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課題
解決手段
概要
背景
特許文献1には、フェーズドアレイアンテナを有する気象レーダ装置が示される。当該気象レーダ装置は、仰角方向にビーム幅が広く、かつ方位角方向にビーム幅が狭い送信ビームと、方位角方向にビーム幅が広く、かつ仰角方向にビーム幅が狭い送信ビームとの両方を形成するようにフェーズドアレイアンテナを制御する。また、仮想アンテナを作り出して送信データ量を増やす技術として、MIMO(Multiple Input and Multiple Output)レーダーが知られている。MIMOレーダーは、例えば1個のアンテナと4個の受信アンテナとを備えた構成に対して、1個の送信アンテナを追加することで、更に4個の仮想アンテナを作り出す技術である。
概要
レーダー探査に伴う処理を低減可能な電子装置を提供する。電子装置DEVaは、送信用リニアアレイアンテナTXAと、受信用リニアアレイアンテナRXAと、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAとを制御する制御回路CTLUとを有する。送信用リニアアレイアンテナTXAは、Z方向に沿って配置される複数の送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]を含み、送信波を送信する。受信用リニアアレイアンテナRXAは、Z方向と直交するX方向に沿って配置される複数の受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]を含み、送信波の反射波を受信する。
目的
効果
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請求項1
第1の方向に沿って配置される複数の送信アンテナを含み、送信波を送信する送信用リニアアレイアンテナと、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って配置される複数の受信アンテナを含み、前記送信波の反射波を受信する受信用リニアアレイアンテナと、前記送信用リニアアレイアンテナと前記受信用リニアアレイアンテナとを制御する制御回路と、を有する電子装置。
請求項2
請求項1記載の電子装置において、前記複数の送信アンテナは、第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナを含み、前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナは、重複する期間で第1の送信波および第2の送信波をそれぞれ送信し、前記複数の受信アンテナは、第1の受信アンテナおよび第2の受信アンテナを含み、前記第1の受信アンテナと前記第2の受信アンテナのそれぞれは、前記第1の送信波の反射波および前記第2の送信波の反射波を受信する、電子装置。
請求項3
請求項2記載の電子装置において、前記制御回路は、前記第1および第2の受信アンテナで受信した前記第1および第2の送信波の反射波を基に物標までの距離を算出し、前記第1の送信波に応じた反射波か前記第2の送信波に応じた反射波かを区別することなく、前記物標までの距離を算出する、電子装置。
請求項4
請求項1記載の電子装置において、前記送信用リニアアレイアンテナは、矩形を形成する4辺の内の一辺である第1の辺に配置され、前記受信用リニアアレイアンテナは、前記第1の辺に直交する他の一辺である第2の辺に配置される、電子装置。
請求項5
請求項4記載の電子装置において、前記送信用リニアアレイアンテナおよび前記受信用リニアアレイアンテナは、前記第1の辺と前記第2の辺の交点以外の場所に配置される、電子装置。
請求項6
請求項1記載の電子装置において、前記制御回路は、前記送信用リニアアレイアンテナが送信する前記送信波の向きと、前記受信用リニアアレイアンテナが受信する前記反射波の向きとを電子的に制御する、電子装置。
請求項7
請求項1記載の電子装置において、前記送信用リニアアレイアンテナと前記受信用リニアアレイアンテナをそれぞれ2個有し、前記2個の送信用リニアアレイアンテナは、それぞれ、矩形を形成する4辺の内の一辺である第1の辺と、前記第1の辺に直交する第3の辺とに配置され、前記2個の受信用リニアアレイアンテナは、それぞれ、前記第3の辺に対向する第2の辺と、前記第1の辺に対向する第4の辺とに配置される、電子装置。
請求項8
請求項9
第1の方向に沿って配置される複数の送信アンテナを含み、送信波を送信する送信用リニアアレイアンテナと、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って配置される複数の受信アンテナを含み、前記送信波の反射波を受信する受信用リニアアレイアンテナと、前記送信用リニアアレイアンテナと前記受信用リニアアレイアンテナとを制御する制御回路と、を有するレーダー装置であって平面視において、前記複数の送信アンテナの一つである第1の送信アンテナを通過し、かつ、前記第2の方向に沿って延在する線を第1の仮想線とし、平面視において、前記複数の受信アンテナの一つである第1の受信アンテナを通過し、かつ、前記第1の方向に沿って延在する線を第2の仮想線としたときに、前記第1の仮想線と前記第2の仮想線の交差する位置に、仮想受信アンテナが作り出される、レーダー装置。
請求項10
請求項9記載のレーダー装置において、前記複数の送信アンテナは、さらに第2の送信アンテナを含み、前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナは、重複する期間で第1の送信波および第2の送信波をそれぞれ送信し、前記制御回路は、前記複数の受信アンテナで受信した前記反射波に対して、前記第1の送信波に応じた前記反射波か前記第2の送信波に応じた前記反射波かを区別することなく、物標の位置の算出処理を行う、レーダー装置。
