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技術 ポリオレフィン微多孔膜

出願人 旭化成株式会社
発明者 梶原まな宮澤博
出願日 2020年3月6日 (11ヶ月経過) 出願番号 2020-039142
公開日 2020年5月28日 (8ヶ月経過) 公開番号 2020-079426
状態 未査定
技術分野 多孔性物品の製造および廃物の回収・処理
主要キーワード 電極接触面積 ショート破壊 加熱回数 膜状試料 定長モード 緩和操作 試験特性 応力ピーク
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

本発明が解決しようとする課題は、2次電池熱暴走を抑制することができるポリオレフィン微多孔膜、及びそれを用いた2次電池用セパレータを提供することであり、更に、本発明が解決しようとする課題は、無機塗工層を設けた際にも、耐カール性に優れるポリオレフィン微多孔膜、及びそれを用いた2次電池用セパレータを提供することである。

解決手段

ポリオレフィン微多孔膜が、2.30mm以下の突刺伸度を有し、ポリオレフィン微多孔膜の幅方向熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が80.0℃以上であり、かつ応力ピーク値が1.8g以下である。

概要

背景

ポリオレフィン微多孔膜は、優れた電気絶縁性又はイオン透過性を示すことから、電池用セパレータコンデンサー用セパレータ燃料電池用材料、精密濾過膜等に使用されており、特にリチウムイオン2次電池用セパレータとして使用されている。
近年、リチウムイオン2次電池は、携帯電話ノート型パソコン等の小型電子機器、及び電気自動車、小型電動バイク等の電動車両へ応用が図られている。リチウムイオン2次電池用セパレータには、機械的特性及びイオン透過性だけでなく、2次電池発熱に応じてセパレータの微多孔熱溶融等により閉塞して、電解液内のイオン透過を抑制し、電気化学反応を停止させる性質シャットダウン特性)、及び電池熱暴走により電池の内部温度ポリオレフィン融点以上になった場合にもセパレータが溶融破膜しない性質(耐メルトダウン特性)も要求される。セパレータの要求特性と関連して、ポリオレフィン微多孔膜の物性、製造条件等が検討されている(特許文献1〜3)。

特許文献1には、気孔率透気度機械的強度耐熱性及びシャットダウン特性のバランスに優れた微多孔膜を安定的かつ効率的に生産する観点から、ポリオレフィンと溶剤溶融混練し、得られた溶融混練物をダイから押出し、冷却することによりゲル状成形物を形成した後に、長手方向及び幅方向延伸速度(歪速度)がともに85%/秒以上である条件下で成形物二軸延伸し、かつ成形物から溶剤を除去して微多孔膜を製造することが提案されている。なお、特許文献1には、二軸延伸された膜の熱固定時の歪速度が記述されていない。

特許文献2には、寸法安定性高剛性化両立する観点から、二軸配向ポリプロピレンフィルムについて、突刺強度を70g/μm以上に、かつ120℃で15分に亘って加熱処理されたときの幅方向の熱収縮率を1.0%以下に調整することが提案されている。また、特許文献2には、二軸配向ポリプロピレンフィルムの突刺伸度が2.0mm未満であると、そのフィルムを含むコンデンサー異物混入したとき、異物がフィルムを貫通し易くなるから、短絡が生じ、容量低下又はショート破壊を起こす危険があるので、突刺伸度を2.0mm以上に調整することが好ましいことが教示されている。

特許文献3には、耐カール性に優れる微多孔膜を生産する観点から、製造工程で抽出の後に行う二次延伸工程が2段階以上の延伸工程から成り、第2段階以降の延伸工程における歪速度を前段階における歪速度よりも大きくすることが提案されている。

概要

本発明が解決しようとする課題は、2次電池の熱暴走を抑制することができるポリオレフィン微多孔膜、及びそれを用いた2次電池用セパレータを提供することであり、更に、本発明が解決しようとする課題は、無機塗工層を設けた際にも、耐カール性に優れるポリオレフィン微多孔膜、及びそれを用いた2次電池用セパレータを提供することである。ポリオレフィン微多孔膜が、2.30mm以下の突刺伸度を有し、ポリオレフィン微多孔膜の幅方向の熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が80.0℃以上であり、かつ応力ピーク値が1.8g以下である。

目的

本発明が解決しようとする課題は、2次電池の熱暴走を抑制することができるポリオレフィン微多孔膜、及びそれを用いた2次電池用セパレータを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

突刺伸度が2.30mm以下であり、幅方向熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が80.0℃以上であり、かつ応力ピーク値が1.8g以下であるポリオレフィン微多孔膜

請求項2

前記突刺伸度が2.10mm以下であり、前記幅方向のTMA測定において、前記応力変異点の温度が90.0℃以上であり、かつ前記応力ピーク値が1.4g以下である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。

請求項3

長手方向のTMA測定において応力ピーク値が2.0g以下である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン微多孔膜。

請求項4

単位厚み当たりの突刺強度が70gf/μm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。

請求項5

前記突刺伸度が0.5mm以上であり、前記幅方向のTMA測定において、前記応力変異点の温度が180.0℃以下であり、かつ前記応力ピーク値が0.3g以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。

請求項6

長手方向のTMA測定において応力ピーク値が0.3g以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。

請求項7

単位厚み当たりの突刺強度が10gf/μm以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。

請求項8

以下の工程:(A)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材を含むポリオレフィン組成物を押し出して、ゲル状シートを形成する工程;(B)前記ゲル状シートを二軸延伸して、延伸シートを形成する工程;(C)前記延伸シートから前記孔形成材を抽出して、多孔膜を形成する工程;並びに(D)前記多孔膜を熱固定する工程;を含み、前記工程(B)における長手方向の歪速度が20%/秒以上50%/秒以下であり、かつ前記工程(D)における幅方向の歪速度に対する前記工程(B)における幅方向の歪速度の比が、2.0以上10.0以下であるポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

請求項9

前記工程(B)では、前記ゲル状シートを同時二軸延伸する、請求項8に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

請求項10

得られたポリオレフィン微多孔膜は、2.30mm以下の突刺伸度を有し、幅方向の熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が80.0℃以上であり、かつ応力ピーク値が1.8g以下である、請求項8又は9に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

請求項11

得られたポリオレフィン微多孔膜は、0.5mm以上の突刺伸度を有し、幅方向の熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が180.0℃以下であり、かつ応力ピーク値が0.3g以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

ポリオレフィン微多孔膜は、優れた電気絶縁性又はイオン透過性を示すことから、電池用セパレータコンデンサー用セパレータ燃料電池用材料、精密濾過膜等に使用されており、特にリチウムイオン2次電池用セパレータとして使用されている。
近年、リチウムイオン2次電池は、携帯電話ノート型パソコン等の小型電子機器、及び電気自動車、小型電動バイク等の電動車両へ応用が図られている。リチウムイオン2次電池用セパレータには、機械的特性及びイオン透過性だけでなく、2次電池発熱に応じてセパレータの微多孔熱溶融等により閉塞して、電解液内のイオン透過を抑制し、電気化学反応を停止させる性質シャットダウン特性)、及び電池熱暴走により電池の内部温度ポリオレフィン融点以上になった場合にもセパレータが溶融破膜しない性質(耐メルトダウン特性)も要求される。セパレータの要求特性と関連して、ポリオレフィン微多孔膜の物性、製造条件等が検討されている(特許文献1〜3)。

