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技術 耐摩耗鋼

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 溝口昌毅加茂孝浩原宗理三宅拓海高橋康哲
出願日 2020年4月14日 (10ヶ月経過) 出願番号 2020-072435
公開日 2020年8月6日 (6ヶ月経過) 公開番号 2020-117811
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理 金属圧延一般
主要キーワード 耐摩耗鋼板 耐摩耗鋼 ブリネル硬さ 試験線 製造負荷 ピクリン酸溶液 大角粒界 鋼材組織
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼を提供する。

解決手段

所定の化学組成からなり、厚さが40mm以上であり、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における金属組織が、マルテンサイト及び下部ベイナイト面積率の合計:50〜100%、旧オーステナイト平均結晶粒径:5〜23μmであり、表面から厚さ方向に1mmの位置において、ブリネル硬さ:360〜440であることを特徴とする、耐摩耗鋼である。

概要

背景

機械構成部材耐摩耗性はその表面硬度に強く支配されるため、土木鉱山用の建設機械産業機械のような耐摩耗性が要求される機械の構成部材には高硬度鋼が用いられる。この高硬度鋼には、安定した耐摩耗性を有して長期の使用に耐えることができる特性が要求されている。また、近年では、寒冷地で用いられる建設機械や産業機械の需要が増加しており、このような寒冷地での使用に適した低温靭性を有する鋼材が要求されている。

特許文献1では、成分系を制御し、加熱後熱圧延を行い、その後再加熱して加速冷却を行う、耐摩耗鋼板の製造方法が提案されている。

特許文献2では、成分系を制御し、直径50nm以下の微細析出物を用いて、製造中にオーステナイト粒成長を抑制することで、低温靭性を有する耐摩耗厚鋼板を製造する方法が提案されている。

特許文献3では、成分系を制御し、加熱後熱間圧延を行い、その熱間圧延の直後に加速冷却を適用する、低合金耐摩耗鋼板を製造する方法が提案されている。

概要

寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼を提供する。所定の化学組成からなり、厚さが40mm以上であり、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における金属組織が、マルテンサイト及び下部ベイナイト面積率の合計:50〜100%、旧オーステナイト平均結晶粒径:5〜23μmであり、表面から厚さ方向に1mmの位置において、ブリネル硬さ:360〜440であることを特徴とする、耐摩耗鋼である。なし

目的

本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、新規な構成により、寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

化学組成が、質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.01〜1.20%、Mn:0.01〜2.00%、P:0.017%未満、S:0.010%以下、Cu:0.01〜0.70%、Ni:0.01〜1.00%、Cr:0〜1.50%、Mo:0〜0.80%、W:0〜0.50%、Nb:0〜0.050%、V:0〜0.20%、Ti:0〜0.030%、B:0〜0.0030%、N:0.0001〜0.0070%、Al:0.001〜0.10%、Ca:0〜0.0050%、Zr:0〜0.0050%、Mg:0〜0.0050%、及びREM:0〜0.0050%残部:Fe及び不純物であり、厚さが40mm以上であり、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における金属組織が、マルテンサイト及び下部ベイナイト面積率の合計:50〜100%、旧オーステナイト平均結晶粒径:5〜23μmであり、表面から厚さ方向に1mmの位置において、ブリネル硬さ:360〜440であることを特徴とする、耐摩耗鋼

請求項2

表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置において、−40℃でのシャルピー衝撃試験での吸収エネルギー:27J以上であることを特徴とする、請求項1に記載の耐摩耗鋼。

請求項3

前記金属組織が、旧オーステナイト粒平均アスペクト比:2.0以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐摩耗鋼。

技術分野

0001

本発明は、建設機械産業機械等の耐摩耗性が要求される機械構成部材として用いるのに適している、高靭性を有する耐摩耗鋼に関する。

背景技術

0002

機械の構成部材の耐摩耗性はその表面硬度に強く支配されるため、土木鉱山用の建設機械や産業機械のような耐摩耗性が要求される機械の構成部材には高硬度鋼が用いられる。この高硬度鋼には、安定した耐摩耗性を有して長期の使用に耐えることができる特性が要求されている。また、近年では、寒冷地で用いられる建設機械や産業機械の需要が増加しており、このような寒冷地での使用に適した低温靭性を有する鋼材が要求されている。

0003

特許文献1では、成分系を制御し、加熱後熱圧延を行い、その後再加熱して加速冷却を行う、耐摩耗鋼板の製造方法が提案されている。

0004

特許文献2では、成分系を制御し、直径50nm以下の微細析出物を用いて、製造中にオーステナイト粒成長を抑制することで、低温靭性を有する耐摩耗厚鋼板を製造する方法が提案されている。

