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技術 熱伝達抑制部材及びその使用方法

出願人 イビデン株式会社
発明者 高橋直己安藤寿
出願日 2019年1月25日 (2年0ヶ月経過) 出願番号 2019-011640
公開日 2020年8月6日 (6ヶ月経過) 公開番号 2020-119841
状態 未査定
技術分野 二次電池の保守(温度調整,ガス除去)
主要キーワード 熱伝達シート 低熱伝導層 高分子凝集材 固体伝熱 シート中心 抑制材料 立ち上がり勾配 ファイバーシート
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (14)

課題

例えば組電池のように、熱暴走を起こすおそれのある部品間での熱伝達を、部品間の離間距離を抑えつつ、効果的に抑えることが可能な熱伝達抑制部材及びその使用方法を提供する。

解決手段

複数の部品間に配置され、一方の部品からの熱が隣接する他方の部品に伝達することを抑制するための熱伝達抑制部材であって、25℃での熱伝導率TC(25)が800℃での熱伝導率TC(800)よりも高く、かつ、25〜800℃の間で熱伝導率が最小となる、熱伝達抑制部材。

概要

背景

近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータ電源となるための、複数の電池セル直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。

また、この電池セルには、鉛蓄電池ニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、電池内部短絡過充電などが原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合、熱暴走を起こした電池セルからの熱が、隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。

上記のような熱暴走の伝播を抑制するための技術として、例えば、特許文献1には、1以上の蓄電素子を備える蓄電装置であって、前記1以上の蓄電素子のうちの1つである第一蓄電素子の側方に配置された第一板材及び第二板材であって、互いの面が対向するように配置された第一板材及び第二板材を備え、前記第一板材と前記第二板材との間には、前記第一板材及び前記第二板材よりも熱伝導率の低い物質の層である低熱伝導層(例えば、空気層)が形成されていることにより、第一蓄電素子からの輻射熱、又は、第一蓄電素子に向かう輻射熱は2枚の板材によって遮断され、かつ、これら2枚の板材の一方から他方への熱の移動は低熱伝導層によって抑制されるため、蓄電素子と他の物体との間の効果的な断熱を実現することができることが開示されている。

概要

例えば組電池のように、熱暴走を起こすおそれのある部品間での熱伝達を、部品間の離間距離を抑えつつ、効果的に抑えることが可能な熱伝達抑制部材及びその使用方法を提供する。複数の部品間に配置され、一方の部品からの熱が隣接する他方の部品に伝達することを抑制するための熱伝達抑制部材であって、25℃での熱伝導率TC(25)が800℃での熱伝導率TC(800)よりも高く、かつ、25〜800℃の間で熱伝導率が最小となる、熱伝達抑制部材。

目的

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、例えば組電池のように、熱暴走を起こすおそれのある部品間での熱伝達を、部品間の離間距離を抑えつつ、効果的に抑えることが可能な熱伝達抑制部材及びその使用方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

複数の部品間に配置され、一方の部品からの熱が隣接する他方の部品に伝達することを抑制するための熱伝達抑制部材であって、25℃での熱伝導率が800℃での熱伝導率よりも高く、かつ、25〜800℃の間で熱伝導率が最小となる、熱伝達抑制部材。

請求項2

前記熱伝導率が最小になる温度は、300〜400℃の範囲内である、請求項1に記載の熱伝達抑制部材。

請求項3

熱分解により、結晶水を放出して吸熱作用を発揮し、前記結晶水の放出後多孔質構造を形成して断熱作用を発揮する熱伝達抑制材料からなる複数の粒子を含む成形体である、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制部材。

請求項4

前記熱伝達抑制材料は、無機水和物である、請求項3に記載の熱伝達抑制部材。

請求項5

前記無機水和物は、水酸化アルミニウム水酸化マグネシウム水酸化カルシウム水酸化亜鉛水酸化鉄水酸化マンガン水酸化ジルコニウム及び水酸化ガリウムからなる群のうち少なくとも1つである、請求項4に記載の熱伝達抑制部材。

請求項6

前記熱伝達抑制材料は、熱分解開始温度が200℃以上である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材。

請求項7

前記熱伝達抑制材料は、平均粒子径が異なる複数種の混合物である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材。

請求項8

前記熱伝達抑制材料は、熱分解開始温度が異なる複数種の混合物である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材。

請求項9

前記熱伝達抑制材料は、700℃以上の加熱後においても前記多孔質構造を維持している、請求項3〜7のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材。

請求項10

前記熱伝達抑制材料は、前記多孔質構造を形成した状態での密度が、前記熱伝達抑制材料が前記結晶水を放出した後の組成と同一、かつ、中実である材料における密度の70%以下である、請求項3〜8のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材。

請求項11

さらに無機繊維を含む、請求項3〜9のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材。

請求項12

前記部品の熱暴走防止用である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材。

請求項13

前記部品は電池セルであり、前記電池セル間に介在させて前記電池セルの熱暴走を防止する、請求項12に記載の熱伝達抑制部材。

請求項14

前記部品は、燃料電池水素タンクガソリンタンクLNGタンクのいずれかである、請求項13に記載の熱伝達抑制部材。

請求項15

請求項1〜14のいずれか1項に記載の熱伝達抑制部材を前記部品間に配置し、前記部品からの熱による熱分解により、結晶水を放出して吸熱作用を発揮させ、前記結晶水の放出後に多孔質構造を形成して断熱作用を発揮させる、熱伝達抑制部材の使用方法

技術分野

0001

本発明は、熱伝達抑制部材及びその使用方法に関する。

背景技術

0002

近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータ電源となるための、複数の電池セル直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。

0003

また、この電池セルには、鉛蓄電池ニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、電池内部短絡過充電などが原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合、熱暴走を起こした電池セルからの熱が、隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。

