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技術 走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ、走査型プローブ顕微鏡、およびゼーベック係数算出方法

出願人 国立大学法人大阪大学アドバンス理工株式会社
発明者 中村芳明宮戸祐治池内賢朗
出願日 2019年2月8日 (1年9ヶ月経過) 出願番号 2019-021555
公開日 2020年8月27日 (2ヶ月経過) 公開番号 2020-128914
状態 未査定
技術分野 走査型プローブ顕微鏡 熱的手段による材料の調査、分析
主要キーワード 不動部分 一定区画 温度勾配方向 熱起電圧 高熱伝導板 高熱伝導金属 ピクセル点 水平面方向
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (13)

課題

測定対象局所的な熱的物性を得ることができる走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダおよびゼーベック係数算出方法を提供する。

解決手段

走査型プローブ顕微鏡走査対象である試料20の加熱領域側を保持する熱伝導性を有する加熱側支持具2aと、試料20の冷却領域側を保持する熱伝導性を有する冷却側支持具2bと、加熱側支持具2aを加熱する加熱装置4と、冷却側支持具2bを冷却する冷却装置5と、を備え、加熱領域側と冷却領域側との間の温度遷移領域温度勾配を形成する。

概要

背景

今日、ナノ材料キーワードとした材料分野において、ナノスケール分解能により材料を評価するための技術が求められている。例えば、ナノスケールのサーマルマネージメントを研究する分野においては、熱電材料の熱の伝わり方を局所的に研究することが求められている。

従来、例えば非特許文献1には、ナノスケールの熱電材料のゼーベック係数計測するための技術が開示されている。

概要

測定対象の局所的な熱的物性を得ることができる走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダおよびゼーベック係数算出方法を提供する。走査型プローブ顕微鏡走査対象である試料20の加熱領域側を保持する熱伝導性を有する加熱側支持具2aと、試料20の冷却領域側を保持する熱伝導性を有する冷却側支持具2bと、加熱側支持具2aを加熱する加熱装置4と、冷却側支持具2bを冷却する冷却装置5と、を備え、加熱領域側と冷却領域側との間の温度遷移領域温度勾配を形成する。

目的

本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、測定対象の局所的な熱的物性を得ることができる走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ、走査型プローブ顕微鏡、およびゼーベック係数算出方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

走査型プローブ顕微鏡走査対象である試料の加熱領域側を保持する熱伝導性を有する加熱側支持具と、前記試料の冷却領域側を保持する熱伝導性を有する冷却側支持具と、前記加熱側支持具を加熱する加熱装置と、前記冷却側支持具を冷却する冷却装置と、を備え、前記加熱領域側と前記冷却領域側との間の温度遷移領域温度勾配を形成する、走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ

請求項2

前記加熱装置および前記冷却装置は、前記加熱側支持具および前記冷却側支持具と熱的に接続された複数の加熱兼冷却装置である、請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ。

請求項3

前記請求項1または2記載の前記走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダを備えた、走査型プローブ顕微鏡。

請求項4

前記請求項3記載の前記走査型プローブ顕微鏡を準備する工程と、前記加熱装置および前記冷却装置により前記加熱領域側と前記冷却領域側との間の前記温度遷移領域に温度勾配を形成する工程と、前記温度勾配の方向および前記温度勾配を取得する工程と、前記試料の前記温度遷移領域の前記走査型プローブ顕微鏡による走査結果に基づいて熱起電圧分布を取得する工程と、前記温度遷移領域を一定区画ごとに分割し、前記熱起電圧分布から各前記区画内の熱起電圧の平均値を算出する工程と、前記温度勾配の方向に関して隣接する前記区画間の前記熱起電圧の平均値から、前記隣接する区画間の電圧勾配を算出する工程と、前記隣接する区画間の前記温度勾配および前記電圧勾配に基づいて、局所ゼーベック係数を算出する工程と、を備えるゼーベック係数算出方法

