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図面 (14)

課題

抗腫瘍効果と安全性面に優れる、抗腫瘍薬の提供。

解決手段

下式で示す抗腫瘍性化合物抗HER2抗体とを、次式:-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-で示される構造のリンカーを介して結合させたことを特徴とする抗体−薬物コンジュゲート。(抗HER2抗体はL1の末端において結合し、抗腫瘍性化合物は、1位のアミノ基の窒素原子結合部位として、-(CH2)n2-C(=O)-部分のカルボニル基に結合する)

概要

背景

癌細胞表面に発現し、かつ細胞内在化できる抗原に結合する抗体に、細胞毒性を有す
る薬物を結合させた抗体−薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate;ADC)は、癌
細胞に選択的に薬物を送達できることによって、癌細胞内に薬物を蓄積させ、癌細胞を死
滅させることが期待できる(非特許文献1〜3参照)。ADCとして例えば、抗CD33抗体に
カリチアマイシンを結合させたMylotarg(登録商標ゲムツズマブオゾガマイシン)が急
骨髄性白血病治療薬として認可されている。また、抗CD30抗体オーリスタチンEを
結合させたAdcetris(登録商標;ブレツキシマブベドティン)がホジキンリンパ腫と未
分化大細胞リンパ腫の治療薬として最近認可された(非特許文献4参照)。これまでに認
可されたADCに含有される薬物は、DNA又はチューブリンを標的としている。

抗腫瘍性低分子化合物としてトポイソメラーゼIを阻害して抗腫瘍作用を発現する化
合物であるカンプトテシン誘導体が知られている。その中で下式

で示される抗腫瘍性化合物(エキサテカン化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フル
オロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]イ
ドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)は、水溶性のカンプトテシン誘導体
である(特許文献1、2)。この化合物は、現在臨床で用いられているイリノテカンとは
異なり、抗腫瘍効果の発現には酵素による活性化を必要としない。また、イリノテカンの
薬効本体であるSN-38や、同じく臨床で用いられているトポテカンよりも強いトポイソ
ラーゼI阻害活性が観察され、in vitroで種々の癌細胞に対して、より強い殺細胞活性
認められた。特にP-glycoproteinの発現によってSN-38等に耐性を示す癌細胞に対しても
効果が認められた。また、マウスヒト腫瘍皮下移植モデルでも強い抗腫瘍効果が認めら
れたが、臨床試験が行われたものの上市には至っていない(非特許文献5〜10参照)。
エキサテカンがADCとして有効に作用するかについては明らかではなかった。

DE-310は、生分解性カルボキシメチルデキストランポリアルコールポリマーにエキサ
テカンを、GGFGペプチドスペーサーを介して結合させた複合体である(特許文献3)。エ
キサテカンを高分子プロドラッグ化することによって、高い血中滞留性を保持させ、さら
腫瘍新生血管透過性亢進腫瘍組織滞留性を利用して、受動的腫瘍部位への指向
性を高めたものである。DE-310は、酵素によるペプチドスペーサーの切断によって、活性
本体であるエキサテカン、及びグリシンがアミノ基に結合しているエキサテカンが持続
遊離され、その結果薬物動態が改善される。非臨床試験における種々の腫瘍の評価モデ
ルにおいて、DE-310は、ここに含まれるエキサテカンの総量がエキサテカン単剤投与
よりも減少しているのにも拘らず、単剤の投与時よりもより高い有効性を示した。DE-310
に関しては臨床試験が実施されて有効例も確認され、活性本体が正常組織よりも腫瘍に集
積することが確認されたとの報告がある。その一方、腫瘍へのDE-310及び活性本体の集積
は正常組織への集積と大差なく、ヒトでは受動的なターゲティングは見られなかったとの
報告もある(非特許文献11〜14参照)。結果としてDE-310も上市には至らず、エキサ
テカンがこの様なターゲティングを指向した薬物として有効に機能するかについては明ら
かではなかった。

DE-310の関連化合物として、-NH-(CH2)4-C(=O)-で示される構造部分を-GGFG-スペーサ
ーとエキサテカンの間に挿入し、-GGFG-NH-(CH2)4-C(=O)-をスペーサー構造とする複合体
も知られているが(特許文献4)、同複合体の抗腫瘍効果については全く知られていない

HER2は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型関連癌遺伝子として同定された代表的な
増殖因子受容体型の癌遺伝子産物のひとつであり、分子量185kDaのチロシンキナ
ドメインを持つ膜貫通型受容体蛋白である(非特許文献15)。HER2のDNA配列
及びアミノ酸配列は公的データベース上に公開されており、例えば、M11730(Ge
nbank)、NP_004439.2(NCBI)等のアクセッション番号により参照
可能である。
HER2(neu,ErbB−2)はEGFR(epidermal growth factorreceptor:
上皮増殖因子受容体ファミリーのひとつであり、ホモダイマー或は他のEGFR受容体
であるHER1(EGFR,ErbB−1)、HER3(ErbB−3)、HER4(E
rbB−4)とのヘテロダイマー形成(非特許文献16−18)によって細胞内チロシン
残基が自己リン酸化されて活性化することにより、正常細胞及び癌細胞において細胞の増
殖・分化・生存に重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献19、20
)。HER2は乳癌胃癌卵巣癌等様々な癌種において過剰発現しており(非特許文献
21−26)、乳癌においては負の予後因子であることが報告されている(非特許文献2
7、28)。

トラスツズマブは、組み換えヒト化抗HER2モノクローナル抗体(huMAb4D5
−8、rhuMAb HER2、ハーセプチン(登録商標))と称される、マウス抗HE
R2抗体4D5(非特許文献29、特許文献5)のヒト化抗体(特許文献6)である。トラ
スツズマブは、HER2の細胞外ドメインIVに特異的に結合し、抗体依存性細胞障害
ADCC誘導やHER2からのシグナル伝達阻害を介して抗癌効果を発揮する(非特許
文献30、31)。トラスツズマブはHER2を過剰発現した腫瘍に対して高い効果を示
すことから(非特許文献32)、HER2を過剰発現している転移性乳癌患者での治療薬
として、米国で1999年、我が国において2001年に上市された。
乳癌におけるトラスツズマブの治療効果は十分に証明されている一方(非特許文献33
)、トラスツズマブに応答するのは、広範囲の従来の抗癌治療を受けたHER2を過剰発
現した乳癌患者の約15%と言われ、この集団の約85%の患者はトラスツズマブ処置
対して応答しないか、応答が貧弱であるのみである。

したがって、トラスツズマブに対して応答しないか、応答が貧弱であるHER2を過剰
発現する腫瘍又はHER2発現に関連する障害を患っている患者のために、HER2発現
に関連する疾病を標的とする治療薬の必要性が認識されており、トラスツズマブにリンカ
ー構造を介して抗腫瘍性薬物を結合したT−DM1(トラスツズマブエムタンシン、カド
サイラ(登録商標);非特許文献34)やHER2の細胞外ドメインIIを標的とし、ヘ
テロダイマー形成を阻害するよう設計されたペルツズマブパージェタ(登録商標);非
特許文献35、特許文献7)が開発された。しかしながら、応答性や活性の強さ、並びに
適応範囲は未だ十分ではなく、HER2を標的とする未充足ニーズが存在している。

概要

抗腫瘍効果と安全性面に優れる、抗腫瘍薬の提供。下式で示す抗腫瘍性化合物と抗HER2抗体とを、次式:-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-で示される構造のリンカーを介して結合させたことを特徴とする抗体−薬物コンジュゲート。(抗HER2抗体はL1の末端において結合し、抗腫瘍性化合物は、1位のアミノ基の窒素原子結合部位として、-(CH2)n2-C(=O)-部分のカルボニル基に結合する)なし

目的

本発明は、抗腫瘍効果と安全性面
に優れる、優れた治療効果を有する抗腫瘍薬を獲得して提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

次式で示されるリンカー及び薬物と、抗HER2抗体と、が結合した抗体−薬物コンジュゲート。-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-(NH-DX)(ここで、抗HER2抗体は、L1の末端において結合し、n1は、0から6の整数を示し、n2は、0から5の整数を示し、L1は、-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n3-C(=O)-を示し、ここで、n3は、2から8の整数を示し、L2は、-NH-(CH2-CH2-O)n4-CH2-CH2-C(=O)-又は単結合を示し、ここで、n4は、1から6の整数を示し、LPは、2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基を示し、Laは、-O-又は単結合を示し、-(Succinimid-3-yl-N)-は次式: で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上でこれを含むリンカー構造内のメチレン基と結合し、-(NH-DX)は次式: で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基を示す。)但し、次の群から選ばれる1種の薬物−リンカー構造と、抗HER2抗体と、が結合した抗体−薬物コンジュゲートを除く。-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)(ここで、-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。)

請求項2

LPのペプチド残基が、フェニルアラニングリシンバリンリシンシトルリンセリングルタミン酸アスパラギン酸から選ばれるアミノ酸からなるペプチド残基である請求項1記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項3

LPが、以下の群から選ばれるペプチド残基である請求項1又は2に記載の抗体−薬物コンジュゲート。-GGF--DGGF--(D-)D-GGF--EGGF--GGFG--SGGF--KGGF--DGGFG--GGFGG--DDGGFG--KDGGFG--GGFGGGF-(ここで『(D-)D』はD−アスパラギン酸を示す。)

請求項4

LPが、4個のアミノ酸で構成されるペプチド残基である請求項1又は2に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項5

LPが、テトラペプチド残基の-GGFG-である請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項6

n3が2から5の整数であって、L2が単結合である請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項7

n3が2から5の整数であって、L2が-NH-(CH2CH2O)n4-CH2-CH2-C(=O)-であり、n4が2又は4である請求項1〜5のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項8

-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、4から7原子鎖長を有する部分構造である請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項9

-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、5又は6原子の鎖長を有する部分構造である請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項10

-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、以下のいずれかである請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。-NH-CH2CH2-C(=O)--NH-CH2CH2CH2-C(=O)--NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)--NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)--NH-CH2-O-CH2-C(=O)--NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)--NH-CH2-CH2-O-C(=O)-

請求項11

-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、以下のいずれかである請求項10に記載の抗体−薬物コンジュゲート。-NH-CH2CH2CH2-C(=O)--NH-CH2-O-CH2-C(=O)--NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-

請求項12

-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-(NH-DX)で示される薬物−リンカー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物−リンカー構造である請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)(ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-は次式: で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上でこれを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。-(NH-DX)は次式: で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基を示す。-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。)

請求項13

抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項14

抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項15

薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個の範囲である請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項16

薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個の範囲である請求項1〜14のいずれか一に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

請求項17

請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート、その塩、又はそれらの水和物を含有する医薬

請求項18

請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート、その塩、又はそれらの水和物を含有する抗腫瘍薬及び/又は抗癌薬

請求項19

請求項20

請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート、その塩、又はそれらの水和物を活性成分とし、薬学的に許容される製剤成分とを含有する医薬組成物

請求項21

肺癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質腫瘍、子宮頸癌、食道癌、扁平上皮癌、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞種、骨髄腫、又は肉腫に適用するための請求項20記載の医薬組成物。

技術分野

0001

本発明は、抗HER2抗体抗腫瘍性薬物とをリンカー構造部分を介して結合させた、
抗腫瘍薬として有用な抗体−薬物コンジュゲートに関する。

背景技術

0002

癌細胞表面に発現し、かつ細胞内在化できる抗原に結合する抗体に、細胞毒性を有す
る薬物を結合させた抗体−薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate;ADC)は、癌
細胞に選択的に薬物を送達できることによって、癌細胞内に薬物を蓄積させ、癌細胞を死
滅させることが期待できる(非特許文献1〜3参照)。ADCとして例えば、抗CD33抗体に
カリチアマイシンを結合させたMylotarg(登録商標ゲムツズマブオゾガマイシン)が急
骨髄性白血病治療薬として認可されている。また、抗CD30抗体オーリスタチンEを
結合させたAdcetris(登録商標;ブレツキシマブベドティン)がホジキンリンパ腫と未
分化大細胞リンパ腫の治療薬として最近認可された(非特許文献4参照)。これまでに認
可されたADCに含有される薬物は、DNA又はチューブリンを標的としている。

0003

抗腫瘍性の低分子化合物としてトポイソメラーゼIを阻害して抗腫瘍作用を発現する化
合物であるカンプトテシン誘導体が知られている。その中で下式

0004

0005

で示される抗腫瘍性化合物(エキサテカン化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フル
オロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]イ
ドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)は、水溶性のカンプトテシン誘導体
である(特許文献1、2)。この化合物は、現在臨床で用いられているイリノテカンとは
異なり、抗腫瘍効果の発現には酵素による活性化を必要としない。また、イリノテカンの
薬効本体であるSN-38や、同じく臨床で用いられているトポテカンよりも強いトポイソ
ラーゼI阻害活性が観察され、in vitroで種々の癌細胞に対して、より強い殺細胞活性
認められた。特にP-glycoproteinの発現によってSN-38等に耐性を示す癌細胞に対しても
効果が認められた。また、マウスヒト腫瘍皮下移植モデルでも強い抗腫瘍効果が認めら
れたが、臨床試験が行われたものの上市には至っていない(非特許文献5〜10参照)。
エキサテカンがADCとして有効に作用するかについては明らかではなかった。

0006

DE-310は、生分解性カルボキシメチルデキストランポリアルコールポリマーにエキサ
テカンを、GGFGペプチドスペーサーを介して結合させた複合体である(特許文献3)。エ
キサテカンを高分子プロドラッグ化することによって、高い血中滞留性を保持させ、さら
腫瘍新生血管透過性亢進腫瘍組織滞留性を利用して、受動的腫瘍部位への指向
性を高めたものである。DE-310は、酵素によるペプチドスペーサーの切断によって、活性
本体であるエキサテカン、及びグリシンがアミノ基に結合しているエキサテカンが持続
遊離され、その結果薬物動態が改善される。非臨床試験における種々の腫瘍の評価モデ
ルにおいて、DE-310は、ここに含まれるエキサテカンの総量がエキサテカン単剤投与
よりも減少しているのにも拘らず、単剤の投与時よりもより高い有効性を示した。DE-310
に関しては臨床試験が実施されて有効例も確認され、活性本体が正常組織よりも腫瘍に集
積することが確認されたとの報告がある。その一方、腫瘍へのDE-310及び活性本体の集積
は正常組織への集積と大差なく、ヒトでは受動的なターゲティングは見られなかったとの
報告もある(非特許文献11〜14参照)。結果としてDE-310も上市には至らず、エキサ
テカンがこの様なターゲティングを指向した薬物として有効に機能するかについては明ら
かではなかった。

