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技術 表面被覆切削工具

出願人 三菱マテリアル株式会社
発明者 引田和宏大上強
出願日 2019年2月20日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-027977
公開日 2020年8月31日 (2ヶ月経過) 公開番号 2020-131360
状態 未査定
技術分野 物理蒸着 フライス加工 穴あけ工具 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット
主要キーワード 大電力パルス カッタ径 結晶粒幅 複数視野 耐摩耗性被覆 損耗状況 解析範囲 ピニオンカッタ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

すぐれた耐異常損傷性耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。

解決手段

(TixAl1−x)Nからなる組成(0.10≦x≦0.35)のTiAlN層を含む表面被覆切削工具において、TiAlN層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、該縦断面において微細結晶粒が縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、該縦断面において工具基体表面の法線立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する微細結晶粒が、縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であり、刃先稜線部の縦断面の面積に対して、50nm以上の大きさの混入溶滴の面積の和及び10nm以上50nm未満の大きさの混入溶滴の面積の和の占める面積比率は、0.001%以下、0.001〜0.100%である。

概要

背景

一般に、被覆工具として、各種の鋼や鋳鉄などの被削材旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルミニチュアドリル、前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるエンドミル、前記被削材の歯形の歯切加工などに用いられるソリッドホブピニオンカッタなどが知られている。
そして、被覆工具の切削性能改善を目的として、従来から、数多くの提案がなされている。

例えば、特許文献1に示すように、工具基体表面に、物理蒸着によって堆積された耐火性層を含むコーティングを含む被覆工具であって、 前記耐火性層がM1−xAlxN(式中、x≧0.68であり、MがTi、CrまたはZrである)を含み、前記耐火性層が立方晶結晶相を含有し、少なくとも25GPaの硬度を有する厚膜、高硬度および低残留応力耐摩耗性被覆工具が提案されている。

また、特許文献2には、工具基体表面にTiAlN層からなる硬質被覆層被覆した被覆工具において、上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点(Ti最低含有点)とAl最低含有点(Ti最高含有点)とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl(Ti)含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、さらに、上記Al最高含有点が、組成式:(Ti1−XAlX)N(ただし、原子比で、Xは0.70〜0.95を示す)、上記Al最低含有点が、組成式:(Ti1−YAlY )N(ただし、原子比で、Yは0.40〜0.65を示す)、をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである耐摩耗性にすぐれた被覆工具が提案されている。

また、特許文献3には、工具基体表面に、TiAlN層を含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、TiAlNの平均組成を、組成式:(TixAl1−x)Nで表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足し、TiAlN層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、また、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、さらに、工具基体表面の法線立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積の10面積%以上を占める表面被覆切削工具が提案されている。

さらに、特許文献4には、工具基体の表面に、大電力パルススパッタリング(High Power Impulse Magnetron Sputtering:HiPIMS)により、ドロップレットのない硬質皮膜を作製した表面被覆切削工具が提案されている。

概要

すぐれた耐異常損傷性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。(TixAl1−x)Nからなる組成(0.10≦x≦0.35)のTiAlN層を含む表面被覆切削工具において、TiAlN層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、該縦断面において微細結晶粒が縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、該縦断面において工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する微細結晶粒が、縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であり、刃先稜線部の縦断面の面積に対して、50nm以上の大きさの混入溶滴の面積の和及び10nm以上50nm未満の大きさの混入溶滴の面積の和の占める面積比率は、0.001%以下、0.001〜0.100%である。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

WC基超硬合金TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、(a)前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、組成式:(TixAl1−x)Nで表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、(b)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、(c)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、(d)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面の法線立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であり、(e)前記TiとAlの複合窒化物層の少なくとも刃先稜線部の縦断面においては、最大長さが50nm以上の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Sdp)が、前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対して占める面積比率Sdp/Scは、0.100%以下であり、かつ、最大長さ10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Ssdp)の前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対する面積比率Ssdp/Scが0.001%以上0.100%以下である、ことを特徴とする表面被覆切削工具。

請求項2

前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒はその結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まないことを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。

技術分野

0001

この発明は、溶着性の高い被削材高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐異常損傷性耐摩耗性を発揮し、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。

背景技術

0002

一般に、被覆工具として、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルミニチュアドリル、前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるエンドミル、前記被削材の歯形の歯切加工などに用いられるソリッドホブピニオンカッタなどが知られている。
そして、被覆工具の切削性能改善を目的として、従来から、数多くの提案がなされている。

