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技術 ラインパイプ用電縫鋼管

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 田島健三長井健介小林俊一河野英人荒井勇次原卓也
出願日 2019年2月8日 (2年0ヶ月経過) 出願番号 2019-021741
公開日 2020年8月27日 (5ヶ月経過) 公開番号 2020-128577
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理 物品の熱処理
主要キーワード 限界開口 不安定破壊 外表層 強制風冷 エネルギ分散型 冷却速度差 変位量δ 介在物密度
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (3)

課題

本発明によるラインパイプ電縫鋼管は、高い強度と優れた低温靭性とを有する。

解決手段

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管は、母材と、電縫溶接部と、シーム熱処理熱影響部とを備える。母材は質量%でC:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Al:0.040%以下、Ti:0.003〜0.030%、Nb:0.003〜0.200%、N:0.0080%以下、O:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する。シーム熱処理の熱影響部のうち、特定領域において、平均ビッカース硬さは200〜240である。特定領域のミクロ組織において、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物密度は12.0個/mm2以下である。

概要

背景

掘削された原油天然ガスを搬送するパイプラインは、複数のラインパイプで構成される。ラインパイプには、安全性の観点から高い強度及び靭性が要求される。ラインパイプ用の鋼管として、電気抵抗溶接鋼管(以下、ラインパイプ用電縫鋼管という)が利用される場合がある。そのため、ラインパイプ用電縫鋼管には、優れた靭性が求められる。ラインパイプはさらに、極寒冷地で使用されることがあるため、ラインパイプ用電縫鋼管には、特に低温靭性が求められる。

特開2007−138289号公報(特許文献1)は、低温靭性を備えた高強度熱延鋼板を提案する。

特許文献1に開示された高強度熱延鋼板は、質量%で、C:0.01〜0.05%未満、Si:1.0%以下、Mn:0.3〜2.0%、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.0050%以下、B:0.0001〜0.0050%、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.030〜0.10%を含み、かつ、Si、Mnが0.8Si≦Mn≦Si+1.2を、Ti、Nb、Cが0.5<(Ti+Nb/2)/C<4.0を満足するように含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼組成を有し、さらにベイニティックフェライト及び/又はフェライトからなる組織を有する。これにより、優れた強度及び低温靭性が得られる、と記載されている。

概要

本発明によるラインパイプ用電縫鋼管は、高い強度と優れた低温靭性とを有する。本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管は、母材と、電縫溶接部と、シーム熱処理熱影響部とを備える。母材は質量%でC:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Al:0.040%以下、Ti:0.003〜0.030%、Nb:0.003〜0.200%、N:0.0080%以下、O:0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する。シーム熱処理の熱影響部のうち、特定領域において、平均ビッカース硬さは200〜240である。特定領域のミクロ組織において、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物密度は12.0個/mm2以下である。

目的

本発明の目的は、高い強度と優れた低温靭性とを有するラインパイプ用電縫鋼管を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

母材と、電縫溶接部と、シーム熱処理熱影響部とを備えるラインパイプ電縫鋼管であって、前記母材が、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Al:0.040%以下、Ti:0.003〜0.030%、Nb:0.003〜0.200%、N:0.0080%以下、O:0.0050%以下、Cu:0〜1.00%、Ni:0〜1.00%、Cr:0〜1.00%、Mo:0〜1.00%、V:0〜0.10%、B:0〜0.0050%、Ca:0〜0.0008%、及び、希土類元素REM):0〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有し、前記シーム熱処理の熱影響部のうち、前記ラインパイプ用電縫鋼管の前記電縫溶接部から前記母材の周方向200〜600μm位置であって、前記電縫溶接部の管軸方向に垂直な断面での外表面から3〜5mm深さ位置である特定領域において、平均ビッカース硬さが200〜240であり、前記特定領域のミクロ組織において、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度が12.0個/mm2以下であり、前記シーム熱処理の熱影響部の肉厚をtSとしたときに、前記シーム熱処理の熱影響部のtS/4部のミクロ組織において、フェライト面積率が0〜40%、残部が焼戻しベイナイトであり、平均結晶粒径が15μm以下であり、前記シーム熱処理の熱影響部のtS/2部のミクロ組織において、フェライトの面積率が0〜50%、残部が焼戻しベイナイトであり、平均結晶粒径が15μm以下であり、前記母材の肉厚をtBとしたときに、前記母材の、tB/4部及びtB/2部のミクロ組織において、フェライトの面積率が0〜50%、残部がベイナイトであり、平均結晶粒径が15μm以下である、ラインパイプ用電縫鋼管。0.20≦C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5≦0.53(1)0.120≦C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B≦0.220(2)ここで、式(1)及び式(2)の各元素記号には、対応する元素含有量(質量%)が代入され、含有されない場合はゼロとする。

請求項2

請求項1に記載のラインパイプ用電縫鋼管であって、前記母材の前記化学組成は、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%、Cr:0.01〜1.00%、Mo:0.01〜1.00%、V:0.001〜0.10%、B:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0008%、及び、希土類元素(REM):0.0001〜0.0050%、からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、ラインパイプ用電縫鋼管。

請求項3

請求項1又は請求項2に記載のラインパイプ用電縫鋼管であって、前記母材の肉厚が25.4mm以下である、ラインパイプ用電縫鋼管。

技術分野

0001

本発明は、鋼管に関し、さらに詳しくは、ラインパイプ電縫鋼管に関する。

背景技術

0002

掘削された原油天然ガスを搬送するパイプラインは、複数のラインパイプで構成される。ラインパイプには、安全性の観点から高い強度及び靭性が要求される。ラインパイプ用の鋼管として、電気抵抗溶接鋼管(以下、ラインパイプ用電縫鋼管という)が利用される場合がある。そのため、ラインパイプ用電縫鋼管には、優れた靭性が求められる。ラインパイプはさらに、極寒冷地で使用されることがあるため、ラインパイプ用電縫鋼管には、特に低温靭性が求められる。

0003

特開2007−138289号公報(特許文献1)は、低温靭性を備えた高強度熱延鋼板を提案する。

0004

特許文献1に開示された高強度熱延鋼板は、質量%で、C:0.01〜0.05%未満、Si:1.0%以下、Mn:0.3〜2.0%、P:0.025%以下、S:0.015%以下、Al:0.005〜0.10%、N:0.0050%以下、B:0.0001〜0.0050%、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.030〜0.10%を含み、かつ、Si、Mnが0.8Si≦Mn≦Si+1.2を、Ti、Nb、Cが0.5<(Ti+Nb/2)/C<4.0を満足するように含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる鋼組成を有し、さらにベイニティックフェライト及び/又はフェライトからなる組織を有する。これにより、優れた強度及び低温靭性が得られる、と記載されている。

先行技術

0005

特開2007−138289号公報

発明が解決しようとする課題

0006

ところで、低温靭性を評価する指標として、DWTT(Drop Weight Tear Test:落重試験)特性がある。DWTTは、ノッチを入れた試験片衝撃荷重をかけて破壊し、破断面延性破面率及び/又は脆性破面率を測定する。DWTT特性ではたとえば、DWTTにおいて85%以上の延性破面率を有する温度を評価指標とする。しかしながら、近年、さらなる低温靭性が求められている。DWTTよりも厳しい条件での評価として、CTOD(Crack Tip Opening Displacement:亀裂先端開口変位試験がある。CTOD試験は、大型の構造物に亀裂が存在したときに曲げ荷重をかけると、割れ亀裂が進展する現象模擬した試験である。亀裂を有する試験片に荷重を加えていくと、亀裂が急速に進展する現象「不安定破壊」が起こる。CTOD試験は、この亀裂が急速に進展する直前の開口部の変化(限界開口変位量δc)を評価指標とする。極寒冷地用のラインパイプ用電縫鋼管には、高いCTOD特性が求められる。特許文献1ではCTOD特性としての低温靭性について検討されていない。