0003

特許文献1には、気孔率透気度機械的強度耐熱性及びシャットダウン特性のバランスに優れた微多孔膜を安定的かつ効率的に生産する観点から、ポリオレフィンと溶剤溶融混練し、得られた溶融混練物をダイから押出し、冷却することによりゲル状成形物を形成した後に、長手方向及び幅方向延伸速度(歪速度)がともに85%/秒以上である条件下で成形物二軸延伸し、かつ成形物から溶剤を除去して微多孔膜を製造することが提案されている。なお、特許文献1には、二軸延伸された膜の熱固定時の歪速度が記述されていない。

0004

特許文献2には、寸法安定性高剛性化両立する観点から、二軸配向ポリプロピレンフィルムについて、突刺強度を70g/μm以上に、かつ120℃で15分に亘って加熱処理されたときの幅方向の熱収縮率を1.0%以下に調整することが提案されている。また、特許文献2には、二軸配向ポリプロピレンフィルムの突刺伸度が2.0mm未満であると、そのフィルムを含むコンデンサー異物混入したとき、異物がフィルムを貫通し易くなるから、短絡が生じ、容量低下又はショート破壊を起こす危険があるので、突刺伸度を2.0mm以上に調整することが好ましいことが教示されている。

0005

特許文献3には、耐カール性に優れる微多孔膜を生産する観点から、製造工程で抽出の後に行う二次延伸工程が2段階以上の延伸工程から成り、第2段階以降の延伸工程における歪速度を前段階における歪速度よりも大きくすることが提案されている。

先行技術

0006

特開2005−209452号公報
国際公開第2015/146893号
特開2016−121354号公報

発明が解決しようとする課題

0007

近年、リチウムイオン2次電池は、高容量化及び高エネルギー密度化に伴い、より複雑な状況を想定した安全性が求められ、特に、電池中への異物混入又は外装体変形に起因して起こる電池の連鎖的な発熱現象(熱暴走)を抑制することが求められている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法により製造された微多孔膜は、複数の物性のバランスを取りながら生産性の向上を図るものにすぎず、リチウムイオン2次電池に組み込まれたときの熱暴走の抑制について検討されていない。
特許文献2に記載の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、突刺強度又は突刺伸度を特定の基準値よりも高くなるように調整して、異物の貫通、ショート破壊等を防ぐものであるが、2次電池の熱暴走の抑制については未だに改良の余地がある。
特許文献3に記載の製造方法は、耐カール性に優れる膜を生産できるが、この方法では突刺伸度をコントロールすることはできないため、異物に対する耐性に改善の余地がある。
これまでにも異物混入により発生する熱暴走を未然に防ぐための微多孔膜は開発されてきた。例えば、異物への耐性として突刺伸度が高いことを強みにしている微多孔膜では、いざ微多孔膜に耐性以上の衝撃が掛かり、異物により膜が貫通してしまった際に、異物の周囲の微多孔膜は破れ難いため、異物のみを介して電流が流れ、また電極同士に関しては接触しないか、又は接触したとしても接触面積が小さく、電流が流れる領域を十分に確保できないために、電流の局所的な集中を起こして、電池の表面温度高温に至る危険性があった。したがって、従来の突刺伸度が高い微多孔膜では、破膜を防いで熱暴走を未然に防ぐ効果はあったが、一旦微多孔膜が破れてしまった場合に熱暴走を防ぐ効果は不十分であった。

0008

上記の事情に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、2次電池の熱暴走を抑制することができるポリオレフィン微多孔膜、及びそれを用いた2次電池用セパレータを提供することである。
更に、本発明が解決しようとする課題は、無機塗工層を設けた際にも、耐カール性に優れるポリオレフィン微多孔膜、及びそれを用いた2次電池用セパレータを提供することである。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、ポリオレフィン微多孔膜の突刺伸度と熱機械分析プロファイルを特定することによって、又はポリオレフィン微多孔膜の製造条件を特定することによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
突刺伸度が2.30mm以下であり、幅方向の熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が80.0℃以上であり、かつ応力ピーク値が1.8g以下であるポリオレフィン微多孔膜。
[2]
前記突刺伸度が2.10mm以下であり、前記幅方向のTMA測定において前記応力変異点の温度が90.0℃以上であり、かつ前記応力ピーク値が1.4g以下である、[1]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[3]
長手方向のTMA測定において応力ピーク値が2.0g以下である、[1]又は[2]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[4]
単位厚み当たりの突刺強度が70gf/μm未満である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[5]
前記突刺伸度が0.5mm以上であり、前記幅方向のTMA測定において、前記応力変異点の温度が180.0℃以下であり、かつ前記応力ピーク値が0.3g以上である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[6]
長手方向のTMA測定において応力ピーク値が0.3g以上である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[7]
単位厚み当たりの突刺強度が10gf/μm以上である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[8]
以下の工程:
(A)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材を含むポリオレフィン組成物を押し出して、ゲル状シートを形成する工程;
(B)前記ゲル状シートを二軸延伸して、延伸シートを形成する工程;
(C)前記延伸シートから前記孔形成材を抽出して、多孔膜を形成する工程;並びに
(D)前記多孔膜を熱固定する工程;
を含み、前記工程(B)における長手方向の歪速度が20%/秒以上50%/秒以下であり、かつ前記工程(D)における幅方向の歪速度に対する前記工程(B)における幅方向の歪速度の比が、2.0以上10.0以下であるポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[9]
前記工程(B)では、前記ゲル状シートを同時二軸延伸する、[8]に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[10]
得られたポリオレフィン微多孔膜は、2.30mm以下の突刺伸度を有し、幅方向の熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が80.0℃以上であり、かつ応力ピーク値が1.8g以下である、[8]又は[9]に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
[11]
得られたポリオレフィン微多孔膜は、0.5mm以上の突刺伸度を有し、幅方向の熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が180.0℃以下であり、かつ応力ピーク値が0.3g以上である、[8]〜[10]のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

発明の効果

0010

本発明によれば、リチウムイオン2次電池の熱暴走を抑制することができる。
本発明によれば、衝突試験時に2次電池内に異物が混入していた場合、異物によってポリオレフィン微多孔膜が確実に貫通することによって衝撃直後の電極同士の接触面積を増やすことができるため、局所的な電流集中を防ぎ、それによって2次電池の生産性及び安全性を向上させることができる。また、もし衝撃の程度が非常に軽度であったために、異物周辺のポリオレフィン微多孔膜が十分に破れきれず、電極同士の接触面積を十分に確保できないために電池の温度が上昇してしまう場合にも、微多孔膜の耐熱性が優れることで、電池の表面温度の上昇に伴う微多孔膜の収縮を防ぐことができるため、電極同士の接触面積が、非常に軽度な衝撃を受けたときより拡大することを防ぎ、電池の熱暴走を防ぐことが可能となる。
本発明によれば、衝突以外の要因による短絡の発生によって2次電池の温度が上昇したとしても、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮が小さいため、電極同士の接触面積の拡大を抑制することができ、ひいては2次電池の安全性に寄与する。
更に、本発明によれば、ポリオレフィン微多孔膜を基材として使用し、基材に塗工液を塗工し、乾燥したときに、基材の熱収縮と塗工層の熱収縮のバランスを取ることができ、塗工速度及び乾燥温度を増加させたとしても塗工膜カールを抑制することが可能となり、ひいては2次電池用セパレータの製造速度及び2次電池の生産性を向上させることができる。

図面の簡単な説明

0011

図1(a)は、従来のセパレータ破膜時の電極接触面積を説明するための模式図であり、図1(b)は、第一の実施形態に係るセパレータ破膜時の電極接触面積を説明するための模式図である。
図2は、衝突試験の概略図である。
図3は、実施例1で得られたポリオレフィン微多孔膜のTMAプロファイルを示すグラフである。

