図面 (/)

技術 熱可塑性樹脂組成物の製造方法

出願人 東レ株式会社
発明者 増永淳史石竹賢次歌崎憲一
出願日 2018年12月27日 (2年1ヶ月経過) 出願番号 2018-243941
公開日 2020年7月9日 (7ヶ月経過) 公開番号 2020-105312
状態 未査定
技術分野 硫黄,リン,金属系主鎖ポリマー 高分子組成物
主要キーワード 環状ブロック 小型タンク 正弦波モード 高圧バルブ 濾液成分 ポテンシオメーター 小型スイッチ ナイフスイッチ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年7月9日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (3)

課題

流動性耐熱性および機械特性に優れ、さらに溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。

解決手段

(A)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤存在下にて加熱する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部以下、前記(C)が0.01質量部以上10質量部以下であり、得られる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

概要

背景

ポリフェニレンスルフィド(以下PPS樹脂と略す。)に代表されるポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性難燃性耐薬品性、寸法安定性剛性および電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気電子部品機械部品自動車部品、および航空機部品などの用途に使用されている。

しかしながら、近年、自動車大型部品モジュール化、軽量化に伴う成形品薄肉化に対応するため、PPS樹脂においてもより優れた流動性機械特性が求められており、またエンジン部品電子機器等の高密度化出力増加に伴う使用環境温度の増加に対応するため、より優れた耐熱性が求められている。

ポリアリーレンスルフィド樹脂の特性を改良する手段として、ポリアリーレンスルフィド樹脂に他の熱可塑性樹脂を配合する方法が知られている。より具体的には、ポリフェニレンスルフィド樹脂に、ポリカーボネートポリスルホン及びポリエーテルケトンから成る群から選ばれる熱可塑性樹脂を配合する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。

また相溶性向上による機械特性の向上を目的に、アルカリ金属炭酸塩およびポリアリールエーテルケトンポリアリールエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィドおよびポリエーテルイミドからなる群より選ばれる少なくとも異なる2種を含む組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。

また耐熱性向上のために、ガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性樹脂および環状ポリアリーレンスルフィドを加熱することにより、前記環状ポリアリーレンスルフィド(B)をポリアリーレンスルフィドに転化して得られる樹脂組成物であって、特定の海島構造を形成している樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。

また流動性向上のために、結晶性樹脂および環状ポリフェニレンスルフィド混合物からなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。

概要

流動性、耐熱性および機械特性に優れ、さらに溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。 (A)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤存在下にて加熱する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部以下、前記(C)が0.01質量部以上10質量部以下であり、得られる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。なし

目的

本発明は、上記背景技術の課題に鑑み、流動性、耐熱性および機械特性に優れ、さらに溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れる、ポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性樹脂組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

(A)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤存在下にて加熱する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部以下、前記(C)が0.01質量部以上10質量部以下であり、得られる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

請求項2

前記(B)のガラス転移温度が110℃以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

請求項3

前記熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

請求項4

(A)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤存在下にて加熱して得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部以下、前記(C)が0.01質量部以上10質量部以下であり、前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、熱可塑性樹脂組成物。

請求項5

前記(B)のガラス転移温度が110℃以上である、請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。

請求項6

前記熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、請求項4または5に記載の熱可塑性樹脂組成物。

技術分野

0001

本発明は、流動性耐熱性および機械特性に優れ、さらに溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れる、環状ポリアリーレンスルフィドを配合してなる熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関するものである。

背景技術

0002

ポリフェニレンスルフィド(以下PPS樹脂と略す。)に代表されるポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性耐薬品性、寸法安定性剛性および電気絶縁性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気電子部品機械部品自動車部品、および航空機部品などの用途に使用されている。

0003

しかしながら、近年、自動車大型部品モジュール化、軽量化に伴う成形品薄肉化に対応するため、PPS樹脂においてもより優れた流動性、機械特性が求められており、またエンジン部品電子機器等の高密度化出力増加に伴う使用環境温度の増加に対応するため、より優れた耐熱性が求められている。

0004

ポリアリーレンスルフィド樹脂の特性を改良する手段として、ポリアリーレンスルフィド樹脂に他の熱可塑性樹脂を配合する方法が知られている。より具体的には、ポリフェニレンスルフィド樹脂に、ポリカーボネートポリスルホン及びポリエーテルケトンから成る群から選ばれる熱可塑性樹脂を配合する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。

0005

また相溶性向上による機械特性の向上を目的に、アルカリ金属炭酸塩およびポリアリールエーテルケトンポリアリールエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィドおよびポリエーテルイミドからなる群より選ばれる少なくとも異なる2種を含む組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。

0006

また耐熱性向上のために、ガラス転移温度が100℃以上である熱可塑性樹脂および環状ポリアリーレンスルフィドを加熱することにより、前記環状ポリアリーレンスルフィド(B)をポリアリーレンスルフィドに転化して得られる樹脂組成物であって、特定の海島構造を形成している樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。

0007

また流動性向上のために、結晶性樹脂および環状ポリフェニレンスルフィド混合物からなる樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献4参照)。

先行技術

0008

特開2000−248179号公報
国際公開第2017/186926号
特開2015−193813号公報
特開2008−189900号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、特許文献1や2に記載された樹脂組成物は、ポリエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂とPPS樹脂との相溶性が依然として悪く、機械的特性の改良に十分な効果が得られていないのが現状であり、かつ流動性、耐熱性も十分なものではなかった。

0010

特許文献3に記載された樹脂組成物は、低分子量の環状ポリアリーレンスルフィドを大環状化して高分子量化してなる組成物であり、溶融滞留時に環状ポリアリーレンスルフィドの大環状化が進行することで相溶性が低下するため、結果として機械的特性の改良に十分な効果が得られず、また耐熱性も十分なものではなかった。特許文献4に記載された樹脂組成物は流動性に優れるものの、溶融滞留時に環状ポリフェニレンスルフィド混合物の大環状化が進行することで相溶性が低下するため、結果として機械的特性の改良に十分な効果が得られず、また耐熱性も十分なものではなかった。

0011

そこで本発明は、上記背景技術の課題に鑑み、流動性、耐熱性および機械特性に優れ、さらに溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れる、ポリアリーレンスルフィドを含む熱可塑性樹脂組成物を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明は、前述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。本発明は以下の構成を有する。
[1](A)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤存在下にて加熱する熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部以下、前記(C)が0.01質量部以上10質量部以下であり、得られる熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[2]前記(B)のガラス転移温度が110℃以上である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[3]前記熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[4](A)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂を、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤存在下にて加熱して得られる熱可塑性樹脂組成物であって、前記(B)100質量部に対し、前記(A)が1質量部以上67質量部以下、前記(C)が0.01質量部以上10質量部以下であり、前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、熱可塑性樹脂組成物。
[5]前記(B)のガラス転移温度が110℃以上である、[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6]前記熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後の熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が単一である、[4]または[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物。