0007

本発明の目的は、高い強度と優れた低温靭性とを有するラインパイプ用電縫鋼管を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管は、母材と、電縫溶接部と、シーム熱処理熱影響部とを備える。上記母材は、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Al:0.040%以下、Ti:0.003〜0.030%、Nb:0.003〜0.200%、N:0.0080%以下、O:0.0050%以下、Cu:0〜1.00%、Ni:0〜1.00%、Cr:0〜1.00%、Mo:0〜1.00%、V:0〜0.10%、B:0〜0.0050%、Ca:0〜0.0008%、及び、希土類元素REM):0〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する。上記シーム熱処理の熱影響部のうち、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材の周方向200〜600μm位置であって、電縫溶接部の管軸方向に垂直な断面での外表面から3〜5mm深さ位置である特定領域において、平均ビッカース硬さは200〜240である。上記特定領域のミクロ組織において、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度は12.0個/mm2以下である。上記シーム熱処理の熱影響部の肉厚をtSとしたときに、シーム熱処理の熱影響部のtS/4部のミクロ組織において、フェライトの面積率は0〜40%、残部は焼戻しベイナイトであり、平均結晶粒径は15μm以下である。上記シーム熱処理の熱影響部のtS/2部のミクロ組織において、フェライトの面積率は0〜50%、残部は焼戻しベイナイトであり、平均結晶粒径は15μm以下である。上記母材の肉厚をtBとしたときに、母材の、tB/4部及びtB/2部のミクロ組織において、フェライトの面積率は0〜50%、残部はベイナイトであり、平均結晶粒径は15μm以下である。
0.20≦C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5≦0.53 (1)
0.120≦C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B≦0.220 (2)
ここで、式(1)及び式(2)の各元素記号には、対応する元素含有量(質量%)が代入され、含有されない場合はゼロとする。

発明の効果

0009

本発明によるラインパイプ用電縫鋼管は、高い強度と優れた低温靭性とを有する。

図面の簡単な説明

0010

図1は、特定領域における、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度(介在物密度)と、特定領域における平均ビッカース硬さと、CTOD特性との関係を示す図である。
図2は、製鋼工程の2次精錬における溶鋼還流時間とCa、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度(介在物密度)との関係を示す図である。

0011

本発明者らは、ラインパイプ用電縫鋼管の強度及び低温靭性について調査及び検討を行い、次の知見を得た。

0012

ラインパイプ用電縫鋼管は、一般的に鋼板ロール成形しながら、上記鋼板の両端を高周波加熱して突合せ溶接することによって製造される。そしてその後、電縫溶接部を含む所定の範囲に対して所定の条件で熱処理を施す。そのため、電縫溶接部と電縫溶接部を挟んだ両側の母材とには、熱処理が施された領域が形成される。なお、本願明細書においては、上記の熱処理をシーム熱処理といい、シーム熱処理が施され、Ac3点以上の温度域まで加熱された領域をシーム熱処理の熱影響部という。シーム熱処理の熱影響部は、電縫溶接部と電縫溶接部を挟んだ両側の母材とを合わせた領域である。

0013

高い強度と優れた低温靱性とを両立するためには、ラインパイプ用電縫鋼管の化学組成を調整することに加えて、母材及びシーム熱処理の熱影響部におけるミクロ組織を、それぞれ制御することが重要となる。

0014

特に、シーム熱処理の熱影響部のミクロ組織の制御は、外表面側から熱処理を施した後に水冷することにより行う。そのため、シーム熱処理の熱影響部の外表面側と肉厚中央部とでは冷却速度に差が生じ、組織にばらつきが生じる。

0015

組織のばらつきにより、シーム熱処理の熱影響部の外表面側と肉厚中央部とで硬さに大きな差が生じると、低温靱性を確保することが難しくなる。したがって、シーム熱処理の熱影響部に対する熱処理及び冷却の条件を厳密に管理することにより、シーム熱処理の熱影響部全体での組織のばらつきを極力低減する必要がある。

0016

加えて、シーム熱処理の熱影響部を所定の条件で再加熱することにより、ラインパイプ用電縫鋼管の強度及び低温靱性を目的とする範囲に調整することが可能になる。

0017

しかしながら、上記のようにラインパイプ用電縫鋼管のミクロ組織のばらつきを低減しても、CTOD試験の値が低い場合があった。そこで、本発明者らは、ラインパイプ用電縫鋼管が、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm以上を満たすような、高い低温靭性を有するための条件について、さらに種々検討を行った。

0018

本発明者らは、ラインパイプ用電縫鋼管の様々な部位において、CTOD試験の値を調査した。その結果、シーム熱処理の熱影響部においてCTOD試験の値が特に低いことを見出した。具体的には、シーム熱処理の熱影響部のうち、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材の周方向200〜600μm位置であって、電縫溶接部の管軸方向に垂直な断面での外表面から3〜5mm深さ位置において、CTOD試験の値が特に低かった。

0019

そこで、本発明者らは、従来検討されていなかったシーム熱処理の熱影響部における低温靭性に着目し、シーム熱処理の熱影響部における低温靭性を高めれば、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性を高めることができると、考えた。本発明者らは、上記のラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材の周方向200〜600μm位置であって、電縫溶接部の管軸方向に垂直な断面での外表面から3〜5mm深さ位置のミクロ組織(以下、特定領域ともいう)における低温靭性の低下を抑制する方法について、種々検討した。その結果、以下の知見を得た。

0020

一般的に、鋼の硬さと靭性とは反比例する。つまり、鋼の硬さが高くなれば、鋼の靭性は低下する。そのため、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性を高めるためには、特定領域の硬さを低減すればよいと考えられる。しかしながら、本発明者らは、種々検討した結果、特定領域におけるCa、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度(以下、介在物密度ともいう)が特定の数値以下であれば、特定領域の硬さがある程度高くても、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性を高めることができることを見出した。具体的には次のとおりである。

0021

本発明者らは、介在物について、特に、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物(以下、特定介在物ともいう)に着目した。これらの特定介在物は、製鋼工程の2次精錬で溶鋼中に添加されるフラックス起因であるものが多く、特に低温靭性に影響を与えると考えたからである。図1は、特定領域における特定介在物の数密度(介在物密度)と、特定領域における平均ビッカース硬さと、CTOD特性との関係を示す図である。図1は、介在物密度を種々変更したラインパイプ用電縫鋼管を、後述の実施例の製造方法により製造し、製造したラインパイプ用電縫鋼管を用いて、後述の実施例に記載の特定領域での平均ビッカース硬さ及び介在物密度を測定し、さらにCTOD試験を実施することにより得られた。図1中、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm以上のもの、つまり高いCTOD特性が得られたものを○で示す。図1中、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm未満、つまりCTOD特性が低かったものを×で示す。図1を参照して、特定領域での介在物密度が12.0個/mm2以下であれば、ビッカース硬さが200〜240であっても、高い低温靭性が得られた。本願発明の化学組成及びミクロ組織を有するラインパイプ用電縫鋼管において、特定領域での介在物密度が12.0個/mm2以下であり、かつ、特定領域での平均ビッカース硬さが200〜240であれば、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性を高めることができる。この理由はさだかではないが、以下のとおりと推測できる。

