図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2020年4月23日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (20)

課題

毒性を回避しつつ免疫細胞活性化し優れた抗腫瘍効果を発揮するTNFスーパーファミリー又はTNF受容体スーパーファミリーに対してアゴニスト活性を有する抗原結合分子、および、当該抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物、または当該医薬組成物による癌の治療方法を提供。

解決手段

下記のドメイン:(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び(2)腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー結合ドメイン又は腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー結合ドメインを含む、抗原結合分子。

概要

背景

癌は全世界において死亡の主な原因の一つである。一部の癌種を除いて、その発見時においては手術不能である場合も少なくなく、さらには主たる治療法である化学療法剤を用いた治療成績も決して高いとは言えない。癌の治療を困難としている要因として、癌細胞そのものの不均一性のみならず腫瘍微小環境が大きな役割を演じていることが示唆されている(非特許文献1)。近年、切除不能悪性黒色腫等において抑制性T細胞減弱させる抗CTLA-4抗体によって治癒の可能性が示された(非特許文献2)。このことは、腫瘍免疫賦活が新たな癌治療戦略基軸となり得ることを示唆している。

腫瘍免疫に重要な役割を持つT細胞の活性化は、1)腫瘍組織適合遺伝子複合体MHCクラスI分子により提示された抗原ペプチドに対するT細胞受容体(TCR)の結合および活性化;2)抗原提示細胞上のそのリガンドに対するT細胞表面上の共刺激分子の結合と活性化、の二つのシグナルによりなされると理解されている。さらには、T細胞表面上のCD137(4-1BB)をはじめとする腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーやTNF受容体スーパーファミリーに属する分子の活性化がT細胞活性化に重要であることも述べられている(非特許文献3)。

TNFスーパーファミリー及びTNF受容体スーパーファミリーには、CD137、CD137L、CD40、CD40L、OX40、OX40L、CD27、CD70、HVEM、LIGHT、RANK、RANKL、CD30、CD153、GITR、GITRL等といった分子が含まれる。CD137はT細胞表面のみならず樹状細胞(DC)、B細胞NK細胞好中球など他の免疫細胞表面にも発現していることが報告されている(非特許文献4)。

CD137アゴニスト抗体抗腫瘍効果を示すことは既に実証されており、それが主にCD8陽性T細胞とNK細胞の活性化に依るものであることが実験的に示されている(非特許文献5)。しかしながら、臨床ならびに非臨床においてCD137アゴニスト抗体の非特異的な肝毒性による副作用が問題となっており、薬剤の開発は進んでいない(非特許文献6; 非特許文献7)。この副作用の主たる原因としては、抗体定常領域を介したFcγレセプターへの結合の関与が示唆されている(非特許文献8)。また、TNF受容体スーパーファミリーに属する受容体のアゴニスト抗体が生体内アゴニスト活性を発揮するためにはFcγレセプター発現細胞(FcγRII発現細胞)による抗体の架橋が必要であることが報告されている(非特許文献9)。すなわち、CD137アゴニスト抗体の抗腫瘍効果の薬効と肝毒性等の副作用は共に抗体のFcγレセプターへの結合が関与していることから、抗体のFcγレセプターの結合を増強すれば薬効の向上は期待されるが肝毒性の副作用も増大し、抗体とFcγレセプターの結合を低減させれば、副作用は低減するものの薬効も低減してしまうと考えられ、これまで薬効と副作用を分離したCD137アゴニスト抗体は報告されていない。さらには、CD137アゴニスト抗体の抗腫瘍効果そのものについても決して強いものではなく、毒性の回避と同時に更なる薬効の増大が望まれている。

二重特異性抗体は少なくとも2つの結合ドメインを有するよう特徴づけられ、当業者にとって既に良く知られた分子形である。このなかで、2つの結合ドメインのうち1つが癌表面抗原に特異的に結合し、かつ第2の結合ドメインがT細胞表面抗原のCD3に結合するような分子も構築されている(非特許文献10)。この二重特異性単鎖抗体は、癌抗原依存的にT細胞を活性化し抗腫瘍効果を発揮することが示されている。

グリピカン3(GPC3)は、グリコシルホスファチジルイノシトールを介して細胞表面に結合しているヘパラン硫酸プロテオグリカン一群、すなわちグリピカンファミリーに属するタンパク質である(非特許文献11)。グリピカンは細胞の増殖、分化遊走に重要な役割を果たしている。GPC3は、外科切除または生検により得られた肝細胞癌組織の70%以上に発現しており、隣接する非腫瘍性肝臓病変や大部分の成人組織においては全く、あるいはほとんど発現していない(非特許文献12;非特許文献13)。さらには、肝細胞癌組織GPC3発現の高い患者で予後が悪いという報告もあり(非特許文献14)、GPC3は肝細胞癌に対する有望な標的分子と考えられている。

概要

毒性を回避しつつ免疫細胞を活性化し優れた抗腫瘍効果を発揮するTNFスーパーファミリー又はTNF受容体スーパーファミリーに対してアゴニスト活性を有する抗原結合分子、および、当該抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物、または当該医薬組成物による癌の治療方法を提供。下記のドメイン:(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び(2)腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー結合ドメイン又は腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー結合ドメインを含む、抗原結合分子。

目的

さらには、CD137アゴニスト抗体の抗腫瘍効果そのものについても決して強いものではなく、毒性の回避と同時に更なる薬効の増大が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

本明細書に記載の発明。

技術分野

0001

本発明は、二重特異性抗体を用いた新規癌治療法に関する。

背景技術

0002

癌は全世界において死亡の主な原因の一つである。一部の癌種を除いて、その発見時においては手術不能である場合も少なくなく、さらには主たる治療法である化学療法剤を用いた治療成績も決して高いとは言えない。癌の治療を困難としている要因として、癌細胞そのものの不均一性のみならず腫瘍微小環境が大きな役割を演じていることが示唆されている(非特許文献1)。近年、切除不能悪性黒色腫等において抑制性T細胞減弱させる抗CTLA-4抗体によって治癒の可能性が示された(非特許文献2)。このことは、腫瘍免疫賦活が新たな癌治療戦略基軸となり得ることを示唆している。

0003

腫瘍免疫に重要な役割を持つT細胞の活性化は、1)腫瘍組織適合遺伝子複合体MHCクラスI分子により提示された抗原ペプチドに対するT細胞受容体(TCR)の結合および活性化;2)抗原提示細胞上のそのリガンドに対するT細胞表面上の共刺激分子の結合と活性化、の二つのシグナルによりなされると理解されている。さらには、T細胞表面上のCD137(4-1BB)をはじめとする腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーやTNF受容体スーパーファミリーに属する分子の活性化がT細胞活性化に重要であることも述べられている(非特許文献3)。

0004

TNFスーパーファミリー及びTNF受容体スーパーファミリーには、CD137、CD137L、CD40、CD40L、OX40、OX40L、CD27、CD70、HVEM、LIGHT、RANK、RANKL、CD30、CD153、GITR、GITRL等といった分子が含まれる。CD137はT細胞表面のみならず樹状細胞(DC)、B細胞NK細胞好中球など他の免疫細胞表面にも発現していることが報告されている(非特許文献4)。

0005

CD137アゴニスト抗体抗腫瘍効果を示すことは既に実証されており、それが主にCD8陽性T細胞とNK細胞の活性化に依るものであることが実験的に示されている(非特許文献5)。しかしながら、臨床ならびに非臨床においてCD137アゴニスト抗体の非特異的な肝毒性による副作用が問題となっており、薬剤の開発は進んでいない(非特許文献6; 非特許文献7)。この副作用の主たる原因としては、抗体定常領域を介したFcγレセプターへの結合の関与が示唆されている(非特許文献8)。また、TNF受容体スーパーファミリーに属する受容体のアゴニスト抗体が生体内アゴニスト活性を発揮するためにはFcγレセプター発現細胞(FcγRII発現細胞)による抗体の架橋が必要であることが報告されている(非特許文献9)。すなわち、CD137アゴニスト抗体の抗腫瘍効果の薬効と肝毒性等の副作用は共に抗体のFcγレセプターへの結合が関与していることから、抗体のFcγレセプターの結合を増強すれば薬効の向上は期待されるが肝毒性の副作用も増大し、抗体とFcγレセプターの結合を低減させれば、副作用は低減するものの薬効も低減してしまうと考えられ、これまで薬効と副作用を分離したCD137アゴニスト抗体は報告されていない。さらには、CD137アゴニスト抗体の抗腫瘍効果そのものについても決して強いものではなく、毒性の回避と同時に更なる薬効の増大が望まれている。

0006

二重特異性抗体は少なくとも2つの結合ドメインを有するよう特徴づけられ、当業者にとって既に良く知られた分子形である。このなかで、2つの結合ドメインのうち1つが癌表面抗原に特異的に結合し、かつ第2の結合ドメインがT細胞表面抗原のCD3に結合するような分子も構築されている(非特許文献10)。この二重特異性単鎖抗体は、癌抗原依存的にT細胞を活性化し抗腫瘍効果を発揮することが示されている。

0007

グリピカン3(GPC3)は、グリコシルホスファチジルイノシトールを介して細胞表面に結合しているヘパラン硫酸プロテオグリカン一群、すなわちグリピカンファミリーに属するタンパク質である(非特許文献11)。グリピカンは細胞の増殖、分化遊走に重要な役割を果たしている。GPC3は、外科切除または生検により得られた肝細胞癌組織の70%以上に発現しており、隣接する非腫瘍性肝臓病変や大部分の成人組織においては全く、あるいはほとんど発現していない(非特許文献12;非特許文献13)。さらには、肝細胞癌組織GPC3発現の高い患者で予後が悪いという報告もあり(非特許文献14)、GPC3は肝細胞癌に対する有望な標的分子と考えられている。

先行技術

0008

Hanahan, Cell, 2011, 144, 646-74
Prieto, Clin Cancer Res. 2012, 18, 2039-47
Summers, Nat. Rev. Immunol., 2012, 12, 339-51
Vinay, Cell Biol Int., 2009, 33, 453-65
Houot, Blood, 2009, 114, 3431-8
Ascierto, Semin Oncol., 2010, 37, 508-16
Dubrot, Cancer Immunol. Immunother., 2010, 59, 1223-33
Schabowsky, Vaccine, 2009, 28, 512-22
Li, Proc Natl Acad Sci U S A. 2013, 110(48), 19501-6
Brandl, Cancer Immunol. Immunother., 2007, 56, 1551-63
Filmus, J. Clin. Invest., 2001, 108, 497-501
Zhu-Zu-W, Gut, 2001, 48, 558-564
Yamauchi, Mod. Pathol., 2005, 18, 1591-1598
Yorita, Liver Int., 2010, 1, 120-131

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は上記のような情況に鑑みてなされたものであり、毒性を回避しつつ免疫細胞を活性化し優れた抗腫瘍効果を発揮するTNFスーパーファミリー又はTNF受容体スーパーファミリーに対してアゴニスト活性を有する抗原結合分子を提供すること、および、当該抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物、または当該医薬組成物による癌の治療方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、TNFスーパーファミリー結合ドメインのみ又はTNF受容体スーパーファミリー結合ドメインのみを有する抗原結合分子では免疫細胞を活性化する作用がないにもかかわらず、癌特異的抗原結合ドメインとTNFスーパーファミリー結合ドメイン、或いは、癌特異的抗原結合ドメインとTNF受容体スーパーファミリー結合ドメインとを有する抗原結合分子によって、癌特異的抗原発現細胞存在下でのみTNFスーパーファミリー又はTNF受容体スーパーファミリーに属する因子に対するアゴニスト活性を発揮することで免疫細胞が活性化され、抗腫瘍活性を維持しつつ、肝毒性等の副作用を回避できることを見出した。さらに、当該抗原結合分子に、癌特異的抗原結合ドメインとT細胞受容体複合体結合ドメインを有する抗原結合分子を組み合わせて用いることで、副作用を回避しつつ、その抗腫瘍活性を高めることが可能となることを見出し、本発明を完成した。

0011

すなわち、本発明は以下を提供するものである。
〔1〕下記のドメイン
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー結合ドメイン又は腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー結合ドメイン
を含む、抗原結合分子。
〔2〕FcRn結合ドメインをさらに含む、〔1〕に記載の抗原結合分子。
〔3〕FcRn結合ドメインが、Fcγ受容体に対する結合活性が低下している、抗体のFc領域である、〔2〕に記載の抗原結合分子。
〔4〕TNFスーパーファミリー結合ドメイン又はTNF受容体スーパーファミリー結合ドメインがCD137結合ドメインである、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の抗原結合分子。
〔5〕二重特異性抗体である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の抗原結合分子。
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の抗原結合分子を有効成分として含む、医薬組成物。
〔7〕細胞傷害誘導する組成物である、〔6〕に記載の医薬組成物。
〔8〕癌治療用の組成物である、〔6〕に記載の医薬組成物。
〔9〕〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の第1の抗原結合分子と、下記のドメイン:
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含む第2の抗原結合分子とを組み合わせてなる、医薬組成物。
〔10〕第2の抗原結合分子が、FcRn結合ドメインをさらに含む抗原結合分子である、〔9〕に記載の医薬組成物。
〔11〕FcRn結合ドメインが、Fcγ受容体に対する結合活性が低下している、抗体のFc領域である、〔10〕に記載の医薬組成物。
〔12〕T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、〔9〕から〔11〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔13〕T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、〔9〕から〔11〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔14〕第2の抗原結合分子が二重特異性抗体である、〔9〕から〔13〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔15〕第1の抗原結合分子と第2の抗原結合分子が配合されている、〔9〕から〔14〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔16〕第1の抗原結合分子と第2の抗原結合分子が併用される、〔9〕から〔14〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔17〕第1の抗原結合分子と第2の抗原結合分子とが同時に投与される、〔9〕から〔14〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔18〕第1の抗原結合分子と第2の抗原結合分子とが別々に投与される、〔9〕から〔14〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔19〕細胞傷害を誘導する組成物である、〔9〕から〔18〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔20〕癌治療用の組成物である、〔9〕から〔18〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔21〕下記のドメイン:
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー結合ドメイン又は腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー結合ドメイン
を含む第1の抗原結合分子を有効成分として含む、
下記のドメイン:
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含む第2の抗原結合分子と併用するための医薬組成物。
〔22〕細胞傷害を誘導する組成物である、〔21〕に記載の医薬組成物。
〔23〕癌治療用の組成物である、〔21〕に記載の医薬組成物。
〔24〕第1の抗原結合分子及び/又は第2の抗原結合分子が、FcRn結合ドメインをさらに含む抗原結合分子である、〔21〕から〔23〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔25〕FcRn結合ドメインが、Fcγ受容体に対する結合活性が低下している、抗体のFc領域である、〔24〕に記載の医薬組成物。
〔26〕TNFスーパーファミリー結合ドメイン又はTNF受容体スーパーファミリー結合ドメインが、CD137結合ドメイン、またはCD40結合ドメインである、〔21〕から〔25〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔27〕T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、〔21〕から〔26〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔28〕T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、〔21〕から〔26〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔29〕第1の抗原結合分子及び/又は第2の抗原結合分子が二重特異性抗体である、〔21〕から〔28〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔30〕第2の抗原結合分子と同時に投与される、〔21〕から〔29〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔31〕第2の抗原結合分子と別々に投与される、〔21〕から〔29〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔32〕下記のドメイン:
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含む第2の抗原結合分子を有効成分として含む、
下記のドメイン:
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー結合ドメイン又は腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー結合ドメイン
を含む第1の抗原結合分子と併用するための医薬組成物。
〔33〕細胞傷害を誘導する組成物である、〔32〕に記載の医薬組成物。
〔34〕癌治療用の組成物である、〔32〕に記載の医薬組成物。
〔35〕第1の抗原結合分子及び/又は第2の抗原結合分子が、FcRn結合ドメインをさらに含む抗原結合分子である、〔32〕から〔34〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔36〕FcRn結合ドメインが、Fcγ受容体に対する結合活性が低下している、抗体のFc領域である、〔35〕に記載の医薬組成物。
〔37〕T細胞受容体複合体結合ドメインがT細胞受容体結合ドメインである、〔32〕から〔36〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔38〕T細胞受容体複合体結合ドメインがCD3結合ドメインである、〔32〕から〔36〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔39〕TNFスーパーファミリー結合ドメイン又はTNF受容体スーパーファミリー結合ドメインが、CD137結合ドメイン、またはCD40結合ドメインである、〔32〕から〔38〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔40〕第1の抗原結合分子及び/又は第2の抗原結合分子が二重特異性抗体である、〔32〕から〔39〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔41〕第1の抗原結合分子と同時に投与される、〔32〕から〔40〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔42〕第1の抗原結合分子と別々に投与される、〔32〕から〔40〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔43〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の抗原結合分子または前記〔6〕〜〔42〕のいずれかに記載の医薬組成物を投与する工程を含む、細胞障害を誘導する、細胞増殖を抑制する、癌細胞又は癌細胞を含む腫瘍組織に対する免疫を活性化する、または癌を治療もしくは予防する方法。
〔44〕細胞障害の誘導、細胞増殖の抑制、癌細胞又は癌細胞を含む組織に対する免疫の活性化またはがんの治療もしくは予防において使用するための前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の抗原結合分子または前記〔6〕〜〔42〕のいずれかに記載の医薬組成物。
〔45〕前記〔6〕〜〔42〕のいずれかに記載の医薬組成物の製造における、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の抗原結合分子の使用。
〔46〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の抗原結合分子を使用する工程を含む、前記〔6〕〜〔42〕のいずれかに記載の医薬組成物を製造する方法。

