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技術 鋼板

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 諸星隆宮嵜雅文加藤雄一郎土田真也
出願日 2018年11月28日 (2年0ヶ月経過) 出願番号 2018-222355
公開日 2020年6月4日 (6ヶ月経過) 公開番号 2020-084281
状態 未査定
技術分野 溶融状態での鋼の処理
主要キーワード サイズ側 平均原子量 ギヤ形状 合金ワイヤー 超ハイテン 動力伝達シャフト 成分条件 割れ起点
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年6月4日)のものです。
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図面 (5)

課題

加工時や使用時に破壊と起点となり得る介在物個数が少なく、清浄度に優れており、高強度が要求される用途でも好適に使用可能な鋼板を提供する。

解決手段

C、Si、Mn、Al、Ti、Cr、Ca、REMを所定の範囲で含有し、残部が鉄及び不純物からなり、前記不純物のうちP,S.O,Nを所定値以下に制限し、鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa、(4)式に示すb、(5)式に示すcを用いて、以下の(6)式、(7)式、(8)式を満足するとともに、鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm2以下である。

概要

背景

上述の自動車部品等においては、多くの鋼材が使用されており、その素材となる鋼板に対して、さらなる清浄度が求められている。
例えば、足回り部品には、走行中に絶えず加わる振動や衝撃に対して、耐疲労特性耐衝撃性が求められる。そのため、破壊起点となる非金属介在物をできるだけ低減することが重要である。この様な用途の鋼材例として、中空スタビライザーに加工される電縫鋼管の素材となる鋼板が挙げられる。
また、自動車の軽量化による燃費向上や、安全性の向上を目的として、使用鋼材高強度化進展している。いわゆる、「ハイテン」(引張強度590MPa以上)や「超ハイテン」(同980MPa以上)の使用比率が増えつつある。もともと自動車部品は形状が複雑な場合が多く、高強度すなわち変形しにくい鋼板ほど、加工時に、介在物が破壊起点となって割れ発生頻度が高くなる。高強度鋼板における高清浄化は大きな課題である。
このように、介在物は、最終製品の使用時、あるいは部品製造加工時の種々の課題を引き起こすため、鋼板の清浄性向上が強く求められている。

介在物の中では、圧延時に大きく延伸し、時には圧延方向長さが数百μmにも及ぶMnSが、特に問題視される。鋳片における粗大MnS生成を防止するため、従来、溶鋼をCa処理して、主にCaSとしてSを固定することによってMnS生成を抑制する、あるいは、鋳造工程で未凝固軽圧下を行って鋳片の中心偏析を低減する、などの対策が行われている。
しかしながら、上述した鋼材の高強度化のために、近年、Mn量を増やした鋼種の採用が増えており、例えば、Mn−B鋼「26MnB5」(成分範囲の例、単位は質量%/C:0.23〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:1.10〜1.40%、B:0.0015〜0.0040%)が、自動車部品用素材として使用が増えている。Mnの含有量の増加に伴って上述のMnSが生成し易くなるので、MnSの低減が重要な課題になっている。

そこで、従来から、鋼板の清浄性を高め、材質特性を向上させるために、様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1においては、S、Ca、REMの含有量を規定して、Mnと結合するS量を低減することで、延伸MnSの低減を図るとともに、円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度を200個/mm2以上、2000個/mm2以下に規定している。
また、特許文献2においては、圧延方向に伸長した介在物の長径を50μm以下とするために、Caを1種含有する場合、REMを1種含有する場合、Ca、REMの2種を複合含有する場合において、それぞれCa、REMの含有量を規定している。
さらに、特許文献3においては、粒径:10μm以上のTiS粒子および粒径:10μm以上のMnS粒子をそれぞれ、JIS G 0555に準拠して点算法で求めた清浄度が0.1%以下(但し、0%を含む)となる組織を有するものとしている。

概要

加工時や使用時に破壊と起点となり得る介在物の個数が少なく、清浄度に優れており、高強度が要求される用途でも好適に使用可能な鋼板を提供する。C、Si、Mn、Al、Ti、Cr、Ca、REMを所定の範囲で含有し、残部が鉄及び不純物からなり、前記不純物のうちP,S.O,Nを所定値以下に制限し、鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa、(4)式に示すb、(5)式に示すcを用いて、以下の(6)式、(7)式、(8)式を満足するとともに、鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm2以下である。なし

目的

本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、加工時や使用時に破壊の起点となり得る介在物の個数が少なく、清浄度に優れており、高強度が要求される用途でも好適に使用可能な鋼板を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.05%超え0.48%未満、Si:0%以上0.60%以下、Mn:0.40%以上2.0%以下、Al:0.003%以上0.080%以下、Ti:0%以上0.060%以下、Cr:0%以上0.70%以下、Ca:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下、を含有し、残部が鉄及び不純物からなり、前記不純物のうちP,S,O,Nを、P:0.020%以下、S:0.0034%以下、O:0.0040%以下、N:0.0075%以下、に制限し、鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa、(4)式に示すb、(5)式に示すcを用いて、以下の(6)式、(7)式、(8)式を満足するとともに、鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物個数密度が100個/mm2以下であることを特徴とする鋼板。(1)式:[REM_1]=−0.0161×[Al]−0.2030×[S]+[O]+0.0008(2)式:[REM_2]=0.0139×[Al]−0.0791×[S]+1.6×[O]−0.0007(3)式:a=2.5765×[Al]+265.56×[S]−266.33×[O]+0.2621(4)式:b=0.01469×[Al]−0.0399×[S]+[O]−0.0004(5)式:c=0.0070×[Al]+0.0951×[S]+0.4×[O]−0.0003(6)式:[REM]<[REM_1]の場合、[Ca]≧a×[REM]+b(7)式:[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の場合、[Ca]≧a×[REM_1]+b(8)式:[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の場合、[Ca]≧c

請求項2

さらに、質量%で、Cu:0%以上0.05%以下、Nb:0%以上0.05%以下、V:0%以上0.05%以下、Mo:0%以上0.05%以下、Ni:0%以上0.05%以下、B:0%以上0.0050%以下、からなる群から選択される一種又は二種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼板。

請求項3

内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、以下の(9)式、又は、(10)式を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼板。(9)式:(CaO)/(Al2O3)≧1.35(10)式:(REM2O3)/{(Al2O3)+(CaO)+(REM2O3)}≧0.45

技術分野

0001

本発明は、主に自動車部品(例えば、スタビライザーなどの足回り部品シャーシサイドインパクトビームなどの安全関連部品等)の素材として用いられる鋼板に関するものであり、特に、介在物が少なく清浄度に優れた鋼板に関するものである。

背景技術

0002

上述の自動車部品等においては、多くの鋼材が使用されており、その素材となる鋼板に対して、さらなる清浄度が求められている。
例えば、足回り部品には、走行中に絶えず加わる振動や衝撃に対して、耐疲労特性耐衝撃性が求められる。そのため、破壊起点となる非金属介在物をできるだけ低減することが重要である。この様な用途の鋼材例として、中空スタビライザーに加工される電縫鋼管の素材となる鋼板が挙げられる。
また、自動車の軽量化による燃費向上や、安全性の向上を目的として、使用鋼材高強度化進展している。いわゆる、「ハイテン」(引張強度590MPa以上)や「超ハイテン」(同980MPa以上)の使用比率が増えつつある。もともと自動車部品は形状が複雑な場合が多く、高強度すなわち変形しにくい鋼板ほど、加工時に、介在物が破壊起点となって割れ発生頻度が高くなる。高強度鋼板における高清浄化は大きな課題である。
このように、介在物は、最終製品の使用時、あるいは部品製造加工時の種々の課題を引き起こすため、鋼板の清浄性向上が強く求められている。

