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課題
解決手段
概要
背景
皮膚に対して機能性を示す成分が知られており、例えば、ビタミンC又はその誘導体、ビタミンE又はその誘導体、ビタミンA又はその誘導体、グリチルリチン酸又はその誘導体、トラネキサム酸又はその誘導体、あるいは種々の保湿剤、美白剤、抗炎症剤、抗にきび剤、抗しわ剤、抗酸化剤などが挙げられる。従来、これらを医薬部外品や化粧品に配合して皮膚に作用させることが行われている(非特許文献1)。しかしながら、これらの機能性成分のなかには、製剤中で結晶化等により晶出し易い性質のものもあり、製品の品質の安定性の問題が生じていた。
一方、油相に水相が分散してなるW/O型乳化状の組成物であって、油相からなる連続相に比して水相からなる分散相の割合が所定値以上である、いわゆる高内相W/O型乳化組成物が知られている(特許文献1参照)。一般に、高内相W/O型乳化組成物のメリットとしては、化粧用等として、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立が得られる点が挙げられる。ただし、乳化状態を維持するのが難しく、経時安定性が低いことがそのデメリットとして挙げられる。
概要
皮膚に対して機能性を示す易晶出性水溶性有効成分を、化粧用組成物中に安定して含有させる技術を提供する。(A)乳化剤と、(B)油と 、(C)水と、(D)易晶出性水溶性有効成分とを含み、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物であることを特徴とする化粧用組成物である。また、易晶出性水溶性有効成分を、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物からなる化粧用組成物の該水相に含有せしめることを特徴とする化粧用組成物中の易晶出性水溶性有効成分の晶出抑制方法である。 なし
目的
本発明の目的は、皮膚に対して機能性を示す易晶出性水溶性有効成分を、化粧用組成物中に安定に含有させる技術を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
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請求項1
請求項2
前記(D)易晶出性水溶性有効成分は、ビタミンC誘導体を含む、請求項1記載の化粧用組成物。
請求項3
前記ビタミンC誘導体は、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム、イソステアリルアスコルビル2ナトリウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む、請求項2記載の化粧用組成物。
請求項4
前記化粧用組成物中の前記(D)易晶出性水溶性有効成分の含有量が、該易晶出性水溶性有効成分の乾燥固形分換算にして0.2質量%以上10.0質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧用組成物。
請求項5
更に油ゲル化剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧用組成物。
請求項6
更に微生物発酵産物を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧用組成物。
請求項7
水相の占める割合が75質量%以上85質量%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧用組成物。
請求項8
易晶出性水溶性有効成分を、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物からなる化粧用組成物の該水相に含有せしめることを特徴とする化粧用組成物中の易晶出性水溶性有効成分の晶出抑制方法。
請求項9
前記易晶出性水溶性有効成分は、ビタミンC誘導体を含む、請求項8記載の方法。
請求項10
前記ビタミンC誘導体は、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム、イソステアリルアスコルビル2ナトリウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む、請求項9記載の方法。
請求項11
前記化粧用組成物中の前記易晶出性水溶性有効成分の含有量が、該易晶出性水溶性有効成分の乾燥固形分換算にして0.2質量%以上10.0質量%以下である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
請求項12
前記化粧用組成物は、更に油ゲル化剤を含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
請求項13
前記化粧用組成物は、更に微生物発酵産物を含む、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
請求項14
前記化粧用組成物は、水相の占める割合が75質量%以上85質量%以下である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
技術分野
背景技術
0002
皮膚に対して機能性を示す成分が知られており、例えば、ビタミンC又はその誘導体、ビタミンE又はその誘導体、ビタミンA又はその誘導体、グリチルリチン酸又はその誘導体、トラネキサム酸又はその誘導体、あるいは種々の保湿剤、美白剤、抗炎症剤、抗にきび剤、抗しわ剤、抗酸化剤などが挙げられる。従来、これらを医薬部外品や化粧品に配合して皮膚に作用させることが行われている(非特許文献1)。しかしながら、これらの機能性成分のなかには、製剤中で結晶化等により晶出し易い性質のものもあり、製品の品質の安定性の問題が生じていた。
