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技術 鋼板および鋼板の製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 今中智博甲谷昇一
出願日 2019年2月20日 (2年0ヶ月経過) 出願番号 2019-028559
公開日 2020年8月31日 (5ヶ月経過) 公開番号 2020-132953
状態 未査定
技術分野 薄鋼板の熱処理
主要キーワード 刃物部材 改善要望 刃物用 流動領域 規定条件 板厚範囲 チェーン部品 冷却処理後
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年8月31日)のものです。
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図面 (1)

課題

耐摩耗性および靱性両立した鋼板を実現する。

解決手段

質量%で、0.40%以上0.90%以下のCを含み、残部がFeおよび不可避的不純物を含む鋼板であって、ラメラ間隔が0.3μm以下のパーライトを含む、(1)パーライトのみからなる共析鋼、(2)パーライトおよび面積率が15%以下の初析フェライトを含む亜共析鋼、(3)パーライトおよび直径が10μm未満の初析セメンタイトを含む過共析鋼、の何れか一つにより形成される。

概要

背景

自動車部品産業機械チェーン部品歯車などの動力伝達部材や、木材の切断・草刈等に使用する丸鋸帯鋸などの刃物部材には、耐摩耗性が要求される。一般に鋼材の耐摩耗性は、硬さを高めることによって向上する。そのため、耐摩耗性を重視する部材には、焼入れ等の熱処理を利用して硬質化させた鋼材や、炭素等の合金元素含有量の高い鋼材が多用される。すなわち、鋼材の硬さと耐摩耗性とは密接な関係にあり、従来、鋼材に耐摩耗性を付与する手法としては硬さを増大させる手法を採用することが一般的である。

一方、刃が高速回転する丸鋸などの刃物部材では、使用中に折損しないことが重要である。折損を防止するためには鋼材の靭性を確保する必要がある。しかし、耐摩耗性の向上に有利な硬質化は、靭性を低下させる要因となる。そのため、一般に「耐摩耗性」と「靭性」はトレードオフの関係にある。

果実穀物綿花等の農産物を刈り取る丸鋸など一部の刃物においては、摩耗が比較的穏やかであることから、硬さよりも、折損防止に有利な「靭性」が重視される。そのような刃物用途では、焼入れ等の調質熱処理を経て硬質化された「調質材」ではなく、フェライト相球状化セメンタイト組織の「非調質材」が適用されることも多い。しかしながら、製品長寿命化に対する要求は根強く、摩耗が比較的穏やかな用途であっても、耐摩耗性の改善要望が高まりつつある。非調質材において「耐摩耗性」および「靭性」を高いレベル両立させる技術の構築が望まれる。

特許文献1には、Nb、Tiの1種以上を含有する炭化物粒子が分散した組織を有する、「耐摩耗性」および「靱性」を両立させた非調質材の鋼板が開示されている。

概要

耐摩耗性および靱性を両立した鋼板を実現する。質量%で、0.40%以上0.90%以下のCを含み、残部がFeおよび不可避的不純物を含む鋼板であって、ラメラ間隔が0.3μm以下のパーライトを含む、(1)パーライトのみからなる共析鋼、(2)パーライトおよび面積率が15%以下の初析フェライトを含む亜共析鋼、(3)パーライトおよび直径が10μm未満の初析セメンタイトを含む過共析鋼、の何れか一つにより形成される。なし

目的

本発明の一態様は、非調質材において、「耐摩耗性」および「靱性」を従来よりも高いレベルで両立した鋼板を実現することを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、0.40%以上0.90%以下のCを含み、残部がFeおよび不可避的不純物を含む鋼板であって、ラメラ間隔が0.3μm以下のパーライトを含む、以下の(1)から(3)の何れか1つにより形成される鋼板:(1)上記パーライトのみからなる共析鋼、(2)上記パーライトおよび初析フェライトを含み、上記初析フェライトの面積率が15%以下である亜共析鋼、(3)上記パーライトおよび初析セメンタイトを含み、上記初析セメンタイトの直径が10μm未満である過共析鋼