発明の効果

0013

本発明の製造方法によれば、得られる熱可塑性樹脂組成物は、流動性、耐熱性および機械特性に優れ、さらに溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れる。

図面の簡単な説明

0014

実施例2に記載の熱可塑性樹脂組成物の動的粘弾性チャート
比較例3に記載の熱可塑性樹脂組成物の動的粘弾性チャート
比較例6に記載の熱可塑性樹脂組成物の動的粘弾性チャート

0015

以下、本発明をさらに詳細に説明する。

0016

本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)重量平均分子量が5000以下の環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「(B)熱可塑性樹脂」と記載する場合がある)を、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤存在下にて加熱することによって得られる。

0017

<(A)環状ポリアリーレンスルフィド>
本発明の(A)環状ポリアリーレンスルフィドとは、アリーレン基(以下Arと略する場合がある)とスルフィドから成る、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環状化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(1)のごとき化合物である。Arとしては下記式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。

0018

0019

0020

これら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(13)〜式(15)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。

0021

0022

なお、(A)環状ポリアリーレンスルフィドにおいては上記式(2)〜式(12)などの繰り返し単位をランダムに含んでも良いし、ブロックで含んでも良く、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環状ポリフェニレンスルフィド、環状ポリフェニレンスルフィドスルホン、環状ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環状ランダム共重合体環状ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい(A)環状ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位として下記式で表されるp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環状ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。

0023

0024

(A)環状ポリアリーレンスルフィドの上記(1)式中の繰り返し数mに特に制限は無いが、2〜50が好ましく、2〜25がより好ましく、3〜20が更に好ましい範囲として例示できる。mが大きくなると相対的に粘度が上昇するため、mが50を超えると、Arの種類によっては環状ポリアリーレンスルフィドの溶融解温度が高くなり、流動性が低下する場合がある。25以下が好ましく、20以下がさらに好ましい。一方、mは2以上が好ましく、3以上が更に好ましい。ここで、前記一般式(1)における繰り返し数mは、NMRおよび質量分析により構造解析を行うことで求めることができる。

0025

また、環状ポリアリーレンスルフィドは、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環状ポリアリーレンスルフィドの混合物のいずれでも良いが、異なる繰り返し数を有する環状ポリアリーレンスルフィドの混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも溶融解温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環状ポリアリーレンスルフィドの混合物の使用は高重合度体への転化を行う際の温度をより低くできるため好ましい。

0026

(A)環状ポリアリーレンスルフィドの分子量の上限値は、(B)熱可塑性樹脂との相溶性の観点から、重量平均分子量で5,000以下であり、3,000以下が好ましく、2,000以下が更に好ましい。一方、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性の観点から、下限値は重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上が更に好ましい。ここで、環状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて求めることができる。

0027

重量平均分子量で5,000以下の(A)環状ポリアリーレンスルフィド樹脂は、下記する工程1〜3により得ることができる。

0028

<(A)環状ポリアリーレンスルフィドに含まれるその他の成分>
本発明の(A)環状ポリアリーレンスルフィドに含まれるその他の成分としては、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。後述する工程1〜3により(A)環状ポリアリーレンスルフィドを得る場合は、工程3により回収される環状ポリアリーレンスルフィドの中には、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーが含まれる場合がある。ここで線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーとは、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては上記した式(2)〜式(12)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(2)が特に好ましい。線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、上記した式(13)〜式(15)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。

0029

これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有する線状のポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。

0030

(A)環状ポリアリーレンスルフィドに含まれるその他の成分の含有量は、(A)環状ポリアリーレンスルフィド100重量%に対して、50重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましく、更に好ましくは20重量%以下である。通常、(A)環状ポリアリーレンスルフィドの純度が高いほど、加熱後に得られる(A)環状ポリアリーレンスルフィドの重合度が高くなる傾向にあるため、機械特性向上の観点から好ましい。

0031

(A)環状ポリアリーレンスルフィドに含まれる線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量平均分子量は300以上5000以下が好ましく、300以上3000以下がより好ましく、300以上2000以下が更に好ましい。本発明の(A)環状ポリアリーレンスルフィドに含まれる線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは後述の工程2を経て得られるため、通常300以上5000以下の重量平均分子量を有する。

0032

<(A)環状ポリアリーレンスルフィドの製造方法>
本発明の(A)環状ポリアリーレンスルフィドは、後述の工程1、工程2および工程3を経て製造することができる。

0033

<工程1:(A)環状ポリアリーレンスルフィドと、線状ポリアリーレンスルフィドとを含む反応混合物の製造>
本発明では、少なくともスルフィド化剤ジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて、少なくとも(A)環状ポリアリーレンスルフィドと重量平均分子量が5000を超える線状ポリアリーレンスルフィド(以下線状ポリアリーレンスルフィドと略す)とを含む反応混合物を得る。工程1の方法としては上記必須成分を原料として用いれば良いが、好ましい方法として、特開2009−30012号公報や特開2009−227952号公報に開示された公知の方法が挙げられる。これら公知の方法では効率良く環状ポリアリーレンスルフィドを得るため、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させて反応混合物を製造する方法であって、スルフィド化剤のイオウ原子1モルに対して有機極性溶媒を1.25リットル上用いて、上記原料を常圧における還流温度を越えて加熱することが特徴である。

0034

また、より好ましくは、国際公開2013/061561号に開示されている方法により、反応混合物を得ることもできる。該方法では、イオウ成分モルあたりアリーレン単位が0.80モル以上1.04モルである原料を加熱して、上記原料中の上記スルフィド化剤の50%以上を反応消費させる前段工程と、その前段工程に次いで、上記原料中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位が1.05モル以上1.50モル以下となるように上記ジハロゲン化芳香族化合物を追加した後にさらに加熱して反応させる後段工程を行い、反応混合物を得る。該方法では、後述する工程3の回収操作を付加的に行うことでより純度の高い(A)環状ポリアリーレンスルフィドを得ることができるため好ましい。