0004

上記のような熱暴走の伝播を抑制するための技術として、例えば、特許文献1には、1以上の蓄電素子を備える蓄電装置であって、前記1以上の蓄電素子のうちの1つである第一蓄電素子の側方に配置された第一板材及び第二板材であって、互いの面が対向するように配置された第一板材及び第二板材を備え、前記第一板材と前記第二板材との間には、前記第一板材及び前記第二板材よりも熱伝導率の低い物質の層である低熱伝導層(例えば、空気層)が形成されていることにより、第一蓄電素子からの輻射熱、又は、第一蓄電素子に向かう輻射熱は2枚の板材によって遮断され、かつ、これら2枚の板材の一方から他方への熱の移動は低熱伝導層によって抑制されるため、蓄電素子と他の物体との間の効果的な断熱を実現することができることが開示されている。

先行技術

0005

特開2015−211013号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、特許文献1の蓄熱装置では、第1板材と第2板材との間に、空気等の低熱伝導層を必要とするため、隣接する蓄電素子間の距離が大きくなり、蓄電装置全体としての体積エネルギー密度が小さくなってしまう。なお、低熱伝導層が厚くなるほど、換言すれば、第1板材と第2板材とが離間するほど熱伝達抑制効果が高まる一方で、蓄電装置全体としては大型化する。

0007

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、例えば組電池のように、熱暴走を起こすおそれのある部品間での熱伝達を、部品間の離間距離を抑えつつ、効果的に抑えることが可能な熱伝達抑制部材及びその使用方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明の目的は、熱伝達抑制部材に係る下記(1)の構成により達成される。
(1)複数の部品間に配置され、一方の部品からの熱が隣接する他方の部品に伝達することを抑制するための熱伝達抑制部材であって、
25℃での熱伝導率が800℃での熱伝導率よりも高く、かつ、25〜800℃の間で熱伝導率が最小となる、熱伝達抑制部材。

0009

また、熱伝達抑制部材に係る本発明の好ましい実施形態は、下記(2)〜(14)のいずれかであることを特徴とする。
(2)前記熱伝導率が最小になる温度は、300〜400℃の範囲内である、上記(1)に記載の熱伝達抑制部材。
(3)熱分解により、結晶水を放出して吸熱作用を発揮し、前記結晶水の放出後多孔質構造を形成して断熱作用を発揮する熱伝達抑制材料からなる複数の粒子を含む成形体である、上記(1)又は(2)に記載の熱伝達抑制部材。
(4)前記熱伝達抑制材料は、無機水和物である、上記(3)に記載の熱伝達抑制部材。
(5)前記無機水和物は、水酸化アルミニウム水酸化マグネシウム水酸化カルシウム水酸化亜鉛水酸化鉄水酸化マンガン水酸化ジルコニウム及び水酸化ガリウムからなる群のうち少なくとも1つである、上記(4)に記載の熱伝達抑制部材。
(6)前記熱伝達抑制材料は、熱分解開始温度が200℃以上である、上記(3)〜(5)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
(7)前記熱伝達抑制材料は、平均粒子径が異なる複数種の混合物である、上記(3)〜(6)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
(8)前記熱伝達抑制材料は、熱分解開始温度が異なる複数種の混合物である、上記(3)〜(6)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。

0010

(9)前記熱伝達抑制材料は、700℃以上の加熱後においても前記多孔質構造を維持している、上記(3)〜(7)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
(10)前記熱伝達抑制材料は、前記多孔質構造を形成した状態での密度が、前記熱伝達抑制材料が前記結晶水を放出した後の組成と同一、かつ、中実である材料における密度の70%以下である、上記(3)〜(8)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
(11)さらに無機繊維を含む、上記(3)〜(9)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
(12)前記部品の熱暴走防止用である、上記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材。
(13)前記部品は電池セルであり、前記電池セル間に介在させて前記電池セルの熱暴走を防止する、上記(12)に記載の熱伝達抑制部材。
(14)前記部品は、燃料電池水素タンクガソリンタンクLNGタンクのいずれかである、上記(13)に記載の熱伝達抑制部材。

0011

また、本発明の目的は、熱伝達抑制部材の使用方法に係る下記(15)の構成により達成される。
(15)上記(1)〜(14)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制部材を前記部品間に配置し、前記部品からの熱による熱分解により、結晶水を放出して吸熱作用を発揮させ、前記結晶水の放出後に多孔質構造を形成して断熱作用を発揮させる、熱伝達抑制部材の使用方法。

発明の効果

0012

本発明に係る熱伝達抑制部材及びその製造方法によれば、部品間の離間距離を抑えつつ、効果的な断熱効果を奏することが可能となる。

図面の簡単な説明

0013

図1は、組電池の一例を模式的に示す断面図である。
図2は、本発明の実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートの熱伝導率の温度変化熱伝導特性)を示すグラフである。
図3は、組電池用熱伝達抑制シートの構成例を模式的に示す断面図である。
図4は、組電池用熱伝達抑制シートの他の構成例を模式的に示す断面図である。
図5は、試験例1〜4の組電池用熱伝達抑制シートに対し、熱伝達抑制シートの一方の面側からヒーターで加熱した場合の、組電池用熱伝達抑制シートの他方の面側における温度変化と経過時間との関係を示すグラフである。
図6は、試験例5〜7の組電池用熱伝達抑制シートに対し、熱伝達抑制シートの一方の面側からヒーターで加熱した場合の、組電池用熱伝達抑制シートの他方の面側における温度変化と経過時間との関係を示すグラフである。
図7は、脱水後のAl(OH)3、中実のAl2O3及びAESで比較した場合の、熱伝導率と加熱温度との関係を示すグラフである。
図8Aは、未焼成のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子の表面におけるSEM観察結果を示す図面代用写真である。
図8Bは、焼成後のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子の表面におけるSEM観察結果を示す図面代用写真である。
図9Aは、未焼成のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子の表面におけるTEM観察結果を示す図面代用写真である。
図9Bは、焼成後のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子の表面におけるTEM観察結果を示す図面代用写真である。
図10は、焼成後のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子の断面におけるSEM観察結果を示す図面代用写真である。
図11は、実施例1と比較例1の組電池用熱伝達抑制シートの熱伝導率の温度変化(熱伝導特性)を示すグラフである。

