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課題

天然型IgGFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγR、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性を減少する、抗体Fc領域改変体を含むポリペプチドを提供する。

解決手段

EUナンバリング238番目アミノ酸改変と、他の特定のアミノ酸改変が組み合わされているアミノ酸配列を含む抗体Fc領域改変体を含むポリペプチドを提供する。

概要

背景

抗体は血漿中での安定性が高く、副作用も少ないことから医薬品として注目されている。中でもIgG型の抗体医薬は多数上市されており、現在も数多くの抗体医薬が開発されている(非特許文献1、および非特許文献2)。一方、第二世代の抗体医薬に適用可能な技術として様々な技術が開発されており、エフェクター機能抗原結合能薬物動態、安定性を向上させる、あるいは、免疫原性リスクを低減させる技術等が報告されている(非特許文献3)。抗体医薬は一般に投与量が非常に高いため、皮下投与製剤の作製が困難であること、製造コストが高いこと等が課題として考えられる。抗体医薬の投与量を低減させる方法として、抗体の薬物動態を向上する方法と、抗体と抗原アフィニティーを向上する方法が考えられる。

抗体の薬物動態を向上させる方法として、定常領域の人工的なアミノ酸置換が報告されている(非特許文献4、および非特許文献5)。抗原結合能、抗原中和能を増強させる技術として、アフィニティーマチレーション技術(非特許文献6)が報告されており、可変領域のCDR領域などのアミノ酸に変異を導入することで抗原への結合活性を増強することが可能である。抗原結合能の増強によりin vitroの生物活性を向上させる、あるいは投与量を低減することが可能であり、さらにin vivo(生体内)での薬効を向上させることも可能である(非特許文献7)。

一方、抗体一分子あたりが中和できる抗原量はアフィニティーに依存し、アフィニティーを強くすることで少ない抗体量で抗原を中和することが可能であり、様々な方法で抗体のアフィニティーを強くすることが可能である(非特許文献6)。さらに抗原に共有結合的に結合し、アフィニティーを無限大にすることができれば一分子の抗体で一分子の抗原(二価の場合は二抗原)を中和することが可能である。しかしながら、これまでの方法では一分子の抗体は、一分子の抗原(二価の場合は二抗原)に結合することが限界であった。一方、最近になって抗原に対してpH依存的に結合する抗原結合分子を用いることで、一分子の抗原結合分子が複数分子の抗原に結合することが可能であることが報告された(特許文献1、非特許文献8)。pH依存的抗原結合分子は、抗原に対して血漿中の中性条件下においては強く結合し、エンドソーム内の酸性条件下において抗原を解離する。さらに抗原を解離した後に当該抗原結合分子がFcRnによって血漿中にリサイクルされると再び抗原に結合することが可能であるため、一つのpH依存的抗原結合分子で複数の抗原に繰り返し結合することが可能となる。

さらに、中性条件下(pH7.4)におけるFcRn結合を増強するように改変されたpH依存的抗原結合分子は、抗原に繰り返し結合できる効果、および、血漿中から抗原を消失させる効果を有しているため、こうした抗原結合分子の投与によって血漿中から抗原を除去することが可能であることが報告された(特許文献2)。通常のIgG抗体Fc領域を含むpH依存的抗原結合分子は、中性条件下においてFcRnに対してほとんど結合が認められない。そのため、当該抗原結合分子と抗原の複合体が細胞内に取り込まれるのは、主に非特異的な取込みによると考えられる。この報告によれば、中性条件下(pH7.4)におけるFcRn結合を増強するように改変されたpH依存的抗原結合分子は、通常のIgG抗体のFc領域を含むpH依存的抗原結合分子よりも、その抗原消失をさらに加速することが可能である(特許文献2)。

抗原の血漿中滞留性は、FcRnを介したリサイクル機構を有する抗体と比較して非常に短いため、抗原は血漿中で当該リサイクル機構を有する(その結合がpH依存的でない)抗体と結合することによって、通常血漿中滞留性が長くなり、血漿中抗原濃度は上昇する。例えば、血漿中抗原が複数種類生理機能を有する場合、仮に抗体の結合によって一種類の生理活性遮断されたとしても、当該抗原の血漿中濃度が抗体の結合によって他の生理機能が病因となる症状を増悪することも考えられる。このような観点から血漿中の抗原を消失させることが好ましい場合があるところ、抗原の消失を加速する目的で上記のようなFcRnへの結合を増強するFc領域に対する改変を加える方法が報告されているが、それ以外の方法で抗原の消失を加速する方法はこれまでに報告されていない。

加えて、いくつかの抗体医薬においてはIgGとFcγRとの相互作用由来する副作用が報告されている。例えば、VEGFに対する抗体であるbevacizumabが投与された患者群では血栓塞栓症頻度が上昇することが知られている(非特許文献9)。また、CD40リガンドに対する抗体の臨床開発試験においても同様に血栓塞栓症が観察され、臨床試験中止された(非特許文献10)。血小板の細胞上には活性型FcγレセプターであるFcγRIIaが発現している(非特許文献11)が、動物モデルなどを使ったその後の研究により、投与されたいずれの抗体も血小板上のFcγRIIaに対する結合を介して血小板が凝集し、その結果血栓を形成することが示唆されている(非特許文献12、 非特許文献13)。自己免疫疾患の一つである全身性エリテマトーデスの患者においてはFcγRIIa依存的な機構によって血小板が活性化し、血小板の活性化が重症度相関すると報告されている(非特許文献14)。
また、これまでに動物モデルを用いた研究により、抗体と多価抗原免疫複合体が活性型FcγRを介してアナフィラキシー誘導することも報告されている(非特許文献15)。
加えて、活性型のFcγRを介して多価抗原と抗体の免疫複合体が取り込まれることにより、その抗原に対する抗体価の産生が高くなることが報告されている(非特許文献16、非特許文献17)。この結果は多価抗原を認識する抗体医薬品の場合、抗体医薬品自身に対する抗体が産生しやすくなる可能性を示唆している。抗体医薬品に対する抗体が産生された場合、その血中動態が悪化する、あるいは中和抗体が医薬品の効果を減弱させることが考えられる。
このように、抗体が多価抗原と結合することで免疫複合体を形成し、その複合体が活性型FcγRと相互作用することで様々な副作用を誘導することが考えられ、抗体の医薬品としての価値を減じてしまう。

概要

天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγR、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性を減少する、抗体Fc領域改変体を含むポリペプチドを提供する。EUナンバリング238番目アミノ酸改変と、他の特定のアミノ酸改変が組み合わされているアミノ酸配列を含む抗体Fc領域改変体を含むポリペプチドを提供する。なし

目的

本発明はこのような状況に鑑みて為されたものであり、その目的は、抗体のFc領域にアミノ酸改変を導入することで、抗原の消失を加速させる一方で、活性型FcγRに対する結合に由来する欠点を克服した分子を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

Fc領域のEUナンバリング238番目アミノ酸、並びに、下記の(a)〜(k)のいずれかに記載のアミノ酸改変を含むFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。(a)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸(c) Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸(d) Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸(e) Fc領域のEUナンバリング295番目のアミノ酸(f) Fc領域のEUナンバリング296番目のアミノ酸(g) Fc領域のEUナンバリング298番目のアミノ酸(h) Fc領域のEUナンバリング323番目のアミノ酸(i) Fc領域のEUナンバリング324番目のアミノ酸(j) Fc領域のEUナンバリング330番目のアミノ酸(k) (a)〜(j)から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸

請求項2

請求項1の(k)で選ばれる少なくとも2つのアミノ酸が、下記(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸の組合せである、請求項1に記載の改変体。(1)Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸及び324番目のアミノ酸(2) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸及び330番目のアミノ酸(3) Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸及び296番目のアミノ酸

請求項3

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAspであり、かつ、下記の(a)〜(k)のいずれかに記載のアミノ酸を有するFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。(a)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸がPhe(b) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がGln又はAsp(c) Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸がMet又はLeu(d) Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸がPro(e) Fc領域のEUナンバリング295番目のアミノ酸がMet又はVal、(f) Fc領域のEUナンバリング296番目のアミノ酸がGlu、His、Asn又はAsp、(g) Fc領域のEUナンバリング298番目のアミノ酸がAla又はMet、(h) Fc領域のEUナンバリング323番目のアミノ酸がIle、(i) Fc領域のEUナンバリング324番目のアミノ酸がAsn又はHis(j) Fc領域のEUナンバリング330番目のアミノ酸がHis又はTyr(k) (a)〜(j)から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸

請求項4

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAspであり、かつ、下記(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸を有するFc領域改変体。(1)Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸がMet、268番目のアミノ酸がPro、296番目のアミノ酸がGlu及び324番目のアミノ酸がHis(2) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がGln又はAsp、241番目のアミノ酸がMet、296番目のアミノ酸がGlu及び330番目のアミノ酸がHis(3) Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸がPhe、237番目のアミノ酸がGln又はAsp、241番目のアミノ酸がMet及び296番目のアミノ酸がGlu

請求項5

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸、並びに、下記の(a)〜(h)のいずれかに記載のアミノ酸改変を含むFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。(a)Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸(b)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸(c)Fc領域のEUナンバリング236番目のアミノ酸(d)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸(e)Fc領域のEUナンバリング239番目のアミノ酸(f) Fc領域のEUナンバリング265番目のアミノ酸(g) Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸(h) Fc領域のEUナンバリング297番目のアミノ酸

請求項6

前記アミノ酸改変が、下記の(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸改変の組合せである、請求項5に記載の改変体。(1)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸、297番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び396番目のアミノ酸(3) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸及び296番目のアミノ酸

請求項7

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp及び271番目のアミノ酸がGlyであり、かつ、下記の(a)〜(h)のいずれかに記載のアミノ酸を有するFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。(a)Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸がAla、His、Asn、Lys又はArg(b)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸がAla(c)Fc領域のEUナンバリング236番目のアミノ酸がGln(d)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がArg又はLys(e)Fc領域のEUナンバリング239番目のアミノ酸がLys(f) Fc領域のEUナンバリング265番目のアミノ酸がLys、Asn、Arg、Ser又はVal(g) Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸がLys、Arg又はTyr(h) Fc領域のEUナンバリング297番目のアミノ酸がAla

請求項8

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp及び271番目のアミノ酸がGlyであり、かつ、下記の(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸を含む、Fc領域改変体。(1) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がArg、268番目のアミノ酸がGlu及び271番目のアミノ酸がGly(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がAla、268番目のアミノ酸がGlu、271番目のアミノ酸がGly、296番目のアミノ酸がAsp、297番目のアミノ酸がAla、330番目のアミノ酸がArg及び396番目のアミノ酸がMet(3) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がArg、268番目のアミノ酸がPro、271番目のアミノ酸がGly及び296番目のアミノ酸がGlu

請求項9

更に、補体への結合が減少している、請求項1から8のいずれかに記載のFc領域改変体。

請求項10

補体への結合が減少しているFc領域改変体が、Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸改変、又は、Fc領域のEUナンバリング327番目、330番目及び331番目のアミノ酸改変を含む、請求項9に記載のFc領域改変体。

請求項11

Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸がAla又はGlu、若しくは、Fc領域のEUナンバリング327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSerである、請求項9に記載のFc領域改変体。

請求項12

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸のアミノ酸改変を含むFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。

請求項13

更に、下記の(a)〜(e)のいずれかに記載のアミノ酸改変を含む、請求項12に記載の改変体。(a)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸(c)Fc領域のEUナンバリング264番目のアミノ酸(d)Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸(e)Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸

請求項14

前記アミノ酸改変が、下記の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸改変の組合せである、請求項13に記載の改変体。(1)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸(3) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸(4) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸

請求項15

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSerであるFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。

請求項16

更に、下記の(a)〜(h)のいずれかに記載のアミノ酸を有する請求項15に記載の改変体。(a)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がAsp(c)Fc領域のEUナンバリング264番目のアミノ酸がIle(d)Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸がAla(e)Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸がAsp又はGlu

請求項17

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp及び271番目のアミノ酸がGlyであり、かつ、下記の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸を含む、Fc領域改変体。(1) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、268番目のアミノ酸がAsp又はGlu、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、268番目のアミノ酸がAsp、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer(3) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、267番目のアミノ酸がAla、268番目のアミノ酸がGlu、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer(4) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がAla、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer

請求項18

FcγRIIbに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の少なくとも80%を有し、FcγRIIaRに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の30%以下である、請求項1から17のいずれか一項に記載のFc領域改変体。

請求項19

天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIb に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が少なくとも0.75であり、すべての活性型FcγRに対する結合活性の比が0.2以下である、請求項1から18のいずれか一項に記載のFc領域改変体。

請求項20

更に、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIa R に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が0.1以下である、請求項19に記載のFc領域改変体。

請求項21

請求項1から20のいずれか一項に記載のFc領域改変体を含むポリペプチド。

請求項22

前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがIgG抗体である、請求項21に記載のポリペプチド。

請求項23

前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがFc融合タンパク質分子である、請求項21に記載のポリペプチド。

請求項24

請求項21から23のいずれか一項に記載のポリペプチド及び医学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物

請求項25

更に、イオン濃度の条件によって抗原に対する結合活性が変化する抗原結合ドメインを含む、請求項21に記載のポリペプチド。

請求項26

イオン濃度の条件が、カルシウムイオン濃度の条件である、請求項25に記載のポリペプチド。

請求項27

前記抗原結合ドメインが、低カルシウムイオン濃度の条件下での抗原に対する結合活性が高カルシウムイオン濃度の条件下での抗原に対する結合活性よりも低い抗原結合ドメインである、請求項26に記載のポリペプチド。

請求項28

イオン濃度の条件が、pHの条件である、請求項25から27のいずれか一項に記載のポリペプチド。

請求項29

前記抗原結合ドメインが、pH酸性域における抗原に対する結合活性がpH中性域の条件における抗原に対する結合活性よりも低い抗原結合ドメインである、請求項28に記載のポリペプチド。

請求項30

前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがIgG抗体である、請求項25から29のいずれか一項に記載のポリペプチド。

請求項31

前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがFc融合タンパク質分子である、請求項25から29のいずれか一項に記載のポリペプチド。

請求項32

請求項25から31のいずれか一項に記載のポリペプチド及び医学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。

請求項33

医薬用組成物が、請求項25から31のいずれか一項に記載のポリペプチドの抗原結合ドメインと結合する血漿中の抗原であって、当該抗原の血漿中からの消失を促進するための、請求項32に記載の医薬組成物。

請求項34

請求項25から31のいずれか一項に記載のポリペプチドの抗原結合ドメインと結合する血漿中の抗原であって、当該抗原の血漿中からの消失を促進するための該ポリペプチドの使用。

請求項35

Fc領域を含むポリペプチドにおいて、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、並びに、Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、295番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸、298番目のアミノ酸、323番目のアミノ酸、324番目のアミノ酸及び330番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、該ポリペプチドのFcγRIIbに対する結合活性が維持されつつ、すべての活性型FcγRに対する結合を低減する方法。

請求項36

Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、235番目のアミノ酸のPheへの置換、 237番目のアミノ酸のGlnへの置換、241番目のアミノ酸のMet又はLeuへの置換、268番目のアミノ酸のProへの置換、295番目のアミノ酸のMet又はValへの置換、296番目のアミノ酸のGlu、His、Asn又はAspへの置換、298番目のアミノ酸のAla又はMetへの置換、323番目のアミノ酸のIleへの置換、324番目のアミノ酸のAsn又はHisへの置換、330番目のアミノ酸のHis又はTyrへの置換である、請求項35に記載の方法。

請求項37

Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、並びに、Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、295番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸、298番目のアミノ酸、323番目のアミノ酸、324番目のアミノ酸及び330番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、改変前と比較してFcγRIIbに対する結合活性が維持されつつ、すべての活性型FcγRに対する結合が低減しているFc領域改変体を含むポリペプチドの製造方法。

請求項38

Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、235番目のアミノ酸のPheへの置換、 237番目のアミノ酸のGlnへの置換、241番目のアミノ酸のMet又はLeuへの置換、268番目のアミノ酸のProへの置換、295番目のアミノ酸のMet又はValへの置換、296番目のアミノ酸のGlu、His、Asn又はAspへの置換、298番目のアミノ酸のAla又はMetへの置換、323番目のアミノ酸のIleへの置換、324番目のアミノ酸のAsn又はHisへの置換、330番目のアミノ酸のHis又はTyrへの置換である、請求項37に記載の方法。

請求項39

Fc領域を含むポリペプチドにおいて、FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変と、全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変とを組み合わせて導入することによる、天然型IgGと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を同程度に維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性を低減する方法。

請求項40

FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変が表11に記載のアミノ酸改変である、請求項39に記載の方法。

請求項41

全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変が、Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸、235番目のアミノ酸、236番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、239番目のアミノ酸、265番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸及び297番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸の他のアミノ酸への改変である、請求項39または40に記載の方法。

請求項42

Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング234番目のアミノ酸のAla、His、Asn、Lys又はArgへの置換、235番目のアミノ酸のAlaへの置換、236番目のアミノ酸のGlnへの置換、237番目のアミノ酸のArg又はLysへの置換、239番目のアミノ酸のLysへの置換、265番目のアミノ酸のLys、Asn、Arg、Ser又はValへの置換、267番目のアミノ酸のLys、Arg又はTyrへの置換、297番目のアミノ酸のAlaへの置換である、請求項39から41のいずれか一項に記載の方法。

請求項43

FcγRIIbに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の少なくとも80%を維持し、FcγRIIaRに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の30%以下に低減する、請求項35、36、および39から42のいずれか一項に記載の方法。

請求項44

天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIbに対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が少なくとも0.75を維持し、すべての活性型FcγRに対する結合活性の比が0.2以下に低減する、請求項35、36、および39から43のいずれか一項に記載の方法。

請求項45

更に、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIa Rに対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が0.05以下に低減する、請求項44に記載の方法。

請求項46

FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変と、全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変とを組み合わせて導入することによる、天然型IgG と比較して、FcγRIIbに対する結合活性を同程度に維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が低減しているFc領域改変体を含むポリペプチドの製造方法。

請求項47

FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変が表11に記載のアミノ酸改変である、請求項46に記載の方法。

請求項48

全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変が、Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸、235番目のアミノ酸、236番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、239番目のアミノ酸、265番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸及び297番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸の他のアミノ酸への改変である、請求項46または47に記載の方法。

請求項49

Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング234番目のアミノ酸のAla、His、Asn、Lys又はArgへの置換、235番目のアミノ酸のAlaへの置換、236番目のアミノ酸のGlnへの置換、237番目のアミノ酸のArg又はLysへの置換、239番目のアミノ酸のLysへの置換、265番目のアミノ酸のLys、Asn、Arg、Ser又はValへの置換、267番目のアミノ酸のLys、Arg又はTyrへの置換、297番目のアミノ酸のAlaへの置換である、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。

請求項50

FcγRIIbに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の少なくとも80%を維持し、すべての活性型FcγRに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の30%以下に低減する、請求項37、38、および46から49のいずれか一項に記載の方法。

請求項51

天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIb に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が少なくとも0.75を維持し、すべての活性型FcγRに対する結合活性の比が0.2以下に低減する、請求項37、38、および46から50のいずれかに記載の方法。

請求項52

更に、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIa R に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が0.1以下に低減する、請求項51に記載の方法。

請求項53

更に、補体への結合を減少させる改変を組み合わせて導入する、請求項37、38、および46から52のいずれかに記載の方法。

請求項54

補体への結合を減少させる改変が、Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸改変、又は、Fc領域のEUナンバリング327番目、330番目及び331番目のアミノ酸改変である、請求項53に記載の方法。

請求項55

補体への結合を減少させる改変が、Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸のAla又はGluへの置換、若しくは、Fc領域のEUナンバリング327番目のアミノ酸のGlyへの置換、330番目のアミノ酸のSerへの置換及び331番目のアミノ酸のSerへの置換である、請求項53に記載の方法。

請求項56

Fc領域を含むポリペプチドにおいて、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸、若しくは、更に、Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、及び268番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、該ポリペプチドのFcγRIIbに対する結合活性が維持されつつ、すべての活性型FcγRに対する結合を低減する方法。

請求項57

Fc領域のアミノ酸の改変が、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、271番目のアミノ酸のGlyへの置換、327番目のアミノ酸のGlyへの置換、330番目のアミノ酸のSerへの置換、331番目のアミノ酸のSer置換、233番目のアミノ酸のAspへの置換、237番目のアミノ酸のAspへの置換、264番目のアミノ酸のIleへの置換、267番目のアミノ酸のAlaへの置換、268番目のアミノ酸のAsp又はGluへの置換である、請求項56に記載の方法。