0003

介在物の中では、圧延時に大きく延伸し、時には圧延方向長さが数百μmにも及ぶMnSが、特に問題視される。鋳片における粗大MnS生成を防止するため、従来、溶鋼をCa処理して、主にCaSとしてSを固定することによってMnS生成を抑制する、あるいは、鋳造工程で未凝固軽圧下を行って鋳片の中心偏析を低減する、などの対策が行われている。
しかしながら、上述した鋼材の高強度化のために、近年、Mn量を増やした鋼種の採用が増えており、例えば、Mn−B鋼「26MnB5」(成分範囲の例、単位は質量%/C:0.23〜0.28%、Si:0.15〜0.35%、Mn:1.10〜1.40%、B:0.0015〜0.0040%)が、自動車部品用素材として使用が増えている。Mnの含有量の増加に伴って上述のMnSが生成し易くなるので、MnSの低減が重要な課題になっている。

0004

そこで、従来から、鋼板の清浄性を高め、材質特性を向上させるために、様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1においては、S、Ca、REMの含有量を規定して、Mnと結合するS量を低減することで、延伸MnSの低減を図るとともに、円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度を200個/mm2以上、2000個/mm2以下に規定している。
また、特許文献2においては、圧延方向に伸長した介在物の長径を50μm以下とするために、Caを1種含有する場合、REMを1種含有する場合、Ca、REMの2種を複合含有する場合において、それぞれCa、REMの含有量を規定している。
さらに、特許文献3においては、粒径:10μm以上のTiS粒子および粒径:10μm以上のMnS粒子をそれぞれ、JIS G 0555に準拠して点算法で求めた清浄度が0.1%以下(但し、0%を含む)となる組織を有するものとしている。

先行技術

0005

特開2012−224915号公報
特開2008−081823号公報
公表WO2017/056384号公報

発明が解決しようとする課題

0006

ところで、最近では、自動車の軽量化等を目的として、自動車部品の素材となる鋼板に対しては、さらなる高強度化が求められている。鋼板の高強度化にともなって、従来、問題にならなかった介在物のサイズや量であっても、破壊起点になり易くなっている。このため、MnS以外の介在物を含めて、介在物の低減対策(清浄化対策)の重要性増している。
介在物の大半を占める酸化物量目安として、鋼成分のトータル酸素濃度(T.O)が管理値として広く使用されている。T.O値が高い場合、鋼中の酸化物量が多いと見なせるので、清浄度が高い鋼板を製造するためには、T.Oを適切に管理する必要がある。
ここで、上述の特許文献1−3においては、T.Oを考慮しておらず、問題となる介在物の個数を十分に低減することができなかった。

0007

本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、加工時や使用時に破壊の起点となり得る介在物の個数が少なく、清浄度に優れており、高強度が要求される用途でも好適に使用可能な鋼板を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

上述の課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。
圧延方向に延伸した介在物は、先端が切欠き状であるため、特に有害である。また、非延伸介在物であっても、粗大なものは有害性が高く、低減することが重要である。ここで、延伸介在物としては、上述したMnSに加えて、低融点酸化物が挙げられる。

0009

低融点酸化物は、一般には、溶鋼中(標準的には1600℃を想定)で液相である酸化物を指すことが多い。圧延温度では固相であるが、低融点であるために、容易に変形・延伸する。MnSに比べると延伸の程度(アスペクト比)は低いが、高強度鋼板では問題視されるようになっている。例えば、Ca処理時に、低融点組成であるCaO−Al2O3系酸化物が生じて、延伸する例が観察される。低融点組成を避ける手段として、[T.O]を規制・制御する、あるいは所与の[T.O]に応じて、[Ca]を制御し、酸化物を高融点組成に制御することが有効である。

0010

また、非延伸介在物としては、鋼種や用途によっては、TiSなど硫化物、Ti(C)Nなど(炭)窒化物が生成する場合もあるが、本発明では、主な介在物である酸化物を想定して説明する。従来、非延伸介在物については、まず、サイズが問題視され、粗大な介在物(酸化物)を除去する対策が重視されてきた。しかし、鋼板の高強度化や安全性重視を背景に、従来は問題視されていなかったサイズや個数(量)でも、一段と低減(清浄化)が要求されるようになっている。そこで、溶鋼中から酸化物を浮上除去するために、二次精錬撹拌時間を延長することが広く行われている。酸化物の総量は、鋼中[T.O]が指標となる。例えば、高清浄度が特に求められる軸受鋼では、[T.O]が厳しく管理されており、撹拌時間延長により、[T.O]が着実に低減する。

0011

本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明に係る鋼板は、質量%で、
C:0.05%超え0.48%未満、
Si:0%以上0.60%以下、
Mn:0.40%以上2.0%以下、
Al:0.003%以上0.080%以下、
Ti:0%以上0.060%以下、
Cr:0%以上0.70%以下、
Ca:0.0003%以上0.0050%以下、
REM:0.0003%以上0.0050%以下、
を含有し、残部が鉄及び不純物からなり、前記不純物のうちP,S,O,Nを、
P:0.020%以下、
S:0.0034%以下、
O:0.0040%以下、
N:0.0075%以下、
に制限し、
鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa、(4)式に示すb、(5)式に示すcを用いて、以下の(6)式、(7)式、(8)式を満足するとともに、鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm2以下であることを特徴としている。
(1)式:[REM_1]=−0.0161×[Al]−0.2030×[S]+[O]+0.0008
(2)式:[REM_2]=0.0139×[Al]−0.0791×[S]+1.6×[O]−0.0007
(3)式:a=2.5765×[Al]+265.56×[S]−266.33×[O]+0.2621
(4)式:b=0.01469×[Al]−0.0399×[S]+[O]−0.0004
(5)式:c=0.0070×[Al]+0.0951×[S]+0.4×[O]−0.0003
(6)式:[REM]<[REM_1]の場合、[Ca]≧a×[REM]+b
(7)式:[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の場合、[Ca]≧a×[REM_1]+b
(8)式:[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の場合、[Ca]≧c

0012

このような構成の鋼板によれば、上述のように、T.Oを考慮して、REMとCaの関係を規定していることから、CaやREMが酸化物を形成しても、Sと結合するCaやREM量が確保され、MnS系介在物を低減することが可能となる。
また、鋼中のCa、REM、T.Al、T.O、Sの各量の関係を上述のように規定しているので、介在物中のAl2O3の比率を低減でき、低融点酸化物の生成を抑制することが可能となる。さらに、CaとREMを複合添加し、酸化物の主要組成を、REM2O3を含有する三元系、Al2O3−CaO−REM2O3系とすることで、圧延時の破砕性が増し、圧延後のサイズが微細化するので、有害性を低減できる。
さらに、円相当径1.0μm以上の介在物個数密度を100個/mm2以下に規定しているので、破壊の起点となる介在物の個数が十分に低減されている。
よって、使用時や加工時におけるクラック等の発生が抑制された高品位な鋼板を提供することができる。

