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技術 両面摩擦攪拌接合方法および両面摩擦攪拌接合装置

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 山岸大起松下宗生松田広志
出願日 2019年2月6日 (2年0ヶ月経過) 出願番号 2019-019902
公開日 2020年8月20日 (6ヶ月経過) 公開番号 2020-124739
状態 未査定
技術分野 圧接、拡散接合
主要キーワード テーパ形 接合開始位置 接合直後 均質状態 接合完了後 重ね接合 構造用鋼板 金属板同士
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

本発明は、少なくとも2枚以上の鋼板接合する両面摩擦撹拌接合方法および両面摩擦撹拌接合装置を提供する。

解決手段

対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の鋼板の未接合部の表面側と裏面側にそれぞれ配置し、未接合部に回転ツールを押圧し、回転ツールを互いに逆方向に回転させながら接合方向に移動することにより、鋼板同士摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合方法であって、回転ツールの肩部およびピン部は、回転軸共有し、かつ鋼板よりも硬い材質であり、回転ツールの一方の接合方向前方に設けられた加熱装置により加熱された鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、加熱する際に、加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)および対向する肩部の隙間G(mm)と鋼板の厚さt(mm)が所定の条件式を満たすように制御し、摩擦撹拌接合を行う。

概要

背景

摩擦撹拌接合では、互いに対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の金属板接合部となる突合せ部もしくは重ね部の表面側と裏面側に対向してそれぞれ配置し、突合せ部もしくは重ね部において一対の回転ツールを回転させながら接合方向に移動し、回転ツールと金属板との摩擦熱により金属板を軟化させつつ、その軟化した部位を回転ツールで撹拌する。これにより、接合部となる領域で塑性流動を生じさせて金属板同士を接合する。

なお、以降の説明では、金属板(例えば、鋼板等)を突合せた(もしくは重ねた)だけで未だ接合されていない状態にある突合せ部分(もしくは重ね部分)を「未接合部」と称し、突合せ部分(もしくは重ね部分)において摩擦撹拌による塑性流動により接合されて一体化された部分を「接合部」と称する。

従来の摩擦撹拌接合法として、例えば特許文献1〜8が挙げられる。特許文献1には、一対の金属材料の両方または片方を回転することにより、金属材料に摩擦熱を生じさせて軟化させながら、その軟化した部位を撹拌して塑性流動を起こすことによって、金属材料を接合する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1の技術は、接合される金属材料を回転させるものであるから、その金属材料の形状や寸法に限界があるという課題がある。

特許文献1の課題を解決するものとして、例えば特許文献2が挙げられる。特許文献2には、金属板よりも実質的に硬い材質からなる回転ツールを金属板の未接合部に挿入し、この回転ツールを回転させながら移動させることにより、回転ツールと金属板との間に生じる熱と塑性流動によって、金属板を長手方向に連続的に接合する技術が開示されている。特許文献2の技術は、金属板を固定した状態で、回転ツールを回転させながら接合方向に移動させることによって金属板を接合する。このため、特許文献2の技術によれば、接合方向において実質的には無限に長い部材であっても、その部材の長手方向に連続的に固相接合できる。また、回転ツールと金属板との摩擦熱による金属の塑性流動を利用した固相接合であるため、接合部を溶融することなく接合することができる。さらに、摩擦熱を利用することにより加熱温度は低いため接合後の変形が少ないこと、また接合部は溶融されないため欠陥が少ないこと、加えて溶加材を必要としないこと等が挙げられる。

そのため、摩擦撹拌接合法は、アルミニウム合金マグネシウム合金に代表される低融点金属板接合法として、例えば航空機船舶鉄道車輌および自動車等の分野で利用が広がっている。その理由としては、これらの低融点金属板は、従来のアーク溶接法では接合部の満足な特性を得ることが難しいが、摩擦撹拌接合法を適用することにより生産性を向上すると共に、品質の高い接合部を得ることができるためである。

摩擦撹拌接合法は、建築物、船舶、重機パイプラインおよび自動車といった構造物素材として主に適用されている構造用鋼板に適用しても、従来のアーク溶接法などの溶融溶接で課題となる凝固割れ水素割れを回避できるとともに、鋼板の組織変化も抑制されるので、継手性能の向上が期待できる。また、回転ツールにより接合界面を撹拌することで清浄面創出して清浄面同士を接触できるので、拡散接合のような事前準備工程は不要であるというメリットも期待できる。このように、構造用鋼板に対する摩擦撹拌接合法の適用は、多くの利点が期待される。しかし、接合時における欠陥発生の問題、および接合速度(すなわち回転ツールの移動速度)の高速度化といった接合施工性の問題を残していたため、低融点金属板に対する摩擦撹拌接合法の適用と比較して構造用鋼板に対する摩擦撹拌接合法の普及が進んでいない。

特許文献2に記載された摩擦撹拌接合法を構造用鋼板に適用することによる欠陥発生の主な要因としては、金属板(構造用鋼板)の厚さ方向に生じる温度および塑性流動の差異が挙げられる。構造用鋼板の接合部の一方の面側に配置された回転ツールを押圧し、回転ツールを回転させながら接合方向に移動して接合する場合、回転ツールの肩部が押圧される面側には、肩部の回転による温度上昇せん断応力負荷による高温で大きな変形の力とが加わることで、接合界面に清浄面を創出する。そして清浄面同士を接触させることで冶金的な接合状態を達成するのに十分な塑性流動が得られる。一方、その反対の面側(回転ツールの肩部が押圧されない面側)は、比較的低温で、負荷されるせん断応力が小さくなるため、冶金的な接合状態を達成するのに十分な塑性流動が得られない状態に陥りやすい。

上記した接合施工性の問題を解決する技術として、例えば特許文献3、特許文献4および特許文献5の摩擦撹拌接合法が挙げられる。これらの文献には、接合施工性の向上を目的として、加熱手段を付加した接合技術が開示されている。

特許文献3には、誘導加熱装置を用いた加熱手段を有し、接合前後に被加工材の加熱を行うことで、接合速度の高速度化や接合部の割れの改善を図った技術が開示されている。

特許文献4には、レーザ装置を用いた加熱手段を有し、接合直前に被加工材を部分的に加熱することで、予熱による加熱領域周辺ミクロ組織変化を抑制しつつ接合速度の高速度化を図った技術が開示されている。

特許文献5には、高周波誘導加熱装置を用いた加熱手段を有し、接合直前に被加工材を部分的に加熱するに際し、被加工材の加熱領域の表面温度や幅等について厳密に制御することで被加工材の加熱不足による塑性流動不良を改善して、十分な強度と共に、接合施工性の向上を図った技術が開示されている。

また例えば、特許文献6、特許文献7および特許文献8には、上下に回転ツールを1本ずつ備え、2枚の金属板の重ね合わせ部の表面側と裏面側に、それぞれ上下に相対向するように配置した回転ツールを用いて、上下より回転ツールを回転させながら押圧し、接合方向へ移動して接合する技術が開示されている。この技術により、接合不良を抑制し、接合強度を高めること、接合強度の信頼性および回転ツール寿命を改善し、回転ツールの経済性を向上させることが開示されている。

概要

本発明は、少なくとも2枚以上の鋼板を接合する両面摩擦撹拌接合方法および両面摩擦撹拌接合装置を提供する。対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の鋼板の未接合部の表面側と裏面側にそれぞれ配置し、未接合部に回転ツールを押圧し、回転ツールを互いに逆方向に回転させながら接合方向に移動することにより、鋼板同士を摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合方法であって、回転ツールの肩部およびピン部は、回転軸共有し、かつ鋼板よりも硬い材質であり、回転ツールの一方の接合方向前方に設けられた加熱装置により加熱された鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、加熱する際に、加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)および対向する肩部の隙間G(mm)と鋼板の厚さt(mm)が所定の条件式を満たすように制御し、摩擦撹拌接合を行う。

目的

特に、回転ツールの接合方向前方に設けた加熱装置による予熱処理プロセス条件精査した両面摩擦攪拌接合方法と、この両面摩擦攪拌接合方法を実現する両面摩擦撹拌接合装置とを提供する

効果

実績

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請求項1

対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の鋼板の未接合部の表面側と裏面側にそれぞれ配置し、前記未接合部に前記回転ツールを押圧し、前記回転ツールを回転駆動装置により互いに逆方向に回転させながら接合方向に移動することにより、鋼板同士摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合方法であって、前記回転ツールの肩部およびピン部は、回転軸共有し、かつ前記鋼板よりも硬い材質であり、前記回転ツールの一方の接合方向前方に設けられた加熱装置により加熱された前記鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、加熱する際に、前記加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)が式(1)〜式(3)を満たし、対向する前記肩部の隙間G(mm)と前記鋼板の厚さt(mm)が式(5)を満たすように制御し、摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする両面摩擦撹拌接合方法。-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲において、40≦TP≦1200・・・(1)-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲において、100≦TP≦1200・・・(2)0.1×D<W≦0.5×Dの範囲において、40≦TP≦1200・・・(3)0.4×t≦G≦t・・・(5)ここで、W(mm)は、接合中央線から接合部の幅方向に離間する位置、D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、G(mm)は、肩部の隙間、t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。