0007

DE-310の関連化合物として、-NH-(CH2)4-C(=O)-で示される構造部分を-GGFG-スペーサ
ーとエキサテカンの間に挿入し、-GGFG-NH-(CH2)4-C(=O)-をスペーサー構造とする複合体
も知られているが(特許文献4)、同複合体の抗腫瘍効果については全く知られていない

0008

HER2は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型関連癌遺伝子として同定された代表的な
増殖因子受容体型の癌遺伝子産物のひとつであり、分子量185kDaのチロシンキナ
ドメインを持つ膜貫通型受容体蛋白である(非特許文献15)。HER2のDNA配列
及びアミノ酸配列は公的データベース上に公開されており、例えば、M11730(Ge
nbank)、NP_004439.2(NCBI)等のアクセッション番号により参照
可能である。
HER2(neu,ErbB−2)はEGFR(epidermal growth factorreceptor:
上皮増殖因子受容体ファミリーのひとつであり、ホモダイマー或は他のEGFR受容体
であるHER1(EGFR,ErbB−1)、HER3(ErbB−3)、HER4(E
rbB−4)とのヘテロダイマー形成(非特許文献16−18)によって細胞内チロシン
残基が自己リン酸化されて活性化することにより、正常細胞及び癌細胞において細胞の増
殖・分化・生存に重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献19、20
)。HER2は乳癌胃癌卵巣癌等様々な癌種において過剰発現しており(非特許文献
21−26)、乳癌においては負の予後因子であることが報告されている(非特許文献2
7、28)。

0009

トラスツズマブは、組み換えヒト化抗HER2モノクローナル抗体(huMAb4D5
−8、rhuMAb HER2、ハーセプチン(登録商標))と称される、マウス抗HE
R2抗体4D5(非特許文献29、特許文献5)のヒト化抗体(特許文献6)である。トラ
スツズマブは、HER2の細胞外ドメインIVに特異的に結合し、抗体依存性細胞障害
ADCC誘導やHER2からのシグナル伝達阻害を介して抗癌効果を発揮する(非特許
文献30、31)。トラスツズマブはHER2を過剰発現した腫瘍に対して高い効果を示
すことから(非特許文献32)、HER2を過剰発現している転移性乳癌患者での治療薬
として、米国で1999年、我が国において2001年に上市された。
乳癌におけるトラスツズマブの治療効果は十分に証明されている一方(非特許文献33
)、トラスツズマブに応答するのは、広範囲の従来の抗癌治療を受けたHER2を過剰発
現した乳癌患者の約15%と言われ、この集団の約85%の患者はトラスツズマブ処置
対して応答しないか、応答が貧弱であるのみである。

0010

したがって、トラスツズマブに対して応答しないか、応答が貧弱であるHER2を過剰
発現する腫瘍又はHER2発現に関連する障害を患っている患者のために、HER2発現
に関連する疾病を標的とする治療薬の必要性が認識されており、トラスツズマブにリンカ
ー構造を介して抗腫瘍性薬物を結合したT−DM1(トラスツズマブエムタンシン、カド
サイラ(登録商標);非特許文献34)やHER2の細胞外ドメインIIを標的とし、ヘ
テロダイマー形成を阻害するよう設計されたペルツズマブパージェタ(登録商標);非
特許文献35、特許文献7)が開発された。しかしながら、応答性や活性の強さ、並びに
適応範囲は未だ十分ではなく、HER2を標的とする未充足ニーズが存在している。

0011

特開平5−59061号公報
特開平8−337584号公報
国際公開第1997/46260号
国際公開第2000/25825号
米国特許第5677171号明細書
米国特許第5821337号明細書
国際公開第01/00244号

先行技術

0012

Ducry,L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
Alley,S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010) 14, 529-537.
DamleN. K. Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
SenterP. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
Kumazawa,E., Tohgo, A., Exp. Opin. Invest. Drugs (1998) 7, 625-632.
Mitsui,I., et al., Jpn J. Cancer Res. (1995) 86, 776-786.
Takiguchi,S., et al., Jpn J. Cancer Res. (1997) 88, 760-769.
Joto,N. et al., Int J Cancer (1997) 72, 680-686.
Kumazawa,E. et al., Cancer Chemother. Pharmacol. (1998) 42, 210-220.
DeJager, R., et al., Ann N Y Acad Sci (2000) 922, 260-273.
Inoue,K. et al., Polymer Drugs in the Clinical Stage, Edited by Maeda et al. (2003)145-153.
Kumazawa,E. et al., Cancer Sci (2004) 95, 168-175.
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発明が解決しようとする課題

0013

抗体による腫瘍の治療においては、抗体が抗原を認識して腫瘍細胞に結合しても抗腫瘍
効果が十分でない場合が観察されることもあり、より効果の高い抗腫瘍抗体が必要とされ
る場合がある。また、抗腫瘍性の低分子化合物においては、抗腫瘍効果に優れていても副
作用や毒性面等、安全性上の問題を有するものが多く、安全性をより高めてより優れた治
療効果を獲得することが課題となっている。すなわち、本発明は、抗腫瘍効果と安全性面
に優れる、優れた治療効果を有する抗腫瘍薬を獲得して提供することが課題である。

課題を解決するための手段

0014

本発明者らは、抗HER2抗体が腫瘍細胞を標的にできる抗体であること、すなわち、
腫瘍細胞を認識できる特性、腫瘍細胞に結合できる特性、腫瘍細胞に内在化できる特性、
腫瘍細胞に細胞障害性を有する特性、或は腫瘍細胞に対する殺細胞活性等を備えた抗体で
あることから、抗腫瘍性化合物であるエキサテカンを、リンカー構造部分を介して同抗体
に結合させた抗体−薬物コンジュゲートに変換することによって、抗腫瘍性化合物を腫瘍
細胞により確実に移動させて当該化合物の抗腫瘍効果を腫瘍細胞で特異的に発揮させるこ
とができること、したがって抗腫瘍効果の確実な発揮とともに抗HER2抗体の殺細胞効
果の増強が期待できること、さらには抗腫瘍性化合物の投与量を当該化合物の単体投与時
よりも減少させることができること、すなわちこれらによって通常細胞への抗腫瘍性化合
物の影響を緩和させることができるのでより高い安全性を達成できること、が可能と考え
た。
このために本発明者らは特定の構造のリンカーを創出し、このリンカーを介して抗HE
R2抗体とエキサテカンとを結合させた抗体−薬物コンジュゲートを獲得することに成功
し、同コンジュゲートが優れた抗腫瘍効果を発揮することを見出して本発明を完成させた
のである。

0015

すなわち本願発明は、
[1]次式



で示される抗腫瘍性化合物と抗HER2抗体とを次式:
-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-
で示される構造のリンカーを介して、抗HER2抗体のヒンジ部に存在するジスルフィド
結合部分において形成させたチオエーテル結合によって結合させたことを特徴とする抗体
−薬物コンジュゲートに関するものである。

0016

ここで、抗HER2抗体はL1の末端において結合し、抗腫瘍性化合物は、1位のアミ
ノ基の窒素原子結合部位として、-(CH2)n2-C(=O)-部分のカルボニル基に結合する。
式中、n1は、0から6の整数を示し、
n2は、0から5の整数を示し、
L1は、-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n3-C(=O)-を示し、
ここで、n3は、2から8の整数を示し、
L2は、-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、n4は、1から6の整数を示し
LPは、2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基を示し、
Laは、-O-又は単結合を示し、
-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:




で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。

0017

さらに本願発明は以下の各々に関するものでもある。
[2]LPのペプチド残基が、フェニルアラニン、グリシン、バリンリシン、シトル
ン、セリングルタミン酸アスパラギン酸から選ばれるアミノ酸からなるペプチド残基
である[1]に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[3]LPが、以下の群から選ばれるペプチド残基である[1]又は[2]に記載の抗体
−薬物コンジュゲート:
-GGF-、
-DGGF-、
-(D-)D-GGF-、
-EGGF-、
-GGFG-、
-SGGF-、
-KGGF-、
-DGGFG-、
-GGFGG-、
-DDGGFG-、
-KDGGFG-、及び
-GGFGGGF-;
ここで『(D-)D』はD-アスパラギン酸を示す。
[4]LPが、4個のアミノ酸で構成されるペプチド残基である[1]又は[2]に記載
の抗体−薬物コンジュゲート。
[5]LPが、テトラペプチド残基の-GGFG-である[1]〜[4]のいずれか一項に記載
の抗体−薬物コンジュゲート。

0018

[6]n3が2から5の整数であって、L2が単結合である[1]〜[5]のいずれか一項
に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[7]n3が2から5の整数であって、L2が-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-であり、n
4が2又は4である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[8]-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、4から7原子鎖長を有する部分構造であ
る[1]〜[7]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[9]-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、5又は6原子の鎖長を有する部分構造であ
る[1]〜[7]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[10]-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、
-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、又は
-NH-CH2CH2-O-C(=O)-である[1]〜[9]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュ
ゲート
[11]-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、又は
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-
である[1]〜[9]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

0019

[12]-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-に薬物を結合させた薬物−リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物−リンカー構造である[1]〜[9]のい
ずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)

-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。

0020

ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:




で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。
-(NH-DX)は次式:




で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基を示す。
-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。

0021

[13]-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-に薬物を結合させた薬物−リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物−リンカー構造である[1]〜[9]の
いずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)。

0022

ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-、-(NH-DX)、及び-GGFG-は、上記の通りである。

0023

[14]次式




で示される抗腫瘍性化合物と抗HER2抗体とを次式:
-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-
で示される構造のリンカーを介して、抗HER2抗体のヒンジ部に存在するジスルフィド
結合部分において形成させたチオエーテル結合を介して結合させたことを特徴とする抗体
−薬物コンジュゲート。
ここで、抗HER2抗体はL1の末端において結合し、抗腫瘍性化合物は-(CH2)n2-C(=
O)-部分のカルボニル基に結合する。
式中、n1は、0から6の整数を示し、
n2は、0から5の整数を示し、
L1は、-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n3-C(=O)-を示し、
ここで、n3は、2から8の整数を示し、
L2は、-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、n4は、1から6の整数を示し、
LPは、-GGFG-のテトラペプチド残基を示し、
Laは、-O-又は単結合を示し、
-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:




で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。

0024

[15]n1が3であり、n2が0であり、n3が2であり、L2が-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2C
H2-C(=O)-であって、n4が2であり、Laが単結合であるか、
n1が1であり、n2が1であり、n3が5であり、L2が単結合であり、Laが-O-であるか
、又は
n1が2であり、n2が1であり、n3が5であり、L2が単結合であり、Laが-O-である、
[14]に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[16]n3が2又は5であって、L2が単結合である[14]又は[15]に記載の抗体
−薬物コンジュゲート。
[17]n3が2又は5であって、L2が-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-であり、n4が
2又は4である[14]又は[15]に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[18]-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-が、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、又は
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-
である[14]〜[17]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

0025

[19]-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-に薬物を結合させた薬物−リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物−リンカー構造である[14]〜[18]
のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)

-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、

0026

ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:




で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。
-(NH-DX)は次式:




で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基を示す。
-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。

0027

[20]-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-に薬物を結合させた薬物−リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物−リンカー構造である[14]〜[18
]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-、-(NH-DX)、及び-GGFG-は、上記の通りである。

0028

[21]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が1から10
個の範囲である[1]〜[20]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[22]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個
の範囲である[1]〜[20]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[23]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個
の範囲である[1]〜[20]のいずれか一に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

0029

[24][1]〜[23]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を含有する医薬
[25][1]〜[23]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を含有する抗腫瘍薬及び/又は抗癌薬
[26]肺癌尿路上皮癌大腸癌前立腺癌、卵巣癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、胃癌、
間質腫瘍、子宮頸癌食道癌扁平上皮癌腹膜癌、肝臓癌肝細胞癌結腸癌直腸
癌、結腸直腸癌子宮内膜癌子宮癌唾液腺癌、腎臓癌外陰部癌、甲状腺癌陰茎
白血病悪性リンパ腫形質細胞種、骨髄腫、又は肉腫に適用するための[25]に記
載の抗腫瘍薬及び/又は抗癌薬。
[27][1]〜[23]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を活性成分とし、薬学的に許容される製剤成分とを含有する医薬組成
物。
[28]肺癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、胃癌、胃
腸間質腫瘍、子宮頸癌、食道癌、扁平上皮癌、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、結腸癌、直腸
癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌
、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞種、骨髄腫、又は肉腫に適用するための[27]に記
載の医薬組成物
[29][1]〜[23]のいずれか一項に記載の抗体−薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を投与することを特徴とする腫瘍及び/又は癌の治療方法

0030

[30]次式で示される化合物:
(maleimid-N-yl)-(CH2)n3-C(=O)-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-(NH-DX)
を抗HER2抗体又はその反応性誘導体と反応させ、該抗体のヒンジ部に存在するジスル
フィド結合部分においてチオエーテル結合を形成させる方法によって薬物−リンカー部分
を該抗体に結合させることを特徴とする抗体−薬物コンジュゲートの製造方法。

0031

式中、n3は、整数の2から8を示し、
L2は、-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、n4は、1から6の整数を示し、
LPは、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトルリン、セリン、グルタミ
ン酸、アスパラギン酸から選ばれる2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基を示
し、
n1は、0から6の整数を示し、
n2は、0から5の整数を示し、
Laは、-O-又は単結合を示し、
(maleimid-N-yl)-は、次式




で示される、窒素原子が結合部位となっている基である。
-(NH-DX)は、次式




で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基である。

0032

[31]薬物−リンカー部分を抗HER2抗体に結合させる方法が、該抗体を還元処理
て反応性誘導体に変換する方法である[30]に記載の製造方法。

0033

[32]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が1から10
個の範囲である[30]又は[31]に記載の製造方法。
[33]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個
の範囲である[30]又は[31]に記載の製造方法。
[34]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個
の範囲である[30]又は[31]に記載の製造方法。
[35][30]〜[34]のいずれかの製造方法によって得られる抗体−薬物コンジュ
ゲート。