請求項58

Fc領域を含むポリペプチドにおいて、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸、若しくは、更に、Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、及び268番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、改変前と比較してFcγRIIbに対する結合活性が維持され、すべての活性型FcγRに対する結合が低減しつつ、かつ、補体への結合が低減しているFc領域改変体を含むポリペプチドの製造方法。

請求項59

Fc領域のアミノ酸の改変が、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、271番目のアミノ酸のGlyへの置換、327番目のアミノ酸のGlyへの置換、330番目のアミノ酸のSerへの置換、331番目のアミノ酸のSer置換、233番目のアミノ酸のAspへの置換、237番目のアミノ酸のAspへの置換、264番目のアミノ酸のIleへの置換、267番目のアミノ酸のAlaへの置換、268番目のアミノ酸のAsp又はGluへの置換である、請求項58に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、抗体のFc領域アミノ酸改変を導入することで、天然型ヒトIgGのFc領域を含むポリペプチドと比較した場合に、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、特にFcγRIIa(R型)に対する結合活性を低減させることが可能なFc領域改変体、該Fc領域改変体を含むポリペプチド及び該ポリペプチドを含有する医薬組成物に関する。

背景技術

0002

抗体は血漿中での安定性が高く、副作用も少ないことから医薬品として注目されている。中でもIgG型の抗体医薬は多数上市されており、現在も数多くの抗体医薬が開発されている(非特許文献1、および非特許文献2)。一方、第二世代の抗体医薬に適用可能な技術として様々な技術が開発されており、エフェクター機能抗原結合能薬物動態、安定性を向上させる、あるいは、免疫原性リスクを低減させる技術等が報告されている(非特許文献3)。抗体医薬は一般に投与量が非常に高いため、皮下投与製剤の作製が困難であること、製造コストが高いこと等が課題として考えられる。抗体医薬の投与量を低減させる方法として、抗体の薬物動態を向上する方法と、抗体と抗原アフィニティーを向上する方法が考えられる。

0003

抗体の薬物動態を向上させる方法として、定常領域の人工的なアミノ酸置換が報告されている(非特許文献4、および非特許文献5)。抗原結合能、抗原中和能を増強させる技術として、アフィニティーマチレーション技術(非特許文献6)が報告されており、可変領域のCDR領域などのアミノ酸に変異を導入することで抗原への結合活性を増強することが可能である。抗原結合能の増強によりin vitroの生物活性を向上させる、あるいは投与量を低減することが可能であり、さらにin vivo(生体内)での薬効を向上させることも可能である(非特許文献7)。

0004

一方、抗体一分子あたりが中和できる抗原量はアフィニティーに依存し、アフィニティーを強くすることで少ない抗体量で抗原を中和することが可能であり、様々な方法で抗体のアフィニティーを強くすることが可能である(非特許文献6)。さらに抗原に共有結合的に結合し、アフィニティーを無限大にすることができれば一分子の抗体で一分子の抗原(二価の場合は二抗原)を中和することが可能である。しかしながら、これまでの方法では一分子の抗体は、一分子の抗原(二価の場合は二抗原)に結合することが限界であった。一方、最近になって抗原に対してpH依存的に結合する抗原結合分子を用いることで、一分子の抗原結合分子が複数分子の抗原に結合することが可能であることが報告された(特許文献1、非特許文献8)。pH依存的抗原結合分子は、抗原に対して血漿中の中性条件下においては強く結合し、エンドソーム内の酸性条件下において抗原を解離する。さらに抗原を解離した後に当該抗原結合分子がFcRnによって血漿中にリサイクルされると再び抗原に結合することが可能であるため、一つのpH依存的抗原結合分子で複数の抗原に繰り返し結合することが可能となる。

0005

さらに、中性条件下(pH7.4)におけるFcRn結合を増強するように改変されたpH依存的抗原結合分子は、抗原に繰り返し結合できる効果、および、血漿中から抗原を消失させる効果を有しているため、こうした抗原結合分子の投与によって血漿中から抗原を除去することが可能であることが報告された(特許文献2)。通常のIgG抗体のFc領域を含むpH依存的抗原結合分子は、中性条件下においてFcRnに対してほとんど結合が認められない。そのため、当該抗原結合分子と抗原の複合体が細胞内に取り込まれるのは、主に非特異的な取込みによると考えられる。この報告によれば、中性条件下(pH7.4)におけるFcRn結合を増強するように改変されたpH依存的抗原結合分子は、通常のIgG抗体のFc領域を含むpH依存的抗原結合分子よりも、その抗原消失をさらに加速することが可能である(特許文献2)。

0006

抗原の血漿中滞留性は、FcRnを介したリサイクル機構を有する抗体と比較して非常に短いため、抗原は血漿中で当該リサイクル機構を有する(その結合がpH依存的でない)抗体と結合することによって、通常血漿中滞留性が長くなり、血漿中抗原濃度は上昇する。例えば、血漿中抗原が複数種類生理機能を有する場合、仮に抗体の結合によって一種類の生理活性遮断されたとしても、当該抗原の血漿中濃度が抗体の結合によって他の生理機能が病因となる症状を増悪することも考えられる。このような観点から血漿中の抗原を消失させることが好ましい場合があるところ、抗原の消失を加速する目的で上記のようなFcRnへの結合を増強するFc領域に対する改変を加える方法が報告されているが、それ以外の方法で抗原の消失を加速する方法はこれまでに報告されていない。

0007

加えて、いくつかの抗体医薬においてはIgGとFcγRとの相互作用由来する副作用が報告されている。例えば、VEGFに対する抗体であるbevacizumabが投与された患者群では血栓塞栓症頻度が上昇することが知られている(非特許文献9)。また、CD40リガンドに対する抗体の臨床開発試験においても同様に血栓塞栓症が観察され、臨床試験中止された(非特許文献10)。血小板の細胞上には活性型FcγレセプターであるFcγRIIaが発現している(非特許文献11)が、動物モデルなどを使ったその後の研究により、投与されたいずれの抗体も血小板上のFcγRIIaに対する結合を介して血小板が凝集し、その結果血栓を形成することが示唆されている(非特許文献12、 非特許文献13)。自己免疫疾患の一つである全身性エリテマトーデスの患者においてはFcγRIIa依存的な機構によって血小板が活性化し、血小板の活性化が重症度相関すると報告されている(非特許文献14)。
また、これまでに動物モデルを用いた研究により、抗体と多価抗原免疫複合体が活性型FcγRを介してアナフィラキシー誘導することも報告されている(非特許文献15)。
加えて、活性型のFcγRを介して多価抗原と抗体の免疫複合体が取り込まれることにより、その抗原に対する抗体価の産生が高くなることが報告されている(非特許文献16、非特許文献17)。この結果は多価抗原を認識する抗体医薬品の場合、抗体医薬品自身に対する抗体が産生しやすくなる可能性を示唆している。抗体医薬品に対する抗体が産生された場合、その血中動態が悪化する、あるいは中和抗体が医薬品の効果を減弱させることが考えられる。
このように、抗体が多価抗原と結合することで免疫複合体を形成し、その複合体が活性型FcγRと相互作用することで様々な副作用を誘導することが考えられ、抗体の医薬品としての価値を減じてしまう。

0008

国際公開第WO2009/125825号
国際公開第WO2011/122011号

先行技術

0009

Monoclonal antibody successes in the clinic, Janice M Reichert, Clark J Rosensweig, Laura B Faden & Matthew C Dewitz, Nat. Biotechnol. (2005) 23, 1073 - 1078
Pavlou AK, Belsey MJ., The therapeutic antibodies market to 2008., Eur. J. Pharm. Biopharm. (2005) 59 (3), 389-396
Kim SJ, Park Y, Hong HJ., Antibody engineering for the development of therapeutic antibodies., Mol. Cells. (2005) 20 (1), 17-29
Hinton PR, Xiong JM, Johlfs MG, TangMT, Keller S, Tsurushita N, J. Immunol. (2006) 176 (1), 346-356
Ghetie V, Popov S, Borvak J, Radu C, Matesoi D, Medesan C, Ober RJ, WardES., Nat. Biotechnol. (1997) 15 (7), 637-640
Rajpal A, Beyaz N, Haber L, Cappuccilli G, Yee H, BhattRR, Takeuchi T, Lerner RA, Crea R., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. (2005) 102 (24), 8466-8471
Wu H, Pfarr DS, Johnson S, Brewah YA, WoodsRM, Patel NK, White WI, Young JF, Kiener PA., J. Mol. Biol. (2007) 368, 652-665
Igawa T, et al., Nat. Biotechnol. (2010) 28, 1203-1207
ScappaticciFA, Skillings JR, Holden SN, Gerber HP, Miller K, Kabbinavar F, Bergsland E, Ngai J, Holmgren E, Wang J, Hurwitz H., Arterial thromboembolic events in patients with metastatic carcinoma treated with chemotherapy and bevacizumab., J. Natl. Cancer Inst. (2007) 99 (16), 1232-1239
Boumpas DT, Furie R, Manzi S, Illei GG, Wallace DJ, Balow JE, Vaishnaw A, A short course of BG9588 (anti-CD40 ligand antibody) improves serologic activity and decreases hematuria in patients with proliferative lupus glomerulonephritis., Arthritis. Rheum. (2003) 48 (3), 719-727.
Mackay M, Stanevsky A, Wang T, Aranow C, Li M, Koenig S, Ravetch JV, Diamond B., Selective dysregulation of the FcgammaIIB receptor on memory B cells inSLE., J. Exp. Med. (2006) 203 (9), 2157-2164
Meyer T, Robles-Carrillo L, Robson T, Langer F, Desai H, Davila M, Amaya M, Francis JL, Amirkhosravi A., Bevacizumab immune complexes activate platelets and induce thrombosis in FCGR2A transgenic mice., J. Thromb. Haemost. (2009) 7 (1), 171-181
Robles-Carrillo L, Meyer T, Hatfield M, Desai H, Davila M, Langer F, Amaya M, Garber E, Francis JL, Hsu YM, Amirkhosravi A., Anti-CD40L immune complexes potently activate platelets in vitro and cause thrombosis in FCGR2A transgenic mice., J. Immunol. (2010) 185 (3), 1577-1583
Duffau P, Seneschal J, Nicco C, Richez C, Lazaro E, Douchet I, Bordes C, Viallard JF, Goulvestre C, Pellegrin JL, Weil B, Moreau JF, Batteux F, Blanco P., Platelet CD154 potentiates interferon-alpha secretion by plasmacytoid dendritic cells in systemic lupus erythematosus., Sci. Transl. Med. (2010) 2 (47), 47-63
Bruhns P., Properties of mouse and humanIgGreceptors and their contribution to disease models. Blood. (2012) 119, 5640-9.
Hjelm F, Carlsson F, Getahun A, Heyman B., Antibody-mediated regulation of the immune response. Scand J Immunol. (2006) 64(3), 177-84.
Wernersson S, Karlsson MC, Dahlstrom J, Mattsson R, Verbeek JS, Heyman B., IgG-mediated enhancement of antibody responses is low in Fc receptor gamma chain-deficient mice and increased in Fc gammaRII-deficient mice. J Immunol. (1999) 163, 618-22.

発明が解決しようとする課題

0010

本発明はこのような状況に鑑みて為されたものであり、その目的は、抗体のFc領域にアミノ酸改変を導入することで、抗原の消失を加速させる一方で、活性型FcγRに対する結合に由来する欠点を克服した分子を提供することにある。すなわち、天然型IgG抗体のFc領域を含むポリペプチドと比較した場合に、FcγRIIbに対する結合活性は維持されているが、すべての活性型FcγRに対する結合活性、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性を低減させることが可能なFc領域改変体、該Fc領域改変体を含むポリペプチド及び該ポリペプチドを含有する医薬組成物を提供することにある。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、Fc領域にアミノ酸改変を導入することで、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較した場合に、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγR、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性を低減させることが可能なFc領域改変体、当該Fc領域改変体を含むポリペプチドについて鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸が改変されているFc領域改変体に、他のアミノ酸改変を組み合わせることで、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、特にFcγRIIa(R型)に対する結合活性を低減させることが可能となることを見出した。

0012

すなわち本発明は、以下に関する。
〔1〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、並びに、下記の(a)〜(k)のいずれかに記載のアミノ酸改変を含むFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。
(a)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸
(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸
(c) Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸
(d) Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸
(e) Fc領域のEUナンバリング295番目のアミノ酸
(f) Fc領域のEUナンバリング296番目のアミノ酸
(g) Fc領域のEUナンバリング298番目のアミノ酸
(h) Fc領域のEUナンバリング323番目のアミノ酸
(i) Fc領域のEUナンバリング324番目のアミノ酸
(j) Fc領域のEUナンバリング330番目のアミノ酸
(k) (a)〜(j)から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸
〔2〕前記〔1〕の(k)で選ばれる少なくとも2つのアミノ酸が、下記(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸の組合せである、前記〔1〕に記載の改変体。
(1)Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸及び324番目のアミノ酸
(2) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸及び330番目のアミノ酸
(3) Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸及び296番目のアミノ酸
〔3〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAspであり、かつ、下記の(a)〜(k)のいずれかに記載のアミノ酸を有するFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。
(a)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸がPhe
(b) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がGln又はAsp
(c) Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸がMet又はLeu
(d) Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸がPro
(e) Fc領域のEUナンバリング295番目のアミノ酸がMet又はVal、
(f) Fc領域のEUナンバリング296番目のアミノ酸がGlu、His、Asn又はAsp、
(g) Fc領域のEUナンバリング298番目のアミノ酸がAla又はMet、
(h) Fc領域のEUナンバリング323番目のアミノ酸がIle、
(i) Fc領域のEUナンバリング324番目のアミノ酸がAsn又はHis
(j) Fc領域のEUナンバリング330番目のアミノ酸がHis又はTyr
(k) (a)〜(j)から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸
〔4〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAspであり、かつ、下記(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸を有するFc領域改変体。
(1)Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸がMet、268番目のアミノ酸がPro、296番目のアミノ酸がGlu及び324番目のアミノ酸がHis
(2) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がGln又はAsp、241番目のアミノ酸がMet、296番目のアミノ酸がGlu及び330番目のアミノ酸がHis
(3) Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸がPhe、237番目のアミノ酸がGln又はAsp、241番目のアミノ酸がMet及び296番目のアミノ酸がGlu
〔5〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸、並びに、下記の(a)〜(h)のいずれかに記載のアミノ酸改変を含むFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。
(a)Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸
(b)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸
(c)Fc領域のEUナンバリング236番目のアミノ酸
(d)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸
(e)Fc領域のEUナンバリング239番目のアミノ酸
(f) Fc領域のEUナンバリング265番目のアミノ酸
(g) Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸
(h) Fc領域のEUナンバリング297番目のアミノ酸
〔6〕前記アミノ酸改変が、下記の(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸改変の組合せである、前記〔5〕に記載の改変体。
(1) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸、297番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び396番目のアミノ酸
(3) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸及び296番目のアミノ酸
〔7〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp及び271番目のアミノ酸がGlyであり、かつ、下記の(a)〜(h)のいずれかに記載のアミノ酸を有するFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。
(a)Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸がAla、His、Asn、Lys又はArg
(b)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸がAla
(c)Fc領域のEUナンバリング236番目のアミノ酸がGln
(d)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がArg又はLys
(e)Fc領域のEUナンバリング239番目のアミノ酸がLys
(f) Fc領域のEUナンバリング265番目のアミノ酸がLys、Asn、Arg、Ser又はVal
(g) Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸がLys、Arg又はTyr
(h) Fc領域のEUナンバリング297番目のアミノ酸がAla
〔8〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp及び271番目のアミノ酸がGlyであり、かつ、下記の(1)〜(3)のいずれかに記載のアミノ酸を含む、Fc領域改変体。
(1) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がArg、268番目のアミノ酸がGlu及び271番目のアミノ酸がGly
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がAla、268番目のアミノ酸がGlu、271番目のアミノ酸がGly、296番目のアミノ酸がAsp、297番目のアミノ酸がAla、330番目のアミノ酸がArg及び396番目のアミノ酸がMet
(3) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がArg、268番目のアミノ酸がPro、271番目のアミノ酸がGly及び296番目のアミノ酸がGlu
〔9〕更に、補体への結合が減少している、前記〔1〕から〔8〕のいずれかに記載のFc領域改変体。
〔10〕補体への結合が減少しているFc領域改変体が、Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸改変、又は、Fc領域のEUナンバリング327番目、330番目及び331番目のアミノ酸改変を含む、前記〔9〕に記載のFc領域改変体。
〔11〕Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸がAla又はGlu、若しくは、Fc領域のEUナンバリング327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSerである、前記〔9〕に記載のFc領域改変体。
〔12〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸のアミノ酸改変を含むFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。
〔13〕更に、下記の(a)〜(e)のいずれかに記載のアミノ酸改変を含む、前記〔12〕に記載の改変体。
(a)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸
(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸
(c)Fc領域のEUナンバリング264番目のアミノ酸
(d)Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸
(e)Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸
〔14〕前記アミノ酸改変が、下記の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸改変の組合せである、前記〔13〕に記載の改変体。
(1) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸
(3) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸
(4) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸
〔15〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSerであるFc領域改変体であって、天然型IgGのFc領域と比較した場合に、該改変体のFcγRIIbに対する結合活性が維持され、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少している、改変体。
〔16〕更に、下記の(a)〜(h)のいずれかに記載のアミノ酸を有する前記〔15〕に記載の改変体。
(a)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp
(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がAsp
(c)Fc領域のEUナンバリング264番目のアミノ酸がIle
(d)Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸がAla
(e)Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸がAsp又はGlu
〔17〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp及び271番目のアミノ酸がGlyであり、かつ、下記の(1)〜(4)のいずれかに記載のアミノ酸を含む、Fc領域改変体。
(1) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、268番目のアミノ酸がAsp又はGlu、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、268番目のアミノ酸がAsp、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
(3) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、267番目のアミノ酸がAla、268番目のアミノ酸がGlu、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
(4) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がAla、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
〔18〕FcγRIIbに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の少なくとも80%を有し、FcγRIIaRに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の30%以下である、前記〔1〕から〔17〕のいずれかに記載のFc領域改変体。
〔19〕天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIb に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が少なくとも0.75であり、すべての活性型FcγRに対する結合活性の比が0.2以下である、前記〔1〕から〔18〕のいずれかに記載のFc領域改変体。
〔20〕更に、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIa R に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が0.1以下である、前記〔19〕に記載のFc領域改変体。
〔21〕前記〔1〕から〔20〕のいずれかに記載のFc領域改変体を含むポリペプチド。
〔22〕前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがIgG抗体である、前記〔21〕に記載のポリペプチド。
〔23〕前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがFc融合タンパク質分子である、前記〔21〕に記載のポリペプチド。
〔24〕前記〔21〕から〔23〕のいずれかに記載のポリペプチド及び医学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
〔25〕更に、イオン濃度の条件によって抗原に対する結合活性が変化する抗原結合ドメインを含む、前記〔21〕に記載のポリペプチド。
〔26〕イオン濃度の条件が、カルシウムイオン濃度の条件である、前記〔25〕に記載のポリペプチド。
〔27〕前記抗原結合ドメインが、低カルシウムイオン濃度の条件下での抗原に対する結合活性が高カルシウムイオン濃度の条件下での抗原に対する結合活性よりも低い抗原結合ドメインである、前記〔26〕に記載のポリペプチド。
〔28〕イオン濃度の条件が、pHの条件である、前記〔25〕から〔27〕のいずれかに記載のポリペプチド。
〔29〕前記抗原結合ドメインが、pH酸性域における抗原に対する結合活性がpH中性域の条件における抗原に対する結合活性よりも低い抗原結合ドメインである、前記〔28〕に記載のポリペプチド。
〔30〕前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがIgG抗体である、前記〔25〕から〔29〕のいずれかに記載のポリペプチド。
〔31〕前記Fc領域改変体を含むポリペプチドがFc融合タンパク質分子である、前記〔25〕から〔29〕のいずれかに記載のポリペプチド。
〔32〕前記〔25〕から〔31〕のいずれかに記載のポリペプチド及び医学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物。
〔33〕医薬用組成物が、前記〔25〕から〔31〕のいずれかに記載のポリペプチドの抗原結合ドメインと結合する血漿中の抗原であって、当該抗原の血漿中からの消失を促進するための、前記〔32〕に記載の医薬組成物。
〔34〕前記〔25〕から〔31〕のいずれかに記載のポリペプチドの抗原結合ドメインと結合する血漿中の抗原であって、当該抗原の血漿中からの消失を促進するための該ポリペプチドの使用。
〔35〕Fc領域を含むポリペプチドにおいて、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、並びに、Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、295番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸、298番目のアミノ酸、323番目のアミノ酸、324番目のアミノ酸及び330番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、該ポリペプチドのFcγRIIbに対する結合活性が維持されつつ、すべての活性型FcγRに対する結合を低減する方法。
〔36〕Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、235番目のアミノ酸のPheへの置換、 237番目のアミノ酸のGlnへの置換、241番目のアミノ酸のMet又はLeuへの置換、268番目のアミノ酸のProへの置換、295番目のアミノ酸のMet又はValへの置換、296番目のアミノ酸のGlu、His、Asn又はAspへの置換、298番目のアミノ酸のAla又はMetへの置換、323番目のアミノ酸のIleへの置換、324番目のアミノ酸のAsn又はHisへの置換、330番目のアミノ酸のHis又はTyrへの置換である、前記〔35〕に記載の方法。
〔37〕Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、並びに、Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、295番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸、298番目のアミノ酸、323番目のアミノ酸、324番目のアミノ酸及び330番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、改変前と比較してFcγRIIbに対する結合活性が維持されつつ、すべての活性型FcγRに対する結合が低減しているFc領域改変体を含むポリペプチドの製造方法。
〔38〕Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、235番目のアミノ酸のPheへの置換、 237番目のアミノ酸のGlnへの置換、241番目のアミノ酸のMet又はLeuへの置換、268番目のアミノ酸のProへの置換、295番目のアミノ酸のMet又はValへの置換、296番目のアミノ酸のGlu、His、Asn又はAspへの置換、298番目のアミノ酸のAla又はMetへの置換、323番目のアミノ酸のIleへの置換、324番目のアミノ酸のAsn又はHisへの置換、330番目のアミノ酸のHis又はTyrへの置換である、前記〔37〕に記載の方法。
〔39〕Fc領域を含むポリペプチドにおいて、FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変と、全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変とを組み合わせて導入することによる、天然型IgGと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を同程度に維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性を低減する方法。
〔40〕FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変が表11に記載のアミノ酸改変である、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変が、Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸、235番目のアミノ酸、236番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、239番目のアミノ酸、265番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸及び297番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸の他のアミノ酸への改変である、前記〔39〕または〔40〕に記載の方法。
〔42〕Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング234番目のアミノ酸のAla、His、Asn、Lys又はArgへの置換、235番目のアミノ酸のAlaへの置換、236番目のアミノ酸のGlnへの置換、237番目のアミノ酸のArg又はLysへの置換、239番目のアミノ酸のLysへの置換、265番目のアミノ酸のLys、Asn、Arg、Ser又はValへの置換、267番目のアミノ酸のLys、Arg又はTyrへの置換、297番目のアミノ酸のAlaへの置換である、前記〔39〕から〔41〕のいずれかに記載の方法。
〔43〕FcγRIIbに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の少なくとも80%を維持し、FcγRIIaRに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の30%以下に低減する、前記〔35〕、〔36〕、および〔39〕から〔42〕のいずれかに記載の方法。
〔44〕天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIbに対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が少なくとも0.75を維持し、すべての活性型FcγRに対する結合活性の比が0.2以下に低減する、前記〔35〕、〔36〕、および〔39〕から〔43〕のいずれかに記載の方法。
〔45〕更に、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIa Rに対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が0.05以下に低減する、前記〔44〕に記載の方法。
〔46〕FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変と、全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変とを組み合わせて導入することによる、天然型IgG と比較して、FcγRIIbに対する結合活性を同程度に維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が低減しているFc領域改変体を含むポリペプチドの製造方法。
〔47〕FcγRIIbに対する結合活性が天然型IgGのFc領域と比較して2倍以上となるアミノ酸改変が表11に記載のアミノ酸改変である、前記〔46〕に記載の方法。
〔48〕全てのFcγRに対する結合活性を低減させるアミノ酸改変が、Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸、235番目のアミノ酸、236番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、239番目のアミノ酸、265番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸及び297番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸の他のアミノ酸への改変である、前記〔46〕または〔47〕に記載の方法。
〔49〕Fc領域のアミノ酸の改変が、EUナンバリング234番目のアミノ酸のAla、His、Asn、Lys又はArgへの置換、235番目のアミノ酸のAlaへの置換、236番目のアミノ酸のGlnへの置換、237番目のアミノ酸のArg又はLysへの置換、239番目のアミノ酸のLysへの置換、265番目のアミノ酸のLys、Asn、Arg、Ser又はValへの置換、267番目のアミノ酸のLys、Arg又はTyrへの置換、297番目のアミノ酸のAlaへの置換である、前記〔46〕から〔48〕のいずれかに記載の方法。
〔50〕FcγRIIbに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の少なくとも80%を維持し、すべての活性型FcγRに対する結合活性が、天然型IgGのFc領域の結合量の30%以下に低減する、前記〔37〕、〔38〕、および〔46〕から〔49〕のいずれかに記載の方法。
〔51〕天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIb に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が少なくとも0.75を維持し、すべての活性型FcγRに対する結合活性の比が0.2以下に低減する、前記〔37〕、〔38〕、および〔46〕から〔50〕のいずれかに記載の方法。
〔52〕更に、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドのFcγRIIa R に対する結合活性と比較した相対的な結合活性の比が0.1以下に低減する、前記〔51〕に記載の方法。
〔53〕更に、補体への結合を減少させる改変を組み合わせて導入する、前記〔37〕、〔38〕、および〔46〕から〔52〕のいずれかに記載の方法。
〔54〕補体への結合を減少させる改変が、Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸改変、又は、Fc領域のEUナンバリング327番目、330番目及び331番目のアミノ酸改変である、前記〔53〕に記載の方法。
〔55〕補体への結合を減少させる改変が、Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸のAla又はGluへの置換、若しくは、Fc領域のEUナンバリング327番目のアミノ酸のGlyへの置換、330番目のアミノ酸のSerへの置換及び331番目のアミノ酸のSerへの置換である、前記〔53〕に記載の方法。
〔56〕Fc領域を含むポリペプチドにおいて、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸、若しくは、更に、Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、及び268番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、該ポリペプチドのFcγRIIbに対する結合活性が維持されつつ、すべての活性型FcγRに対する結合を低減する方法。
〔57〕Fc領域のアミノ酸の改変が、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、271番目のアミノ酸のGlyへの置換、327番目のアミノ酸のGlyへの置換、330番目のアミノ酸のSerへの置換、331番目のアミノ酸のSer置換、233番目のアミノ酸のAspへの置換、237番目のアミノ酸のAspへの置換、264番目のアミノ酸のIleへの置換、267番目のアミノ酸のAlaへの置換、268番目のアミノ酸のAsp又はGluへの置換である、前記〔56〕に記載の方法。
〔58〕Fc領域を含むポリペプチドにおいて、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸、若しくは、更に、Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、及び268番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に改変することによる、改変前と比較してFcγRIIbに対する結合活性が維持され、すべての活性型FcγRに対する結合が低減しつつ、かつ、補体への結合が低減しているFc領域改変体を含むポリペプチドの製造方法。
〔59〕Fc領域のアミノ酸の改変が、Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸のAspへの置換、271番目のアミノ酸のGlyへの置換、327番目のアミノ酸のGlyへの置換、330番目のアミノ酸のSerへの置換、331番目のアミノ酸のSer置換、233番目のアミノ酸のAspへの置換、237番目のアミノ酸のAspへの置換、264番目のアミノ酸のIleへの置換、267番目のアミノ酸のAlaへの置換、268番目のアミノ酸のAsp又はGluへの置換である、前記〔58〕に記載の方法。

