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技術 平版印刷用湿し水組成物、及び印刷物の製造方法

出願人 東洋インキSCホールディングス株式会社東洋インキ株式会社
発明者 中村功米村俊佑池田邦央
出願日 2018年12月27日 (2年10ヶ月経過) 出願番号 2018-244761
公開日 2020年7月9日 (1年4ヶ月経過) 公開番号 2020-104378
状態 特許登録済
技術分野 印刷版及びその材料
主要キーワード pHメータ ウルトラリン酸塩 棒ローラ 間欠給水 紙面汚れ 乳化現象 硝酸ベリリウム 軽量紙
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重要な関連分野

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課題

本発明の目的は、印刷機及び付属設備金属類に対する腐食が少なく、平版印刷時の印刷諸適性、すなわち、整面性汚れ耐性、及び濃度変動耐性に優れ、さらには長期間保存ないし使用しても腐敗することのない、平版印刷用湿し水組成物を提供することである。

解決手段

硝酸塩類と、防腐剤とを含有する平版印刷用湿し水組成物であって、防腐剤が、含窒素六員環化合物を含み、pHが10〜13である平版印刷用湿し水組成物である。

概要

背景

凹凸のない平面状の印刷版を用い、水と油が反発する性質を利用して油性インキ印刷する平版オフセット印刷方式は、商業、雑誌書籍新聞などの印刷用途で主流となっている。この印刷方式で用いられる、平面状の印刷版は、親油化処理された樹脂層からなる画線部と、親水化処理された非画線部とからなり、印刷時に、湿し水組成物または湿し水濃縮組成物エッチ液)と呼ばれる水性成分が印刷版面に供給され、前記非画線部が均一な薄い水膜で保護される。その後、親油性である油性インキを供給すると、湿し水組成物と油性インキの反発が起き、画線部のみにインキを転移させることができる。その結果、平面状の印刷版でありながら、高精細印刷物が得られる。

このときに使用される湿し水組成物は水そのものであってもよいが、その場合、前記湿し水組成物に要求される性能を充分に満たすことは難しい。よって一般的には、湿し水組成物として、酸及びその塩類塩基及びその塩類、界面活性剤湿潤性水溶性樹脂といった各種添加剤を水に配合し、粘度、表面張力、及びpHを調整して使用される。また湿し水濃縮組成物を製造した場合は、その濃度に応じて水で希釈して使用される。

一方で、実印刷時の印刷版面上では、湿し水組成物と油性インキとが接触する箇所において、両者の乳化現象の発生は避けられない。長時間、印刷諸適性に優れた、トラブルレスな印刷を実現するためには、湿し水組成物の観点からも、平版インキ組成物に対して適切な乳化特性を付与する必要があり、広い水幅で好適な乳化状態を維持できることが好ましい。

また一般に新聞輪転機等では、印刷機上の湿し水装置からスプレー噴射等により、湿し水組成物を細かい霧状にしてノズルより吹きかけ、水棒ローラーへと供給する。このようなスプレー方式では、ローラー、ノズル、ベアリング配管、版、電磁弁などの印刷機あるいは付属金属部品が、長時間、湿し水組成物と接触することになる。その結果、ニッケルメッキ鋼、クロムメッキ鋼、銅、アルミニウムステンレスなどからなる前記金属部品は、湿し水組成物により腐食され易い。湿し水組成物による腐食により損傷した部品は、定期的に交換しなければならない。

このような背景のもと、一般的に使用される湿し水組成物はpH5.0前後と酸性のものである(特許文献1参照)。また酸性の湿し水組成物には、整面作用が高いという特徴がある。水溶性高分子であるアラビアゴム、及び、リン酸及びその塩類などが配合されており、前記アラビアゴムに含まれるアラビノースが、リン酸の作用でアラビン酸となり、非画線部に強固な親水化層を形成することで、整面作用が高まるためである。しかしながらアラビアゴムは腐敗しやすく、スプレー方式の給水機構ではノズル詰まりなどが発生しやすい。また酸性の湿し水組成物は、金属酸化・腐食による錆が発生しやすいといった問題点もある。