0012

また、本発明は、本発明の抗原結合分子または本発明の医薬組成物を治療が必要な患者に投与することを特徴とする、癌の治療又は予防方法に関する。また、本発明は、本発明の抗原結合分子を含む、本発明の方法に用いるためのキットに関する。また、本発明は、本発明の抗原結合分子の、細胞傷害を誘導するための医薬組成物(例えば癌の治療又は予防用の医薬組成物)の製造における使用に関する。また、本発明は、本発明の方法に使用するための、本発明の抗原結合分子または本発明の医薬組成物に関する。

図面の簡単な説明

0013

抗マウスCD137抗体によるT細胞活性化作用をIFNELISAで評価した結果を示すグラフである。Ctrl mIgG1は陰性対照マウスIgG1抗体を示す。
様々な分子形の抗マウスCD137抗体によるT細胞活性化作用を概念的に示す図である。
抗ヒトGPC3/抗マウスCD137二重特異性抗体によるGPC3抗原依存的なT細胞活性化作用を概念的に示す図である。
抗ヒトGPC3/抗マウスCD137二重特異性抗体によるGPC3抗原依存的なT細胞活性化作用をIFN-γ ELISAで評価した結果を示すグラフである。
抗ヒトGPC3/抗マウスCD137二重特異性抗体の抗体定常領域を変えたことによるGPC3抗原依存的なT細胞活性化作用への影響をIFN-γ ELISAで評価した結果を示すグラフである。
抗ヒトGPC3/抗マウスCD137二重特異性抗体と抗ヒトGPC3/抗マウスCD3二重特異性抗体の混合物によるT細胞活性化増強作用をIFN-γ ELISAで評価した結果を示すグラフである。Ctrl hIgG1は陰性対照ヒトIgG1抗体(Alexis社)を示す。
抗ヒトGPC3/マウスCD137二重特異性抗体および抗マウスCD137抗体のCT26腫瘍マウスシンジェニックモデルでの抗腫瘍効果を示すグラフである。矢印は抗体投与時を示す。
抗ヒトGPC3/マウスCD137二重特異性抗体および抗マウスCD137抗体のCT26腫瘍マウスシンジェニックモデルでの血中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)への影響を示すグラフである。
抗ヒトGPC3/マウスCD137二重特異性抗体および抗マウスCD137抗体のCT26腫瘍マウスシンジェニックモデルでの血中アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)への影響を示すグラフである。
抗ヒトGPC3/マウスCD137二重特異性抗体および抗マウスCD137抗体のCT26腫瘍マウスシンジェニックモデルでの血中総ビリルビンへの影響を示すグラフである。
抗ヒトGPC3/マウスCD137二重特異性抗体および抗マウスCD137抗体のCT26腫瘍マウスシンジェニックモデルでの肝臓病理組織学所見を示す写真である。a及びdは溶媒、b及びeは1D8-MB492、c及びfはGPC3ERY22-3-1D8をそれぞれ投与したマウス代表例の肝臓切片ヘマトキシリンエオジン染色した病理組織写真である。矢頭は肝細胞変性壊死、* は炎症所見を示す。
抗ヒトGPC3/マウスCD137二重特異性抗体および抗ヒトGPC3/マウスCD3二重特異性抗体の併用によるLLC腫瘍マウスシンジェニックモデルでの抗腫瘍効果を示すグラフである。矢印は抗体投与時を示す。
IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のFc領域を構成するアミノ酸残基と、kabatのEUナンバリング(本明細書においてEU INDEXとも呼ばれる)との関係を表す図である。
抗ヒトCD137抗体と断片化ヒトCD137-Fc融合タンパク質との結合を評価するためのELISAの結果を示す図である。図中の「Non」は、抗原を固相化していないウェル(Non-Coating)におけるELISA発色値を示す。
図14−1に示す各サンプルのELISA発色値を、Non-Coating(Non)におけるELISA発色値(抗原を固相化していないウェルに対する結合)で割った値(Non coatingに対する比)を示す図である。
抗ヒトCD137抗体のIFNγ誘導活性を示すグラフである。
抗ヒトCD137抗体のT細胞活性化作用と結合プロファイルを示す図である。
抗ヒトGPC3/抗マウスCD40二重特異性抗体と抗ヒトGPC3/抗マウスCD3二重特異性抗体の混合物によるT細胞活性化増強作用をIFN-γ ELISAで評価した結果を示すグラフである。Ctrl hIgG1は陰性対照ヒトIgG1抗体を示す。
抗ヒトGPC3/抗ヒトCD137二重特異性抗体GPC3FAE-BMSのT細胞活性化作用をIFN-γ ELISAで評価した結果を示すグラフである。Ctrl hIgG1は陰性対照ヒトIgG1抗体を示す。
各種抗ヒトGPC3/抗ヒトCD137二重特異性抗体のCD137を介したアゴニスト活性をB細胞活性化IL-6の産生量で評価した結果を示すグラフである。Ctrl hIgG1は陰性対照ヒトIgG1抗体を示す。

0014

以下の定義は、本明細書において説明する本発明の理解を容易にするために提供される。

0015

抗原結合分子
本発明における「抗原結合分子」とは、本発明の「結合ドメイン」を含む分子であれば特に限定されず、さらに、5アミノ酸程度以上の長さを有するペプチドやタンパク質が含まれていてもよい。生物由来のペプチドやタンパク質に限定されず、例えば、人工的に設計された配列からなるポリペプチドであってもよい。また、天然ポリペプチド、あるいは合成ポリペプチド組換えポリペプチド等のいずれであってもよい。

0016

本発明の抗原結合分子の好ましい例として、抗体のFc領域に含まれるFcRn結合ドメインを含む抗原結合分子を挙げることができる。生体内に投与されたタンパク質の血中半減期延ばす方法として、目的タンパク質に抗体のFcRn結合ドメインを付加し、FcRnを介したリサイクリング機能を利用する方法が良く知られている。

0017

本発明において、「FcRn結合ドメイン」は、FcRnに対して結合活性を有するものであれば特に限定されず、例えば、FcRnを抗原とする抗体の可変領域、Fab、抗体のFc領域、これらの断片が挙げられる。本発明の好ましい態様の1つとして、抗体のFc領域、或いは、Fc領域中のFcRn結合領域を含む断片が挙げられる。ここで、「Fc領域」として、例えば、天然型IgG由来のFc領域を用いることができる。天然型IgGとは、天然に見出されるIgGと同一のアミノ酸配列包含し、免疫グロブリンガンマ遺伝子により実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。例えば天然型ヒトIgGとは天然型ヒトIgG1、天然型ヒトIgG2、天然型ヒトIgG3、天然型ヒトIgG4などを意味する。天然型IgGにはそれから自然に生じる変異体等も含まれる。ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4抗体の定常領域としては、遺伝子多型による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。特にヒトIgG1の配列としては、EUナンバリング356〜358番目のアミノ酸配列がDELであってもEEMであってもよい。

0018

抗体のFc領域としては、例えばIgA1、IgA2、IgDIgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgMタイプのFc領域が存在している。本発明の抗体のFc領域は、例えば天然型ヒトIgG抗体由来のFc領域を用いることができる。本発明のFc領域として、例えば、天然型IgGの定常領域、具体的には、天然型ヒトIgG1を起源とする定常領域(配列番号:1)、天然型ヒトIgG2を起源とする定常領域(配列番号:2)、天然型ヒトIgG3を起源とする定常領域(配列番号:3)、天然型ヒトIgG4を起源とする定常領域(配列番号:4)由来のFc領域を用いることができる。天然型IgGの定常領域にはそれから自然に生じる変異体等も含まれる。

0019

このような抗体のFc領域は、例えばモノクローナル抗体等の抗体をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、断片をプロテインAカラム、あるいはプロテインGカラム吸着させた後に、適切な溶出バッファー等により溶出させることにより好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素反応条件を適切に設定することによりモノクローナル抗体等の抗体を消化し得るものであれば特段の限定はされず、例えば、ペプシンやフィシン等を例示できる。

0020

抗体のアイソタイプは、定常領域の構造によって決定される。IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の各アイソタイプの定常領域は、それぞれ、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4と呼ばれている。ヒトCγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4のFc領域を構成するポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号:5、6、7、8に例示される。各アミノ酸配列を構成するアミノ酸残基と、kabatのEUナンバリング(本明細書においてEU INDEXとも呼ばれる)との関係は図13に示されている。

0021

Fc領域は、二本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されるようにCH1ドメインおよびCH2ドメイン間の定常領域の一部分を含む二本の重鎖を含むF(ab')2を除いた領域のことをいう。本明細書において開示される抗原結合分子を構成するFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体等をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、プロテインAカラムに吸着された画分を再溶出することによって好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することにより制限的にF(ab')2を生じるように全長抗体を消化し得るものであれば特段の限定はされず、例えば、ペプシンやフィシン等が例示できる。

0022

本発明のFcRn結合ドメインとしては、特にFcγ受容体に対する結合活性が低下しているドメインが好ましい。ここで、Fcγ受容体(本明細書ではFcγレセプター、FcγRまたはFcgRと記載することがある)とは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のFc領域に結合し得る受容体をいい、実質的にFcγレセプター遺伝子にコードされるタンパク質のファミリーのいかなるメンバーをも意味する。ヒトでは、このファミリーには、アイソフォームFcγRIa、FcγRIbおよびFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131(H型)およびR131(R型)を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);およびアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)、並びにいかなる未発見のヒトFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されるものではない。FcγRは、ヒト、マウス、ラットウサギおよびサル由来のものが含まれるが、これらに限定されず、いかなる生物由来でもよい。マウスFcγR類には、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIII-2(CD16-2)、並びにいかなる未発見のマウスFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されない。こうしたFcγ受容体の好適な例としてはヒトFcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、FcγRIIb(CD32)、FcγRIIIa(CD16)及び/又はFcγRIIIb(CD16)が挙げられる。

0023

FcγRには、ITAM(Immunoreceptor tyrosine-based activation motif)をもつ活性型レセプターとITIM(immunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif)をもつ抑制型レセプターが存在する。FcγRはFcγRI、FcγRIIa R、FcγRIIa H、FcγRIIIa、FcγRIIIbの活性型FcγRと、FcγRIIbの抑制型FcγRに分類される。

0024

FcγRIのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれNM_000566.3及びNP_000557.1に、FcγRIIaのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC020823.1及びAAH20823.1に、FcγRIIbのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC146678.1及びAAI46679.1に、FcγRIIIaのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC033678.1及びAAH33678.1に、並びにFcγRIIIbのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれBC128562.1及びAAI28563.1に記載されている(RefSeq登録番号)。尚、FcγRIIaには、FcγRIIaの131番目のアミノ酸がヒスチジン(H型)あるいはアルギニン(R型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(J. Exp. Med, 172, 19-25, 1990)。また、FcγRIIbには、FcγRIIbの232番目のアミノ酸がイソロイシンI型)あるいはスレオニン(T型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(Arthritis. Rheum. 46: 1242-1254 (2002))。また、FcγRIIIaには、FcγRIIIaの158番目のアミノ酸がバリンV型)あるいはフェニルアラニンF型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(J. Clin. Invest. 100(5): 1059-1070 (1997))。また、FcγRIIIbには、NA1型、NA2型の2種類の遺伝子多型が存在する(J. Clin. Invest. 85: 1287-1295 (1990))。

0025

Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているかどうかは、FACS、ELISAフォーマット、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等、周知の方法によって確認することができる(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。

0026

ALPHAスクリーンは、ドナーアクセプターの2つのビーズを使用するALPHAテクノロジーによって下記の原理に基づいて実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と生物学的に相互作用し、2つのビーズが近接した状態の時にのみ、発光シグナルを検出される。レーザーによって励起されたドナービーズ内のフォトセンシタイザーは、周辺酸素励起状態一重項酸素に変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に拡散し、近接しているアクセプタービーズに到達するとビーズ内の化学発光反応を引き起こし、最終的に光が放出される。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子が相互作用しないときは、ドナービーズの産生する一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は起きない。

0027

例えば、抗原結合分子がFcRn結合ドメインとして抗体のFc領域を含む場合、野生型Fc領域を有する抗原結合分子と、Fcγ受容体に対する結合を変化させるためのアミノ酸変異が加えられた変異Fc領域を有する抗原結合分子を準備し、ドナービーズにビオチン標識された抗原結合分子を結合させ、アクセプタービーズにはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ化されたFcγ受容体を結合させる。変異Fc領域を有する抗原結合分子の存在下では、野生型Fc領域を有する抗原結合分子とFcγ受容体とは相互作用し520-620 nmのシグナルを生ずる。変異Fc領域を有する抗原結合分子をタグ化しない場合、野生型Fc領域を有する抗原結合分子とFcγ受容体間の相互作用と競合する。競合の結果表れる蛍光の減少を定量することによって相対的な結合親和性が決定され得る。抗原結合分子をSulfo-NHS-ビオチン等を用いてビオチン化することは公知である。Fcγ受容体をGSTでタグ化する方法としては、Fcγ受容体をコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドをインフレームで融合した融合遺伝子を発現可能なベクターを保持した細胞等において発現し、グルタチオンカラムを用いて精製する方法等が適宜採用され得る。得られたシグナルは例えばGRAPHPADPRISM(GraphPad社、San Diego)等のソフトウェアを用いて非線形回帰解析を利用する一部位競合(one-site competition)モデルに適合させることにより好適に解析される。

0028

相互作用を観察する物質の一方(リガンド)をセンサーチップ金薄膜上に固定し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラス境界面で全反射するように光を当てると、反射光の一部に反射強度が低下した部分(SPRシグナル)が形成される。相互作用を観察する物質の他方(アナライト)をセンサーチップの表面に流しリガンドとアナライトが結合すると、固定化されているリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面の溶媒の屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に結合が解離するとシグナルの位置は戻る)。Biacoreシステムは上記のシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。センサーグラムのカーブからカイネティクス結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)が、当該定数の比からアフィニティー(KD)が求められる。BIACORE法では阻害測定法も好適に用いられる。阻害測定法の例はProc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010において記載されている。

0029

本明細書において、「Fcγ受容体に対する結合活性が低下している」とは、例えば、上記の解析方法に基づいて、対照とするFc領域を有する抗原結合分子の結合活性に比較して、被験抗原結合分子の結合活性が、50%以下、好ましくは45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、20%以下、15%以下、特に好ましくは10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下の結合活性を示すことをいう。