0022

特定介在物は、割れの起点となる。本発明の実施の形態において、特定介在物とは、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物を意味する。特定介在物はたとえば、酸化物系介在物硫化物系介在物、及び、酸化物系介在物と硫化物系介在物とが複合化された複合介在物である。酸化物系介在物とは、酸素(O)含有量が質量%で20%以上の介在物である。酸化物系介在物とは、Ca、Al及びTiからなる群から選択される1種以上と、Oとを含有する介在物である。酸化物系介在物はたとえば、CaO、Al2O3、TiO2、及び、それらが複合化された酸化物介在物である。硫化物系介在物とは、硫黄(S)含有量が質量%で30%以上の介在物である。硫化物系介在物とはたとえば、CaとSとを含有する介在物である。硫化物系介在物はたとえば、CaSである。複合化された複合介在物とは、酸化物系介在物と硫化物系介在物とが結合したものをいう。複合介在物は、質量%で、O:5%以上、及び、S:10%以上を含有する。

0023

特定領域において、特定介在物が起点となり割れが発生する理由は次のとおりと考えられる。ラインパイプ用電縫鋼管では、電縫溶接部及びその近傍であるシーム熱処理の熱影響部において、特定介在物が、電縫溶接部アプセットにより、両側から加圧される。加圧された特定介在物は、板状に変形して、割れの起点となりやすい。その結果、シーム熱処理の熱影響部の低温靭性が低下する。

0024

したがって、シーム熱処理の熱影響部のうち、特定領域の介在物密度を低減すれば、高い靭性が得られる。

0025

本発明者らはさらに、特定領域の介在物密度を低減する方法について検討した。その結果、以下の知見を得た。

0026

特定介在物は、上記のとおり、製鋼工程の2次精錬で溶鋼中に添加されるフラックス起因であるものを多く含む。そこで、本発明者らは、製鋼工程において、2次精錬での還流時間と、特定領域の介在物密度との関係に着目した。

0027

図2は、製鋼工程の2次精錬における溶鋼の還流時間とCa、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度(介在物密度)との関係を示す図である。本発明の実施の形態において、還流時間とは、2次製錬において、脱硫フラックス投入完了してから、溶鋼の撹拌を終了するまでの時間を意味する。図2は、還流時間を変化させて、後述の実施例の製造方法により、各種のラインパイプ用電縫鋼管を製造し、後述の実施例の方法により介在物密度を測定することにより得られた。図2を参照して、還流時間が7分以上であれば、介在物密度が顕著に低下する。つまり、還流時間が7分付近に、変曲点が存在する。より具体的には、還流時間が7分以上であれば、介在物密度を12.0個/mm2以下にすることができる。

0028

以上の知見に基づいて完成した本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管は、母材と、電縫溶接部と、シーム熱処理の熱影響部とを備える。上記母材は、質量%で、C:0.030〜0.100%、Si:0.01〜0.50%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Al:0.040%以下、Ti:0.003〜0.030%、Nb:0.003〜0.200%、N:0.0080%以下、O:0.0050%以下、Cu:0〜1.00%、Ni:0〜1.00%、Cr:0〜1.00%、Mo:0〜1.00%、V:0〜0.10%、B:0〜0.0050%、Ca:0〜0.0008%、及び、希土類元素(REM):0〜0.0050%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有する。上記シーム熱処理の熱影響部のうち、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材の周方向200〜600μm位置であって、電縫溶接部の管軸方向に垂直な断面での外表面から3〜5mm深さ位置である特定領域において、平均ビッカース硬さは200〜240である。上記特定領域のミクロ組織において、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度は12.0個/mm2以下である。上記シーム熱処理の熱影響部の肉厚をtSとしたときに、シーム熱処理の熱影響部のtS/4部のミクロ組織において、フェライトの面積率は0〜40%、残部は焼戻しベイナイトであり、平均結晶粒径は15μm以下である。上記シーム熱処理の熱影響部のtS/2部のミクロ組織において、フェライトの面積率は0〜50%、残部は焼戻しベイナイトであり、平均結晶粒径は15μm以下である。上記母材の肉厚をtBとしたときに、母材の、tB/4部及びtB/2部のミクロ組織において、フェライトの面積率は0〜50%、残部はベイナイトであり、平均結晶粒径は15μm以下である。
0.20≦C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5≦0.53 (1)
0.120≦C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B≦0.220 (2)
ここで、式(1)及び式(2)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入され、含有されない場合はゼロとする。

0029

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管の母材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%、Cr:0.01〜1.00%、Mo:0.01〜1.00%、V:0.001〜0.10%、B:0.0001〜0.0050%、Ca:0.0001〜0.0008%、及び、希土類元素(REM):0.0001〜0.0050%、からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。

0030

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管は、母材の肉厚が25.4mm以下であるのが好ましい。

0031

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管は、母材と、電縫溶接部と、シーム熱処理の熱影響部とを有する。母材は円筒状であり、電縫溶接部はラインパイプ用電縫鋼管の軸方向に平行な方向に延在している。また、シーム熱処理の熱影響部は、ラインパイプ用電縫鋼管の周方向において、電縫溶接部と電縫溶接部を挟んだ両側の母材とを合わせた領域である。シーム熱処理の熱影響部とは、ラインパイプ用電縫鋼管のうち、シーム熱処理時に熱影響を受けた部分を意味する。

0032

本発明においては、シーム熱処理の熱影響部のうち、特定領域の平均ビッカース硬さ及び介在物密度と、シーム熱処理の熱影響部及び母材の化学組成の調整及びミクロ組織の制御とが重要となる。なお、鋼板を電縫溶接してラインパイプ用電縫鋼管とする際には、溶接材料等を用いないため、実質的に、母材と、電縫溶接部と、シーム熱処理の熱影響部との化学組成は同一となる。

0033

以下、本発明の実施の形態のラインパイプ用電縫鋼管について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。

0034

[化学組成]
本発明の実施の形態のラインパイプ用電縫鋼管の母材の化学組成は、次の元素を含有する。

0035

C:0.030〜0.100%
炭素(C)は、母材の強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、炭化物が生成し、鋼の低温靭性が低下する。C含有量が高すぎればさらに、鋼の溶接性が低下する。したがって、C含有量は0.030〜0.100%である。C含有量の好ましい下限は0.035%であり、さらに好ましくは0.040%である。C含有量の好ましい上限は、0.090%であり、さらに好ましくは0.080%である。

0036

Si:0.01〜0.50%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、シーム熱処理の熱影響部の低温靭性が低下する。したがって、Si含有量は0.01〜0.50%である。Si含有量の好ましい下限は、0.015%である。Si含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.30%である。

0037

Mn:0.50〜2.50%
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Mnはさらに、鋼の低温靭性を高める。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、鋼の強度が高くなりすぎ、シーム熱処理の熱影響部の低温靭性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.50〜2.50%である。Mn含有量の好ましい下限は、1.00%である。Mn含有量の好ましい上限は2.00%である。

0038

P:0.050%以下
燐(P)は不純物である。Pは、鋼の低温靭性を低下する。したがって、P含有量は0.050%以下である。P含有量の好ましい上限は0.020%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。

0039

S:0.0050%以下
硫黄(S)は不純物である。Sは、Mnと結合してMn系硫化物を形成する。そのため、低温靭性が低下する。したがって、S含有量は0.0050%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0030%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。

