図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
空気中の酸素を正極活物質とし、マグネシウムを負極活物質とするマグネシウム空気電池は、反応が進むにしたがって電気もイオンも通さない水酸化マグネシウムの被膜がマグネシウムの表面に形成され、次第に負極から大きな電流を取り出すことが難しくなる。特許文献1に記載のマグネシウム空気電池では、導電性のフィルムの上にマグネシウムを付着させてロール状にし、このロール状フィルムを回転させてその近傍に位置する正極と協働して次々に未反応部分が反応し、連続的に発電する。
また、特許文献2のように、薄い板状の燃料を反応が低下したときに入れ替えることでも同様の効果を得られる。特許文献2は、薄い板状の燃料が蛇腹状に折りたたまれたセパレータ内に設置されることで、電極に対して連続した燃料の導入と引き出しを可能にしている。
概要
空気中の酸素を正極活物質とし、マグネシウムを負極活物質とするマグネシウム空気電池において、負極に形成される酸化被膜による電流の低下を抑制したマグネシウム燃料体、およびそのマグネシウム燃料体を備えたマグネシウム空気電池、を提供する。マグネシウム燃料体100は、2カ所に切れ込み102を備えたマグネシウム板101と、導通板103と、を備え、導通板103を切れ込み102に差し込んで折り曲げ、折り曲げた山部分と切れ込み102の内側とを強く圧着させる。
目的
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、簡単な構造により負極に形成される酸化被膜による電流の低下を抑制したマグネシウム燃料体、およびそのマグネシウム燃料体を備えたマグネシウム空気電池、を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
複数の切れ込みを備えた金属マグネシウムの薄板と、外部電極との接触により電気を取り出す導通板と、を備え、前記切れ込みの内側と、前記導通板を折り曲げた際にできる山部分と、を接触させつつ前記導通板が前記マグネシウム薄板の前記切れ込みに挿入される、ことを特徴とする、マグネシウム燃料体。
請求項2
請求項1に記載のマグネシウム燃料体と、液体を含浸可能な素材により形成された電解液保持材と、前記電解液保持材の両側面から挟みこむカソードと、前記マグネシウム燃料体の下方に設置される電解液槽と、前記電解液槽内に貯留される電解液と、を備え、前記電解液保持材によって包みこまれた前記マグネシウム燃料体が、2枚の前記カソードの間に挿入され、前記カソードは前記電解液には浸されずに、前記電解液保持材が前記電解液に浸されて、当該電解液保持材が前記電解液を含浸することで電池反応を開始する、ことを特徴とする、マグネシウム空気電池。
請求項3
請求項2に記載のマグネシウム空気電池において、前記マグネシウム燃料体が、前記電解液の水面に対して斜めに傾けて設置される、ことを特徴とするマグネシウム空気電池。
請求項4
請求項5
請求項2から4いずれか一項に記載のマグネシウム空気電池を複数備え、それぞれを直列に接続し、前記カソードは前記電解液に浸されず、前記電解液保持部および前記マグネシウム燃料体が前記電解液に浸されて、直列に接続された複数の前記マグネシウム空気電池が、1つの前記電解液槽を共用する、ことを特徴とする。
請求項6
請求項7
技術分野
0001
本発明は、マグネシウム燃料体およびマグネシウム空気電池、に関する
背景技術
0002
空気中の酸素を正極活物質とし、マグネシウムを負極活物質とするマグネシウム空気電池は、反応が進むにしたがって電気もイオンも通さない水酸化マグネシウムの被膜がマグネシウムの表面に形成され、次第に負極から大きな電流を取り出すことが難しくなる。特許文献1に記載のマグネシウム空気電池では、導電性のフィルムの上にマグネシウムを付着させてロール状にし、このロール状フィルムを回転させてその近傍に位置する正極と協働して次々に未反応部分が反応し、連続的に発電する。
0003
また、特許文献2のように、薄い板状の燃料を反応が低下したときに入れ替えることでも同様の効果を得られる。特許文献2は、薄い板状の燃料が蛇腹状に折りたたまれたセパレータ内に設置されることで、電極に対して連続した燃料の導入と引き出しを可能にしている。