0005

特許文献3では、成分系を制御し、加熱後熱間圧延を行い、その熱間圧延の直後に加速冷却を適用する、低合金耐摩耗鋼板を製造する方法が提案されている。

先行技術

0006

特開2012−214890号公報
特開2014−194042号公報
特表2016−509631号公報

発明が解決しようとする課題

0007

特許文献1に記載の方法で製造された鋼板は、C含有量が大きいことにより高靭化が難しい。また、特許文献1に記載の方法においては、熱間圧延時の圧延条件について十分な検討がされておらず、したがって、靭性の向上の観点で依然として改善の余地があった。さらに、特許文献1の実施例は、再加熱温度が低いものが多く、したがって、高い硬度を確保するという観点においても課題があった。

0008

特許文献2では、鋼中に微細析出物を分散させることで、ピンニング効果によって再加熱中のオーステナイト粒の成長を抑制し、オーステナイト粒を微細化することが教示されている。しかし、このような微細析出物を鋼中に分散させる方法では、成分系の僅かな違いや再加熱温度の違いにより析出物分散状態に大きな変動が生じるため、オーステナイト粒の安定的な微細化が難しく、必ずしも高靭化を達成できない。また、P含有量が必ずしも十分に低く抑えられておらず、さらに靭性の低下をもたらすことがある。

0009

特許文献3に記載の方法で製造された鋼板は、C含有量が大きいことにより高靭化が難しい。また、低温での熱間圧延の直後に冷却(焼入れ)を行うことにより、鋼材組織に異方性が生じることが、本発明者らの検討により明らかになっている。したがって、圧延方向に破壊を生じさせる場合の靭性が低くなるという問題がある。

0010

本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、新規な構成により、寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼を提供することを目的とする。具体的には、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における−40℃でのシャルピー衝撃試験での吸収エネルギーが27J以上であり、ブリネル硬さ(表面から厚さ方向に1mmの位置におけるブリネル硬さ)が360〜440である、耐摩耗鋼を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.10〜0.20%、
Si:0.01〜1.20%、
Mn:0.01〜2.00%、
P:0.017%未満、
S:0.010%以下、
Cu:0.01〜0.70%、
Ni:0.01〜1.00%、
Cr:0〜1.50%、
Mo:0〜0.80%、
W:0〜0.50%、
Nb:0〜0.050%、
V:0〜0.20%、
Ti:0〜0.030%、
B:0〜0.0030%、
N:0.0001〜0.0070%、
Al:0.001〜0.10%、
Ca:0〜0.0050%、
Zr:0〜0.0050%、
Mg:0〜0.0050%、及び
REM:0〜0.0050%
残部:Fe及び不純物であり、
厚さが40mm以上であり、
表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における金属組織が、
マルテンサイト及び下部ベイナイト面積率の合計:50〜100%、
旧オーステナイト平均結晶粒径:5〜23μmであり、
表面から厚さ方向に1mmの位置において、
ブリネル硬さ:360〜440
であることを特徴とする、耐摩耗鋼。
(2)表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置において、
−40℃でのシャルピー衝撃試験での吸収エネルギー:27J以上であることを特徴とする、前記(1)に記載の耐摩耗鋼。
(3)前記金属組織が、旧オーステナイト粒平均アスペクト比:2.0以下
であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の耐摩耗鋼。

発明の効果

0012

本発明によれば、寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼が得られる。特に、板厚が厚い場合であっても、優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼を得ることができる。

0013

<耐摩耗鋼>
一般には、鋼材の硬度を高くすると靭性が低下する傾向にあり、耐摩耗鋼のような高硬度な鋼材で低温靭性を確保することは容易ではない。本発明者らは、低温下でも高靭性を有する耐摩耗鋼を得るために検討を重ねた結果、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径を5〜23μmにすることを知見した。

0014

本発明者らは、旧オーステナイト粒を微細化するための製造条件を種々検討し、その結果、焼入れの際の再加熱時に、ベイナイトやマルテンサイトからオーステナイトに逆変態する際の核生成サイトを増やすことが重要であることを知見した。これは、オーステナイト逆変態の核生成サイトを著しく増加させることで、全体がオーステナイトへの逆変態を完了した際のオーステナイト粒を細粒化することができるためである。

0015

そして、このオーステナイト逆変態の核生成サイトを増加させるためには、熱間圧延時の温度と圧下率を制御することが重要であることを知見した。

0016

また、焼入れの際の再加熱時のオーステナイトの核生成サイトが、ベイナイトやマルテンサイトの旧オーステナイト粒界のような大角粒界であることも知見した。そして、上述したように、熱間圧延時の温度と圧下率を制御することにより、熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化して扁平にしておくことができる。それによって、焼入れする際の再加熱時の単位体積当たりの大角粒界の面積、すなわちオーステナイト逆変態の核生成サイトを増加させることが可能となる。さらに、熱間圧延時のこのような制御により、鋼中に圧下歪を与えておくことで、結晶粒界蓄積するエネルギーを増加させることができ、それによって逆変態を促進することができる効果もあると推定される。

