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技術 シミュレーション方法、シミュレーション装置及びプログラム

出願人 住友重機械工業株式会社
発明者 松村裕也
出願日 2018年12月20日 (2年0ヶ月経過) 出願番号 2018-238197
公開日 2020年7月2日 (6ヶ月経過) 公開番号 2020-101894
状態 未査定
技術分野
  • -
主要キーワード くりこみ 温度境界条件 ビリアル 領域セル タイムステップ後 反射境界 圧力境界 丸記号
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (10)

課題

流体の流入及び流出を伴う系を、分子動力学法を用いて解析するシミュレーション方法を提供する。

解決手段

出入界面を持つ流れ場解析領域とし、流れ場内の流体を複数の粒子集合体として分子動力学法を用いてシミュレーションする。流出入界面を複数の区画区分し、流出入界面に熱浴を接続し、熱浴と解析領域との間で粒子の移動を許容した解析モデルを定義する。流出入界面の面内位置圧力目標値との関係を取得する。熱浴が、複数の区画に対応して複数の熱浴セルに区分されており、粒子の状態が時間発展するときに熱浴セル内の圧力を、対応する区画における圧力目標値に基づいて制御する。

概要

背景

蒸気タービン低圧段蒸気の温度が低下すると凝縮が起こり、水滴が形成される。この水滴が動翼衝突して、動翼にエロージョンが生じる。このエロージョンを抑制するために、蒸気タービン内の蒸気及び水滴の挙動を知ることが重要である。従来、蒸気等の流体流れ場シミュレーション解析では、流体を連続体として扱っていた(例えば、特許文献1)。このようなシミュレーション解析では、気体から液体への相変化を伴う流れ場の詳細な挙動を把握することは困難である。

分子動力学法またはくりこみ群分子動力学によるシミュレーション解析を行うことにより、流体の挙動を解析する手法が提案されている(特許文献2)。

概要

流体の流入及び流出を伴う系を、分子動力学法を用いて解析するシミュレーション方法を提供する。流出入界面を持つ流れ場を解析領域とし、流れ場内の流体を複数の粒子集合体として分子動力学法を用いてシミュレーションする。流出入界面を複数の区画区分し、流出入界面に熱浴を接続し、熱浴と解析領域との間で粒子の移動を許容した解析モデルを定義する。流出入界面の面内位置圧力目標値との関係を取得する。熱浴が、複数の区画に対応して複数の熱浴セルに区分されており、粒子の状態が時間発展するときに熱浴セル内の圧力を、対応する区画における圧力目標値に基づいて制御する。

目的

本発明の目的は、流体の流入及び流出を伴う系を、分子動力学法を用いて解析するシミュレーション方法、シミュレーション装置及びプログラムを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

出入界面を持つ流れ場解析領域とし、流れ場内流体を複数の粒子集合体として分子動力学法を用いてシミュレーションする方法であって、前記流出入界面を複数の区画区分し、前記流出入界面に熱浴を接続し、前記熱浴と前記解析領域との間で粒子の移動を許容した解析モデルにおいて、前記流出入界面の面内位置圧力目標値との関係を取得し、前記熱浴が、前記複数の区画に対応して複数の熱浴セルに区分されており、粒子の状態が時間発展するときに前記熱浴セル内の圧力を、対応する区画における前記圧力目標値に基づいて制御するシミュレーション方法

請求項2

隣り合う2つの前記区画に対応する2つの前記熱浴セルは界面を介して接しており、2つの前記熱浴セルの間で粒子の移動が許容されている請求項1に記載のシミュレーション方法。

