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技術 摺動部材

出願人 大同メタル工業株式会社
発明者 北原高顕
出願日 2018年12月18日 (2年0ヶ月経過) 出願番号 2018-236271
公開日 2020年6月25日 (6ヶ月経過) 公開番号 2020-097766
状態 未査定
技術分野 粉末冶金 鉄道軌道
主要キーワード 動摩擦状態 注油作業 置用凹 ラメラ組織 多孔質焼結層 中央部位置 焼結合金層 A1変態
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年6月25日)のものです。
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図面 (6)

課題

裏金層上に摺動層を有する平板形状の摺動部材であって、摺動層と裏金層とのせん断の生じ難い摺動部材を提供する。

解決手段

本発明の平板形状の摺動部材は、裏金層が、0.07〜0.35質量%の炭素を含有する亜共析鋼からなり、フェライト相およびパーライト相からなる組織を有し、摺動層が、0.5〜12質量%のSnを含み、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金である銅合金素地部と、銅合金素地部中に分散した固体潤滑剤とからなる。固体潤滑剤は、摺動層の5〜35%の体積割合を有する。裏金層は、摺動層との接合表面に高パーライト相部を有し、裏金層の厚さ方向の中央部における組織中のパーライト相の体積割合Pcと、高パーライト相部におけるパーライト相の体積割合PsがPs/Pc≧1.5になっている。

概要

背景

従来、鉄道分岐器床板として、レールを載置固定する床板本体と、この床板本体に設けられた平板形状の摺動部材とを備え、レールに接離されるトングレールが平板形状の摺動部材上を摺動するようになっているものが知られている。このような分岐器用床板等の摺動部材としては、裏金層上に含油焼結合金層を形成した摺動部材が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、含油焼結合金層を形成した摺動部材を分岐器用床板に用いた場合、その含油焼結合金層に定期的に潤滑油注油する必要があり、維持および使用には非常な労力を要するという問題がある。

また、分岐器用床板の摺動部材への注油作業廃止あるいは注油作業回数の低減のため、裏金層と、銅合金中黒鉛等の固体潤滑剤を分散させた摺動層からなる摺動部材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。

概要

裏金層上に摺動層を有する平板形状の摺動部材であって、摺動層と裏金層とのせん断の生じ難い摺動部材を提供する。本発明の平板形状の摺動部材は、裏金層が、0.07〜0.35質量%の炭素を含有する亜共析鋼からなり、フェライト相およびパーライト相からなる組織を有し、摺動層が、0.5〜12質量%のSnを含み、残部がCu及び不可避不純物からなる銅合金である銅合金素地部と、銅合金素地部中に分散した固体潤滑剤とからなる。固体潤滑剤は、摺動層の5〜35%の体積割合を有する。裏金層は、摺動層との接合表面に高パーライト相部を有し、裏金層の厚さ方向の中央部における組織中のパーライト相の体積割合Pcと、高パーライト相部におけるパーライト相の体積割合PsがPs/Pc≧1.5になっている。

目的

本発明の目的は、従来に比べて摺動層と裏金層とのせん断の生じ難い摺動部材を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

背面および接合表面を有する裏金層と前記裏金層の前記接合表面上に設けられた摺動層とを備える平板形状の摺動部材であって、前記裏金層は、0.07〜0.35質量%の炭素を含有する亜共析鋼からなり、フェライト相およびパーライト相からなる組織を有し、前記摺動層は、0.5〜12質量%のSnを含み、残部がCu及び不可避不純物である銅合金からなる銅合金素地部と、該銅合金素地部中に分散した固体潤滑剤とからなり、該固体潤滑剤は、前記摺動層の5〜35%の体積割合を有し、前記裏金層は、前記接合表面に高パーライト相部を有し、前記裏金層の厚さ方向の中央部における組織中のパーライト相の体積割合Pcと、前記高パーライト相部におけるパーライト相の体積割合PsがPs/Pc≧1.5である、摺動部材。

請求項2

前記高パーライト相部の厚さT1が100μm〜600μmである、請求項1に記載された摺動部材。

請求項3

前記裏金層の厚さTに対する前記高パーライト相部の厚さT1の割合T1/Tが0.2以下である、請求項2に記載された摺動部材。

請求項4

前記裏金層の組成は、0.07〜0.35質量%のC、0.4質量%以下のSi、1質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.05質量%以下のSを含み、残部がFe及び不可避不純物である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された摺動部材。