0035

また、上記の国際公開2013/061561号に開示されている方法で反応混合物を得るに際しては、上述の前段工程後にジハロゲン化芳香族化合物を追加して行う後段工程において、反応を完結に近づけることがさらに好ましい。ここで、反応の完結とは、後段工程において仕込んだスルフィド化剤の大部分、すなわち、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が消費された後、さらに反応を行って99%以上の原料のスルフィド化剤およびジハロゲン芳香族加工物を消費することをいう。反応の完結に要する時間は、原料の種類あるいは反応温度に依存するので一概に規定できないが、好ましい反応時間の下限としては0.1時間以上が例示でき、0.25時間以上がより好ましい。一方、好ましい反応時間の上限としては、20時間以下が例示でき、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下も採用できる。反応を完結に近づけることによって、環状ポリアリーレンスルフィドが収率よく得られ、後述する工程3の回収操作を付加的に行うことで純度の高い(A)環状ポリアリーレンスルフィドを得ることができる。

0036

<工程2:(A)環状ポリアリーレンスルフィドを濾液成分として回収>
本発明の実施形態では、上記工程1に次いで工程2として、工程1で得られた反応生成物固液分離することで、主として線状ポリアリーレンスルフィドを含む固形分と、主として(A)環状ポリアリーレンスルフィドと有機極性溶媒を含む濾液を得る工程を実施する。

0037

工程2の方法としては工程1で得られた反応生成物を固液分離することができれば良いが、好ましい方法として、特開2009−149863号公報に開示された公知の方法が挙げられる。これら公知の方法では、(A)環状ポリアリーレンスルフィドを得るため、スルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物とを有機極性溶媒中で接触させた反応混合物を固液分離する方法であって、有機極性溶媒の沸点以下の温度で固液分離することが特徴である。該方法では、分離操作を行う条件下において、線状ポリアリーレンスルフィドが有機極性溶媒中で固形分として存在し易くなるため、(A)環状ポリアリーレンスルフィドとの分離性が著しく向上する傾向にあり、好ましい。

0038

また、反応生成物を固液分離操作に処するに先立って、反応混合物に含まれる有機極性溶媒の一部を留去して反応混合物中の有機極性溶媒の量を減じる操作を付加的に行うことも可能である。これにより固液分離操作に供する反応混合物が減少するため固液分離操作に要する時間が短縮できる傾向にある。

0039

有機極性溶媒を留去する方法としては、反応混合物から有機極性溶媒を分離し反応混合物に含有される有機極性溶媒の量を低減できれば、いずれの方法でも特に問題はなく、好ましい方法としては、減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する方法、フラッシュ移送により溶媒を除去する方法などが例示でき、なかでも減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する方法が好ましい。また減圧下あるいは加圧下に有機極性溶媒を蒸留する際、窒素ヘリウムアルゴンなどの不活性ガスキャリアーガスとして用いても良い。

0040

有機極性溶媒の留去を行う温度については、有機極性溶媒の種類や、反応生成物の組成によって多様化するため、一意的には決めることはできないが、180〜300℃が好ましく、200〜280℃がより好ましく、200〜250℃の範囲がさらに好ましい範囲として例示できる。

0041

ここでの固液分離によれば、反応混合物に含まれる(A)環状ポリアリーレンスルフィドの大部分を濾液成分として分離可能であり、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上を濾液成分として回収しうる。なお、濾液成分として回収した(A)環状ポリアリーレンスルフィドには、300以上5000以下の重量平均分子量を有する線状ポリアリーレンスルフィドオリゴマーが含まれる場合がある。

0042

また、固液分離によって固形分として分離される線状ポリアリーレンスルフィドに環状ポリアリーレンスルフィドの一部が残留する場合には、固形分に対してフレッシュな有機極性溶媒を用いて洗浄することで、環状ポリアリーレンスルフィドの固形分への残留量を低減することも可能である。ここで用いる溶剤は環状ポリアリーレンスルフィドが溶解しうるものであれば良く、前述した工程1で用いた有機極性溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。

0043

<工程3:(A)環状ポリアリーレンスルフィドを固形分として回収>
回収法においては次に、工程2で得られる反応生成物を固液分離して得られる、少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドを含む有機極性溶媒から固形分として(A)環状ポリアリーレンスルフィドを回収する。

0044

(A)環状ポリアリーレンスルフィドを回収する方法としては、工程2の固液分離で得られた少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドを含む有機極性溶媒から固形分として(A)環状ポリアリーレンスルフィドを回収することができれば良いが、好ましい方法として、特開2012−229320号公報に開示された公知の方法が挙げられる。これら公知の方法では、反応混合物を固液分離して得られる、少なくとも環状ポリアリーレンスルフィドを含む有機極性溶媒に、その有機極性溶媒とは異なる溶液を加え固形分として環状ポリアリーレンスルフィドを回収する。該方法では、純度の高い(A)環状ポリアリーレンスルフィドを簡便な方法で、かつ短時間で回収することができ好ましい。

0045

回収した(A)環状ポリアリーレンスルフィドが液成分(母液)を含む場合には、固形状の(A)環状ポリアリーレンスルフィドを各種溶剤により洗浄することで、母液を低減することも可能である。ここで環状ポリアリーレンスルフィドの洗浄に用いる各種溶剤としては(A)環状ポリアリーレンスルフィドの溶解性が低い溶剤が望ましく、水や、メタノールエタノールプロパノールイソプロパノールブタノールヘキサノールに代表されるアルコール類アセトンに代表されるケトン類酢酸エチル酢酸ブチルなどに代表される酢酸エステル類、およびこれらの溶剤と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が例示でき、液入手性、経済性の観点から水、メタノールおよびアセトン、またこれらの溶剤と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が好ましく、特に水および水と工程1で用いた有機極性溶媒の混合液が好ましい。このような溶剤を用いた洗浄を付加的に行うことで、固形状の(A)環状ポリアリーレンスルフィドが含有する母液量を低減できるのみならず、(A)環状ポリアリーレンスルフィドが含む溶剤に可溶な不純物を低減できるという効果もある。この洗浄方法としては固形分ケークが積層した分離フィルター上に溶剤を加えて固液分離する方法や固形分ケークに溶剤を加えて撹拌することでスラリー化した後に再度固液分離する方法などが例示できる。また、前述の母液を含有、もしくは洗浄操作による溶剤成分を含有する等、液成分を含む湿潤状態の(A)環状ポリアリーレンスルフィドをたとえば一般的な乾燥処理を施すことにより液成分を除去して乾燥状態の(A)環状ポリアリーレンスルフィドを得ることも可能である。

