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技術 金属積層造形用混合粉末

出願人 日立金属株式会社
発明者 陳美伝藤枝正桑原孝介
出願日 2020年4月9日 (10ヶ月経過) 出願番号 2020-070340
公開日 2020年7月30日 (6ヶ月経過) 公開番号 2020-114948
状態 未査定
技術分野 粉末冶金 ダイヤモンド又は金属化合物を含有する合金
主要キーワード ギブズエネルギー 溶融凝固後 造ワーク 角柱材 混合エントロピー 複雑形状物 元素マップ 稼働環境
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

ハイエントロピー合金が有する高い耐腐食性犠牲にすることなく、従来よりも更に高い機械的特性を示す積層造形合金材を製造するための、金属積層造形用混合粉末を提供する。

解決手段

本発明に係る金属積層造形用混合粉末は、前記混合粉末は、合金粉末酸素原子供給源酸化物粉末との混合物であり、前記混合粉末の金属組成は、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、Moを0原子%超8原子%未満の範囲で含み、残部が不可避不純物からなり、前記酸素原子供給源酸化物は、Fe酸化物およびNi酸化物のいずれか一種以上であることを特徴とする。

概要

背景

近年、従来の合金(例えば、1〜3種類の主要成分元素複数種副成分元素微量添加した合金)の技術思想とは一線を画した新しい技術思想の合金として、ハイエントロピー合金(HEA)が提唱されている。HEAとは、5種類以上の主要金属元素(それぞれ5〜35原子%)から構成された合金と定義されており、次のような特徴が発現することが知られている。

例えば、(a)ギブス自由エネルギー式における混合エントロピー項が負に増大することに起因する混合状態の安定化、(b)複雑な微細構造による拡散遅延、(c)構成原子サイズ差に起因する高格子歪みに起因する機械的特性の向上、(d)多種元素共存による複合影響(カクテル効果とも言う)による耐腐食性の向上などを挙げることができる。

例えば、特許文献1(特開2002-173732)には、複数種類の金属元素をキャスティングあるいは合成してなるハイエントロピー多元合金において、該合金が5種類から11種類の主要金属元素を含有し、各一種類の主要金属元素のモル数が合金総モル数の5%から30%とされたハイエントロピー多元合金が開示されている。また、前記主要金属元素は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)を含む金属元素群より選択されることが記載されている。

特許文献1によると、キャスト状態において、従来のカーボンスチールや合金カーボンスチールよりも高い硬度、高い耐熱性および高い耐腐食性を兼ね備えたハイエントロピー多元合金を提供できるとされている。ただし、特許文献1のハイエントロピー多元合金は、高硬度で焼き戻し軟化抵抗性を有するが故に難加工性であり、塑性加工機械加工により所望形状部材を作製することが難しいという弱点があった。

特許文献1の該弱点を克服する技術として、特許文献2(WO 2017/138191 A1)の技術が報告されている。特許文献2には、合金部材であって、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなる化学組成を有し、母相結晶中に平均粒径40 nm以下の極小粒子分散析出している合金部材が開示されている。

特許文献2によると、高機械的強度かつ高耐腐食性を有するハイエントロピー合金を用い、合金組成および微細組織均質性に優れ、かつ形状制御性に優れた合金部材を提供できるとされている。

なお、特許文献3については後述する。

概要

ハイエントロピー合金が有する高い耐腐食性を犠牲にすることなく、従来よりも更に高い機械的特性を示す積層造形合金材を製造するための、金属積層造形用混合粉末を提供する。本発明に係る金属積層造形用混合粉末は、前記混合粉末は、合金粉末酸素原子供給源酸化物粉末との混合物であり、前記混合粉末の金属組成は、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、Moを0原子%超8原子%未満の範囲で含み、残部が不可避不純物からなり、前記酸素原子供給源酸化物は、Fe酸化物およびNi酸化物のいずれか一種以上であることを特徴とする。

目的

本発明は、耐腐食性および機械的特性に優れる合金材の技術に関し、特に、ハイエントロピー合金と称される合金を用いた積層造形合金材を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

金属積層造形用混合粉末であって、前記混合粉末は、合金粉末酸素原子供給源酸化物粉末との混合物であり、前記混合粉末の金属組成は、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、Moを0原子%超8原子%未満の範囲で含み、残部が不可避不純物からなり、前記酸素原子供給源酸化物は、Fe酸化物およびNi酸化物のいずれか一種以上であることを特徴とする金属積層造形用混合粉末。

請求項2

請求項1に記載の金属積層造形用混合粉末において、前記酸素原子供給源酸化物は、Fe2O3、Fe3O4およびNiOのいずれか一種以上であることを特徴とする金属積層造形用混合粉末。

