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技術 磁気記録再生装置

出願人 株式会社東芝東芝デバイス&ストレージ株式会社
発明者 友田悠介木村香里竹尾昭彦
出願日 2018年9月18日 (2年3ヶ月経過) 出願番号 2018-173566
公開日 2020年3月26日 (9ヶ月経過) 公開番号 2020-047327
状態 未査定
技術分野 磁気ヘッド4(薄膜磁気ヘッド等) 磁気記録再生1
主要キーワード 材料表 高周波パターン 標準メディア FPCユニット リーディング端 長時間通電 通電抵抗 変換コネクタ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年3月26日)のものです。
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図面 (16)

課題

磁束制御層酸化を抑制し、高信頼性を有する磁気記録再生装置を得る。

解決手段

実施形態にかかる磁気記録再生装置は、主磁極補助磁極の間に設けられた磁束制御層と、補助磁極のABSに設けられた保護層とを含む。磁束制御層は、第1導電層と第2導電層の間に設けられたFe、Co、またはNiのうち少なくとも1つを含む磁性材料からなる調整層を含み、通電することによりスピントルクを発生させて調整層内の磁化の向きを反転する。磁束制御層に印加する電圧Vbは、下記式(1)で表されるVbaよりも低い。Vba=Vb0−a×1/log(t)×log(RH)×log(PO2)…(1)

概要

背景

磁束制御層スピントルクアシスト素子)を有するアシスト磁気記録ヘッドでは、ライトギャップ磁界を制御することにより、媒体印加する磁界を増強させることで、従来のヘッドでは記録が困難な媒体にも記録を可能にすることが出来る。しかし、アシスト磁気記録ヘッドを用いた記録方式ではアシスト効果発現させるため、磁束制御層に通電させる必要がある。しかしながら、この通電により磁束制御層は発熱するため、磁気記録再生装置内に残存している酸素原子と、磁束制御層の主成分である磁性体と酸素が結合し酸化磁性体を形成することにより、磁化消失、アシスト効果が減衰するという問題がある。また、酸素と結合した磁束制御層は結合した酸素分体積が増加するために空気支持面(ABS)から突き出す形で膨張し、ヘッド・ディスクインターフェース(HDI)のリスクも増加する。

概要

磁束制御層の酸化を抑制し、高信頼性を有する磁気記録再生装置を得る。 実施形態にかかる磁気記録再生装置は、主磁極補助磁極の間に設けられた磁束制御層と、補助磁極のABSに設けられた保護層とを含む。磁束制御層は、第1導電層と第2導電層の間に設けられたFe、Co、またはNiのうち少なくとも1つを含む磁性材料からなる調整層を含み、通電することによりスピントルクを発生させて調整層内の磁化の向きを反転する。磁束制御層に印加する電圧Vbは、下記式(1)で表されるVbaよりも低い。Vba=Vb0−a×1/log(t)×log(RH)×log(PO2)…(1)

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

磁気記録層を有する回転自在なディスク状の記録媒体、及び前記記録媒体に対し情報を記録する磁気記録ヘッドを備え、前記磁気記録ヘッドは空気支持面と、前記空気支持面まで延びる先端部を有し、垂直方向記録磁界を発生する主磁極と、前記主磁極の前記先端部にライトギャップを置いて対向し、前記主磁極とともに磁気コアを構成する補助磁極と、前記主磁極上に設けられた第1導電層、前記第1導電層に積層され、鉄、コバルト、またはニッケルのうち少なくとも1つを含む磁性材料からなる調整層、及び前記調整層と前記補助磁極とを電気的に接続する第2導電層を含み、通電することによりスピントルクを発生させて前記調整層内の磁化の向きを反転する磁束制御層と、前記主磁極、前記磁束制御層、及び前記補助磁極の前記空気支持面に設けられた保護層とを含み、前記磁束制御層に印加する電圧Vbは、下記式(1)で表される電圧Vbaより低い磁気記録再生装置。Vba=Vb0−a×1/log(t)×log(RH)×log(PO2)…(1)(但し、式中、Vb0は磁束制御層に印可可能な電圧、tは保護層の膜厚(nm)、RHは相対湿度、PO2は装置雰囲気酸素分圧(Pa)、aは装置ごとの係数である。)

請求項2

前記保護層は、1.0〜2.5nmの膜厚を有する請求項1に記載の磁気記録再生装置。

請求項3

前記保護層は、ダイヤモンドライクカーボンからなる表面層を含む請求項1または2に記載の磁気記録再生装置。

請求項4

前記磁束制御層に印加する電圧Vbは、100〜300mVである請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。

請求項5

動作中の磁束制御層の温度は5〜150℃である請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。

請求項6

前記磁気記録ヘッドが動作中であるとき、前記磁気記録ヘッドの周囲雰囲気は80%以の湿度を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。

請求項7

前記磁気記録ヘッドの周囲雰囲気は、前記記録再生装置内の空気全体の圧力を100%としたとき20%以下の酸素分圧を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。

請求項8

前記磁気記録ヘッドに接続された電圧制御部をさらに備え、前記電圧制御部は、前記磁束制御層に印加する電圧Vbが前記式(1)で表される電圧Vbaより低くなるように制御する請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。

