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課題
解決手段
概要
背景
車両用のシートは、座り心地や見栄えが良いだけでなく、運転時や衝突時に、着座したユーザをしっかりとサポートできる安定性も要求される。
開示する技術に関し、特許文献1には、軽量で座り心地が良好になるように工夫された車両のリアシートが開示されている。そのリアシート(シートクッション)は、軟らかい表層パッドと硬い裏層パッドとを積層して構成されている。リアシートは、裏層パッドに固定された取付具を、フロアパネルに設けられた取付孔に差し込むことにより、車両に取り付けられている。
特許文献1では、着座したユーザの臀部が位置するリアシートの中間部を、その他の部分よりも軟らかくする(表層パッドを薄く、かつ、裏層パッドを厚くする)ことで、座り心地を良好にしている。そして、リアシートの前後の縁部を相対的に硬くすることで、ユーザの前後方向の滑りや位置ずれを抑制し、リアシートの左右の端部を相対的に硬くすることで、シートの型崩れを抑制している。
ユーザの前後方向の滑りを抑制するリアシートは、特許文献2、3にも開示されている。
概要
乗降時に異物感を与えることなく、円滑に着座姿勢に移行でき、見栄えの悪化も抑制できる車両用のシートを実現する。車幅方向に延びるように配置されるクッション10、クッション10と一体化された状態で車幅方向に延びるように配置されるパッド20、を備える。パッド20が、ドア開口3Rに隣接したサイドボルスター領域E2に位置してクッション10を下支えする側端部22を有している。側端部22の上部に、ドア開口3Rの下縁に向けて下り傾斜するガイド面22cが形成されている。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0003
開示する技術に関し、特許文献1には、軽量で座り心地が良好になるように工夫された車両のリアシートが開示されている。そのリアシート(シートクッション)は、軟らかい表層パッドと硬い裏層パッドとを積層して構成されている。リアシートは、裏層パッドに固定された取付具を、フロアパネルに設けられた取付孔に差し込むことにより、車両に取り付けられている。
0004
特許文献1では、着座したユーザの臀部が位置するリアシートの中間部を、その他の部分よりも軟らかくする(表層パッドを薄く、かつ、裏層パッドを厚くする)ことで、座り心地を良好にしている。そして、リアシートの前後の縁部を相対的に硬くすることで、ユーザの前後方向の滑りや位置ずれを抑制し、リアシートの左右の端部を相対的に硬くすることで、シートの型崩れを抑制している。
0005
ユーザの前後方向の滑りを抑制するリアシートは、特許文献2、3にも開示されている。
先行技術
0006
特開2010−125138号公報
特開2017−30407号公報
特開2010−12887号公報
発明が解決しようとする課題
0007
車両用のシートは、ユーザが乗降し易いように、ドア開口に隣接した位置に設置されている。そのため、ユーザがドアを開けると、最初にシートの端部が目に入る。従って、シートの端部の見栄えの善し悪しは、車両全体の印象に大きく影響する。
0008
更に、車両用のシートの上部は、良好な座り心地を確保するため、ウレタンフォームなどの軟質な発泡樹脂素材で構成されている場合が多い。このような素材は、負荷を与え続けると、経年劣化により潰れて型崩れし易い。
0009
それに対し、ユーザが車両に乗降する時、狭いドア開口を潜らなければならないため、シートの端部に腰掛け、体重をシートの端部に預けた状態で、片足ずつ、ドア開口の下縁部を跨ぎながら、大腿部をずらすようにして乗降するのが一般的である。そのため、シートの端部は、経年劣化により見栄えが悪くなり易い。
0010
それに対し、特許文献1のリアシートでは、左右の端部を相対的に硬くすることで、シートの型崩れを抑制している。端部を硬くすれば、型崩れは抑制できるが、乗降時に、臀部や大腿部に裏層パッドが当たって、ユーザに、ごつごつとした異物感を与えるおそれがある。
課題を解決するための手段
0012
開示する技術は、車両用のシートに関する。
0013
前記車両用のシートは、ドア開口に隣接して車幅方向に延びるように配置されるクッションと、前記クッションよりも剛性の高い素材で構成されていて、前記クッションと一体化された状態で車幅方向に延びるように配置されるパッドと、を備える。前記パッドが、前記ドア開口に隣接したサイドボルスター領域に位置して前記クッションを下支えする側端部を有し、前記側端部の上部に、前記ドア開口の下縁に向けて下り傾斜するガイド面が形成されていて、前記ガイド面の上側に、前記クッションのボルスター部が位置している。