請求項3

請求項1または請求項2に記載の金属積層造形用混合粉末において、前記合金粉末の総量を100質量部としたときに、前記酸素原子供給源酸化物の粉末が1質量部以上10質量部以下の範囲で混合されていることを特徴とする金属積層造形用混合粉末。

請求項4

請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の金属積層造形用混合粉末において、前記混合粉末の金属組成は、Y、Nb、AlおよびVのうちの一種を0原子%超4原子%以下の範囲で更に含み、前記Y、Nb、AlおよびVのうちの一種と前記Moとの合計が8原子%以下であることを特徴とする金属積層造形用混合粉末。

請求項5

請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の金属積層造形用混合粉末において、前記混合粉末の金属組成は、前記Coを20原子%以上35原子%以下で、前記Crを10原子%以上25原子%以下で、前記Feを10原子%以上25原子%以下で、前記Niを15原子%以上30原子%以下で、前記Tiを5原子%以上15原子%以下で含むことを特徴とする金属積層造形用混合粉末。

技術分野

0001

本発明は、耐腐食性および機械的特性に優れる合金材の技術に関し、特に、ハイエントロピー合金と称される合金を用いた積層造形合金材を提供するための混合粉末金属積層造形用混合粉末)に関するものである。

背景技術

0002

近年、従来の合金(例えば、1〜3種類の主要成分元素複数種副成分元素微量添加した合金)の技術思想とは一線を画した新しい技術思想の合金として、ハイエントロピー合金(HEA)が提唱されている。HEAとは、5種類以上の主要金属元素(それぞれ5〜35原子%)から構成された合金と定義されており、次のような特徴が発現することが知られている。

0003

例えば、(a)ギブス自由エネルギー式における混合エントロピー項が負に増大することに起因する混合状態の安定化、(b)複雑な微細構造による拡散遅延、(c)構成原子サイズ差に起因する高格子歪みに起因する機械的特性の向上、(d)多種元素共存による複合影響(カクテル効果とも言う)による耐腐食性の向上などを挙げることができる。

0004

例えば、特許文献1(特開2002-173732)には、複数種類の金属元素をキャスティングあるいは合成してなるハイエントロピー多元合金において、該合金が5種類から11種類の主要金属元素を含有し、各一種類の主要金属元素のモル数が合金総モル数の5%から30%とされたハイエントロピー多元合金が開示されている。また、前記主要金属元素は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)を含む金属元素群より選択されることが記載されている。

0005

特許文献1によると、キャスト状態において、従来のカーボンスチールや合金カーボンスチールよりも高い硬度、高い耐熱性および高い耐腐食性を兼ね備えたハイエントロピー多元合金を提供できるとされている。ただし、特許文献1のハイエントロピー多元合金は、高硬度で焼き戻し軟化抵抗性を有するが故に難加工性であり、塑性加工機械加工により所望形状部材を作製することが難しいという弱点があった。

0006

特許文献1の該弱点を克服する技術として、特許文献2(WO 2017/138191 A1)の技術が報告されている。特許文献2には、合金部材であって、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、かつMoを0原子%超8原子%以下の範囲で含み、残部が不可避不純物からなる化学組成を有し、母相結晶中に平均粒径40 nm以下の極小粒子分散析出している合金部材が開示されている。

0007

特許文献2によると、高機械的強度かつ高耐腐食性を有するハイエントロピー合金を用い、合金組成および微細組織均質性に優れ、かつ形状制御性に優れた合金部材を提供できるとされている。

0008

なお、特許文献3については後述する。

先行技術

0009

特開2002−173732号公報
国際公開第2017/138191号
国際公開第2015/020007号

発明が解決しようとする課題

0010

原油天然ガス等の掘削に使用される油井機器化学プラントの材料として、現在、ハイエントロピー合金の利用が検討され、研究が進められている。油井用機器は、油井掘削の厳しい環境(例えば、中温域(〜350℃程度)で腐食性の強いガス液体に曝される環境)で使用されることから、その材料には高い耐腐食性が求められる。

0011

また、近年では、油井掘削における高深度化の進展に伴って、以前よりも高い応力下で油井用機器の運転が必要になり、油井用機器の合金部材には従来よりも高い機械的特性が求められるようになってきた。

0012

特許文献2に記載の合金部材は、HEAとしての特徴(例えば、高い耐腐食性、優れた機械的特性)を犠牲にすることなく、形状制御性や延性に優れることから、大変有望な部材と考えられる。しかしながら、以前よりも高い応力下での使用を考慮すると、特許文献2の合金部材よりも更に高い機械的特性(例えば、引張強さ、硬さ)を実現することが望まれている。

0013

引張強さの向上は、例えば、流体機械における回転部材高速回転化(すなわち、流体機械の吐出流量の増大や吐出圧力の増大)に貢献する。また、硬さの向上は、例えば、流体機械の回転部材における耐壊食性の向上(すなわち、流体機械の耐久性の向上)に貢献する。

