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技術 基準運動強度設定システムとその利用

出願人 国立大学法人名古屋大学インターリハ株式会社
発明者 山田純生
出願日 2019年2月20日 (1年10ヶ月経過) 出願番号 2019-028557
公開日 2020年8月31日 (4ヶ月経過) 公開番号 2020-130640
状態 未査定
技術分野 運動付属具 体操訓練用具
主要キーワード 双極誘導 心拍測定装置 クリップ型 運動経験 AT値 主観的指標 マスク装着 安全領域
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

簡便にATに対応する基準運動強度を設定することができる基準運動強度設定システムを提供する。

解決手段

基準運動強度設定システム1は、運動負荷装置10と、ユーザが実施した運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための自己効力感入力装置12と、基準運動強度を設定する制御装置20と、を備える。該制御装置20は、運動後にユーザが入力した前記自己効力感が肯定的なときの運動に対応する運動強度に基づいて、基準運動強度を設定するように構成されている。

概要

背景

健康で生活の質(Quality Of Life:QOL)を向上させるための三要素として、「栄養・食生活」、「運動」および「休養」が挙げられる。これらのうちの「運動」は、身体の一部または全部を動かすことであり、運動を通じて健康の維持や体力増進のみならず、諸症状の軽減や機能の回復を図ることができる。そのため、近年では、心血管疾患心不全等を対象とした循環器リハビリテーションにおいても運動療法が中心的な役割を担っており、運動療法は、循環器診療ガイドラインでも高い推奨ベルの循環器治療として位置づけされている。

運動による身体効果は、例えば、実施する運動の種類や持続時間、頻度の他、運動者運動開始前身体機能に大きく依存し得る。そのため、運動に際しては、個人運動能力等に適した運動を実施することが重要となる。とりわけ運動療法では、安全かつ効果的な運動療法を実現するために、個人の運動能力や症状に適した運動を処方することが重要となる。このような運動としては、有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる運動強度閾値である嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)を基準とした、ATレベルの運動強度の有酸素運動を行うことが推奨されている。

概要

簡便にATに対応する基準運動強度を設定することができる基準運動強度設定システムを提供する。基準運動強度設定システム1は、運動負荷装置10と、ユーザが実施した運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための自己効力感入力装置12と、基準運動強度を設定する制御装置20と、を備える。該制御装置20は、運動後にユーザが入力した前記自己効力感が肯定的なときの運動に対応する運動強度に基づいて、基準運動強度を設定するように構成されている。

目的

本発明は上記の従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
0件

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請求項1

運動するユーザの身体に対して運動強度を増大させながら負荷を与える運動負荷装置と、ユーザが実施した前記運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための自己効力感入力装置と、有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる嫌気性代謝閾値の運動強度に対応する基準運動強度を設定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、運動後にユーザが、当該運動の運動強度における自己効力感を肯定的に入力した時の当該運動強度に基づいて、前記基準運動強度を設定するように構成されている、基準運動強度設定システム

請求項2

ユーザの心拍数を測定する心拍測定装置を備え、前記制御装置は、さらに、運動後のユーザの心拍数が予め定められた許容運動時心拍範囲内であるときに、前記運動に対応する運動強度に基づいて前記基準運動強度を設定するように構成されている、請求項1に記載の基準運動強度設定システム。

請求項3

前記自己効力感入力装置は、前記自己効力感の程度を予め用意された複数の選択肢から1つを選択することで入力できるように構成されており、前記選択肢は、少なくとも、前記自己効力感の程度が肯定的な第1の選択肢と第2の選択肢とを含み、前記第1の選択肢は前記第2の選択肢よりも自己効力感の程度が肯定的であって、前記制御装置は、ユーザが前記第1の選択肢を選択したときの前記運動に対応する前記運動強度に基づいて、前記基準運動強度を設定するように構成されている、請求項1または2に記載の基準運動強度設定システム。

請求項4

前記制御装置は、ユーザが少なくとも一度、前記第1の選択肢よりも肯定的ではない他の選択肢を選択したのちに、前記第1の選択肢を選択したときの前記運動に対応する前記運動強度に基づいて、前記基準運動強度を設定するように構成されている、請求項3に記載の基準運動強度設定システム。

請求項5

前記制御装置は、前記運動負荷装置に設定されている前記運動強度を記憶する運動強度記憶部と、ユーザが入力した自己効力感が、前記第1の選択肢であるかどうかを判断する自己効力感判定部と、ユーザの前記運動時の心拍数が、予め定められた許容運動時心拍範囲内にあるかどうかを判断する心拍判定部と、前記自己効力感判定部が、ユーザが入力した前記自己効力感が前記第1の選択肢であると判断し、かつ、前記心拍判定部が、ユーザの前記運動時の心拍数が前記許容運動時心拍範囲内にあると判断したときに、前記運動負荷装置の前記運動強度を増大させる負荷増大部と、少なくとも、前記自己効力感判定部が、ユーザが入力した前記自己効力感が前記第1の選択肢ではないと判断するか、前記心拍判定部が、ユーザの前記運動時の心拍数が前記許容運動時心拍範囲内にないと判断したときに、前記運動負荷装置の前記運動強度を低減させる負荷低減部と、前記負荷低減部が少なくとも一度前記運動強度を低減させたのちに、前記自己効力感判定部が、ユーザが入力した前記自己効力感が前記第1の選択肢であると判断し、かつ、前記心拍判定部が、ユーザの前記運動時の心拍数が前記許容運動時心拍範囲内にあると判断したときに、前記運動強度記憶部が記憶する前記運動強度に基づいて、前記基準運動強度を設定する基準運動強度設定部と、を備える、請求項3または4に記載の基準運動強度設定システム。

請求項6

前記運動負荷装置は、自転車エルゴメーターである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基準運動強度設定システム。

請求項7

コンピュータを、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基準運動強度設定システムとして動作させるように構成されている、コンピュータプログラム

請求項8

ユーザの身体に対して所定の運動強度を負荷して運動させる運動負荷装置と、第2制御装置と、を備え、前記第2制御装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の基準運動強度設定システムによって設定された基準運動強度を基に、前記運動負荷装置の前記運動強度を制御するように構成されている、運動支援システム

技術分野

0001

本発明は、至適運動処方のための基準運動強度設定システムとその利用に関する。

背景技術

0002

健康で生活の質(Quality Of Life:QOL)を向上させるための三要素として、「栄養・食生活」、「運動」および「休養」が挙げられる。これらのうちの「運動」は、身体の一部または全部を動かすことであり、運動を通じて健康の維持や体力増進のみならず、諸症状の軽減や機能の回復を図ることができる。そのため、近年では、心血管疾患心不全等を対象とした循環器リハビリテーションにおいても運動療法が中心的な役割を担っており、運動療法は、循環器診療ガイドラインでも高い推奨ベルの循環器治療として位置づけされている。

0003

運動による身体効果は、例えば、実施する運動の種類や持続時間、頻度の他、運動者運動開始前身体機能に大きく依存し得る。そのため、運動に際しては、個人運動能力等に適した運動を実施することが重要となる。とりわけ運動療法では、安全かつ効果的な運動療法を実現するために、個人の運動能力や症状に適した運動を処方することが重要となる。このような運動としては、有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる運動強度の閾値である嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold:AT)を基準とした、ATレベルの運動強度の有酸素運動を行うことが推奨されている。