請求項2

対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の鋼板の未接合部の表面側と裏面側にそれぞれ配置し、前記未接合部に前記回転ツールを押圧し、前記回転ツールを回転駆動装置により互いに逆方向に回転させながら接合方向に移動することにより、鋼板同士を摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合方法であって、前記回転ツールの肩部およびピン部は、回転軸を共有し、かつ前記鋼板よりも硬い材質であり、前記回転軸は、前記鋼板に対して鉛直方向から接合方向に傾斜させた傾斜角度αが0°<α≦3°であり、前記回転ツールの一方の接合方向前方に設けられた加熱装置により加熱された前記鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、加熱する際に、前記加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)が式(1)〜式(3)を満たし、対向する前記肩部の隙間G(mm)、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)が、式(6)を満たすように制御し、摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする両面摩擦撹拌接合方法。-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲において、40≦TP≦1200・・・(1)-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲において、100≦TP≦1200・・・(2)0.1×D<W≦0.5×Dの範囲において、40≦TP≦1200・・・(3)(0.4×t)−(0.2×D×sinα)≦G≦t−(0.2×D×sinα)・・・(6)ここで、W(mm)は、接合中央線から接合部の幅方向に離間する位置、D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、G(mm)は、肩部の隙間、t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。

請求項3

前記回転ツールの接合方向後方に設けた冷却装置および/または後方加熱装置を用いて、前記摩擦撹拌接合後、さらに、処理1〜処理4のいずれか1つを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の両面摩擦撹拌接合方法。(処理1)前記接合部を冷却する。(処理2)前記接合部を再加熱する。(処理3)前記接合部を冷却した後、前記接合部を再加熱する。(処理4)前記接合部を再加熱した後、前記接合部を冷却する。

請求項4

前記肩部の直径D(mm)が、前記鋼板の厚さt(mm)に対して式(7)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の両面摩擦撹拌接合方法。4×t≦D≦20×t・・・(7)

請求項5

対向する前記ピン部の隙間g(mm)が、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)に対して式(8)を満たすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の両面摩擦撹拌接合方法。0<g≦[1−0.9×exp{-0.011×(D/t)2}]×t・・・(8)

請求項6

前記加熱装置が高周波誘導加熱装置であり、該加熱装置の使用周波数を20kHz以上360kHz以下とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の両面摩擦攪拌接合方法

請求項7

少なくとも2枚以上の鋼板を摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合装置であって、肩部および該肩部と回転軸を共有するピン部を有し、該肩部および該ピン部を前記鋼板よりも硬い材質で形成した一対の回転ツールと、前記回転ツールを互いに逆方向に回転させる回転駆動装置と、前記回転ツールの一方の接合方向前方に設け、前記鋼板の表面を加熱する加熱装置と、前記加熱装置および前記回転ツールを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記加熱装置により加熱された前記鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、前記加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)が式(1)〜式(3)を満たし、対向する前記肩部の隙間G(mm)と前記鋼板の厚さt(mm)が式(5)を満たすように制御して、少なくとも2枚以上の鋼板の摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする両面摩擦撹拌接合装置。-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲において、40≦TP≦1200・・・(1)-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲において、100≦TP≦1200・・・(2)0.1×D<W≦0.5×Dの範囲において、40≦TP≦1200・・・(3)0.4×t≦G≦t・・・(5)ここで、W(mm)は、接合中央線から接合部の幅方向に離間する位置、D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、G(mm)は、肩部の隙間、t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。

請求項8

前記制御部は、前記回転ツールの回転軸を前記鋼板に対して鉛直方向から接合方向に傾斜させた傾斜角度αが0°<α≦3°を満たすとき、対向する前記肩部の隙間G(mm)、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)が、前記式(5)に変えて、式(6)を満たすように制御することを特徴とする請求項7に記載の両面摩擦撹拌接合装置。(0.4×t)−(0.2×D×sinα)≦G≦t−(0.2×D×sinα)・・・(6)ここで、D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、G(mm)は、肩部の隙間、t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。

請求項9

さらに、前記回転ツールの接合方向後方に冷却装置および後方加熱装置を備え、冷却装置および/または後方加熱装置を用いて処理1〜処理4のいずれか1つを行うことを特徴とする請求項7または8に記載の両面摩擦撹拌接合装置。(処理1)前記接合部を冷却する。(処理2)前記接合部を再加熱する。(処理3)前記接合部を冷却した後、前記接合部を再加熱する。(処理4)前記接合部を再加熱した後、前記接合部を冷却する。

請求項10

前記回転ツールは、前記肩部の直径D(mm)が前記鋼板の厚さt(mm)に対して式(7)を満たすことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の両面摩擦撹拌接合装置。4×t≦D≦20×t・・・(7)

請求項11

前記回転ツールは、対向する前記ピン部の隙間g(mm)が、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)に対して式(8)を満たすことを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の両面摩擦撹拌接合装置。0<g≦[1−0.9×exp{-0.011×(D/t)2}]×t・・・(8)

請求項12

前記加熱装置が高周波誘導加熱装置であり、該加熱装置の使用周波数を20kHz以上360kHz以下とすることを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載の両面摩擦攪拌接合装置

技術分野

0001

本発明は、少なくとも2枚以上の金属板(例えば、鋼板)を接合する両面摩擦撹拌接合方法、およびその両面摩擦撹拌接合を行なうための両面摩擦撹拌接合装置に関する。

背景技術

0002

摩擦撹拌接合では、互いに対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の金属板の接合部となる突合せ部もしくは重ね部の表面側と裏面側に対向してそれぞれ配置し、突合せ部もしくは重ね部において一対の回転ツールを回転させながら接合方向に移動し、回転ツールと金属板との摩擦熱により金属板を軟化させつつ、その軟化した部位を回転ツールで撹拌する。これにより、接合部となる領域で塑性流動を生じさせて金属板同士を接合する。

0003

なお、以降の説明では、金属板(例えば、鋼板等)を突合せた(もしくは重ねた)だけで未だ接合されていない状態にある突合せ部分(もしくは重ね部分)を「未接合部」と称し、突合せ部分(もしくは重ね部分)において摩擦撹拌による塑性流動により接合されて一体化された部分を「接合部」と称する。

0004

従来の摩擦撹拌接合法として、例えば特許文献1〜8が挙げられる。特許文献1には、一対の金属材料の両方または片方を回転することにより、金属材料に摩擦熱を生じさせて軟化させながら、その軟化した部位を撹拌して塑性流動を起こすことによって、金属材料を接合する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1の技術は、接合される金属材料を回転させるものであるから、その金属材料の形状や寸法に限界があるという課題がある。

0005

特許文献1の課題を解決するものとして、例えば特許文献2が挙げられる。特許文献2には、金属板よりも実質的に硬い材質からなる回転ツールを金属板の未接合部に挿入し、この回転ツールを回転させながら移動させることにより、回転ツールと金属板との間に生じる熱と塑性流動によって、金属板を長手方向に連続的に接合する技術が開示されている。特許文献2の技術は、金属板を固定した状態で、回転ツールを回転させながら接合方向に移動させることによって金属板を接合する。このため、特許文献2の技術によれば、接合方向において実質的には無限に長い部材であっても、その部材の長手方向に連続的に固相接合できる。また、回転ツールと金属板との摩擦熱による金属の塑性流動を利用した固相接合であるため、接合部を溶融することなく接合することができる。さらに、摩擦熱を利用することにより加熱温度は低いため接合後の変形が少ないこと、また接合部は溶融されないため欠陥が少ないこと、加えて溶加材を必要としないこと等が挙げられる。

0006

そのため、摩擦撹拌接合法は、アルミニウム合金マグネシウム合金に代表される低融点金属板接合法として、例えば航空機船舶鉄道車輌および自動車等の分野で利用が広がっている。その理由としては、これらの低融点金属板は、従来のアーク溶接法では接合部の満足な特性を得ることが難しいが、摩擦撹拌接合法を適用することにより生産性を向上すると共に、品質の高い接合部を得ることができるためである。

0007

摩擦撹拌接合法は、建築物、船舶、重機パイプラインおよび自動車といった構造物素材として主に適用されている構造用鋼板に適用しても、従来のアーク溶接法などの溶融溶接で課題となる凝固割れ水素割れを回避できるとともに、鋼板の組織変化も抑制されるので、継手性能の向上が期待できる。また、回転ツールにより接合界面を撹拌することで清浄面創出して清浄面同士を接触できるので、拡散接合のような事前準備工程は不要であるというメリットも期待できる。このように、構造用鋼板に対する摩擦撹拌接合法の適用は、多くの利点が期待される。しかし、接合時における欠陥発生の問題、および接合速度(すなわち回転ツールの移動速度)の高速度化といった接合施工性の問題を残していたため、低融点金属板に対する摩擦撹拌接合法の適用と比較して構造用鋼板に対する摩擦撹拌接合法の普及が進んでいない。

0008

特許文献2に記載された摩擦撹拌接合法を構造用鋼板に適用することによる欠陥発生の主な要因としては、金属板(構造用鋼板)の厚さ方向に生じる温度および塑性流動の差異が挙げられる。構造用鋼板の接合部の一方の面側に配置された回転ツールを押圧し、回転ツールを回転させながら接合方向に移動して接合する場合、回転ツールの肩部が押圧される面側には、肩部の回転による温度上昇せん断応力負荷による高温で大きな変形の力とが加わることで、接合界面に清浄面を創出する。そして清浄面同士を接触させることで冶金的な接合状態を達成するのに十分な塑性流動が得られる。一方、その反対の面側(回転ツールの肩部が押圧されない面側)は、比較的低温で、負荷されるせん断応力が小さくなるため、冶金的な接合状態を達成するのに十分な塑性流動が得られない状態に陥りやすい。

0009

上記した接合施工性の問題を解決する技術として、例えば特許文献3、特許文献4および特許文献5の摩擦撹拌接合法が挙げられる。これらの文献には、接合施工性の向上を目的として、加熱手段を付加した接合技術が開示されている。

