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技術 溶銑脱硫方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 井本健夫
出願日 2018年12月26日 (2年1ヶ月経過) 出願番号 2018-242499
公開日 2020年7月9日 (7ヶ月経過) 公開番号 2020-105544
状態 未査定
技術分野 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼 溶融状態での鋼の処理
主要キーワード 実験水準 濃度境界 濃度低下分 物質移動律速 水冷電極 質量濃度比 酸化鉄量 合金濃度
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課題

溶銑段階の処理で、CaF2を用いることなく、低コストでかつ高温での溶銑操業を回避した反応効率の高い溶銑脱硫方法を提供する。

解決手段

Si濃度が0.3〜1.0質量%の溶銑に対して、CaO濃度が35〜60質量%、(Al2O3+SiO2)/(CaO)が0.5〜0.8、(SiO2)≦0.8×(Al2O3)、酸化鉄濃度が6質量%以上の条件を満たす精錬スラグを用い、溶銑温度を1250〜1350℃にて脱硫処理を行う。

概要

背景

鉄鋼製品に含有される硫黄分は、強度劣化材質磁気特性加工性などを阻害する悪影響を有することから、製品に応じた濃度以下のものが要求される。製鉄原料炭材などに含まれる硫黄は高炉出銑後や電気炉還元溶解後などの粗溶銑中に含有され、主に溶鉄精錬段階において、フラックスマグネシウムなどの脱硫剤により溶銑脱硫が実施される。更に、転炉吹錬後や電気炉での溶解精錬末期以降の低炭素濃度である溶鋼段階においても、脱酸状態でフラックスを添加する溶鋼脱硫も併せ、後工程の鋳造までに製品規格に対応するように所定の濃度以下に硫黄濃度を低減する処理が実施されている。

ここで、溶銑段階では溶銑中に炭素を多く含有し、この溶存炭素は溶存硫黄の活量を高めて酸素活量を低下させる作用を有する。したがって、脱硫処理を実施する場合、溶銑段階で実施する溶銑脱硫が効率の良い方法として広く実施されている。このとき、高価な金属マグネシウムを用いることはコスト的な制約があり、脱硫フラックスには、下記(1)式の反応が有効であることから、CaOを多く含むものを用いることが一般的である。
(CaO)+[S]→(CaS)+[O] ・・・・・(1)式

なお、(1)式中の括弧()は、脱硫フラックス(または精錬スラグ)中の物質を示し、括弧[]は、溶銑中の溶存物質を示す。しかし、CaOの融点は約2570℃であるため、溶鉄の精錬を行う際の処理温度ではCaOは滓化しない。そこで、CaOの活量を低下させずに液相線温度の低下と粘性低下作用とが著しいCaF2を配合した脱硫フラックスが過去に多く使用されていた。

しかし、脱硫処理後に発生するスラグ中には、CaF2から起因するフッ素が含有されることから、土木用材料などとしての副産物販売に際して近年の環境基準を満たさない極めて付加価値の低いスラグができてしまう。このため、CaF2を用いないフラックスを用いた溶銑脱硫処理を行う技術が多く開発されてきた。

特許文献1には、製鋼温度でも滓化できるカルシウムアルミネート系フラックスが開示されており、アルミナ(Al2O3)を配合することによって液相線温度を低下させ、脱硫能の確保が可能であることが記載されている。この技術を利用する場合、実施例に記載された溶鋼温度(1550℃)では、状態図でも明らかなように完全な液相になる。ところが、固相線温度(約1420℃以上)よりも低い1300℃程度で実施される溶銑脱硫では、この技術を利用することによる効果は極めて小さい。したがって、耐火物ダメージを与えて操業阻害が発生しやすく、過剰な加熱によるエネルギーロスを伴う高温溶銑操業にしか適用ができない。

従って、CaO系フラックスにAl2O3を配合した脱硫剤としては、特許文献2や特許文献3に記載のような、本来、溶銑中には含有されない高価なアルミニウム合金として添加する操業が提案されている。しかしながら特許文献2に記載の方法では、脱硫処理後のsol.Al濃度を20−80ppmという狭い範囲に制御する必要があることから安定に操業することが難しい。また、特許文献3に記載の方法では、大量の金属アルミニウム合金を必要とするため、高コストな操業になってしまう。