0012

以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。

0013

<ポリオレフィン微多孔膜>
本発明の一態様は、ポリオレフィン微多孔膜である。ポリオレフィン微多孔膜は、電解液を含んだ状態においてイオン透過性を有し、有機溶媒に対する耐性が高く、かつ孔径微細なものが好ましい。また、ポリオレフィン微多孔膜は、2次電池用セパレータとして利用されることができる。

0014

第一の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、突刺伸度が2.30mm以下であり、幅方向の熱機械分析(TMA)測定において、応力変異点の温度が80.0℃以上であり、かつ応力ピーク値が1.8g以下である。
本明細書では、長手方向(MD)とは、微多孔膜連続成形機械方向を意味し、幅方向(TD)とは、微多孔膜の長手方向を膜の平面上において90°の角度で横切る方向を意味する。
また、本明細書では、熱暴走とは、2次電池の連鎖的な発熱現象を意味する。

0015

理論に拘束されることを望まないが、セパレータを含む2次電池中に異物が混入したことによってセパレータが破膜したとき、衝突の瞬間は電極同士の接触する面積が大きいほど熱暴走の危険性が小さくなることが考えられる。
本発明によれば、衝突試験時に2次電池内に異物が混入していた場合、衝突の瞬間は異物によってポリオレフィン微多孔膜が確実に貫通し、電極同士の接触面積を十分確保することで局所的な電流集中を防ぎ、それによって2次電池の安全性を向上させることができる。また、もし衝撃の程度が非常に軽度であったために、衝突直後(例えば、衝突3秒後)に、異物周辺のポリオレフィン微多孔膜が十分に破れず、電極同士の接触面積を十分に確保できずに電池の温度が上昇してしまう場合にも、微多孔膜の耐熱性が優れるために、電池の温度の上昇に伴う微多孔膜の収縮を防ぐことができ、一定時間経過後(例えば、衝突3分後)にも、電極同士の接触面積が非常に軽度な衝撃を受けたときより拡大することがないために、電池の熱暴走を防ぐことが可能となる。
図1では、破膜時の電極接触面積について、従来のセパレータと第一の実施形態に係るセパレータが対比される。図1を参照して、破膜時の電極接触面積と熱暴走の発生の関係を説明する。
セパレータ(1)が異物(3)の動作に追従し易いと、セパレータ(1)が、異物(3)の移動方向に、例えばセパレータ(1)と電極板(2A,2B)の積層方向伸びるため、セパレータ(1)の破膜時に、電極板(2A,2B)同士の接触部分(4)の面積が小さくなり、電流が一点に集中し、熱暴走が発生し易くなる(図1(a))。
セパレータ(1)が異物(3)の動作に追従し難いと、電池中への異物(3)の混入直後にセパレータ(1)が破膜して、電極板(2A,2B)同士の接触部分(4)の面積が大きくなり、電流の一点集中を抑制することができる(図1(b))。
したがって、特に異物混入に起因する熱暴走の抑制にとって、セパレータが破膜した直後は正負極間の接触面積をできる限り大きくするようにセパレータの異物に対する追従性を制御することが重要である。このような観点から、破膜時に異物への適切な追従性を有するポリオレフィン微多孔膜の構造が、下記(i)及び(ii):
(i)突刺伸度(mm)≦2.30;及び
(ii)幅方向のTMA測定において、応力変異点の温度(℃)≧80.0、かつ応力ピーク値(g)≦1.8以下;
により特定される。

0016

[突刺試験特性
本明細書では、突刺伸度とは、膜状試料周縁を固定し、膜状試料の外表面から膜状試料の厚み方向に特定サイズの針を突き刺して、針が膜状試料に接触してから、穴が開くまでの移動距離(伸度)を意味する。突刺強度とは、膜状試料の周縁を固定し、膜状試料の外表面から膜状試料の厚み方向に特定サイズの針を突き刺すことにより掛けられた力に対する試料の応力を意味する。突刺伸度及び突刺強度の測定方法は、実施例において説明される。
ポリオレフィン微多孔膜は、2.30mm以下の突刺伸度を有すると、熱暴走の抑制にとって適切な異物追従性及び破膜挙動を示す傾向にある。

0017

従来、ポリオレフィン微多孔膜を含む2次電池の衝突試験において2次電池内に異物が混入していた場合に、ポリオレフィン微多孔膜の伸度が高いと異物に追従して膜が伸びるため、電極同士の接触面積を十分に確保できず、局所的な電流集中が起こり、それによって電池が発火するなどして、安全性が低下する傾向にあった。また従来開発されてきた突刺伸度が高い微多孔膜は、想定以上の衝撃により僅かに膜が破れてしまった際に、電極の接触面積を十分に確保できないために電流の局所的な集中を起こし易く、十分な安全性を確保できていなかった。
これに対して、第一の実施形態では、ポリオレフィン微多孔膜が2.30mm以下の突刺伸度を有すると、2次電池の衝突試験において、衝突の瞬間に異物がポリオレフィン微多孔膜を確実に貫通することで電極同士の接触面積を十分に確保でき、電流集中を防ぐことができるため、2次電池の安全性及び生産性が向上する。

0018

2次電池の熱暴走の抑制及び塗工層のカールの抑制という観点から、ポリオレフィン原料を選択してポリオレフィン微多孔膜を形成するための指標として、2.30mm以下の突刺伸度が見出された。同様の観点から、突刺伸度の上限値は、好ましくは2.20mm以下、より好ましくは2.10mm以下であり、突刺伸度の下限値は、好ましくは0mm超又は0.5mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは1.6mm以上、よりさらに好ましくは1.7mm以上である。
突刺伸度は、例えば、微多孔膜を作製するためのポリオレフィン原料の選定、ポリオレフィン組成物の延伸時及び/又は熱固定時の歪み速度の制御などにより、上記で説明されたとおりに調整することができる。
2次電池の熱暴走の抑制、塗工層のカールの抑制、セパレータ中への異物の侵入の抑制などの観点から、ポリオレフィン微多孔膜の単位厚み当たりの突刺強度は、好ましくは70gf/μm未満、より好ましくは10gf/μm以上70gf/μm未満、さらに好ましくは20gf/μm以上60gf/μm以下、よりさらに好ましくは25gf/μm以上55gf/μm以下であり、最も好ましくは30gf/μm以上55gf/μm以下である。

0019

ポリオレフィン微多孔膜の突刺絶対強度は、絶縁信頼性および取り扱い性の観点から50g以上が好ましく、2次電池の衝突試験において異物がポリオレフィン微多孔膜を確実に貫通することを阻害しない観点で400g以下が好ましい。より好ましくは、ポリオレフィン微多孔膜の突刺絶対強度は、100g以上350g以下である。

0020

ポリオレフィン微多孔膜の目付は、シャットダウン機能発現する観点から2g/m2以上が好ましく、イオン透過性と電池容量の観点から20g/m2以下が好ましい。より好ましくは、ポリオレフィン微多孔膜の目付は、3g/m2以上10g/m2以下である。

0021

[TMA測定]
本明細書では、熱機械分析(TMA)は、試料の熱に対する機械特性定長モードで検出することにより行なわれる。定長モードでは、試料温度の変化に応じて、試料の長さを一定に保つための荷重の変化を検出する。
定長モードでは、加熱により試料が収縮しそうになったとしても、試料の長さ(すなわち、チャック間距離)が加熱前と同じになるように、試料に荷重を掛けて試料を引っ張る。定長モードでのTMAは、試料の昇温開始から試料の破膜まで継続して行われる。荷重発生部からプローブを介して試料に荷重を与えながら、ヒーターで試料の温度を変化させることにより、試料の温度変化に応じて、試料の長さを一定に保つための荷重の変化を検出することができ、検出されたTMAプロファイルから試料の軟化点熱膨張挙動熱収縮挙動などを知ることができる。TMA測定は、実施例に記載の方法に従って行われる。