0004

人間工学,Vol.52, No.1(2016),P13-18

先行技術

0005

特開2004−057514号公報

発明が解決しようとする課題

0006

ここでATとは、「増加する運動強度において有機エネルギー産生無機的代謝によるエネルギー産生が加わる直前の運動強度(Wasserman,1985)」として定義される。運動強度が高くなると、心拍数はほぼ運動強度に応じて上昇するのに対し、血中乳酸濃度はある程度まではほとんど上昇せず、ある運動強度を越えると急激に上昇する。したがってATは、運動中に徐々に運動強度を増やしていった時に、急激に血中乳酸が増え始める乳酸性作業閾値(Lactate Threshold:LT)や、呼気中炭酸ガス濃度が増え始める呼吸ガス代謝を指標とする運動強度として把握される(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、LTを指標とするAT測定方法は、医師監督下または看護師による採血が必要であるために汎用性に乏しい。また、呼吸ガス代謝指標によるAT測定方法は、現在のところ信頼性のあるAT測定方法として広く一般に採用されているものの、極めて高価な連続呼吸ガス代謝計等を必要とするという欠点があった。また、呼吸ガス代謝指標の測定では呼吸ガスを採取するためのマスク顔面密着するように装着するため、女性心疾患患者等の中には、呼吸ガス代謝指標の測定に対する忍容性が低く、十分な検査ができない場合が多いという課題もあった。これに対し、運動負荷増大時の心拍数の変化に基づいて決定される心拍性作業閾値(Harte Rate Threshold:HRT)を指標としてATを把握する手法が採用されてもいる。しかしながら、HRTに基づくATは、比較的簡単かつ安価に測定することができるものの、LTや呼吸ガス代謝指標に基づき得られるAT値とは一致せず、また、人によっては計測が困難になるという問題があった。

0007

本発明は上記の従来の問題を解決すべく創出されたものであり、その目的とするところは、ATに対応する基準運動強度を簡便に決定することができる基準運動強度設定システムを提供することである。また、本発明の他の目的は、この基準運動強度設定システムのためのプログラムと、該基準運動強度設定システムを利用した運動支援システムを提供することである。

課題を解決するための手段

0008

ここに開示される技術によると、基準運動強度設定システムが提供される。この基準運動強度設定システムは、運動するユーザの身体に対して運動強度を増大させながら負荷を与える運動負荷装置と、ユーザが実施した上記運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための自己効力感入力装置と、有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる嫌気性代謝閾値の運動強度に対応する基準運動強度を設定する制御装置と、を備える。そして上記制御装置は、運動後にユーザが、当該運動の運動強度における自己効力感を肯定的に入力した時の当該運動強度に基づいて、前記基準運動強度を設定するように構成されている。

0009

上記構成では、健康行動心理学的指標である自己効力感を「特定強度における運動継続の自己効力感」として利用することで、ユーザの“運動の持続可能性”を聴取するようにしている。これにより、至適運動強度の指標とされるATに対応する基準運動強度(以下、「AT強度」等という場合がある。)を、安全かつ、従来よりも精度よく決定することができる。その結果、呼吸ガス代謝計等の特別な機器を用いることなく、より精確にAT強度を推測することができる。これにより、例えば、呼吸ガス代謝測定を希望しないユーザや、呼吸ガス代謝測定に対する忍容性の低いユーザに対しても、適切なAT強度を設定できる簡易方法が提供される。

0010

なお、本明細書における自己効力感(セルフエフィカシー、Self-Efficacy:SE)とは、自分がある状況において必要な行動をうまく遂行できるかという可能性の認知を意味する。換言すると、自己効力感とは、自身が持っている効力予期の程度であり、ある結果を生み出すために適切な行動を遂行できるという確信の程度を意味する。ただし、自己効力感は、心理学的要素を含む主観的指標であり、必要な行動を実際に行えるかどうかを保証するものではない。また、自己効力感は、自覚的運動強度とは明確に区別される。

0011

なお、呼吸ガス代謝測定を行わない運動負荷試験では、AT強度を推定する簡易的なAT推定方法として、従来より、Borg指数を用いた運動負荷試験が知られている(例えば、特許文献1等参照)。この手法では、運動負荷を徐々に増大させる運動負荷試験において、典型的には、「11:やや楽」〜「13:ややきつい」と感じる運動の強さをATレベルとして採用するものである。ここで、Borg指数とは、自覚的運動強度の代表的指標である。Borg指数等の自覚的運動強度に基づき処方する運動強度は、ユーザの自己申告する指標に基づいた運動処方である点において、ここに開示される技術と類似している。しかしながら、自覚的運動強度は、あくまでその運動を行った時点での当該運動強度に対する疲労感を示す感覚であり、その運動を引き続き当該運動強度でさらに一定時間持続した場合に“運動が遂行できるか否か”を推測するものではなく、将来的な事項の判断は困難である。その結果、自覚的運動強度に基づき推定されるAT強度は、実際のAT強度よりも高めに計測される傾向が高い。そして、当該AT強度での運動は、継続が困難になるケースが多発するという問題があった。このことは、例えば、体力水準が低い循環器疾患等を患うユーザに対する、安全性や不適切な高負荷を処方する危険性の観点から問題となり得る。これに対し、ここに開示される技術によると、至適運動処方のための適切なAT強度を、安全かつ簡便に推定できる点において有益である。

0012

ここに開示される基準運動強度設定システムの好適な一態様では、ユーザの心拍数を測定する心拍測定装置を備え、上記制御装置は、さらに、運動後のユーザの心拍数が予め定められた許容運動時心拍範囲内であるときに、上記運動に対応する運動強度に基づいて上記基準運動強度を設定するように構成されている。これにより、AT強度を過剰に高く見積もることを防止することができ、より適切な基準運動強度を得ることができる。
なお、心電図から測定される「心拍」と、脈波から測定される「脈拍」とは厳密には区別され得るが、ここに開示される技術では、「心拍数」と「脈拍」とを同一に扱うことができる。したがって、ここでいう「心拍数」は、「脈拍数」を含むものとする。

0013

ここに開示される基準運動強度設定システムの好適な一態様では、上記自己効力感入力装置は、上記自己効力感の程度を予め用意された複数の程度の選択肢から1つを選択することで入力できるように構成されており、上記選択肢は、少なくとも、上記自己効力感の程度が肯定的な第1の選択肢と第2の選択肢とを含む。ここで、上記第1の選択肢は上記第2の選択肢よりも自己効力感の程度が肯定的である。そして上記制御装置は、ユーザが上記第1の選択肢を選択したときの上記運動に対応する上記運動強度に基づいて、上記基準運動強度を設定するように構成されている。本発明者の検討によると、自己効力感は自己の達成経験に基づき得られる知覚であることから、ユーザの“運動の持続可能性”の認知において、より強い肯定感が得られるレベルの運動はより高い確率でその後に一定時間継続して実施することが可能と判断できる。したがって、上記構成によると、より高精度でAT強度を推定することができる。

0014

ここに開示される基準運動強度設定システムの好適な一態様では、上記制御装置は、ユーザが少なくとも一度、上記第1の選択肢よりも肯定的ではない他の選択肢を選択したのちに、上記第1の選択肢を選択したときの上記運動に対応する上記運動強度に基づいて、上記基準運動強度を設定するように構成されている。上記構成によると、より高いAT強度を無理なく安全に設定することができる。その結果、より高い運動効果が得られるAT強度を設定することができる。

0015

ここに開示される基準運動強度設定システムの好適な一態様では、上記制御装置は、上記運動負荷装置に設定されている上記運動強度を記憶する運動強度記憶部と、ユーザが入力した自己効力感が、上記第1の選択肢であるかどうかを判断する自己効力感判定部と、ユーザの心拍数が、予め定められた許容運動時心拍範囲内にあるかどうかを判断する心拍判定部と、上記自己効力感判定部が、ユーザが入力した上記自己効力感が上記第1の選択肢であると判断し、かつ、上記心拍判定部が、ユーザの上記心拍数が上記許容運動時心拍範囲内にあると判断したときに、上記運動負荷装置の上記運動強度を増大させる負荷増大部と、少なくとも、上記自己効力感判定部が、ユーザが入力した上記自己効力感が上記第1の選択肢ではないと判断するか、上記心拍判定部が、ユーザの上記心拍数が上記許容運動時心拍範囲内にないと判断したときに、上記運動負荷装置の上記運動強度を低減させる負荷低減部と、上記負荷低減部が少なくとも一度上記運動強度を低減させたのちに、上記自己効力感判定部が、ユーザが入力した上記自己効力感が上記第1の選択肢であると判断し、かつ、上記心拍判定部が、ユーザの上記心拍数が上記許容運動時心拍範囲内にあると判断したときに、上記運動強度記憶部が記憶する上記運動強度に基づいて、上記基準運動強度を設定する基準運動強度設定部と、を備える。これにより、至適運動強度を安全かつ精度よく決定することができる基準運動強度設定アルゴリズムが提供される。

