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課題
解決手段
概要
背景
ペットボトルなどの容器に充填された容器詰緑茶飲料は消費者の健康志向から、大きな市場を形成している。最近の容器詰緑茶飲料に対する消費者の嗜好の傾向として、有用な健康機能を有する茶ポリフェノールを高濃度に含有する一方で苦渋味が抑えられ、しっかりしたコク味とともに、緑茶本来の甘味や旨味が調和していること、すなわち、急須で丁寧に煎れたような滋味高い香味が求められている。
このような背景から、茶葉の抽出時に苦渋味成分であるカテキン類の浸出を抑制する方法、調合時に苦渋味を抑制する素材を添加する方法、核酸などの旨味成分を添加する方法、酵素処理により苦渋味成分を分解する方法などを利用した様々な茶飲料が提案されている。
例えば、特許文献1には茶葉の抽出温度を調整する方法として、茶葉を高温で抽出した後、更に茶葉を低温で抽出することを特徴とする茶飲料の製造方法により、香り、旨味、コクは強いが、渋みは弱い茶抽出液が得られることが開示されている。特許文献2には苦渋味成分を吸着除去する方法として、茶類抽出液を、ポリビニルポリピロリドン樹脂と接触させ、茶類抽出液中のタンニンを吸着させ、除去することにより、タンニンの渋味・苦味が抑制され、アミノ酸の旨味が強調されることが開示されている。特許文献3には包接作用による苦渋味低減方法として、茶飲料中にサイクロデキストリンを組み合わせて配合することにより、渋味や異味が低減される一方、茶風味が維持されることが開示されている。また、特許文献4には旨味成分を増強させる方法として、茶飲料中の核酸濃度を調整することにより、旨味に優れ、苦渋味が低減されたバランスのよい高品質な茶飲料を提供できることが開示されている。
また、茶ポリフェノールをタンナーゼにより酵素処理すると、ガレート体を分解することができ、この作用によって苦渋味の低減や沈殿(クリームダウン)を抑制できることが古くから知られており、主に紅茶抽出物や紅茶飲料の製造に利用されてきた(特許文献5および6参照)。近年では、特許文献7に記載のとおり、植物細胞の細胞壁を分解する酵素とタンナーゼとを茶葉に作用させることで、茶葉からの可溶性固形分濃度が向上することが見出されている。そのほか、特許文献8には、メチル化カテキンを含有する茶抽出液にタンナーゼを作用させることで苦渋味を低減する方法が開示されている。
上記のとおり、茶葉の抽出温度を調整する方法、調合時に苦渋味を抑制する素材を添加する方法や核酸などの旨味成分を添加する方法、酵素処理により苦渋味成分を分解する方法などを利用した様々な茶飲料が提案されている。しかしながら、茶葉からの茶ポリフェノール浸出量を抑制または除去する手段では、高濃度の茶ポリフェノールを飲料中に含有させることはできない。また、包接作用を有する素材を添加する手段では、茶ポリフェノール以外に香り成分などにも作用するため、自然な緑茶の香味を維持することは難しい。その他、核酸などの旨味成分を添加する手段では、旨味の増強はできるものの、高濃度の茶ポリフェノールに由来する苦渋味を抑制することはできないため、高濃度の茶ポリフェノールを含有する緑茶飲料には不向きである。
一方、タンナーゼによる酵素処理では、緑茶ポリフェノール中で特に苦渋味の強いガレート型カテキン類を分解し、苦渋味を低減できる点で有効であるが、その場合、本来の緑茶が本来有する香味バランスを損なう課題がある。したがって、タンナーゼ処理がなされたうえで、緑茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料を得る有効な手段については開示されていない。
概要
高濃度に茶ポリフェノールを含有しながらも苦渋味が抑制され、茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料の提供。飲料液中の茶ポリフェノール含有量が75〜200mg%、カテキン中のガレート型カテキン類含有量比率が0〜10.0%、糖類含有量が30〜500mg%、及び茶ポリフェノールに対する糖類の比率が0.3〜4.0であることを特徴とする容器詰緑茶飲料。糖類が単糖類、二糖類またはオリゴ糖から選ばれる1種または2種以上である。なし