請求項2

質量%で、Si:0.02%以上0.5%以下、Mn:0.2%以上1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、およびCr:1.2%以下をさらに含む、請求項1に記載の鋼板。

請求項3

質量%で、V:0.3%以下、Mo:0.3%以下、Nb:0.3%以下、およびTi:0.3%以下のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1または2に記載の鋼板。

請求項4

板厚が2mm以下である、請求項1から3の何れか1項に記載の鋼板。

請求項5

請求項1から4の何れか1項に記載の鋼板を製造する方法であって、上記鋼板の素材となるスラブ熱延処理を施す熱延工程と、上記熱延工程により得られた上記鋼板に冷延処理を施す冷延工程と、上記冷延工程後の上記鋼板に(a)加熱処理、(b)第1冷却処理、および(c)第2冷却処理をこの順で施す熱処理工程と、を含み、(a)上記加熱処理では、800℃以上の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長い時間加熱し、(b)上記第1冷却処理では、15℃/秒以上の冷却速度により580℃以上670℃以下の温度まで冷却し、(c)上記第2冷却処理では、上記第1冷却処理終了時の温度から570℃までの温度範囲内に15秒以上保持する、鋼板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、鋼板および鋼板の製造方法に関する。

背景技術

0002

自動車部品産業機械チェーン部品歯車などの動力伝達部材や、木材の切断・草刈等に使用する丸鋸帯鋸などの刃物部材には、耐摩耗性が要求される。一般に鋼材の耐摩耗性は、硬さを高めることによって向上する。そのため、耐摩耗性を重視する部材には、焼入れ等の熱処理を利用して硬質化させた鋼材や、炭素等の合金元素含有量の高い鋼材が多用される。すなわち、鋼材の硬さと耐摩耗性とは密接な関係にあり、従来、鋼材に耐摩耗性を付与する手法としては硬さを増大させる手法を採用することが一般的である。

0003

一方、刃が高速回転する丸鋸などの刃物部材では、使用中に折損しないことが重要である。折損を防止するためには鋼材の靭性を確保する必要がある。しかし、耐摩耗性の向上に有利な硬質化は、靭性を低下させる要因となる。そのため、一般に「耐摩耗性」と「靭性」はトレードオフの関係にある。

0004

果実穀物綿花等の農産物を刈り取る丸鋸など一部の刃物においては、摩耗が比較的穏やかであることから、硬さよりも、折損防止に有利な「靭性」が重視される。そのような刃物用途では、焼入れ等の調質熱処理を経て硬質化された「調質材」ではなく、フェライト相球状化セメンタイト組織の「非調質材」が適用されることも多い。しかしながら、製品長寿命化に対する要求は根強く、摩耗が比較的穏やかな用途であっても、耐摩耗性の改善要望が高まりつつある。非調質材において「耐摩耗性」および「靭性」を高いレベル両立させる技術の構築が望まれる。

0005

特許文献1には、Nb、Tiの1種以上を含有する炭化物粒子が分散した組織を有する、「耐摩耗性」および「靱性」を両立させた非調質材の鋼板が開示されている。

先行技術

0006

特開2018−190494号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、上述のような従来技術による鋼板は、耐摩耗性について改善の余地があった。本発明の一態様は、非調質材において、「耐摩耗性」および「靱性」を従来よりも高いレベルで両立した鋼板を実現することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼板は、質量%で、0.40%以上0.90%以下のCを含み、残部がFeおよび不可避的不純物を含む鋼板であって、ラメラ間隔が0.3μm以下のパーライトを含む、以下の(1)から(3)の何れか1つにより形成される鋼板:(1)上記パーライトのみからなる共析鋼、(2)上記パーライトおよび初析フェライトを含み、上記初析フェライトの面積率が15%以下である亜共析鋼、(3)上記パーライトおよび初析セメンタイトを含み、上記初析セメンタイトの直径が10μm未満である過共析鋼