一方、特許文献4には、塩基度(CaO/SiO2)が3.5以上と高く、フラックス中のCaO分に対して2〜7質量%のFeOを添加した溶銑脱硫方法が記載されており、その中で、Al2O3分を2〜20質量%含有させる手段の有効性なども記載されている。このような高塩基度フラックスにAl2O3を含有させて、低融点化を図ることは有効な手段であるが、酸化鉄(FeO)はフラックスの粘性を低下させ、サルファイドキャパシティーを高める作用がある。この理由により酸化鉄(FeO)濃度が全CaO濃度の7質量%以下に限定されているために、CaF2代替作用としての粘性低減、滓化促進効果が不十分である。

概要

溶銑段階の処理で、CaF2を用いることなく、低コストでかつ高温での溶銑操業を回避した反応効率の高い溶銑脱硫方法を提供する。Si濃度が0.3〜1.0質量%の溶銑に対して、CaO濃度が35〜60質量%、(Al2O3+SiO2)/(CaO)が0.5〜0.8、(SiO2)≦0.8×(Al2O3)、酸化鉄濃度が6質量%以上の条件を満たす精錬スラグを用い、溶銑温度を1250〜1350℃にて脱硫処理を行う。

目的

本発明は前述の問題点を鑑み、溶銑段階の処理で、CaF2を用いることなく、低コストでかつ高温での溶銑操業を回避した反応効率の高い溶銑脱硫方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

Si濃度が0.3〜1.0質量%の溶銑に対して、CaO濃度が35〜60質量%、(Al2O3+SiO2)/(CaO)が0.5〜0.8、(SiO2)≦0.8×(Al2O3)、酸化鉄濃度が6質量%以上の条件を満たす精錬スラグを用い、溶銑温度を1250〜1350℃にて脱硫処理を行うことを特徴とする溶銑脱硫方法。ここで、括弧()は、括弧内の物質の精錬スラグ中の濃度(質量%)を表す。

請求項2

前記脱硫処理後スラグ除滓処理を実施し、その後、酸素吹錬を実施してSi濃度が0.1質量%未満の溶鉄を得ることを特徴とする請求項1に記載の溶銑脱硫方法。

請求項3

酸素吹錬を実施してC濃度が1.0質量%未満の溶鋼を得ることを特徴とする請求項2に記載の溶銑脱硫方法。

請求項4

前記溶銑脱硫方法を、アーク加熱電気炉で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶銑脱硫方法。

技術分野

0001

本発明は、環境規制上使用が困難なCaF2を用いずに、溶銑段階で行う溶銑脱硫方法に関する。

背景技術

0002

鉄鋼製品に含有される硫黄分は、強度劣化材質磁気特性加工性などを阻害する悪影響を有することから、製品に応じた濃度以下のものが要求される。製鉄原料炭材などに含まれる硫黄は高炉出銑後や電気炉還元溶解後などの粗溶銑中に含有され、主に溶鉄精錬段階において、フラックスマグネシウムなどの脱硫剤により溶銑脱硫が実施される。更に、転炉吹錬後や電気炉での溶解精錬末期以降の低炭素濃度である溶鋼段階においても、脱酸状態でフラックスを添加する溶鋼脱硫も併せ、後工程の鋳造までに製品規格に対応するように所定の濃度以下に硫黄濃度を低減する処理が実施されている。

0003

ここで、溶銑段階では溶銑中に炭素を多く含有し、この溶存炭素は溶存硫黄の活量を高めて酸素活量を低下させる作用を有する。したがって、脱硫処理を実施する場合、溶銑段階で実施する溶銑脱硫が効率の良い方法として広く実施されている。このとき、高価な金属マグネシウムを用いることはコスト的な制約があり、脱硫フラックスには、下記(1)式の反応が有効であることから、CaOを多く含むものを用いることが一般的である。
(CaO)+[S]→(CaS)+[O] ・・・・・(1)式