0014

本発明者らは、複数の部品間に配置され、熱暴走を起こした部品からの熱が、隣接する部品に伝搬するのを、部品間の離間距離を抑えつつ、効果的に抑えることが可能な熱伝達抑制部材を提供するため、鋭意検討を行ってきた。

0015

その結果、熱暴走を起こした部品からの熱を、常温においては逃がし易くするとともに、高温においては断熱することが有効であることを見出した。具体的には、熱伝達抑制部材が、(A)熱暴走を起こした部品は700℃を超える高温になることがあり、安全性を見込んで、25℃での熱伝導率が、800℃での熱伝導率よりも高いこと、また、(B)25〜800℃の温度範囲において熱伝導率が最小となる温度を有すること、すなわち、全体として下に凸となる熱伝導率の温度変化を示すことにより、同温度範囲全体にわたり熱抑制効果に優れるようになることを見出した。

0016

また、熱伝達抑制部材がこのような熱伝導特性を示すためには、例えば、熱分解により、結晶水を放出して吸熱作用を発揮し、結晶水の放出後に多孔質構造を形成して断熱作用を発揮する熱伝達抑制材料からなる複数の粒子を含む成形体を用いることができることを見出した。

0017

すなわち、熱暴走を起こして高温となった部品からの熱を受けて熱分解し、自身が持つ結晶水を放出する、いわゆる「吸熱作用」を発揮する熱伝達抑制材料を用いることにより、熱暴走を起こした部品からの発熱を効果的に低減することができる。

0018

また、上記の熱伝達抑制材料は、結晶水を放出した後に、多孔質構造を形成することにより、形成された多数の空孔により断熱作用が発揮される。

0019

さらに、上記熱伝達抑制材料を粒子として用い、この粒子を複数含む成形体、例えばシート状の形態とする。このように成形体とすることにより、1つ1つの粒子自体が有する多孔質構造による断熱作用に加え、複数の粒子間に形成される空隙中に存在する空気による断熱作用が加わり、一層の断熱効果が発揮される。

0020

上記のように、熱伝達抑制効果は吸熱作用と断熱作用との相乗によるものであり、両作用がバランス良く、より効果的に発現するには、熱伝達抑制材料の熱分解開始温度が200℃以上であることが好ましい。さらには、断熱作用を発揮するために、より高温でも多孔質構造を維持していることが望ましく、700℃以上の高温でも多孔質構造を維持していることが好ましい。

0021

以上を考慮すると、熱伝達抑制材料として、例えば無機水和物を挙げることができる。

0022

本発明はこのような知見に基づくものであるが、以下に本発明の実施形態(本実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下において「〜」とは、その下限の値以上、その上限の値以下であることを意味する。

0023

なお、以下の実施形態においては、熱暴走を起こすおそれのある部品としてリチウムイオン二次電池などの電池セルを例とし、この電池セルが複数積層されてなる組電池を例として説明するが、これには限定されない。上記のような部品としては、電池セル以外に、例えば、燃料電池の水素タンク、ガソリンタンク、LNGタンクなどが挙げられる。
また同様に、本実施形態で説明する熱伝達抑制部材は、組電池の複数の電池セル間に介在する組電池用熱伝達抑制シートを例として説明するが、これには限定されない。

0024

(組電池の基本構造
図1は、組電池の一例を模式的に示す断面図である。図示されるように、組電池100は、複数の電池セル20同士が直列又は並列に接続された状態(接続された状態は図示を省略)で、電池ケース30に格納されており、ある電池セル20と隣接する電池セル20との間に、組電池用熱伝達抑制シート10が配置されている。

0025

なお、電池セル20は、例えば、リチウムイオン二次電池が好適に用いられるが、特にこれに限定されず、その他の二次電池にも適用され得る。

0026

(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る熱伝達抑制部材(組電池用熱伝達抑制シート)について説明する。なお、第1の実施形態は、下記に示す熱伝達抑制材料が、粒度分布ピークが1つ、すなわち、平均粒子径が略同一の粒子の場合である。

0027

まず、本実施形態に係る熱伝達抑制部材としての組電池用熱伝達抑制シート10は、図2に示すように、25℃での熱伝導率TC(25)が、800℃での熱伝導率TC(800)よりも高い。また、25〜800℃の温度範囲において、熱伝導率が最小となる温度を有しており(最小となる熱伝導率;TC(min))、全体として下に凸となる熱伝導率の温度変化を示す。25℃での熱伝導率が800℃での熱伝導率よりも高いことは、低温時に電池セル20からの熱を逃がしやすいことを示している。電池セルは、低温の正常時でも運転時や充電時に発熱を伴うため、この熱を逃がすことにより運転効率充電効率を高くすることができる。一方、熱暴走を起こすと急激に昇温し、700℃を超える高温になることがあるが、高温時には25℃での熱伝導率よりも低いことから、広い温度範囲で断熱作用が発揮され、隣接する電池セル20への伝熱が抑制される。

0028

なお、熱暴走を起こした電池セル20は、熱暴走の初期段階に急激に昇温するため、組電池用熱伝達抑制シート10も熱暴走の初期段階での熱伝導率の低下度合いが大きいことが好ましい。そのため、熱伝導率が最小となる温度は、25〜800℃の温度範囲の中間付近の400℃よりも低温であることが好ましく、300〜400℃で熱伝導率が最小となることが好ましい。