0009

本発明の一態様に係る鋼板は、質量%で、Si:0.02%以上0.5%以下、Mn:0.2%以上1.5%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、およびCr:1.2%以下をさらに含んでいてもよい。

0010

本発明の一態様に係る鋼板は、質量%で、V:0.3%以下、Mo:0.3%以下、Nb:0.3%以下、およびTi:0.3%以下のうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。

0011

本発明の一態様に係る鋼板は、板厚が2mm以下であってもよい。

0012

上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鋼板の製造方法は、上記のいずれかの鋼板を製造する方法であって、上記鋼板の素材となるスラブ熱延処理を施す熱延工程と、上記熱延工程により得られた上記鋼板に冷延処理を施す冷延工程と、上記冷延工程後の上記鋼板に(a)加熱処理、(b)第1冷却処理、および(c)第2冷却処理をこの順で施す熱処理工程と、を含み、(a)上記加熱処理では、800℃以上の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長い時間加熱し、(b)上記第1冷却処理では、15℃/秒以上の冷却速度により580℃以上670℃以下の温度まで冷却し、(c)上記第2冷却処理では、上記第1冷却処理後の上記鋼板を、上記第1冷却処理終了時の温度から570℃までの温度範囲内に15秒以上保持する。

発明の効果

0013

本発明の一態様によれば、非調質材において、「耐摩耗性」および「靱性」を従来よりも高いレベルで両立した鋼板を実現できる。

図面の簡単な説明

0014

一実施形態に係る鋼板の、摩擦摩耗試験後の断面における金属組織写真を示す図である。

0015

以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。

0016

<鋼板>
本実施形態に係る鋼板は、質量%で、0.40%以上0.90%以下のCを含み、残部がFeおよび不可避的不純物を含む鋼板であって、ラメラ間隔が0.3μm以下のパーライトを含む共析鋼、亜共析鋼、および過共析鋼のいずれか1つにより形成される鋼板である。

0017

〔パーライト〕
本願発明では、耐摩耗性の向上に有効なパーライト組織を十分に確保することが非常に重要で、本願発明で規定する共析鋼、亜共析鋼および過共析鋼は全てパーライト組織を含んでいる。パーライト組織が摩擦されると、図1に示すようにパーライト組織中に存在する層状のセメンタイトが摩擦面と並行に緻密な層状に重なって表面を覆う形態(図1における流動領域)となる。セメンタイトはフェライトに比べ非常に硬く耐摩耗性に優れていることから、パーライト組織を十分に確保することで非常に優れた耐摩耗性を得ることが可能となる。一方、パーライト組織は軟質で靭性に優れるフェライトと層状セメンタイトとの複合組織でもあり、靭性にも優れている。

0018

〔共析鋼〕
共析鋼は、当該共析鋼の金属組織がパーライトのみからなる鋼である。

0019

〔亜共析鋼〕
亜共析鋼は、共析鋼よりもCの含有量が少ない鋼であり、標準組織である場合にはパーライトおよび初析フェライトを含む金属組織である。当該亜共析鋼における初析フェライトの面積率は15%以下であり、これは、例えば、オーステナイト温度域から冷却速度を制御することによって達成することができる。

0020

亜共析鋼では、耐摩耗性に劣る初析フェライトの面積率が多くなると、摩擦された際にパーライト中の層状セメンタイトによる表面の被覆が十分でなくなるため、十分な耐摩耗性が得られなくなる。初析フェライトの面積率を15%以下に制限し、耐摩耗性の向上に有効なパーライト組織を十分に確保することにより優れた耐摩耗性と靭性を両立させることが可能となる。

