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技術 地中フリクションカット施工方法、地中フリクションカット施工装置

出願人 前田建設工業株式会社
発明者 野田兼司石黒健安井利彰野田和政山下俊英
出願日 2018年9月18日 (2年3ヶ月経過) 出願番号 2018-173171
公開日 2020年3月26日 (9ヶ月経過) 公開番号 2020-045646
状態 未査定
技術分野 杭、矢板の設置・撤去及びそれらの付属品
主要キーワード 挿入抵抗力 付着土砂 塑性限界 押込み荷重 電圧印加ステップ 施工内容 抜き対象 クーロン斥力
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年3月26日)のものです。
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図面 (10)

課題

鋼部材地中からの引き抜きや地中への埋設をより効率的に行うことが可能な地中フリクションカット施工方法を提供する。

解決手段

地中フリクションカット施工方法は、地中からの引き抜き対象または前記地中への埋設対象となる対象部材と、前記対象部材の設置位置から離間した位置において少なくとも一部が前記地中に埋設された陽極部材との間に、前記対象部材が陰極、前記陽極部材が陽極となるように直流電圧印加する電圧印加ステップと、前記電圧印加ステップによる前記直流電圧の印加後の5分以内であって前記直流電圧が印加されている時に、前記対象部材の前記地中からの引き抜き、または、前記対象部材の前記地中への打ち込み、のいずれかの施工を開始する施工ステップと、を備える。

概要

背景

地盤埋設された鋼部材(例えば、鋼製矢板壁の鋼製矢板、鋼管矢板親杭横矢板壁H鋼など)を、その鋼部材の長手方向などに引き抜くためには、地盤からの摩擦抵抗に勝る力が必要であるため、地盤との結合力が大きいほど容易ではない。このため、従来から、引き抜き対象の鋼部材が陰極、引き抜きの対象ではない他部材が陽極になるように直流電圧印加することにより、鋼部材を引き抜く際に受ける地盤からの摩擦力を低下させた上で引き抜く方法が提案されている。この方法によれば、直流電圧を印加しない場合よりも小さな力で鋼部材を引き抜くことが可能となる。また、鋼部材の引き抜きに伴う周辺地盤荒れも少なくなるとされる(例えば特許文献1〜2参照)。

この方法の原理について、特許文献1には、上記の直流電圧の印加によって、引き抜き対象となる鋼部材の表面から発生する水素ガス体積膨張により鋼部材と地盤とが剥離し、鋼材と地盤との結合力を弱めることや、電気浸透現象によって引き抜き対象となる鋼部材に地中の水分が集まり地盤を柔らかくすることによって、引き抜きが容易になるとの説明がなされている。また、特許文献2にも、電気浸透現象により集まる地中の水分により、引き抜きが容易になるとの説明がなされている。

概要

鋼部材の地中からの引き抜きや地中への埋設をより効率的に行うことが可能な地中フリクションカット施工方法を提供する。地中フリクションカット施工方法は、地中からの引き抜き対象または前記地中への埋設対象となる対象部材と、前記対象部材の設置位置から離間した位置において少なくとも一部が前記地中に埋設された陽極部材との間に、前記対象部材が陰極、前記陽極部材が陽極となるように直流電圧を印加する電圧印加ステップと、前記電圧印加ステップによる前記直流電圧の印加後の5分以内であって前記直流電圧が印加されている時に、前記対象部材の前記地中からの引き抜き、または、前記対象部材の前記地中への打ち込み、のいずれかの施工を開始する施工ステップと、を備える。

目的

本発明の少なくとも一実施形態は、鋼部材の地中からの引き抜きや地中への埋設をより効率的に行うことが可能な地中フリクションカット施工方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