0014

本発明の目的は、HEAが有する高い耐腐食性を犠牲にすることなく従来よりも更に高い機械的特性を示す積層造形合金材を製造するための、金属積層造形用混合粉末を提供することにある。

課題を解決するための手段

0015

(I)本発明の一態様は、金属積層造形用の混合粉末であって、
前記混合粉末は、合金粉末酸素原子供給源酸化物粉末との混合物であり、
前記混合粉末の金属組成は、Co、Cr、Fe、Ni、Tiの各元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、Moを0原子%超8原子%未満の範囲で含み、残部が不可避不純物からなり、
前記酸素原子供給源酸化物は、Fe酸化物およびNi酸化物のいずれか一種以上であることを特徴とする金属積層造形用混合粉末を提供する。

0016

本発明は、上記の金属積層造形用混合粉末(I)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記酸素原子供給源酸化物は、Fe2O3、Fe3O4およびNiOのいずれか一種以上である。
(ii)前記合金粉末の総量を100質量部としたときに、前記酸素原子供給源酸化物の粉末が1質量部以上10質量部以下の範囲で混合されている。
(iii)前記混合粉末の金属組成は、Y(イットリウム)、Nb(ニオブ)、AlおよびVのうちの一種を0原子%超4原子%以下の範囲で更に含み、前記Y、Nb、AlおよびVのうちの一種と前記Moとの合計が8原子%以下である。
(iv)前記混合粉末の金属組成は、前記Coを20原子%以上35原子%以下で、前記Crを10原子%以上25原子%以下で、前記Feを10原子%以上25原子%以下で、前記Niを15原子%以上30原子%以下で、前記Tiを5原子%以上15原子%以下で含む。

発明の効果

0017

本発明によれば、HEAが有する高い耐腐食性を犠牲にすることなく従来よりも更に高い機械的特性を示す積層造形合金材を製造するための、金属積層造形用混合粉末を提供することができる。

図面の簡単な説明

0018

本発明に係る金属積層造形用混合粉末を用いて合金材を製造する方法の一例を示す工程図である。
本発明に係る金属積層造形用混合粉末を用いて製造した合金材を利用した製造物の一例であり、流体機械のインペラを示す写真である。
本発明に係る金属積層造形用混合粉末を用いて製造した製造物を有する流体機械の一例であり、インペラが組み込まれた遠心圧縮機を示す断面模式図である。
混合粉末MP2を用いた合金造形物FA2の微細組織の一例を示す高角度環状暗視野像(HAADF像)および元素マップ(Ti成分マップ、Ni成分マップ)である。
混合粉末MP2を用いた合金造形物FA2の微細組織の他の一例を示すHAADF像および元素マップ(Ti成分マップ、O成分マップ)である。
混合粉末MP3を用いた合金造形物FA3の微細組織の一例を示す走査型電子顕微鏡像SEM像)である。

0019

初期検討および本発明の基本思想)
本発明者等は、HEAが有する高い耐腐食性を犠牲にすることなく、従来よりも更に高い機械的特性を示す合金材および該合金材を用いた製造物の開発を目指すにあたって、酸化物粒子分散強化に着目した。

0020

酸化物粒子分散強化という技術は、Ni基超合金において公知の技術である(例えば、特許文献3、WO 2015/020007 A1参照)。特許文献3によると、当該Ni基合金材の製造方法については、酸化物粒子を均一に分散させるために、粉末冶金的手法を採用することが一般的に考慮される旨が記載されている。しかしながら、粉末冶金的手法(例えば、熱間等方加圧法)は、インペラのような複雑形状を有する部材の製造には製造コストの観点から必ずしも適していないという弱点がある。

0021

一方、近年、最終製品ニアネットシェイプ金属部材を製造する技術として、積層造形法(Additive Manufacturing、AM法)などの3次元造形技術(いわゆる3Dプリンティング)が注目されている。積層造形法は、複雑形状を有する部材であっても直接的に造形できることから、製造ワークタイムの短縮や製造歩留まりの向上の観点(すなわち、製造コストの低減の観点)で大変魅力的な技術である。

0022

本発明者等は、初期検討として、HEA粉末とTi酸化物粒子とを混合した混合粉末を用いて積層造形法による合金材の作製を試みた。しかしながら、積層造形する過程局所溶融急速凝固を繰り返して積層する過程)において、混合したTi酸化物粒子が凝固表面近傍凝集し易く、当該手法において母相結晶粒内でのTi酸化物粒子の均一分散は困難であった。

0023

そして、初期検討結果の詳細な調査および考察を通して、分散させようとして混合したTi酸化物粒子の熱力学的安定性が高過ぎたことが望ましくない実験結果の要因ではないかと考えた。言い換えると、混合したTi酸化物粒子の熱力学的安定性が高かったことから、積層造形の局所溶融の際に該酸化物粒子が十分に溶融せず、母相合金融液と酸化物粒子との比重差に起因して、酸化物粒子が凝固表面近傍に凝集した可能性があると考えられた。