0003
一方、油相に水相が分散してなるW/O型乳化状の組成物であって、油相からなる連続相に比して水相からなる分散相の割合が所定値以上である、いわゆる高内相W/O型乳化組成物が知られている(特許文献1参照)。一般に、高内相W/O型乳化組成物のメリットとしては、化粧用等として、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立が得られる点が挙げられる。ただし、乳化状態を維持するのが難しく、経時安定性が低いことがそのデメリットとして挙げられる。
0004
新化粧品ハンドブック(2006)日光ケミカルズ
先行技術
0005
特開昭57−81827号公報
発明が解決しようとする課題
0006
本発明の目的は、皮膚に対して機能性を示す易晶出性水溶性有効成分を、化粧用組成物中に安定に含有させる技術を提供することにある。
課題を解決するための手段
0007
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、W/O型の乳化組成物、特に高内相W/O型乳化組成物によって、易晶出性水溶性有効成分の晶出を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
0008
すなわち、本発明の第1は、(A)乳化剤と、(B)油と 、(C)水と、(D)易晶出性水溶性有効成分とを含み、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物であることを特徴とする化粧用組成物を提供するものである。
0009
上記化粧用組成物によれば、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物を用いるので、易晶出性水溶性有効成分を含む場合も、その晶出を抑えて製剤的な安定性が良好である。よって、例えば、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立を企図した化粧料の形態であって、なお且つ、製品の品質の安定性にも優れた化粧用組成物を提供することができる。
0010
上記化粧用組成物においては、前記(D)易晶出性水溶性有効成分は、ビタミンC誘導体を含むことが好ましい。
0011
上記化粧用組成物においては、前記ビタミンC誘導体は、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム、イソステアリルアスコルビル2ナトリウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むことが好ましい。
0012
上記化粧用組成物においては、前記化粧用組成物中の前記(D)易晶出性水溶性有効成分の含有量が、該易晶出性水溶性有効成分の乾燥固形分換算にして0.2質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
0013
上記化粧用組成物においては、更に油ゲル化剤を含むことが好ましい。
0014
上記化粧用組成物においては、更に微生物発酵産物を含むことが好ましい。
0015
上記化粧用組成物においては、水相の占める割合が75質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
0016
一方、本発明の第2は、易晶出性水溶性有効成分を、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物からなる化粧用組成物の該水相に含有せしめることを特徴とする化粧用組成物中の易晶出性水溶性有効成分の晶出抑制方法を提供するものである。
0017
上記方法によれば、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物を用いるので、易晶出性水溶性有効成分を含む場合も、その晶出を抑えて製剤的な安定性が良好である。よって、例えば、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立を企図した化粧料の形態であって、なお且つ、製品の品質の安定性にも優れた化粧用組成物を提供することができる。
0018
上記方法においては、前記易晶出性水溶性有効成分は、ビタミンC誘導体を含むことが好ましい。
0019
上記方法においては、前記ビタミンC誘導体は、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム、イソステアリルアスコルビル2ナトリウムからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むことが好ましい。
0020
上記方法においては、前記化粧用組成物中の前記易晶出性水溶性有効成分の含有量が、該易晶出性水溶性有効成分の乾燥固形分換算にして0.2質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
0021
上記方法においては、前記化粧用組成物は、更に油ゲル化剤を含むことが好ましい。
0022
上記方法においては、前記化粧用組成物は、更に微生物発酵産物を含むことが好ましい。
0023
上記方法においては、前記化粧用組成物は、水相の占める割合が75質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
発明の効果
0024