請求項3

前記熱浴セル内の圧力の制御は、前記熱浴セル内へ粒子を追加するか、または前記熱浴セル内から粒子を除去することにより行う請求項1に記載のシミュレーション方法。

請求項4

流出入界面を持つ流れ場を解析領域とし、流れ場内の流体を複数の粒子の集合体として分子動力学法を用いてシミュレーションする装置であって、前記流出入界面を複数の区画に区分する情報、及び前記流出入界面の面内位置と圧力目標値との関係が入力される入力部と、前記流出入界面に熱浴を接続し、前記熱浴と前記解析領域との間で粒子の移動を許容した解析モデルにおいて、前記熱浴を、前記複数の区画に対応して複数の熱浴セルに区分し、粒子の状態を時間発展させるときに前記熱浴セル内の圧力を、対応する区画における前記圧力目標値に基づいて制御する処理部とを有するシミュレーション装置

請求項5

隣り合う2つの前記区画に対応する2つの前記熱浴セルは界面を介して接しており、前記処理部は、2つの前記熱浴セルの間で粒子の移動を許容して粒子の状態を時間発展させる請求項4に記載のシミュレーション装置。

請求項6

前記熱浴セル内の圧力の制御は、前記熱浴セル内へ粒子を追加するか、または前記熱浴セル内から粒子を除去することにより行う請求項4または5に記載のシミュレーション装置。

請求項7

流出入界面を持つ流れ場を解析領域とし、流れ場内の流体を複数の粒子の集合体として分子動力学法を用いてシミュレーションする機能と、前記流出入界面を複数の区画に区分する情報、及び前記流出入界面の面内位置と圧力目標値との関係を取得する機能と、前記流出入界面に熱浴を接続し、前記熱浴と前記解析領域との間で粒子の移動を許容した解析モデルにおいて、前記熱浴を、前記複数の区画に対応して複数の熱浴セルに区分し、粒子の状態を時間発展させるときに前記熱浴セル内の圧力を、対応する区画における前記圧力目標値に基づいて制御する機能とをコンピュータに実行させるプログラム

請求項8

隣り合う2つの前記区画に対応する2つの前記熱浴セルは界面を介して接しており、2つの前記熱浴セルの間で粒子の移動を許容して粒子の状態を時間発展させる請求項7に記載のプログラム。

請求項9

前記熱浴セル内の圧力の制御は、前記熱浴セル内へ粒子を追加するか、または前記熱浴セル内から粒子を除去することにより行う請求項7または8に記載のプログラム。

技術分野

0001

本発明は、分子動力学法またはくりこみ群分子動力学法を用いたシミュレーション方法シミュレーション装置及びプログラムに関する。

背景技術

0002

蒸気タービン低圧段蒸気の温度が低下すると凝縮が起こり、水滴が形成される。この水滴が動翼衝突して、動翼にエロージョンが生じる。このエロージョンを抑制するために、蒸気タービン内の蒸気及び水滴の挙動を知ることが重要である。従来、蒸気等の流体流れ場シミュレーション解析では、流体を連続体として扱っていた(例えば、特許文献1)。このようなシミュレーション解析では、気体から液体への相変化を伴う流れ場の詳細な挙動を把握することは困難である。

0003

分子動力学法またはくりこみ群分子動力学によるシミュレーション解析を行うことにより、流体の挙動を解析する手法が提案されている(特許文献2)。

先行技術

0004

特開2017−004103号公報
特開2016−218767号公報

発明が解決しようとする課題

0005

分子動力学法を用いた従来のシミュレーション解析では、流体の流入及び流出を伴うような系を取り扱うことが困難であった。本発明の目的は、流体の流入及び流出を伴う系を、分子動力学法を用いて解析するシミュレーション方法、シミュレーション装置及びプログラムを提供することである。本明細書において、くりこみ群分子動力学法は、広義の意味で分子動力学法ということもできる。本明細書において、分子動力学法及びくりこみ群分子動力学法を単に「分子動力学法」という。