0016

ここに開示される基準運動強度設定システムの好適な一態様では、上記運動負荷装置は、自転車エルゴメーターである。これにより、汎用されている運動負荷装置を利用して、簡便にAT強度を得ることができる。また、得られたAT強度を基に、ユーザにより適切な運動を付加することができる。

0017

ここに開示される技術によると、ATに対応する基準運動強度を簡便に決定することができる基準運動強度設定アルゴリズムが提供される。そこで、ここに開示される技術は、他の側面において、コンピュータを、上記のいずれかの基準運動強度設定システムとして動作させるように構成されている、コンピュータプログラムをも提供する。これにより、コンピュータと運動負荷装置とを接続することで、当該基準運動強度設定アルゴリズムを利用した基準運動強度の設定を簡便に利用することができる。

0018

また、他の側面から、ここに開示される技術は、運動支援システムを提供する。この運動支援システムは、ユーザの身体に対して所定の運動強度を負荷して運動させる運動負荷装置と、制御装置と、を備える。そして上記制御装置は、上記のいずれかの基準運動強度設定システムによって設定された基準運動強度を基に、上記運動負荷装置の上記運動強度を制御するように構成されている。これにより、得られた基準運動強度を利用した運動を、簡便かつスムーズにユーザに提供することができる。

図面の簡単な説明

0019

図1は、一実施形態に係る基準運動強度設定システムの構成を説明する概念図である。
図2は、一実施形態に係る基準運動強度設定システムのブロック図である。
図3は、一実施形態に係る基準運動強度設定のためのアルゴリズムを示すフロー図である。
図4は、一実施形態に係る運動負荷装置が提供する運動メニュー(A)および(B)を示すフロー図である。
図5は、呼吸ガス代謝測定に基づいて得られたAT強度と、他の実施例において得られた基準運動強度(SE強度)とについてのBland-Altman分析の結果である。
図6は、呼吸ガス代謝測定に基づいて得られたAT強度と、Borg指数に基づいて得られた基準運動強度(ボルグ強度)とについてのBland-Altman分析の結果である。
図7は、比較例に係る基準運動強度設定のためのアルゴリズムを示すフロー図である。

実施例

0020

以下、図面を適宜参照しつつ、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事柄(運動の実施方法や提供方法等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、以下の図面において、同様の作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、本明細書において数値範囲を示す「A〜B」との表記は、A以上B以下を意味する。

0021

図1は、ここに開示される基準運動強度設定システム1の構成を説明する概念図である。基準運動強度設定システム1とは、至適運動処方のための基準運動強度を設定するためのシステムである。この基準運動強度設定システム1は、運動負荷装置10と、自己効力感入力装置(以下、単に「SE入力装置」と記す場合がある。)12と、制御装置20と、付加的な負荷制御装置14と心拍測定装置16とを備えている。これらの各構成要素は、有線または無線通信可能に接続されている。本実施形態において、運動負荷装置10、SE入力装置12、負荷制御装置14および心拍測定装置16と、制御装置20とは、インターネットを介して相互に通信可能に接続されている。しかしながら、通信手段はインターネットに限定されない。通信手段は、例えば、イントラネットエクストラネット等の公知の接続手段であってよい。また、制御装置20は、運動負荷装置10、SE入力装置12と、負荷制御装置14および心拍測定装置16等と、地理的に離れた場所に設置されていてもよいし、近接した場所に(例えば、着脱可能であるが一体的に)設置されていてもよい。なお、基準運動強度設定システム1は、さらに第2制御装置30を備えており、ここに開示される運動支援システム100としても機能し得る。

0022

運動負荷装置10は、ユーザの身体に対して所定の運動強度の負荷を加えて運動させることができる運動装置である。運動負荷装置10は、典型的には負荷制御装置14を備えている。負荷制御装置14は、運動負荷装置10を運転する際に必要な仕事量(W)、換言すると負荷の強度を制御する装置である。運動負荷装置10は、運動負荷を段階的に、あるいは、連続的に変化させることができるように構成されていてもよい。負荷制御装置14は、例えば、後述する制御装置20から運動負荷に関する指示を受信することができる。また、負荷制御装置14は、例えば、ユーザが行っている運動の運動負荷に関する情報を制御装置20に送信することができる。負荷制御装置14は、制御装置20によって指示される運動負荷となるよう、運動負荷装置10の負荷を制御する。この運動負荷装置10を用いることにより、標準的な運動負荷試験(CPX)を実施することができる。運動負荷装置10としては、これに限定されるものではないが、各種の運動または運動競技を任意の運動強度で実施するための器具であるエルゴメータートレッドミル等を利用してもよい。エルゴメーターとしては、身体能力を計測するための器具や、トレーニングのための器具などであってよく、例えば、自転車エルゴメーター、フィットネスバイク上肢エルゴメーター(ローイングエルゴメーター)等が挙げられる。

0023

SE入力装置12は、ユーザが実施した所定の運動強度の運動の継続に対する自己効力感を入力するための装置である。SE入力装置12は、これに限定されるものではないが、コンピュータやマイクロコンピュータにより構成されていてもよい。好適な一例として、SE入力装置12は、タブレット端末スマートフォン、小型パソコン等の携帯端末であり得る。また、SE入力装置12は、音声認識装置を備えていてもよい。本実施形態のSE入力装置12は、図示しない、液晶画面等からなる表示部と、タッチパネル等からなる入力部と、制御部と備えるタブレット端末である。SE入力装置12は、運動負荷装置10に着脱可能に備えられていてもよい。SE入力装置12の制御部の構成は特に限定されず、例えば、制御装置20や負荷制御装置14等の外部機器との間で各種の情報を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラム命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)とを備えている。SE入力装置12には、ユーザによって、上記所定の運動を、さらに所定時間遂行することが可能かどうかの認知が入力される。ユーザによって入力された認知結果は、例えば、制御装置20(一例として、SE判定部22)に送られる。

0024

本実施形態において、SE入力装置12の制御プログラムは、ユーザが、運動負荷装置10を使用して自ら実施した所定の運動強度の運動についての“運動遂行の見込み感”を、タッチパネルを介して入力できるように構成されていてもよい。さらに、SE入力装置12は、この“運動遂行の見込み感”を、ユーザが発する音声を認識する音声認識装置を介して入力できるように構成されていてもよい。また、SE入力装置12は、“運動遂行の見込み感”を、予め用意された複数の段階(例えば、2〜10段階、一例として3〜5段階)の選択肢の中から1つを選択することで、入力できるように構成されていてもよい。このとき、選択肢の内容および構成は特に制限されないが、例えば、運動の遂行について肯定的な認知を示す選択肢と、運動の遂行について否定的な認知を示す選択肢とを含むとよい。また、肯定的な認知を示す選択肢は、例えば、自己効力感の程度が肯定的な第1の選択肢と第2の選択肢とを含むとよい。この場合、併せて、自己効力感が否定的な1つまたは2つ以上の程度の選択肢も含むとよい。ここで、第1の選択肢は、第2の選択肢よりも自己効力感の肯定的な程度が高い選択肢である。一例として、第1の選択肢は、自己効力感の程度が最も肯定的な選択肢であってよい。