0013

ここで、本発明の鋼板においては、さらに、質量%で、
Cu:0%以上0.05%以下、
Nb:0%以上0.05%以下、
V:0%以上0.05%以下、
Mo:0%以上0.05%以下、
Ni:0%以上0.05%以下、
B:0%以上0.0050%以下、
からなる群から選択される一種又は二種以上を含む構成としてもよい。
この場合、上述の元素をさらに含有することで、鋼板の様々な特性を向上させることが可能となる。

0014

また、本発明の鋼板においては、内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、以下の(9)式、又は、(10)式を満足することが好ましい。
(9)式:(CaO)/(Al2O3)≧1.35
(10)式:(REM2O3)/{(Al2O3)+(CaO)+(REM2O3)}≧0.45
この場合、介在物の組成が上述のように規定されているので、介在物の融点を低下させることを抑制でき、低融点酸化物に起因する延伸介在物の個数をさらに低減することが可能となる。

発明の効果

0015

上述のように、本発明によれば、加工時や使用時に破壊の起点となり得る介在物の個数が少なく、清浄度に優れており、高強度が要求される用途でも好適に使用可能な鋼板を提供することが可能となる。

図面の簡単な説明

0016

ラボ実験における延伸介在物の発生状況を示すグラフである。
[T.O]によって層別した結果を示すグラフである。(a)が[T.O]:0.0005%以上0.0012%未満、(b)が[T.O]:0.0012%以上0.0017%未満、(c)が[T.O]:0.0017%以上0.0025%未満
ラボ実験における延伸介在物の生成を抑制する条件を示すグラフである。
延伸介在物の個数密度とシャルピー吸収エネルギーとの関係を示すグラフである。
円相当径≧1.0μmの介在物の個数密度と延伸介在物の個数密度との関係を示すグラフである。

0017

以下に、本発明の実施形態である鋼板について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。

0018

本実施形態である鋼板は、質量%で、C:0.05%超え0.48%未満、Si:0%以上0.60%以下、Mn:0.40%以上2.0%以下、Al:0.003%以上0.080%以下、Ti:0%以上0.060%以下、 Cr:0%以上0.70%以下、Ca:0.0003%以上0.0050%以下、REM:0.0003%以上0.0050%以下、を含有し、残部が鉄及び不純物からなる組成を有し、さらに、前記不純物のうちP,S,O,Nを、P:0.020%以下、S:0.0034%以下、O:0.0040%以下、N:0.0075%以下、に制限している。

0019

そして、鋼中の各成分元素Mの質量比を[M]で表示した場合に、[REM]を以下の(1)式で示す第1閾値[REM_1]、及び、(2)式で示す第2閾値[REM_2]によって3つの領域に区別し、それぞれの領域において、鋼中のCa量[Ca]が、以下の(3)式に示すa、(4)式に示すb、(5)式に示すcを用いて、以下の(6)式、(7)式、(8)式を満足するように規定されている。
(1)式:[REM_1]=−0.0161×[Al]−0.2030×[S]+[O]+0.0008
(2)式:[REM_2]=0.0139×[Al]−0.0791×[S]+1.6×[O]−0.0007
(3)式:a=2.5765×[Al]+265.56×[S]−266.33×[O]+0.2621
(4)式:b=0.01469×[Al]−0.0399×[S]+[O]−0.0004
(5)式:c=0.0070×[Al]+0.0951×[S]+0.4×[O]−0.0003
(6)式:[REM]<[REM_1]の場合、[Ca]≧a×[REM]+b
(7)式:[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の場合、[Ca]≧a×[REM_1]+b
(8)式:[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の場合、[Ca]≧c

0020

さらに、本実施形態である鋼板においては、鋼中に含まれる円相当径が1.0μm以上の介在物の個数密度が100個/mm2以下とされている。

0021

なお、本実施形態である鋼板においては、必要に応じて、さらに、質量%で、Cu:0%以上0.05%以下、Nb:0%以上0.05%以下、V:0%以上0.05%以下、Mo:0%以上0.05%以下、Ni:0%以上0.05%以下、B:0%以上0.0050%以下、からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでいてもよい。

0022

さらに、本実施形態である鋼板においては、内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、以下の(9)式、又は、(10)式を満足するものとしてもよい。
(9)式:(CaO)/(Al2O3)≧1.35
(10)式:(REM2O3)/{(Al2O3)+(CaO)+(REM2O3)}≧0.45

0023

以下に、本実施形態である鋼板において、各成分を上述のように規定した理由について説明する。

0024

(C:0.05%超0.48%未満)
C(炭素)は、鋼板の強度(硬度)を確保するうえで重要な元素である。C含有量を0.05%超とすることにより、用途や加工方法に適した鋼板の強度を確保する。一方、C含有量が0.48%以上になると、強度が高くなり過ぎ、加工性を確保する熱処理に長時間を要するので、熱処理を長時間化しなければ鋼板の加工性が悪化するおそれがある。よって、C含有量を0.05%超0.48%未満の範囲に制御する。

0025

(Si:0%以上0.60%以下)
Si(ケイ素)は、脱酸剤として作用し、また、焼入れ性を高めて鋼板の強度(硬度)を向上させるのに有効な元素である一方で、熱間圧延時のスケール疵に起因する鋼板の表面性状の劣化を招くおそれがある。例えば、動力伝達シャフトの様に非常に大きなねじれ応力が加わる部品では表面の微小凹凸亀裂発生起点となる可能性があり、安全性に直結するため、意図的に添加しない場合もある。それ以外の通常の使用では、上記効果を得るために0.10%以上添加することが多い。ただし、通常の使用でも、0.60%を超えると、熱間圧延時のスケール疵に起因する鋼板の表面性状の劣化が顕著になる。よって、Si含有量を0%以上0.60%以下の範囲に制御する。
なお、意図的に添加する場合のSi含有量の下限は0.10%以上であることが好ましく、Si含有量の上限は0.55%以下であることが好ましい。

0026

(Mn:0.40%以上2.0%以下)
Mn(マンガン)は、脱酸剤として作用する元素であるとともに、焼入れ性を高めて鋼板の強度(硬度)を向上させるのに有効な元素である。Mn含有量が0.40%未満では、その効果が十分得られない。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、鋼板の加工性が劣化するおそれがある。よって、Mn含有量を0.40%以上2.0%以下の範囲に制御する。
なお、Mn含有量の下限は0.90%以上であることが好ましく、Mn含有量の上限は1.65%以下であることが好ましい。

0027

(Al:0.003%以上0.080%以下)
Al(アルミニウム)は、脱酸剤として作用する元素であるとともに、Nを固定することで鋼板の加工性を高めるのに有効な元素である。Al含有量が0.003%未満では、上記含有効果が十分に得られないので、0.003%以上を含有させる必要がある。一方、Al含有量が0.080%を超えると、上記含有効果は飽和し、さらに、粗大な介在物が増加する。この粗大な介在物によって、加工性が劣化する、または表面疵が発生し易くなるおそれがある。よって、Al含有量を0.003%以上0.080%以下の範囲に制御する。
なお、Al含有量の下限は0.020%以上であることが好ましく、Al含有量の上限は0.050%以下であることが好ましい。

