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課題

医薬分子構築に使用でき、特に、クリックケミストリーを介して機能成分に結合することができるコア構築物の提供。

解決手段

中心コアを含むコア構築物であって、前記中心コアは、(1)複数のリジン(K)残基又は(2)(Xaa−K)n配列を含み、各前記K残基とその次のK残基との間がグリシン及びセリン残基を有する充填配列により区切られ、前記K残基の数が2〜15であり、前記(Xaa−K)n配列において、Xaaが2〜12個のエチレングリコール繰り返し単位を有するPEG化アミノ酸であり、nが2〜15の整数である、コア構築物。

概要

背景

標的化抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)の広範な選別及び選択方法の継続的な発展は、数年前に治療できないと考えられた多くの疾患に対する多くの治療用抗体の開発に寄与してきた。

治療用抗体のデータベースに基づいて、約2,800種類の抗体が研究されているか、又はヒト臨床試験のために計画されており、約80種類の抗体の臨床応用政府の薬物規制当局により承認されている。

抗体の治療効果に関する大量のデータは、抗体が治療薬として作用する薬理学メカニズムに関する情報を提供している。

抗体が治療薬として作用する1つの主要な薬理学的メカニズムは、抗体が、血液循環間質腔、又はリンパ節に存在するサイトカイン又は免疫成分であり得る疾患を引き起こすメディエーター中和又は捕捉できることである。中和活性は、疾患を引き起こすメディエーターとそれらの受容体との相互作用阻害する。サイトカインの可溶性受容体又は受容体の細胞外部分及びIgGFc部分からの融合タンパク質は、抗体による中和と同様に、サイトカイン又は免疫因子を中和することができるため、治療剤として開発されている。

臨床応用が承認されているか、又は臨床開発に供されているいくつかの治療用抗体は、受容体との結合により薬理学的効果を発揮することで、受容体とそのリガンドとの相互作用を遮断する。これらの抗体薬物では、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び補体媒介性細胞溶解(CMC)等のFc媒介性メカニズムは、主要なメカニズムではない。

いくつかの治療用抗体は、標的細胞上の特定の表面抗原に結合することにより、標的細胞でFc媒介性機能及び他のメカニズムを発揮する。最も重要なFc媒介性メカニズムは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、及び補体媒介性細胞溶解(CMC)であり、いずれも抗体結合標的細胞の溶解を引き起こす。特定の細胞表面抗原に結合するいくつかの抗体は、結合した標的細胞のアポトーシス誘導することができる。

抗体は、細胞毒性分子又は他の治療剤の担体として用いられることもできるが、それ自体は、顕著な治療効果又は機能を有しない。一般に、これらの抗体は、標的細胞上の「腫瘍関連」抗原に結合するが、それ自体で細胞溶解を引き起こすことができない。Bリンパ腫上のCD19及びCD22に特異的な抗体は周知である。長年にわたり、それらの抗体は、90Y、131I、及び177Luのような非常に短い半減期を有する放射性核種を含む細胞毒性剤の担体として探索されている。いくつかの抗体は、ドキソルビシンパクリタキセル、及びアンフォテリシンB等の細胞毒性薬物担持したリポソームのための標的化剤としても研究されている。近年、抗体薬物複合体(ADC)の分野は、オーリスタチンメイタンシンカリケアマイシンカンプトテシン等の細胞毒性が極めて高い薬物、及び細胞毒性分子を抗体分子に結合する方法の発展に起因して、研究開発の極めて盛んな時期を経験している。それらのADCは、種々の種類のリンパ腫及び白血病を含む腫瘍であって、血液、リンパ系、及び骨髄における、1つ以上のユニークなCDマーカー発現するびまん性(又は液体)腫瘍を標的とするように設計された。固形腫瘍に対しても、いくつかのADCが開発されている。この新世代の抗体薬物複合体のうち、いくつかは臨床応用が承認されている一方、多くは臨床試験中である。

しかしながら、第1世代のADCでは、細胞毒性薬物分子が抗体中のシステイン又はリジン残基に非選択的に結合されることにより、ADCあたり異なる数の薬物分子を有するADCの異種混合物を生じる。この場合に、安全性及び有効性の問題が発生する恐れがある。例えば、FDAにより承認された最初のADCであるゲムツズマブオゾガマイシンは、急性骨髄性白血病の治療に使用されていたが、許容できない毒性が発見されたので、市場から回収された。

二重特異性を有する抗体を調製する概念及び方法が生まれたのは、30年以上前のことである。近年、組換え抗体工学方法の発展、及び改良医薬品の開発の推進に伴い、種々の構造を有する二重特異性抗体が開発されてきた。

例えば、二価又は多価抗体は、2つ以上の抗原結合部位を含み得る。接続構造を介して3つ又は4つのFab断片共有結合することにより多価抗体を調製する方法は、多く報告されている。例えば、組換え工学により、タンデムの3つ又は4つのFab繰り返し単位を発現できる抗体が調製されている。

合成架橋剤を用いて異なる抗体又は結合断片化学的に結合することにより、多価抗体を調製するいくつかの方法は開示されている。上記方法の1つとして、異なるリンカーを用いて、3つ、4つ、又はそれ以上の別々のFab断片を化学的に架橋する方法がある。別の方法として、複数のFabを有する構築物を調製し、それを一次元DNA足場に組み立てる方法が提供されている。標的分子への結合のために設計されたそれらの種々の多価Ab構築物は、サイズ、半減期、構造の可撓性、及び免疫系を調節する能力において互いに異なる。以上のことから、一定数エフェクター成分を有する分子構築物、又は2つ以上の異なる種類の機能成分(例えば、少なくとも1つの標的化成分及び少なくとも1つのエフェクター成分)を有する分子構築物の調製に関する報告が成されている。しかし、通常、化学合成又は組換え技術により、標的化成分とエフェクター成分との特定の組み合わせを有する分子構築物を構築することは、困難である。従って、従来技術において、幅広い疾患に適用されるより汎用性の高い分子を構築するための新たな分子プラットフォームを提供する必要がある。

概要

医薬分子の構築に使用でき、特に、クリックケミストリーを介して機能成分に結合することができるコア構築物の提供。中心コアを含むコア構築物であって、前記中心コアは、(1)複数のリジン(K)残基又は(2)(Xaa−K)n配列を含み、各前記K残基とその次のK残基との間がグリシン及びセリン残基を有する充填配列により区切られ、前記K残基の数が2〜15であり、前記(Xaa−K)n配列において、Xaaが2〜12個のエチレングリコールの繰り返し単位を有するPEG化アミノ酸であり、nが2〜15の整数である、コア構築物。なし

目的

従って、従来技術において、幅広い疾患に適用されるより汎用性の高い分子を構築するための新たな分子プラットフォームを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

中心コアを含むコア構築物であって、前記中心コアは、(1)複数のリジン(K)残基又は(2)(Xaa−K)n配列を含み、各前記K残基とその次のK残基との間がグリシン(G)及びセリン(S)残基を有する充填配列により区切られ、前記K残基の数が2〜15であり、前記(Xaa−K)n配列において、Xaaが2〜12個のエチレングリコール(EG)の繰り返し単位を有するPEG化アミノ酸であり、nが2〜15の整数であり、前記中心コアのN末端又はC末端にあるアミノ酸残基の1つは、システイン残基であり、又はアジド基若しくはアルキン基を有し、前記中心コアのN末端又はC末端にあるアミノ酸残基がシステイン残基である場合、前記コア構築物は、カップリングアームをさらに含み、前記カップリングアームの一端がシステイン残基のチオール基に結合され、前記カップリングアームの他端がアジド基、アルキン基、テトラジン基、又は歪んだアルキン基を有する、コア構築物。

請求項2

前記カップリングアームは、2〜12個のEGの繰り返し単位を有するPEG鎖である、請求項1に記載のコア構築物。

請求項3

前記アジド基を有するアミノ酸残基は、L−アジドホモアラニンAHA)、4−アジド−L−フェニルアラニン、4−アジド−D−フェニルアラニン、3−アジド−L−アラニン、3−アジド−D−アラニン、4−アジド−L−ホモアラニン、4−アジド−D−ホモアラニン、5−アジド−L−オルニチン、5−アジド−d−オルニチン、6−アジド−L−リシン、又は6−アジド−D−リシンであり、アルキン基を有する前記アミノ酸残基は、L−ホモプロパギルグリシン(L−HPG)、D−ホモプロパギルグリシン(D−HPG)、又はβ−ホモプロパギルグリシン(β−HPG)であり、前記歪んだアルキン基は、トランスシクロオクテン(TCO)、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、ジフルオロシクロオクチン(DIFO)、ビシクロノニン(BCN)、又はジベンゾシクロオクチン(DICO)であり、前記テトラジン基は、1,2,3,4−テトラジン基、1,2,3,5−テトラジン基、1,2,4,5−テトラジン基、又はそれらの誘導体である、請求項1に記載のコア構築物。

請求項4

前記中心コアのK残基にそれぞれ結合される複数の第1成分をさらに含む、請求項1に記載のコア構築物。

請求項5

第2成分をさらに含む、前記第2成分は、銅触媒型アジド−アルキン環化付加(CuAAC)反応、又は歪み促進型アジド−アルキンクリックケミストリー(SPAAC)反応によりアジド基に結合され、CuAAC反応により前記アルキン基に結合され、逆電子要請型ディールスアルダー(iEDDA)反応、又はSPAAC反応により前記歪んだアルキン基に結合され、若しくは、iEDDA反応によりテトラジン基に結合される、請求項4に記載のコア構築物。

請求項6

前記第1成分は、サイトカイン又は前記サイトカインの受容体に特異的な第1の一本鎖可変領域断片(scFv)、又は、前記サイトカインの可溶性受容体であり、前記第2成分は、組織関連細胞外マトリックスタンパク質に特異的な第2のscFvである、請求項5に記載のコア構築物。

請求項7

前記組織関連細胞外マトリックスタンパク質は、α−アグリカンコラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンIX、及びコラーゲンXIからなる群から選択される、請求項6に記載のコア構築物。

請求項8

前記サイトカインは、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−17(IL−17)、IL−1、IL−6、IL−12とIL−23の共有タンパク質、及びB細胞活性化因子(BAFF)からなる群から選択され、前記サイトカインの受容体は、IL−6に特異的な受容体(IL−6R)又はIL−17に特異的な受容体(IL−17R)であり、前記サイトカインの可溶性受容体は、TNF−α又はIL−1に特異的である、請求項6に記載のコア構築物。

請求項9

前記第1成分は、第1細胞表面抗原に特異的な第1のscFvであり、前記第2成分は、第2細胞表面抗原に特異的な第2のscFvである、請求項5に記載のコア構築物。

請求項10

前記第1細胞表面抗原は、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD43、CD72a、CD78、CD79a、CD79b、CD86、CD134、CD137、CD138、及びCD319からなる群から選択される、請求項9に記載のコア構築物。

請求項11

前記第2細胞表面抗原は、CD3又はCD16aである、請求項9に記載のコア構築物。

請求項12

前記第1成分は、ペプチドホルモン成長因子、又は腫瘍関連抗原に特異的な第1のscFvであり、前記第2成分は、細胞表面抗原に特異的な第2のscFvである、請求項5に記載のコア構築物。

請求項13

前記ペプチドホルモンは、セクレチンコレシストキニン(CCK)、ソマトスタチン、又は甲状腺刺激ホルモンTSH)であり、前記成長因子は、上皮成長因子(EGF)、突然変異型EGF、エピレグリンヘパリン結合上皮成長因子(HB−EGF)、血管内皮成長因子A(VEGF−A)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、及び肝細胞成長因子HGF)からなる群から選択され、前記腫瘍関連抗原は、ヒト上皮成長因子受容体HER1)、HER2、HER3、HER4、糖鎖抗原19−9(CA19−9)、糖鎖抗原125(CA125)、癌胎児性抗原CEA)、ムチン1(MUC1)、ガングリオシドGD2、メラノーマ関連抗原(MAGE)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、メソセリン、ムチン関連Tn、シアリルTn、グロボH、段階特異的胚抗原−4(SSEA−4)、及び上皮細胞接着分子(EpCAM)からなる群から選択される、請求項12に記載のコア構築物。

請求項14

前記細胞表面抗原は、CD3又はCD16aである、請求項12に記載のコア構築物。

請求項15

前記第1成分は、核因子κリガンド(RANKL)の受容体活性因子に特異的な第1のscFvであり、前記第2成分は、コラーゲンI又はオステオネクチンに特異的な第2のscFvである、請求項5に記載のコア構築物。

請求項16

前記第1成分は、VEGF−Aに特異的なscFvであり、前記第2成分は、分子量20,000〜50,000ダルトンの長いPEG鎖である、請求項5に記載のコア構築物。

技術分野

0001

本出願は、2015年1月16日に出願された米国仮出願第62/104405号、2015年2月10日に出願された米国仮出願第62/114,427、及び2015年3月24日に出願された米国仮出願第62/137737号の優先権を主張し、その内容が参照によりすべて本明細書に組み込まれる。

0002

本開示は、医薬品分野に関し、特に、エフェクター(例えば、治療薬)を標的部位送達するための標的化成分及びエフェクター成分を有するような多機能分子構築物に関する。

背景技術

0003

標的化抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)の広範な選別及び選択方法の継続的な発展は、数年前に治療できないと考えられた多くの疾患に対する多くの治療用抗体の開発に寄与してきた。

0004

治療用抗体のデータベースに基づいて、約2,800種類の抗体が研究されているか、又はヒト臨床試験のために計画されており、約80種類の抗体の臨床応用政府の薬物規制当局により承認されている。

0005

抗体の治療効果に関する大量のデータは、抗体が治療薬として作用する薬理学メカニズムに関する情報を提供している。

0006

抗体が治療薬として作用する1つの主要な薬理学的メカニズムは、抗体が、血液循環間質腔、又はリンパ節に存在するサイトカイン又は免疫成分であり得る疾患を引き起こすメディエーター中和又は捕捉できることである。中和活性は、疾患を引き起こすメディエーターとそれらの受容体との相互作用阻害する。サイトカインの可溶性受容体又は受容体の細胞外部分及びIgGFc部分からの融合タンパク質は、抗体による中和と同様に、サイトカイン又は免疫因子を中和することができるため、治療剤として開発されている。

0007

臨床応用が承認されているか、又は臨床開発に供されているいくつかの治療用抗体は、受容体との結合により薬理学的効果を発揮することで、受容体とそのリガンドとの相互作用を遮断する。これらの抗体薬物では、抗体依存性細胞毒性(ADCC)及び補体媒介性細胞溶解(CMC)等のFc媒介性メカニズムは、主要なメカニズムではない。

0008

いくつかの治療用抗体は、標的細胞上の特定の表面抗原に結合することにより、標的細胞でFc媒介性機能及び他のメカニズムを発揮する。最も重要なFc媒介性メカニズムは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、及び補体媒介性細胞溶解(CMC)であり、いずれも抗体結合標的細胞の溶解を引き起こす。特定の細胞表面抗原に結合するいくつかの抗体は、結合した標的細胞のアポトーシス誘導することができる。

0009

抗体は、細胞毒性分子又は他の治療剤の担体として用いられることもできるが、それ自体は、顕著な治療効果又は機能を有しない。一般に、これらの抗体は、標的細胞上の「腫瘍関連」抗原に結合するが、それ自体で細胞溶解を引き起こすことができない。Bリンパ腫上のCD19及びCD22に特異的な抗体は周知である。長年にわたり、それらの抗体は、90Y、131I、及び177Luのような非常に短い半減期を有する放射性核種を含む細胞毒性剤の担体として探索されている。いくつかの抗体は、ドキソルビシンパクリタキセル、及びアンフォテリシンB等の細胞毒性薬物担持したリポソームのための標的化剤としても研究されている。近年、抗体薬物複合体(ADC)の分野は、オーリスタチンメイタンシンカリケアマイシンカンプトテシン等の細胞毒性が極めて高い薬物、及び細胞毒性分子を抗体分子に結合する方法の発展に起因して、研究開発の極めて盛んな時期を経験している。それらのADCは、種々の種類のリンパ腫及び白血病を含む腫瘍であって、血液、リンパ系、及び骨髄における、1つ以上のユニークなCDマーカー発現するびまん性(又は液体)腫瘍を標的とするように設計された。固形腫瘍に対しても、いくつかのADCが開発されている。この新世代の抗体薬物複合体のうち、いくつかは臨床応用が承認されている一方、多くは臨床試験中である。