請求項5

前記温度勾配の方向および前記温度勾配を取得する工程は、前記試料の前記温度遷移領域の温度分布を取得する工程と、前記温度分布から前記区画内の温度の平均値を算出する工程と、隣接する前記区画間の前記温度の平均値から、前記隣接する区画の温度勾配を算出する工程と、複数の前記隣接する区画間で前記温度勾配が最大になる最大温度勾配方向と、前記最大温度勾配方向に関して温度勾配を抽出する工程と、を含み、前記隣接する区画間の電圧勾配を算出する工程は、前記最大温度勾配方向を前記温度勾配の方向として、前記隣接する区画間の電圧勾配を算出する工程を含み、前記局所ゼーベック係数を算出する工程は、前記最大温度勾配方向に関して隣接する前記区画間の前記温度勾配および前記電圧勾配に基づいて、前記局所ゼーベック係数を算出する工程を含む、請求項4記載のゼーベック係数算出方法。

請求項6

前記走査型プローブ顕微鏡は、ケルビンプローブ原子間力顕微鏡であり、前記熱起電圧分布を取得する工程は、前記加熱装置および前記冷却装置により温度勾配を形成し、前記試料の温度遷移領域において前記走査型プローブ顕微鏡により温度勾配時表面電位分布を取得する工程と、前記温度遷移領域の温度を均一にした状態で前記温度遷移領域において前記走査型プローブ顕微鏡により温度均一時表面電位分布を取得する工程と、前記温度勾配時表面電位分布および前記温度均一時表面電位分布に基づいて、前記温度遷移領域の熱による電位変化を求めることにより、熱起電圧分布を取得する工程と、を含む、請求項4または5記載のゼーベック係数算出方法。

請求項7

前記試料は、基板と、前記基板の一方の面に形成される測定物質と、前記基板と対向する面と反対の前記測定物質の面に形成される高熱伝導膜と、を有し、前記加熱領域および前記冷却領域は、前記高熱伝導膜により覆われる前記測定物質上の領域であり、前記温度遷移領域は、前記加熱領域および前記冷却領域以外の領域である、請求項4から6のいずれか一項記載のゼーベック係数算出方法。

技術分野

背景技術

0002

今日、ナノ材料キーワードとした材料分野において、ナノスケール分解能により材料を評価するための技術が求められている。例えば、ナノスケールのサーマルマネージメントを研究する分野においては、熱電材料の熱の伝わり方を局所的に研究することが求められている。

0003

従来、例えば非特許文献1には、ナノスケールの熱電材料のゼーベック係数を計測するための技術が開示されている。

先行技術

0004

“Seebeck Coefficient Measurement by Kelvin-Probe Force Microscopy”, H.Ikeda, F. Salleh, K. Asai, Journal of Automaition, Mobile Robotics & Intelligent System, volume 3, N.4 2009

発明が解決しようとする課題

0005

上述したとおり、熱電材料の局所的な熱的物性、例えば、熱電材料の電圧分布および温度分布は、熱電材料を開発するためには必要な情報となる。非特許文献1の技術は、加熱側放熱側において、それぞれの領域で温度が一定である2点間電位差を測定対象としており、この2点間から全体としてのゼーベック係数を求めているに過ぎない。すなわち、測定対象の局所的な熱的物性(物性の分布)を得るための装置や方法は、非特許文献1には開示されていない。

0006

本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、測定対象の局所的な熱的物性を得ることができる走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ、走査型プローブ顕微鏡、およびゼーベック係数算出方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダは、上述した課題を解決するために、走査型プローブ顕微鏡の走査対象である試料の加熱領域側を保持する熱伝導性を有する加熱側支持具と、前記試料の冷却領域側を保持する熱伝導性を有する冷却側支持具と、前記加熱側支持具を加熱する加熱装置と、前記冷却側支持具を冷却する冷却装置と、を備え、前記加熱領域側と前記冷却領域側との間の温度遷移領域温度勾配を形成する。

0008

また、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡は、前記走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダを備えたものである。