技術分野

0001

本発明の実施形態は、磁気記録再生装置に関する。

背景技術

0002

磁束制御層スピントルクアシスト素子)を有するアシスト磁気記録ヘッドでは、ライトギャップ磁界を制御することにより、媒体印加する磁界を増強させることで、従来のヘッドでは記録が困難な媒体にも記録を可能にすることが出来る。しかし、アシスト磁気記録ヘッドを用いた記録方式ではアシスト効果発現させるため、磁束制御層に通電させる必要がある。しかしながら、この通電により磁束制御層は発熱するため、磁気記録再生装置内に残存している酸素原子と、磁束制御層の主成分である磁性体と酸素が結合し酸化磁性体を形成することにより、磁化消失、アシスト効果が減衰するという問題がある。また、酸素と結合した磁束制御層は結合した酸素分体積が増加するために空気支持面(ABS)から突き出す形で膨張し、ヘッド・ディスクインターフェース(HDI)のリスクも増加する。

先行技術

0003

米国特許第9165576号明細書
米国特許第7269889号明細書

発明が解決しようとする課題

0004

本発明の実施形態は、磁束制御層の酸化を抑制し、高信頼性を有する磁気記録再生装置を得る。

課題を解決するための手段

0005

実施形態かかる磁気記録再生装置は、磁気記録層を有する回転自在なディスク状の記録媒体、及び前記記録媒体に対し情報を記録する磁気記録ヘッドを備え、
前記磁気記録ヘッドは
空気支持面と、
記空気支持面まで延びる先端部を有し、垂直方向記録磁界を発生する主磁極と、
前記主磁極の前記先端部にライトギャップを置いて対向し、前記主磁極とともに磁気コアを構成する補助磁極と、
前記主磁極上に設けられた第1導電層、前記第1導電層に積層され、鉄、コバルト、またはニッケルのうち少なくとも1つを含む磁性材料からなる調整層、及び前記調整層と前記補助磁極とを電気的に接続する第2導電層を含み、通電することによりスピントルクを発生させて前記調整層内の磁化の向きを反転する磁束制御層と、
前記主磁極、前記磁束制御層、及び前記補助磁極の前記空気支持面に設けられた保護層とを含み、
前記磁束制御層に印加する電圧Vbは、下記式(1)で表される電圧Vbaより低い。
Vba=Vb0−a×1/log(t)×log(RH)×log(PO2)…(1)
(但し、式中、Vb0は磁束制御層に印可可能な電圧、tは保護層の膜厚(nm)、Rは相対湿度、PO2は装置内雰囲気酸素分圧(Pa)、aは装置ごとの係数である。)

図面の簡単な説明

0006

図1は、実施形態に係るハードディスクドライブ(以下、HDD)を示す斜視図である。
図2は、前記HDDにおける磁気ヘッドおよびサスペンションを示す側面図である。
図3は、前記磁気ヘッドのヘッド部を拡大して示す断面図である。
図4は、前記磁気ヘッドの記録ヘッドを模式的に示す斜視図である。
図5は、前記記録ヘッドのABS側端部を拡大して示すトラックセンターに沿った断面図である。
図6は、図5の磁気ヘッドの一部を拡大した図を示す断面図である。
図7は、前記記録ヘッドの発生磁界を模式的に示す図である。
図8は、磁束制御層の酸化メカニズムの模式図である。
図9は、保護層の膜厚を変化させたときの電圧と故障率との関係を表すグラフ図である。
図10は、印加電圧と故障率の関係を表すグラフ図である。
図11は、HDD内の残存酸素原子数と傾きαとの関係を表すグラフである。
図12は、温度と析出数との関係を表すグラフ図である。
図13は、湿度を変化させた場合の印加電圧と析出数との関係を表すグラフ図である。
図14は、酸素分圧を変化させたときの印加電圧と析出物個数との関係を表すグラフ図である。
図15は、比較の磁気記録ヘッドの断面の模式図である。

実施例

0007

下図面を参照しながら、実施形態に係る磁気記録再生装置としてのディスク装置について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。

0008

(第1の実施形態)
図1は、ディスク装置として、実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)のトップカバーを取り外して内部構造を示し、図2は、浮上状態の磁気ヘッドを示している。図1に示すように、HDDは筐体10を備えている。筐体10は、上面の開口した矩形箱状のベース12と、複数のねじによりベース12にねじ止めされてベース12の上端開口を閉塞する図示しないトップカバーと、を有している。ベース12は、矩形状の底壁12aと、底壁の周縁に沿って立設された側壁12bとを有している。トップカバーは、複数のねじによりベース12にねじ止めされ、ベース12の上端開口を閉塞する。

0009

筐体10内には、記録媒体として、例えば2枚の磁気ディスク16、および磁気ディスク16を支持および回転させる駆動部としてのスピンドルモータ18が設けられている。スピンドルモータ18は、底壁12a上に配設されている。各磁気ディスク16は、上面および下面に磁気記録層を有している。磁気ディスク16は、スピンドルモータ18の図示しないハブに互いに同軸的に嵌合されているとともにクランプばね27によりクランプされ、ハブに固定されている。これにより、磁気ディスク16は、ベース12の底壁12aと平行に位置した状態に支持されている。磁気ディスク16は、スピンドルモータ18により所定の速度で回転される。

0010

筐体10内に、磁気ディスク16に対して情報の記録、再生を行なう複数の磁気ヘッド17、これらの磁気ヘッド17を磁気ディスク16に対して移動自在に支持したキャリッジアッセンブリ22が設けられている。また、筐体10内に、キャリッジアッセンブリ22を回動および位置決めするボイスコイルモータ(以下VCMと称する)24、磁気ヘッド17が磁気ディスク16の最外周に移動した際、磁気ヘッド17を磁気ディスク16から離間したアンロード位置に保持するランプロード機構25、HDDに衝撃等が作用した際、キャリッジアッセンブリ22を退避位置に保持するラッチ機構26、および変換コネクタ等の電子部品実装されたフレキシブルプリント回路基板FPC)ユニット21が設けられている。
ベース12の外面には、図示しない制御回路基板がねじ止めされ、底壁12aと対向して位置している。制御回路基板は、スピンドルモータ18の動作を制御するとともに、FPCユニット21を介してVCM24、および磁気ヘッド17の動作を制御する。