課題を解決するための手段

0006

本発明の一観点によると、
出入界面を持つ流れ場を解析領域とし、流れ場内の流体を複数の粒子集合体として分子動力学法を用いてシミュレーションする方法であって、
前記流出入界面を複数の区画区分し、前記流出入界面に熱浴を接続し、前記熱浴と前記解析領域との間で粒子の移動を許容した解析モデルにおいて、
前記流出入界面の面内位置圧力目標値との関係を取得し、
前記熱浴が、前記複数の区画に対応して複数の熱浴セルに区分されており、粒子の状態が時間発展するときに前記熱浴セル内の圧力を、対応する区画における前記圧力目標値に基づいて制御するシミュレーション方法が提供される。

0007

本発明の他の観点によると、上記シミュレーション方法を実行するシミュレーション装置、及び上記シミュレーション方法をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。

発明の効果

0008

解析領域の流出入界面に熱浴を接続し、熱浴内の圧力制御を行うことにより、流出入界面における圧力を目標値に維持した状態でシミュレーションを行うことができる。

図面の簡単な説明

0009

図1は、実施例によるシミュレーション装置のブロック図である。
図2Aは、実施例によるシミュレーション方法で解析する対象となる解析モデルの一例を示す概略図であり、図2Bは、流出入界面の面内位置と、圧力目標値との関係の一例を示すグラフである。
図3は、実施例によるシミュレーション装置の処理部が実行する処理手順フローチャートである。
図4は、流出入界面における圧力制御の手順を示すフローチャートである。
図5Aは、個数dNが正の場合の粒子の追加の様子を示す第1熱浴セルの模式図であり、図5Bは、個数dNが負の場合の粒子の除去の様子を示す第2熱浴の模式図である。
図6は、実際に行ったシミュレーションの解析モデルの模式図である。
図7Aに、流出入界面における圧力目標値と、定常状態に達したときの第1熱浴内の圧力の計算値を示すグラフであり、図7Bは、定常状態に達したときの粒子の位置を示す図である。
図8は、他の実施例によるシミュレーション方法で解析する対象となる解析モデルの斜視図である。
図9は、圧力制御(図3のステップS4)を行う手順のフローチャートである。

実施例

0010

図1図5Bを参照して、実施例によるシミュレーション方法及びシミュレーション装置について説明する。

0011

図1は、実施例によるシミュレーション装置のブロック図である。実施例によるシミュレーション装置は、入力部10、処理部11、出力部12、及び記憶部13を含む。入力部10から処理部11にシミュレーション条件等が入力される。さらに、オペレータから入力部10に各種指令コマンド)等が入力される。入力部10は、例えば通信装置リムーバブルメディア読取装置キーボード等で構成される。

0012

処理部11は、入力されたシミュレーション条件及び指令に基づいて分子動力学法またはくりこみ群分子動力学法(以下、単に分子動力学法という。)を用いたシミュレーションを行う。さらに、シミュレーション結果を出力部12に出力する。シミュレーション結果には、シミュレーション対象物である粒子系の粒子の状態、粒子系の物理量の時間的変化等を表す情報が含まれる。処理部11は、例えばコンピュータを含み、分子動力学法によるシミュレーションをコンピュータに実行させるためのプログラムが記憶部13に記憶されている。出力部12は、通信装置、リムーバブルメディア書込み装置ディスプレイ等を含む。

0013

図2Aは、実施例によるシミュレーション方法で解析する対象となる解析モデルの一例を示す概略図である。例えば壁面23、及び一対の流出入界面21、22を持つ四角柱状の解析領域20が定義される。一方の流出入界面21から解析領域20内に流体、例えば水蒸気が流入し、他方の流出入界面22から外部に流出する流れ場が解析領域20内に形成される。この流体を複数の粒子の集合体で表し、分子動力学法を用いて粒子の挙動を解析することにより、解析領域20内の流れ場の解析を行う。境界条件として、一方の流出入界面21における温度、圧力の目標値(温度目標値T1o、圧力目標値P1o)、及び他方の流出入界面22における温度、圧力の目標値(温度目標値T2o、圧力目標値P2o)が与えられる。