0009

さらに、本発明に係るゼーベック係数算出方法は、前記走査型プローブ顕微鏡を準備する工程と、前記加熱装置および前記冷却装置により前記加熱領域側と前記冷却領域側との間の温度遷移領域に温度勾配を形成する工程と、前記温度勾配の方向および前記温度勾配を取得する工程と、前記試料の前記温度遷移領域の前記走査型プローブ顕微鏡による走査結果に基づいて熱起電圧分布を取得する工程と、前記温度遷移領域を一定区画ごとに分割し、前記熱起電圧分布から各前記区画内の熱起電圧の平均値を算出する工程と、前記温度勾配の方向に関して隣接する前記区画間の前記熱起電圧の平均値から、前記隣接する区画間の電圧勾配を算出する工程と、前記隣接する区画間の前記温度勾配および前記電圧勾配に基づいて、局所ゼーベック係数を算出する工程と、を備える。

発明の効果

0010

本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ、走査型プローブ顕微鏡、およびゼーベック係数算出方法においては、測定対象の局所的な熱的物性を得ることができる。

図面の簡単な説明

0011

本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの一実施形態を示す概略的な説明図。
図1のII−II線に沿う断面図。
走査型プローブ顕微鏡の走査対象となる試料の説明図。
走査型プローブ顕微鏡の一例である周波数検出方式ケルビンプローブ原子間力顕微鏡の説明図。
熱起電圧分布導出処理を説明するフローチャート
温度勾配均一時における局所ゼーベック係数導出処理を説明するフローチャート。
温度勾配不均一時における局所ゼーベック係数導出処理を説明するフローチャート。
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの第1の変形例を示す概略的な説明図。
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの第2の変形例を示す概略的な説明図。
図9のX−X線に沿う断面図。
本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの第3の変形例を示す概略的な説明図。
図11のXII−XII線に沿う断面図。

実施例

0012

本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ、走査型プローブ顕微鏡、およびゼーベック係数算出方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。

0013

図1は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの一実施形態を示す概略的な説明図である。

0014

図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。

0015

走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ1(以下単に「ホルダ1」という)は、支持具2と、土台3と、加熱装置4と、冷却装置5と、を主に有している。

0016

支持具2は、走査型プローブ顕微鏡によって走査(測定)を行う対象の試料20を保持する。支持具2は、加熱装置4から試料20への加熱、および試料20から冷却装置5への吸熱に伴う熱伝達のため、試料20との密着性および熱伝導性を確保し、十分な熱容量も有する構造を有する。支持具2は、熱伝導性を有する材料であって、例えば銅やステンレスに代表される金属を主体とし、アルミニウム箔インジウム箔などと複合化された材料により構成される。支持具2は、図2に示すように、試料20の一辺側と、この一辺と対向する他辺側から垂直および水平方向に関して挟み、走査対象となる試料20の中央部20a(図3測定可能領域28)が露出するように支持する。支持具2は、試料20を固定、支持する役割に加えて、各々の支持具2に固定された試料領域の温度を均一化する役割がある。支持具2は、加熱側支持具2aと、冷却側支持具2bと、を有する。加熱側支持具2aは、試料20の加熱領域25(後述)側を保持する。冷却側支持具2bは、試料20の冷却領域26(後述)側を支持する。

0017

土台3は、ホルダ1全体の土台となる部材であり、図示下方から順次積層された加熱装置4、高熱伝導板6および断熱板7、ならびに支持具2を支持する。土台3は、例えばジルコニアに代表されるセラミックなどの断熱性を有する材料からなる。

0018

加熱装置4は、例えばセラミックヒータペルチェ素子などであり、加熱側支持具2aを加熱する。加熱装置4は、土台3と支持具2との間に配置され、土台3の外形と同様の外形を有する板状に形成されている。加熱装置4上には、高熱伝導板6および断熱板7が配置されている。

0019

高熱伝導板6は、例えば銅に代表される金属やシリコンなど熱伝導率の高い材料からなる板材である。高熱伝導板6は、試料20の加熱領域25を固定している支持具2aの直下に配置されている。これにより、加熱装置4は、高熱伝導板6を介して加熱側支持具2aおよび試料20の加熱領域25と熱的に接続されている。断熱板7は、例えば、フッ化マグネシウムなどのフッ化物結晶ガラス、またはジルコニアに代表されるセラミックなどの断熱性を有する材料からなる板材である。断熱板7は、試料20のうち、冷却領域26側を保持している冷却側支持具2bの直下に配置されている。これにより、加熱装置4は、加熱側支持具2aを介して試料20の加熱領域25とは熱的に接続され加熱領域25を加熱する一方、断熱板7により支持具2bとは熱的に遮断され、冷却領域26を加熱しない。