請求項11
請求項9記載のレーダー装置において、前記送信用リニアアレイアンテナは、矩形を形成する4辺の内の一辺である第1の辺に配置され、前記受信用リニアアレイアンテナは、前記第1の辺に直交する他の一辺である第2の辺に配置される、レーダー装置。
請求項12
請求項11記載のレーダー装置において、前記送信用リニアアレイアンテナおよび前記受信用リニアアレイアンテナは、前記第1の辺と前記第2の辺の交点以外の場所に配置される、レーダー装置。
請求項13
請求項9記載のレーダー装置において、前記送信波は、ミリ波または準ミリ波である、レーダー装置。
請求項14
第1の方向に沿って配置された第1の送信アンテナおよび第2の送信アンテナは、それぞれ第1の送信波および第2の送信波を送信し、前記第1の方向と直交する方向である第2の方向に沿って配置された第1の受信アンテナ、第2の受信アンテナによって、前記第1の送信波の反射波である第1の反射波、および前記第2の送信波の反射波である第2の反射波を受信し、前記受信した前記第1および第2の反射波に基づいて物標までの距離を算出する、レーダー制御方法。
請求項15
請求項14記載のレーダー制御方法において、前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナは、送信用リニアアレイアンテナを構成し、前記第1の受信アンテナおよび前記第2の受信アンテナは、受信用リニアアレイアンテナを構成する、レーダー制御方法。
請求項16
請求項14記載のレーダー制御方法において、前記第1の送信アンテナおよび前記第2の送信アンテナは、重複する期間で前記第1の送信波および第2の送信波をそれぞれ送信する、レーダー制御方法。
請求項17
請求項14記載のレーダー制御方法において、前記第1の受信アンテナおよび前記第2の受信アンテナのそれぞれは、前記第1の反射波および前記第2の反射波を区別することなく受信する、レーダー制御方法。
請求項18
請求項17記載のレーダー制御方法において、制御回路は、前記受信された前記第1および第2の反射波に基づいて前記物標までの距離を算出する、レーダー制御方法。
技術分野
背景技術
0002
特許文献1には、フェーズドアレイアンテナを有する気象レーダ装置が示される。当該気象レーダ装置は、仰角方向にビーム幅が広く、かつ方位角方向にビーム幅が狭い送信ビームと、方位角方向にビーム幅が広く、かつ仰角方向にビーム幅が狭い送信ビームとの両方を形成するようにフェーズドアレイアンテナを制御する。また、仮想アンテナを作り出して送信データ量を増やす技術として、MIMO(Multiple Input and Multiple Output)レーダーが知られている。MIMOレーダーは、例えば1個のアンテナと4個の受信アンテナとを備えた構成に対して、1個の送信アンテナを追加することで、更に4個の仮想アンテナを作り出す技術である。
先行技術
0003
特開2016−45132号公報
発明が解決しようとする課題
0004
例えば、特許文献1に示されるようなフェーズドアレイアンテナを用いると、送信波または受信波の方位角や仰角を機械的ではなく電子的に変えることができる。この際の方位角や仰角の分解能は、アンテナ数に依存する。したがって、高分解なフェーズドアレイアンテナを実現するためには、多数のアンテナが必要となる。その結果、コストの増大等が生じ得る。
課題を解決するための手段
0006
一実施の形態による電子装置は、送信用リニアアレイアンテナと、受信用リニアアレイアンテナと、送信用リニアアレイアンテナと受信用リニアアレイアンテナとを制御する制御回路とを有する。送信用リニアアレイアンテナは、第1の方向に沿って配置される複数の送信アンテナを含み、送信波を送信する。受信用リニアアレイアンテナは、第1の方向と直交する第2の方向に沿って配置される複数の受信アンテナを含み、送信波の反射波を受信する。
発明の効果
0007
前記一実施の形態によれば、送信用リニアアレイアンテナと受信用リニアアレイアンテナとを有する電子装置において、レーダー探査に伴う処理を低減できる。
図面の簡単な説明
0008
(a)は、本発明の実施の形態1による電子装置の概略構成例を示す平面図であり、(b)は、(a)の等価的な構成例を示す平面図である。
図1における制御回路の構成例を示す概略図である。
(a)および(b)は、図1(a)および図1(b)の電子装置において、アンテナの直交配置に伴う効果の一例を説明する概念図である。
図1(a)および図1(b)のアンテナ配置を用いた場合の図2の制御回路の処理内容の一例を示すフロー図である。
図1(a)および図1(b)の電子装置において、制御回路の主要部の構成例を示す回路ブロック図である。
図5におけるFMCW方式における処理内容の一例を説明する概念図である。
図5における受信ビームフォーマの処理内容の一例を説明する概念図である。
本発明の実施の形態2による電子装置の概略構成例を示す平面図である。
本発明の実施の形態3による電子装置の概略構成例を示す平面図である。
本発明の実施の形態4による電子装置の概略構成例を示す平面図である。
リニアアレイアンテナの動作原理の一例を示す模式図である。
図11のリニアアレイアンテナの特性の一例を示す図である。
(a)は、図11のリニアアレイアンテナを用いてレーダー探査が行われる環境の一例を示す図であり、(b)は、(a)におけるレーダー探査結果の一例を示す図である。
図11のリニアアレイアンテナを2次元に拡張することで得られる平面アレイアンテナの構成例を示す概略図である。
(a)は、本発明の第1の比較例となる電子装置において、アンテナの配置構成例を示す平面図であり、(b)は、本発明の第2の比較例となる電子装置において、アンテナの配置構成例を示す平面図である。