0024

そこで、積層造形の局所溶融の際に溶融または熱分解し易い酸化物粒子を積層造形の出発材料として混合し、局所溶融の際の溶融や熱分解によって積極的に酸素原子を乖離させ、当該乖離した酸素原子を急速凝固の際に他の適当な金属原子再結合させれば、母相結晶粒内で酸化物粒子の均一分散が実現するのではないかという仮説を立てた。

0025

本発明者等は、熱力学的安定性の指標として金属酸化物標準生成ギブズエネルギーに着目し、合金組成、微細組織および機械的特性の間の関係について鋭意研究を重ねた。その結果、積層造形の局所溶融の際に溶融または熱分解し易い酸化物粒子(酸素原子の供給源)を用いることによって、積層造形した合金材の母相結晶粒の中に平均粒径100 nm以下の酸化物粒子が分散析出することを見出した。

0026

具体的には、Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Mo系合金粉末に対してFe酸化物粉末(Fe2O3粉末、Fe3O4粉末)やNi酸化物粉末(NiO粉末)を添加混合した混合粉末を用いて積層造形を行うことによって、合金材の母相結晶粒の中にTi成分の酸化物粒子が分散析出することを見出した。また、Co-Cr-Fe-Ni-Ti-Mo系合金にY、Nb、AlおよびVのうちの一種を添加した合金粉末に対してFe2O3粉末やFe3O4粉末やNiO粉末を添加混合した混合粉末を用いて積層造形を行うことによって、合金材の母相結晶粒の中にTi成分の酸化物粒子および添加成分の酸化物粒子が分散析出することを見出した。

0027

ここで、標準生成ギブズエネルギーについて簡単に説明する。標準生成ギブズエネルギーとは、標準状態(298.15 K=25℃)において物質が成分元素の単体から生成する反応のギブズエネルギー変化と定義される。物質の標準生成ギブズエネルギー同士を比較することによって、化学反応の起こり易さ/起こり難さ(言い換えると、熱力学的安定性)を推測することができる。本発明で利用する代表的な金属元素の酸化物の標準生成ギブズエネルギーを表1に示す。

0028

0029

表1から判るように、Ti、Y、Nb、AlおよびVの各種酸化物の標準生成ギブズエネルギーは、Fe酸化物(Fe2O3、Fe3O4)およびNi酸化物(NiO)のそれらよりも負数が大きい(負の値が大きい)。そのため、積層造形による局所溶融急速凝固プロセスにおいてFe酸化物やNi酸化物を還元して、Ti、Y、Nb、AlおよびVの何れかの酸化物を生成し析出した方が熱力学的により安定であると考えられる。そこで、本発明では、標準生成ギブズエネルギーの負数が比較的小さいFe2O3、Fe3O4およびNiOなどを「酸素原子供給源酸化物」と称することにする。

0030

本発明者等は、Ti、Y、Nb、AlおよびVの何れかの酸化物粒子が母相結晶粒の中に分散析出した合金材が、従来よりも高い機械的特性(例えば、460 Hv以上のビッカース硬さ、1450 MPa以上の引張強さ)を示すことを確認した。本発明は、当該知見に基づいて完成されたものである。

0031

以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら合金材の製造手順に沿って説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。

0032

[合金材の製造方法]
図1は、本発明に係る金属積層造形用混合粉末を用いて合金材を製造する方法の一例を示す工程図である。図1に示したように、当該合金材を製造する方法は、原料混合溶解工程(S1)とアトマイズ工程(S2)と混合粉末用意工程(S3)と積層造形工程(S4)と擬溶体化熱処理工程(S5)とを有する。以下、各工程をより具体的に説明する。

0033

(原料混合溶解工程)
原料混合溶解工程S1では、後の混合粉末用意工程S3で混合する酸素原子供給源酸化物に含まれる金属成分の量(例えばFe成分量)を考慮した上で、所望の金属組成となるように原料を混合し、溶解して溶湯10を形成する。原料の混合方法溶解方法特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。

0034

本発明の合金材の金属組成は、主要成分としてCo、Cr、Fe、Ni、Tiの5元素をそれぞれ5原子%以上35原子%以下の範囲で含み、副成分としてMoを0原子%超8原子%未満の範囲で含み、残部が不可避不純物からなるものである。また、随意副成分として、Y、Nb、AlおよびVのうちの一種を0原子%超4原子%以下の範囲で更に含んでもよい。随意副成分とは、含有してもよいし含有しなくてもよい副成分を意味する。