0004

なお、(1)式中の括弧()は、脱硫フラックス(または精錬スラグ)中の物質を示し、括弧[]は、溶銑中の溶存物質を示す。しかし、CaOの融点は約2570℃であるため、溶鉄の精錬を行う際の処理温度ではCaOは滓化しない。そこで、CaOの活量を低下させずに液相線温度の低下と粘性低下作用とが著しいCaF2を配合した脱硫フラックスが過去に多く使用されていた。

0005

しかし、脱硫処理後に発生するスラグ中には、CaF2から起因するフッ素が含有されることから、土木用材料などとしての副産物販売に際して近年の環境基準を満たさない極めて付加価値の低いスラグができてしまう。このため、CaF2を用いないフラックスを用いた溶銑脱硫処理を行う技術が多く開発されてきた。

0006

特許文献1には、製鋼温度でも滓化できるカルシウムアルミネート系フラックスが開示されており、アルミナ(Al2O3)を配合することによって液相線温度を低下させ、脱硫能の確保が可能であることが記載されている。この技術を利用する場合、実施例に記載された溶鋼温度(1550℃)では、状態図でも明らかなように完全な液相になる。ところが、固相線温度(約1420℃以上)よりも低い1300℃程度で実施される溶銑脱硫では、この技術を利用することによる効果は極めて小さい。したがって、耐火物ダメージを与えて操業阻害が発生しやすく、過剰な加熱によるエネルギーロスを伴う高温溶銑操業にしか適用ができない。

0007

従って、CaO系フラックスにAl2O3を配合した脱硫剤としては、特許文献2や特許文献3に記載のような、本来、溶銑中には含有されない高価なアルミニウム合金として添加する操業が提案されている。しかしながら特許文献2に記載の方法では、脱硫処理後のsol.Al濃度を20−80ppmという狭い範囲に制御する必要があることから安定に操業することが難しい。また、特許文献3に記載の方法では、大量の金属アルミニウム合金を必要とするため、高コストな操業になってしまう。

0008

一方、特許文献4には、塩基度(CaO/SiO2)が3.5以上と高く、フラックス中のCaO分に対して2〜7質量%のFeOを添加した溶銑脱硫方法が記載されており、その中で、Al2O3分を2〜20質量%含有させる手段の有効性なども記載されている。このような高塩基度フラックスにAl2O3を含有させて、低融点化を図ることは有効な手段であるが、酸化鉄(FeO)はフラックスの粘性を低下させ、サルファイドキャパシティーを高める作用がある。この理由により酸化鉄(FeO)濃度が全CaO濃度の7質量%以下に限定されているために、CaF2代替作用としての粘性低減、滓化促進効果が不十分である。

先行技術

0009

特開2007−46083号公報
特開2006−161086号公報
特開2010−229439号公報
特開2003−253315号公報

発明が解決しようとする課題

0010

前述した特許文献1〜4に記載の方法では、溶銑脱硫処理でCaF2を用いないことを前提としているが、高温での溶銑操業を前提としたり、高価な金属Alの使用を伴ったり、CaF2代替作用として効果が不十分であったりするという課題がある。

0011

本発明は前述の問題点を鑑み、溶銑段階の処理で、CaF2を用いることなく、低コストでかつ高温での溶銑操業を回避した反応効率の高い溶銑脱硫方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)Si濃度が0.3〜1.0質量%の溶銑に対して、CaO濃度が35〜60質量%、(Al2O3+SiO2)/(CaO)が0.5〜0.8、(SiO2)≦0.8×(Al2O3)、酸化鉄濃度が6質量%以上の条件を満たす精錬スラグを用い、溶銑温度を1250〜1350℃にて脱硫処理を行うことを特徴とする溶銑脱硫方法。
ここで、括弧()は、括弧内の物質の精錬スラグ中の濃度(質量%)を表す。
(2)前記脱硫処理後にスラグの除滓処理を実施し、その後、酸素吹錬を実施してSi濃度が0.1質量%未満の溶鉄を得ることを特徴とする上記(1)に記載の溶銑脱硫方法。
(3)酸素吹錬を実施してC濃度が1.0質量%未満の溶鋼を得ることを特徴とする上記(2)に記載の溶銑脱硫方法。
(4)前記溶銑脱硫方法を、アーク加熱型電気炉で行うことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶銑脱硫方法。