0020

冷却装置5は、例えば液体窒素を収容するクライオスタットであり、冷却側支持具2bを冷却する。冷却装置5は、例えば銅リボンなどの熱伝導率が高く、柔軟性に優れた接続部材8を有している。この接続部材8は、冷却側支持具2bと留め具9により固定されることにより、冷却側支持具2bと冷却装置5と、を熱的に接続している。これにより、冷却装置5は、冷却側支持具2bを介して試料20の冷却領域26とは熱的に接続され冷却領域26を冷却する一方、断熱板7により支持具2b以外とは熱的に遮断され、加熱領域25を冷却しない。

0021

加熱装置4および冷却装置5は、試料20の加熱領域25と、冷却領域26との間の温度遷移領域27(後述)に温度勾配を形成する。すなわち、支持具2で固定された試料20の表面(水平面)には、加熱装置4により加熱される加熱領域25と、冷却装置5により冷却される冷却領域26と、この加熱領域25と冷却領域26とに挟まれた温度遷移領域27とが形成される。ここで、ゼーベック係数測定に必要な感度を確保するためには、遷移領域の温度差を200度以上にすることが好ましい。そのため、加熱装置4は、例えば室温〜200度以上の範囲で加熱し得る性能を有するものを適用するのが好ましい。冷却装置5は、例えば−150度以下〜室温の範囲で冷却し得る性能を有するものを適用するのが好ましい。これにより、加熱領域25と冷却領域26との間の試料20の温度遷移領域27において、200度以上の大きな温度差を実現できる。

0022

次に、試料20および走査型プローブ顕微鏡の一例について説明する。

0023

図3は、走査型プローブ顕微鏡の走査対象となる試料20の説明図である。

0024

試料20は、基板21と、測定物質22と、高熱伝導金属薄膜23と、を有する。基板21は、測定物質22を形成するための基材である。測定物質22は、基板21の一方の面に形成され、ゼーベック係数を算出する対象となる熱電材料である。高熱伝導金属薄膜23(高熱伝導膜)は、例えば金であり、基板21と対向する面とは反対の測定物質22の面に形成される。高熱伝導金属薄膜23は、測定物質22の一辺側およびこの一辺と対向する他辺側に一定の間隔を開けて形成される。これにより、高熱伝導金属薄膜23は、加熱領域25、冷却領域26および温度遷移領域27の形成に寄与する。

0025

一般的に、走査型プローブ顕微鏡の走査可能範囲は一辺100μm以内と狭い。本実施形態における走査型プローブ顕微鏡は、この測定範囲内ゼーベック効果に伴う熱起電圧分布を十分な感度で測定する必要がある。このため、走査型プローブ顕微鏡の走査幅程度、またはそれからやや広げた距離以内において測定物質22に対して、均一で大きな温度勾配を与える必要がある。

0026

高熱伝導金属薄膜23は、高熱伝導金属薄膜23で覆われた領域の直下にある測定物質22の温度を均一化する役割がある。よって、加熱領域25は、加熱側支持具2aに保持され、高熱伝導金属薄膜23で覆われる測定物質22上の領域に形成される。冷却領域26は、冷却側支持具2bに保持され、高熱伝導金属薄膜23で覆われる測定物質22上の領域に形成される。

0027

温度遷移領域27は、試料20のうち高熱伝導金属薄膜23で覆わずに測定物質22が露出した、加熱領域25および冷却領域26以外の領域に形成される。また、走査型プローブ顕微鏡による測定可能領域28は、高熱伝導金属薄膜23で覆われることなく露出する測定物質22の表面となる。この測定可能領域28は、支持具2からも露出している。温度遷移領域27は、高熱伝導金属薄膜23で覆われていないため、この温度遷移領域27にのみ温度勾配ができる。温度遷移領域27を走査可能範囲程度の狭い範囲に限定することは、測定物質22に対して短い距離で大きな温度差を与える、つまり大きな温度勾配を与える上で、重要である。