図15(b)のアンテナ配置を用いた場合の図2の制御回路の処理内容の一例を示すフロー図である。
実施例
0009
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
0010
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
0011
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
0012
(実施の形態1)
《電子装置(実施の形態1)の構成》
図1(a)は、本発明の実施の形態1による電子装置の概略構成例を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)の等価的な構成例を示す平面図である。図1(a)に示す電子装置DEVaは、例えば、レーダー装置であり、送信用リニアアレイアンテナTXAと、受信用リニアアレイアンテナRXAと、制御回路CTLUとを備える。明細書では、位置関係を説明するにあたり、X,Y,Z方向を用いる。Z方向は、X方向と直交する方向であり、Y方向は、X方向およびZ方向と直交する方向である。
0013
送信用リニアアレイアンテナTXAは、Z方向に沿って順に配置される複数(この例では4個)の送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]を含む。受信用リニアアレイアンテナRXAは、X方向に沿って順に配置される複数(この例では4個)の受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]を含む。言い換えれば、送信用リニアアレイアンテナTXAは、矩形を形成する4辺の内の一辺である第1の辺SD1に配置され、受信用リニアアレイアンテナRXAは、第1の辺SD1に直交する他の一辺である第2の辺SD2に配置される。送信用リニアアレイアンテナTXAは、図示しない物標に向けて送信波を送信し、受信用リニアアレイアンテナRXAは、当該送信波の反射波(受信波)(例えば物標からの反射波)を受信する。すなわち、送信用リニアアレイアンテナTXAおよび受信用リニアアレイアンテナRXAは、共に、送受信兼用のアンテナではない。
0014
制御回路CTLUは、送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]および受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]のそれぞれと配線LNを介して結合され、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAとを制御する。詳細には、制御回路CTLUは、送信用リニアアレイアンテナTXAの向きと、受信用リニアアレイアンテナRXAの向きとを電子的に制御する。この際に、制御回路CTLUは、送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]から送信する各送信波の位相をそれぞれ制御することで、送信用リニアアレイアンテナTXAの向きとしてYZ平面における仰角を制御する。また、制御回路CTLUは、受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]で受信した各受信波(反射波)の位相をそれぞれ制御することで、受信用リニアアレイアンテナRXAの向きとしてXY平面における方位角を制御する。
0015
また、この例では、送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]は、Z方向に沿って間隔d1で配置され、受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]も、X方向に沿って間隔d1で配置される。間隔d1は、代表的には、使用する送信波の波長λを用いて“λ/2”等に定められる。送信波は、代表的には、24GHz(波長λ≒12.5mm)の周波数帯や79GHz(波長λ≒3.8mm)の周波数帯を含むミリ波(30〜300GHzの周波数帯)や準ミリ波(20〜30GHzの周波数帯)であるが、特に、これに限定されない。
0016
ここで、電子装置DEVaは、小型化や高速化のため、例えば、MMIC(Monolithic Microwave IntegratedCircuit)等の一つの半導体チップ(半導体装置)で構成される。ただし、必ずしもこれに限定されず、場合によっては、制御回路CTLUを一つの半導体チップで構成し、当該半導体チップと、送信用リニアアレイアンテナTXAおよび受信用リニアアレイアンテナRXAとを配線基板上に実装した構成であってもよい。または、制御回路CTLUを複数の半導体チップを組み合わせて構成してもよい。
0017
このような直交配置の送信用リニアアレイアンテナTXAおよび受信用リニアアレイアンテナRXAを用いると、MIMOレーダーの技術によって、図1(b)に示されるように、“4×4”個の仮想的な受信アンテナ(仮想受信アンテナと呼ぶ)RXi[mn](m,nのそれぞれは1〜4の整数)が作り出される。仮想受信アンテナRXi[mn]は、Z方向における複数の送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]の各座標と、X方向における複数の受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]の各座標のそれぞれの交点に配置される。
0018