0034

[36]抗HER2抗体を還元条件で処理した後に以下の群から選ばれる化合物を反応さ
せることを特徴とする、該抗体のヒンジ部のスルフィド結合部分においてチオエーテル
合を形成させて得られる抗体−薬物コンジュゲート:
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(
=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-
CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、及び
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)。

0035

ここで、(maleimid-N-yl)-は、次式




で示される、窒素原子が結合部位となっている基である。
-(NH-DX)は、次式




で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基である。
-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。

0036

[37]抗HER2抗体を還元条件で処理した後に以下の群から選ばれる化合物を反応さ
せることを特徴とする、該抗体のヒンジ部のスルフィド結合部分においてチオエーテル結
合を形成させて得られる抗体−薬物コンジュゲート:
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、及び
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)。
ここで、(maleimid-N-yl)-、-(NH-DX)、及び-GGFG-は、上記の通りである。

0037

[38]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が1から10
個の範囲である[36]又は[37]に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[39]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個
の範囲である[36]又は[37]に記載の抗体−薬物コンジュゲート。
[40]選択された1種の薬物−リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個
の範囲である[36]又は[37]に記載の抗体−薬物コンジュゲート。

発明の効果

0038

特定の構造のリンカーを介して抗腫瘍性化合物エキサテカンを結合させた抗HER2抗
体−薬物コンジュゲートによって、優れた抗腫瘍効果及び安全性を達成することができる

図面の簡単な説明

0039

ヒト化抗HER2モノクローナル抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
ヒト化抗HER2モノクローナル抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(27)又はトラスツズマブによるヒト乳癌株KPL−4細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸細胞移植後の日数縦軸腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(8)、(28)、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト胃癌株NCI−N87細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(8)、(29)、(30)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト乳癌株JIMT−1細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(31)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト膵臓癌株Capan−1細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)によるヒト胃癌株NCI−N87細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト乳癌株ST225細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト乳癌株ST910細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト大腸癌株CTG−0401細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト非小細胞肺癌株CTG−0860細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト胆管癌株CTG−0927細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト食道癌株CTG−0137細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
抗体−薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト卵巣癌株SK−OV−3細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。

0040

以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお
、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、こ
れによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

0041

本発明の抗HER2抗体−薬物コンジュゲートは、抗HER2抗体に、リンカー構造部
分を介して抗腫瘍性化合物を結合させた抗腫瘍性薬物であり、以下に詳細に説明する。

0042

[抗体]
本発明の抗HER2抗体−薬物コンジュゲートに使用される抗HER2抗体は、いずれ
の種に由来してもよいが、好ましくは、ヒト、ラット、マウス、及びウサギを例示できる
。抗体がヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化する
ことが好ましい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体
であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
抗HER2抗体は腫瘍細胞を標的にできる抗体であり、すなわち腫瘍細胞を認識できる
特性、腫瘍細胞に結合できる特性、腫瘍細胞内に取り込まれて内在化する特性、そして腫
瘍細胞に対する殺細胞活性等を備えており、抗腫瘍活性を有する化合物を、リンカーを介
して結合させて抗体−薬物コンジュゲートとすることができる。
抗体の腫瘍細胞への結合性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。腫瘍細胞内
への抗体の取り込みは、(1)治療抗体に結合する二次抗体蛍光標識)を用いて細胞内
に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiati
on (2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細
胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 1
5, 5268-5282,December 2004)、又は(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて
、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセ
イ(Bio Techniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンと
しては、ジフテテリア毒素の触媒領域プロテインGとのリコンビナント複合蛋白質も使
用可能である。
抗体の抗腫瘍活性は、invitroでは、細胞の増殖の抑制活性を測定することで確認でき
る。例えば、抗体の標的蛋白質を過剰発現している癌細胞株を培養し、培養系に種々の濃
度で抗体を添加し、フォーカス形成、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対する抑制活
性を測定することができる。In vivoでは、例えば、標的蛋白質を高発現している腫瘍細
胞株を移植したヌードマウスに抗体を投与し、癌細胞の変化を測定することによって、抗
腫瘍活性を確認できる。
抗体−薬物コンジュゲートは抗腫瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体
自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、必須ではない。抗腫瘍性化合物の細胞障
害性を腫瘍細胞において特異的・選択的に発揮させる目的からは、抗体が内在化して腫瘍
細胞内に移行する性質のあることが重要であり、好ましい。

0043

抗HER2抗体は、公知の手段によって取得することができる。例えば、この分野で通
常実施される方法を用いて、抗原となるポリペプチド動物に免疫し、生体内に産生され
る抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原の由来はヒトに限定されず
、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来する抗原を動物に免疫することもできる。こ
の場合には、取得された異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差性試験することに
よって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256, p.495-497;K
ennet, R.ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367,Plenum Press, N.Y.(1980))に従っ
て、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞ミエローマ細胞とを融合させることによ
ってハイブリドーマ樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
なお、抗原は抗原蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に産生させ
ることによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現可能なベクターを作製
し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現した抗原を精製すればよい。上
記の遺伝子操作による抗原発現細胞、或は抗原を発現している細胞株、を動物に免疫する
方法を用いることによっても抗体を取得できる。

0044

本発明で使用できる抗HER2抗体は、特に制限はないが、例えば、以下の特性を有す
るものが望ましい。
(1)以下の特性を有することを特徴とする抗HER2抗体;
(a)HER2に特異的に結合する。
(b)HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する。
(2)HER2の細胞外ドメインに結合する上記(1)に記載の抗体。
(3)モノクローナル抗体である上記(1)又は(2)に記載の抗体。
(4)抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活
性を有する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の抗体。
(5)マウスモノクローナル抗体キメラモノクローナル抗体、又はヒト化モノクローナ
ル抗体である、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の抗体。
(6)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配
列からなる軽鎖を含んでなるヒト化モノクローナル抗体である上記(1)乃至(5)のい
ずれかに記載の抗体。
(7)重鎖カルボキシル末端リシン残基欠失している上記(1)乃至(6)のいずれ
かに記載の抗体。
(8)配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖
及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を
含んでなる上記(7)に記載の抗体。
(9)上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを含
有する発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を培養する工程及び当該工程で得ら
れた培養物から目的の抗体を採取する工程を含む当該抗体の製造方法によって得られる抗
体。

0045

以下に、本発明において使用される抗HER2抗体について説明する。
本明細書において、「癌」と「腫瘍」は同じ意味に用いている。
本明細書において、「遺伝子」という語には、DNAのみならずそのmRNA、cDN
A及びそのcRNAも含まれる。
本明細書において、「ポリヌクレオチド」という語は核酸と同じ意味で用いており、D
NA、RNA、プローブオリゴヌクレオチド、及びプライマーも含まれる。
本明細書において、「ポリペプチド」「蛋白質」「蛋白」は区別せずに用いている。
本明細書において、「細胞」には、動物個体内の細胞、培養細胞も含んでいる。
本明細書において、「HER2」という語は、HER2蛋白と同じ意味で用いている。
本明細書において、抗HER2抗体とは、特に制限はないが、ペルツズマブ(国際公開
01/00245号)、トラスツズマブ(米国特許第5821337号)等を挙げること
ができるが、トラスツズマブが好ましい。但し、HER2に特異的に結合する、より好ま
しくは、HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する抗
HER2抗体であればこれに限らない。
本明細書において、「トラスツズマブ」はHERCEPTIN(登録商標)、huMA
b4D5−8、rhuMAb4D5−8と呼ばれることもあり、配列番号1(図1)にお
いてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2(図2
)においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなるヒ
ト化抗体である。
本明細書において、「特異的に結合」という語は、非特異的な吸着ではない結合を意味
する。結合が特異的であるか否かの判定基準としては、例えば、解離定数(以下、「KD
」)を挙げることができる。好適な抗体のHER2蛋白に対するKD値は1×10−5M
以下、5×10−6M以下、2×10−6M以下、又は1×10−6M以下;より好適に
は5×10−7M以下、2×10−7M以下、又は1×10−7M以下;より一層好適に
は5×10−8M以下、2×10−8M以下、又は1×10−8M以下;最適には5×1
0−9M以下、2×10−9M以下、又は1×10−9M以下である。HER2蛋白と抗
体との結合は、Surface Plasmon Resonance法、ELISA法
RIA法等公知の方法を用いて測定することができる。
本明細書における「CDR」とは、相補性決定領域(CDR:Complemetar
ity deterring region)を意味する。抗体分子の重鎖及び軽鎖には
それぞれ3箇所のCDRがあることが知られている。CDRは、超可変領域(hyper
variable domain)とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあっ
て、一次構造変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造
上において、それぞれ3ヶ所に分離している。本明細書においては、抗体のCDRについ
て、重鎖のCDRを重鎖アミノ酸配列アミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CD
RH3と表記し、軽鎖のCDRを軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CD
RL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する
抗原に対する特異性を決定している。
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、市販のハ
イブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Sol
ution(クロンテック社製)中、68℃でハイブリダイズすること、又は、DNAを
固定したフィルターを用いて0.7−1.0MのNaCl存在下、68℃でハイブリダイ
ゼーションを行った後、0.1−2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150mM
NaCl、15mMクエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することに
よって同定することができる条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう

0046

1.HER2
HER2はヒト上皮細胞増殖因子受容体2型関連癌遺伝子として同定された代表的な増
因子受容体型の癌遺伝子産物のひとつであり、分子量185kDaのチロシンキナーゼ
ドメインを持つ膜貫通型受容体蛋白である。HER1(EGFR,ErbB−1)、HE
R2(neu,ErbB−2)、HER3(ErbB−3)、HER4(ErbB−4)
からなるEGFRファミリーのひとつであり、ホモ或は他のEGFRであるHER1、H
ER3、又はHER4とのヘテロダイマー形成により細胞内チロシン残基が自己リン酸化
されて活性化することにより、正常細胞及び腫瘍細胞において細胞の増殖・分化・生存に
重要な役割を果たすことが知られている。
本発明で用いるHER2蛋白は、ヒト、非ヒト哺乳動物(ラット、マウス等)のHER
2発現細胞から直接精製して使用するか、或は当該細胞の細胞膜画分を調製して使用する
ことができ、また、HER2をin vitroにて合成する、或は遺伝子操作によって宿主細胞
に産生させることによって得ることができる。遺伝子操作では、具体的には、HER2
cDNAを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写翻訳に必要な酵素、基質及びエネ
ルギー物質を含む溶液中で合成する、或は他の原核生物、又は真核生物の宿主細胞を形質
転換してHER2を発現させることによって、該蛋白質を得ることができる。また、前記
の遺伝子操作によるHER2発現細胞、或はHER2を発現している細胞株をHER2蛋
白として使用することも可能である。
HER2のDNA配列及びアミノ酸配列は公的データベース上に公開されており、例え
ば、M11730(Genbank)、NP_004439.2(NCBI)等のアク
ッション番号により参照可能である。
また、上記HER2のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失及び
/又は付加されたアミノ酸配列からなり、当該蛋白質と同等の生物活性を有する蛋白質も
HER2に含まれる。
ヒトHER2蛋白は、N末端22アミノ酸残基から成るシグナル配列、630アミノ酸
残基から成る細胞外ドメイン、23アミノ酸残基から成る細胞膜貫通ドメイン、580ア
ミノ酸残基から成る細胞内ドメインで構成されている。

0047

2.抗HER2抗体の製造
本発明のHER2に対する抗体は、例えば、この分野で通常実施される方法に従って、
HER2又はHER2のアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを動物に免疫し
、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原となる
HER2の生物種はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来するH
ER2、ラットp185neu等を動物に免疫することもできる。この場合には、取得さ
れた異種HER2に結合する抗体とヒトHER2との交差性を試験することによって、ヒ
トの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein,Nature
(1975)256,p.495−497;Kennet,R.ed.,Monoclo
nal Antibodies,p.365−367,Plenum Press,N.
Y.(1980))に従って、HER2に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエロ
マ細胞とを融合させることによってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得る
こともできる。
なお、抗原となるHER2はHER2遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に発現させ
ることによって得ることができる。
具体的には、HER2遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入し
て該遺伝子を発現させ、発現したHER2を精製すればよい。
また、上記の遺伝子操作によるHER2発現細胞、或はHER2を発現している細胞株
をHER2蛋白として使用することも可能である。抗HER2抗体は、公知の手段によっ
て取得することができる。以下、具体的にHER2に対する抗体の取得方法を説明する。