0022

定長モードでのTMAプロファイルが温度(℃)−荷重(g)曲線として表されるとき、応力変異点は、昇温開始後に曲線の傾きの正負が最初に変わる点である。なお、昇温開始直後から曲線の傾きがゼロ(0)のまま推移すること及び昇温開始直後のノイズとして荷重が±0.07gの範囲内で増減することは、応力変異点に含まれない。本技術分野では、応力変異点の温度は、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮が開始する温度として見なされる。また、一般に、セパレータは、電池内で長手方向に張力が掛かる状態になっており、かつ幅方向には張力が掛からない状態になっているため、電池の熱暴走が起こった場合には幅方向の収縮が長手方向の収縮よりも先に起こり易いことが予想される。したがって、第一の実施形態では、2次電池の熱暴走の抑制に適した熱収縮開始温度を選択するための指標として、幅方向の応力変異点の温度が80.0℃以上であることが見出された。

0023

定長モードでのTMAプロファイルが温度(℃)−荷重(g)曲線として表されるとき、応力ピークは、最大荷重を表す点であり、応力ピーク値は最大荷重を表す。また、定長モードでのTMAプロファイルにおいて、応力ピークを含むカーブの形状は、強度、残留応力、融点等により変化する。第一の実施形態では、2次電池の熱暴走の抑制に適した溶融開始温度及び熱収縮率を選択するための指標として、幅方向の応力ピーク値が1.8g以下であることが見出された。

0024

さらに、従来のポリオレフィン微多孔膜をセパレータ基材として使用し、水系塗料などの塗工液を基材に塗工すると、塗工速度の増加に伴って水系塗料を乾燥するための乾燥温度が増加し、結果として、基材の収縮と塗工層の収縮のバランスが取れなくなり、塗工膜がカールする。
これに対して、第一の実施形態では、幅方向のTMAプロファイルにおいて80.0℃以上の応力変異点の温度及び1.8g以下の応力ピーク値を有するポリオレフィン微多孔膜を基材として使用することによって、基材上に塗工液を塗工した後に乾燥したときに、基材の収縮と塗工層の熱収縮のバランスを取ることができ、塗工速度及び乾燥温度を増加させたとしても塗工層のカールを抑制することができるため、2次電池用セパレータの製造速度及び2次電池の生産性を向上させることができる。

0025

熱暴走の抑制、2次電池の衝突試験時の安全性、及び2次電池の生産性の観点から、幅方向のTMA測定では、応力変異点の温度は、好ましくは80℃以上、又は80℃超180.0℃以下であり、より好ましくは90.0℃以上150.0℃以下、さらに好ましくは100.0℃以上140.0℃以下、よりさらに好ましくは100.0℃超130.0℃以下であり、応力ピーク値は、好ましくは1.8g以下、より好ましくは1.4g以下、さらに好ましくは0.3g以上1.4g以下、最も好ましくは1.0g以上1.4g以下である。
さらに、ポリオレフィン微多孔膜の長手方向のTMA測定では、熱安定性の観点から、応力ピーク値が、好ましくは2.0g以下、より好ましくは0.3g以上1.9g以下である。
ポリオレフィン微多孔膜のTMA挙動は、ポリオレフィン原料の種類又は分子量、ポリオレフィン組成物の延伸条件又は熱固定条件などを制御することにより、上記(i)及び(ii)のとおりに制御されることができる。

0026

[突刺伸度とTMA挙動の関係]
第一の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、2.30mm以下の突刺伸度と上記(i)及び(ii)で示されるTMA挙動とを有し、突刺伸度とTMA挙動のバランスを取ることによって、例えば、衝突以外の要因による短絡の発生で電池の表面温度が上昇したとしても、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮が小さいために電極同士の接触面積の拡大を抑制し、相乗的に安全性を向上させることができる。

0027

[構成要素]
ポリオレフィン微多孔膜の構成要素及び好ましい実施形態について以下に説明する。
ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を含む多孔膜、ポリエチレンテレフタレートポリシクロオレフィンポリエーテルスルフォンポリアミドポリイミドポリイミドアミドポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロンポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を含む多孔膜、ポリオレフィン系の繊維を織ったもの(織布)、ポリオレフィン系の繊維の不織布などが挙げられる。これらの中でも、塗工工程を経て多層多孔膜、すなわち2次電池用セパレータを得る場合に塗工液の塗工性に優れ、セパレータの膜厚を従来の水準より薄くして、2次電池等の蓄電デバイス内の活物質比率を高めて体積当たりの容量を増大させる観点から、ポリオレフィン樹脂を含む多孔膜(以下、「ポリオレフィン樹脂多孔膜」ともいう。)が好ましい。

0028

ポリオレフィン樹脂多孔膜について説明する。
ポリオレフィン樹脂多孔膜は、2次電池用セパレータを形成した時のシャットダウン性能等を向上させる観点から、多孔膜を構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリオレフィン樹脂が占めるポリオレフィン樹脂組成物により形成される多孔膜であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂が占める割合は、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは95質量%以上100質量%以下である。

0029

ポリオレフィン樹脂組成物に含有されるポリオレフィン樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレンプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン1−ヘキセン、及び1−オクテン等をモノマーとして用いて得られるホモ重合体共重合体、又は多段重合体等が挙げられる。また、これらのポリオレフィン樹脂は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、2次電池用セパレータを形成した時のシャットダウン特性の観点から、ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレンポリプロピレンエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−それら以外のモノマーの共重合体、並びにこれらの混合物が好ましい。
ポリエチレンの具体例としては、低密度ポリエチレン線状低密度ポリエチレン中密度ポリエチレン高密度ポリエチレン超高分子量ポリエチレン等、
ポリプロピレンの具体例としては、アイソタクティックポリプロピレンシンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン等、
共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレンランダム共重合体エチレンプロピレンラバー等、が挙げられる。

0030

ポリオレフィン樹脂多孔膜は、2次電池用セパレータを形成した時のシャットダウン性能等を更に向上させる観点から、多孔膜を構成する樹脂成分の50質量%以上100質量%以下をポリエチレンが占めるポリエチレン組成物により形成される多孔膜であることが好ましい。多孔膜を構成する樹脂成分におけるポリエチレンが占める割合は、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、最も好ましくは95質量%以上100質量%以下である。

0031

また、ポリオレフィン樹脂は、電池の熱暴走を初期段階で止めるという観点から、130℃から150℃までの範囲内に融点を持つポリエチレンであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂におけるポリエチレンの割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、そして100質量%以下であることが好ましく、97質量%であることがより好ましく、95質量%以下であることがさらに好ましい。

0032

中でも、2次電池用セパレータを形成した時にシャットダウン特性と高強度の要求性能を満たす観点から、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン、特に高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。なお、本発明において、高密度ポリエチレンとは密度0.942〜0.970g/cm3のポリエチレンをいう。なお、本発明においてポリエチレンの密度とは、JIS K7112(1999)に記載のD)密度勾配管法に従って測定した値をいう。

0033

また、多孔膜の耐熱性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン及びポリプロピレンの混合物を用いてもよい。この場合、ポリオレフィン樹脂組成物中の、総ポリオレフィン樹脂に対するポリプロピレンの割合は、耐熱性と良好なシャットダウン機能を両立させる観点から、1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは2〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。

0034

ポリオレフィン樹脂組成物には、任意の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の重合体無機フィラーフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤ステアリン酸カルシウムステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類紫外線吸収剤光安定剤帯電防止剤防曇剤着色顔料等が挙げられる。これらの添加剤の総添加量は、ポリオレフィン樹脂100質量%に対して、20質量%以下であることがシャットダウン性能等を向上させる観点から好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。