0011

キャリッジアッセンブリ22は、ベース12の底壁12a上に固定された軸受部28と、軸受部28から延出した複数のアーム32と、弾性変形可能な細長い板状のサスペンション34と、を備えている。サスペンション34は、その基端スポット溶接あるいは接着によりアーム32の先端に固定され、アーム32から延出している。各サスペンション34の延出端に磁気ヘッド17が支持されている。これらのサスペンション34および磁気ヘッド17は、磁気ディスク16を間に挟んで互いに向かい合っている。

0012

図2に示すように、各磁気ヘッド17は、浮上型のヘッドとして構成され、ほぼ直方体形状のスライダ42とこのスライダ42の流出端トレーリング端)に設けられた記録再生用のヘッド部44とを有している。磁気ヘッド17は、サスペンション34の先端部に設けられたジンバルばね41に固定されている。各磁気ヘッド17は、サスペンション34の弾性により、磁気ディスク16の表面に向かうヘッド荷重Lが印加されている。図1および図2に示すように、各磁気ヘッド17は、サスペンション34およびアーム32上に固定された配線部材35、および中継FPC37を介してFPCユニット21に電気的に接続されている。

0013

次に、磁気ディスク16および磁気ヘッド17の構成について詳細に説明する。図3は、磁気ヘッド17のヘッド部44および磁気ディスク16を拡大して示す断面図である。
図1ないし図3に示すように、磁気ディスク16は、例えば、直径約2.5インチ(6.35cm)の円板状に形成され非磁性体からなる基板101を有している。基板101の各表面には、下地層として軟磁気特性を示す材料からなる軟磁性層102と、その上層部に、ディスク面に対して垂直方向に磁気異方性を有する磁気記録層103と、その上層部に保護層層104とが順に積層されている。

0014

図2および図3に示すように、磁気ヘッド17のスライダ42は、例えば、アルミナチタンカーバイド焼結体アルチック)で形成され、ヘッド部44は薄膜を積層することにより形成されている。スライダ42は、磁気ディスク16の表面に対向する矩形状のディスク対向面(空気支持面(ABS))43を有している。スライダ42は、磁気ディスク16の回転によってディスク表面とABS43との間に生じる空気流Cにより浮上する。空気流Cの方向は、磁気ディスク16の回転方向Bと一致している。スライダ42は、磁気ディスク16の表面に対し、ABS43の長手方向が空気流Cの方向とほぼ一致するように配置されている。

0015

スライダ42は、空気流Cの流入側に位置するリーディング端42aおよび空気流Cの流出側に位置するトレーリング端42bを有している。スライダ42のABS43には、図示しないリーディングステップトレーリングステップサイドステップ負圧キャビティ等が形成されている。
図3に示すように、ヘッド部44は、スライダ42のトレーリング端42bに薄膜プロセスで形成された再生ヘッド54および記録ヘッド(磁気記録ヘッド)58を有し、分離型の磁気ヘッドとして形成されている。再生ヘッド54および記録ヘッド58は、スライダ42のABS43に露出する部分を除いて、保護絶縁膜76により覆われている。保護絶縁膜76は、ヘッド部44の外形を構成している。

0016

再生ヘッド54は、磁気抵抗効果を示す磁性膜55と、この磁性膜55のトレーリング側およびリーディング側に磁性膜55を挟むように配置されたシールド膜56、57と、で構成されている。これら磁性膜55、シールド膜56、57の下端は、スライダ42のABS43に露出している。記録ヘッド58は、再生ヘッド54に対して、スライダ42のトレーリング端42b側に設けられている。

0017

図4は、記録ヘッド58および磁気ディスク16を模式的に示す斜視図、図5は、記録ヘッド58の磁気ディスク16側の端部を拡大して示すトラックセンターに沿った断面図である。図6は、図5の磁気ヘッド58の一部を拡大した図を示す断面図である。
図3ないし図5に示すように、記録ヘッド58は、磁気ディスク16の表面に対して垂直方向の記録磁界を発生させる高飽和磁化材料からなる主磁極60と、主磁極60のトレーリング側に配置され、主磁極60直下の軟磁性層102を介して効率的に磁路を閉じるために設けられた軟磁性材料からなるトレーリングシールド(補助磁極)62と、磁気ディスク16に信号を書き込む際、主磁極60に磁束を流すために主磁極60およびトレーリングシールド62を含む磁気コア(磁気回路)に巻きつくように配置された記録コイル64と、主磁極60のABS43側の先端部60aとトレーリングシールド62との間で、かつ、ABS43と面一に配置された磁束制御層65と、を有している。

0018

軟磁性材料で形成された主磁極60は、磁気ディスク16の表面およびABS43に対してほぼ垂直に延びている。主磁極60のABS43側の下端部は、ABS43に向かって先細に、かつ、トラック幅方向ロート状絞り込まれた絞込み部60bと、この絞込み部60bから磁気ディスク側に延出する所定幅の先端部60aと、を有している。先端部60aの先端、つまり、下端は、磁気ヘッドのABS43に露出している。先端部60aのトラック幅方向の幅は、磁気ディスク16におけるトラックの幅TWにほぼ対応している。また、主磁極60は、ABS43に対してほぼ垂直に延び、トレーリング側を向いた、シールド側端面60cを有している。一例では、シールド側端面60cのABS43側の端部は、ABS43に対しシールド側(トレーリング側)に傾斜して延びている。