0040

Al:0.040%以下
アルミニウム(Al)は不可避に含有される。すなわち、Al含有量は0%超である。Alは鋼を脱酸する。一方、Al含有量が高すぎれば、Al窒化物が粗大化し、母材及びシーム熱処理の熱影響部の低温靭性が低下する。したがって、Al含有量は、0.040%以下である。Al含有量の好ましい上限は0.030%である。本明細書において、Al含有量は鋼中の全Al含有量を意味する。

0041

Ti:0.003〜0.030%
チタン(Ti)は、鋼中のNと結合してTiNを形成し、固溶したNによる低温靭性の低下を抑制する。さらに、微細なTiNが分散析出することにより、結晶粒の粗大化を抑制する。これにより、低温靭性が高まる。Ti含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、TiNが粗大化したり、粗大なTiCが生成する。この場合、低温靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0.003〜0.030%である。Ti含有量の好ましい下限は、0.005%である。Ti含有量の好ましい上限は0.025%である。

0042

Nb:0.003〜0.200%
ニオブ(Nb)は、鋼中のCやNと結合して微細なNb炭窒化物を形成する。微細なNb炭窒化物は、分散強化により鋼の強度を高める。Nbはさらに、オーステナイト域再結晶を抑制して、未再結晶圧延温度域を拡大する。Nbはさらに、オーステナイト焼き入れ性を向上させることによって、圧延後及びシーム熱処理後の加速冷却中に生成するフェライト及びベイナイトなどの組織を微細均一化する。その結果、鋼の母材及びシーム熱処理の熱影響部の低温靭性が高まる。Nb含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、Nb炭窒化物が粗大化し、低温靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0.003〜0.200%である。Nb含有量の好ましい下限は、0.005%である。Nb含有量の好ましい上限は0.100%である。

0043

N:0.0080%以下
窒素(N)は、不可避に含有される。すなわち、N含有量は0%超である。Nは、窒化物を形成して、加熱中のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。この場合、圧延工程においてオーステナイト粒が微細化し、変態後の結晶粒が微細になる。その結果、低温靭性が高まる。Nはさらに、固溶強化により鋼の強度を高める。N含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、N含有量が高すぎれば、炭窒化物が粗大化し、母材だけでなくシーム熱処理の熱影響部の低温靭性が低下する。したがって、N含有量は0.0080%以下である。N含有量の好ましい上限は0.0060%である。

0044

O:0.0050%以下
酸素(O)は不純物である。Oは酸化物を形成して、母材だけでなくシーム熱処理の熱影響部の低温靭性を低下する。したがって、O含有量は0.0050%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0030%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。

0045

上述のラインパイプ用鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B、Ca及び希土類元素(REM)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素は鋼の強度を高める。

0046

Cu:0〜1.00%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Cu含有量は0%であってもよい。Cuが含有される場合、Cuは低温靭性を低下させずに、鋼材の強度を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、鋼片加熱時及び溶接時に割れが生じやすくなる。したがって、Cu含有量は0〜1.00%である。Cu含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cu含有量の好ましい上限は0.80%であり、さらに好ましくは0.60%である。

0047

Ni:0〜1.00%
ニッケル(Ni)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ni含有量は0%であってもよい。Niが含有される場合、Niは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Niはさらに、低温靭性を高める。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、鋼の溶接性が低下する。したがって、Ni含有量は0〜1.00%である。Ni含有量の好ましい下限は、0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Ni含有量の好ましい上限は0.50%である。

0048

Cr:0〜1.00%
クロム(Cr)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Cr含有量は0%であってもよい。Crが含有される場合、析出強化により、鋼の強度を高める。しかしながら、Cr含有量が高すぎれば、Crは、鋼の焼入れ性を高めて、ベイナイト組織が生じる。その結果、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Cr含有量は0〜1.00%である。Cr含有量の好ましい下限は、0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cr含有量の好ましい上限は0.50%である。

0049

Mo:0〜1.00%
モリブデン(Mo)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mo含有量は0%であってもよい。Moが含有される場合、Moは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Moはさらに、炭窒化物を形成して、鋼の強度を高める。Moはさらに、Nbと複合的に含有させることで、オーステナイト域の再結晶を抑制して、未再結晶圧延温度域を拡大する。Moはさらに、オーステナイトの焼入れ性を高め、圧延後及びシーム熱処理後の加速冷却中に生成するフェライト及びベイナイト等の組織を微細均一化する。その結果、ラインパイプ用電縫鋼管の母材及びシーム熱処理の熱影響部の低温靭性を高める。しかしながら、Mo含有量が高すぎれば、強度が高くなりすぎる。Mo含有量が高すぎればさらに、低温靭性が著しく低下する。したがって、Mo含有量は0〜1.00%である。Mo含有量の好ましい下限は、0.01%であり、さらに好ましくは0.10%である。Mo含有量の好ましい上限は0.50%である。

0050

V:0〜0.10%
バナジウム(V)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、V含有量は0%であってもよい。Vが含有される場合、Vは、炭化物及び/又は窒化物を形成して、鋼の強度を高める。しかしながら、V含有量が高すぎれば、鋼の低温靭性が低下する。したがって、V含有量は0〜0.10%である。V含有量の好ましい下限は、0.001%である。V含有量の好ましい上限は0.06%である。

0051

B:0〜0.0050%
ホウ素(B)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、B含有量は0%であってもよい。Bが含有される場合、Bは、鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。しかしながら、B含有量が高すぎれば、鋼の低温靭性が低下する。したがって、B含有量は0〜0.0050%である。B含有量の好ましい下限は、0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。B含有量の好ましい上限は0.0030%である。

0052

Ca:0〜0.0008%、
カルシウム(Ca)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ca含有量は0%であってもよい。Caが含有される場合、Caは、MnSの形態を制御して、球状化する。この場合、鋼材の板厚方向の特性、特に耐ラメラティアー性が高まる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、母材及びシーム熱処理の熱影響部のCaの酸化物の個数が増加する。Caの酸化物は破壊の起点となり、低温靭性が著しく低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.0008%である。Ca含有量の好ましい下限は、0.0001%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0005%である。

0053

希土類元素:0〜0.0050%
希土類元素(REM)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、REM含有量は0%であってもよい。REMが含有される場合、REMは、硫化物を生成して、伸長したMnSの生成を抑制する。その結果、鋼材の板厚方向の特性、特に耐ラメラティアー性が高まる。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、REMの酸化物の個数が増加する。その結果、鋼の低温靭性が低下する。したがって、REM含有量は、0〜0.0050%である。REM含有量の好ましい下限は、0.0001%であり、さらに好ましくは0.0010%である。REM含有量の好ましい上限は0.0045%である。

0054

本発明の実施の形態において、REMとは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)の合計17元素の総称である。本発明の実施の形態において、REM含有量とは、上述の17元素の1種又は2種以上の総含有量を意味する。

0055

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、ラインパイプ用電縫鋼管を工業的に製造する際に、原料としての鉱石スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本発明の実施の形態のラインパイプ用電縫鋼管に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。

0056

[式(1)について]
上記化学組成はさらに、式(1)を満たす。
0.20≦C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5≦0.53 (1)
ここで、式(1)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入され、含有されない場合はゼロとする。