0048

(1)抗原の調製
抗HER2抗体を作製するための抗原としては、HER2又はその少なくとも6個の連
続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、或はこれらに任意のアミノ酸配列や担体
が付加された誘導体を挙げることができる。
HER2は、ヒトの腫瘍組織或は腫瘍細胞から直接精製して使用することができ、また
、HER2をin vitroにて合成する、或は遺伝子操作によって宿主細胞に産生させること
によって得ることができる。
遺伝子操作では、具体的には、HER2のcDNAを発現可能なベクターに組み込んだ
後、転写と翻訳に必要な酵素、基質及びエネルギー物質を含む溶液中で合成する、或は他
の原核生物又は真核生物の宿主細胞を形質転換してHER2を発現させることによって、
抗原を得ることができる。
また、膜蛋白質であるHER2の細胞外領域と抗体の定常領域とを連結した融合蛋白質
を適切な宿主ベクター系において発現させることによって、分泌蛋白質として抗原を得
ることも可能である。
HER2のcDNAは、例えばHER2のcDNAを発現しているcDNAライブラリ
ーを鋳型として、HER2 cDNAを特異的に増幅するプライマーを用いてポリメラ
連鎖反応PCR;Saiki,R. K.,et al.,Science(198
8)239,p.487−489 参照)を行なう、いわゆるPCR法によって取得する
ことができる。
ポリペプチドのインビトロ(in vitro)合成としては、例えばロシュダイアグノス
ティックス社製のラピッドトランスレーションステムRTS)を挙げることができる
が、これに限定されない。
原核細胞の宿主としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯
草菌(Bacillus subtilis)等を挙げることができる。目的の遺伝子を
これらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわ
複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。
また、ベクターとしては、形質転換細胞表現形質表現型)の選択性を付与することが
できる配列を有するものが好ましい。
真核細胞の宿主細胞には、脊椎動物昆虫酵母等の細胞が含まれ、脊椎動物細胞とし
ては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.Cell(1981
)23,p.175−182、ATCCCRL−1650;ATCC:America
n Type Culture Collection)、マウス線維芽細胞NIH3T
3(ATCC No.CRL−1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO
細胞、ATCC CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.
and Chasin,L.A.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(19
80)77,p.4126−4220)等がよく用いられているが、これらに限定されな
い。
上記のようにして得られる形質転換体は、この分野で通常実施される方法に従って培養
することができ、該培養によって細胞内又は細胞外に目的のポリペプチドが産生される。
該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを
適宜選択でき、大腸菌であれば、例えば、LB培地に必要に応じて、アンピシリン等の抗
生物質やIPMGを添加して用いることができる。
上記培養によって、形質転換体の細胞内又は細胞外に産生される組換え蛋白質は、該蛋
白質物理的性質や化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法によって分離・精製
することができる。
該方法としては、具体的には例えば、通常の蛋白質沈殿剤による処理、限外濾過、分子
ふるいクロマトグラフィーゲル濾過)、吸着クロマトグラフィーイオン交換クロマト
グラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の各種液体クロマトグラフィー透析
法、これらの組合せ等を例示できる。
また、発現させる組換え蛋白質に6残基からなるヒスチジンタグを繋げることによって
ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。或は、発現させる組
換え蛋白質にIgGFc領域を繋げることによって、プロテインAカラムで効率的に精
製することができる。
上記方法を組合せることによって容易に高収率高純度で目的とするポリペプチドを大
量に製造できる。
上記に述べた形質転換体自体を抗原として使用することも可能である。また、HER2
を発現する細胞株を抗原として使用することも可能である。この様な細胞株としては、ヒ
ト乳癌株SK−BR−3、BT−474、KPL−4、又はJIMT−1、ヒト胃癌株N
CI−N87、及びヒト卵巣癌株SK−OV−3を挙げることができるが、HER2を発
現する限り、これらの細胞株に限定されない。

0049

(2) 抗HER2モノクローナル抗体の製造
HER2と特異的に結合する抗体の例として、HER2と特異的に結合するモノクロー
ナル抗体を挙げることができるが、その取得方法は、以下に記載する通りである。
モノクローナル抗体の製造にあたっては、一般に下記の様な作業工程が必要である。
すなわち、
(a)抗原として使用する生体高分子の精製、又は抗原発現細胞の調製
(b)抗原を動物に注射することによって免疫した後、血液を採取してその抗体価検定
して脾臓摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程
(c)骨髄腫細胞(以下「ミエローマ」という)の調製
(d)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング
(g)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培
養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育
(h)この様にして製造されたモノクローナル抗体の生理活性、及びその結合特異性の検
討、或は標識試薬としての特性の検定
等である。
以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法は
これに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞及びミエローマを使用することもで
きる。

0050

(a)抗原の精製
抗原としては、前記した様な方法で調製したHER2又はその一部を使用することがで
きる。
また、HER2発現組換え体細胞によって調製した膜画分、又はHER2発現組換え体
細胞自身、さらに、当業者に周知の方法を用いて化学合成した本発明の蛋白質の部分ペプ
チドを抗原として使用することもできる。
さらに、HER2発現細胞株を抗原として使用することもできる。

0051

(b)抗体産生細胞の調製
工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全又は不完全アジュバント、或はカリ
ョウバンの様な助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。この他に、抗原発現
細胞を免疫原として実験動物に免疫する方法もある。実験動物は公知のハイブリドーマ作
製法で用いられる動物を支障なく使用することができる。具体的には、例えばマウス、ラ
ット、ヤギヒツジウシウマ等を使用することができる。ただし、摘出した抗体産生
細胞と融合させるミエローマ細胞の入手容易性等の観点から、マウス又はラットを被免疫
動物とするのが好ましい。
また、実際に使用するマウス及びラットの系統には特に制限はなく、マウスの場合には
、例えば各系統A、AKR、BALB/c、BDP、BA、CE、C3H、57BL、C
57BL、C57L、DBA、FLHTH、HT1、LP、NZB、NZW、RF、R
III、SJL、SWR、WB、129等が、またラットの場合には、例えば、Wis
tar、Low、Lewis、Sprague、Dawley、ACI、BN、Fisc
her等を用いることができる。
これらのマウス及びラットは、例えば、日本クレア株式会社、日本チャ−ルス・リバー
株式会社等の実験動物飼育販売業者より入手することができる。
被免疫動物としては、後述のミエローマ細胞との融合適合性案すれば、マウスでは
BALB/c系統が、ラットではWistar及びLow系統が特に好ましい。
また、抗原のヒトとマウスでの相同性を考慮し、自己抗体を除去する生体機構を低下さ
せたマウス、すなわち自己免疫疾患マウスを用いることも好ましい。
なお、これらのマウス又はラットの免疫時の週齢は、好ましくは5〜12週齢、さらに
好ましくは6〜8週齢である。
HER2又はこの組換え体によって動物を免疫するには、例えば、Weir,D.M.
,Handbook of Experimental Immunology Vol
.I.II.III.,Blackwell Scientific Publicat
ions,Oxford(1987);Kabat,E.A.and Mayer,M.
M.,Experimental Immunochemistry,Charles
C Thomas Publisher Springfield,Illinois(
1964)等に詳しく記載されている公知の方法を用いることができる。
これらの免疫法のうち、本発明において好適な方法を具体的に示せば、例えば以下のと
おりである。
すなわち、まず、抗原である膜蛋白質画分、又は抗原を発現させた細胞を動物の皮内又
腹腔内に投与する。ただし、免疫効率を高めるためには両者の併用が好ましく、前半は
皮内投与を行い、後半又は最終回のみ腹腔内投与を行うと、特に免疫効率を高めることが
できる。
抗原の投与スケジュールは、被免疫動物の種類、個体差等によって異なるが、一般には
抗原投与回数3〜6回、投与間隔2〜6週間が好ましく、投与回数3〜4回、投与間隔
2〜4週間がさらに好ましい。
また、抗原の投与量は、動物の種類、個体差等によって異なるが、一般には0.05〜
5mg、好ましくは0.1〜0.5mg程度とする。
追加免疫は、以上の通りの抗原投与の1〜6週間後、好ましくは1〜4週間後、さらに
好ましくは1〜3週間後に行う。免疫原が細胞の場合には、1×106乃至1×107個
の細胞を使用する。
なお、追加免疫を行う際の抗原投与量は、動物の種類、大きさ等によって異なるが、一
般に、例えばマウスの場合には0.05〜5mg、好ましくは0.1〜0.5mg、さら
に好ましくは0.1〜0.2mg程度とする。免疫原が細胞の場合には、1×106乃至
1×107個の細胞を使用する。
上記追加免疫から1〜10日後、好ましくは2〜5日後、さらに好ましくは2〜3日後
に被免疫動物から抗体産生細胞を含む脾臓細胞又はリンパ球無菌的に取り出す。その際
に抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給源として用いれば
、以後の操作の効率を高めることができる。
ここで用いられる抗体価の測定法としては、例えば、RIA法又はELISA法を挙げ
ることができるがこれらの方法に制限されない。本発明における抗体価の測定は、例えば
ELISA法によれば、以下に記載する様な手順によって行うことができる。
まず、精製又は部分精製した抗原をELISA96穴プレート等の固相表面に吸着さ
せ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係な蛋白質、例えばウシ血清アル
ブミン(BSA)によって覆い、該表面を洗浄後、第一抗体として段階希釈した試料(例
えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中の抗体を結合させる。
さらに第二抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加えてマウス抗体に結
合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定
することによって、抗体価を算出する。
被免疫動物の脾臓細胞又はリンパ球からの抗体産生細胞の分離は、公知の方法(例えば
、Kohler et al.,Nature(1975)256,p.495;Koh
ler et al.,Eur.J.Immunol.(1977)6,p.511;M
ilstein et al.,Nature(1977),266,p.550;Wa
lsh,Nature,(1977)266,p.495)に従って行うことができる。
例えば、脾臓細胞の場合には、脾臓細切して細胞をステンレスメッシュ濾過した後、
イーグル最小必須培地MEM)に浮遊させて抗体産生細胞を分離する一般的方法を採用
することができる。

0052

(c)骨髄腫細胞(以下、「ミエローマ」という)の調製
細胞融合に用いるミエローマ細胞には特段の制限はなく、公知の細胞株から適宜選択し
て用いることができる。ただし、融合細胞からハイブリドーマを選択する際の利便性を考
慮して、その選択手続確立しているHGPRT(Hypoxanthine−guan
ine phosphoribosyl transferase)欠損株を用いるのが
好ましい。
すなわち、マウス由来のX63−Ag8(X63)、NS1−ANS/1(NS1)、
P3X63−Ag8.U1(P3U1)、X63−Ag8.653(X63.653)、
SP2/0−Ag14(SP2/0)、MPC11−45.6TG1.7(45.6TG
)、FO、S149/5XXO、BU.1等、ラット由来の210.RSY3.Ag.1
.2.3(Y3)等、ヒト由来のU266AR(SKO−007)、GM1500・GT
G−A12(GM1500)、UC729−6、LICR−LOW−HMy2(HMy2
)、8226AR/NIP4−1(NP41)等である。これらのHGPRT欠損株は例
えば、ATCC等から入手することができる。
これらの細胞株は適当な培地、例えば8−アザグアニン培地(RPMI−1640培地
グルタミン2−メルカプトエタノールゲンタマイシン、及びウシ胎児血清(以下「
FBS」という)を加えた培地に8−アザグアニンを加えた培地)、イスコフ改変ダル
ッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium
;以下「IMDM」という)、又はダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s
Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養
するが、細胞融合の3乃至4日前に正常培地(例えば、10%FCSを含むASF10
4培地(味の素株式会社製))で継代培養し、融合当日に2×107以上の細胞数を確保
しておく。

0053

(d)細胞融合
抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法(Weir,D.M.,Han
dbookof Experimental Immunology Vol.I.II
.III.,Blackwell Scientific Publications,
Oxford(1987);Kabat,E.A.and Mayer,M.M.,Ex
perimental Immunochemistry,Charles C Tho
mas Publisher Springfield,Illinois(1964)
等)に従い、細胞の生存率極度に低下させない程度の条件下で適宜実施することができ
る。
その様な方法として、例えば、ポリエチレングリコール等の高濃度ポリマー溶液中で抗
産生細胞とミエローマ細胞とを混合する化学的方法電気的刺激を利用する物理的方法
等を用いることができる。このうち、上記化学的方法の具体例を示せば以下のとおりであ
る。
すなわち、高濃度ポリマー溶液としてポリエチレングリコールを用いる場合には、分子
量1500〜6000、好ましくは2000〜4000のポリエチレングリコール溶液
で、30〜40℃、好ましくは35〜38℃の温度で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを
1〜10分間、好ましくは5〜8分間混合する。

0054

(e)ハイブリドーマ群の選択
上記細胞融合によって得られるハイブリドーマの選択方法は特に制限はないが、通常H
AT(ヒポキサンチンアミノプテリンチミジン選択法(Kohler et al
.,Nature(1975)256,p.495;Milstein et al.,
Nature(1977)266,p.550)が用いられる。
この方法は、アミノプテリンで生存し得ないHGPRT欠損株のミエローマ細胞を用い
てハイブリドーマを得る場合に有効である。すなわち、未融合細胞及びハイブリドーマを
HAT培地で培養することによって、アミノプテリンに対する耐性を持ち合わせたハイブ
ドーマのみを選択的に残存させ、かつ増殖させることができる。

0055

(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング)
ハイブリドーマのクローニング法としては、例えばメチルセルロース法、軟アガロース
法、限界希釈法等の公知の方法を用いることができる(例えばBarbara, B.M
.and Stanley,M.S.:Selected Methodsin Ce
llular Immunology,W.H.Freeman and Compan
y,San Francisco(1980)参照)。これらの方法のうち、特にメチル
セルロース法等の三次元培養法が好適である。例えば、細胞融合によって形成されたハイ
ブリドーマ群をClonaCell−HY Selection Medium D(S
temCell Technologies社製 #03804)等のメチルセルロース
培地に懸濁して培養し、形成されたハイブリドーマコロニー回収することでモノクロー
ンハイブリドーマの取得が可能である。回収された各ハイブリドーマコロニーを培養し、
得られたハイブリドーマ培養上清中に安定して抗体価の認められたものをHER2モノ
ローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。

0056

(g)ハイブリドーマの培養によるモノクローナル抗体の調製
このようにして選択されたハイブリドーマは、これを培養することによって、モノクロ
ーナル抗体を効率よく得ることができるが、培養に先立ち、目的とするモノクローナル
体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることが望ましい。
このスクリーニングにはそれ自体既知の方法が採用できる。
本発明における抗体価の測定は、例えば上記(b)の項目で説明したELISA法によ
って行うことができる。
以上の方法によって得たハイブリドーマは、液体窒素中又は−80℃以下の冷凍庫中に
凍結状態で保存することができる。
クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養
される。
大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、或はスピナー培養で行われる。この大量培
養における上清から、ゲル濾過等、当業者に周知の方法を用いて精製することによって、
本発明の蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。
また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)、或はNu/Nuマウスの腹腔
内にハイブリドーマを注射し、該ハイブリド−マを増殖させることによって、本発明のモ
クローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。
腹腔内に投与する場合には、事前(3〜7日前)に2,6,10,14−テトラメチル
ペンタデカン(2,6,10,14−tetramethyl pentadecane
プリスタン)等の鉱物油を投与すると、より多量の腹水が得られる。
例えば、ハイブリドーマと同系統のマウスの腹腔内に予め免疫抑制剤を注射し、T細胞
不活性化した後、20日後に106〜107個のハイブリドーマ・クローン細胞を、血
清を含まない培地中に浮遊(0.5ml)させて腹腔内に投与し、通常腹部膨満し、腹
水がたまったところでマウスより腹水を採取する。この方法によって、培養液中に比べて
約100倍以上の濃度のモノクローナル抗体が得られる。
上記方法によって得たモノクローナル抗体は、例えばWeir,D.M.:Handb
ook of Experimental Immunology,Vol.I,II,
III,Blackwell Scientific Publications,Ox
ford(1978)に記載されている方法で精製することができる。
かくして得られるモノクローナル抗体は、HER2に対して高い抗原特異性を有する。
本発明のモノクローナル抗体としては、特に制限はないが、マウスモノクローナル抗体4
D5(ATCCCRL 10463)を挙げることができる。