目的
本発明の課題は、高濃度に茶ポリフェノールを含有しながらも苦渋味が抑制され、茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料を提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
飲料液中の茶ポリフェノール含有量が75〜200mg%、カテキン中のガレート型カテキン類含有量比率が0〜10.0%、糖類含有量が30〜500mg%、及び茶ポリフェノールに対する糖類の比率が0.3〜4.0であることを特徴とする容器詰緑茶飲料。
請求項2
請求項3
糖類がショ糖であることを特徴とする請求項1に記載の容器詰緑茶飲料。
請求項4
カテキン中のガレート型カテキン類含有量比率がタンナーゼ処理により低減されていることを特徴とする請求項1に記載の容器詰緑茶飲料。
請求項5
タンナーゼによる酵素反応工程と糖類を添加する工程を含み、飲料液中の茶ポリフェノール含有量が75〜200mg%、カテキン中のガレート型カテキン類含有量比率が0〜10.0%、糖類含有量が30〜500mg%、及び茶ポリフェノールに対する糖類の比率が0.3〜4.0に調整することを特徴とする容器詰緑茶飲料の製造方法。
請求項6
技術分野
0001
本発明は、高濃度に茶ポリフェノールを含有しながらも苦渋味が抑制され、茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料とその製造方法、およびタンナーゼ処理された緑茶飲料の香味調整方法に関する。
背景技術
0002
ペットボトルなどの容器に充填された容器詰緑茶飲料は消費者の健康志向から、大きな市場を形成している。最近の容器詰緑茶飲料に対する消費者の嗜好の傾向として、有用な健康機能を有する茶ポリフェノールを高濃度に含有する一方で苦渋味が抑えられ、しっかりしたコク味とともに、緑茶本来の甘味や旨味が調和していること、すなわち、急須で丁寧に煎れたような滋味高い香味が求められている。
0003
このような背景から、茶葉の抽出時に苦渋味成分であるカテキン類の浸出を抑制する方法、調合時に苦渋味を抑制する素材を添加する方法、核酸などの旨味成分を添加する方法、酵素処理により苦渋味成分を分解する方法などを利用した様々な茶飲料が提案されている。
0004
例えば、特許文献1には茶葉の抽出温度を調整する方法として、茶葉を高温で抽出した後、更に茶葉を低温で抽出することを特徴とする茶飲料の製造方法により、香り、旨味、コクは強いが、渋みは弱い茶抽出液が得られることが開示されている。特許文献2には苦渋味成分を吸着除去する方法として、茶類抽出液を、ポリビニルポリピロリドン樹脂と接触させ、茶類抽出液中のタンニンを吸着させ、除去することにより、タンニンの渋味・苦味が抑制され、アミノ酸の旨味が強調されることが開示されている。特許文献3には包接作用による苦渋味低減方法として、茶飲料中にサイクロデキストリンを組み合わせて配合することにより、渋味や異味が低減される一方、茶風味が維持されることが開示されている。また、特許文献4には旨味成分を増強させる方法として、茶飲料中の核酸濃度を調整することにより、旨味に優れ、苦渋味が低減されたバランスのよい高品質な茶飲料を提供できることが開示されている。
0005
また、茶ポリフェノールをタンナーゼにより酵素処理すると、ガレート体を分解することができ、この作用によって苦渋味の低減や沈殿(クリームダウン)を抑制できることが古くから知られており、主に紅茶抽出物や紅茶飲料の製造に利用されてきた(特許文献5および6参照)。近年では、特許文献7に記載のとおり、植物細胞の細胞壁を分解する酵素とタンナーゼとを茶葉に作用させることで、茶葉からの可溶性固形分濃度が向上することが見出されている。そのほか、特許文献8には、メチル化カテキンを含有する茶抽出液にタンナーゼを作用させることで苦渋味を低減する方法が開示されている。
0006