すなわち、仮想受信アンテナRXi[mn]は、仮想線VLx[m]と仮想線VLz[n]の交差する位置に作り出される。仮想線VLx[m]は、複数の送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]の一つである送信アンテナTXr[m]を通過し、かつ、X方向に沿って延在する線である。また、仮想線VLz[n]は、複数の受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]の一つである受信アンテナRXr[n]を通過し、かつ、Z方向に沿って延在する線である。
0019
なお、この例では、送信用リニアアレイアンテナTXAおよび受信用リニアアレイアンテナRXAは、第1の辺SD1と第2の辺SD2の交点には配置されず、当該交点以外の場所に配置される。ただし、場合によって、例えば、当該交点に、送信用リニアアレイアンテナTXAまたは受信用リニアアレイアンテナRXAが配置される構成であってもよい。明細書では、複数の送信アンテナを総称して送信アンテナTXrと呼び、複数の受信アンテナを総称して受信アンテナRXrと呼び、複数の仮想受信アンテナを総称して仮想受信アンテナRXiと呼ぶ。
0020
図2は、図1における制御回路の構成例を示す概略図である。図2に示すように、制御回路CTLUは、送信波生成回路TXGUと、送信波出力回路TXOUと、受信波入力回路RXIUと、受信波処理回路RXPUとを備える。送信波生成回路TXGUは、例えば、ベースバンドでFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式の送信波Txを生成する。送信波出力回路TXOUは、当該生成されたベースバンドの送信波Txを所定の周波数帯へアップコンバートしたのち送信用リニアアレイアンテナTXAに送信させ、また、この際の送信用リニアアレイアンテナTXAの向きの制御(送信ビームフォーミング)等を行う。
0021
受信波入力回路RXIUは、当該送信波Txに応じた物標TGからの反射波(受信波)Rxを受信し、当該受信波Rxをベースバンドへダウンコンバートする。受信波処理回路RXPUは、ベースバンドの受信波Rxに基づいて、物標TGの位置の算出処理を行う。この位置の算出処理の中には、物標TGまでの距離の算出処理や、物標TGが存在する方位角の算出処理(受信ビームフォーミング)等が含まれる。
0022
《リニアアレイアンテナの概要》
ここで、図1の電子装置DEVaの詳細な動作説明に先立ち、フェーズドアレイアンテナの一つであるリニアアレイアンテナについて簡単に説明する。図11は、リニアアレイアンテナの動作原理の一例を示す模式図である。リニアアレイアンテナは、図11に示されるように、複数のアンテナを直線上(この例ではX方向)に並べたものである。当該複数のアンテナは、送信波に応じた物標からの反射波(S(t))を受信する。
0023
この際に、複数のアンテナの受信信号(x1(t)〜xM(t))に対して適切に重み付け(w1〜wM)を行ったのち(その結果、等価的に位相を制御したのち)、その合成信号(y(t))を生成することで、物理的ではなく電子的にアンテナの方位角θを変えることができる。すなわち、XY平面において電子的にアンテナの指向性を得ることができる。ただし、YZ平面において、アンテナの指向性を得ることはできない。
0024
図12は、図11のリニアアレイアンテナの特性の一例を示す図である。図12には、図11のようにアンテナを等間隔(ここでは“λ/2”間隔)に8個配置した場合(M=8の場合)で、重み付け(w1〜wM)に差を持たせない場合の指向性のシミュレーション結果が示される。図12では、方位角θが0[rad]の時に最大のゲインが得られる。この最大ゲインを含む山は、メインローブと呼ばれる。物標からの反射波(S(t))は、メインローブの方位角θにおいて高い感度で受信され、その他の方位角では低い感度で受信される。このため、実質的に、このメインローブの方位角θにアンテナを向けていることになる。
0025
図11に示した重み付け(w1〜wM)に適切に差を持たせることで、このメインローブの方位角θを適宜制御することができる。また、図12では、例えば、方位角θが約0.37π[rad]等の箇所にも山が生じている。これらの山は、本来とは異なる方位角θに生じたゲインであり、サイドローブと呼ばれる。一般的に、アンテナ数を増やすと、サイドローブのゲインを減らすことができ、さらに、メインローブの方位角θの幅を狭めることができる。その結果、方位角θの分解能を高めることが可能になる。なお、図11および図12では、受信側の指向性に関して説明を行ったが、送信側に対しても同様にして指向性を持たせることができる。
0026
図13(a)は、図11のリニアアレイアンテナを用いてレーダー探査が行われる環境の一例を示す図であり、図13(b)は、図13(a)におけるレーダー探査結果の一例を示す図である。図13(a)には、X方向において、それぞれ異なる座標に物標TG1〜TG3が存在する。図11のリニアアレイアンテナは、図13(a)において、各アンテナがX方向に並ぶように配置される。この状態で、図11のリニアアレイアンテナは、前述したように、重み付け(w1〜wM)を用いてXY平面の方位角を逐次変えることで、図13(a)に示されるようにXY平面でのスキャンを行いながらレーダー探査を行う。
0027
その結果、図13(b)に示されるように、XY平面において、各物標TG1〜TG3(例えばTG1)が存在する方位角θの情報と、各物標TG1〜TG3(例えばTG1)までの距離Rの情報とが得られる。ただし、各物標TG1〜TG3におけるYZ平面上の位置(すなわち仰角の情報)は得られない。すなわち、図13(a)に示されるように、各物標TG1〜TG3は、それぞれ、YZ平面である領域AR1〜AR3において、それぞれ異なるYZ座標(すなわち仰角)に配置されるが、図13(b)に示されるように、このYZ座標の情報はXY平面に縮退する形となる。
0028