0028

(Ti:0%以上0.060%以下)
Ti(チタン)は、炭窒化物を形成することにより強度を高める効果があるので、必要に応じて、0.060%以下の範囲内で含有させても良い。一方、Ti含有量が0.060%を超えると、粗大な角状の炭窒化物が形成されやすくなり、加工性の劣化が顕在化する。よって、Ti含有量を0.060%以下に制限する。Ti含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、Ti含有量の下限は0.0005%以上であってもよい。

0029

(Cr:0%以上0.70%以下)
Cr(クロム)は、焼入れ性を高めて鋼板の強度(硬度)を向上させるのに有効な元素である。そのため、必要に応じて、Crを0.70%以下の範囲内で含有させても良い。また、Cr含有量の下限値を0.10%とすると、好ましく上記効果を得ることができる。Cr含有量が0.70%を超えると、コストが増える一方で、含有効果は飽和する。よって、Cr含有量を0.70%以下に制御する。

0030

(Ca:0.0003%以上0.0050%以下)
Ca(カルシウム)は、MnSを低減して介在物の形態を制御し、これにより鋼板の加工性を向上させるために有効な元素である。Ca含有量が0.0003%未満では、上記効果が十分に得られない。一方、Ca含有量が0.0050%を超えると、酸化物、および/またはCaS系介在物などが粗大化し、これらによって鋼板の加工性が悪化するおそれがある。さらに、Ca含有量が0.0050%を超えると、ノズル耐火物溶損しやすくなることにより連続鋳造操業が安定しなくなるおそれがある。よって、Ca含有量を0.0003%以上0.0050%以下の範囲に制御する。
なお、Ca含有量の下限は0.0010%以上とすることが好ましく、Ca含有量の上限は0.0035%以下とすることが好ましい。

0031

(REM:0.0003%以上0.0050%以下)
REM(Rare Earth Metal)は希土類元素を意味し、スカンジウムSc(原子番号21)、イットリウムY(原子番号39)およびランタノイド(原子番号57のランタンから原子番号71のルテシウムまでの15元素)の17元素の総称である。本実施形態に係る鋼板では、これらのうちから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有する。一般的に、REMとして、入手のし易さから、Ce(セリウム)、La(ランタン)、Nd(ネオジム)、Pr(プラセオジム)などから選ばれることが多い。添加方法としては、例えば、鋼中にこれらの元素の混合物であるミッシュメタルとして添加することが広く行われている。ミッシュメタルの主成分はCe、La、Nd、およびPrである。本実施形態に係る鋼板では、鋼板に含有されるこれら希土類元素の合計量を、REM含有量とする。なお、本実施形態では、ミッシュメタルの平均原子量が約140であるので、REMの原子量を140としている。

0032

REMは、MnSを低減して介在物の形態を制御し、鋼板の加工性を向上させるために有効な元素である。REM含有量が0.0003%未満では、上記効果が十分に得られない。一方、REM含有量が0.0050%を超えると、連続鋳造時ノズル詰まりが起こりやすくなる。また、REM含有量が0.0050%を超えると、生成するREM系介在物(酸化物やオキシサルファイド)の個数密度が比較的高くなるので、鋳片の連続鋳造時に湾曲する鋳片の下面側にこれらREM系介在物が堆積する。このことが、鋳片を圧延して得られた製品内部欠陥を引き起こし、さらに、鋼板の加工性を悪化させるおそれがある。よって、REM含有量を0.0003%以上0.0050%以下の範囲に制御する。
なお、REM含有量の下限は0.0010%以上とすることが好ましく、REM含有量の上限を0.0030%以下とすることが好ましい。

0033

さらに、Ca及びREMの含有量を、S、T.O、T.Alの含有量に応じて、制御する必要がある。具体的には、化学成分中の各元素の質量%で示した含有量を、上述の(1)〜(8)式によって表わされる範囲に制御する必要がある。この式(1)〜(8)の理由については後述する。

0034

本実施形態に係る鋼板は、上記した基本成分の他に、不純物を含有する。ここで、不純物とは、スクラップ等の副原料や、製造工程からに混入する、P、S、O、N、Cd、Zn、Sb、W、Mg、Zr、As、Co、Sn、およびPb等の元素を意味する。これら元素の含有は必須ではないので、これら元素の含有量の下限値は0%である。この中で、P、S、O、及びNは、上記効果を好ましく発揮させるために、以下のように制限する。また、P、S、O、及びN以外の上記不純物は、それぞれ0.01%以下に制限することが好ましい。ただ、これらの不純物が、0.01%以下含まれても、上記効果を失するものではない。ここで、記載する%は、質量%である。

0035

(P:0.020%以下)
P(リン)は、固溶強化の機能を有する。しかし、過剰な量のPの含有は、鋼板の加工性を阻害する。よって、P含有量を0.020%以下に制限する。P含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、P含有量の下限は0.005%以上であってもよい。

0036

(S:0.0034%以下)
S(硫黄)は、MnSを主とする非金属介在物を形成することにより、鋼板の加工性を阻害する不純物元素である。よって、S含有量を0.0034%以下に制限し、好ましくは、0.0020%以下に制限する。S含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、S含有量の下限は0.0003%以上であってもよい。

0037

(O:0.0040%以下)
O(酸素)は、酸化物(非金属介在物)を形成し、この酸化物が凝集および粗大化することにより、また、酸化物の組成によっては圧延時に延伸することにより、鋼板の加工性を低下させる不純物元素である。よって、O含有量を0.0040%以下に制限する。O含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、O含有量の下限は0.0005%以上であってもよい。本実施形態に係る鋼板のO含有量は、鋼中に固溶するOや、介在物中に存在するOなどの、すべてのO含有量を合計したトータルO含有量(T.O含有量)を意味する。

0038

T.Oの含有量は、酸化物の組成、および酸化物の総量に大きく影響するので、制御することは非常に重要である。したがって、T.Oは、Ca及びREMの含有量を規定する上述の(1)〜(8)式に、S、Alと共に含まれている。定性的には、延伸酸化物を(同一のREM、Ca量の組み合わせに対して)低減するために、かつ、酸化物総量を低減するために、T.Oを低減することが好ましい。T.Oを低減するために、例えば、二次精錬の撹拌時間を延長して、介在物の浮上除去を促進することが行われている。

0039

(N:0.0075%以下)
N(窒素)は、窒化物(非金属介在物)を形成し、鋼板の加工性を低下させる不純物元素である。よって、N含有量を0.0075%以下に制限する。N含有量の下限は0%でもよい。また、現行の一般的な精錬(二次精錬を含む)を考慮すると、N含有量の下限は0.0010%であってもよい。

0040

本実施形態に係る鋼板は、上記の基本成分が制御され、残部が鉄及び上記の不純物よりなる。しかし、本実施形態に係る鋼板は、この基本成分に加えて、残部のFeの一部の代わりに、さらに必要に応じて以下の選択成分を鋼中に含有させてもよい。