0019

軟磁性材料で形成されたトレーリングシールド62は、ほぼL字形状に形成されている。トレーリングシールド62は、主磁極60の先端部60aにライトギャップWGを置いて対向する先端部62aと、ABS43から離間しているとともに主磁極60に接続される接続部(バックギャップ部)50とを有している。接続部50は非導電体52を介して主磁極60の上部、すなわち、ABS43から奥側あるいは上方に離れた上部、に接続されている。

0020

トレーリングシールド62の先端部62aは、細長い矩形状に形成されている。トレーリングシールド62の下端面は、スライダ42のABS43に露出している。先端部62aのリーディング側端面(主磁極側端面)62bは、磁気ディスク16のトラックの幅方向に沿って延びているとともに、ABS43に対してトレーリング側に傾斜している。このリーディング側端面62bは、主磁極60の下端部(先端部60aおよび絞込み部60aの一部)において、主磁極60のシールド側端面60cとライトギャップWGを置いてほぼ平行に対向している。

0021

図5に示すように、磁束制御層65は、主磁極60からトレーリングシールド62への磁束の流入のみを抑制する、すなわち、実効的にライトギャップWGの透磁率が負になるようスピントルクを発振する機能を有している。
詳細には、磁束制御層65は、導電性を有する中間層(第1非磁性導電層)65aと、調整層65bと、導電性を有する伝導キャップ層(第2非磁性導電層)65cと、を有し、これらの層を主磁極60側からトレーリングシールド62側に順に積層して、すなわち、磁気ヘッドの走行方向Dに沿って順に積層して、構成されている。中間層65a、調整層65b、伝導キャップ層65cは、それぞれ主磁極60のシールド側端面60cと平行な、すなわち、ABS43と交差する方向に延びる膜面をそれぞれ有している。
なお、中間層65a、調整層65b、伝導キャップ層65cの積層方向は、上記に限らず、逆向きに、すなわち、トレーリングシールド62側から主磁極60側に積層してもよい。
また、図6に示すように、主磁極60、磁束制御層65、及びトレーリングシールド62を含む記録ヘッド58のABS43上に保護層68が設けられている。

0022

中間層65aは、例えば、Cu、Au、Ag、Al、Ir、NiAl合金、などの金属層で、かつ、スピン伝導を妨げない材料により形成することができる。中間層65aは、主磁極60のシールド側端面60c上に直接、形成されている。調整層65bは、鉄、コバルト、またはニッケルのうち少なくとも1つを含む磁性材料を含む。調整層として、例えば、FeCoに、Al、Ge、Si、Ga、B、C、Se、Sn、及びNiのうち少なくとも1つが添加された合金材料、及びFe/Co、Fe/Ni、及びCo/Niからなる人工格子群から選択される少なくとも1種の材料などを使用することができる。調整層の厚さは、例えば2ないし20nmにすることができる。伝導キャップ層65cは、非磁性金属で、かつスピン伝導を遮断する材料を用いることができる。伝導キャップ層65cは、例えば、Ta、Ru、Pt、W、Mo、Irから選ばれる少なくとも一つ、あるいは少なくとも一つを含む合金により形成することができる。伝導キャップ層65cは、トレーリングシールド62のリーディング側端面62b上に直接、形成される。また、伝導キャップ層は、単層または多層にすることができる。

0023

中間層65aは、主磁極60からのスピントルクを伝達しつつ、交換相互作用が十分弱くなる程度の膜厚、例えば、1〜5nmの膜厚に形成されている。伝導キャップ層65cは、トレーリングシールド62からのスピントルクを遮断しつつ、かつ、交換相互作用が十分弱くなる程度の膜厚、例えば、1nm以上の膜厚があればよい。

0024

調整層65bは、主磁極60からのスピントルクにより、磁化の向きが磁場と逆向きになる必要があるため、調整層65bの飽和磁束密度は小さいほうがよい。その反面、調整層65bにより磁束を実効的に遮蔽するためには、調整層65bの飽和磁束密度は大きいほうがよい。ライトギャップWG間の磁界は10〜15kOe程度であるため、調整層65bの飽和磁束密度を1.5T程度以上としても改善効果は向上しにくい。これらのことから、調整層65bの飽和磁束密度は、1.5T以下であることが望ましく、より具体的には、調整層65bの膜厚と飽和磁束密度との積が20nmT以下となるように形成することが望ましい。

0025

中間層65a、調整層65b、伝導キャップ層65cの膜面に垂直な方向に電流が集中して流れるようにするため、磁束制御層65の周囲は、主磁極60およびトレーリングシールド62に接触している部分を除いて、絶縁層、例えば、保護絶縁膜76で覆われている。

0026

主磁極60は、Fe-Co合金を主成分とする軟磁性金属合金で形成することができる。この主磁極60は、中間層65aに電流を印加するための電極としての機能を兼ね備えている。トレーリングシールド62は、Fe-Co合金を主成分とする軟磁性金属合金で形成することができる。このトレーリングシールド62は、伝導キャップ層65cに電流を印加するための電極としての機能を兼ね備えている。

0027

保護層68は、ABSを保護するため設けられ、1つまたは2つ以上の材料からなり、単層または多層で構成される。保護層は、例えば、ダイヤモンドライクカーボンからなる表面層を有する。
また、記録ヘッド58のABS43と保護層68との間に、例えばSi等からなる下地層を設けることも可能である。
また、主磁極60と中間層65aとの間には、さらに下地層を設けることができる。
下地層には、例えばTa、Ruなどの金属を用いることができる。下地層の厚さは例えば0.5ないし10nmにすることができる。さらには約2nmにすることができる。
さらに、トレーリングシールド62と伝導キャップ層65cとの間にさらにキャップ層を設けることができる。