一方、アルカリ性の湿し水組成物は、酸性の湿し水組成物と比べて、腐敗しにくく、金属の防錆性にも優れる傾向がある。しかしながら、アラビン酸の形態をとれないことから、整面効果の高いアラビアゴムが使用できない。そこで一般には、アラビアゴムの代わりに、リン酸塩ケイ酸塩炭酸塩などを主成分として、さらに界面活性剤、グリコール水溶性高分子化合物が配合されるものの、整面効果は十分なものとはいえない。整面効果を高めるために、前記成分の種類や量を調整すると、今度は防錆性が悪化する、という問題が生じてしまう。

過去にもアルカリ性の湿し水組成物に関しては検討が行われており、例えば特許文献2には、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを含有する、pH10〜13.5の印刷用湿し水濃縮液が記載されている。しかしながら評価結果は後述するが、本発明者が評価したところ、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを含むだけでは、湿し水組成物の防腐性が十分なものとはならないことが判明した。

また特許文献3には、リンゴ酸金属塩を含有し、かつ、アンモニアアンモニウム化合物亜硝酸化合物硝酸化合物を含有しない平版印刷用湿し水組成物が開示されている。しかしながらそれらの湿し水組成物は、整面性汚れ耐性濃度変動耐性などの印刷諸適性が十分なものとはいえなかった。またそもそも特許文献3には、湿し水組成物のpHが9以上であると、印刷版の画線が溶解してしまう可能性があるとの記載もある。

概要

本発明の目的は、印刷機及び付属設備金属類に対する腐食が少なく、平版印刷時の印刷諸適性、すなわち、整面性、汚れ耐性、及び濃度変動耐性に優れ、さらには長期間保存ないし使用しても腐敗することのない、平版印刷用の湿し水組成物を提供することである。硝酸塩類と、防腐剤とを含有する平版印刷用湿し水組成物であって、防腐剤が、含窒素六員環化合物を含み、pHが10〜13である平版印刷用湿し水組成物である。なし

目的

本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、印刷機及び付属設備の金属類に対する腐食が少なく(防錆性に優れる)、平版印刷時の印刷諸適性、すなわち、整面性、汚れ耐性、及び濃度変動耐性に優れ、さらには長期間保存ないし使用しても腐敗することのない(防腐性に優れる)、平版印刷用の湿し水組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

硝酸塩類と、防腐剤とを含有する平版印刷用湿し水組成物であって、防腐剤が、含窒素六員環化合物を含み、pHが10〜13である平版印刷用湿し水組成物。

請求項2

さらに、リン酸塩を含有する、請求項1記載の平版印刷用湿し水組成物。

請求項3

前記含窒素六員環化合物が、トリアジン系化合物、及び/または、ピリチオン系化合物である、請求項1または2に記載の平版印刷用湿し水組成物。

請求項4

さらに、有機酸アミン塩、及び/または、アルカノールアミンを含む、請求項1〜3いずれかに記載の平版印刷用湿し水組成物。

請求項5

新聞印刷に用いられる、請求項1〜4いずれかに記載の平版印刷用湿し水組成物。

請求項6

平版印刷による印刷物の製造方法であって、湿し水として請求項1〜5いずれかに記載の平版印刷用湿し水組成物を用いる、印刷物の製造方法。

技術分野

0001

本発明は平版印刷に用いられる湿し水組成物、及びそれを用いた印刷物の製造方法に関する。

背景技術

0002

凹凸のない平面状の印刷版を用い、水と油が反発する性質を利用して油性インキ印刷する平版オフセット印刷方式は、商業、雑誌書籍新聞などの印刷用途で主流となっている。この印刷方式で用いられる、平面状の印刷版は、親油化処理された樹脂層からなる画線部と、親水化処理された非画線部とからなり、印刷時に、湿し水組成物または湿し水濃縮組成物エッチ液)と呼ばれる水性成分が印刷版面に供給され、前記非画線部が均一な薄い水膜で保護される。その後、親油性である油性インキを供給すると、湿し水組成物と油性インキの反発が起き、画線部のみにインキを転移させることができる。その結果、平面状の印刷版でありながら、高精細な印刷物が得られる。