0035

より具体的には、Co成分は、20原子%以上35原子%以下が好ましく、25原子%以上33原子%以下がより好ましく、25原子%以上30原子%以下が更に好ましい。

0036

Cr成分は、10原子%以上25原子%以下が好ましく、15原子%以上23原子%以下がより好ましく、15原子%以上20原子%以下が更に好ましい。

0037

Fe成分は、10原子%以上25原子%以下が好ましく、15原子%以上23原子%以下がより好ましく、15原子%以上20原子%以下が更に好ましい。

0038

Ni成分は、15原子%以上30原子%以下が好ましく、17原子%以上28原子%以下がより好ましく、23原子%以上28原子%以下が更に好ましい。

0039

Ti成分は、5原子%以上15原子%以下が好ましく、5原子%以上10原子%以下がより好ましく、7原子%以上10原子%以下が更に好ましい。

0040

Mo成分は、0原子%超8原子%未満が好ましく、1原子%以上7原子%以下がより好ましく、1原子%以上5原子%以下が更に好ましい。

0041

また、随意副成分(Y、Nb、AlまたはVの一種)を含有させる場合、該随意副成分は、0原子%超4原子%以下が好ましく、1原子%以上3原子%以下がより好ましい。さらに、該随意副成分とMoとの合計含有率は、0原子%超8原子%以下が好ましく、1原子%以上7原子%以下がより好ましく、2原子%以上6原子%以下が更に好ましい。

0042

これらの組成範囲に制御することにより、耐腐食性を犠牲にすることなく機械的特性を向上することができる。言い換えると、各成分がそれぞれの好ましい組成範囲を外れると、望ましい特性の達成が困難になる。

0043

なお、不可避不純物とは、完全に除去することは困難であるが可能な限り低減することが望ましい成分を言う。例えば、Si(ケイ素)、P(リン)、S(硫黄)、N(窒素)が挙げられる。

0044

具体的には、Si成分は、0.2質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が更に好ましい。P成分は、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下が更に好ましい。S成分は、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下が更に好ましい。N成分は、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下が更に好ましい。

0045

ここで、O(酸素)成分は、酸化物を形成するための必須成分であることから、本発明において不可避不純物ではない。ただし、過剰に含有させると酸化物が粗大化して合金材が脆化し易くなる。このため、O成分は、0.1質量%以上3質量%以下に制御することが好ましく、0.15質量%以上2.5質量%以下に制御することがより好ましく、0.2質量%以上2質量%以下に制御することが更に好ましい。

0046

(アトマイズ工程)
アトマイズ工程S2では、溶湯10から合金粉末20を形成する。アトマイズ方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、ガスアトマイズ法遠心アトマイズ法を好ましく用いることができる。

0047

本発明の合金粉末20の平均粒径に特段の限定はないが、該合金粉末20を用いて造形する際の流動性充填性の観点から、5μm以上200μm以下が好ましく、10μm以上100μm以下がより好ましく、10μm以上50μm以下が更に好ましい。

0048

合金粉末20の平均粒径が5μm未満になると、後工程の積層造形工程S4において合金粉末20の流動性が低下して(例えば、積層造形における合金粉末床の形成性が低下して)、造形物の形状精度が低下する要因となる。一方、合金粉末20の平均粒径が200μm超になると、次の混合粉末用意工程S3において酸素原子供給源酸化物の粉末との均一混合が困難になり(不均一混合になり易くなり)、その後の積層造形工程S3において酸化物粒子の分散に偏りが生じる要因となる。

0049

(混合粉末用意工程)
混合粉末用意工程S3では、合金粉末20と酸素原子供給源酸化物の粉末(図1では、Fe2O3粉末を例示)とを混合して混合粉末30を用意する。本工程S3で得られる混合粉末30が、本発明の金属積層造形用混合粉末である。粉末混合方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。酸素原子供給源酸化物の混合量は、基本的に、分散析出させようとする酸化物粒子の量から逆算して決めればよい。例えば、合金粉末20の総量を100質量部としたときに、酸素原子供給源酸化物を1質量部以上10質量部以下の範囲で混合することが好ましい。当然のことながら、混合される酸素原子供給源酸化物からの金属成分の量を考慮した上で、合金粉末20の組成は調整される。

0050

なお、2種類の粉末を均一に混合するためには、一般的にそれぞれの平均サイズが同程度(例えば、平均粒径の比が2以内)であることが好ましい。そのため、合金粉末20と酸素原子供給源酸化物粉末とを混合する粉末混合素工程(S3b)の前に、合金粉末20および酸素原子供給源酸化物粉末のそれぞれの平均粒径を調整する粉末粒径調整素工程(S3a)を行ってもよい。粉末の平均粒径を調整する方法としては、例えば、分級造粒を適宜利用できる。