地中からの引き抜き対象または前記地中への埋設対象となる対象部材と、前記対象部材の設置位置から離間した位置において少なくとも一部が前記地中に埋設された陽極部材との間に、前記対象部材が陰極、前記陽極部材が陽極となるように直流電圧印加する電圧印加ステップと、前記電圧印加ステップによる前記直流電圧の印加後の5分以内であって前記直流電圧が印加されている時に、前記対象部材の前記地中からの引き抜き、または、前記対象部材の前記地中への打ち込み、のいずれかの施工を開始する施工ステップと、を備えることを特徴とする地中フリクションカット施工方法

請求項2

前記電圧印加ステップは、前記対象部材と前記陽極部材との間に前記直流電圧を印加することにより流れる電流電流値を、前記対象部材における前記地中に埋設されている部分の表面積除算した値である電流密度が、0よりも大きく、15以下の範囲内の設定値になるように前記直流電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の地中フリクションカット施工方法。

請求項3

前記施工ステップの実行中に、前記電流密度が前記設定値になるように前記直流電圧を調節する電圧調節ステップを、さらに備えることを特徴とする請求項2に記載の地中フリクションカット施工方法。

請求項4

前記電圧印加ステップは、所定のタイミングに従って、前記施工ステップの実行中に印加する前記直流電圧をオンオフすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地中フリクションカット施工方法。

請求項5

前記地中を構成する土砂は、粒径が0.075mm未満の細粒分を40%以上有する土を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の地中フリクションカット施工方法。

請求項6

前記施工ステップでは、少なくとも一部が地下水位以下に埋設された前記対象部材の前記引き抜きを開始するか、あるいは、少なくとも一部を前記地下水位以下に埋設されるように前記打ち込みを開始することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の地中フリクションカット施工方法。

請求項7

地中からの引き抜き対象または前記地中への埋設対象となる対象部材の設置位置から離間した位置において少なくとも一部が前記地中に埋設される陽極部材と、前記対象部材と前記陽極部材との間に、前記対象部材が陰極、前記陽極部材が陽極となるように直流電圧を印加する電圧印加装置と、前記電圧印加装置が印加する前記直流電圧の指示値を算出する印加電圧決定装置と、を備え、前記印加電圧決定装置は、前記対象部材と前記陽極部材との間に前記直流電圧を印加することにより流れる電流の電流値を、前記対象部材における前記地中に埋設されている部分の表面積で除算した値が、0よりも大きく、15以下となるように、前記直流電圧を印加することを特徴とする地中フリクションカット施工装置

技術分野

0001

本開示は、地中地盤。以下同様。)に埋設された鋼部材などを引き抜いたり、地中に鋼部材などを埋設する方法に関する。

背景技術

0002

地盤に埋設された鋼部材(例えば、鋼製矢板壁の鋼製矢板、鋼管矢板親杭横矢板壁H鋼など)を、その鋼部材の長手方向などに引き抜くためには、地盤からの摩擦抵抗に勝る力が必要であるため、地盤との結合力が大きいほど容易ではない。このため、従来から、引き抜き対象の鋼部材が陰極、引き抜きの対象ではない他部材が陽極になるように直流電圧印加することにより、鋼部材を引き抜く際に受ける地盤からの摩擦力を低下させた上で引き抜く方法が提案されている。この方法によれば、直流電圧を印加しない場合よりも小さな力で鋼部材を引き抜くことが可能となる。また、鋼部材の引き抜きに伴う周辺地盤荒れも少なくなるとされる(例えば特許文献1〜2参照)。

0003

この方法の原理について、特許文献1には、上記の直流電圧の印加によって、引き抜き対象となる鋼部材の表面から発生する水素ガス体積膨張により鋼部材と地盤とが剥離し、鋼材と地盤との結合力を弱めることや、電気浸透現象によって引き抜き対象となる鋼部材に地中の水分が集まり地盤を柔らかくすることによって、引き抜きが容易になるとの説明がなされている。また、特許文献2にも、電気浸透現象により集まる地中の水分により、引き抜きが容易になるとの説明がなされている。