0003

このときに使用される湿し水組成物は水そのものであってもよいが、その場合、前記湿し水組成物に要求される性能を充分に満たすことは難しい。よって一般的には、湿し水組成物として、酸及びその塩類塩基及びその塩類、界面活性剤湿潤性水溶性樹脂といった各種添加剤を水に配合し、粘度、表面張力、及びpHを調整して使用される。また湿し水濃縮組成物を製造した場合は、その濃度に応じて水で希釈して使用される。

0004

一方で、実印刷時の印刷版面上では、湿し水組成物と油性インキとが接触する箇所において、両者の乳化現象の発生は避けられない。長時間、印刷諸適性に優れた、トラブルレスな印刷を実現するためには、湿し水組成物の観点からも、平版インキ組成物に対して適切な乳化特性を付与する必要があり、広い水幅で好適な乳化状態を維持できることが好ましい。

0005

また一般に新聞輪転機等では、印刷機上の湿し水装置からスプレー噴射等により、湿し水組成物を細かい霧状にしてノズルより吹きかけ、水棒ローラーへと供給する。このようなスプレー方式では、ローラー、ノズル、ベアリング配管、版、電磁弁などの印刷機あるいは付属金属部品が、長時間、湿し水組成物と接触することになる。その結果、ニッケルメッキ鋼、クロムメッキ鋼、銅、アルミニウムステンレスなどからなる前記金属部品は、湿し水組成物により腐食され易い。湿し水組成物による腐食により損傷した部品は、定期的に交換しなければならない。

0006

このような背景のもと、一般的に使用される湿し水組成物はpH5.0前後と酸性のものである(特許文献1参照)。また酸性の湿し水組成物には、整面作用が高いという特徴がある。水溶性高分子であるアラビアゴム、及び、リン酸及びその塩類などが配合されており、前記アラビアゴムに含まれるアラビノースが、リン酸の作用でアラビン酸となり、非画線部に強固な親水化層を形成することで、整面作用が高まるためである。しかしながらアラビアゴムは腐敗しやすく、スプレー方式の給水機構ではノズル詰まりなどが発生しやすい。また酸性の湿し水組成物は、金属酸化・腐食による錆が発生しやすいといった問題点もある。

0007

一方、アルカリ性の湿し水組成物は、酸性の湿し水組成物と比べて、腐敗しにくく、金属の防錆性にも優れる傾向がある。しかしながら、アラビン酸の形態をとれないことから、整面効果の高いアラビアゴムが使用できない。そこで一般には、アラビアゴムの代わりに、リン酸塩ケイ酸塩炭酸塩などを主成分として、さらに界面活性剤、グリコール水溶性高分子化合物が配合されるものの、整面効果は十分なものとはいえない。整面効果を高めるために、前記成分の種類や量を調整すると、今度は防錆性が悪化する、という問題が生じてしまう。

0008

過去にもアルカリ性の湿し水組成物に関しては検討が行われており、例えば特許文献2には、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを含有する、pH10〜13.5の印刷用湿し水濃縮液が記載されている。しかしながら評価結果は後述するが、本発明者が評価したところ、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを含むだけでは、湿し水組成物の防腐性が十分なものとはならないことが判明した。

0009

また特許文献3には、リンゴ酸金属塩を含有し、かつ、アンモニアアンモニウム化合物亜硝酸化合物硝酸化合物を含有しない平版印刷用湿し水組成物が開示されている。しかしながらそれらの湿し水組成物は、整面性汚れ耐性濃度変動耐性などの印刷諸適性が十分なものとはいえなかった。またそもそも特許文献3には、湿し水組成物のpHが9以上であると、印刷版の画線が溶解してしまう可能性があるとの記載もある。