先行技術
0004
特許5598883号
特許5891569号
発明が解決しようとする課題
0005
特許文献1や特許文献2のような機構では、入れ替わる燃料の表面から効率的に電気を引き出す必要がある。マグネシウムの表面には短時間で酸化被膜が形成されるために、点接触で効率的に電気を引き出すことが難しい。また、燃料の製造工程が複雑になると、燃料価格の高騰を招くとともに、生産量の低下となる。
0006
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、簡単な構造により負極に形成される酸化被膜による電流の低下を抑制したマグネシウム燃料体、およびそのマグネシウム燃料体を備えたマグネシウム空気電池、を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
上記目的を達成するため、本発明の第一の観点に係るマグネシウム燃料体は、
複数の切れ込みを備えた金属マグネシウムの薄板と、
外部電極との接触により電気を取り出す導通板と、
を備え、
前記切れ込みの内側と、前記導通板を折り曲げた際にできる山部分と、を接触させつつ
前記導通板が前記マグネシウム薄板の前記切れ込みに挿入される、
ことを特徴とする。
0008
本発明の第二の観点に係るマグネシウム空気電池は、
本発明の第一の観点に係るマグネシウム燃料体と、
カソードと、
電解液と、
前記電解液を含浸可能な素材により形成された電解液保持材と、
前記電解液を貯留する電解液槽と、
を備え、
前記電解液保持材によって包みこまれた前記マグネシウム燃料体が、2枚の前記カソードの間に挿入され、
前記カソードは前記電解液には浸されずに、前記電解液保持材が前記電解液に浸されて、当該電解液保持材が前記電解液を含浸することで電池反応を開始する、
ことを特徴とする。
0009
また、前記マグネシウム空気電池は、
前記マグネシウム燃料体が、前記電解液の水面に対して斜めに傾けて設置されてもよい。
0011
前記マグネシウム空気電池を複数備え、
それぞれが直列に接続され、
前記カソードは前記電解液に浸されず、前記電解液保持部および前記マグネシウム燃料体が当該電解液に浸されて、
直列に接続された複数の前記マグネシウム空気電池が、1つの前記電解液槽を共用することを特徴とする。
発明の効果
0014
本発明によれば、簡単な構造により負極に形成される酸化被膜による電流の低下を抑制したマグネシウム燃料体、および、そのマグネシウム燃料体を備えるマグネシウム空気電池、を提供できる。
図面の簡単な説明
0015
マグネシウム燃料体100の概略構成を示す側面図である。
マグネシウム燃料体100を上から見た概略構成を示す平面図である。
マグネシウム空気電池200の概略構成を示す側面断面図である。
接続端子205の一例を示す斜視図(a)および側面図(b)である。
マグネシウム空気電池200の概略構成を示す斜視図である。
3つの燃料体の形態(Case1、2、3)における電流[A]および電気容量[Wh]の変化を記録した実験結果である。
マグネシウム空気電池300の概略構成を示す斜視図(a)および側面断面図(b)である。
マグネシウム空気電池300を上からみた概略構成を示す平面図である。
容器303の概略構成を示す斜視図である。
容器303の壁面の一部の側面断面図である。
本発明のマグネシウム空気電池の一部を示す側面断面図である。
実施形態3のマグネシウム燃料体100の構成を示す斜視概略図である。
実施形態3のマグネシウム燃料体100の断面図である。
実施形態3のマグネシウム燃料体100の断面図である。
実施例
0016
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳細に説明する。
0017
(実施形態1)
図1(a)、(b)は、本発明の第一の観点に係るマグネシウム燃料体の概略構成を示す側面図である。マグネシウム燃料体100は、マグネシウム薄板101、導通板103、とで構成され、マグネシウム空気電池の燃料として機能する。
0019