0010

しかしながら、第1世代のADCでは、細胞毒性薬物分子が抗体中のシステイン又はリジン残基に非選択的に結合されることにより、ADCあたり異なる数の薬物分子を有するADCの異種混合物を生じる。この場合に、安全性及び有効性の問題が発生する恐れがある。例えば、FDAにより承認された最初のADCであるゲムツズマブオゾガマイシンは、急性骨髄性白血病の治療に使用されていたが、許容できない毒性が発見されたので、市場から回収された。

0011

二重特異性を有する抗体を調製する概念及び方法が生まれたのは、30年以上前のことである。近年、組換え抗体工学方法の発展、及び改良医薬品の開発の推進に伴い、種々の構造を有する二重特異性抗体が開発されてきた。

0012

例えば、二価又は多価抗体は、2つ以上の抗原結合部位を含み得る。接続構造を介して3つ又は4つのFab断片共有結合することにより多価抗体を調製する方法は、多く報告されている。例えば、組換え工学により、タンデムの3つ又は4つのFab繰り返し単位を発現できる抗体が調製されている。

0013

合成架橋剤を用いて異なる抗体又は結合断片化学的に結合することにより、多価抗体を調製するいくつかの方法は開示されている。上記方法の1つとして、異なるリンカーを用いて、3つ、4つ、又はそれ以上の別々のFab断片を化学的に架橋する方法がある。別の方法として、複数のFabを有する構築物を調製し、それを一次元DNA足場に組み立てる方法が提供されている。標的分子への結合のために設計されたそれらの種々の多価Ab構築物は、サイズ、半減期、構造の可撓性、及び免疫系を調節する能力において互いに異なる。以上のことから、一定数のエフェクター成分を有する分子構築物、又は2つ以上の異なる種類の機能成分(例えば、少なくとも1つの標的化成分及び少なくとも1つのエフェクター成分)を有する分子構築物の調製に関する報告が成されている。しかし、通常、化学合成又は組換え技術により、標的化成分とエフェクター成分との特定の組み合わせを有する分子構築物を構築することは、困難である。従って、従来技術において、幅広い疾患に適用されるより汎用性の高い分子を構築するための新たな分子プラットフォームを提供する必要がある。

0014

以下は、読者に基本的な理解を提供するために本開示の簡略化された概要提示する。この概要は、開示の広範な概要ではなく、本開示の重要な/決定的な要素を特定するものでも、本開示の範囲を描写するものでもない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本明細書に開示されるいくつかの概念を簡略化した形で提示することである。

0015

< I >ペプチドコアに基づくマルチアームリンカー

0016

第1の態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる機能成分が結合されたリンカーユニットに関する。例えば、該リンカーユニットには、2つの異なるエフェクター成分、1つの標的化成分及び1つのエフェクター成分、又は1つのエフェクター成分及びリンカーユニットの循環時間延長可能なポリエチレングリコール(PEG)鎖が結合され得る。本発明のリンカーユニットは、少なくとも2つの異なる官能基を有するように設計されることにより、機能成分が各官能基と反応することでリンカーユニットに結合されることができる。従って、本発明のリンカーユニットは、2つ以上の機能成分を有する分子構築物を調製するためのプラットフォームとして機能することができる。

0017

本開示の種々の実施形態によれば、上記リンカーユニットは、中心コア及び複数のリンクアームを含む。上記中心コアは、(1)複数のリジン(K)残基、又は(2)(Xaa-K)n配列を含むポリペプチドコアである。上記複数のリジン(K)残基において、各K残基とその次のK残基との間がグリシン(G)及びセリン(S)残基を有する充填配列により区切られ、上記K残基の数が2〜15である。上記(Xaa-K)n配列において、Xaaが2〜12個のエチレングリコール(EG)の繰り返し単位を有するPEG化アミノ酸であり、nが2〜15の整数である。必要に応じて、上記充填配列は、2〜20個のアミノ酸残基からなる。種々の実施形態において、上記充填配列は、GS、GGS、GSG、又は配列番号:1-16の配列を含み得る。本開示のいくつかの実施形態によれば、上記中心コアは、2〜15単位のG1-5SK配列を含む。好ましくは、上記中心コアは、(GSK)2-15配列を含む。各リンクアームは、K残基とリンクアームとの間にアミド結合を形成することにより、中心コアのK残基に結合される。中心コアに結合されたリンクアームは、その遊離末端マレイミド基を有する。中心コアのN末端若しくはC末端にあるアミノ酸残基は、アジド基若しくはアルキン基を有し、又は、中心コアのN末端若しくはC末端にあるアミノ酸残基は、システイン(C)残基であり、該システイン(C)残基において、アミノ酸残基のチオール基が、カップリングアームの遊離末端にアジド基、アルキン基、aテトラジン基、若しくは歪んだアルキン基を有するカップリングアームに結合される。

0018

いくつかの実施形態において、上記リンクアームは、PEG鎖であり、好ましくは、2〜20個のEGの繰り返し単位を有する。上記カップリングアームは、PEG鎖であり、好ましくは、2〜12個のEGの繰り返し単位を有する。

0019

アジド基を有するアミノ酸残基として、L-アジドホモアラニン(AHA)、4-アジド-L-フェニルアラニン、4-アジド-D-フェニルアラニン、3-アジド-L-アラニン、3-アジド-D-アラニン、4-アジド-L-ホモアラニン、4-アジド-D-ホモアラニン、5-アジド-L-オルニチン、5-アジド-d-オルニチン、6-アジド-L-リジン、及び6-アジド-D-リジン等が挙げられる。アルキン基を有するアミノ酸残基として、例えば、L-ホモプロパギルグリシン(L-HPG)、D-ホモプロパギルグリシン(D-HPG)、及びβ-ホモプロパギルグリシン(β-HPG)が挙げられる。

0020

中心コアのN末端又はC末端にあるアミノ酸残基がシステイン残基である場合に、カップリングアームの遊離末端にある歪んだアルキン基は、シクロオクテン基、例えば、トランス-シクロオクテン(TCO)基;又は、シクロオクチン基、例えば、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)基、ジフルオロシクロオクチン(DIFO)基、ビシクロノニン(BCN)基、及びジベンゾシクロオクチン(DICO)基であり得る。或いは、カップリングアームの遊離末端にあるテトラジン基は、1,2,3,4-テトラジン基、1,2,3,5-テトラジン基、及び1,2,4,5-テトラジン基、並びに、それらの誘導体、例えば、6-メチルテトラジン基が挙げられるが、これらに限定されない。

0021

本開示の種々の実施形態によれば、上記リンカーユニットは、複数の第1成分をさらに含む。各第1成分は、チオール-マレイミド反応により1つのリンクアームに結合される。本開示の種々の任意の実施形態によれば、上記第1成分は、被験体において所望の効果(例えば、治療効果)を発揮するのに適したエフェクター成分である。或いは、上記第1成分は、リンカーユニットを目的部位に案内する標的化成分であり得る。

0022

必要に応じて、上記リンカーユニットは、上記第1成分と異なる第2成分をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記第2成分は、アジド基又はアルキン基を有することにより、Cu(I)が触媒として存在する「Cu(I)触媒型アルキン-アジド環化付加(CuAAC)反応」と呼ばれる反応で、中心コア又はカップリングアームの対応するアルキン基若しくはアジド基に結合されることで中心コア又はカップリングアームに結合される。或いは、いくつかの実施形態において、アジド基若しくはシクロオクチン基を有する第2成分は、「ひずみ促進型アジド-アルキンクリックケミストリー(SPAAC)反応」により、中心コア又はカップリングアームの対応するシクロオクチン基若しくはアジド基に結合されることで、中心コア又はカップリングアームに結合される。或いは、特定の実施形態において、テトラジン基若しくはシクロオクテン基を有する第2成分は、「逆電子要請型ディールスアルダー(iEDDA)反応」により、中心コア又はカップリングアームの対応するシクロオクテン基若しくはテトラジン基に結合されることで、中心コア又はカップリングアームに結合される。本開示の任意の実施形態において、上記第1成分がエフェクター成分である場合に、上記第2成分は、上記第1成分と相加的若しくは相乗的、又は第1成分と独立して作用する別のエフェクター成分であり得る。或いは、上記第2成分は、標的化成分、又はリンカーユニットの溶解性クリアランス、半減期、及び生物学的利用能等の薬物動態学的特性を改善させる成分であってもよい。いくつかの他の任意の実施形態において、上記第1成分が標的化成分である場合に、上記第2成分は、エフェクター成分、又はリンカーユニットの薬物動態学的特性を改善させる成分であることが好ましい。

0023

特定の実施形態において、リンカーユニットは、必要に応じて第1成分及び第2成分と異なる第3成分をさらに含む。第2成分が中心コアに直接結合される場合に、中心コアのもう一方の末端(即ち、第2成分に結合されていない遊離末端)は、必要に応じて、第3成分の導入に用いられることができるシステイン残基であってもよい。具体的には、システイン残基のチオール基をPEG鎖のマレイミド基と反応させ、このように結合されたPEG鎖は、カップリングアームと呼ばれ、その遊離末端にテトラジン基又は歪んだアルキン基を有する。従って、第3成分は、iEDDA反応によりカップリングアームに結合される。リンカーユニットが第2成分と第3成分の両方を含む場合に、好ましくは、第1成分及び第2成分のうちの少なくとも1つは、上述したようなエフェクターである一方、第3成分は、リンカーユニットの薬物動態学的特性を改善させる成分であり得る。薬物動態学的特性を改善させる成分の一例として、分子量約20,000〜50,000ダルトンの長いPEG鎖である。

0024

< II >ペプチドコアに基づくマルチアームリンカーの用途

0025

本開示の第1の態様に係るリンカーユニットは、臨床医学において、種々の疾患の治療に適用される。 そのため、本開示の第2の態様は、これらの疾患の治療方法に関する。本開示の種々の実施形態によれば、特定の疾患の治療方法は、治療を必要とする被験体に治療有効量の本開示の上述した態様及び実施形態に係るリンカーユニットを投与するステップを含む。 理解され得るように、上記リンカーユニットは、医薬製剤として投与され得る。該医薬製剤には、本発明のリンカーユニットに加えて、所望の投与経路に適した薬学的に許容される賦形剤を含む。

0026

以下、本開示のいくつかの実施形態の理解を容易にするために、いくつかの特定の疾患を治療するための本発明のリンカーユニットの、第1成分と第2成分の種々の例示的な組み合わせを説明する。

0027

本開示のいくつかの実施形態によれば、本発明の分子構築物は、免疫障害の治療に適用される。このような分子構築物において、第1成分は、サイトカイン若しくはサイトカインの受容体に特異的な一本鎖可変領域断片(scFv);又はサイトカインの可溶性受容体であり、第2成分は、組織関連細胞外マトリックスタンパク質に特異的なscFvである。この場合に、第1成分は、1つ以上の免疫障害を治療するエフェクター成分であり、第2成分は、疾患部位へのリンカーユニットの送達を容易にする標的化成分である。

0028

上記サイトカインの非限定的な例として、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-17(IL-17)、IL-1、IL-6、IL-12/IL-23、及びB細胞活性化因子(BAFF)が挙げられる。また、上記サイトカイン受容体の非限定的な例として、IL-6(即ち、IL-6R)、又はIL-17(即ち、IL-17R)に特異的な受容体が挙げられる。上記サイトカインの可溶性受容体として、例えば、TNF-α又はIL-1に特異的なサイトカインの可溶性受容体が挙げられるが、これらに限定されない。上記組織関連細胞外マトリックスタンパク質の例示的な例として、α-アグリカンコラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンIX、及びコラーゲンXIが挙げられるが、これらに限定されない。

0029

乾癬の治療に適用されるリンカーユニットのいくつかの具体的で例示的な例によれば、第1成分は、TNF-α、IL-12/IL-23、IL-17、又はIL-17Rに特異的なscFvであり、第2成分は、コラーゲンI又はコラーゲンVIIに特異的なscFvである。

0030

いくつかの任意の例において、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚ループス、又はシェーグレン症候群等の免疫障害の治療に適用されるリンカーユニットは、第1成分としてBAFFに特異的なscFv、及び第2成分としてコラーゲンI又はコラーゲンVIIに特異的なscFvを含む。

0031

関節リウマチ乾癬性関節炎、又は強直性脊椎炎の治療において、例示的なリンカーユニットは、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-12/IL-23、IL-17、IL-6R、又はIL-17Rに特異的なscFvである第1成分と、コラーゲンII、コラーゲンIX、コラーゲンXI、又はα-アグリカンに特異的なscFvである第2成分とを含む。

0032

上記リンカーユニットは、炎症性腸疾患、例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎等の治療にも適用される。この場合に、本発明のリンカーユニットは、第1成分としてTNF-αに特異的なscFv、及び第2成分としてコラーゲンIII又はコラーゲンVに特異的なscFvを使用する。

0033

本発明のリンカーユニットによって治療可能な別の疾患は、びまん性腫瘍である。該びまん性腫瘍は、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ホジキンリンパ腫非ホジキンリンパ腫、及び骨髄腫を含むが、これらに限定されない。これらの実施形態において、第1成分は、標的化成分、例えば、第1細胞表面抗原に特異的なscFvであり、第2成分は、エフェクター成分、例えば、第2細胞表面抗原に特異的なscFvであり得る。

0034

びまん性腫瘍を治療するための標的化成分として適用される第1細胞表面抗原は、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD43、CD72a、CD78、CD79a、CD79b、CD86、CD134、CD137、CD138、及びCD319を含むが、これらに限定されない。その一方で、エフェクター成分として適用される第2細胞表面抗原の非限定的な例として、CD3及びCD16aが挙げられる。

0035

Bリンパ球由来リンパ腫又は白血病の治療において、例示的な第1成分は、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23、CD30、CD37、CD79a、又はCD79bに特異的なscFvであり、例示的な第2成分は、CD3又はCD16aに特異的なscFvである。

0036

形質細胞腫又は多発性骨髄腫の治療において、例示的な第1成分は、CD38、CD78、CD138、又はCD319に特異的なscFvであり、例示的な第2成分は、CD3又はCD16aに特異的なscFvである。

0037

T細胞由来リンパ腫又は白血病の治療において、例示的な第1成分は、CD5、CD30、又はCD43に特異的なscFvであり、第2成分は、CD3又はCD16aに特異的なscFvである。

0038

骨髄性白血病の治療において、例示的な第1成分は、CD33又はCD34に特異的なscFvであり、例示的な第2成分は、CD3又はCD16aに特異的なscFvである。.