先行技術

0010

特開平5−139068号公報
特開平6−127170号公報
特開2015−174288号公報

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、印刷機及び付属設備金属類に対する腐食が少なく(防錆性に優れる)、平版印刷時の印刷諸適性、すなわち、整面性、汚れ耐性、及び濃度変動耐性に優れ、さらには長期間保存ないし使用しても腐敗することのない(防腐性に優れる)、平版印刷用の湿し水組成物を提供することである。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らが鋭意検討した結果、硝酸塩類と、防腐剤として含窒素六員環化合物を含有する、pH10から13のアルカリ性湿し水組成物とすることで、上記の課題が解決できることを見出した。

0013

即ち、本発明は、硝酸塩類と、防腐剤とを含有する平版印刷用湿し水組成物であって、
防腐剤が、含窒素六員環化合物を含み、
pHが10〜13である平版印刷用湿し水組成物に関する

0014

また、本発明は、さらに、リン酸塩を含有する、上記平版印刷用湿し水組成物に関する。

0015

また、本発明は、上記含窒素六員環化合物がトリアジン系化合物、及び/またはピリチオン系化合物である、上記平版印刷用湿し水組成物に関する。

0016

また、本発明は、さらに、有機酸アミン塩、及び/または、アルカノールアミンを含む、上記平版印刷用湿し水組成物に関する。

0017

また、本発明は、新聞印刷に用いられる、上記平版印刷用湿し水組成物に関する。

0018

また、本発明は、平版印刷による印刷物の製造方法であって、湿し水として上記平版印刷用湿し水組成物を用いる、印刷物の製造方法に関する。

発明の効果

0019

本発明によって、印刷機及び付属設備の金属類に対する腐食が少なく、平版印刷時の印刷諸適性、すなわち、整面性、汚れ耐性、及び濃度変動耐性に優れ、さらには長期間保存ないし使用しても腐敗することのない、前記平版印刷用湿し水組成物が提供できる。

0020

以下、本発明の平版印刷用湿し水組成物について詳細に説明する。

0021

まず、本発明の平版印刷用湿し水組成物を構成する硝酸塩類に関して述べる。
硝酸塩類は、整面剤として機能する上、金属類、特にアルミニウムに対する防錆の観点からも好適に選択されるものである。
本発明では、硝酸塩類として、硝酸塩亜硝酸塩、亜硝酸化合物からなる群より選択される1種以上が使用できる。
硝酸塩の具体例として、硝酸ナトリウム硝酸カリウム硝酸アンモニウム硝酸マグネシウム硝酸カルシウム硝酸ベリリウム硝酸アルミニウム硝酸亜鉛硝酸ジルコニウム硝酸ニッケル硝酸マンガン硝酸クロム等が挙げられる。
また、亜硝酸塩の具体例として、亜硝酸カリウム亜硝酸ナトリウム亜硝酸リチウム亜硝酸バリウム亜硝酸銀等が挙げられ、亜硝酸化合物の具体例として、亜硝酸エステル等が挙げられる。
上記の中でも、印刷版への影響が少なく、整面性等の印刷諸適性に優れた平版印刷用湿し水組成物が得られる点から、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムが好ましい。中でも、硝酸アンモニウムを平版印刷用湿し水組成物に添加すると、印刷停止した後に印刷を再開した際、アルミニウム基板である印刷版の酸化が抑えられ、印刷物に点状の汚れ酸化汚れ)の発生を防止できることから、本発明では特に好ましく選択される。
これらの硝酸塩類は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

0022

次に、本発明の平版印刷用湿し水組成物を構成する防腐剤について説明する。
一般に防腐剤とは、湿し水組成物の保存中ないし使用中に、細菌、カビ及び酵母の発生・増殖を抑え、腐敗及び印刷諸適性の劣化を防止するものである。
本発明では、防腐剤として含窒素六員環化合物を使用する。含窒素六員環化合物は、少量の添加であっても防腐効果が長期に渡って得られる。また含窒素六員環化合物は、銅及び銅合金防錆効果を有する。すなわち、アルミニウム等に対する防錆性を有する硝酸塩類と、銅錆耐性を有する防腐剤である含窒素六員環化合物を併用することで初めて、印刷上のトラブルの元となる様々な種類の錆を抑制することができ、例えば、銅錆によるスプレーノズル詰まりや、印刷版の錆による紙面汚れが防止できる。その結果、整面剤としても機能する硝酸塩類の効果もあって、印刷諸適性に優れ、長期に渡って安定した平版印刷が実現できる湿し水組成物となる。さらに、長期間保存ないし使用しても腐敗することがない平版印刷用湿し水組成物となる。