0025

心拍測定装置16は、心拍数をする装置である。心拍測定装置16は、ユーザが、運動負荷装置10を使用して所定の運動強度の運動を実施しているときの心拍を測定する。心拍測定装置16の構成は特に制限されない。心拍測定装置16は、典型的には、心臓内電気の流れを電位変動として電極を介して計測し、記録する。また、ここでいう心拍測定装置16は、手や手首、指等の心臓とは異なる部位で脈動を検出する装置(いわゆる脈拍計)であってもよい。心拍測定装置16は、電極をユーザの生体表面(例えば胸部等)に貼り付けて使用するパッチ型や、肢部や指先等に装着して使用するベルト型(例えば腕時計型)やクリップ型等の各種の形態であってよい。測定された心電図信号心拍数等生体情報は、例えば、制御装置20(一例として、心拍判定部23)に送られる。

0026

本実施形態の制御装置20は、基準運動強度設定システム1の制御を行うほか、運動支援システム100の第2制御装置30としての機能も備え得る。換言すれば、制御装置20は、単独で、基準運動強度設定システム1および運動支援システム100のサーバーとして機能し得る。制御装置20は、基準運動強度を決定する。制御装置20の構成は特に限定されない。図2は、一実施形態に係る制御装置20の構成を示すブロック図である。制御装置20は、例えば、コンピュータにより構成されてよく、SE入力装置12や負荷制御装置14、心拍測定装置16等の要素や外部機器との間で各種の情報を送受信するI/Fと、制御プログラムの命令を実行するCPUと、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMとを備えている。また本実施形態に係る制御装置20は、運動強度記憶部21と、自己効力感判定部(以下、単に「SE判定部」という場合がある。)22と、心拍判定部23と、負荷増大部24と、負荷低減部25と、基準運動強度設定部26と、を備えている。制御装置20の各部は、回路やマイクロコンピュータ等のハードウェアによって構成されていてもよいし、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより機能的に実現されるようになっていてもよい。

0027

制御装置20は、基準運動強度設定システム1の動作を包括的に制御するとともに、基準運動強度設定システム1によって基準運動強度を決定する。制御装置20は、例えば、運動負荷装置10の動作を制御する。制御装置20は、負荷制御装置14に運動負荷装置10の負荷を指示する。また、制御装置20は、少なくともSE判定部22の判断に基づき、負荷増大部24および負荷低減部25を制御することで、運動負荷装置10の運動強度を増大または低減させる。図3は、一実施形態に係る基準運動強度を決定するためのアルゴリズムを示すフロー図である。図3における工程S2〜S4は、運動負荷を増大させる漸増ステージであり、工程S5〜S8は、運動負荷を減少させる漸減ステージを示す。そして、制御装置20は、増減された運動強度を基に基準運動強度を決定する(工程S9参照)。つまり、このアルゴリズムでは、大略的には、至適基準強度設定のための運動負荷試験において、ウォーミングアップ後にまずは漸増ステージに進んで運動負荷を増大させてゆき、所定の条件となった場合に漸減ステージに進んで運動負荷を減少させることで、適切な基準運動強度を決定する。以下、制御装置20の各部の動作や機能について、適宜図を参照しつつ説明する。

0028

運動強度記憶部21は、運動負荷装置10に設定されている運動強度を記憶する。運動強度記憶部21は、運動負荷装置10から送られる運動強度を受信し、記憶する。運動負荷装置10において、一例では、運動負荷の強度が変化される。運動強度記憶部21は、例えば、ユーザが実施した運動負荷試験等における運動強度(運動負荷)を記憶する。運動強度の初期値初回運動負荷L1)については、ユーザが設定してもよいし、予め設定された初回運動強度Lwarm-upを採用してもよい。運動強度の初期値は、ユーザが運動負荷装置10に対して設定してもよいし、制御装置20が運動負荷装置10に対して設定するように構成されていてもよい。運動強度記憶部21は、例えば、少なくともユーザが基準運動強度を決定するためのアルゴリズムにおいて現在実施しているか、最後に実施した運動の運動強度を記憶していればよい。運動強度記憶部21は、例えば、ユーザが運動負荷試験において実施した運動強度を運動負荷装置10から受信するごとに上書きすることで現在または最後の運動強度を記憶するようにしてもよい。あるいは、運動強度記憶部21は、運動負荷装置10から運動強度を時刻情報とともに受信し、運動強度の履歴として記憶していてもよい。また、運動強度記憶部21は、ユーザ情報と、後述する、ユーザがSE入力装置12に入力した所定の運動に対する自己効力感とづけて、当該運動に係る運動強度を記憶してもよい。

0029

SE判定部22は、ユーザがSE入力装置12に入力した自己効力感に関する情報をSE入力装置12から受信する。SE判定部22は、受信した自己効力感に関する情報が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。このSE判定部22の判断基準は、例えば、SE入力装置12の構成や、自己効力感に関する回答としてあらかじめ選択肢が用意されている場合はその選択肢の内容によっても異なり得るために一概には言えない。例えば、ユーザが運動遂行について肯定的な選択肢を選択した場合に、「当該運動を遂行できる見込みがある」(Yes)と判断してもよい。好ましい一例では、例えば、ユーザが運動遂行について、より肯定的な第1の選択肢を選択した場合に、「当該運動を遂行できる見込みがある」(Yes)と判断するようにしてもよい。SE判定部22による判断結果は、例えば、RAMに記憶させてもよいし、後述する負荷増大部24および/または負荷低減部25に送るようにしてもよい。SE判定部22は、例えば、遂行見込みがある(Yes)との判断結果については負荷増大部24に送り、それ以外(例えば、遂行見込みがあるとは言えない(No))との判断結果は負荷低減部25に送るように構成されていてもよい。

0030

心拍判定部23は、心拍測定装置16によって測定されたユーザの運動時の心拍を、心拍測定装置16から受信する。心拍判定部23は、受信した心拍が、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断する。心拍判定部23は、ここに開示される技術において任意の要素であるが、「自己効力感」という主観的な指標に対して、その運動時の心拍数応答という客観的指標を加えることで、基準運動強度をより安全かつ適切なものとして決定するために寄与する。心拍判定部23の判断基準は、例えば、ユーザの体質健康状態等によって異なり得るために一概には言えない。心拍判定部23は、例えば、ユーザの安静時心拍(Harte Rate at rest:HRat rest)を基準として、当該ユーザの運動時心拍が予め定められた所定の範囲(例えば、「許容運動時心拍範囲」という。)に収まっていれば、「当該運動を遂行しても安全である」と評価するようにしてもよい。かかる運動時心拍の安全領域を示す基準は、例えば、ユーザの年齢性別、疾患の有無や体力、病歴服用薬などを考慮して、複数パターンが予め用意されているとよい。また、かかる運動時心拍の安全領域を示す基準は、例えば、運動の開始からの時間や自己効力感等を考慮して、複数パターンが予め用意されているとよい。

0031

一例として、運動時心拍の安全領域を示す基準は、心拍に影響を与え得る薬剤を服用しているか否かを考慮して、それぞれに適切な基準を設定することができる。例えば、後述の実施例では、循環器疾患の患者について、心不全標準治療薬であり心拍数応答を減ずる薬剤であるβ遮断薬の服用の有無と、自己効力感の程度とを考慮に入れて、運動時心拍の安全領域を示す基準を複数パターン(下記表1および表2では12パターン)に設定した例を示している。このような運動時心拍の安全領域を示す基準は、本発明における許容運動時心拍範囲の一例である。心拍判定部23による判断結果は、例えば、RAMに記憶させてもよいし、後述する負荷増大部24、負荷低減部25、および/または、基準運動強度設定部26に送るようにしてもよい。心拍判定部23は、例えば、運動遂行は安全である(Yes)との判断結果は負荷増大部24および/または、基準運動強度設定部26に送り、それ以外(例えば、運動遂行は安全とはいえない(No))との判断結果は負荷低減部25に送るように構成されていてもよい。運動時心拍が、例えば、このように条件別に設定された基準値未満あるいは基準値以下である場合に、「当該運動を遂行しても安全である」と評価することができる。