0017

さらに熱間圧延の終了時の温度を制御することも重要である。これは、熱間圧延の終了時の温度を低くし過ぎると、再加熱焼入れ後の旧オーステナイト粒が過度に微細化し、それによって焼入れが十分になされず、硬度が低下する場合があるためである。

0018

また、低温靭性を有する耐摩耗鋼を得るためには、旧オーステナイト平均結晶粒径の制御だけでは靭性の改善に十分ではなく、マルテンサイト及び下部ベイナイトを主体とした金属組織とするとよい。加えて、靭性向上には、各種合金の適切な組み合わせが重要である。

0019

特に、微細なオーステナイト粒を得た場合には、一般的に焼入れ性が低下する傾向にあり、焼入れを行っても十分な硬度が得られない場合がある。そのため、Cu、Niの添加により、焼入れ性を高めるとよい。

0020

[耐摩耗鋼の化学組成]
以下、本発明に係る耐摩耗鋼の構成要件について説明する。まず、鋼の化学組成を限定した理由について説明する。本明細書において、成分含有量についての「%」は質量%を意味する。

0021

(C:0.10〜0.20%)
C(炭素)は、鋼の高硬度化に有効な元素であり、本発明では、硬度を確保するために、C含有量の下限を0.10%とする。好ましいC含有量の下限は、0.11%である。より好ましいC含有量の下限は、0.12%である。一方、C含有量が0.20%を超えると、本発明の目標であるブリネル硬さ440以下の範囲を満たさなくなる場合があり、したがって靭性が低下するので、C含有量の上限を0.20%とする。靭性をより向上させるためには、C含有量の上限を0.16%とすることが好ましく、0.15%とすることがより好ましい。

0022

(Si:0.01〜1.20%)
Si(ケイ素)は、脱酸元素であり、固溶強化により硬度の向上にも寄与するため、本発明ではSi含有量の下限を0.01%とする。Si含有量の下限は、好ましくは0.10%であり、より好ましくは0.20%である。ただし、Si含有量が高すぎると靭性と溶接性劣化するため、Si含有量の上限を1.20%とする。好ましくはSi含有量の上限を0.80%とする。より好ましくはSi含有量の上限を0.70%又は0.50%とする。

0023

(Mn:0.01〜2.00%)
Mn(マンガン)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与するため、本発明ではMn含有量の下限を0.01%とする。より強度を高めるには、Mn含有量の下限を0.50%にすることが好ましく、1.00%とすることがより好ましい。一方、Mn含有量が2.00%を超えると、靭性及び溶接性が劣化するため、Mn含有量の上限を2.00%とする。Mn含有量の好ましい上限は1.70%又は1.50%であり、より好ましい上限は1.40%又は1.30%である。

0024

(P:0.017%未満)
P(リン)は、不純物であり、粒界などに偏析し、脆性破壊の発生を助長するため、本発明ではP含有量を0.017%未満とする。好ましくは、P含有量は0.013%以下である。より好ましくは、P含有量は0.010%以下である。0.017%以上になると靭性が著しく低下する。P含有量は可能な限り少ないことが好ましく、下限は0%であるが、0.001%未満にすると製造コストが著しく増大するため、例えば、P含有量の下限は0.001%、0.002%、0.003%、又は0.005%であってもよい。

0025

(S:0.010%以下)
S(硫黄)は、不純物であり、MnS等の硫化物を形成して靭性を低下させるため、本発明ではS含有量を0.010%以下とする。好ましくは、S含有量は0.007%以下である。より好ましくは、S含有量は0.005%以下である。0.010%を超えると靭性が低下する場合がある。S含有量は可能な限り少ないことが好ましく、下限は0%であるが、0.001%未満にすると製造コストが著しく増大するため、例えば、S含有量の下限は0.001%、0.002%又は0.003%であってもよい。

0026

(Cu:0.01〜0.70%)
Cu(銅)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与するため、Cu含有量は0.01%以上とする。Cu含有量の下限を、好ましくは0.10%、より好ましくは0.20%としてもよい。しかし、Cuの過剰な添加は、靭性低下鋳造後のスラブ割れや溶接性の低下をもたらすため、Cu含有量の上限を0.70%とする。好ましくは、Cu含有量の上限を0.60%とし、より好ましくは0.50%とする。

0027

(Ni:0.01〜1.00%)
Ni(ニッケル)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与するため、また、靭性の向上に寄与するため、Ni含有量の下限は0.01%とする。好ましいNi含有量は0.10%以上であり、より好ましいNi含有量は0.30%以上である。Niの過剰な添加はコストの上昇を招くため、Ni含有量の上限を1.00%とする。好ましくは、Ni含有量の上限を0.90%とし、より好ましくは0.80%とする。