0013

また本発明は、本発明のFc領域のアミノ酸改変を導入することによる、該Fc領域のFcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、かつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、特にFcγRIIa(R型)に対する結合活性を低減させる方法に関する。また、本発明のFc領域のアミノ酸改変を導入することによる、該Fc領域を含むポリペプチドに対する抗体の産生を抑制する方法に関する。
さらに本発明は、本発明のFc領域のアミノ酸改変が導入されたFc領域改変体、及び、血漿中に可溶型で存在し病因となる抗原に対して結合活性を有し、イオン濃度の条件によって当該抗原に対する結合活性が変化する抗原結合ドメインを含むポリペプチドによる、血漿中の当該抗原の消失を促進する方法に関する。また、本発明のFc領域のアミノ酸改変が導入されたFc領域改変体、及び、血漿中に可溶型で存在し病因となる抗原に対して結合活性を有し、イオン濃度の条件によって当該抗原に対する結合活性が変化する抗原結合ドメインを含むポリペプチドの、血漿中の当該抗原の消失を促進させるための使用に関する。

0014

また、本発明は、本発明のポリペプチドを含む免疫炎症性疾患治療又は予防剤に関する。また、本発明のポリペプチドを対象へ投与する工程を含む、免疫炎症性疾患の治療方法または予防方法に関する。また本発明は、本発明のポリペプチドを含む、本発明の免疫炎症性疾患の治療方法または予防方法に用いるためのキットに関する。また本発明は、本発明のポリペプチドの、免疫炎症性疾患の治療剤または予防剤の製造における使用に関する。また本発明は、本発明の免疫炎症性疾患の治療方法または予防方法に使用するための、本発明のポリペプチドに関する。

0015

また、本発明は、本発明のポリペプチドを含む、B細胞マスト細胞樹状細胞および/または好塩基球活性化抑制剤に関する。また、本発明のポリペプチドを対象へ投与する工程を含む、B細胞、マスト細胞、樹状細胞および/または好塩基球の活性化抑制方法に関する。また本発明は、本発明のポリペプチドを含む、本発明のB細胞、マスト細胞、樹状細胞および/または好塩基球の活性化抑制方法に用いるためのキットに関する。また本発明は、本発明のポリペプチドの、B細胞、マスト細胞、樹状細胞および/または好塩基球の活性化抑制剤の製造における使用に関する。また本発明は、本発明のB細胞、マスト細胞、樹状細胞および/または好塩基球の活性化抑制方法に使用するための、本発明のポリペプチドに関する。

0016

また、本発明は、本発明のポリペプチドを含む生体に必要なタンパク質欠損する疾患の治療剤に関する。また、本発明のポリペプチドを対象へ投与する工程を含む、生体に必要なタンパク質を欠損する疾患の治療方法に関する。また本発明は、本発明のポリペプチドを含む、本発明の生体に必要なタンパク質を欠損する疾患の治療方法に用いるためのキットに関する。また本発明は、本発明のポリペプチドの、生体に必要なタンパク質を欠損する疾患の治療剤の製造における使用に関する。また本発明は、本発明の生体に必要なタンパク質を欠損する疾患の治療方法に使用するための、本発明のポリペプチドに関する。

0017

また、本発明は、本発明のポリペプチドを含む、ウィルス増殖抑制剤に関する。また、本発明のポリペプチドを対象へ投与する工程を含む、ウィルスの増殖抑制方法に関する。また本発明は、本発明のポリペプチドを含む、本発明のウィルスの増殖抑制方法に用いるためのキットに関する。また本発明は、本発明のポリペプチドの、ウィルスの増殖抑制剤の製造における使用に関する。また本発明は、本発明のウィルスの増殖抑制方法に使用するための、本発明のポリペプチドに関する。

発明の効果

0018

本発明によって、天然型IgGのFc領域と比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、且つ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、特にFcγRIIa(R型)に対する結合活性が低減したFc領域改変体が提供された。該Fc領域改変体を含むポリペプチドを用いることにより、FcγRIIb を介した免疫複合体を消失させる性質が天然型IgGと同程度に維持された状態で、FcγRIIbのITIMリン酸化を介した炎症性免疫反応抑制性シグナルを増強することが可能となる。また、FcγRIIbに選択的に結合する性質をFc領域に付与することにより、抗抗体の産生の抑制が可能となる可能性がある。また、活性型FcγRに対する結合を低減することにより、血小板上のFcγRIIaと免疫複合体の相互作用を介した血小板の活性化、活性型FcγRの架橋による樹状細胞の活性化を回避することが可能となる。

図面の簡単な説明

0019

ヒトIgEとpH依存的抗IgE抗体であるクローン278がpH依存的に大きな免疫複合体を形成することを確認したゲルろ過クロマトグラフィー分析の結果を示す図である。
ヒトIgE単独投与群、ヒトIgE+クローン278抗体投与群、および、ヒトIgE+クローン278抗体投与群のノーマルマウス血漿中ヒトIgEの濃度推移を示す図である。
ヒトIgE+クローン278投与群およびヒトIgE+Xolair抗体投与群のノーマルマウス血漿中抗体濃度推移を示す図である。
ヒトIgE単独投与群、ヒトIgE+278-IgG1抗体投与群、および、ヒトIgE+278-F760抗体投与群のノーマルマウス血漿中ヒトIgEの濃度推移を示す図である。
ヒトIgE+278-IgG1抗体投与群、および、ヒトIgE+278-F760抗体投与群のノーマルマウス抗体濃度推移を示す図である。
Fc改変体によるDCの活性化をIL-8の発現量を指標にして評価した結果の図である。
Fc改変体を加えた際の洗浄血小板膜表面のCD62p (p-selectin)の発現を確認した図である。実線は5c8-F648を添加しADP刺激を加えた場合、塗りつぶしは5c8-P600を添加しADP刺激を加えた場合を表す。
Fc改変体を加えた際の洗浄血小板膜表面の活性型インテグリン(PAC-1)の発現を確認した図である。実線は5c8-F648を添加しADP刺激を加えた場合、塗りつぶしは5c8-P600を添加しADP刺激を加えた場合を表す。
pH依存的結合抗体が繰り返し可溶型抗原に結合することを示す図である。(i) 抗体が可溶型抗原と結合する、(ii) 非特異的に、ピノサイトーシスにより細胞内へ取り込まれる、(iii)エンドソーム内で抗体はFcRnと結合し、可溶型抗原は抗体から解離する、(iv) 可溶型抗原はライソソーム移行し分解される、(v) 可溶型抗原が解離した抗体はFcRnにより血漿中にリサイクルされる、(vi) リサイクルされた抗体は、再び可溶型抗原へ結合することが可能となる。
中性条件下でFcRnへの結合を増強することによって、pH依存的結合抗体が抗原に繰り返し結合できる効果をさらに向上させることを示す図である。(i) 抗体が可溶型抗原と結合する、(ii) FcRnを介して、ピノサイトーシスにより細胞内へ取り込まれる、(iii) エンドソーム内で可溶型抗原は抗体から解離する、(iv) 可溶型抗原はライソソームに移行し分解される、(v) 可溶型抗原が解離した抗体はFcRnにより血漿中にリサイクルされる、(vi) リサイクルされた抗体は、再び可溶型抗原へ結合することが可能となる。
Biacoreを用いた抗ヒトIgA抗体のpH7.4およびpH5.8、Ca2+1.2 mM およびCa2+ 3μM におけるヒトIgAへの相互作用を示すセンサーグラムを示す図である。
ノーマルマウスにおけるGA2-IgG1およびGA2-F1087の血漿中抗体濃度推移を示した図である。
hIgA単独、GA2-IgG1およびGA2-F1087が投与されたノーマルマウスにおける血漿中hIgA濃度推移を示した図である。
Fv4-mIgG1、マウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF44、および更にマウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF46が、ノーマルマウスに投与されたときの当該マウスの血漿中のヒトIL-6レセプター濃度推移を示す図である。
Fv4-mIgG1、マウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF44、および更にマウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF46が、FcγRIII欠損マウスに投与されたときの当該マウスの血漿中のヒトIL-6レセプター濃度推移を示す図である。
Fv4-mIgG1、マウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF44、および更にマウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF46が、Fc受容体γ鎖欠損マウスに投与されたときの当該マウスの血漿中のヒトIL-6レセプター濃度推移を示す図である。
Fv4-mIgG1、マウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF44、および更にマウスFcγRIIb、マウスFcγRIIIに対する結合が増強されたFv4-mIgG1の改変体であるFv4-mIgG1-mF46が、FcγRIIb欠損マウスに投与されたときの当該マウスの血漿中のヒトIL-6レセプター濃度推移を示す図である。
IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の定常領域を構成するアミノ酸残基と、EUナンバリング(本明細書においてEU INDEXとも呼ばれる)との関係を表す図である。
単量体抗原に存在する2つ以上のエピトープを認識し大きな免疫複合体を形成するのに適切なmultispecific pH/Ca依存性抗体の、抗体1分子あたりの抗原を消失させる効率を例示する図である。

0020

本発明は、天然型IgG抗体のFc領域を含むポリペプチドと比較した場合に、FcγRIIbに対する結合活性は維持されているが、すべての活性型FcγRに対する結合活性、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性を低減させることが可能なFc領域改変体、当該Fc領域改変体を含むポリペプチドを提供する。

0021

より具体的には、EUナンバリング238番目のアミノ酸改変と、他の特定のアミノ酸改変が組み合わされているアミノ酸配列を含むFc領域改変体、及び、当該Fc領域改変体を含むポリペプチドを提供する。さらに本発明は、Fc領域に該アミノ酸改変を導入することで、天然型IgG抗体のFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性を低減する方法、及び、Fc領域に該アミノ酸改変を導入することで、天然型IgG抗体のFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性が低減されたFc領域改変体を含むポリペプチドの製造方法を提供する。またFc領域に該アミノ酸改変が導入されたFc領域改変体、及び、血漿中に可溶型で存在し病因となる抗原に対して結合活性を有し、イオン濃度の条件によって当該抗原に対する結合活性が変化する抗原結合ドメインを含むポリペプチド、当該ポリペプチドによる、血漿中の当該抗原の消失を促進する方法を提供する。

0022

本発明における「ポリペプチド」とは、通常、10アミノ酸程度以上の長さを有するペプチド、およびタンパク質を指す。また、通常、生物由来のポリペプチドであるが、特に限定されず、例えば、人工的に設計された配列からなるポリペプチドであってもよい。また、天然ポリペプチド、あるいは合成ポリペプチド組換えポリペプチド等のいずれであってもよい。

0023

本発明のポリペプチドの好ましい例として、抗体を挙げることができる。更に好ましい例として、天然型IgG、特に天然型ヒトIgGを挙げることができる。天然型IgGとは、天然に見出されるIgGと同一のアミノ酸配列を包含し、免疫グロブリンガンマ遺伝子により実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。例えば天然型ヒトIgGとは天然型ヒトIgG1、天然型ヒトIgG2、天然型ヒトIgG3、天然型ヒトIgG4などを意味する。天然型IgGにはそれから自然に生じる変異体等も含まれる。

0024

抗体の軽鎖定常領域にはIgK(Kappa、κ鎖)、IgL1、IgL2、IgL3、IgL6、IgL7 (Lambda、λ鎖)タイプの定常領域が存在しているが、いずれの軽鎖定常領域であってもよい。ヒトIgK(Kappa)定常領域とヒトIgL7 (Lambda)定常領域としては、遺伝子多型による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。さらに、本発明において軽鎖定常領域は、アミノ酸の置換、付加、欠損、挿入および/または修飾などの改変が行われた軽鎖定常領域であってもよい。抗体のFc領域としては、例えばIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgMタイプのFc領域が存在している。本発明の抗体のFc領域は、例えばヒトIgG抗体のFc領域を用いることができ、好ましくはヒトIgG1抗体のFc領域である。本発明のFc領域として、例えば、天然型IgGの定常領域、具体的には、天然型ヒトIgG1を起源とする定常領域(配列番号:31)、天然型ヒトIgG2を起源とする定常領域(配列番号:32)、天然型ヒトIgG3を起源とする定常領域(配列番号:33)、天然型ヒトIgG4を起源とする定常領域(配列番号:34)由来のFc領域を用いることができる。図18には天然型IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の定常領域の配列を示す。天然型IgGの定常領域にはそれから自然に生じる変異体等も含まれる。ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、ヒトIgG4抗体の定常領域としては、遺伝子多型による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。特にヒトIgG1の配列としては、EUナンバリング356−358番目のアミノ酸配列がDELであってもEEMであってもよい。