0021

〔過共析鋼〕
過共析鋼は、共析鋼よりもCの含有量が多い鋼であり、標準組織である場合にはパーライトおよび初析セメンタイトを含む金属組織である。当該過共析鋼の粒界結晶粒界)に存在する初析セメンタイトの長径(直径)が10μm未満であり、これは、例えば、オーステナイト温度域から冷却速度を制御することによって達成することができる。これにより、粗大な初析セメンタイトが存在しないため、変形時に初析セメンタイト近傍における粗大なボイド(空隙)の形成を抑えることができ、優れた靭性が得られる。

0022

〔板厚〕
本実施形態における鋼板の板厚は、2mm以下である。このような板厚範囲内により、15℃/秒以上の冷却速度が得られ、亜共析鋼の場合は、初析フェライトの生成を抑えることができる。過共析鋼の場合は、初析セメンタイトの生成を抑えることができる。

0023

〔硬さ〕
本実施形態における鋼板の硬さは、特に制限はないが、200HV以上400HV以下の鋼板であることが好ましい。上述のような共析鋼、亜共析鋼および過共析鋼により形成される鋼板において、硬さが200HV以上400HV以下であれば、耐摩耗性および靱性を高いレベルで両立できる。なお、ここでいう鋼板の硬さとは、ビッカース硬さ(Hv10)を意味する。

0024

〔鋼板に含まれる成分〕
以下、鋼板の成分に関する「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。

0025

本実施形態に係る鋼板は、0.40%以上0.90%以下のC(炭素)を含み、残部としてFe(鉄)および不可避不純物を含む鋼板である。

0026

(C)
本実施形態に係る鋼板は、0.40%以上0.90%以上のCを含む。すなわち、本実施形態に係る鋼板は、中炭素鋼または高炭素鋼の鋼板である。Cは、中炭素鋼および高炭素鋼において最も基本となる成分であり、鋼板における含有量に応じて鋼板の加工性炭化物量などが大きく変動する。

0027

Cの含有量が0.40%以上であることにより、鋼板における炭化物量が十分となるため、亜共析鋼において、パーライトを含み、初析フェライト面積率が低い金属組織が得られる。これにより、初析フェライト面積率を15%以下に低下させるとともにパーライトラメラ間隔微細化し、好適なパーライトラメラ間隔の金属組織を有する鋼板を得ることができる。また、Cの含有量が多くなると粗大な炭化物が多くなり、靭性低下の要因となるためCの含有量は0.90%以下に制限される。

0028

〔鋼板に含まれ得るその他の成分〕
また、本実施形態に係る鋼板は、上述の成分以外にSi、Mn、P、S、Crを含み、V、Mo、NbおよびTiのうちの少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。

0029

(Si)
本実施形態に係る鋼板は、Si(ケイ素)を含む。Siは鋼板の加工性に対して影響を及ぼす成分である。鋼板におけるSiの含有量は、0.02%以上0.50%以下であることが好ましい。Siの含有量が0.02%以上であることにより、鋼板に含まれる酸素を除去するための脱酸剤として利用することができる。また、Siを多量に含有すると靱性低下の要因となるため、Siの含有量は0.50%以下に制限される。

0030

(Mn)
本実施形態に係る鋼板は、Mn(マンガン)を含む。Mnは鋼板の硬度向上に有効な成分である。鋼板におけるMnの含有量は、0.2%以上1.5%以下であることが好ましい。多量にMnを含有することは、熱延鋼板の硬質化を招き、製造性が低下する原因となるため、Mnの含有量は1.5%以下に制限される。

0031

(P、S)
本実施形態に係る鋼板は、P(リン)およびS(硫黄)を含む。PおよびSはいずれも、鋼板の靱性を低下させる成分である。鋼板におけるPの含有量は、0.03%以下であることが好ましい。また、鋼板におけるSの含有量は、0.03%以下であることが好ましい。鋼板におけるPおよびSの含有量が、上述の好ましい範囲にあることにより、靱性に優れた鋼板を得ることができる。

0032

(Cr)
本実施形態に係る鋼板は、Cr(クロム)を含む。Crは、鋼板の強度向上に有効な成分である。鋼板におけるCrの含有量は、1.2%以下であることが好ましい。多量のCrは靱性低下の要因となるため、Crの含有量は1.2%以下に制限される。