0057

Ceq=C+Mn/6+(Ni+Cu)/15+(Cr+Mo+V)/5と定義する。Ceqは、焼入れ性の指標である。Ceqが0.20未満では、必要な強度が得られない。一方、Ceqが0.53を超えると、鋼の強度が高くなりすぎて、低温靱性が低下する。したがって、Ceqは0.20〜0.53とする。Ceqは0.30以上であるのが好ましく、0.50以下であるのが好ましい。

0058

[式(2)について]
上記化学組成はさらに、式(2)を満たす。
0.120≦C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×B≦0.220 (2)
ここで、式(2)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入され、含有されない場合はゼロとする。

0059

Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60+Mo/15+V/10+5×Bと定義する。Pcmは、溶接性の指標である。C、Si、Mn、Cu、Cr、Ni、Mo、V及びBは、鋼の強度を高める。Pcmが0.120未満の場合、必要な強度が得られない。一方、Pcmが0.220を超えると、鋼の溶接性が低下する。したがって、Pcmは、0.120〜0.220である。Pcmは0.150以上であるのが好ましく、0.185以下であるのが好ましい。

0060

[シーム熱処理の熱影響部]
シーム熱処理の熱影響部は、ラインパイプ用電縫鋼管の周方向において、電縫溶接部と電縫溶接部を挟んだ両側の母材とを合わせた領域である。シーム熱処理の熱影響部とは、ラインパイプ用電縫鋼管のうち、シーム熱処理時に熱影響を受けた部分を意味する。シーム熱処理とは、ラインパイプ用熱延鋼板長手方向の両端面を電縫溶接により溶接し、ラインパイプ用電縫鋼管を製造した後、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部周辺を加熱する処理を意味する。

0061

[特定領域]
本発明の実施の形態において、シーム熱処理の熱影響部のうち、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材の周方向200〜600μm位置であって、電縫溶接部の管軸方向に垂直な断面での外表面から3〜5mm深さ位置を特定領域とする。

0062

[特定領域の硬さ]
特定領域において、平均ビッカース硬さは、200〜240である。特定領域の平均ビッカース硬さが200未満であれば、ラインパイプ用電縫鋼管として必要な硬さが不足する。その結果、ラインパイプ用電縫鋼管として必要な強度が得られない。一方、特定領域の平均ビッカース硬さが240を超えると、硬くなりすぎる。硬くなりすぎると、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低下する。したがって、特定領域において、平均ビッカース硬さは、200〜240である。

0063

特定領域の平均ビッカース硬さは、次のとおり測定する。ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材方向に200〜600μm位置において、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向に垂直な断面であって、かつ外表面から3〜5mm深さ位置を含む断面(以下、測定面という)を有する試験片を採取する。測定面において、JIS Z 2244(2009)に準拠した方法で、ビッカース硬さ試験を実施する。このときの試験力は9.8Nとする。具体的には、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材方向に200μm位置、400μm位置及び600μm位置のそれぞれにおいて、外表面から3mm深さ位置、4mm深さ位置及び5mm深さ位置までの合計9か所において、硬さ測定を行う。合計9か所測定した硬さの平均値を、特定領域の平均ビッカース硬さとする。

0064

[特定領域のミクロ組織]
[特定介在物]
特定領域のミクロ組織において、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物(以下、特定介在物ともいう)の数密度は、12.0個/mm2以下である。

0065

本発明の実施の形態において、介在物とは、製造工程中に晶出及び析出する化合物を言う。本発明の実施の形態において、特定介在物とは、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物を意味する。特定介在物はたとえば、酸化物系介在物、硫化物系介在物、及び、酸化物系介在物と硫化物系介在物とが複合化された複合介在物である。酸化物系介在物とは、酸素(O)含有量が質量%で20%以上の介在物である。酸化物系介在物とは、Ca、Al及びTiからなる群から選択される1種以上と、Oとを含有する介在物である。酸化物系介在物はたとえば、CaO、Al2O3、TiO2、及び、それらが複合化された酸化物介在物である。硫化物系介在物とは、硫黄(S)含有量が質量%で30%以上の介在物である。硫化物系介在物とはたとえば、CaとSとを含有する介在物である。硫化物系介在物はたとえば、CaSである。複合化された複合介在物とは、酸化物系介在物と硫化物系介在物とが結合したものをいう。複合介在物は、質量%で、O:5%以上、及び、S:10%以上を含有する。

0066

本発明の実施の形態において、特定介在物のサイズは、たとえば、2μm以上である。

0067

特定介在物は、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性を低下させる。特に、鋼中にCaが含有された場合、低融点の特定介在物が生成する。特定介在物の融点が低ければ電縫溶接時に介在物が延伸される。延伸された特定介在物は、割れの起点となる。その結果、特定領域の低温靭性が低下する。したがって、介在物密度は少ないほうが好ましい。

0068

介在物密度が12.0個/mm2を超えると、特定領域のビッカース硬さを大幅に低下させないと、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低下する。介在物密度は、0個/mm2であるのが好ましい。介在物密度の好ましい上限は、9.0個/mm2であり、さらに好ましくは6.0個/mm2である。

0069

[介在物密度の測定方法
Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物の数密度(介在物密度)は、SEM走査型電子顕微鏡)−EDS(エネルギ分散型X線マイクロアナライザ)で測定する。具体的には以下のとおりである。

0070

ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材方向に200〜600μm位置において、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向に垂直な断面であって、かつ外表面から3〜5mm深さ位置を含む断面(以下、観察面という)を有する試験片を採取する。SEM−EDSを用いて、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物を特定し、数密度を測定する。倍率は500倍、測定視野は0.3mm×3mmとする。測定後、目標とする特定介在物以外の異物の混入を防ぐため、以下のデータは除外する。円相当径が2μm以下の介在物、Oを85%超含有する物質、Naを5%超含有する物質、Siを75%超含有する物質、Clを95%超含有する物質、及び、Kを5%超含有する物質は除外する。

0071

[シーム熱処理の熱影響部のミクロ組織]
上述のように、ラインパイプ用電縫鋼管の強度及び低温靱性を高めるためには、シーム熱処理の熱影響部におけるミクロ組織の制御も重要となる。以下、シーム熱処理の熱影響部のミクロ組織について、以下に詳しく説明する。

0072

シーム熱処理の熱影響部における低温靱性を確保する観点から、シーム熱処理の熱影響部のミクロ組織は、焼戻しベイナイトが主体である必要がある。焼戻しベイナイトは、ベイナイトが焼戻された組織を示し、ラス状フェライトグラニュラーベイナイトも含む)と炭化物、パーライト焼戻しマルテンサイトから選択される1種以上を含む組織をいう。

0073

ここで、本発明におけるベイナイトには、ラス状のフェライトと炭化物との混合組織だけではなく、組織中にパーライト及びMA(Martensite−Austenite Constituent)から選択される1種又は2種を含む混合組織も含まれ、さらにラス状形態が崩れているグラニュラーベイナイトも含まれるものとする。

0074

また、シーム熱処理の熱影響部のミクロ組織には、必要に応じてフェライトが含まれていてもよい。しかしながら、その面積率が過剰であると必要な強度が得られにくいため、フェライトの面積率は所定値以下に調整する必要がある。

0075

シーム熱処理の熱影響部のミクロ組織の制御は、ラインパイプ用電縫鋼管の外表面側から熱処理を施した後に水冷することにより行う。そのため、シーム熱処理の熱影響部の外表面側と、肉厚中央部とでは冷却速度に差が生じ、ミクロ組織にばらつきが生じる。したがって、シーム熱処理の熱影響部において、許容されるフェライトの面積率は深さごとに異なる。