図14は、図11のリニアアレイアンテナを2次元に拡張することで得られる平面アレイアンテナの構成例を示す概略図である。図11のリニアアレイアンテナを2次元に拡張することで(例えば、各アンテナをXZ平面でマトリックス状に配置することで)、図14に示されるようにビームBMの向きを3次元で制御することが可能になる。すなわち、XY平面における方位角θとYZ平面における仰角φとを制御することが可能になる。
0029
《電子装置(比較例)の概略および問題点》
図15(a)は、本発明の第1の比較例となる電子装置において、アンテナの配置構成例を示す平面図であり、図15(b)は、本発明の第2の比較例となる電子装置において、アンテナの配置構成例を示す平面図である。図15(a)には、1個の送信アンテナTXrと、“4×4”個の受信アンテナRXr[mn](m,nのそれぞれは1〜4の整数)とを備えた平面アレイアンテナが示される。受信アンテナRXr[mn]は、XZ平面においてマトリックス状に配置される。このような構成例を用いると、ビームの指向性を3次元で制御することが可能になる。しかし、アンテナ数が増えるため、コストの増大等が生じ得る。
0030
そこで、図15(b)に示されるような構成を用いることが考えられる。図15(b)では、4個の送信アンテナTXr[11],[12],[21],[22]と4個の受信アンテナRXr[11],[13],[31],[33]とが配置される。4個の送信アンテナTXrは、XZ平面において間隔d1でマトリックス状に配置される。一方、4個の受信アンテナRXrは、XZ平面において間隔“2×d1”でマトリックス状に配置される。
0031
MIMOレーダーでは、通常、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとは、同一方向に配置される。そのため、図15(b)の例では、4個の送信アンテナTXrと4個の受信アンテナRXrは、同一方向(ここではX方向)に並んで配置される。このような構成例を用いると、4個の受信アンテナRXrのそれぞれ(例えばRXr[11])の周りに3個の仮想受信アンテナ(RXi[12],[21],[22])が作り出される。その結果、計8個のアンテナを用いて、図15(a)の場合と等価な構成を実現できる。
0032
図16は、図15(b)のアンテナ配置を用いた場合の図2の制御回路の処理内容の一例を示すフロー図である。この例では、FMCW方式を用いてレーダー探査を行う場合を例とするが、他の方式であってもよい。図16において、まず、送信波生成回路TXGUは、ディジタルのベースバンド信号であるチャープ信号を生成し(ステップS101)、それをアナログ信号に変換する(ステップS102)。
0033
次いで、送信波出力回路TXOUは、当該アナログ変換されたチャープ信号に基づいて所定の周波数(例えば79GHz等)を有するローカル信号を変調することで、高周波数帯(RF帯)の送信波を生成する(ステップS103)。続いて、送信波出力回路TXOUは、k番目の送信アンテナTXrを選択し(ステップS104)、必要に応じて送信ビームフォーミングを行ったのち(S105)、当該選択した送信アンテナTXrに、ステップS103で生成した送信波を送信させる(ステップS106)。当該送信波は物標で反射され、これに伴い反射波(受信波)が生じる(ステップS107)。
0034
受信波入力回路RXIUは、当該反射波(受信波)を受信アンテナRXrで受信し(ステップS108)、それをアナログのベースバンド信号に変換する(ステップS109)。受信波処理回路RXPUは、当該アナログのベースバンド信号をディジタル信号に変換し(ステップS110)、当該ディジタルのベースバンド信号に対して、物標の位置の算出処理を行う。具体的には、受信波処理回路RXPUは、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)を用いて物標までの距離を算出し(ステップS111)、受信ビームフォーミングを用いて物標の方位角を算出する(ステップS112)。
0035
その後、受信波処理回路RXPUは、ステップS104に戻って選択対象となる送信アンテナTXrを逐次変えながら、ステップS112の算出処理によって得られた出力信号を逐次加算していく(ステップS113,S114)。そして、受信波処理回路RXPUは、ステップS104〜S113の処理を、全ての送信アンテナTXrが選択されるまで繰り返す(ステップS114)。これらの処理によって、例えば、ある一つの物標の位置を、16個の受信アンテナRXrを用いて検出した場合に相当する結果が得られる。
0036
このように、図15(b)のようなアンテナ配置を用いると、選択する送信アンテナTXrを時分割で変えながらレーダー探査を行う必要がある(図16のステップS104,S114)。例えば、少なくとも、図15(b)における送信アンテナTXr[11]からの送信波と、送信アンテナTXr[12]からの送信波は、直交関係(互いに相関がなく、信号を区別できる関係)を満たす必要がある。図16の例では、この直交関係を得るため、時分割が用いられる。ただし、直交関係は、時分割に限らず、例えば、符号化(コード分割)等によって実現することも可能である。
0037
しかし、時分割を用いると、送信アンテナTXrの数が増えるほど処理時間(レーダー探査に要する時間)が増加する。また、図16のステップS113の処理に伴い処理負荷が増加し、バッファの確保等も必要となる。一方、符号化等を用いると、処理時間の増加は抑制できるが、送信時の符号化と受信時の復号化に伴う処理負荷の増大等が生じ得る。
0038
このように、図15(b)のようなアンテナ配置を用いた場合、図15(a)の場合と比較してアンテナ数を削減することが可能であるが、複数の送信アンテナTXrからの送信波のいずれに応じた反射波であるかを区別する処理が必要となるため、レーダー探査に伴う処理の増大が生じる恐れがある。さらに、送信波のパワーが全ての送信アンテナTXrではなく、選択された送信アンテナTXrによって定められるため、S/N比の低下が生じ得る。