0032

負荷増大部24は、SE判定部22と、必要に応じて心拍判定部23とによる判断結果を受信し得る。負荷増大部24は、少なくとも、SE判定部22の判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を増大させるように構成されている。負荷増大部24は、例えば、ユーザが運動負荷装置10を用いて運動を始めてから、少なくとも、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と判断したことがない状態において、運動強度を増大させることができる。負荷増大部24は、好ましくは、SE判定部22と心拍判定部23との判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を増大させるように構成されているとよい。すなわち、例えば、負荷増大部24は、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と判断したことがない状態において、心拍判定部23が運動遂行は安全である(Yes)と判断した場合に、運動強度を増大させるように構成するとよい。負荷増大部24は、例えば、負荷制御装置14に所定の増大量だけ運動強度を増大するように指示を送ることで、運動負荷装置10に設定されている運動強度を増大させることができる。SE判定部22および心拍判定部23の判断結果は、負荷増大部24がRAMを参照することで取得してもよいし、SE判定部22および心拍判定部23が、常に、あるいは、必要に応じて、負荷増大部24に送るように構成されていてもよい。

0033

負荷低減部25は、少なくとも、SE判定部22の判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を低減させるように構成されている。負荷低減部25は、例えば、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と判断した場合に、運動強度を低減させることができる。負荷低減部25は、好ましくは、SE判定部22と心拍判定部23との判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を低減させるように構成されていてもよい。すなわち、負荷低減部25は、SE判定部22が、遂行見込みがある(Yes)と判断した場合であっても、心拍判定部23が運動遂行は安全であるとは言えない(No)と判断した場合には、運動強度を低減させるように構成されているとよい。負荷低減部25は、例えば、負荷制御装置14に所定の低減量だけ運動強度を低減するように指示を送ることで、運動負荷装置10に設定されている運動強度を低減させることができる。SE判定部22および心拍判定部23の判断結果は、負荷低減部25がRAMを参照することで取得してもよいし、SE判定部22および心拍判定部23が、常に、あるいは、必要に応じて、負荷低減部25に送るように構成されていてもよい。

0034

基準運動強度設定部26は、少なくとも、SE判定部22の判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、運動負荷装置10に設定されている運動強度を基準運動強度とするように構成されている。基準運動強度設定部26は、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と少なくとも1回判断したのちに、遂行見込みがある(Yes)と判断した場合に、運動負荷装置10に設定されている運動強度を基準運動強度に決定することができる。基準運動強度設定部26は、好ましくは、SE判定部22と心拍判定部23との判断に基づいて、所定の条件を満たしたときに、基準運動強度を決定するように構成されていてもよい。すなわち、基準運動強度設定部26は、SE判定部22が、遂行見込みがあるとは言えない(No)と少なくとも1回判断したのちに、遂行見込みがある(Yes)と判断した場合であっても、心拍判定部23が運動遂行は安全であるとは言えない(No)と判断した場合には、基準運動強度を決定することがないように構成されていてもよい。このことによって、呼吸ガス代謝測定を行わずに簡便かつ安全に、AT強度により近い基準運動強度を決定することができる。

0035

基準運動強度設定部26は、SE判定部22および心拍判定部23の判断結果を、RAMを参照することで取得してもよいし、SE判定部22および心拍判定部23が、常に、あるいは、必要に応じて、基準運動強度設定部26に判断結果を送るように構成されていてもよい。基準運動強度設定部26は、例えば、決定した基準運動強度をRAMに記憶させてもよい。基準運動強度設定部26は、例えば、決定した基準運動強度を、液晶画面等の表示部に表示するように構成されていてもよい。かかる表示部は、例えば、SE入力装置12を構成するタブレット端末などであってよい。

0036

なお、以上の基準運動強度設定システム1において、制御装置20には、例えば、ここに開示される基準運動強度設定プログラムが記憶されている。基準運動強度設定プログラムは、コンピュータを、上記の基準運動強度設定システムとして動作させるように構成されている。より具体的には、ここに開示される基準運動強度設定プログラムは、コンピュータを、上記の運動強度記憶部21、SE判定部22、心拍判定部23、負荷増大部24、負荷低減部25、および、基準運動強度設定部26として機能させるためのプログラムをも提供する。このプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な非一過性記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、RAM等が例示される。また、プログラムは、CDやDVDなどの記録媒体から読み込むものであってもよいし、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。

0037

運動支援システム100は、運動負荷装置10と、第2制御装置30とを備える。運動負荷装置10は、上記基準運動強度設定システム1におけるものと同様の運動負荷装置であってよく、重ねての説明は省略する。第2制御装置30も、制御装置20と同様であってよく、例えば、他の要素や外部機器等との間で各種の情報を送受信するI/Fと、制御プログラムの命令を実行するCPUと、CPUが実行するプログラムを格納したROMと、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAMとを備えている。本実施形態における第2制御装置30は、I/F、CPU、ROM、RAMが制御装置20と共通である。第2制御装置30は、運動負荷装置10と電気的に通信可能に接続されている。第2制御装置30は、制御装置20によって決定された基準運動強度をもとに、運動負荷装置10の運動強度を制御するように構成されている。例えば、第2制御装置30は、運動負荷装置10が提供する運動メニューの運動強度を、基準運動強度を基準に設定するよう、運動負荷装置10に指示を送る。運動負荷装置10が提供する運動メニューの内容は、従来と同様であってよく、例えば、ユーザの疾患別リハビリを目的とした運動メニューや、健康維持を目的とした運動メニュー、筋力トレーニングを目的とした運動メニューなどであってよい。一例として、循環器疾患を患うユーザについては、基準運動強度で10〜20分間程度の運動を行うことで、心臓に負担をかけずに安全な範囲で、効果的なリハビリメニューを処方することができる。

0038

運動負荷装置10が提供する運動メニューは、例えば、負荷を一定にして実施するものであってもよいし、負荷を変化させるものであってもよい。具体的には、運動メニューは、運動トレーニング強度を一定とする運動メニュー(A)であってもよいし、運動トレーニング強度を経時的に変化させる運動メニュー(B)であってもよい。そしていずれの運動メニューにおいても、運動トレーニングの強度は、制御装置20によって決定された基準運動強度PSTをもとに適切に設定される。なお、運動メニュー(A)は、例えば体力レベルが相対的に低い患者等に適用すると好ましいメニューである。運動メニュー(B)は、例えば体力が相対的に高く、骨格筋のトレーニングを行う運動者に適用すると好ましいメニューである。運動負荷装置10は、これらの運動メニューを任意に選択できるように構成されているとよい。

0039

図4に、一処方例として、運動メニュー(A)および(B)を例示した。運動メニュー(A)および(B)では、ステップ(b)の主体となる運動トレーニングの前後に、ステップ(a)のウォーミングアップ運動と、ステップ(c)のクールダウンとを行う。
運動トレーニング強度を一定とする運動メニュー(A)では、ステップ(b)の運動トレーニングにおいて、基準強度PSTでの運動を10〜20分間行う。そして、ステップ(a)(b)のウォーミングアップとクールダウンでは、ウォーミングアップにおける運動強度PWUにて3分間の運動を行う。ここで、運動強度PWUは、例えば、基準強度PSTごとに何通りかに分けて設定することができる。本例では、運動強度PWUは、基準強度PSTに応じて4段階に分けて設定される。この運動メニュー(A)によると、ステップ(a)(c)とステップ(b)との運動強度の差が小さいために、患者に過度な負荷を加える心配が少なくて好ましい。