0010

特許文献3には、誘導加熱装置を用いた加熱手段を有し、接合前後に被加工材の加熱を行うことで、接合速度の高速度化や接合部の割れの改善を図った技術が開示されている。

0011

特許文献4には、レーザ装置を用いた加熱手段を有し、接合直前に被加工材を部分的に加熱することで、予熱による加熱領域周辺ミクロ組織変化を抑制しつつ接合速度の高速度化を図った技術が開示されている。

0012

特許文献5には、高周波誘導加熱装置を用いた加熱手段を有し、接合直前に被加工材を部分的に加熱するに際し、被加工材の加熱領域の表面温度や幅等について厳密に制御することで被加工材の加熱不足による塑性流動不良を改善して、十分な強度と共に、接合施工性の向上を図った技術が開示されている。

0013

また例えば、特許文献6、特許文献7および特許文献8には、上下に回転ツールを1本ずつ備え、2枚の金属板の重ね合わせ部の表面側と裏面側に、それぞれ上下に相対向するように配置した回転ツールを用いて、上下より回転ツールを回転させながら押圧し、接合方向へ移動して接合する技術が開示されている。この技術により、接合不良を抑制し、接合強度を高めること、接合強度の信頼性および回転ツール寿命を改善し、回転ツールの経済性を向上させることが開示されている。

先行技術

0014

特開昭62−183979号公報
特許第2712838号
特許第4235874号
特許第4313714号
国際公開第2015/045420号
特許第3261433号
特許第4838385号
特許第4838388号

発明が解決しようとする課題

0015

しかしながら、特許文献2に記載された技術を構造用鋼板に適用する場合、構造用鋼板は高温での強度が高いため、低入熱でかつ接合速度が高いという接合条件下では、上記のように十分な塑性流動を得られない状態となる傾向が強い。そのため、接合時における欠陥発生を抑制しつつ、接合速度の高速度化を実現することは困難である。

0016

摩擦攪拌接合法は、摩擦熱により被加工材を軟化させつつ回転ツールで攪拌することにより塑性流動を生じさせる。被加工材が構造用鋼板である場合には、回転ツールで被加工材を攪拌する際、回転ツールのピンに大きな負荷が掛かる。この事象は回転ツールの耐久性、寿命に大きな影響を及ぼし、接合施工性を制限する主要な課題になっている。特許文献3〜5に記載の技術は摩擦熱以外の加熱手段を用いており、この課題に対しては有効であると考えられる。しかし、被加工材に対して加熱手段と回転ツールを同一の面側に備えるため、発熱源は被加工材の表面側(一方面側)あるいは裏面側(他方面側)のいずれか一方の面側にのみ存在する。加熱手段や回転ツールを備えていない面側では、発熱源を備えた面側と比較して、より低温となり、表面側と裏面側では被加工材の厚さ方向に対して温度差が生じる。被加工材である構造用鋼板は、より高温となるほど鋼板の強度が下がるので、摩擦攪拌接合法における回転ツールの負荷は高温になるほど下がるものと考えられる。被加工材の厚さ方向に対して形成される温度差を解消することで、回転ツールのピン先端に掛かる負荷を低減できると考えられるが、特許文献3〜5ではこのことに着目されておらず、さらに被加工材の厚さ方向の温度差を解消することについても全く考慮されていない。

0017

摩擦攪拌接合法において、被加工材の厚さ方向の温度差を解消する方法としては、特許文献6〜8に開示された技術が有効と考えられる。しかしながら、特許文献6〜8に開示された技術は、回転ツールの前方に設けた加熱手段により被加工材となる金属板を加熱する予熱処理プロセスを用いて、回転ツールの負荷低減や、材料の塑性流動促進を実現するものではないため、接合施工性、欠陥の抑制、継手強度改善効果は未だ十分ではない。

0018

また、添加元素炭素を0.1質量%以上0.6質量%以下の範囲で含む高炭素鋼の場合、急冷による硬化および脆化や、残留応力の影響によって接合後に割れが生じるおそれがあり、接合部の組織制御による改善効果が十分でない。

0019

本発明は、摩擦撹拌接合法を金属板(鋼板)の接合に適用した場合、あるいは摩擦撹拌接合装置を金属板(鋼板)の接合に使用した場合に懸念される上記の問題、すなわち接合部における金属板の厚さ方向に生じる温度および塑性流動の差異に起因する接合部内の局所的な塑性流動不良、高速度での接合における回転ツールと金属板の間で発生する摩擦熱不足による塑性流動不良、および急冷による硬化や脆化、残留応力の影響による割れの発生に関する問題を解消するものである。特に、回転ツールの接合方向前方に設けた加熱装置による予熱処理プロセス条件精査した両面摩擦攪拌接合方法と、この両面摩擦攪拌接合方法を実現する両面摩擦撹拌接合装置とを提供する。これにより、接合欠陥を有利に解消し、十分な強度(継手強度)を得ると共に、接合施工性の向上、特に接合速度の向上を図ろうとするものである。

0020

以上のとおり、本発明は、上記問題を解決するものであって、少なくとも2枚以上の鋼板を接合する両面摩擦撹拌接合方法および両面摩擦撹拌接合装置の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0021

本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下の知見(a)〜(g)を得た。

0022

(a)両面摩擦撹拌接合では、接合時における欠陥発生を抑制しつつ接合速度の高速度化を達成する上で、冶金的に良好な接合状態を得るのに十分な温度上昇とせん断応力を、金属板(鋼板)の厚さ方向に対して均質的に分布させるために、互いに対向する一対の回転ツールの肩部同士の隙間を管理する必要がある。特に、一対の回転ツールに傾斜角度が付与される場合は、鋼板の厚さに加えて、回転ツールの肩部の直径および傾斜角度を調整することが有効である。

0023

(b)互いに対向する一対の回転ツールは、回転方向を表面側と裏面側で同方向とすると、一方の回転ツールに対する他方の回転ツールの相対速度はゼロである。そのため、回転ツールの肩部同士の隙間において、鋼板の塑性流動が均質状態に近づくほど塑性変形が小さくなり、鋼板の塑性変形による発熱も得られないので、良好な接合状態は達成不可能となる。よって、良好な接合状態を達成するのに十分な温度上昇とせん断応力を鋼板の厚さ方向に対して均質的に得るためには、一対の回転ツールの回転方向を表面側と裏面側で逆方向とする必要がある。

0024

(c)互いに対向する一対の回転ツールは、ピン部の先端間の隙間を管理することによって、鋼板の厚さ方向に対して均質的に温度上昇とせん断応力を得ることが可能となり、接合時における欠陥発生を抑制しつつ接合速度の高速度化を達成することができる。さらに、鋼板の厚さおよび回転ツールの肩部の直径を調整することによって、効果が顕著に発揮される。

0025

(d)互いに対向する一対の回転ツールは、肩部の直径を管理することによって、鋼板の厚さ方向に対して均質的に温度上昇とせん断応力を得ることが可能となり、接合時における欠陥発生を抑制しつつ接合速度の高速度化を達成することができる。特に、鋼板の厚さに加えて肩部の直径を限定することで顕著な効果を得ることができる。

0026

(e)接合開始位置における温度を一定の温度まで上げることで、鋼板の軟化により高速な接合が可能となる。一方で、温度を上げ過ぎた場合には両面摩擦攪拌接合原理である塑性流動が逆に減少するため、欠陥の原因となる。

0027

(f)接合開始位置における温度が一定の温度に達しない場合は、回転ツールによる発熱が主体になり、従来の摩擦撹拌接合法と変わらない結果、継手強度は改善されない。一方、温度が高すぎる場合は、回転ツールの摩擦熱が減少して回転ツールによる温度分布の変化が起こらず、さらには焼き入れされてしまうため、脆化の原因となる。

0028

(g)高C鋼の場合、焼き入れ性が高いために、接合後の急冷による脆化や拘束から生じる残留応力によって割れが発生する可能性がある。従って、これらを回避するために、冷却速度の低下や、焼き戻しによる硬化および脆化の抑制ができるようにすることも考えられる。なお、本発明でいう高C鋼とは、添加元素に炭素を0.1質量%以上0.6質量%以下の範囲で含む鋼板を指す。