0028

図4は、走査型プローブ顕微鏡の一例である周波数検出方式ケルビンプローブ原子間力顕微鏡30の説明図である。

0029

周波数検出方式ケルビンプローブ原子間力顕微鏡30(以下単に、「FM−KFM(Frequency-Modulation Kelvin-probe force Microscopy)30」という)は、ケルビンプローブ原子間力顕微鏡の一例であり、図4に示すとおりの公知の装置構成を有する。FM−KFM30は、導電性カンチレバー31により試料20の形状を測定するとともに、カンチレバー31と試料20の間に交流電圧印加し、探針32と試料20との間に働く静電気力を検出することにより、試料20の表面(測定可能領域28)の電位を測定する。ホルダ1は、FM−KFM30のベース33に搭載されたスキャナー34に、試料20を保持した状態で設置される。FM−KFM30による測定の際、温度勾配を与えるために液体窒素などを用いてかなりの低温で冷却する場合には、走査は、例えば10−4Paの真空中で行われる。

0030

ベース33は、FM−KFM30全体としての土台となる、構造的に固定された不動部分である。スキャナー34は、ベース33に搭載されており、走査をするためのアクチュエーターである。また、スキャナー34上には、試料台(図示せず)が設置され、この試料台上にホルダ1が設置される。なお、図4においては走査中に試料20を動かすスキャナー34を有する例が示されているが、走査中に試料20は不動とし、カンチレバー31をスキャナーで駆動させてもよい。また、図1図2、および後述する図8から図12において説明する冷却装置5、105、および加熱兼冷却装置210は、上述したスキャナ−34(試料台)上ではなく、FM−KFM30の不動部分であるベース33上に配置される。

0031

次に、ゼーベック係数の算出方法について説明する。ゼーベック係数は、FM−KFM30を用いた走査結果に基づく熱起電圧分布導出処理、および局所ゼーベック係数導出処理を実施することにより算出される。図5から図7で説明する熱起電圧分布導出処理および局所ゼーベック係数導出処理に含まれる演算処理は、例えばこれらの演算処理を実行可能なプログラムコンピュータで実行することにより実現可能である。

0032

図5は、熱起電圧分布導出処理を説明するフローチャートである。

0033

テップS1において、測定物質22(試料20)に温度勾配を形成した状態で測定物質22の表面電位分布A(温度勾配時表面電位分布)を取得する。具体的には、ホルダ1(FM−KFM30)の加熱装置4および冷却装置5により、支持具2を介して試料20と熱伝達を行うことで、試料20のうち測定可能領域28に温度勾配を形成する。このとき、試料20上に形成される加熱領域25と冷却領域26との温度差を、例えば100度以上に設定する。このようにして温度勾配を形成した後、試料20の測定可能領域28において、FM−KFM30により表面電位分布を取得する。

0034

ステップS2において、測定物質22の温度を均一にした状態で測定物質22の表面電位分布(温度均一時表面電位分布)を取得する。具体的には、FM−KFM30の加熱装置4および冷却装置5を動作させることなく、温度勾配がない状態で、測定物質22の測定可能領域28において、FM−KFM30により表面電位分布を取得する。

0035

ステップS3において、ステップS1で取得した温度勾配形成時の表面電位分布Aおよび温度均一時の表面電位分布Bに基づいて、測定物質22の温度勾配形成の有無による電位変化を求めることにより、熱起電圧分布V(x,y)を取得する。具体的には、測定可能領域28の各点において温度勾配形成時の表面電位と温度均一時の表面電位の差から、温度勾配の形成によりゼーベック効果により生じた純粋な電位変化を、熱起電圧として算出する。例えば10μm×10μmの測定可能領域28(走査範囲)を256×256ピクセルで定義する。熱起電圧分布V(x,y)は、その各ピクセル点の熱起電圧の値、または数ピクセル四方ごとに平均化した熱起電圧の値の分布により取得される。以上で熱起電圧分布導出処理は終了し、局所ゼーベック係数導出処理に進む。