上記のとおり、茶葉の抽出温度を調整する方法、調合時に苦渋味を抑制する素材を添加する方法や核酸などの旨味成分を添加する方法、酵素処理により苦渋味成分を分解する方法などを利用した様々な茶飲料が提案されている。しかしながら、茶葉からの茶ポリフェノール浸出量を抑制または除去する手段では、高濃度の茶ポリフェノールを飲料中に含有させることはできない。また、包接作用を有する素材を添加する手段では、茶ポリフェノール以外に香り成分などにも作用するため、自然な緑茶の香味を維持することは難しい。その他、核酸などの旨味成分を添加する手段では、旨味の増強はできるものの、高濃度の茶ポリフェノールに由来する苦渋味を抑制することはできないため、高濃度の茶ポリフェノールを含有する緑茶飲料には不向きである。
0007
一方、タンナーゼによる酵素処理では、緑茶ポリフェノール中で特に苦渋味の強いガレート型カテキン類を分解し、苦渋味を低減できる点で有効であるが、その場合、本来の緑茶が本来有する香味バランスを損なう課題がある。したがって、タンナーゼ処理がなされたうえで、緑茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料を得る有効な手段については開示されていない。
先行技術
0008
特開平6−303904号公報
特開平9−220055号公報
特開2006−180711号公報
特開2012−165753号公報
特開昭48−082098号公報
特開昭50−101592号公報
特開2011−050271号公報
特開2018—134052号公報
発明が解決しようとする課題
0009
本発明の課題は、高濃度に茶ポリフェノールを含有しながらも苦渋味が抑制され、茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料を提供すること、具体的にはタンナーゼ処理した際のアンバランスな香味が改善された容器詰緑茶飲料とその製造方法、およびタンナーゼ処理された容器詰緑茶飲料の香味改善方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
0010
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた過程で、茶ポリフェノールを高含有する緑茶抽出液をタンナーゼ処理して得られる緑茶飲料において、糖類の配合がタンナーゼ処理によってアンバランスになった香味を改善できることを見出し、本発明の完成に至った。
0011
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]飲料液中の茶ポリフェノール含有量が75〜200mg%、カテキン中のガレート型カテキン類含有量比率が0〜10.0%、糖類含有量30〜500mg%、及び茶ポリフェノールに対する糖類の比率が0.3〜4.0であることを特徴とする容器詰緑茶飲料。
[2]タンナーゼによる酵素反応工程と糖類を添加する工程を含み、飲料液中の茶ポリフェノール含有量が75〜200mg%、カテキン中のガレート型カテキン類含有量比率が0〜10.0%、糖類含有量30〜500mg%、茶ポリフェノールに対する糖類の比率が0.3〜4.0に調整することを特徴とする容器詰緑茶飲料の製造方法。
[3]タンナーゼ処理した緑茶抽出液に糖類を添加することを特徴とする容器詰緑茶飲料の香味改善方法。
発明の効果
0012
本発明によれば、高濃度に茶ポリフェノールを含有しながらも苦渋味が抑制され、茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料を提供することができる。
0013
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において「容器詰緑茶飲料」とは、茶樹の葉や茎から製造された不発酵の茶葉を主原料として、抽出、調合、殺菌などの加工がなされ、容器に充填された状態の飲料を意味する。
0014
本発明に使用する原料茶葉は、茶樹(Camellia sinensis var. sinensisやCamellia sinensis var. assamicaまたはこれらの雑種)の生葉や生茎、あるいはこれらを一次原料として製造された茶葉(たとえば、煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、釜炒り緑茶などの不発酵茶、不発酵茶に花の香りを移したジャスミン茶などの花茶)である。これらの茶葉は単一または複数混合して用いてもよい。また、抽出効率を上げるためにこれらを予め粉砕、破断、裁断してもよい。