0029

本発明は、以下を要旨とするものである。
[1] 対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の鋼板の未接合部の表面側と裏面側にそれぞれ配置し、前記未接合部に前記回転ツールを押圧し、前記回転ツールを回転駆動装置により互いに逆方向に回転させながら接合方向に移動することにより、鋼板同士を摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合方法であって、
前記回転ツールの肩部およびピン部は、回転軸共有し、かつ前記鋼板よりも硬い材質であり、
前記回転ツールの一方の接合方向前方に設けられた加熱装置により加熱された前記鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、加熱する際に、
前記加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)が式(1)〜式(3)を満たし、対向する前記肩部の隙間G(mm)と前記鋼板の厚さt(mm)が式(5)を満たすように制御し、摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする両面摩擦撹拌接合方法。
-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(1)
-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲において、100≦TP≦1200 ・・・(2)
0.1×D<W≦0.5×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(3)
0.4×t≦G≦t ・・・(5)
ここで、W(mm)は、接合中央線から接合部の幅方向に離間する位置、
D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、
G(mm)は、肩部の隙間、
t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。
[2] 対向する一対の回転ツールを少なくとも2枚以上の鋼板の未接合部の表面側と裏面側にそれぞれ配置し、前記未接合部に前記回転ツールを押圧し、前記回転ツールを回転駆動装置により互いに逆方向に回転させながら接合方向に移動することにより、鋼板同士を摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合方法であって、
前記回転ツールの肩部およびピン部は、回転軸を共有し、かつ前記鋼板よりも硬い材質であり、
前記回転軸は、前記鋼板に対して鉛直方向から接合方向に傾斜させた傾斜角度αが0°<α≦3°であり、
前記回転ツールの一方の接合方向前方に設けられた加熱装置により加熱された前記鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、加熱する際に、
前記加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)が式(1)〜式(3)を満たし、対向する前記肩部の隙間G(mm)、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)が、式(6)を満たすように制御し、摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする両面摩擦撹拌接合方法。
-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(1)
-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲において、100≦TP≦1200 ・・・(2)
0.1×D<W≦0.5×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(3)
(0.4×t)−(0.2×D×sinα)≦G≦t−(0.2×D×sinα) ・・・(6)
ここで、W(mm)は、接合中央線から接合部の幅方向に離間する位置、
D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、
G(mm)は、肩部の隙間、
t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。
[3] 前記回転ツールの接合方向後方に設けた冷却装置および/または後方加熱装置を用いて、前記摩擦撹拌接合後、さらに、処理1〜処理4のいずれか1つを行うことを特徴とする[1]または[2]に記載の両面摩擦撹拌接合方法。
(処理1)前記接合部を冷却する。
(処理2)前記接合部を再加熱する。
(処理3)前記接合部を冷却した後、前記接合部を再加熱する。
(処理4)前記接合部を再加熱した後、前記接合部を冷却する。
[4] 前記肩部の直径D(mm)が、前記鋼板の厚さt(mm)に対して式(7)を満たすことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つに記載の両面摩擦撹拌接合方法。
4×t≦D≦20×t ・・・(7)
[5] 対向する前記ピン部の隙間g(mm)が、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)に対して式(8)を満たすことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一つに記載の両面摩擦撹拌接合方法。
0<g≦[1−0.9×exp{-0.011×(D/t)2}]×t ・・・(8)
[6] 前記加熱装置が高周波誘導加熱装置であり、該加熱装置の使用周波数を20kHz以上360kHz以下とすることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一つに記載の両面摩擦攪拌接合方法。
[7] 少なくとも2枚以上の鋼板を摩擦撹拌接合する両面摩擦撹拌接合装置であって、
肩部および該肩部と回転軸を共有するピン部を有し、該肩部および該ピン部を前記鋼板よりも硬い材質で形成した一対の回転ツールと、
前記回転ツールを互いに逆方向に回転させる回転駆動装置と、
前記回転ツールの一方の接合方向前方に設け、前記鋼板の表面を加熱する加熱装置と、
前記加熱装置および前記回転ツールを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記加熱装置により加熱された前記鋼板の表面側の領域を加熱領域としたとき、
前記加熱領域における、鋼板表面温度TP(℃)が式(1)〜式(3)を満たし、対向する前記肩部の隙間G(mm)と前記鋼板の厚さt(mm)が式(5)を満たすように制御して、少なくとも2枚以上の鋼板の摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする両面摩擦撹拌接合装置。
-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(1)
-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲において、100≦TP≦1200 ・・・(2)
0.1×D<W≦0.5×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(3)
0.4×t≦G≦t ・・・(5)
ここで、W(mm)は、接合中央線から接合部の幅方向に離間する位置、
D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、
G(mm)は、肩部の隙間、
t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。
[8] 前記制御部は、前記回転ツールの回転軸を前記鋼板に対して鉛直方向から接合方向に傾斜させた傾斜角度αが0°<α≦3°を満たすとき、
対向する前記肩部の隙間G(mm)、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)が、前記式(5)に変えて、式(6)を満たすように制御することを特徴とする請求項7に記載の両面摩擦撹拌接合装置。
(0.4×t)−(0.2×D×sinα)≦G≦t−(0.2×D×sinα) ・・・(6)
ここで、D(mm)は、回転ツールの肩部の直径、
G(mm)は、肩部の隙間、
t(mm)は、鋼板の厚さ、をそれぞれ示す。
[9] さらに、前記回転ツールの接合方向後方に冷却装置および後方加熱装置を備え、冷却装置および/または後方加熱装置を用いて処理1〜処理4のいずれか1つを行うことを特徴とする[7]または[8]に記載の両面摩擦撹拌接合装置。
(処理1)前記接合部を冷却する。
(処理2)前記接合部を再加熱する。
(処理3)前記接合部を冷却した後、前記接合部を再加熱する。
(処理4)前記接合部を再加熱した後、前記接合部を冷却する。
[10] 前記回転ツールは、前記肩部の直径D(mm)が前記鋼板の厚さt(mm)に対して式(7)を満たすことを特徴とする[7]〜[9]のいずれか一つに記載の両面摩擦撹拌接合装置。
4×t≦D≦20×t ・・・(7)
[11] 前記回転ツールは、対向する前記ピン部の隙間g(mm)が、前記鋼板の厚さt(mm)並びに前記肩部の直径D(mm)に対して式(8)を満たすことを特徴とする[7]〜[10]のいずれか一つに記載の両面摩擦撹拌接合装置。
0<g≦[1−0.9×exp{-0.011×(D/t)2}]×t ・・・(8)
[12] 前記加熱装置が高周波誘導加熱装置であり、該加熱装置の使用周波数を20kHz以上360kHz以下とすることを特徴とする[7]〜[11]のいずれか一つに記載の両面摩擦攪拌接合装置

発明の効果

0030

本発明によれば、両面摩擦撹拌接合を行なうに際し、加熱装置が接合直前に被加工材(鋼板)を部分的に加熱することで被加工材の加熱不足による塑性流動不良を解消することができる。また、対向する一対の回転ツールの肩部の回転による十分な温度上昇とせん断応力による高温で大きな変形力とが鋼板の接合部の両面に加わることで、鋼板の厚さ方向に対して均質的に塑性流動を促進できる。これにより、接合時における欠陥発生を抑制しつつ、十分な強度(継手強度)を得るとともに、接合施工性を向上でき、産業上格段の効果を奏する。

図面の簡単な説明

0031

図1は、本発明の一実施形態の両面摩擦撹拌接合装置における、回転ツールと鋼板を配置した状態の一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の他の実施形態の両面摩擦撹拌接合装置における、回転ツールと鋼板を配置した状態の一例を模式的に示す斜視図である。
図3(A)は図1あるいは図2中の回転ツールと鋼板の一部分を示す平面図であり、図3(B)は図3(A)に示すA−A線の断面図である。
図4は、本発明の実施例で使用した回転ツールの断面を示す断面図である。

0032

以下、各図を参照して、本発明の両面摩擦撹拌接合方法および両面摩擦撹拌接合装置について説明する。なお、本発明はこの実施形態に限定されない。

0033

本発明では、2枚の金属板(鋼板)を突き合わせて、もしくは2枚の金属板(鋼板)を重ね合わせて、その突合せ部もしくは重ね部(以下、未接合部と称する)の表面側と裏面側に一対の回転ツールを配置する。その後、回転ツールの接合方向前方に設けた加熱装置により所定の予熱処理プロセス条件で鋼板を予熱し、未接合部に回転ツールを押圧して挿入し、回転ツールを互いに逆方向に回転させながら接合方向に移動することにより、鋼板同士に両面摩擦撹拌接合を行なう。

0034

なお、本発明は、突合せ部の接合および重ね部の接合のいずれにも適用できる。以降の説明では、突合せ部の両面摩擦撹拌接合を行う場合を一例にして詳細に説明する。

0035

まず、本発明の両面摩擦攪拌接合装置について説明する。

0036

図1には、本発明の両面摩擦撹拌接合装置20の一例を示す。本発明の両面摩擦撹拌接合装置は、後述する本発明の両面摩擦撹拌接合方法を好ましく適用することできる。なお、図1には、2枚の鋼板の突合せ部に対して接合を行っている状態の両面摩擦撹拌接合装置20を示す。

0037

図1に示すように、両面摩擦撹拌接合装置20は、少なくとも、互いに対向する一対の回転ツール1、8と、把持装置(図示せず)と、加熱装置13と、回転駆動装置16と、制御部17を有する。

0038

回転ツール1、8は、鋼板3を介して、互いに対向する一対の回転ツールで構成される。鋼板3の表面側にある回転ツール1は、肩部5およびこの肩部5に隣接して配置されるピン部6を備える。肩部5とピン部6は、回転軸2を共有する。鋼板3の裏面側にある回転ツール8は、肩部9およびこの肩部9に隣接して配置されるピン部10を備える。肩部9とピン部10は、回転軸11を共有する。ここで、肩部5、9とは、回転ツール1、8と回転ツール1、8の先端に設けたピン部6、10によって生じる段差部分をさす。少なくとも肩部5、9とピン部6、10は、鋼板3よりも硬い材質により形成される。材質としては、例えば、炭化タングステン(WC)等が挙げられる。

0039

回転ツール1、8は、必要に応じて、回転軸2、11を鋼板3に対して鉛直方向から所定の角度α(°)(以下、傾斜角度α(°)と称する)だけ傾斜させてもよい。

0040

把持装置は、ステージを接合方向(進行方向)Pと反対に移動させる間、鋼板3を固定することにより、回転ツール1、8の進行に伴う鋼板3の位置の変動を防止する装置である。把持装置としてはこの変動を防止できるものを使用すれば良いため、本発明ではその構成を特に限定しない。