本発明によれば、水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物を用いるので、易晶出性水溶性有効成分を含む場合も、その晶出を抑えて製剤的な安定性が良好である。よって、例えば、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立を企図した化粧料の形態であって、なお且つ、製品の品質の安定性にも優れた化粧用組成物を提供することができる。
図面の簡単な説明
0025
図1は、試験例1において調製物を各温度条件で3ヶ月間保管しその保管期間終了後に偏光顕微鏡で観察したときの結果の一例を示す偏光顕微鏡写真である。
図2は、試験例2において調製物を50℃の条件下に3ヵ月間保管しその保管期間終了後にビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)の残存率を調べた結果を示す図である。
図3は、試験例3において調製物を各温度条件で3ヶ月間保管しその保管期間終了後に偏光顕微鏡で観察したときの結果の一例を示す偏光顕微鏡写真である。
0026
本発明は、皮膚に作用させることを企図した有効成分の製剤的な安定性の向上のために、特定の性状を備えた乳化組成物を用いる技術に関するものであり、より詳細には、高内相W/O型乳化組成物に易晶出性水溶性有効成分を含有せしめてなる化粧用組成物に関するものである。ここで、本明細書において「易晶出性水溶性有効成分」とは、皮膚に対して何等か任意に機能性を示す成分のなかで易晶出性且つ水溶性の性質を示すものを指す。「水溶性」とは、高内相W/O型乳化組成物の水相からなる分散相に溶解もしくは分散して、有効量で存在し得る性質を有する成分であることを意味する。また、「易晶出性」とは、水等の水性溶媒に溶解もしくは分散させたときに結晶等が生じやすい性質を有する成分であることを意味する。「易晶出性」について、より具体的には、精製水に溶解もしくは分散させ、所定条件下に保管したとき、より典型的には40℃で3ヵ月間保管したとき、もしくは、5℃で3ヵ月間保管したとき、結晶等の形成により成分のうちの少なくとも一部が固形状となるものが観察される性質を有する成分であることを意味する。
0027
本発明においては、化粧用組成物として、高内相W/O型乳化組成物を用いる。すなわち、後述の実施例に示されるように、易晶出性水溶性有効成分を高内相W/O型乳化組成物に含有せしめると、晶出が抑制されて、その製剤的な安定性は、他の乳化状の形態の組成物や水性組成物の場合よりも向上する。高内相W/O型乳化組成物の水相の占める割合としては、典型的には70質量%以上99質量%以下であり、より典型的には74質量%以上95質量%以下であり、更により典型的には74質量%以上90質量%以下である。水相からなる分散相の占める割合が上記範囲未満であると、例えば、さっぱりとした使用感や高い保湿効果等、高内相W/O型乳化組成物に特徴的な性質が得られなくなる場合があるので好ましくない。ただし、高内相W/O型乳化組成物の水相の占める割合は、75質量%以上85質量%以下であることが更により好ましい。水相の割合が75質量%未満であると、易晶出性水溶性有効成分の晶出を抑制する効果に乏しくなる傾向があり、ひいてはその製剤的な安定性の向上の効果に乏しくなる傾向がある。また、水相の割合が85質量%を超えると、乳化組成物の乳化状態の安定性自体に問題が生じる場合がある。
0028
ここで、一般に乳化組成物の乳化状態として、油相中に水相が分散してなるW/O型の乳化状態を形成しているかどうかは、当業者に周知の方法により、例えば、試験管に入れた水に乳化物を滴下し、分散しなければW/O型の乳化状態であると判定することができる(希釈法)。また、例えば、乳化物にテスターの電極部分を接触させ電気伝導度を測定することによりW/O型の乳化状態であることを確認することができる(電気伝導度法)。更に、例えば、水溶性または油溶性色素を添加し、顕微鏡像によりW/O型の乳化状態であることを確認することができる(色素法)。
0029
本発明で用いられる易晶出性水溶性有効成分(D)としては、従来から皮膚に適用されている成分であってもよく、あるいは新規な成分であってもよく、特に制限されるものではない。従来から皮膚に適用されているものとしては、例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム、イソステアリルアスコルビル2ナトリウム等のビタミンC誘導体、フェルラ酸、フェルラ酸アルギニン等のケイ皮酸誘導体、ピリドキシン環状リン酸、アデノシンリン酸、アデノシン3リン酸等のリン酸化合物、アスタキサンチン、アントシアニン、イソフラボン等のポリフェノール、カフェインなどが挙げられる。これらは、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
0030
以下には、本発明に係る化粧用組成物について、更に詳細に説明する。ただし、本発明に係る化粧用組成物は、上記したように水相の占める割合が70質量%以上の高内相W/O型乳化組成物の性状を備え、易晶出性水溶性有効成分を含有せしめてなるものであればよく、以下に説明する好ましい態様は、本発明の範囲をなんら制限するものではない。
0031
本発明に係る化粧用組成物は、その好ましい態様においては、成分(A)として乳化剤を、成分(B)として油を、成分(C)として水を、成分(D)として易晶出性水溶性有効成分を含む。
0032