0015
本発明における原料茶葉の抽出方法としては、ニーダーや抽出用タンクなどを用いたバッチ式抽出法や抽出塔などを用いたカラム式抽出法などの公知の方法が挙げられる。抽出の条件は原料茶葉の種類、抽出機の種類、風味などにより適宜選択されるものであるが、例えば原料茶葉1重量部に対して3〜50重量部の抽出溶媒を用いれば良く、4〜30重量部が抽出効率、製造コストおよび品質などの点で好ましい。抽出溶媒は水、温水、熱水を用いるのが、安全上問題が無く好ましい。抽出温度は特に制限されないが、10〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。抽出時間は抽出溶媒の量や抽出温度にも依存するが、30秒〜6時間、好ましくは3分〜3時間、さらに好ましくは4分〜1時間が良い。抽出時は必要に応じて撹拌を行い、上記抽出工程の後にカートリッジフィルター、ネルろ布、ろ過板、ろ紙、ろ過助剤を併用したフィルタープレスなどのろ過や遠心分離などにより固液分離して茶抽出液を得るようにすれば良い。
0016
また、抽出工程においては茶抽出液の酸化を抑制するために酸化防止剤を添加しても良い。酸化防止剤としては、食品添加物として認められているアスコルビン酸、エリソルビン酸またはそれらの金属塩などが挙げられる。また、得られた茶抽出液を濃縮したものや市販の茶エキスを溶解したものについても、そもそもの出発原料が茶葉である点で茶抽出液として利用することができる。茶エキスとは、緑茶等の茶葉を水や熱水、含水有機溶媒、有機溶媒により抽出したものであって、市販品としては、例えば、三井農林(株)の商品名「ポリフェノン」、(株)伊藤園の商品名「テアフラン」、太陽化学(株)の商品名「サンフェノン」等が挙げられる。
0017
本発明では前記茶抽出液にタンナーゼを添加して酵素反応を行う。本発明で使用されるタンナーゼとは、タンニンアシルヒドロラーゼ(EC 3.1.1.20)を指し、ポリフェノールとフェノール酸との間に形成されているエステル結合を加水分解する酵素である。酵素反応の基質をEGCg(エピガロカテキンガレート)とした場合、タンナーゼはEGCgを加水分解してより苦渋味の少ないEGC(エピガロカテキン)と没食子酸(gallic acid)を生成する。タンナーゼは麹菌などの糸状菌、酵母、細菌などの微生物産生により得ることができるが、特にAspergillus属やPenicillium属などの糸状菌が利用されている。タンナーゼはこれら糸状菌から得てもよいが、工業的には市販の真菌由来タンナーゼであるタンナーゼKTシリーズ(キッコーマンバイオケミファ(株))、スミチームTAN(新日本化学工業(株))、タンナーゼ(三菱化学フーズ(株))などの市販の酵素製剤を利用するのが好ましい。
0018
タンナーゼの添加量は、抽出液の茶固形分1gあたりでは0.1〜100Uが好ましく、0.5〜50Uがより好ましく、1〜25Uがさらに好ましい。添加する酵素量は抽出液の濃度や反応温度により適宜調節することが望ましい。茶固形分1g当たり0.1U未満では反応時間が長くなるため好ましくなく、100Uを超えると製造コストの点で好ましくない。また、抽出に用いた茶葉1gあたりでは0.02〜20Uが好ましく、0.1〜10Uがより好ましく、0.2〜5Uがさらに好ましい。
0019
タンナーゼによる酵素反応の反応温度は、0〜50℃が好ましく、5〜45℃がより好ましく、10〜40℃がさらに好ましい。0℃未満では反応時間が長くなるため好ましくなく、50℃を超えると酵素活性の低下により反応が遅くなるため好ましくない。
0020
また、タンナーゼを作用させる茶抽出液の初期pHは4.0〜6.0の範囲に調整するのが好ましい。初期pHがこの範囲外にあると、酵素活性が低下したり、酵素自体が不安定になったりするため好ましくない。なお、反応中は没食子酸(gallic acid)の生成により徐々にpHが低下するため、反応の進行度をpHのモニタリングにより推し量ることもできる。