請求項5

前記銅合金は、0.1〜40質量%のNi、0.1〜1質量%のP、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFe、0.1〜30質量%のPb、0.1〜20質量%のBiのうちから選ばれる少なくとも1種をさらに含有する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された摺動部材。

請求項6

前記固体潤滑剤は、黒鉛二硫化モリブデン二硫化タングステン窒化硼素から選択される少なくとも1種である請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された摺動部材。

請求項7

前記摺動層は、前記銅合金素地部中にAl2O3、SiO2、AlN、Mo2C、WC、Fe2P、Fe3Pのうちから選ばれる1種以上の硬質粒子を0.1〜10体積%をさらに含む、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された摺動部材。

技術分野

0001

本発明は、例えば鉄道分岐器床板等に用いられる摺動部材に関するものである。詳細には、本発明は、裏金層上に形成された摺動層を備える平板形状の摺動部材に係るものである。

背景技術

0002

従来、鉄道分岐器用床板として、レールを載置固定する床板本体と、この床板本体に設けられた平板形状の摺動部材とを備え、レールに接離されるトングレールが平板形状の摺動部材上を摺動するようになっているものが知られている。このような分岐器用床板等の摺動部材としては、裏金層上に含油焼結合金層を形成した摺動部材が用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、含油焼結合金層を形成した摺動部材を分岐器用床板に用いた場合、その含油焼結合金層に定期的に潤滑油注油する必要があり、維持および使用には非常な労力を要するという問題がある。

0003

また、分岐器用床板の摺動部材への注油作業廃止あるいは注油作業回数の低減のため、裏金層と、銅合金中黒鉛等の固体潤滑剤を分散させた摺動層からなる摺動部材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。

先行技術

0004

特開平5−255905号公報
特開2014−136899号公報
特開2000−309807号公報

発明が解決しようとする課題

0005

鉄道の分岐器に用いられる分岐器用床板は、摺動部材の摺動面と相手部材であるトングレールとが常に直接接触している。このため、摺動部材が用いられる軸受装置起動時等においては、相手部材と摺動部材の摺動面とが直接接触した状態での摺動が起こる。また、摺動部材の端面は、基板の摺動部材の載置用凹部によって移動が拘束されている。(例えば、特許文献1の図1、段落0012参照)。相手部材の運動が開始する瞬間から動摩擦状態(摺動部材の摺動面と相手部材との2面間で摺動(滑動)が起こる状態)に移行するまでの間には、摺動部材は、相手部材の移動方向(摺動方向)へ大きな外力を受け、それにより弾性変形が生じることになる。

0006

このような状況の下で、黒鉛等の固体潤滑剤を銅合金中に分散させた摺動層を裏金層上に有する分岐器用床板用摺動部材では、摺動部材の弾性変形量が大きくなると摺動層と裏金層との界面でせん断が生じる場合がある。したがって、本発明の目的は、従来に比べて摺動層と裏金層とのせん断の生じ難い摺動部材を提供することである。

課題を解決するための手段

0007

本発明の一観点によれば、背面および接合表面を有する裏金層と、裏金層の接合表面上に設けられた摺動層とを備える平板形状の摺動部材が提供される。この摺動部材の摺動層は、0.5〜12質量%のSnを含み、残部がCu及び不可避不純物である銅合金からなる銅合金素地部(マトリクス)と、銅合金素地部中に分散した固体潤滑剤とからなる。固体潤滑剤は、摺動層の5〜35%の体積割合を有する。裏金層は、0.07〜0.35質量%の炭素を含有する亜共析鋼からなり、フェライト相およびパーライト相からなる組織を有する。本発明によれば、裏金層は、接合表面に高パーライト相部を有し、裏金層の厚さ方向の中央部における組織中のパーライト相の体積割合Pcと、高パーライト相部におけるパーライト相の体積割合Psが
Ps/Pc≧1.5
になっている。

0008

一具体例によれば、高パーライト相部の厚さT1は100μm〜600μmであることが好ましい。

0009

一具体例によれば、裏金層の厚さTに対する高パーライト相部の厚さT1の割合X1(=T1/T)が0.2以下であることが好ましい。

0010

一具体例によれば、裏金層の組成は、0.07〜0.35質量%のC、0.4質量%以下のSi、1質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.05質量%以下のSを含み、残部がFe及び不可避不純物であることが好ましい。

0011

一具体例によれば、銅合金の組成は、0.1〜40質量%のNi、0.1〜1質量%のP、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFe、0.1〜30質量%のPb、0.1〜20質量%のBiのうちから選ばれる少なくとも1種をさらに含有することができる。