0033

(Mo)
本実施形態に係る鋼板は、Mo(モリブデン)を含んでいてもよい。Moは、鋼板の靱性向上に有効な成分である。鋼板におけるMoの含有量は、0.3%以下であることが好ましい。Moは、鋼板に過剰に添加してもコストに見合った靱性向上効果は得られない。そのため、Moの含有量は、0.3%以下に抑えることが好ましい。

0034

(V、Ti、Nb)
本実施形態に係る鋼板は、V(バナジウム)、Ti(チタン)およびNb(ニオブ)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。V、TiおよびNbは、鋼板中において硬質な炭化物として形成される成分である。鋼板におけるV、TiおよびNbの含有量は、それぞれ0.3%以下であることが好ましい。鋼板におけるV、TiおよびNbの含有量が、それぞれ0.3%以下であることにより、コストの増加および鋼板の製造性の低下を防止することができる。

0035

本実施形態に係る鋼板は、C以外の成分として上述した各成分を含み得る。好適な態様としては、Si、Mn、およびCrを含み、さらに、含有量が0.03%以下のPおよびSを含むものである。より好適な態様では、これらをすべて含んでいる。さらに別の態様では、Cに加えて、Si、Mn、およびCrを含み、さらに、含有量が0.03%以下のPおよびSを含み、好ましくは全てを含んでいる態様において、V、Mo、NbおよびTiのうちの少なくとも1つをさらに含むものが挙げられる。

0036

<鋼板の製造方法>
以下に、本実施形態に係る鋼板の製造方法を示す。本実施形態に係る鋼板の製造方法は、素材となるスラブ(素材スラブ)から、本実施形態に係る鋼板を製造する方法であって、熱延工程と、冷延工程と、熱処理工程とを含む。ここで、素材スラブとは、具体的には、上述の本実施形態に係る鋼板の成分を含み、上述の各工程を施す前のスラブのことを指す。

0037

〔熱延工程〕
熱延工程では、素材スラブに熱延処理を施す。具体的には、素材スラブを1200℃以上に加熱した後、800℃以上950℃以下の温度で熱延仕上げを行う。熱延仕上げ温度が800℃以上であることにより、鋼板の変形抵抗が高くならず、熱延による鋼板の製造性の低下を防止することができる。また、熱延工程における温度が950℃以下であることにより、コイル表面におけるスケール疵の発生を防ぎ、表面品質の低下を抑制することができる。熱延仕上げ後、10℃/秒以上の冷却速度で670℃以下まで冷却し、570℃以上650℃以下で熱延仕上げ後に得られた熱延鋼板を巻取る。

0038

次に、熱延鋼板に酸洗処理を施し、スケール疵を除去する。熱延鋼板が硬く、次の冷延工程において鋼板を冷延することが困難である場合、冷延工程の前に鋼板を焼鈍して鋼板を軟化させてもよい。冷延工程前の焼鈍における焼鈍温度は、600℃以上780℃以下であることが好ましい。焼鈍温度が710℃を超える場合は、加熱保持後650℃以下まで徐冷(20℃/h以下)する。これにより、熱延工程後の熱延鋼板が硬い場合であっても、続く冷延工程において熱延鋼板を冷延することができる。

0039

〔冷延工程〕
冷延工程(第1冷延工程)では、熱延工程後(熱延鋼板を酸洗した後)により得られた鋼板に冷延処理を施して所定の厚み(板厚)の鋼板にする。冷延工程における冷延率は、特に限定されるものではなく、所定の鋼板の厚みに応じて、適宜設定することができる。

0040

冷延工程後にオーステナイト温度域に鋼板を加熱して溶体化するため、冷延工程において冷延する前の鋼板の金属組織は特に限定されない。

0041

なお、冷延工程において冷延を鋼板に施した際に、鋼板が硬化し、次の熱処理工程において鋼板に連続熱処理を施すことが困難である場合、熱処理工程の前に焼鈍を施して鋼板を軟化させてもよい。熱処理前の焼鈍における焼鈍温度は特に限定されないが、例えば、600℃以上720℃以下であることが好ましい。