0028

(Cr:0〜1.50%)
Cr(クロム)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。Cr含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、Cr含有量の下限を0.01%とすることが好ましく、0.05%とすることがより好ましい。しかし、Cr含有量が1.50%を超えると、靭性と溶接性を低下させる。したがって、Cr含有量の上限を1.50%とする。好ましくは、Cr含有量の上限を1.00%、より好ましくは0.95%とする。

0029

(Mo:0〜0.80%)
Mo(モリブデン)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。Mo含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、Mo含有量の下限を0.01%とすることが好ましく、0.05%とすることがより好ましい。しかし、Mo含有量が0.80%を超えると、靭性と溶接性を低下させる。したがって、Mo含有量の上限を0.80%とする。好ましくは、Mo含有量の上限を0.60%、より好ましくは0.55%とする。

0030

(W:0〜0.50%)
W(タングステン)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。W含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、W含有量の下限を0.001%とすることが好ましく、0.01%とすることがより好ましく、0.05%とすることがさらにより好ましい。しかし、Wの過剰な添加は靭性と溶接性を低下させるため、含有量の上限を0.50%とする。好ましくは、含有量の上限を0.08%とし、より好ましくは含有量の上限を0.07%又は0.06%とする。

0031

(Nb:0〜0.050%)
Nb(ニオブ)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。Nb含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、Nb含有量の下限を0.001%以上とすることが好ましく、0.005%とすることがより好ましい。一方で、Nbを過度に添加すると、靭性と溶接性を低下させるため、Nb含有量の上限を0.050%とする。好ましくはNb含有量の上限を0.040%、より好ましくは0.030%とする。

0032

(V:0〜0.20%)
V(バナジウム)は、焼入れ性の向上及び析出強化を通じて硬度の上昇に寄与する元素である。V含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、V含有量の下限を0.001%とすることが好ましく、0.010%とすることがより好ましい。一方、Vの過剰な添加は靭性と溶接性を低下させるため、V含有量の上限を0.20%とする。好ましくはV含有量の上限を0.15%、より好ましくは0.10%とする。

0033

(Ti:0〜0.030%)
Ti(チタン)は、TiNを形成して、鋼中のNを固定する元素である。Ti含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、Ti含有量の下限を0.001%とすることが好ましい。また、TiNは、ピンニング効果によって熱間圧延前のオーステナイト粒を細粒化する効果を有するため、Ti含有量の下限を0.005%とすることがより好ましい。一方、Ti含有量が0.030%を超えると、粗大なTiNが生成し、靭性を損なうため、Ti含有量の上限を0.030%とする。好ましくは、Ti含有量の上限を0.020%とし、より好ましくはTi含有量の上限を0.015%とする。

0034

(B:0〜0.0030%)
B(ホウ素)は、焼入れ性の向上を通じて硬度の上昇をもたらす元素であり、また粒界に偏析して粒界を強化して靭性を向上させる元素である。B含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、B含有量の下限を0.0001%とすることが好ましく、0.0005%とすることがより好ましい。一方、Bの過剰な添加は靭性と溶接性を低下させるため、B含有量の上限を0.0030%とする。好ましくはB含有量の上限を0.0015%、より好ましくは0.0010%とする。

0035

(N:0.0001〜0.0070%)
N(窒素)は、TiNを形成し、金属組織の細粒化や析出強化に寄与する元素であるため、N含有量の下限を0.0001%とする。好ましくは、N含有量の下限を0.0010%とし、より好ましくは0.0020%とする。しかし、N含有量が過剰になると、靭性が低下し、鋳造時の表面割れや製造された鋼材の歪時効による材質不良の原因となるため、N含有量の上限を0.0070%とする。好ましくは、N含有量の上限を0.0050%、より好ましくは0.0040%とする。

0036

(Al:0.001〜0.10%)
Al(アルミニウム)は、本発明では脱酸元素として必要であり、脱酸の効果を得るためAl含有量の下限は0.001%とする。Al含有量の下限を0.010%とすることが好ましく、0.030%とすることがより好ましい。一方、Alを過剰に添加すると、Al酸化物が粗大化して脆性破壊の基点となり、靭性が低下するので、Al含有量の上限を0.10%とする。好ましくは、Al含有量の上限を0.080%とし、より好ましくは0.070%とする。

0037

(Ca:0〜0.0050%)
Ca(カルシウム)は、硫化物の形態制御に有効な元素であり、粗大なMnSの生成を抑制し、靭性の向上に寄与する。Ca含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、Ca含有量の下限を0.0001%とすることが好ましく、0.0010%とすることがより好ましい。一方、Ca含有量が0.0050%を超えると、靭性が低下することがあるため、Ca含有量の上限は0.0050%とする。好ましいCa含有量の上限は0.0030%であり、より好ましいCa含有量の上限は0.0025%である。