0036

局所ゼーベック係数導出処理は、測定物質22の表面に形成される温度勾配の方向および温度勾配(温度勾配の大きさ)が均一な場合と、これらが不均一な場合(温度勾配の方向および大きさが一定ではない場合)とで場合分けして算出される。まず、温度勾配の方向および温度勾配が均一である場合の局所ゼーベック係数導出処理について説明する。

0037

図6は、温度勾配均一時における局所ゼーベック係数導出処理を説明するフローチャートである。

0038

ステップS11において、熱起電圧分布導出処理のステップS1で形成した温度勾配の方向および温度勾配dTを取得する。本処理においては、温度勾配の方向および温度勾配dTが均一であるという条件であるため、加熱側支持具2aおよび冷却側支持具2bの温度差、または試料20のうち加熱領域25側と冷却領域26側との高熱伝導金属薄膜23上の温度差を取得することにより、試料20の表面に形成される温度勾配が求められる。このため、FM−KFM30で走査した範囲における温度分布の実測は特に必要ない。なお、支持具2a、2b間および高熱伝導金属薄膜23上の温度差は、2つ以上の熱電対などの温度センサを該当箇所に固定して温度を測定することで、求められる。

0039

ステップS12において、ステップS3(図5の熱起電圧分布導出処理)で導出された熱起電圧分布V(x,y)を得た領域を一定微少区画に分割する。微少区画の寸法は、任意である。例えば、走査範囲を256×256ピクセルで定義している場合には、1つの微少区画が16×16ピクセルの寸法を有するように走査範囲が格子状に分割されることで、微少区画は定義され得る。

0040

ステップS13において、各微少区画内で、ステップS3で得られた熱起電圧分布V(x,y)を平均化し、各微少区画内の熱起電圧の平均値を算出する。ステップS14において、ステップS13で得られた各微少区画内の熱起電圧の平均値から、温度勾配の方向に関して隣接する微少区画間の電圧勾配dVを算出する。なお、ステップS13およびS14は、各微少区画において、例えば平面関数V(x,y)=ax+by+cにより熱起電圧分布Vをフィッティングして得られる(a,b)の値から、温度勾配方向の電圧勾配dVを算出する工程に置き換えてもよい。

0041

ステップS15において、ステップS11で得られた温度勾配(隣接する区画間の温度勾配)dT、およびステップS14で得られた電圧勾配dVに基づいて、局所ゼーベック係数S(x′,y′)を算出する。具体的には、ゼーベック係数Sは、S=dV/dTで定義される。これに基づいて、各隣接する区画間のdV/dTで得られる値を、局所ゼーベック係数S(x′,y′)として取得する。ステップS16において、各微少区画で算出された局所ゼーベック係数S(x′,y′)の分布を画像化する。これにより、測定物質22上のゼーベック係数S(x′,y′)の分布が視覚的に認識可能となる。以上で、温度勾配が均一時における局所ゼーベック係数導出処理は終了する。

0042

次に、温度勾配の方向および温度勾配が不均一である場合の局所ゼーベック係数導出処理について説明する。

0043

図7は、温度勾配不均一時における局所ゼーベック係数導出処理を説明するフローチャートである。

0044

ステップS21において、試料20の表面において温度分布T(x,y)を取得する。温度分布は、例えば走査型サーマル顕微鏡(図示せず)により測定物質22の表面の温度が計測されることにより得られる。

0045

ステップS22において、ステップS21で取得された温度分布T(x,y)を得た領域を一定微少区画に分割する。微少区画は、ステップS12(図6の局所ゼーベック係数導出処理)で説明したものと同義である。