0041

加熱装置13は、回転ツール1、8のいずれか一方の接合方向前方に設ける。加熱装置13は、鋼板3の表面を加熱する装置である。本発明において、所定の温度まで加熱が可能であれば、加熱装置13としては特に限定されない。例えば、高周波誘導加熱を用いる高周波誘導加熱装置、レーザ光熱源に用いる加熱装置などが挙げられる。

0042

なお、加熱装置13は、回転ツール1、8の移動と別個に動作してもよく、あるいは連動して動作してもよい。例えば、回転ツール側が移動する装置の場合には、この装置に加熱装置13が取り付けられ、この装置と同じ速度で移動する。また例えば、継手側が把持装置によりステージに固定されてステージが動く場合には、このステージ以外の箇所に加熱装置が設置される。

0043

回転駆動装置16は、所定の接合条件(例えば、回転ツール1、8の回転方向、肩部などの隙間、および傾斜角度などの回転条件)で、回転ツール1、8を駆動する装置である。回転駆動装置16により、回転ツール1、8は互いに逆方向に回転したり、同じ方向に回転したりできる。例えば、本発明の接合条件として、一方を時計回り、他方を反時計回りの回転方向とし、0〜6m/minの接合速度とし、0〜3000rpmのツール回転速度とすることができる。

0044

制御部17は、両面摩擦撹拌接合装置20に入力された接合条件の情報に基づいて、把持装置、加熱装置13および回転駆動装置16をそれぞれ制御する。例えば、加熱装置13は、制御部17により、接合前に入力された出力となるように制御されて鋼板の加熱を行う。この際、サーモグラフィを用いて鋼板表面の温度を測定することができる。制御部17は、鋼板のステージの移動速度、ステージの移動方向、回転ツールの回転速度、回転ツールの回転方向、回転ツールの上下位置、回転ツールの上下移動のタイミングや移動速度等の制御も行うことができる。さらに、加熱装置13による加熱のタイミングや加熱時間、出力等も制御することができる。

0045

本発明では、制御部17は、後述する予熱処理プロセス条件に基づいて加熱装置13の制御を行う。なお、制御部17による加熱装置13および回転駆動装置16の各制御の詳細については後述する。

0046

本発明の両面摩擦撹拌接合装置20は、接合継手強度をより一層向上させる観点より、上記の構成に加えて、さらに冷却装置14、後方加熱装置15を備えることができる。図2には、冷却装置14および後方加熱装置15も有する両面摩擦撹拌接合装置20の一例を示す。なお、ここでは図1の両面摩擦撹拌接合装置と異なる部分のみ説明する。

0047

図2に示すように、冷却装置14は、接合方向Pへ移動する表面側の回転ツール1に対して、後方に設けることができる。冷却装置14は、鋼板3の接合部4を所定の冷却条件(例えば、冷却速度、冷却する温度範囲などの冷却条件)で冷却し、焼入れにより継手強度を向上させる装置である。例えば、冷却条件として、鋼板表面温度で800〜500℃の温度範囲における平均冷却速度を30〜300℃/Sとすることができる。本発明では、冷却装置14として、例えば、不活性ガス噴出する冷却装置を用いることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガスヘリウムガス等を用いることができる。

0048

後方加熱装置15は、鋼板3の接合部4を所定の加熱条件(例えば、加熱速度、加熱する温度範囲などの加熱条件)で再加熱する装置である。例えば、加熱条件として、再加熱の温度範囲を鋼板表面温度で550〜650℃とすることができる。本発明では、後方加熱装置15として、例えば、高周波誘導加熱装置、レーザを熱源とした加熱装置を用いることが好ましい。

0049

本発明では、冷却装置14および/または後方加熱装置15を用いて、次のような処理(後述する処理1〜処理4)を行ってもよい。例えば、冷却装置14のみを用いて、鋼板3の接合部4を冷却する。また例えば、後方加熱装置15のみを用いて、鋼板3の接合部4を再加熱する。

0050

また例えば、図2に示すように、後方加熱装置15は、接合方向Pへ移動する表面側の回転ツール1に対して後方で、かつ冷却装置14の接合方向後方に備える。このように配置することにより、冷却装置14による冷却で焼入れされて過度に硬化した場合に、後方加熱装置15で接合部4を再加熱して焼き戻しすることにより、接合部4の硬度を抑える。その結果、強度と靭性を併せ持つ継手特性を得ることができる。

0051

また例えば、図示は省略するが、後方加熱装置15は、接合方向Pへ移動する表面側の回転ツール1に対して後方で、かつ冷却装置14の接合方向前方(すなわち、回転ツール1と冷却装置14の間)に備える。このように配置することにより、接合直後に、鋼板3の接合部4に対して後方加熱装置15で加熱することにより冷却速度の制御を行い、その後、冷却装置14により急冷を行うことにより、加熱領域の周辺でのミクロ組織を複合化できる。その結果、強度と延性を併せ持つ継手特性を得ることができる。

0052

上記と同様、制御部17は、両面摩擦撹拌接合装置20に入力された接合条件の情報に基づいて、冷却装置14および後方加熱装置15に対しても各制御を行う。

0053

次に、図1図3を参照して、本発明の両面摩擦撹拌接合方法について説明する。なお、ここでは上記した構成を有する両面摩擦撹拌接合装置20に本発明の接合方法を適用する場合を説明する。図1および図2には、両面摩擦撹拌接合装置20により、鋼板3の突合せ部の両面摩擦撹拌接合を行っている状態の一例を示す。図3(A)には、図1および図2に示す鋼板3の表面側の回転ツール1の周辺部分を上面視した平面図を示し、図3(B)には、図3(A)のA−A線断面図を示す。

0054

本発明の両面摩擦撹拌接合方法では、図1および図2に示すように、まず、突き合わされた2枚の鋼板3の表面側と裏面側に一対の回転ツール1、8を互いに対向して配置し、回転ツールの接合方向Pの前方に加熱装置13を配置する。図1および図2に示す例では、加熱装置13として例えば高周波誘導加熱装置を用いる。

0055

次に、鋼板3の表面側と裏面側の両方から未接合部12に回転ツール1、8を挿入し、さらに回転駆動装置16により所定の回転条件で回転ツール1、8を互いに逆方向に回転させながら、接合方向Pに移動させる。このとき、回転ツール1、8の接合方向前方に配置した加熱装置13により所定の予熱処理プロセス条件で鋼板3を加熱しておく。加熱装置13および回転駆動手段16は、制御部17により、両面摩擦撹拌接合装置20に入力された接合条件の情報に基づいてそれぞれ制御される。予熱処理プロセス条件などの制御内容の詳細は、後述する。

0056

なお、図1および図2に示した矢印Pは回転ツール1、8および加熱装置13の進行方向(すなわち接合方向)を示し、矢印Qは鋼板3の表面側に配置される回転ツール1の回転方向を示し、矢印Rは鋼板3の裏面側に配置される回転ツール8の回転方向を示す。

0057

加熱装置13により鋼板3を加熱することで鋼板3を軟化させ、さらに対向する一対の回転ツール1、8を互いに逆方向に回転させて摩擦熱を発生させることにより、軟化した部位を一対の回転ツール1、8で撹拌する。これにより、塑性流動を生じさせて、2枚の鋼板3を接合する。こうして得られる接合部4は、回転ツール1、8の進行方向に沿って線状に形成される。ここでは、図1に示した未接合部12および接合部4の幅方向に対して中央の位置に延伸する直線(図1および図2に示した一点鎖線)を接合中央線7と称する。接合中央線7は、矢印Pで示した接合方向に沿って進行する回転ツール1、8の軌跡に一致する(図3(A)を参照)。

0058

なお、2枚の鋼板3は、回転ツール1、8が接合中央線7に沿って進行する際、いずれも把持装置(図示せず)により把持されて、所定の位置に固定される。

0059

次に、本発明の両面摩擦撹拌接合方法における回転ツール1、8について説明する。

0060

上述のように、本発明では、制御部17は入力された接合条件の回転条件に基づいて回転駆動装置16を制御する。回転駆動装置16により、回転ツール1、8を互いに逆方向に回転させる。図1および図2に示す例では、鋼板3の裏面側にある回転ツール8は、鋼板3の表面側にある回転ツール1の回転方向(矢印Qに示す回転方向)に対して逆方向(矢印Rに示す回転方向)に回転させる。すなわち、図3(A)に示すように、鋼板3の表面側から見た平面図において、回転ツール1を時計方向に回転させる場合には、図示されない鋼板3の裏面側の回転ツール8は反時計方向に回転させる。図示を省略するが、回転ツール1を反時計方向に回転させる場合には、回転ツール8は時計方向に回転させる。

0061

回転ツール1、8は、図3(B)に示すように、鋼板3に対して表面側の回転ツール1のピン部6の先端と、裏面側の回転ツール8のピン部10の先端とを当接させず、ピン部6、10の先端間に隙間g(mm)を設ける。これにより、回転ツール1、8の肩部5、9の間に隙間G(mm)が生じる。ここでは、肩部とは回転ツール1、8の直径D(mm)とピン部6、10の直径a(mm)との差によって生じる段差5、9を指す。

0062

このようにして、回転ツール1のピン部6先端と回転ツール8のピン部10先端に隙間gを設け、回転ツール1の肩部5と回転ツール8の肩部9に隙間Gを設け、かつ回転ツール1と回転ツール8を逆方向に回転させる。これにより、十分な温度上昇とせん断応力が鋼板3の両面側から加えられ、接合部4における鋼板3の厚さ方向に生じる温度および塑性流動の差異を低減し、均質的な接合状態を達成することができる。接合部4内に局所的に発生する塑性流動不良を解消することで接合欠陥を有利に解消できるため、十分な強度を得ることができる。これと共に、接合施工性の向上、特に接合速度の向上を図ることが可能となる。