0039
《電子装置(実施の形態1)の動作》
図3(a)および図3(b)は、図1(a)および図1(b)の電子装置において、アンテナの直交配置に伴う効果の一例を説明する概念図である。図1(a)および図1(b)に示したように、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAとを直交するように配置すると、図2の制御回路CTLUは、図16の場合と異なり、いずれの送信波に応じた反射波(受信波)かを区別することなく、物標の位置の算出処理を行うことが可能になる。
0040
これを、図3(a)および図3(b)を用いて概念的に説明する。図3(a)では、図13(a)の場合と同様の環境で、図1(a)の電子装置(レーダー装置)DEVaを用いてレーダー探査が行われる。送信用リニアアレイアンテナTXAは、Z方向に沿って配置され、受信用リニアアレイアンテナRXAは、X方向に沿って配置される。この場合、送信用リニアアレイアンテナTXAを用いた送信ビームフォーミングによって、領域ARyzに示されるように、YZ平面における仰角φ方向のスキャンが行われる。このスキャンに伴う指向性の成分は、YZ方向の成分を含み、X方向の成分を含まない。
0041
一方、受信用リニアアレイアンテナRXAを用いた受信ビームフォーミングでは、領域ARxyに示されるように、XY平面における方位角θ方向のスキャンが行われる。このスキャンに伴う指向性の成分は、XY方向の成分を含み、Z方向の成分を含まない。このため、送信用リニアアレイアンテナTXAを用いた送信ビームフォーミングと、受信用リニアアレイアンテナRXAを用いた受信ビームフォーミングは、互いに干渉することなく独立に行える。その結果、前述した時分割や、符号化(コード分割)等の区別処理は不要となる。
0042
なお、仮に、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAとが直交に配置されない場合、例えば、図3(b)の領域ARxyzに示されるように、送信ビームフォーミングに伴う指向性の成分に、受信ビームフォーミングと同じX方向の成分XCが含まれてしまう。この場合、送信ビームフォーミングと受信ビームフォーミングが互いに干渉するため、前述した時分割や、符号化(コード分割)等の区別処理が必要となる。
0043
具体例として、図15(b)において、送信アンテナTXr[11]からの送信波に応じて受信アンテナRXr[11]が方位角θからの反射波を受信し、送信アンテナTXr[12]からの送信波に応じて同じく受信アンテナRXr[11]が方位角θからの反射波を受信した場合を考える。これは、受信アンテナRXr[11]と仮想受信アンテナRXi[12]が、共に方位角θからの反射波を受信した場合と等価である。
0044
受信アンテナRXr[11]が受信する方位角θからの反射波と仮想受信アンテナRXi[12]が受信する方位角θからの反射波とは、両アンテナのX方向の座標の違いに伴い位相が異なっている。具体的には“d1×sinθ”の距離に対応する位相差が生じる。したがって、当該2個の反射波は、そのまま合成されると区別できない関係となる。このため、時分割や、符号化(コード分割)等の区別処理が必要となる。
0045
一方、図1(b)において、送信アンテナTXr[1]からの送信波に応じて受信アンテナRXr[1]が方位角θからの反射波を受信し、送信アンテナTXr[2]からの送信波に応じて同じく受信アンテナRXr[1]が方位角θからの反射波を受信した場合を考える。これは、仮想受信アンテナRXi[11]と仮想受信アンテナRXi[21]が、共に、方位角θからの反射波を受信した場合と等価である。
0046
仮想受信アンテナRXi[11]が受信する方位角θからの反射波と仮想受信アンテナRXi[21]が受信する方位角θからの反射波とは、両アンテナのX方向の座標が同じであるため位相も同じである。このため、2個の反射波を区別する必要はなく、2個の反射波を合成することができる。その結果、前述した区別処理は不要となり、送信アンテナTXr[1]と送信アンテナTXr[2]は、重複する期間で送信波を送信することができる。その上で、等価的に、2個の受信アンテナ(RXi[11],RXi[21])を用いて方位角θを定めることになるため、方位角θの分解能も高められる。
0047
なお、より詳細には、例えば、送信アンテナTXr[1]および送信アンテナTXr[2]から重複する期間で送信される送信波(Tx[1])および送信波(Tx[2])は、移相器等を用いることで位相が異なっており、これに応じて仰角φ方向の指向性が加えられている。理想的には、この2つの送信波は、仰角φ、方位角θに存在する物標に位相差が無い状態で到達し、これに伴い、仮想受信アンテナRXi[11],RXi[21]は、その物標からの反射波を位相差が無い状態で受信することになる。ここでは、便宜上の2個の送信アンテナTXrと2個の受信アンテナRXrとの関係で説明を行ったが、4個の送信アンテナTXrと4個の受信アンテナRXrとの関係についても同様である。
0048
ここで、図1(a)に示したように、例えば、送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]は、理想的には、Z軸上に配置される。ただし、実際上、Z軸と、各送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]の中心位置との距離が波長λに対して十分に小さい程度の配置ばらつきであれば、この距離の分だけ位置算出における誤差が生じるものの、十分な効果が得られる。また、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAの直交配置に関しても、許容される位置算出の精度に応じて、ある程度の配置ばらつきは許容される。