0046

ステップS23において、各微少区画内で、ステップS22で得られた温度分布T(x,y)を平均化し、各区微少画内の温度の平均値を算出する。ステップS24において、ステップS23で得られた各微少区画内の温度の平均値から、隣接する微少区画間の温度勾配dTを算出する。ステップS25において、複数の隣接する区画において温度勾配dTの大きさが最大になる方向(最大温度勾配方向)を抽出する。また、この温度勾配dTが最大になる方向に関して隣接する区画間の温度勾配dT′を抽出する。なお、ステップS23からS25は、各微少区画において、例えば平面関数T(x,y)=ax+by+cにより温度分布Tをフィッティングして得られる(a,b)の値から、温度勾配が最大になる向きと値dT′を算出する工程に置き換えてもよい。

0047

なお、ステップS21からステップS25は、温度勾配の方向および温度勾配を取得する工程に対応する。

0048

ステップS26およびステップS27は、図6のステップS12およびステップS13とほぼ同様であるため、説明を省略する。ステップS28において、ステップS27で得られた各微少区画の熱起電圧の平均値から、温度勾配dT′の方向に関して隣接する区画間の電圧勾配dVを算出する。

0049

ステップS29において、温度勾配dT′の方向に関して隣接する区画間の温度勾配dT′および電圧勾配dVに基づいて、局所ゼーベック係数S(x′,y′)を算出する。局所ゼーベック係数S(x′,y′)は、図6のステップS15と同様の方法で算出される。ステップS30において、各微少区画で算出された局所ゼーベック係数S(x′,y′)の分布を画像化する。以上で、温度勾配が不均一時における局所ゼーベック係数導出処理は終了する。

0050

このようなホルダ1およびこのホルダ1を有するFM−KFM30は、試料20の表面に大きな温度勾配を形成することができる。これにより、試料20表面に温度分布を形成した状態で、熱起電圧分布を好適に取得することができる。また、得られた熱起電圧分布に基づくゼーベック係数算出方法により、ナノスケールの局所ゼーベック係数を導出することができる。これにより、例えば、表面電位分布から温度分布に変換可能となり、熱電材料のナノスケールの評価を好適に行うことができる。すなわち、本実施形態における走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ、走査型プローブ顕微鏡、およびゼーベック係数算出方法は、測定対象の局所的な熱的物性を得ることができる。

0051

本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

0052

例えば、走査型プローブ顕微鏡がFM−KFMである例を説明したが、原子間力顕微鏡ポテンショメトリ(AFMP(Atomic Force Microscope Potentiometry))などの他の走査型プローブ顕微鏡であってもよい。走査型プローブ顕微鏡がAFMPである場合、温度勾配を形成した状態で走査した結果得られる測定値の分布は、その動作原理から、熱起電圧分布となる。これにより、上述した図5の熱起電圧分布導出処理は省略でき、図6または図7の局所ゼーベック係数導出処理を実行すればよい。なお、FM−KFMは、非接触で走査が可能であるため、プローブからの熱流入や熱流出をほとんど考慮しなくて良いため、AMPFに対して優位に測定できる。

0053

また、ホルダの加熱装置および冷却装置は、支持具を介して試料を加熱および冷却し、温度勾配を形成することができれば、上述した加熱装置4および冷却装置5に限らない。

0054

例えば、図8は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの第1の変形例を示す概略的な説明図である。図8においては、ホルダ1と対応する構成および部分については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
第1の変形例としてのホルダ1aが上述したホルダ1と異なる点は、加熱装置4が加熱側支持具2aの直下に配置され、高熱伝導板6が省略された点である。ホルダ1aは、ホルダ1に比べて装置高さを小さくすることができる。

0055

また、図9は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの第2の変形例を示す概略的な説明図である。
図10は、図9のX−X線に沿う断面図である。

0056

第2の変形例としてのホルダ100がホルダ1と異なる点は、加熱装置4が複数のペルチェ素子104である点である。ホルダ100は、複数の支持具102と、土台103と、複数のペルチェ素子104と、冷却装置105と、を主に有している。

0057

支持具102は、走査型プローブ顕微鏡によって走査を行う対象の試料20を保持する。複数の支持具102は、試料20の周縁から試料20を囲うように垂直および水平方向に関して挟み、試料20の中央部20aが露出するように支持する。