発明の効果

0013

本発明によれば、溶銑段階の処理で、CaF2を用いることなく、低コストでかつ高温での溶銑操業を回避した反応効率の高い溶銑脱硫方法を提供することが可能となる。

図面の簡単な説明

0014

アーク加熱型電気炉の概要を説明するための図である。

0015

以下、本発明の実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施様態に係る溶銑脱硫方法の例を説明するための図である。図1は、直流電気炉中に型銑と炭材還元ブリケットとを主原料として溶解した溶銑1中から、精錬用フラックス2を用いて脱硫処理を実施している操業を示している。

0016

この実施形態における直流電気炉の構造は、上部電極3と下部水冷電極4とによってアーク5を発生して加熱できる構造であり、精錬用フラックス2はホッパー6より炉内に必要量切り出し添加される。

0017

また、脱硫処理後の後工程では、酸素ランス7から酸素噴流8を吹き付けて脱炭処理脱燐処理、および脱炭反応に伴って生じるCOボイリングシール効果を利用した脱窒処理を実施することができる。この際、脱硫によって還元反応で滓化した精錬用フラックスを主成分としたスラグ(以下、精錬スラグと呼ぶ)が酸化反応によって復硫することを抑制するために、脱硫処理が完了した後に炉体9を排滓傾動装置10で傾動させて除滓孔11から除滓12を経由してスラグパン13中に精錬スラグを排滓する方式が採用されている。

0018

脱硫のための精錬スラグの組成は、前述の(1)式の反応で高いCaO活量を確保するために、CaO濃度を35質量%以上とする。また、良好な滓化を維持するためには一定以上のAl2O3や酸化鉄などを配合する必要があるため、CaO濃度は60質量%以下とする。滓化作用を有するものとしては、Al2O3やシリカ(SiO2)が液相線温度を低下させるため有効であるが、液相状態では多量のAl2O3やSiO2が含まれていると、CaO活量を低下させる悪影響があるために、適切に上限を規定する必要がある。

0019

また、FeO、Fe2O3、Fe3O4などの酸化鉄成分も同様に滓化作用が大きく、酸化鉄は更に、CaF2に代替するスラグ粘性低下作用と、サルファイドキャパシティーを向上させる作用とがあることが知られている。しかし、酸化鉄自体は精錬スラグの酸素ポテンシャルを上昇させるため、その影響により酸素ポテンシャルの低い溶銑とスラグとの界面酸素ポテンシャルを高めてしまい、(1)式に示される界面化学反応を阻害する悪影響を有する。このため、従来の手段においては高濃度の酸化鉄を含有する精錬スラグを用いた溶銑脱硫処理を効率よく実施することは困難であった。

0020

本発明では、滓化作用を有するものとしてAl2O3を用い、また、Al2O3の一部に代えてSiO2をも併用することにより、従来困難であった高濃度の酸化鉄を含有する精錬スラグにおいても、良好な脱硫処理を可能とする条件を、本発明者の実験研究によって見出した。

0021

精錬スラグにおいて滓化作用を確保するため、(Al2O3+SiO2)/(CaO)(質量濃度比)は0.5〜0.8とする。(Al2O3+SiO2)/(CaO)(質量濃度比)が0.5未満では、CaOの滓化作用が不足してしまい、(Al2O3+SiO2)/(CaO)(質量濃度比)が0.8超では、相対的にCaOの比率が小さくなってCaOの活量が低下してしまうからである。

0022

また、精錬スラグにおいて、(SiO2)≦0.8×(Al2O3)とする。精錬スラグ中において、Al2O3に対してSiO2が過剰に含まれていると、精錬スラグ中で網目構造を形成してしまい、それにより流動性が低下し、脱硫効果が低下してしまうからである。