0030

対照とする抗原結合分子としては、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体のFc領域を含むドメインを有する抗原結合分子が適宜使用され得る。当該Fc領域の構造は、配列番号:1(RefSeq登録番号AAC82527.1のN末にA付加)、配列番号:2(RefSeq登録番号AAB59393.1のN末にA付加)、配列番号:3(RefSeq登録番号CAA27268.1のN末にA付加)、配列番号:4(RefSeq登録番号AAB59394.1のN末にA付加)に記載されている。また、ある特定のアイソタイプの抗体のFc領域の変異体を有する抗原結合分子を被験物質として使用する場合には、当該特定のアイソタイプの抗体のFc領域を有する抗原結合分子を対照として用いることによって、当該変異体が有する変異によるFcγ受容体への結合活性に対する効果が検証される。上記のようにして、Fcγ受容体に対する結合活性が低下していることが検証されたFc領域の変異体を有する抗原結合分子が適宜作製される。

0031

このような変異体の例としては、EUナンバリングに従って特定されるアミノ酸である231A-238Sの欠失(WO 2009/011941)、C226S、C229S、P238S、(C220S)(J.Rheumatol (2007) 34, 11)、C226S、C229S(Hum.Antibod.Hybridomas (1990) 1(1), 47-54)、C226S、C229S、E233P、L234V、L235A(Blood (2007) 109, 1185-1192)等の変異体が公知である。

0032

すなわち、特定のアイソタイプの抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸:220位、226位、229位、231位、232位、233位、234位、235位、236位、237位、238位、239位、240位、264位、265位、266位、267位、269位、270位、295位、296位、297位、298位、299位、300位、325位、327位、328位、329位、330位、331位、332位が置換されているFc領域を有する抗原結合分子が好適に挙げられる。Fc領域の起源である抗体のアイソタイプとしては特に限定されず、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4モノクローナル抗体を起源とするFc領域が適宜利用され得るが、天然型ヒトIgG1抗体を起源とするFc領域が好適に利用される。

0033

例えば、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(a)L234F、L235E、P331S、
(b)C226S、C229S、P238S、
(c)C226S、C229S、
(d)C226S、C229S、E233P、L234V、L235A
が施されているFc領域、又は、231位から238位のアミノ酸配列が欠失したFc領域を有する抗原結合分子も適宜使用され得る。

0034

また、IgG2抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(e)H268Q、V309L、A330S、P331S
(f)V234A
(g)G237A
(h)V234A、G237A
(i)A235E、G237A
(j)V234A、A235E、G237A
が施されているFc領域を有する抗原結合分子も適宜使用され得る。

0035

また、IgG3抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(k)F241A
(l)D265A
(m)V264A
が施されているFc領域を有する抗原結合分子も適宜使用され得る。

0036

また、IgG4抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかの置換(数字がEUナンバリングに従って特定されるアミノ酸残基の位置、数字の前に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基、数字の後に位置する一文字のアミノ酸記号が置換前のアミノ酸残基をそれぞれ表す):
(n)L235A、G237A、E318A
(o)L235E
(p)F234A、L235A
が施されているFc領域を有する抗原結合分子も適宜使用され得る。

0037

その他の好ましい例として、天然型ヒトIgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれかのアミノ酸:233位、234位、235位、236位、237位、327位、330位、331位が、対応するIgG2またはIgG4においてそのEUナンバリングが対応するアミノ酸に置換されているFc領域を有する抗原結合分子が挙げられる。

0038

その他の好ましい例として、天然型ヒトIgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される下記のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸:234位、235位、297位が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有する抗原結合分子が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、234位、235位、297位のいずれか一つ又はそれ以上のアミノ酸がアラニンに置換されているFc領域を有する抗原結合分子が特に好ましい。

0039

その他の好ましい例として、IgG1抗体のFc領域を構成するアミノ酸のうち、EUナンバリングに従って特定される265位のアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されているFc領域を有する抗原結合分子が好適に挙げられる。置換後に存在するアミノ酸の種類は特に限定されないが、265位のアミノ酸がアラニンに置換されているFc領域を有する抗原結合分子が特に好ましい。

0040

本発明の抗原結合分子に含まれる「癌特異的抗原結合ドメイン」、「腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー結合ドメイン」、「腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー結合ドメイン」及び「T細胞受容体複合体結合ドメイン」(以下、これら4つの結合ドメインをまとめて抗原結合ドメインという)は、それぞれの抗原である、癌特異的抗原、TNFスーパーファミリーに属する因子、TNF受容体スーパーファミリーに属する因子、又は、T細胞受容体複合体の一部または全部に特異的に結合する領域を意味し、例えば、抗体の抗原結合領域を含む領域が結合ドメインとして挙げられる。抗原の分子量が大きい場合、抗体の抗原結合領域は抗原の特定部分にのみ結合することができる。当該特定部分はエピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは一または複数の抗体の可変ドメインより提供され得る。好ましくは、抗原結合ドメインは抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)とを含む。こうした抗原結合ドメインの例としては、「scFv(single chain Fv)」、「単鎖抗体(single chain antibody)」、「Fv」、「scFv2(single chain Fv 2)」、「Fab」または「F(ab')2」等が好適に挙げられる。

0041

ここで、「癌特異的抗原」とは、癌細胞と健常細胞を区別することを可能とする、癌細胞が発現する抗原を意味し、例えば、細胞の悪性化に伴って発現する抗原、細胞が、がん化した際に細胞表面やタンパク質分子上に現れる異常な糖鎖が含まれる。具体的には、例えば、ALK受容体(プレイオトロフィン受容体)、プレイオトロフィン、KS 1/4膵臓癌抗原、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺リン酸前立腺特異的抗原(PSA)、メラノーマ関連抗原p97、メラノーマ抗原gp75、高分子量メラノーマ抗原(HMW-MAA)、前立腺特異的膜抗原癌性抗原(CEA)、多型上皮ムチン抗原ヒト乳脂肪球抗原、CEA、TAG-72、CO17-1A、GICA 19-9、CTA-1およびLEAなどの結腸直腸腫瘍関連抗原、バーキットリンパ腫抗原-38.13、CD19、ヒトBリンパ腫抗原-CD20、CD33、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2およびガングリオシドGM3などのメラノーマ特異的抗原、腫瘍特異的移植型細胞表面抗原(TSTA)、T抗原、DNA腫瘍ウイルスおよびRNA腫瘍ウイルスエンベロープ抗原などのウイルスにより誘導される腫瘍抗原結腸のCEA、5T4癌胎児トロホブラスト糖タンパク質および膀胱腫瘍癌胎児抗原などの癌胎児抗原α-フェトプロテイン、ヒト肺癌抗原L6およびL20などの分化抗原線維肉腫の抗原、ヒト白血病T細胞抗原-Gp37、新生糖タンパク質、スフィンゴ脂質、EGFR上皮増殖因子受容体)などの乳癌抗原、NY-BR-16、NY-BR-16およびHER2抗原(p185HER2)、多型上皮ムチン(PEM)、悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1、胎児赤血球に認められるI抗原などの分化抗原、成人赤血球に認められる初期内胚葉I抗原、移植前の胚、胃癌に認められるI(Ma)、乳腺上皮に認められるM18、M39、骨髄細胞に認められるSSEA-1、VEP8、VEP9、Myl、VIM-D5、結腸直腸癌に認められるD156-22、TRA-1-85(血液群H)、精巣および卵巣癌に認められるSCP-1、結腸癌に認められるC14、肺癌に認められるF3、胃癌に認められるAH6、Yハプテン胚性癌細胞に認められるLey、TL5(血液群A)、A431細胞に認められるEGF受容体、膵臓癌に認められるE1シリーズ(血液群B)、胚性癌細胞に認められるFC10.2、胃癌抗原、腺癌に認められるCO-514(血液群Lea)、腺癌に認められるNS-10、CO-43(血液群Leb)、A431細胞のEGF受容体に認められるG49、結腸癌に認められるMH2(血液群ALeb/Ley)、結腸癌に認められる19.9、胃癌ムチン、骨髄細胞に認められるT5A7、メラノーマに認められるR24、胚性癌細胞に認められる4.2、GD3、D1.1、OFA-1、GM2、OFA-2、GD2、およびM1:22:25:8ならびに4〜8細胞段階の胚に認められるSSEA-3およびSSEA-4、皮下T細胞リンパ腫抗原、MART-1抗原、シアリルTn(STn)抗原、結腸癌抗原NY-CO-45、肺癌抗原NY-LU-12変異体A、腺癌抗原ART1、腫瘍随伴性関連脳-精巣癌抗原(癌神経抗原MA2、腫瘍随伴性神経抗原)、神経癌腹部抗原2(NOVA2)、血液細胞癌抗原遺伝子520、腫瘍関連抗原CO-029、腫瘍関連抗原MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)、MAGE-B1(MAGE-XP抗原)、MAGE-B2(DAM6)、MAGE-2、MAGE-4a、MAGE-4bおよびMAGE-X2、癌-精巣抗原(NY-EOS-1)、YKL-40および上記ポリペプチドのいずれかの断片またはこれらに対して修飾された構造等(前記の修飾リン酸基や糖鎖等)、EpCAM、EREG、CA19-9、CA15-3、シリアルSSEA-1(SLX)、HER2、PSMA、CEA、CLEC12A等が挙げられる。本発明の癌特異的抗原結合ドメインの対象となる癌特異的抗原としては、特に、細胞表面に発現するものが好ましく、そのような癌特異的抗原としては、例えば、CD19、CD20、EGFR、HER2、EpCAM、EREGがあげられる。

0042

また、「TNFスーパーファミリー」又は「TNF受容体スーパーファミリー」に属する因子としては、様々な免疫細胞の活性化に寄与する、3量体構造を有するリガンドと当該リガンドが結合する3量体構造のレセプターが知られている(Nat. Rev. Immunol., 2012, 12, 339-51)。TNFスーパーファミリー又はTNF受容体スーパーファミリーに属する因子としては、例えば、CD137、CD137L、CD40、CD40L、OX40、OX40L、CD27、CD70、HVEM、LIGHT、RANK、RANKL、CD30、CD153、GITR、GITRLが挙げられる。好ましい因子としては、例えばCD137、CD40が挙げられる。さらに好ましい因子としては、例えばCD137が挙げられる。

0043

また、「T細胞受容体複合体」は、T細胞受容体自身でもよいし、T細胞受容体とともにT細胞受容体複合体を構成するアダプター分子でもよい。アダプター分子として好適なものはCD3である。

0044

T細胞受容体としては、可変領域でもよいし、定常領域でもよいが、好ましいT細胞受容体結合ドメインが結合するエピトープは定常領域に存在するエピトープである。定常領域の配列として、例えばRefSeq登録番号CAA26636.1のT細胞受容体α鎖(配列番号:9)、RefSeq登録番号C25777のT細胞受容体β鎖(配列番号:10)、RefSeq登録番号A26659のT細胞受容体γ1鎖(配列番号:11)、RefSeq登録番号AAB63312.1のT細胞受容体γ2鎖(配列番号:12)、RefSeq登録番号AAA61033.1のT細胞受容体δ鎖(配列番号:13)の配列を挙げることができる。

0045

本発明において、T細胞受容体複合体結合ドメインとして「CD3結合ドメイン」を用いる場合、CD3結合ドメインは一または複数の抗体の可変ドメインより提供され得る。好ましくは、CD3結合ドメインはCD3抗体の軽鎖可変領域(VL)とCD3抗体の重鎖可変領域(VH)とを含む。こうしたCD3結合ドメインの例としては、「scFv(single chain Fv)」、「単鎖抗体(single chain antibody)」、「Fv」、「scFv2(single chain Fv 2)」、「Fab」または「F(ab')2」等が好適に挙げられる。

0046

本発明に係るCD3結合ドメインは、ヒトCD3を構成するγ鎖、δ鎖又はε鎖配列に存在するエピトープであればいずれのエピトープに結合するものでもあり得る。本発明において、好ましくはヒトCD3複合体のε鎖の細胞外領域に存在するエピトープに結合するCD3抗体の軽鎖可変領域(VL)とCD3抗体の重鎖可変領域(VH)とを含むCD3結合ドメインが好適に用いられる。こうしたCD3結合ドメインとしては、OKT3抗体(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980) 77, 4914-4917)や種々の公知のCD3抗体の軽鎖可変領域(VL)とCD3抗体の重鎖可変領域(VH)とを含むCD3結合ドメインが好適に用いられる。また、ヒトCD3を構成するγ鎖、δ鎖又はε鎖を前記の方法によって所望の動物に免疫することによって取得された所望の性質を有するCD3抗体を起源とするCD3結合ドメインが適宜使用され得る。CD3結合ドメインの起源となるCD3抗体は下記のとおり適宜ヒト化された抗体やヒト抗体が適宜用いられる。CD3を構成するγ鎖、δ鎖又はε鎖の構造は、そのポリヌクレオチド配列が、配列番号:14(NM_000073.2)、16(NM_000732.4)及び18(NM_000733.3)に、そのポリペプチド配列が、配列番号:15(NP_000064.1)、17(NP_000723.1)及び19(NP_000724.1)に記載されている(カッコ内はRefSeq登録番号を示す)。

0047

また、本発明の「抗原結合分子」の好ましい態様の1つとして、本発明の抗体の可変領域を含む、抗体を挙げることができる。

0048

本発明で提供される抗体の例として以下の[1]から[9]の抗体を挙げることができる。
[1]重鎖可変領域として配列番号66に記載のアミノ酸配列、及び軽鎖可変領域として配列番号85に記載のアミノ酸配列を有する抗体;
[2] 重鎖可変領域として配列番号67に記載のアミノ酸配列、及び軽鎖可変領域として配列番号86に記載のアミノ酸配列を有する抗体;
[3] 重鎖可変領域として配列番号70に記載のアミノ酸配列、及び軽鎖可変領域として配列番号89に記載のアミノ酸配列を有する抗体;
[4] 重鎖可変領域として配列番号76に記載のアミノ酸配列、及び軽鎖可変領域として配列番号95に記載のアミノ酸配列を有する抗体;
[5] 重鎖可変領域として配列番号77に記載のアミノ酸配列、及び軽鎖可変領域として配列番号96に記載のアミノ酸配列を有する抗体;
[6] 重鎖可変領域として配列番号78に記載のアミノ酸配列、及び軽鎖可変領域として配列番号97に記載のアミノ酸配列を有する抗体;
[7] [1]〜[6]いずれかに記載の抗体であって、重鎖定常領域として配列番号99に記載のアミノ酸配列、及び軽鎖定常領域として配列番号59に記載のアミノ酸配列又は配列番号60に記載のアミノ酸配列を有する抗体;
[8] [1]〜[7]いずれかに記載の抗体と同等の活性を有する抗体;
[9] [1]〜[7]いずれかに記載の抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体。

0049

上記[8]に記載の抗体において、「同等の活性」とは、CD137へのアゴニスト活性が上記[1]〜[7]いずれかに記載の抗体の結合活性の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であること、をいう。

0050

また本発明は、上記[9]に記載の、本発明で開示された抗CD137抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体もまた提供する。このような抗体は、例えば、以下の方法により得ることができる。

0051

被験抗体が、ある抗体とエピトープを共有することは、両者の同じエピトープに対する競合によって確認することができる。抗体間の競合は、交叉ブロッキングアッセイなどによって検出される。例えば競合ELISAアッセイは、好ましい交叉ブロッキングアッセイである。具体的には、交叉ブロッキングアッセイにおいては、マイクロタイタープレートのウェル上にコートしたCD137タンパク質を、候補の競合抗体の存在下、または非存在下でプレインキュベートした後に、本発明の抗CD137抗体が添加される。ウェル中のCD137タンパク質に結合した本発明の抗CD137抗体の量は、同じエピトープへの結合に対して競合する候補競合抗体(被験抗体)の結合能間接的に相関している。すなわち同一エピトープに対する被験抗体の親和性が大きくなればなる程、本発明の抗CD137抗体のCD137タンパク質をコートしたウェルへの結合量は低下し、被験抗体のCD137タンパク質をコートしたウェルへの結合量は増加する。