0042

〔熱処理工程〕
熱処理工程では、冷延工程後の鋼板に(a)加熱処理、(b)第1冷却処理および(c)第2冷却処理の一連の熱処理を施す。

0043

(加熱処理)
加熱処理では、冷延工程後の鋼板を、800℃以上の温度T(℃)において−0.13×T+145(秒)より長い時間加熱し、溶体化する。加熱処理における加熱温度は、800℃以上950℃以下であることが好ましい。鋼板を800℃以上の温度で加熱することで、鋼板が十分に溶体化し、金属組織に対する初析フェライトの面積率の低いパーライトを得ることができる。また、鋼板を950℃以下の高温すぎない温度で加熱することで、オーステナイト粒径の粗大化を防ぐことができる。また、加熱温度が高温すぎないことで、過大なエネルギー消費せず、加熱処理に用いる炉内の耐火物劣化を抑え、コストを削減することができる。

0044

加熱処理における加熱時間は、上述の加熱温度T(℃)において、−0.13×T+145(秒)より長く、−0.36×T+485(秒)より短い時間であることが好ましい。加熱時間が−0.13×T+145(秒)より長いことで、鋼板が十分に溶体化し、未溶解炭化物が残存するのを防止することができる。また、加熱時間が−0.36×T+485(秒)より短いことで、鋼板におけるオーステナイト粒径の粗大化を抑制することができる。

0045

(第1冷却処理)
第1冷却処理では、加熱処理後の鋼板を、15℃/秒以上の冷却速度で、加熱処理における加熱温度から580℃以上670℃以下の温度まで冷却する。冷却速度が15℃/秒以上であることで、鋼板が亜共析鋼である場合には、初析フェライトの生成を抑えることができ、鋼板が過共析鋼である場合には、初析セメンタイトの生成を抑えることができる。また、加熱処理における加熱温度から580℃以上670℃以下の温度まで冷却することで、オーステナイトからパーライトへの変態パーライト変態)を好適に開始させることができる。

0046

(第2冷却処理)
第2冷却処理では、第1冷却処理後の鋼板を、第1冷却処理終了時の温度(第1冷却終了温度)から570℃までの温度範囲内に15秒以上保持する。当該温度範囲においてパーライト変態を完了させるには、10秒以上の時間が必要となるためである。第2冷却処理により、パーライトラメラ間隔が0.3μm以下である金属組織の冷延鋼板が得られる。鋼板が亜共析鋼である場合には、さらに、初析フェライトの面積率が15%以下となる金属組織の冷延鋼板が得られる。

0047

第2冷却処理終了時の温度(第2冷却終了温度)は、570℃以上660℃以下であることが好ましい。第2冷却終了温度の下限を570℃としてパーライトを生成させることで、オーステナイトからパーライトへの変態温度が低すぎないため、ベイナイトの生成を抑制し、好適にパーライトを生成することができる。また、第2冷却終了温度の上限を660℃としてパーライトを生成させることで、鋼板が亜共析鋼である場合、初析フェライトの生成を抑制することができる。

0048

第2冷却処理における冷却時間は、15秒以上40秒以下が好ましい。第2冷却処理における冷却時間が上述の範囲にあることにより、低温に冷却するまでの高温域の間にオーステナイトからパーライトへの変態を完了させることができる。その結果、パーライトラメラ間隔が0.3μm以下のパーライトを好適に生成することができる。

0049

なお、第2冷却処理では、第1冷却処理終了時の温度から570℃までの温度範囲内に15秒以上保持してさえいれば、第1冷却終了温度から第2冷却終了温度まで冷却していてもよい。