0025

Fcγ受容体(本明細書ではFcγレセプター、FcγRまたはFcgRと記載することがある)とは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体のFc領域に結合し得る受容体をいい、実質的にFcγ受容体遺伝子にコードされるタンパク質のファミリーのいかなるメンバーをも意味する。ヒトでは、このファミリーには、アイソフォームFcγRIa、FcγRIbおよびFcγRIcを含むFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131(H型)およびR131(R型)を含む)、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32);およびアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)を含むFcγRIII(CD16)、並びにいかなる未発見のヒトFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されるものではない。また、ヒトFcγRIIbにはスプライシングバリアントとしてFcγRIIb1とFcγRIIb2とが報告されている。また、それ以外にもFcγRIIb3というスプライシングバリアントも報告されている(J. Exp. Med, 1989, 170: 1369)。ヒトFcγRIIbにはこれのスプライシングバリアント、加えて、NCBIに登録されているNP_001002273.1、NP_001002274.1、NP_001002275.1、NP_001177757.1、NP_003992.3のスプライシングバリアントを全て含む。また、ヒトFcγRIIbには既存の報告されたあらゆる遺伝子多型を含み、FcγRIIb(Arthritis Rheum, 2003, 48: 3242-52, Hum Mol Genet, 2005, 14: 2881-92、Arthritis Rheum. 2002 May;46(5):1242-54.)も含まれ、また今後報告されるあらゆる遺伝子多型も含まれる。
FcγRは、ヒト、マウス、ラットウサギおよびサル由来のものが含まれるが、これらに限定されず、いかなる生物由来でもよい。マウスFcγR類には、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIII-2(CD16-2)、並びにいかなる未発見のマウスFcγR類またはFcγRアイソフォームまたはアロタイプも含まれるが、これらに限定されない。こうしたFcγ受容体の好適な例としてはヒトFcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16)及び/又はFcγRIIIB(CD16)が挙げられる。

0026

FcγRIのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:35(NM_000566.3)及び36(NP_000557.1)に、
FcγRIIAのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:37(BC020823.1)及び38(AAH20823.1)に、
FcγRIIBのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:39(BC146678.1)及び40(AAI46679.1)に、
FcγRIIIAのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:41(BC033678.1)及び42(AAH33678.1)に、及び
FcγRIIIBのポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:43(BC128562.1)及び44(AAI28563.1)に記載されている(カッコ内はRefSeq登録番号を示す)。

0027

尚、FcγRIIaには、FcγRIIaの131番目のアミノ酸がヒスチジン(H型)あるいはアルギニン(R型)に置換された2種類の遺伝子多型が存在する(J. Exp. Med, 172, 19-25, 1990)。
FcγRIa、FcγRIbおよびFcγRIcを含むFcγRI(CD64)ならびにアイソフォームFcγRIIIa(アロタイプV158およびF158を含む)を含むFcγRIII(CD16)は、IgGのFc部分と結合するα鎖と細胞内に活性化シグナルを伝達するITAMを有する共通γ鎖が会合する。FcγRIIIb(アロタイプFcγRIIIb-NA1およびFcγRIIIb-NA2を含む)はGPIアンカータンパク質である。一方、アイソフォームFcγRIIa(アロタイプH131およびR131を含む)およびFcγRIIcを含むFcγRII(CD32)の自身の細胞質ドメインにはITAMが含まれている。これらのレセプターは、マクロファージやマスト細胞、抗原提示細胞等の多くの免疫細胞に発現している。これらのレセプターがIgGのFc部分に結合することによって伝達される活性化シグナルによって、マクロファージの貪食能や炎症性サイトカインの産生、マスト細胞の脱顆粒、抗原提示細胞の機能亢進が促進される。上記のように活性化シグナルを伝達する能力を有するFcγレセプターは、本発明においても活性型Fcγレセプターと呼ばれる。
一方、FcγRIIb(FcγRIIb-1およびFcγRIIb-2を含む)の自身の細胞質内ドメインには抑制型シグナルを伝達するITIMが含まれている。B細胞ではFcγRIIbとB細胞レセプター(BCR)との架橋によってBCRからの活性化シグナルが抑制される結果BCRの抗体産生が抑制される。マクロファージでは、FcγRIIIとFcγRIIbとの架橋によって貪食能や炎症性サイトカインの産生能が抑制される。上記のように抑制化シグナルを伝達する能力を有するFcγレセプターは、本発明においても抑制型Fcγレセプターと呼ばれる。

0028

本発明において「Fc領域改変体」は、本発明のアミノ酸改変が導入されていないFc領域に、本発明の少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に改変されているFc領域を意味する。ここで「少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に改変されている」ことには、当該アミノ酸改変が導入されたFc領域及びそれと同一のアミノ酸配列からなるFc領域が含まれる。

0029

天然型IgGとは天然に見出されるIgGと同一のアミノ酸配列を包含し、免疫グロブリンガンマ遺伝子により実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを意味する。例えば天然型ヒトIgGとは天然型ヒトIgG1、天然型ヒトIgG2、天然型ヒトIgG3、天然型ヒトIgG4などを意味する。天然型IgGにはそれから自然に生じる変異体、FcγRに対する結合活性に実質的な影響を与えない改変が導入されたIgG等も含まれる。

0030

天然型IgGのFc領域とは、天然に見出されるIgGを起源とするFc領域と同一のアミノ酸配列を包含するFc領域を意味する。天然型IgGの重鎖定常領域は図18(配列番号:31〜34)に示しているが、例えば図18の天然型ヒトIgG1を起源とする重鎖定常領域中のFc領域、天然型ヒトIgG2を起源とする重鎖定常領域中のFc領域、天然型ヒトIgG3を起源とする重鎖定常領域中のFc領域、天然型ヒトIgG4を起源とする重鎖定常領域中のFc領域を意味する。天然型IgGのFc領域にはそれから自然に生じる変異体、FcγRに対する結合活性に実質的な影響を与えない改変が導入されたFc領域等も含まれる。

0031

本発明において、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチド又はFc領域改変体が各種FcγRに対する結合活性が増強した、あるいは、結合活性が維持あるいは減少したかどうかは、例えば本実施例又は参考実施例に示されるように、表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用した相互作用解析機器であるBIACOREを用いて、抗体をセンサーチップ上に固定化あるいはProteinA、ProteinL、ProteinA/G、ProteinG、抗lamda鎖抗体、抗kappa鎖抗体、抗原ペプチド抗原タンパク質等でキャプチャーしたセンサーチップに対して各種FcγRをアナライトとして相互作用させたセンサーグラムの解析結果から得られる解離定数(KD)の値が低下した、あるいは増加したかどうかで判断可能である。または、センサーチップ上に固定化したあるいはProteinA、ProteinL、ProteinA/G、ProteinG、抗lamda鎖抗体、抗kappa鎖抗体、抗原ペプチド、抗原タンパク質等でキャプチャーしたセンサーチップ上の抗体に対して、各種FcγRをアナライトとして相互作用させた前後でのセンサーグラム上のレゾナンスユニット(RU)値の変化量を、センサーチップに抗体を固定化又はキャプチャーさせた前後でのレゾナンスユニット(RU)の変化量で割った値が低下した、あるいは増加したかどうかでも判断可能である。また、FcγRをセンサーチップに直接固定化した、あるいは抗タグ抗体などを介して固定化したセンサーチップを使って、評価したい抗体等の試料をアナライトとして相互作用させたセンサーグラムの解析から得られる解離定数(KD)の値が低下した、あるいは増加したかどうかで判断可能である。または、FcγRをセンサーチップに直接固定化した、あるいは抗タグ抗体などを介して固定化したセンサーチップに対して評価したい抗体等の試料をアナライトとして相互作用させた前後でのセンサーグラムの値の変化量が低下した、あるいは増加したかどうかでも判断可能である。

0032

具体的には、Fc領域改変体のFcγ受容体に対する結合活性はELISAFACS(fluorescence activated cell sorting)の他、ALPHAスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)や表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用したBIACORE法等によって測定することができる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010)。

0033

ALPHAスクリーンは、ドナーアクセプターの2つのビーズを使用するALPHAテクノロジーによって下記の原理に基づいて実施される。ドナービーズに結合した分子が、アクセプタービーズに結合した分子と生物学的に相互作用し、2つのビーズが近接した状態の時にのみ、発光シグナルが検出される。レーザーによって励起されたドナービーズ内のフォトセンシタイザーは、周辺酸素励起状態一重項酸素に変換する。一重項酸素はドナービーズ周辺に拡散し、近接しているアクセプタービーズに到達するとビーズ内の化学発光反応を引き起こし、最終的に光が放出される。ドナービーズに結合した分子とアクセプタービーズに結合した分子が相互作用しないときは、ドナービーズの産生する一重項酸素がアクセプタービーズに到達しないため、化学発光反応は起きない。

0034

例えば、ドナービーズにビオチン標識されたポリペプチド会合体が結合され、アクセプタービーズにはグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)でタグ化されたFcγ受容体が結合される。競合するFc領域改変体を含むポリペプチド会合体の非存在下では、野生型Fc領域を含むポリペプチド会合体とFcγ受容体とは相互作用し520-620 nmのシグナルを生ずる。タグ化されていない変異Fc領域を含むポリペプチド会合体は、野生型Fc領域を含むポリペプチド会合体とFcγ受容体間の相互作用と競合する。競合の結果表れる蛍光の減少を定量することによって相対的な結合活性が決定され得る。抗体等のポリペプチド会合体をSulfo-NHS-ビオチン等を用いてビオチン化することは公知である。Fcγ受容体をGSTでタグ化する方法としては、Fcγ受容体をコードするポリヌクレオチドとGSTをコードするポリヌクレオチドをインフレームで融合した融合遺伝子を発現可能なベクターに保持した細胞等において発現し、グルタチオンカラムを用いて精製する方法等が適宜採用され得る。得られたシグナルは例えばGRAPHPADPRISM(GraphPad社、San Diego)等のソフトウエアを用いて非線形回帰解析を利用する一部位競合(one-site competition)モデル適合させることにより好適に解析される。

0035

相互作用を観察する物質の一方(リガンド)をセンサーチップの金薄膜上に固定し、センサーチップの裏側から金薄膜とガラス境界面で全反射するように光を当てると、反射光の一部に反射強度が低下した部分(SPRシグナル)が形成される。相互作用を観察する物質の他方(アナライト)をセンサーチップの表面に流しリガンドとアナライトが結合すると、固定化されているリガンド分子の質量が増加し、センサーチップ表面溶媒屈折率が変化する。この屈折率の変化により、SPRシグナルの位置がシフトする(逆に結合が解離するとシグナルの位置は戻る)。Biacoreシステムは上記のシフトする量、すなわちセンサーチップ表面での質量変化縦軸にとり、質量の時間変化を測定データとして表示する(センサーグラム)。センサーグラムからセンサーチップ表面に捕捉したリガンドに対するアナライトの結合量が求められる。また、センサーグラムのカーブからカイネティクス結合速度定数(ka)と解離速度定数(kd)が、当該定数の比から解離定数(KD)が求められる。BIACORE法では阻害測定法も好適に用いられる。阻害測定法の例はProc.Natl.Acad.Sci.USA (2006) 103 (11), 4005-4010において記載されている。

0036

FcγRIIbに対する結合活性が維持されたFc領域又は当該Fc領域を含むポリペプチドとは、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチド(親Fc領域を含むポリペプチド又は親ポリペプチドともいう)と、当該Fc領域に本発明のアミノ酸改変を含むポリペプチド(Fc領域改変体を含むポリペプチド)の量を本質的に同じにしてアッセイを行った時に、親ポリペプチドと本質的に変化のない、同等の結合活性でFcγRIIbと結合するものをいう。具体的には、親Fc領域を含むポリペプチドのFcgRIIbへの結合を少なくとも55.5%維持しているFc領域改変体をいう。

0037

また、活性型FcγRに対する結合活性が減少、低減、あるいは減弱したFc領域又は当該Fc領域を含むポリペプチドとは、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチド(親Fc領域を含むポリペプチド又は親ポリペプチドともいう)と、当該Fc領域に本発明のアミノ酸改変を含むポリペプチド(Fc領域改変体を含むポリペプチド)の量を本質的に同じにしてアッセイを行った時に、親Fc領域を含むポリペプチドよりも本質的により弱い結合活性で活性型FcγRと結合するFc領域改変体又は当該Fc領域改変体を含むポリペプチドをいう。
本発明のFc領域改変体が、天然型IgGのFc領域のFcγRIIbに対する結合活性を維持しているかどうかは、例えば、上記例に従って求めた、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドのFcγRIIbに対するKD値と天然型IgGのFc領域を含むポリぺプチドのFcγRIIbに対するKD値とを比較することによって判断することが可能である。具体的には、親Fc領域を含むポリペプチドに比べて本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドのKD値が同等かそれ以下の値である場合、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドは、親Fc領域改変体を含むポリペプチドに比べて、FcγRIIbに対する結合活性を維持したと判断することができる。また、本発明のFc領域改変体が、天然型IgGのFc領域の活性型FcγRに対する結合活性より減少しているかどうかについても、例えば、同様に、上記例に従って求めた、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドの活性型FcγRに対するKD値と天然型IgGのFc領域を含むポリぺプチドの活性型FcγRに対するKD値とを比較することによって判断することが可能である。具体的には、親Fc領域を含むポリペプチドに比べて本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドのKD値が増大している場合、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドは、親Fc領域改変体を含むポリペプチドに比べて、活性型FcγRに対する結合活性が減少したと判断することができる。特にFcγRIIa(R型)に対する結合活性は、他の活性型FcγRに対するものよりも、FcγRIIbに対する結合活性と相関しやすいため、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、FcγRIIa(R型)に対する結合活性を減少できるアミノ酸改変を見出すことが、FcγRIIb以外の他の活性型FcγRに対する結合活性を選択的に減少させる上で最も困難な課題である。

0038

FcγRIIbに対する結合活性が同等、あるいは維持されているとは、例えば、上記の測定法で測定したKD値において、〔親Fc領域を含むポリペプチドのFcγRIIbに対するKD値〕/〔Fc領域改変体を含むポリペプチドのFcγRIIbに対するKD値〕のKD値比が、好ましくは少なくとも0.75、より好ましくは、少なくとも0.8、さらにより好ましくは、少なくとも0.9を有する。また、当該KD値比は5程度あれば十分であり、FcγRIIbに対する結合活性が同等、あるいは維持されているというためにはそれ以上高い必要はない。

0039

活性型FcγRに対する結合活性が減少、低減、あるいは減弱とは、例えば、上記の測定法で測定したKD値において、〔親Fc領域を含むポリペプチドの活性型FcγRに対するKD値〕/〔Fc領域改変体を含むポリペプチドの活性型FcγRに対するKD値〕のKD値比が、好ましくは0.2以下、より好ましくは、0.15以下、さらにより好ましくは0.1以下である。

0040

特に、FcγRIIaは、FcγRIIbと細胞外領域の配列が93%一致し、極めて構造が類似するため、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、結合活性を減少させることが困難なFcγRIIa Rに対する結合については、〔親Fc領域を含むポリペプチドのFcγRIIa Rに対するKD値〕/〔Fc領域改変体を含むポリペプチドのFcγRIIa Rに対するKD値〕のKD値比が 0.1以下が好ましく、0.05であることがより好ましい。

0041

また本発明のポリペプチドの各種FcγRに対する結合活性が維持、増強、あるいは減少したかどうかは、上記例に従って求めた各種FcγRの本発明のポリペプチドに対する結合量の増減により判断することもできる。ここで、各種FcγRのポリペプチドに対する結合量は、各ポリペプチドに対してアナライトである各種FcγRを相互作用させた前後で変化したセンサーグラムにおけるRU値の差を、センサーチップにポリペプチドを捕捉させた前後で変化したセンサーグラムにおけるRU値の差で割った値を意味する。
また、FcγRIIbに対する選択性が向上したFc領域又は当該Fc領域を含むポリペプチドとは、あるいは活性型FcγRに対する結合活性が選択的に低減されたFc領域又は当該Fc領域を含むポリペプチドとは、FcγRIIbに対する結合活性は維持しつつも、活性型FcγRに対する結合活性が減少、低減、あるいは減弱したFc領域又は当該Fc領域を含むポリペプチドをいう。

0042

また本発明のFc領域改変体としては、FcγRIIbおよび活性型FcγRに対するKD値(mol/L)に特に制限はないが、例えばFcγRIIb に対する値が7.0×10-6以下であってよく、好ましくは6.0×10-6以下、より好ましくは5.0×10-6以下であり、活性型FcγRに対する値が2.5×10-9以上であってよく、好ましくは3.0×10-9以上、より好ましくは3.5×10-9以上、特にFcγRIIa(R型)に対する値が2.0×10-5以上であることが好ましい。

0043

「Fc領域」は、抗体分子中の、ヒンジ部若しくはその一部、CH2、CH3ドメインからなるフラグメントのことをいう。IgGクラスのFc領域は、EUナンバリング(本明細書ではEU INDEXとも呼ばれる)(図18参照)で、例えば226番目のシステインからC末端、あるいは230番目のプロリンからC末端までを意味するが、これに限定されない。

0044

Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4モノクローナル抗体等をペプシン等の蛋白質分解酵素にて部分消化した後に、プロテインAプロテインGカラムに吸着された画分を再溶出することによって好適に取得され得る。かかる蛋白分解酵素としてはpH等の酵素反応条件を適切に設定することにより制限的にFabやF(ab')2を生じるように全長抗体消化し得るものであれば特段の限定はされず、例えば、ペプシンやパパイン等が例示できる。

0045

本発明は、ヒトIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)のFc領域に対して、EUナンバリング238番目のアミノ酸の他のアミノ酸への改変と、下記の(a)〜(k)のいずれかに記載のアミノ酸の他のアミノ酸への改変を組み合わせたアミノ酸改変を含むFc領域改変体を提供する。当該改変をFc領域に導入することにより、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性が減少したFc領域改変体を含むポリペプチドを提供することが可能である。
(a)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸
(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸
(c) Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸
(d) Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸
(e) Fc領域のEUナンバリング295番目のアミノ酸
(f) Fc領域のEUナンバリング296番目のアミノ酸
(g) Fc領域のEUナンバリング298番目のアミノ酸
(h) Fc領域のEUナンバリング323番目のアミノ酸
(i) Fc領域のEUナンバリング324番目のアミノ酸
(j) Fc領域のEUナンバリング330番目のアミノ酸
(k) (a)〜(j)から選ばれる少なくとも2つのアミノ酸

0046

上記(k)で選ばれる少なくとも2つのアミノ酸の組合せとしては、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性に対する結合活性が減少するかぎり特に限定されないが、下記の(1)〜(3)の組合せが好ましい。
(1)Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸及び324番目のアミノ酸
(2) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸及び330番目のアミノ酸
(3) Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、241番目のアミノ酸及び296番目のアミノ酸

0047

改変後のアミノ酸として選択されるアミノ酸は、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較してFcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少するものであれば特に限定されないが、EUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、235番目のアミノ酸がPhe、237番目のアミノ酸がGln又はAsp、241番目のアミノ酸がMet又はLeu、268番目のアミノ酸がPro、295番目のアミノ酸がMet又はVal、296番目のアミノ酸がGlu、His、Asn又はAsp、298番目のアミノ酸がAla又はMet、323番目のアミノ酸がIle、324番目のアミノ酸がAsn又はHis、330番目のアミノ酸がHis又はTyrであることが好ましい。また、上述の(1)から(3)で改変後のアミノ酸として選択されるアミノ酸としては、
(1)Fc領域のEUナンバリング241番目のアミノ酸がMet、268番目のアミノ酸がPro、296番目のアミノ酸がGlu及び324番目のアミノ酸がHis
(2) Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がGln又はAsp、241番目のアミノ酸がMet、296番目のアミノ酸がGlu及び330番目のアミノ酸がHis
(3) Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸がPhe、237番目のアミノ酸がGln又はAsp、241番目のアミノ酸がMet及び296番目のアミノ酸がGlu
が好ましい。