0038

(Zr:0〜0.0050%)
Zr(ジルコニウム)は、炭化物及び窒化物として析出し、鋼の析出強化に寄与する。Zr含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、Zr含有量の下限を0.0001%とすることが好ましく、0.0010%とすることがより好ましい。一方、Zr含有量が0.0050%を超えると、Zrの炭化物及び窒化物の粗大化を招き、靭性が低下することがあるため、Zr含有量の上限を0.0050%とする。好ましいZr含有量の上限は0.0030%であり、より好ましいZr含有量の上限は0.0020%である。

0039

(Mg:0〜0.0050%)
Mg(マグネシウム)は、母材靭性溶接HAZ靭性の向上に寄与する。Mg含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、Mg含有量の下限を0.0001%とすることが好ましく、0.0005%とすることがより好ましい。一方、0.0050%超のMgを添加しても、上記効果が飽和することから、Mg含有量の上限を0.0050%とする。好ましいMgの含有量の上限は0.0040%であり、より好ましい上限は0.0030%である。

0040

(REM:0〜0.0050%)
REM(希土類元素)は、母材靭性や溶接HAZ靭性の向上に寄与する。REM含有量の下限は0%であるが、この効果を確実に得るためには、REM含有量の下限を0.0001%とすることが好ましく、0.0005%とすることがより好ましい。一方、0.0050%超のREMを添加しても、上記効果が飽和することから、REM含有量の上限を0.0050%とする。好ましいREMの含有量の上限は0.0040%であり、より好ましい上限は0.0030%である。

0041

本発明の耐摩耗鋼において、上記元素以外の残部はFe及び不純物からなる。ここで「不純物」とは、耐摩耗鋼を工業的に製造する際に、鉱石スクラップ等のような原料をはじめとして、製造工程の種々の要因によって混入する元素である。

0042

[耐摩耗鋼の物性]
次に、金属組織の面積率及び旧オーステナイト平均結晶粒径を限定した理由を説明する。本発明において、金属組織の面積率及び旧オーステナイト平均結晶粒径の測定は、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置で行われる。

0043

(金属組織の面積率)
本発明に係る耐摩耗鋼の金属組織の面積率の測定は、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置から採取したサンプルをナイター溶液腐食させて走査電子顕微鏡(SEM)で観察することにより行われる。具体的には、腐食させたサンプルをSEMで撮影した画像に、10μm間隔で縦横に20本×20本の直線を引き、その格子点の位置の金属組織がマルテンサイト、下部ベイナイト、又は上部ベイナイトであるかどうかを判定する。次いで、その判定の結果から、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置におけるマルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計(面積%)を算出する。ここで、本明細書において、「上部ベイナイト」は、セメンタイトラスの界面(ラス間)に存在しているもの、「下部ベイナイト」は、セメンタイトがラスの内部に存在しているものをいう。ラスとは、マルテンサイト変態により旧オーステナイト粒界内に生成される金属組織をいう。本発明によれば、低温靭性を有する耐摩耗鋼を得るためには、鋼材の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における金属組織において、マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計が50〜100%である必要がある。マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計が50%未満となると、靭性が低下する。また、マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計の上限は、100%であるが、99%、又は98%であってもよい。マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計の下限は好ましくは60%、より好ましくは70%、80%、90%又は95%である。マルテンサイトの面積率の下限を50%としてもよい。必要に応じて、マルテンサイトの面積率の下限を70%、80%又は90%としてもよい。マルテンサイトの面積率の上限を100%又は95%としてもよい。

0044

(旧オーステナイト平均結晶粒径)
本発明に係る耐摩耗鋼の金属組織における旧オーステナイト平均結晶粒径の決定には切断法(JIS G0551:2013)を採用する。具体的には、まず、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置から採取したサンプルをピクリン酸溶液で腐食することで旧オーステナイト粒界を現出させる。次いで、光学顕微鏡で撮影し、撮影した画像に、長さ2mm〜10mmの直線状の試験線(複数に分割されていても良い)を引き、試験線が分断する結晶粒界の数を数える。次いで、試験線の長さを、試験線が分断した結晶粒界の数で割って平均線分長を求める(すなわち、平均線分長=試験線長さ/試験線が分断する結晶粒界数)ことで、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径を算出する。本発明によれば、低温靭性を有する耐摩耗鋼を得るためには、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径が23μm以下である必要がある。旧オーステナイト平均結晶粒径が23μmを超えると、靭性が低下する。好ましくは、旧オーステナイト平均結晶粒径は20μm以下、より好ましくは18μm以下である。また、焼入れ性の低下を防ぐため、旧オーステナイト平均結晶粒径の下限値を5μmとする。好ましくは、旧オーステナイト平均結晶粒径は7μm以上、より好ましくは9μm以上又は11μmである。