0039

本発明のリンカーユニットによって治療可能な別の疾患は、固形腫瘍である。該固形腫瘍は、メラノーマ食道がん胃がん脳腫瘍小細胞肺がん非小細胞肺がん膀胱がん乳がん膵臓がん結腸がん直腸がん、大腸がん腎がん肝細胞がん卵巣がん前立腺がん甲状腺がん精巣がん、及び頭頸部扁平上皮がんを含むが、これらに限定されない。また、本発明のリンカーユニットは、進行性悪性又は転移性の固形腫瘍の治療にも適用される。

0040

固形腫瘍を治療するリンカーユニットの構築において、第1成分(即ち、標的化成分)は、ペプチドホルモン成長因子、及び腫瘍関連抗原に特異的な第1のscFvから選択され、第2成分(即ち、エフェクター成分)は、細胞表面抗原に特異的な第2のscFvである。

0041

例えば、ペプチドホルモンは、セクレチンコレシストキニン(CCK)、ソマトスタチン、又は甲状腺刺激ホルモン(TSH)である。成長因子として、上皮成長因子(EGF)、変異型EGF、エピレグリンヘパリン結合上皮成長因子(HB-EGF)、血管内皮成長因子A(VEGF-A)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、又は肝細胞成長因子(HGF)であり得る。腫瘍関連抗原の例示的な例として、ヒト上皮成長因子受容体-1(HER1)、HER2、HER3、HER4、糖鎖抗原19-9(CA 19-9)、糖鎖抗原125(CA 125)、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1(MUC 1)、ガングリオシドGD2、メラノーマ関連抗原(MAGE)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、メソセリン、ムチン関連Tn、シアリルTn、グロボH、段階特異的胚抗原-4(SSEA-4)、及び上皮細胞接着分子(EpCAM)を含む。細胞表面抗原として、CD3又はCD16aであり得る。

0042

場合によって、腫瘍関連抗原は、被験体の固形腫瘍から脱落しその循環系に入る場合がある。この場合に、本発明の固形腫瘍の治療方法は、(a)1つ以上の腫瘍関連抗原に特異的な抗体を用いて、被験体に血液透析治療を行うことにより、腫瘍から脱落して被験体の循環に入った腫瘍関連抗原を除去するステップと、(b)固形腫瘍を治療するための本発明のリンカーユニットを投与するステップと、を含む。

0043

本発明のリンカーユニットによって治療可能な別の代表的な疾患は、骨粗鬆症である。骨粗鬆症の治療に適用される例示的なリンカーユニットは、核因子κB(RANKL)の受容体活性化因子のリガンドに特異的な第1のscFvである第1成分(この場合に、エフェクター成分)、及びコラーゲンI又はオステオネクチンに特異的な第2のscFvである第2成分(又は、標的化成分)を含む。

0044

加齢黄斑変性症(AMD)は、本発明のリンカーユニットによって治療可能な疾患の別の例である。AMDの治療に適用される例示的なリンカーユニットは、VEGF-Aに特異的なscFvである第1成分、及び分子量約20,000〜50,000ダルトンの長いPEG鎖を有する第2成分を含む。この場合に、第1成分は、AMDを治療するためのエフェクター成分であり、第2成分は、リンカーユニットの薬物動態学的特性を向上させるのに用いられる。

0045

< III > 標的化部分及びエフェクター部分を有する分子構築物

0046

第3の態様において、本開示は、直接的又は間接的に互いに結合される2つのリンカーユニットを含む分子構築物に関する。1つのリンカーユニットのコアは、少なくとも1つの標的化成分に結合されるように構成され、もう1つのリンカーユニットのコアは、少なくとも1つのエフェクター成分に結合されるように構成される。本発明の分子構築物は、2つのリンカーユニットが、iEDDA反応、SPAAC反応、又はCuAAC反応により互いに結合されている利点を有する。このような設計により、複雑な構造を有する分子構築物を容易に合成することができる。本開示の原則及び精神によれば、異なる数及び/又はタイプの機能成分をそれぞれ有する2つのリンカーユニットを、独立して調製し、さらに結合することができる。このようにして、当業者であれば、異なる機能成分をそれぞれ有する分子構築物のライブラリーを構築し、そして、必要及び/又は所望の用途に応じて、該ライブラリーから分子構築物(又は、リンカーユニット)を選択して組合せることで、所望の構築物を生成することができる。さらに、リンカーユニットあたりの機能成分の数は、コアの特定の官能基の数を調整することにより制御することができる。

0047

本開示の一実施形態によれば、分子構築物は、第1リンカーユニット及び第2リンカーユニットを含む。具体的には、第1リンカーユニットは、第1中心コアと、第1中心コアにそれぞれ結合される1つ以上のリンクアーム(以下、第1リンクアーム)及び必要に応じてカップリングアーム(以下、第1カップリングアーム)と、を含む。第2リンカーユニットは、第2中心コアと、第2中心コアにそれぞれ結合される1つ以上のリンクアーム(以下、第2リンクアーム)及び必要に応じてカップリングアーム(以下、第2カップリングアーム)と、を含む。第1リンカーユニット及び第2リンカーユニットは、第1中心コアと第2中心コア、第1カップリングアームと第2中心コア、第1カップリングアームと第2カップリングアーム、又は、第1中心コアと第2カップリングアームのいずれかの間で起きるiEDDA、SPAAC、又はCuAAC反応により、互いに結合される。

0048

本開示の実施形態によれば、第1中心コア及び第2中心コアは、ともに複数のアミン基を有する。各リンクアームは、それらの間、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)基とアミン基との間にアミド結合を形成することにより中心コアに結合される。中心コアに結合された後、リンクアームは、その遊離末端にマレイミド基を有する。マレイミド基の存在下で、第1標的化成分及び第1エフェクター成分は、チオール-マレイミド反応により、第1リンクアーム及び第2リンクアームにそれぞれ結合される。

0049

本開示のいくつかの実施形態によれば、各リンクアームは、2-20個のEGの繰り返し単位を有するPEG鎖である。また、各カップリングアームは、2-12個のEGの繰り返し単位を有するPEG鎖である。

0050

本開示の種々の実施形態によれば、第1中心コア及び第2中心コアのそれぞれは、化合物コア又はポリペプチドコアであり得る。いくつかの例において、第1中心コア及び第2中心コアは両方とも、同一又は異なる化合物の化合物コアである。特定の好ましい実施形態において、第1中心コア及び第2中心コアは両方とも、同一又は異なる配列を有するポリペプチドコアである。或いは、該2つのコアのうちの一方は化合物コアであり、他方はポリペプチドコアである。

0051

本発明の化合物コアとして適用される化合物の非限定的な例として、ベンゼン-1,3,5-トリアミン、2-(アミノメチル)-2-メチルプロパン-1,3-ジアミントリス(2-アミノエチル)-アミン、ベンゼン-1,2,4,5-テトラアミン、3,3',5,5'-テトラアミン-1,1'-ビフェニルテトラキス-(2-アミノエチル)メタン、テトラキス(エチルアミン)-ヒドラジン、N,N,N',N',-テトラキス-(アミノエチル)-エチレンジアミン、ベンゼン-1,2,3,4,5,6-ヘキサアミン、1-N,1-N,3-N,3-N,5-N,5-N-ヘキサキス-(メチルアミン)-ベンゼン-1,3,5-トリアミン、1-N,1-N,2-N,2-N,4-N,4-N,5-N,5-N-オクタキス-(メチルアミン)-ベンゼン-1,2,4,5-トリアミン、及びN,N-ビス[(1-アミノ-3,3-ジアミノエチル)-ペンチル]メタン-ジアミンを含む。

0052

中心コアが化合物コアである場合に、カップリングアームは、カップリングアームと中心コアとの間にアミド結合を形成することにより中心コアの複数のアミン基の1つに結合される。一方、カップリングアームの遊離末端には、アジド基、アルキン基、歪んだアルキン基、又はテトラジン基を有する。

0053

本開示のいくつかの実施形態によれば、本発明のポリペプチドコアとして適用されるポリペプチドは、複数のリジン(K)残基、必要に応じて、2〜15個のK残基を含む。また、各K残基とその次のK残基との間が充填配列により区切られ、該充填配列は、グリシン(G)及びセリン(S)残基を含み、必要に応じて、該充填配列は、2〜20個のアミノ酸残基からなる。種々の実施形態において、上記充填配列は、GS、GGS、GSG、配列番号:1-16の配列を含み得る。いくつかの実施形態において、上記ポリペプチドは、2-15単位のG1-5SK配列、例えば、(GSK)2-15配列を含む。一実施形態において、上記ポリペプチドコアは、配列番号:17、18、19、21、22、23、又は24の配列を含む。

0054

或いは、ポリペプチドコアは、(Xaa-K)nを含み得る。Xaaは、2〜12個のエチレングリコール(EG)の繰り返し単位を有するPEG化アミノ酸であり、nは、2〜15の整数である。一実施形態において、ポリペプチドコアは、配列番号:25又は26の配列を含む。

0055

中心コアは、ポリペプチドコアである場合に、そのN末端若しくはC末端にシステイン残基を含み得る。これらの場合において、カップリングアームは、チオール-マレイミド反応により、中心コアのシステイン残基に結合される。システイン残基に結合されるカップリングアームは、その遊離末端にアジド基、アルキン基、歪んだアルキン基、又はテトラジン基を有する。

0056

第1リンカーユニット及び第2リンカーユニットは、以下に詳細に説明するように、第1カップリングアームと第2カップリングアームの有無に応じて、種々の構造により結合され得る。化合物コアを有するリンカーユニットの場合に、カップリングアーム(即ち、第1カップリングアーム又は第2カップリングアーム)を介してもう1つのリンカーユニットに結合されることが好ましい一方、ポリペプチドコアを有するリンカーユニット場合に、カップリングアームの必要性は任意となる。

0057

第1リンカーユニット及び第2リンカーユニットがそれぞれカップリングアームを備える場合に、カップリングアームの1つ(例えば、第1カップリングアーム)は、その遊離末端にテトラジン基を有し、もう1つのカップリングアーム(この場合に、第2カップリングアーム)は、その遊離末端に歪んだアルキン基を有する。それにより、2つのリンカーユニットは、2つのカップリングアーム(即ち、第1カップリングアームと第2カップリングアーム)の間で起きるiEDDA反応により結合される。好ましくは、上記テトラジン基は、1,2,3,4-テトラジン基、1,2,3,5-テトラジン基、及び1,2,4,5-テトラジン基、又は、それらの誘導体、例えば、6-メチルテトラジン基であり、上記歪んだアルキン基は、TCOである。両方のカップリングアーム遊離末端がそれぞれアジド基及びアルキン基を有する場合にも同様である。この場合に、2つのリンカーユニットは、2つのカップリングアーム(即ち、第1カップリングアームと第2カップリングアーム)の間で起きるCuAAC反応により結合される。或いは、一方のカップリングアームは、アジド基を有し、他方のカップリングアームは、歪んだアルキン基(好ましくは、DBCO、DIFO、BCN、又はDICO)を有する。従って、2つのカップリングアームは、SPAAC反応により結合されることができる。これらの構成は、2つのリンカーユニットの間に形成されることができる。ここで、2つのユニットは両方とも、化合物コア若しくはポリペプチドコアを有し、又は、場合によって、一方のリンカーユニットは化合物コアを有し、他方はポリペプチドコアを有する。

0058

1つのリンカーユニットのみがカップリングアーム(例えば、第1カップリングアームを有する第1リンカーユニット)を有する場合に、もう1つのリンカーユニットの中心コア(例えば、第2中心コア)は、ポリペプチドコアである。この場合に、1つの第2中心コアのN末端又はC末端にある第1アミノ酸残基は、アジド基又はアルキン基を有するアミノ酸残基である。いくつかの実施形態において、アジド基又はアルキン基を有するアミノ酸残基は、第1リンカーユニットの第1カップリングアームの対応するアルキン又はアジド基とCuAAC反応を起こすことにより、第1リンカーユニットと第2リンカーユニットとを結合する。或いは、1つの第2中心コアのN末端又はC末端にある第1アミノ酸残基は、アジド基を有するアミノ酸残基であり、且つSPAAC反応により、第1リンカーユニットのカップリングアームに結合され得る。該カップリングアームの遊離末端に歪んだアルキン基(好ましくは、DBCO、DIFO、BCN、又はDICO)を有する。この構成は、2つのリンカーユニットの間に形成されることができる。ここで、2つのユニットは両方とも、ポリペプチドコアを有し、又は、場合によって、一方のリンカーユニットは化合物コアを有し、他方はポリペプチドコアを有する。

0059

第1リンカーユニット及び第2リンカーユニットは、カップリングアーム(即ち、第1カップリングアーム及び第2カップリングアーム)が存在しなくても、結合されることも可能である。言い換えると、第1カップリングアームと第2リンカーユニットは、互いに直接結合される。この構成は、主に2つのポリペプチドコアの間に形成される。具体的には、2つの中心コアのうちの一方(例えば、第1中心コア)は、そのN末端又はC末端にアジド基を有するアミノ酸残基を含み、他方の中心コア(例えば、第2中心コア)は、そのN末端又はC末端にアルキン基を有するアミノ酸残基を含む。このようにして、第1中心コアのアジド基と第2中心コアのアルキン基との反応により、第1リンカーユニットと第2リンカーユニットとが結合する。

0060

アジド基を有するアミノ酸残基の非限定的な例として、L-アジドホモアラニン(AHA)、4-アジド-L-フェニルアラニン、4-アジド-D-フェニルアラニン、3-アジド-L-アラニン、3-アジド-D-アラニン、4-アジド-L-ホモアラニン、4-アジド-D-ホモアラニン、5-アジド-L-オルニチン、5-アジド-d-オルニチン、6-アジド-L-リジン、及び6-アジド-D-リジンが挙げられる。アルキン基を有するアミノ酸残基の例示的な例として、L-ホモプロパギルグリシン(L-HPG)、D-ホモプロパギルグリシン(D-HPG)、及びβ-ホモプロパギルグリシン(β-HPG)が挙げられるが、これらに限定されない。

0061

本開示のいくつかの実施形態によれば、分子構築物の第1リンカーユニット及び第2リンカーユニットのうちの一方は、第1リンカーユニット又は第2リンカーユニットに結合される追加のリンクアーム(以下、第3リンクアーム)をさらに含む。

0062

いくつかの実施形態において、第3リンクアームは、チオール-マレイミド反応により、分子量約20,000〜50,000ダルトンの長いPEG鎖に結合されるように構成される。必要に応じて、第3リンクアームは、標的化成分又はエフェクター成分としての単一のscFvに結合されるように構成される。いくつかの例において、第1リンクアーム及び第2リンクアームは、2つの異なるエフェクター成分に結合され、第3リンクアームに結合される標的化成分は、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンIX、コラーゲンXI、アグリカン、又はオステオネクチンに特異的なscFvである。他の例において、第1リンクアーム及び第2リンクアームは、2つの異なる標的化成分に結合され、第3リンクアームに結合されるエフェクター成分は、CD3又はCD16aに特異的なscFvである。

0063

他の実施形態において、本発明の分子構築物は、第3リンカーユニットをさらに含む。第3リンカーユニットは、第3中心コア、リンクアーム(以下、第3リンクアーム)、及び、必要に応じてカップリングアーム(以下、第3カップリングアーム)を含む。この場合に、第3リンカーユニットは、第1カップリングアーム若しくは第2カップリングアームと第3カップリングアーム、第1中心コア若しくは第2中心コアと第3カップリングアーム、第1カップリングアーム若しくは第2カップリングアームと第3中心コア、又は第1中心コア若しくは第2中心コアと第3中心コアのいずれかの間で起きるCuAAC反応、iEDDA反応、又はSPAAC反応により、第1リンカーユニット又は第2リンカーユニットに結合される。

0064

第3リンカーユニットの第3リンクアームは、その遊離末端に、チオール-マレイミド反応により第2エフェクター成分又は第2標的化成分を結合するためのマレイミド基を有することができる。

0065

理解され得るように、NHS基を有する標的化成分/エフェクター成分(例えば、薬物)は、リンクアーム(即ち、第1リンクアー、第2リンクアーム、又は第3リンクアーム)が存在しない場合に、NHS基とK残基との間にアミド結合を形成することにより、第1中心コア、第2中心コア、及び/又は第3中心コアのK残基に直接結合されることができる。.

0066

本開示の種々の実施形態によれば、第1中心コア、第2中心コア、及び必要に応じて第3中心コアは、同一でも異なっていてもよい。

0067

< IV > 標的化部分及びエフェクター部分を有する分子構築物の用途

0068

本開示の第3の態様に係る分子構築物は、臨床医学において、種々の疾患の治療に適用される。そのため、本開示の第4の態様は、これらの疾患の治療方法に関する。本開示の種々の実施形態によれば、特定の疾患の治療方法は、治療を必要とする被験体に治療有効量の本開示の上述した態様及び実施形態に係る分子構築物を投与するステップを含む。理解され得るように、上記分子構築物は、医薬製剤として投与され得る。該医薬製剤には、本発明の分子構築物に加えて、所望の投与経路に適した薬学的に許容される賦形剤を含む。

0069

以下、本開示のいくつかの実施形態の理解を容易にするために、いくつかの特定の疾患を治療するための本発明の分子構築物の第1成分及び第2成分の種々の例示的な組み合わせを説明する。

0070

いくつかの実施形態において、第1成分は、サイトカイン若しくはサイトカインの受容体に特異的な一本鎖可変領域断片(scFv);又はサイトカインの可溶性受容体であり、第2成分は、組織関連細胞外マトリックスタンパク質に特異的なscFvである。この場合に、第1成分は、1つ以上の免疫障害を治療するエフェクター成分であり、第2成分は、疾患部位への分子構築物の送達を容易にする標的化成分である。

0071

上記サイトカインの非限定的な例として、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-17(IL-17)、IL-1、IL-6、IL-12/IL-23、及びB細胞活性化因子(BAFF)が挙げられる。上記サイトカイン受容体の非限定的な例として、IL-6(即ち、IL-6R)又はIL-17(即ち、IL-17R)に特異的な受容体である。上記サイトカインの可溶性受容体として、例えば、TNF-α又はIL-1に特異的なサイトカインの可溶性受容体が挙げられるが、これらに限定されない。組織関連細胞外マトリックスタンパク質の例示的な例として、α-アグリカン、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンIX、及びコラーゲンXIが挙げられるが、これらに限定されない。

0072

乾癬の治療に適用される分子構築物のいくつかの具体的で例示的な例によれば、第1成分は、TNF-α、IL-12/IL-23、IL-17、又はIL-17Rに特異的なscFvであり、第2成分は、コラーゲンI又はコラーゲンVIIに特異的なscFvである。

0073

いくつかの任意の例において、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚ループス、又はシェーグレン症候群等の免疫障害の治療に適用される分子構築物は、第1成分としてBAFFに特異的なscFv、及び第2成分としてコラーゲンI又はコラーゲンVIIに特異的なscFvを含む。