0049
図4は、図1(a)および図1(b)のアンテナ配置を用いた場合の図2の制御回路の処理内容の一例を示すフロー図である。図4に示す処理フローは、図16に示した処理フローと比較して、図16におけるステップS104,S114の処理(送信アンテナTXrを逐次選択す処理)と、ステップS113の処理(送信アンテナTXr毎に得られる出力信号を加算する処理)とが削除される。また、図4のステップS106aにおいて、図16のステップS106の場合と異なり、送信アンテナTXrの区別が無くなっている。
0050
このように、図1(a)および図1(b)の電子装置DEVaを用いると、複数の送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]は、共に、重複する期間で送信波を送信することができる。そして、制御回路CTLUは、複数の受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]で受信した反射波に対して、いずれの送信波に応じた反射波かを区別することなく、物標の位置の算出処理を行うことができる。
0051
《制御回路の詳細》
図5は、図1(a)および図1(b)の電子装置において、制御回路の主要部の構成例を示す回路ブロック図である。図6は、図5におけるFMCW方式の処理内容の一例を説明する概念図であり、図7は、図5における受信ビームフォーマの処理内容の一例を説明する概念図である。図5に示す制御回路CTLUは、高周波ユニットRFUと、プロセッサユニットMPUと、ディジタル信号処理ユニットDSPUとを備える。高周波ユニットRFUは、図2の送信波出力回路TXOUおよび受信波入力回路RXIUに対応し、ディジタル信号処理ユニットDSPUは、図2の送信波生成回路TXGUおよび受信波処理回路RXPUに対応する。プロセッサユニットMPUは、例えば、制御回路CTLU全体の制御を担う。
0052
ディジタル信号処理ユニットDSPUは、チャープ信号生成回路CPGと、複数の高速フーリエ変換回路FFT[1]〜FFT[4]と、受信ビームフォーマDBFrと、出力バッファOBUFとを備える。高周波ユニットRFUは、送信系回路として、ディジタルアナログ変換器DACと、電圧制御発振器VCOと、複数の移相器PSF[1]〜PSF[4]と、複数のパワーアンプPA[1]〜PA[4]とを備える。また、高周波ユニットRFUは、受信系回路として、複数のロウノイズアンプLNA[1]〜LNA[4]と、複数のミキサMIX[1]〜MIX[4]と、複数の中間周波数処理回路IF[1]〜IF[4]と、複数のアナログディジタル変換器ADC[1]〜ADC[4]とを備える。
0053
チャープ信号生成回路CPGは、時間に比例して周波数が変化するチャープ信号をディジタル信号で生成する。ディジタルアナログ変換器DACは、当該ディジタルのチャープ信号をアナログ信号に変換する。電圧制御発振器VCOは、所定の周波数(例えば79GHz等)を持つローカル信号LOを当該アナログのチャープ信号に基づいて周波数変調する。移相器PSF[1]〜PSF[4]は、それぞれ、変調されたローカル信号LOの位相を適宜制御することで、仰角φ方向の送信ビームフォーミングを行う。この位相の制御量(すなわち仰角φ)は、例えば、プロセッサユニットMPU等によって指示される。パワーアンプPA[1]〜PA[4]は、それぞれ、移相器PSF[1]〜PSF[4]からの信号を増幅して送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]へ出力する。
0054
ロウノイズアンプLNA[1]〜LNA[4]は、それぞれ、受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]で受信した反射波(受信波)を増幅する。ミキサMIX[1]〜MIX[4]は、それぞれ、ロウノイズアンプLNA[1]〜LNA[4]からの信号と、電圧制御発振器VCOからのローカル信号LOとを乗算する。中間周波数処理回路IF[1]〜IF[4]は、それぞれ、ミキサMIX[1]〜MIX[4]からの信号に対して、フィルタリング処理や増幅処理等を行う。アナログディジタル変換器ADC[1]〜ADC[4]は、それぞれ、中間周波数処理回路IF[1]〜IF[4]からの信号を、ディジタル信号に変換することで、IF信号If[1]〜If[4]を出力する。
0055
高速フーリエ変換回路FFT[1]〜FFT[4]は、それぞれ、IF信号If[1]〜If[4]に対して高速フーリエ変換を行うことで、物標との距離を算出する。概念的には、図6に示されるように、IF信号(例えばIf[1])は、ミキサ(MIX[1])よる送信波Tx(変調されたローカル信号LO)と受信波Rxとの乗算によってビート周波数fb(=|Tx周波数−Rx周波数|)を有する。また、送信波Txは、物標で反射され、2τの遅延時間を経たのち受信波(反射波)Rxとして受信される。チャープ信号の周期Tと周波数変調幅BWの比率は、遅延時間2τとビート周波数fbの比率に等しい。このため、FMCW方式では、IF信号の周波数(ビート周波数fb)を算出することで、遅延時間2τが算出され、ひいては、物標との距離が算出される。
0056
受信ビームフォーマDBFrは、IF信号If[1]〜If[4]に基づいて、物標が存在する方位角θを算出し、その算出結果を出力バッファOBUFに保持する。概念的には、図7に示されるように、方位角θは、IF信号If[1]〜If[4]間の位相差Δαとして現れる。この位相差Δαは、隣り合う受信アンテナRX[p],RX[p+1]の間隔dを用いて、“d×sinθ”の距離に対応する値となる。したがって、この位相差Δαを検出することで、方位角θを算出することが可能になる。なお、受信ビームフォーマDBFrの具体的な方式として、ビームフォーマ法、Capon法、線形予測法等が知られている。
