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概要
背景
骨は骨芽細胞(骨を作る細胞)による「骨形成」と破骨細胞(骨を壊す細胞)による「骨吸収」を繰り返される骨代謝により再構築(骨リモデリング)されており、骨量はこの2つの細胞のバランスによって保たれている。骨芽細胞は脂肪や筋肉の細胞などと同様に間葉系幹細胞由来であるが、破骨細胞は赤血球及び白血球と同様に血球系の細胞由来である。
骨代謝は、骨芽細胞の表面にRANKLという膜たんぱく質が現れることにより開始される。RANKLが血球系の細胞であるRANKという受容体に結合すると、血球系の細胞が破骨細胞へと分化する。分化・成熟した破骨細胞は骨を壊し(骨吸収)、その後骨芽細胞が吸収された分と同量の骨を形成する。しかし、老化や卵巣機能の低下等の要因によって骨代謝のバランス(骨吸収と骨形成のバランス)が崩れ、骨量(骨密度)が低下することにより、骨折、骨粗しょう症、骨軟化症等の骨関連疾患が生じる。
そこで、骨形成及び骨吸収を含む骨代謝を改善することより、骨関連疾患の抑制に役立つ成分が求められている。例えば特許文献1には、アサイー抽出物及びマタタビ抽出物の少なくともいずれかを有効成分とする骨形成促進剤が開示されている。
概要
目的
本発明は、新規な骨代謝改善剤を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
0001
本発明は、骨代謝改善剤に関する。
背景技術
0002
骨は骨芽細胞(骨を作る細胞)による「骨形成」と破骨細胞(骨を壊す細胞)による「骨吸収」を繰り返される骨代謝により再構築(骨リモデリング)されており、骨量はこの2つの細胞のバランスによって保たれている。骨芽細胞は脂肪や筋肉の細胞などと同様に間葉系幹細胞由来であるが、破骨細胞は赤血球及び白血球と同様に血球系の細胞由来である。
0003
骨代謝は、骨芽細胞の表面にRANKLという膜たんぱく質が現れることにより開始される。RANKLが血球系の細胞であるRANKという受容体に結合すると、血球系の細胞が破骨細胞へと分化する。分化・成熟した破骨細胞は骨を壊し(骨吸収)、その後骨芽細胞が吸収された分と同量の骨を形成する。しかし、老化や卵巣機能の低下等の要因によって骨代謝のバランス(骨吸収と骨形成のバランス)が崩れ、骨量(骨密度)が低下することにより、骨折、骨粗しょう症、骨軟化症等の骨関連疾患が生じる。
0004
そこで、骨形成及び骨吸収を含む骨代謝を改善することより、骨関連疾患の抑制に役立つ成分が求められている。例えば特許文献1には、アサイー抽出物及びマタタビ抽出物の少なくともいずれかを有効成分とする骨形成促進剤が開示されている。
先行技術
0005
特開2018−150240号公報
発明が解決しようとする課題
0006
本発明は、新規な骨代謝改善剤を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
本発明は、第1の態様として、フロレト酸を有効成分として含有する、骨代謝改善剤を提供する。
0008
本発明は、第2の態様として、フロレト酸を有効成分として含有する、骨形成促進剤を提供する。
0009
本発明は、第3の態様として、フロレト酸を有効成分として含有する、骨吸収抑制剤を提供する。
発明の効果
0010
本発明によれば、新規な骨代謝改善剤を提供することができる。
図面の簡単な説明
0012
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
0013
本発明の骨代謝改善剤は、骨代謝の改善作用を有する。骨代謝の改善作用は、骨形成(新たな骨の形成)を促進する作用、及び過度な骨吸収(骨の破壊)を抑制する作用の少なくとも1種であってよい。これにより、骨形成と骨吸収とのバランスを好適に調整することができ、結果として骨の再構築を進行させやすくすることができる。すなわち、本発明は、骨形成促進剤、及び骨吸収抑制剤を提供するということができ、骨形成及び骨吸収のバランス調整剤を提供するということもできる。
0014
骨形成促進剤における骨形成の促進は、骨芽細胞の分化を促進する作用に基づくものであってよい。すなわち、本明細書における骨形成促進剤は、骨芽細胞分化促進剤ということもできる。また、骨吸収抑制剤における骨吸収の抑制は、破骨細胞の分化を抑制する作用に基づくものであってよい。すなわち、本明細書における骨吸収抑制剤は、破骨細胞分化抑制剤ということもできる。
0015
一実施形態に係る骨代謝改善剤は、フロレト酸を有効成分として含有する。
0016
フロレト酸は芳香族ヒドロキシ酸の一種であり、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸とも称される化合物である。フロレト酸は、p−クマル酸の2−プロペン酸側鎖の水素化、又はフロレチンヒドロラーゼによるフロレチンの加水分解によって生成されてよい。フロレト酸は、市販されているものであってもよく、微生物によってp−クマル酸が還元されたものであってもよい。p−クマル酸からフロレト酸を得る場合、原料となるp−クマル酸は、市販されているもの、又はリグニン分解生成物から分離したものであってよい。このとき、リグニン分解物はイネ科植物由来のものであってよく、サトウキビ又はバガス由来のものであってもよい。
0017
骨代謝改善剤は、有効成分であるフロレト酸のみからなってもよく、食品組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材を更に含有してもよい。食品組成物、医薬部外品又は医薬品に使用可能な素材としては、特に制限されるものではないが、例えば、アミノ酸、タンパク質、炭水化物、油脂、甘味料、ミネラル、ビタミン、香料、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤等が挙げられる。