0012

一具体例によれば、固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデン二硫化タングステン窒化硼素から選択される少なくとも1種であることが好ましい。

0013

一具体例によれば、摺動層は、銅合金素地部中にAl2O3、SiO2、AlN、Mo2C、WC、Fe2P、Fe3Pのうちから選ばれる1種以上の硬質粒子を0.1〜10体積%をさらに含むことができる。

0014

本発明による摺動部材は、軸受装置の起動時に摺動部材に相手部材の移動に伴う外力が加わる際、裏金層と摺動層との界面でのせん断が起き難くなり、裏金層と摺動層の銅合金との接合を強くすることができる。

図面の簡単な説明

0015

本発明の摺動部材の摺動層の摺動面に垂直方向の断面の模式図。
図1に示す裏金層の高パーライト相部の断面組織の模式図。
図1に示す裏金層の厚さ方向中央部での断面組織の模式図。
本発明の摺動部材の斜視図。
従来の摺動部材の摺動層の摺動面に垂直方向の断面の模式図。

実施例

0016

図5に従来の摺動部材11の断面の模式図を示す。摺動部材11は、裏金層12の一方の表面上に銅合金素地部14と固体潤滑剤15とからなる摺動層13が形成されている。裏金層12は、炭素含有量が0.07〜0.35質量%の亜共析鋼であり、その組織は通常の亜共析鋼の組織(図3に示す組織に相当)を示す。すなわち、フェライト相6を主とし、粒状のパーライト相7がフェライト相の素地に分散している。この組織が、厚さ方向の全体に均質に形成されている。そのため、裏金層12は、外力に対する変形抵抗が裏金層12の厚さ方向にわたって概ね均一になっている。

0017

上記のように軸受装置の運転開始時の相手部材の運動が開始する瞬間から動摩擦状態(摺動部材11の摺動面と相手部材との2面間で摺動(滑動)が起こる状態)に移行するまでの間には、摺動部材11は、相手部材の移動方向(摺動方向)へ外力を受け、それにより弾性変形が生じる。従来の摺動部材11では、裏金層12が通常の亜共析鋼の組織であり、摺動層13との界面となる接合表面付近の裏金層12は、裏金層のその他の領域と同様に弾性変形するために弾性変形量が大きくなる。界面での裏金層12及び摺動層13の銅合金の弾性変形量が大きくなると、裏金層12と摺動層13の銅合金とは変形抵抗が異なるので、これらの界面での弾性変形量差が大きくなり、そのため、裏金層12と摺動層13との間でせん断が発生し易い。

0018

本発明に係る摺動部材1の一具体例を図1図4を参照して説明する。図1は、裏金層2上に摺動層3を形成した摺動部材1の断面を示す模式図である。裏金層2は、一方の表面(接合表面21)上に摺動層3が形成されており、接合表面21の反対側に背面22を有する。摺動層3との界面となる裏金層2の接合表面21には、下記に説明する高パーライト相部5が形成されている。

0019

図2は、裏金層2の接合表面21付近の高パーライト相部5の組織を示す拡大図であり、図3は、裏金層2の厚さ方向の中央部(以後、単に「裏金層2の中央部」という)の組織を示す拡大図である。なお、図2および図3では、組織中のフェライト相6とパーライト相7は、理解を容易にするために誇張して描かれている。図4は、摺動部材1を示す斜視図である。

0020

図4に示すように摺動部材1は裏金層2と摺動層3からなり、平板形状を有する。なお、一般的な鉄道の分岐器用床板に用いられる摺動部材では、裏金層2の厚さは、3〜30mm、摺動層3の厚さは、0.5〜5mmになされている。但し、摺動部材1の裏金層2及び摺動層3の厚さはこれに限定されないで、他の値でもよい。

0021

裏金層2は、炭素含有量が0.07〜0.35質量%である亜共析鋼である。この裏金層2の組織は、図3に示すように、フェライト相6とパーライト相7とからなるものである。炭素含有量が0.07質量%未満の亜共析鋼を用いる場合には、裏金層2の強度が低く、摺動部材1の強度が不十分となる。他方、炭素含有量が0.35質量%を超える亜共析鋼を用いると、裏金層2の高パーライト相部5に遊離セメンタイト相(パーライト相7を構成する層状のセメンタイト相以外のセメンタイト相)が多く形成される場合があり、高パーライト相部5が脆くなることがある。