0040

トレーニング強度を経時的に変化させる運動メニュー(B)では、図4に示したように、ステップ(b)の運動トレーニングにおいて、b1〜b3の三段階のサブステップで運動トレーニング強度を変化させる。サブステップb1では、基準強度PSTでの運動を2〜3分間行う。そしてサブステップb2では、基準強度PSTよりも高い高強度での運動を4〜16分間行う。この高強度は、CPXの呼吸性代償点(respiratory compensation:RC)に近似する強度となるよう、例えば、(基準強度PST×1.2〜2.0)程度の強度として設定してもよい。一例として、基準強度PSTに上記のウォーミングアップにおける運動強度PWUを加えた運動強度PST+PWUで4〜16分間の運動を行うとよい。サブステップb3では、運動強度を再び基準強度PSTに戻して運動を2〜3分間行う。なお、ステップ(a)(c)のウォーミングアップとクールダウンにおける運動強度は、例えば、運動メニュー(A)と同じであってよい。このように、運動メニュー(B)では、ステップ(b)における運動トレーニング強度を、例えば基準強度PSTと高強度(PST+PWU)とに設定し、骨格筋からの乳酸産生を促すことが期待できる運動トレーニングとすることもできる。

0041

従来の運動支援システムでは、例えば運動の目的別に様々な運動メニューが提供されていた。しかしながら、そのような運動メニューは、ユーザごとに、運動強度の基準とすべき基準運動強度を、適切に、かつ、簡便に決定することができないことが、長年のネックであった。そのため、運動メニューを処方する前に、呼吸ガス代謝測定を伴う運動負荷試験などの、ユーザの負担の大きな試験が必要となっていた。これに対し、ここに開示される運動支援システム100においては、基準運動強度設定システム1によって簡便に得られた基準運動強度を基に、自動的にユーザに適した運動メニューを処方することができる。

0042

以下、本発明に関する実施例を図面に基づいて説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。

0043

(実施形態1)
本実施形態では、図1に示されるような基準運動強度設定システム1を用い、図3に示すアルゴリズムに沿って、被験者の基準運動強度を調べた。ただし、本実施形態の基準運動強度設定システム1において、運動負荷装置10は自転車エルゴメーターであり、制御装置20はパーソナルコンピュータであり、これらはイントラネットにより接続されている。被験者としては、循環器専門病院でリハビリテーションを行っている循環器疾患患者16名を対象とした。なお、被験者は、基準運動強度設定システム1により得られる基準運動強度の精度を評価するために、予めCPXを行い測定したAT強度と、安静時心拍(HRr)とを測定した。そして、基準運動強度の測定は、AT強度の測定とは異なる日に実施した。基準運動強度の測定は、基本的には、運動負荷の大きさを徐々に増大させる運動負荷試験を基に実施する。以下に、まずCPXによるAT強度の測定方法について説明し、その後、基準運動強度の測定のためのアルゴリズムについて説明する。

0044

〔AT強度の測定〕
呼気ガス分析装置と自転車エルゴメーターとを行いて、自転車エルゴメーターによる運動(自転車漕ぎ)時のAT強度を測定した。具体的には、まず、被験者を約4分間安静にさせて安静時心拍を測定したのち、自転車エルゴメーターに着座させて、呼気ガス分析装置の呼気マスクを、呼吸気漏れがないように口およびを覆うように装着させた。そして、マスク装着後の約2分間は自転車を漕がずに安静に待機したのち、回転速度の目安となる合図に合わせて50回転/分の駆動速度でペダルを漕ぐウォーミングアップと負荷試験とを連続して実施した。なお、ウォーミングアップでは、ペダル負荷強度を10ワット(W)に設定し、ウォーミングアップ時間は3分間とした。また、負荷試験では、ペダル負荷が1分で10W直線的に漸増するように設定した。

0045

そして、運動時の呼気中の酸素濃度および二酸化炭素濃度とその流量とを測定し、その分析結果から、一呼吸ごとの酸素摂取量(VO2)と二酸化炭素産生量VCO2)とを算出した。そして酸素摂取量(VO2)をX軸に、二酸化炭素産生量(VCO2)をY軸にプロットしたときに、二酸化炭素産生量(VCO2)が酸素摂取量(VO2)に比して増加し始める点(即ちグラフ屈曲点)をAT点とした。ここで、通常は、このAT点におけるペダル負荷強度をAT強度とするが、生体(ヒト)の呼気反応は、CPXにおけるペダル負荷の増加に対してやや遅れ現出する。したがって、CPXで測定されたAT時点のペダル負荷で運動処方すると、過剰な負荷となることより、臨床では、この生体の呼気反応の遅れを考慮して、AT点に達する1分前のペダル強度をAT強度として処方している。そして、本実施形態におけるAT強度も、次式:AT(W)=ATnormal−10(W/分);として算出される値を採用した。なお、被験者の運動状態がAT点に達した後も運動負荷は中止せず、十分な強度を与えた後、ペダル負荷を減少させて2〜3分間のクールダウン運動を行った後、運動を停止した。

0046

〔基準運動強度の測定〕
まず、被験者は、胸部に心電図電極(心拍測定装置16)を装着し、双極誘導法により心電図を測定可能とした。そして被験者は、自転車エルゴメーターに着座し、運動時の心拍(HR)を測定しながら、工程S1に示されるように、ペダル強度を初回運動負荷(Lwarm-up)として、所定の初回運動(ウォーミングアップ)を開始する。図3中のL1は、初回運動における運動強度を意味している。運動療法の現場においては、持久力の改善等を目的として、自転車エルゴメーターを用いて運動負荷(仕事量)を20〜120W程度とする駆動トレーニングが広く行われている。本例では、被験者が循環器疾患患者であることから、工程S1において、制御装置20は、自転車エルゴメーターの初回運動負荷(Lwarm-up)を10Wと十分に低い値にするように、負荷制御装置14に指示を送る。これにより、被験者は、抵抗感なく初回運動を開始することができる。また、本例の初回運動における駆動速度は50回転/分を目安とし、初期の運動継続時間を3分間としている。しかしながら、基準運動強度の測定における自転車エルゴメーターの初回運動負荷、駆動速度、および初回運動の運動継続時間はこれに限定されない。たとえば、制御装置20は、被験者が健常者や定期的な運動経験者である場合、十分に安全が確認できる場合等には、初回運動負荷(Lwarm-up)を、10Wを超える値、例えば10〜60W程度(一例として、20W以上や30W以上、40W以上等であり、50W以下、60W以下程度)等に設定するよう構成されていてもよい。同様に、制御装置20は、駆動速度を例えば60回転/分等の他の速度としてもよいし、初回運動の運動継続時間を、例えば5分間等と他の時間に設定してもよい。運動強度記憶部21は、自転車エルゴメーターに設定されている初回運動の運動負荷L1を記憶する。

0047

そして工程S2において、制御装置20は、被験者に、工程S1で実施している初回運動強度の運動の継続に対する自己効力感を、自己効力感入力装置12に入力させる。本例では、被験者が工程S1を終了後に、スムーズに後述する工程S4またはS5の運動に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S1における初期の運動継続時間が例えば1.5分間(1/2)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されている。具体的には、例えば、運動継続についての自己効力感をねる質問と、回答の選択肢とを、自己効力感入力装置12のタッチパネル式の液晶画面に表示させるように構成されている。ここで、液晶画面に表示される質問と、回答の選択肢は、例えば以下のようにするとよい。

0048

0049

本例では、質問として、当該運動強度による運動の継続についての自己効力感を尋ねるようにしており、運動の自覚的運動強度については尋ねていない。また、本例では、自己効力感についての回答の選択肢が4つ用意されており、そのうち肯定的な回答の選択肢が2つ含まれている。肯定的な回答は、強い肯定感を示す第1の選択肢と、第1の選択肢よりは肯定的な程度が低い第2の選択肢とを含んでいる。また、回答の選択肢は、他に、否定的な回答の選択肢を1つ(第4の選択肢)と、回答不能の選択肢を1つ含んでいる(第3の選択肢)。ただし、自己効力感の入力を促す表示の内容やタイミング等はこの例に限定されない。自己効力感入力装置12は、被験者により入力された自己効力感の程度を、例えば制御装置20の記憶部に記憶させる。