先行技術

0004

特許第3198598号公報
特開昭48−11807号公報

発明が解決しようとする課題

0005

上述したように、特許文献1〜2では、電気分解によるガスの発生や、電気浸透によって生じる水の移動による摩擦低減効果を期待している。このため、例えば特許文献2に約100Vの直流電圧で約30分間待つとの記載があるように、電気浸透現象や電気分解によるガスの発生を待つ必要がある。この点、本発明者らは、鋭意研究により、上記の直流電圧の印加時に生じる、引き抜き対象の鋼部材と、地盤を構成する土粒子との間のクーロン斥力によって、引き抜き対象の鋼部材をより小さな力で引き抜くことが可能であることを見出した。この方法によれば、電気浸透現象や電気分解によるガスの発生を待つことなく、直流電圧の印加後、即座に、対象の鋼部材に対して施工(引き抜きや打ち込みなど)を行うことが可能となる。

0006

上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、鋼部材の地中からの引き抜きや地中への埋設をより効率的に行うことが可能な地中フリクションカット施工方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る地中フリクションカット施工方法は、
地中からの引き抜き対象または前記地中への埋設対象となる対象部材と、前記対象部材の設置位置から離間した位置において少なくとも一部が前記地中に埋設された陽極部材との間に、前記対象部材が陰極、前記陽極部材が陽極となるように直流電圧を印加する電圧印加ステップと、
前記電圧印加ステップによる前記直流電圧の印加後の5分以内であって前記直流電圧が印加されている時に、前記対象部材の前記地中からの引き抜き、または、前記対象部材の前記地中への打ち込み、のいずれかの施工を開始する施工ステップと、を備える。

0008

地中(地盤)を構成する土粒子の表面は電荷をもっており(マイナス帯電)、本発明者らは、直流電圧の印加により生じる、対象部材と地中を構成する土砂の土粒子との間に生じるクーロン斥力により、鋼部材などとなる対象部材を地中から引き抜く際や、対象部材を地中に打ち込む際に地中を構成する土砂から受ける摩擦抵抗が低減されることを見出した。このクーロン斥力は、陽極と陰極との間の電荷(自由電子)の移動により生じるため、上記の直流電圧の印加直後など、非常に短時間で生じる(後述する図5参照)。

0009

上記(1)の構成によれば、例えば鋼矢板鋼管杭、H鋼などの鋼部材などとなる対象部材と陽極部材とを地中で離間して土砂(土)を対向させるように設置し、対象部材が陰極、陽極部材が陽極となるように直流電圧を印加すると共に、上記のクーロン斥力が発生する直流電圧の印加の直後など、5分以内に、対象部材の地中からの引き抜きや、対象部材の地中への打ち込み(埋設)などの施工を開始する。上記の直流電圧の印加により、印加直後から極めて短時間で生じる、対象部材と地中を構成する土粒子との間のクーロン斥力により、対象部材が周囲の土砂から受ける摩擦抵抗を低減される。したがって、上記の直流電圧の印加後、迅速に、対象部材の施工を開始することができる。また、より小さな引き抜き荷重または押込み荷重により施工を行うことが可能となると共に、対象部材に対する施工の開始を早期化する分だけ短期間で施工を完了することが可能となるので、対象部材の施工をより効率的に行うことができる。

0010

(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記電圧印加ステップは、前記対象部材と前記陽極部材との間に前記直流電圧を印加することにより流れる電流電流値を、前記対象部材における前記地中に埋設されている部分の表面積除算した値である電流密度が、0よりも大きく、15以下の範囲内の設定値になるように前記直流電圧を印加する。

0011

本発明者らは、鋭意研究により、上記の直流電圧の印加時の引張荷重あるいは押込み荷と、印加していない時の引張荷重あるいは押込み荷重の比(例えば電圧印加時の荷重電圧非印加時の荷重。以下、フリクションカット率と称す。)は、直流電圧の印加により流れる電流を、対象部材における地中に埋設されている部分の表面積で割った値(つまり電流密度)と相関関係を有していることを見出した。具体的には、フリクションカット率は、電流密度を大きくするのに従って下限値付近までは下がるが、下限値付近以降は電流密度を大きくしてもほとんど変化しないように推移する(後述する図7参照)。