成分(A)の乳化剤としては、一般に化粧料等に使用可能な乳化剤を適宜選択して使用すればよいが、特にエステルを構成する脂肪酸が不飽和である親油性の界面活性剤が好ましい。例えば不飽和脂肪酸としてオレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リシノレイン酸などが挙げられ、界面活性剤の親水部分としては、ショ糖、グリセリン、ソルビタン、オキシエチレンなどが挙げられる。なかでも、オレイン酸スクロースやエルカ酸スクロースを用いるのが好ましい。また、使用感、安定性および乳化組成物の粘性の観点より、エステルを構成する脂肪酸が飽和脂肪酸であるパルミチン酸やステアリン酸である界面活性剤を併用してもよい。なかでもパルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロースを用いるのが好ましい。また、使用感の観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル、特に縮合リシノレイン酸ペンタグリセリンを用いることが好ましい。なお、乳化剤とは、水と油を乳化させる機能性を有する物質一般を指し、例えば、界面活性剤と称される場合であっても、そのような機能性を有する限り、乳化剤として使用可能である。
0033
成分(A)は、乳化剤として、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
0034
成分(A)の含有量としては、成分(B)〜(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる乳化剤の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。上記範囲を外れると、安定な乳化組成物を形成し難くなる場合がある。
0035
成分(B)の油としては、一般に化粧料等に使用可能な油を適宜選択して使用すればよく、特に制限はないが、例えば、高内相W/O型乳化組成物を調製する観点からは、その調製温度(例えば80℃)で液体状となる油を用いることが好ましい。また、低粘で肌に塗布しやすい乳化液体状の化粧料とする観点からは、常温(25℃)で液体状となる油を用いることが好ましい。
0036
具体的には、例えば、脂肪酸類とアルコール類とをエステル結合してなるエステル油である。エステル油としては、例えば、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸2−オクチルドデシル、ジ2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、2−エチルヘキサン酸ジグリセリド、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が好ましい。
0037
また、例えば、炭化水素系の非エステル油である。非エステル油としては、例えば、ミネラルオイル(流動パラフィン)、スクワラン、スクワレン、セレシン等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、ミネラルオイル、スクワラン等が好ましい。
0038
また、例えば、シリコーン系のシリコーン油である。シリコーン油としては、例えば、ジフェニルシロキシトリメチコン、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、フェニルトリメチコン、シクロペンタシロキサン等が挙げられる。メイクなじみや、2種以上の油を使用する場合の他の油相成分との相溶性の観点からは、ジフェニルシロキシトリメチコン、シクロペンタンシロキサン等が好ましい。
0039
また、例えば、植物油である。植物油としては、例えば、ホホバ油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ツバキ油、アボガド油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、ヘーゼルナッツ油、メドウフォーム油等が挙げられる。安定性の観点からは、マカダミアナッツ油、メドウフォーム油等が好ましい。
0040
成分(B)の油として、上記した油は、その1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
0041
成分(B)の油としては、高内相W/O型乳化組成物を調製する温度(例えば80℃)で液体状となる油、もしくは常温(25℃)で液体状となる油に属するもの以外の油、すなわち、より高融点油(以下「他の油」とする)を適宜併用してもよい。他の油としては、一般に化粧料等に使用可能な乳化剤を適宜選択して使用すればよいが、例えば、化粧料の使用感を調整するとの観点から、例えば、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)などの半固形油や、ステアリン酸バチル、ベヘニルアルコール、蜜蝋、コレステロールなどの固形油等が挙げられる。
0042
上記した他の油は、成分(B)の油として、その1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
0043
ただし、乳化組成物の調製温度(例えば80℃)で液体状のものを用いる観点、もしくは低粘で肌に塗布しやすい乳化液体状の化粧料とする観点からは、成分(B)の油の全量中に、上記した他の油の含有量は、0質量%超50質量%以下であることが好ましく、0質量%超25質量%以下であることがより好ましく、0質量%超10質量%以下であることが更により好ましい。また、場合によっては、含まれないことが最も好ましい。
0044