0023

含窒素六員環化合物としては、トリアジン系化合物、ピリチオン系化合物、ピリジン系化合物(ピリチオン系化合物を除く)、オキサチアジン系化合物などがある。そして、より好ましい態様として、経時安定性の悪化もなく、本発明の湿し水組成物の防腐効果が長期に渡って得られるという点で、トリアジン系化合物及び/またはピリチオン系化合物を使用することが好ましく、トリアジン系化合物を使用することが特に好ましい。
このようなトリアジン系化合物のより具体的な例として、n−カプリノグアナミン、5−エチルヘキシルアミノグアナミン、2,4−ビス(N,N’−ジプロピルアミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、2−クロロ−4−エチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジエチル−6−オクチルアミノ−1,3,5−トリアジン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリエチル−S−トリアジンや、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジンなどのヘキサヒドロ−1,3,5−トリ置換−S−トリアジン化合物が挙げられる。
また、ピリチオン系化合物のより具体的な例として、ピリチオンナトリウムピリチオン亜鉛ピリチオン銅ピリチオンキトサンが挙げられる。
上記防腐剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

0024

上記、含窒素六員環化合物の好適な含有量としては、平版印刷湿し水組成物中に対して、0.005質量%〜0.05質量%である。より好ましくは0.01質量%〜0.03質量%の範囲である。上記範囲内であれば、防腐効果が十分発揮されることから、湿し水装置内の配管内及びフィルターでの湿し水組成物の腐敗を防止できる。また、長期間の湿し水保管が可能となり、細菌やカビの発生による、汚れ耐性及び整面効果の劣化が防止できる点でも好ましい。

0025

本発明の平版印刷用湿し水組成物は、上記の材料に加えて、硝酸塩類以外の無機酸及びその塩を用いることができる。
無機酸としては、リン酸、ピコリン酸ポリリン酸トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸等)、ケイ酸メタケイ酸亜硫酸硫酸炭酸重炭酸などが挙げられる。
また塩としてはリチウム塩ナトリウム塩マグネシウム塩カリウム塩カルシウム塩アンモニウム塩等が挙げられる。
中でも、リチウムナトリウムカリウムなどのアルカリ金属塩や、アンモニウム塩は、マグネシウムカルシウム等の2価の陽イオンに比べて不溶性の塩を形成しにくく、印刷機上のローラーにグレーズ堆積しにくくなるため、ローラーの不感脂化による転移不良やローラー剥げといったトラブルを抑制でき、印刷諸適性に優れた平版印刷用湿し水組成物が得られるため、好ましい。

0026

また、無機酸及びその塩のなかでも、リン酸塩は汚れ防止剤として機能し、硝酸塩と組み合わせて使用することで、整面性に特に優れた湿し水組成物となる。そのため、本発明ではリン酸塩を含むことが好ましい。
本発明で好ましく使用できるリン酸塩の具体例として、オルトリン酸塩ピロリン酸塩、ポリリン酸(トリポリリン酸、テトラリン酸など)塩、メタリン酸塩ウルトラリン酸塩などのリン酸塩が挙げられる。さらに具体的には、第一リン酸〜第三リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩;トリポリリン酸ナトリウムヘキサメタリン酸ナトリウムなどの、ポリリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩;酸性ピロリン酸やメタリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはアンモニウム塩などが挙げられる。上記の中でも、特にヘキサメタリン酸ナトリウムが好ましく使用できる。