0012

上記(2)の構成によれば、対象部材および陽極部材への印加電圧を、直流電圧の印加時の電流密度が0よりも大きく、15以下の範囲の設定値にする。より具体的には、上記の設定値を、3以上10以下(例えば5)などにする。これによって、直流電圧の印加のための電力消費を抑制しつつ、クーロン斥力による比較的大きな摩擦低減効果を得ることができる。

0013

(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記施工ステップの実行中に、前記電流密度が前記設定値になるように前記直流電圧を調節する電圧調節ステップを、さらに備える。

0014

地中に埋設されている対象部材の表面積は、対象部材の引き抜き量が大きくなるにしたがって小さくなり、対象部材の打ち込みが進み、埋設されている部分が多くなるにしたがって大きくなるなど、施工が進むにつれて変化する。

0015

上記(3)の構成によれば、電圧調節ステップによって施工ステップの実行中に電流密度が設定値になるように印加電圧を調節する。これによって、直流電圧の印加電圧が不必要に高い状況や、印加電圧が小さく摩擦抵抗の低減効果が十分に得られないような状況を防止し、適切な直流電圧を印加することができる。

0016

(4)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(3)の構成において、
前記電圧印加ステップは、所定のタイミングに従って、前記施工ステップの実行中に印加する前記直流電圧をオンオフする。

0017

上記(4)の構成によれば、例えば周期的などの所定のタイミングに従って印加する直流電圧をオン、オフすることによっても、上記のクーロン斥力によって、対象部材が周囲の土砂から受ける摩擦抵抗を低減させることができる。

0018

(5)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(4)の構成において、
前記地中を構成する土砂は、粒径が0.075mm未満の細粒分を40%以上有する土を含む。

0019

本発明者らは、鋭意研究により、砂(細粒分が15%未満)は飽和砂であっても負に帯電しないことを見出した。
上記(5)の構成によれば、本発明の地中フリクションカット施工方法は、地中を構成する土砂の土粒子の粒径が0.075mm未満の細粒分を40%以上有する場合に適用される。これは、日本統一土質分類法における土の工学的分類方法の主にシルト粘性土などに分類される土(細粒分が50%以上)や、砂質土(細粒分が5%以上50%未満)の一部であり、対象部材と陽極部材とに上述した直流電圧を印加することにより生じるクーロン斥力によって、対象部材が周囲の土砂から受ける摩擦抵抗を低減させることができる。

0020

(6)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(5)の構成において、
前記施工ステップでは、少なくとも一部が地下水位以下に埋設された前記対象部材の前記引き抜きを開始するか、あるいは、少なくとも一部を前記地下水位以下に埋設されるように前記打ち込みを開始する。

0021

上記(6)の構成によれば、クーロン斥力が生じるためには土砂が飽和している、すなわち地下水位以下である必要があり、地下水位以下の地盤では土粒子間が水で充填されている(飽和土)ため、対象部材と陽極部材とに上述した直流電圧を印加することにより生じるクーロン斥力により、対象部材が周囲の土砂から受ける摩擦抵抗を低減することができる。

0022

(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る地中フリクションカット施工装置は、
地中からの引き抜き対象または前記地中への埋設対象となる対象部材の設置位置から離間した位置において少なくとも一部が前記地中に埋設される陽極部材と、
前記対象部材と前記陽極部材との間に、前記対象部材が陰極、前記陽極部材が陽極となるように直流電圧を印加する電圧印加装置と、
前記電圧印加装置が印加する前記直流電圧の指示値を算出する印加電圧決定装置と、を備え、
前記印加電圧決定装置は、前記対象部材と前記陽極部材との間に前記直流電圧を印加することにより流れる電流の電流値を、前記対象部材における前記地中に埋設されている部分の表面積で除算した値が、0よりも大きく、15以下となるように、前記直流電圧を印加する。