0046

なお(A)環状ポリアリーレンスルフィドの回収操作を行う際の雰囲気非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。これにより(A)環状ポリアリーレンスルフィドを回収する際の(A)環状ポリアリーレンスルフィドの架橋反応分解反応酸化反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できるのみならず、回収操作に用いる有機極性溶媒の酸化劣化等、好ましくない副反応を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とは回収操作に処する各種成分が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。

0047

<(B)ポリアリーレンスルフィド以外の熱可塑性樹脂>
本発明に用いられる(B)熱可塑性樹脂は、(A)環状ポリアリーレンスルフィドとのアロイ化により(A)環状ポリアリーレンスルフィドの特性を大きく損なうものでなければ特に制限はないが、得られる樹脂組成物の力学特性を向上させる観点から電子吸引性基を有する熱可塑性樹脂が好ましい。

0048

電子吸引性基とは、電子吸引性基と隣合う原子電子密度減弱させる置換基のことであり、電子密度が減弱した隣り合う原子に、(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤のアニオンが付加する。

0049

電子吸引性基としては、例えば、アルデヒド基ケトン基イミド基スルホニル基エーテル基、スルフィド基、ニトロ基カルボキシル基シアノ基フェニル基ハロゲン基エステル基ホスホノ基などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
また(A)環状ポリアリーレンスルフィドの耐熱性を向上させる観点から、(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度が(A)環状ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度よりも高いことが好ましい。(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は110℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましい。なお、(A)環状ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度、および(B)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、(A)環状ポリアリーレンスルフィドからなる射出成形品、または(B)熱可塑性樹脂からなる射出成形品を用いて動的粘弾性測定を行い、損失弾性率のピークの温度をそれぞれのガラス転移温度とする。

0050

(A)環状ポリアリーレンスルフィドよりも高いガラス転移温度を有する(B)熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミドポリアリルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレートポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、成形品の耐熱性および機械特性をより向上させる観点から、ポリイミド、ポリアリルエーテルケトン、ポリスルホンが好ましく、これらを2種以上含有してもよい。

0051

ポリイミドは、繰り返し単位にイミド結合を有する重合体である。本発明においては、繰り返し単位にイミド結合の他に、エーテル結合を有するポリエーテルイミドやアミド結合を有するポリアミドイミドもポリイミドに分類する。ポリイミドとしては、特に限定されるものではないが、例えば、SABICイノベーティプラスチックス社製“Ultem”(登録商標)1000、“Ultem”1010、“Ultem”1040、“Ultem”5000、“Ultem”6000、“Ultem”XH6050、“Extem”XHおよび“Extem”UH、三井化学(株)製“オーラム”(登録商標)PD450M、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製“トーロン”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。

0052

ポリアリルエーテルケトンは、ベンゼン環をエーテル結合とケトン結合を介して配した重合体である。具体的にはポリエーテルエーテルケトンポリエーテルケトンケトンやポリエーテルケトンやポリエーテルケトンエーテルケトンケトンなどが挙げられる。ポリアリルエーテルケトンとしては特に限定されるものではないが、例えば、ダイセルエボニック(株)製“ベスタキープ”(登録商標)、ビクトレクス・ジャパン(株)製“VICTREX”(登録商標)、アルケマ(株)製“KEPSTAN”(登録商標)、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製“アバスパイア”(登録商標)や“キースパイア”(登録商標)や“NovaSpire”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。

0053

ポリフェニレンエーテルとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2、6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられる。また、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体などのポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。なかでも、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)および2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。

0054

ポリスルホンは、繰り返し単位にスルホニル基を有する重合体である。本発明においては、繰り返し単位にスルホニル基の他に、エーテル結合を有するポリエーテルスルホンエーテル鎖で結合したフェニル基を有するポリフェニルスルホンもポリスルホンに分類する。ポリスルホンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製“ユーデル”(登録商標)、“ベラデル”(登録商標)、“レーデル”(登録商標)、BASFジャパン(株)製“ウルトラゾーン”(登録商標)S、“ウルトラゾーン”E、“ウルトラゾーン”P、住友化学(株)製“スミエクセル”(登録商標)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。

0055

<(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤>
本発明の(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤(以下、単に「(C)アニオン重合開始剤」と記載する場合がある)としては、下記一般式(16)で表されるイオン性化合物である。

0056

0057

ここでR’は水素原子炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、1級、2級、または3級アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基およびそのエステル、シアノ基、スルホン酸基、またはハロゲン基を表し、Rは有機基を表し、S ̄は硫黄アニオン種を表し、M+は1価の金属イオン、2価のモノハロゲン化イオンを表し、mは0〜15の整数、nは1〜15の整数である。

0058

上記一般式(16)中の有機基としては、アリーレン基、ナフタレン環ピリジン環ピリミジン環イミダゾール環ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環が挙げられ、中でも、高温での耐熱性に優れるフェニレンビフェニレン、ナフタレン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾトリアゾール環フタルイミド環等が好ましく、フェニレン、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環がさらに好ましい。

0059

本発明の(C)アニオン重合開始剤としては、下記に示す化合物のリチウム塩ナトリウム塩またはカリウム塩等のようなアルカリ金属塩が好ましい。化合物として例えば、チオフェノール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、2−チオクレゾール、3−チオクレゾール、4−チオクレゾール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール、2−メトキシベンゼンチオール、3−メトキシベンゼンチオール、4−メトキシベンゼンチオール、4−ニトロチオフェノール、4−tert−ブチルチオフェノール、3−ジメチルアミノチオフェノール、4−ジメチルアミノチオフェノール、2−クロロチオフェノール、3−クロロチオフェノール、4−クロロチオフェノール、2−ブロモチオフェノール、3−ブロモチオフェノール、4−ブロモチオフェノール、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、メルカプトイミダゾールメルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾチアゾールメルカプトピリミジン等のリチウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩等のようなアルカリ金属塩が挙げられる。チオフェノール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトベンゾチアゾールのアルカリ金属塩が特に好ましい。

0060

本発明の製造方法によれば、(A)環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)熱可塑性樹脂を、(C)アニオン重合開始剤存在下にて加熱することにより得られる熱可塑性樹脂組成物は、流動性、耐熱性および機械特性に優れ、さらに溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れる。かかる効果を奏する理由は定かではないが、以下のように推測する。

0061

まず、本発明の(C)アニオン重合開始剤は、(A)環状ポリアリーレンスルフィドの開環重合触媒として作用し、重合速度を速めることができる。それにより二軸押出機等の短時間の加熱時間で(A)環状ポリアリーレンスルフィドを開環重合させ、分子量を高めることができ、機械特性に優れる。