0076

具体的には、シーム熱処理の熱影響部の肉厚をtSとしたときに、シーム熱処理の熱影響部のtS/4部においては、フェライトの面積率は、0〜40%とする。さらに、シーム熱処理の熱影響部のtS/2部においては、フェライトの面積率は、0〜50%とする。いずれの部位においても、フェライト以外の残部は焼戻しベイナイト及び/又は焼戻しマルテンサイトである。各位置に含まれるフェライトの面積率が高すぎる場合、強度が低下する。

0077

なお、本発明の実施の形態において、シーム熱処理の熱影響部のtS/4部及びtS/2部とは、それぞれ、シーム熱処理の熱影響部の外表面からtS/4の深さ位置及びtS/2の深さ位置を意味する。外表面とは、ラインパイプ用電縫鋼管の外周側の表面を意味する。

0078

また、良好な低温靱性を確保するためには、結晶粒の細粒化が重要であり、シーム熱処理の熱影響部のいずれの深さ位置においても、平均結晶粒径を15μm以下に制御する必要がある。シーム熱処理の熱影響部における平均結晶粒径は13μm以下であるのが好ましい。

0079

本発明の実施の形態において、ミクロ組織は以下のとおり求める。まず、シーム熱処理の熱影響部の厚さ方向断面から2個、試験片を切り出し、組織観察用及び粒径測定用に供する。

0080

なお、本発明の実施の形態において、シーム熱処理の熱影響部の厚さ方向断面とは、シーム熱処理の熱影響部を通り、かつ、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向に垂直な断面のことである。

0081

本発明の実施の形態において、フェライトの面積率は、次の方法で測定される。採取された組織観察用の試料コロイダルシリカ研磨剤で30〜60分研磨する。研磨された試料をEBSP−OIM商標)(Electron Back Scatter Diffraction Pattern−Orientation Image Microscopy)を用いて解析し、フェライトの面積率を求める。視野範囲は、200μm×500μmとする。観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとする。

0082

具体的には、EBSP−OIM(商標)に装備されているKAM(Kernel Average Misorientation)法にてフェライトの面積率を求める。

0083

AM法では、測定データのうち、任意のひとつの正六角形ピクセルを中心のピクセルとする。この中心のピクセルに隣り合う6個のピクセルを用いた第一近似(全7ピクセル)、もしくはこれらの6個のピクセルのさらにその外側の12個のピクセルも用いた第二近似(全19ピクセル)、もしくはこれら12個のピクセルのさらに外側の18個のピクセルも用いた第三近似(全37ピクセル)について、各ピクセル間方位差を求める。求めた方位差を平均し、得られた平均値をその中心のピクセルの値とする。この操作をピクセル全体に対して行う。

0084

本発明の実施の形態では、第三近似により隣接するピクセル間の方位差5°以下となるものを表示させる。本発明の実施の形態では、視野範囲の全面積に対する、方位差第三近似1°以下と算出されたピクセルの面積率をフェライトの面積率と定義する。方位差第三近似1°を超えるものは、ベイナイト等のフェライト以外の組織とする。

0085

そして、シーム熱処理の熱影響部のフェライトの面積率は、電縫溶接部中心位置と、中心位置から周方向に両側0.5mmピッチで各3点ずつ、計7か所測定したフェライトの面積率の平均値である。

0086

平均結晶粒径は、EBSP−OIM(商標)を用いて測定する。具体的には、フェライトの面積率の測定と同様に、試料を採取及び研磨する。研磨された試料をEBSP−OIM(商標)を用いて解析する。より具体的には、一定測定ステップごとの方位測定で、隣り合う測定点の方位差が、15°を超えた位置を粒界とする。15°は大傾角粒界閾値であり、一般的に結晶粒界として認識されている。

0087

粒界に囲まれた領域を結晶粒として、その粒径及び結晶粒の表面積を求める。得られた粒径及び表面積からエリア平均粒径を求める。本明細書中において、求めたエリア平均粒径を平均結晶粒径とする。なお、視野範囲は、200μm×500μmとする。観察倍率は400倍とし、測定ステップは0.3μmとする。

0088

シーム熱処理の熱影響部の平均結晶粒径は、電縫溶接部中心位置と、中心位置から周方向に両側0.5mmピッチで各3点ずつ、計7か所測定した平均結晶粒径の平均値である。

0089

[母材のミクロ組織]
ラインパイプ用電縫鋼管の強度及び低温靱性を担保するためには、母材のミクロ組織の制御も重要となる。具体的には、母材の肉厚をtBとしたときに、母材のtB/4部及びtB/2部のミクロ組織を、面積%で、0〜50%のフェライトを含み、残部がベイナイトとする必要がある。母材中に含まれるフェライトの面積率が50%を超えると、強度が低下するおそれがある。

0090

なお、本発明において、母材のtB/4部及びtB/2部とは、それぞれ、母材の外表面からtB/4の深さ位置及びtB/2の深さ位置を意味する。

0091

良好な低温靱性を確保するためには、母材のtB/4部及びtB/2部における平均結晶粒径を15μm以下とする必要がある。上記の平均結晶粒径は13μm以下とすることが好ましい。

0092

母材のミクロ組織も、シーム熱処理の熱影響部と同様に求める。具体的には、母材の厚さ方向断面から2個、試験片を切り出し、組織観察用及び粒径測定用に供する。本発明において、母材の厚さ方向断面とは、電縫溶接部から鋼管の周方向に90°離れた位置であって、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向に垂直な断面のことである。採取された試験片について、シーム熱処理の熱影響部と同様に、EBSP−OIM(商標)を用いて、フェライトの面積率を測定する。母材部のフェライトの面積率は、各板厚位置において、圧延方向に0.5mmピッチで7か所測定したフェライトの面積率の平均値である。

0093

母材の平均結晶粒径についても、シーム熱処理の熱影響部と同様に、EBSP−OIM(商標)を用いて求める。母材部の平均結晶粒径は、各板厚位置で、圧延方向に0.5mmピッチで7か所測定した平均結晶粒径の平均値である。

0094

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管において、上記以外の機械的性質については特に制限は設けない。しかしながら、ラインパイプとして使用する場合には、降伏応力は440MPa以上、引張強さは500〜700MPaであることが好ましい。

0095

本発明の実施の形態によるラインパイプ用電縫鋼管の肉厚について特に制限は設けない。しかしながら、ラインパイプとして使用する場合には、管内を通過する流体輸送効率向上の観点から、肉厚は10.0mm以上であるのが好ましく、15.0mm以上であるのがより好ましい。一方、ラインパイプ用電縫鋼管の肉厚は、一般的に25.4mmが上限となる。

0096

[製造方法]
本発明に係るラインパイプ用電縫鋼管は、たとえば、以下の方法により製造することができるが、この方法には限定されない。

0097

本製造方法では、上述した化学組成を満たす溶鋼を用いて、素材であるスラブを製造する(製鋼工程)。製造されたスラブを粗圧延機及び仕上げ圧延機で圧延して鋼板を製造する(圧延工程)。製造された鋼板を巻取る(巻取り工程)。以上の製造工程により、ラインパイプ用熱延鋼板が製造される。

0098

さらに、ラインパイプ用熱延鋼板を成形及び電縫溶接して製管し、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する(製管工程)。製管工程後、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部を加熱してノルマライズ処理を実施する(ノルマライズ処理工程)。本発明の実施の形態の製造方法を用いれば、板厚を12mm以上としても、電縫溶接部において、優れた低温靭性が得られる。以下、それぞれの工程について詳しく説明する。