0074

関節リウマチ、乾癬性関節炎、又は強直性脊椎炎の治療において、例示的な分子構築物は、TNF-α、IL-1、IL-6、IL-12/IL-23、IL-17、IL-6R、又はIL-17Rに特異的なscFvである第1成分と、コラーゲンII、コラーゲンIX、コラーゲンXI、又はα-アグリカンに特異的なscFvである第2成分とを含む。

0075

分子構築物は、炎症性腸疾患の治療、例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎にも適用される。この場合に、本発明の分子構築物は、第1成分としてTNF-αに特異的なscFv、及び第2成分としてコラーゲンIII又はコラーゲンVに特異的なscFvを使用する。

0076

本発明の分子構築物によって治療可能な別の疾患は、びまん性腫瘍である。該びまん性腫瘍は、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び骨髄腫を含むが、これらに限定されない。これらの実施形態において、第1成分は、標的化成分、例えば、第1細胞表面抗原に特異的なscFvであり、第2成分は、エフェクター成分、例えば、第2細胞表面抗原に特異的なscFvであり得る。

0077

びまん性腫瘍を治療するための標的化成分として適用される第1細胞表面抗原は、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD43、CD72a、CD78、CD79a、CD79b、CD86、CD134、CD137、CD138、及びCD319を含むが、これらに限定されない。その一方で、エフェクター成分として適用される第2細胞表面抗原の非限定的な例として、CD3及びCD16aが挙げられる。或いは、第1細胞表面抗原及び第2細胞表面抗原は、それぞれCD79a及びCD79bである。びまん性腫瘍の治療に適用される細胞毒性薬物は、オーリスタチン、メイタンシン、ドキソルビシン、カリケアマイシン、及びカンプトテシンを含むが、これらに限定されない。

0078

Bリンパ球由来リンパ腫又は白血病の治療において、例示的な第1成分は、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23、CD30、CD37、CD79a、又はCD79bに特異的なscFvであり、例示的な第2成分は、細胞毒性薬物、又は、CD3若しくはCD16aに特異的なscFvである。

0079

形質細胞腫又は多発性骨髄腫の治療において、例示的な第1成分は、CD38、CD78、CD138、又はCD319に特異的なscFvであり、例示的な第2成分は、細胞毒性薬物、又は、CD3若しくはCD16aに特異的なscFvである。

0080

T細胞由来リンパ腫又は白血病の治療において、例示的な第1成分は、CD5、CD30、又はCD43に特異的なscFvであり、第2成分は、細胞毒性薬物又は、CD3若しくはCD16aに特異的なscFvである。

0081

骨髄性白血病の治療において、例示的な第1成分は、CD33又はCD34に特異的なscFvであり、例示的な第2成分は、細胞毒性薬物、又は、CD3若しくはCD16aに特異的なscFvである。

0082

本発明の分子構築物によって治療可能な別の疾患は、固形腫瘍である。該固形腫瘍は、メラノーマ、食道がん、胃がん、脳腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膀胱がん、乳がん、膵臓がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、腎がん、肝細胞がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、精巣がん、及び頭頸部扁平上皮がんを含むが、これらに限定されない。また、本発明の分子構築物は、進行性、悪性又は転移性の固形腫瘍の治療にも適用される。

0083

固形腫瘍を治療する分子構築物の構築において、第1成分(即ち、標的化成分)は、ペプチドホルモン、第1成長因子、及び腫瘍関連抗原に特異的な第1のscFvから選択され、第2成分(即ち、エフェクター成分)は、細胞毒性薬物、トール様受容体(TLR)アゴニスト、放射性核種と複合体を形成したキレート剤、サイトカイン、又は第2成長因子、細胞表面抗原、ハプテン若しくはサイトカインに特異的な第2のscFvである。

0084

例えば、ペプチドホルモンは、セクレチン、コレシストキニン(CCK)、ソマトスタチン、又は甲状腺刺激ホルモン(TSH)である。第1成長因子として、上皮成長因子(EGF)、変異型EGF、エピレグリン、ヘパリン結合上皮成長因子(HB-EGF)、血管内皮成長因子A(VEGF-A)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、又は肝細胞成長因子(HGF)であり得る。腫瘍関連抗原の例示的な例として、ヒト上皮成長因子受容体-1(HER1)、HER2、HER3、HER4、糖鎖抗原19-9(CA 19-9)、糖鎖抗原125(CA 125)、がん胎児性抗原(CEA)、ムチン1(MUC 1)、ガングリオシドGD2、メラノーマ関連抗原(MAGE)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、メソセリン、ムチン関連Tn、シアリルTn、グロボH、段階特異的胚抗原-4(SSEA-4)、及び上皮細胞接着分子(EpCAM)を含む。

0085

びまん性腫瘍の治療に適用される細胞毒性薬物として、固形腫瘍を治療するための分子構築物に用いられる細胞毒性薬物は、オーリスタチン、メイタンシン、ドキソルビシン、カリケアマイシン、及びカンプトテシンを含むが、これらに限定されない。非限定的なTLRアゴニストは、リポ多糖(LPS)、モノホスホリル脂質A、モトリモード、イミキモッドレスキモッド、ガリコイモッド、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpGDON)、リポテイコ酸、β-グルカン、及びザイモサンを含む。キレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA)、及びジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)からなる群から選択される。放射性核種は、111In、131I、又は177Luである。サイトカインは、IL-2、IFN-α、IFN-γ、及びTNF-αからなる群から選択され得る。第2のscFvによって特異的に識別及び結合可能な第2成長因子は、EGF、変異型EGF、VEGF-A、bFGF、又はHGFである。第2のscFvによって特異的に識別及び結合可能な細胞表面抗原は、CD3、CD16a、CD28、CD134、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4又はCD152)、プログラム細胞死1(PD-1又はCD279)、及びプログラム細胞死1リガンド1(PD-L1又はCD274)からなる群から選択される。第2のscFvによって特異的に識別及び結合可能なサイトカインは、IL-2、IFN-α、IFN-γ、及びTNF-αからなる群から選択される。この場合に、第2のscFvは、非中和scFvである。

0086

場合によって、いくつかの腫瘍関連抗原は、被験体の固形腫瘍から脱落しその循環系に入る場合がある。この場合に、本発明の固形腫瘍の治療方法は、(a)1つ以上の腫瘍関連抗原に特異的な抗体を用いて、被験体に血液透析治療を行うことにより、腫瘍から脱落して被験体の循環に入った腫瘍関連抗原を除去するステップと、(b)固形腫瘍を治療するための本発明の分子構築物を投与するステップと、を含む。.

0087

本開示のいくつかの実施形態によれば、第2成分がハプテンに特異的な第2のscFvである場合に、上記方法は、同一のハプテンでタグ付けされた免疫調節エフェクターを被験体に投与するステップをさらに含む。実施形態において、ハプテンは、ジニトロフェノール(DNP)、トリニトロフェノール(TNP)、WADWPGPP(配列番号:20)のアミノ酸配列を有する短いペプチドからなる群から選択される。免疫調節エフェクターは、IFN-α、IL-2、TNF-α、及びIFN-γ、並びにPD-1、PD-L1、CTLA-4、又はCD3に特異的なIgG抗体である。

0088

本発明の分子構築物によって治療可能な別の代表的な疾患は、骨粗鬆症である。骨粗鬆症の治療に適用される例示的な分子構築物は、核因子κB(RANKL)の受容体活性化因子のリガンドに特異的な第1のscFvである第1成分(この場合に、エフェクター成分)、及びコラーゲンI又はオステオネクチンに特異的な第2のscFvである第2成分(例えば、標的化成分)を含む。

0089

< V >組織標的化機能を有する抗炎症分子

0090

第5の態様において、本開示は、免疫グロブリンのCH2-CH3ドメインに直接的又は間接的に結合される少なくとも1つの標的化成分及び少なくとも1つのエフェクター成分を有する結晶化可能断片(Fc)に基づく分子構築物に関する。本発明のFcに基づく分子構築物の設計は、広範囲の標的化成分及びエフェクター成分の多数の組み合わせを可能にする。そのため、本発明のFcに基づく分子構築物は、多価分子を構築するためのプラットフォームとして機能することができる。

0091

本開示の特定の実施形態によれば、Fcに基づく分子構築物は、IgG.Fcの1対のCH2-CH3セグメントと、第1の1対のエフェクター成分と、第1の1対の標的化成分とを含む。

0092

いくつかの実施形態において、本発明のFcに基づく分子構築物は、免疫疾患(特に、自己免疫疾患)又は骨粗鬆症の治療に適用される。この場合に、第1の1対のエフェクター成分は、2つのエフェクター成分からなる。該2つのエフェクター成分のそれぞれは、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターロイキン-17(IL-17)、IL-17受容体(IL-17R)、IL-1、IL-6、IL-6R、IL-12/IL-23、B細胞活性化因子(BAFF)、若しくは核因子κB(RANKL)の受容体活性化因子のリガンドに特異的な抗体断片、又はTNF-α若しくはIL-1の可溶性受容体である。さらに、該第1の1対の標的化成分は、2つの標的化成分からなる。2つの標的化成分のそれぞれは、α-アグリカン、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンV、コラーゲンVII、コラーゲンIX、コラーゲンXI、又はオステオネクチンに特異的な抗体断片である。第1の1対のエフェクター成分が1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される場合に、第1の1対の標的化成分は、1対のCH2-CH3セグメントのC末端に結合され、その逆もまた然りである。或いは、第1の1対のエフェクター成分及び第1の1対の標的化成分がいずれも一本鎖可変領域断片(scFv)の形態である場合に、第1の1対の標的化成分は、タンデム又はダイアボディ構造で、第1の1対のエフェクター成分のN末端に結合されることにより、1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される1対の二重特異性を形成する。

0093

特定の実施形態において、1対のCH2-CH3セグメントは、ヒトIgG重鎖γ4又はヒトIgG重鎖γ1に由来する。

0094

いくつかの例において、第1の1対のエフェクター成分又は第1の1対の標的化成分は、構造(即ち、VH-CH1ドメイン及びVL-Cκドメインからなる)をとる。このFab断片は、第1重鎖及び第2重鎖のN末端に結合されることにより、Fcに基づく分子構築物は、IgG構造を採用する。この場合に、Fab構造ではない1対の成分は、1対のCH2-CH3セグメントC末端に結合される。

0095

他の実施形態によれば、Fcに基づく分子構築物は、2つの追加のエフェクター成分からなる第2の1対のエフェクター成分をさらに含み、該2つの追加のエフェクター成分は、いずれも上述したエフェクター成分から選択されるものである。種々の実施形態によれば、第2の1対のエフェクター成分の成分は、第1の1対のエフェクター成分と異なる。これらの実施形態において、第2の1対のエフェクター成分は、CH2-CH3セグメントの遊離C末端に結合される。

0096

或いは、本発明のFcに基づく分子構築物は、第2の1対の標的化成分をさらに含む。該2つの標的化成分は、上述した標的化成分から選択されるものである。種々の実施形態によれば、第2の1対の標的化成分の成分は、第1の1対の標的化成分と異なる。これらの実施形態において、第2の1対の標的化成分は、CH2-CH3セグメントの遊離C末端に結合される。

0097

種々の任意の実施形態によれば、上述した標的化成分及びエフェクター成分は、所望の治療効果を得るために、必要に応じて組み合わせることができる。免疫疾患を治療するためのエフェクター成分と標的化成分とのいくつかの例示的な組み合わせは、添付の特許請求の範囲に提供され、後述される。

0098

< VI >組織標的化機能を有する抗炎症分子の用途

0099

第6の態様において、本開示は、種々の疾患の治療方法に関する。一般的に、該方法は、治療を必要とする被験体に、有効量の第5の態様及びそれに関連する実施形態に係るFcに基づく分子構築物を投与するステップを含む。

0100

特定の実施形態において、本発明の方法は、免疫疾患、特に自己免疫疾患の治療方法に関する。

0101

本開示のいくつかの実施形態によれば、自己免疫疾患は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、又は強直性脊椎炎である。この場合に、エフェクター成分は、TNF-α、IL-12/IL-23、IL-1、IL-17、又はIL-6に特異的な抗体断片であり、標的化成分は、コラーゲンII、コラーゲンIX、コラーゲンXI、又はα-アグリカンに特異的な抗体断片であり得る。

0102

種々の実施形態によれば、自己免疫疾患は、乾癬である。この場合に、エフェクター成分は、TNF-α、IL-12/IL-23、又はIL-17に特異的な抗体断片であり、標的化成分は、コラーゲンI又はコラーゲンVIIに特異的な抗体断片である。

0103

いくつかの他の実施形態によれば、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、皮膚ループス、又はシェーグレン症候群である。この場合に、エフェクター成分は、BAFFに特異的な抗体断片であり、標的化成分は、コラーゲンI、又はコラーゲンVIIに特異的な抗体断片である。

0104

いくつかの実施形態によれば、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患、例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎である。この場合に、エフェクター成分は、TNF-αに特異的な抗体断片であり、標的化成分は、コラーゲンIII又はコラーゲンVに特異的な抗体断片である。

0105

ここで説明した方法によって治療可能な別の疾患は、骨粗鬆症である。本開示の実施形態によれば、骨粗鬆症を治療するためのエフェクター成分は、RANKLに特異的な抗体断片を含み、標的化成分は、コラーゲンI又はオステオネクチンに特異的な抗体断片を含む。

0106

< VII >腫瘍を治療するための分子構築物

0107

第7の態様において、本開示は、本開示の第5の態様で説明した分子構築物と同様に、免疫グロブリンのCH2-CH3ドメインに直接的又は間接的に結合される少なくとも1つの標的化成分及び少なくとも1つのエフェクター成分を有するFcに基づく分子構築物に関する。本発明のFcに基づく分子構築物のエフェクター成分及び標的化成分を選択することにより、分子構築物は、びまん性腫瘍及び固形腫瘍を含む種々の細胞増殖性疾患の治療に適用される。いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の第1態様に係るリンカーユニットを利用することにより、本発明のFcに基づく分子構築物薬物(例えば、細胞毒性薬物)ペイロードの量を容易に制御する方法を提供する利点を有する。本明細書において、複数の薬物分子を担持するリンカーユニットは、薬物バンドルと呼ばれる。このような薬物バンドルは、抗体分子に結合される前に別々に調製することができ、それにより、抗体分子との直接結合の過酷な化学条件下で薬物分子を施すことを回避できる。

0108

本開示の種々の実施形態によれば、Fcに基づく分子構築物は、IgG.Fcの1対のCH2-CH3セグメント、第1の1対のエフェクター成分、及び第1の1対の標的化成分を含む。

0109

この態様に係る第1シリーズのFcに基づく分子構築物において、第1の1対のエフェクター成分の各エフェクター成分は、薬物バンドルであり、第1の1対の標的化成分の各標的化成分は、細胞表面抗原に特異的な抗体断片である。この場合に、第1の1対のエフェクター成分は、1対のCH2-CH3セグメントのC末端に結合され、第1の1対の標的化成分は、1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される。本開示の種々の実施形態によれば、薬物バンドルは、複数の細胞毒性薬物分子、例えば、オーリスタチン、メイタンシン、ドキソルビシン、カリケアマイシン、及びカンプトテシンを含み、これらのFcに基づく分子構築物によって標的化される細胞表面抗原は、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23、CD30、CD33、CD34、CD37、CD38、CD43、CD78、CD79a、CD79b、CD138、又はCD319である。例えば、これらのFcに基づく分子構築物は、種々のびまん性腫瘍の治療に有用であるが、これに限定されない。

0110

この態様に係る第2シリーズのFcに基づく分子構築物において、第1の1対のエフェクター成分の各エフェクター成分は、薬物バンドルであり、第1の1対の標的化成分の各標的化成分は、腫瘍関連抗原に特異的な抗体断片である。この場合に、第1の1対のエフェクター成分は、1対のCH2-CH3セグメントのC末端に結合され、第1の1対の標的化成分は、1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される。本開示の種々の実施形態によれば、薬物バンドルは、細胞毒性薬物、トール様受容体(TLR)アゴニスト、又は放射性核種と複合体を形成したキレート剤の複数の分子を含み、これらのFcに基づく分子構築物によって標的化される腫瘍関連抗原は、ヒト上皮成長因子受容体-1(HER1)、HER2、HER3、HER4、CA19-9、CA125、がん胎児性抗原(CEA)、細胞表面関連ムチン1(MUC1)、メラノーマ関連抗原(MAGE)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、ムチン関連Tn、シアリルTn、グロボH、段階特異的胚抗原-4(SSEA-4)、ガングリオシドGD2、又は上皮細胞接着分子(EpCAM)である。例えば、これらのFcに基づく分子構築物は、悪性固形腫瘍、及び/又は転移性固形腫瘍を含む種々の固形腫瘍の治療に有用であるが、これらに限定されない。