0023

上記(7)の構成によれば、上記(2)と同様の効果を奏する。

発明の効果

0024

本発明の少なくとも一実施形態によれば、鋼部材の地中からの引き抜きや地中への埋設をより効率的に行うことが可能な地中フリクションカット施工方法が提供される。

図面の簡単な説明

0025

本発明の一実施形態に係る地中フリクションカット施工方法を示す図である。
本発明の一実施形態に係る地中フリクションカット施工装置を概略的に示す図である。
本発明の一実施形態に係るクーロン斥力によって得られる摩擦低減効果による対象部材への土粒子の付着力低下のイメージを示す図である。
本発明の一実施形態に係る引き抜き抵抗力と引き抜き量との関係を示す図である。
本発明の一実施形態に係る鋼部材の沈下実験により計測した荷重の時間推移を示す図である。
本発明の一実施形態に係る鋼部材を模擬地盤から引抜いた際の付着土砂の様子を示す図であり、(a)直流電圧の印加ありの場合、(b)直流電圧の印加なしの場合を示す。
本発明の一実施形態に係るフリクションカット率と電流密度との関係を示す図である。
本発明の一実施形態に係る土砂の種類に応じた鋼部材の沈下実験の結果を示す図である。
本発明の一実施形態に係る粘性土と砂との構成比に応じたフリクションカット率と印加電圧との関係を示す図であり、フリクションカット率は、対象部材の50mm挿入時の比である。

実施例

0026

以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。

0027

図1は、本発明の一実施形態に係る地中フリクションカット施工方法を示す図である。図2は、本発明の一実施形態に係る地中フリクションカット施工装置1を概略的に示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係るクーロン斥力によって得られる摩擦低減効果による対象部材2への土粒子gの付着力低下のイメージを示す図である。図4は、本発明の一実施形態に係る引き抜き抵抗力と引き抜き量との関係を示す図である。図5は、本発明の一実施形態に係る鋼部材の沈下実験により計測した荷重の時間推移を示す図である。また、図6は、本発明の一実施形態に係る鋼部材を模擬地盤Gmから引抜いた際の付着土砂の様子を示す図であり、(a)直流電圧の印加ありの場合、(b)直流電圧の印加なしの場合を示す。

0028

本発明の地中フリクションカット施工方法(図1参照)は、例えば鋼矢板、鋼管杭、H鋼などの鋼部材などとなる対象部材2を地中G(地盤。以下同様。)から引き抜く際や、地中Gへ埋設する際に用いる方法である。具体的には、対象部材2となる鋼部材は、例えば、鋼製矢板壁の鋼製矢板、鋼管矢板、親杭横矢板壁のH鋼などとなる。矢板は、建築基礎工事土木工事において、土(土砂。以下同様。)や水が矢板を挟んだ反対側に入り込むのを防ぐための板状の部材である。そして、通常は、複数の矢板など、対象部材2となり得る複数の鋼部材などが建築物構造物基礎の周囲などに並べて地中Gに打ち込まれ、地中Gに埋設される。また、通常、地中Gに埋設された対象部材2は、必要がなくなると地中Gから引き抜かれる。

0029

なお、通常、引き抜いた鋼部材(対象部材2)には、地中Gに埋設された状態の時にその鋼部材の周囲に存在していた土砂が付着するが、このような鋼部材へ土砂が付着したままで鋼部材を引く抜くと地中Gと鋼部材の間に空隙が生ずる(付着土砂の共上がり)。そして、この共上がりによる近接埋設構造物地表面の沈下等トラブルの可能性が懸念される場合などには、やむなく鋼部材を地中Gに残置することもある。特に軟弱粘性土地盤では、矢板などに粘性土が付着した状態で大量の土が矢板と一緒に抜け上がり、かなりの空隙が地盤に発生する場合がある。また、引き抜かれた鋼部材は、再利用のためなどに洗浄されることにより、付着している土砂が取り除かれる。