0014

流出入界面21に第1熱浴30が接続されており、もう一方の流出入界面22に第2熱浴40が接続されている。流出入界面21を通って第1熱浴30と解析領域20との間で粒子50が移動する。同様に、流出入界面22を通って第2熱浴40と解析領域20との間で粒子50が移動する。第1熱浴30の表面のうち流出入界面21以外の表面、第2熱浴40の表面のうち流出入界面22以外の表面には、反射境界条件を適用する。反射境界に接触した粒子50は、接触時とは反対の面法線方向の速度成分をもって反射される。解析領域20の壁面23には、例えば周期境界条件または反射境界条件を適用する。例えば、第1熱浴30内の圧力を第2熱浴40内の圧力より高く設定すると、解析領域20内に流出入界面21から22に向かう流れ場が形成される。

0015

流出入界面21が複数の区画21aに区分されている。流出入界面21は、例えば格子状に区分される。第1熱浴30が、複数の区画21aに対応して複数の第1熱浴セル30aに区分されている。複数の第1熱浴セル30aは、それぞれ対応する区画21aを介して解析領域20に接続される。隣接する2つの区画21aに対応する2つの第1熱浴セル30aは相互に連続しており、両者の界面は、2つの第1熱浴セル30aの間で粒子50の移動を許容する。

0016

図2Bは、流出入界面21の面内位置と、圧力目標値P1oとの関係の一例を示すグラフである。横軸は、流出入界面21の面内の一次元方向の位置を表し、縦軸は圧力を表す。流出入界面21の面内に関して分布を持つ圧力目標値P1oが、シミュレーション条件の1つとして与えられる。圧力目標値P1oの分布を反映するように、区画21aごとに圧力目標値P1aoが決定される。例えば、圧力目標値P1oを区画21aの寸法で離散化し、区画21aにおける圧力目標値P1aoとして、離散化した値を設定する。

0017

図2Aに示した解析モデルを通常の分子動力学法により解析すると、流れ場の上流側の流出入界面21に接続された第1熱浴30内の粒子50は、解析領域20内に流出することにより、時間の経過とともに粒子数が減少する。逆に、流れ場の下流側の流出入界面22に接続された第2熱浴40においては、解析領域20から粒子50が流入することにより、時間の経過とともに粒子数が増加する。粒子数の増減により、第1熱浴30内の圧力は時間の経過とともに低下し、第2熱浴40内の圧力は時間の経過とともに上昇する。このため、流出入界面21及び流出入界面22における圧力を一定に維持することはできない。以下に説明する実施例では、流出入界面21及び流出入界面22における圧力を一定の圧力目標値P1o、P2oに維持する処理を実行する。

0018

図3は、実施例によるシミュレーション装置の処理部11(図1)が実行する処理手順のフローチャートである。

0019

まず、処理部11は、入力部10に入力されたシミュレーションの初期条件、境界条件等のシミュレーション条件を取得する(ステップS1)。境界条件には、解析領域20、第1熱浴30、及び第2熱浴40の形状及び大きさ、流出入界面21、22における圧力目標値P1o、P2o、及び温度目標値T1o、T2oが含まれる。初期条件には、粒子50の位置及び速度を示す情報が含まれる。さらに、シミュレーション条件として、粒子50の質量と大きさ、粒子間の相互作用ポテンシャルを規定する情報、時間発展させる時間刻み幅等の情報が含まれる。粒子間の相互作用ポテンシャルとして、例えばレナードジョーンズポテンシャルを適用することができる。相互作用ポテンシャルを規定する情報には、例えばレナードジョーンズポテンシャルのフィッティングパラメータが含まれる。