0045

後述する製造方法により得られる耐摩耗鋼においては、熱間圧延後直ちに水冷による直接焼入れを採用していないため、直接焼入れした場合に比べて伸長した旧オーステナイト粒はない。このため、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置で、旧オーステナイト粒の平均アスペクト比を2.0以下としてもよい。この平均アスペクト比が1.5以下であるとより好ましく、1.2以下であるとさらに好ましい。本発明において、「旧オーステナイト粒の平均アスペクト比」は、鋼板の表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置での旧オーステナイト粒のアスペクト比平均値である。ただし、測定する旧オーステナイト粒の個数は、50個とする。ここで、ある1つの旧オーステナイト粒のアスペクト比は、旧オーステナイト粒の圧延方向の長さを旧オーステナイト粒の板厚方向の長さで割ることで求められる。旧オーステナイト粒の圧延方向及び板厚方向の長さの測定は、光学顕微鏡により、鋼板の板厚方向と圧延方向を含む面(鋼板の幅方向に垂直な面)、すなわちL断面を観察する事で行うことができる。

0046

(ブリネル硬さ)
鋼の硬度はブリネル硬さで示され、本発明に係る耐摩耗鋼のブリネル硬さは360〜440である。ブリネル硬さの測定位置は、鋼材表面から厚さ方向に1mmの位置である。ただし、測定する面は鋼材表面に平行な面である。その面においてブリネル硬さを3点測定し、その平均値を本発明のブリネル硬さとする。ブリネル硬さの測定は、JIS Z2243:2008に準拠し、圧子の直径10mmの超硬合金球を用いて3000kgfの試験力で行う(HBW10/3000)。本発明に係る耐摩耗鋼のブリネル硬さは、好ましくは370以上、より好ましくは380以上、さらに好ましくは390以上である。

0047

(−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギー)
鋼の靭性は、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーで示すことができる。例えば、−40℃でのシャルピー衝撃試験で評価した場合は、本発明に係る耐摩耗鋼の吸収エネルギーは27J以上である。シャルピー衝撃試験はJIS Z2242:2005に準拠し、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置から採取したシャルピー試験片を使用して、低温靭性を評価するために−40℃で実施する。本発明に係る耐摩耗鋼の−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーは、好ましくは40J以上、より好ましくは50J以上、さらに好ましくは60J以上、最も好ましくは70J以上である。その上限は特に定める必要はないが、400J又は300Jとしてもよい。

0048

本発明に係る耐摩耗鋼、すなわち、上述の化学組成を有し、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における金属組織が、マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計:50〜100%、旧オーステナイト平均結晶粒径:5〜23μmである耐摩耗鋼は、27J以上の、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーを有する。また、厚さの1/4の位置におけるマルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計が50〜100%であり、表面から厚さ方向に1mmの位置において360〜440のブリネル硬さを有する。

0049

(耐摩耗鋼の厚さ)
耐摩耗鋼の厚さ(板厚)は、特に限定されない。例えば、15mm以上、20mm以上、30mm以上、又は40mm以上であり、100mm以下、90mm以下、80mm以下、又は70mm以下であってもよい。本発明によれば、熱間圧延時の温度と圧下率及び熱間圧延の終了時の温度を制御し、さらに再加熱焼入れの温度を制御することで、板厚にかかわらず、旧オーステナイト粒を適切に微細化し十分な焼入れ性を確保することができる。より具体的には、温度と圧下率を制御して熱間圧延を行い、放冷後、適切な温度で再加熱することで、オーステナイト逆変態の核生成サイトを増加させることができる。その結果、オーステナイトへの逆変態が完了した後に、鋼材の内部における旧オーステナイト粒を適切に微細化することが可能となる。この効果は、鋼板の板厚に関係なく得ることができ、例えば従来では難しかった板厚が大きい場合(例えば15mm以上。特に、40mm以上)でも適用できる。耐摩耗鋼の形状を特に限定する必要はないが、鋼板としてもよい。

0050

<耐摩耗鋼の製造方法>
次に、本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法の一例について説明する。

0051

本発明に係る耐摩耗鋼を製造するのに使用されるスラブの製造方法は特に限定されない。例えば、溶鋼の化学組成を調整した後、鋳造し、スラブを得ることができる。スラブの厚みは、生産性の観点から、200mm以上とすることが好ましい。また、偏析の低減や、熱間圧延を行う前の加熱温度均質性等を考慮すると、スラブの厚みは350mm以下が好ましい。このようなスラブを、以下で説明する本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法において使用することができる。

0052

(加熱工程)
次に、熱間圧延を行う前にスラブを1000〜1350℃に加熱する。スラブの加熱温度が1000℃未満であると、合金元素を十分に固溶できなくなる場合があるので、下限を1000℃とする。一方、スラブの加熱温度が1350℃よりも高温になると、素材であるスラブの表面のスケール液体化して製造に支障が出るため、上限は1350℃とする。