0014
すなわち、この車両用のシートによれば、相対的に軟らかいクッションと、剛性が高く相対的に硬いパッドとを一体化することで、シートが構成されている。従って、クッションで良好な座り心地を確保しながら、パッドで着座時の安定感を確保できる。
0015
乗降する際には、シートのうち、最初にサイドボルスター領域に位置するクッションのボルスター部が目に入る。従って、ボルスター部の見栄えの善し悪しは、車両全体の印象に大きく影響する。
0016
一方、ユーザが車両に乗降する時には、ボルスター部に体重を預けるようにして乗降するのが一般的である。そのため、ボルスター部は、経年劣化により見栄えが悪くなり易い。また、ボルスター部(詳細にはボルスター部の上側部分)の下側に硬いパッドが存在していると、臀部や大腿部が、潰れたボルスター部を介してパッドに当たるので、ユーザに異物感を与えるおそれがある。
0017
それに対し、このシートでは、ボルスター部を下支えしているパッドの側端部の上部に、ガイド面が形成されていて、そのガイド面が、ドア開口の下縁に向けて下り傾斜するように配置されている。
0020
このようなガイド面によってボルスター部が下支えされているので、ボルスター部の厚みを相対的に薄くできる。従って、ボルスター部が潰れて型崩れし難くなるので、見栄えの悪化も抑制できる。
0022
そうすれば、着座面により、よりいっそう着座時の安定感が向上する。そして、ガイド面により、ユーザを適正な位置、つまり着座面の上方に着座するように誘導できるので、ユーザを円滑に適切な着座姿勢に移行させることができる。着座姿勢になっても、着座面により、ユーザは異物感をほとんど受けることがない。着座面によって着座姿勢が安定するので、長時間乗車しても疲れ難い。
0024
そうすれば、強化側面により、パッドの側端部の剛性を構造的に強化できる。強化側面を覆うクッション(ボルスター部の側端部分)は、ほとんど型崩れすることがない。従って、ボルスター部の全体が、よりいっそう型崩し難くなるので、見栄えの悪化も更に抑制できる。
発明の効果
0025
開示する技術によれば、乗降時に異物感を与えることなく、円滑に着座姿勢に移行でき、見栄えの悪化も抑制できる車両用のシートを実現できる。
図面の簡単な説明
0026
開示する技術を適用した自動車(車両)の側部を示す概略図である。
図1における矢印V−V線での概略断面図である。
リアシートのシートクッションの概略上面図である。図中の細線は、立体形状を表している。
リアシートのシートクッションの概略前面図である。
パッドの概略図である。上図はパッドを上方から見た図であり、下図は上図の矢印W−W線で示す部分の断面図である。上図中の細線は、立体形状を表している。
図3Bに矢印X−X線で示す部分の概略断面図である。
ワイヤフレームの構造を示す概略図である。
図6Aの拡大図における矢印Y−Y線での概略断面図である。
図6Aの拡大図における矢印Z−Z線での概略断面図である。
乗車する時の状態を説明するための図である。
無負荷の状態のシートクッションを示す概略図である。
着座によって負荷が加わった状態のシートクッションを示す概略図である。
前方へ弱い力が作用した時のシートクッションの動きを説明する概略図である。
前方へ強い力が作用した時のシートクッションの動きを説明する概略図である。
実施例
0027
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。なお、説明で用いる前後、左右、および上下の方向は、車両の通常の状態を基準とする。
0028
<車両>
図1、図2に、開示する技術を適用した自動車1(車両)を例示する。この自動車1は、一般的なセダンタイプであり、その外郭を構成しているボディ2の側面には、2つのドア開口3F,3Rが、センターピラー2aを境にして、前後方向に並ぶように形成されている。なお、図1等では、車両の左側部を示しているが、右側部も同じ構造である。
0029
これらドア開口3F,3Rの各々には、スイングドア4F,4Rが取り付けられている(図1では、後側のスイングドア4Rを仮想線で表している)。各スイングドア4F,4Rの前端部は、ドア開口3F,3Rの前縁部分に揺動可能に支持されている。ドアハンドルを操作してスイングドア4F,4Rを揺動することにより、ドア開口3F,3Rは開閉される。
0030