0041

すなわち、本実施形態に係る熱延鋼板は、上記した基本成分及び不純物の他に、更に、選択成分として、Cu、Nb、V、Mo、Ni、Bのうちの1種以上を含有してもよい。以下に、選択成分の数値限定範囲とその限定理由とを説明する。ここで、記載する%は、質量%である。

0042

(Cu:0%以上0.05%以下)
Cu(銅)は、鋼板の強度(硬度)を向上させる効果を有する選択元素である。そのため、必要に応じて、Cuを0.05%以下の範囲内で含有させても良い。また、Cu含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Cu含有量が0.05%を超えると、溶融金属脆化(Cu割れ)によって熱間圧延時に熱間加工割れが生じるおそれがある。なお、Cu含有量の好ましい範囲は0.02%以上0.04%以下である。

0043

(Nb:0%以上0.05%以下)
Nb(ニオブ)は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止および鋼板の加工性の改善に有効な選択元素である。そのため、必要に応じて、Nbを0.05%以下の範囲内で含有させても良い。また、Nb含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Nb含有量が0.05%を超えると、粗大なNb炭窒化物析出して鋼板の加工性の低下を招くおそれがある。なお、Nb含有量の好ましい範囲は0.02%以上0.04%以下である。

0044

(V:0%以上0.05%以下)
V(バナジウム)は、Nbと同様に炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化防止や加工性の改善に有効な選択元素である。そのため、必要に応じて、Vを0.05%以下の範囲内で含有させても良い。また、V含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、V含有量が0.05%を超えると、粗大なV炭窒化物が生成して鋼板の加工性の低下を招くおそれがある。なお、V含有量の好ましい範囲は0.02%以上0.04%以下である。

0045

(Mo:0%以上0.05%以下)
Mo(モリブデン)は、焼入れ性の向上と焼戻し軟化抵抗性の向上とにより、鋼板の強度(硬度)を向上させる効果を有する選択元素である。そのため、必要に応じて、Moを0.05%以下の範囲内で含有させても良い。また、Mo含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Mo含有量が0.05%を超えると、コストが増加し、且つ含有効果は飽和する。さらに、Mo含有量が0.05%を超えると、鋼板の加工性、特に冷間加工性が低下し、これにより、鋼板を複雑な形状(例えばギヤ形状など)に加工することが困難になる。以上の理由により、Mo含有量の上限を0.05%とする。なお、Mo含有量の好ましい範囲は0.01%以上0.05%以下である。

0046

(Ni:0%以上0.05%以下)
Ni(ニッケル)は、焼入れ性の向上による鋼板の強度(硬度)の向上や、加工性の向上に有効な選択元素である。また、Cu含有時の溶融金属脆化(Cu割れ)を防止する効果も有する選択元素である。そのため、必要に応じて、Niを0.05%以下の範囲内で含有させても良い。また、Ni含有量の下限を0.01%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、Ni含有量が0.05%を超えると、コストが増加する一方で、含有効果は飽和するので、Ni含有量の上限を0.05%とする。なお、Ni含有量の好ましい範囲は0.02%以上0.05%以下である。

0047

(B:0%以上0.0050%以下)
B(ホウ素)は、焼入れ性を高めて鋼板の強度(硬度)を向上させる効果を有する選択元素である。そのため、必要に応じて、Bを0.0050%以下の範囲内で含有させても良い。また、B含有量の下限を0.0008%以上とすると、好ましく上記効果を得ることができる。一方、B含有量が0.0050%を超えると、B系化合物が生成して鋼板の加工性が低下するので上限を0.0050%とする。なお、B含有量の好ましい範囲は0.0015%以上0.0040%以下である。

0048

次に、介在物の個数、式(1)〜(10)を、上述のように規定するための知見を得たラボ実験の結果について説明する。

0049

真空溶解炉で、質量%で、C:0.25%以上0.28%以下、Si:0.22%以上0.27%以下、Mn:1.20%以上1.31%以下、P:0.006%以上0.008%以下、S:0.0017%以上0.0023%以下、T.Al:0.022%以上0.028%以下、Cr:0.10%以上0.17%以下、Ti:0.022%以上0.026%以下、B:0.0022%以上0.0033%以下、T.O:0.0005%以上0.0025%以下を含有する複数種類の溶鋼を溶製し、さらに、REMとCaのそれぞれの量を変えて添加して、50kgインゴットを作製した。REMは、Ce、La、Ndを含むミッシュメタルを添加した。これらのインゴットを、5mm厚に、仕上圧延温度が920℃の条件で熱間圧延し、空冷して熱延鋼板を得た。なお、上記ならびに以降で本発明で記載した各成分値は、添加量ではなく、鋼板の分析値(含有量)である。

0050

本実施形態においては、鋼中含有量や、介在物組成を記載するが、単位は全て質量%で表記する。そして、鋼中含有量を、元素記号Mを矩形括弧で挟んで[M]と表記する。介在物中の化合物MXの含有量は、化合物MXを丸括弧で挟んで(MX)と表記する。例えば、Caの鋼中含有量は[Ca]と表記する。また、介在物中のCaOの含有量は(CaO)と表記する。

0051

この熱延鋼板の圧延方向と板厚方向とに平行な断面(L断面)を観察面として、熱延鋼板中の介在物を、光学顕微鏡により倍率400倍(ただし、介在物形状を詳細に測定する際は倍率1000倍)で、合計60視野にて観察した。各観察視野で、粒径(形状が球状の介在物の場合)または長径(変形している介在物の場合)が1μm以上の介在物を観察し、それらの介在物を、(長径)/(短径)で計算されるアスペクト比が3.0以下のものと、3.0を超えるものに分類し、それらの個数密度を計測した。アスペクト比>3.0の介在物個数密度が、6個/mm2を超えた試料を「劣位」、6個/mm2以下を「良好」と評価した。

0052

また、EPMA(電子マイクロ分析、Electron Probe Micro Analysis)、またはEDX(エネルギー分散X線分析、Energy Dispersive X−Ray Analysis)を備えるSEM走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)を用いて熱延鋼板中の介在物を分析した。

0053

そして、上記で得られた熱延鋼板の靭性の指標として、室温(20℃)におけるシャルピー衝撃値を測定した。シャルピー試験片は、鋼板のC方向から採取したサブサイズである。すなわち、試験片長さ55mmを鋼板の幅方向として、試験片高さを鋼板長手(圧延)方向10mm、試験片幅を鋼板厚み方向2.5mmとして採取した。55mm長さ×2.5mm幅の面に、2mmVノッチを加工した。この方向で試験片を採取すると、鋼板のL断面が破断面となるので、延伸介在物の影響を評価し易い。鋼板中に、破壊の起点となる介在物の個数が多いほど、また、介在物のサイズ(圧延方向の延伸長さ)が大きいほど、すなわち、鋼板の清浄性が悪いほど、シャルピー衝撃値は低下する。

0054

鋼板中で観察される介在物組成は、MnS、CaS、Al2O3−CaO−REM2O3系酸化物である。上記3種類は、それぞれ単独で存在している場合のほか、例えば、Al2O3−CaO−REM2O3系酸化物の周囲の一部にMnSやCaSが付着する場合のように、複数の相が混合している場合もある。