0029

組電池用熱伝達抑制シート10がこのような熱伝導特性を示すためには、例えば、熱分解により、結晶水を放出して吸熱作用を発揮し、結晶水の放出後に多孔質構造を形成して断熱作用を発揮する熱伝達抑制材料からなる複数の粒子を含む成形体を用いることができる。

0030

<組電池用熱伝達抑制シートの基本構成
図3は、熱伝達抑制部材としての組電池用熱伝達抑制シート10の構成例を模式的に示す断面図である。本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シート10は、粒度分布のピークが1つ、すなわち、平均粒子径が略同一である(第1の)熱伝達抑制材料12の粒子を複数有する。

0031

なお、組電池用熱伝達抑制シート10は、図示されるような断面が直線状の平面シートに限らず、断面が波状波形シートなどであってもよい。また、組電池用熱伝達抑制シート10の厚さは特に限定されないが、0.05〜5mmの範囲にあることが好ましい。厚さが0.05mm未満であると、充分な機械的強度が得られないおそれがある。一方、厚さが5mmを超えると、シート状に成形することが困難となるおそれがある。電池の体積エネルギー密度の観点からは、この範囲で薄くすることが好ましい。

0032

ここで、図1に示す組電池100において、ある電池セル20が熱暴走を起こした場合、その熱を受けて熱伝達抑制材料12が熱分解し、結晶水を放出して吸熱作用を発揮し、熱暴走の初期段階における急激な温度上昇に対応して効果的に吸熱するため、熱暴走の初期段階における温度の立ち上がり勾配を小さく抑えることができる。

0033

さらに、熱伝達抑制材料12は、結晶水の放出後に多孔質構造を形成することで、持続的に断熱作用を発揮し、隣接する電池セル20への熱の伝搬を持続的に抑えることができる。すなわち、熱暴走の後期段階において、断熱作用を発揮し、同作用を持続する。

0034

よって、熱暴走の初期段階における効果的な吸熱作用と、熱暴走の後期段階における持続的な断熱作用の組み合わせにより、組電池用熱伝達抑制シート10は、効果的な断熱効果を奏することが可能となる。

0035

また、組電池用熱伝達抑制シート10は、熱伝達抑制材料12の粒子を複数含む成形体であるため、熱伝達抑制材料12の粒子間には微細な隙間が形成されている。この微細な空間内には空気が存在しており、空気による断熱作用が加わり、断熱性能がより高まる。

0036

<組電池用熱伝達抑制シートの詳細>
次に、組電池用熱伝達抑制シート10を構成する熱伝達抑制材料12やその他の構成材料の詳細について説明する。

0037

[熱伝達抑制材料]
熱伝達抑制材料12は、自身が結晶水を持つ化合物であり、熱分解により結晶水を放出することで吸熱作用を発揮し、更に結晶水を放出した後に多孔質構造が形成されるものである。熱伝達抑制効果は、吸熱作用と断熱作用との相乗であり、両作用がバランス良く、効果的に発揮するためには、熱分解開始温度が200℃以上であることが好ましい。熱分解開始温度が低いと、吸熱作用が比較的早期に完了する。

0038

例えば、ゼオライトのような多孔質体に対して物理的に水分を含浸させたようなものでは、水分を放出する温度が200℃よりも低いため、電池セルが熱暴走を起こした場合には断熱作用を十分に発揮することができないおそれがある。

0039

これらを考慮すると、熱伝達抑制材料12の具体例としては、例えば無機水和物が挙げられる。具体的には、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)2)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)などが挙げられる。

0040

例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解時に結晶水を放出することで、消炎機能吸熱反応)を発揮することができる。
2Al(OH)3→Al2O3+3H2O
この機能により、熱暴走を起こした電池セル20で発生した高温の熱を吸収することができ、熱暴走を起こした電池セル20の発熱量を低減することができる。

0041

なお、水酸化アルミニウムの熱分解開始温度は約200℃であり、水酸化マグネシウムの熱分解開始温度は約330℃であり、水酸化カルシウムの熱分解開始温度は約580℃であり、水酸化亜鉛の熱分解開始温度は約200℃であり、水酸化鉄の熱分解開始温度は約350℃であり、水酸化マンガンの熱分解開始温度は約300℃であり、水酸化ジルコニウムの熱分解開始温度は約300℃であり、水酸化ガリウムの熱分解開始温度は約300℃である。

0042

また、上記したように、組電池用熱伝達抑制シート10において、熱暴走の初期段階での熱伝導率の低下度合いを大きくする観点からは、熱分解開始温度が、上記した熱伝導率が最小となる好ましい温度範囲である300〜400℃と重複する無機水和物を用いることが好ましい。

0043

無機水和物は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。特に、熱分解開始温度が異なる2種以上の無機水和物を併用することにより、熱暴走を起こした電池セル20に対して多段に冷却でき、広い温度領域で電池セル間の熱の伝搬を抑制することが可能になる。

0044

熱伝達抑制材料12の配合量としては、組電池用熱伝達抑制シート10を構成する材料の合計質量に対して、好ましい上限が90質量%であり、より好ましい上限は65質量%である。この配合量が90質量%を超えると、相対的に無機繊維などの他の構成材料が少なくなりすぎて、シートとしての十分な強度を保つことができないおそれがある。

0045

また、熱伝達抑制材料12は粒子として組電池用熱伝達抑制シート10に含まれるが、熱分解により結晶水を放出した後は、粒子の内部まで多孔質構造が形成されていることが好ましい。上述のように、熱伝達抑制材料12は、熱分解により結晶水を放出することで多孔質構造が形成され、持続的に断熱作用を発揮し、他の部品への熱の伝搬を持続的に抑えることができる。したがって、粒子の内部まで多孔質構造が形成されている場合には、無機水和物の全体にわたって多孔質構造が形成されていることとなるため、断熱作用をより効果的に持続させることができる。