反応時間は反応液のpHが低下し、変化が停止した時点を終点とする。したがって、一義的に特定できるものではないが、作業効率や成分の安定性などを考慮すると、10分〜12時間が好ましく、20分〜6時間が好ましく、30分〜4時間がさらに好ましい。
0021
得られたタンナーゼ処理液は、適宜希釈して茶ポリフェノール濃度を調整し、糖類その他副原料を適宜加え、pH調整を行って茶調合液とする。
0022
本発明の容器詰緑茶飲料は、飲料液中の茶ポリフェノール含有量が75〜200mg%である。茶ポリフェノール含量が75mg%未満であると茶飲料に特有の苦渋味が感じられにくく、200mg%を超える濃度では本発明の効果が発揮されにくい。飲料液中の茶ポリフェノール含有量は100〜200mg%がより好ましく、100〜150mg%がさらに好ましく、100〜125mg%が最も好ましい。なお、一般的な緑茶飲料の茶ポリフェノール含有量は概ね40〜70mg%程度であり、これよりも高濃度に茶ポリフェノールを含有すると苦渋味が強く、嗜好性が低下する。本発明では、これよりも高濃度の領域でも緑茶らしい苦渋味とともに旨味や甘味が調和した容器詰緑茶飲料を得ることができる。
0023
本発明の容器詰緑茶飲料の茶ポリフェノール含有量は、「日本食品標準成分表2015年度版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省科学技術・学術政策局政策課資源室監修、建帛社2016年2月)のp242-243に記載の酒石酸鉄吸光光度法に従って求められるものである。
0024
本発明の容器詰緑茶飲料は、飲料液中のガレート型カテキン類含有量比率が0〜10.0%であることを特徴とする。ここでカテキン類とは(±)−エピカテキン、(±)−カテキン、(±)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレートの名称で表されるカテキン誘導体を総称したもので、本発明におけるガレート型カテキン類とはこのうちの(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレートの4種類を意味する。なお、一般的な緑茶飲料でのガレート型カテキン含有量比率はおよそ70%程度である。
0025
ガレート型カテキン類は強い苦渋味を有するため、高濃度に調合する際にはガレート型カテキン類の比率を低く抑えると苦渋味を抑制することができる。本発明におけるガレート型カテキン類含有量比率は0〜7.5%がより好ましく、0〜5.0%がさらに好ましく、0〜3.0%が最も好ましい。ガレート型カテキン類の低減は前記タンナーゼ処理により実施することができ、酵素量や反応時間の調整によって所望の範囲に設定することが可能である。本発明の容器詰緑茶飲料のカテキン類含有量は、HPLCを利用した公知の分析法で求めることができ、ガレート型カテキン類含有量比率は各カテキン類の合計量に対するガレート型カテキン類の合計量が占める比率として算出されるものである。
0026
本発明の容器詰緑茶飲料は飲料液中の糖類含量が30〜500mg%であることを特徴とする。本発明における糖類とは、単糖類、二糖類、オリゴ糖類である。例えば、単糖類としてはグルコース(ブドウ糖)、フラクトース(果糖)、キシロース、ソルボース、ガラクトース等、二糖類としてはスクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、ラクトース(乳糖)、パラチノース、セロビオース等、オリゴ糖類としては、単糖類が3〜10個の範囲で結合したものとして、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などを挙げることができる。これらの糖類は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの形態は、粉末状、顆粒状、液状等であってよく、例えば、グラニュー糖や上白糖のような粉末状、フロストシュガーのような顆粒状、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖、砂糖混合異性化液糖等の液状の糖類であってもよい。本発明では、ブドウ糖、果糖、ショ糖および麦芽糖が好適であり、ショ糖が最も好ましい。