0052

ウェルに結合した抗体量は、予め抗体を標識しておくことによって、容易に測定することができる。たとえば、ビオチン標識された抗体は、アビジンペルオキシダーゼコンジュゲートと適切な基質を使用することにより測定できる。ペルオキシダーゼなどの酵素標識を利用した交叉ブロッキングアッセイを、特に競合ELISAアッセイと言う。抗体は、検出あるいは測定が可能な他の標識物質で標識することができる。具体的には、放射標識あるいは蛍光標識などが公知である。

0053

更に被験抗体が本発明の抗CD137抗体と異なる種に由来する定常領域を有する場合には、ウェルに結合した抗体の量を、その抗体の定常領域を認識する標識抗体によって測定することもできる。あるいは同種由来の抗体であっても、クラスが相違する場合には、各クラスを識別する抗体によって、ウェルに結合した抗体の量を測定することができる。

0054

候補の競合抗体非存在下で実施されるコントロール試験において得られる結合活性と比較して、候補抗体が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも20〜50%、さらに好ましくは少なくとも50%、抗CD137抗体の結合をブロックできるならば、該候補競合抗体は本発明の抗CD137抗体と実質的に同じエピトープに結合するか、又は同じエピトープへの結合に対して競合する抗体である。

0055

上記[1]から[7]いずれかに記載の抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体の好ましい例として、例えば、CD137タンパク質中のSPCPPNSFSSAGGQRTCDICRQCKGVFRTRKECSSTSNAECDCTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELTKKGCの配列(配列番号113)を有する領域を認識する抗体を挙げることができる。
さらには、CD137タンパク質中のDCTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELTKKGCの配列(配列番号108)を有する領域を認識する抗体を挙げることができる。

0056

上述した抗ヒトCD137抗体を癌特異的抗原抗体(例えば、抗ヒトGPC3抗体)との二重特異性抗体へ改変し、癌特異的抗原依存的CD137アゴニスト能を評価することで、所望の抗腫瘍効果を発揮する抗癌抗原/抗ヒトCD137二重特異性抗体を提供することができる。

0057

本発明の非限定の一態様として、癌特異的抗原結合ドメイン、及びヒトCD137結合ドメインを含む、二重特異性抗体を提供する。

0058

本発明で提供される二重特異性抗体の例として以下の[i]から[iv]の抗体を挙げることができる。
[i] ヒトCD137結合ドメインとして、配列番号122に記載のアミノ酸配列(重鎖可変領域)、及び配列番号123に記載のアミノ酸配列(軽鎖可変領域)を有する二重特異性抗体;
[ii] ヒトCD137結合ドメインとして、配列番号124に記載のアミノ酸配列(重鎖可変領域)、及び配列番号82に記載のアミノ酸配列(軽鎖可変領域)を有する二重特異性抗体;
[iii] ヒトCD137結合ドメインとして、配列番号125に記載のアミノ酸配列(重鎖可変領域)、及び配列番号84に記載のアミノ酸配列(軽鎖可変領域)を有する二重特異性抗体;
[iv] [i]〜[iii]いずれかに記載の二重特異性抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体。
癌特異的抗原結合ドメインに含まれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、標的とする癌抗原に応じて、当業者が該癌抗原に結合する重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を適宜選択することができる。

0059

また本発明は、上記[iv]に記載の、本発明で開示された抗癌特異的抗原/抗ヒトCD137二重特異性抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する二重特異性抗体もまた提供する。このような抗体は、例えば、以下の方法により得ることができる。

0060

被験抗体が、ある抗体とエピトープを共有することは、両者の同じエピトープに対する競合によって確認することができる。抗体間の競合は、交叉ブロッキングアッセイなどによって検出される。例えば競合ELISAアッセイは、好ましい交叉ブロッキングアッセイである。具体的には、交叉ブロッキングアッセイにおいては、マイクロタイタープレートのウェル上にコートしたCD137タンパク質を、候補の競合抗体の存在下、または非存在下でプレインキュベートした後に、本発明の抗CD137抗体が添加される。ウェル中のCD137タンパク質に結合した本発明の抗CD137抗体の量は、同じエピトープへの結合に対して競合する候補競合抗体(被験抗体)の結合能に間接的に相関している。すなわち同一エピトープに対する被験抗体の親和性が大きくなればなる程、本発明の抗CD137抗体のCD137タンパク質をコートしたウェルへの結合量は低下し、被験抗体のCD137タンパク質をコートしたウェルへの結合量は増加する。

0061

ウェルに結合した抗体量は、予め抗体を標識しておくことによって、容易に測定することができる。たとえば、ビオチン標識された抗体は、アビジンペルオキシダーゼコンジュゲートと適切な基質を使用することにより測定できる。ペルオキシダーゼなどの酵素標識を利用した交叉ブロッキングアッセイを、特に競合ELISAアッセイと言う。抗体は、検出あるいは測定が可能な他の標識物質で標識することができる。具体的には、放射標識あるいは蛍光標識などが公知である。

0062

更に被験抗体が本発明の抗CD137抗体と異なる種に由来する定常領域を有する場合には、ウェルに結合した抗体の量を、その抗体の定常領域を認識する標識抗体によって測定することもできる。あるいは同種由来の抗体であっても、クラスが相違する場合には、各クラスを識別する抗体によって、ウェルに結合した抗体の量を測定することができる。

0063

候補の競合抗体非存在下で実施されるコントロール試験において得られる結合活性と比較して、候補抗体が、少なくとも20%、好ましくは少なくとも20〜50%、さらに好ましくは少なくとも50%、抗CD137抗体の結合をブロックできるならば、該候補競合抗体は本発明の抗CD137抗体と実質的に同じエピトープに結合するか、又は同じエピトープへの結合に対して競合する抗体である。

0064

別の一態様として、被験抗体が、別の抗体との結合に関して競合するかまたは交差競合する能力は、当該技術分野に知られる標準結合アッセイ、例えばBIAcore分析、またはフローサイトメトリー等を用いて、当業者が適宜決定可能である。
また、エピトープの空間コンホメーションを決定する方法としては、例えば、X線結晶学および二次元核磁気共鳴が含まれる(Methodsin Molecular Biology, G.E. Morris監修, Vol. 66, Epitope MappingProtocols(1996)を参照)。

0065

上記[i]から[iii]いずれかに記載の二重特異性抗体が結合するヒトCD137エピトープと同じエピトープに結合する二重特異性抗体の好ましい例として、例えば、ヒトCD137タンパク質中のSPCPPNSFSSAGGQRTCDICRQCKGVFRTRKECSSTSNAECDCTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELTKKGCの配列(配列番号113)を有する領域、DCTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELTKKGCの配列(配列番号108)を有する領域、LQDPCSNCPAGTFCDNNRNQICSPCPPNSFSSAGGQRTCDICRQCKGVFRTRKECSSTSNAECの配列(配列番号111)を有する領域、又はLQDPCSNCPAGTFCDNNRNQICSPCPPNSFSSAGGQRTCの配列(配列番号106)を有する領域を認識する二重特異性抗体を挙げることができる。
さらに好ましくは、例えば、ヒトCD137タンパク質中のLQDPCSNCPAGTFCDNNRNQICSPCPPNSFSSAGGQRTCDICRQCKGVFRTRKECSSTSNAECの配列(配列番号111)を有する領域、又はLQDPCSNCPAGTFCDNNRNQICSPCPPNSFSSAGGQRTCの配列(配列番号106)を有する領域を認識する二重特異性抗体を挙げることができる。

0066

本発明の非限定の一態様として、癌特異的抗原結合ドメイン、及びヒトCD40結合ドメインを含む、二重特異性抗体を提供する。
癌特異的抗原結合ドメインに含まれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、標的とする癌抗原に応じて、当業者が該癌抗原に結合する重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を適宜選択することができる。

0067

抗体の結合活性
抗体の抗原結合活性の測定には公知の手段を使用することができる(Antibodies A Laboratory Manual.Ed Harlow,David Lane,Cold Spring Harbor Laboratory,1988)。例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA酵素免疫測定法)、RIA放射免疫測定法)、FACS、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法あるいは蛍光免疫法などを用いることができる。更に、細胞に発現する抗原に対する抗体の結合活性を測定する手法としては、例えば、前記Antibodies A Laboratory Manual中の359-420ページに記載されている方法が挙げられる。

0068

また、緩衝液等に懸濁した細胞の表面上に発現している抗原と当該抗原に対する抗体との結合を測定する方法として、特にフローサイトメーターを使用した方法を好適に用いることが出来る。使用するフローサイトメーターとしては例えば、FACSCantoTM II,FACSAriaTM,FACSArrayTM,FACSVantageTM SE,FACSCaliburTM (以上、BD Biosciences社)や、EPICSALTRA HyPerSort,Cytomics FC 500,EPICS XL-MCLADCEPICS XL ADC,Cell Lab Quanta / Cell Lab Quanta SC(以上、Beckman Coulter社)などを挙げることができる。

0069

被験CD137抗体の抗原に対する結合活性の好適な測定方法の一例として、CD137を発現する細胞と反応させた被験抗体を認識するFITC標識した二次抗体で染色後、FACSCalibur(BD社)により測定を行い、その蛍光強度をCELLQUEST Software(BD社)を用いて解析する方法を挙げることができる。

0070

抗体
本明細書において、抗体とは、天然のものであるかまたは部分的もしくは完全合成により製造された免疫グロブリンをいう。抗体はそれが天然に存在する血漿血清等の天然資源や抗体を産生するハイブリドーマ細胞培養上清から単離され得るし、または遺伝子組換え等の手法を用いることによって部分的にもしくは完全に合成され得る。抗体の例としては免疫グロブリンのアイソタイプおよびそれらのアイソタイプのサブクラスが好適に挙げられる。ヒトの免疫グロブリンとして、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgMの9種類のクラス(アイソタイプ)が知られている。本発明の抗体には、これらのアイソタイプのうちIgG1、IgG2、IgG3、IgG4が含まれ得る。

0071

所望の結合活性を有する抗体を作製する方法は当業者において公知であり、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体として取得され得る。本発明の抗体としては、哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好適に作製され得る。哺乳動物由来のモノクローナル抗体には、ハイブリドーマにより産生されるもの、および遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクター形質転換した宿主細胞によって産生されるもの等が含まれる。

0072

抗体取得のために免疫される哺乳動物としては、特定の動物に限定されるものではないが、ハイブリドーマ作製のための細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましい。一般的にはげ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が好適に使用される。

0073

公知の方法にしたがって上記の動物が感作抗原により免疫される。例えば、一般的な方法として、感作抗原が哺乳動物の腹腔内または皮下に注射によって投与されることにより免疫が実施される。具体的には、PBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当な希釈倍率希釈された感作抗原が、所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントと混合され、乳化された後に、該感作抗原が哺乳動物に4から21日毎に数回投与される。また、感作抗原の免疫時には適当な担体が使用され得る。特に分子量の小さい部分ペプチドが感作抗原として用いられる場合には、アルブミンキーホールリンペットヘモシアニン等の担体タンパク質と結合した該感作抗原ペプチドを免疫することが望ましい場合もある。

0074

また、所望の抗体を産生するハイブリドーマは、DNA免疫を使用し、以下のようにしても作製され得る。DNA免疫とは、免疫動物中で抗原タンパク質をコードする遺伝子が発現され得るような態様で構築されたベクターDNAが投与された当該免疫動物中で、感作抗原が当該免疫動物の生体内で発現されることによって、免疫刺激が与えられる免疫方法である。蛋白質抗原が免疫動物に投与される一般的な免疫方法と比べて、DNA免疫には、次のような優位性が期待される。
膜蛋白質の構造を維持して免疫刺激が与えられ得る
免疫抗原を精製する必要が無い

0075

DNA免疫によって本発明のモノクローナル抗体を得るために、まず、抗原タンパク質を発現するDNAが免疫動物に投与される。抗原タンパク質をコードするDNAは、PCRなどの公知の方法によって合成され得る。得られたDNAが適当な発現ベクターに挿入され、免疫動物に投与される。発現ベクターとしては、たとえばpcDNA3.1などの市販の発現ベクターが好適に利用され得る。ベクターを生体に投与する方法として、一般的に用いられている方法が利用され得る。たとえば、発現ベクターが吸着した金粒子が、gene gunで免疫動物個体の細胞内に導入されることによってDNA免疫が行われる。

0076

このように哺乳動物が免疫され、血清中における抗原に結合する抗体力価の上昇が確認された後に、哺乳動物から免疫細胞が採取され、細胞融合に供される。好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が使用され得る。

0077

前記免疫細胞と融合される細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞が用いられる。ミエローマ細胞は、スクリーニングのための適当な選択マーカーを備えていることが好ましい。選択マーカーとは、特定の培養条件の下で生存できる(あるいはできない)形質を指す。選択マーカーには、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ欠損(以下HGPRT欠損と省略する)、あるいはチミジンキナーゼ欠損(以下TK欠損と省略する)などが公知である。HGPRTやTKの欠損を有する細胞は、ヒポキサンチン−アミノプテリンチミジン感受性(以下HAT感受性と省略する)を有する。HAT感受性の細胞はHAT選択培地中でDNA合成を行うことができず死滅するが、正常な細胞と融合すると正常細胞のサルベージ回路を利用してDNAの合成を継続することができるためHAT選択培地中でも増殖するようになる。

0078

HGPRT欠損やTK欠損の細胞は、それぞれ6チオグアニン、8アザグアニン(以下8AGと省略する)、あるいは5'ブロモデオキシウリジンを含む培地で選択され得る。これらのピリミジンアナログをDNA中に取り込む正常な細胞は死滅する。他方、これらのピリミジンアナログを取り込めないこれらの酵素を欠損した細胞は、選択培地の中で生存することができる。この他G418耐性と呼ばれる選択マーカーは、ネオマイシン耐性遺伝子によって2-デオキシストレプタミン系抗生物質ゲンタマイシン類似体)に対する耐性を与える。細胞融合に好適な種々のミエローマ細胞が公知である。

0079

このようなミエローマ細胞として、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immunol.(1979)123 (4), 1548-1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81, 1-7)、NS-1(C. Eur. J. Immunol.(1976)6 (7), 511-519)、MPC-11(Cell(1976)8 (3), 405-415)、SP2/0(Nature(1978)276 (5685), 269-270)、FO(J. Immunol. Methods(1980)35 (1-2), 1-21)、S194/5.XX0.BU.1(J. Exp. Med.(1978)148 (1), 313-323)、R210(Nature(1979)277 (5692), 131-133)等が好適に使用され得る。

0080

基本的には公知の方法、たとえば、ケーラーミルステインらの方法(MethodsEnzymol.(1981)73, 3-46)等に準じて、前記免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合が行われる。

0081

より具体的には、例えば細胞融合促進剤の存在下で通常の栄養培養液中で、前記細胞融合が実施され得る。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルスHVJ)等が使用され、更に融合効率を高めるために所望によりジメチルスルホキシド等の補助剤が添加されて使用される。

0082

免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定され得る。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1から10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用され、さらに、牛胎児血清FCS)等の血清補液が好適に添加され得る。

0083

細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温されたPEG溶液(例えば平均分子量1000から6000程度)が通常30から60%(w/v)の濃度で添加される。混合液が緩やかに混合されることによって所望の融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。次いで、上記に挙げた適当な培養液が逐次添加され、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等が除去され得る。

0084

このようにして得られたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択され得る。所望のハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、係る十分な時間は数日から数週間である)上記HAT培養液を用いた培養が継続され得る。次いで、通常の限界希釈法によって、所望の抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングが実施される。