0053

なお、この加熱を行う前に、合金元素の固溶や偏析の低減を目的とした1100〜1350℃の加熱を適用しても良い。

0054

(熱間圧延工程)
本発明では、熱間圧延後の旧オーステナイト粒の細粒化と扁平化により、再加熱時のオーステナイト核生成密度を上げるために、加熱されたスラブを、1000〜825℃超において20%以上の圧下率で熱間圧延を行う。この圧下率が20%を下回ると、熱間圧延後の旧オーステナイト粒の微細化が不十分になり靭性が低下する場合がある。1000〜825℃超での圧下率は25%以上であると好ましく、30%以上であるとより好ましい。なお、再加熱焼入れ時の過度なオーステナイト粒の微細化による焼入れ性の低下を防ぐため、1000〜825℃超における圧下率の上限は75%以下とすることが好ましい。また、熱間圧延後及び放冷後に圧下歪を残して、再加熱時のオーステナイト核生成の密度を上げるために、さらに825〜730℃において10%以上の圧下率で熱間圧延を行う。この圧下率が10%を下回ると、熱間圧延後の旧オーステナイト粒の微細化が不十分になり靭性が低下する場合がある。825〜730℃での圧下率は15%以上であると好ましく、20%以上であるとより好ましい。なお、再加熱焼入れ時の過度なオーステナイト粒の微細化による焼入れ性の低下を防ぐため、825〜730℃における圧下率の上限は80%とすることが好ましい。さらに、本発明では、熱間圧延の終了時の温度は730℃以上である。熱間圧延の終了時の温度が730℃未満になると、再加熱焼入れ後の旧オーステナイト粒が過度に微細化し、焼入れ性が低下し硬度が不十分になる場合がある。熱間圧延の終了時の温度は好ましくは740℃以上、750℃以上又は760℃以上であってもよい。また、熱間圧延の終了時の温度は好ましくは820℃以下、810℃以下、800℃以下、790℃以下、又は780℃以下であってもよい。

0055

本発明に係る熱間圧延工程により、熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化して扁平にしておくことができる。それによって、熱間圧延後に焼入れする際の再加熱時のオーステナイト逆変態の核生成サイトを増加させることが可能となる。よって、鋼板の板厚が厚い場合であっても、鋼板の内部の旧オーステナイト粒を適切に微細化することができ、それにより高い硬度及び低温靭性を確保することが可能となる。

0056

(放冷工程)
次いで、熱間圧延された鋼板を大気中で放冷する。水冷を適用しないことで、鋼板の形状不良を大幅に抑制することができる。水冷する場合は水素脆化が問題になる場合がある。放冷は、例えば400℃まで行えば十分である。

0057

(再加熱・焼入れ工程)
次に、熱間圧延後に放冷した鋼板を、860℃以上の温度に再加熱して、その後加速冷却(水冷)することで焼入れする。すなわち、この工程を行って得られる鋼板は再加熱焼入れ材(RQ材)である。再加熱温度が860℃未満となると、合金元素の固溶が不十分になり、かつオーステナイト逆変態が100%完了せず焼入れ性が低下する可能性があるので、再加熱温度の下限は860℃とする。再加熱温度が高過ぎると、オーステナイト粒の粗大化により焼入れ後の靭性が低下する可能性があるので、再加熱温度の上限は930℃が好ましい。焼入れの際の冷却速度は5℃/秒以上で行うことが、硬度と靭性を確保する上で好ましい。本工程を行って得られた鋼板(RQ材)は、再加熱焼入れを行わない直接焼入れを行って得られた鋼板(DQ材)に比べて、旧オーステナイト粒を微細化することができる。また、DQ材に比べて旧オーステナイト粒の平均アスペクト比を小さくすることができる場合がある。

0058

以上の条件で熱間圧延及び焼入れされて製造された耐摩耗鋼は、優れた硬度及び低温靭性を有する。具体的には、そのような耐摩耗鋼は、ブリネル硬さが360〜440となり、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが27J以上となる。また、本発明に係る耐摩耗鋼の製造方法は、高度な製鋼技術を必要とせず、製造負荷低減、工期の短縮を図ることができる。したがって、経済性を損なうことなく、建設機械の信頼性を向上させることができる等、産業上の貢献が極めて顕著である。

0059

表1に示す化学組成を有する鋼を溶製し、連続鋳造により、厚みが240〜300mmのスラブを製造した。鋼の溶製は転炉で行い、一次脱酸し、合金元素を添加して化学組成を調整し、必要に応じて、真空脱ガス処理を行った。このようにして得られたスラブを加熱し、熱間圧延を行い、放冷した後に焼入れを行い、鋼板を製造した。なお、製造No.57及び58(比較例)については、熱間圧延後直ちに加速冷却(水冷)を行った(再加熱を行わなかった)DQ材である。表1に示した各元素の含有量は、製造後の鋼から採取した試料化学分析して求めたものである。