0050

また、第2冷却処理の後に、任意の冷却速度にて室温まで冷却した後、調質圧延および冷延などの圧延を鋼板にさらに施してもよい。これにより、鋼板の降伏伸びを解消したり、硬さを調整したりすることができる。

0051

本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

0052

<素材スラブの製造>
まず、以下の表1に示す成分を有する鋼種の素材スラブを製造した。なお、比較例において、本発明に係る成分含有量等の規定条件を満たさない項目は、下線により示す。これは、以降の表についても同様である。

0053

0054

<鋼板の製造>
次に、表1に示す素材スラブに対して、熱延、冷延および熱処理を施して鋼板を製造した。

0055

〔熱延〕
まず、表1に示す素材スラブに対して、1200℃以上に加熱した後、800℃以上950℃以下の温度で熱延仕上げを施した。熱延仕上げ後、当該鋼板を570℃以上650℃以下の温度において巻取った。巻取り後、酸洗によりスケール疵を除去した。以下の表2に示すように、No.2および4の試験では、熱延後、鋼板を冷延する前に、当該鋼板にさらに焼鈍を施した。焼鈍は、700℃、40hの条件で行った。

0056

〔冷延〕
熱延後、加熱前に、熱延鋼板に冷延(熱処理前冷延)を施した。熱延に加え、焼鈍をさらに施したものについては焼鈍鋼板に冷延を施した。冷延は、表2に示すように、試験毎に熱処理前冷延率(%)にて行った。表2に示すように、No.4の試験では、熱延および焼鈍した後、以下の加熱、第1冷却および第2冷却を施さずに冷延(熱処理後冷延)した。

0057

〔熱処理〕
次に、冷延後の鋼板に(a)加熱、(b)第1冷却および(c)第2冷却の一連の熱処理を施した。

0058

(加熱)
熱処理では、まず、鋼板に加熱を施した。加熱は、表2に示すように、試験毎に加熱温度T1(℃)および加熱時間t1(秒)の条件で行った。

0059

(第1冷却)
次に、鋼板に第1冷却を施した。第1冷却は、表2に示すように、試験毎に冷却速度R(℃/秒)において、加熱温度T1(℃)から表2に示す冷却終了温度(℃)まで冷却した。

0060

(第2冷却)
次に、鋼板に第2冷却を施した。第2冷却では、第1冷却の後の鋼板を、表2に示す570℃までの所要時間(秒)だけかけて冷却した。また、第2冷却の後に冷延(熱処理後冷延)をさらに施した。各試料に対する冷延での冷延率(熱処理後冷延率、%)を表2に示す。なお、各鋼板の厚みが1.8mmになるように第1冷延工程または第2冷延工程で調整した。上述の各処理により、鋼板を得た。

0061

0062

評価項目
〔初析フェライトの面積率および初析セメンタイトの長径〕
(初析フェライトの面積率)
No.1から16の試験によって最終的に得られた鋼板(試料)の金属組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。これらの試料のうち、初析フェライトが観察された試料、すなわち、亜共析鋼である試料に対し、任意の視野で、1000倍の倍率にて当該視野で確認できる範囲の面積における初析フェライトの面積率を測定した。ある視野において初析フェライトの面積率の測定が終了したら、別の視野において同様に測定を行い、これらの測定を計10回繰り返した。そして、10個の視野の初析フェライトの面積率の平均値を算出した。

0063

(初析セメンタイトの長径)
上述のSEMを用いた各試料の金属組織の観察において、初析セメンタイトが観察された試料、すなわち、過共析鋼である試料については、任意の視野において、1000倍の倍率にて長径10μm以上の初析セメンタイトが存在しないかどうかを確認した。具体的には、ある視野において観察された初析セメンタイトの長径を全て測定し、全て10μm未満であるかどうかを確認した。ある視野において初析セメンタイトの長径が全て10μm未満であることを確認したら、別の視野において同様に測定を行った。1つの視野でも長径10μm以上の初析セメンタイトが存在することを確認したら、その時点で測定を終了した。ある視野における初析セメンタイトの長径が全て10μm未満であること、すなわち、長径10μm以上の初析セメンタイト存在しないことを10回繰り返し確認した場合、測定を終了した。