0062

また(C)スルフィド基を有するアニオン重合開始剤のアニオンは、(B)熱可塑性樹脂の電子吸引性基と隣合う原子に付加するため、スルフィド基を有する熱可塑性樹脂が一部生成する。このスルフィド基を有する熱可塑性樹脂は、(A)環状ポリアリーレンスルフィドのスルフィド基とスルフィド交換反応するため、(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂がアニオン重合開始剤を介して反応することとなり、(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂の相溶性を高め、機械特性に優れる。

0063

また、(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂がアニオン重合開始剤を介して反応することで、(A)環状ポリアリーレンスルフィドの開環重合および環拡大反応を適度に制御することができるため、(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂の相溶性低下を抑制し、溶融滞留後も優れた耐熱性、機械特性を維持できる。

0064

<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性、耐熱性、および機械特性の観点から熱可塑性樹脂組成物中の(B)熱可塑性樹脂100質量部に対し、(A)環状ポリアリーレンスルフィドが1質量部以上67質量部以下である。1質量部未満の場合、得られる樹脂組成物の流動性、耐熱性および機械特性のバランスに劣る。また、67質量部を超える場合、得られる樹脂組成物の流動性、耐熱性および機械特性のバランスに劣る。より好ましくは、10質量部以上50質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以上45質量部以下である。

0065

なお、前記した工程1〜3により(A)環状ポリアリーレンスルフィドを得る場合は、線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーも一緒に回収される場合があるため、上記(A)環状ポリアリーレンスルフィドの含有量は、環状ポリアリーレンスルフィド、および線状のポリアリーレンスルフィドオリゴマーの合計量を意味する。また、(B)熱可塑性樹脂として、複数の樹脂を用いる場合は、その合計量を(B)熱可塑性樹脂の量とする。

0066

また溶融滞留後の耐熱性、機械特性の観点から、(B)熱可塑性樹脂100質量部に対して、(C)アニオン重合開始剤は0.01質量部以上10質量部以下である。0.01質量部未満の場合、溶融滞留後の耐熱性、機械特性に劣る。また、10質量部を超える場合は、溶融滞留後の耐熱性、機械特性に劣る。より好ましくは、0.05質量部以上5質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上1質量部以下である。

0067

本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、(B)熱可塑性樹脂と、(A)環状ポリアリーレンスルフィドおよび(C)アニオン重合開始剤をそれぞれドライブレンドし、(B)熱可塑性樹脂と(A)環状ポリアリーレンスルフィドの融点またはガラス転移温度の中で最も高い温度以上に加熱し、原料組成比に変化が生じない条件にて、押出機などの溶融混練機を用いて加熱混練する方法が好ましい。本発明においては、(C)アニオン重合開始剤を介して、(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂とが反応することにより、機械特性に優れるという効果を奏すると推測されることから、(A)環状ポリアリーレンスルフィド、および(B)熱可塑性樹脂を、(C)アニオン重合開始剤存在下にて加熱することが特徴である。バッチ方式連続方式など任意の方法が採用できる。加熱時間は、加熱温度などの条件に応じて適宜選択することができる。(A)環状ポリアリーレンスルフィドの分子量を十分に増加させ機械特性を向上させる観点から、0.01時間以上が好ましく、0.05時間以上がより好ましい。一方、分解反応等の副反応を抑制する観点から、10時間以下が好ましく、3時間以下がより好ましい。加熱装置としては、加熱機構具備した装置であれば特に制限なく用いることができる。なお、融点は、例えば、示差走査熱量計を用いて測定することができる。ガラス転移温度は、例えば、動的粘弾性測定により測定することができる。

0068

本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)環状ポリアリーレンスルフィドおよび(B)熱可塑性樹脂の相溶性に優れるため、熱可塑性樹脂組成物は単一のガラス転移温度を示す。そのため、耐熱性、機械特性が向上した熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。

0069

一般的に、2種類以上の樹脂をブレンドする際は、相溶系と非相溶系に分けられる。相溶系とは、混合する2種類以上の樹脂が分子レベルで完全に混ざり合う系を意味する。この際、分子レベルで混ざり合っている非晶領域は単一の相と見なす事ができ、非晶領域における主鎖のミクロブラウン運動も単一の温度で生じる。従って、相溶系の場合、ガラス転移温度が単一となり、ブレンドするそれぞれの樹脂のガラス転移温度の間の範囲に値を取る。同様に結晶領域でも相溶系は単一相みなすことができ、融点も単一となる。

0070

一方、非相溶系の場合、混合する2種類以上の樹脂が混ざり合っておらず、二相系(あるいはそれ以上)として存在する。従って、ガラス転移温度を示す主分散のピークは、ブレンドするそれぞれの樹脂と同じ位置に2つ以上存在する事になる。同様に結晶領域でも非相溶系は二相系(あるいはそれ以上)としてみなすことができ、融点はブレンドするそれぞれの樹脂と同じ位置に2つ以上存在する事になる。

0071

非相溶系の場合、樹脂組成物の耐熱性は、ブレンドする樹脂の中で最もガラス転移温度の低い樹脂の耐熱性となるため、耐熱性に劣る。また非相溶系の場合、樹脂組成物の機械特性は、粗大な海島構造を形成するため、ブレンドする各樹脂の海相島相の界面で剥離が生じ、機械特性が劣る。

0072

ガラス転移温度が単一か否かを判断するには動的粘弾性測定を用いる。動的粘弾性測定におけるガラス転移温度は、損失弾性率のピークの温度である。動的粘弾測定のチャートは、図1〜3に示すように、縦軸貯蔵弾性率または、損失弾性率の対数で、横軸は温度の実数で測定する。つまり、単一のガラス転移温度を有するとは、動的粘弾性測定を行った際、本樹脂組成物は損失弾性率のピークが1つだけ存在することを意味する。なお、損失弾性率にて極大点を示すものをピークと判断する。前記ピークとは別にショルダーピークを示す場合がある。ショルダーピークとは、極大点は示さずにベースラインから外れるものをいう。具体的には、23℃における損失弾性率と、ブレンドする樹脂の中で最もガラス転移温度が低い樹脂のガラス転移温度より20℃低い温度における損失弾性率とを結んだベースラインから外れた損失弾性率の肩状ピーク(損失弾性率にて極大点を示さないピーク)を示す。このショルダーピークがあれば、その温度域にて貯蔵弾性率が低下するため、損失弾性率にて極大点を示すピークを有する場合であっても、ショルダーピークも有する場合は、耐熱性に劣る。