成分(B)の含有量(上記した他の油を含む場合や2種類以上の油を含む場合には、それらの合計量として)としては、成分(A)、(C)、及び(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる油の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。上記範囲を超えると、水相からなる分散相の占有比を維持し難くなる場合がある。また、上記範囲未満であると、W/O型の乳化状態を維持し難くなる場合がある。
0046
成分(C)の含有量としては、成分(A)、(B)、及び(D)の配合量や他の原料の配合量との関係等によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に20質量%以上99質量%以下であることが好ましく、30質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、30%質量%以上90質量%以下が特に好ましい。上記範囲未満であると、水相からなる分散相の占有比を維持し難くなる場合がある。また、上記範囲を超えると、W/O型の乳化状態を維持し難くなる場合がある。
0047
成分(D)の易晶出性水溶性有効成分の含有量としては、成分(A)〜(C)の配合量や他の原料の配合量との関係等によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に、該易晶出性水溶性有効成分の乾燥固形分換算で0.2質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下が特に好ましい。上記範囲未満であると、当該有効成分を配合したことによる作用効果を得難くなる場合がある。また、上記範囲を超えると、乳化組成物の乳化状態を安定に維持し難くなる場合がある。
0048
本発明に係る化粧用組成物には、その乳化状態のより一層の安定化のためには、油ゲル化剤を含有せしめてもよい。
0049
油ゲル化剤としては、一般に化粧料等に使用可能な油ゲル化剤を適宜選択して使用すればよく、特に制限はない。例えば、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の多糖と脂肪酸のエステル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、バチルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコールや有機変性粘度鉱物等が挙げられる。なかでも、デキストリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を用いることが好ましく、より具体的には、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘン酸グリセリル等を用いることが好ましい。
0050
油ゲル化剤は、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
0051
油ゲル化剤の含有量としては、成分(A)〜(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる油ゲル化剤の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中におよそ0.05質量%以上程度含有せしめれば、安定な乳化組成物の形成に寄与し得る。好ましくは0.1質量%以上であり、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが更により好ましい。上記範囲未満であると、組成物の乳化状態を安定化する効果に乏しくなる。また、上記範囲を超えて含有せしめても、その含有量に応じて乳化状態を安定化する効果に乏しく、かえって、安定な乳化組成物の形成を妨げる場合がある。
0052
本発明に係る化粧用組成物には、上記した成分の他に、一般に化粧料等に配合される成分、例えば、アルコール類、有機酸類、塩類、防腐剤、香料、色素、抗菌剤、植物抽出物等を配合することは任意であり、適宜可能である。また、増粘のための増粘剤を配合してもよい。
0053
アルコール類としては、肌にしっとり感を付与し、使用感を向上させるという観点からは、例えば、ソルビトール、キシリトール、マルチトールといった糖アルコールや、グリセリン、ジグリセリン等の3価以上の多価アルコールを適宜配合してもよい。また、防腐力等の観点から、例えば、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンチレングリコール、1,2−へキシレングリコール等の2価のアルコールや、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、フェノキシエタノール等の1価のアルコールを適宜配合してもよい。
0054
また、化粧料の使用感を調整するとの観点から、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ケイ酸(Al/Mg)、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル重合体等の水系増粘剤を適宜配合してもよい。
0055