0050

また、SE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。本例では、被験者が、肯定的な程度が強い第1の選択肢「1.強くそう思う」を選択した場合に、被験者が「当該運動を遂行できる見込みがある」と認知している、つまり「Yes」と評価するようにしている。そして、被験者が、第1の選択肢以外の、第2〜4の選択肢を選択した場合に、被験者が「当該運動を遂行できる見込みがある」とは認知していない、つまり「No」と評価するようにしている。SE判定部22の判断が「Yes」の場合は工程S3に進む。SE判定部22の判断が「No」の場合は工程S5に進む。

0051

工程S3において、心拍判定部23は、心拍測定装置16によって初回運動時(例えば、上記SE判定時)に測定されたユーザの心拍数(heart rate:HR)が、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断する。換言すると、自己効力感という主観的指標に加えて、HRという客観的指標により、運動負荷を増大してもよいかどうかを判断する。本例では、予め測定されている被験者の安静時心拍数(HRat rest)と被験者の状態とから、下記の表2および表3に示す、第1および第2の許容運動時心拍数(HRex1、HRex2)を設定している。そして、この漸増ステージでは、運動時の心拍数(運動時HR)が第1の許容運動時心拍数(HRex1)よりも低い場合(運動時HR<HRex1)に、「当該運動を遂行しても安全である」、つまり「Yes」と評価するようにしている。そして、運動時HRが第1の許容運動時心拍数(HRex1)と同じかより高い場合(運動時HR≧HRex1)に、「当該運動を遂行しても安全である」とは判断しない、つまり「No」と評価するようにしている。心拍判定部23の判断が「Yes」の場合は工程S4に進む。心拍判定部23の判断が「No」の場合は工程S5に進む。本例において、第1の許容運動時心拍数(HRex1)は、被験者の安静時心拍数(3とおり)と、β遮断薬の服用の有無(2とおり)と、を考慮して、計6通りに設定されている。

0052

0053

なお、上記表2および3に示す心拍数(HR)は、例えば、ユーザが循環器疾患等の患者である場合に、医師等の医療者の判断で他の任意の値に変更してもよい。また、例えば、ユーザが健常者である場合にも、表2および3に示す心拍数(HR)を、医師等の医療者の判断で他の任意の値に変更してもよい。

0054

工程S4は、初回運動に引き続いて実施される漸増ステージの運動である。図3中のL2は、漸増ステージにおける自転車エルゴメーターに設定される運動負荷である。また、「L1→L2」は、初回運動から漸増ステージまたは漸減ステージへの移行に際し、計算上、初回運動負荷L1を漸増ステージ運動負荷L2に置き換えることを意味する。漸増ステージにおけるシーケンスで、運動負荷が既にL2(>L1)となっている場合は、運動負荷の置き換えは行われない。負荷増大部24は、SE判定部22および心拍判定部23の判断に基づいて、自転車エルゴメーターの運動負荷L2を、初回運動における運動負荷L1に対して、所定の増分ΔL1だけ増大させる。そして被験者は、初回運動に引き続き、増大された運動負荷L2にて漸増ステージにおける運動を実施する。本例では、運動強度の増分ΔL1を、初回運動時の初回運動負荷(Lwarm-up)と同じ大きさとしている。また、漸増ステージにおける駆動速度は50回転/分を目安とし、運動継続時間を2分間としている。しかしながら、漸増ステージの運動強度の増分ΔL1や、駆動速度、運動継続時間はこれに限定されない。例えば、増分ΔL1は、被験者の状態等に応じて、5〜30W程度の範囲で任意の値に設定することができる。漸増ステージの運動継続時間は、例えば、初回運動の運動継続時間よりも短い時間(例えば、1分間以上3分間未満、好ましくは2分間以上2.5分間以下)で適宜設定することができる。工程S4が終了すると、再び工程S2に進む。運動強度記憶部21は、この工程S4における運動強度を記憶する。

0055

回目以降の工程S2では、被験者が工程S4の運動を終了後に、スムーズに再度工程S4または後述するS5の運動に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S4における漸増ステージの運動継続時間が例えば1.5分間(3/4)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されていてもよい。そしてSE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。また、2回目以降の工程S3では、心拍判定部23は、工程S4における漸増ステージの運動中の所定のタイミング(例えばSE判定時)で、心拍測定装置16によって測定されたユーザの運動時の心拍数(HR)が、ユーザの体調もしくは投与薬剤等に応じて、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できる任意の値を設定するように構成されていてもよい。そして、SE判定部22および心拍判定部23がいずれも「Yes」と判断した場合に、再度工程S4に進み、漸増ステージを繰り返す。運動強度記憶部21は、工程S4における運動強度が増大されるたび、当該増大された運動強度を記憶する。SE判定部22および心拍判定部23の少なくとも一方が「No」と判断した場合は、工程S5に進み、漸増ステージを終了して漸減ステージに移行する。

0056

工程S5は、漸増ステージに引き続いて実施される漸減ステージの運動である。図3中のL3は、漸減ステージにおける自転車エルゴメーターに設定される運動負荷である。負荷低減部25は、SE判定部22および心拍判定部23の判断に基づいて、自転車エルゴメーターの運動負荷L3を、直前の漸増ステージでの運動における運動負荷L2に対して、所定の減分ΔL2だけ低減させる。そして被験者は、漸増ステージの運動に引き続き、低減された運動負荷L3にて漸減ステージにおける運動を実施する。本例では、運動強度の減分ΔL2を、初回運動時の初回運動負荷(Lwarm-up)の1/2としている。また、漸減ステージにおける駆動速度は50回転/分を目安とし、運動継続時間を1分間としている。しかしながら、漸減ステージの運動強度の減分ΔL2や、駆動速度、運動継続時間はこれに限定されない。例えば、減分ΔL2は、被験者の状態等に応じて、1〜50W程度の範囲で任意の値に設定することができる。漸減ステージの運動継続時間は、例えば、漸増ステージの運動継続時間よりも短い時間(例えば、0.5分間以上2分間以下、好ましくは0.5分間以上1.5分間以下)で適宜設定することができる。工程S5が終了すると、工程S6に進む。運動強度記憶部21は、この工程S5における運動強度を記憶する。

0057

工程S6は、工程S2と同様であり、制御装置20は、被験者に、工程S5で実施している漸減ステージの運動の継続に対する自己効力感を、自己効力感入力装置12に入力させる。本例では、被験者が工程S5を終了後に、スムーズに次工程に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S5における運動継続時間が例えば40秒間(1/3)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されていてもよい。自己効力感の入力を促す表示の内容やタイミング等は、工程S2と同様であるために重ねての説明は省略する。自己効力感入力装置12は、被験者により入力された自己効力感の程度を、例えば制御装置20の記憶部に記憶させる。

0058

そしてSE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。SE判定部22による判断についても工程S2と同様であるため、重ねての説明は省略する。SE判定部22の判断が「Yes」の場合は工程S7に進む。SE判定部22の判断が「No」の場合は工程S8に進む。

0059

工程S7において、心拍判定部23は、心拍測定装置16によって工程S5の漸減ステージの運動時(例えば、上記SE判定時)に測定されたユーザの運動時HRが、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断する。換言すると、自己効力感という主観的指標に加えて、HRという客観的指標により、運動負荷を増大してもよいかどうかを判断する。本例では、上述のように許容運動時心拍数(HRex1、HRex2)を設定している。そして、この漸減ステージでは、運動時HRが第2の許容運動時心拍(HRex2)と同じかより低い場合(運動時HR≦HRex2)に、「当該運動を遂行しても安全である」、つまり「Yes」と評価するようにしている。そして、運動時HRが第2の許容運動時心拍数(HRex2)よりも高い場合(運動時HR>HRex2)に、「当該運動を遂行しても安全である」とは判断しない、つまり「No」と評価するようにしている。心拍判定部23の判断が「Yes」の場合は工程S9に進む。心拍判定部23の判断が「No」の場合は工程S8に進む。