0027
飲料液中の糖類濃度は30〜500mg%であることが好ましく、30mg未満では効果が発揮されにくく、500mgを超える濃度では糖類の特性である甘味を呈しやすく、緑茶らしさに違和感を与えるため、好ましくない。本発明で使用される糖類は甘味の付与を目的とするものではないため、甘味を呈する閾値以下でも使用することができる。飲料液中の糖類濃度はより好ましくは38〜400mg%、さらに好ましくは50〜200mg%である。
0028
本発明の緑茶飲料における糖類含量は茶ポリフェノール含量により調整されることが重要であり、茶ポリフェノールに対する糖類の比率が0.3〜4.0であることを特徴とする。この比率の範囲内にあると、高濃度に茶ポリフェノールを含む場合でもタンナーゼ処理を行った際のアンバランスな香味を調整することができ、緑茶らしい苦渋味とともに旨味や甘味が調和した容器詰緑茶飲料を得ることができる。上記比率は、0.38〜2.5が好ましく、0.5〜2.0がさらに好ましい。
0029
茶調合液には、必要に応じて、アスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム等の酸化防止剤を適宜添加し、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を用いてpH調整するのが望ましい。調合液のpH設定は、25℃換算値で3.0〜7.0が好ましく、4.0〜7.0がより好ましく、5.0〜7.0がさらに好ましい。
0030
本発明の容器詰緑茶飲料には、処方上添加することのできるその他の成分として、デキストリン、環状オリゴ糖、植物性油脂、動物性油脂、果汁、食品用エキス、酒類、ハーブ・スパイス類、香辛料抽出物、甘味料、酸味料、調味料、酵素、糊料、ゲル化剤、増粘多糖類、安定剤、乳化剤、着色料、香料、日持向上剤、栄養強化剤、保存料等の副成分を単独あるいは併用して配合してもよい。
0031
上記のように調製した茶調合液は、加熱殺菌を行った後、密閉容器に封入して容器詰飲料とする。使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などで、通常の形態で提供することができる。殺菌条件は、食品衛生法に定められた条件と同等の効果が得られる方法を選択すれば良いが、容器として耐熱性容器(金属缶、ガラス等)を使用する場合にはレトルト殺菌(121〜124℃、4〜40分間)を行えばよい。また容器として非耐熱性容器PETボトル、紙容器等)を用いる場合は、例えば、調合液を予めプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後(120〜150℃、1〜数十秒間)、一定の温度まで冷却し、熱時充填するか、30〜50℃で無菌充填を行うことで製造することができる。
0032
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<茶ポリフェノールの測定方法>
茶ポリフェノールの定量は「日本食品標準成分表2015年度版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省科学技術・学術政策局政策課資源室監修、建帛社2016年2月)のp242-243に記載の酒石酸鉄吸光光度法に従って行った。なお、定量用標準物質には没食子酸エチル(東京化成工業(株)製)を用いた。また、本発明において茶ポリフェノールは茶に含まれるポリフェノールのことであり、タンニンや茶タンニン等の用語と同義に扱う。
<カテキン類、没食子酸、カフェインの分析条件>
カテキン類の定量はHPLC分析法により次の条件で行った。
・標準物質:ガレート型カテキン類(EGCg、ECg、GCg、Cg、三井農林(株))、非ガレート型カテキン類(EGC、EC、GC、C、三井農林(株))、没食子酸(gallic acid)(関東化学(株))、caffeine(関東化学(株))
・装置:AllianceHPLCシステム(ウォーターズ社製)
・カラム:Poroshell 120 EC‐C18(4.6×100mm,粒子径2.7μm、アジレント社製)
・カラム温度:40℃