0030

また、地中フリクションカット施工方法は、対象部材2を図2に示すような地中フリクションカット施工装置1に接続した状態で行われる。図2に示すように、地中フリクションカット施工装置1(以下、単に、施工装置1)は、対象部材2の設置位置から所定距離Lだけ離間した位置において少なくとも一部が地中Gに埋設された状態で設置される陽極部材3と、地中Gからの引き抜き対象または地中Gへの埋設対象となる対象部材2が陰極、陽極部材3が陽極となるように直流電圧を印加する電圧印加装置4と、を備える。そして、電圧印加装置4のプラス側(正極側)を陽極部材3に接続し、マイナス側(負極側)を陰極部材として機能させる対象部材2に接続した状態を構築することにより、施工装置1により上述したような直流電圧の印加が可能となる。

0031

より具体的には、上記の対象部材2の設置位置とは、対象部材2に対する施工内容が地中Gからの引き抜きの場合には、対象部材2が埋設されている位置となる。他方、対象部材2に対する施工内容が地中Gへの打ち込みの場合には、これから対象部材2を打ち込む予定位置となる。また、陽極部材3の一部が地中Gに埋設されることにより、陽極部材3の側面の一部が周囲の土砂に接触した状態となる。この陽極部材3は、鋼部材などの電極として用いることが可能な専用の部材を別途用意し、対象部材2への施工前に、対象部材2の設置位置から所定距離Lだけ離れた位置で地中Gに埋設しても良い。あるいは、対象部材2の候補ともなり得る、既に地中Gに埋設されている鋼部材などであって、対象部材2とは別の部材を陽極部材3として利用しても良い。例えば矢板の場合には、埋設されている複数の矢板のうちの1つを対象部材2とし、その対象部材2から所定距離Lだけ離れた位置の他の矢板を陽極部材3としても良く、この2つの矢板同士は、その他の矢板を介するなどして接触しないようにされる。

0032

そして、図1に示すように、地中フリクションカット施工方法は、電圧印加ステップ(S1)と、施工ステップ(S2)と、を備える。
以下、地中フリクションカット施工方法が備える上記のステップについて、それぞれ説明する。

0033

電圧印加ステップ(S1)は、上述した対象部材2と陽極部材3との間に、対象部材2が陰極、陽極部材3が陽極となるように直流電圧を印加するステップである。具体的には、既に説明したように、対象部材2(陰極部材)と、陽極部材3と、にそれぞれ接続された電圧印加装置4を操作し、直流電圧を印加する。

0034

施工ステップ(S2)は、電圧印加ステップ(S1)による直流電圧の印加後の5分以内であって直流電圧が印加されている時に、対象部材2の地中Gからの引き抜き、または、対象部材2の地中Gへの打ち込み、のいずれかの施工を開始するステップである。具体的には、対象部材2をその長手方向に沿って引っ張ることが可能なクレーン車鋼管打設機などの重機9を操作し、施工を開始する。より具体的には、対象部材2に対する施工内容が地中Gからの引き抜きの場合には、重機9を操作するなどして、対象部材2に対して引張荷重を加える。他方、対象部材2に対する施工内容が地中Gへの打ち込みの場合には、重機9を操作するなどして、対象部材2に対して自重以外の押込み荷重を加える。

0035

このように、電圧印加ステップ(S1)の実行後、即座に、施工ステップ(S2)を実行可能なのは、上記の電圧印加ステップ(S1)により直流電圧を印加することで即座に生じる土粒子gと、陰極となる対象部材2との間で生じるクーロン斥力により、対象部材2が土砂から受ける摩擦抵抗が低減されることによる。地中Gを構成する土粒子gは、地中の水分によってマイナス(負)に帯電した状態にあるが、図3(a)に示すように、対象部材2に直流電圧を印加していない場合(非通電時)には、対象部材2に強く付着した状態にある。しかし、図3(b)に示すように、直流電圧を印加することにより(通電時)、陽極部材3から電源を介して対象部材2(陰極)に電子が供給されると、瞬間的に、マイナスの電荷を帯びている土粒子gと対象部材2との間にクーロン斥力(反発力)が生じる。また、直流電圧が印加された状態では、クーロン斥力が維持される。