0085

このようにして得られたハイブリドーマは、細胞融合に用いられたミエローマが有する選択マーカーに応じた選択培養液を利用することによって選択され得る。例えばHGPRTやTKの欠損を有する細胞は、HAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択され得る。すなわち、HAT感受性のミエローマ細胞を細胞融合に用いた場合、HAT培養液中で、正常細胞との細胞融合に成功した細胞が選択的に増殖し得る。所望のハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、上記HAT培養液を用いた培養が継続される。具体的には、一般に、数日から数週間の培養によって、所望のハイブリドーマが選択され得る。次いで、通常の限界希釈法によって、所望の抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングが実施され得る。

0086

所望の抗体のスクリーニングおよび単一クローニングが、公知の抗原抗体反応に基づくスクリーニング方法によって好適に実施され得る。所望の抗体は、例えば、FACS(fluorescence activated cell sorting)によってスクリーニングされ得る。FACSは、蛍光抗体と接触させた細胞をレーザー光で解析し、個々の細胞が発する蛍光を測定することによって細胞表面への抗体の結合を測定することを可能にするシステムである。

0087

FACSによって本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングするためには、まず産生される抗体が結合する抗原を発現する細胞を調製する。スクリーニングのための好ましい細胞は、当該抗原を強制発現させた哺乳動物細胞である。宿主細胞として使用した形質転換されていない哺乳動物細胞を対照として用いることによって、細胞表面の抗原に対する抗体の結合活性が選択的に検出され得る。すなわち、宿主細胞に結合せず、抗原を強制発現させた細胞に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択することによって、所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが取得され得る。

0088

あるいは対象となる抗原を発現した細胞を固定化し、当該抗原発現細胞に対する抗体の結合活性がELISAの原理に基づいて評価され得る。たとえば、ELISAプレートのウェルに抗原発現細胞が固定化される。ハイブリドーマの培養上清をウェル内の固定化細胞に接触させ、固定化細胞に結合する抗体が検出される。モノクローナル抗体がマウス由来の場合、細胞に結合した抗体は、抗マウスイムノグロブリン抗体によって検出され得る。これらのスクリーニングによって選択された、抗原に対する結合能を有する所望の抗体を産生するハイブリドーマは、限界希釈法等によりクローニングされ得る。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは通常の培養液中で継代培養され得る。また、該ハイブリドーマは液体窒素中で長期にわたって保存され得る。

0089

当該ハイブリドーマを通常の方法に従い培養し、その培養上清から所望のモノクローナル抗体が取得され得る。あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖せしめ、その腹水からモノクローナル抗体が取得され得る。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに好適なものである。

0090

当該ハイブリドーマ等の抗体産生細胞からクローニングされる抗体遺伝子によってコードされる抗体も好適に利用され得る。クローニングした抗体遺伝子を適当なベクターに組み込んで宿主に導入することによって、当該遺伝子によってコードされる抗体が発現する。抗体遺伝子の単離と、ベクターへの導入、そして宿主細胞の形質転換のための方法は例えば、Vandammeらによって既に確立されている(Eur.J. Biochem.(1990)192 (3), 767-775)。下記に述べるように組換え抗体の製造方法もまた公知である。

0091

抗体の可変領域(V領域)をコードするcDNAを取得するためには、通常、まずハイブリドーマから全RNAが抽出される。細胞からmRNAを抽出するための方法として、たとえば次のような方法を利用することができる。
グアニジン超遠心法(Biochemistry (1979) 18 (24), 5294-5299)
−AGPC法(Anal. Biochem. (1987) 162 (1), 156-159)

0092

抽出されたmRNAは、例えばmRNA Purification Kit (GEヘルスケアバイオサイエンス製)等を使用して精製され得る。あるいは、QuickPrep mRNA Purification Kit (GEヘルスケアバイオサイエンス製)などのように、細胞から直接全mRNAを抽出するためのキットも市販されている。このようなキットを用いて、ハイブリドーマからmRNAが取得され得る。得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域をコードするcDNAが合成され得る。cDNAは、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit(生化学工業社製)等によって合成され得る。また、cDNAの合成および増幅のために、SMARTRACE cDNA増幅キット(Clontech製)およびPCRを用いた5'-RACE法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85 (23), 8998-9002、Nucleic AcidsRes. (1989) 17 (8), 2919-2932)が適宜利用され得る。更にこうしたcDNAの合成の過程においてcDNAの両末端に後述する適切な制限酵素サイトが導入され得る。

0093

得られたPCR産物から目的とするcDNA断片が精製され、次いでベクターDNAと連結される。このように組換えベクターが作製され、大腸菌等に導入されコロニーが選択された後に、該コロニーを形成した大腸菌から所望の組換えベクターが調製され得る。そして、該組換えベクターが目的とするcDNAの塩基配列を有しているか否かについて、公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチドチェインターミネーション法等により確認される。

0094

可変領域をコードする遺伝子を取得するためには、可変領域遺伝子増幅用のプライマーを使った5'-RACE法を利用するのが簡便である。まずハイブリドーマ細胞より抽出されたRNAを鋳型としてcDNAが合成され、5'-RACE cDNAライブラリーが得られる。5'-RACE cDNAライブラリーの合成にはSMARTRACE cDNA増幅キットなど市販のキットが適宜用いられる。

0095

得られた5'-RACEcDNAライブラリーを鋳型として、PCR法によって抗体遺伝子が増幅される。公知の抗体遺伝子配列をもとにマウス抗体遺伝子増幅用のプライマーがデザインされ得る。これらのプライマーは、イムノグロブリンのサブクラスごとに異なる塩基配列である。したがって、サブクラスは予めIso Stripマウスモノクローナル抗体アイタイピングキット(ロシュダイアグスティックス)などの市販キットを用いて決定しておくことが望ましい。

0096

具体的には、たとえばマウスIgGをコードする遺伝子の取得を目的とするときには、重鎖としてγ1、γ2a、γ2b、γ3、軽鎖としてκ鎖λ鎖をコードする遺伝子の増幅が可能なプライマーが利用され得る。IgGの可変領域遺伝子を増幅するためには、一般に3'側のプライマーには可変領域に近い定常領域に相当する部分にアニールするプライマーが利用される。一方5'側のプライマーには、5' RACEcDNAライブラリー作製キット付属するプライマーが利用される。

0097

こうして増幅されたPCR産物を利用して、重鎖と軽鎖の組み合せからなるイムノグロブリンが再構成され得る。再構成されたイムノグロブリンの、抗原に対する結合活性を指標として、所望の抗体がスクリーニングされ得る。たとえば次のようにしてスクリーニングされ得る;
(1)ハイブリドーマから得られたcDNAによってコードされるV領域を含む抗体を所望の抗原発現細胞に接触させる工程、
(2)該抗原発現細胞と抗体との結合を検出する工程、および
(3)該抗原発現細胞に結合する抗体を選択する工程。

0098

抗体と該抗原発現細胞との結合を検出する方法は公知である。具体的には、先に述べたFACSなどの手法によって、抗体と該抗原発現細胞との結合が検出され得る。抗体の結合活性を評価するために該抗原発現細胞の固定標本が適宜利用され得る。

0099

結合活性を指標とする抗体のスクリーニング方法として、ファージベクターを利用したパニング法も好適に用いられる。ポリクローナルな抗体発現細胞群より抗体遺伝子を重鎖と軽鎖のサブクラスのライブラリーとして取得した場合には、ファージベクターを利用したスクリーニング方法が有利である。重鎖と軽鎖の可変領域をコードする遺伝子は、適当なリンカー配列で連結することによってシングルチェインFv(scFv)を形成することができる。scFvをコードする遺伝子をファージベクターに挿入することにより、scFvを表面に発現するファージが取得され得る。このファージと所望の抗原との接触の後に、抗原に結合したファージを回収することによって、目的の結合活性を有するscFvをコードするDNAが回収され得る。この操作を必要に応じて繰り返すことにより、所望の結合活性を有するscFvが濃縮され得る。

0100

目的とする抗体のV領域をコードするcDNAが得られた後に、当該cDNAの両末端に挿入した制限酵素サイトを認識する制限酵素によって該cDNAが消化される。好ましい制限酵素は、抗体遺伝子を構成する塩基配列に出現する頻度が低い塩基配列を認識して消化する。更に1コピー消化断片をベクターに正しい方向で挿入するためには、付着末端を与える制限酵素の挿入が好ましい。上記のようにして消化された抗体のV領域をコードするcDNAを適当な発現ベクターに挿入することによって、抗体発現ベクターが取得され得る。このとき、抗体定常領域(C領域)をコードする遺伝子と、前記V領域をコードする遺伝子とがインフレームで融合されれば、キメラ抗体が取得される。ここで、キメラ抗体とは、定常領域と可変領域の由来が異なることをいう。したがって、マウス−ヒトなどの異種キメラ抗体に加え、ヒト−ヒト同種キメラ抗体も、本発明におけるキメラ抗体に含まれる。予め定常領域を有する発現ベクターに、前記V領域遺伝子を挿入することによって、キメラ抗体発現ベクターが構築され得る。具体的には、たとえば、所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを保持した発現ベクターの5'側に、前記V領域遺伝子を消化する制限酵素の制限酵素認識配列が適宜配置され得る。同じ組み合わせの制限酵素で消化された両者がインフレームで融合されることによって、キメラ抗体発現ベクターが構築される。

0101

モノクローナル抗体の製造には、抗体遺伝子が発現制御領域による制御の下で発現するように発現ベクターに組み込まれる。抗体を発現するための発現制御領域とは、例えば、エンハンサープロモーターを含む。また、発現した抗体が細胞外分泌されるように、適切なシグナル配列アミノ末端に付加され得る。発現されたポリペプチドから、シグナル配列がそのカルボキシル末端部分から切断され、抗体が細胞外に分泌され得る。次いで、この発現ベクターによって適当な宿主細胞が形質転換されることによって、抗体をコードするDNAを発現する組換え細胞が取得され得る。

0102

抗体遺伝子の発現のために、抗体重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)をコードするDNAは、それぞれ別の発現ベクターに組み込まれる。H鎖とL鎖が組み込まれたベクターによって、同じ宿主細胞に同時に形質転換(co-transfect)されることによって、H鎖とL鎖を備えた抗体分子が発現され得る。あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAが単一の発現ベクターに組み込まれることによって宿主細胞が形質転換され得る(国際公開WO 94/11523を参照のこと)。

0103

単離された抗体遺伝子を適当な宿主に導入することによって抗体を作製するための宿主細胞と発現ベクターの多くの組み合わせが公知である。これらの発現系は、いずれも本発明の癌特異的抗原結合ドメイン、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)やT細胞受容体複合体結合ドメインを単離するのに応用され得る。

0104

真核細胞が宿主細胞として使用される場合、動物細胞植物細胞、あるいは真菌細胞が適宜使用され得る。具体的には、動物細胞としては、次のような細胞が例示され得る。
(1)哺乳類細胞、:CHO、COS、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、Hela、Veroなど
(2)両生類細胞:アフリカツメガエル卵母細胞など
(3)昆虫細胞:sf9、sf21、Tn5など

0105

あるいは植物細胞としては、ニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)などのニコティアナ(Nicotiana)属由来の細胞による抗体遺伝子の発現系が公知である。植物細胞の形質転換には、カルス培養した細胞が適宜利用され得る。

0106

更に真菌細胞としては、次のような細胞を利用することができる。
酵母サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces serevisiae)などのサッカロミセス(Saccharomyces)属、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)などのPichia属
糸状菌アススギルス・ニガー(Aspergillus niger)などのアスペルギルス(Aspergillus)属

0107

また、原核細胞を利用した抗体遺伝子の発現系も公知である。たとえば、細菌細胞を用いる場合、大腸菌(E. coli)、枯草菌などの細菌細胞が適宜利用され得る。これらの細胞中に、目的とする抗体遺伝子を含む発現ベクターが形質転換によって導入される。形質転換された細胞をin vitroで培養することにより、当該形質転換細胞培養物から所望の抗体が取得され得る。

0108

組換え抗体の産生には、上記宿主細胞に加えて、トランスジェニック動物も利用され得る。すなわち所望の抗体をコードする遺伝子が導入された動物から、当該抗体を得ることができる。例えば、抗体遺伝子は、乳汁中固有に産生されるタンパク質をコードする遺伝子の内部にインフレームで挿入することによって融合遺伝子として構築され得る。乳汁中に分泌されるタンパク質として、たとえば、ヤギβカゼインなどを利用され得る。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片はヤギの胚へ注入され、当該注入された胚が雌のヤギへ導入される。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ(またはその子孫)が産生する乳汁からは、所望の抗体が乳汁タンパク質との融合タンパク質として取得され得る。また、トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、ホルモンがトランスジェニックヤギに対して投与され得る(Bio/Technology (1994), 12 (7), 699-702)。

0109

本明細書において記載される抗原結合分子がヒトに投与される場合、例えば、当該分子における各種結合ドメインとして、抗体の可変領域を含むドメインを用いる場合は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体由来の抗原結合ドメインが適宜採用され得る。遺伝子組換え型抗体には、例えば、ヒト化(Humanized)抗体等が含まれる。これらの改変抗体は、公知の方法を用いて適宜製造される。

0110

本明細書において記載される抗原結合分子における各種結合ドメインを作製するために用いられる抗体の可変領域は、通常、4つのフレームワーク領域(FR)にはさまれた3つの相補性決定領域(complementarity-determining region ;CDR)で構成されている。CDRは、実質的に、抗体の結合特異性を決定している領域である。CDRのアミノ酸配列は多様性富む。一方FRを構成するアミノ酸配列は、異なる結合特異性を有する抗体の間でも、高い同一性を示すことが多い。そのため、一般に、CDRの移植によって、ある抗体の結合特異性を、他の抗体に移植することができるとされている。

0111

ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される。具体的には、ヒト以外の動物、たとえばマウス抗体のCDRをヒト抗体に移植したヒト化抗体などが公知である。ヒト化抗体を得るための一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウスの抗体のCDRをヒトのFRに移植するための方法として、たとえばOverlap ExtensionPCRが公知である。Overlap Extension PCRにおいては、ヒト抗体のFRを合成するためのプライマーに、移植すべきマウス抗体のCDRをコードする塩基配列が付加される。プライマーは4つのFRのそれぞれについて用意される。一般に、マウスCDRのヒトFRへの移植においては、マウスのFRと同一性の高いヒトFRを選択するのが、CDRの機能の維持において有利であるとされている。すなわち、一般に、移植すべきマウスCDRに隣接しているFRのアミノ酸配列と同一性の高いアミノ酸配列からなるヒトFRを利用するのが好ましい。

0112

また連結される塩基配列は、互いにインフレームで接続されるようにデザインされる。それぞれのプライマーによってヒトFRが個別に合成される。その結果、各FRにマウスCDRをコードするDNAが付加された産物が得られる。各産物のマウスCDRをコードする塩基配列は、互いにオーバーラップするようにデザインされている。続いて、ヒト抗体遺伝子を鋳型として合成された産物のオーバーラップしたCDR部分を互いにアニールさせて相補鎖合成反応が行われる。この反応によって、ヒトFRがマウスCDRの配列を介して連結される。

0113

最終的に3つのCDRと4つのFRが連結されたV領域遺伝子は、その5'末端と3'末端にアニールし適当な制限酵素認識配列を付加されたプライマーによってその全長が増幅される。上記のように得られたDNAとヒト抗体C領域をコードするDNAとをインフレームで融合するように発現ベクター中に挿入することによって、ヒト型抗体発現用ベクターが作製できる。該組込みベクターを宿主に導入して組換え細胞を樹立した後に、該組換え細胞を培養し、該ヒト化抗体をコードするDNAを発現させることによって、該ヒト化抗体が該培養細胞の培養物中に産生される(欧州特許公開EP 239400、国際公開WO1996/002576参照)。