0003

例えば、特許文献1に示すように、工具基体表面に、物理蒸着によって堆積された耐火性層を含むコーティングを含む被覆工具であって、 前記耐火性層がM1−xAlxN(式中、x≧0.68であり、MがTi、CrまたはZrである)を含み、前記耐火性層が立方晶結晶相を含有し、少なくとも25GPaの硬度を有する厚膜、高硬度および低残留応力耐摩耗性被覆工具が提案されている。

0004

また、特許文献2には、工具基体表面にTiAlN層からなる硬質被覆層を被覆した被覆工具において、上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点(Ti最低含有点)とAl最低含有点(Ti最高含有点)とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl(Ti)含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、さらに、上記Al最高含有点が、組成式:(Ti1−XAlX)N(ただし、原子比で、Xは0.70〜0.95を示す)、上記Al最低含有点が、組成式:(Ti1−YAlY )N(ただし、原子比で、Yは0.40〜0.65を示す)、をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである耐摩耗性にすぐれた被覆工具が提案されている。

0005

また、特許文献3には、工具基体表面に、TiAlN層を含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、TiAlNの平均組成を、組成式:(TixAl1−x)Nで表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足し、TiAlN層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、また、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、さらに、工具基体表面の法線立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積の10面積%以上を占める表面被覆切削工具が提案されている。

0006

さらに、特許文献4には、工具基体の表面に、大電力パルススパッタリング(High Power Impulse Magnetron Sputtering:HiPIMS)により、ドロップレットのない硬質皮膜を作製した表面被覆切削工具が提案されている。

先行技術

0007

特開2015−36189号公報
特開2003−211304号公報
特開2018−161736号公報
特表2015−501371号公報

発明が解決しようとする課題

0008

近年の切削加工装置高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工はますます高速化・高能率化の傾向にあるが、上記従来の被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工に用いた場合には、特段の問題は生じないが、これを、例えば、溶着性の高い被削材の高速断続切削加工に供した場合には、溶着チッピング欠損等の異常損傷を発生しやすく、また、摩耗進行も促進されるため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。

0009

例えば、特許文献1に示される従来被覆工具においては、M1−xAlxNの一つの形態であるTiAlN層は高硬度で耐摩耗性にすぐれる層であり、Al含有量が多いほど耐摩耗性にすぐれるが、その一方で、格子歪が大きくなるため、耐欠損性が低下するという問題がある。
また、特許文献2に示される従来被覆工具においては、層厚方向に組成変化を形成することで高温硬さと耐熱性靱性両立せしめることができるが、層厚方向に形成される層内の異方性によって、層厚垂直方向クラックの発生・伝播を十分に防止することはできないという問題がある。
また、特許文献3に示される従来被覆工具においては、合金鋼の高速断続切削加工においては、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を示すが、例えば、Ni基耐熱合金、Ti基耐熱合金ステンレス鋼のような溶着性の高い被削材の高速断続切削加工においては、溶着が生じやすくなるため、耐チッピング性、耐欠損性等の耐異常損傷性が十分とはいえず、満足できる切削性能を発揮するとは言い難い。
さらに、特許文献4に示される従来被覆工具は、高硬度で低残留応力の皮膜を有しているとされているが、溶着性の高い被削材の高速断続切削加工に供した場合には、溶着の発生によって、工具寿命短命である。

課題を解決するための手段

0010

そこで、本発明者等は、溶着性の高い被削材の高速断続切削加工のように、切削加工時に発生する高熱によって被削材との溶着を発生しやすく、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する切削加工条件下で、硬質被覆層がすぐれた耐異常損傷性と耐摩耗性を両立し得る被覆工具を開発すべく、硬質被覆層の成分組成結晶構造および層構造等に着目し研究を行った結果、以下のような知見を得た。

0011

即ち、本発明者等は、工具基体表面に、少なくともTiとAlの複合窒化物(以下、「TiAlN」で示す場合がある。)層を含む硬質被覆層を設けた被覆工具において、該層におけるAlのTiとAlの合量に占める組成割合を比較的高くし、もって、硬質被覆層全体としての耐摩耗性を確保することができること、また、前記TiAlN層を超微粒結晶粒と微細結晶粒で構成するとともに、前記微細結晶粒の占める面積割合を10〜70面積%とし、前記微細結晶粒の(001)面の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下となる前記微細結晶粒の占める面積割合を、微細結晶粒の全面積の10面積%以上とすることによって、微細結晶粒で耐摩耗性を向上させつつ、超微粒結晶粒で切削加工時の衝撃を緩和することができること、さらに、被覆工具の刃先稜線部に存在する混入溶滴(ドロップレットあるいはパーティクルともいう)の面積率を適正な範囲に定めることによって、被削材と硬質被覆層表面の混入溶滴の反応性を低下せしめることができ、これによって溶着チッピングの発生を低減できるとともに、刃先稜線部の靱性を高め、好ましくは結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まないので切削加工時に刃先に作用する衝撃を緩和することができるため、クラックの伝播・進展を抑制し、硬質被覆層のチッピング発生、欠損発生、剥離発生を抑制できることを知見したのである。