導通板103は、導電性を有する素材で形成され、板状の形状を有し、外部電極が接触することにより電気を取り出す。導通板103は、例えば銅板などで形成される。導通板103は、図1(a)に示すように切れ込み102に差し込みつつ切れ込み102に合わせて折り曲げ、図1(b)に示すように、マグネシウム薄板101と導通板103とが切れ込み102の内側においてしっかりと接するように圧着する。このとき、導通板103は、上から、あるいは左右からしっかり圧力を加えてマグネシウム薄板101の切れ込み102の内側と導通板103の折り曲げたところがしっかりと隙間なく接触させることにより、外部からの接触電極でも酸化被膜による抵抗がほとんどなく導通する。これを上から見た平面図が図2である。
0020
このように、マグネシウム燃料体100は、導通板103を切れ込み102に差し込んで、強く圧着し、この導通板103に外部電極を接触させ接触電極でも酸化被膜による抵抗がほとんどなく導通する。
0021
次に、マグネシウム燃料体100を燃料として使用するマグネシウム空気電池200について説明する。
0022
マグネシウム空気電池200は、電解液保持材201と、カソード202と、電解液203と、電解液槽204と、接続端子205と、を備え、マグネシウム燃料体100を燃料として起電力を生じる。
0023
図3は、マグネシウム空気電池200の概略構成を示す側面断面図である。(ただし、接続端子205は省略している。)電解液保持材201は、液体を保持する吸水性の高い材質で形成される。電解液保持材201は、電解液203を含水して保持する。それと同時に、電池反応後に形成される反応生成物(たとえば水酸化マグネシウムなど)を内部に保持することで、カソード202を保護する。電解液保持材201を形成する素材としては、例えばフェルト、不織布、炭素フェルト、ゲル等などであるが、これに限らない。電解液保持材201は、マグネシウム燃料体100を、導通板103を露出させて包み込む。
0024
電解液203は、マグネシウム燃料体100とカソード202との間のイオン交換を可能にする電解液である。電解液203は、例えば水酸化ナトリウム水溶液であるが、これに限らない。
0025
カソード202は、導電性を有する素材により形成され、マグネシウム空気電池200の正極活物質である空気中の酸素に電子を供給する。カソード202を形成する素材としては、例えば、炭素、金属、マンガン化合物、及びこれらを組み合わせたものが考えられるが、これに限らない。酸素を還元する反応を促進するため、表面積が大きく酸素を吸着しやすいことが望ましい。カソード202は、マグネシウム燃料体100を両側から挟み込むように配置される。
0026
電解液槽204は、内部に電解液203を保持し、電解液保持材201へ電解液を供給する槽状の形状を有する。電解液の供給は、電解液保持材201の吸水性により自動的に行なわれる。電解液槽204内部において電解液203は、電解液保持材201の下方に保持される。
0027
次に、接続端子205について、説明する。接続端子205は、導電性を有する素材により形成され、2枚のカソード202を接続しつつ支持し、外部との電気的な接続を行なう。接続端子205の形状の一例としては、図4の斜視図(a)および側面図(b)のようなものが考えられる。図4の接続端子205は、上部に円管部205a、下部に2つの溝205bを備える。円管部205aには中に導線を入れ周りから圧着固定し、導線は外部と電気的に接続する。外部との接続に導線を使用するのはフレキシビリティを確保するためで、これは後述する。下部の溝205bにはカソード202を挟み、これも圧着固定する。接続端子205を形成する素材としては、スズ等のやわらかく導電性の高い金属などが考えられる。
0028
次に、図5を参照して、マグネシウム燃料体100をマグネシウム空気電池200の燃料として使用する方法について説明する。図5は、マグネシウム空気電池200を構成する要素を一部分解して示した斜視図である。
0029