0114

上記のように作製したヒト化抗体の抗原への結合活性を定性的又は定量的に測定し、評価することによって、CDRを介して連結されたときに該CDRが良好な抗原結合部位を形成するようなヒト抗体のFRが好適に選択できる。必要に応じ、再構成ヒト抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するようにFRのアミノ酸残基を置換することもできる。たとえば、マウスCDRのヒトFRへの移植に用いたPCR法を応用して、FRにアミノ酸配列の変異を導入することができる。具体的には、FRにアニーリングするプライマーに部分的な塩基配列の変異を導入することができる。このようなプライマーによって合成されたFRには、塩基配列の変異が導入される。アミノ酸を置換した変異型抗体の抗原への結合活性を上記の方法で測定し評価することによって所望の性質を有する変異FR配列が選択され得る(Sato, K.et al., Cancer Res, 1993, 53, 851-856)。

0115

また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物(国際公開WO1993/012227、WO1992/003918、WO1994/002602、WO1994/025585、WO1996/034096、WO1996/033735参照)を免疫動物とし、DNA免疫により所望のヒト抗体が取得され得る。

0116

さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体のV領域が一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現される。抗原に結合するscFvを発現するファージが選択され得る。選択されたファージの遺伝子を解析することにより、抗原に結合するヒト抗体のV領域をコードするDNA配列が決定できる。抗原に結合するscFvのDNA配列を決定した後、当該V領域配列を所望のヒト抗体C領域の配列とインフレームで融合させた後に適当な発現ベクターに挿入することによって発現ベクターが作製され得る。当該発現ベクターを上記に挙げたような好適な発現細胞中に導入し、該ヒト抗体をコードする遺伝子を発現させることにより当該ヒト抗体が取得される。これらの方法は既に公知である(国際公開WO1992/001047、WO1992/020791、WO1993/006213、WO1993/011236、WO1993/019172、WO1995/001438、WO1995/015388参照)。

0117

ファージディスプレイ法以外にも、ヒト抗体ライブラリを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術として、無細胞翻訳系を使用する技術、細胞またはウイルス表面に抗原結合分子を提示する技術、エマルジョンを使用する技術等が知られている。例えば、無細胞翻訳系を使用する技術としては、終止コドンの除去等によりリボゾームを介してmRNAと翻訳されたタンパク質の複合体を形成させるリボゾームディスプレイ法、ピューロマイシン等の化合物を用いて遺伝子配列と翻訳されたタンパク質を共有結合させるcDNAディスプレイ法、mRNAディスプレイ法や、核酸に対する結合タンパク質を用いて遺伝子と翻訳されたタンパク質の複合体を形成させるCISディスプレイ法等が使用され得る。また、細胞またはウイルス表面に抗原結合分子を提示する技術としては、ファージディスプレイ法以外にも、E. coliディスプレイ法、グラム陽性菌ディスプレイ法、酵母ディスプレイ法、哺乳類細胞ディスプレイ法、ウイルスディスプレイ法等が使用され得る。エマルジョンを使用する技術としては、エマルジョン中に遺伝子及び翻訳関連分子を内包させることによる、インビトロウイルスディスプレイ法等が使用され得る。これらの方法は既に公知である(Nat Biotechnol. 2000 Dec;18(12):1287-92、Nucleic AcidsRes. 2006;34(19):e127、Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Mar 2;101(9):2806-10、Proc Natl Acad Sci U S A. 2004 Jun 22;101(25):9193-8、Protein Eng Des Sel. 2008 Apr;21(4):247-55、Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Sep 26;97(20):10701-5、MAbs. 2010 Sep-Oct;2(5):508-18、Methods Mol Biol. 2012;911:183-98)。

0118

本発明において「特異的」とは、特異的に結合する分子の一方の分子がその一または複数の結合する相手方の分子以外の分子に対しては何ら有意な結合を示さない状態をいう。また、抗原結合ドメインが、ある抗原中に含まれる複数のエピトープのうち特定のエピトープに対して特異的である場合にも用いられる。また、抗原結合ドメインが結合するエピトープが複数の異なる抗原に含まれる場合には、当該抗原結合ドメインを有する抗原結合分子は当該エピトープを含む様々な抗原と結合することができる。

0119

また、抗原中に存在する抗原決定基を意味する「エピトープ」は、本明細書において開示される抗原結合分子中の各種結合ドメインが結合する抗原上の部位を意味する。よって、例えば、エピトープは、その構造によって定義され得る。また、当該エピトープを認識する抗原結合分子中の抗原に対する結合活性によっても当該エピトープが定義され得る。抗原がペプチド又はポリペプチドである場合には、エピトープを構成するアミノ酸残基によってエピトープを特定することも可能である。また、エピトープが糖鎖である場合には、特定の糖鎖構造によってエピトープを特定することも可能である。

0120

直線状エピトープは、アミノ酸一次配列が認識されたエピトープを含むエピトープである。直線状エピトープは、典型的には、少なくとも3つ、および最も普通には少なくとも5つ、例えば約8〜約10個、6〜20個のアミノ酸が固有の配列において含まれる。

0121

立体構造エピトープは、直線状エピトープとは対照的に、エピトープを含むアミノ酸の一次配列が、認識されたエピトープの単一の規定成分ではないエピトープ(例えば、アミノ酸の一次配列が、必ずしもエピトープを規定する抗体により認識されないエピトープ)である。立体構造エピトープは、直線状エピトープに対して増大した数のアミノ酸を包含するかもしれない。立体構造エピトープの認識に関して、抗体は、ペプチドまたはタンパク質の三次元構造を認識する。例えば、タンパク質分子が折り畳まれて三次元構造を形成する場合には、立体構造エピトープを形成するあるアミノ酸および/またはポリペプチド主鎖は、並列となり、抗体がエピトープを認識するのを可能にする。エピトープの立体構造を決定する方法には、例えばX線結晶学、二次元核磁気共鳴分光学並びに部位特異的なスピン標識および電磁常磁性共鳴分光学が含まれるが、これらには限定されない。例えば、Epitope MappingProtocols in Methodsin Molecular Biology (1996)、第66巻、Morris(編)を参照。

0122

下記に被験抗原結合分子による癌特異的抗原中のエピトープへの結合の確認方法が例示されるが、他の結合ドメインの対象抗原中のエピトープへの結合の確認方法も下記の例示に準じて適宜実施され得る。

0123

例えば、癌特異的抗原に対する抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子が、該抗原分子中に存在する線状エピトープを認識することは、たとえば次のようにして確認することができる。上記の目的のために例えば癌特異的抗原の細胞外ドメインを構成するアミノ酸配列からなる線状のペプチドが合成される。当該ペプチドは、化学的に合成され得る。あるいは、癌特異的抗原のcDNA中の、細胞外ドメインに相当するアミノ酸配列をコードする領域を利用して、遺伝子工学的手法により得られる。次に、細胞外ドメインを構成するアミノ酸配列からなる線状ペプチドと、癌特異的抗原に対する抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子との結合活性が評価される。たとえば、固定化された線状ペプチドを抗原とするELISAによって、当該ペプチドに対する当該抗原結合分子の結合活性が評価され得る。あるいは、癌特異的抗原を発現する細胞に対する当該抗原結合分子の結合における、線状ペプチドによる阻害のレベルに基づいて、線状ペプチドに対する結合活性が明らかにされ得る。これらの試験によって、線状ペプチドに対する当該抗原結合分子の結合活性が明らかにされ得る。

0124

上記抗原に対する抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子が立体構造エピトープを認識することは、次のようにして確認され得る。例えば、癌特異的抗原に対する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子が癌特異的抗原発現細胞に接触した際に当該細胞に強く結合する一方で、当該抗原結合分子が固定化された癌特異的抗原の細胞外ドメインを構成するアミノ酸配列からなる線状ペプチドに対して実質的に結合しないとき等が挙げられる。ここで、実質的に結合しないとは、抗原発現細胞に対する結合活性の80%以下、通常50%以下、好ましくは30%以下、特に好ましくは15%以下の結合活性をいう。

0125

抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子の抗原発現細胞に対する結合活性を測定する方法としては、例えば、Antibodies A Laboratory Manual記載の方法(Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory (1988) 359-420)が挙げられる。即ち、抗原発現細胞を抗原とするELISAやFACS(fluorescence activated cell sorting)の原理によって評価され得る。

0126

ELISAフォーマットにおいて、抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子の抗原発現細胞に対する結合活性は、酵素反応によって生成するシグナルレベルを比較することによって定量的に評価される。すなわち、抗原発現細胞を固定化したELISAプレートに被験抗原結合分子を加え、該細胞に結合した被験抗原結合分子が、被験抗原結合分子を認識する酵素標識抗体を利用して検出される。あるいはFACSにおいては、被験抗原結合分子の希釈系列を作製し、抗原発現細胞に対する抗体結合力価(titer)を決定することにより、抗原発現細胞に対する被験抗原結合分子の結合活性が比較され得る。

0127

緩衝液等に懸濁した細胞表面上に発現している抗原に対する被験抗原結合分子の結合は、フローサイトメーターによって検出することができる。フローサイトメーターとしては、例えば、次のような装置が知られている。
FACSCantoTM II
FACSAriaTM
FACSArrayTM
FACSVantageTM SE
FACSCaliburTM (いずれもBD Biosciences社の商品名)
EPICSALTRA HyPerSort
Cytomics FC 500
EPICS XL-MCLADCEPICS XL ADC
Cell Lab Quanta / Cell Lab Quanta SC(いずれもBeckman Coulter社の商品名)

0128

例えば、上述の抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子の抗原に対する結合活性の好適な測定方法の一例として、次の方法が挙げられる。まず、抗原を発現する細胞と反応させた被験抗原結合分子を認識するFITC標識した二次抗体で染色する。被験抗原結合分子を適宜好適な緩衝液によって希釈することによって、当該抗原結合分子が所望の濃度に調製して用いられる。例えば、10μg/mlから10 ng/mlまでの間のいずれかの濃度で使用され得る。次に、FACSCalibur(BD社)により蛍光強度と細胞数が測定される。当該細胞に対する抗体の結合量は、CELLQUEST Software(BD社)を用いて解析することにより得られた蛍光強度、すなわちGeometric Meanの値に反映される。すなわち、当該Geometric Meanの値を得ることにより、被験抗原結合分子の結合量によって表される被験抗原結合分子の結合活性が測定され得る。

0129

本発明の抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分が、ある抗原結合分子とエピトープを共有することは、両者の同じエピトープに対する競合によって確認され得る。抗原結合分子間の競合は、交叉ブロッキングアッセイなどによって検出される。例えば競合ELISAアッセイは、好ましい交叉ブロッキングアッセイである。

0130

具体的には、交叉ブロッキングアッセイにおいては、マイクロタイタープレートのウェル上にコートした抗原が、候補となる競合抗原結合分子の存在下、または非存在下でプレインキュベートされた後に、被験抗原結合分子が添加される。ウェル中の抗原に結合した被験抗原結合分子の量は、同じエピトープへの結合に対して競合する候補となる競合抗原結合分子の結合能に間接的に相関している。すなわち同一エピトープに対する競合抗原結合分子の親和性が大きくなればなる程、被験抗原結合分子の抗原をコートしたウェルへの結合活性は低下する。

0131

抗原を介してウェルに結合した被験抗原結合分の量は、予め抗原結合分子を標識しておくことによって、容易に測定され得る。たとえば、ビオチン標識された抗原結合分子は、アビジンペルオキシダーゼコンジュゲートと適切な基質を使用することにより測定される。ペルオキシダーゼなどの酵素標識を利用した交叉ブロッキングアッセイは、特に競合ELISAアッセイといわれる。抗原結合分子は、検出あるいは測定が可能な他の標識物質で標識され得る。具体的には、放射標識あるいは蛍光標識などが公知である。

0132

候補の競合抗原結合分子の非存在下で実施されるコントロール試験において得られる結合活性と比較して、競合抗原結合分子が、抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子の結合を少なくとも20%、好ましくは少なくとも20−50%、さらに好ましくは少なくとも50%ブロックできるならば、当該被験抗原結合分子は競合抗原結合分子と実質的に同じエピトープに結合するか、又は同じエピトープへの結合に対して競合する抗原結合分子である。

0133

本発明の抗原結合ドメインを含む被験抗原結合分子が結合するエピトープの構造が同定されている場合には、被験抗原結合分子と対照抗原結合分とがエピトープを共有することは、当該エピトープを構成するペプチドにアミノ酸変異を導入したペプチドに対する両者の抗原結合分子の結合活性を比較することによって評価され得る。

0134

こうした結合活性を測定する方法としては、例えば、前記のELISAフォーマットにおいて変異を導入した線状のペプチドに対する被験抗原結合分子及び対照抗原結合分子の結合活性を比較することによって測定され得る。ELISA以外の方法としては、カラムに結合した当該変異ペプチドに対する結合活性を、当該カラムに被験抗原結合分子と対照抗原結合分子を流下させた後に溶出液中に溶出される抗原結合分子を定量することによっても測定され得る。変異ペプチドを例えばGSTとの融合ペプチドとしてカラムに吸着させる方法は公知である。

0135

また、同定されたエピトープが立体エピトープの場合には、被験抗原結合分子と対照抗原結合分子とがエピトープを共有することは、次の方法で評価され得る。まず、抗原結合ドメインの対象となっている抗原を発現する細胞とエピトープに変異が導入された抗原を発現する細胞が調製される。これらの細胞がPBS等の適切な緩衝液に懸濁された細胞懸濁液に対して被験抗原結合分子と対照抗原結合分子が添加される。次いで、適宜緩衝液で洗浄された細胞懸濁液に対して、被験抗原結合分子と対照抗原結合分子を認識することができるFITC標識された抗体が添加される。標識抗体によって染色された細胞の蛍光強度と細胞数がFACSCalibur(BD社)によって測定される。被験抗原結合分子と対照抗原結合分子の濃度は好適な緩衝液によって適宜希釈することによって所望の濃度に調製して用いられる。例えば、10μg/mlから10 ng/mlまでの間のいずれかの濃度で使用される。当該細胞に対する標識抗体の結合量は、CELLQUEST Software(BD社)を用いて解析することにより得られた蛍光強度、すなわちGeometric Meanの値に反映される。すなわち、当該Geometric Meanの値を得ることにより、標識抗体の結合量によって表される被験抗原結合分子と対照抗原結合分子の結合活性を測定することができる。

0136

また、本発明の「抗原結合分子」は、単一のポリペプチド鎖内に、本発明の「抗体の可変領域」を形成する重鎖および軽鎖の両方を含むが、定常領域を欠いている抗体断片であってもよい。そのような抗体断片としては、例えば、ダイアボディ(diabody;Db)、scFv、単鎖抗体、sc(Fv)2、sc(Fab')2であってもよい。

0137

Dbは、2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマー(Holliger P et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)、EP404,097号、W093/11161号等)であり、各々のポリペプチド鎖は、同じ鎖中でL鎖可変領域(VL)及びH鎖可変領域(VH)が、互いに結合できない位に短い、例えば、5残基程度のリンカーにより結合されている。

0138

同一ポリペプチド鎖上にコードされるVLとVHとは、その間のリンカーが短いため単鎖可変領域フラグメントを形成することが出来ず、二量体化することにより、2つの抗原結合部位を形成する。

0139

また、本明細書において、「scFv」、「単鎖抗体」、または「sc(Fv)2」という用語は、単一のポリペプチド鎖内に、重鎖および軽鎖の両方に由来する可変領域を含むが、定常領域を欠いている抗体断片を意味する。一般に、単鎖抗体は、抗原結合を可能にすると思われる所望の構造を形成するのを可能にする、VHドメインとVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。単鎖抗体は、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 113巻, Rosenburg、及び、Moore編, Springer-Verlag, New York, 269〜315(1994)においてPluckthunによって詳細に考察されている。同様に、国際特許出願公開WO1988/001649および米国特許第4,946,778号および同第5,260,203号を参照。特定の態様において、単鎖抗体はまた、二重特異性であるか、かつ/またはヒト化され得る。

0140

scFvはFvを構成するVHとVLとがペプチドリンカーによって連結された抗原結合ドメインである(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85 (16), 5879-5883)。当該ペプチドリンカーによってVHとVLとが近接した状態に保持され得る。