0111

この態様に係る第3シリーズのFcに基づく分子構築物において、第1の1対のエフェクター成分のエフェクター成分は、薬物バンドル、又は細胞表面抗原、成長因子若しくはハプテンに特異的な抗体断片であり、第1の1対の標的化成分の各標的化成分は、成長因子又はペプチドホルモンである。エフェクター成分が薬物バンドルである場合に、第1の1対のエフェクター成分は、それぞれ1対のCH2-CH3セグメントのC末端に結合され、標的化成分は、それぞれ1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される。或いは、エフェクター成分が抗体断片である場合に、エフェクター成分は、それぞれ1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合され、標的化成分は、それぞれ1対のCH2-CH3セグメントのC末端に結合され、その逆もまた然りである。

0112

上記エフェクター成分及び標的化成分を選択することにより、ここで提供する第3シリーズのFcに基づく分子構築物は、悪性固形腫瘍及び/又は転移性固形腫瘍を含む種々の固形腫瘍の治療にも有用である。しかし、本開示はこの限りではない。

0113

本開示の実施形態によれば、エフェクター成分に適用される細胞毒性薬物は、オーリスタチン、メイタンシン、ドキソルビシン、カリケアマイシン、又はカンプトテシンである。TLRアゴニストの例示的な例は、リポ多糖(LPS)、モノホスホリル脂質A、モトリモード、イミキモッド、レスキモッド、ガリコイモッド、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpGDON)、リポテイコ酸、β-グルカン、及びザイモサンを含む。ここで適用されるキレート剤は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’’’,N’’’’’’-四酢酸(DOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロオクタン-1,4-二酢酸-7-p-イソチオシアノベンジル(NODA)、又はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含むが、これらに限定されない。上述したキレート剤等と複合体を形成した放射性核種の非限定的な例として、90Y、111In、及び177Luを含む。

0114

エフェクター成分として適用されるいくつかの抗体断片は、細胞表面抗原、例えば、プログラム細胞死1(PD-1)、プログラム細胞死1リガンド1(PD-L1)、細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、CD3、CD16a、CD28、及びCD134に特異的なものである。別の例として、成長因子、例えば、上皮成長因子(EGF)、変異型EGF、エピレグリン、ヘパリン結合上皮成長因子(HB-EGF)、VEGF-A、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、及び肝細胞成長因子(HGF)に特異的な抗体断片である。ハプテンに特異的な抗体断片もここで適用される。ハプテンの例示的な例は、ジニトロフェノール(DNP)、トリニトロフェノール(TNP)、ダンシルペニシリンp-アミノ安息香酸、又はa配列番号:20のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。

0115

このシリーズのFcに基づく分子構築物に適用される標的化成分において、標的化成分は、成長因子、例えば、EGF、変異型EGF、エピレグリン、HB-EGF、VEGF-A、bFGF、及びHGFであり得る。或いは、標的化成分は、ペプチドホルモン、例えば、CCK、ソマトスタチン、及びTSHであってもよい。

0116

本開示のこの態様に係るFcに基づく分子構築物は、以下に説明されるいくつかの共通の構造的特徴共有する。

0117

特定の実施形態において、1対のCH2-CH3セグメントは、ヒトIgG重鎖γ4又はヒトIgG重鎖γ1に由来する。

0118

いくつかの例において、第1の1対のエフェクター成分(例えば、第3シリーズのFcに基づく分子構築物におけるもの)、又は第1の1対の標的化成分(例えば、第1シリーズ及び第2シリーズのFcに基づく分子構築物)は、Fab構造(即ち、VH-CH1ドメイン及びVL-Cκドメインを含む)を取る。このFab断片が第1重鎖及び第2重鎖のN末端に結合されることにより、Fcに基づく分子構築物は、IgG構造を採用する。この場合に、Fab構造ではない1対の成分は、1対のCH2-CH3セグメントのC末端に結合され得る。

0119

特定の実施形態によれば、本発明のFcに基づく分子構築物は、延長ペプチド及びカップリングアームをさらに含む。具体的には、該延長ペプチドは、(G2-4S)2-8C配列を有し、1対のCH2-CH3セグメントのうちの一方のC末端に結合される。この場合に、カップリングアームは、延長ペプチドのC末端に、それらの間で起きるチオール-マレイミド反応により結合される。また、薬物バンドルに結合される前に、カップリングアームの遊離末端(即ち、システイン残基に結合されていない末端)が、アルキン基、アジド基、歪んだアルキン基、又はテトラジン基で修飾されることにより、薬物バンドルが該遊離末端に、それらの間で起きる、逆電子要請型ディールス-アルダー(iEDDA)反応、ひずみ促進型アジド-アルキンクリックケミストリー(SPAAC)反応、又は銅(I)触媒型アルキン-アジド環化付加(CuAAC)反応により結合される。

0120

エフェクター成分が薬物バンドルである場合に、薬物バンドルは、本開示の第1態様に係るリンカーユニットとして提供され得る。具体的には、薬物バンドルは、中心コア、複数の第1リンクアーム、及び、必要に応じて第2リンクアームを含む。本開示の種々の実施形態によれば、中心コアは、複数のアミン基を有する化合物、又は複数のリジン(K)残基を有するポリペプチドであり得る。各第1リンクアームは、化合物コアのアミン基、又はポリペプチドコアのK残基との反応により中心コアに結合される末端を有する。第1リンクアームは、その遊離末端にマレイミド基を有し、各分子(例えば、細胞毒性薬物、TLRアゴニスト、又はキレート剤/放射性核種複合体の分子)は、マレイミド基との反応により、第1リンクアームを介して中心コアに結合される。

0121

中心コアがポリペプチドコアである場合に、中心コアのN末端又はC末端にあるアミノ酸残基は、システイン残基であり、又はアジド基若しくはアルキン基を有する。

0122

アジド基又はアルキン基を有する末端アミノ酸残基を含むポリペプチドコアの場合、薬物バンドルは、末端残基とカップリングアームのC末端との間で起きるCuAAC反応によりカップリングアームに結合される。

0123

システインである末端残基を有するポリペプチドコア、又は化合物コアの場合、薬物バンドルは、第2リンクアームを更に含む。第2リンクアームは、ポリペプチドコアのシステイン残基、又は化合物コアのアミン基との反応により中心コアに結合される末端を有する。また、第2リンクアームは、その遊離末端にアルキン基、アジド基、テトラジン基、又は歪んだアルキン基を有することにより、薬物バンドルは、カップリングアームのC末端に、それらの間で起きるCuAAC反応又はiEDDA反応により結合され得る。

0124

本開示のいくつかの任意の実施形態によれば、Fcに基づく分子構築物は、第2の1対のエフェクター成分、又は第2の1対の標的化成分を更に含むことができる。

0125

第2シリーズのFcに基づく分子構築物において、第2の1対の標的化成分は、それぞれ第1の1対の標的化成分に結合され得る。例えば、特定の実施形態において、第1の1対のエフェクター成分の各エフェクター成分は、細胞毒性薬物の複数の分子を含む薬物バンドルであり、第1の1対の標的化成分の各標的化成分は、HER2に特異的なscFvであり、第2の1対の標的化成分の各標的化成分は、HER1に特異的なscFvである。

0126

第3シリーズのFcに基づく分子構築物において、第2の1対のエフェクター成分は、タンデム又はダイアボディ構造で、1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される1対の成分のN末端に結合されることにより、1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される1対の二重特異性scFvを形成する。或いは、第3シリーズのFcに基づく分子構築物は、第2の1対の標的化成分を更に含み得る。該第2の1対の標的化成分は、タンデム又はダイアボディ構造で、1対のCH2-CH3セグメントのN末端に結合される1対の成分のN末端に結合されることにより、1対のCH2-CH3セグメントN末端に結合される1対の二重特異性scFvを形成する。

0127

< VIII >腫瘍を治療するための分子構築物の用途

0128

第8の態様において、本開示は、種々の細胞増殖性疾患の治療方法に関する。一般的には、該方法は、治療を必要とする被験体に、有効量の、第7の態様又はそれに関する実施形態に係るFcに基づく分子構築物を投与するステップを含む。

0129

特定の実施形態において、本発明の方法は、びまん性腫瘍、例えば、Bリンパ球由来リンパ腫又は白血病、形質細胞腫、多発性骨髄腫、T細胞由来リンパ腫又は白血病、及び骨髄性白血病の治療に関する。上述したように、本開示の第7の態様における第1シリーズのFcに基づく分子構築物は、びまん性腫瘍の治療に有用である。特定のびまん性腫瘍を治療する場合に、本発明のFcに基づく分子構築物によって標的化された細胞表面抗原の例示的な例は、添付の特許請求の範囲に提供され、後述される。

0130

上述したように、本発明の方法は、被験体内の固形腫瘍の治療にも適用される。固形腫瘍の例として、メラノーマ、食道がん、胃がん、脳腫瘍、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、膀胱がん、乳がん、膵臓がん、腎がん、肝細胞がん、卵巣がん、前立腺がん、甲状腺がん、精巣がん、及び頭頸部扁平上皮がんを含むが、これらに限定されない。上述したように、本開示の第7の態様における第2シリーズ及び第3シリーズのFcに基づく分子構築物は、固形腫瘍の治療に有用である。固形腫瘍を治療するための、エフェクター成分と標的化成分とのいくつかの例示的な組み合わせは、添付の特許請求の範囲に提供され、後述される。

0131

本開示のいくつかの任意の実施形態によれば、固形腫瘍を治療する場合に、該方法は、(a)1つ以上の腫瘍関連抗原に特異的な抗体断片を用いて、被験体に血液透析治療を行うことにより、腫瘍から脱落して被験体の循環に入った腫瘍関連抗原を除去するステップと、(b)固形腫瘍を治療するための本開示のFcに基づく分子構築物を投与するステップと、を含む。

0132

Fcに基づく分子構築物がエフェクター成分としてハプテンに特異的な抗体断片を使用する場合に、本発明の方法は、本発明のFcに基づく分子構築物の投与後、同一のハプテンでタグ付けされた免疫調節エフェクターを被験体に投与するステップをさらに含む。免疫調節エフェクターの非限定的な例として、IFN-α、IL-2、TNF-α、及びIFN-γ、並びにPD-1、PD-L1、CTLA-4、及びCD3に特異的なIgG抗体を含む。

0133

本開示のいくつかの実施形態によれば、悪性腫瘍は、1つ以上の腫瘍関連抗原を被験体の循環に放出する場合がある。そのため、方法は、Fcに基づく分子構築物の投与前に、1つ以上の腫瘍関連抗原に特異的な抗体断片を用いて、被験体に血液透析治療を行うことにより、悪性腫瘍から脱落した腫瘍関連抗原を除去するステップを更に含む。

図面の簡単な説明

0134

本説明は、以下に簡単に説明する添付図面に照らして読まれた以下の詳細な説明からよりよく理解されるであろう。

0135

本開示の特定の実施形態に係るリンカーユニットを説明する模式図である。

0136

化合物コアを有するリンカーユニットを説明する模式図である。

0137

本開示のいくつかの実施形態に係るT-E分子構築物を説明する模式図である。

0138

本開示のいくつかの実施形態に係る分子構築物を構築するためのライブラリーを説明する模式図である。

0139

本開示のいくつかの実施形態に係る分子構築物を説明する模式図である

0140

本開示のいくつかの実施形態に係る分子構築物を説明する模式図である。

0141

本開示の種々の実施形態に係る分子構築物を説明する模式図である。

0142

本開示の種々の実施形態に係るFcに基づく分子構築物を説明する模式図である。

0143

本開示の種々の実施形態に係るFcに基づく分子構築物を説明する模式図である。

0144

本開示の種々の実施形態に係るFcに基づく分子構築物を説明する模式図である。

0145

本開示の実施形態に係るFcに基づく分子構築物を説明する模式図である。

0146

本開示の種々の実施形態に係るFcに基づく分子構築物を説明する模式図である。

0147

TCO-ペプチド2精製の逆相HPLC溶出プロファイルを示す。ペプチド2は配列番号:18である。

0148

PEG12-マレイミド結合TCO-ペプチド2の精製の逆相HPLCプロファイルを示す。

0149

PEG12-マレイミド結合TCO-ペプチド2の質量分析法MALDI-TOFの結果を示す。

0150

PEG12-マレイミド結合テトラジン-ペプチド2及びDBCO-ペプチド2の質量分析法MALDI-TOFの結果をそれぞれ示す。

0151

PEG12-マレイミド結合テトラジン-ペプチド8の質量分析ESI-TOFの結果を示す。

0152

PEG6-マレイミド結合TCO-ペプチド9の質量分析ESI-TOFの結果を示す。

0153

1つのNHS-PEG12-アルキンカップリングアーム及び2つのNHS-PEG12-マレイミドリンクアームに結合される1,3,5-トリアミノベンゼンの質量分析ESI-TOFの結果を示す。

0154

DM1-SMCC分子を有するTCO-ペプチド9の精製の逆相HPLCプロファイルを示す。

0155

5DM1-SMCC分子を有するTCO-ペプチド9の質量分析結果を示す。

0156

LPSがダンシルヒドラジンとの反応により蛍光分光分析において495nmで最大発光を示したことを示す。

0157

イミキモッドに結合したPEG5-NHSの質量分析を示す。

0158

図24Aは、DOTA結合TCO-ペプチド9の質量分析ESI-TOFの結果を示す。図24Bは、Y3+-キレートされたDOTA結合TCO-ペプチド9の質量分析結果を示す。

0159

図25A、25Bは、それぞれ抗CD79b抗体1F10の精製scFvタンパク質のSDS-PAGE及びELISA分析を示す。図25C、図25Dは、それぞれ抗コラーゲンVII抗体LH7.2の精製scFvタンパク質のSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0160

図26Aは、トラスツズマブ及びアダリムマブの精製scFvのSDS-PAGE分析を示す。図26b及び26Cは、それぞれトラスツズマブ及びアダリムマブの精製scFvのELISA分析を示す。図26D及び26Eは、それぞれセツキシマブの精製scFvのSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0161

図27Aは、アダリムマブの精製scFvのSDS-PAGE分析を示す。図27Bは、アダリムマブの精製scFvのELISA分析を示す。

0162

それぞれCD3に特異的なTCO結合scFv及びDBCO結合scFvのELISA分析を示す。

0163

図29Aは、遊離のテトラジン官能基と、ヒトCD79bに特異的な3つのscFvとから構成される合成リンカーユニットのFPLC溶出プロファイルである。図29Bは、SDS-PAGE分析結果を示す。図29Cは、質量分析法MALDI-TOF結果を示す。

0164

図30A及び図30Bは、それぞれHER2/neuに特異的な3つのscFvに結合したテトラジン-ペプチド2のSDS-PAGE及び質量分析結果を示す。図30Cは、TNF-αに特異的な3つのscFvに結合したTCO-ペプチド2の質量分析結果を示す。図30D及び図30Eは、それぞれPD-1に特異的な3つのscFvに結合したTCO-ペプチド2のSDS-PAGE及び質量分析を示す。

0165

3 CCKペプチドに結合したテトラジン-ペプチド2の質量分析結果を示す。

0166

CD20に特異的な2つのscFvに結合したTCO-ペプチド7の質量分析結果を示す。

0167

CD20に特異的な2つのscFvに結合したTCO-ペプチド7の質量分析結果を示す。

0168

VEGF-Aに特異的な2つのscFvに結合したTCO-ペプチド1の質量分析結果を示す。

0169

図34Aは、CD79bに特異的な3つのscFv及びCD3に特異的な1つのscFvを有する分子構築物の質量分析結果を示す。図34Bは、HER2/neuに特異的な3つのscFv及びCD3に特異的な1つのscFvを有する分子構築物の質量分析結果を示す。

0170

抗VEGF-AのscFvと、さらに、テトラジン-20kDaのPEGとの結合後のTCO-ペプチド1の反応混合物のSDS-PAGE分析を示す。

0171

それぞれCD79bに特異的な3つのscFvを有する標的化リンカーユニットと、5つのDM1分子を有する薬物バンドルとを含む分子構築物のSDS-PAGE及び質量分析を示す。