電解液保持材201により導通板103を残して包み込まれたマグネシウム燃料体100を、接続端子205により支持された2枚のカソード202の間に挿入する。電解液保持材201およびマグネシウム燃料体100は、下方に設置された電解液槽204内の電解液203に浸される。一方、カソード202は、電解液203には接することはない。電解液保持材201が電解液203を含浸し、毛管現象によりゆっくりと自動的かつ連続的に電解液が供給される。このとき、電解液保持材201がセパレータとして機能し、含浸している電解液203によってイオン交換を行なうことで、空気中の酸素を正極活物質とし、マグネシウム燃料体100に含まれるマグネシウムを負極活物質とする酸化還元反応が起こって起電力を生じる。接続端子205に圧着された導線およびマグネシウム燃料体100に備えられた導通板103に接続された電極により電気を取り出す。マグネシウム燃料体100は、マグネシウム空気電池200に対して容易に着脱できる構造を有することで、負極に形成される酸化被膜による電流の低下が起こることなく燃料の交換を行なうことができる。
0030
ここで、本実施形態のマグネシウム燃料体100の効果を実験結果により示す。図6は、3つの燃料体の形態(Case1、2、3)において1[V]の定電圧に設定したときの時間経過[分]に対する電流[A]の変化および電気容量[Wh]を記録した実験結果を示しており、どれも右下がりのグラフが電流値、右上がりのグラフが電気容量を示している。
0031
Case1は、切れ込みを備えていないマグネシウム薄板101に直接外部から電極を接触させて電気を取り出す形態の燃料体である。Case2は、マグネシウム薄板に穴をあけてボルトにより導線を締めることにより電気を取り出す形態の燃料体である。Case3は、実施形態1のマグネシウム燃料体100である。
0032
これらの結果を総括したのが、表1である。表1には、Case1〜Case3のそれぞれの実験開始10分後の電流[A]と、2時間後に達成した電気容量[Wh]を示している。本発明の実験結果を示すCase3が他に比較して高い電流値と電気容量を示している。Case1の場合では、実験ごとに結果が変動し、ほとんど電流が取れない場合もあったが、表1にはその中でも最も良い結果を示した。Case2の場合でも、ボルトによって導線を強く締めてはいるが、ボルトによる固定では、容易に着脱することができない。なお、本実験では、反応面積は25cm2、厚さ1mmのマグネシウムを使用しているため、この部分のマグネシウムの重量は4.35gである。Case3の場合、電流密度は0.18[A/cm2]、電気容量は1.38[Wh/g]を実現している。
0033
Case1〜Case3における電流値と電気容量
0034
以上のようにして、簡単な構造により負極に形成される酸化被膜による電流の低下を抑制したマグネシウム燃料体、および、そのマグネシウム燃料体を備えるマグネシウム空気電池、を提供できる。
0035
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1のマグネシウム空気電池200を多数接続する。
0036
マグネシウム空気電池を多数接続するとき、並列または直列に接続するが、実施形態2のマグネシウム空気電池は、直列に接続する。電池1個の出力電圧は1[V]付近であることが多く、電流は数十[A]にもなることがある。このような場合、10個を並列に接続すると数百[A]で1[V]の出力となり、これを接続する部分の抵抗は数百分の1オームよりもはるかに小さな抵抗しか許されなくなるため、接触によって電気を取ることはむずかしい。直列接続にすることで、10個で10[V]となり、数十[A]であれば、数分の1オームと、接触抵抗の条件を緩和させることができる。
0037
実施形態2のマグネシウム空気電池300の概略構成を図7の斜視図(a)および側面断面図(b)に示す。(ただし、接続端子205は後で詳細を説明するため省略している。)各構成要素は実施形態1と同様であり、詳細な説明は省略する。マグネシウム空気電池300は、マグネシウム空気電池200を多数並べて配置する。このとき、各マグネシウム空気電池200は、電池反応に空気を必要とすることから、カソード202の空気側に隙間を作るスペーサー301を備える。
0038
スペーサー301は、ある程度の厚みをもった枠状、あるいは桁状の形状を有し、カソード202どうしを近接して設置しても、電池反応に必要な空気を取り込む空間を確保することができる。スペーサー301によって得られる隙間の幅としては、数アンペア程度の場合は2〜3mmあれば十分であることが実験により分かっている。図7に示したスペーサー301は、ところどころに矩形の空間があいた枠状の形状を示しているが、一例であり、これに限らない。
0039
