す。

0044

実施例

0045

資材1は、pHの上昇、浮遊物量、硫化物抑制能力及び重金属等の溶出の各判定試験に全て合格し、出荷判定が合格となった例である。
資材2は、pHの上昇判定試験において不合格となったものの、再篩いにより合格となり、浮遊物量の判定、硫化物抑制能力及び重金属等の溶出の各判定試験にも合格したことから、出荷判定が合格となった例である。
資材3は、浮遊物量の判定試験において不合格となったものの、水分含有量を2〜20質量%に調整する処置によって合格となり、pHの上昇、硫化物抑制能力及び重金属等の溶出の各判定試験にも合格したことから、出荷判定が合格となった例である。
資材4及び資材5は、硫化物抑制能力の判定試験が不合格のため、出荷判定が不合格となった例である。
以上のように、硫化物抑制能力の判定試験を含む各種判定試験により合否判定を行うことで、適当な資材を選別することができた。

0046

本発明によれば、海域向け資材の硫化物抑制能力を簡便な方法で判定できる。このため、海域向け資材の出荷前検査に本発明を適用すれば、硫化物抑制能力に着目した出荷の可否の判定が、短時間かつ低コストで実施できる点で有用である。また、本発明は、海域向け資材の浮遊物量の判定試験により、海域向け資材を水中に投入した際に水質汚濁の原因となる浮遊物の発生量を簡便な方法で判定できる点で有用である。さらに、本発明は、pHの上昇判定試験や重金属等の溶出判定試験を始めとする他の評価方法と組み合わせることで、従来は得ることができなかった海域向け資材に関する多くの情報を得ることができる点でも有用である。

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