0012

したがって、本発明の被覆工具は、Ni基耐熱合金、Ti基耐熱合金、ステンレス鋼のような溶着性の高い被削材を、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する高速断続切削加工に供した場合であっても、すぐれた耐異常損傷性と耐摩耗性を発揮することができるのである。

0013

この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
WC基超硬合金TiCN基サーメットおよび立方晶窒化硼素焼結体のいずれかからなる工具基体表面に、0.5〜10.0μmの平均層厚のTiとAlの複合窒化物層を少なくとも含む硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具において、
(a)前記TiとAlの複合窒化物層は、その組成を、
組成式:(TixAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有し、
(b)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面と平行な方向に測定した結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、
(c)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒が前記縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、
(d)前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合は、10面積%以上であり、
(e)前記TiとAlの複合窒化物層の少なくとも刃先稜線部の縦断面においては、最大長さが50nm以上の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Sdp)が、前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対して占める面積比率Sdp/Scは、0.100%以下であり、かつ、最大長さ10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和(Ssdp)の前記刃先稜線部の縦断面の面積(Sc)に対する面積比率Ssdp/Scが0.001%以上0.100%以下であり、
好ましくは前記TiとAlの複合窒化物層の縦断面において、前記微細結晶粒はその結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まない、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。

発明の効果

0014

本発明の被覆工具は、硬質被覆層が少なくともTiAlN層を含み、該TiAlN層は、結晶粒幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、かつ、好ましくは、結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まず、前記微細結晶粒がTiAlN層の縦断面に占める面積割合は10〜70面積%であり、さらに、立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒は、前記縦断面の微細結晶粒の全面積の10面積%以上を占めることから、微細結晶粒の存在によって耐摩耗性を向上させつつ、一方、超微粒結晶粒が切削加工時の衝撃を緩和することができる。
また、刃先稜線部のTiAlN層について、Sdp/Scの値を、0.100%以下であり、かつSsdp/Scの値を、0.001%以上0.100%以下と定めることにより、刃先に作用する高負荷に対してTiAlN層の靱性を維持することができるとともに、溶着発生を原因とする溶着チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生を抑制することができる。
したがって、本発明の被覆工具は、Ni基耐熱合金、Ti基耐熱合金、ステンレス鋼のような溶着性の高い被削材を、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する高速断続切削加工に供した場合であっても、すぐれた耐異常損傷性と耐摩耗性を発揮する。
さらに、本発明の被覆工具は、結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まない場合、結晶粒幅が100nmを超える過度に粗大なTiAlN結晶粒が存在しないので、TiAlN層全体における粒界の長さが短くならないため、切削加工時に加わる衝撃を分散しやすくなり、すぐれた耐欠損性を発揮する。

図面の簡単な説明

0015

工具基体表面の法線(断面研磨面における工具基体表面と垂直な方向)に対する微細結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角が0度の場合を示した模式図である。
工具基体表面の法線(断面研磨面における工具基体表面と垂直な方向)に対する微細結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角が20度の場合を示した模式図である。
工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす傾斜角度分布の一例を示すグラフである。
本発明被覆工具刃先部分の縦断面の概略模式図を示し、本発明でいう刃先稜線部とは、図中A−B−C−Dで囲まれたTiAlN層の領域である。
本発明被覆工具のTiAlN層を成膜するのに用いる高出力インパルスマグネトロンスパッタリング装置アークイオンプレーティング装置を併設した物理蒸着装置(HiPIMS/AIP装置)の概略図を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。

0016

つぎに、この発明の被覆工具について、詳細に説明する。

0017

TiAlN層の平均層厚:
硬質被覆層は、少なくともTiAlN層を含むが、該TiAlN層の平均層厚が0.5μm未満では、TiAlN層によって付与される耐摩耗性向上効果が十分に得られず、一方、平均層厚が10.0μmを超えると、TiAlN層の中の歪みが大きくなり自壊しやすくなるため、TiAlN層の平均層厚を0.5〜10.0μmとする。