0057

(h)モノクローナル抗体の検定
かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスの決定は以下のよ
うに行うことができる。
まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、
又はRIA法を挙げることができる。
オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮
作が必要である。
一方、ELISA法又はRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と
反応させ、さらに第二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対
応する抗体を用いることによって、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同
定することが可能である。
また、さらに簡便な方法として、市販の同定用のキット(例えば、マウスタイパーキッ
ト;バイオラッド社製)等を利用することもできる。
さらに、蛋白質の定量は、フォーリンロウリー法、及び280nmにおける吸光度(1
.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/ml)より算出する方法によって行うこ
とができる。
さらに、(2)の(a)乃至(h)の工程を再度実施して別途に独立してモノクローナ
ル抗体を取得した場合においても、(g)の工程で得られた抗HER2抗体と同等の細胞
傷害活性を有する抗体を取得することが可能である。この様な抗体の一例として、(g)
の工程で得られた抗HER2抗体と同一のエピトープに結合する抗体を挙げることができ
る。新たに作製されたモノクローナル抗体が、前記抗HER2抗体の結合する部分ペプチ
ド又は部分立体構造に結合すれば、該モノクローナル抗体が同一のエピトープに結合する
と判定することができる。また、前記抗HER2抗体のHER2に対する結合に対して該
モノクローナル抗体が競合する(即ち、該モノクローナル抗体が、前記抗HER2抗体と
HER2の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列又は
構造が決定されていなくても、該モノクローナル抗体が抗HER2抗体と同一のエピトー
プに結合すると判定することができる。エピトープが同一であることが確認された場合、
該モノクローナル抗体が前記抗HER2抗体と同等の抗原結合能又は生物活性を有してい
ることが強く期待される。

0058

(3) その他の抗体
本発明の抗体には、上記HER2に対するモノクローナル抗体に加え、ヒトに対する異
抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば
、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト抗体等も
含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウ
ス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げるこ
とができる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,6851−
6855,(1984)参照)。本発明のキメラ抗体としては、特に制限はないが、ヒト
IgG1又はIgG2の重鎖定常領域を含むキメラ抗体4D5を挙げることができる。
ヒト化抗体としては、相補性決定領域(CDR;complementarity d
etermining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nat
ure(1986)321,p.522−525参照)、CDR移植法によって、CDR
の配列に加えて一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公
開第90/07861号)、遺伝子変換突然変異誘発(gene conversion
mutagenesis)ストラテジーを用いてヒト化した抗体(米国特許第5821
337号)を挙げることができる。

0059

なお、本明細書における「数個」とは、1乃至10個、1乃至9個、1乃至8個、1乃
至7個、1乃至6個、1乃至5個、1乃至4個、1乃至3個、又は1若しくは2個を意味
する。

0060

また、本明細書におけるアミノ酸の置換としては保存的アミノ酸置換が好ましい。保存
アミノ酸置換とは、アミノ酸側鎖に関連のあるアミノ酸グループ内で生じる置換である
。好適なアミノ酸グループは、以下のとおりである:酸性グループ=アスパラギン酸、グ
ルタミン酸;塩基性グループ=リシン、アルギニンヒスチジン非極性グループ=アラ
ニン、バリン、ロイシンイソロイシンプロリン、フェニルアラニン、メチオニン、ト
リプファン;及び非帯電極性ファミリー=グリシン、アスパラギン、グルタミン、シス
テイン、セリン、スレオニン、チロシン。他の好適なアミノ酸グループは次のとおりであ
る:脂肪族ヒドロキシグループ=セリン及びスレオニン;アミド含有グループ=アスパラ
ギン及びグルタミン;脂肪族グループ=アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;
並びに芳香族グループ=フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン。かかるアミノ
酸置換は元のアミノ酸配列を有する物質の特性を低下させない範囲で行うのが好ましい。

0061

上記の重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列と高い相同性を示す配列を組み合わせる
ことによって、上記の各抗体と同等の生物活性を有する抗体を選択することが可能である
。この様な相同性は、一般的には80%以上の相同性であり、好ましくは90%以上の相
同性であり、より好ましくは95%以上の相同性であり、最も好ましくは99%以上の相
同性である。また、重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列に1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠
失又は付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の各抗体と同等の生
物活性を有する抗体を選択することが可能である。なお、本明細書における「相同性」は
同一性」と同じ意味で使用している。

0062

二種類のアミノ酸配列間の相同性は、Blast algorithm versio
n 2.2.2(Altschul, Stephen F.,Thomas L.Ma
dden,Alejandro A.Schaeffer, Jinghui Zhan
g, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J
.Lipman(1997),「GappedBLASTand PSI−BLAS
T:a new generation of protein database s
earch programs」,Nucleic AcidsRes.25:338
9−3402)のデフォルトパラメーターを使用することによって決定することができる
。Blast algorithmは、インターネットでwww.ncbi.nlm.nih.gov/blastに
アクセスすることによっても使用することができる。

0063

本発明の抗体としては、さらに、HER2に結合する、ヒト抗体を挙げることができる
。抗HER2ヒト抗体とは、ヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列のみを有するヒト抗体を
意味する。抗HER2ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片
を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka,K.et al.,Na
ture Genetics(1997)16,p.133−143;Kuroiwa,
Y.et.al.,Nucl.AcidsRes.(1998)26,p.3447−
3448;Yoshida,H.et.al.,Animal Cell Techno
logy:Basic and Applied Aspects vol.10,p.
69−73(Kitagawa,Y.,Matsuda,T.and Iijima,S
.eds.),Kluwer Academic Publishers,1999;T
omizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(
2000)97,p.722−727等を参照。)によって取得することができる。

0064

この様なヒト抗体産生マウスは、具体的には、内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺
子座破壊され、代わりに酵母人工染色体(Yeast artificial ch
romosome,YAC)ベクター等を介してヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝
子座が導入された遺伝子組み換え動物として、ノックアウト動物及びトランスジェニック
動物の作製及びこれらの動物同士を掛け合わせることによって作り出すことができる。
また、遺伝子組換え技術によって、その様なヒト抗体の重鎖及び軽鎖の各々をコードす
るcDNA、好ましくは該cDNAを含むベクターによって真核細胞を形質転換し、遺伝
子組換えヒトモノクローナル抗体を産生する形質転換細胞を培養することによって、この
抗体を培養上清中から得ることもできる。
ここで、宿主としては例えば真核細胞、好ましくはCHO細胞、リンパ球やミエローマ
等の哺乳動物細胞を用いることができる。

0065

また、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得
する方法(Wormstone,I.M.et.al,Investigative O
phthalmology & Visual Science.(2002)43(7
),p.2301−2308;Carmen,S.et.al.,Briefings
in Functional Genomics and Proteomics(20
02),1(2),p.189−203;Siriwardena,D.et.al.,
Ophthalmology(2002)109(3),p.427−431等参照。)
も知られている。
例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させ
て、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Bio
technology(2005),23,(9),p.1105−1116)を用いる
ことができる。
抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結
合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。
抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクタ
ーを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによってヒト抗体を取得することがで
きる(国際公開第92/01047号、同92/20791号、同93/06213号、
同93/11236号、同93/19172号、同95/01438号、同95/153
88号;Annu.Rev.Immunol(1994)12,p.433−455;N
ature Biotechnology(2005)23(9),p.1105−11
16)。

0066

抗体の性質を比較する際の別の指標の一例としては、抗体の安定性を挙げることができ
る。示差走査カロリメトリー(DSC)は、蛋白の相対的構造安定性のよい指標となる熱
変性中点(Tm)を素早く、また正確に測定することができる装置である。DSCを用い
Tm値を測定し、その値を比較することによって、熱安定性の違いを比較することがで
きる。抗体の保存安定性は、抗体の熱安定性とある程度の相関を示すことが知られており
(Lori Burton,et.al.,Pharmaceutical Devel
opment and Technology(2007)12,p.265−273)
、熱安定性を指標に、好適な抗体を選抜することができる。抗体を選抜するための他の指
標としては、適切な宿主細胞における収量が高いこと、及び水溶液中での凝集性が低いこ
とを挙げることができる。例えば収量の最も高い抗体が最も高い熱安定性を示すとは限ら
ないので、以上に述べた指標に基づいて総合的に判断して、ヒトへの投与に最も適した抗
体を選抜する必要がある。

0067

本発明の抗体には抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明の抗体に化学的
は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格
化学部分の結合、N−結合又はO−結合炭水化物鎖化学修飾体等が含まれる。生物学
的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N−結合又はO−結合への糖鎖付加N末又はC
末のプロセッシング脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化)された
もの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加し
たもの等が含まれる。また、本発明の抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標
識されたもの、例えば、酵素標識体蛍光標識体アフィニティ標識体もかかる修飾物
意味に含まれる。この様な本発明の抗体の修飾物は、抗体の安定性及び血中滞留性の改善
、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。

0068

また、本発明の抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコー
ス化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖
飾の調節技術としては、国際公開第99/54342号、同00/61739号、同02
/31140号等が知られているが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体に
は当該糖鎖修飾が調節された抗体も含まれる。
抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な
宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。抗体遺伝子の具体例としては
、本明細書に記載された抗体の重鎖配列をコードする遺伝子、及び軽鎖配列をコードする
遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。宿主細胞を形質転換する際には、重鎖
配列遺伝子と軽鎖配列遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり
、また別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。
真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞植物細胞真核微生物を用いることが
できる。特に動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(G
luzman,Y.Cell(1981)23,p.175−182、ATCCCRL
−1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL−1658)や
チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL−61)のジヒドロ
葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.Proc.N
atl.Acad.Sci.U.S.A.(1980)77,p.4126−4220)
を挙げることができる。
原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。
これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換によって導入し、形質転換された細胞
をin vitroで培養することによって抗体が得られる。当該培養においては抗体の配列によ
って収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬とし
ての生産が容易なものを選別することが可能である。よって、本発明の抗体には、上記形
質転換された宿主細胞を培養する工程、及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体又
は当該抗体の機能性断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体の製造方法によ
って得られる抗体も含まれる。

0069

なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失
することが知られており(Journal of Chromatography A,
705:129−134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン
、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基
アミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry
,360:75−83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗
体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用等)には
影響を及ぼさない。したがって、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及び当該
抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2のアミノ酸が欠失し
た欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残
基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保
たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限
定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からな
る群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせた
ものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種
類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双
方でカルボキシル末端のひとつのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる

0070

本発明の抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3
、IgG4)等を挙げることができるが、好ましくはIgG1又はIgG2を挙げること
ができる。

0071

抗体の生物活性としては、一般的には抗原結合活性、抗原と結合することによって該抗
原を発現する細胞に内在化する活性、抗原の活性を中和する活性、抗原の活性を増強する
活性、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性、補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び抗
体依存性細胞媒介食作用(ADCP)を挙げることができるが、本発明に係る抗体が有す
る生物活性は、HER2に対する結合活性であり、好ましくはHER2と結合することに
よってHER2発現細胞に内在化する活性である。さらに、本発明の抗体は、細胞内在化
活性に加えて、ADCC活性CDC活性及び/又はADCP活性を併せ持っていてもよ
い。

0072

得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋白質
で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー
フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動等電
電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Str
ategies for Protein Purification and Cha
racterization:A Laboratory Course Manual
,Daniel R.Marshak et al.eds.,Cold Spring
Harbor Laboratory Press(1996);Antibodie
s:A Laboratory Manual.Ed Harlow and Davi
d Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(198
8))が、これらに限定されるものではない。
クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマ
トグラフィー、疎水性クロマトグラフィーゲル濾過クロマトグラフィー逆相クロマト
グラフィー、吸着クロマトグラフィー等を挙げることができる。
これらのクロマトグラフィーは、HPLCFPLC等の液体クロマトグラフィーを用
いて行うことができる。
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プ
ロテインGカラムを挙げることができる。例えばプロテインAカラムを用いたカラムとし
て、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(ファルマシア株式会
社)等を挙げることができる。
また抗原を固定化した担体を用いて、抗原への結合性を利用して抗体を精製することも
可能である。

0073

[抗腫瘍性化合物]
本発明の抗HER2抗体−薬物コンジュゲートに結合されている抗腫瘍性化合物につい
て述べる。本発明で使用される抗腫瘍性化合物としては、抗腫瘍効果を有する化合物であ
って、リンカー構造に結合できる置換基、部分構造を有するものであれば特に制限はない
。抗腫瘍性化合物は、リンカーの一部又は全部が腫瘍細胞内で切断されて抗腫瘍性化合物
部分が遊離して抗腫瘍効果が発現される。リンカーが薬物との結合部分で切断されれば抗
腫瘍性化合物が未修飾の構造で遊離され、その本来の抗腫瘍効果が発揮される。
本発明で使用される抗腫瘍性化合物として、カンプトテシン誘導体であるエキサテカン
((1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H
-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン;次
式:)

0074

0075

を好適に使用することができる。このエキサテカンは、優れた抗腫瘍活性を有しているも
のの、抗腫瘍薬として市販されるには至っていない。同化合物は、公知の方法で容易に取
得でき、1位のアミノ基をリンカー構造への結合部位として好適に使用することができる
。また、エキサテカンはリンカーの一部が結合した状態で腫瘍細胞内で遊離される場合も
あるが、この様な構造であっても優れた抗腫瘍効果が発揮される優れた化合物である。
エキサテカンはカンプトテシン構造を有するので、酸性水性媒体中(例えばpH3程度)
ではラクトン環が形成された構造(閉環体)に平衡偏り、一方、塩基性水性媒体中(例
えばpH10程度)ではラクトン環が開環した構造(開環体)に平衡が偏ることが知られてい
る。この様な閉環構造及び開環構造に対応するエキサテカン残基を導入した薬物コンジュ
ゲートであっても同等の抗腫瘍効果が期待され、いずれの構造のものも本発明の範囲に包
含されることはいうまでもない。