0020

シミュレーション条件を取得すると、処理部11は初期条件に基づいて複数の粒子50を第1熱浴30、解析領域20、及び第2熱浴40内に配置する。粒子50の間の相互作用ポテンシャルに基づいて運動方程式解くことにより、粒子50の次状態を算出する(ステップS3)。具体的には、1タイムステップ後における粒子50の位置及び速度を算出する。

0021

粒子50の次状態が求まると、流出入界面21、22における圧力P1、P2を圧力目標値に維持するための圧力制御を行う(ステップS4)。圧力制御の詳細については、後に、図4図5A、図5Bを参照して説明する。ここでは、圧力制御の概要について説明する。

0022

まず、流出入界面21における圧力制御について説明する。粒子50の最新の状態(すなわちステップS3で求められた粒子50の次状態)における第1熱浴セル30a(図2)内の圧力P1haを計算する。計算により求められた圧力P1haと、対応する区画21aにおける圧力目標値P1aoとを比較する。この比較結果に基づいて、第1熱浴セル30a内の圧力が圧力目標値P1aoになるように、第1熱浴セル30a内に粒子50を追加、または第1熱浴セル30a内から粒子50を除去する。

0023

次に、流出入界面22における圧力制御について説明する。ステップS3で求められた粒子50の最新の状態における第2熱浴40(図2)内の圧力P2hを計算する。第2熱浴40内の圧力P2hと圧力目標値P2oとを比較する。この比較結果に基づいて、第2熱浴40内の圧力が圧力目標値P2oになるように、第2熱浴40内に粒子50を追加、または第2熱浴40内から粒子50を除去する。

0024

圧力制御を行った後、流出入界面21、22における温度T1、T2を、温度目標値に維持するための温度制御を行う(ステップS5)。具体的には、第1熱浴セル30a内の粒子50の温度を流出入界面21における温度目標値T1oに維持し、第2熱浴40内の粒子50の温度を流出入界面22における温度目標値T2oに維持する制御を行う。温度制御には、例えば速度スケーリング法を用いることができる。

0025

流出入界面21における温度目標値T1oが面内で一定ではなく、分布を持っている場合には、温度制御を第1熱浴セル30aごとに行う。

0026

圧力制御及び温度制御を行った後、タイムステップ更新する(ステップS6)。具体的には、ステップS3で算出された粒子50の次状態に対して圧力制御及び温度制御を行った後の粒子50の状態を、現在の状態として設定する。

0027

解析を終了するまで、ステップS3からステップS6までの処理を繰り返す(ステップS7)。解析を終了する場合には、シミュレーショ結果を出力部12(図1)に出力する(ステップS8)。出力部12に出力する情報には、流出入界面21、22における圧力の時間変化、解析領域20内の粒子の状態の時間変化等を表す情報を含めるとよい。流出入界面21における圧力の時間変化は、区画21aごとの圧力の時間変化がわかるように出力するとよい。

0028

次に、図4図5A、図5Bを参照して、流出入界面21(図2)における圧力制御(図3のステップS4)について説明する。
図4は、流出入界面21(図2)における圧力制御の手順を示すフローチャートである。まず、第1熱浴セル30a内の圧力を計算する(ステップS41)。第1熱浴セル30a内の圧力は、例えばビリアル定理を用いて計算することができる。

0029

次に、現時点のタイムステップにおいて圧力制御を実行するか否かを判定する(ステップS42)。例えば、圧力制御は、数百タイムステップごとに1回行う。圧力制御を実行しない場合は、圧力制御の処理を終了して、図3に示したフローチャートに戻る。圧力制御を実行する場合は、第1熱浴セル30a内の圧力P1haの平均値と、対応する区画21aにおける圧力目標値P1aoとに基づいて、第1熱浴セル30a内の圧力が圧力目標値P1aoに維持されるように、第1熱浴セル30aに対して追加または除去する粒子数を算出する(ステップS43)。第1熱浴セル30a内の圧力P1haの平均値は、ステップS41で求められた過去の複数のタイムステップにおける圧力P1haを平均することにより求められる。