電解液槽204は、図7(b)に示すように、直列に接続された多数のマグネシウム空気電池200で共有する1つを備える。ところで、電解液203は導電性であり、電解液203において隣同士の電池が接触すると漏電を起こし、直列接続を実現することができないように思える。マグネシウム空気電池300は、実施形態1と同様に、電解液203にはカソード202は接することなく、電解液保持材201のみを含水させる。本発明の発明者は、電解液保持材201と、それに包まれたマグネシウム燃料体100のみが同一の電解液203に浸かっていても漏電しないことを実験により見出した。このことから、多数の燃料を直列に接続してもそれぞれを電気的に遮蔽する構造を必要とせずに共通の電解液槽を1つ配置しただけの簡単な構造にすることができる。
0040
このとき、接続端子205による直列接続は、図8のようなものが考えられる。図8は、多数のマグネシウム空気電池を直列に接続し、上からみた概略構成を示す平面図である。それぞれ、接続端子205と、隣に配置したマグネシウム空気電池200の導通板103とを導線302で接続して直列に接続する。両端に配置されたマグネシウム空気電池の接続端子205および導通板103は、外部と接続して電気を取り出す。導線を使用することで、電池どうしを密接させた配置にすることができ、全体をコンパクトにすることができる。
0042
容器303は、ふたのついた箱状の形状を有する。電池反応には空気を要するため、容器303内の電解液保持材の近傍は通気性があり水を通さない構造を備える必要がある。容器303における電解液保持材201近辺の壁面の断面図を図10に示す。容器303は、電解液保持材201近辺の内壁に、通気性があり水を通さない素材により形成されるフィルム304を備え、また、外壁には空気を取り込む通気孔305を備える。フィルム304は、例えばフッ化炭素樹脂などの素材が考えられる。通気孔305は、電池反応により発生する熱を冷却する空気を送る、あるいは吸引する空気の通り道となる穴である。図9には、小さな穴を複数あけたものを通気孔305として示しているが、形状は一例であり、これに限らない。マグネシウムの電池反応は発熱性であり、マグネシウム燃料1g当たり、約20[kJ]の発熱がある。この熱により電解液が蒸発する場合、水の蒸発の潜熱は2.4[kJ/g]であるので、この発熱が水の蒸発に使われると、マグネシウム1g当たり水8gが蒸発することとなる。これでは、非常に多くの水が必要となる。さらには、電解液は通常塩水なので、10%濃度の塩水でも、蒸発により0.8gの塩が析出する。これを防ぐには、空冷により冷やす必要がある。この通気孔304を備えることにより、多数の電池を密集して接続したときに発生する熱を外部から空冷することができる。空冷は、例えばファンなどを用いて穴を通して風を送ることにより行なうことが考えられる。
0043
空冷に必要な装置に必要な性能について考えるために、具体的な数字を用いて説明する。電池反応による発熱を、20[kJ/g]と仮定すると、100gで2000kJが2時間で発生するとすれば、1000[kJ/h]である。1mm厚のマグネシウム板が12枚直列に接続されて100gになっている場合には、マグネシウムの密度が1.74[g/cm3]とすると、1枚当たり48cm2の面積を持つので、0.18[A/cm2]の時は、電池の出力は、0.18[A/cm2]×48[cm2]×12[V]で約103[W]に相当する。一方、空気は1[kJ/kg/K]の比熱を持ち、密度は約1[kg/m3]なので、50度の温度差を想定すると、50[kJ/m3]の冷却能力がある。ここで、空気流量をX[m3/h]とすると、
50X[kJ/h]=1000[kJ/h] ・・・(1)
すなわち、1000[kJ/h]の熱を排出するには、X=20[m3/h]が必要である。市販の小型ファンは8cm×8cm開口程度のもので、32CFM(Cubic Feet per min)=55[m3/h]の能力を持ち、消費電力は12[V]×0.1[A]=1.2W程度であるので、このようなシステムには十分である。
0044
以上のようにして、簡単な構造により負極に形成される酸化被膜による電流の低下を抑制したマグネシウム燃料体、および、そのマグネシウム燃料体を備えるマグネシウム空気電池、を提供できる。