0073

単一のガラス転移温度を示す一例として、後述する実施例2の組成物の動的粘弾性チャートを図1に示す。図1から140℃付近に単一のガラス転移温度を示すことが分かる。この場合、130℃付近まで貯蔵弾性率は低下せず耐熱性に優れる。二つ以上のガラス転移温度を示す一例として、後述する比較例3の組成物の動的粘弾性チャートを図2に示す。図2からポリエーテルエーテルケトンに由来するガラス転移温度153℃とポリフェニレンスルフィドに由来するガラス転移温度108℃の明確な二つのピークを示すことが分かる。この場合、100℃を超えると貯蔵弾性率が低下し耐熱性に劣る。

0074

明確なピークも示すが、ショルダーピークも示す一例として、後述する比較例6の組成物を、融点+40℃で1時間加熱した際の動的粘弾性チャートを図3に示す。図3からポリエーテルエーテルケトンに由来するガラス転移温度(153℃)よりも少し低温側に明確なピークを示し、またポリフェニレンスルフィドに由来するガラス転移温度付近にショルダーピークを有する。そのため、比較例6に記載の組成物は、明確なピークを示すが、ショルダーピークも示すため、100℃を超えると貯蔵弾性率が低下し耐熱性に劣る。

0075

耐熱性を示す指標として、本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる原料の樹脂の中で、ガラス転移温度が最も低い樹脂のガラス転移温度Tにおける樹脂組成物の貯蔵弾性率をE’(T)とし、そのガラス転移温度よりも20℃低い温度(T−20)における樹脂組成物の貯蔵弾性率をE’(T−20)とし、その比E’(T)/E’(T−20)は0.95以上1.05以下が好ましい。よりこのましくは0.97以上1.00以下、さらに好ましくは0.98以上1.00以下である。貯蔵弾性率の比が0.95以上1.05以下の場合、ガラス転移温度Tにおいて貯蔵弾性率の変化が少ないことを意味する。相溶性に優れる場合、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度は、原料の樹脂の中で最も高いガラス転移温度と最も低いガラス転移温度Tの間に現れるため、温度Tにおいて貯蔵弾性率の低下が少ないということは、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度は温度Tよりも高温にシフトしていることを表す。ガラス転移温度がより高温にシフトすることにより、貯蔵弾性率低下開始温度がより高温にシフトするため、耐熱性に優れる。

0076

本発明の熱可塑性樹脂組成物が示す単一のガラス転移温度は、(A)環状ポリアリーレンスルフィドのガラス転移温度よりも10℃以上高いことが好ましい。10℃以上高いと耐熱性の向上効果が大きく、20℃以上がより好ましい。樹脂組成物のガラス転移温度は、どのようなガラス転移温度を有する(B)熱可塑性樹脂を選択するか、およびその配合量により適宜調整することができる。

0077

本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃における、1時間滞留後も単一のガラス転移温度を示すことが好ましい。これは加熱後も相溶性に優れることを意味し、加熱しても微細な構造を維持し滞留安定性に優れ、耐熱性、機械特性に優れる成形品が得られることを表す。

0078

本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所望に応じて、ガラス繊維炭素繊維酸化チタン炭酸カルシウムなどの無機充填剤酸化防止剤熱安定剤紫外線吸収剤着色剤などを添加することもできる。

0079

本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、コネクターコイルセンサーLEDランプソケット抵抗器リレーケース小型スイッチコイルボビンコンデンサーバリコンケース光ピックアップ発振子、各種端子板、変成器プラグプリント基板チューナースピーカーマイクロフォンヘッドフォン小型モーター磁気ヘッドベースパワーモジュール半導体液晶FDキャリッジ、FDDシャーシモーターブラッシュホルダーパラボラアンテナコンピューター関連部品等に代表される電子部品用途発電機、電動機、変圧器変流器電圧調整器整流器インバーター継電器電力接点開閉器遮断機ナイフスイッチ、他極ロッド電気部品キャビネットなどの電気機器部品用途、VTR部品テレビ部品、アイロンヘアードライヤー炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品オーディオレーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスク、DVD等の音声映像機器部品、照明部品冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品用途、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具モーター部品ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品用途、顕微鏡双眼鏡カメラ時計等に代表される光学機器精密機械関連部品用途、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース排気ガスバルブ等の各種バルブ燃料関係・排気系・吸気系各種パイプエアーインテークノズルスノーケルインテークマニホールド燃料ポンプエンジン冷却水ジョイントキャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー排気ガスセンサー冷却水センサー、油温センサーブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサークランクシャフトポジションセンサーエアーフローメーターブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラータービンベインワイパーモーター関係部品デュトリビューター、スタータースイッチスターターリレートランスミッションワイヤーハーネスウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板ステップモーターローターランプソケットランプリフレクターランプハウジングブレーキピストンソレノイドボビンエンジンオイルフィルター、点火装置ケース等の自動車・車両関連部品用途、各種航空・宇宙用途等々に適用できる。

0080

以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。各実施例、比較例において用いた(B)熱可塑性樹脂、(C)アニオン重合開始剤、および(D)添加剤を以下に示す。
<B−1>ポリエーテルエーテルケトン(Victrex社製“Victrex”(登録商標)90G、後述する動的粘弾性測定により測定したガラス転移温度:153℃、後述する融点の測定方法により測定した融点:346℃)
<B−2>ポリエーテルケトンケトン(アルケマ社製“KEPSTAN”(登録商標)6003、後述する動的粘弾性測定により測定したガラス転移温度:160℃、後述する融点の測定方法により測定した融点:305℃)
<B−3>ポリエーテルイミド(SABICイノベーティブプラスチックス社製“Ultem”(登録商標)1010、後述する動的粘弾性測定により測定したガラス転移温度:215℃)
<B−4>ポリエーテルスルホン(住友化学社製“スミカエクセル”(登録商標)3600G、後述する動的粘弾性測定により測定したガラス転移温度:225℃。
<C−1>2−メルカプトベンゾイミダゾールのナトリウム塩(東京化成工業製)
<C−2>チオフェノールのナトリウム塩(シグマアルドリッチ製
<D−1>炭酸カリウム(東京化成工業製)

0081

<重量平均分子量>
(A)環状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学SSC−7110
カラム名:センシュー科学 ShodexUT806M×2
溶離液1−クロロナフタレン
検出器示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。