ボディ2の床面は、ボディ2の左右の両下縁部を前後方向に延びる一対のサイドシル2b,2bと、これらサイドシル2b,2bの間を覆うフロアパネル2cなどで構成されている。ボディ2の天井面は、ボディ2の左右の両上縁部を前後方向に延びる一対のルーフサイドレール2d,2dと、これらルーフサイドレール2d,2dの間を覆うルーフパネル2eなどで構成されている。
0031
ドア開口3F,3Rの下縁はサイドシル2bによって構成され、ドア開口3F,3Rの上縁はルーフサイドレール2dによって構成されている。フロアパネル2c、ルーフパネル2eなどによって区画されることにより、ボディ2の内部には、車室5が形成されている。
0032
車室5には、運転席および助手席からなるフロントシート(不図示)と、リアシート6とが、前後に並ぶように設置されている。フロントシートは、前側のドア開口3Fに隣接した位置に配置されており、リアシート6は、後側のドア開口3Rに隣接した位置に配置されている。
0033
<リアシート6>
リアシート6は、横長なシートであり、複数人(図例では、成人2人)が着座可能に構成されている。リアシート6は、シートクッション6a、シートバック6b、ヘッドレスト6cなどで構成されている。リアシート6にはシートベルトも付設されているが、これについては省略する。
0034
シートクッション6aは、着座するユーザ(乗員)の臀部を支える部位であり、フロアパネル2cの上に載置されている。シートバック6bは、着座するユーザの背中を支える部位であり、シートクッション6aの後縁部から斜め後方に延びるように設けられている。ヘッドレスト6cは、着座するユーザの頭部を支える部位であり、シートバック6bの上部に設けられている。
0036
ドア開口3Rの内側近傍には、サイドボルスター領域E2が設けられている。サイドボルスター領域E2は、各着座領域E1とドア開口3Rとの間の領域であり、サイドボルスター領域E2に、リアシート6が張り出すことにより、着座するユーザを側方からサポートし、リアシート6とスイングドア4Rとの間の隙間が狭まるようにしている。シートバック6bおよびシートクッション6aの各々は、サイドボルスター領域E2にサイドサポート6dを有している。
0037
このリアシート6の場合、良好な座り心地が得られ、かつ、自動車1が衝突するなどして前方に強い力が作用しても、ユーザが前滑りするのを効果的に抑制できるように、シートクッション6aに工夫が施されている。
0039
(クッション10)
クッション10は、ウレタンフォーム(発泡樹脂)などの、弾性に優れた軟らかい素材で構成されている。クッション10の表面は、複数の布地を縫い合わせて立体的に構成されたシートカバーによって被覆されている(シートカバーは図示省略)。
0040
クッション10は、上下方向の厚みが大きい横長な形状を有しており、着座領域E1を構成する2つの着座部11,11と、これら着座部11,11の間を構成する中間部12と、上述したサイドサポート6dを構成する2つのボルスター部13,13とを有している。各ボルスター部13は、着座部11に比べて相対的に上方および側方に向かって大きく膨出した形状を有している。
0041
クッション10は、フロアパネル2cの上に載置した状態で、左右のドア開口3R,3Rに隣接して車幅方向に延びるように配置されている。
0042
(パッド20)
パッド20は、モールド成形等により、クッション10と一体化されている。すなわち、パッド20は、クッション10の成形時に組み込まれることにより、クッション10と一体的に構成されている。パッド20は、プラスチック、アルミ合金など、クッション10よりも剛性が高くて軽量な素材で構成されている。
0043
図4に、パッド20を示す。パッド20は、横長な板形状をしている。パッド20の長さ(車幅方向の大きさ)は、クッション10よりも僅かに短く形成されている。パッド20の幅(前後方向の大きさ)は、クッション10よりも小さく、クッション10の略1/2程度の大きさに形成されている。
0044
図3A、図5に示すように、パッド20は、クッション10の後側よりも前側に偏在した状態で、車幅方向に延びるように配置されている。パッド20は、その上面が後方に向かって下り傾斜するように、僅かに後傾した状態でクッション10に埋設されている。パッド20の上下にはクッション10が配置されており、パッド20は、クッション10に挟持されている。
0045
パッド20の前側の両端部分は、クッション10の形状に合わせて、上面視で円弧状の輪郭に形成されている。パッド20は、主壁部21と、その両端に連なる一対の側端部22,22とを有している。主壁部21は、クッション10の着座部11および中間部12の前側部分を下支えしている。各側端部22は、クッション10の各ボルスター部13を下支えしている。主壁部21の上面には、一対の着座面21a,21aが形成されている。