0064

(初析フェライトの面積率および初析セメンタイトの長径の評価)
初析フェライトの面積率の平均値および初析セメンタイトの長径の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。なお、以下の長径10μm以上のセメンタイト無しとは、具体的には、10回の測定において1回も長径10μm以上のセメンタイトが金属組織における粒界に発見されなかったことを意味する。
○:初析フェライトの面積率が15%以下、かつ、長径10μm以上のセメンタイト無し、×1:初析フェライトの面積率が15%より大きい、
×2:長径10μm以上のセメンタイトあり。

0065

〔硬さ〕
各試料の硬さをビッカース硬さ試験によって測定した。結果を表3に示す。

0066

〔パーライトラメラ間隔〕
各試料の圧延方向の断面の金属組織を、SEMを用いて観察した。具体的には、各試料の金属組織を任意の視野で1000倍の倍率にて観察し、パーライトラメラが密になっている視野を選択した。次に、選択した視野における各試料の金属組織を10000倍の倍率にて観察し、パーライトラメラ間隔を測定した。ある視野においてパーライトラメラ間隔の測定が終了したら、別の視野において同様に測定を行い、これらの測定を計10回繰り返した。得られた10個のパーライトラメラ間隔の値のうち、小さいものから5個のパーライトラメラ間隔の平均値を各試料におけるパーライトラメラ間隔とした。パーライトラメラ間隔の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。
○:パーライトラメラ間隔が0.3μm未満、
×:パーライトラメラ間隔が0.3μm以上。

0067

〔耐摩耗性〕
板状の試料片(高さ:25mm、長さ:50mm、板厚:1.8mm)をコイル状の相手材押し付けることによる、連続式摩擦摩耗試験を実施した。相手材として、ポリエステルフィルム基材に、JIS R6001の規定による粒度が#600であるWA(アルミナ砥粒均一分散させた基礎接着剤を塗布したものを用いた。試料を相手材に負荷荷重10Nで押し付け、摩擦速度5m/分、摩擦距離45mの条件により摩耗試験を行った。試験前後の試料片重量の変化から、比摩耗量(mm3/Nm)を算出した。

0068

鋼材を自動車部品または産業機械のチェーン部品等に使用することを考慮した場合、断面硬さ200HV以上400HV以下に調整された鋼材において、比摩耗量は12×10−3mm3/Nm未満であることが望まれる。したがって、耐摩耗性の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。
○:比摩耗量が12×10−3mm3/Nm未満、
×:比摩耗量が12×10−3mm3/Nm以上。

0069

〔靱性〕
各試料から、2mmUノッチ衝撃試験片(長さ:55mm、高さ:10mm、板厚:1.8mm、衝撃方向:圧延方向)を作製し、JIS Z2242:2005に従う方法で常温(23℃)のシャルピー衝撃値を測定した。ここでは5回試験を行い、得られた結果のうち最も低い値(成績の悪い値)を当該試料の衝撃値として採用した。

0070

鋼材を高速回転刃物(農産物刈り取り用丸鋸など)の素材として使用することを考慮した場合、この試験による衝撃値が100J/cm2以上であることが望まれる。したがって、靱性の評価を以下の基準に基づいて行った。結果を表3に示す。
○:シャルピー衝撃値が100J/cm2以上、
×:シャルピー衝撃値が100J/cm2未満。

0071

<結果>

0072

実施例

0073

表1〜3に示すように、C:0.40%以上0.90%以下を含む鋼板(鋼種A〜J)を用いており、初析フェライトを含む場合にその面積率が15%以下であり、または初析セメンタイトを含む場合にその長径が10μm以上であるセメンタイトを含んでおらず、パーライトラメラ間隔が0.3μm以下である本発明例によれば、耐摩耗性および靱性を高いレベルで両立できるという結果が得られた。

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