0035

[微多孔膜の詳細]
ポリオレフィン微多孔膜は、非常に小さな孔が多数集まって緻密な連通孔を形成した多孔構造を有しているため、電解液を含んだ状態においてイオン透過性に非常に優れると同時に耐電圧特性も良好であり、しかも高強度であるという特徴を有する。微多孔膜は、上述した材料から成る単層膜であってもよく、積層膜であってもよい。

0036

微多孔膜の膜厚は、1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上50μm以下、さらに好ましくは2μm以上25μm以下であり、最も好ましくは2μm以上11μm以下である。微多孔膜の膜厚は、機械的強度の観点から1μm以上が好ましく、2次電池の高容量化の観点から100μm以下が好ましい。微多孔膜の膜厚は、ダイリップ間隔、延伸工程における延伸倍率等を制御すること等によって調整することができる。

0037

微多孔膜の平均孔径は、0.01μm以上0.70μm以下が好ましく、より好ましくは0.02μm以上0.20μm以下、さらに好ましくは0.03μm以上0.10μm以下、よりさらに好ましくは0.04μm以上0.09μm以下である。高いイオン透過性と耐電圧の観点から、0.01μm以上0.70μm以下の平均孔径が好ましい。微多孔膜の平均孔径は、例えば特開2017−27945号公報に記載の測定法で測定することができる。
平均孔径は、組成比押出シート冷却速度延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率などを制御すること、又はこれらを組み合わせることにより調整することができる。

0038

微多孔膜の気孔率は、好ましくは25%以上95%以下、より好ましくは30%以上65%以下、さらに好ましくは35%以上55%以下である。微多孔膜の気孔率は、イオン透過性向上の観点から25%以上が好ましく、耐電圧特性の観点から95%以下が好ましい。
微多孔膜の気孔率は、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤混合比率、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、熱固定時の延伸倍率、熱固定時の緩和率などを制御すること、又はこれらを組み合わせることによって調整することができる。

0039

微多孔膜がポリオレフィン樹脂多孔膜である場合、原料として用いるポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、30,000以上5,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは80,000以上3,000,000未満、さらに好ましくは150,000以上2,000,000未満である。粘度平均分子量が30,000以上であると、溶融成形の際の成形性が良好になると共に、重合体同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、粘度平均分子量が5,000,000以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。さらに、2次電池用セパレータを形成した時に、粘度平均分子量が1,000,000未満であると、温度上昇時に孔を閉塞し易く、良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。
第1の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、その製造方法の一例として、以下に説明する工程(A)〜(D)を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法によって製造することができる。

0040

<ポリオレフィン微多孔膜の製造方法>
本発明の別の態様は、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法である。第二の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、以下の工程:
(A)ポリオレフィン樹脂及び孔形成材を含むポリオレフィン組成物を押し出して、ゲル状シートを形成する工程;
(B)ゲル状シートを二軸延伸して、延伸シートを形成する工程;
(C)延伸シートから孔形成材を抽出して、多孔膜を形成する工程;並びに
(D)多孔膜を熱固定する工程;
を含む。
第二の実施形態では、工程(B)における長手方向の歪速度が20%/秒以上50%/秒以下であり、かつ工程(D)における幅方向の歪速度に対する工程(B)における幅方向の歪速度の比が、2.0以上10.0以下である。
ポリオレフィン微多孔膜の製造工程及び好ましい実施形態について以下に説明する。

0041

押出工程(A)]
工程(A)では、ポリオレフィン組成物を押し出して、ゲル状シートを形成する。ポリオレフィン組成物は、ポリオレフィン樹脂、孔形成剤等を含んでよい。ゲル状シートは、ポリオレフィン樹脂と孔形成材とを溶融混練してシート状に成形することにより得ることができる。
まず、ポリオレフィン樹脂と孔形成材を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を押出機ニーダーラボプラストミル混練ロールバンバリーミキサー等の樹脂混練装置投入することで、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で孔形成材を導入して混練する方法が挙げられる。

0042

ポリオレフィン組成物に含有されるポリオレフィン樹脂は、得られるポリオレフィン微多孔膜の所定の樹脂原料に応じて決定されることができる。具体的には、押出工程(A)で使用されるポリオレフィン樹脂は、第一の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜と関連して説明されたポリオレフィン樹脂でよい。
ポリオレフィン組成物中のポリオレフィン樹脂の割合は、シート成形性の観点から、ポリオレフィン組成物の質量を基準として、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%、さらに好ましくは30〜50質量%である。

0043

孔形成材としては、可塑剤、無機材又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
可塑剤としては、特に限定されないが、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成し得る不揮発性溶媒を用いることが好ましい。不揮発性溶媒の具体例としては、例えば、流動パラフィンパラフィンワックス等の炭化水素類フタル酸ジオクチルフタル酸ジブチル等のエステル類オレイルアルコールステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。なお、これらの可塑剤は、抽出後、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
可塑剤の中でも、流動パラフィンは、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン又はポリプロピレンの場合に、これらとの相溶性が高く、溶融混練物を延伸しても樹脂と可塑剤の界面剥離が起こり難く、均一な延伸が実施し易くなる傾向にあるため好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、均一な溶融混練及びシート成形性に応じて決定されることができる。ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とから成る組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは50〜70質量%である。可塑剤の質量分率が90質量%以下であると、溶融成形時メルトテンションが成形性向上のために十分なものとなる傾向にある。可塑剤の質量分率が20質量%以上であると、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤との混合物を高倍率で延伸した場合でもポリオレフィン分子鎖の切断が起こらず、均一かつ微細な孔構造を形成し易く、強度も増加し易い。

0044

無機材としては、特に限定されず、例えば、アルミナシリカ珪素酸化物)、チタニアジルコニアマグネシアセリアイットリア酸化亜鉛酸化鉄などの酸化物系セラミックス窒化ケイ素窒化チタン窒化ホウ素等の窒化物系セラミックスシリコンカーバイド炭酸カルシウム硫酸アルミニウム水酸化アルミニウムチタン酸カリウムタルクカオリンクレーカオリナイトハロイサイトパイロフィライトモンモリロナイトセリサイトマイカアメサイトベントナイトアスベストゼオライトケイ酸カルシウムケイ酸マグネシウムケイ藻土ケイ砂等のセラミックスガラス繊維が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、抽出が容易である点から、シリカが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂組成物と無機材との比率は、良好な隔離性を得る観点から、これらの合計質量に対して無機材が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、高い強度を確保する観点から、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。

0045

次に、溶融混練物をシート状に成形してゲル状シートを得る。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、熱伝導の効率が高いため、金属製のロールを用いることが好ましい。また、押出したゲル状シートを金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むことは、熱伝導の効率がさらに高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上する傾向にあるためより好ましい。溶融混練物をTダイからシート状に押出す際のダイリップ間隔は200μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることがより好ましい。ダイリップ間隔が200μm以上であると、メヤニ等が低減され、スジ又は欠点などの膜品位への影響が少なく、その後の延伸工程において膜破断などのリスクを低減することができる。ダイリップ間隔が3,000μm以下であると、冷却速度が速く冷却ムラを防げると共に、シートの厚み安定性を維持できる。

0046

また、押し出されたシート状成形体又はゲル状シートを圧延してもよい。圧延は、例えば、ロール等を使用した方法にて実施することができる。圧延を施すことにより、特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は1倍を超えて3倍以下であることが好ましく、1倍を超えて2倍以下であることがより好ましい。圧延倍率が1倍を超えると、面配向が増加し、最終的に得られる多孔膜の膜強度が増加する傾向にある。圧延倍率が3倍以下であると、表層部分と中心内部の配向差が小さく、膜の厚さ方向に均一な多孔構造を形成することができる傾向にある。