0030

以下、追加または除去する粒子数の計算方法について説明する。
ステップS3で算出した最新の状態における第1熱浴セル30a内の粒子50の総数をNとしたとき、追加すべき粒子の個数dNを、以下の式で算出する。



ここで、floor関数は、小数点以下を切り捨てて整数にする関数である。なお、小数点以下を切り捨てる代わりに切り上げてもよいし、小数点第1位を四捨五入して整数にしてもよい。

0031

算出された個数dNに相当する数の粒子を、第1熱浴セル30aに対して追加または除去する(ステップS44)。具体的には、個数dNが正のとき粒子50を追加し、個数dNが負のとき粒子50を除去し、個数dNが0のとき粒子50の追加も除去も行わない。

0032

次に、流出入界面22(図2)における圧力制御(図3のステップS4)について説明する。流出入界面22においては、第2熱浴40内の圧力P2hの平均値と、圧力目標値P2oを用いて第2熱浴40内の圧力を制御する。すなわち、第2熱浴40に対しても、第1熱浴セル30aと同様に粒子50の追加または除去を行う。

0033

第2熱浴40については、第2熱浴40内の粒子50の総数をNとしたとき、追加すべき粒子の個数dNは、以下の式で算出される。

0034

図5Aは、個数dNが正の場合の粒子50の追加の様子を示す第1熱浴セル30aの模式図である。図5Aにおいて、直近の粒子50の位置を破線で表し、最新の状態(ステップS3で求められた次状態)の粒子50の位置を実線で表している。直近の状態から最新の状態に遷移するときに、2個の粒子50cが第1熱浴セル30aから流出している。最新の状態では、第1熱浴セル30a内の粒子数が減少するため、圧力が低下する。このため、P1ao>P1haが成立し、個数dNが正になる。一例として、dN=2の場合、図5Bの下図に示すように、第1熱浴セル30a内に2つの粒子50aを追加する。

0035

新たに追加された粒子50aと、既に存在する粒子50との距離が短すぎると、レナードジョーンズポテンシャルによる大きな斥力が両者に作用する。その結果、次のタイムステップで粒子が急激に加速され、計算が破綻する可能性が生じる。新たに追加した粒子50aと、既に存在する粒子50との間に作用する斥力が所定の許容上限値を超える場合には、新たに追加した粒子50aを再配置する。

0036

図5Bは、個数dNが負の場合の粒子50の除去の様子を示す第2熱浴40の模式図である。図5Bにおいて、直近の状態における粒子50の位置を破線で表し、最新の状態の粒子50の位置を実線で表している。直近の状態から最新の状態に遷移するときに、2個の粒子50dが第2熱浴40に流入している。最新の状態では、第2熱浴40内の粒子数が増加するため、圧力が上昇する。このため、P2o<P2hが成立し、個数dNが負になる。一例として、dN=−2の場合、図5Bの下図に示すように、第2熱浴40内から2つの粒子50bを除去する。

0037

次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
上記実施例では、第1熱浴セル30a内の圧力P1haが、流出入界面21の対応する区画21aにおける圧力目標値P1aoに維持されるため、流出入界面21における圧力境界条件が満足される。同様に、もう一方の流出入界面22における圧力境界条件が満足される。このように、圧力境界条件が満たされる状態で、シミュレーションを行うことができる。

0038

さらに、上記実施例では、流出入界面21を複数の区画21aに区分しているため、流出入界面21の面内において圧力目標値が一様でない場合でも、圧力境界条件が満たされる状態でシミュレーションを行うことができる。

0039

次に、上記実施例の変形例について説明する。上記実施例では、流出入界面21を複数の区画21aに区分し、もう一方の流出入界面22については、圧力目標値P2oが面内で一様であると仮定している。流出入界面22における圧力目標値P2oが面内で一様ではない場合に、流出入界面22も複数の区画に区分し、区画ごとに圧力目標値を設定するとよい。