0022

なお、裏金層2は、0.07〜0.35質量%の炭素を含有し、さらに、0.4質量%以下のSi、1質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.05質量%以下のSのいずれか一種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成であってもよい。また、裏金層2の組織は、フェライト相6とパーライト相7とからなるが、このことは微細析出物走査電子顕微鏡を用い1000倍で組織観察を行っても検出できない析出物相)を含むことを排除するものではない。
なお、後述する2次焼結時に摺動層3との界面となる裏金層2の接合表面21付近(高パーライト相部5の表面付近)には、後述する摺動層3の銅合金の成分がフェライト相6に固溶される形態で拡散することがあるが、この場合も本発明の範囲である。

0023

高パーライト相部5の組織中のパーライト相7の体積割合は、裏金層2の中央部における組織中のパーライト相7の体積割合に対して50%以上多くなっている。すなわち、裏金層2の中央部における組織中のパーライト相の体積割合Pcと、高パーライト相部5におけるパーライト相の体積割合Psとの関係が、Ps/Pc≧1.5になっている。さらに、高パーライト相部5の組織中のパーライト相7の体積割合は、裏金層2の中央部における組織中のパーライト相7の体積割合に対して100%以上多くなっている(すなわち、Ps/Pc≧2)ことがより好ましい。

0024

裏金層2におけるフェライト相6は、炭素含有量が最大で0.02質量%と少なく、純鉄に近い組成の相である。一方、裏金層2におけるパーライト相7は、フェライト相と鉄炭化物であるセメンタイト(Fe3C)相とが薄い板状に交互に並んで形成されるラメラ組織を有し、フェライト相6よりも強度が高い。このため、裏金層2は、組織中のパーライト相7の割合が多いほど、変形抵抗が大きくなる。高パーライト相部5は、組織中のパーライト相7の体積割合が裏金層2の中央部のパーライト相7の体積割合よりも50%以上多くなっているため、裏金層2の中央部に比べて変形抵抗が大きくなっている。

0025

組織中のパーライト相7の面積率の測定は、電子顕微鏡を用いて摺動部材1の厚さ方向に平行な方向(摺動層3の摺動面に垂直な方向)に切断された複数箇所(例えば5箇所)の断面組織において、裏金層2の中央部、及び、裏金層2の接合表面21付近をそれぞれ倍率500倍で電子像撮影し、その画像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて行なう。そして、裏金層2の中央部における組織中のパーライト相7の面積割合に対して、裏金層2の接合表面付近における組織中のパーライト相7の面積割合が50%以上多くなっていることで、裏金層2の接合表面21に高パーライト相部5が形成されていることが確認できる。

0026

本願で用いる「裏金層2の(厚さ方向の)中央部」は、厳密な意味での裏金層2の厚さ方向に中央部位置でなくてもよい。これは、裏金層2の背面22から高パーライト相部5までの間の組織が、実質的に同じ組織(フェライト相6/パーライト相7の面積割合がほぼ同じ)になっているからである。したがって、本明細書では「裏金層2の中央部」は、裏金層2の厚さ方向の中央部位置およびその近傍を含んでいる。なお、上記観察において組織中のパーライト相7の体積割合は、断面視における面積割合として測定したが、この面積割合の値は、組織中のパーライト相7の体積割合に相当する。

0027

高パーライト相部5の厚さT1は、接合表面21から100μm以上、600μm以下であることが好ましい。さらに、高パーライト相部5の厚さT1は、100〜400μmとすることがより好ましい。高パーライト相部5の厚さが100μm未満であると、裏金層2の接合表面21に、部分的に高パーライト相部5が形成されない場合がある。裏金層2の厚さは、一般的な鉄道の分岐器に用いられる分岐器用床板に用いられる摺動部材では最小でも3.0mmであるので、高パーライト相部5の厚さT1が600μm以下であれば、裏金層2の高パーライト相部5を除く他の領域が十分な厚さになる。このように、裏金層2の厚さTに対する高パーライト相部5の厚さT1の割合X1(X1=T1/T)は、0.2以下とすることが好ましい。

0028

摺動層3の銅合金素地部4は、0.5〜12質量%のSnを含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、銅合金素地部4中に分散した固体潤滑剤8は、摺動層の5〜35%の体積割合を有する。摺動層3は、緻密化しており、摺動層中の空孔率は、5体積%以下になされている。なお、空孔率が5体積%を超える場合、摺動層3の強度が低くなり、軸受装置の運転開始時の相手部材からの負荷により、摺動層に割れが発生しやすくなる。
なお、固体潤滑剤は、必ずしも銅合金素地部4の全体に分散している必要はない。例えば、摺動層3は、裏金層2の接合表面21と接する付近のみに固体潤滑剤8を含まないようにすることもできる。