0023

また、精錬スラグにおいて、滓化作用に加えてサルファイドキャパシティー向上効果を発揮させるために、酸化鉄濃度は6質量%以上とする。ここでいう酸化鉄濃度は、スラグ中の二価の酸化鉄濃度と三価の酸化鉄濃度との合計で規定したものである。このとき、重要になることは、前述の界面の酸素ポテンシャルを低位に維持して(1)式の化学反応を速やかに進行させることである。前述したように、酸化鉄は界面酸素ポテンシャルを高めてしまうが、溶銑中のSi濃度を0.3質量%以上の高濃度に維持することにより、界面酸素ポテンシャルの上昇による悪影響を抑制する効果を発揮する。

0024

溶銑中においては、多量に含有される溶存炭素によって酸素ポテンシャルは低位に維持されているが、例えば脱酸力の強いAlを溶銑中に含有させることにより、溶銑中(バルク)の酸素ポテンシャルはさらに低下することが考えられる。また、溶銑中のスラグ/メタル界面付近においては、脱硫反応並行して、例えば下記(2)式の反応が界面付近で起こり、Alによる酸化ロスが発生して界面酸素ポテンシャルは低下する。
[Al]※+(FeO)→(Al2O3)+Fe ・・・・・・(2)

0025

ここで、(2)式中の[]※は、溶鉄中の均一な合金元素のバルクの濃度ではなく、スラグ/メタル界面近くの濃度境界相で濃度勾配を持った状態における溶銑中のスラグ/メタル界面付近における合金濃度を示す。従って、スラグとメタルとの間の酸素ポテンシャルが非平衡のまま(2)式の反応の進行と共に(1)式の脱硫反応が進行するため、界面の酸素ポテンシャルを規定する[Al]※は溶銑内のバルク(界面から離れた位置)のAl濃度よりも低位である。

0026

本発明では、精錬スラグ中に比較的多くの酸化鉄を含有するため、精錬スラグからスラグ/メタル界面へのFeO供給速度は大きい。一方、溶銑中(バルク)の酸素ポテンシャルは酸化鉄を多く含有する精錬スラグよりも低い非平衡状態であり、その、スラグ/メタル界面にて(2)式は進行する。スラグ/メタル界面では(2)式のAlによる酸化ロスが早く進行するために、溶銑内のバルクから濃度境界相を通過して供給されるAlが不足し、スラグ/メタル界面での[Al]※が低位になる。このため、十分に低位な界面酸素ポテンシャルを確保することが困難となり、(1)式の脱硫速度は低下する。従って、溶銑内のバルクからスラグ/メタル界面へAlの物質移動律速せずに(1)式を充分に早く進行させるためには、[Al]※を高位に維持する必要がある。そのためには、特許文献3に記載の方法のように、高価なアルミ合金を大量に含有させ、溶銑中とスラグ/メタル界面とのAlの濃度勾配によって、スラグ/メタル界面へのAlの流入を促進させる必要が生じる。しかし、金属Alは溶銑中に元来存在するようなSiよりも高価であり、更に、脱酸力がSiよりも大幅に強いAlを高濃度で操業するのは非効果的であり、コスト的に不利な操業となる。

0027

一方、Alの代わりにSiを添加し、溶銑中において、Alを添加した場合と同等の酸素ポテンシャルにするためには、一般的に、Alよりも1桁以上高い濃度になるようにSiを添加する必要がある。精錬スラグ中の酸化鉄濃度が高い場合には精錬スラグからスラグ/メタル界面へ酸化鉄が多く供給されるが、脱硫を促進するよう界面酸素ポテンシャルを低下させるには、必要なマスバランスを評価し、その分だけ溶銑中(バルク)から界面へSiを供給する必要がある。このため、溶銑中のスラグ/メタル界面付近におけるSi濃度([Si]※)と溶銑中(バルク)のSi濃度([Si])との濃度比([Si]※/[Si])は、同一脱酸力に匹敵する量のAlを添加した場合のスラグ/メタル界面付近におけるAl濃度([Al]※)と溶銑中(バルク)のAl濃度([Al])との濃度比([Al]※/[Al])よりも高くなる。仮にバルク中の脱酸力がAlと同等となるSi濃度とした場合には、Siを添加した条件では界面酸素ポテンシャルを安定的に低位に維持できるために脱硫促進には極めて有利である。