0172

CD79bに特異的な3つのscFvを有する標的化リンカーユニットと、5つのDM1分子を有する薬物バンドルとを含む分子構築物のELISA分析を示す。

0173

HER2/neuに特異的な3つのscFvを有する標的化リンカーユニットと、5つのDM1分子を有する薬物バンドルとを含む分子構築物のSDS-PAGE分析を示す。

0174

3つのCCK8ペプチドを有する標的化リンカーユニットと、5つのDM1分子を有する薬物バンドルとを含む分子構築物の質量分析を示す。

0175

3つのCCK8ペプチドを有する標的化リンカーユニットと、5つのDOTA基を有する薬物バンドルとを含む分子構築物の質量分析を示す。

0176

CD79bに特異的な3つのscFvを有するテトラジン-ペプチド2、CD20に特異的な2つのscFvを有するTCO-ペプチド7、及び5つのDM1を有する薬物バンドルを有するリンカーユニットを含む反応混合物のSDS-PAGE分析を示す。

0177

ダンシルヒドラジンによる修飾前後のLPSの生物学的活性の分析結果を示す。

0178

PEGリンクアームと結合しているイミキモッドの生物学的活性の分析結果を示す。

0179

VEGF-Aに特異的な3scFv及び20kDaのPEGを有する分子構築物の、マウスにおける薬物動態学的パターンを示す。

0180

CD79bに特異的な3つのscFvと、5つのDM1の薬物バンドルとを有する分子構築物の細胞毒性分析結果を示す。

0181

(scFv αCII)-(scFv α TNF-α)-hIgG4.FcのSDS-PAGE分析を示す。

0182

(scFv αCII)-(scFv α TNF-α)-hIgG4.FcのコラーゲンII及びTNF-αへの結合を分析するELISA結果を示す。

0183

それぞれ二本鎖(scFv αCII)-(scFv α TNF-α)-hIgG4.Fc-(scFv αIL-17)のSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0184

それぞれ二本鎖(可溶性TNF-α受容体)-IgG1.CH2-CH3-scFv αコラーゲンIIのSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0185

ヒトTNF-αに対するインタクト抗体及びコラーゲンIIに特異的なscFvを含む二本鎖融合タンパク質のSDS-PAGE分析を示す。

0186

それぞれヒトIL-17に対するインタクト抗体及びコラーゲンVIIに特異的なscFvを含む二本鎖融合タンパク質のSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0187

それぞれscFv αコラーゲンVII-IgG4.CH2-CH3-scFv α BAFFのSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0188

それぞれヒトBAFFに対するインタクト抗体及びコラーゲンVIIに特異的なscFvを含む二本鎖融合タンパク質のSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0189

それぞれ二本鎖(scFv α SPARC)-(scFv α RANKL)-hIgG4.Fc分子構築物のSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0190

ヒトRANKLに対するインタクト抗体及びヒトオステオネクチンに特異的なscFvを含む二本鎖融合タンパク質のSDS-PAGE及びELISA分析を示す。

0191

(scFv αCII)-(scFv α TNF-α)-hIgG4.Fc及び二本鎖(scFv α CII)-(scFv α TNF-α)-hIgG4.Fc-(scFv αIL-17)を有するマウス骨端骨の免疫染色を示す。

0192

二本鎖(可溶性TNF-α受容体)-IgG1.CH2-CH3-scFv αコラーゲンIIを有するマウス骨端骨の免疫染色を示す。

0193

BALB/cマウス体内蛍光標識(scFv α SPARC)-(scFv α RANKL)-hIgG4.Fcの生体分布を示す。

0194

図59Aは、C末端延長部及びシステイン残基を有する二本鎖EGF-CH2-CH3、及び二本鎖EGF-CH2-CH3-抗PD1のscFvのSDS-PAGE分析を示す。図59Bは、2LPS分子を有するリンカーユニットに結合した二本鎖IgG1.Fc融合タンパク質のSDS-PAGE分析を示す。

0195

種々のPD-1及びERBB!に結合したEGF-IgG1.Fc-(scFv α PD1)のELISA検測結果を示す。

0196

図61Aは、二本鎖EGF-hIgG1.Fc-(scFv α CD3)分子構築物のSDS-PAGE分析を示す。図61Bは、ERBB1、ERBB2、及びERBB3に結合した二本鎖EGF-hIgG1.Fc-(scFv α CD3)を検測するELISA分析を示す。

0197

図62Aは、C末端延長部を有するEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc、EGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α PD1)、及びEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α CD3)のSDS-PAGE分析を示す。図62B〜62Eは、PD-1又はCD3、並びにERBB1、ERBB2、及びERBB3に結合したEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α PD1)、及びEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α CD3)のELISA分析を示す。

0198

ソマトスタチン-hIgG1.Fc、ソマトスタチン-hIgG1.Fc-(scFv α CD3)、及びソマトスタチン-hIgG1.Fc-(scFv α PD-1)のSDS-PAGE分析を示す。

0199

EGFR発現A431細胞上のEGF-IgG1.Fc、EGF-IgG1.Fc-(scFv α PD1)、EGF-IgG1.Fc-(scFv α CD3)、EGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc、及びEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α CD3)の細胞染色分析を示す。

0200

抗PD-1 mAbと比較した、T細胞上のEGF-IgG1.Fc-(scFv α PD1)及びEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α PD1)の染色分析(パネルA〜C)、並びに、抗CD3 mAbと比較した、T細胞上のEGF-IgG1.Fc-(scFv α CD3)及びEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α CD3)の染色分析(パネルD〜F)を示す。

0201

図66A及び図66Bは、EGF-hIgG.Fc-scFv α CD3及びEGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α CD3)とのインキュベーション後の、EGFR発現A431細胞のT細胞媒介細胞溶解を示す。図66C及び図66Dは、EGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α CD3)とのインキュベーション後の、MDA-MB-231細胞の細胞溶解の程度を示す。

0202

EGF(S2W/D3V)-IgG1.Fc-(scFv α CD3)とのインキュベーション後の、A431細胞によるT細胞媒介細胞溶解の経時変化を示す。

0203

二本鎖EGFw2v3-IgG1.Fc-(scFv α PD-1)とのインキュベーションの後の、ヒトPBMCによるA431の細胞溶解の程度を示す。

0204

一般的な実施に従って、説明された種々の特徴/要素は、縮尺通りに描かれておらず、代わりに、本発明に関連する特定の特徴/要素を最もよく例示するために描かれている。また、種々の図面における同様の参照番号および名称は、可能な場合には、同様の要素/部品を示すために使用される。

実施例

0205

添付の図面に関連して以下に提供される詳細な説明は、本実施例の説明として意図されており、本実施例が構築又は利用され得る唯一の形態を表すものではない。この説明は、この実施例の機能と、この実施例を構成し動作させるための一連のステップを示す。しかし、同じ又は同等の機能および順序は、異なる実施例によって達成されてもよい。

0206

便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに集める。 本明細書中で他に定義されない限り、本開示において使用される科学技術用語は、当業者によって一般に理解され使用される意味を有するものとする。

0207

文脈によって他に必要とされない限り、単数形の用語は複数の形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。具体的には、本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、文脈が明らかに他に示されない限り、単数形「a」及び「an」は複数の言及を含む。また、本明細書および特許請求の範囲で使用する「少なくとも1つの」および「1つ以上の」という用語は、同じ意味を有し、1,2,3又はそれ以上を含む。さらに、「A、Bおよび/又はCの少なくとも1つ」、「A、B又はCの少なくとも1つ」、および「A、Bおよび/又はCの少なくとも1つ」という表現は、本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、A単独、B単独、C単独、AとB、BとC、AとC、及びAとBとC、をカバーすることを意図している。

0208

本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータ近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示された数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。また、本明細書で使用する「約」という用語は、一般に、所与の値または範囲の10%、5%、1%または0.5%以内を意味する。或いは、用語「約」は、当業者によって考慮される場合、平均の許容可能な標準誤差内にあることを意味する。操作例/実施例以外で、又は特に明記しない限り、本明細書中に開示される材料の量、時間、温度、操作条件、量の比などについての、数値範囲、量、値及びパーセンテージの全てが、すべての場合において、用語「約」により修飾されているものと理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本開示及び添付の請求項に記載される数値パラメーターは、所望に応じて変化することのできる近似値である。少なくとも、各数値パラメーターは、報告された有効数字の数に照らして、及び通常の丸め技法を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。範囲は、本明細書では、1つのエンドポイントから別のエンドポイントまで、または2つのエンドポイント間で表現することができる。特に明記しない限り、本明細書中に開示される全ての範囲は、エンドポイントを包含する。

0209

本開示は、一般に分子構築物に関する。各分子構築物は、標的化成分(T)及びエフェクター成分(E)を含む。本明細書において、これらの分子構築物は、「T-E分子」、「T-E医薬品」又は「T-E薬物」と呼ばれる場合がある。

0210

本明細書において、用語「標的化成分」とは、対象となる標的(例えば、細胞表面上の受容体、又は組織内のタンパク質)に直接的又は間接的に結合することにより、本発明の分子構築物の対象となる標的への輸送を容易にする分子構築物の部分を指す。いくつかの例において、標的化成分は、分子構築物を標的細胞の近傍に誘導する。他の場合には、標的化成分は、標的細胞表面に存在する分子、又は細胞表面に存在する分子に特異的に結合する第2分子に特異的に結合する。いくつかの場合において、標的化成分は、対象となる標的に結合されると、本発明の分子構築物とともに内部に移行することができることにより、標的細胞の細胞質基質移転される。標的化成分は、細胞表面の受容体に対する抗体若しくはリガンドであり得るか、又は、そのような抗体若しくはリガンドに結合する分子であることで、本発明の分子構築物を標的部位(例えば、選択した細胞の表面)に標的化してもよい。標的化機能を有しない治療薬に比べて、本発明の分子構築物は、疾患部位でのエフェクター(治療剤)の局在化強化でき、又は該局在化に有利である。上記局在化は、程度又は相対的な割合をいい、疾患部位へのエフェクターの全体的又は完全な局在化を意味しない。

0211

本発明によれば、用語「エフェクター成分」とは、分子構築物が標的部位に誘導されると、生物学的活性(例えば、免疫応答細胞毒性効果の発揮等を含む)又は他の機能的活性(例えば、他のハプテンタグ付き治療分子動員)を誘発する分子構築物の部分を意味する。「エフェクト」は、治療的又は診断的であり得る。エフェクター成分は、細胞、及び/又は、細胞外免疫調節因子に結合するものを包含する。エフェクター成分は、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物糖ペプチド薬物部分(小分子薬物及び生物製剤の両方)、化合物、元素、及び同位体、並びにそれらの断片等の薬剤を含む。

0212

使用される第1、第2、第3等の用語は、本明細書において、種々の成分、構成要素、領域、及び/又は、セクションを説明するために使用することができるが、これらの成分(並びに、構成要素、領域、及び/又は、セクション)は、これらの用語によって制限されない。また、そのような順序番号の使用は、文脈によって明白に示されない限り、順番や順序を意味するものではない。むしろ、これらの用語は、単にある要素を別の要素と区別するために使用される。従って、以下に説明する第1成分は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2成分と呼ぶことができる。

0213

ここで、用語「リンク」、「カップル」及び「接合」は、交換可能に使用され、直接結合又は間接結合により2つの要素を結合することを指すものである。

0214

ここで使用される用語「ポリペプチド」とは、少なくとも2つのアミノ酸残基を有するポリマーを意味する。典型的には、ポリペプチドは、2〜約200残基、好ましくは2〜50残基の長さのアミノ酸残基を含む。本明細書でいうアミノ酸配列は、該配列の、L-、D-、又はβ-アミノ酸の構成を含む。ポリペプチドは、アミノ酸ポリマーも含む。該アミノ酸ポリマーにおいて、1つ又は複数のアミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸に対応する人工化学類似体、又は天然に存在するアミノ酸ポリマーである。さらに、該用語は、ペプチド結合、又は他の「修飾された結合」、例えば、ペプチド結合がα-エステル、β-エステル、チオアミドホスホラミド、カーボネート、ヒドロキシレート等に置換されたものにより結合されたアミノ酸に適用される。

0215

特定の実施形態において、本明細書に記載された配列を含むアミノ酸の保存的置換も含まれる。種々の実施形態において、1、2、3、4、又は5つの異なる残基が置換される。用語「保存的置換」とは、アミノ酸の置換が分子の活性(例えば、生物学的若しくは機能的活性、及び/又は、特異性)を実質的に変更しないことをいう。典型的には、保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸を、類似の化学的性質(例えば、電荷又は疎水性)を有する他アミノ酸で置換することである。ある保存的置換は、標準アミノ酸が親残基と僅かに異なる非標準アミノ酸(例えば、希アミノ酸、合成アミノ酸等)に置換された「類似体置換」を含む。アミノ酸類似体は、親アミノ酸の構造を大幅に変化させず、標準アミノ酸から合成的に得ることができ、異性体、又は代謝産物前駆体である。

0216

特定の実施形態において、本明細書に記載されている配列のいずれかと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%又は90%、より好ましくは少なくとも95%又は98%の配列同一性を有するポリペプチドも含む。

0217

本明細書でいうポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」は、特定のポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるポリペプチド残基のパーセンテージとして定義される。上記配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入することにより、最大パーセント配列同一性が得られる。なお、保存的置換は、配列同一性の一部として考慮されていない。配列同一性パーセンテージを決定するためのアライメントは、当分野内の様々な方法、例えば、公然に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はガリン(DNASTAR)ソフトウェアにより達成することができる。当業者であれば、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。上記パラメータは、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要である任意のアルゴリズムを含む。本明細書の目的を達成するために、2つのポリペプチド配列間の配列比較は、国立生物工学情報センター(NCBI)によってオンラインで提供されるコンピュータプログラムBlastp(タンパク質-タンパク質BLAST)により実施される。所与のポリペプチド配列Bに対する所与のポリペプチド配列Aのアミノ酸配列同一性パーセンテージ(本明細書において、所与のポリペプチド配列Bと特定の%アミノ酸配列同一性を有する所与のポリペプチド配列Aとも呼ばれる)は、以下の式により計算される。


%
ここで、Xは、配列アライメントプログラムBLASTにより、配列A、Bをアライメントすることで同一のマッチとして得られたアミノ酸残基の数である。Yは、配列A又はBのいずれか短い方のアミノ酸残基の総数である。

0218

本明細書で使用される用語「PEG化アミノ酸」は、1つのアミノ基及び1つのカルボキシル基を有するポリエチレングリコール(PEG)鎖である。一般的には、PEG化アミノ酸の一般式は、NH2-(CH2CH2O)n-COOHである。本開示において、nの値は、1〜20、好ましくは、2〜12である。

0219

本明細書において、ポリペプチドについては、用語「末端」は、ポリペプチドのN端又はC端にあるアミノ酸残基を指す。ポリマーについては、用語「末端」は、ポリマー(例えば、本開示のポリエチレングリコール)におけるポリマー骨格の端に位置する構成単位を指す。本明細書及び特許請求の範囲において、用語「遊離末端」は、他の分子に化学的に結合していない末端アミノ酸残基又は構成単位を指す。

0220

本明細書において、用語「抗原」又は「Ag」は、免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫応答は、分泌性体液性、及び/又は、細胞性抗原-特異的応答を含む。本開示において、用語「抗原」は、タンパク質、ポリペプチド(その変異型又は生物学的活性断片を含む)、多糖類糖タンパク質糖脂質、核酸、又はそれらの組合せでありえる。

0221

本明細書及び特許請求の範囲において、用語「抗体」は最も広い意味で使用され、完全に集合した抗体、抗原に結合する抗体断片、例えば、抗原結合断片(Fab/Fab')、F(ab')2断片(互いにジスルフィド結合により結合された2つの抗原結合Fab部分を有する)、可変断片(Fv)、一本鎖可変断片(scFv)、二重特異的性一本鎖可変領域断片(bi-scFv)、ナノボディユニボディ及びダイアボディを包含する。「抗体断片」は、完全抗体の一部、好ましくは、完全抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。典型的には、「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を指す。よく知られている免疫グロブリン遺伝子には、カッパラムダアルファガンマデルタイプシロン及びミュー定常領域遺伝子、並びに、ミリア免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパ又はラムダに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、又はイプシロンに分類される。これにより、免疫グロブリン:IgG、IgMIgAIgD、及びIgEをそれぞれ定義する。典型的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位四量体である。各四量体は、2つの同一の1対のポリペプチド鎖から構成される、各1対のポリペプチド鎖は、1本の「軽」鎖(約25kDa)及び1本の「重」鎖(約50-70kDa)を含む。各鎖のN末端は、抗原認識主に関与する約100〜110又はそれ以上のアミノ酸を含む可変領域を定義する。用語可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)は、それぞれ上述した軽鎖及び重鎖を指す。本開示の実施形態によれば、抗体断片は、天然抗体を改変することによって、又は組換えDNA技術を使用して新規合成によって調製され得る。本開示の特定の実施形態において、抗体、及び/又は、抗体断片は、二重特異性であり得、且つ様々な構造であり得る。例えば、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原結合部位(可変領域)を含み得る。種々の実施形態において、二重特異性抗体は、ハイブリドーマ技術又は組換えDNA技術によって調製されることができる。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対し結合特異性を有する。