0027

リン酸塩を含む、上記の無機酸及びその塩は、単独、もしくは複数配合することが可能である、また、目標のpHとするためには、例えば、上記化合物の種類や配合量を調整することで、容易に操作可能である。好適な含有量としては、平版印刷湿し水組成物中の含窒素六員環化合物に対して、1.0質量倍〜8.0質量倍量である。より好ましくは1.0質量倍量〜4.0質量倍量の範囲である。1.0質量倍量以上であると、整面効果が優れることから印刷時の汚れ耐性が良好であり、一方、8.0質量倍量以下であれば、インキのローラー転移性の劣化が発生しにくくなることから、濃度変動耐性の点において好ましい。

0028

さらに本発明の平版印刷用湿し水組成物は、有機酸のアミン塩、及び/または、アルカノールアミンを含むことが好ましい。これらを本発明の湿し水組成物に添加することで、鉄及び銅に対する錆耐性に優れた湿し水組成物となる。
アルカノールアミンの具体例として、モノエタノールアミンモノイソプロパノールアミン2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールジエタノールアミンジイソプロパノールアミントリエタノールアミントリイソプロパノールアミンモノエタノールジイソプロパノールアミン、シクロヘキシルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、またはN,N−ジエチルエタノールアミンが挙げられる。また有機酸のアミン塩の具体例として、脂肪族カルボン酸アルケニルコハク酸ドデカン二酸等と上記例示したアルカノールアミンとの塩が挙げられる。
これらのアミン塩は単独でもしくは2種以上併用してもよい。

0029

上記、有機酸のアミン塩、及び/または、アルカノールアミンの好適な含有量としては、平版印刷湿し水組成物中に対して、0.001質量%〜0.02質量%である。より好ましくは0.002質量%〜0.015質量%の範囲である。

0030

本発明で使用される水としては、水道水軟水蒸留水イオン交換水RO水などを用いることができる。不溶性の塩を形成しにくいという観点からは、硬度が低い軟水、蒸留水、イオン交換水、RO水が好ましい。

0031

本発明の平版印刷用湿し水組成物には、印刷版に湿し水を供給するローラー上に均一な水膜を形成するため、アニオン型界面活性剤カチオン型界面活性剤、及び非イオン型界面活性剤からなる群から選ばれる一つ以上を添加することができる。

0033

また、カチオン型界面活性剤の具体例としては、アルキルアミン塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。

0035

さらに本発明の湿し水組成物には、印刷機の湿し水循環装置における泡立ちを防止するため、シリコン系消泡剤及び/またはフッ素系消泡剤を添加することができる。また消泡剤として、乳化分散型または可溶化型のいずれも使用できる。

0036

また、本発明の湿し水組成物には、必要に応じて、水溶性高分子を用いることができる。
本発明で使用できる水溶性高分子として、例えば、グアガムタラガムタマリーンシードガムローカストビーンガムサイリウムシードガム、アラビアゴム、カラヤガムキサンタンガムジェランガムカードランセルロースコンドロイチン硫酸ナトリウムヒアルロン酸ナトリウム寒天カラギナンアルギン酸カルボキシメチルセルロースヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルセルロースカチオン化グアガムペクチンカルボキシビニルポリマーポリアクリル酸ポリビニルピロリドンポリビニルアルコールメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
上記の水溶性高分子は保湿湿潤剤として作用するほか、地汚れ防止剤、増粘作用による水上がり性の向上、キレート剤などの効果を有するため、印刷諸適性に優れた湿し水組成物となる。

0037

その他、本発明の平版印刷用湿し水組成物には、上記記載した以外の材料を、本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択・使用することができる。なお本発明の平版印刷用湿し水組成物では、イソプロピルアルコールの含有量を、前記平版印刷用湿し水組成物中5質量%以下とする(0質量%でもよい)ことが好ましく、2質量%以下とする(0質量%でもよい)ことがより好ましい。イソプロピルアルコールの含有量を制限することにより、印刷時の汚れを防止することができる。また消防法上の危険性や、作業者などに対する安全衛生の観点からも好適である。