0099

[製鋼工程]
上述の化学組成を有する素材を準備する。具体的には、上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼を用いて、素材(スラブ)を製造する。連続鋳造法により鋳片(スラブ)を製造してもよい。溶鋼を用いてインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延して素材(スラブ)を製造してもよい。

0100

溶鋼を製造する工程は、1次精錬と2次精錬とを含む。1次精錬はたとえば、転炉精錬である。転炉精錬では、精錬反応容器収納された溶鋼に対して、脱炭処理を実施する。2次精錬はたとえば、RH(Ruhrstahl−Hausen)真空脱ガス装置を用いて実施する。RH真空脱ガス装置では、取鍋内の溶鋼中に2本の管を浸漬させる。上記管の一方にアルゴンガスを吹き込んで、管内の溶鋼を真空槽内に上昇させる。溶鋼は真空槽内で真空に曝されたのち、もう一方の管を通って取鍋中に戻る。上記の取鍋から真空槽、真空槽から取鍋への溶鋼の流れを還流という。2次精錬では、脱硫処理、及び、酸素、窒素、水素等の脱ガス処理を実施する。

0101

1次精錬の前に、溶銑予備処理工程を実施してもよい。溶銑予備処理工程では、脱燐処理及び脱硫処理を実施する。

0102

溶鋼を製造する際、取鍋内の溶鋼を十分に攪拌する。本発明の実施の形態において、還流時間とは、2次製錬において、脱硫フラックスを投入完了してから、溶鋼の撹拌を終了するまでの時間を意味する。具体的には、2次精錬での還流時間を7分以上とする。介在物は、2次精錬で溶鋼中に添加されるフラックス起因であるものを多く含む。フラックス添加後、還流時間を長くすれば、溶鋼中において介在物が浮上する。そのため、2次精錬での還流時間を7分以上とすれば、溶鋼中において、より多くの介在物が浮上し、スラブに残存する介在物が低減する。その結果、介在物密度を、12.0個/mm2以下にすることができる。2次精錬での還流時間が7分未満であれば、介在物がスラブに多く残存する。その結果、特定領域の低温靭性が低下する。還流時間の下限は、より好ましくは8分であり、さらに好ましくは、9分である。

0103

[圧延工程]
圧延工程では、スラブを加熱し、粗圧延機及び仕上げ圧延機を用いて熱間圧延して、鋼板にする。粗圧延機及び仕上げ圧延機ともに、一列に並んだ複数の圧延スタンドを備え、各圧延スタンドロール対を備える。

0104

上記のスラブを1000℃以上の温度域まで加熱して熱間圧延を施す。1000℃未満の加熱温度では圧延機荷重負担が高くなり、圧延効率が著しく低下する。一方、上記加熱温度が1150℃を超えると、オーステナイト粒の粗大化が生じ、微細な組織が得られなくなるおそれがあるため、1150℃以下とするのが好ましい。

0105

また、熱間圧延時には、再結晶域での圧下比を2以上とし、未再結晶域での圧下比を3以上にすることが好ましい。特に未再結晶域での圧下比を3以上にすることで、母材の平均結晶粒径を15μm以下にすることが可能になる。未再結晶域での圧下比は4以上とするのが好ましい。再結晶域と未再結晶域との境界は、鋼の組成に依存するが、900〜950℃程度となる。

0106

圧延工程において、仕上げ圧延機の最終スタンドの出側での鋼板の表面温度を、仕上げ圧延温度(℃)と定義する。仕上げ圧延温度は、770℃以上とすることが好ましい。仕上げ圧延温度が770℃以上であれば、オーステナイト単相域で鋼板を圧延できる。この場合、十分な機械的性質を得られる。さらに、仕上げ圧延では、オーステナイト域での圧延を1パス以上でかつ1パスの圧下率を20%以下とすることが好ましい。

0107

圧延工程で製造された鋼板を冷却する。冷却はたとえば、水冷装置による水冷である。冷却は、450〜550℃の温度範囲まで水冷することが好ましい。450〜550℃の温度範囲まで水冷すれば、粒成長により結晶粒が粗大化することによる強度の低下を防止できる。

0108

冷却工程での冷却速度はたとえば、5℃/s以上である。この場合、フェライト粒の粗大化を防ぎ、ラインパイプ用電縫溶接部の低温靭性を十分得られる。

0109

[巻取り工程]
巻取り工程では、冷却された鋼板を巻取り、コイル状のラインパイプ用熱延鋼板にする。

0110

コイル状のラインパイプ用熱延鋼板巻取り時の鋼板の表面温度(以下、巻取り温度という)はたとえば、450〜600℃である。巻取り温度が450〜600℃であれば、結晶粒の粗大化を抑制でき、シーム熱処理の熱影響部において十分な低温靭性が得られる。

0111

以上の製造工程により、本発明の実施の形態のラインパイプ用熱延鋼板が製造される。

0112

[製管工程]
コイルにされた熱延鋼板を巻戻しながら、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する。具体的には、ラインパイプ用熱延鋼板を連続した成形ロールによる曲げ加工によりオープンパイプにする。続いて、オープンパイプの継目部、つまりラインパイプ用熱延鋼板の長手方向の両端面を電縫溶接により溶接し、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する。

0113

[シーム熱処理工程]
製管後、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部周辺を加熱してシーム熱処理を実施する。加熱処理方法はたとえば、高周波誘導加熱バーナー加熱、又は、電気抵抗加熱である。加熱の応答性及び均一性に優れる高周波誘導加熱を採用することが好ましい。シーム熱処理温度は900〜1050℃である。熱処理温度が900℃未満であれば、電縫溶接部の組織がオーステナイトに変態しない。そのため、最終組織の平均結晶粒径が微細にならない。熱処理温度が1050℃を超えれば、オーステナイト粒が粗大化する。そのため結晶粒径を微細化できず、電縫溶接部の低温靭性が低下する。

0114

シーム熱処理に続いて、加熱された電縫溶接部周辺を冷却する。このとき、冷却時の水冷停止温度が500℃未満であれば、電縫溶接部の外表層の強度が上昇し、内表層と外表層との硬さの差が大きすぎて、シーム熱処理の熱影響部の低温靭性が低下する場合がある。一方、水冷停止温度が600℃を超えれば、所望の強度が得られない。したがって、水冷停止温度は500〜600℃とするのが好ましい。なお、「水冷停止温度」とは、ラインパイプ用電縫鋼管を冷却する際の、ラインパイプ用電縫鋼管の外表層で復熱して、しばらく安定する際の、ラインパイプ用電縫鋼管の表面温度を意味する。

0115

冷却方法は、たとえば、冷却開始温度からラインパイプ用電縫鋼管を連続的に強制冷却する、連続冷却処理である。このような連続冷却処理として、たとえば、シャワー水冷や、ミスト冷却、又は、強制風冷によりラインパイプ用電縫鋼管を加速冷却する方法がある。

0116

シーム熱処理工程時、一般的に外面部から加熱されることが多いが、外面部と内面部との加熱時の温度差又は冷却時の外面部と内面部との冷却速度差等に起因して、熱処理後の冷却中に電縫溶接部及びシーム熱処理の熱影響部の組織中に硬質マルテンサイトが生成し、電縫溶接部靭性を低下させる場合がある。