0028

キャップ層としては、Cu、Ru、W、及びTaからなる群から選択される少なくとも1種の非磁性元素を用いることができる。キャップ層の厚さは例えば0.5ないし10nmにすることができる。さらには約2nmにすることができる。
その他、主磁極と中間層の間にスピン偏極層としてCoFeを用いることができる。

0029

図3に示すように、主磁極60およびトレーリングシールド62は、それぞれ配線66、給電端子70、72、および電圧制御部79を介して電源74に接続され、この電源74から配線66、主磁極60、電圧制御部79、磁束制御層65、及びトレーリングシールド62を通して電流Iopを直列に通電する電流回路が構成されている。電圧制御部79は磁束制御層65に印加する電圧を制御している。

0030

記録コイル64は、例えば、主磁極60とトレーリングシールド62との間で、接続部50の回りに巻付けられている。記録コイル64は配線77を介して端子78に接続され、この端子78に第2電源80が接続されている。第2電源80から記録コイル64に供給する記録電流Iwは、図示しないHDDの制御部によって制御される。磁気ディスク16に信号を書き込む際、第2電源80から記録コイル64に所定の記録電流Iwが供給され、主磁極60に磁束を流し記録磁界を発生させる。HDDの制御部は、上記電圧制御部79を含むことができる。

0031

以上のように構成されたHDDによれば、VCM24を駆動することにより、キャリッジアッセンブリ22が回動し、磁気ヘッド17は、磁気ディスク16の所望のトラック上に移動され、位置決めされる。また、図2に示すように、磁気ヘッド17は、磁気ディスク16の回転によってディスク表面とABS43との間に生じる空気流Cにより浮上する。HDDの動作時、スライダ42のABS43はディスク表面に対し隙間を保って対向している。この状態で、磁気ディスク16に対して、再生ヘッド54により記録情報読み出しを行うとともに、記録ヘッド58により情報の書き込みを行う。

0032

図7は、磁束制御層65が機能している状態での、ライトギャップWG内の磁化状態を模式的に示している。
上記情報の書き込みにおいては、図3および図7に示すように、電源80から記録コイル64に交流電流を流すことにより、記録コイル64により主磁極60を励磁し、この主磁極60から直下の磁気ディスク16の記録層103に垂直方向の記録磁界を印加する。これにより、磁気記録層103に所望のトラック幅にて情報を記録する。

0033

また、磁気ディスク16に記録磁界を印加する際、電源74から配線66、主磁極60、磁束制御層65、トレーリングシールド62を通して電流Iopが印加される。この電流印加により、磁束制御層65の調整層65bに対して主磁極60からスピントルクが作用し、調整層65bの磁化の向きは、主磁極60とトレーリングシールド62との間に生じる磁界(ギャップ磁界)Hgapの向きと反対方向に向けられる。この磁化反転により、調整層65bは、主磁極60からトレーリングシールド62に直接的に流れる磁束(ギャップ磁界Hgap)を遮蔽する効果が生じる。結果として、主磁極60からライトギャップWGに漏れ出る磁界が低減し、主磁極60の先端部60aから磁気ディスク16の磁気記録層103に向かう磁束の収束度が向上する。これにより、記録磁界の分解能が向上し、記録線密度の増大を図ることができる。

0034

以上のように構成された第1の実施形態によれば、記録ヘッド58において、ライトギャップWGに設けられた磁束制御層65は、主磁極60からトレーリングシールド62への磁束の直接的な流入を抑制する、実効的にギャップの透磁率が負になるよう作用する。具体的には、磁束制御層65は、主磁極60とトレーリングシールド62との間に設けられ、スピントルクにより磁化の向きがギャップ磁界と逆に向くように構成されている。これにより、ライトギャップWGを狭く保ったまま、主磁極60からトレーリングシールド62に流失する磁束を、磁気ディスク(記録媒体)16に向けることができる。

0035

さらに、第1の実施形態によれば、長期信頼性担保するためには、磁束制御層に印加する電圧Vbが、下記式(1)で与えられる電圧Vbaよりも低く設定される。
Vba=Vb0−a×1/log(t)×log(RH)×log(PO2)…(1)
但し、式中、Vb0は磁束制御層に印加可能最大電圧、tは保護層の膜厚(nm)、RHは装置内雰囲気の相対湿度、PO2は装置雰囲気の酸素分圧(Pa)、aは装置ごとの係数である。

0036

実施形態によれば、上記関係式(1)に従って、磁束制御層の通電電流と磁気ヘッドの保護層およびHDD内の残存酸素原子数を決定することにより、磁束制御層の主成分である磁性体と、磁気記録ヘッドの周囲雰囲気に存在する酸素との結合を抑制し、長期の信頼性を確保することが可能となる。酸素原子数が空気と同程度の場合には、保護層の膜厚を厚く、もしくは通電電流を抑えることで、磁束制御層の酸化を抑制し信頼性を確保することができる。一方、酸素原子数が少ない場合には、保護層を薄くまたは通電電流を大きくすることでより高記録密度を実現できる。

0037

印加電圧Vbは、100〜300mVであることが好ましく、100mV未満であると、スピントランスファートルクによるアシスト効果が著しく減少し、書き込み能力不足する傾向があり、300mVを超えると、磁束制御層の故障率が大きく増加する傾向がある。

0038

保護層の厚さは、1.0〜2.5nmにすることができる。1.0nm未満であると、磁束制御層の酸化反応の進行が促進され、故障率が増加する傾向があり、2.5nmを超えると、磁気ヘッドと記録メディアの距離が広がりすぎるために、書き込み能力が低下する傾向がある。