0046
各着座面21aは、車幅方向に湾曲して凹む曲面状に形成されている。モデル(標準的な体型を有する成人)の臀部および大腿部の大きさに基づき、各着座面21aの横幅は所定の大きさに形成されている。モデルの臀部および大腿部の形状に合わせて、各着座面21aの形状が形成されている。各着座面21aは、着座領域E1に位置するように配置されている。
0047
各側端部22には、主壁部21の両端から下方に延びる補強壁22aが設けられている。補強壁22aの車幅方向の外側には、シートの下端部まで、断面が湾曲した状態で下垂する強化側面22bが形成されている。このような形状の強化側面22bを有する補強壁22aにより、各側端部22は、構造的に剛性が強化されている。
0048
各側端部22の上部には、車幅方向の外側にあるドア開口3Rの下縁に向かって下り傾斜するガイド面22cが形成されている。従って、ボルスター部13は、ガイド面22cの上側に位置している。ガイド面22cは、円滑な曲面を介して、隣接する着座面21aに連続して形成されている。また、ガイド面22cは、強化側面22bとも連続するように形成されている。
0049
(ワイヤフレーム30)
ワイヤフレーム30は、パッド20に取り付けられた状態で、クッション10に埋設されている。図6Aに、ワイヤフレーム30を示す。
0050
ワイヤフレーム30は、バネ性を有する複数のワイヤを接合して形成されている。ワイヤフレーム30は、クッション10の型崩れが抑制できるように、クッション10の形状(主に輪郭)に対応した枠形状に形成されている。ワイヤフレーム30は、環状に連なっている。
0051
ワイヤフレーム30は、一対のサイドワイヤ30a,30a、第1フロントワイヤ30b、第2フロントワイヤ30c、一対のリアフックワイヤ30d,30d、リアサポートワイヤ30e、センターワイヤ30fなどで構成されている。
0052
各サイドワイヤ30aは、クッション10の左右の両端部分(各ボルスター部13)に沿って前後方向に延びるように配置されている。第1フロントワイヤ30bおよび第2フロントワイヤ30cは、各サイドワイヤ30aの前端部に連なっている。第1フロントワイヤ30bおよび第2フロントワイヤ30cは、クッション10の前縁部分に沿って、互いに平行して延びるように配置されている。
0053
第2フロントワイヤ30cは第1フロントワイヤ30bよりも後方に位置し、パッド20に掛け止められるように配置されている。パッド20の左右の補強壁22aに設けられた掛止部位23の外側に沿うようにして、各サイドワイヤ30aおよび第2フロントワイヤ30cがパッド20に掛け止められている。それにより、ワイヤフレーム30は、パッド20に取り付けられている。
0054
更に、第2フロントワイヤ30cの左右に離れた部位には、後方に向かって矩形に折り曲げることにより、一対の前側掛止部31,31が設けられている。各前側掛止部31は、図6Aの拡大図および図6Bに示すように、フロアパネル2cに固定された第2規制部材40によって、掛け止められるように構成されている。
0055
第2規制部材40は、フロアパネル2cから上方に突出するようにフロアパネル2cに固定された基部40aと、基部40aの側面から前方に張り出すように設けられた板状の下側規制部40bと、基部40aの上面から上方に突き出すように設けられた上側規制部40cと、を有している。上側規制部40cは、一対のL形状をした金属棒で構成されている。これら金属棒は、屈曲した先端部を前方に向けた状態で、互いに略平行に配置されている。そして、各前側掛止部31が、下側規制部40bと上側規制部40cとの間を通過するように配置されている。
0056
一対のリアフックワイヤ30dおよびリアサポートワイヤ30eは、クッション10の後縁部分に沿って延びるように配置されている。各リアフックワイヤ30dは、各サイドワイヤ30aの後端部に連なっている。左右のリアフックワイヤ30d,30dの間にリアサポートワイヤ30eが架設されている。
0057
各リアフックワイヤ30dと、リアサポートワイヤ30eとの間には、ワイヤが前方にU状に折り曲げられた緩衝部位が設けられている。センターワイヤ30fは、クッション10における車幅方向の略中間部位を前後方向に延びるように配置されていて、リアサポートワイヤ30e(2つの緩衝部位の間の部分)と第2フロントワイヤ30cとに架設されている。それにより、ワイヤフレーム30は、2つの環状枠を並列したような構造になっている。