0060

工程S8は、繰り返し実施される漸減ステージの運動である。工程S8において、負荷低減部25は、SE判定部22および心拍判定部23の判断に基づいて、自転車エルゴメーターの運動負荷L3を、直前の漸減ステージでの運動における運動負荷L3に対して、所定の減分ΔL3だけ低減させる。そして被験者は、引き続き、低減された運動負荷L3にて漸減ステージにおける運動を実施する。本例では、運動強度の減分ΔL3を、初回運動時の初回運動負荷(Lwarm-up)の1/2としている。また、漸減ステージにおける駆動速度は50回転/分を目安とし、運動継続時間を1分間としている。しかしながら、漸減ステージの運動強度の減分ΔL3や、駆動速度、運動継続時間はこれに限定されない。工程S8が終了すると、再び工程S6に進む。運動強度記憶部21は、この工程S8における運動強度を記憶する。

0061

2回目以降の工程S6では、2回目以降の工程S2と同様に、被験者が工程S8の運動を終了後に、スムーズに次工程に移行できるように、自己効力感入力装置12は、例えば工程S8における漸減ステージの運動継続時間が例えば40秒間(1/3)を経過したあたりで、自己効力感の入力を促すように構成されていてもよい。そしてSE判定部22は、被験者が入力した自己効力感が、「当該運動を遂行できる見込みがある」と評価できるか否かを判断する。また、2回目以降の工程S7では、心拍判定部23は、工程S8における漸減ステージの運動中の所定のタイミング(例えばSE判定時)で、心拍測定装置16によって測定されたユーザの運動時HRが、「当該運動を遂行しても安全である」と評価できるか否かを判断するように構成されていてもよい。そして、SE判定部22および心拍判定部23の少なくとも一方が「No」と判断した場合に、工程S8に進み、漸減ステージを繰り返す。運動強度記憶部21は、工程S8における運動強度が低減されるたび、当該低減された運動強度を記憶する。SE判定部22および心拍判定部23の両方が「Yes」と判断した場合は、工程S9に進み、漸減ステージを終了する。

0062

工程S9では、基準運動強度設定部26は、運動負荷装置10に設定されている運動強度を基準運動強度(SE強度)とする。運動負荷装置10に設定されている運動強度とは、例えば、運動強度記憶部21が最後に記憶した運動強度である。これにより、呼吸ガス代謝測定を行うことなく、AT強度に対応する基準運動強度を決定することができる。ただし、上記基準運動強度の設定工程において、下肢疲労、不整脈、心電図のST部の低下等の症状が見られたときは、設定工程を終了するとよい。

0063

(実施形態2)
本実施形態では、ここに開示される自己効力感を利用した運動負荷試験による基準運動強度の設定方法と、公知のBorg指数を用いた運動負荷試験による基準運動強度の設定方法との正確性について、Bland-Altman分析を利用して評価した。

0064

具体的には、まず、29名の被験者に対し、上記実施形態1と同様の条件にて、AT強度と基準運動強度(SE強度)とをそれぞれ異なる日に測定した。すなわち、自転車エルゴメーターの駆動速度は50回転/分とし、漸増ステージの工程S4における運動時間は2分間、漸増強度は初回運動負荷(Lwarm-up)と同じとした。また、漸減ステージの工程S8における運動時間は1分間、漸減強度は初回運動負荷(Lwarm-up)の1/2とした。漸増強度と漸減強度とは、初回運動負荷に応じて調整するようにした。その結果、得られたAT強度とSE強度とについてBland-Altman分析の結果を図5に示した。

0065

また、9名の被験者に対し、上記実施形態1と同様の条件にてAT強度を測定した後、日を改めて、公知のBorg指数を利用して運動負荷試験を実施し、基準運動強度(ボルグ強度)を測定した。その結果、得られたAT強度とボルグ強度とについてBland-Altman分析の結果をプロットし、図6に示した。
なお参考までに、これらの試験の被験者の属性を、以下の表4に示した。

0066

0067

なお、ボルグ強度の測定は、図7に示すアルゴリズムに従って実施した。図7のボルグ強度の設定アルゴリズムの工程S101〜S109は、図3のSE強度の設定アルゴリズムの工程S1〜S9に概ね対応している。そして、SE強度の設定アルゴリズムの工程S2および工程S6において、実施している運動の継続に対する自己効力感(SE)について回答させることに代えて、ボルグ強度の設定アルゴリズムの工程S102および工程S106において、下記の表5に示すように、実施している運動についてそのときに感じる自覚的運動強度をBorg指数を利用して回答させるようにした。Borg指数は、「6」(非常に楽である)〜「20」(もう限界)から選択できるようにした。また、自覚的運動強度は、漸増ステージの工程S104では運動開始から1.5分のタイミングで、漸減ステージの工程S108では運動開始から40秒のタイミングで、HR測定とともに聴取するようにした。Borg指数を用いた評価では、糖尿病や心不全を患う患者に対して、Borg指数が「11」(楽である)〜「13」(ややきつい)くらいの運動を行うことが、適切であると推奨されている。そこで、工程S102および工程S106では、Borg指数で13(ややきつい)以下と回答した場合を、当該運動強度に対して「肯定的な選択肢を選択した」(Yes)と判断するようにした。

0068

0069

図5のBland-Altman分析結果により、CPX時に同定されたAT強度を参考として、運動処方に用いるその1分前の強度、すなわちAT−10ワット(つまりAT強度)と、基準強度設定アルゴリズムで同定した強度(つまりSE強度)の2者の関係を検討した。図5のY軸は被験者ごとに異なる2つの方法で測定されたSE強度とAT強度との差(SE強度(W)−AT強度(W))を、X軸はこれらの強度の組合せの平均値(2群の平均値(W))を示している。また、図5中の横の点線は、Y軸の値である差の標準偏差(standard deviation:SD)を示し、SDは9.45(W)であった。本試験例では殆どの症例がSD内であり、真値に近似した値を見積もることが可能なことが確認できた。また、SE強度がAT強度を大きく上回る症例は見られず、SE強度が安全に設定され得ることがわかった。また、図5のBland-Altman分析結果にも比例的一致関係が見られず、ここに開示されるシステムによる基準運動強度の測定方法は、呼吸ガス代謝測定を伴うAT強度の測定方法に対して正確であることが確認された。換言すると、ここに開示される基準運動強度の測定方法は、呼吸ガス代謝測定に基づくAT強度の測定方法に対して、精度が高いといえることが示された。

0070

一方、図6のBland-Altman分析結果により、CPX時に同定されたAT強度を参考として、運動処方に用いるその1分前の強度、すなわちAT−10ワット(つまりAT強度)と、Borg指数を用いて同定した強度(つまりボルグ強度)の2者の関係を検討した。図6のY軸は被験者ごとに異なる2つの方法で測定されたボルグ強度とAT強度との差(ボルグ強度(W)−AT強度(W))を、X軸はこれらの強度の組合せの平均値(2群の平均値(W))を示している。また、図6中の横の点線は、Y軸の値である差の標準偏差(standard deviation:SD)を示し、SDは13.9(W)であった。Borg指数を利用して基準運動強度(ボルグ強度)を求めると、基準運動強度のばらつきが大きくなってしまうことがわかった。また、そのばらつきも、ボルグ強度がAT強度よりも大きく見積もられることによるものが多く、ボルグ強度はやや安全性に課題があることがわかった。なお、図6のBland-Altman分析図には、AT強度が高い症例の一部に基準運動強度との差を大きく上回るものがみられた。この点においても、Borg指数を利用して得られる基準運動強度の設定方法は、ここに開示される基準運動強度の設定方法と比較すると、精度が劣るといえる。

0071

以上、本技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。

0072

1 基準運動強度設定システム
10運動負荷装置
12自己効力感入力装置
14負荷制御装置
16心拍測定装置
20制御装置
30 第2制御装置
100 運動支援システム

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