0047

[延伸工程(B)]
工程(B)では、ゲル状シート又は成形シートを延伸する。工程(B)は、シートから孔形成材を抽出する工程(C)の前又は後に行うか、又は工程(C)の前と後に行ってよい。工程(B)では、ゲル状シート又は成形シートの延伸処理は、幅方向の膜厚分布と透気度分布を小さくするという観点から、長手方向と幅方向に少なくとも1回ずつ(すなわち、二軸延伸により)行われる。
工程(B)では、長手方向の歪速度が20%/秒以上50%/秒以下の範囲内である。本明細書では、歪速度とは、特定の処理に供される前後における物体の一次元寸法の単位時間当たりの変化率を意味し、伸び率とも呼ばれる。
工程(B)における幅方向の歪速度は、熱固定工程(D)における幅方向の歪速度に対する工程(B)における幅方向の歪速度の比が2.0以上10.0以下の範囲内になるように設定される。

0048

工程(B)では、長手方向の歪速度が20%/秒以上50%/秒以下の範囲内にあるようにシートを延伸し、かつ熱固定工程(D)における幅方向の歪速度より高い歪速度でシートを幅方向に延伸することによって、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性値の制御が容易になり、例えば下記(i)及び(ii):
(i)突刺伸度(mm)≦2.30;及び
(ii)幅方向のTMA測定において、応力変異点の温度(℃)≧80.0、かつ応力ピーク値(g)≦1.8以下;
を満たすポリオレフィン微多孔膜を製造することができ、それにより2次電池の熱暴走の抑制に寄与する。理由は定かではないが、工程(B)の長手方向の歪速度が高いほど、TMA測定における応力ピーク値が高くなる傾向にあり、突刺伸度は低くなる傾向にある。また理由は定かではないが、工程(D)に対する工程(B)の幅方向への歪速度の比が高いほど、TMA測定における応力ピーク値が低くなる傾向にあり、突刺伸度は高くなる傾向にある。このような観点から、突刺伸度とTMA測定における応力ピークのバランスを最も良好な範囲に制御するために、工程(B)における長手方向の歪速度は、好ましくは20%/秒以上40%/秒以下、より好ましくは20%/秒以上35%/秒以下の範囲内であり、熱固定工程(D)における幅方向の歪速度に対する工程(B)における幅方向の歪速度の比は、好ましくは2.0以上6.0以下、より好ましくは2.5以上5.0以下の範囲内である。

0049

二軸延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。中でも、冷却・加熱回数の抑制、突刺強度の向上、及び延伸の均一性の観点から、同時二軸延伸が好ましい。
同時二軸延伸とは、長手方向の延伸と幅方向の延伸が同時に施される延伸方法をいい、各方向の延伸倍率は異なってもよい。逐次二軸延伸とは、長手方向及び幅方向の延伸が独立して施される延伸方法をいい、長手方向又は幅方向に延伸が為されているときは、他方向は非拘束状態又は定長に固定されている状態とする。

0050

工程(B)の延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、30倍以上70倍以下の範囲であることがより好ましい。各軸方向の延伸倍率は、長手方向に2倍以上12倍以下、幅方向に2倍以上12倍以下の範囲であることが好ましく、長手方向に3倍以上10倍以下、幅方向に3倍以上10倍以下の範囲であることがより好ましく、長手方向に5倍以上8倍以下、幅方向に5倍以上8倍以下の範囲であることがさらに好ましい。総面積倍率が20倍以上であると、得られる多孔膜に十分な強度を付与できる傾向にあり、一方、総面積倍率が100倍以下であると、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる傾向にある。
工程(B)の延伸温度は、ポリオレフィン樹脂の溶融性及び製膜性の観点から、好ましくは90〜150℃、より好ましくは100〜140℃、さらに好ましくは110〜130℃である。

0051

抽出工程(C)]
工程(C)では、シート状成形体から孔形成材を除去して多孔膜を得る。孔形成材を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して孔形成材を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。孔形成材を抽出する方法は、バッチ式連続式のいずれであってもよい。多孔膜の収縮を抑えるために、浸漬及び乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、多孔膜中の孔形成材残存量は、多孔膜全体の質量に対して1質量%未満であることが好ましい。

0052

孔形成材を抽出する際に用いられる抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒であり、孔形成材に対して良溶媒であり、かつ沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n−ヘキサンシクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテルハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤エタノールイソプロパノール等のアルコール類ジエチルエーテルテトラヒドロフラン等のエーテル類アセトンメチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。また、孔形成材として無機材を用いる場合には、水酸化ナトリウム水酸化カリウム等の水溶液を抽出溶剤として用いることができる。

0053

[熱固定工程(D)]
工程(D)では、多孔膜の収縮を抑制するために、延伸工程(B)後、又は抽出工程(C)後に、熱固定を目的として多孔膜の熱処理を行う。また、多孔膜に、界面活性剤等による親水化処理電離性放射線等による架橋処理等の後処理を行ってもよい。
多孔膜の熱処理としては、物性の調整を目的として、所定の温度の雰囲気及び所定の延伸率で行う延伸操作、並びに/又は、延伸応力の低減を目的として、所定の温度の雰囲気及び所定の緩和率で行う緩和操作が挙げられる。これらの熱処理は、テンター又はロール延伸機を用いて行うことができる。

0054

工程(D)における幅方向の歪速度は、工程(D)における幅方向の歪速度に対する延伸工程(B)における幅方向の歪速度の比が2.0以上10.0以下の範囲内になるように設定される。工程(D)では、延伸工程(B)における幅方向の歪速度よりも低い歪速度で多孔膜を熱固定することによって、得られるポリオレフィン微多孔膜の物性値の制御が容易になり、例えば第一の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜を製造することができ、それにより2次電池の熱暴走の抑制に寄与する。歪速度及び歪速度の比の計算方法については実施例に後述する。

0055

工程(D)の延伸操作は、膜の長手方向及び/又は幅方向に1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上の延伸を施すことが、さらなる高強度かつ高気孔率な多孔膜が得られる観点から好ましい。
緩和操作は、膜の長手方向及び/又は幅方向への縮小操作のことである。緩和率とは、緩和操作後の膜の寸法を緩和操作前の膜の寸法で除した値のことである。なお、長手方向と幅方向の双方を緩和した場合の緩和率とは、長手方向の緩和率と幅方向の緩和率を乗じた値のことである。緩和率は、1.0以下であることが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.95以下であることがさらに好ましい。緩和率は膜品位の観点から0.5以上であることが好ましい。緩和操作は、長手方向と幅方向の両方向で、又は長手方向と幅方向の片方だけで行ってよい。
この可塑剤抽出後の延伸及び緩和操作などを含む熱固定は、好ましくは幅方向に行う。その場合、幅方向の熱固定倍率は、好ましくは0.5〜2.5倍、より好ましくは0.7〜2.3倍、さらに好ましくは1.0〜2.0倍である。

0056

延伸及び緩和操作などを含む熱固定の温度は、ポリオレフィン樹脂の融点の観点から、100〜170℃の範囲内であることが好ましい。延伸及び緩和操作の温度が上記範囲内であると、熱収縮率低減と気孔率とのバランスの観点から好ましい。熱固定温度の下限は、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、よりさらに好ましくは125℃以上であり、その上限は、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下、よりさらに好ましくは150℃以下であり、最も好ましくは140℃以下である。

0057

<無機塗工層の形成>
安全性、寸法安定性、耐熱性などの観点から、ポリオレフィン微多孔膜表面に無機塗工層を設けることができる。無機塗工層は、無機粒子などの無機成分を含む層であり、所望により、無機粒子同士を結着させるバインダ樹脂、無機粒子をバインダ樹脂中に分散させる分散剤などを含んでよい。