0039

HDD内の雰囲気の相対湿度は80%以下であることが好ましく、80%を超えると、磁束制御層の酸化反応の進行が促進され、書き込み能力が減少する傾向がある。
HDD内の全気体の圧力を100とした時の酸素分圧は、20%以下であることが好ましく、20%を超えると、磁束制御層の酸化反応の進行が促進され、書き込み能力が減少する傾向がある。

0040

図8に、磁束制御層の酸化メカニズムの模式図を示す。
図示するように、磁束制御層65のABS上に、例えば、Si下地層67を介してダイヤモンドライクカーボンからなる保護層68が設けられているとき、保護層68表面には、雰囲気中の水分による薄膜69が形成されている。一般的な酸化のメカニズムでは、この保護層68にピンホール90があると、HDD内の酸素O2が保護層68表面の水分に溶け込み、ピンホール90を介して電子e−が磁束制御層65に到達し、磁束制御層65中の鉄イオンFe2+と反応して鉄の酸化反応が起きる。この酸化反応が促進されるのは、反応の種であるHDD内の酸素が多い場合、磁束制御層への通電時に温度が上昇することにより酸化反応のポテンシャルエネルギーを超える鉄原子が増加する場合、保護層の膜厚が薄くピンホールが増加した場合、などが挙げられる。磁束制御層を用いた磁気記録ヘッドには、これらのパラメータを適切に制御することにより、長期信頼性を担保することが要求される。

0041

実施例1
第1の実施形態にかかるアシスト磁気記録ヘッドの製造方法を以下に示す。
まず、主としてFeCoからなる主磁極上に、下記の材料及び厚さを有する層を、それぞれDCマグネトロンスパッタ法を用いて、順に積層した。
スピン偏極層CoFe 3nm
中間層 Cu 2nm
調整層1 FeCo 1nm
調整層2 NiFe 9 nm
伝導キャップ層Ru/Ta/Ru 2/2/1 nm
磁束制御層のストライプ高さ方向のサイズを規定するためのマスク層を形成し、その後、IBE(イオンビームエッチング)法で磁束制御層を主磁極が露出するまでエッチングした。磁束制御層周辺部分は絶縁膜のSiOxを成膜し、その後マスク層を除去した。また、トラック幅方向のサイズを規定するためのマスク層をたて、同様にエッチングし、素子周辺部分は絶縁膜のSiOxを成膜することにより、磁束制御層を加工した。

0042

次に、伝導キャップ層上に、トレーリングシールドとしてNiFeを形成した。
その後、ABS側の主磁極、磁束制御層、トレーリングシールド、及び絶縁膜上に、スパッタによりSi下地層をおよそ1nm成膜した後、Si下地層上にCVD法により、ダイヤモンドライクカーボンを成膜して厚さ1.6nmの保護層を形成することにより、磁気記録ヘッドを得た。同様にして、ABS側に1.6nmの保護層を有する磁気記録ヘッドを合計20本作製した。

0043

得られた磁気記録ヘッドは、磁束制御層の調整層が図示しない調整層1と図示しない調整層2に分かれていること、及び主磁極60と中間層との間にスピン偏極層が設けられていること以外は図5及び図6と同様の構造を有する。
ABS側の保護層の膜厚を各々2.0nm、2.4nmに変更する以外は同様にして、各々、磁気記録ヘッドを20本ずつ作製した。

0044

作製した磁気記録ヘッドを設置して、湿度20%の空気(酸素分圧19%)を封入し、HDDを作製した。
長時間の通電試験として、得られたHDDを環境温度55℃下において、5、10、150、200、250、300mVのそれぞれの印加電圧で、磁束制御層の通電を800時間持続した。通電試験前と通電試験後の抵抗を各々、HDD内で接続されているPreampにより測定して比較した。通電試験前の抵抗に対する通電試験後の抵抗の変化率が3%以下であるものを正常とし、3%を超えるものを故障として数え、全個数に対する故障の個数の比率を故障率(%)とした。

0045

また、長時間の通電試験の前に、標準メディアを用いてSNR(Signal Noise Ratio)測定を行い、ヘッドの書き込み能力を評価した。このSNR測定は、作製した磁気記録ヘッドを組み入れて、湿度20%の空気(酸素分圧19570Pa(酸素濃度19%))を封入したHDDを作製し、20℃の状態で試験を行った。これらの結果はヘッド20本あたりの平均値であり、SNR測定用パターン高周波パターンとした。

0046

故障率の評価基準は、50%以下をSランク、80%以下をAランク、90%以下をBランク、それ以外をCランクとした。
SNRの評価基準は、−2.5dB以下をSランク、−2.0dB以下をAランク、−1.5dB以下をBランク、それ以外をCランクとした。

0047

得られた結果を下記表1に示す。

0048

図9に、磁束制御層を有する磁気記録ヘッドについて保護層の膜厚を変化させたときの磁束制御層に印加される電圧と故障率との関係を表すグラフ図を示す。
ここでは、保護層の膜厚は、磁束制御層表面から保護層表面までの距離と定義する。

0049

図中、グラフ201は保護層の膜厚が1.6nmの場合、グラフ202は保護層の膜厚が2.0 nmの場合、グラフ203は保護層の膜厚が2.4nmの場合を各々示す。
図示するように、印加電圧Vbの増加に伴い、故障率が増加していく様子がわかる。印加電圧Vbが高くなると、ジュール熱の増加により磁束制御層が発熱し、酸化反応が促進されるためである。一方、保護層が厚い場合には、ピンホールから供給される酸素原子が少なくなるため、印加電圧Vbが高い場合においても故障率が低くなっている。これらの関係より、信頼性を担保するHDI設計により保護層膜厚が決定されれば、印加可能なVbが決まることになる。