0141

sc(Fv)2は二つのVLと二つのVHの4つの可変領域がペプチドリンカー等のリンカーによって連結され一本鎖を構成する単鎖抗体である(J Immunol. Methods(1999) 231 (1-2), 177-189)。この二つのVHとVLは異なるモノクローナル抗体から由来することもあり得る。例えば、Journal of Immunology (1994) 152 (11), 5368-5374に開示されるような同一抗原中に存在する二種類のエピトープを認識する二重特異性(bispecific sc(Fv)2)も好適に挙げられる。sc(Fv)2は、当業者に公知の方法によって作製され得る。例えば、scFvをペプチドリンカー等のリンカーで結ぶことによって作製され得る。

0142

本明細書におけるsc(Fv)2を構成する抗原結合ドメインの構成としては、二つのVH及び二つのVLが、一本鎖ポリペプチドN末端側を基点としてVH、VL、VH、VL([VH]リンカー[VL]リンカー[VH]リンカー[VL])の順に並んでいることを特徴とする抗体が挙げられるが、二つのVHと2つのVLの順序は特に上記の構成に限定されず、どのような順序で並べられていてもよい。例えば以下のような、順序の構成も挙げることができる。
[VL]リンカー[VH]リンカー[VH]リンカー[VL]
[VH]リンカー[VL]リンカー[VL]リンカー[VH]
[VH]リンカー[VH]リンカー[VL]リンカー[VL]
[VL]リンカー[VL]リンカー[VH]リンカー[VH]
[VL]リンカー[VH]リンカー[VL]リンカー[VH]

0143

sc(Fv)2の分子形態についてはWO2006/132352においても詳細に記載されており、当業者であればこれらの記載に基づいて、本明細書で開示される抗原結合分子の作製のために適宜所望のsc(Fv)2を作製することが可能である。

0144

ここで、Fv(variable fragment)は、抗体の軽鎖可変領域(VL(light chain variable region))と抗体の重鎖可変領域(VH(heavy chain variable region))とのペアからなる抗体由来の抗原結合ドメインの最小単位を意味する。1988年にSkerraとPluckthunは、バクテリアのシグナル配列の下流に抗体の遺伝子を挿入し大腸菌中で当該遺伝子の発現を誘導することによって、均一でかつ活性を保持した状態で大腸菌のペリプラズム画分から調製されることを見出した(Science (1988) 240 (4855), 1038-1041)。ペリプラズム画分から調製されたFvは、抗原に対する結合を有する態様でVHとVLが会合していた。

0145

また本発明の抗原結合分子は、PEG等のキャリアー高分子抗がん剤等の有機化合物をコンジュゲートしてもよい。また糖鎖付加配列を挿入し、糖鎖が所望の効果を得ることを目的として好適に付加され得る。

0146

抗体の可変領域を結合するリンカーとしては、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、又は合成化合物リンカー(例えば、Protein Engineering, 9 (3), 299-305, 1996参照)に開示されるリンカー等を用いることができるが、本発明においてはペプチドリンカーが好ましい。ペプチドリンカーの長さは特に限定されず、目的に応じて当業者が適宜選択することが可能であるが、好ましい長さは5アミノ酸以上(上限は特に限定されないが、通常、30アミノ酸以下、好ましくは20アミノ酸以下)であり、特に好ましくは15アミノ酸である。sc(Fv)2に3つのペプチドリンカーが含まれる場合には、全て同じ長さのペプチドリンカーを用いてもよいし、異なる長さのペプチドリンカーを用いてもよい。

0147

例えば、ペプチドリンカーの場合:
Ser
Gly・Ser
Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:20)
Ser・Gly・Gly・Gly(配列番号:21)
Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:22)
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:23)
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:24)
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:25)
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:26)
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:27)
(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser(配列番号:22))n
(Ser・Gly・Gly・Gly・Gly(配列番号:23))n
[nは1以上の整数である]等を挙げることができる。但し、ペプチドリンカーの長さや配列は目的に応じて当業者が適宜選択することができる。

0148

合成化学物リンカー(化学架橋剤)は、ペプチドの架橋に通常用いられている架橋剤、例えばN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビススルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ−EGS)、ジスクシンイミジル酒石酸塩(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(スルホ−DST)、ビス[2-(スクシンイミドオキシカルボニルオキシエチルスルホンBSOCOES)、ビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-BSOCOES)などであり、これらの架橋剤は市販されている。

0149

4つの抗体可変領域を結合する場合には、通常、3つのリンカーが必要となるが、全て同じリンカーを用いてもよいし、異なるリンカーを用いてもよい。

0150

また、「Fab」は、一本の軽鎖、ならびに一本の重鎖のCH1領域および可変領域から構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とのジスルフィド結合を形成できない。

0151

「F(ab')2」及び「Fab'」とは、イムノグロブリン(モノクローナル抗体)をタンパク質分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理することにより、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントが製造され得る。これら2つの相同な抗体フラグメントはそれぞれFab'といわれる。

0152

「F(ab')2」は、二本の軽鎖、ならびに、鎖間のジスルフィド結合が2つの重鎖間で形成されるようにCH1ドメインおよびCH2ドメインの一部分の定常領域を含む二本の重鎖を含む。本明細書において開示される抗原結合分子を構成するF(ab')2は、所望の抗原結合ドメインを有する全長モノクローナル抗体等をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、Fc断片をプロテインAカラムに吸着させて除去することにより、好適に取得され得る。かかる蛋白質分解酵素としてはpH等の酵素の反応条件を適切に設定することにより制限的にF(ab')2を生じるように全長抗体を消化し得るものであれば特段の限定はされず、例えば、ペプシンやフィシン等が例示できる。

0153

本発明の「抗原結合分子」の好ましい態様の1つとして、多重特異性抗体を挙げることができる。多重特異性抗体のFc領域として、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域を用いる場合、多重特異性抗体を起源とするFc領域も適宜使用される。本発明の多重特異性抗体としては、特に二重特異性抗体が好ましい。

0154

多重特異性抗体の会合化には、抗体H鎖の第二の定常領域(CH2)又はH鎖の第三の定常領域(CH3)の界面に電荷的な反発を導入して目的としないH鎖同士の会合を抑制する技術を適用することができる(WO2006/106905)。

0155

CH2又はCH3の界面に電荷的な反発を導入して意図しないH鎖同士の会合を抑制させる技術において、H鎖の他の定常領域の界面で接触するアミノ酸残基としては、例えばCH3領域におけるEUナンバリング356番目の残基、EUナンバリング439番目の残基、EUナンバリング357番目の残基、EUナンバリング370番目の残基、EUナンバリング399番目の残基、EUナンバリング409番目の残基に相対する領域を挙げることができる。

0156

より具体的には、例えば、2種のH鎖CH3領域を含む抗体においては、第1のH鎖CH3領域における以下の(1)〜(3)に示すアミノ酸残基の組から選択される1組ないし3組のアミノ酸残基が同種の電荷を有する抗体とすることができる; (1)H鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング356位および439位のアミノ酸残基、 (2)H鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング357位および370位のアミノ酸残基、 (3)H鎖CH3領域に含まれるアミノ酸残基であって、EUナンバリング399位および409位のアミノ酸残基。

0157

更に、上記第1のH鎖CH3領域とは異なる第2のH鎖CH3領域における前記(1)〜(3)に示すアミノ酸残基の組から選択されるアミノ酸残基の組であって、前記第1のH鎖CH3領域において同種の電荷を有する前記(1)〜(3)に示すアミノ酸残基の組に対応する1組ないし3組のアミノ酸残基が、前記第1のH鎖CH3領域における対応するアミノ酸残基とは反対の電荷を有する抗体とすることができる。

0158

上記(1)〜(3)に記載のそれぞれのアミノ酸残基は、会合した際に互いに接近している。当業者であれば、所望のH鎖CH3領域またはH鎖定常領域について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、上記(1)〜(3)に記載のアミノ酸残基に対応する部位を見出すことができ、適宜、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。

0159

上記抗体において、「電荷を有するアミノ酸残基」は、例えば、以下の(a)または(b)のいずれかの群に含まれるアミノ酸残基から選択されることが好ましい;
(a)グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)、
(b)リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)。

0160

上記抗体において、「同種の電荷を有する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残基のいずれもが、上記(a)または(b)のいずれか1の群に含まれるアミノ酸残基を有することを意味する。「反対の電荷を有する」とは、例えば、2つ以上のアミノ酸残基のなかの少なくとも1つのアミノ酸残基が、上記(a)または(b)のいずれか1の群に含まれるアミノ酸残基を有する場合に、残りのアミノ酸残基が異なる群に含まれるアミノ酸残基を有することを意味する。

0161

好ましい態様において上記抗体は、第1のH鎖CH3領域と第2のH鎖CH3領域がジスルフィド結合により架橋されていてもよい。

0162

本発明において改変に供するアミノ酸残基としては、上述した抗体の可変領域または抗体の定常領域のアミノ酸残基に限られない。当業者であれば、ポリペプチド変異体または異種多量体について、市販のソフトウェアを用いたホモロジーモデリング等により、界面を形成するアミノ酸残基を見出すことができ、会合を制御するように、該部位のアミノ酸残基を改変に供することが可能である。

0163

また、本発明の多重特異性抗体の会合化には更に他の公知技術を用いることもできる。抗体の一方のH鎖の可変領域に存在するアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(knob;突起)に置換し、もう一方のH鎖の相対する可変領域に存在するアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(hole; 空隙)に置換することによって、突起が空隙に配置され得るようにすることで効率的にFc領域を有する異なるアミノ酸を有するポリペプチド同士の会合化を起こすことができる(WO1996/027011、RidgwayJBet al., Protein Engineering (1996) 9, 617-621、Merchant AM et al. Nature Biotechnology (1998) 16, 677-681、US20130336973)。

0164

これに加えて、本発明の多重特異性抗体の形成には更に他の公知技術を用いることもできる。抗体の一方のH鎖のCH3の一部をその部分に対応するIgA由来の配列にし、もう一方のH鎖のCH3の相補的な部分にその部分に対応するIgA由来の配列を導入したstrand-exchange engineered domain CH3を用いることで、異なる配列を有するポリペプチドの会合化をCH3の相補的な会合化によって効率的に引き起こすことができる (Protein Engineering Design & Selection, 23; 195-202, 2010)。この公知技術を使っても効率的に目的の多重特異性抗体の形成させることができる。

0165

他にも多重特異性抗体の形成には、WO2011/028952やWO2014/018572やNat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8.に記載の抗体のCH1とCLの会合化、VH、VLの会合化を利用した抗体作製技術、WO2008/119353やWO2011/131746に記載の別々に調製したモノクローナル抗体同士を使用して二重特異性抗体を作製する技術(FabArm Exchange)、WO2012/058768やWO2013/063702に記載の抗体重鎖のCH3間の会合を制御する技術、WO2012/023053に記載の二種類の軽鎖と一種類の重鎖とから構成される二重特異性抗体を作製する技術、Christophら(Nature Biotechnology Vol. 31, p 753-758 (2013))に記載の1本のH鎖と1本のL鎖からなる抗体の片鎖をそれぞれ発現する2つのバクテリア細胞株を利用した二重特異性抗体を作製する技術等を用いることもできる。

0166

多重特異性抗体の形成の一態様としては、上述したように、二種類のモノクローナル抗体を還元剤存在下で混合し、コアヒンジのdisulfide結合を開裂させたのちに、再会合させてヘテロ二量化した二重特異性抗体を得る方法が挙げられるが(FAE)、CH3領域の相互作用界面静電相互作用(WO2006/106905)を導入することにより、再会合時にさらに効率的にヘテロ二量化を誘起することができる(WO2015/046467)。天然型IgGを用いたFAEでは再会合がランダムに起こるため理論上50%の効率でしか二重特異性抗体が得られないが、当該方法では高収率で二重特異性抗体を製造することができる。

0167

また、効率的に目的の多重特異性抗体を形成させることができない場合であっても、産生された抗体の中から目的の多重特異性抗体を分離、精製することによっても、本発明の多重特異性抗体を得ることが可能である。例えば、2種類のH鎖の可変領域にアミノ酸置換を導入し等電点の差を付与することで、2種類のホモ体と目的のヘテロ抗体をイオン交換クロマトグラフィーで精製可能にする方法が報告されている(WO2007114325)。また、ヘテロ体を精製する方法として、これまでに、プロテインAに結合するマウスIgG2aのH鎖とプロテインAに結合しないラットIgG2bのH鎖からなるヘテロ二量化抗体をプロテインAを用いて精製する方法が報告されている(WO98050431、WO95033844)。更に、IgGとProteinAの結合部位であるEUナンバリング435番目および436番目のアミノ酸残基を、Tyr、HisなどのProteinAへの結合力の異なるアミノ酸に置換したH鎖を用いることで、各H鎖とProtein Aとの相互作用を変化させ、Protein Aカラムを用いることで、ヘテロ二量化抗体のみを効率的に精製することもできる。

0168

また、異なる複数のH鎖に結合能を与え得る共通のL鎖を取得し、多重特異性抗体の共通L鎖として用いてもよい。このような共通L鎖と異なる複数のH鎖遺伝子を細胞に導入することによってIgGを発現させることで効率の良い多重特異性IgGの発現が可能となる(Nature Biotechnology (1998) 16, 677-681)。共通H鎖を選択する際に、任意の異なるH鎖に対応し高い結合能を示す共通L鎖を選択する方法も利用することができる(WO2004/065611)。

0169

また、本発明のFc領域として、Fc領域のC末端のヘテロジェニティーが改善されたFc領域が適宜使用され得る。より具体的には、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4を起源とするFc領域を構成する二つのポリペプチドのアミノ酸配列のうちEUナンバリングに従って特定される446位のグリシン、及び447位のリジンが欠失したFc領域が提供される。

0170

これらの技術を複数、例えば2個以上組合せて用いることもできる。また、これらの技術は、会合させたい2つのH鎖に適宜別々に適用させることもできる。さらに、これらの技術は、上述のFcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域に組み合わせて用いることもできる。なお、本発明の抗原結合分子は、上記改変が加えられたものをベースにして、同一のアミノ酸配列を有する抗原結合分子を別途作製したものであってもよい。

0171

本発明に係る抗原結合分子(第1の抗原結合分子)は、前記の
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリー結合ドメイン、又は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー結合ドメイン
を含むものであればよく、その構造は限定されない。第1の抗原結合分子は、これら2つの結合ドメインを含むことにより、TNFスーパーファミリー又はTNF受容体スーパーファミリーに属する分子を発現する細胞であって、癌特異的抗原を発現する細胞又は当該細胞を含む腫瘍組織に含まれる細胞を特異的に活性化し、癌特異的抗原を発現する当該細胞又は当該細胞を含む腫瘍組織に対して優れた(特異的な)細胞傷害作用を誘導することが可能となる。本発明の癌特異的抗原結合ドメイン、TNFスーパーファミリー結合ドメイン及びTNF受容体スーパーファミリー結合ドメインは、それぞれ、上述の癌特異的抗原あるいは、TNFスーパーファミリー又はTNF受容体スーパーファミリーに属する抗原から適宜選択することができる。これらの結合ドメインは、ペプチド結合で直接連結することもできるし、リンカーを介して結合することもできる。

0172

本発明の抗原結合分子は、さらに、FcRn結合ドメインを含んでいてもよい。該FcRn結合ドメインとして、上述の抗体のFc領域を用いる場合は、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域が好ましい。Fcγ受容体に対する結合活性を低下させることで、Fcγ受容体発現細胞とTNF受容体スーパーファミリーに属する因子を発現する細胞の間の架橋によって生じるサイトカインリリース等の免疫活性化によって生じる副作用を抑制することが可能である。