0063

互いに対向する回転ツール1、8の回転方向Q、Rを、表面側と裏面側で逆方向とすることで、回転ツール1、8の回転によって金属板3に加わる回転トルク打ち消し合うことができる。その結果、鋼板の一方面側からのみ回転ツールを押圧して接合する従来の摩擦撹拌接合法と比較して、鋼板3を拘束する治具の構造を簡略化することが可能である。

0064

しかし、互いに対向する回転ツール1、8の回転方向を表面側と裏面側で同方向とすると、表面側の回転ツール1に対する裏面側の回転ツール8の相対速度はゼロである。その結果、回転ツール1、8の肩部5、9間では鋼板3の塑性流動が均質状態に近づくほど塑性変形は小さくなり、鋼板3の塑性変形による発熱も得られなくなるため、良好な接合状態は達成不可能となる。

0065

よって、良好な接合状態を達成するのに十分な温度上昇とせん断応力を被加工材の厚さ方向に対して均質的に得るためには、互いに対向する回転ツール1、8の回転方向Q、Rを鋼板3の表面側と裏面側で逆方向とする。

0066

本発明では、回転ツール1、8の配置を以下のように調整することが、接合欠陥発生の抑制および接合速度の高速度化を図る上で有効である。また、回転ツールの寿命の向上にも有効である。

0067

まず、鋼板3の表面側および裏面側の回転ツール1、8の傾斜角度α(°)について説明する。

0068

回転ツール1、8の回転軸2、11は、鋼板3に対して鉛直方向を基準として角度(傾斜角度)α(°)をもって傾斜させ、ピン部6、10の先端を接合方向Pに対して先行させる。これにより、回転ツール1、8に対する負荷を、回転軸2、11方向に圧縮される分力として回転ツール1、8で受けることができる。そのため、一対の回転ツール1、8は、鋼板3よりも硬い材質により形成される必要がある。例えばセラミックなどの靭性に乏しい材料を回転ツールに使用する場合、ピン部6、10に対して曲げ方向の力が負荷されると、局部に応力が集中して破壊に至る。したがって、一対の回転ツール1、8の回転軸2、11を角度αで傾けることで、回転ツール1、8に加わる負荷を回転軸2、11方向に圧縮される分力として受け、ピン部6、10に対する曲げ方向の力を低減する。これにより、回転ツール1、8の破損を回避することができる。

0069

傾斜角度αは0°を超えると上述の効果が得られる。しかし、傾斜角度αは3°を超えると接合部の表裏面が凹形となり接合継手強度に悪影響を及ぼすため、3°を上限とする。すなわち、傾斜角度は0°<α≦3°であることが好ましい。より好ましくは0.5°≦α≦2.0°である。

0070

なお、傾斜角度αは0°であっても、本発明の接合状態を達成することは可能である。

0071

続いて、本発明において重要な、対向する回転ツール1、8の肩部5、9間の隙間G(mm)について説明する。

0072

本発明では、接合時における欠陥発生を抑制しつつ接合速度の高速度化を達成する上で、一対の回転ツール1、8の肩部5、9間の隙間Gを厳密に管理する必要がある。これにより、接合状態を達成するのに十分な温度上昇とせん断応力を鋼板3の厚さ方向に対して均質的に得ることができる。

0073

鋼板3の表面側および裏面側にある回転ツール1、8の回転軸2、11の傾斜角度αが0°の場合には、突合せ接合においては、肩部5、9間の隙間G(mm)が鋼板3の厚さt(mm)に対して式(5)の範囲を満たすように調整する。なお、重ね接合においては、重ね合せた鋼板3の総厚さをt(mm)とし、肩部5、9間の隙間G(mm)が鋼板3の総厚さt(mm)に対して式(5)の範囲を満たすように調整する。
0.4×t≦G≦t ・・・(5)
その結果、互いに対向する回転ツール1、8の肩部5、9が鋼板3の表面側および裏面側に十分な荷重で押圧されるため、回転ツール1、8の肩部5、9による摩擦せん断方向への塑性変形により、発熱と塑性流動が促進される。これより、鋼板3の厚さ方向に対して均質的に塑性流動が促進され、良好な接合状態を達成することができる。

0074

肩部5、9間の隙間Gは、鋼板3の厚さt(なお、重ね接合の場合は、鋼板3の総厚さtとする)を超えると、回転ツール1、8の肩部5、9が鋼板3の表面側および裏面側に十分な荷重で押圧することができず、上記の効果が得られない。一方、肩部5、9間の隙間Gは、0.4×t未満となると、接合部4の表面と裏面が凹形となり接合継手強度に悪影響を及ぼす。したがって、傾斜角度がα=0°の場合には、肩部間の隙間Gを0.4×t以上t以下とする必要がある。好ましくは、0.5×t≦G≦tとする。

0075

回転ツール1、8の回転軸2、11の傾斜角度αが0°<α≦3°の場合には、回転ツール1、8の肩部5、9を鋼板3の表面側と裏面側において広い範囲で接触させることが重要となる。このため、傾斜角度αが0°<α≦3°の場合には、回転ツール1、8の肩部5、9間の隙間Gを小さく設定する必要がある。したがって、回転ツール1、8に傾斜角度αを0°<α≦3°の範囲で付与する場合には、突合せ接合においては、肩部5、9間の隙間G(mm)が鋼板3の厚さt(mm)に加え、回転ツール1、8の肩部5、9の直径D(mm)に対して式(6)の範囲を満たすように調整する。なお、重ね接合においては、重ね合せた鋼板3の総厚さをt(mm)とし、肩部5、9間の隙間G(mm)が、鋼板3の総厚さt(mm)に加えて肩部5、9の直径D(mm)に対して式(6)の範囲を満たすように調整する。
(0.4×t)−(0.2×D×sinα)≦G≦t−(0.2×D×sinα) ・・・(6)
肩部5、9間の隙間Gが、((0.4×t)−(0.2×D×sinα))未満では、接合部4の表面と裏面が凹形となり接合継手強度に悪影響を及ぼす。一方、肩部5、9間の隙間Gが、(t−(0.2×D×sinα))超えでは、回転ツール1、8の肩部5、9が鋼板3の表面側および裏面側に十分な荷重で押圧することができず、上記の効果が得られない。したがって、傾斜角度が0°<α≦3°の場合には、肩部間の隙間Gを((0.4×t)−(0.2×D×sinα))以上(t−(0.2×D×sinα))以下とする必要がある。好ましくは、(0.5×t)−(0.2×D×sinα)≦G≦t−(0.2×D×sinα)とする。
なお、重ね接合の場合も同様の効果は得られる。重ね接合の場合には、式(6)中のtは鋼板3の総厚さt(mm)を示す。

0076

本発明の回転ツールは、上記した条件に加えて、さらに肩部の直径D、ピン部の隙間gを以下に説明するように調整することができる。

0077

まず、回転ツール1、8の肩部5、9の直径D(mm)の好ましい条件について説明する。

0078

本発明では、既に説明した隙間G、gの条件に加えて、回転ツール1、8の肩部5、9の直径Dを管理することで、上記した効果、すなわち鋼板3の厚さ方向に対して均質的に温度上昇とせん断応力を得て、接合時における欠陥発生を抑制しつつ接合速度の高速度化を達成する効果を、より有効に得ることができる。

0079

特に、肩部5、9の直径D(mm)は、金属板3の厚さt(mm)に対して式(7)の範囲を満たすように調整することが好ましい。
4×t≦D≦20×t ・・・(7)
なお、式(7)中の鋼板の厚さtは、突合せ接合においては鋼板3の厚さt(mm)を示し、重ね接合においては重ね合せた鋼板3の総厚さt(mm)を示す。

0080

肩部5、9の直径D(mm)が4×t未満では、鋼板3の厚さ方向に対して均質的な塑性流動が有効に得られない恐れがある。一方、肩部5、9の直径D(mm)が20×tを超えると、不要に塑性流動を生じる領域を広げるのみとなる恐れがある。そのため、装置に対して過大な負荷がかかるため好ましくない。より好ましくは、肩部5、9の直径Dは、5×t≦D≦18×tとする。

0081

次に、回転ツール1、8のピン部6、10の先端間の隙間g(mm)の好ましい条件について説明する。

0082

本発明では、上述の条件に加えて、ピン部6、10の先端間の隙間gを管理することで
上記した効果、すなわち鋼板3の厚さ方向に対して均質的に温度上昇とせん断応力を得て、接合時における欠陥発生を抑制しつつ接合速度の高速度化を達成する効果を、より有効に得ることができる。

0083

特に、回転ツール1、8の肩部5、9の直径D(mm)と鋼板3の厚さt(mm)の比(すなわち、D/t)が小さい場合は、鋼板3の厚さ方向に対して均質的に塑性流動が起こり難くなる。このため、ピン部6、10の先端間の隙間gを式(8)の範囲を満たすように調整することが好ましい。
0<g≦[1−0.9×exp{-0.011×(D/t)2}]×t ・・・(8)
なお、式(8)中の鋼板の厚さtは、突合せ接合の場合には鋼板3の厚さを示し、重ね接合の場合には鋼板3の総板厚さを示す。