0046

熱伝達抑制材料12の平均粒子径が大きすぎると、組電池用熱伝達抑制シート10の中心付近にある熱伝達抑制材料12の温度が熱分解温度に達するまでにある程度の時間を有し、シート中心付近の熱伝達抑制材料12が熱分解しきれない場合がある。このため、熱伝達抑制材料12は平均粒子径が小さい方がよく、具体的には、平均粒子径が100μm以下であることが好ましい。

0047

なお、熱伝達抑制材料12の粒子が内部まで多孔質構造が形成されていることは、後述する実施例で示すように、粒子を焼成した後の断面におけるSEM写真から確認することができる。

0048

上記のように、粒子の内部まで完全に多孔質構造であることが最も好ましいが、多孔質ではない、中実の同一組成である材料の比重に対して70%以下の密度を有していればほぼ十分であると言える。例えば水酸化アルミニウム(Al(OH)3)では、上記したように、熱分解して得られるのはアルミナ(Al2O3)であるが、結晶水放出後に得られる多孔質構造を持つアルミナの密度を、多孔質ではない、中実のアルミナの密度の42%以下とする。

0049

また、熱伝達抑制材料12は、700℃以上の加熱後においても多孔質構造を維持していることが好ましい。熱暴走を起こした電池セル20では、700℃以上の非常に高い温度まで上昇することがあり、断熱効果を持続させるためには、その温度まで上昇した場合においても多孔質構造を維持できていることが求められる。700℃以上の加熱後においても多孔質構造を維持し得る無機水和物としては、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)2)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)を挙げることができる。

0050

なお、熱伝達抑制材料12の粒子が、700℃以上の高温でも多孔質構造を維持できていることは、後述する実施例で示すように、粒子を700℃以上で焼成した後の表面又は断面におけるSEM写真から確認することができる。

0051

[その他の構成材料]
続いて、組電池用熱伝達抑制シート10を構成する他の材料について説明する。組電池用熱伝達抑制シート10は、成形時の強度向上を目的として、更に無機繊維やパルプ繊維を含んでいてもよい。

0052

無機繊維としては、例えば、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維ロックウールアルカリアースシリケート繊維ガラス繊維ジルコニア繊維及びチタン酸カリウムウィスカ繊維などが挙げられる。これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。上記無機繊維は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。上記無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ−アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。

0053

無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、扁平断面、中空断面多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、扁平断面又は多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。

0054

無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、上記無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、得られる熱伝達抑制シート10の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより連続した空隙が生じやすくなるので断熱性の低下を招くおそれがある。

0055

無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は10μmであり、より好ましい上限は7μmである。上記無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であるが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が10μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、熱伝達抑制シート10の成形性が悪化するおそれがある。

0056

更に、有機バインダー無機バインダーを必要に応じて使用してもよい。バインダーは、成形時の強度向上を目的とする上で有用であり、有機バインダーとして例えば高分子凝集剤アクリルエマルジョンなど、無機バインダーとして例えばアルミナゾルシリカゾルなどを好適に使用することができる。

0057

その他の材料についても、目的に応じて適宜添加することができる。

0058

これら他の構成材料(すなわち、主成分以外の構成材料)は、組電池用熱伝達抑制シート10を構成する材料の合計重量に対して、50質量%以下の範囲で適宜使用することができる。

0059

(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る熱伝達抑制部材(組電池用熱伝達抑制シート)について説明する。第2の実施形態も無機水和物を熱伝達抑制材料12とする組電池用熱伝達抑制シート10を例示するが、図4に示すように、粒度分布のピークが2つ以上の熱伝達抑制材料12,14、言い換えれば、平均粒子径が異なる複数種の混合物である熱伝達抑制材料12,14を含有する。より具体的には、組電池用熱伝達抑制シート10は、平均粒子径の小さい第1の熱伝達抑制材料12と、平均粒子径の大きい第2の熱伝達抑制材料14を有する。

0060

そして、ある電池セル20が熱暴走を起こすと、平均粒子径の小さい第1の熱伝達抑制材料12が、吸熱作用を発揮して熱暴走の初期段階における温度の立ち上がり勾配を小さく抑える。
ここで、第1の熱伝達抑制材料12は、第2の熱伝達抑制材料14に比べ平均粒子径が小さいことから、同じ体積で比較した場合、第1の熱伝達抑制材料12の方が表面積が大きく、したがって受熱面積がより大きい。よって、第1の熱伝達抑制材料12の単位時間当たりの吸熱量は、第2の熱伝達抑制材料14の単位時間当たりの吸熱量よりも大きくなる。このため、平均粒子径の大きな第2の熱伝達抑制材料14のみを含有する組電池用熱伝達抑制シート10に比べ、熱暴走の初期段階における温度の立ち上がり勾配を小さく抑えられると考えられる。

0061

また、平均粒子径の大きい第2の熱伝達抑制材料14が、比較的長い時間にわたって吸熱し続けるため、熱暴走の初期段階における温度の立ち上がり後における、吸熱時間を長く維持する。
ここで、第2の熱伝達抑制材料14は、第1の熱伝達抑制材料12に比べ平均粒子径が大きいことから、組電池用熱伝達抑制シート10の中心付近にある熱伝達抑制材料14が熱分解開始温度に達するまでにある程度の時間を要する。このため、平均粒子径の小さな第1の熱伝達抑制材料12のみを含有する組電池用熱伝達抑制シート10に比べ、吸熱時間を長く維持できると考えられる。

0062

そして、これらの相乗効果によって、吸熱作用を効果的に、かつ長く発揮することができる。

0063

ところで、平均粒子径の大きい第2の熱伝達抑制材料14のみからなる組電池用熱伝達抑制シート10は、平均粒子径の小さい第1の熱伝達抑制材料12のみからなる組電池用熱伝達抑制シート10に比べてシートの中心付近まで伝熱しにくく、シートの中心付近にある熱伝達抑制材料14が結晶水を放出しきれない場合がある。このため、組電池用熱伝達抑制シート10として、平均粒子径の大きい第2の熱伝達抑制材料14のみを使用した場合には、熱暴走を起こした電池セル20のピーク温度平衡状態となる温度)が高くなる傾向にある。これに対して平均粒子径の小さい第1の熱伝達抑制材料12と、平均粒子径の大きい第2の熱伝達抑制材料14とを併用すると、組電池用熱伝達抑制シート10の中心付近にあり、結晶水を放出しきれない可能性のある熱伝達抑制材料が相対的に減るため、熱暴走を起こした電池セル20のピーク温度を低く抑えることができる。