0040

また、上記実施例では、解析領域20の壁面23(図2A)を反射境界または周期境界としてシミュレーションを行っているが、壁面23に圧力境界条件を設定してもよい。この場合には、壁面23に熱浴を接続するとよい。圧力が面内で一様でない場合には、壁面23を複数の区画に区分するとよい。

0041

上記実施例では、温度制御について詳細な説明は省略したが、流出入界面21の面内方向に温度分布が発生している温度境界条件を適用する場合には、流出入界面21の区画21a及び第1熱浴セル30aごとに温度制御を行うとよい。

0042

次に、図6図7Bを参照して、上記実施例による効果を確認するために行ったシミュレーションについて説明する。

0043

図6は、実際に行ったシミュレーションの解析モデルの模式図である。解析領域20の流出入界面21に第1熱浴30を接続した。流出入界面21とは反対側においては、解析領域20が開放されている。流出入界面21を一方向に15等分して15個の区画21aを定義した。第1熱浴30も、区画21aに対応して15等分し、15個の第1熱浴セル30aを定義した。

0044

図7Aに、流出入界面21の区画21aにおける圧力目標値P1aoと、定常状態に達したときの第1熱浴30内の圧力の計算値を示すグラフである。図7Aの横軸は、流出入界面21の面内位置を表す。横軸の両端が、それぞれ流出入界面21の両端に相当する。縦軸は、圧力を無次元量として表す。図7Aに示した実線は、シミュレーション条件として与えた圧力目標値P1aoを示し、丸記号は、シミュレーションにより求められた第1熱浴セル30a内の圧力P1haを示す。圧力目標値P1aoに、中央部分が両端部分より相対的に高くなるような分布を与えた。第1熱浴セル30a内の圧力P1haが圧力目標値P1aoを反映した分布を有していることがわかる。

0045

図7Bは、定常状態に達したときの粒子の位置を示す図である。複数の第1熱浴セル30a内の粒子密度が、中央の第1熱浴セル30aから両端の第1熱浴セル30aに向かって徐々に低くなっていることが確認される。区画21aにおける圧力目標値P1aoの分布が、実際の粒子密度の分布に反映されていることがわかる。

0046

図6図7Bに示したシミュレーション結果から、複数の粒子の状態を時間発展させたときに、シミュレーション条件として与えた圧力境界条件が維持されていることが確認された。

0047

次に、図8及び図9を参照して、他の実施例について説明する。以下、図1図5Bに示した実施例と共通の構成については説明を省略する。

0048

図8は、本実施例によるシミュレーション方法で解析する対象となる解析モデルの斜視図である。図2Aに示した実施例では、第1熱浴30が解析領域20に直接接しているが、本実施例では、第1熱浴30が境界領域31を介して解析領域20に接続されている。境界領域31も、流出入界面21の複数の区画21aに対応して複数の境界領域セル31aに区分されている。

0049

本実施例においては、境界領域セル31a内の圧力が、対応する区画21aの圧力目標値P1aoに維持されるように、第1熱浴セル30a内の圧力P1haを制御する。境界領域セル31aに対しては、粒子の追加や除去を行わない。

0050

図9は、圧力制御(図3のステップS4)を行う手順のフローチャートである。
まず、複数の境界領域セル31a内の圧力を計算する(ステップS45)。境界領域セル31a内の圧力は、例えばビリアル定理を用いて計算することができる。

0051

次に、現時点のタイムステップにおいて圧力制御を実行するか否かを判定する(ステップS46)。例えば、圧力制御は、数百タイムステップごとに1回行う。圧力制御を実行しない場合は、圧力制御の処理を終了して、図3に示したフローチャートに戻る。圧力制御を実行する場合は、第1熱浴セル30aの圧力目標値P1haoを更新するか否かを判定する(ステップS47)。圧力目標値P1haoの更新は、例えば、圧力制御を10〜100回行うごとに1回行う。