0018

TiAlN層の平均組成:
TiAlN層を、
組成式:(TixAl1−x)N
で表した場合、0.10≦x≦0.35(ただし、xは原子比)を満足する平均組成を有することが必要である。
Ti成分の平均組成を表すxが0.10未満である場合には、六方晶構造のTiAlN結晶粒が形成されやすくなり、TiAlN層の硬度が低下し十分な耐摩耗性を得ることができない。
一方、Ti成分の平均組成を表すxが0.35を超える場合には、Al成分の組成割合が減少するため、TiAlN層の高温硬さおよび高温耐酸化性が低下する。
したがって、Ti成分の平均組成xは、0.10≦x≦0.35とする。
なお、前記組成式において、N/(Ti+Al+N)の値は、必ずしも、化学量論比である0.5である必要はなく、工具基体表面の汚染の影響などで不可避的に検出される炭素酸素などの元素をのぞいてTi、Al、Nの含有割合の原子比を定量し、TiとAlとNの含有割合の原子比の合計に対するNの含有割合の原子比が0.45以上0.65以下の範囲であれば、本発明のTiAlN層において同等の効果が得られ特に問題は無い。

0019

TiAlN層中の微細結晶粒:
本発明のTiAlN層では、工具基体表面と平行な方向に測定したTiAlN結晶粒の幅が30〜100nmである微細結晶粒を含み、前記微細結晶粒が前記TiAlN層の縦断面に占める面積割合は10〜70面積%とし、好ましくは結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含まない。
ここで、微細結晶粒の結晶粒幅を30〜100nmと定め、好ましくは結晶粒幅が100nmより大きい粗大結晶粒を含めなかったのは、次の理由による。
結晶粒幅が100nmを超える過度に粗大なTiAlN結晶粒が存在すると、TiAlN層全体における粒界の長さが短くなるために、切削加工時に加わる衝撃を分散しにくくなるため、耐欠損性が低下する。
一方、微細結晶粒の結晶粒幅が30nm未満になると粒界が増えるため、切削加工時に被削材と粒界部との接触確率が高くなった結果、結晶粒の脱粒が起きやすくなるため、微細結晶粒による耐摩耗性の確保ができなくなるという理由による。
また、微細結晶粒の面積割合を、10〜70面積%と定めたのは、次の理由による。
微細結晶粒の面積割合が10面積%未満になると、TiAlN層中の超微粒結晶粒の割合が増加して粒界が増えるため、切削加工時に、粒内より相対的にもろい粒界部分での破壊が生じやすくなり、耐摩耗性が低下する。
一方、微細結晶粒の面積割合が70面積%を超えると、切削加工時の衝撃を分散化する役割を担う超微粒結晶粒の減少によって、耐欠損性が低下する。

0020

また、本発明では、TiAlN層の縦断面において測定した場合、工具基体表面の法線と、立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒が、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合を、10面積%以上(100面積%の場合も含む)とする。
これは、耐摩耗性に優れる[001]方位を有する立方晶構造の微細結晶粒のうち、工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下となるような[001]方位を有する立方晶構造の微細結晶粒が多く存在する(10面積%以上)ことによって、切削加工時にTiAlN結晶粒の表面と被削材が接触した際に、いずれのTiAlN結晶粒も同一方向に均一に削られるため、偏摩耗の発生が抑えられ、その結果[001]方位を有する立方晶構造の微細結晶粒の耐摩耗性の効果を向上することができるからである。
仮に、工具基体表面の法線と、立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度が20度以下である立方晶構造を有する前記微細結晶粒の、前記縦断面の微細結晶粒の全面積に占める面積割合が10面積%未満であるような場合には、切削加工時に、各結晶粒がそれぞれ異なる方向に削られるため、切削加工の進展につれ偏摩耗が発生し、耐摩耗性の低下を招くことになる。

0021

本発明の硬質被覆層は、前記したTiAlN層の単層構造として構成することができるが、
2層以上の積層構造として構成された硬質被覆層にあっては、該積層構造を構成する層のうちの少なくとも一つの層として前記TiAlN層を形成することもできる。

0022

微細結晶粒の結晶粒幅、微細結晶粒の面積割合、微細結晶粒の(001)面の法線と工具基体表面の法線とのなす角度、ならびに度数分布算出方法
本発明のTiAlN層の微細結晶粒の結晶粒幅、結晶構造、面積割合及び工具基体表面に対する結晶方位の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡付属する結晶方位解析装置を用いて、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を観察、測定することにより求めることができる。
なお、本発明における「硬質被覆層の縦断面」とは、硬質被覆層と工具基体の界面(工具基体表面)に対して垂直方向の断面のことをいう。
透過型電子顕微鏡で、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を観察する方法は以下の通りである。まず、TiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面を切り出した後、結晶粒径と同程度の厚さ(30nm)以下に研磨した切片をセットし、200kVに加速された電子線を前記切片の表面(すなわちTiAlN層を含む硬質被覆層に相当する表面)に照射することで観察を行う。