0058

土台103は、ホルダ100全体の土台となる部材であり、下方から順次積層された高熱伝導板106、ペルチェ素子104、および支持具102を支持する。高熱伝導板106は、土台103上であり、ペルチェ素子104の直下に配置されている。

0059

ペルチェ素子104は、高熱伝導板106と支持具2との間に配置され、少なくとも支持具102の直下の全域に亘って配置されている。すなわち、複数のペルチェ素子104は、支持具102と同様に試料20の周縁を囲うように配置されている。ペルチェ素子104は、支持具102を介して試料20と熱的に接続されている。

0060

冷却装置105は、例えば液体窒素を収容するクライオスタットである。冷却装置105は、高熱伝導板106に埋設された接続部材108を有している。冷却装置105は、接続部材108、高熱伝導板106、ペルチェ素子104、および支持具102を介して、試料20と熱的に接続している。これにより、冷却装置105は、支持具102を介して試料20と熱的に接続されている。

0061

ホルダ100においては、支持具102のうち、試料20(支持具102)を加熱しているペルチェ素子104に対応する位置にある支持具102が、加熱側支持具となり得る。また、支持具102のうち加熱側支持具として機能する支持具102以外の支持具102は、ペルチェ素子104により加熱されていない。これら支持具102は、冷却装置105から吸熱される結果、冷却側支持具となり得る。

0062

このようなホルダ100は、各ペルチェ素子104を個別に温度制御が可能である。これにより、ホルダ100は、所望する温度分布に応じて適宜加熱または冷却を切り替えることができ、温度勾配の方向や位置を任意に制御することができる。

0063

さらに、図11は、本発明に係る走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダの第3の変形例を示す概略的な説明図である。
図12は、図11のXII−XII線に沿う断面図である。

0064

ホルダ200は、支持具202と、土台203と、断熱板207と、加熱兼冷却装置210と、を主に有している。支持具202および土台203は、図1および図2の支持具2および土台3、ならびに図9、10の支持具102および土台103とほぼ同様であるため、説明を省略する。

0065

断熱板207は、支持具202と土台203との間に配置されている。断熱板207は、例えばフッ化マグネシウムなどのフッ化物結晶、ガラス、またはジルコニアに代表されるセラミックなどの断熱性を有する材料からなる板材である。断熱板207は、支持具202と試料20との間のみに熱伝達を限定させることで、中央部20aの水平面方向に確実に温度勾配を生じさせる役割がある。断熱板207は、熱が土台203に伝達されないように、さらには走査型プローブ顕微鏡の試料台などからホルダ200の外部に逃げないように配置されている。

0066

加熱兼冷却装置210は、支持具202の一部としての加熱側支持具を加熱し、支持具202の他部としての冷却側支持具を冷却する。加熱兼冷却装置210は、支持具202の外周を囲うように複数配置されている。加熱兼冷却装置210は、ペルチェ素子、またはクライオスタットとヒータを組み合わせた機構からなる。加熱兼冷却装置210は、例えば銅リボンなどの熱伝導率の高い接続部材208を有している。この接続部材208は、支持具202と留め具209との間に挟まれることにより、支持具202と加熱兼冷却装置210と、を熱的に接続している。加熱兼冷却装置45の作用については、図1図2、および図8から図10の加熱装置4および冷却装置5と同様であるため、詳細な説明を省略する。

0067

このようなホルダ200は、各加熱兼冷却装置210を所望する温度分布に応じて適宜加熱または冷却を切り替えることができ、温度勾配の方向や位置を任意に制御することができる。

0068

1、1a、100、200走査型プローブ顕微鏡用試料ホルダ(ホルダ)
2、102、202支持具
2a加熱側支持具
2b冷却側支持具
3、103、203土台
4加熱装置
5、105冷却装置
6、106高熱伝導板
7、207断熱板
8、108、208接続部材
9、209留め具
20試料
22測定物質
25 加熱領域
26冷却領域
27温度遷移領域
28測定可能領域
30周波数検出方式ケルビンプローブ原子間力顕微鏡
45 加熱兼冷却装置
104ペルチェ素子
210 加熱兼冷却装置

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