0028

本発明者らの実験研究の結果、高濃度の酸化鉄を含有する精錬スラグでは、溶銑中のSi濃度が0.3質量%以上の条件において、良好な脱硫処理を実施できることを知見した。上記の理由から、本発明において規定される、精錬スラグの組成及び溶銑中Si濃度は、フラックスを添加したり成分を調整したりした後のスラグの滓化が完了した時点から、所定の脱硫処理が完了するまでの間に維持すべき範囲である。

0029

但し、精錬スラグの組成及び溶銑中Si濃度が一部の間規定範囲外であっても、反応速度は低下するものの脱硫反応は進行する。また、完全滓化前の精錬スラグの組成域や、溶銑中のSi濃度が0.3質量%未満になる処理末期での脱硫反応進行時間を区分することは困難である。そこで、本発明では、脱硫処理全体のうち、6割以上のS濃度低下分で、精錬スラグの組成及び溶銑中Si濃度が前述の条件を満たしていればよい。

0030

また、前述したように、溶銑中のSi濃度の下限値を0.3質量%としたのは、スラグ/メタル界面での界面酸素ポテンシャルを低下させて(1)式の反応を速やかに進行させるために最低限のSi濃度を確保しなければならないからである。一方、溶銑中のSi濃度の上限値は、1.0質量%とする。溶銑中のSi濃度が1.0質量%を超える操業を実施するためには、通常大量の合金シリコンを必要とし、コストが多くかかってしまう。また、溶銑中のSi濃度が1.0質量%を超えると、溶鋼を製造するまでに酸化によってSiO2が多く生成され、その分スラグ量が過剰になって操業制約になる場合が多い。

0031

なお、溶銑中のSi濃度を0.3〜1.0質量%に確保する場合、安価型銑に比較的多く含まれるような原料中に予め不可避的に含有されているSiや、電気炉でアーク溶解中に浮遊する酸化物中のSiO2が高温アーク部などで炭素によって還元されたSiを含めることができる。そのため、フェロシリコンなどの合金の添加量を削減でき、さらには後工程で過剰のSiを酸化除去して、熱裕度を確保することもできる。

0032

また、脱硫処理中の処理温度は1250〜1350℃とする。脱硫処理中の温度が1250℃未満では、滓化性や精錬スラグの流動性が悪化して反応速度が十分ではなくなり、反応効率が著しく低下してしまう。また、脱硫処理中の温度が1350℃を超えると、炉内の耐火物の損傷が大きくなり炉の寿命が大きく低下してしまう。しかしながら、1350℃を超えると吸熱反応である(1)式の反応自体が早くなり、本発明の規定範囲外であっても同等の脱硫速度を発現することが可能である。

0033

更に、脱硫処理を完了した後に引き続き、同一炉で脱炭処理や脱燐処理等を実施することによって、固定費の低い操業を行ってもよい。そのために、上記脱硫処理を実施した後にスラグを排出し、その後に、図1の酸素ランス7から酸素溶銑面に吹き付けて酸素吹錬を実施し、Si濃度が0.1質量%未満の範囲に脱珪することによって熱裕度を向上させることができる。また、炭素、燐の酸化除去による精錬を実施することもできる。また、スラグを排滓する場合には、図1に示すような排滓孔を有する電気炉の傾動排滓方式を採用したり、転炉や電気炉の炉口からの傾動排滓(ドラッガー使用など適宜可能)、VSD吸引排滓などを採用したり、適宜排滓方式は選定できる。

0034

なお、溶銑中のSi濃度が0.1質量%以上の状態では、供給した酸素の殆どが脱珪処理に使用されて、脱炭やそれに伴う低窒素化、脱燐などの処理が実質できない。したがって、脱珪処理を行う場合には、同一炉でSi濃度が0.1質量%未満の範囲にまで脱珪した溶鉄を製造することが好ましい。

0035

特にアーク加熱型電気炉で実施する場合には、スラグの排滓後の脱珪処理により熱裕度を確保できるため、熱源としての電気エネルギーを大幅に削減することが可能であり、さらにC濃度が1.0質量%未満の溶鋼を製造する際には、スラグ中のSiO2のフォーミング効果によって外部空気に起因する窒素のピックアップを回避し、通常の電気炉操業では困難とされる、脱炭吹錬時の低窒素化操業を可能にするため、電気炉操業で酸素吹錬によりC濃度が1.0質量%未満の溶鋼を製造することが好ましい。