0076

他の抗腫瘍性化合物として例えば、ドキソルビシンダウノルビシンマイトマイシン
C、ブレオマイシンシクロシチジンビンクリスチンビンブラスチン、メトトレキセ
ート、白金抗腫瘍剤シスプラチン若しくはその誘導体)、タキソール若しくはその誘
導体、その他のカンプトテシン若しくはその誘導体(特開平6-87746号公報に記載された
抗腫瘍剤)等を挙げることができる。

0077

抗体−薬物コンジュゲートにおいて、抗体1分子への薬物の結合数は、その有効性、安
全性に影響する重要因子である。抗体−薬物コンジュゲートの製造は、薬物の結合数が一
定の数となるよう、反応させる原料試薬の使用量等の反応条件を規定して実施されるが
、低分子化合物の化学反応とは異なり、異なる数の薬物が結合した混合物として得られる
のが通常である。抗体1分子への薬物の結合数は平均値、すなわち、平均薬物結合数とし
て特定され、表記される。本発明でも原則として断りのない限り、すなわち、異なる薬物
結合数をもつ抗体−薬物コンジュゲート混合物に含まれる特定の薬物結合数をもつ抗体−
薬物コンジュゲートを示す場合を除き、薬物の結合数は平均値を意味する。
抗体分子へのエキサテカンの結合数はコントロール可能であり、1抗体あたりの薬物平
均結合数として、1から10個程度のエキサテカンを結合させることができるが、好まし
くは2から8個であり、より好ましくは3から8個である。なお、当業者であれば本願の
実施例の記載から抗体に必要な数の薬物を結合させる反応を設計することができ、エキサ
テカンの結合数をコントロールした抗体−薬物コンジュゲートを取得することができる。

0078

[リンカー構造]
本発明の抗HER2抗体−薬物コンジュゲートにおいて抗腫瘍性化合物を抗HER2抗
体に結合させるリンカー構造について述べる。当該リンカーは、次式:
-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-
の構造を有しており、抗体はL1の末端(L2が結合するのとは反対側の末端)で結合し、
抗腫瘍性化合物は-La-(CH2)n2-C(=O)-部分のカルボニル基で結合する。
n1は、0から6の整数を示すが、好ましくは1から5の整数であり、より好ましくは
1から3である。

0079

1.L1
L1は、
-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n3-C(=O)-
の構造で示される。
ここで、n3は、2から8の整数であり、『-(Succinimid-3-yl-N)-』は、次式

0080

0081

で示される構造を有する。この部分構造における3位が抗HER2抗体への結合部位であ
る。この3位での該抗体との結合は、チオエーテルを形成して結合することが特徴である
。この構造部分の1位の窒素原子は、この構造が含まれるリンカー内に存在するメチレン
炭素原子と結合する。すなわち、-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n3-C(=O)-L2-は次式で
示される構造である(ここで、「抗体−S−」は抗体由来である。)。

0082

0083

式中、n3は、2から8の整数であるが、好ましくは2から5である。

0084

L1の具体例としては、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-
等を挙げることができる。

0085

2.L2
L2は、
-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-
で示される構造であるが、L2は存在しなくともよく、この場合L2は単結合となる。また
、n4は、1から6の整数であり、好ましくは2から4である。L2は末端のアミノ基でL
1に結合し、反対の末端のカルボニル基でLPと結合する。

0086

L2の具体例としては、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-
等を挙げることができる。

0087

3.LP
LPは、2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基である。すなわち、2から7
個のアミノ酸がペプチド結合したオリゴペプチドの残基によって構成される。LPは、N
末端においてL2に結合し、C末端においてリンカーの-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)
-部分のアミノ基に結合する。ここで、『ペプチド残基』或は『オリゴペプチドの残基』
とは、2以上のアミノ酸残基からなるペプチドから導かれる基であって、そのN末端とC
末端を結合部位とする2価の基を示す。

0088

LPを構成するアミノ酸は特に限定されることはないが、例えば、L-又はD-アミノ酸で
あり、好ましくはL-アミノ酸である。また、α−アミノ酸の他、β−アラニン、ε−アミ
カプロン酸γ−アミノ酪酸等の構造のアミノ酸であってもよく、さらには例えばN−
メチル化されたアミノ酸等の非天然型のアミノ酸であってもよい。
LPのアミノ酸配列は、特に限定されないが、構成するアミノ酸として、フェニルアラ
ニン(Phe;F)、チロシン(Tyr;Y)、ロイシン(Leu;L)、グリシン(Gly;G)、アラ
ニン(Ala;A)、バリン(Val;V)、リシン(Lys;K)、シトルリン(Cit)、セリン(S
er;S)、グルタミン酸(Glu;E)、アスパラギン酸(Asp;D)等を挙げることができる
。これらのうちで好ましくは、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトルリ
ン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸を挙げることができる。これ等のアミノ酸か
ら、重複してよく、任意に選択されたアミノ酸の配列を有するLPを構築すればよい。ア
ミノ酸の種類によって、薬物遊離のパターンをコントロールすることができる。アミノ酸
の数は、2から7個でよい。

0089

LPの具体例として、
-GGF-、
-DGGF-、
-(D-)D-GGF-、
-EGGF-、
-GGFG-、
-SGGF-、
-KGGF-、
-DGGFG-、
-GGFGG-、
-DDGGFG-、
-KDGGFG-、
-GGFGGGF-
を挙げることができる。上記の『(D-)D』はD-アスパラギン酸を意味する。本発明の抗体
−薬物コンジュゲートの特に好ましいLPとして、-GGFG-のテトラペプチド残基を挙げる
ことができる。

0090

4.La-(CH2)n2-C(=O)-
La-(CH2)n2-C(=O)-におけるLaは、-O-の構造であるか、又は単結合である。n2は、
0から5の整数であるが、好ましくは0から3であり、より好ましくは0又は1である。
La-(CH2)n2-C(=O)-としては以下の構造のものを挙げることができる。
-O-CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-CH2-C(=O)-、
-CH2CH2-C(=O)-、
-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-O-C(=O)-。
これらのうちでは、
-O-CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2-C(=O)-、
-O-C(=O)-、
である場合か、Laが単結合でn2が0である場合が好ましい。

0091

リンカーの-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-で示される構造の具体例として、
-NH-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2-O-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2-O-C(=O)-、
等を挙げることができる。

0092

これらのうちでより好ましくは、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-
である。

0093

リンカーの-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-は、鎖長として4から7原子の鎖長であ
るものが好ましいが、さらに好ましくは5又は6原子の鎖長を有するものである。

0094

本発明の抗HER2抗体−薬物コンジュゲートは、腫瘍細胞内に移動した後にはリンカ
ー部分が切断され、NH2-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-(NH-DX)で示される構造の薬物誘
導体が遊離して抗腫瘍作用を発現すると考えられる。本発明の抗体−薬物コンジュゲート
から遊離されて抗腫瘍効果を発現する抗腫瘍性誘導体としては、先に挙げたリンカーの-N
H-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-で示される構造の末端がアミノ基となった構造部分を有
する抗腫瘍性誘導体を挙げることができるが、特に好ましいものは次のものである。
NH2-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
NH2-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
NH2-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
NH2-CHCH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)。
なお、NH2-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)の場合は同分子内にあるアミナール構造が不安定
であるため、さらに自己分解して
HO-CH2-C(=O)-(NH-DX)
が遊離されることが確認された。これらの化合物は本発明の抗体−薬物コンジュゲートの
製造中間体としても好適に用いることができる。

0095

薬物をエキサテカンとする本発明の抗体−薬物コンジュゲートにおいては、下記の構造
の薬物−リンカー構造部分[-L1-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-(NH-DX)]
を抗体に結合させたものが好ましい。これらの薬物−リンカー構造部分は、1抗体あたり
の平均結合数として、1から10を結合させればよいが、好ましくは2から8であり、よ
り好ましくは3から8である。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)

-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
これらのうちでより好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
さらに、好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)。

0096

本発明の抗体−薬物コンジュゲートにおいて、抗HER2抗体と薬物とを結合するリン
カー構造は、これまで述べたリンカー各部において示した好ましい構造のものを結合する
ことで好ましいリンカーを構築することができる。この様なリンカ−構造として以下の構
造のものを好適に使用することができる。なお構造の左端が抗体との結合部位であり、右
端が薬物との結合部位である。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
これらのうちでより好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
さらに、好ましくは、次のものを挙げることができる。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-。

0097

[製造方法]
次に、本発明の抗体−薬物コンジュゲート或はその製造中間体の代表的な製造方法につ
いて説明する。なお、以下において、化合物を示すために、各反応式中に示される化合物
の番号を用いる。すなわち、『式(1)の化合物』、『化合物(1)』等と称する。また
これ以外の番号の化合物についても同様に記載する。

0098

1.製造方法1
式(1)で示される、チオエーテルを介して抗体と薬物−リンカー構造が結合している
抗体−薬物コンジュゲートは、例えば下記の方法によって製造することができる。

0099

0100

[式中、ABは、スルフヒドリル基を有する抗体を示し、L1’は、L1で示されるリンカー
構造において、リンカー末端がマレイミジル基(次式)

0101

0102

となった構造(ここで、窒素原子が結合部位である)のリンカーを示すが、具体的には、
L1のうちの-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n3-C(=O)-において-(Succinimid-3-yl-N)-部分
がマレイミジル基となった基を示す。また、-(NH-DX)は次式:

0103

0104

で示される構造であり、エキサテカンの1位のアミノ基の水素原子1個が除かれて生成す
る基を示す。]

0105

なお、上記の反応式において、式(1)の化合物では、薬物からリンカー末端までの構
造部分1個が1個の抗体に対して結合した構造として解釈され得るが、これは説明のため
の便宜的な記載であって、実際には当該構造部分が抗体分子1個に対して複数個が結合し
ている場合が多い。この状況は以下の製造方法の説明においても同様である。

0106

後述する方法によって入手しうる化合物(2)と、スルフヒドリル基を有する抗体(3
a)を反応させることによって、抗体−薬物コンジュゲート(1)を製造することができ
る。
スルフヒドリル基を有する抗体(3a)は、当業者周知の方法で得ることができる(He
rmanson, G.T, Bioconjugate Techniques,pp.56-136, pp.456-493, Academic Press(1996
))。例えば、Traut’s試薬を抗体のアミノ基に作用させる;N−サクシンイミジ
ル S−アセチルチオアルカノエート類を抗体のアミノ基に作用させた後、ヒドロキシル
アミンを作用させる;N−サクシンイミジル 3−(ピリジルジチオプロピオネート
作用させた後、還元剤を作用させる;ジチオトレイトール、2−メルカプトエタノール、
トリス(2−カルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP)等の還元剤を抗体に作用
させて抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合還元してスルフヒドリル基を生成させる;等
の方法を挙げることができるがこれらに限定されることはない。
具体的には、還元剤としてTCEPを、抗体内ヒンジ部ジスルフィド1個当たりに対し
て0.3乃至3モル当量用い、キレート剤を含む緩衝液中で、抗体と反応させることで、
抗体内ヒンジ部ジスルフィドが部分的若しくは完全に還元された抗体を得ることができる
。キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸EDTA)やジエチレントリア
ミン5酢酸(DTPA)等を挙げることができる。これらを1mM乃至20mMの濃度で
用いればよい。緩衝液としては、リン酸ナトリウムホウ酸ナトリウム酢酸ナトリウム
溶液等を用いることができる。具体的には、抗体を4℃乃至37℃で1乃至4時間TCE
Pと反応させることで部分的若しくは完全に還元されたスルフヒドリル基を有する抗体(
3a)を得ることができる。
ここでスルフヒドリル基を薬物−リンカー部分に付加させる反応を実施することでチオ
エーテル結合によって薬物−リンカー部分を結合させることができる。
スルフヒドリル基を有する抗体(3a)1個あたり、2乃至20モル当量の化合物(2
)を使用して、抗体1個当たり2個乃至8個の薬物が結合した抗体—薬物コンジュゲート
(1)を製造することができる。具体的には、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)を
含む緩衝液に、化合物(2)を溶解させた溶液を加えて反応させればよい。ここで、緩衝
液としては、酢酸ナトリウム溶液、リン酸ナトリウムやホウ酸ナトリウム等を用いればよ
い。反応時のpHは5乃至9であり、より好適にはpH7付近で反応させればよい。化合
物(2)を溶解させる溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホル
ムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドDMA)、N−メチル−2−ピリドン(N
MP)等の有機溶媒を用いることができる。
化合物(2)を溶解させた有機溶媒溶液を、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)を
含む緩衝液に1乃至20%v/vを加えて反応させればよい。反応温度は、0乃至37℃
、より好適には10乃至25℃であり、反応時間は、0.5乃至2時間である。反応は、
未反応の化合物(2)の反応性チオール含有試薬によって失活させることによって終了
できる。チオール含有試薬は例えば、システイン又はN−アセチル−L−システイン(N
AC)である。より具体的には、NACを、用いた化合物(2)に対して、1乃至2モル
当量加え、室温で10乃至30分インキュベートすることにより反応を終了できる。
製造した抗体−薬物コンジュゲート(1)は、以下の共通操作によって濃縮、バッファ
交換、精製、抗体濃度、及び抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定を行い、抗体−
薬物コンジュゲート(1)の同定を行うことができる。

0107

共通操作A:抗体又は抗体−薬物コンジュゲート水溶液の濃縮
Amicon Ultra(50,000 MWCO,Millipore Co.)
容器内に抗体又は抗体−薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X
−15R,Beckman Coulter,Inc.)を用いた遠心操作(2000G
乃至3800Gで5乃至20分間遠心)にて、抗体又は抗体−薬物コンジュゲート溶液を
濃縮した。

0108

共通操作B:抗体の濃度測定
UV測定器(Nanodrop 1000,Thermo Fisher Scien
tific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った
。その際に、抗体ごとに異なる280nm吸光係数(1.3mLmg−1cm−1乃至1
.8mLmg−1cm−1)を用いた。