0023

次にTiAlN層を含む硬質被覆層の縦断面の観察結果から、結晶粒幅、結晶構造、面積割合及び工具基体表面に対する結晶方位の解析範囲を決める方法は以下の通りである。
まず、硬質被覆層の縦断面の観察画像における、硬質被覆層と工具基体との界面上の2点を任意で選定する。その際、2点間線分でつないだ長さは1000nmになるよう選定する。結晶方位の解析範囲は、前記線分と平行方向に1000nm(この方向を以下「解析範囲の横方向」と定義する)、垂直方向に400nm(この方向を以下「解析範囲の縦方向」と定義する)の長方形の範囲とする。その際、前記の範囲には全てTiAlN層の縦断面のみ含める(工具基体、ならびにTiAlN層以外の硬質被覆層は含めない)。

0024

前記の測定範囲において、結晶方位のマップデータを得る解析方法は以下の通りである。前記切片の表面に、切片の表面の法線方向に対して0.5〜1.0度に傾けた電子線をPrecession(歳差運動)照射しながら、電子線を任意のビーム径及び間隔でスキャンし、連続的に電子線回折パターンを取り込み、個々の測定点の結晶方位を解析する。なお、本測定に用いた回折パターン取得条件は、カメラ長20cm、ビームサイズ2.2nmで、測定ステップは2.0nmである。

0025

得られる電子線回折パターンから個々の結晶粒を判別するための解析方法は、以下の通りである。まず、測定点の隣接点同士の結晶方位が5度以上離れている場合、粒界に属する測定点と判断する。次に、粒界に属する測定点同士を線分でつなぎ合わせることで、前記線分に囲まれている部分を結晶粒と定義する。ただし、この線分がTiAlN層表面、TiAlN層と硬質被覆層が接する面、または工具基体表面と接する場合は、それぞれの表面または界面の粒界とみなす。そして解析範囲の横方向に平行な方向における粒界と粒界との距離から結晶粒幅を測定し、結晶粒幅が30nm以上かつ100nm以下の結晶粒を微細粒部とする。さらに、微細粒部内に含まれる測定点の全数を、結晶粒の測定点の全数で割ることにより、微細結晶粒の面積割合を算出する。なお、1つの測定点が占める面積は一定のため、測定点数の割合から面積割合が求められる。

0026

工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度、ならびに角度数分布の算出方法について説明する。まず前記の結晶方位解析装置を用いて、工具基体表面1aの法線L1(工具基体表面1aと垂直な方向)に対して、微粒部内に含まれる測定点での結晶面である(001)面の法線L2がなす傾斜角(図1A、1B参照)を測定する。その傾斜角のうち、法線方向L1に対して0〜20度の範囲内(図1Aの0度から図1Bの20度までの範囲内)にある傾斜角を5度のピッチ毎に区分して各区分内に存在する割合を集計する。なお20度以上に関しては5度のピッチ毎に区分するのではなく、20度以上のものを全て1つの区分として集計する。その結果を、横軸傾斜角区分とし、縦軸を割合とした傾斜角度数分布グラフ図2)で表す。

0027

以上1つの解析範囲において結晶粒幅、微細結晶粒の面積割合、ならびに微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度、ならびに角度数分布の算出方法について説明したが、観察、解析を行う際には5つの解析範囲を設定し、平均値を算出する。
なお、超微粒結晶粒(結晶粒幅30nm未満)ならびに粗大結晶粒(結晶粒幅100nmより大)の面積割合に関しても、微細結晶粒の面積割合と同様の方法で算出する。

0028

混入溶滴:
混入溶滴とは、例えば、AIP装置により成膜された硬質皮膜に一般的に存在し、ドロップレットあるいはパーティクルともいわれるものであって、アーク放電により溶融したターゲット成分が液滴として飛散し、硬質被覆層中に取り込まれた粒のことである。
本発明では、混入液滴について、次のように定義する。
すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いたエネルギー分散X線分析法(EDS)(以下、「SEM−EDS」という)および、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(以下、「TEM−EDS」という)のマッピング分析により刃先稜線部のTiAlN層の縦断面のAl、Ti、N成分の組成を測定したときに、Alおよび/またはTiが検出され、かつN成分が検出されない領域であると定義する。