0064

(組電池用熱伝達抑制シートの製造方法)
続いて、組電池用熱伝達抑制シート10の製造方法について詳細に説明する。

0065

本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、熱伝達抑制材料を複数含む成形材料を、乾式成形法又は湿式成形法により型成形して製造される。以下に、熱伝達抑制シート10をそれぞれの成形法により得る場合の製造方法について説明する。

0066

[乾式成形法を用いて製造する場合]
まず、乾式成形法では、熱伝達抑制材料、更に必要に応じて無機繊維やパルプ繊維、あるいは無機バインダー、有機バインダーを所定の割合でV型混合機などの混合機に投入する。混合機に投入された材料を充分に混合した後、所定の型内に混合物を投入し、プレスすることにより組電池用熱伝達抑制シート10を得る。プレス時には、必要に応じて加熱してもよい。

0067

プレス圧は、0.30〜9.80MPaの範囲であることが好ましい。プレス圧が0.30MPa未満であると、得られる組電池用熱伝達抑制シート10において、強度を保つことができずに崩れてしまうおそれがある。一方、プレス圧が9.80MPaを超えると、過度圧縮によって加工性が低下したり、更に、かさ密度が高くなるため固体伝熱が増加し、断熱性が低下するおそれがある。

0068

[湿式成形法を用いて製造する場合]
続いて、湿式成形法では、熱伝達抑制材料、更に必要に応じて無機繊維やパルプ繊維、あるいは無機バインダー、有機バインダーを水中で混合撹拌して充分に分散させ、その後、凝集剤を添加して、一次凝集体を得る。次に、必要に応じて有機弾性物質エマルジョンなどを所定の範囲内で上記水中に添加した後、高分子凝集剤を添加することにより凝集体を含むスラリーを得る。

0069

次に、上記凝集体を含むスラリーを所定の型内へ投入して湿潤シートを得る。得られた湿潤シートを乾燥することにより、目的の組電池用熱伝達抑制シート10が得られる。

0070

上述のように、組電池用熱伝達抑制シート10は、乾式成形法又は湿式成形法のいずれによっても得られるが、一体成形の容易性や機械的強度の点から湿式成形法を用いることが好ましい。

0071

以上、本実施形態について、組電池用熱伝達シート10を例示して説明したが、その他の熱暴走を起こすおそれのある用途、例えば燃料電池の水素タンク、ガソリンタンク、LNGタンクなどにも適用することができる。

0072

以下に、本実施形態に係る組電池用熱伝達抑制シートに適用した熱伝達抑制部材の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0073

(無機水和物とAESとの比較)
まず、熱伝達抑制材料としての無機水和物の熱分解による吸熱作用及び断熱作用について検証した結果を示す。

0074

<試験例1>
熱伝達抑制材料に用いられる無機水和物として、平均粒子径:17μmの水酸化アルミニウム(Al(OH)3)粉末を準備した。そして、この水酸化アルミニウム粉末を80質量%とした上で、無機繊維としてロックウールを10質量%、パルプ繊維を9質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して厚さ2mmの組電池用熱伝達抑制シートを得た。

0075

<試験例2>
熱伝達抑制材料に用いられる無機水和物として、平均粒子径:1μmの水酸化アルミニウム(Al(OH)3)粉末を準備した。そして、この水酸化アルミニウム粉末を80質量%とした上で、無機繊維としてロックウールを10質量%、パルプ繊維を9質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して厚さ2mmの組電池用熱伝達抑制シートを得た。

0076

<試験例3>
熱伝達抑制材料に用いられる無機水和物として、平均粒子径:1μm及び平均粒子径17μmの水酸化アルミニウム(Al(OH)3)粉末を準備した。そして、これらの水酸化アルミニウム粉末を質量比で50:50の混合割合で80質量%とした上で、無機繊維としてロックウールを10質量%、パルプ繊維を9質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して厚さ2mmの組電池用熱伝達抑制シートを得た。

0077

なお、試験例1〜3で用いた水酸化アルミニウムの熱分解開始温度は、約200℃であった。

0078

<試験例4>
アルカリアースシリケート(AES)ファイバーにより構成される厚み2mmのシートを準備し、組電池用熱伝達抑制シートとした。

0079

試験例1〜4で得られた組電池用熱伝達抑制シートの一方の面に、熱暴走を起こした電池セルを模擬したヒーターを配置し、他方の面に隣接する電池セルを模擬した金属板を接触させて配置した。ヒーター温度が約30秒で700℃になるように加熱し、ヒーター加熱後の経過時間に対する金属板表面の温度変化を測定した。

0080

試験例1〜4における、経過時間に対する金属板表面の温度変化をプロットしたグラフを図5に示す。

0081

試験例4に示すアルカリアースシリケート(AES)ファイバーからなる組電池用熱伝達抑制シートは、断熱材としての機能のみを有するため、ヒーター温度の上昇に伴い、金属板表面の温度は単調に上昇し続けた。その後、金属板表面の温度が約250℃に達したところで、温度がほぼ平衡状態となった。

0082

これに対し、無機水和物を含有する組電池用熱伝達抑制シート(試験例1〜3)の場合、無機水和物による吸熱作用が働いている間は、金属板表面の温度は一旦、約100℃で維持された。その後、すなわち、熱分解により結晶水を放出した後は、断熱材として機能すべく、急な温度上昇を経た後、それぞれ所定の温度に達したところで、温度がほぼ平衡状態となった。