0029

銅合金のSn成分は、銅合金の強度を高める成分であるが、含有量が0.5質量%未満の場合には、その効果が不十分であり、他方、12質量%を超える場合には、銅合金が脆くなる。
また、銅合金は、0.1〜40質量%のNi、0.1〜1質量%のP、0.1〜10質量%のAg、0.1〜10質量%のFe、0.1〜30質量%のPb、0.1〜20質量%のBiから選ばれる1種以上を含有してもよい。Ni、P、Ag、Feは、銅合金からなる銅合金素地部4の強度を高める成分であるが、含有量が上記の下限値未満の場合には、その効果が不十分であり、また、上記の上限値を超える場合には、銅合金が脆くなる。Pb、Biは、銅合金の潤滑性を高める成分であるが、含有量が上記の下限値未満の場合には、その効果が不十分であり、また、上記の上限値を超える場合には、銅合金が脆くなる。なお、銅合金にこれら選択成分を2種以上含有させる場合、合計で45質量%以下とすることが好ましい。

0030

摺動層3は、5〜35%の体積割合で固体潤滑剤8を有する。固体潤滑剤8は、摺動層3の潤滑性を高めるが、体積割合が5体積%未満の場合には、その効果が不十分であり、35体積%を超える場合には、摺動層3が脆くなる。固体潤滑剤8は、MoS2、WS2、黒鉛、h−BNから選ばれる1種以上とすることが好ましい。

0031

摺動層3は、Al2O3、SiO2、AlN、Mo2C、WC、Fe2P、Fe3Pから選ばれる1種以上の硬質粒子を0.1〜10体積%をさらに含むことができる。これら硬質粒子は、摺動層3の銅合金素地部4に分散して摺動層3の耐摩耗性を高めるが、その含有量が0.1体積%未満の場合には、その効果が不十分であり、10体積%を超える場合には、摺動層3が脆くなる。

0032

裏金層2は、炭素含有量が0.07〜0.35質量%の亜共析鋼である。亜共析鋼の組織はフェライト相6とパーライト相7とからなり、パーライト相7の割合は、炭素含有量に応じて決まるが、通常は30体積%以下である。裏金層2の中央部はこのような亜共析鋼の通常の組織になっている。しかし、摺動層3との界面となる裏金層2の接合表面21には、裏金層の中央部における組織中のパーライト相7の体積割合に対してパーライト相7の体積割合が50%以上多くなくなっている高パーライト相部5が形成される。高パーライト相部5は裏金層2のその他の領域(とりわけ中央部付近)に比べて、変形抵抗が大きい。このため、摺動部材1は、軸受装置で使用されて、軸受装置の起動時の相手部材の運動が開始する瞬間から動摩擦状態に移行するまでの間に相手部材からの外力が加わって弾性変形が起こっても、裏金層2は、相対的に変形抵抗が小さい高パーライト相部5を除く部分での弾性変形量が多くなることで、接合表面付近(高パーライト相部)での弾性変形量が小さくなる。裏金層の接合表面と接する付近の摺動層の銅合金も、裏金層との接合により拘束されて変形が制限されるために弾性変形量が小さくなる。裏金層の高パーライト相部と、この高パーライト相部に接する付近の摺動層の銅合金の弾性変形量が共に小さくなることで、界面での弾性変形量の差が小さくなり、その界面でのせん断が起き難くなり、それにより裏金層と摺動層の銅合金との接合を強くすることができる。

0033

以下に、本実施形態に係る摺動部材の作製方法について説明する。

0034

まず、摺動層の上記組成の銅合金の粉末固体潤滑剤粒子との混合粉を準備する。なお、摺動層に上記硬質粒子を含有させる場合は、硬質粒子をも含む混合粉を準備する。

0035

準備した混合粉を上記組成(亜共析鋼)の鋼板上に散布した後、粉末散布層を加圧することなく、焼結炉を用いて800〜950℃の還元雰囲気で1次焼結を行い、鋼板上に多孔質焼結層(この焼結層が摺動層となる)を形成し、室温まで冷却する。