0084

ピン部6、10の先端間の隙間gが、0以下では、互いに対向する回転ツール1、8のピン部6、10の先端が接触し、損傷するので望ましくない。一方、ピン部6、10の先端間の隙間gが[1−0.9×exp{-0.011×(D/t)2}]×tを超えると、鋼板3の厚さ方向に対して均質的な塑性流動が有効に得られない恐れがある。より好ましくは、[0.01−0.009×exp{-0.011×(D/t)2}]×t≦g≦[1−0.9×exp{-0.011×(D/t)2}]×tとする。

0085

なお、回転ツール1、8のピン部6、10の長さbは、傾斜角度α、肩部間の隙間G、ピン部先端の隙間g、肩部の直径D、厚さtに応じて適宜決定すればよい。

0086

次に、本発明の両面摩擦攪拌接合方法における予熱処理プロセスについて説明する。本発明では、回転ツール1、8のいずれか一方の接合方向Pの前方に設けた加熱装置13により鋼板3を加熱する予熱処理プロセスを有することが、重要である。図1および図2に示す例では、鋼板3の表面側にある回転ツール1の前方に加熱装置13を設ける。なお、加熱装置13は鋼板の裏面側にある回転ツール8の前方に設けてもよい。この場合にも同様の効果が得られる。

0087

本発明の予熱処理プロセスにおける加熱条件について、図3を参照しながら説明する。図3(A)は、予熱処理プロセスによる加熱領域の一例を示す図であり、図3(B)は、被加工材(鋼板3)を一対の回転ツール1、8により両面摩擦攪拌する領域の一例を示す図である。なお、図3(A)中、接合中央線7は、鋼板3の表面側の回転ツール1の回転軸2を通り接合方向Pに平行な直線として示す。また、H、I、Jで示す領域は加熱領域であり、加熱領域とは、加熱装置13により加熱された鋼板上の領域をいう。また、図3(A)および図3(B)中、aはピン部6、10の最大直径(mm)を、Dは肩部5、9の直径(mm)を、tは鋼板3の厚さ(mm)を、Gは肩部5、9間の隙間(mm)を、gはピン6、10の先端の隙間(mm)を、bは回転ツール1、8のピン部6、10の長さ(mm)を、それぞれ示す。

0088

回転ツール1、8の回転軸2、11の傾斜角度αが0°<α≦3°の場合には、上記した対向する肩部の隙間G(mm)、鋼板の厚さt(mm)並びに肩部の直径D(mm)が式(6)を満たすことに加えて、一方、回転ツール1、8の回転軸2、11の傾斜角度α=0°の場合には、上記した対向する肩部の隙間G(mm)、鋼板の厚さt(mm)並びに肩部の直径D(mm)が式(5)を満たすことに加えて、次の条件を満たすように制御する。すなわち、本発明の予熱処理プロセスでは、加熱領域における鋼板表面温度をTP(℃)とするとき、回転ツール1と接合方向前方で接触する位置の鋼板表面温度TPが式(1)〜式(3)を満たすように制御する。
-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(1)
-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲において、100≦TP≦1200 ・・・(2)
0.1×D<W≦0.5×Dの範囲において、40≦TP≦1200 ・・・(3)
ここで、W(mm)は、接合中央線から接合部の幅方向に離間する位置を示す。

0089

なお、上述の0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲は、図3(A)に示す加熱領域Hであり、-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲は、図3(A)に示す加熱領域Iであり、0.1×D<W≦0.5×Dの範囲は、図3(A)に示す加熱領域Jに対応する。すなわち、図3(A)に示す例では、接合中央線7から紙面上上側に離れるほうをマイナス領域とし、接合中央線7から紙面上下側に離れるほうをプラス領域とする。

0090

-0.5×D≦W<-0.1×Dの範囲(加熱領域H)における鋼板の表面温度TP:40≦TP≦1200・・・(1)
-0.1×D≦W≦0.1×Dの範囲(加熱領域I)における鋼板の表面温度TP:100≦TP≦1200・・・(2)
0.1×D<W≦0.5×Dの範囲(加熱領域J)における鋼板の表面温度TP:40≦TP≦1200・・・(3)
上述のように、温度の上昇と共に鋼板3の強度は低下する傾向がある。そのため、加熱領域H、I、Jにおける鋼板3の表面温度TPが上昇し過ぎないように調節することが必要である。具体的には、鋼板3の厚さ方向へ加熱領域を確保するには、加熱領域の鋼板表面に温度勾配(表面における温度のばらつき)が存在していても本発明の効果は得られるが、その場合には、加熱領域において鋼板3の最も高い表面温度は1200℃以下とする。これにより、接合部4の温度が過度に上昇することに起因して、一対の回転ツール1、8が損傷することや、加熱領域の周辺でのミクロ組織が変質することを抑えることができる。
一方、加熱領域において鋼板3の最も低い表面温度は40℃以上とする。これにより、塑性流動を良好に確保できる。

0091

両面摩擦撹拌接合(両面FSW)では、回転ツールのショルダー被接合材との間で発生する摩擦熱により材料を軟化し、回転ツールのプローブにより発生する材料の塑性流動を得ることが重要である。本発明において、より有利な効果を得るためには、加熱領域H、I、Jの各領域における鋼板表面温度TPが(1)式〜(3)式の全てを満足するように制御する。(1)式の範囲を外れる場合、ショルダー周囲の材料の軟化を十分に補うことができず、予熱による塑性流動促進効果が得られない。(2)式の範囲を外れる場合、最も塑性流動が発生するツール周囲の材料の軟化を十分に補うことができず、予熱による塑性流動促進効果が得られない。(3)式の範囲を外れる場合、ショルダー周囲の材料の軟化を十分に補うことができず、予熱による塑性流動促進効果が得られない。

0092

上述のように、本発明では加熱装置13を特に限定しない。例えば、加熱装置13として高周波誘導加熱を用いる場合には、加熱効率および加熱範囲を考慮すると、使用周波数を20kHz以上360kHz以下とすることが好ましい。この周波数の加熱装置を用いることによって、上記した温度範囲への制御を容易に行うことができる。

0093

本発明では、回転ツール1、8と加熱装置13の位置関係、および接合前における加熱装置13の加熱範囲の温度管理が重要である。そのため、加熱装置が回転ツールの進行方向(溶接方向)に対して前方に配置されていれば、加熱装置と回転ツールの間の距離、加熱装置の加熱範囲は問わない。しかし、加熱装置と回転ツールの距離が小さくなりすぎると、回転ツールが加熱装置による熱で損傷する恐れがある。そのため、図1に示す例では、鋼板3の表面側にある回転ツール1とその進行方向で前方に配置した加熱装置13との位置関係は、加熱効率および鋼板への影響を考慮して決定することが好ましい。例えば、加熱装置13の配置位置は回転ツール1の前方1mm以上100mmの範囲内に配置することが好ましい。なお、この例では加熱装置13として、使用周波数が50〜110kHz以下の高周波誘導加熱装置を用いるものとする。

0094

上記以外の接合条件については、常法に従えばよい。例えば、回転ツール1、8の回転数を100〜5000回/分の範囲とし、接合速度を1000mm/分以上に高速化するように、接合条件を調整することができる。

0095

なお、本発明の両面摩擦撹拌接合方法は、接合継手強度をより一層向上させる観点より、さらに冷却装置14による冷却処理、後方加熱装置15による再加熱処理を備えることができる。

0096

通常、接合完了後、接合部4は自然放冷状態となる。このため、被加工材である鋼板3の焼入れ性が低い場合は、接合継手の強度が十分に得られない恐れがある。これを回避するため、本発明では、図2に示すように、接合方向Pへ移動する回転ツール1の接合方向後方に設けた冷却装置14を用いる。冷却装置14で鋼板3の接合部4を冷却する際の冷却速度を適切に制御することにより、焼入れによる強度向上を図ることができる。

0097

一方、被加工材である鋼板3の焼入れ性が高い場合は、過度に硬化する可能性があり、接合継手の靭性を低下させる恐れがある。これを回避するため、本発明では、図2に示すように、回転ツール1に近接する接合方向Pの後方部分を加熱する後方加熱装置15を用いる。後方加熱装置15で鋼板3の接合部4を再加熱して冷却速度を適切に制御することにより、靱性低下を防止することができる。

0098

本発明では、冷却装置14および/または後方加熱装置15により、次に示す処理1〜処理4のいずれか1つを行うことで、以下の効果を得ることができる。

0099

(処理1)接合部を冷却する
例えば、図2に示す例では、回転ツール1の接合方向Pの後方に設けた冷却装置14により、接合部4を冷却する。この場合には、例えば、800〜500℃の温度範囲における平均冷却速度を30〜300℃/sとすることが好ましい。平均冷却速度が30℃/s未満では、焼き入れによる強度向上が見込めず、接合継手の強度が十分に得られない恐れがある。一方、平均冷却速度が300℃/s超えでは、硬質組織が形成し靱性が低下してしまう恐れがある。

0100

(処理2)接合部を再加熱する
例えば、図2に示す例では、回転ツール1の接合方向Pの後方に設けた後方加熱装置15により、接合部4を再加熱する。この場合には、例えば、後方加熱装置15の再加熱を制御することにより、800〜500℃の温度範囲における平均冷却速度を10〜30℃/sとすることが好ましい。800〜500℃を外れた温度範囲では冷却速度の適切な制御による組織の改善が十分に得られない。平均冷却速度が10℃/s未満では、接合継手の強度の向上が得られない恐れがある。一方、平均冷却速度が30℃/s超えでは、硬質な組織が形成し、靱性が低下してしまう恐れがある。