0082

<融点>
本発明の実施例および比較例で得たペレット約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツルメンツロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件で融点を測定した。380℃まで昇温して3分保持溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、30℃で3分保持した後、20℃/分の昇温速度で380℃まで昇温した際に観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。なお、ピークが二つ以上出現する場合は、それぞれのピーク温度を表1,2に記載した。本発明の実施例および比較例に用いた原料の樹脂についても、上記同様、融点を測定した。

0083

溶融粘度
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物を、160℃真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。溶融粘度の測定装置として、キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフC型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃、せん断速度9728sec−1の条件で溶融粘度を測定した。なお、示差走査熱量計での測定条件は、「融点」測定時の測定条件と同一である。ただし、熱可塑性樹脂組成物を完全に溶融させるため、5分間滞留させた後に測定を行った。この溶融粘度の値が小さいほど、高い流動性を有することを示す。

0084

<動的粘弾性測定>
本発明の実施例および比較例で得た樹脂組成物のペレットを射出成形機(住友重機社製SE75DUZ−C250)を用い、シリンダー温度370℃、金型温度150℃とする条件にて、射出速度:40mm/秒、冷却時間:25秒の成形条件で厚さ1mm、幅8mm×長さ40mmの成形品を射出成形し、測定用サンプルとして用いた。動的粘弾性測定条件を以下に示す。本発明の実施例および比較例に用いた原料の樹脂についても、上記同様、動的粘弾性測定を実施した。
装置:セイコーインスツルメンツ製DMS6100
測定温度域:30℃〜250℃
昇温速度:2℃/分
周波数:1Hz(正弦波モード
振幅:10μm
最小張力圧縮力:200mN
張力/圧縮力ゲイン:1.5
力振幅初期値:2000mN

0085

また樹脂組成物のペレット品攪拌機を具備したオートクレーブで窒素雰囲気下、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃において1時間溶融混練して得たペレットについても上記同様に射出成形を行い、動的粘弾性測定を行った。損失弾性率のピークの温度をガラス転移温度とした。なお、示差走査熱量計での測定条件は、「融点」測定時の測定条件と同一である。損失弾性率にて極大点を示すものをピークと判断し、極大点は示さずベースラインから外れるものをショルダーピークと判断した。ベースラインとは、23℃における損失弾性率と、ブレンドする樹脂の中で最もガラス転移温度が低い樹脂のガラス転移温度Tより20℃低い温度における損失弾性率とを結んだラインをいい、そのベースラインから外れた損失弾性率の肩状ピーク(極大点を示さないピーク)をショルダーピークとした。

0086

また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる原料の樹脂の中で、ガラス転移温度が最も低い樹脂のガラス転移温度Tにおける樹脂組成物の貯蔵弾性率をE’(T)とし、そのガラス転移温度よりも20℃低い温度(T−20)における樹脂組成物の貯蔵弾性率をE‘(T−20)とし、その比E’(T)/E’(T−20)を求めた。示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃において1時間溶融混練して得たペレットについても上記同様に、E’(T)/E’(T−20)を求めた。

0087

シャルピー衝撃試験
本発明の実施例および比較例で得た樹脂組成物のペレットを射出成形機(住友重機社製SE75DUZ−C250)を用い、シリンダー温度370℃、金型温度150℃とする条件にて、射出速度:40mm/秒、冷却時間:25秒の成形条件で厚さ4mmのダンベルを射出成形した。得られたダンベル5個について、ISO179に準拠した方法で所定形状に切削を行い、23℃においてノッチなしシャルピー衝撃強度を測定し、その数平均値を算出した。

0088

また樹脂組成物のペレット品を攪拌機を具備したオートクレーブで窒素雰囲気下、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃において1時間溶融混練して得たペレットについても上記同様に射出成形を行い、衝撃強度を測定した。

0089

<引張破断伸度
本発明の実施例および比較例で得た樹脂組成物のペレットを射出成形機(住友重機社製SE75DUZ−C250)を用い、シリンダー温度370℃、金型温度150℃とする条件にて、射出速度:40mm/秒、冷却時間:25秒の成形条件で厚さ4mmのダンベルを射出成形した。得られたダンベル3個について、ISO527−1,2に準拠し、23℃において引張破断伸度を測定し、その数平均値を算出した。

0090

また樹脂組成物のペレット品を攪拌機を具備したオートクレーブで窒素雰囲気下、熱可塑性樹脂組成物を示差走査熱量計で測定した際に最も高温側に出てくるピークの温度+40℃において1時間溶融混練して得たペレットについても上記同様に射出成形を行い、引張破断伸度を測定した。

0091

[参考例1:(A)環状ポリアリーレンスルフィドの製造]
<工程1:(A)環状ポリアリーレンスルフィドと、重量平均分子量が5000を超える線状ポリアリーレンスルフィドとを含む反応混合物の製造>
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブにスルフィド化剤として48重量%の水硫化ナトリウム水溶液28.1g(水硫化ナトリウムとして0.241モル)、48重量%の水酸化ナトリウム水溶液21.1g(水酸化ナトリウムとして0.253モル)、ジハロゲン化芳香族化合物としてp−ジクロロベンゼン(p−DCB)35.4g(0.241モル)、及び有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)600g(6.05モル)を仕込むことで反応原料を調製した。原料に含まれる水分量は25.6g(1.42モル)であり、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(スルフィド化剤として仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の溶媒量は約2.43Lであった。また、反応混合物中のイオウ成分1モル当たり(仕込んだ水硫化ナトリウムに含まれるイオウ原子1モル当たり)の、アリーレン単位(仕込んだp−DCBに相当)の量は1.00モルであった。

0092

オートクレーブ内を窒素ガス置換後に密封し、400rpmで撹拌しながら約1時間かけて室温から200℃まで昇温した。次いで200℃から250℃まで約0.5時間かけて昇温した。この段階の反応器内の圧力はゲージ圧で1.05MPaであった。その後250℃で2時間保持することで反応混合物を加熱し反応させた。

0093

高圧バルブを介してオートクレーブ上部に設置した100mL容の小型タンクにp−DCBのNMP溶液(p−DCB3.54gをNMP10gに溶解)を仕込んだ。小型タンク内を約1.5MPaに加圧後タンク下部のバルブを開き、p−DCBのNMP溶液をオートクレーブ内に仕込んだ。小型タンクの壁面をNMP5gで洗浄後、このNMPもオートクレーブ内に仕込んだ。本操作により、反応混合物中のイオウ成分1モル当たりのアリーレン単位(仕込んだp−DCBの合計量に相当)は1.10モルとなった。この追加の仕込み終了後、250℃にてさらに1時間加熱を継続して反応を進行させた。その後約15分かけて230℃まで冷却した後、オートクレーブ上部に設置した高圧バルブを徐々に開放することで主としてNMPからなる蒸気を排出し、この蒸気成分水冷冷却管にて凝集させることで、約391gの液成分を回収した後に高圧バルブを閉じて密閉した。次いで室温近傍まで急冷して、反応混合物を回収した。