0083

なお、試験例1は、平均粒子径が大きい(平均粒子径:17μm)無機水和物のみを使用している。この平均粒子径が大きい無機水和物は、同じ体積で比較した場合、平均粒子径が小さい(平均粒子径:1μm)無機水和物より表面積が小さく、受熱面積も小さいため、単位時間当たりの吸熱量は、平均粒子径が小さい無機水和物のそれ比べて小さくなる。そのため、熱分解開始温度に到達するのが遅く、曲線Aで示すように、平均粒子径が小さい(平均粒子径:1μm)無機水和物のみを使用している熱伝達抑制シート(図5の曲線B:試験例2)に比べて金属板表面の温度の立ち上がり勾配が大きくなっている。また、金属板表面のピーク温度は、試験例4の約250℃に比べて低いものの、約230℃まで上昇した。

0084

また、図5の曲線A〜Cには、TA,TB,TCとして示すように、金属板表面の温度が100℃付近に平坦部が見られるが、これは熱分解して無機水和物から結晶水が放出して吸熱する「吸熱反応」が起こっている期間(以下、「吸熱期間」という)である。すなわち、無機水和物である水酸化アルミニウムの熱分解開始温度は約200℃であるため、熱暴走を起こした電池セルからの熱を受け、組電池用熱伝達抑制シートは200℃に達しているものの、金属板に相当する隣接の電池セルの表面温度は100℃程度に抑えられており、吸熱効果が発揮されていることがわかる。なお、TA,TB,TCの後の領域では多孔質構造が形成され、断熱作用が発揮されている。

0085

また、無機水和物の平均粒子径により、金属板表面の温度ピーク高低差があり、吸熱作用と断熱作用とを合わせた総合的な熱伝達抑制効果に差があることがわかる。すなわち、平均粒子径が17μmと大径の無機水和物のみを使用した試験例1の曲線Aの温度ピークが最も高く、平均粒子径が1μmと小径の無機水和物のみを使用した試験例2の曲線B、並びに小径と大径の無機水和物の混合物を使用した試験例3の曲線Cが同程度の温度ピークを示している。このことから、平均粒子径が小さい無機水和物を用いることが好ましいことがわかる。

0086

さらには、曲線A〜Cにおいて、吸熱期間TA,TB,TCよりも前の経過時間における温度勾配を比較すると、大径の無機水和物を使用した試験例1の曲線Aが最も大きくなっており、平均粒子径が小さい無機水和物を用いることにより、昇温を緩やかにする効果が得られることがわかる。

0087

なお、試験例4のAESファイバーシートでは、吸熱期間のTA,TB,TCに相当する部分がなく、断熱作用のみであるため、総合的な熱伝達抑制効果も低くなっている。

0088

以上のことから、試験例1〜3の組電池用熱伝達抑制シートによれば、急激な温度上昇を抑えるとともに、優れた熱伝達抑制効果も得られることが分かった。

0089

(水酸化アルミニウムとアルミナとの比較)
<試験例5>
熱伝達抑制材料に用いられる無機水和物として、平均粒子径:1μmの水酸化アルミニウム(Al(OH)3)粉末を準備した。そして、この水酸化アルミニウム粉末に対し、焼成及び乾燥を施すことなく、この水酸化アルミニウム粉末を80質量%とした上で、無機繊維としてロックウールを10質量%、パルプ繊維を9質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して厚さ2mmの組電池用熱伝達抑制シートを得た。

0090

<試験例6>
熱伝達抑制材料に用いられる無機水和物として、平均粒子径:1μmの水酸化アルミニウム(Al(OH)3)粉末を準備した。そして、この水酸化アルミニウム粉末に対し、700℃及び1時間の焼成を行い、その後105℃及び1時間の乾燥を行った。続いて、この水酸化アルミニウムの焼成品の粉末を80質量%とした上で、無機繊維としてロックウールを10質量%、パルプ繊維を9質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して厚さ2mmの組電池用熱伝達抑制シートを得た。

0091

<試験例7>
熱伝達抑制材料に用いられる材料として、平均粒子径:1μmの多孔質ではない、すなわち中実のアルミナ(Al2O3)粉末を準備した。そして、このアルミナ粉末を80質量%とした上で、無機繊維としてロックウールを10質量%、パルプ繊維を9質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して厚さ2mmの組電池用熱伝達抑制シートを得た。

0092

試験例5〜7で得られた組電池用熱伝達抑制シートの一方の面に隣接するようにヒーターを配置し、他方の面に金属板を接触させて配置した。ヒーター温度が約30秒で700℃になるように加熱し、ヒーター加熱後の経過時間に対する金属板表面の温度変化を測定した。

0093

試験例5〜7における、ヒーター加熱後の経過時間に対する金属板表面の温度変化をプロットしたグラフを図6に示す。

0094

図6の結果より、試験例5のように、熱分解により吸水作用を発揮する水酸化アルミニウムを用いた熱伝達抑制シートは最も優れた熱伝達抑制効果を示すことがわかる。なお、図中のTx部分が、図5で示す吸熱期間に相当する。これに対して、試験例6のように、同じ水酸化アルミニウム粉末を出発材料に用いても、焼成した場合には、試験例5の曲線のような吸熱期間Txが無く、断熱作用のみであるため、熱伝達抑制効果が低くなっている。ただし、焼成により結晶水が放出されて多孔質構造を有しているため、多孔質ではない、すなわち中実のアルミナを用いた試験例7の組電池用熱伝達抑制シートよりは熱伝達抑制効果に優れている。

0095

このことから、水酸化アルミニウムに含まれる結晶水が熱分解により放出されることで吸熱作用を発揮し、隣接するセル表面のピーク温度を低く抑えることができていることが分かった。