0048

また、本発明は、ヒトIgGのFc領域に対して、EUナンバリング238番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸の他のアミノ酸への改変と、下記の(a)〜(h)のいずれかに記載のアミノ酸の他のアミノ酸への改変を組み合わせたアミノ酸改変を含むFc領域改変体を提供する。当該改変をFc領域に導入することにより、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性が減少したFc領域改変体を含むポリペプチドを提供することが可能である。
(a)Fc領域のEUナンバリング234番目のアミノ酸
(b)Fc領域のEUナンバリング235番目のアミノ酸
(c)Fc領域のEUナンバリング236番目のアミノ酸
(d)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸
(e)Fc領域のEUナンバリング239番目のアミノ酸
(f) Fc領域のEUナンバリング265番目のアミノ酸
(g) Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸
(h) Fc領域のEUナンバリング297番目のアミノ酸

0049

EUナンバリング238番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸の他のアミノ酸への改変と組みあわせるアミノ酸改変としては、上記(a)から(h)に記載のアミノ酸に加えてさらに別のアミノ酸を組み合わせることもできる。そのようなアミノ酸の組合せは、特に限定されないが、下記の(1)から(3)から選ばれる改変の組合せが好ましい。
(1)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、296番目のアミノ酸、297番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び396番目のアミノ酸
(3) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸及び296番目のアミノ酸

0050

改変後のアミノ酸として選択されるアミノ酸は、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較してFcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少するものであれば特に限定されないが、EUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、271番目のアミノ酸がGly、234番目のアミノ酸がAla、His、Asn、Lys又はArg、235番目のアミノ酸がAla、236番目のアミノ酸がGln、237番目のアミノ酸がArg又はLys、239番目のアミノ酸がLys、265番目のアミノ酸がLys、Asn、Arg、Ser又はVal、267番目のアミノ酸がLys、Arg又はTyr、297番目のアミノ酸がAlaであることが好ましい。

0051

また、上述の(1)から(3)で改変後のアミノ酸として選択されるアミノ酸としては、
(1)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がArg、268番目のアミノ酸がGlu及び271番目のアミノ酸がGly
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がAla、268番目のアミノ酸がGlu、271番目のアミノ酸がGly、296番目のアミノ酸がAsp、297番目のアミノ酸がAla、330番目のアミノ酸がArg及び396番目のアミノ酸がMet
(3) Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がArg、268番目のアミノ酸がPro、271番目のアミノ酸がGly及び296番目のアミノ酸がGlu
が好ましい。

0052

また、本発明は、ヒトIgGのFc領域に対して、EUナンバリング238番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸の他のアミノ酸への改変を含むFc領域改変体を提供する。当該改変体には、更に、下記の(a)〜(e)のいずれかに記載のアミノ酸の他のアミノ酸への改変を組み合わせたアミノ酸改変を含むFc領域改変体を提供する。当該改変をFc領域に導入することにより、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較して、FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性、中でもFcγRIIa(R型)に対する結合活性が減少したFc領域改変体を含むポリペプチドを提供することが可能である。
(a)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸
(b)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸
(c)Fc領域のEUナンバリング264番目のアミノ酸
(d)Fc領域のEUナンバリング267番目のアミノ酸
(e)Fc領域のEUナンバリング268番目のアミノ酸

0053

EUナンバリング238番目のアミノ酸及び271番目のアミノ酸の他のアミノ酸への改変と組みあわせるアミノ酸改変としては、上記(a)から(e)に記載のアミノ酸に加えてさらに別のアミノ酸を組み合わせることもできる。そのようなアミノ酸の組合せは、特に限定されないが、下記の(1)から(4)から選ばれる改変の組合せが好ましい。
(1)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸、237番目のアミノ酸、238番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸
(3) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、268番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸
(4) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸、264番目のアミノ酸、267番目のアミノ酸、271番目のアミノ酸、327番目のアミノ酸、330番目のアミノ酸及び331番目のアミノ酸

0054

改変後のアミノ酸として選択されるアミノ酸は、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較してFcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少するものであれば特に限定されないが、EUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer、331番目のアミノ酸がSer、233番目のアミノ酸がAsp、237番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がAla、268番目のアミノ酸がAsp又はGluであることが好ましい。

0055

また、上述の(1)から(4)で改変後のアミノ酸として選択されるアミノ酸としては、
(1)Fc領域のEUナンバリング237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、268番目のアミノ酸がAsp又はGlu、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
(2)Fc領域のEUナンバリング233番目のアミノ酸がAsp、237番目のアミノ酸がAsp、238番目のアミノ酸がAsp、268番目のアミノ酸がAsp、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
(3) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、267番目のアミノ酸がAla、268番目のアミノ酸がGlu、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
(4) Fc領域のEUナンバリング238番目のアミノ酸がAsp、264番目のアミノ酸がIle、267番目のアミノ酸がAla、271番目のアミノ酸がGly、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer及び331番目のアミノ酸がSer
が好ましい。

0056

本発明は、これらの改変に加えて、さらに別の少なくとも一つのFc領域に対する改変を加えることが可能である。FcγRIIbに対する結合活性を維持しつつ、活性型FcγRに対する結合活性を減少させるものであれば特に限定されない。
そのような改変としては、例えば、補体に対する結合活性を減少させる改変が挙げられる。具体的には、例えば、Fc領域のEUナンバリング322番目のアミノ酸改変、或いは、Fc領域のEUナンバリング327番目、330番目及び331番目のアミノ酸改変の組合せが挙げられる。改変後のアミノ酸として選択されるアミノ酸は、天然型IgGのFc領域を含むポリペプチドと比較してFcγRIIbに対する結合活性が維持され、すべての活性型FcγRに対する結合活性が減少されつつ、補体に対する結合活性を減少させるものでれば特に限定されないが、EUナンバリング322番目のアミノ酸がAla又はGlu、327番目のアミノ酸がGly、330番目のアミノ酸がSer、331番目のアミノ酸がSerであることが好ましい。

0057

本発明において、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチド又はFc領域改変体が補体に対する結合活性が減少したかどうかは、上述のFcγRに対する結合活性が減少したかどうかを確認する方法と同様の方法にて確認することができる。具体的には、例えば本実施例に示されるように、表面プラズモン共鳴(SPR)現象を利用した相互作用解析機器であるBIACOREを用いて、評価したい抗体をセンサーチップ上に固定化あるいはProteinA、ProteinL、ProteinA/G、ProteinG、抗lamda鎖抗体、抗kappa鎖抗体、抗原ペプチド、抗原タンパク質等でキャプチャーしたセンサーチップに対して、補体をアナライトとして相互作用させたセンサーグラムの解析結果から得られる解離定数(KD)の値が増加したかどうかで判断可能である。または、センサーチップ上に固定化したあるいはProteinA、ProteinL、ProteinA/G、ProteinG、抗lamda鎖抗体、抗kappa鎖抗体、抗原ペプチド、抗原タンパク質等でキャプチャーしたセンサーチップ上の評価したい抗体に対して、補体をアナライトとして相互作用させた前後でのセンサーグラム上のレゾナンスユニット(RU)値の変化量を、センサーチップに抗体を固定化又はキャプチャーさせた前後でのレゾナンスユニット(RU)の変化量で割った値が増加したかどうかでも判断可能である。また、補体をセンサーチップに直接固定化した、あるいは抗タグ抗体などを介して固定化したセンサーチップを使って、評価したい抗体等の試料をアナライトとして相互作用させたセンサーグラムの解析から得られる解離定数(KD)の値が増加したかどうかで判断可能である。または、補体をセンサーチップに直接固定化した、あるいは抗タグ抗体などを介して固定化したセンサーチップに対して評価したい抗体等の試料をアナライトとして相互作用させた前後でのセンサーグラムの値の変化量が増加したかどうかでも判断可能である。または、抗原を介して、あるいは直接評価したい抗体を固相化したプレートに対して補体を添加し、その後ペルオキシダーゼなどで標識された抗ヒトC1q抗体を加えるELISAによって結合量を評価することでも判断可能である。

0058

また本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドには他の目的で行われるアミノ酸改変を組み合わせることもできる。例えばFcRnに対する結合活性を向上させるアミノ酸置換(J Immunol. 2006 Jan 1;176(1):346-56、J Biol Chem. 2006 Aug 18;281(33):23514-24.、Int Immunol. 2006 Dec;18(12):1759-69.、Nat Biotechnol. 2010 Feb;28(2):157-9.、WO/2006/019447、WO/2006/053301、WO/2009/086320)、抗体のヘテロジェニティーや安定性を向上させるためのアミノ酸置換(WO/2009/041613)を加えてもよい。あるいは、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドに、WO2011/122011、PCT/JP2011/072550に記載の抗原の消失を促進するための性質を付与したポリペプチドや、WO2009/125825、PCT/JP2011/077619に記載の複数分子の抗原に繰り返し結合するための性質を付与したポリペプチドも本発明に含まれる。あるいは、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドに、血中滞留性を高める目的で定常領域のpIを低下させるアミノ酸改変(WO/2012/016227)を組み合わせてもよい。あるいは、本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドに、使って他の抗原に対する結合能を持たせる目的でCH3にEP1752471、EP1772465に記載のアミノ酸改変を組み合わせてもよい。

0059

本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドが、抗体のような抗原結合ドメインを含む場合には、当該ポリペプチドの血漿中からの抗原消失効果を高めるために、イオン濃度条件によって抗原に対する結合活性を変化させるためのアミノ酸改変を組み合わせることができる。

0060

本明細書において、「抗原結合ドメイン」は目的とする抗原に結合するかぎりどのような構造のドメインも使用され得る。そのようなドメインの例として、例えば、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域、生体内に存在する細胞膜タンパクであるAvimerに含まれる35アミノ酸程度のAドメインと呼ばれるモジュール(国際公開WO2004/044011、WO2005/040229)、細胞膜に発現する糖たんぱく質であるfibronectin中のタンパク質に結合するドメインである10Fn3ドメインを含むAdnectin(国際公開WO2002/032925)、ProteinAの58アミノ酸からなる3つのヘリックスの束(bundle)を構成するIgG結合ドメインをscaffoldとするAffibody(国際公開WO1995/001937)、33アミノ酸残基を含むターンと2つの逆並行ヘリックスおよびループサブユニットが繰り返し積み重なった構造を有するアンキリン反復(ankyrin repeat:AR)の分子表面に露出する領域であるDARPins(Designed Ankyrin Repeat proteins)(国際公開WO2002/020565)、好中球ゲラチナーゼ結合リポカリン(neutrophil gelatinase-associated lipocalin(NGAL))等のリポカリン分子において高度に保存された8つの逆並行ストランドが中央方向にねじれバレル構造の片側を支える4つのループ領域であるAnticalin等(国際公開WO2003/029462)、ヤツメウナギヌタウナギなど無顎類の獲得免疫システムとしてイムノグロブリンの構造を有さない可変性リンパ球受容体(variable lymphocyte receptor(VLR))のロイシン残基に富んだリピート(leucine-rich-repeat(LRR))モジュールが繰り返し積み重なったてい形の構造の内部の並行型シート構造くぼんだ領域(国際公開WO2008/016854)が好適に挙げられる。本発明の抗原結合ドメインの好適な例として、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を含む抗原結合ドメインが挙げられる。こうした抗原結合ドメインの例としては、「scFv(single chain Fv)」、「単鎖抗体(single chain antibody)」、「Fv」、「scFv2(single chain Fv 2)」、「Fab」または「F(ab')2」等が好適に挙げられる。

0061

本明細書における「イオン濃度」とは、例えば、金属イオン濃度を挙げることができる。「金属イオン」とは、水素を除くアルカリ金属および銅族等の第I族、アルカリ土類金属および亜鉛族等の第II族ホウ素を除く第III族炭素ケイ素を除く第IV族鉄族および白金族等の第VIII族、V、VIおよびVII族の各A亜族に属する元素と、アンチモンビスマスポロニウム等の金属元素イオンをいう。金属原子原子価電子を放出して陽イオンになる性質を有しており、これをイオン化傾向という。イオン化傾向の大きい金属は、化学的に活性に富むとされる。

0062

本発明で好適な金属イオンの例としてカルシウムイオンが挙げられる。カルシウムイオンは多くの生命現象の調節に関与しており、骨格筋平滑筋および心筋等の筋肉収縮白血球運動および貪食等の活性化、血小板の変形および分泌等の活性化、リンパ球の活性化、ヒスタミンの分泌等の肥満細胞の活性化、カテコールアミンα受容体アセチルコリン受容体を介する細胞の応答エキソサイトーシスニューロン終末からの伝達物質の放出、ニューロンの軸策流等にカルシウムイオンが関与している。細胞内のカルシウムイオン受容体として、複数個のカルシウムイオン結合部位を有し、分子進化上共通の起源から由来したと考えられるトロポニンC、カルモジュリンパルブアルブミンミオシン軽鎖等が知られており、その結合モチーフも数多く知られている。例えば 、カドヘリンドメイン、カルモジュリンに含まれるEFハンド、Protein kinase Cに含まれるC2ドメイン、血液凝固タンパク質FactorIXに含まれるGlaドメイン、アシアログライコプロテインレセプターやマンノース結合レセプターに含まれるC型レクチンLDL受容体に含まれるAドメイン、アネキシントロンボスポンジン3型ドメインおよびEGF様ドメインがよく知られている。

0063

本発明においては、金属イオンがカルシウムイオンの場合には、カルシウムイオン濃度の条件として低カルシウムイオン濃度の条件と高カルシウムイオン濃度の条件が挙げられる。カルシウムイオン濃度の条件によって結合活性が変化するとは、低カルシウムイオン濃度と高カルシウムイオン濃度の条件の違いによって抗原に対する抗原結合分子の結合活性が変化することをいう。例えば、低カルシウムイオン濃度の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性よりも高カルシウムイオン濃度の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性の方が高い場合が挙げられる。また、高カルシウムイオン濃度の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性よりも低カルシウムイオン濃度の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性の方が高い場合もまた挙げられる。

0064

本明細書において、高カルシウムイオン濃度とはとくに一義的な数値に限定されるわけではないが、好適には100μMから10 mMの間から選択される濃度であり得る。また、別の態様では、200μMから5 mMの間から選択される濃度でもあり得る。また、異なる態様では400μMから3 mMの間から選択される濃度でもあり得るし、ほかの態様では200μMから2 mMの間から選択される濃度でもあり得る。さらに400μMから1 mMの間から選択される濃度でもあり得る。特に生体内の血漿中(血中)でのカルシウムイオン濃度に近い500μMから2.5 mMの間から選択される濃度が好適に挙げられる。

0065

本明細書において、低カルシウムイオン濃度とはとくに一義的な数値に限定されるわけではないが、好適には0.1μMから30μMの間から選択される濃度であり得る。また、別の態様では、0.2μMから20μMの間から選択される濃度でもあり得る。また、異なる態様では0.5μMから10μMの間から選択される濃度でもあり得るし、ほかの態様では1μMから5μMの間から選択される濃度でもあり得る。さらに2μMから4μMの間から選択される濃度でもあり得る。特に生体内の早期エンドソーム内でのイオン化カルシウム濃度に近い1μMから5μMの間から選択される濃度が好適に挙げられる。

0066

本発明において、低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低いとは、抗原結合分子の0.1μMから30μMの間から選択されるカルシウムイオン濃度での抗原に対する結合活性が、100μMから10 mMの間から選択されるカルシウムイオン濃度での抗原に対する結合活性より弱いことを意味する。好ましくは、抗原結合分子の0.5μMから10μMの間から選択されるカルシウムイオン濃度での抗原に対する結合活性が、200μMから5 mMの間から選択されるカルシウムイオン濃度での抗原に対する結合活性より弱いことを意味し、特に好ましくは、生体内の早期エンドソーム内のカルシウムイオン濃度における抗原結合活性が、生体内の血漿中のカルシウムイオン濃度における抗原結合活性より弱いことを意味し、具体的には、抗原結合分子の1μMから5μMの間から選択されるカルシウムイオン濃度での抗原に対する結合活性が、500μMから2.5 mMの間から選択されるカルシウムイオン濃度での抗原に対する結合活性より弱いことを意味する。

0067

金属イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性が変化しているか否かは、例えば前記の結合活性の項で記載されたような公知の測定方法を使用することによって決定され得る。例えば、低カルシウムイオン濃度の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性よりも高カルシウムイオン濃度の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性の方が高く変化することを確認するためには、低カルシウムイオン濃度および高カルシウムイオン濃度の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性が比較される。

0068

さらに本発明において、「低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い」という表現は、抗原結合分子の高カルシウムイオン濃度条件下における抗原に対する結合活性が低カルシウムイオン濃度条件下における抗原に対する結合活性よりも高いと表現することもできる。なお本発明においては、「低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い」を「低カルシウムイオン濃度条件下における抗原結合能が高カルシウムイオン濃度条件下における抗原に対する結合能よりも弱い」と記載する場合もあり、また、「低カルシウムイオン濃度の条件における抗原結合活性を高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低下させる」を「低カルシウムイオン濃度条件下における抗原結合能を高カルシウムイオン濃度条件下における抗原に対する結合能よりも弱くする」と記載する場合もある。

0069

抗原への結合活性を測定する際のカルシウムイオン濃度以外の条件は、当業者が適宜選択することが可能であり、特に限定されない。例えば、HEPESバッファー、37℃の条件において測定することが可能である。例えば、Biacore(GE Healthcare)などを用いて測定することが可能である。抗原結合分子と抗原との結合活性の測定は、抗原が可溶型抗原である場合は、抗原結合分子を固定化したチップへ、抗原をアナライトとして流すことで可溶型抗原への結合活性を評価することが可能であり、抗原が膜型抗原である場合は、抗原を固定化したチップへ、抗原結合分子をアナライトとして流すことで膜型抗原への結合活性を評価することが可能である。

0070

本発明の抗原結合分子において、低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性よりも弱い限り、低カルシウムイオン濃度条件下における抗原に対する結合活性と高カルシウムイオン濃度条件下における抗原に対する結合活性の比は特に限定されないが、好ましくは抗原に対する低カルシウムイオン濃度の条件におけるKD(Dissociation constant:解離定数)と高カルシウムイオン濃度の条件におけるKDの比であるKD (Ca 3μM)/KD (Ca 2 mM)の値が2以上であり、さらに好ましくはKD (Ca 3μM)/KD (Ca 2 mM)の値が10以上であり、さらに好ましくはKD (Ca 3μM)/KD (Ca 2 mM)の値が40以上である。KD (Ca 3μM)/KD (Ca 2 mM)の値の上限は特に限定されず、当業者の技術において作製可能な限り、400、1000、10000等、いかなる値でもよい。

0071

抗原に対する結合活性の値として、抗原が可溶型抗原の場合はKD(解離定数)を用いることが可能であるが、抗原が膜型抗原の場合は見かけのKD(Apparent dissociation constant:見かけの解離定数)を用いることが可能である。KD(解離定数)、および、見かけのKD(見かけの解離定数)は、当業者公知の方法で測定することが可能であり、例えばBiacore(GE healthcare)、スキャッチャードプロットフローサイトメーター等を用いることが可能である。

0072

また、本発明の抗原結合分子の低カルシウム濃度の条件における抗原に対する結合活性と高カルシウム濃度の条件における抗原に対する結合活性の比を示す他の指標として、例えば、解離速度定数であるkd(Dissociation rate constant:解離速度定数)もまた好適に用いられ得る。結合活性の比を示す指標としてKD(解離定数)の代わりにkd(解離速度定数)を用いる場合、抗原に対する低カルシウム濃度の条件におけるkd(解離速度定数)と高カルシウム濃度の条件におけるkd(解離速度定数)の比であるkd(低カルシウム濃度の条件)/kd(高カルシウム濃度の条件)の値は、好ましくは2以上であり、さらに好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上であり、より好ましくは30以上である。Kd(低カルシウム濃度の条件)/kd(高カルシウム濃度の条件)の値の上限は特に限定されず、当業者の技術常識において作製可能な限り、50、100、200等、いかなる値でもよい。

0073

抗原結合活性の値として、抗原が可溶型抗原の場合はkd(解離速度定数)を用いることが可能であり、抗原が膜型抗原の場合は見かけのkd(Apparent dissociation rate constant:見かけの解離速度定数)を用いることが可能である。kd(解離速度定数)、および、見かけのkd(見かけの解離速度定数)は、当業者公知の方法で測定することが可能であり、例えばBiacore(GE healthcare)、フローサイトメーター等を用いることが可能である。なお本発明において、異なるカルシウムイオン濃度における抗原結合分子の抗原に対する結合活性を測定する際は、カルシウム濃度以外の条件は同一とすることが好ましい。