0058
各リアフックワイヤ30dの左右に離れた部位には、一対の後側掛止部32,32が設けられている。各後側掛止部32は、図6Aの拡大図および図6Cに示すように、フロアパネル2cに固定された第1規制部材50に係合(ここでは掛け止め)されている。
0059
第1規制部材50は、フロアパネル2cから上方に張り出すようにフロアパネル2cに固定されたベース部50aと、ベース部50aの後面から後方に突き出すように固定された抜止部50bと、を有している。抜止部50bは、一対のLまたはフック形状をした金属棒で構成されている。これら金属棒は、屈曲した上端部を後方に向けた状態で、互いに略平行に配置されている。そして、各後側掛止部32が、抜止部50bの下方を通過するように配置されている。
0060
この第1規制部材50では、抜止部50bと対向しているフロアパネル2cの壁面の部分も第1規制部材の一部を構成している。第1規制部材50にも、第2規制部材40の基部40および下側規制部40bと同等のものを設けてもよい。また、各後側掛止部32は、溶接等により、第1規制部材50に固定してあってもよい。
0061
<リアシート6の機能>
図1に示すように、リアシート6は、ユーザが乗降し易いように、ドア開口3Rに隣接した位置に設置されている。そのため、ユーザがスイングドア4Rを開けると、最初に、サイドボルスター領域E2に位置するシートクッション6aの端部(ボルスター部13)が目に入る。従って、ボルスター部13の見栄えの善し悪しは、車両全体の印象に大きく影響する。
0062
上述したように、ボルスター部13は、軟質な素材で構成されているため、負荷を与え続けると、経年劣化により潰れて型崩れし易い。
0063
それに対し、ユーザが車両に乗降する時には、図7に示すように、狭いドア開口3Rを潜らなければならないため、着座部11およびボルスター部13に腰掛け、体重をボルスター部13に預けた状態で、片足ずつ、ドア開口3Rの下縁部を跨ぎながら、大腿部をずらすようにして乗降するのが一般的である。そのため、ボルスター部13は、経年劣化により見栄えが悪くなり易い。
0064
それに対し、このリアシート6では、ボルスター部13を下支えしているパッド20の側端部22の上部に、ガイド面22cが形成されていて、そのガイド面22cが、ドア開口3Rの下縁に向けて下り傾斜するように配置されている。
0065
従って、ユーザがボルスター部13に体重を預けたときに、ボルスター部13が潰れて、間接的ではあるが、臀部または大腿部がパッド20に当たるようになる。しかしながら、臀部または大腿部は、ガイド面22cによって受け止められるので、ほとんど異物感を与えるおそれがない。
0066
逆に、ガイド面22cによって受け止められることで、体重を安心して預けることができる。従って、信頼性も向上する。更に、ガイド面22cにより、大腿部等を着座部11に円滑に誘導できるので、ユーザを円滑に着座姿勢に移行できる。
0067
そのようなガイド面22cによってボルスター部13が下支えされているので、ボルスター部13の厚みを相対的に薄くできる。従って、ボルスター部13が潰れて型崩れし難くなるので、見栄えの悪化も抑制できる。
0068
しかも、そのガイド面22cが形成されているパッド20の側端部22は、強化側面22b等により、構造的に剛性が強化されているので、パッド20の周辺のクッション10は、ほとんど型崩れすることがない。従って、ボルスター部13が、よりいっそう型崩し難くなるので、見栄えの悪化も更に抑制できる。
0069
着座部11は、パッド20の着座面21aによって下支えされているので、ユーザは、着座姿勢になっても、異物感をほとんど受けることがない。着座面21aによって着座姿勢が安定するので、長時間乗車しても疲れ難い。
0071
具体的には、図8Aに示すように、パッド20およびクッション10は、ワイヤフレーム30を介して、遊動可能な状態で、第1規制部材50および第2規制部材40に支持されている。すなわち、前側掛止部31が第2規制部材40に掛け止められることによって、弾性変形するクッション10およびワイヤフレーム30の動きが規制される範囲、および、後側掛止部32が第1規制部材50に掛け止められることによって、弾性変形するクッション10およびワイヤフレーム30の動きが規制される範囲の両範囲内で、シートクッション6aは、全方位に変位可能となっている。
0072
しかも、ワイヤフレーム30の各リアフックワイヤ30dとリアサポートワイヤ30eとの間には緩衝部位が設けられていので、ワイヤフレーム30は弾性変形し易くなっている。それにより、シートクッション6aは比較的大きく動くことができる。