0055

まず、熱延鋼板の清浄性の調査結果を説明する。図1に、CaとREMの鋳片含有量と延伸介在物の生成状況を示した。図1中の「○」は、アスペクト比>3.0の介在物個数が6個/mm2以下の良好材、図1中の「×」は6個/mm2を超えた劣位材を示す。
ここで、全ての試料をプロットした図1では、良好材と劣位材が混在し、有害な延伸介在物の生成防止の境界条件は不明確であった。

0056

アスペクト比が3.0を超えて延伸した介在物組成をSEMに付属したEDSで分析した結果、(i)単独のMnSが延伸した場合と、(ii)Al2O3−CaO−REM2O3系酸化物で低融点組成である場合(周囲の一部にMnSやCaSが付着する場合もある。EDS分析結果から、周囲に付着したMnSやCaSと、酸化物とを分けて、組成を計算するができる。)であることが分かった。

0057

後者(ii)の組成を詳細解析した結果、介在物中の(CaO)と(Al2O3)の比(CaO)/(Al2O3)<1.35であり、かつ、(REM2O3)/{(Al2O3)+(CaO)+(REM2O3)}<0.45である酸化物が、アスペクト比>3.0に延伸していることが分かった。
一方、(CaO)/(Al2O3)≧1.35であるか、あるいは、(REM2O3)/{(Al2O3)+(CaO)+(REM2O3)}≧0.45であれば、酸化物のアスペクト比≦3.0であった。酸化物の融点が高温化する結果、圧延時に延伸しにくくなるためと考えられる。

0058

介在物の組成である(CaO)、(Al2O3)、(REM2O3)は、SEM付属EDSによる介在物分析結果を基に、元素のマスバランスを考慮して算出することができる。EDS分析結果は、元素別に質量%で出力される。以下の説明では、介在物から検出された元素Mの含有量を(M)と表記する。
(Ca)、(Al)、(REM)のそれぞれから、原子量を用いて、酸化物量を算出し、(9)式、(10)式を計算すればよい。例えば、(Al2O3)は、Alの原子量27と酸素の原子量16を用いて、(27×2+16×3)/(27×2)×(Al)で計算できる。なお、介在物をSEMで観察して、介在物にAlNが生成していないことを確認した(特徴的な角形状なので、SEM観察で容易に判別可能である。ここでは介在物組成に影響するミクロンオーダーサブミクロンオーダーのサイズのAlNの生成を問題にしている。それより小さなAlN析出物の生成は介在物組成には影響しない。)。
基本的には、同様の方法で、(Ca)から(CaO)を、(REM)から(REM2O3)を求めることができる。ここで、(REM)は、検出された希土類元素の合計量、具体的には、本実験で検出されたCe、La、Ndの合計量を(REM)とした。

0059

なお、CaやREMは、酸化物のほか、硫化物を形成するので、Sのマスバランスを考慮して、Sと結合して硫化物を形成するCaやREMを差し引いて、酸化物を形成するCaとREMの量を求めることに注意する必要がある。
具体的には、まず、MnSを形成するS量を、MnとSの原子量を用いて、32/55×(Mn)から計算し、S総量から除く。本実験はAl脱酸鋼なので、介在物から検出されたMnはMnSから検出されたとみなせるからである。このS残量が、CaS、REM2O2S(オキシサルファイド)、REMS(REM原子とS原子がモル比1:1で結合した硫化物)を形成しているS量である。熱力学的に、CaSが最も生成し易く、次にREM2O2S、最後にREMSが生成すると考えられる。この順番で、Sのマスバランスを考慮して、硫化物やオキシサルファイドの生成量を計算すればよい。
こうして求めた硫化物やオキシサルファイドを形成するCaやREMを、それぞれの総量から差し引いた残量が、酸化物を形成しているCa、REM量である。Ca、REM、Oの原子量を用いて、(CaO)、(REM2O3)を計算すればよい。多くの場合、SはMnSとCaSとして存在し、マスバランス上ではREMと結合していなかった。すなわち、CaはCaSとCaOとして、REMは酸化物として存在することが多かった。特にSが多量の場合は、REM2O2SやREMSが生成した例があった。

0060

酸化物組成は、鋼中[T.O]によって変化する。そこで、T.O別にデータ整理すると、アスペクト比>3.0の延伸介在物個数を6個/mm2以下に防止できる条件(以降、生成防止条件と記載)を明確化できることを見出した(図2)。図中記号図1と同様、○:アスペクト比>3.0の延伸介在物個数≦6個/mm2(生成防止範囲)、△:アスペクト比>3の延伸介在物個数>6個/mm2を示す。
生成防止条件(境界線)は、[REM]に応じて、領域I、領域II、領域IIIの3つの領域に分かれる(図3)。

0061

(領域I)
領域Iは、[REM]<[REM_1]であり、[REM]が低い領域である。この領域Iは、[REM]増加に伴って下限[Ca]を増やす必要がある領域である。
まず、[REM]が低い、ある含有量で、[Ca]を増やす場合を考える。当初は、[REM]も[Ca]も低いので、MnSが生成し、圧延時に延伸する。[Ca]増加につれて、SがCaと結合して、MnSは減少し、やがて生成を防止できる。一方、Al2O3−CaO−REM2O3系酸化物が生成するが、[REM]が低い場合はAl2O3−CaO系主体である低融点酸化物であるので、圧延時に延伸する。このように、MnSと低融点酸化物の見かけ上の入れ替わりが生じる。[Ca]を更に増加すると酸化物融点が上昇するので、酸化物の延伸度が減少し、式で規定された下限[Ca]以上を含有すると酸化物の延伸を防止できる。次に、この状態(直前の文に記載した、下限[Ca]以上を含有して酸化物融点が上昇した状態)から、[REM]を増加した場合を考える。[REM]が増加すると、領域Iでは、再び圧延時に延伸する低融点組成介在物が生成する。この理由は、強力な脱酸元素である[REM]増加に伴い、Sと結合する有効Ca量が増加するので、Al2O3−CaO−REM2O3系酸化物中の(CaO)が減少する結果、酸化物の融点が低下するためである。よって、酸化物融点を上昇させて延伸を防止するために、[Ca]を増加することが必要になる。このようにして、領域Iでは、[REM]が増加すると、低融点酸化物を防止するために要する鋼中[Ca]、すなわち下限[Ca]が増加する。

0062

このようにして、領域Iでは、式(6)で規定される下限[Ca]以上を含有して、生成した介在物のうちの酸化物の組成は、式(9):(CaO)/(Al2O3)≧1.35を満たしているので、低融点酸化物の組成となることを回避でき、圧延時の延伸を防止できる。
式(6)を満たさない場合、式(9)を満たさないAl2O3−CaO−REM2O3系の低融点酸化物が生成するので、これが圧延時に容易に延伸し、アスペクト比>3.0となる介在物が多く発生して、鋼板の清浄性が劣位となる。