0074

例えば、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(c)を含む抗原結合ドメインまたは抗体のスクリーニングによって取得され得る。
(a) 低カルシウム濃度の条件における抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の抗原結合活性を得る工程、
(b) 高カルシウム濃度の条件における抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の抗原結合活性を得る工程、
(c) 低カルシウム濃度の条件における抗原結合活性が、高カルシウム濃度の条件における抗原結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子を選択する工程。
さらに、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(c)を含む抗原結合ドメインまたは抗原結合分子もしくはそれらのライブラリのスクリーニングによって取得され得る。
(a) 高カルシウム濃度の条件における抗原結合ドメインまたは抗原結合分子もしくはそれらのライブラリを抗原に接触させる工程、
(b) 前記工程(a)で抗原に結合した抗原結合ドメインまたは抗原結合分子を低カルシウム濃度条件下に置く工程、
(c) 前記工程(b)で解離した抗原結合ドメインまたは抗原結合分子を単離する工程。

0075

また、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(d)を含む抗原結合ドメインまたは抗原結合分子若しくはそれらのライブラリのスクリーニングによって取得され得る。
(a) 低カルシウム濃度条件下で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを抗原に接触させる工程、
(b) 前記工程(a)で抗原に結合しない抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を選択する工程、
(c) 前記工程(b)で選択された抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を高カルシウム濃度条件下で抗原に結合させる工程、
(d) 前記工程(c)で抗原に結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0076

さらに、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(c)を含むスクリーニング方法によって取得され得る。
(a) 抗原を固定したカラムに高カルシウム濃度条件下で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを接触させる工程、
(b) 前記工程(a)でカラムに結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を低カルシウム濃度条件下でカラムから溶出する工程、
(c) 前記工程(b)で溶出された抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0077

さらに、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(d)を含むスクリーニング方法によって取得され得る。
(a) 抗原を固定したカラムに低カルシウム濃度条件下で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを通過させる工程、
(b) 前記工程(a)でカラムに結合せずに溶出した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を回収する工程、
(c) 前記工程(b)で回収された抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を高カルシウム濃度条件下で抗原に結合させる工程、
(d) 前記工程(c)で抗原に結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0078

さらに、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(d)を含むスクリーニング方法によって取得され得る。
(a) 高カルシウム濃度条件下で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを抗原に接触させる工程、
(b) 前記工程(a)で抗原に結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を取得する工程、
(c) 前記工程(b)で取得した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を低カルシウム濃度条件下に置く工程、
(d) 前記工程(c)で抗原結合活性が、前記工程(b)で選択した基準より弱い抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0079

なお、前記の工程は2回以上繰り返されてもよい。従って、本発明によって、上述のスクリーニング方法において、(a)〜(c)あるいは(a)〜(d)の工程を2回以上繰り返す工程をさらに含むスクリーニング方法によって取得された低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子が提供される。(a)〜(c)あるいは(a)〜(d)の工程が繰り返される回数は特に限定されないが、通常10回以内である。

0080

上記スクリーニング方法において、低カルシウム濃度条件下における抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は、イオン化カルシウム濃度が0.1μM〜30μMの間の抗原結合活性であれば特に限定されないが、好ましいイオン化カルシウム濃度として、0.5μM〜10μMの間の抗原結合活性を挙げることができる。より好ましいイオン化カルシウム濃度として、生体内の早期エンドソーム内のイオン化カルシウム濃度が挙げられ、具体的には1μM〜5μMにおける抗原結合活性を挙げることができる。また、高カルシウム濃度条件下における抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は、イオン化カルシウム濃度が100μM〜10 mMの間の抗原結合活性であれば特に限定されないが、好ましいイオン化カルシウム濃度として200μM〜5 mMの間の抗原結合活性を挙げることができる。より好ましいイオン化カルシウム濃度として、生体内の血漿中でのイオン化カルシウム濃度を挙げることができ、具体的には0.5 mM〜2.5 mMにおける抗原結合活性を挙げることができる。

0081

また、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子をスクリーニング方法としてWO2012/073992等(例えば段落0200-0213)に記載された方法も例示され得る。

0082

抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は当業者に公知の方法により測定することが可能であり、イオン化カルシウム濃度以外の条件については当業者が適宜決定することが可能である。抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は、KD(Dissociation constant:解離定数)、見かけのKD(Apparent dissociation constant:見かけの解離定数)、解離速度であるkd(Dissociation rate:解離速度定数)、又は見かけのkd(Apparent dissociation:見かけの解離速度定数)等として評価することが可能である。これらは当業者公知の方法で測定することが可能であり、例えばBiacore(GE healthcare)、スキャッチャードプロット、FACS等を用いることが可能である。

0083

本発明において、高カルシウム濃度条件下における抗原結合活性が低カルシウム濃度条件下における抗原結合活性より高い抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を選択する工程は、低カルシウム濃度条件下における抗原結合活性が高カルシウム濃度条件下における抗原結合活性より低い抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を選択する工程と同じ意味である。

0084

高カルシウム濃度条件下における抗原結合活性が低カルシウム濃度条件下における抗原結合活性より高い限り、高カルシウム濃度条件下における抗原結合活性と低カルシウム濃度条件下における抗原結合活性の差は特に限定されないが、好ましくは高カルシウム濃度条件下における抗原結合活性が低カルシウム濃度条件下における抗原結合活性の2倍以上であり、さらに好ましくは10倍以上であり、より好ましくは40倍以上である。

0085

前記のスクリーニング方法によりスクリーニングされる本発明の抗原結合ドメイン又は抗原結合分子はいかなる抗原結合ドメイン又は抗原結合分子でもよく、例えば上述の抗原結合ドメイン又は抗原結合分子をスクリーニングすることが可能である。例えば、天然の配列を有する抗原結合ドメイン又は抗原結合分子をスクリーニングしてもよいし、アミノ酸配列が置換された抗原結合ドメイン又は抗原結合分子をスクリーニングしてもよい。

0086

例えば、本発明が提供する一つの態様である低カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性が、高カルシウムイオン濃度の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子のスクリーニング方法としてWO2012/073992等(例えば段落0200-0213)に記載された方法が例示され得る。

0087

前記のスクリーニング方法によってスクリーニングされる本発明のカルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する結合活性を変化させる抗原結合ドメインまたは抗原結合分子はどのように調製されてもよく、例えば、金属イオンがカルシウムイオン濃度である場合には、あらかじめ存在している抗原結合ドメインまたは抗原結合分子、あらかじめ存在しているライブラリ(ファージライブラリ等)、動物への免疫から得られたハイブリドーマ免疫動物からのB細胞から作製された抗体またはライブラリ、これらの抗体やライブラリにカルシウムキレート可能なアミノ酸(例えばアスパラギン酸グルタミン酸)や非天然アミノ酸変異を導入した抗体またはライブラリ(カルシウムをキレート可能なアミノ酸(例えばアスパラギン酸やグルタミン酸)または非天然アミノ酸の含有率を高くしたライブラリや特定箇所にカルシウムをキレート可能なアミノ酸(例えばアスパラギン酸やグルタミン酸)または非天然アミノ酸変異を導入したライブラリ等)などを用いることが可能である。

0088

前記のようにイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸の例として、例えば、金属イオンがカルシウムイオンである場合には、カルシウム結合モチーフを形成するアミノ酸であれば、その種類は問わない。カルシウム結合モチーフは、当業者に周知であり、詳細に記載されている(例えばSpringerら(Cell (2000) 102, 275-277)、KawasakiおよびKretsinger(Protein Prof. (1995) 2, 305-490)、Moncriefら(J. Mol. Evol. (1990) 30, 522-562)、Chauvauxら(Biochem. J. (1990) 265, 261-265)、BairochおよびCox(FEBSLett. (1990) 269, 454-456)、Davis(New Biol. (1990) 2, 410-419)、Schaeferら(Genomics (1995) 25, 638〜643)、Economouら(EMBO J. (1990) 9, 349-354)、Wurzburgら(Structure. (2006) 14, 6, 1049-1058))。すなわち、ASGPR, CD23、MBR、DC-SIGN等のC型レクチン等の任意の公知のカルシウム結合モチーフが、本発明の抗原結合分子に含まれ得る。このようなカルシウム結合モチーフの好適な例として、上記のほかには配列番号:45に記載される抗原結合ドメインに含まれるカルシウム結合モチーフも挙げられ得る。

0089

また、本発明の抗原結合分子に含まれる抗原結合ドメインのカルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する結合活性を変化させるアミノ酸の例として、金属キレート作用を有するアミノ酸も好適に用いられ得る。金属キレート作用を有するアミノ酸の例として、例えばセリン(Ser(S))、スレオニン(Thr(T))、アスパラギン(Asn(N))、グルタミン(Gln(Q))、アスパラギン酸(Asp(D))およびグルタミン酸(Glu(E))等が好適に挙げられる。

0090

前記のアミノ酸が含まれる抗原結合ドメインの位置は特定の位置に限定されず、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる限り、抗原結合ドメインを形成する重鎖可変領域または軽鎖可変領域中のいずれの位置でもあり得る。非限定な一態様では、本発明の抗原結合ドメインは、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸が重鎖の抗原結合ドメインに含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。また、非限定な別の一態様では、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸が重鎖のCDR3に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。そのほかの態様では、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸が重鎖のCDR3のKabatナンバリングで表される95位、96位、100a位および/または101位に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。

0091

また、本発明の非限定な一態様では、本発明の抗原結合ドメインは、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸が軽鎖の抗原結合ドメインに含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。また、非限定な別の一態様では、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸が軽鎖のCDR1に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。そのほかの態様では、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸が軽鎖のCDR1のKabatナンバリングで表される30位、31位および/または32位に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。

0092

また、別の非限定な一態様では、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR2に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。そのほかの非限定な一態様では、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR2のKabatナンバリングで表される50位に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリが提供される。

0093

さらに別の態様では、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR3に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。そのほかの態様では、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR3のKabatナンバリングで表される92位に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。

0094

また、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸残基が、前記に記載された軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3から選択される2つまたは3つのCDRに含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから本発明の異なる態様として取得され得る。さらに、本発明の抗原結合ドメインは、当該アミノ酸残基が軽鎖のKabatナンバリングで表される30位、31位、32位、50位および/または92位のいずれかひとつ以上に含まれている互いに配列の異なる抗原結合分子から主としてなるライブラリから取得され得る。

0095

特に好適な実施形態では、抗原結合分子の軽鎖および/または重鎖可変領域のフレームワーク配列は、ヒトの生殖細胞系フレームワーク配列を有していることが望ましい。したがって、本発明の一態様においてフレームワーク配列が完全にヒトの配列であるならば、ヒトに投与(例えば疾病の治療)された場合、本発明の抗原結合分子は免疫原性反応を殆どあるいは全く引き起こさないと考えられる。上記の意味から、本発明における「生殖細胞系列の配列を含む 」とは、本発明におけるフレームワーク配列の一部が、いずれかのヒトの生殖細胞系フレームワーク配列の一部と同一であることを意味する。例えば、本発明の抗原結合分子の重鎖FR2の配列が複数の異なるヒトの生殖細胞系フレームワーク配列の重鎖FR2配列が組み合わされた配列である場合も、本発明における「生殖細胞系列の配列を含む」抗原結合分子である。

0096

フレームワークの例としては、例えばV-Base(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)等のウェブサイトに含まれている、現在知られている完全にヒト型のフレームワーク領域の配列が好適に挙げられる。 これらのフレームワーク領域の配列が本発明の抗原結合分子に含まれる生殖細胞系列の配列として適宜使用され得る。生殖細胞系列の配列はその類似性にもとづいて分類され得る(Tomlinsonら(J. Mol. Biol. (1992) 227, 776-798)WilliamsおよびWinter(Eur. J. Immunol. (1993) 23, 1456-1461)およびCoxら(Nat. Genetics (1994) 7, 162-168))。 7つのサブグループに分類されるVκ、10のサブグループに分類されるVλ、7つのサブグループに分類されるVHから好適な生殖細胞系列の配列が適宜選択され得る。

0097

完全にヒト型のVH配列は、下記のみに限定されるものではないが、例えばVH1サブグループ(例えば、VH1-2、VH1-3、VH1-8、VH1-18、VH1-24、VH1-45、VH1-46、VH1-58、VH1-69)、VH2サブグループ(例えば、VH2-5、VH2-26、VH2-70)、VH3サブグループ(VH3-7、VH3-9、VH3-11、VH3-13、VH3-15、VH3-16、VH3-20、VH3-21、VH3-23、VH3-30、VH3-33、VH3-35、VH3-38、VH3-43、VH3-48、VH3-49、VH3-53、VH3-64、VH3-66、VH3-72、VH3-73、VH3-74)、VH4サブグループ(VH4-4、VH4-28、VH4-31、VH4-34、VH4-39、VH4-59、VH4-61)、VH5サブグループ(VH5-51)、VH6サブグループ(VH6-1)、VH7サブグループ(VH7-4、VH7-81)のVH配列等が好適に挙げられる。これらは公知文献(Matsudaら(J. Exp. Med. (1998) 188, 1973-1975))等にも記載されており、当業者はこれらの配列情報をもとに本発明の抗原結合分子を適宜設計することが可能である。これら以外の完全にヒト型のフレームワークまたはフレームワークの準領域も好適に使用され得る。

0098

完全にヒト型のVκ配列は、下記のみに限定されるものではないが、例えばVk1サブグループに分類されるA20、A30、L1、L4、L5、L8、L9、L11、L12、L14、L15、L18、L19、L22、L23、L24、O2、O4、O8、O12、O14、O18、Vk2サブグループに分類されるA1、A2、A3、A5、A7、A17、A18、A19、A23、O1、O11、Vk3サブグループに分類されるA11、A27、L2、L6、L10、L16、L20、L25、Vk4サブグループに分類されるB3、Vk5サブグループに分類されるB2(本明細書においてはVk5-2とも指称される))、Vk6サブグループに分類されるA10、A14、A26等(Kawasakiら(Eur. J. Immunol. (2001) 31, 1017-1028)、SchableおよびZachau(Biol. Chem. Hoppe Seyler (1993) 374, 1001-1022)およびBrensing-Kuppersら(Gene (1997) 191, 173-181))が好適に挙げられる。

0099

完全にヒト型のVλ配列は、下記のみに限定されるものではないが、例えばVL1サブグループに分類されるV1-2、V1-3、V1-4、V1-5、V1-7、V1-9、V1-11、V1-13、V1-16、V1-17、V1-18、V1-19、V1-20、V1-22、VL1サブグループに分類されるV2-1、V2-6、V2-7、V2-8、V2-11、V2-13、V2-14、V2-15、V2-17、V2-19、VL3サブグループに分類されるV3-2、V3-3、V3-4、VL4サブグループに分類されるV4-1、V4-2、V4-3、V4-4、V4-6、VL5サブグループに分類されるV5-1、V5-2、V5-4、V5-6等(Kawasakiら(Genome Res. (1997) 7, 250-261))が好適に挙げられる。

0100

通常これらのフレームワーク配列は一またはそれ以上のアミノ酸残基の相違により互いに異なっている。これらのフレームワーク配列は本発明における「イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基」と共に使用され得る。本発明における「イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基」と共に使用される完全にヒト型のフレームワークの例としては、これだけに限定されるわけではないが、ほかにもKOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY、POM等が挙げられる(例えば、前記のKabatら (1991)およびWuら(J. Exp. Med. (1970) 132, 211-250))。

0101

本発明は特定の理論に拘束されるものではないが、生殖細胞系の配列の使用がほとんどの個人において有害な免疫反応を排除すると期待されている一つの理由は、以下のとおりであると考えられている。通常の免疫反応中に生じる親和性成熟テップの結果、免疫グロブリンの可変領域に体細胞突然変異が頻繁に生じる。これらの突然変異は主にその配列が超可変的であるCDRの周辺に生じるが、フレームワーク領域の残基にも影響を及ぼす。これらのフレームワークの突然変異は生殖細胞系の遺伝子には存在せず、また患者の免疫原性になる可能性は少ない。一方、通常のヒトの集団は生殖細胞系の遺伝子によって発現されるフレームワーク配列の大多数にさらされており、免疫寛容の結果、これらの生殖細胞系のフレームワークは患者において免疫原性が低いあるいは非免疫原性であると予想される。免疫寛容の可能性を最大にするため、可変領域をコード化する遺伝子が普通に存在する機能的な生殖細胞系遺伝子集合から選択され得る。

0102

本発明の、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸が前記の可変領域配列の配列、重鎖可変領域または軽鎖可変領域の配列、もしくはCDR配列またはフレームワーク配列に含まれる抗原結合分子を作製するために部位特異的変異誘発法(Kunkelら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1985) 82, 488-492))やOverlap extensionPCR等の公知の方法が適宜採用され得る。

0103

例えば、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基が予め含まれているフレームワーク配列として選択された軽鎖可変領域と、ランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された重鎖可変領域と組み合わせることによって本発明の複数の互いに配列の異なる抗原結合分子を含むライブラリが作製され得る。このような非限定的な例として、イオン濃度がカルシウムイオン濃度である場合には、例えば、配列番号:45(Vk5-2)に記載された軽鎖可変領域配列とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された重鎖可変領域とを組み合わせたライブラリが好適に挙げられる。

0104

また、前記のカルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基が予め含まれているフレームワーク配列として選択された軽鎖可変領域の配列に、当該アミノ酸残基以外の残基として多様なアミノ酸が含まれるように設計することも可能である。本発明においてそのような残基は、フレキシブル残基と指称される。本発明の抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の抗原に対する結合活性が、イオン濃度の条件によって変化する限り、当該フレキシブル残基の数および位置は特定の態様に限定されることはない。すなわち、重鎖および/または軽鎖のCDR配列および/またはFR配列に一つまたはそれ以上のフレキシブル残基が含まれ得る。例えば、イオン濃度がカルシウムイオン濃度である場合には、配列番号:45(Vk5-2)に記載された軽鎖可変領域配列に導入されるフレキシブル残基の非限定的な例として、表1または表2に記載されたアミノ酸残基が挙げられる。

0105

0106

0107

本明細書においては、フレキシブル残基とは、公知のかつ/または天然抗体または抗原結合ドメインのアミノ酸配列を比較した場合に、その位置で提示されるいくつかの異なるアミノ酸を持つ軽鎖および重鎖可変領域上のアミノ酸が非常に多様である位置に存在するアミノ酸残基のバリエーションをいう。非常に多様である位置は一般的にCDR領域に存在する。一態様では、公知のかつ/または天然抗体の非常に多様な位置を決定する際には、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institute of Health Bethesda Md.) (1987年および1991年)が提供するデータが有効である。また、インターネット上の複数のデータベース(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/、http://www.bioinf.org.uk/abs/index.html)では収集された多数のヒト軽鎖および重鎖の配列とその配置が提供されており、これらの配列とその配置の情報は本発明における非常に多様な位置の決定に有用である。本発明によると、アミノ酸がある位置で好ましくは約2から約20、好ましくは約3から約19、好ましくは約4から約18、好ましくは5から17、好ましくは6から16、好ましくは7から15、好ましくは8から14、好ましくは9から13、好ましくは10から12個の可能な異なるアミノ酸残基の多様性を有する場合は、その位置は非常に多様といえる。いくつかの実施形態では、あるアミノ酸位置は、好ましくは少なくとも約2、好ましくは少なくとも約4、好ましくは少なくとも約6、好ましくは少なくとも約8、好ましくは約10、好ましくは約12の可能な異なるアミノ酸残基の多様性を有し得る。

0108

また、前記のイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基が導入された軽鎖可変領域とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された重鎖可変領域とを組み合わせることによっても、本発明の複数の互いに配列の異なる抗原結合分子を含むライブラリが作製され得る。このような非限定的な例として、イオン濃度がカルシウムイオン濃度である場合には、例えば、配列番号:46(Vk1)、配列番号:47(Vk2)、配列番号:48(Vk3)、配列番号:49(Vk4)等の生殖細胞系列の特定の残基が、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基に置換された軽鎖可変領域配列とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された重鎖可変領域とを組み合わせたライブラリが好適に挙げられる。当該アミノ酸残基の非限定な例として軽鎖のCDR1に含まれるアミノ酸残基が例示される。ほかにも、当該アミノ酸残基の非限定な例として軽鎖のCDR2に含まれるアミノ酸残基が例示される。また、当該アミノ酸残基の非限定な別の例として軽鎖のCDR3に含まれるアミノ酸残基もまた例示される。