0038

本発明の平版印刷用湿し水組成物のpHは10〜13である。さらに好ましくはpH10〜12である。pH13以下の領域であれば、印刷版の画線を溶解してしまうことがなくなり、pH10以上であれば、印刷機上及び金属類の腐食を防止でき、また整面性の劣化もなくなるため従来のアルカリ性湿し水組成物と比べて同等以上の耐汚れ性が得られる。

0039

上記のpHに調整するために、上述した無機酸・無機酸塩に加えて、有機酸・有機酸塩が使用できる。なお有機酸として、例えば、コハク酸クエン酸アスコルビン酸酒石酸乳酸グルコン酸ヒドロキシ酢酸シュウ酸マロン酸レブリン酸フイチン酸、有機ホスホン酸等が使用できる。

0040

本発明の平版印刷用湿し水組成物は、平版印刷用湿し水濃縮組成物(エッチ液)の形態でユーザーに提供されてもよい。その場合、使用前に、前記平版印刷用湿し水濃縮組成物を、水により任意の倍率で希釈し、平版印刷用湿し水組成物とする。なお、上記の各構成成分の含有量は、湿し水組成物中、すなわち、実際に印刷時に使用される際の濃度を示しており、その濃縮組成物中の濃度を規定するものではない。

0041

本発明の平版印刷用湿し水組成物と併用できるインキの種類、及び、前記湿し水組成物水の供給方式は特に制限されない。すなわち、本発明の平版印刷用湿し水組成物は、一般的な平版印刷用インキである枚葉インキ、オフ輪インキ新聞インキと併用できる。また、一般的な給水方式である間欠給水式、ブラシ給水方式、スプレー給水方式、連続給水方式と組み合わせての使用が可能である。

0042

次に、実施例に基づいて本発明を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。

0043

(実施例1〜15及び比較例1〜8)
表1に示す各材料をそれぞれディスパー攪拌混合し、実施例1〜15、比較例1〜8の各平版印刷用湿し水濃縮組成物を調製した。また、得られた各湿し水濃縮組成物50部に対して、水道水9,950部を添加して希釈(濃縮組成物を200質量倍に希釈)して湿し水組成物とし、以下の評価に使用した。なお下記で実施した評価結果についても、表1に記載した。

0044

0045

0046

なお、表1中の各原料として、以下のものを用いた。
・シリコン系消泡剤:信越化学工業株式会社製「KF−96」
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル:ライオン株式会社製「レオコールSC−1 20」

0047

(pH評価)
表1に示す実施例1〜15、比較例1〜8の各平版印刷用湿し水組成物のpHを、pHメータD−51(株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、pH領域が10〜13であるか、それ以外の領域であるかを評価した。なお、表1に記載した評価基準は以下の通りである。
「〇」:pHが10.0から13.0の領域である。
「×」:pHが10.0から13.0の領域から外れる。

0048

印刷試験条件)
上記で得られた実施例1〜15、比較例1〜8の各平版印刷用湿し水組成物を使用し、以下の条件の下で印刷を行った。
印刷機:東2N−750型(東浜精機社製)
印刷版:新聞用サーマルネガCTP版「HN−NV」(富士フイルム社製)
湿し水装置:スプレーダンプナー「SD−C」(BALDWIN社製)
平版印刷用インキ:ヴァンテアエコーHAS(東洋インキ社製)
印刷速度:500rpm
温度/湿度:25℃/60%RH
印刷用紙:SL+紙(日本製紙社製超軽量紙連量19kg)
印刷部数:13,000枚(ただし、整面性評価及び汚れ耐性評価では、それぞれ後述する条件で印刷した)
量値:+20ポイント(ただし、整面性評価及び汚れ耐性評価では、それぞれ後述する条件に設定した)

0049

(整面性評価)
水量値を+20ポイントとして上記印刷試験を開始した。そして、刷り出し後100部ごとに刷り出した紙面採取し、その紙面に汚れが発生しているかを目視で確認することで整面性の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、「△」以上を実用可能範囲とした。
「〇」:刷り出し後100部または200部の段階で印刷汚れが解消されていた
「△」:刷り出し後300部または400部の段階で印刷汚れが解消されていた
「×」:印刷汚れが解消されるまでに、500部以上を要した