0050

これらの関係から磁気ヘッド1本に要求される長期信頼性を担保できる最大電圧Vbaを数式で表したものが下記式(1)である。
Vba=Vb0−a×1/log(t)×log(RH)×log(PO2)…(1)
ここで、Vb0は磁束制御層へ印可可能な最大電圧値、tは保護層の膜厚(nm)、RHは相対湿度、PO2は装置雰囲気の酸素分圧(Pa)、aは装置ごとの係数である。

0051

磁束制御層の印加可能電圧は保護層膜厚に比例し、湿度および酸素分圧のlogに反比例することが判っている。これにより、必要な印加電圧Vbaを上記式(1)で表すことができる。
なお、上記表1に、Vba、及び係数aも併せて示す。
以上の結果より、保護層の膜厚が1.6nmときには、故障率とSNRを両立できる条件が無く、の磁束制御層の印加電圧は、保護層の膜厚2.0nmのときには100〜150mV、2.4nmのときには100〜200 mVが好ましいことがわかる。

0052

実施例2
保護層の膜厚を2.0nmとし、HDD内に入れる空気中の酸素分圧を5150Pa(酸素濃度5%)、19570Pa(酸素濃度19%)、41200Pa(酸素濃度40%)に変更すること以外は、実施例1と同様にして種々の印加電圧で長時間の通電試験を行い、故障率を求めた。

0053

得られた結果と、Vba、及び係数aを下記表2に示す。

0054

また、図10に、HDD内の残存酸素原子数を変化させたときの、印加電圧と故障率の関係を表すグラフ図を示す。
図中、酸素分圧が40530Pa(酸素濃度40%)の場合を204、酸素分圧が19251.75Pa(酸素濃度19%)の場合を205、及び酸素分圧が5166.25Pa(酸素濃度5%)の場合を206に示す。

0055

図10は、図9と同様に、印加電圧が増加していくとジュール熱が増加し、故障率が上昇していくことがわかる。また、HDD内の残存酸素数が多い場合には、磁束制御層と反応する酸素の原子数が多いために、低い印加電圧に対する故障率の傾きが大きく、また酸素原子数が少ない場合には傾きが小さくなる。なお、残存酸素数は、HDD内の全気体の圧力から算出した。

0056

図10における故障率と印加電圧の傾きをαとし、HDD内の残存酸素原子数と傾きαとの関係を表すグラフを図11に示す。
グラフ207に示すように、残存酸素原子数が減少するにつれて、αが減少する傾向にあり、印加電圧に対する故障率の上昇が緩やかになることが分かる。残存酸素原子数が減少すると、ピンホールを経由して磁束制御層に到達する確率が減少するため、結果として故障率は減少することになる。この傾きを外挿すると、HDD内の残存酸素原子数がおよそ108〜105個以下であれば、傾きαは0となり、磁束制御層の酸化という観点において故障率は0%となることが分かる。以上より、HDD内の残存酸素原子数により、磁束制御層に印加可能な電圧を決定することが可能となり、アシスト記録ヘッドのポテンシャル最大限生かすことが可能となる。

0057

実施例3
実施例1にも記載されているとおり、Vbを上昇させるとSNRが改善するが、同時に熱が発生し結果として信頼性が悪化する。熱の影響は、Vbがない場合(通電を行わない場合)や、磁束制御層の材料が実施例1と若干異なるものを用いた場合においても同様である。そこで、磁束制御層を有する磁気記録ヘッドの最適な動作温度について試験を行った。

0058

保護層の膜厚を2.0nmとし、実施例1と同様の磁気記録ヘッドを複数本用意した。
磁束制御層ヘッドを搭載したHDDを恒温槽に入れ、常温でのSNR測定を行った。その後、恒温槽の温度を5℃〜200℃に設定し、アシスト記録動作試験として、各温度条件下で断続的に磁束制御層に通電しながらアシスト記録動作を通算20時間行った。記録時間は20時間であるが、恒温槽での温度条件下に置かれたのは通算50時間である。その後、装置を恒温槽から取り出し、常温に戻るのを待った後、再度SNR測定を行った。高温条件下に置かれたヘッドについてはSNRが低下したことが確認された。これらのヘッドを電子顕微鏡で観察したところ、保護層の上に磁束制御層からの酸化物が大量に析出していることが明らかになった。

0059

図12に、温度と析出数との関係を表すグラフ図を示す。
図12は、磁気記録ヘッド数本について、析出した酸化物の1mm2あたり平均個数カウントしてプロットしたものである。高温の条件下ではピンホールからの析出が促進され、析出によりヘッドメディア間距離が増大し、結果としてSNR悪化を引き起こしたことがわかった。得られた結果を下記表3に示す。

0060

表中、ΔSNRについて、0.5dB以下であるときを二重丸、1.0dB以下であるときを○、1.1dB以上であるときを△として評価した。
上記結果より、動作温度の最適条件は好ましくは5〜150℃、さらに好ましくは5〜120℃であることがわかった。

0061

実施例4
磁束制御層の酸化において、湿度は重要なファクターである。湿度が高いほど材料表面に水の薄膜が生じ、結果として酸化を引き起こしやすくなる。実施例4では、2.0nmの膜厚を有する保護層を用いた磁気記録ヘッドを適用し、封入する空気の湿度を変えた以外は、実施例1と同様にしてHDDを作製した。ここで、湿度とは、水蒸気圧e(Pa)、飽和水蒸気圧es(Pa)を用い、室温20℃での相対湿度U(%RH)を、U(%RH)=e/es×100 で表される式(2)で求めたものと定義する。