0109

前記のように、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR1に含まれるアミノ酸残基の非限定な例として、軽鎖可変領域のCDR1中のEUナンバリングで表される30位、31位、および/または32位のアミノ酸残基が挙げられる。また、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR2に含まれるアミノ酸残基の非限定な例として、軽鎖可変領域のCDR2中のKabatナンバリングで表される50位のアミノ酸残基が挙げられる。さらに、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR3に含まれアミノ酸残基の非限定な例として、軽鎖可変領域のCDR3中のKabatナンバリングで表される92位のアミノ酸残基が挙げられる。また、これらのアミノ酸残基が、カルシウム結合モチーフを形成し、および/または、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性が変化する限り、これらのアミノ酸残基が単独で含まれ得るし、これらのアミノ酸が二つ以上組み合わされて含まれ得る。また、複数個のカルシウムイオン結合部位を有し、分子進化上共通の起源から由来したと考えられるトロポニンC、カルモジュリン、パルブアルブミン、ミオシン軽鎖等が知られており、その結合モチーフが含まれるように軽鎖CDR1、CDR2および/またはCDR3を設計することも可能である。例えば、上記の目的でカドヘリンドメイン、カルモジュリンに含まれるEFハンド、Protein kinase Cに含まれるC2ドメイン、血液凝固タンパク質FactorIXに含まれるGlaドメイン、アシアログライコプロテインレセプターやマンノース結合レセプターに含まれるC型レクチン、LDL受容体に含まれるAドメイン、アネキシン、トロンボスポンジン3型ドメインおよびEGF様ドメインが適宜使用され得る。

0110

前記のイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基が導入された軽鎖可変領域とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された重鎖可変領域とを組み合わせる場合でも、前記と同様に、フレキシブル残基が当該軽鎖可変領域の配列に含まれるように設計することも可能である。本発明の抗原結合分子の抗原に対する結合活性が、イオン濃度の条件によって変化する限り、当該フレキシブル残基の数および位置は特定の態様に限定されることはない。すなわち、重鎖および/または軽鎖のCDR配列および/またはFR配列に一つまたはそれ以上のフレキシブル残基が含まれ得る。例えば、イオン濃度がカルシウムイオン濃度である場合には、軽鎖可変領域配列に導入されるフレキシブル残基の非限定的な例として、表1または表2に記載されたアミノ酸残基が挙げられる。

0111

組み合わされる重鎖可変領域の例として、ランダム化可変領域ライブラリが好適に挙げられる。ランダム化可変領域ライブラリの作製方法は公知の方法が適宜組み合わされる。本発明の非限定な一態様では、特定の抗原で免疫された動物、感染症患者ワクチン接種して血中抗体価が上昇したヒト、癌患者、自己免疫疾患のリンパ球由来の抗体遺伝子をもとに構築された免疫ライブラリが、ランダム化可変領域ライブラリとして好適に使用され得る。

0112

また、本発明の非限定な一態様では、ゲノムDNA におけるV 遺伝子や再構築され機能的なV遺伝子のCDR配列が、適当な長さのコドンセットをコードする配列を含む合成オリゴヌクレオチドセットで置換された合成ライブラリもまた、ランダム化可変領域ライブラリとして好適に使用され得る。この場合、重鎖のCDR3の遺伝子配列の多様性が観察されることから、CDR3の配列のみを置換することもまた可能である。抗原結合分子の可変領域においてアミノ酸の多様性を生み出す基準は、抗原結合分子の表面に露出した位置のアミノ酸残基に多様性を持たせることである。表面に露出した位置とは、抗原結合分子の構造、構造アンサンブル、および/またはモデル化された構造にもとづいて、表面露出が可能、かつ/または抗原との接触が可能と判断される位置のことをいうが、一般的にはそのCDRである。好ましくは、表面に露出した位置は、InsightIIプログラム(Accelrys)のようなコンピュータプログラムを用いて、抗原結合分子の3次元モデルからの座標を使って決定される。表面に露出した位置は、当技術分野で公知のアルゴリズム(例えば、LeeおよびRichards(J.Mol.Biol. (1971) 55, 379-400)、Connolly(J.Appl.Cryst. (1983) 16, 548-558))を使用して決定され得る。表面に露出した位置の決定は、タンパク質モデリングに適したソフトウェアおよび抗体から得られる三次元構造情報を使って行われ得る。このような目的のために利用できるソフトウェアとして、SYBYL生体高分子モジュールソフトウェア(Tripos Associates)が好適に挙げられる。一般的に、また好ましくは、アルゴリズムがユーザー入力サイズパラメータを必要とする場合は、計算において使われるプローブの「サイズ」は半径約1.4オングストローム以下に設定される。さらに、パーソナルコンピュータ用のソフトウェアを使用した表面に露出した領域およびエリアの決定法が、Pacios(Comput.Chem. (1994) 18 (4), 377-386およびJ.Mol.Model. (1995) 1, 46-53)に記載されている。

0113

さらに、本発明の非限定な一態様では、健常人のリンパ球由来の抗体遺伝子から構築され、そのレパートリーバイアスを含まない抗体配列であるナイーブ配列からなるナイーブライブラリもまた、ランダム化可変領域ライブラリとして特に好適に使用され得る(Gejimaら(Human Antibodies (2002) 11,121-129)およびCardosoら(Scand. J. Immunol. (2000) 51, 337-344))。本発明で記載されるナイーブ配列を含むアミノ酸配列とは、このようなナイーブライブラリから取得されるアミノ酸配列をいう。

0114

本発明の一つの態様では、「イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基」が予め含まれているフレームワーク配列として選択された重鎖可変領域と、ランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された軽鎖可変領域とを組み合わせることによって本発明の複数の互いに配列の異なる抗原結合分子を含むライブラリから、本発明の抗原結合ドメインが取得され得る。このような非限定的な例として、イオン濃度がカルシウムイオン濃度である場合には、例えば、配列番号:50(6RL#9-IgG1)または配列番号:51(6KC4-1#85-IgG1)に記載された重鎖可変領域配列とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された軽鎖可変領域とを組み合わせたライブラリが好適に挙げられる。また、ランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された軽鎖可変領域の代わりに、生殖細胞系列の配列を有する軽鎖可変領域の中から適宜選択することによって作製され得る。例えば、配列番号:50(6RL#9-IgG1)または配列番号:51(6KC4-1#85-IgG1)に記載された重鎖可変領域配列と生殖細胞系列の配列を有する軽鎖可変領域とを組み合わせたライブラリが好適に挙げられる。

0115

また、前記の「イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基」が予め含まれているフレームワーク配列として選択された重鎖可変領域の配列に、フレキシブル残基が含まれるように設計することも可能である。本発明の抗原結合分子の抗原に対する結合活性が、イオン濃度の条件によって変化する限り、当該フレキシブル残基の数および位置は特定の態様に限定されることはない。すなわち、重鎖および/または軽鎖のCDR配列および/またはFR配列に一つまたはそれ以上のフレキシブル残基が含まれ得る。例えば、イオン濃度がカルシウムイオン濃度である場合には、配列番号:50(6RL#9-IgG1)に記載された重鎖可変領域配列に導入されるフレキシブル残基の非限定的な例として、重鎖CDR1およびCDR2の全てのアミノ酸残基のほか重鎖CDR3の95位、96位および/または100a位以外のCDR3のアミノ酸残基が挙げられる。または配列番号:51(6KC4-1#85-IgG1)に記載された重鎖可変領域配列に導入されるフレキシブル残基の非限定的な例として、重鎖CDR1およびCDR2の全てのアミノ酸残基のほか重鎖CDR3の95位および/または101位以外のCDR3のアミノ酸残基もまた挙げられる。

0116

また、前記の「イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基」が導入された重鎖可変領域とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された軽鎖可変領域または生殖細胞系列の配列を有する軽鎖可変領域とを組み合わせることによっても、複数の互いに配列の異なる抗原結合分子を含むライブラリが作製され得る。このような非限定的な例として、イオン濃度がカルシウムイオン濃度である場合には、例えば、重鎖可変領域の特定の残基が、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基に置換された重鎖可変領域配列とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された軽鎖可変領域または生殖細胞系列の配列を有する軽鎖可変領域とを組み合わせたライブラリが好適に挙げられる。当該アミノ酸残基の非限定な例として重鎖のCDR1に含まれるアミノ酸残基が例示される。ほかにも、当該アミノ酸残基の非限定な例として重鎖のCDR2に含まれるアミノ酸残基が例示される。また、当該アミノ酸残基の非限定な別の例として重鎖のCDR3に含まれるアミノ酸残基もまた例示される。当該アミノ酸残基が重鎖のCDR3に含まれアミノ酸残基の非限定な例として、重鎖可変領域のCDR3中のKabatナンバリングで表される95位、96位、100a位および/または101位のアミノ酸が挙げられる。また、これらのアミノ酸残基が、カルシウム結合モチーフを形成し、および/または、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性が変化する限り、これらのアミノ酸残基が単独で含まれ得るし、これらのアミノ酸が二つ以上組み合わされて含まれ得る。

0117

前記の、イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基が導入された重鎖可変領域とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された軽鎖可変領域または生殖細胞系列の配列を有する軽鎖可変領域とを組み合わせる場合でも、前記と同様に、フレキシブル残基が当該重鎖可変領域の配列に含まれるように設計することも可能である。本発明の抗原結合分子の抗原に対する結合活性が、イオン濃度の条件によって変化する限り、当該フレキシブル残基の数および位置は特定の態様に限定されることはない。すなわち、重鎖のCDR配列および/またはFR配列に一つまたはそれ以上のフレキシブル残基が含まれ得る。また、イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸残基以外の重鎖可変領域のCDR1、CDR2および/またはCDR3のアミノ酸配列としてランダム化可変領域ライブラリも好適に使用され得る。軽鎖可変領域として生殖細胞系列の配列が用いられる場合には、例えば、配列番号:46(Vk1)、配列番号:47(Vk2)、配列番号:48(Vk3)、配列番号:49(Vk4)等の生殖細胞系列の配列が非限定な例として挙げられ得る。

0118

前記の、カルシウムイオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸としては、カルシウム結合モチーフを形成する限り、いずれのアミノ酸も好適に使用され得るが、そのようなアミノ酸としては具体的に電子供与性を有するアミノ酸が挙げられる。こうした電子供与性を有するアミノ酸としては、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸またはグルタミン酸が好適に例示される。

0119

また、本発明の「イオン濃度の条件」として、例えば「pHの条件」を挙げることもできる。pHの条件は、水素イオン濃度の条件ということもできる。本発明で、プロトンすなわち水素原子原子核の濃度の条件は、水素指数(pH)の条件とも同義に取り扱われる。水溶液中の水素イオン活動量をaH+で表すと、pHは-log10aH+と定義される。水溶液中のイオン強度が(例えば10-3より)低ければ、aH+は水素イオン強度にほぼ等しい。例えば25℃、1気圧における水のイオン積はKw=aH+aOH=10-14であるため、純水ではaH+=aOH=10-7である。この場合のpH=7が中性であり、pHが7より小さい水溶液は酸性、pHが7より大きい水溶液はアルカリ性である。

0120

本発明においては、イオン濃度の条件としてpHの条件が用いられる場合には、pHの条件として高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件と低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件が挙げられる。本発明の抗原結合分子に含まれる抗原結合ドメインの抗原に対する結合活性がpHの条件によって結合活性が変化するとは、高水素イオン濃度または低pH(pH酸性域)と低水素イオン濃度または高pH(pH中性域)の条件の違いによって抗原結合分子に含まれる抗原結合ドメインの抗原に対する結合活性が変化することをいう。例えば、pH酸性域の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性よりもpH中性域の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性の方が高い場合が挙げられる。また、pH中性域の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性よりもpH酸性域の条件下における抗原に対する抗原結合分子の結合活性の方が高い場合もまた挙げられる。

0121

本明細書において、pH中性域とはとくに一義的な数値に限定されるわけではないが、好適にはpH6.7からpH10.0の間から選択され得る。また、別の態様では、pH6.7からpH9.5の間から選択され得る。また、異なる態様ではpH7.0からpH9.0の間から選択され得るし、ほかの態様ではpH7.0からpH8.0の間から選択され得る。特に生体内の血漿中(血中)でのpHに近いpH7.4が好適に挙げられる。

0122

本明細書において、pH酸性域とはとくに一義的な数値に限定されるわけではないが、好適にはpH4.0からpH6.5の間から選択され得る。また、別の態様では、pH4.5からpH6.5の間から選択され得る。また、異なる態様ではpH5.0からpH6.5の間から選択され得るし、ほかの態様ではpH5.5からpH6.5の間から選択され得る。特に生体内の早期エンドソーム内でのイオン化カルシウム濃度に近いpH5.8が好適に挙げられる。

0123

本発明において、高水素イオン濃度または低pH(pH酸性域)の条件下における抗原に対する結合活性が低水素イオン濃度または高pH(pH中性域)の条件下における抗原に対する結合活性より低いとは、本発明の抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子のpH4.0からpH6.5の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性が、pH6.7からpH10.0の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性より弱いことを意味する。好ましくは、本発明の抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子のpH4.5からpH6.5の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性が、pH6.7からpH9.5の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性より弱いことを意味し、より好ましくは、抗原結合分子のpH5.0からpH6.5の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性が、pH7.0からpH9.0の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性より弱いことを意味する。また、好ましくは抗原結合分子のpH5.5からpH6.5の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性が、pH7.0からpH8.0の間から選択されるpHでの抗原に対する結合活性より弱いことを意味する。特に好ましくは、生体内の早期エンドソーム内のpHにおける抗原結合活性が、生体内の血漿中のpHにおける抗原結合活性より弱いことを意味し、具体的には、抗原結合分子のpH5.8での抗原に対する結合活性が、pH7.4での抗原に対する結合活性より弱いことを意味する。

0124

pHの条件によって抗原に対する抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子の結合活性が変化しているか否かは、例えば前記の結合活性の項で記載されたような公知の測定方法を使用することによって決定され得る。例えば、当該測定方法に際して異なるpHの条件下での結合活性が測定される。例えば、pH酸性域の条件下における抗原に対する抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子の結合活性よりもpH中性域の条件下における抗原に対する前記ドメインまたは前記の結合活性の方が高く変化することを確認するためには、pH酸性域およびpH中性域の条件下における抗原に対する前記ドメインまたは前記分子の結合活性が比較される。

0125

さらに本発明において、「高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件下における抗原に対する結合活性が低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件下における抗原に対する結合活性より低い」という表現は、抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子の低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件下における抗原に対する結合活性が高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件下における抗原に対する結合活性よりも高いと表現することもできる。なお本発明においては、「高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件下における抗原に対する結合活性が低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件下における抗原に対する結合活性より低い」を「高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件下における抗原に対する結合活性が低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件下における抗原に対する結合能よりも弱い」と記載する場合もあり、また、「高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件下における抗原に対する結合活性が低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件下における抗原に対する結合活性より低下させる」を「高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件下における抗原に対する結合活性が低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件下における抗原に対する結合能よりも弱くする」と記載する場合もある。

0126

抗原に対する結合活性を測定する際の水素イオン濃度またはpH以外の条件は、当業者が適宜選択することが可能であり、特に限定されない。例えば、HEPESバッファー、37℃の条件において測定することが可能である。例えば、Biacore(GE Healthcare)などを用いて測定することが可能である。抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子と抗原との結合活性の測定は、抗原が可溶型抗原である場合は、抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子を固定化したチップへ、抗原をアナライトとして流すことで可溶型抗原への結合活性を評価することが可能であり、抗原が膜型抗原である場合は、抗原を固定化したチップへ、抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子をアナライトとして流すことで膜型抗原への結合活性を評価することが可能である。
本発明の抗原結合分子において、高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性が低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性よりも弱い限り、高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件下における抗原に対する結合活性と低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件下における抗原に対する結合活性の比は特に限定されないが、好ましくは抗原に対する高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件におけるKD(Dissociation constant:解離定数)と低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件におけるKDの比であるKD (pH5.8)/KD (pH7.4)の値が2以上であり、さらに好ましくはKD (pH5.8)/KD (pH7.4)の値が10以上であり、さらに好ましくはKD (pH5.8)/KD (pH7.4)の値が40以上である。KD (pH5.8)/KD (pH7.4)の値の上限は特に限定されず、当業者の技術において作製可能な限り、400、1000、10000等、いかなる値でもよい。

0127

また、本発明の抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子の高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性と低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性の比を示す他の指標として、例えば、解離速度定数であるkd(Dissociation rate constant:解離速度定数)もまた好適に用いられ得る。結合活性の比を示す指標としてKD(解離定数)の代わりにkd(解離速度定数)を用いる場合、抗原に対する高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件におけるkd(解離速度定数)と低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件におけるkd(解離速度定数)の比であるkd(pH酸性域の条件における)/kd(pH中性域の条件における)の値は、好ましくは2以上であり、さらに好ましくは5以上であり、さらに好ましくは10以上であり、より好ましくは30以上である。Kd(pH酸性域の条件における)/kd(pH中性域の条件における)の値の上限は特に限定されず、当業者の技術常識において作製可能な限り、50、100、200等、いかなる値でもよい。

0128

抗原結合活性の値として、抗原が可溶型抗原の場合はkd(解離速度定数)を用いることが可能であり、抗原が膜型抗原の場合は見かけのkd(Apparent dissociation rate constant:見かけの解離速度定数)を用いることが可能である。kd(解離速度定数)、および、見かけのkd(見かけの解離速度定数)は、当業者公知の方法で測定することが可能であり、例えばBiacore(GE healthcare)、フローサイトメーター等を用いることが可能である。なお本発明において、異なる水素イオン濃度すなわちpHにおける抗原結合ドメインまたは当該ドメインを含む抗原結合分子の抗原に対する結合活性を測定する際は、水素イオン濃度すなわちpH以外の条件は同一とすることが好ましい。

0129

例えば、本発明が提供する一つの態様である高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性が、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(c)を含む抗原結合ドメインまたは抗原結合分子のスクリーニングによって取得され得る。
(a) pH酸性域の条件における抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の抗原結合活性を得る工程、
(b) pH中性域の条件における抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の抗原結合活性を得る工程、
(c) pH酸性域の条件における抗原結合活性が、pH中性域の条件における抗原結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子を選択する工程。

0130

さらに、本発明が提供する一つの態様である高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性が、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(c)を含む抗原結合ドメインまたは抗原結合分子もしくはそれらのライブラリのスクリーニングによって取得され得る。
(a) pH中性域の条件における抗原結合ドメインまたは抗原結合分子もしくはそれらのライブラリを抗原に接触させる工程、
(b) 前記工程(a)で抗原に結合した抗原結合ドメインまたは抗原結合分子をpH酸性域の条件に置く工程、
(c) 前記工程(b)で解離した抗原結合ドメインまたは抗原結合分子を単離する工程。

0131

また、本発明が提供する一つの態様である高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性が、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(d)を含む抗原結合ドメインまたは抗原結合分子若しくはそれらのライブラリのスクリーニングによって取得され得る。
(a) pH酸性域の条件で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを抗原に接触させる工程、
(b) 前記工程(a)で抗原に結合しない抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を選択する工程、
(c) 前記工程(b)で選択された抗原結合ドメイン又は抗原結合分子をpH中性域の条件で抗原に結合させる工程、
(d) 前記工程(c)で抗原に結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0132

さらに、本発明が提供する一つの態様である高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性が、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(c)を含むスクリーニング方法によって取得され得る。
(a) 抗原を固定したカラムにpH中性域の条件で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを接触させる工程、
(b) 前記工程(a)でカラムに結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子をpH酸性域の条件でカラムから溶出する工程、
(c) 前記工程(b)で溶出された抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0133

さらに、本発明が提供する一つの態様である高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性が、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(d)を含むスクリーニング方法によって取得され得る。
(a) 抗原を固定したカラムにpH酸性域の条件で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを通過させる工程、
(b) 前記工程(a)でカラムに結合せずに溶出した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を回収する工程、
(c) 前記工程(b)で回収された抗原結合ドメイン又は抗原結合分子をpH中性域の条件で抗原に結合させる工程、
(d) 前記工程(c)で抗原に結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0134