0222

本明細書において、用語「特異的に結合」は、抗体又はその抗原結合断片が、約1×10-6 M、1×10-7 M、1×10-8 M、1×10-9 M、1×10-10 M、1×10-11 M、1×10-12 M以下の解離定数(Kd)で抗原に結合する能力、及び/又は、非特異的抗原に対する親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で抗原に結合する能力を指す。

0223

本明細書において、用語「免疫障害」は、体液性免疫不全細胞性免疫不全、複合免疫不全、不特定免疫不全、及び自己免疫疾患を含む。

0224

本明細書において、用語「腫瘍」とは、悪性又は良性にもかかわらず、すべての新生細胞成長及び増殖、並びに、前がん性及びがん細胞又は組織を指す。本明細書及び特許請求の範囲において、用語「腫瘍」は、固形腫瘍及びびまん性腫瘍を含む。

0225

本明細書において、用語「固形腫瘍」は、嚢胞又は液体領域を通常含まない異常な組織塊を指す。異なるタイプの固形腫瘍は、それらを形成する細胞のタイプに命名される。固形腫瘍の例として、肉腫及びがん腫を含むが、これらに限定されない。一般的には、「肉腫」は、骨又は筋肉などの結合組織又は支持組織から生じるがんである。「がん腫」は、身体組織を覆う腺細胞及び上皮細胞から生じるがんである。

0226

本明細書において、用語「びまん性腫瘍」は、造血血液形成)細胞から形成され、血液、骨髄、又はリンパ節に影響を及ぼす白血病、及び/又は、血液悪性腫瘍を指す。びまん性腫瘍の例として、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び骨髄腫を含むが、これらに限定されない。

0227

本明細書において、用語「腫瘍関連抗原」(TAA)は、当技術分野で知られている抗原であり、がん細胞表面に見られる抗原、及び、がん細胞から脱落して可溶になる抗原(即ち、可溶性がん抗原)を含む。腫瘍又は正常細胞にあるいくつかの細胞表面抗原は、可溶性対応物を有する。このような抗原は、がん関連線維芽細胞(CAFs)、腫瘍内皮細胞(TEC)及び腫瘍関連マクロファージ(TAM)に見られるものを含むが、これらに限定されない。

0228

本明細書において、用語「治療」は、予防的(例えば、予防薬)、治癒的又は緩和的治療を含む。本明細書で使用される「治療」行為も、予防的(例えば、予防薬)、治癒的又は緩和的治療を含む。特に、本明細書において、用語「治療」は、本発明の分子構築物又はそれを含む医薬組成物を、症状、症状に関連した病状、症状に関連した二次的な疾患若しくは障害、又は症状を引き起こす素因を有する被験体に、上記特定の疾患、障害及び/又は症状の1つ以上の病状又は特徴の、部分的若しくは完全な緩和、改善、軽減、発症遅延、進行の阻害、重症度の軽減、及び/又は、罹患率の低減を達成する目的で、適用又は投与することを指す。治療は、疾患、障害及び/又は症状の徴候を示していない被験体、及び/又は、疾患、障害及び/又は症状の初期徴候のみを示す被験体にも、疾患、障害及び/又は症状に関連した病理学変化の発展リスクを減少させる目的で施すことができる。

0229

本明細書において、用語「有効量」とは、所望の治療応答を生じるのに十分な本発明の分子構築物の量を指す。薬剤の有効量は、疾患又は症状を治癒する必要はないが、疾患若しくは症状の発症を遅延、妨害又は予防し、又は疾患若しくは症状を緩和し、疾患若しくは症状を治療することができる。有効量は、適切な投薬形態で1回、2回又はそれ以上の用量に分割されることで、所定の期間内で1回、2回又はそれ以上で投与されることができる。具体的な有効量又は十分量は、処置される特定の病状、患者の身体的条件(例えば、患者の体重、年齢、又は性別)、治療を受けている被験体のタイプ、治療期間、併用療法性質(存在する場合)、採用される特定の処方、化合物の構造又はその誘導体などの要因によって変化する。有効量は、例えば、有効成分の総質量(例えば、グラムミリグラム又はマイクログラム)、又は体重に対する活性成分質量比、例えば、ミリグラム/キログラム(mg / kg)として表すことができる。

0230

用語「適用」及び「投与」は、本明細書において互換的に使用され、本発明の分子構築物又は医薬組成物を、治療を必要とする被検体に適用することを意味する。

0231

用語「被験体」及び「患者」は、本明細書では互換的に使用され、本発明の分子構築物、医薬組成物及び/又は方法によって治療可能な人類を含む動物を意味する。用語「被験体」又は「患者」は、1つの性別が特定されていない限り、オスメスの両方の性別を指すことが意図される。従って、用語「被験体」又は「患者」は、本開示の治療方法から利益を得ることができる任意の哺乳動物を含む。「被験体」又は「患者」の例は、ヒト、ラット、マウス、モルモットサルブタヤギウシウマイヌネコ、トリ及びニワトリを含むがこれらに限定されない。例示的な実施形態において、患者はヒトである。 用語「哺乳動物」は、ヒト、霊長類家畜、及び、農場動物、例えば、ウサギ、ブタ、ヒツジ又は;動物園スポーツ又はペット動物;及びマウスおよびラットのようなげっ歯類を含む哺乳綱のすべてのメンバーを指す。用語「非ヒト哺乳動物」は、ヒト以外の哺乳綱のすべてのメンバーを指す。

0232

本開示は、少なくとも、T-E医薬品の構築に基づいている。このようなT-E医薬品は、標的細胞、標的組織又は器官に、血液循環、リンパ系、及び他の細胞、組織又は器官よりも相対的に高い割合で送達できる。この場合に、医薬品の治療効果は増加する一方、副作用及び毒性の範囲、重症度は低下する。標的成分を含まない形態よりも低い用量でT-E分子の形態で治療エフェクターを投与することもできる。従って、より低い投薬量で治療エフェクターを投与しても、効力を失うことなく、副作用及び毒性を低下させることができる。

0233

より良い薬物標的から恩恵を受けることができる疾患

0234

多くの疾患に使用される薬物は、疾患部位を標的とすることができれば、すなわち正常組織又は器官よりも有利に疾患部位に局在化又は分配できれば、より良い効力及び安全性を有するように改善されることができる。以下は疾患の主要な例であり、薬物を疾患部位又は細胞に優先的に分布させることができれば、これらの薬物を改善することができる。

0235

I 免疫障害

0236

本開示の分子構築物の設計によれば、本発明の方法によって治療可能な疾患、症状及び/又は障害は、免疫障害、例えば、自己免疫障害である。該自己免疫障害は、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚ループス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、及び炎症性腸疾患を含むが、これらに限定されない。

0237

関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患等の自己免疫疾患のほとんどは結合組織に影響を与える。環境的、遺伝的、エピジェネティック病因学的性質、又はそれらの組合せにかかわらず、影響を受けた組織は、長期間の炎症過程によって損傷を受ける。本発明において、抗炎症治療剤、例えば、抗TNF-α、抗IL-17、抗BAFF、抗IL-6、抗IL-12/IL-23を疾患結合組織に導入する際に、細胞外マトリックス標的抗原として使用することが合理的である。適切な標的抗原は、種々のタイプのコラーゲン、ラミニンエラスチンフィブリリンフィブロネクチン、及びテネイシンを含む。結合組織は、人体のほぼすべての部分に埋められる。しかし、異なる部位の結合組織に対する構造的及び機能的要求に基づいて、それらの細胞外マトリックスの成分は、タイプが異なり、優れた標的組織特異性を有する。

0238

細胞表面抗原ではなく、細胞外成分を抗炎症治療剤の標的として選択する利点は、様々なタイプのマトリックスタンパク質選択性、及び豊富な量の細胞外マトリックスタンパク質である。さらに、細胞を抗原性標的として使用しないため、抗炎症剤の細胞への直接結合による潜在的な有害な影響を回避することができる。

0239

I-(i)関節リウマチ、乾癬性関節炎、又は強直性脊椎炎

0240

関節リウマチ、強直性脊椎炎、及び他の自己免疫疾患の治療に、いくつかの抗TNF-α抗体、(例えば、インフリキシマブ及びアダリムマブ)、及びTNF-α受容体及びIgG.Fcの融合タンパク質(例えば、エタネルセプト)の使用が承認されており、又はヒト臨床試験に使用されている。インターロイキン-1(IL-1)受容体の細胞外部分であるアナキンラは、関節リウマチの治療薬として承認されている。IL-12及びIL-23の共有p40タンパク質に対する抗体、例えば、ウステキヌマブ及びブリアキヌマブは、乾癬性関節炎の治療、又は関節リウマチの臨床試験への使用が承認されている。IL-6受容体に対する抗体(トシリズマブ)は、関節リウマチ及び全身性若年性特発性関節炎が承認されている。いくつかの抗IL-6抗体、例えば、 サリルマブ及びオロキズマブは、関節リウマチを治療する臨床試験に使用されている。IL-17に特異的な抗体(セクキヌマブ)は、乾癬の治療が承認されており、関節リウマチ及び強直性脊椎炎の臨床試験に使用されている。

0241

これらの治療剤は、以前に利用可能な薬剤よりも重度の症状を改善することができるが、いくつかの治療を受けた患者に一連の重篤な副作用を引き起こした。例えば、インフリキシマブは、深刻な血液疾患(例えば、白血球減少症及び血小板減少症)、深刻な感染症、リンパ腫その他の固形腫瘍、B型肝炎再活性化、及び結核、その他の重大な問題を引き起こすことができる。アナキンラは、頻繁な感染を引き起こし、胃腸管気道、及び血液形成器官に深刻な副作用を引き起こす。これらの広く使用されている治療薬による重篤な副作用を最小限に抑えつつ、その治療効果を保持し、又はさらに高めることは、重要である。

0242

関節リウマチの患者は、、指、つま先の関節その他の関節が影響を受ける一方、強直性脊椎炎の患者は、骨盤の関節及び仙腸骨関節が影響を受ける。疾患関節において、骨の表面及び骨の表面を覆う関節軟骨は、関節における炎症性免疫成分によって攻撃される。関節の関節軟骨は、細胞外マトリックスを含む滑らかな軟骨である。軟骨は無血管であり、その重量の約60%が水であり、残りの成分がコラーゲン、α-アグリカン、プロテオグリカン、及び他のマトリックス分子から構成される。コラーゲンIIは、軟骨の主要原繊維を構成する。アグリカンは、軟骨において2番目に最も豊富な成分である。コラーゲンXIは、コラーゲンII原線維の表面に結合して原線維ネットワークの形成に寄与し、コラーゲンIXは、コラーゲンII及びコラーゲンXIに関連する。軟骨は大きな表面を有し、α-アグリカンは羽のような構造および形状を有する。軟骨の形成に加えて、関節は、十字靭帯のような隣接する骨を連結する靭帯と、筋肉を骨に連結するとを有する。靭帯及び腱は、コラーゲンI、II、III、及びエラスチンと、フィブリリン1、2とからなる原繊維ネットワークにより形成される。

0243

本発明によれば、抗体断片、例えば、コラーゲンII、α-アグリカン、コラーゲンXI又はコラーゲンIX、或いは、コラーゲンI、エラスチン又はフィブリリン1に特異的なscFvを標的化剤として使用することにより、TNF-α、IL-1、及びIL-12/IL-23に対するアンタゴニストを疾患関節に送達できることが合理的である。好ましい抗コラーゲンII抗体は、関節における天然コラーゲンIIに結合するが、原線維の組み立てにおいて切端されるN末端及びC末端プロペプチドに結合しないものである。好ましい抗アグリカン抗体は、天然α-アグリカン分子全体に結合するが、切端されて血液循環に入った断片に結合しないものである。抗コラーゲンIIに対するscFvを標的化剤とする本発明の分子構築物を採用することにより、従来のTNF-α、IL-1、及びIL12/IL-23に対するIgGに比べて、より多く本発明の治療剤が疾患部位に送達され、他の無関係な正常組織、特にリンパ系器官に存在する治療剤の量がより少ないため、副作用の発生がより少ない。

0244

I-(ii) 乾癬

0245

乾癬又はプラーク乾癬を有するほとんどの患者は、主に皮膚に炎症症状を示すが、他の組織及び器官には炎症症状を示さない。乾癬は、主に患者の皮膚の一部にケラチノサイトを発生する。抗TNF-α、抗IL-12/IL-23、抗IL-17若しくは抗IL-17受容体(抗IL-17R)のモノクローナル抗体、又は他の抗炎症剤、例えば、抗IL6の体系的投与は、上述したように望ましくない副作用を引き起こす。これらの全ての免疫調節抗体の深刻で有害な副作用は多く報告されている。

0246

他の組織の大部分よりも皮膚組織においてはるかに高いレベルで発現されるフィラグリン、コラーゲンIなどの多くの膜又は細胞外タンパク質を、治療剤を皮膚に送達する標的タンパク質として使用することができる。フィラグリンは、細胞間の密着結合部位に存在し、疾患組織部位における抗体と接触可能である。コラーゲンIは、骨マトリックス及び体の多くの部分にも存在するが、皮膚の真皮層に大量に存在する。

0247

乾癬の症状を引き起こす疾患ケラチノサイトによる炎症活性減衰させるために、抗炎症抗体薬物をケラチノサイトに接触させる必要がない。ケラチノサイトは、皮膚の最も外側の表皮層にあり、血管、汗腺、及びコラーゲン繊維は、皮膚の真皮層にある。内層脂肪組織がある皮下組織である。この3層のヒト皮膚の総厚さが2-3mmである。抗炎症抗体は、コラーゲンIに特異的なscFvによって真皮層に送達されると、他の層に拡散することができる。又は、上記抗体は、炎症性サイトカインを上記の3層の皮膚に拘束することができる。

0248

真皮-表皮接合部位に存在するいくつかのタンパク質を、治療剤を皮膚に運ぶための標的として使用することもできる。このようなタンパク質は、VII型コラーゲンXVII型コラーゲン、及び5、6、10型ラミニンを含む。真皮-表皮接合部位は、皮膚の表皮層と真皮層とを接合する組織領域である。表皮の基底層基底細胞は、半接着斑アンカーフィラメントによって基底膜に接続する。真皮の乳頭層の細胞は、VII型コラーゲンからなるアンカー原線維により基底膜に付着する。ケラチノサイト上で発現される膜貫通タンパク質(BP180とも呼ばれる)であるXVII型コラーゲンは、下層膜へのケラチノサイトの接着を媒介する真皮-表皮基底膜領域における多タンパク質複合体である半接着斑の構造成分である。ラミニンは、基底膜に存在する構造的非コラーゲン性糖タンパク質である。多くのタイプのラミニンの中で、5、6、10型ラミニンは、重層上皮の下に存在する基底膜に特異的である。

0249

I-(iii)全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚ループス、又はシェーグレン症候群

0250

全身性エリテマトーデス(SLE)は、核酸、ヒストン、及び他の核タンパク質等の複数の自己抗原に関する自己免疫疾患である。シェーグレン症候群は、自己免疫疾患であり、免疫系が外分泌腺、特に唾液を生成する唾液腺涙腺を攻撃することで、ドライアイドライマウスの症状を引き起こすことにより、感染症などさまざまな問題が発生する。これらの疾患は、女性、特に15〜35出産適齢期の女性の罹患率が高く、一般には、女性の罹患率が男性の9倍以上である。SLEは、全身性自己免疫性結合組織疾患であり、多くの臓器及び組織に影響を及ぼす。一般には、心臓膀胱および腎臓のような組織及び器官は弾性を有し、伸縮することができ、コラーゲンネットワークを含む。いくつかのタイプのSLEにおいて、皮膚での炎症症状が顕著である。

0251

50年以上にわたり、BAFFに特異的なヒトモノクローナル抗体であるベリムマブが開発され、承認されるまで、SLEに対する治療剤が1つも開発されていなかった。しかし、SLEに対するベリムマブの治療効果が不十分であると考えられている。ベリムマブは、多くの副作用を引き起こし、且つ、治療群での重篤な感染及び死亡率プラセボ群より高い。興味深いことに、シェーグレン症候群の第II相試験において、ベリムマブのシェーグレン症候群に対する治療効果がSLEに対する治療効果より良好な結果を示した。