0058

無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、及び酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、及び窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、及びケイ砂等のセラミックス;並びにガラス繊維などが挙げられる。無機粒子は、単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
バインダ樹脂としては、例えば、共役ジエン系重合体アクリル系重合体ポリビニルアルコール系樹脂、及び含フッ素樹脂などが挙げられる。また、バインダ樹脂は、ラテックスの形態であることができ、水又は水系溶媒を含むことができる。分散剤は、スラリー中で無機粒子表面に吸着し、静電反発などにより無機粒子を安定化させるものであり、例えば、ポリカルボン酸塩スルホン酸塩ポリオキシエーテル、界面活性剤などである。

0059

無機塗工層は、例えば、上記で説明された含有成分のスラリーをポリオレフィン微多孔膜表面に塗布乾燥することにより形成されることができる。

0060

また、さらに電極との接着性を発現する接着層をポリオレフィン微多孔膜又は無機塗工層に付設してもよく、接着層を設けた場合、例えばラミネート型電池において変形等を抑えることができる。

0061

<2次電池用セパレータ>
第一の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜又は第二の実施形態に係る製造方法により得られるポリオレフィン微多孔膜は、2次電池用セパレータとして利用されることができる。セパレータは、リチウムイオン2次電池に組み込まれることによって、リチウムイオン2次電池の熱暴走を抑制することができる。
なお、上述した各種物性の測定値は、特に断りの無い限り、後述する実施例における測定法に準じて測定される値である。

0062

次に、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。

0063

[粘度平均分子量]
ASTM−D4020に基づき、デカリン溶媒における135℃での極限粘度[η](dl/g)を求めた。
ポリエチレンについては、次式により算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
ポリプロピレンについては、次式によりMvを算出した。
[η]=1.10×10−4Mv0.80

0064

[融点(℃)]
示差走査熱量(DSC測定装置「DSC−60」(島津製作所社製)を用いてポリオレフィン樹脂の融点を測定した。

0065

[各層の厚み(μm)]
東洋精機製の微少測厚器(タイプKBN、端子径Φ5mm)を用いて、雰囲気温度23±2℃で厚みを測定した。なお、厚みを測定する際には微多孔膜を2枚重ねて測定し、その総厚みを2で割った値を1枚の厚みとする。

0066

[気孔率(%)]
膜の質量、密度及び膜厚に基づいて、下記式により気孔率を算出した。
密度は、材料密度より計算した。
気孔率=(1−(目付[g/m2]/膜厚[μm]/密度[kg/m3]))*100

0067

[透気度(秒/100cc)]
旭精工株式会社の王研式透気度測定機「EGO2」で透気度を測定した。
透気度の測定値は、膜の幅方向に沿って両端から5cmの地点と中央1点との計3点の透気度を測定し、それらの平均値を算出した値である。

0068

[突刺試験
カトーテック製のハンディ圧縮試験KES−G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで微多孔膜を固定した。次に固定された微多孔膜の中央部を、針先端曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、23℃の雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として突刺強度(gf)を測定し、かつ針が微多孔膜に触れてから最大応力(突刺強度)に達するまでの針の変位(mm)を突刺伸度として測定した。また得られた突刺強度(gf)を微多孔膜の厚みで除することにより膜厚換算突刺強度(gf/μm)を算出した。
突刺試験の測定値は、膜の幅方向に沿って両端から5cmの地点と中央1点との計3点を測定し、それらの平均値を算出した値である。

0069

[定長モードでのTMA、応力変異温度(℃)、応力ピーク(g)]
島津製作所TMA50(商標)を用いて微多孔膜のTMA測定を行なった。微多孔膜から長手方向又は幅方向に幅3mmに切り出したサンプルを、チャック間距離が10mmとなるようにチャックに固定し、専用プロープにセットした。初期荷重を0.0098N(1.0gf)に設定し、相対湿度40%±2%の環境下で、30℃から10℃/分の速度で250℃まで昇温させ、サンプルが収縮することにより発生する荷重を測定した。読み取ったデータを温度(℃)−荷重(g)曲線としてプロットした場合に、ノイズ(±0.07gの値変動)を除いて、曲線の傾きが0から正の傾きに変化する点の温度が、応力変異点の温度(℃、表1中では「応力変異温度」として示す)であり、TMA読み取り値の最大荷重(g)が応力ピーク値(g)である。
TMA測定値は、膜の幅方向に沿って両端から5cmの地点と中央1点との計3点を測定し、それらの平均値を算出した値である。

0070

[歪速度および歪速度比の計算]
各工程及び各方向への延伸の歪速度を以下のように計算した。
歪速度(%/sec)=(延伸倍率−1)*100/(延伸長(m)/((延伸前ライン速度(m/sec)+延伸後ライン速度(m/sec))/2))
歪速度の比=工程(B)幅方向歪速度(%/sec)/工程(D)幅方向歪速度(%/sec)
ここで、延伸長とは、工程(B)および工程(D)で、延伸開始から延伸終了までに膜が長手方向に移動する距離のことを指す。
また、工程(D)の幅方向の歪速度は、延伸操作の条件のみで算出されることを指し、緩和操作は計算に含まない。

0071

[塗工膜のカール評価]
無機塗工層を設けた微多孔膜を、長手方向20cm×幅方向20cmに切り出し、平らな台の上に置いた。30秒後に、微多孔膜が台と接している幅方向の長さA(cm)を計り、下記式に従ってカール値を算出した。
カール値(cm)=20(cm)−A(cm)
微多孔膜が台と接している幅方向の長さA(cm)としては、微多孔膜の長手方向において全て台と接している箇所を計測した。測定は、温度23±2℃、及び相対湿度40%±2%の条件下で行った。算出されたカール値を下記基準に従って評価した。
S(優):カール値が0.0cm以上3.1cm未満
A(良好):カール値が3.1cm以上6.1cm未満
B(許容):カール値が6.1cm以上9.0cm未満
C(不可):カール値が9.0cm以上20.0cm以下

0072

[衝突試験、安全性確認試験]
a.正極の作製
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO2、並びに導電材としてグラファイト及びアセチレンブラックを、バインダであるポリフッ化ビニリデンPVDF)及びN−メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを正極集電体となる厚さ15μmのアルミニウム箔ダイコーターで塗布し、130℃で3分間乾燥後、ロールプレス機圧縮成形した。得られた成形体を57.0mm幅スリットして正極を得た。

0073

b.負極の作製
負極活物質として人造グラファイト、及びバインダとしてカルボキシメチルセルロースアンモニウム塩スチレンブタジエン共重合体ラテックスとを、精製水に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる銅箔にダイコーターで塗布し、120℃で3分間乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形した。得られた成形体を58.5mm幅にスリットして負極を得た。

0074

c.非水電解液の調製
エチレンカーボネートジメチルカーボネートエチルメチルカーボネート=1:1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1mol/Lとなるように溶解させて、非水電解液を調製した。

0075

d.電池組立
正極、実施例又は比較例で得られた多孔膜及び負極を積層した後、常法により巻回電極体を作製した。なお、PO微多孔膜の厚みによって巻回数を調整した。得られた巻回電極体の最外周端部を絶縁テープ貼付により固定した。負極リード電池缶に、正極リード安全弁にそれぞれ溶接して、巻回電極体を電池缶の内部に挿入した。その後、非水電解液を電池缶内に5g注入し、ガスケットを介して蓋を電池缶にかしめることにより、外径18mm、高さ65mmの円筒型2次電池を得た。この円筒型2次電池を25℃の雰囲気下、0.2C(定格電気容量の1時間率(1C)の0.2倍の電流)の電流値電池電圧4.2Vまで充電し、到達後4.2Vを保持するようにして電流値を絞り始めるという方法で、合計3時間充電を行った。続いて0.2Cの電流値で電池電圧3.0Vまで放電した。0%以上の容量を維持していたセルの割合(%)を、自己放電特性として算出した。