0051

一方、本発明では、上述したようなアトマイズ工程S2の次に混合粉末用意工程S3を行う手順に、必ずしも限定されなくてもよい。例えば、後工程の積層造形工程S4や擬溶体化熱処理工程S5の結果として、望ましい微細組織を有する合金AM体40や合金造形物45が得られる限り、酸素原子供給源酸化物をアトマイズ工程S2の段階で混合してもよい。その場合、混合粉末用意工程S3を省略してもよい(言い換えると、アトマイズ工程S2と混合粉末用意工程S3とを合体する手順でもよい)。

0052

(積層造形工程)
積層造形工程S4では、上記で用意した混合粉末30を用いた積層造形法(AM法)により、所望形状を有する合金AM体40を形成する。焼結ではなく局所溶融急速凝固によってニアネットシェイプの金属材を得る積層造形法の適用により、鍛造材と同程度以上の機械的特性とともに、複雑形状を有する三次元部材を直接的に作製することができる。積層造形方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できるが、例えば、組織制御に重要な凝固速度が比較的大きく、得られる合金AM体30の表面粗さを比較的小さくできる選択的レーザ溶融SLM)法を用いることが好ましい。

0053

SLM法による積層造形工程S4を簡単に説明する。本工程S4は、混合粉末30を敷き詰めて所定厚さの混合粉末床を用意する混合粉末床用意素工程(S4a)と、該混合粉末床の所定の領域にレーザ光照射して該領域の混合粉末30を局所溶融急速凝固させるレーザ溶融凝固素工程(S4b)と、を繰り返して合金AM体40を形成する工程である。

0054

より具体的には、得られる合金AM体40の密度および形状精度ができるだけ高くなるように、例えば、混合粉末床の厚さhを0.02〜0.2 mmとし、レーザ光の出力Pを50〜1000 Wとし、レーザ光の走査速度Sを50〜10000 mm/sとし、レーザ光の走査間隔Lを0.05〜0.2 mmとして、「E=P/(h×S×L)」で表される局所溶融の体積エネルギー密度Eを20〜200 J/mm3の範囲で制御することが好ましい。体積エネルギー密度は40〜150 J/mm3の範囲で制御することがより好ましい。

0055

上記素工程で造形した合金AM体40は混合粉末床中に埋没しているため、次に、合金AM体40を取り出す取出素工程(S4c)を行う。合金AM体40の取り出し方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、混合粉末30を用いたサンドブラストを好ましく用いることができる。混合粉末30を用いたサンドブラストは、除去した混合粉末床を吹き付けた混合粉末30と共に解砕することで、混合粉末30として再利用することができる利点がある。

0056

取出素工程S4c後の合金AM体40から微細組織観察用試料採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、電子後方散乱回折法(EBSD)により該試料の結晶粒の形態を観察した。逆極点図(Inverse Pole Figure)像において、合金AM体40の母相は、微細柱状晶平均幅50μm以下)が合金AM体40の積層方向に沿って林立した組織(いわゆる、局所溶融急速凝固組織)を有することが確認された。さらに微細に観察したところ、合金AM体40は、その母相結晶中に金属間化合物相(例えばNi3Ti相)が析出している様子が観察された。

0057

(擬溶体化熱処理工程)
擬溶体化熱処理工程S5では、上記の合金AM体40に対して、析出した金属間化合物相をほぼ完全に溶体化する擬溶体化熱処理を行う。本工程S5の後で得られる合金造形物45が、本発明の金属積層造形用混合粉末を用いて製造した合金材の一形態である。なお、当該合金材には、現段階で相平衡状態図のような知見が存在せず、析出相の固溶温度が不明であることから、完全に溶体化する温度を正確に規定することができない。そのため、本工程の熱処理を擬溶体化と称している。

0058

本熱処理の温度は、1000〜1250℃の範囲が好ましく、1050〜1200℃がより好ましく、1100〜1180℃が更に好ましい。本熱処理の温度が1000℃未満であると、金属間化合物相を十分に溶体化できない。一方、本熱処理の温度が1250℃超になると、母相結晶粒が粗大化し過ぎるため、耐腐食性や機械的特性が低下する。加熱雰囲気に特段の限定はなく、大気中でもよいし、非酸化性雰囲気(実質的に酸素がほとんど存在しない雰囲気、例えば、真空中や高純度アルゴン中)でもよい。

0059

また、当該温度領域で0.1〜100時間程度保持した後、急冷(例えば、空冷ガス冷水冷)することが好ましい。特に、金属間化合物相が析出して成長し易い温度領域(例えば、900〜800℃の温度範囲)を素早く通過させる(例えば、10℃/s以上の速度で冷却する)ことにより、ナノスケールの極小粒子が母相結晶粒中に分散析出した微細組織を有する合金造形物45を得ることができる。

0060

合金造形物45における母相結晶粒は、平均粒径が150μm以下の等軸晶であり、その結晶構造面心立方晶FCC)であることが好ましい。平均結晶粒径が150μm超になると、耐腐食性や機械的特性が低下する。母相結晶粒の平均粒径は、100μm以下がより好ましい。