0252

BAFFに加えて、研究者らはSLEの他の治療標的を探索してきた。SLEの病理学的過程を引き起こす主要な炎症性サイトカインが確定されていないが、「1型インターフェロン標識」と呼ばれる1型インターフェロン刺激の下流事象として知られている遺伝子群の発現が、多くの研究で実証されている。SLEの病因は、IFN-αにより活性化される遺伝子と類似する遺伝子群の発現を誘導するトール様受容体7及び9(TLR7及びTLR9)の活性化に関連することが見出されている。

0253

ロンタリズマブ、シファリムマブ、及びアニフロマブを含むIFN-αに特異的ないくつかのモノクローナル抗体は、SLE治療の臨床試験において研究されている。IFN-αは多くの機能に関与しているため、疾患部位を標的とせず、IFN-αに対する抗体を全身的投与することは、重大な副作用を引き起こす可能性がある。

0254

I-(iv) 炎症性腸疾患

0255

抗TNF-α(例えば、アダリムマブ)は、クローン病及び潰瘍性大腸炎(炎症性腸疾患の一形態)にも承認されている。しかし、上述したように、抗TNF-αの投与は、重篤な感染症及びB細胞リンパ腫を含む一連の副作用を引き起こす。従って、クローン病又は潰瘍性大腸炎の患者を抗TNF-αで治療する際に、投与された抗TNF-αを主に腸及び結腸に分布させることが好ましい。コラーゲンIII及びコラーゲンVは、小腸及び大腸の結合組織における含有量が豊富である。

0256

II 腫瘍

0257

種々の臨床段階におけるびまん性腫瘍、固形腫瘍、原発性腫瘍及び転移性腫瘍を含む悪性腫瘍を治療するために、多くの種類の多数の治療剤が動物モデルおよびヒト臨床試験において開発され、実験されている。これらの治療剤のうちのいくつかは、患者への使用が政府規制当局によって承認されている。これらの治療剤は、(1)重要な細胞調節経路若しくは構造成分、又は損傷DNA若しくは重要な細胞機構を標的とする多数の化合物;(2)標的細胞のアポトーシス、抗体依存性細胞毒性(ADCC)又は補体媒介性細胞溶解(CMC)を媒介可能である、特定の細胞型の表面抗原に特異的な抗体又は特定の腫瘍関連抗原に特異的な抗体;(3)強力な細胞毒性薬物と結合する、特定の腫瘍関連抗原に特異的な抗体;(4)悪性細胞との対抗において免疫系を活性化可能である免疫調節性サイトカイン、例えば、インターフェロン-α(IFN-α)、インターロイキン-2(IL-2)、又はインターフェロン-γ(IFN-γ);(5)Bリンパ球及びTリンパ球の特定の細胞表面マーカーを標的とする抗体、例えば、抗CD20リツキシマブ;(6)成長因子受容体を標的とする抗体、例えば、抗HER2/Neuトラスツズマブ及び抗EGFRセツキシマブ;(7)血管内皮成長因子-A(VEGF-A)を標的として血管新生を阻害する抗体、例えば、ベバシツマブ;及び(8)免疫反応ネガティブフィードバックを阻害し、進行中の免疫応答の継続的な活性化を可能にする、免疫チェックポイントに結合する抗体、例えば、抗PD1(プログラム細胞死タンパク質1、CD279)抗体であるニボルマブ等、抗PD-L1(プログラム細胞死タンパク質リガンド1、CD274)抗体であるMPDL3280A、抗CTLA-4(細胞毒性Tリンパ球タンパク質4、CD152)抗体であるイピリムマブ;を含む。

0258

がんおよび他の多くの疾患を治療するための治療剤は、ある程度に正常細胞にも作用するため、その有用性がそれ自体の毒性によって制限され、損なわれる。従って、多くの治療剤は、限られた治療濃度域を有し、それらの毒性作用を制御するために、最適ではない用量で治療を受ける多くの患者に投与される。満足できる治療効果を達成するには、このような用量が不十分である。

0259

抗体-薬物複合体が積極的に研究されている。該抗体-薬物複合体は、標的化抗体によって認識される、腫瘍関連抗原を発現する標的細胞により、運ばれる細胞毒性薬物と共に腫瘍標的化抗体を内在化することを必要とする。この場合に、現行の抗体-薬物複合体の能力を制限する恐れがある。それは、腫瘍における細胞が様々な密度で腫瘍関連抗原を発現するためである。治療中において、比較的低レベルで発現する細胞は、現行の抗体薬物複合体によって殺滅されることができず、治療が中断されると、成長する可能性がある。

0260

II-(i)びまん性腫瘍

0261

II-(i)-A白血球に由来するがん細胞を標的とする

0262

リンパ系及び骨髄系の悪性に形質転換された細胞に由来するがんは、すべてのがんにおいてかなりの割合を占める。このような腫瘍は、一般には、びまん性であり、固体ではない。従って、白血球由来腫瘍を標的化する際に、個々の腫瘍細胞を標的化する必要がある。従って、腫瘍細胞の細胞表面抗原の発現の確認は、白血球由来腫瘍の標的化の鍵である。

0263

白血球細胞(白血球)由来の腫瘍は、一般には、3種類に分類される。即ち、(1)血液及び骨髄に見られる白血病、(2)リンパ系に見られるリンパ腫、及び(3)骨髄の多くの部分及び血液に見られる骨髄腫である。

0264

白血病には4つの大きな分類がある。即ち、(1)急性リンパ性白血病(ALL)、(2)慢性リンパ性白血病(CLL)、(3)急性骨髄性白血病(AML)、及び(4)慢性骨髄性白血病(CML)である。しかし、診断方法及び分析方法の進歩に伴い、新しいタイプの白血病、例えば、B細胞CLL、T細胞CLL、B細胞前リンパ球性白血病、毛状細胞白血病等が発見されてきた。

0265

リンパ腫は2種類に分類される。即ち、(1)ホジキンリンパ腫、及び(2)非ホジキンリンパ腫である。リンパ腫患者の中に、約12%はホジキンリンパ腫患者であり、残りは非ホジキンリンパ腫患者である。非ホジキンリンパ腫は、大部分がB細胞由来であるため、B細胞非ホジキンリンパ腫のサブタイプが存在する。残りの非ホジキンリンパ腫は、T細胞リンパ腫である。

0266

骨髄腫は、抗体産生形質細胞に由来し、形質細胞腫とも呼ばれる。骨髄腫細胞は、骨髄に発見され、血液循環に移動でき、骨の多くの部分で成長し始めるため、骨髄腫は、多発性骨髄腫とも呼ばれる。

0267

白血病、リンパ腫、及び骨髄腫が骨髄様細胞リンパ様細胞、及び形質細胞に由来するが、腫瘍種類の診断は、非常に複雑であり、組織及び細胞性を検測し、生検腫瘍サンプルに対して組織学的、免疫組織学的形態学的、及び細胞マーカー分析を行う必要がある。骨髄系及びリンパ系は多能性幹細胞に属する。骨髄系は、顆粒細胞(好中球好酸球、及び好塩基球)、単球及びマクロファージ血小板分化し、リンパ系は、B細胞及びT細胞に分化する。多くの分化及び成熟の段階において、悪性形質転換がいずれの分化段階で発生する可能性がある。さらに、がん性形質転換により、ある形質を促進し又は増加させる可能性があり、或いは形質を減少させ又は失う可能性がある。

0268

表面マーカー又は分化抗原、特に、CD(分化抗原群)番号が割り当てられたものは、自然免疫および適応免疫の研究において、種々の白血球と免疫細胞とを同定するには非常に有用で重要である。細胞型の同定には1群のマーカーを必要とする場合が多い。

0269

白血球由来のがんを標的とする抗体に基づく治療手段において、標的腫瘍の表面マーカーの同定は非常に有用で強力である。しかし、同じ種類の腫瘍を有すると診断された患者であっても、表面マーカーの密度が大きく変化することがある。

0270

II-(i)-BB細胞由来のリンパ球性白血病及びリンパ腫上の表面マーカー

0271

ALL及びCLLは、両方とも固形腫瘍ではない。ALLは、リンパ芽球、前駆B細胞、前駆T細胞、又はB細胞に由来する。ALLは、以下の免疫表現型サブタイプからなる。即ち、(1)B細胞前駆体に関連する細胞表面マーカーを発現する前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、及び前駆T細胞のマーカーを発現する前駆T細胞急性リンパ芽球性白血病;(2)胚中心のB細胞に由来し、B細胞に関連する細胞表面マーカーを発現するバーキットリンパ腫;(3)リンパ様細胞及び骨髄様細胞の両方のマーカーを発現する急性混合型白血病である。

0272

CLLは、B細胞CLL(B-CLL)とも呼ばれる。それは、CLLはほとんどB細胞に由来するためである。従って、ALLとCLLとの細胞起源上の主な区別は、ALLがB細胞とT細胞の共通前駆体であるリンパ芽球に由来する一方、CLLがB細胞に由来することである。患者体内のすべてのCLL細胞は、特定のVH及びVLを発現できる単一のB細胞に由来する。CLLの細胞は、CD19及びCD20、特にCD5及びCD23を発現する。

0273

ホジキンリンパ腫は、リードスターバーグ細胞の存在を特徴とする。リード・スターバーグ細胞は、B細胞に由来する多核巨細胞である。リード・スターバーグ細胞の形態及びリンパ節生検標本における反応性細胞浸潤組成に基づいて、ホジキンリンパ腫のサブタイプは4種類に分類される。即ち、(1)結節性硬化型ホジキンリンパ腫、(2)混合細胞型(3)リンパ球リッチ型、又はリンパ球優位型、及び(4)リンパ球枯渇型である。ホジキンリンパ腫は成熟B細胞に由来することが知られている。ホジキンリンパ腫の細胞は、免疫表現型によって、CD15、CD20、CD30、CD79a、及びCD138のサブセットを発現する。非ホジキンリンパ腫の大部分はB細胞に由来する。B細胞非ホジキンリンパ腫の少なくとも14サブタイプが知られている。

0274

Bリンパ球は、抗原特異的抗体ソースであり、感染性病原体防御するための適応免疫系の重要な要素である。しかし、B細胞は、病原性であり、いくつかの疾患の原因となり得る。B細胞障害は、望ましくない免疫グロブリン産生(自己免疫及びアレルギー疾患)、及び制御されない増殖(リンパ腫、白血病)に分けられる。B細胞は、多発性自己免疫障害及びB細胞系がんの治療に対する有効な標的であることが証明されている。B細胞悪性腫瘍及び抗体媒介性疾患の治療のためのB細胞枯渇に関連する多くの手法は、一部が開発に成功しているか、又は積極的な実験段階にある。これらは、ヒトB細胞表面抗原を標的とする治療用抗体、例えば、CD19、CD20、CD22、CD37、CD79a/CD79b、及びアイソタイプ特異的Ig受容体を含む。そのような抗体のいくつかは、B細胞の溶解を引き起こし得る。いくつかの他の抗体は、細胞毒性薬物と結合した場合にB細胞の溶解を引き起こす。

0275

多発性骨髄腫は、形質細胞骨髄腫とも呼ばれ、非ホジキンリンパ腫後の2番目に最も一般的な血液悪性腫瘍である。すべてのがんにおいて、多発性骨髄腫の発生率が1%であり、死亡率が2%である。多発性骨髄腫は、大量の骨髄腫タンパク質を産生し、骨髄を占め、骨の痛み、貧血腎不全、感染、および神経学的問題を含む一連の症状を引き起こす。多発性骨髄腫は、Bリンパ球から分化した形質細胞の悪性形質転換に由来する。しかし、多発性骨髄腫の細胞は、CD19、CD20、及びCD22のような最も一般的なB細胞マーカーを発現しない。

0276

多発性骨髄腫の治療において、いくつかの治療法や薬物が実験されているか、又は承認されている。これらの治療法又は薬物には、コルチコステロイド化学療法プロテアソーム阻害剤、および免疫調節化合物が含まれる。

0277

II-(i)-CユニークなB細胞抗原Igα、Igβ及びミジス-δを抗体の標的とする

0278

Igα(CD79a)/Igβ(CD79b)は一群の抗原であり、B細胞系の細胞表面に発現され、B細胞受容体(BCR)複合体を形成する。Igα/Igβは、ヘテロ二量体膜貫通タンパク質であり、ジスルフィド結合によって安定化された2つの異なるIgα鎖及びIgβ鎖から構成される。Igα/Igβは、BCRと複合体を形成し、BCR複合体により抗原を識別した後、信号を生成する。B細胞成熟の進行中、Igα/Igβは、前B細胞段階に発現され、B細胞系での発現形態に関連するCD20より早く発現される。Igα/Igβは、B細胞及びほとんどの非ホジキンリンパ腫上で発現されるため、Igα/Igβは、非ホジキンリンパ腫の治療におけるB細胞枯渇療法のための好ましい標的であると考えられている。

0279

mIgDおよびmIgMは、成熟B細胞の表面上で共発現され、BCRの一部として機能する。mIgDは、27個のAAのユニークなミジス-δペプチドセグメントを含む。該セグメントは、mIgHTの膜固定セグメントの細胞外部分を表し、CH3ドメインと膜貫通セグメントとの間に位置する。migis-δペプチドは、mIgD発現B細胞を標的とするための抗原部位を提供することが提案されている。この部位は、分泌型IgDではなく、mIgD発現B細胞上に存在する。

0280

II-(i)-D T細胞腫

0281

Tリンパ球サブセットは、その表面分子及び分泌因子を介して、異なる種類の抗体の産生、種々のサイトカインの分泌、及び細胞毒性T細胞及び他の細胞溶解性細胞の生成を含む体液性及び細胞性免疫エフェクター機能に対する免疫調節活動の複雑なネットワークを媒介する。多くの自己免疫疾患は、自己構成要素又は細胞に対するT細胞の異常な活動によって引き起こされる。例えば、I型糖尿病では、膵臓ランゲルハンス島インスリン産生β細胞自己免疫性T細胞によって攻撃され、殺される。全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、及び炎症性腸疾患等の壊滅的な自己免疫疾患は、主にT細胞によって引き起こされる。さらに、器官又は組織移植片に対する拒絶反応は、主にT細胞によって媒介される。

0282

T細胞悪性腫瘍のいくつかの形態もある。したがって、T細胞活性の調節、又はT細胞の除去は、創薬研究の積極的な領域となっている。CD3、CD4、CD8、CD25、及びCD28を含むT細胞表面抗原に対する種々の抗体及びそれらの修飾形態は、上述した様々なヒト疾患を治療するための動物モデルまたはヒト臨床試験において研究されている。いくつかの、細胞毒性薬物と結合した抗体又は結合していない抗体は、標的されたT細胞サブセットの溶解を引き起こし得る。いくつかの抗体は、実際に細胞を溶解することなく、T細胞のアネルギー状態又はアイドル状態不活性状態を引き起こし得る。

0283

Tリンパ球は、適応免疫及び自然免疫における様々な免疫細胞及び様々な他の細胞型の活性を調節するには、主要な役割を果たす。リンパ球を標的とするための治療剤の開発において、B細胞を標的とするよりも、T細胞を標的として成功に開発された候補が少ない。しかしながら、T細胞サブセットの表面抗原を標的として開発された治療用抗体の数が増加している。T細胞表面抗原を標的とする抗体は、T細胞由来の悪性腫瘍の治療に適用されることができる。抗体によりT細胞の活性を阻害し又は増強するように調節することもできる。

0284

II-(i)-E 骨髄性白血病

0285

AMLは、成熟顆粒細胞と単球の前駆体である、骨髄幹細胞又は骨髄性芽球に由来する。AMLのサブタイプの多くは、変異原によって引き起こされる。このような変異原は、染色体転座または特定の遺伝子セグメント喪失を引き起こす。種々の分化段階に由来するAMLの細胞は、表面マーカーのいくつかのサブセットを発現する。このような表面マーカーは、CD13、CD14、CD15、CD33、CD34、CD36、CD41、CD61、CD64、CD65、及びCD11cである。早期前駆骨髄段階に由来するAMLの細胞は、多能性幹細胞の表面マーカーであるCD34、及び未成熟骨髄細胞のマーカーであるCD33を発現する。多くの骨髄分化段階に由来するAMLの細胞は、成熟骨髄細胞のマーカーであるCD15を発現する。CMLは、幹細胞若しくは骨髄幹細胞の悪性形質転換、又はフィラデルフィア染色体の転座に引き起こされたクローン性骨髄幹細胞障害である。

0286

II-(ii) 固形腫瘍

0287

II-(ii)-A固形腫瘍及び腫瘍関連抗原

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