0057
《実施の形態1の主要な効果》
以上、実施の形態1の電子装置(レーダー装置)を用いることで、代表的には、アンテナ数を削減しつつ(コストの増大等を抑制しつつ)、レーダー探査に伴う処理(処理時間や処理負荷等)を低減することが可能になる。また、S/N比を向上させることが可能になる。
0058
(実施の形態2)
《電子装置(実施の形態2)の構成》
図8は、本発明の実施の形態2による電子装置の概略構成例を示す平面図である。図8に示す電子装置(レーダー装置)DEVbでは、図1(a)の構成例と同様に、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAは、直交に配置される。この直交配置によって、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。ただし、図8の構成例では、図1(a)の構成例と異なり、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAは、クロス状(プラス(+)字状)に配置される。また、クロス状に限らず、T字状等であってもよい。
0059
すなわち、実施の形態2では、送信用リニアアレイアンテナTXAが配置されるZ方向は、受信用リニアアレイアンテナRXAが配置されるX方向と交差する。このように、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAとを柔軟に配置できるようにすることで、例えば、半導体チップのレイアウト設計や、または配線基板のレイアウト設計を、必要に応じて容易化、効率化することが可能になる。
0060
(実施の形態3)
《電子装置(実施の形態3)の構成》
図9は、本発明の実施の形態3による電子装置の概略構成例を示す平面図である。図9に示す電子装置(レーダー装置)DEVcは、2個の送信用リニアアレイアンテナTXA1,TXA2と、2個の受信用リニアアレイアンテナRXA1,RXA2とを備える。図1(a)の構成例と同様に、送信用リニアアレイアンテナTXA1と受信用リニアアレイアンテナRXA1は直交に配置され、送信用リニアアレイアンテナTXA2と受信用リニアアレイアンテナRXA2も直交に配置される。
0061
具体的には、2個の送信用リニアアレイアンテナTXA1,TXA2は、それぞれ、矩形を形成する4辺の内の一辺である第1の辺SD1と、第1の辺SD1に直交する第3の辺SD3とに配置される。2個の受信用リニアアレイアンテナRXA1,RXA2は、それぞれ、第3の辺SD3に対向する第2の辺SD2と、第1の辺SD1に対向する第4の辺SD4とに配置される。
0062
このような直交配置によって、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。さらに、ここでは、例えば、送信用リニアアレイアンテナTXA1と受信用リニアアレイアンテナRXA1とが第1のペアとして使用され、送信用リニアアレイアンテナTXA2と受信用リニアアレイアンテナRXA2とが第2のペアとして使用される。この場合、第1のペアを用いると、実施の形態1で述べたように、送信ビームフォーミングによって仰角φ方向の指向性が得られ、受信ビームフォーミングによって方位角θ方向の指向性が得られる。逆に、第2のペアを用いると、送信ビームフォーミングによって方位角θ方向の指向性が得られ、受信ビームフォーミングによって仰角φ方向の指向性が得られる。
0063
例えば、送信ビームフォーミングよりも受信ビームフォーミングの方が高分解能な場合、第1のペアを用いることで方位角θが高分解能で算出され、第2のペアを用いることで仰角φが高分解能で算出される。このように、図9の構成例を用いて、第1のペアと第2のペアとを適宜使い分けることで、物標の3次元の位置をより高精度に算出することが可能になる。なお、ここでは、第1のペアと第2のペアの配置関係は、直交配置の関係であったが、場合によっては、直交配置の関係でなくてもよい。すなわち、例えば、第1のペアの座標軸に対して第2のペアの座標軸を傾かせたような状態でレーダー探査を行うようなことも可能である。
0064
(実施の形態4)
《電子装置(実施の形態4)の構成》
図10は、本発明の実施の形態4による電子装置の概略構成例を示す平面図である。図10に示す電子装置(レーダー装置)DEVdでは、図1(a)の構成例と同様に、送信用リニアアレイアンテナTXAと受信用リニアアレイアンテナRXAは、直交に配置される。この直交配置によって、実施の形態1の場合と同様の効果が得られる。ただし、図10の構成例では、送信用リニアアレイアンテナTXAに含まれる複数の送信アンテナTXr[1]〜TXr[4]の間隔d2が、図1(a)の場合の間隔d1(例えばd1<d2)とは異なっている。
0065
リニアアレイアンテナは、アンテナの間隔に応じて、図12に示したメインローブのビーム幅や、本来干渉させたい周期とはズレた周期で電波が干渉することによって生じるグレーティングローブの特性等が変わる。送信アンテナTXr[1]〜TXr[4](受信アンテナRXr[1]〜RXr[4]も同様)の間隔は、求められるリニアアレイアンテナの特性に応じて、適宜最適化することができる。
0066
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
0067
CTLU制御回路
DEV電子装置
RX,RXr受信アンテナ
RXA受信用リニアアレイアンテナ
RXi仮想受信アンテナ
Rx受信波
SC区間
SD 辺
TG物標
TXA送信用リニアアレイアンテナ
TXr送信アンテナ
Tx 送信波