0050

(汚れ耐性評価)
水量値を+20ポイントとして、上記印刷試験を開始し、1,000部印刷したのち、印刷面の印刷汚れの有無を目視で確認した。そして、印刷汚れが認められた場合は、水量値を5ポイント下げ、同様の評価を行った。これを繰り返し、印刷汚れが発生した水量値を調査することで、汚れ耐性の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、「△」以上を実用可能範囲とした。
「〇」:水量値−20ポイントにおいても印刷面に印刷汚れが認められなかった。
「△」:水量値−20ポイントにおいて印刷面に印刷汚れが認められたが、−5ポイ ントにおいては印刷面に印刷汚れが認められなかった。
「×」:水量値−5ポイントにおいて印刷面に印刷汚れが認められた。

0051

(濃度変動耐性評価
上記印刷試験を開始し、刷り出し後100部ごとに刷り出した印刷物を採取した。前記
印刷物内ベタ部における濃度の変化を目視にて観察することで、濃度変動耐性の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、「○」を実用可能範囲とした。
「〇」:13,000枚目まで、目視観察にて濃度変化が見られなかった
「×」:13,000枚目までの間に、目視観察にて濃度変化が見られた

0052

(防腐性評価)
表1に示す、実施例1〜15、比較例1〜8の各平版印刷用湿し水組成物96部に、印刷現場排水ピットから採取した、細菌類カビ類を含む排水2部と、澱粉溶液2部とを加えた。そして25℃、湿度60%RH環境下で保存し、細菌及びカビの発生の有無を1週間ごとに確認した。評価基準は以下の通りであり、「△」以上を実用可能範囲とした。
「〇」:2週間後の観察にて、細菌及びカビの発生が認められなかった
「△」:2週間後の観察にて、細菌及びカビの発生が認められたが、1週間後の観察 では、細菌及びカビの発生は認められなかった
「×」:1週間後の観察にて、細菌及びカビの発生が認められた

0053

鉄板の防錆性評価)
各平版印刷用湿し水組成物を、それぞれ1種ずつ、ガラス容器に添加した。そして、それぞれの湿し水組成物中に、半浸漬状態となるよう鉄板を置き、常温で1週間放置して、液中の鉄板の発錆状態を観察した。評価基準は以下の通りであり、「○」を実用可能範囲とした。
「〇」:錆びは全く発生していなかった
「×」:錆が発生した

0054

銅板の防錆性評価)
各平版印刷用湿し水組成物を、それぞれ1種ずつ、ガラス容器に添加した。そして、それぞれの湿し水組成物中に、半浸漬状態となるよう銅板を置き、常温で1週間放置して、液中の銅板の発錆状態を観察した。評価基準は以下の通りであり、「○」を実用可能範囲とした。
「〇」:錆びは全く発生していなかった
「×」:錆が発生した

0055

実施例1〜15で調製した平版印刷用湿し水濃縮組成物の希釈品である平版印刷用湿し水組成物は全て、硝酸塩類と、含窒素六員環化合物とを含み、pHが10〜13であり、評価を行った全ての項目で、実用可能レベル品質を有していた。特に、前記硝酸塩類として硝酸アンモニウムを含み、かつ、前記含窒素六員環化合物としてトリアジン系化合物を0.01質量%〜0.03質量%含み、さらにヘキサメタリン酸塩を含んでいる、実施例1、7、12、13、15の平版印刷用湿し水組成物は、全ての評価結果が○レベルと、特に良好の品質を有していることが確認された。

実施例

0056

一方、硝酸塩類を含んでいない比較例1〜3、8の平版印刷用湿し水組成物では、pHが10〜13とならず、整面性、汚れ耐性、濃度変動耐性にも劣っていた。また、含窒素六員環化合物を含まない比較例4〜7の平版印刷用湿し水組成物では、防腐性に大きく劣る結果となった。これらの結果は、本発明の効果を好ましいレベルで全て両立させるためには、本発明の構成を有する平版印刷用湿し水組成物とすることが必須であることを示すものである。

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