本発明の好ましい態様においては、その他の素材として、更に、微生物発酵産物を含むことができる。微生物発酵産物は、これに含まれるアミノ酸等の成分が、皮膚に対して保湿作用などの有効性を与える。微生物発酵産物としては、一般に化粧料等に配合される成分を乳酸菌(ビフィズス菌を含む)や酵母で発酵させた培養物、培養上清、その培養物及び/又は培養上清から水もしくは含水アルコール等により抽出した抽出物等が挙げられる。例えば、特公平02−040643号公報に記載されているような乳酸菌/牛乳発酵液、特許第4512265号公報に記載されているような乳酸菌/牛乳発酵液、特許第3795011号公報に記載されているような乳酸桿菌/アロエベラ発酵液、特許第3184114号公報に記載されているような豆乳/ビフィズス菌発酵液、特開2017−212894号公報に記載されているような乳成分含有培地の乳酸菌培養物をクリベロマイセス・マキシアヌスで発酵させた培養物、WO2016/117489公報に記載されているような乳成分含有培地の乳酸菌培養物をウィッカーハモマイセス・ピジュペリで発酵させた培養物等が挙げられるが、これらに限らない。
0056
微生物発酵産物の含有量としては、成分(A)〜(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる微生物発酵産物の種類や配合目的によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に、該微生物発酵産物の乾燥固形分換算で0.001質量%以上0.4質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましい。上記範囲未満であると、当該微生物発酵産物を配合したことによる効果を得難くなる。また、上記範囲を超えると、乳化組成物の乳化状態を安定に維持し難くなる。
0057
本発明に係る化粧用組成物は、通常、当業者に周知の調製方法のとおり、成分(B)の油を主体とし、油によく溶解し又は分散させることができる原料を混合もしくは分散させて、原料となる油相(以下、「原料となる油相」という場合がある。)を調製し、成分(C)の水を主体とし、水によく溶解し又は分散させることができる原料を混合もしくは分散させて、原料となる水相(以下、「原料となる水相」という場合がある。)を調製し、必要とあれば、適当な温度条件下、例えば室温〜80.0℃にて、それら原料となる油相に水相を少量ずつ添加しながら撹拌ミキサー等により分散させることにより調製することができる。一旦乳化状態を形成した後は、例えば室温等にそのまま冷却してもよく、あるいは徐々に温度を下げつつ撹拌を継続する、撹拌冷却の工程を採用してもよい。なお、上記した油ゲル化剤は、一般に油に親和性を有する場合が多いので、その調製の際には、原料となる油相に混合もしくは分散させることが好ましい。一方、成分(D)の易晶出性水溶性有効成分は、原料となる水相に混合もしくは分散させることが好ましい。
0058
本発明に係る化粧用組成物は、それをそのまま化粧料の形態にして用いてもよく、あるいは化粧料の原料の形態にして化粧料の製造工程で配合するようにして用いてもよい。具体的には、例えば、乳液、クリーム、クレンジング、マッサージ、サンスクリーン、化粧下地、クリームファンデーション等の化粧料の形態や、その原料の形態として、好適に用いられる。なお、ここでいう化粧料は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律で定義されている医薬品、医薬部外品、化粧品を含む。
0059
以下実施例を挙げて更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
0060
[試験例1]
表1に示す配合で、ビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルマグネシウムを含有する、各種の組成物を調製した。以下、リン酸アスコルビルマグネシウムは「VC-PMG」と略称する場合がある。
0061
・調製例1−1:水相からなる分散相と油相からなる連続相との比が85:15であるW/O型乳化組成物(リン酸アスコルビルマグネシウム3質量%含有)
・調製例1−2:油相からなる分散相と水相からなる連続相との比が13.9:86.1であるO/W型乳化組成物(リン酸アスコルビルマグネシウム3質量%含有)
・調製例1−3:水溶性成分を含む水相のみからなる水性組成物(リン酸アスコルビルマグネシウム3質量%含有)
0062
具体的には、調製例1−1及び調製例1−2については、まず、油相及び水相を構成する各原料を表1に示す配合で秤量後、70〜80℃にて混合・溶解して、原料となる油相と原料となる水相をそれぞれ別個に調製した。次に調製例1−1の場合には、その原料となる油相に原料となる水相を少量ずつ添加しながら、あるいは調製例1−2の場合には、その原料となる水相に原料となる油相を少量ずつ添加しながら、70〜80℃にてディスパーミキサー(商品名「T.K.ロボミックス」(撹拌翼φ40mm)、プライミクス株式会社製)を使用して、その撹拌翼の回転速度を2500rpmに設定して、それら原料となる油相と水相とを混合した。その後、35℃まで撹拌冷却して、各種乳化組成物(調製例1−1及び調製例1−2)を調製した。また、調製例1−3については、表1に示す水溶性原料のうち、1,2−ペンタンジオールとメチルパラベンを、70〜80℃にて混合・溶解させた後、室温で混合・溶解した残りの原料に添加して、水性組成物を調製した。
0063
なお、調製例1−1及び調製例1−2の乳化型は、バルクの通電により判定した。すなわち、テスター(「SanwaYX-361TR」、三和電気計器株式会社)を使用し、テスター端子を調製物に接触させたとき、通電した場合にはO/W型、通電しなかった場合にはW/O型と判断した。
0064
0066
(結晶形成の確認)
結晶は規則的な構造から光学的に異方であり、偏光顕微鏡下では光る像が観察される。そこで、各温度での保管期間を終了した調製物を偏光顕微鏡にて観察し、結晶形成の状態を評価した。図1には、結果の一例として偏光顕微鏡写真を示す。
0067
(HPLCによる定量分析)