0061

合金造形物45の母相結晶粒が最密充填構造の一種である面心立方晶を主として含むことで、高い耐腐食性と高い機械的特性とが両立していると考えられる。なお、本発明は、母相結晶粒の結晶構造として単純立方晶(SC)を含むことを否定するものではない。

0062

分散析出する極小粒子の平均粒径は、100 nm以下であり、10 nm以上100 nm以下が好ましく、20 nm以上80 nm以下がより好ましい。極小粒子の平均粒径が10 nm未満または100 nm超になると、機械的特性の向上に寄与しなくなる。擬溶体化熱処理の冷却速度を大きくすると極小粒子の平均粒径が小さくなる傾向があることから、極小粒子の平均粒径の制御には、上記の冷却速度を制御することが好ましい。

0063

同様に、分散析出する酸化物粒子の平均粒径は、100 nm以下であり、5 nm以上100 nm以下が好ましく、20 nm以上80 nm以下がより好ましい。酸化物粒子の平均粒径が5 nm未満または100 nm超になると、機械的特性の向上効果が十分に得られない。酸化物粒子の平均粒径および分散析出を制御するためには、混合粉末用意工程S3で均一に混合することが好ましい。

0064

[合金材を利用した製造物]
図2は、本発明に係る金属積層造形用混合粉末を用いて製造した合金材を利用した製造物の一例であり、流体機械のインペラを示す写真である。本発明に基づく製造物は、積層造形法により製造すると、図2に示したような複雑形状物でも容易に造形することができる。また、本発明の金属積層造形用混合粉末を用いて製造した合金材を利用したインペラは、高い機械的特性と高い耐食性とを兼ね備えることから、厳しい稼働環境下においても優れた耐久性を示すことができる。本発明に基づく製造物としては、インペラの他に、配管部品や掘削部品なども好適である。

0065

[製造物を有する流体機械]
図3は、本発明に係る金属積層造形用混合粉末を用いて製造した製造物を有する流体機械の一例であり、インペラが組み込まれた遠心圧縮機を示す断面模式図である。厳しい稼働環境下でも優れた耐久性を示すインペラを使用することにより、遠心圧縮機の長期信頼性の向上に寄与することができる。

0066

以下、実験例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。

0067

[実験1]
(合金粉末P1〜P5の作製)
表2に示す名目組成で原料を混合し、高周波溶解炉により溶解して溶湯を形成する原料混合溶解工程を行った。次に、ガスアトマイズ法により、溶湯から合金粉末を形成するアトマイズ工程を行った。次に、得られた合金粉末に対して、ふるいによる分級を行って粒径20〜45μmに選別して合金粉末P1〜P5を用意した。レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて、合金粉末P1〜P5の粒度分布を測定したところ、それぞれの平均粒径は約30μmであった。

0068

0069

表2に示したように、合金粉末P1〜P3は、従来の金属組成を有するHEA粉末であり、合金粉末P4〜P5は、従来のHEAにY成分を添加したHEA粉末である。

0070

(混合粉末MP2〜MP5の用意)
上記で用意した合金粉末P2〜P5に対して、平均粒径約15μmに造粒したFe2O3粉末を混合した。Fe2O3粉末の混合量は、合金粉末20の総量を100質量部として、表3に示した比率とした。なお、合金粉末P1にはFe2O3粉末を混合せず、本発明に対する基準試料とした。

0071

0072

[実験2]
(合金造形物FA1〜FA5の作製)
実験1で用意した合金粉末P1および混合粉末MP2〜MP5に対し、積層造形装置(EOS GmbH製、型式:EOSINTM290)を用いて、前述した積層造形工程に沿ってSLM法による合金AM体(縦25 mm×横25 mm×高さ70 mmの角柱材、高さ方向が積層方向)を造形した。SLM条件としては、合金粉末床の厚さhを0.04 mmとし、体積エネルギー密度Eが40〜100 J/mm3となるように、レーザ光の出力Pとレーザ光の走査速度Sとレーザ光の走査間隔Lとを制御した。

0073

取出素工程の後、各合金AM体に対して擬溶体化熱処理(大気中、1180℃で3時間保持した後、急冷)を施して、合金造形物FA1〜FA5を作製した。急冷方法としては、空冷(900〜800℃の平均冷却速度が約10℃/s)を採用した。

0074

[実験3]
(合金造形物の微細組織観察)
実験2で作製した各合金造形物から微細組織観察用の試験片を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡エネルギー分散X線分析装置(STEM-EDX)、およびX線回折(XRD)装置を用いて、微細組織を評価した。