0060

0061

製造の際のスラブの加熱温度、熱間圧延等の製造条件、製造した試料のブリネル硬さ、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置におけるマルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径、及び表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーの値を、それぞれ表2及び表3に示す。

0062

表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における金属組織のマルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計は、上述したように、鋼片をナイタール溶液で腐食してSEMで観察することにより判定することができる。具体的には、SEMで撮影した画像に、10μm間隔で縦横に20本×20本の直線を引き、その格子点の位置の金属組織がマルテンサイト、下部ベイナイト、又は上部ベイナイトであるかどうかを判定し、マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計を面積%で算出した。

0063

表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置における旧オーステナイト平均結晶粒径は、上述したように、鋼片をピクリン酸溶液で腐食することで旧オーステナイト粒界を現出させ、光学顕微鏡で撮影した画像に、長さ2mm〜10mmの直線状の試験線(複数に分割されていても良い)を引き、試験線が分断する結晶粒界の数を数えた。次いで、試験線の長さを、試験線が分断した結晶粒界の数で割って平均線分長を求めることで旧オーステナイト平均結晶粒径を算出した。また、本発明に係る全ての例において、旧オーステナイト粒径の平均アスペクト比は2.0以下であった。

0064

シャルピー衝撃試験は、JIS Z2242:2005に準拠し、−40℃で行った。ブリネル硬さの測定は、表面から厚さ方向に1mmの位置において、JIS Z2243:2008に準拠し、圧子の直径10mmの超硬合金球を用いて3000kgfの試験力で行った(HBW10/3000)。

0065

本発明に係る耐摩耗鋼の硬度及び靭性の目標値は、ブリネル硬さが360〜440、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが27J以上である。

0066

0067

0068

表2及び表3に示すように、本発明例である製造No.1〜7、No.12〜14、No.16〜19、21、34、37〜39、41〜43、及び45〜47は、化学組成、加熱温度、1000〜825℃超での熱間圧延での圧下率、825〜730℃での熱間圧延での圧下率、熱間圧延の終了時の温度及び再加熱温度が本発明の範囲を満たしていた。その結果として、マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計並びに旧オーステナイト平均結晶粒径が本発明の範囲内であり、ブリネル硬さが本発明の目標である360〜440の範囲内であり、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが本発明の目標である27J以上を満たしていた。

0069

一方、表2の製造No.10、No.11、No.15、及びNo.24〜33、並びに表3の製造No.35、No.36及びNo49〜58は、ブリネル硬さ、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーのいずれか又は両方が、上記の目標を満たさなかった。

0070

製造No.10は、1000〜825℃超での圧下率が低かったため、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が23μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。

0071

製造No.11は、825〜730℃での圧下率が低かったため、表面から厚さ方向に厚さの1/4の位置の旧オーステナイト平均結晶粒径が23μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。

0072

製造No.15は、再加熱温度が860℃未満であったため、焼入れ性が低下し、マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計が50%未満となり、それによって、ブリネル硬さ及び−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。

0073

製造No.24はC含有量が少なく、ブリネル硬さが目標に満たなかった例である。また、製造No.25はC含有量が多く、ブリネル硬さ及び−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標値に達しなかった例である。さらに、製造No.26はSi含有量が多く、製造No.27はMn含有量が多く、製造No.28はP含有量が多く、製造No.29はS含有量が多く、製造No.30はCu含有量が多く、製造No.31はAl含有量が多く、製造No.32はTi含有量が多く、製造No.33はN含有量が多かったため、いずれの鋼試料においても、−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標値に達しなかった例である。

0074

また、表3の製造No.35は、熱間圧延の終了時の温度が730℃未満であったため、再加熱焼入れ後の旧オーステナイト粒が過度に微細化し、焼入れ性が低下し、ブリネル硬さが目標を満足しなかった例である。

0075

製造No.36及びNo.49〜56は、825〜730℃においての圧下率が0%であったため、再加熱焼入れ後の旧オーステナイト粒径が23μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。

0076

製造No.57は、825〜730℃においての圧下率が0%であり、再加熱焼入れを行わなかった(DQ材であった)ため、旧オーステナイト粒径が23μmを超え、それによって−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。

実施例

0077

製造No.58は、再加熱焼入れを行わなかった(DQ材であった)ため、旧オーステナイト粒径が23μmを超え、かつ、マルテンサイト及び下部ベイナイトの面積率の合計が50%未満となり、それによってブリネル硬さ及び−40℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが目標を満足しなかった例である。

0078

本発明により、寒冷地でも使用が可能な優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼を得ることができる。

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