0101

(処理3)接合部を冷却した後、該接合部を再加熱する
例えば、図2に示す例では、回転ツール1の接合方向Pの後方に設けた冷却装置14により接合部4を冷却した後、該冷却装置14の接合方向Pの後方に設けた後方加熱装置15により接合部4を再加熱する。これにより、接合部4が冷却装置14による冷却で焼入れされて過度に硬化しても、後方加熱装置15で焼き戻しすることにより高度を抑え、強度と靭性を併せ持つ継手特性を得ることができる。この場合には、例えば、冷却装置14は800〜500℃の温度範囲における平均冷却速度を30〜300℃/sとすることが好ましく、後方加熱装置15は再加熱の温度範囲を550〜650℃とすることが好ましい。

0102

(処理4)接合部を再加熱した後、該接合部を冷却する
例えば、図示はしないが、回転ツール1の接合方向Pの後方で、かつ冷却装置14の接合方向Pの前方(すなわち、回転ツール1と冷却装置14の間)に設けた後方加熱装置15により接合部4を再加熱した後、該冷却装置14により接合部4を冷却する。このように、接合直後に、接合部4を後方加熱装置15で再加熱して冷却速度を適切に制御し、その後、冷却装置14で冷却を行うことで、ミクロ組織を複合化でき、強度と延性を併せ持つ継手特性を得ることができる。この場合には、例えば、後方加熱装置15の再加熱により800〜600℃の温度範囲における平均冷却速度を0〜30℃/sとし、その後、冷却装置14は600〜400℃の温度範囲における平均冷却速度を30〜300℃/sとすることが好ましい。

0103

なお、上記以外の接合条件については、常法に従えばよい。例えば、回転ツール1、8の回転数を100〜5000rpmの範囲とし、接合速度を1000mm/min以上に高速化するように、接合条件を調整することができる。

0104

また、本発明が対象とする金属板3は、一般的な構造用鋼炭素鋼板、例えばJIS G 3106やJIS G 4051に相当する鋼板等に好適に適用することができる。また、引張強さが800MPa以上の高強度構造用鋼板にも有利に適用できる。なお、この場合であっても、接合部において、鋼板の引張強さの85%以上の強度が得られる。

0105

次に、図4に回転ツール1の断面の一例を示す。なお、本発明では回転ツールのピン部の形状は特に限定されない。

0106

鋼板3の表面側の回転ツール1のピン部6の最大径は、例えば2〜50mmである。本発明におけるピン部6の最大径とは、1つのピン部を軸線方向と垂直な断面で切断した際の切断面で得られる直径のうち、最大のものを指す。

0107

例えば、図4に示す例では、表面側の回転ツール1のピン部6の直径が軸線方向に沿って変わらないため、ピン部の上面の直径a(図4の例では5.5mm)をピン部の最大径としてよい。なお、図示はしないが、回転ツール1のピン部6がテーパ形状等を有し、軸線方向の位置によってピン径が異なる場合には、最も大きい直径をピン部の最大径としてよい。

0108

以上説明したように、本発明によれば、両面摩擦撹拌接合を行なうに際し、加熱装置が接合直前に被加工材(鋼板)を部分的に加熱することで被加工材の加熱不足による塑性流動不良を解消することができる。また、互いに対向する一対の回転ツールの肩部が鋼板の接合部の表面と裏面に押圧され、肩部の回転による十分な温度上昇とせん断応力による高温で大きな変形の力とが鋼板の接合部の両面に加わることで、鋼板の厚さ方向に対して均質的に塑性流動が促進され、良好な接合状態を達成することができる。その結果、接合時における欠陥発生を抑制しつつ接合速度の高速度化を達成するため、十分な強度(継手強度)を得る。また、接合施工性を向上できる。

0109

表1に示す厚さ、化学組成、および引張強さの鋼板を用いて、突合せ部あるいは重ね部に対して両面摩擦撹拌接合を行ない、継手(接合継手)を得た。本実施例では、図1あるいは図2に示す両面摩擦撹拌接合装置20を用いて、表2−1、表2−2および表3に示す両面摩擦撹拌接合の接合条件で、接合を行なった。表3には、加熱装置として高周波誘導加熱装置を用いて加熱した鋼板表面の最高温度を示す。温度はサーモグラフィで計測した。

0110

継手の形式が「突合せ」の場合には、継手突合せ面は、角度をつけないいわゆるI型開先フライス加工程度の表面状態とし、鋼板突合せ部の表面側および裏面側の両方から回転ツールを押圧して接合を行なった。一方、継手の形式が「重ね」の場合には、鋼板の表面を重ね合せ面とし、鋼板重ね合せ部の表面側および裏面側の両方から回転ツールを押圧して接合を行なった。

0111

回転ツールの回転方向は、鋼板の表面側および裏面側に配置される対向する一対の回転ツールが、鋼板の表面側から見て、表面側の回転ツールを時計回り、裏面側の回転ツールを反時計回りとする回転条件、あるいは表面側および裏面側の回転ツールをともに時計回りとする回転条件とした。なお、ここでは、図4の断面形状を有する1種類の回転ツールを用い、回転ツールの素材には炭化タングステン(WC)を用いた。

0112

0113

0114

0115

0116

得られた接合継手を用いて、表面欠陥の有無、継手断面観察での内部欠陥の有無、引張試験、施工性の評価を行った。表4には各結果をそれぞれ示す。なお、本発明の実施例では、表面欠陥および内部欠陥の評価、施工性の評価は、以下に示す評価方法で行った。引張試験は、得られた接合継手よりJIS Z 3121で規定する5号試験片の寸法の引張試験片採取し、引張試験を行った際の引張強さ(MPa)をそれぞれ示す。

0117

<表面欠陥の評価>
表面欠陥の評価は、接合した継手の外観観察により行った。観察には、得られた接合継手の接合速度が表2−1および表2−2の「接合速度」に記載の値となった部位を用いた。表面欠陥の有無は、塑性流動不足により溝状の未接合状態、もしくは過度な塑性流動によるバリの発生が見られるか否かを目視で判定する。評価は、以下に示す基準で行った。なお、ここでは、表面欠陥の有無は得られた継手の外観を目視で観察し、一部でも未接合部があれば有りとしている。
・無し:上記に記載の表面欠陥がいずれも見られない。
・有り:上記に記載の表面欠陥のいずれかが見られた。

0118

<内部欠陥の評価>
内部欠陥の評価は、接合した継手の断面観察により行った。観察には、得られた接合継手の接合速度が表2−1および表2−2の「接合速度」に記載の値となった部位において、断面をそれぞれ切断したものを試験片として用いた。発明例1〜18、比較例10〜14、比較例18、比較例22、比較例24は、接合開始側の端部から接合方向(進行方向)へ220mm離れた位置、および接合終了側の端部から接合方向(進行方向)の反対方向へ60mm離れた位置の断面を切断し、それぞれ試験片とした。また、比較例1〜9、比較例15〜17、比較例19〜21、比較例23は、接合開始側の端部から接合方向(進行方向)へ65mm離れた位置、および接合終了側の端部から接合方向(進行方向)の反対方向へ70mm離れた位置の断面を切断し、それぞれ試験片とした。内部欠陥の有無は、塑性流動不足により接合部内部に形成した未接合状態が見られるか否かを、光学顕微鏡倍率:5倍)を用い、以下に示す基準に従い評価した。
・無し:上記に記載の2箇所のいずれの位置においても、トンネル状に形成した未接合状態が見られない。
・良好:上記に記載の2箇所の位置において、接合部内部に形成した未接合状態が1箇所見られた。
・有り:上記に記載の2箇所の位置において、接合部内部に形成した未接合状態が2箇所以上見られた。

0119

<施工性の評価>
施工性の評価は、上記に記載の表面欠陥、内部欠陥および引張試験の各結果に基づいて、以下に示す基準で評価し、記号◎、○、×のいずれかを付与した。本実施例では、記号◎、○を合格とし、記号×を不合格とした。なお、以下の基準に示した「接合速度」とは表2−1および表2−2に記載の接合速度を指す。
・◎:接合速度が5m/分以上で表面欠陥および内部欠陥が発生せず、引張強度母材の85%以上
・○:接合速度が5m/分未満で表面欠陥および内部欠陥が発生せず、引張強度が母材の85%以上
・×:表面欠陥または内部欠陥の発生、もしくは引張強度が母材の85%未満

0120

0121

表4に示す通り、発明例1〜18では、継手外観観察で表面欠陥は認められず、継手断面観察でも内部欠陥は認められず、健全な接合状態が得られたことが確認された。さらに、継手強度に関しては、母材となる鋼板の引張強さの85%以上が得られた。施工性の評価は合格であった。

0122

なお、「健全な接合状態」とは、表面欠陥および内部欠陥の評価のいずれも「良好」もしくは「無し」の評価結果となったことを意味する。

実施例

0123

一方、比較例1〜24では、継手外観観察で表面欠陥、継手断面観察で内部欠陥のいずれか1つまたは2つが認められ、健全な接合状態が得られなかった。継手強度に関しては、比較例1〜24において母材となる鋼板の引張強さの85%未満であった。施工性の評価は不合格であった。

0124

1 表面側の回転ツール
2 表面側の回転ツールの回転軸
3金属板
4接合部
5 表面側の回転ツールの肩部
6 表面側の回転ツールのピン部
7 接合中央線
8 裏面側の回転ツール
9 裏面側の回転ツールの肩部
10 裏面側の回転ツールのピン部
11 裏面側の回転ツールの回転軸
12 未接合部
13加熱装置
14冷却装置
15後方加熱装置
16回転駆動装置
17 制御部
20 両面摩擦撹拌装置

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