0052

圧力目標値P1haoを更新しない場合には、第1熱浴セル30aの現時点の圧力目標値P1haoに基づいて第1熱浴セル30aの圧力を制御する(ステップS49)。圧力目標値P1haoの初期値として、流出入界面21の対応する区画21aにおける圧力目標値P1aoを採用する。圧力目標値P1haoを更新する場合には、境界領域セル31a内の圧力P1baの平均値に基づいて、第1熱浴セル30aの圧力目標値P1haoを更新する(ステップS48)。境界領域セル31aの圧力P1baの平均値は、ステップS41で求められた過去の複数のタイムステップにおける圧力P1baを平均することにより求められる。第1熱浴セル30aの圧力目標値P1haoは、境界領域セル31aの圧力P1baの平均値、流出入界面21の区画21aにおける圧力目標値P1ao、及び第1熱浴セル30aの最新の状態における圧力P1haに基づいて決定する。例えば、圧力目標値P1haoを以下の式に基づいて更新する。



式(3)において、左辺のP1haoは更新後の圧力目標値であり、右辺のP1haoは現時点(更新前)の圧力目標値である。すなわち、流出入界面21の区画21aにおける圧力目標値P1aoと境界領域セル31aの圧力P1baの平均値との比、及び、第1熱浴セル30aの現時点の圧力目標値P1haoに基づいて、圧力目標値P1haoを更新する。

0053

圧力目標値P1haoを更新した後、第1熱浴セル30aの更新後の圧力目標値P1haoに基づいて第1熱浴セル30aの圧力を制御する(ステップS49)。例えば、境界領域セル31aの圧力P1baが圧力目標値P1aoより低ければ、その程度に応じて、第1熱浴セル30aの圧力目標値P1haoを、最新の状態における第1熱浴セル30aの圧力P1haより高くする。逆に、境界領域セル31aの圧力P1baが圧力目標値P1aoより高ければ、その程度に応じて、第1熱浴セル30aの圧力目標値P1haoを、最新の状態における第1熱浴セル30aの圧力P1haより低くする。このように、第1熱浴セル30aの圧力目標値P1haoを一定間隔修正する。

0054

次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本願発明者による種々のシミュレーション実験によると、圧力を調整するために粒子50の追加を行っている第1熱浴セル30aと、解析領域20とを直接接続すると、シミュレーション条件によっては、両者の界面において圧力が不連続に変化する現象が発生し得ることがわかった。両者の界面で圧力が不連続に変化すると、第1熱浴セル30a内の圧力が圧力目標値P1aoに維持されていても、流出入界面21から見て解析領域20側の微小な領域内の圧力が圧力目標値P1aoからずれてしまう。

0055

図8及び図9に示した実施例では、境界領域セル31aに対しては粒子50の追加及び除去を行わない。このため、境界領域セル31aと解析領域20との間の流出入界面21において圧力の不連続な変化は生じない。境界領域セル31a内の圧力P1baは、流出入界面21の区画21aにおける圧力目標値P1aoに維持される。このため、粒子50の追加を行っている第1熱浴セル30aと、粒子の追加を行わない境界領域セル31aとの界面において圧力が不連続に変化したとしても、流出入界面21から見て解析領域20側の微小な領域内の圧力を圧力目標値P1aoに維持することができる。

0056

上述のように、本実施例は、圧力境界条件を伴う非平衡分子動力学によるシミュレーションに適用することにより、圧力境界条件をシミュレーション結果に高精度に反映させることができる。

0057

上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。

0058

10 入力部
11 処理部
12 出力部
13 記憶部
20解析領域
21 流出入界面
21a区画
22 流出入界面
23 壁面
30 第1熱浴
30a 第1熱浴セル
31境界領域
31a 境界領域セル
40 第2熱浴
50、50a、50b、50c、50d 粒子

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