0045
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
0046
マグネシウム燃料体100における切れ込み102は、実施形態1では2つとして説明したが、複数備えることで、マグネシウム薄板101のサイズを大きくしても、マグネシウム薄板101そのものが有する抵抗による電流値の低下の影響を少なくすることができる。
0047
また、図11は、本発明のマグネシウム空気電池においてマグネシウム燃料体100とカソード202で構成された一部を示す側面からみた断面図である。実施形態1,2では、マグネシウム燃料体100は、電解液槽204に対して垂直に設置されるものとして説明したが、マグネシウム燃料体100およびカソード202を水平あるいは電解液203の水面に対して傾けてもよい。図11(a)はマグネシウム燃料体100およびカソード202を垂直に設置した場合を示し、図11(b)は斜めに傾けた場合を示している。図11(a)では、毛管現象により水が吸い上げられるが、重力が下向きにはたらくことから、ある時間内に水が到達する高さが制限されてくる。この高さは実用的な電池では、5−6cmとなっている。そのため、使用できる反応面積に高さの制限が入るために、どうしても横方向が長くなってしまう。マグネシウム燃料体100およびカソード202を水平あるいは電解液203の水面に対して傾けることで、(図11(b)参照)毛管現象による水の吸い上げの高さをそのままにしても、水が吸い上げられる距離が長くなり、マグネシウム燃料体100における反応面積を大きくすることができる。これは、実験により、たとえば水平から30度の角度にすると、高さ方向が6cmであっても、反応部分の長さは12cmとなり、2倍の出力が得られることがわかっている。
0048
(実施形態3)
図12は、実施形態3のマグネシウム燃料体100の構成を示す斜視概略図である。マグネシウム燃料体100は、実施形態1と同様に、マグネシウム薄板101と、導通板103と、で構成され、マグネシウム空気電池の燃料として機能する。導通板103は、図12の矢印が示すようにマグネシウム薄板101が備える切れ込み102に挿入される。
0049
マグネシウム薄板101は、図12に示すように、穿孔状の切れ込み102、を備える金属マグネシウムの薄板である。切れ込み102はマグネシウム薄板101を貫く穿孔であり、図2では円形状だが、形状は問わない。
0050
導通板103は、導電性を有する素材により形成され、柱状の形状、を有する。この柱状の形状の中身は、空洞あるいは管状、であってもよい。
0051
導通板103は、切れ込み102内に挿入した状態で圧縮されて使用される。図13、図14はこの様子を示したマグネシウム燃料体100の断面図であり、導通板103を挿入している状態(図13)、および圧縮後(図14)、を示す。このとき、切れ込み102の内壁と、導通板103と、が導通板103の柱状の形状が圧縮され押し広げられることによって、しっかりと隙間なく密着する。本実施形態のマグネシウム燃料体100は、この密着状態により、酸化被膜による抵抗がほとんどなく導通する。
0052
本実施形態のマグネシウム燃料体100は、実施形態1,2に示したのと同様の方法でマグネシウム空気電池の燃料として使用することができる。これについては重複するため省略する。
0053
実施形態3のマグネシウム燃料体100を使用して、電流[A]と、2時間後に達成した電気容量[Wh]を調べた実験結果は、先述した実施形態1におけるマグネシウム燃料体100の実験結果、すなわち、表1と同じであった。
0054
以上のようにして、簡単な構造により負極に形成される酸化被膜による電流の低下を抑制したマグネシウム燃料体、および、そのマグネシウム燃料体を備えるマグネシウム空気電池、を提供できる。
0055
100マグネシウム燃料体
101マグネシウム薄板
102切れ込み
103導通板
200、300マグネシウム空気電池
201電解液保持材
202カソード
203電解液
204電解液槽
205接続端子
205a円管部
205b 溝
301スペーサー
302導線
303容器
304フィルム
305 通気孔
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成