さらに、本発明が提供する一つの態様である高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性が、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子は、以下の工程(a)〜(d)を含むスクリーニング方法によって取得され得る。
(a) pH中性域の条件で抗原結合ドメイン又は抗原結合分子のライブラリを抗原に接触させる工程、
(b) 前記工程(a)で抗原に結合した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を取得する工程、
(c) 前記工程(b)で取得した抗原結合ドメイン又は抗原結合分子をpH酸性域の条件に置く工程、
(d) 前記工程(c)で抗原結合活性が、前記工程(b)で選択した基準より弱い抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を単離する工程。

0135

なお、前記の工程は2回以上繰り返されてもよい。従って、本発明によって、上述のスクリーニング方法において、(a)〜(c)あるいは(a)〜(d)の工程を2回以上繰り返す工程をさらに含むスクリーニング方法によって取得されたpH酸性域の条件における抗原に対する結合活性がpH中性域の条件における抗原に対する結合活性より低い抗原結合ドメインまたは抗原結合分子が提供される。(a)〜(c)あるいは(a)〜(d)の工程が繰り返される回数は特に限定されないが、通常10回以内である。

0136

本発明のスクリーニング方法において、高水素イオン濃度条件または低pHすなわちpH酸性域における抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は、pHが4.0〜6.5の間の抗原結合活性であれば特に限定されないが、好ましいpHとして、pHが4.5〜6.6の間の抗原結合活性を挙げることができる。別の好ましいpHとして、pHが5.0〜6.5の間の抗原結合活性、さらにpHが5.5〜6.5の間の抗原結合活性を挙げることができる。より好ましいpHとして、生体内の早期エンドソーム内のpHが挙げられ、具体的にはpH5.8における抗原結合活性を挙げることができる。また、低水素イオン濃度条件または高pHすなわちpH中性域における抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は、pHが6.7〜10の間の抗原結合活性であれば特に限定されないが、好ましいpHとしてpHが6.7〜9.5の間の抗原結合活性を挙げることができる。別の好ましいpHとして、pHが7.0〜9.5の間の抗原結合活性、さらにpHが7.0〜8.0の間の抗原結合活性を挙げることができる。より好ましいpHとして、生体内の血漿中でのpHを挙げることができ、具体的にはpHが7.4における抗原結合活性を挙げることができる。

0137

抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は当業者に公知の方法により測定することが可能であり、イオン化カルシウム濃度以外の条件については当業者が適宜決定することが可能である。抗原結合ドメイン又は抗原結合分子の抗原結合活性は、KD(Dissociation constant:解離定数)、見かけのKD(Apparent dissociation constant:見かけの解離定数)、解離速度であるkd(Dissociation rate:解離速度定数)、又は見かけのkd(Apparent dissociation:見かけの解離速度定数)等として評価することが可能である。これらは当業者公知の方法で測定することが可能であり、例えばBiacore(GE healthcare)、スキャッチャードプロット、FACS等を用いることが可能である。

0138

本発明において、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原結合活性が高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原結合活性より高い抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を選択する工程は、高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原結合活性が低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原結合活性より低い抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を選択する工程と同じ意味である。

0139

低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原結合活性が高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原結合活性より高い限り、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原結合活性と高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原結合活性の差は特に限定されないが、好ましくは低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原結合活性が高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原結合活性の2倍以上であり、さらに好ましくは10倍以上であり、より好ましくは40倍以上である。

0140

前記のスクリーニング方法によってスクリーニングされる本発明の水素イオン濃度の条件によって抗原に対する結合活性を変化させる抗原結合ドメイン又は抗原結合分子はどのように調製されてもよく、例えば、あらかじめ存在している抗原結合分子、あらかじめ存在しているライブラリ(ファージライブラリ等)、動物への免疫から得られたハイブリドーマや免疫動物からのB細胞から作製された抗体又はライブラリ、これらの抗体やライブラリに側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸変異を導入した抗体又はライブラリ(側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)又は非天然アミノ酸の含有率を高くしたライブラリや特定箇所に側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)又は非天然アミノ酸変異を導入したライブラリ等)などを用いることが可能である。

0141

動物への免疫から得られたハイブリドーマや免疫動物からのB細胞から作製された抗原結合ドメインまたは抗原結合分子から、低水素イオン濃度または高pHすなわちpH中性域の条件における抗原結合活性が高水素イオン濃度または低pHすなわちpH酸性域の条件における抗原結合活性より高い抗原結合ドメイン又は抗原結合分子を取得する方法として、例えば、国際公開WO2009/125825で記載されるような抗原結合ドメインまたは抗原結合分子中のアミノ酸の少なくとも一つが、側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸変異に置換されているもしくは抗原結合ドメインまたは抗原結合分子中に、側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸が挿入されている抗原結合分子または抗原結合分子が好適に挙げられる。

0142

側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の変異が導入される位置は特に限定されず、置換または挿入前と比較してpH酸性域における抗原結合活性がpH中性域における抗原結合活性より弱くなる(KD(pH酸性域)/KD(pH中性域)の値が大きくなる、又はkd(pH酸性域)/kd(pH中性域)の値が大きくなる)限り、如何なる部位でもよい。例えば、抗原結合分子が抗体の場合には、抗体の可変領域やCDRなどが好適に挙げられる。側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸に置換されるアミノ酸の数、又は挿入されるアミノ酸の数は当業者が適宜決定することができ、側鎖のpKaが4.0-8.0である1つのアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸によって置換され得るし、側鎖のpKaが4.0-8.0である1つのアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸が挿入され得るし、側鎖のpKaが4.0-8.0である2つ以上の複数のアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸によって置換され得るし、側鎖のpKaが4.0-8.0である2つ以上のアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸が挿入され得る。又、側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸への置換又は側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の挿入以外に、他のアミノ酸の欠失、付加、挿入および/または置換などが同時に行われ得る。側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸への置換又は側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の挿入は、当業者の公知のアラニンscanningのアラニンをヒスチジン等に置き換えたヒスチジン等scanning等の方法によってランダムに行われ得るし、側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の置換または挿入の変異がランダムに導入された抗原結合ドメインまたは抗体の中から、変異前と比較してKD(pH酸性域)/KD(pH中性域)又はkd(pH酸性域)/kd(pH中性域)の値が大きくなった抗原結合分子が選択され得る。

0143

前記のようにその側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸への変異が行われ、かつpH酸性域での抗原結合活性がpH中性域での抗原結合活性よりも低い抗原結合分子の好ましい例として、例えば、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸への変異後のpH中性域での抗原結合活性が、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸への変異前のpH中性域での抗原結合活性と同等である抗原結合分子が好適に挙げられる。本発明において、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の変異後の抗原結合分子が、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の変異前の抗原結合分子と同等の抗原結合活性を有するとは、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の変異前の抗原結合分子の抗原結合活性を100%とした場合に、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の変異後の抗原結合分子の抗原結合活性が少なくとも10%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であることをいう。その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の変異後のpH7.4での抗原結合活性が、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の変異前のpH7.4での抗原結合活性より高くなってもよい。その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸への置換または挿入により抗原結合分子の抗原結合活性が低くなった場合には、抗原結合分子中の1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、付加及び/又は挿入などによって、抗原結合活性が、その側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の置換又は挿入前の抗原結合活性と同等にされ得る。本発明においては、そのような側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸(例えばヒスチジンやグルタミン酸)や非天然アミノ酸の置換又は挿入後に1又は複数のアミノ酸の置換、欠失、付加及び/又は挿入を行うことによって結合活性が同等となった抗原結合分子も含まれる。

0144

本発明の一つの態様として、「水素イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基」が導入された軽鎖可変領域とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された重鎖可変領域とを組み合わせることによっても、本発明の複数の互いに配列の異なる抗原結合ドメインまたは抗原結合分子を含むライブラリが作製され得る。

0145

当該アミノ酸残基の非限定な例として軽鎖のCDR1に含まれるアミノ酸残基が例示される。ほかにも、当該アミノ酸残基の非限定な例として軽鎖のCDR2に含まれるアミノ酸残基が例示される。また、当該アミノ酸残基の非限定な別の例として軽鎖のCDR3に含まれるアミノ酸残基もまた例示される。

0146

前記のように、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR1に含まれるアミノ酸残基の非限定な例として、軽鎖可変領域のCDR1中のKabatナンバリングで表される24位、27位、28位、31位、32位および/または34位のアミノ酸残基が挙げられる。また、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR2に含まれるアミノ酸残基の非限定な例として、軽鎖可変領域のCDR2中のKabatナンバリングで表される50位、51位、52位、53位、54位、55位および/または56位のアミノ酸残基が挙げられる。さらに、当該アミノ酸残基が軽鎖のCDR3に含まれアミノ酸残基の非限定な例として、軽鎖可変領域のCDR3中のKabatナンバリングで表される89位、90位、91位、92位、93位、94位および/または95A位のアミノ酸残基が挙げられる。また、これらのアミノ酸残基が、水素イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性が変化する限り、これらのアミノ酸残基が単独で含まれ得るし、これらのアミノ酸が二つ以上組み合わされて含まれ得る。

0147

前記の「水素イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合分子の結合活性を変化させる少なくとも一つのアミノ酸残基」が導入された軽鎖可変領域とランダム化可変領域配列ライブラリとして作製された重鎖可変領域とを組み合わせる場合でも、前記と同様に、フレキシブル残基が当該軽鎖可変領域の配列に含まれるように設計することも可能である。本発明の抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の抗原に対する結合活性が、水素イオン濃度の条件によって変化する限り、当該フレキシブル残基の数および位置は特定の態様に限定されることはない。すなわち、重鎖および/または軽鎖のCDR配列および/またはFR配列に一つまたはそれ以上のフレキシブル残基が含まれ得る。例えば、軽鎖可変領域配列に導入されるフレキシブル残基の非限定的な例として、表3または表4に記載されたアミノ酸残基が挙げられる。また、水素イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸残基やフレキシブル残基以外の軽鎖可変領域のアミノ酸配列としては、非限定な例としてVk1(配列番号:46)、Vk2(配列番号:47)、Vk3(配列番号:48)、Vk4(配列番号:49)等の生殖細胞系列の配列が好適に使用され得る。

0148

0149

0150

前記の、水素イオン濃度の条件によって抗原に対する抗原結合ドメインまたは抗原結合分子の結合活性を変化させるアミノ酸残基としては、いずれのアミノ酸残基も好適に使用され得るが、そのようなアミノ酸残基としては、具体的に側鎖のpKaが4.0-8.0であるアミノ酸が挙げられる。こうした電子供与性を有するアミノ酸としては、ヒスチジンまたはグルタミン酸等の天然のアミノ酸のほか、ヒスチジンアナログ(US2009/0035836)もしくはm-NO2-Tyr(pKa 7.45)、3,5-Br2-Tyr(pKa 7.21)または3,5-I2-Tyr(pKa 7.38)等の非天然のアミノ酸(Bioorg. Med. Chem. (2003) 11 (17), 3761-3768が好適に例示される。また、当該アミノ酸残基の特に好適な例としては、側鎖のpKaが6.0-7.0であるアミノ酸が挙げられる。こうした電子供与性を有するアミノ酸としては、ヒスチジンが好適に例示される。

0151

組み合わされる重鎖可変領域の例として、ランダム化可変領域ライブラリが好適に挙げられる。ランダム化可変領域ライブラリの作製方法は公知の方法が適宜組み合わされる。本発明の非限定な一態様では、特定の抗原で免疫された動物、感染症患者やワクチン接種して血中抗体価が上昇したヒト、癌患者、自己免疫疾患のリンパ球由来の抗体遺伝子をもとに構築された免疫ライブラリが、ランダム化可変領域ライブラリとして好適に使用され得る。

0152

また、本発明の非限定な一態様では、前記と同様に、ゲノムDNAにおけるV遺伝子や再構築され機能的なV遺伝子のCDR配列が、適当な長さのコドンセットをコードする配列を含む合成オリゴヌクレオチドセットで置換された合成ライブラリもまた、ランダム化可変領域ライブラリとして好適に使用され得る。この場合、重鎖のCDR3の遺伝子配列の多様性が観察されることから、CDR3の配列のみを置換することもまた可能である。抗原結合分子の可変領域においてアミノ酸の多様性を生み出す基準は、抗原結合分子の表面に露出した位置のアミノ酸残基に多様性を持たせることである。表面に露出した位置とは、抗原結合分子の構造、構造アンサンブル、および/またはモデル化された構造にもとづいて、表面に露出が可能、かつ/または抗原との接触が可能と判断される位置のことをいうが、一般的にはそのCDRである。好ましくは、表面に露出した位置は、InsightIIプログラム(Accelrys)のようなコンピュータプログラムを用いて、抗原結合分子の3次元モデルからの座標を使って決定される。表面に露出した位置は、当技術分野で公知のアルゴリズム(例えば、LeeおよびRichards(J. Mol. Biol. (1971) 55, 379-400)、Connolly(J. Appl. Cryst. (1983) 16, 548-558))を使用して決定され得る。表面に露出した位置の決定は、タンパク質モデリングに適したソフトウェアおよび抗体から得られる三次元構造情報を使って行われ得る。このような目的のために利用できるソフトウェアとして、SYBYL生体高分子モジュールソフトウェア(Tripos Associates)が好適に挙げられる。一般的に、また好ましくは、アルゴリズムがユーザーの入力サイズパラメータを必要とする場合は、計算において使われるプローブの「サイズ」は半径約1.4オングストローム以下に設定される。さらに、パーソナルコンピュータ用のソフトウェアを使用した表面に露出した領域およびエリアの決定法が、Pacios(Comput. Chem. (1994) 18 (4), 377-386およびJ. Mol. Model. (1995) 1, 46-53)に記載されている。

0153

さらに、本発明の非限定な一態様では、健常人のリンパ球由来の抗体遺伝子から構築され、そのレパートリーにバイアスを含まない抗体配列であるナイーブ配列からなるナイーブライブラリもまた、ランダム化可変領域ライブラリとして特に好適に使用され得る(Gejimaら(Human Antibodies (2002) 11,121-129)およびCardosoら(Scand. J. Immunol. (2000) 51, 337-344))。

0154

また、更にpH酸性域の条件下におけるヒトFcRn結合活性を増強させるためのアミノ酸改変を組み合わせることができる。より具体的には、例えば、pH酸性域の条件下におけるヒトFcRn結合活性を増強させるために用いられる改変としては、IgG抗体のEUナンバリングで表される428位のMetをLeuに置換し、434位のAsnをSerに置換する方法(Nat Biotechnol, 2010 28:157-159.)、434位のAsnをAlaに置換する方法(Drug Metab Dispos. 2010 Apr;38(4):600-5.)、252位のMetをTyrに置換し、254位のSerをThrに置換し、256位のThrをGluに置換する方法(J Biol Chem, 2006, 281:23514-23524)、250位のThrをGlnに置換し、428位のMetをLeuに置換する方法(J Immunol. 2006, 176(1):346-56)、434位のAsnをHisに置換する方法(Clinical Pharmacology & Therapeutics (2011) 89(2):283-290.)、ならびにWO2010106180、WO2010045193、WO2009058492、 WO2008022152、WO2006050166、WO2006053301、WO2006031370、WO2005123780、WO2005047327、WO2005037867、WO2004035752、WO2002060919などにおいて記載されるような改変を用いることによっても実施が可能であると考えられる。

0155

また、近年、ヒト化抗CD4抗体に対して、pH酸性域の条件下においてヒトFcRnに対する結合活性を増強し、血漿中滞留性を向上させるために、EUナンバリングで表される434位のAsnをHisに置換した抗体分子が、リウマチ因子(Rheumatiod factor、RF)に対して結合することが報告された(Clin Pharmacol Ther. 2011 Feb;89(2):283-90)。この抗体はヒトIgG1のFc領域を有しているが、FcRnに対する結合部位に位置する434位のAsnをHisに置換することにより、その置換箇所を認識するリウマチ因子が結合することが示されている。

0156

上述の通り、pH酸性域の条件下においてヒトFcRnに対する結合活性を増強するための改変として、様々なものが報告されているが、これらの改変をFc領域の中のFcRn結合部位に導入することによって、当該部位を認識するリウマチ因子に対する結合性を増強してしまう可能性がある。
しかしながら、Fc領域の当該部位に、FcRnに対する結合活性を低下させることなく、リウマチ因子に対する結合活性のみを低下させる改変を導入することにより、リウマチ因子に対する結合性を持たずにpH酸性域の条件下におけるヒトFcRnに対する結合活性を増強させた抗原結合分子を作製することが可能である。

0157

そのような、リウマチ因子に対する結合活性を低下させる改変としては、EUナンバリングによって表される248-257, 305-314, 342-352, 380-386, 388, 414-421, 423, 425-437, 439, 441-444位への改変が用いられる。好ましくは、387, 422, 424, 426, 433, 436, 438, 440位への改変が好ましく用いられる。特に好ましくは、422位のValをGluまたはSerに置換する改変、424位のSerをArgに置換する改変、433位のHisをAspに置換する改変、436位のTyrをThrへ置換する改変、438位のGlnをArgまたはLysに置換する改変、440位のSerをGluまたはAspに置換する改変が用いられる。これらの改変は、単独で用いられても良いし、複数箇所を組み合わせて用いても良い。

0158

あるいは、リウマチ因子に対する結合活性を低下させるために、当該部位にN型糖鎖付加配列を導入しても良い。具体的には、N型糖鎖付加配列としてAsn-Xxx-Ser/Thr(XxxはProを除く任意のアミノ酸)が知られているが、この配列をFc領域の当該部位に導入することによりN型糖鎖を付加させ、N型糖鎖の立体障害によってRFとの結合を阻害することが可能である。N型糖鎖を付加するための改変として、好ましくは、248位のLysをAsnに置換する改変、424位のSerをAsnに置換する改変、436位のTyrをAsnに置換し438位のGlnをThrに置換する改変、438位のGlnをAsnに置換する改変が用いられる。特に好ましくは、424位のSerをAsnに置換する改変が用いられる。

0159

本発明のFc領域改変体を含むポリペプチドの好ましい例として、IgG抗体のように少なくとも1つの会合している2つのFc領域改変体が含まれるポリペプチドを挙げることができる。抗体としてIgG抗体を用いる場合、その定常領域の種類は限定されず、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのアイソタイプサブクラス)のIgGを用いることが可能である。本発明のIgG抗体は、好ましくはヒトIgGであり、さらに好ましくはヒトIgG1、ヒトIgG4であり、ヒトIgG1及びヒトIgG4の重鎖定常領域のアミノ酸配列は公知である。ヒトIgG1定常領域としては、遺伝子多型による複数のアロタイプ配列がSequences of proteins of immunological interest, NIH Publication No.91-3242に記載されているが、本発明においてはそのいずれであっても良い。

0160

本発明においてアミノ酸の改変とは、置換、欠損、付加、挿入あるいは修飾のいずれか、又はそれらの組み合わせを意味する。本発明においては、アミノ酸の改変はアミノ酸の変異と言い換えることが可能であり、同じ意味で使用される。
アミノ酸残基を置換する場合には、別のアミノ酸残基に置換することで、例えば次の(a)〜(c)のような点について改変することを目的とする。
(a)シート構造、若しくは、らせん構造の領域におけるポリペプチドの背骨構造
(b)標的部位における電荷若しくは疎水性、または
(c) 側鎖の大きさ。

0161

アミノ酸残基は一般の側鎖の特性に基づいて以下のグループに分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性: cys、ser、thr、asn、gln;
(3)酸性: asp、glu;
(4)塩基性: his、lys、arg;
(5) 鎖の配向に影響する残基: gly、pro;及び
(6)芳香族性: trp、tyr、phe。

0162

これらの各グループ内でのアミノ酸残基の置換は保存的置換と呼ばれ、一方、他グループ間同士でのアミノ酸残基の置換は非保存的置換と呼ばれる。本発明における置換は、保存的置換であってもよく、非保存的置換であってもよく、また保存的置換と非保存的置換の組合せであってもよい。

0163

アミノ酸配列の改変は、当分野において公知の種々の方法により調製される。これらの方法には、次のものに限定されるわけではないが、部位特異的変異誘導法(Hashimoto-Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide-directed dual amber method for site-directed mutagenesis. Gene 152, 271-275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide-directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.MethodsEnzymol. 100, 468-500、Kramer,W, Drutsa,V, Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide-directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide-directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350-367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site-specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488-492)、PCR変異法、カセット変異法等の方法により行うことができる。

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