0029

本発明でいう刃先稜線部とは次のとおりである。
図3に示される本発明被覆工具において、図3のA−B−C−Dで囲まれたTiAlN層の領域を「刃先先端部」と定義する。
ここで、Aは、刃先ホーニング部のすくい面からの起点を示し、直線ABは、起点Aからすくい面に垂直に引いた線分である。
また、Dは、刃先ホーニング部の逃げ面からの起点を示し、直線CDは、起点Dから逃げ面に垂直に引いた線分である。
そして、上記A−B−C−Dで囲まれたTiAlN層の領域が、本発明でいう「刃先稜線部」である。

0030

混入溶滴の面積比率:
前記混入溶滴に関して、刃先稜線部のTiAlN層の縦断面をSEM−EDSマッピング分析により倍率50000倍で観察し、混入液滴の最大長さが50nm以上である粒の面積の和をSdpとし、前記刃先稜線部のTiAlN層の縦断面の面積をScとした場合に、SdpのScに対する比Sdp/Scが0.100%以下、かつ、TEM−EDSマッピング分析により倍率100000倍で観察し、最大長さ10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和をSsdpとした場合に、SsdpのScに対する比Ssdp/Scが0.001%以上0.100%未満を満足することが好ましい。
なお、ここでいう混入液滴の最大長さとは、混入液滴の輪郭線上の任意の2点間の最大値を指す。

0031

Sdp/Scを上記のとおり定めた理由は、Sdp/Scが0.100%を超えると、刃先稜線部のTiAlN層全体に対する混入液滴の含有比率が高くなるため、切削加工の進行とともにTiAlN層が摩耗すると、TiAlN層表面に新たな混入溶滴が露出してくる。そして、混入溶滴と被削材との溶着性が高いため、溶着チッピング、欠損、剥離が発生しやすくなり、耐異常損傷性が低下するためである。
したがって、少なくとも刃先稜線部のTiAlN層の縦断面における最大長さが50nm以上の大きさを有する混入溶滴の面積の和Sdpと、刃先稜線部の縦断面の面積Scとの面積比率Sdp/Scは、0.100%以下とする。

0032

Ssdp/Scを上記のとおり定めた理由は、Ssdp/Scが前記範囲に存在すれば、微細な混入溶滴が硬質被覆層内部に分散して存在していることにより、混入溶滴が切削雰囲気により酸化アルミニウム(AlOx)となることにより、耐熱性、対酸化性優位に働き、切削性能が向上する。一方、Ssdp/Scが0.001%未満であると、上記の効果が発生せず、切削向上が向上しない。
また、Ssdp/Scが0.100%を超えると刃先稜線部のTiAlN層全体に対する混入液滴の含有比率が高くなるため、AlOxによる被覆効果より前記混入溶滴と被削材との溶着性による影響が支配的となり、溶着チッピング、欠損、剥離が発生しやすくなり、耐異常損傷性が低下するためである。
したがって、少なくとも刃先稜線部のTiAlN層の縦断面における最大長さが10nm以上50nm未満の大きさを有する混入溶滴の面積の和Ssdpと、刃先稜線部の断面積の面積Scとの面積比率Ssdp/Scは、0.001%以上0.100%未満とする。

0033

TiAlN層の成膜方法
本発明のTiAlN層は、例えば、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング(HiPIMS)装置とアークイオンプレーティングAIP)装置を併設した物理蒸着装置(以下、「HiPIMS/AIP装置」という)を用い、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングによって成膜することができる。
図4(a)、(b)に、本発明のTiAlN層を成膜するための、HiPIMS/AIP装置の概略図を示す。
図4(a)、(b)に示すHiPIMS/AIP装置の相対向する壁面に、アークイオンプレーティング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極ターゲット)を対向配置するとともに、同じく前記HiPIMS/AIP装置の他の相対向する壁面には、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)を対向配置し、装置中央に設けられたテーブル上には、前記各Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)からほぼ等距離となる位置(例えば、図4(a)に示されるような4箇所)に、工具基体を載置する。
次いで、テーブル上で工具基体を自転させながら、工具基体を所定の温度範囲に加熱し、反応ガスを装置内に導入し、アークイオンプレーティングによる工具基体の表面ボンバード洗浄を行い、ついで、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを行うことにより、本発明のTiAlN層を成膜することができる。