・移動相:A液0.05%リン酸水/アセトニトリル=1000/25(体積比)、B液メタノール
・グラジエントプログラム:0〜1分(B液0%)、1〜11分(B液0〜33%)、11〜11.25分(B液33〜95%)、11.25〜13.25分(B液95%)、13.25〜13.5分(B液95〜0%)、13.5〜15.5分(B液0%)
・流速:1.5mL/min
・検出:UV 230nm(カテキン類),275nm(没食子酸(gallic acid)、カフェイン(caffeine))
0033
<試験例1>
緑茶葉(静岡産を主とした飲料原料用の秋冬番茶)150gを85℃のイオン交換水3000gに投入し、直後、7.5分、14.5分経過後に30秒間の攪拌を行い、15分間抽出した。これを20メッシュのフィルターで粗ろ過し、生産用ろ紙(No.26、アドバンテック(株))に通液し、2188gの抽出液(pH:5.88、Brix:2.03、茶ポリフェノール:513.4mg%)を得た。得られた抽出液を二分し、一方にタンナーゼ(三菱ケミカルフーズ、500u/g)0.375g(対茶葉0.50%、対茶固形分1.8%)を加えて10℃で8時間の酵素反応を行った。反応液は経時的にサンプリングを行い、沸騰水浴で5分間加熱して酵素を失活させ、得られた反応液の成分含量をHPLC分析にて定量した。
0034
0035
表1の結果より、本試験条件において、反応2時間以上でガレート型カテキン類含有量比率が10%以下に、反応4時間でガレート型カテキン類含有量比率が1%以下になることが確認された。
0036
<試験例2>
試験例1で得られた抽出液(pH:5.88、Brix:2.03、茶ポリフェノール:513.4mg%)および反応時間8時間のタンナーゼ処理液(pH:4.71、Brix:2.05、茶ポリフェノール:515.5mg%)を茶ポリフェノール含量が50〜200mg%の所定濃度となるようにイオン交換水で希釈し、アスコルビン酸を350ppmとなるように添加した。更にpH6.1となるように重曹を加えて調合液を調製した。この調合液を80℃まで昇温後、スチール缶(東洋製罐(株)製TULC)に分注した。ヘッドスペースを窒素ガスで満たし、缶シーマーにて密封後、レトルト殺菌処理(110℃達温後に急冷)を行って参考例1〜10の容器詰緑茶飲料を得た。得られた容器詰め茶飲料について香味をパネラー5名により官能評価して平均処理した。評価基準は次の通りである。
(香味の評価基準)
評価点:5(非常に良い)、4(良い)、3(どちらともいえない)、2(やや悪い)、1(悪い)
評価:5人の平均評価点が、4以上を◎、3以上4未満を○、2以上3未満を△、1以上2未満を×とした。
0037
0038
表2の結果より、茶ポリフェノール濃度が高い場合(参考例3〜10)にはタンナーゼ処理によって苦味、渋味が抑制され、飲みやすくなる傾向はあるものの、嗜好性(美味しさ)は必ずしも上がらないことが確認された。一方で、茶ポリフェノール濃度が低い場合(参考例1、2)にはタンナーゼ処理すると全体的に香味評価が低くなっていた。これら結果より、タンナーゼ処理のみでは緑茶において特に重要な旨味と苦渋味のバランスを改善する効果は認められなかった。
0039
<試験例3>
試験例1と同様に調製した茶抽出液のタンナーゼ処理液(反応時間:8時間)を用い、試験例2と同様にして容器詰緑茶飲料を調製した。調合では、茶ポリフェノール濃度を100mg%とし、それぞれにショ糖(グラニュー糖T.T.G.A:東洋精糖)を所定量添加した。これらについて比較例1(タンナーゼ処理:有り、糖:無添加)を基準として官能による比較評価を行い、パネラー5名による香味の改善効果を以下の評価基準で評価した。
(改善効果の評価基準)
・評価点:5(非常に改善効果がある)、4(改善効果がある)、3(どちらともいえない)、2(やや悪化している)、1(悪化している)
・評価:5人の平均評価点が、4以上を◎、3以上4未満を○、2以上3未満を△、1以上2未満を×とした。
・糖由来の甘味:添加した糖の甘味が感じられるかどうかのコメントを記した。