0173

本発明の抗原結合分子は、上述の公知の方法を用いて作製することができる。
例えば、(1)癌特異的抗原結合ドメインとしてF(ab')2、(2)TNFスーパーファミリー結合ドメイン又はTNF受容体スーパーファミリー結合ドメインとしてF(ab')2を用い、(3)FcRn結合ドメインとして、Fcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域を含むドメインを用いた場合に、(1)と(2)に記載された抗原結合ドメインと(3)に記載されたFc領域を含むドメインとをペプチド結合で直接連結したときは、連結されたポリペプチドは抗体の構造を形成する。そのような抗体を作製するためには前述のハイブリドーマの培養液から精製する他、当該抗体を構成するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを安定に保持している所望の宿主細胞の培養液から当該抗体を精製することもできる。

0174

また、その他、リンカーを介して各ドメインを結合する場合は、採用されるリンカーとしては、上記で例示されるリンカーの他、例えばHisタグ、HAタグ、mycタグ、FLAGタグ等のペプチドタグを有するリンカーも適宜使用され得る。また、水素結合、ジスルフィド結合、共有結合、イオン性相互作用またはこれらの結合の組合せにより互いに結合する性質もまた好適に利用され得る。例えば、抗体のCH1とCL間の親和性が利用されたり、ヘテロFc領域の会合に際して前述の多重特異性抗体を起源とするFc領域が用いられたりする。

0175

本発明においては、第1の抗原結合分子に、さらに第2の抗原結合分子を組み合わせて用いることができる。

0176

該第2の抗原結合分子は、
(1)癌特異的抗原結合ドメイン、及び
(2)T細胞受容体複合体結合ドメイン
を含むものであればよく、第1の抗原結合分子と同様にその構造は限定されず、第1の抗原結合分子と同様な方法で取得することが可能である。また、第2の抗原結合分子は、癌特異的抗原結合ドメインとT細胞受容体複合体結合ドメインを含んでいれば、その構造は第1の抗原結合分子と同一である必要もない。また、第1の抗原結合分子の癌特異的抗原結合ドメインが結合する癌特異的抗原と第2の抗原結合分子の癌特異的抗原結合ドメインが結合する癌特異的抗原とは、同一の抗原であっても異なる抗原であってもよいが、同一の癌特異的抗原であることが好ましい。癌特異的抗原が同一である場合、第1の抗原結合分子と第2の抗原結合分子が結合するエピトープは同一であっても異なるものであってもよい。これら第1の抗原結合分子と第2の抗原結合分子を組み合わせて用いることで、優れた細胞傷害活性を得ることができる。第2の抗原結合ドメインに含まれる癌特異的抗原結合ドメイン及びT細胞受容体複合体結合ドメインは、それぞれ、上述の癌特異的抗原あるいはT細胞受容体複合体に属する抗原から適宜選択することができる。

0177

本発明の第2の抗原結合分子も第1の抗原結合分子と同様に、さらに、FcRn結合ドメインを含んでいてもよい。該FcRn結合ドメインとして、上述の抗体のFc領域を用いる場合は、第1の抗原結合分子と同様にFcγ受容体に対する結合活性が低下しているFc領域が好ましい。Fcγ受容体に対する結合活性を低下させることで、Fcγ受容体発現細胞とT細胞受容体複合体発現細胞及び/又はTNF受容体スーパーファミリーに属する因子を発現する細胞の間の架橋によって生じるサイトカインリリース等の免疫活性化によって生じる副作用を抑制することが可能である。

0178

また、本発明は、本発明の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドに関する。本発明の抗原結合分子は、任意の発現ベクターに組み込むことができる。発現ベクターで適当な宿主を形質転換し、抗原結合分子の発現細胞とすることができる。抗原結合分子の発現細胞を培養し、培養上清から発現産物を回収すれば、当該ポリヌクレオチドによってコードされる抗原結合分子を取得することができる。即ち本発明は、本発明の抗原結合分子をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、当該ベクターを保持する細胞、および当該細胞を培養し培養上清から抗原結合分子を回収することを含む、抗原結合分子の製造方法に関する。これらは例えば、前記組換え抗体と同様の手法により得ることができる。

0179

医薬組成物
別の観点においては、本発明は、上述の第1の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物を提供する。また、本発明は、当該抗原結合分子を有効成分として含有する、細胞傷害を誘導する医薬組成物(細胞傷害誘導治療剤)、細胞増殖抑制剤および抗癌剤に関する。本発明の医薬組成物は、癌治療剤または癌予防剤として用いることもできる。本発明の細胞傷害誘導治療剤、細胞増殖抑制剤および抗癌剤は、癌を罹患している対象または再発する可能性がある対象に投与されることが好ましい。

0180

また、本発明において、上述の第1の抗原結合分子を有効成分として含む、細胞傷害誘導治療剤、細胞増殖抑制剤および抗癌剤は、当該抗原結合分子を対象に投与する工程を含む、細胞障害を誘導する方法、細胞増殖を抑制する方法、癌細胞又は癌細胞を含む腫瘍組織に対する免疫を活性化する方法、または癌を予防もしくは治療する方法と表現することができ、あるいは、細胞傷害を誘導するための医薬組成物、細胞増殖抑制剤および抗癌剤の製造における当該抗原結合分子の使用と表現することもでき、あるいは、細胞障害の誘導、細胞増殖の抑制、癌細胞又は癌細胞を含む腫瘍組織に対する免疫の活性化またはがんの治療もしくは予防において使用するための当該抗原結合分子と表現することもできる。

0181

本発明において、「抗原結合分子を有効成分として含む」とは、当該抗原結合分子を主要な活性成分として含むという意味であり、当該抗原結合分子の含有率を制限するものではない。

0182

更に本発明における医薬組成物、あるいは細胞傷害を誘導するための医薬組成物、細胞増殖抑制剤および抗癌剤(以下、医薬組成物等)は、上述の第2の抗原結合分子を組み合わせて用いることができる。第1の抗原結合分子を含む医薬組成物等に第2の抗原結合分子を組み合わせて用いることにより、当該抗原を発現する細胞に対する細胞傷害作用を強化することができる。ここで、「第2の抗原結合分子を組み合わせて用いる」とは、第2の抗原結合分子が、第1の抗原結合分子を含む医薬組成物等中に一緒に配合されていてもよいし、第1の抗原結合分子を含む医薬組成物等とは異なる医薬組成物等中に第2の抗原結合分子が含まれていてもよい。その剤型も同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、第1の抗原結合分子と第2の抗原結合分子が異なる医薬組成物等中に含まれる場合には、これらの医薬組成物等は、対象に対して、同時に投与されてもよいし、別々に投与されてもよい。さらにこれらの医薬組成物等をキットとして提供してもよい。

0183

また、本発明における第1の抗原結合分子又は第1の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物は、第2の抗原結合分子又は第2の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等と併用することで、その細胞傷害活性の誘導を高める、或いは、細胞傷害活性を強化するための医薬組成物として用いることができる。また、第2の抗原結合分子又は第2の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物は、第1の抗原結合分子又は第1の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等と併用することで、その細胞傷害活性の誘導を高める、或いは、細胞傷害活性を強化するための医薬組成物として用いることができる。

0184

ここで、「併用」には、第1の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等と第2の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等とが、対象に対して、同時に投与されることも含まれるし、別々に投与されることも含まれる。また、その剤型は同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、これらの医薬組成物等をキットとして提供するものであってもよい。

0185

また、本発明は、上記の第1の抗原結合分子又は当該結合分子を有効成分として含む医薬組成物等と、第2の抗原結合分子又は第2の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等を併用することによって生じる効果を利用することにより、第1の抗原結合分子又は第1の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等によって、第2の抗原結合分子又は第2の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等の細胞傷害活性又は抗腫瘍効果を強化する方法を提供する。また、第2の抗原結合分子又は第2の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等によって、第1の抗原結合分子又は第1の抗原結合分子を有効成分として含む医薬組成物等の細胞傷害活性又は抗腫瘍効果を強化する方法を提供する。

0186

更に本発明における医薬組成物等は、必要に応じて複数種類の第1の抗原結合分子及び/又は第2の抗原結合分子を組み合わせて用いることが可能である。たとえば、同一の抗原に結合する複数の本発明の抗原結合分子のカクテルを用いることによって、当該抗原を発現する細胞に対する細胞傷害作用を強化できる可能性がある。

0187

また、必要に応じ本発明の抗原結合分子はマイクロカプセルヒドロキシメチルセルロースゼラチンポリメチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入され、コロイドドラッグデリバリーシステムリポソーム、アルブミンミクロスフェアマイクロエマルジョンナノ粒子及びナノカプセル等)とされ得る("Remington's Pharmaceutical Science 16th edition", Oslo Ed. (1980)等参照)。さらに、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、当該方法は本発明の抗原結合分子に適用され得る(J.Biomed.Mater.Res. (1981) 15, 267-277、Chemtech. (1982) 12, 98-105、米国特許第3773719号、欧州特許公開公報EP58481号・EP133988号、Biopolymers (1983) 22, 547-556)。

0188

本発明の医薬組成物、あるいは細胞増殖抑制剤および抗癌剤は、経口、非経口投与のいずれかによって患者に投与することができる。好ましくは非経口投与である。係る投与方法としては具体的には、注射投与経鼻投与経肺投与経皮投与などが挙げられる。注射投与としては、例えば、静脈内注射筋肉内注射腹腔内注射皮下注射などが挙げられる。例えば注射投与によって本発明の医薬組成物、あるいは細胞傷害誘導治療剤、細胞増殖抑制剤および抗癌剤が全身または局部的に投与できる。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。投与量としては、例えば、一回の投与につき体重1 kgあたり0.0001 mgから1000 mgの範囲で投与量を選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.001 mg/bodyから100000 mg/bodyの範囲で投与量を選択し得る。しかしながら、本発明の医薬組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。

0189

本発明の医薬組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤賦形剤着色料着香料保存料、安定剤、緩衝剤懸濁剤等張化剤結合剤崩壊剤滑沢剤流動性促進剤、矯味剤等が挙げられる。更にこれらに制限されず、その他常用の担体を適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸乳糖結晶セルロースマンニトールデンプンカルメロースカルシウムカルメロースナトリウムヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロースポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライドポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖カルボキシメチルセルロースコーンスターチ無機塩類等を担体として挙げることができる。

0190

また、本発明は、ある癌特異的抗原を発現する細胞を、当該癌特異的抗原に結合する本発明の第1の抗原結合分子、或いは、第1の抗原結合分子及び第2の抗原結合分子と接触させることにより、当該癌特異的抗原の発現細胞又は当該癌特異的抗原の発現細胞を含む腫瘍組織に傷害を引き起こす方法、或いは、当該細胞又は当該腫瘍組織の増殖を抑制する方法を提供する。当該癌特異的抗原に結合する本発明の抗原結合分子が結合する細胞は、当該癌特異的抗原が発現している細胞であれば特に限定されない。本発明における好ましい当該癌抗原の発現細胞は、具体的には、卵巣癌、前立腺癌、乳癌、子宮癌肝癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌及び大腸癌細胞等が好適に挙げられる。

0191

本発明において「接触」は、例えば、インビトロで培養している癌抗原発現細胞の培養液に、当該癌抗原に結合する本発明の抗原結合分子を添加することにより行われる。この場合において、添加される抗原結合分子の形状としては、溶液又は凍結乾燥等により得られる固体等の形状が適宜使用され得る。水溶液として添加される場合にあっては純粋に本発明の抗原結合分子のみを含有する水溶液であり得るし、例えば上記記載の界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含む溶液でもあり得る。添加する濃度は特に限定されないが、培養液中の最終濃度として、好ましくは1 pg/mlから1 g/mlの範囲であり、より好ましくは1 ng/mlから1 mg/mlであり、更に好ましくは1μg/mlから1 mg/mlが好適に使用され得る。

0192

また、本発明において「接触」は更に、別の態様では、癌特異的抗原の発現細胞を体内に移植した非ヒト動物や、内在的に当該癌特異的抗原を発現する癌細胞を有する動物に、当該癌抗原に結合する本発明の抗原結合分子を投与することによっても行われる。投与方法は経口、非経口投与のいずれかによって実施できる。特に好ましくは非経口投与による投与方法であり、係る投与方法としては具体的には、注射投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられる。注射投与としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などが挙げられる。例えば注射投与によって本発明の医薬組成物、あるいは細胞傷害を誘導するための医薬組成物、細胞増殖阻害剤および抗癌剤を全身または局部的に投与できる。また、被験動物の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。水溶液として投与される場合にあっては純粋に本発明の抗原結合分子のみを含有する水溶液であってもよいし、例えば上記記載の界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含む溶液であってもよい。投与量としては、例えば、一回の投与につき体重1 kgあたり0.0001 mgから1000 mgの範囲で投与量を選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.001から100000 mg/bodyの範囲で投与量を選択できる。しかしながら、本発明の抗原結合分子投与量はこれらの投与量に制限されるものではない。

0193

本発明の抗原結合分子の接触によって当該抗原結合分子を構成する癌特異的抗原結合ドメインが結合する癌特異的抗原を発現する細胞に引き起こされた細胞傷害を評価又は測定する方法として、以下の方法が好適に使用される。インビトロで該細胞傷害活性を評価又は測定する方法としては、細胞傷害性T細胞活性などの測定法を挙げることができる。本発明の抗原結合分子がT細胞性傷害活性を有するか否かを、公知の方法により測定することができる(例えば、Current protocols in Immunology, Chapter 7. Immunologic studies in humans, Editor, John E, Coligan et al., John Wiley & Sons, Inc.,(1993)等)。活性の測定に際しては、本発明とはその抗原結合ドメインが結合する抗原が異なる抗原であって試験に使用する細胞が発現していない抗原に結合する抗原結合分子を対照として、本発明の抗原結合分子と同様に使用し、本発明の抗原結合分子が、対照として使用された抗原結合分子よりも強い細胞傷害活性を示すことにより、活性を判定し得る。

0194

また、生体内で細胞傷害活性を評価又は測定するために、例えば本発明の抗原結合分子を構成する癌特異的抗原結合ドメインが結合する抗原を発現する細胞を、非ヒト被験動物の皮内又は皮下に移植後、当日又は翌日から毎日又は数日間隔で被験抗原結合分子を静脈又は腹腔内に投与する。腫瘍の大きさを経日的に測定することにより、当該腫瘍の大きさの変化の差異を細胞傷害活性と規定し得る。インビトロでの評価と同様に対照となる抗原結合分子を投与し、本発明の抗原結合分子の投与群における腫瘍の大きさが対照抗原結合分子の投与群における腫瘍の大きさよりも有意に小さいことにより、本発明の抗原結合分子が細胞傷害活性を有すると判定し得る。

0195

本発明の抗原結合分子の接触による、当該抗原結合分子を構成する癌特異的抗原結合ドメインが結合する抗原を発現する細胞の増殖に対する抑制効果を評価又は測定する方法としては、アイソトープラベルしたthymidineの細胞へ取込み測定やMTT法が好適に用いられる。また、生体内で細胞増殖抑制活性を評価又は測定する方法として、上記記載の生体内において細胞傷害活性を評価又は測定する方法と同じ方法を好適に用いることができる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 株式会社光英科学研究所の「 皮膚用保湿機能剤」が 公開されました。( 2020/07/02)

    【課題】 手軽にかつより確実に、皮膚の保湿機能を向上させることができる皮膚用保湿機能剤を提供すること。【解決手段】 トリリノレインを含有した皮膚用保湿機能剤によって、皮膚の保湿機能が高まり、経表皮... 詳細

  • 東ソー株式会社の「 レジオネラ属菌検出に用いるオリゴヌクレオチド及びその検出方法」が 公開されました。( 2020/07/02)

    【課題】試料中に存在するレジオネラ属菌を特異的に増幅し、かつ偽陽性が発生しにくい検出方法の提供。【解決手段】レジオネラ属菌の23SrRNAもしくは23SrDNAの特定塩基配列またはその相補配列を検出す... 詳細

  • 小林製薬株式会社の「 皮膚外用組成物」が 公開されました。( 2020/07/02)

    【課題】本発明の目的は、鎮痒効果がより一層高められた皮膚外用組成物を提供することである。【解決手段】ジフェンヒドラミン及び/又はその塩とレチノール及び/又はその誘導体とを含む皮膚外用組成物において、ア... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