0018
タンパク質としては、例えば、ミルクカゼイン、ホエイ、大豆タンパク、小麦タンパク、卵白等が挙げられる。炭水化物としては、例えば、コーンスターチ、セルロース、α化デンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン等が挙げられる。油脂としては、例えば、サラダ油、コーン油、大豆油、ベニバナ油、オリーブ油、パーム油等が挙げられる。甘味料としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖類、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコール、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等の人工甘味料、ステビア甘味料などが挙げられる。ミネラルとしては、例えば、カルシウム、カリウム、リン、ナトリウム、マンガン、鉄、亜鉛、マグネシウム、及びこれらの塩類等が挙げられる。ビタミンとしては、例えば、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB類、ビオチン、ナイアシン等が挙げられる。賦形剤としては、例えば、デキストリン、デンプン、乳糖、結晶セルロース等が挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、寒天、ゼラチン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン等が挙げられる。乳化剤又は界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、クエン酸、乳酸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。基剤としては、例えば、セトステアリルアルコール、ラノリン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
0019
骨代謝改善剤が他の素材を配合する場合、有効成分であるフロレト酸の含有量は、後述する骨代謝改善剤の形態、使用目的等に応じて適宜設定すればよいが、骨代謝の改善効果をより一層有効に発揮する観点から、好ましくは、固形分として0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下である。
0020
骨代謝改善剤は、骨代謝改善用食品組成物、骨代謝改善用医薬品又は骨代謝改善用医薬部外品として用いることができる。骨代謝改善用食品組成物は、例えば、健康食品、特定保健用食品、機能性食品、栄養機能食品、サプリメント等の形態で提供されてもよい。
0021
骨代謝改善剤の形状は制限されず、固体(粉末、顆粒等)、液体(溶液、懸濁液等)、ペースト等のいずれの形状であってもよく、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等のいずれの剤形であってもよい。
0023
骨代謝改善剤が経口投与される場合、投与量としては、例えば、フロレト酸が1回当たり300μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、450μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、600μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、フロレト酸が1日当たり450μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、900μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、1350μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、フロレト酸が1回当たり3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、2400mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、1800mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、フロレト酸が1日当たり9000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、6000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。この範囲であれば、十分な血中濃度を達成することができ、骨代謝改善作用をよりよく発現することができる。
0024