0094

得られた反応混合物の一部を大過剰の水に分散させることで水に不溶な成分を回収し、回収した水に不溶な成分を乾燥させることで固形分を得た。赤外分光分析による構造解析の結果、この固形分はアリーレンスルフィド単位からなる化合物であることが確認できた。

0095

得られた反応混合物および反応後の脱液操作で回収した液成分をガスクロマトグラフィー高速液体クロマトグラフィー及びイオンクロマトグラフィーにより分析した結果、スルフィド化剤として用いた水硫化ナトリウムの反応消費率は97%であった。

0096

<工程2:(A)環状ポリアリーレンスルフィドを濾液成分として回収>
上記固体分離操作により反応混合物を固液分離して、主として線状ポリアリーレンスルフィドを含む固形分と、主として(A)環状ポリアリーレンスルフィドと有機極性溶媒を含む濾液を得た。

0097

<工程3:(A)環状ポリアリーレンスルフィドを固形分として回収>
上記工程2の固液分離操作で得られた濾液100g(環状ポリアリーレンスルフィドの濃度で2wt%)を300mL容フラスコに仕込み、フラスコ内を窒素で置換した。ついで撹拌しながら100℃に加温した後80℃に冷却した。ついで系内温度80℃にて撹拌したまま、ポンプを用いて水33gを約15分かけてゆっくりと滴下した。ここで、水の滴下終了後の濾液混合物におけるNMPと水の重量比率は75:25であった。この濾液への水の添加において、水の滴下に伴い混合物の温度は約75℃まで低下し、また、混合物中に徐々に固形分が生成し、水の滴下が終了した段階では固形分が分散したスラリー状となった。このスラリーを撹拌したまま約1時間かけて約30℃まで冷却し、次いで室温近傍で約30分間撹拌を継続した後、得られたスラリーを目開き10〜16μmのガラスフィルター吸引濾過した。得られた固形分(母液を含む)を約500gの水に分散させ80℃で15分撹拌した後、前述同様にガラスフィルターで吸引濾過する操作を計10回繰り返した。得られた固形分を真空乾燥機70℃で3時間処理して、(A)環状ポリアリーレンスルフィドとしての乾燥固体を得た。

0098

乾燥固体をHPLCで分析した結果、単位数4〜15の環状ポリアリーレンスルフィドが検出された。また、乾燥固体中の環状ポリアリーレンスルフィドの含有率は、98重量%であり、得られた乾燥固体は純度の高い環状ポリアリーレンスルフィドであることがわかった。HPLCの測定条件を以下に示す。またGPC測定の結果、この(a)環状ポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は1000であった。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。

0099

[参考例2:(A’−1)ポリアリーレンスルフィドの製造]
参考例1で得た(A)環状ポリアリーレンスルフィドを攪拌機付5リットルオートクレーブに仕込み、窒素で置換した後、真空ポンプにて約2kPaに系内を減圧しながら約1時間かけて340℃まで昇温した。この間、内温が約250℃になるまでは10rpmで攪拌し、250℃以上では50rpmで攪拌を行った。340℃到達後、減圧しながら340℃で60分間攪拌を継続した。その後、オートクレーブ上部から窒素を導入することで反応器内部を加圧し、内容物を吐出口よりガット状に取り出し、ガットペレタイズしてペレットを得た。この生成物は赤外分光分析による吸収スペクトルよりポリフェニレンスルフィド構造を有することがわかった。また、1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。GPC測定の結果、得られたポリフェニレンスルフィド樹脂の重量平均分子量は61000であることがわかった。

0100

[参考例3:(A’−2)ポリアリーレンスルフィドの製造]
参考例1で得た(A)環状ポリアリーレンスルフィド500g、<C−1>2−メルカプトベンゾイミダゾールのナトリウム塩8.7gを攪拌機付5リットルオートクレーブに仕込み、窒素で置換した後、真空ポンプにて約2kPaに系内を減圧しながら約1時間かけて340℃まで昇温した。この間、内温が約250℃になるまでは10rpmで攪拌し、250℃以上では50rpmで攪拌を行った。340℃到達後、減圧しながら340℃で60分間攪拌を継続した。その後、オートクレーブ上部から窒素を導入することで反応器内部を加圧し、内容物を吐出口よりガット状に取り出し、ガットをペレタイズしてペレットを得た。この生成物は赤外分光分析による吸収スペクトルよりポリフェニレンスルフィド構造を有することがわかった。また、1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。GPC測定の結果、得られたポリフェニレンスルフィド樹脂の重量平均分子量は53000であることがわかった。

0101

(実施例1〜9、比較例1〜7)
(A)環状ポリアリーレンスルフィド、(B)熱可塑性樹脂、(C)アニオン重合開始剤、(D)添加剤、(A’)ポリアリーレンスルフィドを表に示す組成となるように配合し、東洋精機製バッチ式二軸混練機ラボプラストミル)を用いて、設定温度380℃、スクリュー回転数150rpmにて7分間、組成比に変化が生じない条件にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。

0102

各実施例および比較例の評価結果をまとめて表1、2に示す。

0103

0104

0105

実施例1〜9と比較例1〜7の比較により、特定分子量の(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂、(C)アニオン重合開始剤を配合して得られる熱可塑性樹脂組成物は、流動性、耐熱性、機械的特性に優れ、溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れることがわかる。

0106

実施例2と比較例2の比較により、スルフィド基を有する(C)アニオン重合開始剤を配合することで、得られる熱可塑性樹脂組成物は耐熱性、機械特性に優れ、溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れることがわかる。

0107

実施例1〜3と比較例6の比較により、特定量の(A)環状ポリアリーレンスルフィドを配合することで、耐熱性、機械特性に優れ、溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れることがわかる。

実施例

0108

実施例2と比較例5の比較により、(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(C)アニオン重合開始剤を溶融加熱した後に(B)熱可塑性樹脂と溶融混練を行うよりも、(A)環状ポリアリーレンスルフィドと(B)熱可塑性樹脂を、(C)アニオン重合開始剤存在下にて溶融加熱するほうが、相溶性が向上するため、流動性、耐熱性、機械特性に優れ、溶融滞留後の耐熱性、機械特性にも優れることがわかる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