保管中の結晶形成は、おもにリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)によるものと考えられた。そこで、晶出せずに溶解もしくは分散状態にあるVC-PMGの残存率を調べた。具体的には、調製物0.2gをマイクロチューブに入れ、1,2−ペンタンジオール150μLを加えてボルテックスミキサーにて混合後、精製水で5倍(w/w)希釈してから遠心分離(日立製作所製CF-16RN、15,000rpm、10分間)し、その上清を0.22μmフィルターで濾過した。濾液を更に精製水で20倍(v/v)希釈し、これを下記の分析条件によるHPLC分析にかけて、VC-PMGの定量分析を行った。VC-PMGの配合量に対する残存率は、下記式(1)にて算出した。
0068
VC-PMG残存率(%)=HPLCによる定量値/配合量×100…(1)
0069
〔HPLC分析条件〕
システム:UHPLCUltimate3000(Thermo Fisher Scientific)
カラム:Kinetex 2.6umEVO C18(150x4.6mm)
移動相:20mMリン酸緩衝液(pH2.05)
流速:0.7mL/min
検出波長:UV238nm
0070
VC-PMGの残存率の結果を、表2に示す。
0071
0072
その結果、O/W型乳化組成物である調製例1−2や水性組成物である調製例1−3では、40℃及び50℃での保管後の容器底部に結晶が沈殿しており(図中に示されない)、不均一化が顕著であったが、高内相W/O型乳化組成物である調製例1−1では結晶の晶出が少なく、晶出が抑制されていた。
0073
一方、HPLC分析によるVC-PMGの残存率を調べた結果によれば、表2に示されるように、高内相W/O型乳化組成物である調製例1−1では、50℃での保管条件でも96%以上が溶解もしくは分散状態で検出できたのに対して、O/W型乳化組成物である調製例1−2や水性組成物である調製例1−3では、40℃での保管条件では残存率がおよそ80%程度にまで低下し、更に50℃での保管条件では調製例1−2では残存率がおよそ60%程度になり、調製例1−3では残存率がおよそ70%程度になった。
0074
以上から、高内相W/O型乳化組成物は、ビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)の結晶の晶出抑制に有効な剤型であることが明らかとなった。
0075
[試験例2]
表3に示す配合で、ビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)を含有する各種のW/O型乳化組成物を調製し、製剤的な評価を行った。調製の方法は、試験例1における調製例1−1と同様とし、50℃の条件下に3ヵ月間保管後のVC-PMGの残存率を測定した。その結果、調製例2−1の残存率は95%、調製例2−2の残存率は94.8%、調製例2−3の残存率は91.9%、調製例2−4の残存率は74.5%であった。結果を図2に示す。
0076
0078
[試験例3]
表4に示す配合で、ビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)を含有する各種のW/O型乳化組成物を調製し、製剤的な評価を行った。調製と評価の方法は、試験例1における調製例1−1と同様とした。図3には、結果の一例として偏光顕微鏡写真を示し、表5には、VC-PMGの残存率の結果を示す。
0079
0080
0081
その結果、O/W型乳化組成物である調製例3−2では、50℃での保管後の容器底部に結晶が沈殿しており(図中に示されない)、不均一化が顕著であった。一方、高内相W/O型組成物である調製例3−1では結晶の晶出が抑制されていた。
0082
一方、HPLC分析によるVC-PMGの残存率を調べた結果によれば、表5に示されるように、高内相W/O型乳化組成物である調製例3−1では、50℃での保管条件でもおよそ90%近くが溶解もしくは分散状態で検出できたのに対して、O/W型乳化組成物である調製例3−2では、50℃での保管条件では残存率がおよそ70%程度にまで低下した。
0083
以上から、油相に含める乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを用いて調製した高内相W/O型乳化組成物は、試験例1〜2で示された、油相に含める乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルを用いて調製した高内相W/O型乳化組成物と同様、ビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)の結晶の晶出抑制に有効な剤型であることが明らかとなった。
0084
[試験例4]
表6に示す配合で、ビタミンC誘導体であるリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)を含有する各種のW/O型乳化組成物を調製し、得られた調製物をネジ口瓶に充填し、40℃の条件下に9ヵ月間保管後、HPLCによる定量分析を用いて製剤的な評価を行った。調製と評価の方法は、試験例1における調製例1−1と同様とした。表7には、VC-PMGの残存率の結果を示す。
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0086
実施例
0087
その結果、リン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG)の濃度が0.5、1.0、5.0%の場合であっても、高内相W/O型乳化組成物が結晶の晶出抑制に有効な剤型であることが明らかとなった。