0117

これら硬質マルテンサイト生成による靭性低下を防ぐためには、硬質のマルテンサイト相を焼き戻し、硬さの低下及び靭性の回復処理を行う必要がある。このためには、当該電縫溶接部周辺を再び500〜700℃に加熱することが好ましい。また、シーム熱処理において、500〜600℃の温度範囲で水冷を停止した後に、そのまま保温処理を施してもよい。

0118

以上の処理を行うことにより、シーム熱処理の熱影響部のミクロ組織及び硬さを上述した範囲に制御することが可能になる。

0119

以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0120

表1に示す鋼A1〜鋼B3の溶鋼を連続鋳造してスラブを製造した。

0121

0122

鋼A1〜鋼B3の複数のスラブを用いて、表2に示す製造条件で、試験番号1〜試験番号18のラインパイプ用電縫鋼管を製造した。

0123

0124

具体的には、各試験番号のスラブを、加熱炉で加熱した。熱間圧延での加熱温度は表2に示すとおりであった。55〜100mmの厚さまで、再結晶域で熱間圧延を行った。その後、表2に示す開始温度から800℃までの未再結晶域において、表2に示す圧下比で、表2に示す厚さまで熱間圧延を行った。続いて、5℃/s以上の冷却速度で、450〜550℃の温度範囲まで水冷を実施した。水冷後、表2に示す巻取り温度で巻取り、コイル状のラインパイプ用熱延鋼板にした。

0125

上記のラインパイプ用熱延鋼板を成形ロールによる曲げ加工によりオープンパイプにした。続いて、オープンパイプの継目部、つまりラインパイプ用熱延鋼板の長手方向の両端面を電縫溶接により溶接し、ラインパイプ用電縫鋼管を製造する、電縫溶接を行った。電縫溶接後、シーム熱処理を実施した。シーム熱処理条件は以下のとおりであった。高周波誘導加熱により電縫溶接部周辺を表2の加熱温度に加熱し、表2の保持時間、保持した。保持後、表2の水冷停止温度まで水冷した。水冷後、試験No.16を除き、再び高周波誘導加熱により表2の再加熱温度まで加熱を行った。以上の製造工程により、外径406.4mmのラインパイプ用電縫鋼管を製造した。

0126

試験方法
[結晶粒径測定]
平均結晶粒径は、EBSP−OIM(商標)を用いて、上記の方法により測定した。母材についての測定結果を表3に、シーム熱処理の熱影響部についての測定結果を表4にそれぞれ示す。

0127

0128

0129

[降伏応力(YS)及び引張強さ(TS)測定]
さらに、電縫溶接部からラインパイプ用電縫鋼管の周方向に180°離れた位置において、API5L規格に準拠した全厚試験片円周方向に2本ずつ採取した。そして、常温にて引張試験を行い、降伏応力(YS)及び引張強さ(TS)を測定した。引張試験は、API規格に準拠して行った。結果を表5に示す。

0130

0131

本発明においては、降伏応力が440MPa以上でかつ引張強さが500MPa以上である場合に、高い強度を有すると判断することとする。

0132

[特定領域の硬さ測定]
ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材方向に200〜600μm位置において、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向に垂直な断面であって、かつ外表面から3〜5mm深さ位置を含む断面(以下、測定面という)を有する試験片を採取した。上記の方法により、特定領域の平均ビッカース硬さを測定した。結果を表4の「平均ビッカース硬さ」に示す。

0133

[特定領域の介在物密度測定]
介在物密度は、SEM−EDSを用いて測定した。具体的には、ラインパイプ用電縫鋼管の電縫溶接部から母材方向に200〜600μm位置において、ラインパイプ用電縫鋼管の管軸方向に垂直な断面であって、かつ外表面から3〜5mm深さ位置を含む断面(以下、観察面という)を有する試験片を採取した。上記の方法により、介在物密度を測定した。結果を表4の「介在物密度(個/mm2)」に示す。

0134

[ミクロ組織特定]
得られた各ラインパイプ用電縫鋼管の母材及びシーム熱処理の熱影響部の厚さ方向断面からそれぞれ2つずつ試験片を切り出し、組織観察用及び粒径測定用に供した。上記の方法により、ミクロ組織を特定した。

0135

母材についての測定結果を表3の「組織」及び「F分率(面積%)」に、シーム熱処理の熱影響部についての測定結果を表4の「組織」及び「F分率(面積%)」にそれぞれ示す。表3の「組織」中、Fはフェライト、及び、Bはベイナイトを示す。表4の「組織」中、Fフェライト、及び、TBは焼戻しベイナイトを示す。

0136

[CTOD試験]
得られたラインパイプ用電縫鋼管から、特定領域を含んで長手方向に300mm、円周方向に300mmの長さに切断し、特定領域を含んだCTOD試験片を採取した。採取したCTOD試験片に対して、BS7448:Part1 1991の規定に準拠して、試験温度−20℃でCTOD試験を実施し、特定領域での、−20℃での限界開口変位量δc(mm)を測定した。結果を表5の「CTOD」に示す。−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm以上である場合に、低温靱性に優れると判断した。

0137

[試験結果]
表1〜表5を参照して、試験番号1〜9及び18の鋼の化学組成は適切であり、式(1)及び式(2)を満たした。さらに、いずれの試験番号の製造条件も適切であった。そのため、試験番号1〜9及び18の特定領域において、平均ビッカース硬さが200〜240であり、特定領域のミクロ組織において、Ca、Al、O及びTiからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する介在物密度が12.0個/mm2以下であった。さらに、試験番号1〜9及び18のシーム熱処理の熱影響部及び母材の組織は適切であり、平均結晶粒径は15μm以下であった。その結果、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm以上であり、優れた低温靭性を示した。

0138

一方、試験番号10では、Ceq及びPcmが高かった。そのため、平均結晶粒径が15μmを超えた。その結果、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm未満であり、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低かった。

0139

試験番号11では、Ceq及びPcmが低かった。そのため、シーム熱処理の熱影響部及び母材においてフェライト分率が高くなりすぎた。その結果、ラインパイプ用電縫鋼管の強度が低かった。

0140

試験番号12では、Ca含有量が高かった。そのため、特定領域において、介在物密度が12.0個/mm2を超えた。その結果、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm未満であり、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低かった。

0141

試験番号13では、化学組成は本願範囲内であったものの、熱間圧延時の加熱温度が低かった。そのため、母材のフェライト分率が高くなりすぎ、平均結晶粒径も15μmを超えた。その結果、ラインパイプ用電縫鋼管の強度が低かった。

0142

試験番号14では、化学組成は本願範囲内であったものの、シーム熱処理時の加熱温度が高かった。そのため、シーム熱処理の熱影響部の平均結晶粒径も15μmを超えた。その結果、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm未満であり、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低かった。

0143

試験番号15では、化学組成は本願範囲内であったものの、シーム熱処理後の冷却停止温度が低かった。そのため、平均結晶粒径が15μmを超えた。その結果、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm未満であり、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低かった。

0144

試験番号16では、化学組成は本願範囲内であったものの、シーム熱処理後、再加熱も保温処理も実施しなかった。その結果、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm未満であり、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低かった。再加熱及び保温処理を実施しなかったため、硬質マルテンサイトが生成し、鋼の硬さが高くなったためと考えられる。

0145

試験番号17では、化学組成は本願範囲内であったものの、製鋼工程の2次精錬で、還流時間が短かった。そのため、特定領域において、介在物密度が12.0個/mm2を超えた。その結果、CTOD試験において、−20℃での限界開口変位量δcが0.20mm未満であり、ラインパイプ用電縫鋼管の低温靭性が低かった。

実施例

0146

以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

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