0076

e.衝突試験
図2は、衝突試験の概略図である。
衝突試験では、試験台上に配置された試料の上に、試料と丸棒(φ=15.8mm)が概ね直交するように、丸棒を置いて、丸棒から61cmの高さの位置から、丸棒の上面へ18.2kgのを落すことにより、試料に対する衝撃の影響を観察する。
図2を参照して、実施例及び比較例における衝突試験の手順を以下に説明する。
25℃の環境下で、上記項目で得た2次電池を1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電した。
次に、25℃の環境下で、2次電池を平坦な面に横向きに置き、2次電池の中央部を横切るように、直径15.8mmのステンレスの丸棒を配置した。丸棒は、その長軸がセパレータの長手方向と平行となるように配置した。2次電池の中央部に配置した丸棒から2次電池の縦軸方向に対して、直角に衝撃が加わるように、18.2kgの錘を61cmの高さから落下させた。衝突後、3秒後と3分後に2次電池の表面温度を測定した。5セルずつ試験を行い、下記基準に即して評価した。本評価項目については、S(優)とA(良好)とB(許容)を合格の基準とした。なお、2次電池の表面温度とは、2次電池の外装体の底側から1cmの位置を熱電対(K型シールタイプ)で測定した温度である。
S(優):全てのセルにおいて、表面温度上昇が30℃以下。
A(良好):全てのセルにおいて、表面温度上昇が50℃以下。
B(許容):表面温度が50℃超過100℃以下のセルがあるが、全てのセルにおいて表面温度が100℃以下。
C(不可):1個以上のセルで表面温度が100℃を超過、又は発火。

0077

衝突試験について、衝撃の瞬間に膜が破膜することにより大面積で電流が流れるようにするために電池に穴を大きくあけてしまうことが安全性に効果的である。しかしながら、衝撃が非常に軽度であった場合に、衝撃の直後の穴の開き方が不十分であり、電流の分散ができず、表面温度が上昇した始めたときに、電極の接触面積が衝撃を受けたときより拡大することを防ぐことで、さらなる電池の温度上昇を防ぎ、熱暴走を抑制することができる。
つまり、3秒後の電池の表面温度が上昇していない場合、膜の突刺伸度が低いことで、異物等によって膜が確実に破膜し、電池の電流集中による短絡部分の局所的な発熱を防ぐことができたと考えられる。
また、3秒後の電池の表面温度は100℃未満の温度までは上昇したが、3分後の電池の表面温度はそれ以上上昇していない場合、衝突の重軽度、異物の大きさなどの影響により電池の熱暴走が起こりかけてしまったと考えられるが、膜の耐熱性が高いことで微多孔膜の収縮を防ぎ、ひいては電極同士の接触面積が衝撃を受けたときより拡大することを防ぐことができたため、3分後の熱暴走を抑制できたと考えられる。
さらに、3秒後及び3分後の電池の表面温度が上昇した場合は、異物等によって微多孔膜を貫通した際に、十分な電極同士の接触面積を確保できずに発熱し、その後も膜の耐熱性が低いことで、電極同士の接触面積がさらに拡大してしまい、熱暴走が継続して起こったものと考えられる。

0078

[実施例1]
(A)Mv70万の高密度ポリエチレンを45質量%、Mv25万の高密度ポリエチレンを45質量%、Mv40万のホモポリプロピレン10質量%をタンブラーブレンダーを用いてドライブレンドして、原料樹脂混合物を得た。32質量%の原料樹脂混合物と68質量%の流動パラフィンと1質量%の酸化防止剤とを配合して、ポリオレフィン組成物を得た。次に、ポリオレフィン組成物を二軸押出機に投入し、ダイリップ間隔820μmで溶融したポリオレフィン組成物を押出してゲル状シートを形成し、キャストロールで冷却固化した。
(B)同時二軸延伸機を用いて設定温度122℃、面倍率49倍(長手方向延伸倍率7倍、幅方向延伸倍率7倍)、長手方向の歪速度22%/秒、及び下記(D)での幅方向の歪速度に対して3.0倍の幅方向の歪速度で、冷却固化されたシートを延伸して延伸シートを得た。
(C)その後、延伸シートを塩化メチレンに浸漬し、流動パラフィンを抽出除去してから乾燥させて多孔化した。
(D)さらに、得られた多孔化物一軸延伸機により温度130℃で幅方向に1.5倍延伸し、厚みが6.0μmのポリオレフィン微多孔膜を得た。
ポリオレフィン微多孔膜を上記方法に従って評価した。評価結果を表1に示す。また、ポリオレフィン微多孔膜のTMA測定における温度−荷重曲線図3に示す。

0079

上記で得たポリオレフィン樹脂多孔膜の表面に、コロナ放電処理(放電量50W)を実施した。水酸化酸化アルミニウム(ベーマイトブロック状、平均粒径1.0μm、比表面積8m2/g)を95.0質量部と、アクリルラテックスとして2−エチルヘキシルアクリレート(EHA固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)が主な構成単位であるポリマーおよびブチルアクリレート(BA:固形分濃度40%、平均粒径300nm、最低成膜温度0℃以下)が主な構成単位であるポリマーの混合物を4.0質量部、並びにポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗布液を得て、上記ポリオレフィン樹脂多孔膜の処理表面グラビアコーターを用いて塗布液を塗布した後、60℃にて乾燥して水を除去し、多孔膜上に厚さ5μmの多孔層が形成して、総膜厚11μmのセパレータ得た。得られたセパレータのカールの評価結果を表1に併記する。

0080

[実施例2〜11、及び比較例1〜9]
表1に示される製造条件を使用したこと以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン微多孔膜を得て、評価した。評価結果を下記表1に示す。
[実施例12〜13]
(A)Mv200万のポリエチレンを25質量%、Mv70万の高密度ポリエチレンを15質量%、Mv25万の高密度ポリエチレンを30質量%、Mv15万の高密度ポリエチレンを30質量%をタンブラーブレンダーを用いてドライブレンドして、ポリオレフィン樹脂混合物を得た。35質量%の原料樹脂混合物と65質量%の流動パラフィンと1質量%の酸化防止剤とを配合して、ポリオレフィン組成物を得た。このようにして得られた樹脂組成物を用いて表1に示される製造条件を使用したこと以外、実施例1と同様の方法でポリオレフィン微多孔膜を得て、評価した。評価結果を下記表1に示す。
[比較例10]
(A)質量平均分子量が2.0×106の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20質量%と質量平均分子量が3.5×105の高密度ポリエチレン(HDPE)80質量%とからなり、酸化防止剤としてテトラキスメチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネートメタンを組成物100質量部当たり0.375質量部加えたポリエチレン組成物を得た。このようにして得られた樹脂組成物を用いて表1に示される製造条件を使用したこと以外、実施例1と同様の方法でポリオレフィン微多孔膜を得て、評価した。評価結果を下記表1に示す。
[比較例11]
工程(B)の二軸延伸を、逐次二軸延伸に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン微多孔膜を得て評価した。評価結果を下記表1に示す。

0081

実施例

0082

表1中の略号の説明
PC:ポリオレフィン組成物中の原料樹脂混合物の割合[%]
C/C:ダイリップ間隔
HS:熱固定

0083

1セパレータ
2A,2B電極板
3異物
4電極接触部分

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