0036

次に、多孔質焼結層を緻密化するために1次圧延を行う。この1次圧延は、多孔質焼結層の空孔を減少させて緻密化する程度であって鋼板はほとんど圧延されないように行う。

0037

次に、圧延された部材を焼結炉内で800〜950℃の還元雰囲気で2次焼結を行い、多孔質焼結層をさらに焼結して、室温まで冷却する。具体的な冷却方法の例としては、裏金層2の背面22側のみに、直接、冷却ガス(例えば、窒素ガス)の噴射流(例えば、裏金層2の背面22での衝突圧0.9MPa以上)を吹付けて冷却する。この際に、裏金層の焼結層との界面となる表面に高パーライト相部が形成される。

0038

高パーライト相部の形成機構は以下のように考えられる。
2次焼結工程の昇温中にA1変態点(727℃)に達すると、裏金層は、フェライト相とオーステナイト相からなる組織となる。裏金層は、その後のA1変態点を超えて焼結温度最高温度)に達するまでの昇温とともに、組織中のフェライト相はオーステナイト相に徐々に変態し、組織中のフェライト相の割合が減少する。A1変態点に達してから最高温度に達するまでの間、裏金層は、接合表面付近と内部とでは組織中のオーステナイト相の割合およびオーステナイト相に固溶される炭素濃度は差がない。

0039

その後の冷却過程において、裏金層2がA1変態点に達すると、炭素を多く含有していたオーステナイト相(炭素の最大固溶限が2.1質量%)は、炭素をほとんど含有しないフェライト相(炭素の最大固溶限が0.02質量%)に変態し、フェライト相に固溶されないで余剰となった炭素はパーライト相を構成する層状のセメンタイト(Fe3C)となり、フェライト相とパーライト相からなる組織となる。

0040

上記のように冷却過程において、裏金層2は、背面22側から冷却されることで、A1変態点には背面22付近が最初に達し、接合表面21付近が最後に達する。裏金層2の背面22付近がA1変態点に達したとき、背面22付近よりも内部にはオーステナイト相が存在するため、背面22付近で余剰となった炭素の一部は、より内部のオーステナイト相中へ拡散する。この炭素のオーステナイト相への拡散現象は、裏金層2の背面22側から接合表面21側に向かって順に起こるため、銅合金層との界面となる接合表面21付近の組織中に含まれる炭素量は、内部の組織中に含まれる炭素量よりも多くなり、それにより、冷却後の接合表面21付近の組織中のパーライト相の体積割合は、内部の組織中パーライト相の体積割合よりも多くなったと考えられる。

0041

なお、本実施例の摺動部材の製造においては、1次圧延にて焼結層が緻密化する程度に圧延する。そのため、裏金層2の接合表面21は、緻密化された焼結層により覆われることとなり、上記冷却工程において裏金層2は接合表面付近が内部に対して最も遅れてA1変態点に達するように冷却することができる。

0042

本実施形態とは異なり、1次圧延を施すことなく裏金層上に多孔質焼結層を形成した状態のままで同様に冷却した場合、すなわち裏金層の背面側のみに、直接、冷却ガスの噴射流を吹き付けるように冷却しても、冷却後の裏金層は、接合表面付近の組織中のパーライト相の体積割合が内部の組織中パーライト相の体積割合よりも少なくなる。これは、多孔質焼結層は、その表面積が大きいので雰囲気により冷却されやすく、冷却された多孔質焼結層に裏金層の接合表面付近の熱が伝導して、裏金層の接合表面付近が厚さ方向の中央部付近よりも先にA1変態点に達するためである。

0043

また、2次焼結の後の冷却工程において、従来のように、単に冷却ガス雰囲気中で焼結部材を冷却した場合、裏金層の接合表面付近と内部での冷却速度の差が小さくなる。このため、冷却後の裏金層は、表面付近と内部とでパーライト相の割合が変わらない組織となる。

0044

本発明の摺動部材は、鉄道の分岐器に用いられる分岐器用床板に使用される摺動板に限定されないで、各種機械に用いられる摺動板にも適用できる。例えば、工作機械射出成型機加硫機等の往復摺動部に用いられる摺動板等にも適用できる。

0045

また、本発明の摺動部材は、摺動層および/または裏金層の表面にSn、Bi、Pbまたは、これら金属を基とする合金からなる被覆層や、合成樹脂または合成樹脂を基とする被覆層を有してもよい。

0046

1摺動部材
2裏金層
3摺動層
4銅合金素地部
5 高パーライト相部
6フェライト相
7 パーライト相
8固体潤滑剤
11 摺動部材
12 裏金層
13 摺動層
14 銅合金素地部
15 固体潤滑剤
21接合表面
22 背面

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