0063

(領域II)
領域IIは、[REM_1]≦[REM]<[REM_2]の範囲であり、式(7)で規定される下限[Ca]が高位で一定した領域である。低融点酸化物が生成する鋼中[Ca]範囲が最も広い。この領域内では、低融点酸化物を防止する下限[Ca]に対する[REM]影響がほとんどないため、下限[Ca]が一定である。
領域IIで、式(7)で規定される下限[Ca]以上を含有して生成した介在物のうちの酸化物の組成は、式(9):(CaO)/(Al2O3)≧1.35を満たす。
式(7)を満たさない場合、式(9)を満たさないAl2O3−CaO−REM2O3系の低融点酸化物が生成するので、これが圧延時に容易に延伸し、アスペクト比>3.0となる介在物が多く発生して、鋼板の清浄性が劣位となる。

0064

(領域III)
領域IIIは、[REM_2]≦[REM]≦0.0050%の範囲であり、式(8)で規定される下限[Ca]が相対的に低位で一定した領域である。[REM_2]≦[REM]では、Al2O3−CaO−REM2O3系酸化物中の(REM2O3)が増加し、45%以上になるため、(Al2O3)や(CaO)に依らず酸化物の融点が高く、圧延時に延伸し難い。すなわち、低融点酸化物が生成しない領域である。そのため、MnS防止に必要な[Ca]が、この領域の下限[Ca]である。この領域では、高[REM]なので、鋼中[T.O]は主にREM(とAl)に結合し、Sと結合する有効[Ca]は十分なので、下限[Ca]は[REM]に依らず一定である。
領域IIIで、下限[Ca]以上を含有して生成した介在物のうちの酸化物の組成は、式(10):(REM2O3)/{(Al2O3)+(CaO)+(REM2O3)}≧0.45を満たすので、高融点であり、圧延時に延伸し難い。
領域IIIにおいて、式(8)を満たさない場合、MnSを十分に防止できないので、圧延時にアスペクト比>3.0に延伸したMnSが鋼板中に残存し、鋼板清浄性が劣位となる。

0065

図2(a)〜(c)から、領域I〜IIIを分ける[REM_1]、[REM_2]、各領域の境界(下限)[Ca]を、[Al]、[S]、[T.O]の回帰式を求め、上述の式(1)〜(8)を規定した。

0066

次に、アスペクト比>3.0である延伸介在物個数密度とシャルピー衝撃値の関係を、図4に示す。延伸介在物が6個/mm2を超えると衝撃値が急激に低減し、基準値100(J/cm2)を下回る。
そして、延伸介在物個数は、図5に示すように、円相当径≧1.0μmの介在物個数と相関がある。これは、全ての介在物個数(の指数としての円相当径≧1.0μmの介在物個数)が少ない場合には、全体的に介在物サイズ分布が小サイズ側シフトし、圧延時にアスペクト比>3.0を超えて延伸する低融点酸化物が減少するためと考えられる。(圧延後に延伸した介在物を観察すると、介在物の円相当径、ひいては体積が小さいものは、体積が大きいものより、アスペクト比が小さい傾向がある。この理由は、圧延後の介在物の厚みが、無限に薄くなるのではなく、ある程度の厚み、例えば0.1μm程度に収束するためと考えられる。圧延後の厚みがある範囲に分布するので、体積保存を前提とすれば、体積が大きいものほど延伸し、アスペクト比が大きくなる。)すなわち、低融点組成で、かつ、サイズが粗大なものほど、圧延時にアスペクト比>3.0となる介在物が増加すると解釈できる。
このように、酸化物組成を制御し、全介在物個数を低減することによって、破壊起点となる有害なアスペクト比>3.0の延伸介在物を低減することができる。このため、本実施形態では、円相当径1.0μm以上の介在物個数密度を100個/mm2以下に規定している。

0067

本実施形態では、特に[T.O]に応じて、[Ca]や[REM]をはじめとする鋼中成分、ひいては介在物組成を制御することを重要視している。
したがって、[T.O]に応じて、下限[Ca]条件は変化し、厳密には[Ca]や[REM]の目標値が変わる。実操業で、これに対応するために、従来の操業結果に基づき、[T.O]の変動を考慮して、目標範囲を設定すれば良い。可能な限り、類似鋼種の従来の操業実績に基づき、[T.O]範囲を、変動幅を含めて、予測することが現実に十分可能である。この[T.O]予測範囲(変化)に対応して、それぞれ設定される[Ca]、[REM]の共通する範囲を、実操業の目標範囲とすれば良い。

0068

なお、本実施形態に係る鋼板では、粒径(形状が略球状の介在物の場合)または長径(変形している介在物の場合)が1.0μm以上の介在物のみを考慮する。粒径または長径が1.0μm未満の介在物は、たとえ鋼中に含まれていても、鋼の加工性に与える影響が小さいので、本実施形態ではこのような介在物を考慮しない。また、上記した長径とは、観察面上の介在物の断面輪郭での、隣り合わない各頂点を結ぶ線分のうちの最大長となる線分と定義する。同様に、上記した短径とは、観察面上の介在物の断面輪郭での、隣り合わない各頂点を結ぶ線分のうちの最小長となる線分と定義する。以降、「粒径(形状が略球状の介在物の場合)または長径(変形している介在物の場合)」との記載を「粒径または長径」と略す場合がある。

0069

次に、本実施形態に係る鋼板の製造方法の一例について説明する。

0070

本実施形態に係る鋼板は、一般的な鋼板と同様に、例えば高炉溶銑を原料とし、転炉精錬や二次精錬を行って製造した溶鋼を、連続鋳造によって鋳片とした後、その鋳片に熱間圧延、必要に応じ冷間圧延、および/または焼鈍などを行って鋼板にする。その際、転炉における脱炭処理の後、取鍋での二次精錬で、鋼の成分調整とともに、Ca及びREMの添加による介在物制御を行う。なお、高炉溶銑のほか、鉄スクラップを原料として電気炉で溶解した溶鋼を原料として用いても良い。
こうして製造された鋼板を素材として、自動車部品メーカーで、適宜、熱処理や加工が行われて、製品が製造される。

0071

CaおよびREMは、他の含有元素の成分を調整し、さらに、Al脱酸により生じるAl2O3を溶鋼から浮上させてから、添加する。Al2O3が溶鋼中に多量に残存していると、CaやREMがAl2O3の還元によって消費される。そのため、Sの固定に使われるCaおよびREMの含有量が減少し、MnSの生成を十分に防止出来なくなる。

0072

Caは、蒸気圧が高いので、歩留を上げるために、Ca−Si合金、Fe—Ca−Si合金、あるいはCa−Ni合金等として添加するのがよい。これらの合金添加のために、これら合金から構成される合金ワイヤーを用いてもよい。REMは、Fe−Si−REM合金、およびミッシュメタル等の形で添加すればよい。ミッシュメタルとは希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度、Laを20〜40%程度含有することが多い。例えば、Ce45%、La35%、Nd9%、Pr6%、他不純物からなるミッシュメタルなどが入手できる。

0073

Ca及びREMの添加順序は特に制限されるものではない。しかし、REM添加後Ca添加すると、介在物のサイズが小さくなる傾向が見られる。従って、REM添加後にCaを添加するのが好ましい。

0074

Al脱酸後にAl2O3が生成し、このAl2O3のうち一部がクラスター化する。しかし、REM添加をCa添加よりも先に行うと、クラスターの一部が還元・分解され、クラスターのサイズを低減できる。一方、Ca添加をREM添加よりも先に行うと、Al2O3が低融点のCaO−Al2O3系介在物に変化し、上記Al2O3クラスターが凝集して単一の粗大なCaO−Al2O3系介在物となってしまうおそれがある。このため、REM添加後にCa添加することが好ましい。