0109

共通操作C−1:抗体のバッファー交換
Sephadex G−25担体を使用したNAP−25カラム(Cat.No.17
−0852−02,GE Healthcare Japan Corporation
)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)及びエチレンジアミン
四酢酸(EDTA,5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM,pH6.0;本明細書でP
BS6.0/EDTAと称する)にて平衡化させた。このNAP−25カラム一本につき
抗体水溶液2.5mLをのせた後、PBS6.0/EDTA3.5mLで溶出させた画
分(3.5mL)を分取した。この画分を共通操作Aによって濃縮し、共通操作Bを用い
て抗体濃度の測定を行った後に、PBS6.0/EDTAを用いて10mg/mLに抗体
濃度を調整した。
共通操作C−2:抗体のバッファー交換
Sephadex G−25担体を使用したNAP−25カラム(Cat.No.17
−0852−02,GE Healthcare Japan Corporation
)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(50mM)及びEDTA(2mM)
を含むリン酸緩衝液(50mM,pH6.5;本明細書でPBS6.5/EDTAと称す
る)にて平衡化させた。このNAP−25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをの
せた後、PBS6.5/EDTA3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取した
。この画分を共通操作Aによって濃縮し、共通操作Bを用いて抗体濃度の測定を行った後
に、PBS6.5/EDTAを用いて20mg/mLに抗体濃度を調整した。

0110

共通操作D:抗体−薬物コンジュゲートの精製
市販のリン酸緩衝液(PBS7.4,Cat.No.10010−023,Invit
rogen)、塩化ナトリウム(137mM)を含むリン酸ナトリウム緩衝液(10mM
,pH6.0;本明細書でPBS6.0と称する)又はSorbitol(5%)を含む
酢酸緩衝液(10mM,pH5.5;本明細書でABSと称する)のいずれかの緩衝液で
NAP−25カラムを平衡化させた。このNAP−25カラムに、抗体−薬物コンジュゲ
ート反応水溶液(約1.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで
、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP−25カラムにのせ、緩衝液で溶出さ
せるゲルろ過精製操作を計2乃至3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化
合物(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、N−アセチル−
L−システイン(NAC)、ジメチルスルホキシド)を除いた抗体−薬物コンジュゲート
を得た。

0111

共通操作E:抗体−薬物コンジュゲートにおける抗体濃度及び抗体一分子あたりの薬物平
均結合数の測定(1)
抗体−薬物コンジュゲートにおける結合薬物濃度は、抗体−薬物コンジュゲート水溶液
の280nm及び370nmの二波長におけるUV吸光度を測定した後に下記の計算を行
うことで、算出することができる。
ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい(
吸光度の加成性)ことから、抗体と薬物のコンジュゲーション前後において、抗体及び薬
物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体−薬物コンジュゲートにおける抗体濃
度及び薬物濃度は、下記の関係式で示される。

A280=AD,280+AA,280=εD,280CD+εA,280CA 式(
I)
A370=AD,370+AA,370=εD,370CD+εA,370CA 式(
II)

ここで、A280は280nmにおける抗体−薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示
し、A370は370nmにおける抗体−薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A
A,280は280nmにおける抗体の吸光度を示し、AA,370は370nmにおけ
る抗体の吸光度を示し、AD,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光
度を示し、AD,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、ε
A,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εA,370は370nm
における抗体のモル吸光係数を示し、εD,280は280nmにおけるコンジュゲート
前駆体のモル吸光係数を示し、εD,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体
のモル吸光係数を示し、CAは抗体−薬物コンジュゲートにおける抗体濃度を示し、CD
は抗体−薬物コンジュゲートにおける薬物濃度を示す。
ここで、εA,280、εA,370、εD,280、εD,370は、事前に用意し
た値(計算推定値又は化合物のUV測定から得られた実測値)が用いられる。例えば、ε
A,280は、抗体のアミノ酸配列から、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol
.4, 2411-2423)によって推定することができる。εA,370は、通常、ゼロである。
実施例において、トラスツズマブのモル吸光係数は、εA,280=215400(計算
推定値)及びεA,370=0を用いた。εD,280及びεD,370は、用いるコン
ジュゲート前駆体をあるモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定することで、ランベル
ト・ベールの法則(吸光度=モル濃度×モル吸光係数×セル光路長)によって、得ること
ができる。実施例における薬物リンカーのモル吸光係数は、特に断りのない限り、εD,
280=5000(実測平均値)、εD,370=19000(実測平均値)を用いた。
抗体−薬物コンジュゲート水溶液のA280及びA370を測定し、これらの値を式(I
)及び(II)に代入して連立方程式解くことによって、CA及びCDを求めることが
できる。さらにCDをCAで除することで1抗体あたりの薬物平均結合数が求めることが
できる。

0112

共通操作F:抗体−薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測
定(2)
抗体−薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数は、前述の共通
操作Eに加え、以下の方法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によっ
ても求めることができる。
[F−1.HPLC分析サンプルの調製(抗体−薬物コンジュゲートの還元)]
抗体−薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(
DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合する。混合物を37℃で30分インキュ
ベートすることで、抗体−薬物コンジュゲートのL鎖及びH鎖間のジスルフィド結合を切
断したサンプルを、HPLC分析に用いる。
[F−2.HPLC分析]
HPLC分析を、下記の測定条件にて行う。
HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent T
echnologies)
検出器紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:PLRP−S(2.1×50mm、8μm、1000Å;Agilent T
echnologies、P/N PL1912−1802)
カラム温度:80℃
移動相A:0.04%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:29%−36%(0分−12.5分)、36%−42%(1
2.5−15分)、42%−29%(15分—15.1分)、29%−29%(15.1
分—25分)
サンプル注入量:15μL
[F−3.データ解析
〔F−3−1〕 薬物の結合していない抗体のL鎖(L0)及びH鎖(H0)に対して、
薬物の結合したL鎖(薬物が一つ結合したL鎖:L1)及びH鎖(薬物が一つ結合したH
鎖:H1、薬物が二つ結合したH鎖:H2、薬物が三つ結合したH鎖:H3)は、結合し
た薬物の数に比例して疎水性増して保持時間が大きくなることから、L0、L1、H0
、H1、H2、H3の順に溶出される。L0及びH0との保持時間比較により検出ピーク
をL0、L1、H0、H1、H2、H3のいずれかに割り当てることができる。
〔F−3−2〕 薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、
L鎖、H鎖及び薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値補正
行う。

0113

0114

0115

ここで、各抗体におけるL鎖及びH鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方
法(ProteinScience, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体のL鎖及びH鎖のアミ
ノ酸配列から推定される値を用いることができる。トラスツズマブの場合、そのアミノ酸
配列に従って、L鎖のモル吸光係数として26150を、H鎖のモル吸光係数として81
290を推定値として用いた。また、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、各
薬物リンカーをメルカプトエタノール又はN−アセチルシステインで反応させ、マレイ
ド基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm
)を用いた。
〔F−3−3〕ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って
計算する。

0116

0117

〔F−3−4〕 抗体−薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数
を、下式に従って計算する。
薬物平均結合数=(L0ピーク面積比x0+L0ピーク面積比x1+H0ピーク面積比
x0+H1ピーク面積比x1+H2ピーク面積比x2+H3ピーク面積比x3)/100
x2

0118

製造方法1において使用される製造中間体化合物について以下に述べる。製造方法1に
おける式(2)で示される化合物は次式:
(maleimid-N-yl)-(CH2)n3-C(=O)-L2-LP-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-C(=O)-(NH-DX)
で示される化合物である。
式中、
n3は、整数の2から8を示し、
L2は、-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、n4は、1から6の整数を示し、
LPは、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトルリン、セリン、グルタミ
ン酸、アスパラギン酸から選ばれる2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基を示
し、
n1は、0から6の整数を示し、
n2は、0から5の整数を示し、
Laは、-O-又は単結合を示し、
(maleimid-N-yl)-は、次式

0119

0120

で示される、マレイミジル基(2,5-dioxo-2,5-dihydro-1H-pyrrol-1-yl基)で、窒素原子
が結合部位となっている基であり、
-(NH-DX)は、次式

0121

0122

で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基である。

0123

L2は、単結合であるか、-NH-(CH2CH2-O)n4-CH2CH2-C(=O)-である場合にはn4が整数
の2から4であることが製造中間体として好ましい。
LPのペプチド残基としては、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトル
リン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸から選ばれるアミノ酸からなるペプチド残
基である化合物が製造中間体として好ましい。この様なペプチド残基のうち、LPが4個
のアミノ酸で構成されるペプチド残基である化合物が製造中間体として好ましい。より具
体的には、LPが-GGFG-のテトラペプチド残基である化合物が製造中間体として好ましい

0124

また、-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-としては、-NH-CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2
CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化
合物が製造中間体として好ましく、より好ましくは、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、
又は-NH-CH2CH2-O-CH2である化合物である。

0125

さらに、式(2)で示される化合物は、n3が整数の2から5であり、L2が単結合であ
り、-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-が、-NH-CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2-
、-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物が製造
中間体として好ましい。より好ましくは、-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-が、-NH-CH2CH2-
、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物である。さら
に、n3が、整数の2又は5である化合物が好ましい。

0126

また、式(2)で示される化合物は、n3が整数の2から5であり、L2が-NH-(CH2CH2-
O)n4-CH2CH2-C(=O)-であって、n4が整数の2から4であり、-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n
2-が、-NH-CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-、-NH
-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物が製造中間体として好ましい。より好
ましくは、n4が整数の2又は4の化合物である。さらに、-NH-(CH2)n1-La-(CH2)n2-
が、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物が好ましい

0127

この様な本発明化合物の製造に有用な中間体として好ましいものとしては以下のものを
例示することができる。
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。

0128

上記の製造中間体化合物の群から選ばれる薬物−リンカー化合物を、抗HER2抗体又
はその反応性誘導体と反応させることによって抗HER2抗体のヒンジ部に存在するジス
ルフィド結合部分においてチオエーテル結合を形成させて本発明の抗HER2抗体−薬物
コンジュゲートを製造することができる。この場合、抗HER2抗体の反応性誘導体を使
用することが好ましく、特に抗HER2抗体を還元処理して得られる反応性誘導体が好ま
しい。

0129

以下のものが製造中間体としてより好ましい化合物である。
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2-CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C
(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。

0130

また、上記の中間体化合物群の中では次式:
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、又は
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
で示される化合物がさらに好ましい化合物である。

0131

なお、コンジュゲートの量を確保するために、同様な条件で作製して得られた平均薬物
数が同程度の複数のコンジュゲート(例えば±1程度)を混合して新たなロットにするこ
とができる。その場合、平均薬物数は混合前の平均薬物数の間に収まる。

0132

2.製造方法2
先の製造方法で使用した中間体である式(2)で示される化合物及びそれらの薬理上許
容される塩は、例えば下記の方法によって製造することができる。

0133

0134

[式中、L1’は末端マレイミジル基を示し、P1、P2、及びP3は保護基を示す。]

0135

カルボン酸(5)を活性エステル混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、塩
基存在下、NH2-DX(4)又はその薬理上許容される塩と反応させることによって化合物
(6)を製造することができる。NH2-DX(4)は、エキサテカン(化学名:(1S,9S)-1-
アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de
]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)を示す。
この反応は、ペプチド合成通常用いる反応試薬や条件を準用すればよい。活性エス
ルには各種のものがあるが、例えばp−ニトロフェノール等のフェノール類、N−ヒドロ
キシベンゾトリアゾール或はN−ヒドロキシスクシンイミド等とカルボン酸(5)をN,
N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド或は1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロ
ピルカルボジイミド・塩酸塩等の縮合剤を用いて反応させれば製造できる。また、活性
エステルは、カルボン酸(5)とペンタフルオロフェニルトリフルオロアセテート等との
反応;カルボン酸(5)と1−ベンゾトリアゾリルオキシトリピロリジノホスホニウム
キサフルオロホスファイトとの反応;カルボン酸(5)とシアホスホン酸ジエチルとの
反応(塩入法);カルボン酸(5)とトリフェニルホスフィン及び2,2’−ジピリジル
ジスルフィドとの反応(向山法);カルボン酸(5)と4−(4,6−ジメトキシ−1,
3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクライド(DMTMM)
の様なトリアジン誘導体との反応;等によっても製造することができる。また、カルボン
酸(5)を塩基存在下に塩化チオニル、オキザリルクロリド等の酸ハロゲン化物で処理す
ることによって製造できる酸ハライド法等によって反応を行うこともできる。
上記の様に得たカルボン酸(5)の活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物
を化合物(4)と適当な塩基存在下に、不活性な溶媒中で−78℃〜150℃の反応温度
で反応させることによって化合物(6)を製造することができる。なお、「不活性な溶媒
」とはその溶媒が採用された反応において実施される目的とされた反応を阻害することの
ない溶媒を意味する。

0137

本反応に用いる不活性な溶媒としては、ジクロロメタンクロロホルム四塩化炭素
ハロゲン化炭化水素系溶媒テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンジオ
サン等のエーテル系溶媒ベンゼントルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン−2−オン
アミド系溶媒;を挙げることができ、これらに加えて場合によってはジメチルスルホ
シド、スルホラン等のスルホキシド系溶媒アセトンメチルエチルケトン等のケトン
溶媒;メタノールエタノール等のアルコール系の溶媒等を使用することも可能である。
さらにはこれ等を混合して使用することもできる。

0138

化合物(6)の末端アミノ基の保護基P1としては、tert−ブチルオキシカルボ
ル基や9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等、ペ
プチド合成に通常用いられているアミノ基の保護基を用いることができる。他のアミノ基
の保護基としては、アセチル基等のアルカノイル基メトキシカルボニル基エトキシ
ルボニル基等のアルコキシカルボニル基パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パ
ラ(又はオルトニトロベンジルオキシカルボニル基等のアリールメトキシカルボニル基
ベンジル基トリフェニルメチル基等のアリールメチル基ベンゾイル基等のアロイル
基;2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基、オルトニトロベンゼンスルホニル基等のア
リールスルホニル基;を挙げることができる。保護基P1は、アミノ基を保護する化合物
の性質等に応じて選択すればよい。
得られた化合物(6)の末端アミノ基の保護基P1を脱保護させることによって化合物
(7)を製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選択す
ればよい。
N末端をP2で保護したペプチドカルボン酸(8)を活性エステル、混合酸無水物等に
誘導し、得られた化合物(7)に反応させることによって、化合物(9)を製造すること
ができる。ペプチドカルボン酸(8)と化合物(7)のペプチド結合を形成する反応条件
や試薬、及び塩基、不活性な溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して
使用すればよい。保護基P2は、化合物(6)の保護基で述べたものから適宜選択して使
用すればよく、アミノ基を保護する化合物の性質等に応じて選択すればよい。また、ペプ
チド合成に通常用いられている様に、ペプチドカルボン酸(8)を構成するアミノ酸又は
ペプチドを順次反応と脱保護を繰り返し、伸長させて化合物(9)を製造することもでき
る。
得られた化合物(9)のアミノ基の保護基P2を脱保護させることによって化合物(1
0)を製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選択すれ
ばよい。
カルボン酸(11)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、
得られた化合物(10)に反応させることによって、化合物(2)を製造することができ
る。カルボン酸(11)と化合物(10)のペプチド結合を形成する反応条件や試薬、及
び塩基、及び不活性溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すれ
ばよい。