0036

以上のように本実施形態では、図1に示したような直流電気炉で溶銑の脱硫処理を行う例について説明した。一方、本発明は、直流電気炉以外にも、トーピードカー溶銑鍋を用いた機械攪拌三相交流高周波型各種電気炉等を用いても実施可能であり、高炉溶銑や、溶融還元法、各種スクラップ溶解法などによって製造された溶鉄やそれらの混合物で、一般的には炭素を2.0質量%以上含有する溶鉄を対象にして実施することができる。

0037

次に、本発明の実施例について説明するが、この条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するための一条件例であり、本発明は、この実施例の記載に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する種々の手段にて実施することができる。

0038

(第1の実験
3MVAの直流電気炉で4t/chの溶銑を製造し、直流電気炉を傾動させて溶解時に発したスラグの除滓を行い、不可避的に残留するスラグのみ存在する状態とした。次いで、フラックスを添加してアーク加熱を行い、精錬スラグを生成させて、脱硫処理を行った。フラックスはLF造塊滓を主成分としたものを用い、酸化鉄としてはヘマタイトを主成分とした鉄鉱石を用い、比較例も含めて実験水準毎にフラックスの組成を調整し、精錬スラグの組成を調整した。フラックスの組成を調整する際には、必要に応じてアルミナ煉瓦屑生石灰硅砂を用いた。また、フラックスの組成を調整する際に予め3mmアンダー粉砕した混合品を実験水準毎に使用した。フラックス添加前の溶銑の成分は、質量%でC:3.0〜3.7%、Si:0.5〜0.6%、Mn:0.05%未満、P:0.08〜0.13%で、S:0.05%±0.01%であった。

0039

添加したフラックスの量はいずれも30kg/chで、フラックス添加後の処理時間は12分で、処理前後と処理開始後7分とで溶銑温度を消耗型熱電対で測定した。溶銑温度は、1210〜1340℃の範囲で調整し、実験を行った。

0040

処理後に溶銑サンプルとスラグサンプルとを汲み上げ、そこから鉄製サンプラーでサンプルを採取して組成を分析し、その分析値を実験後結果として整理した。また、フラックスを添加してから2分後にも精錬スラグのサンプルを採取した結果、各実験において2分後のサンプルと処理後のスラグの液相部とにおいて成分に大きな差異は認められず、滓化進行に変化は認められなかった。主な実験結果の一覧を表1に示す。脱硫率が80%以上であったものを発明の効果が得られたものとして評価した。なお、表中の酸化鉄濃度(質量%)とは、サンプル中の2価、3価として存在するそれぞれFeO、Fe2O3、およびFe3O4の酸化鉄濃度の合計値である。また、表中の下線は、本発明の範囲から外れた条件であることを示している。

0041

0042

実施例1は、本実験の基本条件であり脱硫後の溶銑中S濃度が0.0071質量%であり、脱硫率は80%を超え、目標としていた0.01質量%以下の良好な脱硫特性を確認することができた。実施例2及び3は、CaO濃度を変更した水準であるが、本発明の滓化促進作用は充分であることが確認でき、脱硫処理も良好で脱硫後の溶銑中S濃度はそれぞれ0.0065、0.0085質量%であった。

0043

実施例4は、滓化作用のあるSiO2の比率を高めた水準であるが、Al2O3との比率が規定の範囲内であり、脱硫後の溶銑中S濃度が0.0084質量%と結果も良好であった。実施例5は、酸化鉄濃度を本発明の規定範囲下限付近で実施したものであるが、脱硫後の溶銑中S濃度が0.0084質量%と良好な脱硫処理を実施することができた。