0034

なお、この場合の高出力インパルスマグネトロンスパッタリング条件は、概ね、以下のとおりである。
≪高出力インパルスマグネトロンスパッタリング条件≫
ターゲット(カソード電極):TixAl1−x (但し、皮膜組成が0.10≦x≦0.35の範囲となる)のTi−Al合金
投入電力:1000〜1500(W)
ピーク電流:100(A)
パルス周波数:500〜800(Hz)
パルス印加時間:75〜100(μs)
バイアス電圧:80〜90(−V)
≪共通する条件≫
N2ガス圧力:0.5(Pa)
Arガス圧力:0.5(Pa)
工具基体温度:450(℃)
なお、Sdp/Scの値については、後記実施例で述べるように、バイアス電圧、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング条件である投入電力、ピーク電流、パルス周波数、パルス印加時間をコントロールすることによって、所定の数値範囲に収めることができる。

0035

つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、具体的な説明としては、WC基超硬合金を工具基体とする被覆工具について説明するが、TiCN基サーメットあるいは立方晶窒化硼素焼結体を工具基体とする被覆工具についても同様である。

0036

原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有する、Co粉末TiC粉末VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr2C3粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を1370〜1470℃の範囲内の所定温度に1時間保持の条件で真空焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格SEEN1203AFENのインサート形状をもったWC基超硬合金工具基体1〜3を製造した。

0037

0038

上記の工具基体1〜3を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した後、高出力インパルスマグネトロンスパッタリング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)とアークイオンプレーティング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)が配置されたHiPIMS/AIP装置内に配置し、かつ、その配置位置は、HiPIMS/AIP装置内に設けられた工具基体装着用のテーブルの中心軸から離れた位置であって、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)からほぼ等距離となる位置(例えば、図4(a)に示す4箇所)に配置した。
HiPIMS/AIP装置内には、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒータで工具基体を400℃に加熱した後、前記テーブル上で自転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧印加し、かつ、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)に100Aのアーク電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄した。
ついで、前記装置内に反応ガスとしてアルゴンガスをと窒素ガスを導入して表2に示す圧力にするとともに、前記テーブル上で自転する工具基体の温度を表2に示す温度範囲に加熱維持し、工具基体と高出力インパルスマグネトロンスパッタリング用の所定組成のTi−Al合金カソード電極(ターゲット)に表2に示すバイアスを印加するとともに、Ti−Al合金カソード電極(ターゲット)に表2に示す電流を印加することにより、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを行った。
上記の工程で、高出力インパルスマグネトロンスパッタリングを行うことにより、本発明のTiAlN層を成膜した表4に示す本発明被覆工具1〜10(以下、本発明工具1〜10という)を製造した。

0039

比較の目的で、図4に示すHiPIMS/AIP装置を用いて、工具基体1〜3のそれぞれに、本発明工具1〜10の場合と同様な条件でボンバード洗浄を施したのち、表3に示す高出力インパルスマグネトロンスパッタリング条件でTiAlN層を形成することにより、表5に示す比較例被覆工具1〜13(以下、比較例工具1〜13という)をそれぞれ製造した。

0040

上記で作製した本発明工具1〜10、比較例工具1〜13のTiAlN層について、工具基体に垂直な縦断面について、走査型電子顕微鏡を用いて複数視野観察し、5点の層厚の平均値から、平均層厚を算出した。
また、本発明工具1〜10、比較例工具1〜13のTiAlN層におけるAlとTiの合量に対するTiの平均組成(原子比)を電子線マイクロプローブアナライザ(EPMA)を用いて測定した。TiAlN層の縦断面を研磨した試料の表面に電子線を照射し、発生した特性X線の解析結果からTiの平均組成を算出し、10点の平均値を求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。