・総合評価:各評価項目の結果から総合的に改善効果を判断した。各評価項目(美味しさ、バランス、苦味、渋味、旨味)の結果が◎を3点、〇を2点、△を1点、×を0点、糖由来の甘さは、「感じない」を0点、「僅かに感じる」を-1点、「感じる」を-2点、「明らかに感じる」を-3点として、これら6項目の平均点を算出し、この平均点が2以上を◎、1.3以上2.0未満を○、0.6以上1.3未満を△、0.6未満を×と評価した。
0040
0041
表3の結果より、糖/茶ポリフェノールが0.38〜4.0の範囲で明らかなバランス改善効果が認められた。この範囲では添加された糖の甘さは感じられず、苦渋味が心地よく適度に感じられるとともに、緑茶らしい自然な旨味が強調され、緑茶に求められる苦渋味と旨味のバランスに優れた緑茶飲料となっていた。一方で、糖の添加量が600mg以上では糖に由来する甘さが感じられるようになり、不自然な香味となっていた。
0042
<試験例4>
試験例1と同様に調製した茶抽出液のタンナーゼ処理液(反応時間:8時間)を用い、試験例2と同様にして容器詰緑茶飲料を調製した。調合では各所定濃度に茶ポリフェノール量を調整し、糖/茶ポリフェノールの比率が2.0となるようにショ糖(グラニュー糖T.T.G.A:東洋精糖)を添加した。同様にショ糖を添加しないで調合して容器詰緑茶飲料としたものを作製し、それぞれの茶ポリフェノール濃度の糖添加品と無添加品を対にして、官能による比較評価を行い、パネラー5名による香味の改善効果を試験例3の評価基準にて評価した。
0043
0044
表4の結果より、茶ポリフェノール濃度が75〜200mg%の範囲において、糖/茶ポリフェノールが2.0の場合にはいずれにおいても香味の改善効果が認められ、緑茶に求められる苦渋味と旨味のバランスに優れた緑茶飲料となっていた。一方、茶ポリフェノール濃度が低い(50mg%)では改善効果が認められなかった。また、茶ポリフェノールを高濃度に含む600mg%以上のショ糖を添加した試験区では糖に由来する甘さが感じられるようになり、不自然な香味となっていた。
0045
<試験例5>
試験例1と同様に調製した茶抽出液の酵素反応液を用い、試験例2と同様にして容器詰緑茶飲料を調製した。調合では各所定濃度に茶ポリフェノール量を調整し、糖/茶ポリフェノールの比率が2.0となるように各種糖類として、ショ糖(グラニュー糖T.T.G.A:東洋精糖)、グルコース(無水結晶ぶどう糖TDA-C:サンエイ糖化)、フルクトース(無水結晶ぶどう糖 特級:和光純薬)、フラクトオリゴ糖(メイオリゴ-P:明治フードマテリア)、エリスリトール(エリスリトール:三菱ケミカルフーズ)、デキストリン(J-SPD:昭和産業)を添加した。同様に糖類を添加しないで調合して容器詰緑茶飲料としたものを作製し、それぞれの糖添加品と無添加品を対にして、官能による比較評価を行い、パネラー5名による香味の改善効果を確認した(評価基準は試験例3と同様)。
0046
0047
表5より、各種の糖類での効果を確認した結果、本発明効果は茶ポリフェノールとの比率が一定範囲にあれば、単糖、二糖、オリゴ糖においても有効であることが確認された。一方、糖アルコール(比較例8:エリスリトール)と多糖(比較例9:デキストリン)には検討した範囲では香味の改善効果は認められなかった。
0048
<試験例6>
試験例1と同様に各種茶葉(煎茶二番茶、碾茶、ジャスミン茶)の抽出によって得られた抽出液についてタンナーゼによる酵素反応を行い、試験例2と同様にして容器詰緑茶飲料を調製した。調合では茶ポリフェノール量を100mg%に調整し、ショ糖(グラニュー糖T.T.G.A:東洋精糖)を200mg%となるように添加した(糖/茶ポリフェノールの比率=2.0)。同様にショ糖を添加しないで調合して容器詰緑茶飲料としたものを作製し、それぞれの糖添加品と無添加品を対にして、官能による比較評価を行い、パネラー5名による香味の改善効果を確認した(評価基準は試験例3と同様)。
0049
実施例
0050
表6の結果より、本発明の効果は各種の緑茶(煎茶、碾茶、ジャスミン茶)でも同様に得られることが確認された。
0051
本発明は、高濃度に茶ポリフェノールを含有しながらも苦渋味が抑制され、茶本来の甘味、旨味と苦渋味が調和した容器詰緑茶飲料を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。