0073
従って、着座するユーザの動きに対応して、シートクッション6aも適度に動くので、ユーザに良好な座り心地を与えることができる。
0075
すなわち、クッション10およびパッド20は、ワイヤフレーム30の後側掛止部32が第1規制部材50に受け止められることにより、所定以上の前方への移動が規制されている。そして、クッション10およびパッド20は、ワイヤフレーム30の前側掛止部31が第2規制部材40に受け止められることにより、所定以上の後方への移動が規制されている。
0076
更に、クッション10およびパッド20は、前側掛止部31が第2規制部材40の下側規制部40bに受け止められることにより、所定以上の前傾(前側が下方に変位するように傾くこと)が規制されている。そして、クッション10およびパッド20は、前側掛止部31が第2規制部材40の上側規制部40cに受け止められることにより、所定以上の後傾(前側が上方に変位するように傾くこと)も規制されている。
0077
図8における点HPは、ヒップポイントを示している。ヒップポイントHPは、着座したユーザの左右の大腿骨頭の中間位置となる位置である。通常の着座姿勢において、ヒップポイントHPは、シートクッション6aを前後に二分した場合の後部に位置するのが好ましい。また、ヒップポイントHPは、パッド20の前後方向における中間位置よりも後方に位置するのが好ましい。特に、ヒップポイントHPは、パッド20の後端部の近傍に位置するのが好ましい。
0078
ユーザの臀部は、厚みの大きなクッション10を介してパッド20に支持されるので、異物感を与えることがない。そして、ユーザの大腿部は、厚みの小さいクッション10を介してパッド20に支持されるが、パッド20がフロアパネル2cに対して遊動するので、異物感をほとんど与えることがない。しかも、ユーザの臀部および大腿部の下側には、着座面21aが位置しているので、よりいっそう違和感を与え難くなっている。
0079
そして、車両が衝突したり車両に他の車両が衝突したりして、図9Aに矢印で示すように、リアシート6およびユーザに、前方に向かう強い力が作用した場合、パッド20は、第2規制部材40で前傾が規制されているので、パッド20および臀部は、適性な範囲を逸脱して前傾することがない。従って、ユーザがそのまま前方へ沈み込むのを抑制できる。
0080
更に、パッド20に掛け止められているワイヤフレーム30が、第1規制部材50に掛け止められるので、前側掛止部31が第2規制部40から前方に抜け出しても、ユーザがパッド20とともに前滑りするのを抑制できる。このとき、ワイヤフレーム30の弾性力の作用で衝撃を徐々に緩和できるので、より効果的に前滑りを抑制できる。
0081
更に強い力が作用し、図9Bに示すように、前側掛止部31が第2規制部材40から完全に外れて、第1規制部材50によって支持されているワイヤフレーム30が延びきるような状態になっても、ワイヤフレーム30に掛け止められているパッド20により、ユーザはバランスよく受け止められる。従って、そのような場合でも、前滑りや前方への飛び出しを抑制できる。
0082
特に、ワイヤフレーム30が、座席ごとに環状枠を並列したような構造になっているので、リアシート6に、一人が座っている場合、二人が座っている場合のいずれであっても、良好な座り心地を確保しながら、効果的に前滑りや前方への飛び出しを抑制できる。
0083
このように、開示する技術を適用したリアシート6によれば、良好な座り心地が得られるうえに、前滑りを効果的に抑制することができる。
0084
なお、開示する技術にかかる車両用のシートは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
0085
例えば、開示する技術が適用できる車両は、上述したような、ウイングドアを有する車両に限らない。スライドドアを有する車両にも適用可能である。開示する技術は、複数人が着座できる横長なリアシートに好適であるが、リアシートに限らない。運転席や補助席など、一人が着座するシートにも適用できる。
0086
1自動車(車両)
2 ボディ
3Rドア開口
6リアシート
6aシートクッション
6bシートバック
6cヘッドレスト
6dサイドサポート
10クッション
11着座部
13ボルスター部
20パッド
21a着座面
22側端部
22cガイド面
30ワイヤフレーム
31 前側掛止部
32 後側掛止部
40 第2規制部材
50 第1規制部材
E1着座領域
E2サイドボルスター領域