0075

図4Aは、混合粉末MP2を用いた合金造形物FA2の微細組織の一例を示す高角度環状暗視野像(HAADF像)および元素マップ(Ti成分マップ、Ni成分マップ)である。図4Aに示したように、TiおよびNiが濃化した平均粒径100 nm以下の極小粒子が析出していることが確認される。別途測定した電子線回折パターンから、当該極小粒子は結晶性粒子であることを確認した。また、他の合金造形物においても同様の結果が得られることを別途確認した。

0076

図4Bは、混合粉末MP2を用いた合金造形物FA2の微細組織の他の一例を示すHAADF像および元素マップ(Ti成分マップ、O成分マップ)である。図4Bに示したように、本領域においてもTiおよびOが濃化した平均粒径100 nm以下の粒子が析出していることが確認される。別途測定した電子線回折パターンから、合金造形物FA2で析出した当該粒子は、母相の結晶構造とは異なり、酸化物に特有の大きい単位格子の結晶構造を有する粒子(すなわち、酸化物粒子)であることを確認した。また、他の合金造形物FA3〜FA5においても、FA2と同様に酸化物粒子が微細分散析出することを別途確認した。

0077

なお、混合粉末MP4を用いた合金造形物FA4および混合粉末MP5を用いた合金造形物FA5では、Ti成分を含む酸化物粒子に加えて、Y成分を含む酸化物粒子の存在も確認された。

0078

図5は、混合粉末MP3を用いた合金造形物FA3の微細組織の一例を示すSEM像である。図5に示したように、平均粒径100 nm以下の酸化物粒子(図中の白い粒)が分散析出していることが確認される。また、他の合金造形物FA2、FA4、FA5においても同様の結果が得られることを別途確認した。

0079

なお、図4Aに示したような極小粒子は、酸化物粒子に比して母相との組成差が小さいことから(組成差に基づくコントラストが小さいことから)、図5のようなSEM像では観察が困難である。言い換えると、極小粒子を観察するためには、図4AのようにSTEM-EDXを用いることが好ましい。

0080

得られた各種電子顕微鏡観察像に対して画像処理ソフトウェア(ImageJ、National Institutes of Health(NIH)開発のパブリックドメインソフトウェア)を用いた画像解析を行って、析出粒子(極小粒子および酸化物粒子)の合計面積率を測定した。その結果、合金造形物FA2〜FA5は、酸化物粒子が析出することから、合金造形物FA1よりも析出粒子の合計面積率が大きいことが確認された。測定結果を後述する表4に示す。

0081

各合金造形物に対して電子後方散乱回折(EBSD)を行った結果、本発明の合金造形物FA2〜FA5は、平均結晶粒径が150μm以下の等軸晶からなる母相組織を有していることが確認された。また、積層造形法により作製した合金製造物の母相組織は、原料合金溶融凝固後に擬溶体化熱処理による再結晶を経た金属組織である(すなわち、合金の凝固組織や合金粉末の焼結組織ではない)ことが確認された。

0082

さらに、FA1〜FA5の各合金造形物に対してXRD測定を行った結果、母相結晶粒は、主に面心立方晶(FCC)からなると判断された。なお、XRD測定結果から面心立方晶(FCC)と単純立方晶(SC)とを完全に区別することが困難であったことから、単純立方晶を含まないとは断定できない。また、図4A図5に示したように、析出粒子のサイズが非常に小さいことから、XRD測定によって析出粒子の回折ピークは確認できなかった(すなわち、析出相の同定はできなかった)。

0083

[実験4]
(合金造形物の機械的特性および耐腐食性の測定)
実験2で作製した各合金造形物から試験片を採取し、機械的特性および耐腐食性の測定を行った。機械的特性としては、ビッカース硬度計(株式会社島津製作所、マイクロビッカース硬度計、HMV)を用い、10点測定のうちの最大値最小値とを除いた8点測定の平均値としてビッカース硬さを測定した。また、得られたビッカース硬さの平均値から、近似換算式「引張強さ(単位:MPa)=3.12×ビッカース硬さ(単位:Hv)+16」を用いて引張強さを求めた。結果を表4に示す。

0084

また、耐腐食性としては、JIS G 0591:2012に準拠し、試料を5%沸騰硫酸中に6時間浸漬して腐食速度単位面積・単位時間あたりの質量減少量)を測定した。耐腐食性の評価は、腐食速度が1.0 g/m2/h未満の場合を「合格」と判定し、1.0 g/m2/h以上の場合を「不合格」と判定した。結果を表4に併記する。

0085

0086

表4に示したように、本発明に係る合金造形物FA2〜FA5は、基準試料となる従来の合金造形物FA1よりも高い機械的特性を示すことが確認される。さらに、本発明の合金造形物FA2〜FA5は、従来の合金造形物FA1と同程度の耐腐食性を有することが確認される。

実施例

0087

上述した実施形態や実験例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実験例の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。

0088

10…溶湯、20…合金粉末、30…混合粉末、40…合金AM体、45…合金造形物。

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