0096

(加熱温度と熱伝導率の関係)
脱水後の水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、多孔質ではない、中実のアルミナ(Al2O3)と、AESのそれぞれに対し、加熱温度と熱伝導率との関係を調べた。なお、脱水後の水酸化アルミニウムとは、平均粒子径が1μmの水酸化アルニウムの粉末を、700℃及び1時間の条件で加熱し、熱分解により結晶水の少なくとも一部を放出させて多孔質構造を形成したものである。
また、加熱温度に対する熱伝導率の変化は、JIS R 2616(非定常熱線法)に従う京都電子工業(株)製「QTM−500」を用いて測定した。図7に、脱水後のAl(OH)3、中実のAl2O3及びAESで比較した場合の、熱伝導率と加熱温度との関係を示す。

0097

図7の結果に示すように、AESは加熱温度の上昇に伴って、熱伝導率が顕著に上昇することが分かった。一方、中実のアルミナは加熱温度が上昇しても熱伝導率の上昇はほぼ見られなかった。また、脱水後のAl(OH)3においても、加熱温度の上昇に伴い、熱伝導率の上昇は見られたものの、600℃付近までの温度域において中実のアルミナよりも熱伝導率が小さく、断熱性能に優れている。また、700℃を超えても中実のアルミナよりも熱伝導率が小さい。

0098

これらのことを踏まえると、熱分解により結晶水を放出して多孔質構造を形成することにより、非常に優れた断熱作用を発揮しうることが確認された。また、700℃を超える温度で、中実のアルミナよりも熱伝導率が小さいことは、700℃を超える温度でも多孔質構造が維持されていることに由来する。

0099

(Al(OH)3粒子のSEM及びTEM観察)
未焼成のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子、焼成後(焼成条件:700℃及び1時間)のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子の各々について、粒子の表面におけるSEM(走査型電子顕微鏡)観察及びTEM透過型電子顕微鏡)観察を行った。なお、SEMの測定条件は、加速電圧200kVとし、TEMの測定条件は、加速電圧200kVとした。

0100

未焼成のAl(OH)3粒子の表面におけるSEM写真(倍率:20000倍)を図8Aに、焼成後のAl(OH)3粒子の表面におけるSEM写真(倍率:10000倍)を図8Bに示す。
また、未焼成のAl(OH)3粒子の表面におけるTEM写真(倍率:300000倍)を図9Aに、焼成後のAl(OH)3粒子の表面におけるTEM写真(倍率:300000倍)を図9Bに示す。

0101

未焼成のAl(OH)3粒子においては、多孔質構造が見られなかったが、焼成後のAl(OH)3粒子においては、多孔質構造を有することが、SEM,TEMの結果ともに見受けられた。具体的には、焼成後のSEM写真では、未焼成のSEM写真と比べて、表面の凹凸が顕著に表れていた。また、焼成後のTEM写真では、未焼成のTEM写真と比べて、多孔質構造を示唆するものである、まだら模様(すなわち、濃淡入り混じった模様)が顕著に表れていた。

0102

よって、これらの結果より、熱分解による結晶水の放出後に多孔質構造が形成されること、また、700℃以上の加熱後においても多孔質構造を維持できていることが確認された。

0103

続いて、焼成後(焼成条件:700℃及び1時間)のAl(OH)3(平均粒子径:1μm)粒子について、粒子の断面におけるSEM観察を行った。なお、断面SEMの測定条件は、加速電圧200kVとした。焼成後のAl(OH)3粒子の断面におけるSEM写真(倍率:50000倍)を図10に示す。

0104

図10の結果より、焼成後のAl(OH)3粒子の断面においても、多孔質構造を示唆する凹凸が顕著に表れていた。このことから、熱分解による結晶水を放出した後において、粒子の内部まで多孔質構造が形成されていることが確認された。

0105

(組電池用熱伝達抑制シートにおける熱伝導率の温度変化(熱伝導特性))
上記の各試験例から、熱伝達抑制材料としての無機水和物の熱分解による吸熱作用及び断熱作用が確認された。これをもとに、下記の実施例1及び比較例1を行った。

0106

<実施例1>
熱伝達抑制材料に用いられる無機水和物として、平均粒子径:1μmの水酸化アルミニウム(Al(OH)3)粉末を準備した。そして、この水酸化アルミニウム粉末を80質量%とした上で、無機繊維としてロックウールを10質量%、パルプ繊維を9質量%、高分子凝集材を1質量%加え、十分に撹拌混合してスラリーを調製した。上記スラリーを抄造して厚さ2mmの組電池用熱伝達抑制シートを得た。

0107

<比較例1>
アルカリアースシリケート(AES)ファイバーにより構成される厚み2mmのシートを準備し、組電池用熱伝達抑制シートとした。

0108

そして、実施例1及び比較例1の組電池用熱伝達抑制シートを加熱し、加熱温度ごとの熱伝導率を測定した。なお、熱伝導率の変化は、JIS R 2616(非定常熱線法)に従う京都電子工業(株)製「QTM−500」を用いて測定した。

0109

熱伝導率の測定結果図11に示す。図11に示すように、実施例1の組電池用熱伝達抑制シートは、25℃での熱伝導率が800℃での熱伝導率よりも高く、かつ、350℃付近(300〜400℃の範囲内)で熱伝導率が最小になっている。このような熱伝導特性は、上記したように、水酸化アルミニウムの熱分解による吸熱作用と断熱作用とが発揮された結果である。

実施例

0110

これに対して比較例1の組電池用熱伝達抑制シートは、温度上昇とともに、単調に熱伝導率も高くなっており、典型的な断熱材料の熱伝導特性を示している。

0111

10組電池用熱伝達抑制シート(熱伝達抑制部材)
12 第1の熱伝達抑制材料(熱伝達抑制材料)
14 第2の熱伝達抑制材料(熱伝達抑制材料)
20電池セル
30電池ケース
100 組電池

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