0041

また、本発明工具1〜10および比較例工具1〜13のTiAlN層について、透過型電子顕微鏡を用いて、TiAlN層中の結晶粒幅、微細結晶粒(結晶粒幅:30〜100nm)、超微粒結晶粒(結晶粒幅30nm未満)、粗大結晶粒(結晶粒幅100nmより大)の面積割合、ならびに微細結晶粒の結晶構造、工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度の算出を行った。
具体的には、以下のとおりである。
結晶粒幅は以下のように算出する。まず、測定点の隣接点同士の結晶方位が5度以上離れている場合、粒界に属する測定点と判断した。次に、粒界に属する測定点同士を線分でつなぎ合わせることで、前記線分に囲まれている部分を結晶粒と定義した。ただし、この線分が表面、または基体となす界面と接する場合は、この表面または界面の粒界とみなす。そして解析範囲の横方向に平行な方向における粒界と粒界との距離から結晶粒幅を測定した。
微細結晶粒の面積割合は、結晶粒幅が30nm以上かつ100nm以下の結晶粒を微細粒部とし、微細粒部内に含まれる測定点の全数を、結晶粒の測定点の全数で割ることにより、微細結晶粒の面積割合を算出した。なお、1つの測定点が占める面積は一定のため、測定点数の割合から面積割合が求められる。なお、超微粒結晶粒は結晶粒幅を30nm未満、粗大結晶粒は100nmより大きい結晶粒として微細結晶粒と同様の方法で面積割合を求めた。
微細粒部の結晶構造は、微細粒部の電子回折像から立方晶六方晶かを判断した。
工具基体表面の法線と立方晶構造を有する微細結晶粒の(001)面の法線とのなす角度は、工具基体表面1aの法線L1(工具基体表面1aに垂直な方向)に対して、微細粒部に含まれる測定点での結晶面である(001)面の法線L2がなす傾斜角(図1A、1B参照)を測定した。
表4、表5に、それぞれの値を示す。

0042

また、本発明工具1〜10および比較工具1〜13について、TiAlN層の刃先稜線部における混入溶滴の面積率を求めた。
すなわち、図3で示される刃先稜線部A−B−C−CのTiAlN層に属する1つの観察視野において、倍率50000倍のSEM−EDSにより観察して、当該観察視野における最大長さが50nm以上である混入溶滴の面積の総和を求め、当該観察視野のTiAlN層の面積に対する面積比率を算出した。
そして、5つの観察視野で算出した面積比率の値を平均し、この値を、刃先稜線部のTiAlN層の面積(Sc)に対する、最大長さが50nm以上である混入溶滴の面積の総和(Sdp)の面積比率Sdp/Scとして求めた。
さらに、図2で示される刃先稜線部A−B−C−CのTiAlN層に属する1つの観察視野において、倍率100000倍のTEM−EDSにより観察して、当該観察視野における最大長さが10nm以上50nm未満である混入溶滴の面積の総和を求め、当該観察視野のTiAlN層の面積に対する面積比率を算出した。
そして、5つの観察視野で算出した面積比率の値を平均し、この値を、刃先稜線部のTiAlN層の面積(Sc)に対する、最大長さが10nm以上50nm未満である混入溶滴の面積の総和(Ssdp)の面積比率Ssdp/Scとして求めた。
表4、表5に、それぞれの値を示す。

0043

0044

0045

0046

0047

次いで、本発明工具1〜10、比較例工具1〜13について、以下の条件で、高速断続切削一種である乾式高速正面フライスセンターカット切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。

0048

切削試験
カッタ径: 125 mm、
被削材: JIS・SUS440Aからなる幅100mm、長さ350mmのブロック材
切削速度:220m/min、
切り込み:2.5mm、
一刃送り量:0.2mm/刃、
切削時間:13分、
上記の切削試験について、逃げ面摩耗幅を測定するとともに、刃先の損耗状況を観察した。
表6に、試験結果を示す。

0049

0050

表6に示される結果から、本発明の被覆工具は、TiAlN層が10〜70面積%の微細結晶粒を含み、さらに、該微細結晶粒の(001)面の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下である微細結晶粒が、微細結晶粒の全面積の10面積%以上を占めることから、該TiAlN層の微細結晶粒の存在が耐摩耗性を高め、一方、超微粒結晶粒によって、切削加工時の衝撃が緩和され、さらに、刃先稜線部のSdp/Scが0.100%以下、かつ、Ssdp/Scが0.001%以上0.100%以下であることから、溶着性の高い被削材の高速断続切削加工において、すぐれた耐異常損傷性と耐摩耗性を発揮する。

実施例

0051

これに対して、TiAlN層中に、10〜70面積%の微細結晶粒が存在していない比較例工具、微細結晶粒の(001)面の法線と工具基体表面の法線とのなす角度が20度以下である微細結晶粒が、微細結晶粒の全面積の10面積%以上存在しない比較例工具、あるいは、刃先稜線部のSdp/Scが0.100%を超える比較例工具、Ssdp/Scが0.001%以上0.100%以下の範囲を外れる比較例工具は、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生あるいは耐摩耗性の低下によって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。

0052

この発明の被覆工具は、溶着性の高い被削材の切削加工を、高熱発生を伴い、しかも、切刃に対して衝撃的・断続的な高負荷が作用する高速断続切削条件で行った場合に、すぐれた耐異常損傷性とともに長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

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