0062

磁束制御層への印加電圧は0から300mVとし、断続的に磁束制御層に通電しながら通算50時間のアシスト記録動作を行った後、SNRを測定した。メディアは標準メディアを使用した。Vb=200mVにおけるアシスト記録動作試験の動作開始直後初期SNRと100時間の動作後のSNRの差分を下記表4に示す。また、Vbaの計算値も併せて示す。

0063

SNR測定後にヘッドを分解し、保護層表面1mm2あたりの酸化物析出物の数をカウントした。
得られた結果について、SNRの悪化量であるΔSNRが0.5dB以下であるときを二重丸、1.0dB以下であるときを○、1.1 dB以上であるときを△として評価した。
また、湿度を変化させた場合の印加電圧Vb、析出数、SNR値、Vba、及び係数aを下記表5に示す。

0064

図13に、湿度を変化させた場合の印加電圧と析出数との関係を表すグラフ図を示す。
図中、208は相対湿度が20%の場合、209は、相対湿度が60%の場合、210は、相対湿度が100%の場合のグラフを各々示す。
図13より、相対湿度が60%の時には印加電圧Vbに対し緩やかに酸化物の析出数が増加していくことがわかる。一方、相対湿度100%では印加電圧Vbに対する析出数の増加の依存性が著しく強い事がわかる。また表3からも、相対湿度100%では顕著なSNRの劣化が見られている。この結果から、装置内の相対湿度は好ましくは80%以下、さらに好ましくは60%以下であることがわかる。

0065

実施例5
実施例5では,磁束制御層の酸化における酸素分圧の影響を調べた。
空気の代わりに、ヘリウムに酸素を一定濃度混合したものを封入し、2.0nmの膜厚を有する保護層を用いた磁気記録ヘッドを適用したこと以外は実施例1と同様にしてHDDを作製した。このHDDには標準メディアを使用した。HDD内における全圧中の酸素分圧は、0〜50662.5pa(酸素濃度50%)とした。湿度が20%になるよう、酸素には水蒸気を混合した。それ以外のガスは純ヘリウムである。

0066

得られたHDDのSNRを測定した。その後、磁束制御層への印加電圧は0から300mVとし、断続的に磁束制御層に通電しながら通算50時間のアシスト記録動作試験を行い、SNRを測定して、アシスト動作試験前後でのSNRの変化を調べた。Vb=200mVでの実験の動作開始直後と200時間の動作後のSNR差分、及びVbaを下記表6に示す。

0067

SNR測定後はヘッドを分解し、保護層表面1mm2あたりにおける析出物の数をカウントした。
酸素分圧を変化させたときの印加電圧Vbと析出物の個数、及びSNRと、係数a、及びVbaとを下記表7に示す。

0068

また、酸素分圧を変化させたときの印加電圧Vbと析出物の個数との関係を表すグラフを図14に示す。
図中、211は5166.25Pa(酸素濃度5%)の場合、212は、酸素分圧が20%の場合、213は、相対湿度が50%の場合のグラフを各々示す。

0069

図14より、酸素分圧が20265Pa(酸素濃度20%)程度であれば、析出物のVbに対する依存性が弱いことがわかる。一方、酸素分圧を50662.5pa(50%まで上昇させた場合には、低電圧から酸化反応が始まり、電圧に対して著しく析出物が増加している事が分かる。また表4からは、酸素分圧が長時間通電試験として、200mVの印加電圧で、10%を超えたところで酸化物の析出が始まり、50%では顕著なSNR差が生じている事がわかる。以上から、装置内の酸素分圧は好ましくは20265Pa(酸素濃度20%)以下、さらに好ましくは10132.5Pa(酸素濃度10%)以下であることが言える。

0070

比較例6−1
以下に、高温多湿環境での試験例を示す。
ABS側に2.0nmの保護層を形成すること以外は実施例1と同様にして、磁気記録ヘッドを20本作製した。
作製した磁気記録ヘッドを設置して、湿度40%の空気(酸素分圧21278.25Pa(0.21atm))を封入し、HDDを作製した。

0071

長時間の通電試験として、得られたHDDを環境温度55℃下において200mVの電圧で800時間持続した。
通電試験前と通電試験後の抵抗を各々、HDD内で接続されているPreampにより測定して比較した。
なお、比較例6−1では、式(1)のaは42.5であり、式(1)に代入すると、Vba=101 mVとなり、印可電圧200 mVは、Vbaよりも大きい事が分かる。

0072

試験の結果、故障率が100%であった。
通電試験後の磁気記録ヘッドの様子を調べるため、磁気記録ヘッドのABSをトラックセンターに沿って切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
図15に、比較の磁気記録ヘッドの断面の模式図を示す。

0073

図示するように、比較の磁気記録ヘッド58’は、磁束制御層65中の鉄の酸化により保護層68中に析出した鉄酸化層91が、保護層68の表面領域68aを押し上げて変形させている。これにより、通電抵抗が上がるだけではなく、磁気ディスクと接触して損傷させる可能性がある。

0074

本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

0075

10…筺体、12…ベース、16…磁気ディスク、18…スピンドルモータ、
22…キャリッジアッセンブリ、42…スライダ、43…空気支持面(ABS)、
44…ヘッド部、54…再生ヘッド、58…記録ヘッド、60…主磁極、
60c…シールド側端面、62…トレーリングシールド(補助磁極)、
62b…リーディング側端面、64…記録コイル、65…磁束制御層、
65a…中間層、65b…調整層、65c…伝導キャップ層、68…保護層

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