0044

一方、比較例1は、規定より酸化鉄濃度が低い操業の結果であったが、酸化鉄量が低いため、精錬スラグの粘性低減作用が低かった。また、サルファイドキャパシティーが不足していたため、脱硫後の溶銑中S濃度が0.0121質量%であり、脱硫率は80%に到達せず、目標としていた0.01質量%以下を達成できなかった。比較例2は、溶銑中Si濃度を規定より下げた操業であったが、界面酸素ポテンシャルが十分に低下させることができなかったため、脱硫後のS濃度が0.0131質量%であり、脱硫率は80%に到達せず、目標としていた0.01質量%以下を達成できなかった。

0045

比較例3は、CaO濃度が規定より高い操業で、滓化不良によって規定時間内での脱硫が不十分であったため、脱硫率は80%に到達せず、脱硫後の溶銑中S濃度が0.0142質量%であった。比較例4はCaO濃度が規定値以下で、比較例5は(Al2O3+SiO2)/(CaO)が規定値以上の操業で、いずれもCaOの活量が低かったため、脱硫率は80%に到達せず、脱硫後の溶銑中S濃度が0.0144質量%であった。

0046

比較例6は、滓化作用のあるSiO2のAl2O3に対する比率が規定より高い条件であったが、精錬スラグの粘性が高く、精錬スラグ中にCaSとして吸収された硫黄分の物質移動律速によって反応効率が低く、脱硫率は80%に到達せず、脱硫後の溶銑中S濃度が0.0121質量%であった。比較例7は処理温度が規定以下であり、吸熱反応の脱硫処理には不十分な条件であったため、脱硫率は80%に到達せず、脱硫後の溶銑中S濃度が0.0110質量%であった。

0047

(第2の実験)
第1の実験の実施例1の基本条件とほぼ同一の条件で脱硫処理を行い、溶銑中S濃度が0.0071質量%の溶銑を得た。その後、直流電気炉を傾動してその溶銑を残したまま脱硫スラグを排滓した。そして、80Nm3/h・tの送酸速度ランスから酸素を供給して酸素吹錬を実施した。酸素吹錬により、溶銑中Si濃度を0.1質量%未満の状態とすることができ、その後、脱炭、脱燐、脱窒効果が認められ、吹錬終了後、C濃度が0.1質量%未満、P濃度が0.03質量%以下、N濃度が0.0025質量%未満の溶鋼を得ることができ、S濃度は0.0071質量%のまま変動はなかった。一方、比較のため、脱硫後のスラグを排滓せずに同様の条件で酸素吹錬を実施した。この例では、吹錬終了までに復硫してS濃度が0.03質量%を超えてしまい、高品位溶鋼の製造には適さなかった。

0048

酸素吹錬の初期においては、溶銑中Si濃度は0.3質量%以上であったが、脱珪による発熱分が熱裕度として作用したため、溶銑中Si濃度が<0.1質量%の状態で酸素吹錬を開始する操業と比較して、スクラップ配合比率を全処理量の5%以上増加させることができることが確認した。

実施例

0049

また、吹錬中にCOボイリングに伴って進行する脱窒反応は、溶銑中のS濃度が高いと大きく阻害されるが、本発明によって得られた低硫溶銑は、S濃度が十分下げられている。また、脱硫後に溶銑中に残留するSiは脱珪によって酸化してSiO2となるため、脱燐時には、CaO系脱燐剤とともに良好な滓化性を有する。さらに、脱炭時にCOが発生することによってフォーミングが生じ、このフォーミングによって溶鉄表面が覆われ、大気中の窒素の吸着を防止することができる。従来の電気炉操業では40ppm以下の低窒素溶鋼を製造することが困難とされていたが、上述した作用により25ppmの低窒素化を実現できた。

0050

本発明によれば、蛍石を添加した操業のようなスラグの副産物価値を損なう操業とはならず、また、高価な金属Alの大量使用を必要とせず、耐火物の損耗をも抑えて安価で効率の良い溶銑脱硫を実施することができる。また、造塊滓などの安価な脱硫材の効率的な利用が可能になるなど、工業的利用価値の高い操業の実施が可能になる。

0051

1溶銑
2精錬用フラックス
3 上部電極
4 下部水冷電極
5アーク
6ホッパー
7酸素ランス
8酸素噴射
9炉体
10排滓傾動装置
11除滓孔
12 除滓樋
13 スラグパン

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