0139

化合物(9)は例えば下記の方法でも製造することができる。
N末端をP2で保護したペプチドカルボン酸(8)を活性エステル、混合酸無水物等に
誘導し、塩基存在下、カルボキシ基をP3で保護したアミン化合物(12)と反応させる
ことによって化合物(13)を製造することができる。ペプチドカルボン酸(8)と化合
物(12)のペプチド結合を形成する反応条件や試薬、塩基、及び不活性な溶媒は、化合
物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すればよい。
化合物(13)のアミノ基の保護基P2としては、通常用いられる保護基であれば特に
制限はない。
具体的には水酸基の保護基としては、メトキシメチル基等のアルコキシメチル基ベン
ジル基、4−メトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等のアリールメチル基;アセチ
ル基等のアルカノイル基;ベンゾイル基等のアロイル基;tert−ブチルジフェニル
リル基等のシリル基;等を挙げることができる。カルボキシ基は、メチル基エチル基
tert−ブチル基等のアルキル基アリル基、又はベンジル基等のアリールメチル基と
のエステル等として保護することができる。アミノ基は、tert−ブチルオキシカルボ
ニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基
アリルオキシカルボニル基、又は9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジ
ルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラ(又はオルト)
ニトロベンジルオキシカルボニル基等のアリールメトキシカルボニル基;のほか、アセチ
ル基等のアルカノイル基;ベンジル基、トリフェニルメチル基等のアリールメチル基;ベ
ンゾイル基等のアロイル基;又は2,4−ジニトロベンゼンスルホニル基、オルトニト
ベンゼンスルホニル基等のアリールスルホニル基;等を挙げることができる。
カルボキシ基の保護基P3としては、有機合成化学、中でもペプチド合成においてカル
ボキシ基の保護基として通常用いられている保護基を使用すればよく、具体的にはメチル
基、エチル基、tert−ブチル等のアルキルエステルアリルエステルベンジルエス
テル等であり上記の保護基から適宜選択して使用すればよい。
この場合に、アミノ基の保護基とカルボキシ基の保護基が異なる方法又は条件で除去で
きることが好ましい。例えばP2がtert−ブチルオキシカルボニル基であり、P3がベ
ンジル基である組み合わせ等を代表的なものとして挙げることができる。それらの保護基
はアミノ基とカルボキシ基を保護する化合物の性質等に応じて上述したものから選択すれ
ばよく、それらの保護基の切断に際してもその保護基に応じた試薬や条件を選択すればよ
い。
得られた化合物(13)のカルボキシ基の保護基P3を脱保護させることによって化合
物(14)を製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選
択すればよい。
得られた化合物(14)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導
し、塩基存在下、化合物(4)と反応させることによって化合物(9)を製造することが
できる。この反応はペプチド合成に通常用いる反応試薬や条件を準用すればよく、反応条
件や試薬、及び塩基や不活性な溶媒は化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して
使用すればよい。

0140

化合物(2)は、例えば下記の方法でも製造することができる。
化合物(13)のアミノ基の保護基P2を脱保護させることによって化合物(15)を
製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選択すればよい

カルボン酸誘導体(11)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘
導し、塩基存在下、得られた化合物(15)と反応させることによって化合物(16)を
製造することができる。ペプチドカルボン酸(11)と化合物(15)のアミド結合を形
成する反応条件や試薬、塩基、及び不活性な溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものか
ら適宜選択して使用すればよい。
得られた化合物(16)のカルボキシ基の保護基を脱保護させることによって化合物(
17)を製造することができる。この脱保護は、化合物(14)の製造におけるカルボキ
シ基の脱保護と同様に行うことができる。
化合物(17)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、塩基
存在下、化合物(4)と反応させることによって化合物(2)を製造することができる。
この反応はペプチド合成に通常用いる反応試薬や条件を準用すればよく、反応条件や試薬
、塩基、及び不活性な溶媒は化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すれ
ばよい。

0141

3.製造方法3
中間体の式(2)で示される化合物は下記の方法によっても製造することもできる。

0142

0143

[式中、L1’は末端がマレイミジル基に変換された構造のL1であり、P4は保護基を示す

0144

化合物(11)を活性エステル、混合酸無水物等に誘導し、塩基存在下、C末端をP4
で保護したペプチドカルボン酸(18)と反応させることによって化合物(19)を製造
することができる。ペプチドカルボン酸(18)と化合物(11)のペプチド結合を形成
する反応条件や試薬、塩基、及び不活性な溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものから
適宜選択して使用すればよい。化合物(18)のカルボキシ基の保護基P4は先に述べた
保護基から適宜選択して使用すればよい。
得られた化合物(19)のカルボキシ基の保護基を脱保護させることによって化合物(
20)を製造することができる。この脱保護は、化合物(14)の製造におけるカルボキ
シ基の脱保護と同様に行うことができる。
得られた化合物(20)を活性エステル、又は混合酸無水物等に誘導し、化合物(7)
に反応させることによって、化合物(2)を製造することができる。この反応はペプチド
合成に通常用いる反応試薬や条件を準用すればよく、反応条件や試薬、塩基、及び不活性
な溶媒は化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すればよい。

0145

4.製造方法4
以下に、製造方法2に記載の製造中間体(10)のうち、n1=1、La=Oの化合物(1
0b)の製造方法について詳述する。式(10b)で示される化合物、その塩又はそれら
溶媒和物は、例えば下記の方法で製造することができる。

0146

0147

[式中、LPは前記と同じものを示し、Lはアシル基であって、アセチル基等のアルカノ
ル基若しくはベンゾイル基等のアロイル基であるか、又は水素原子を示し、X及びYは1
から3個のアミノ酸からなるオリゴペプチドを、P5及びP7はアミノ基の保護基を、P6
はカルボキシ基の保護基を示す]

0148

式(21)で示される化合物は、特開2002−60351号公報に記載される手法や
文献(J. Org. Chem., 51巻,3196頁,1986年)記載の方法、又はその方法を応用して必
要に応じて保護基の除去や官能基変換を行うことによって製造することができる。この他
、末端アミノ基が保護されたアミノ酸又はアミノ基が保護されたオリゴペプチドの酸アミ
ドをアルデヒド又はケトンと処理することによって得ることができる。
化合物(21)を、不活性な溶媒中、酸又は塩基存在下で冷却下から室温の温度条件
水酸基を有する化合物(22)と反応させることによって、化合物(23)を製造するこ
とができる。
ここで使用できる酸としては例えば、フッ化水素酸塩酸硫酸硝酸リン酸ホウ
酸等の無機酸;酢酸、クエン酸パラトルエンスルホン酸メタンスルホン酸等の有機酸
テトラフルオロボレート塩化亜鉛塩化スズ塩化アルミニウム塩化鉄等のルイス
酸;等を挙げることができる。これらのうちではスルホン酸類、特にパラトルエンスルホ
ン酸が好ましい。さらに塩基としては、既に述べられた塩基の中から適宜選択して使用す
ればよく、特にカリウムtert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物水素化ナトリウム水素化カリ
ウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水素化物;リチウムジイソプロピルアミド
等のジアルキルアミノリチウムに代表される有機金属塩基;リチウムビス(トリメチル
シリル)アミド等のビスシリルアミンの有機金属塩基;等が好ましい。
反応に用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル
溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;等が用いられる。上記の溶媒は水
との混合物としてもよい。
また、P5に例示されるアミノ基の保護基としては、通常、アミノ基の保護に用いられ
る基であれば特に制限はない。代表的なものとして製造方法2で記載したアミノ基の保護
基を挙げることができるが、本反応中においてP5に例示されるアミノ基の保護基が切断
される場合がある。その場合には、必要に応じて適当なアミノ基の保護試薬と適宜反応さ
せて再度保護基を導入すればよい。
化合物(24)は、化合物(23)の保護基P6を除去することによって製造すること
ができる。ここで、P6として例示されるカルボキシ基の保護基としては、製造方法2に
代表的なものが記載されており、ここから適宜選択することができる。化合物(23)に
おいて、アミノ基の保護基P5とカルボキシ基の保護基P6が異なる方法又は条件で除去で
きる保護基であることが望ましい。例えば、P5が9−フルオレニルメチルオキシカルボ
ニル基であり、P6がベンジル基である組み合わせ等を代表的なものとして挙げることが
できる。それらの保護基は、アミノ基及びカルボキシ基を保護する化合物の性質等に応じ
て選択すればよく、それらの保護基の除去に際してもその保護基に応じた試薬や条件を選
択すればよい。
カルボン酸(24)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、
塩基存在下、化合物(4)又はその薬理上許容される塩と反応させることによって化合物
(25)を製造し、得られた化合物(25)の保護基P5を除去することによって化合物
(26)を製造することができる。化合物(4)とカルボン酸(24)との反応及び保護
基P6を除去する反応では、製造方法2で述べた試薬や反応条件と同様のものを用いれば
よい。
化合物(26)と末端アミノ基が保護されたアミノ酸又はアミノ基が保護されたオリゴ
ペプチド(27)を反応させることによって化合物(9b)を製造し、得られた化合物(
9b)の保護基P7を除去することによって化合物(10b)を製造することができる。P
7として示されるアミノ基の保護基としては、通常、アミノ基の保護に用いられる基であ
れば特に制限はなく、代表的なものとして製造方法2で記載したアミノ基の保護基を挙げ
ることができ、その除去に際しても保護基に応じた試薬や条件を選択すればよい。化合物
(26)と化合物(27)との反応では、ペプチド合成に通常使用される反応試薬や条件
を準用すればよい。上記の方法で製造した化合物(10b)は、上述の製造方法に従って
本発明化合物(1)に導くことができる。

0149

5.製造方法5
以下に、製造方法2に記載の製造中間体(2)のうち、n1=1、n2=1、La=Oの化合物
(2)の製造方法について詳述する。式(2)で示される化合物、その塩又はそれらの溶
媒和物は、例えば下記の方法で製造することができる。

0150

0151

[式中、L1’、L2、LPは前記と同じものを示し、Zは1から3個のアミノ酸からなるオ
リゴペプチドを、P8はアミノ基の保護基を、P9はカルボキシ基の保護基を示す。]

0152

末端アミノ基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸又はオリゴペプチド(28)の保
護基P8を除去することによって化合物(29)が得られる。得られたアミン体(29)
と化合物(11)を反応させることによって化合物(30)を製造できる。P8として示
されるアミノ基の保護基としては、通常、アミノ基の保護に用いられる基であれば特に制
限はなく、代表的なものとして製造方法2で記載したアミノ基の保護基を挙げることがで
きる。また、保護基P8の除去に際してもその保護基に応じた試薬や条件を選択すればよ
い。化合物(29)とカルボン酸(11)との反応では、製造方法2で述べた試薬や反応
条件と同様のものを用いればよい。
化合物(30)の保護基P9を除去することによって化合物(31)を製造し、得られ
たカルボン酸(31)と化合物(26)を反応させることによって製造中間体(2b)を
製造できる。P8として示されるカルボキシ基の保護基としては、代表的なものを製造方
法2に記載した他、その脱保護反応では製造方法2で述べた試薬や反応条件と同様のもの
を用いればよい。また、化合物(26)とカルボン酸(31)との反応では、ペプチド合
成に通常使用される反応試薬や条件を準用すればよい。上記の方法で製造した化合物(2
b)は、上述の製造方法に従って本発明化合物(1)に導くことができる。

0153

6.製造方法6
以下に、製造方法2に記載の製造中間体(17)のうち、n1=1、n2=1、La=Oの化合
物(17b)の製造方法について詳述する。式(17b)で示される化合物、その塩又は
それらの溶媒和物は、例えば下記の方法によっても製造することができる。

0154

0155

[式中、L1’、L2、LP、X、Y、P5、P6、及びP7は前記と同じものを示す。]

0156

末端アミノ基及び末端カルボキシ基が保護された化合物(23)のアミノ基の保護基P
5を脱保護することによって化合物(32)を製造し、得られたアミン体(32)と末端
アミノ基又はアミノ基が保護されたオリゴペプチド(27)を反応させることによって化
合物(33)を製造できる。P5として示されるアミノ基の保護基としては、通常、アミ
ノ基の保護に用いられる基であれば特に制限はなく、代表的なものとして製造方法2で記
載したアミノ基の保護基を挙げることができる。また、保護基P5の除去に際してもその
保護基に応じた試薬や条件を選択すればよい。ここで、P6として示されるカルボキシ基
の保護基及びP7として示されるアミノ基の保護基としては、代表的なものとして製造方
法2で記載したカルボキシ基及びアミノ基の保護基を挙げることができる。化合物(33
)では、カルボキシ基の保護基P6とアミノ基の保護基P7は同じ方法又は条件で除去でき
る保護基であることが望ましい。例えばP6がベンジルエステル基であり、P7がベンジル
オキシカルボニル基である組み合わせを代表的なものとして挙げることができる。
化合物(34)は、化合物(33)のカルボキシ基の保護基P6とアミノ基の保護基P7
を除去することによって製造することができる。カルボキシ基の保護基P6とアミノ基の
保護基P7のそれぞれを逐次除去することによっても化合物(37)を製造することがで
きる他、P6とP7が同じ方法又は条件で除去できる保護基であれば、両者を一工程で除去
して化合物(34)を簡便に製造することができる。
得られた化合物(34)と化合物(11)を反応させることによって化合物(17b)
を製造できる。化合物(34)と化合物(11)との反応では、製造方法2で述べた試薬
や反応条件と同様なものを用いればよい。

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