0075

以上のようにして、本実施形態である鋼板が製造される。

0076

以上のような構成とされた本実施形態である鋼板によれば、T.Oを考慮して、REMとCaの関係を規定していることから、CaやREMが酸化物を形成しても、Sと結合するCaやREM量が確保され、MnS系介在物を低減することが可能となる。
また、鋼中のCa、REM、T.Al、T.O、Sの各量の関係を上述のように規定しているので、介在物中のAl2O3の比率を低減でき、低融点酸化物の生成を抑制することが可能となる。さらに、CaとREMを複合添加し、酸化物の主要組成を、REM2O3を含有する三元系、Al2O3−CaO−REM2O3系とすることで、圧延時の破砕性が増し、圧延後サイズが微細化するので、有害性を低減できる。
さらに、円相当径1.0μm以上の介在物個数密度を100個/mm2以下に規定しているので、破壊の起点となる介在物の個数が十分に低減されている。
よって、使用時や加工時におけるクラック等の発生が抑制された高品位な鋼板を提供することができる。

0077

また、本実施形態である鋼板において、Cu:0%以上0.05%以下、Nb:0%以上0.05%以下、V:0%以上0.05%以下、Mo:0%以上0.05%以下、Ni:0%以上0.05%以下、B:0%以上0.0050%以下、からなる群から選択される一種又は二種以上を含む場合には、要求特性に応じて、鋼板の様々な特性を向上させることが可能となる。

0078

さらに、本実施形態である鋼板において、内部に存在する介在物における各化合物MXの質量比を(MX)とした場合に、上述の(9)式、又は、(10)式を満足する場合には、介在物の融点が低下することを抑制でき、延伸介在物の個数をさらに低減することが可能となる。

0079

以上、本発明の実施形態である鋼板について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、実施形態では、本発明の鋼板を製造する鋼板の製造方法の一例を示したが、これに限定されることはなく、他の製造方法を適用してもよい。

0080

以下に、本発明の効果を確認すべく、実施した実験結果について説明する。

0081

高炉溶銑を原料とし、溶銑予備処理、転炉における脱炭処理の後、取鍋精錬で成分調整を行って溶鋼300トンを溶製した。取鍋精錬では、まずAlを添加して脱酸を行い、次にTiなどのその他の元素の成分を調整した後、Al脱酸で生じたAl2O3を浮上させるため5分間以上保持した後に、REMを添加し、均一に混合するために3分間保持してから、Caを添加した。REMはミッシュメタルを用いた。このミッシュメタルに含まれるREM元素は、質量比で、Ce50%、La25%、Nd10%であり、残部が不純物であった。よって、得られる鋼板に含まれる各REM元素の比率は、上記した各REM元素の比率とほぼ同一となった。Caは蒸気圧が高いため、歩留を上げるためにCa−Si合金を添加した。

0082

精錬後の上記溶鋼を連続鋳造により厚み250mmの鋳片とした。その後、この鋳片を1200℃に加熱した後で1時間保持し、次いで仕上げ温度が920℃となるように熱間圧延して板厚を5mmにした後、巻取温度が520℃となる条件で巻き取った。

0083

得られた熱延鋼板について、介在物の組成と変形挙動(圧延後の長径/短径の比;アスペクト比)とを調査した。光学顕微鏡を用いて、圧延方向と板厚方向とに平行な断面を観察面として、光学顕微鏡により倍率400倍(ただし、介在物形状を詳細に測定する際は倍率1000倍)で60視野観察した。各観察視野で、粒径(形状が球状の介在物の場合)または長径(変形している介在物の場合)が1.0μm以上の介在物を観察し、それらの介在物をアスペクト比3.0を基準に分類した。アスペクト比>3.0の介在物個数密度が、6個/mm2を超えた試料を「劣位」、6個/mm2以下を「良好」と評価した。

0084

また、粒径(形状が球状の介在物の場合)または長径(変形している介在物の場合)が1.0μm以上である代表的な介在物10個をランダムに選択し、各介在物の断面全体平均組成をSEMに付属したEDX装置を用いて分析し、10個の平均組成を求めた。
各介在物の組成として、例えば介在物中心部の組成で代表させるのではなく、断面全体の平均組成を測定したのは、例えば単独MnSの様に組成が均一な介在物より、Al2O3−CaO−REM2O3系酸化物の周囲の一部にMnSやCaSが付着する場合のように、複数の相が混合している場合が多いためである。この様な介在物の平均組成は、介在物全断面をEDX分析範囲に含めて分析すれば求めることができる。あるいは、それぞれの介在物相ごとに、点分析を行い、SEM像から求まるそれぞれの相の面積率を乗じて平均組成を算出しても良い。

0085

そして、上記で得られた熱延鋼板の靭性の指標として、室温(20℃)におけるシャルピー衝撃値を測定した。サブサイズ試験片を、鋼板のC方向から採取した。すなわち、試験片長さ55mmを鋼板の幅方向から、試験片高さを鋼板長手(圧延)方向10mm、試験片幅を鋼板厚み方向2.5mmとして採取した。55mm長さ×2.5mm幅の面に、2mmVノッチを加工した。この方向で試験片を採取すると、鋼板のL断面が破断面となるので、延伸介在物の影響を評価し易い。鋼板中に、割れ起点となる介在物、特に圧延方向に延伸した介在物が少ないほど、シャルピー吸収エネルギー(衝撃値)(J/cm2)は向上する。

0086

0087

0088

0089

0090

No.51〜60は比較例である。いずれも、式(6)〜(8)で規定される成分条件を満たさないため、延伸介在物個数は6個/mm2を超え、円相当径1.0μm以上の介在物個数は100個/mm2を超えた。
介在物組成を調査すると、No.52、53、55〜58、60は、式(9)と(10)のいずれも満たさなかったため、延伸した低融点酸化物が観察された。このうち、含有[Ca]と下限[Ca]の差が比較的大きなNo.53、57、58では、Mnと結合するSが比較的多かったため、延伸した低融点酸化物に、サイズが大きめのMnSが付着しており、そのMnSもまた延伸している様子が観察された。
No.51、54、59は、式(9)は満たさなかったが、式(10)を満たしており酸化物が高融点化したため、酸化物の延伸は抑制されており、主に観察された延伸介在物はMnSであった。
このように、No.51〜60は、清浄度が劣位であったため、シャルピー衝撃値は基準値100(J/cm2)に未達であった。

0091

式(6)〜(8)で規定される成分条件を満たした本発明例No.1〜22は、延伸介在物個数が6個/mm2以下であり、円相当径1.0μm以上の介在物個数が100個/mm2以下であった。そして、シャルピー吸収エネルギーは基準値100(J/cm2)以上であり、良好であった。介在物の平均組成は、式(9)と(10)の少なくとも一方を満たしていた。

実施例

0092

以上のことから、本発明によれば、MnS、低融点酸化物を問わず、延伸介在物の生成を防止でき、かつ、円相当径が1.0μm以上である介在物の個数密度が100(個/mm2)以下である、清浄性に優れた鋼板を製造することができた。

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