骨代謝改善剤が非経口投与される場合、投与量としては、例えば、フロレト酸が1回当たり300μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、450μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、600μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、フロレト酸が1日当たり600μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが好ましく、900μg/kg(体重)以上となるように投与されるのがより好ましく、1200μg/kg(体重)以上となるように投与されるのが更に好ましい。また、フロレト酸が1回当たり6000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、4500mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、3000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。また、フロレト酸が1日当たり12000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが好ましく、9000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのがより好ましく、6000mg/kg(体重)以下となるように投与されるのが更に好ましい。この範囲であれば、十分な血中濃度を達成することができ、骨代謝改善作用をよりよく発現することができる。
0025
骨代謝改善剤は、飼料、飼料添加物としても用いることができる。飼料としては、ドッグフード、キャットフード等のコンパニオン・アニマル用飼料、家畜用飼料、家禽用飼料、養殖魚介類用飼料等が挙げられる。「飼料」には、動物が栄養目的で経口的に摂取するもの全てが含まれる。より具体的には、養分含量の面から分類すると、粗飼料、濃厚飼料、無機物飼料、特殊飼料の全てを包含し、また公的規格の面から分類すると、配合飼料、混合飼料、単体飼料の全てを包含する。また、給餌方法の面から分類すると、直接給餌する飼料、他の飼料と混合して給餌する飼料、又は飲料水に添加し栄養分を補給するための飼料の全てを包含する。
0026
上述した骨代謝改善剤は、ヒト又はヒト以外の動物の骨代謝を改善することができるため、骨折、骨粗しょう症、骨軟化症等の骨関連疾患の予防用、治療用として用いられることもできる。
0027
一実施形態に係る骨形成促進剤及び骨吸収抑制剤の具体的な態様は、上述した骨代謝改善剤における態様と同様であってよい。すなわち、一実施形態に係る骨形成促進剤、又は骨吸収抑制剤は、上述した骨代謝改善剤に関する説明において、「骨代謝改善剤」を「骨形成促進剤」又は「骨吸収抑制剤」と読み替えたものであってよい。
0028
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
0029
<試験例1:骨芽細胞分化促進試験>
アスコルビン酸で刺激することにより成熟骨芽細胞に分化する、マウス頭蓋冠由来細胞MC3T3−E1(以下、「MC3T3−E1細胞」ともいう。)と、骨芽細胞の分化マーカーの1つであるアルカリホスファターゼ(ALP)を用いて、フロレト酸の骨芽細胞分化促進効果を評価した。試験試料としては、表1に示すものを用いた。
0030
フロレト酸をエタノールに溶解させ、50mg/mLの試験液原液を調製した。試験液原液を分化誘導培地で希釈し、フロレト酸の250μg/mL(実施例1)及び125μg/mL(実施例2)の試験液を調製した。
MC3T3−E1細胞を、継代培地を入れた24ウェルプレートに播種後3日間培養した。継代培地を交換し、更に2日間培養した。培養後、継代培地を除去し、各濃度の試験液を添加した(分化誘導開始)。この際、2vol%エタノールを含有する分化誘導培地を試験液の代わりに添加したものを未処置対照(比較例1)として同様に試験を行った。2日間培養後、培養上清を、試験液を含有する分化誘導培地(比較例1においては2vol%エタノールを含有する分化誘導培地)に交換し、更に3日間培養した。培養後、培養上清を除去し、Lysis緩衝液を加え、室温下、20分間静置した。その後超音波処理により細胞溶解液を得た。細胞溶解液を一部分取後、基質溶液を加え、37℃で10分間反応させて、反応液を得た。
0031
得られた反応液について、マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2e、Molecular Devices社)を用いて吸光度を測定することにより、細胞溶解液中のALPと基質の反応により生じたp−ニトロフェノールの吸光度を測定した(測定波長:405nm)。
未処置対照(比較例1)の吸光度に対する各反応液の吸光度から、次式によりALP活性を算出した。下記式中、Saは各反応液の吸光度、CNは未処置対照の吸光度の平均値(n=3)を示す。
ALP活性(%)=Sa/CN×100
0032
ALP活性を算出した結果、未処置対照(比較例1)が100±8.2%(平均値(n=3)±標準偏差、以下同様)であるのに対して、実施例1では182±4.3%、実施例2では196±18.5%であった。ALP活性が高いほど骨芽細胞の分化が促進されているといえる。
0033
<試験例2:破骨細胞分化抑制試験>
0.5%DMSO培地を用いて、フロレト酸の250μg/mL溶液を調製し、これを試験液とした(実施例3)。
ヒト破骨前駆細胞(コスモバイオ(株)、PT−267、Lot.RBW−F−OSH−HBV)を96ウェルプレートに播種した(約0.3×105cells/50μL/ウェル)。試験液を50μL/ウェル添加して、37℃、5%CO2下の条件で7日間培養した。TRAP染色キット(AK04F、PMC社)を用いて培養した細胞をTRAP染色し、顕微鏡による観察を行った後、520nmの吸光度を測定した。試験液無添加の未処置対照(比較例2)についても同様に試験を行った。
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