0036

そして、このクーロン斥力により土粒子gの対象部材2への付着力が低下される。具体的には、図4に示すように、直流電圧の印加時(実線)の方が、直流電圧の印加がない時(破線)よりも、同じ量だけ引き抜く際の引き抜き抵抗力が小さくなっており、クーロン斥力によって、摩擦抵抗が低減されているのが分かる。なお、図4縦軸が引き抜き抵抗力[N:ニュートン]、横軸が引き抜き量(mm)である。

0037

また、図5に示すグラフは、土砂(トチクレイ珪砂7号とを混合した土(模擬地盤Gm))の上に鋼部材を設置し、その鋼部材と、予め土砂に埋設した陽極部材3との間に直流電圧を印加した際に、自重で沈下する際の重力方向に沿ってかかる沈下荷重(引張荷重)[N]を計測した計測結果(縦軸)を、時間推移(横軸)に対してプロットしたグラフである。縦軸には、印加した直流電圧の電圧値(以下、印加電圧V)と、印加時に流れる電流値も併記している。なお、沈下荷重は、模擬地盤Gmに鋼部材を圧入し、圧入抵抗(鋼部材上向き)を計測することより得られるが、荷重のゼロ点を取った後に通電すると、上向き抵抗が低下し、荷重計には下向きの荷重(沈下荷重)が発生する。図5を見ると、直流電圧の印加直後から沈下荷重が増加しており(自沈しており)、クーロン斥力による摩擦抵抗の低減が即座に生じていることが分かる。

0038

すなわち、地中G(地盤)を構成する土粒子gの表面は電荷をもっており(マイナスに帯電)、本発明者らは、直流電圧の印加により生じる、対象部材2と地中Gを構成する土砂の土粒子gとの間に生じるクーロン斥力により、鋼部材などとなる対象部材2を地中Gから引き抜く際や、対象部材2を地中Gに打ち込む際に地中Gを構成する土砂から受ける摩擦抵抗が低減されることを見出した。このクーロン斥力は、陽極と陰極との間の電荷(自由電子)の移動により生じるため、上記の直流電圧の印加直後など、非常に短時間で生じる(図5参照)。したがって、従来のように、直流電圧の印加後、電気浸透現象や電気分解によるガスの発生を待つことなく、直流電圧の印加後のより短い時間の後に対象部材2に対して施工を行っても、より小さな力で対象部材2の引き抜きや打ち込みを行うことが可能となる。

0039

図1に示す実施形態について説明すると、図1では、ステップS0において、対象部材2の施工(引き抜き/打ち込み)のためのセッティングを実行している。具体的には、対象部材2に対して上述した施工装置1の設置(セッティング)を行う。このステップS0において、対象部材2に対する重機9の接続も行っても良い。その後、図1では、ステップS1において、上述した電圧印加ステップを実行した後、ステップS2において、上述した施工ステップを実行している。

0040

なお、図1に示す実施形態では、電圧印加ステップ(S1)は、施工ステップ(S2)の実行中に一定の直流電圧を印加しているが、他の幾つかの実施形態では、電圧印加ステップ(S1)は、図5に示すように周期的などの所定のタイミングに従って、施工ステップ(S1)の実行中に印加する直流電圧をオン、オフしても良い。図5に示す沈下実験の結果から、直流電圧のオンにより、重力方向に沿った荷重が増加し、オフにより荷重が一定あるいは減少することが分かる。

0041

また、図1に示す実施形態は、地中フリクションカット施工方法にステップS0が含まれている実施形態であるが、地中フリクションカット施工方法に上記のステップS0に相当する構成が含まれていなくても良い。つまり、この場合には、上記のステップS0に相当する作業が既に完了しているところから、地中フリクションカット施工方法を適用する実施形態となる。また、上記のステップS0で実行している対象部材2に対する重機9の接続は、ステップS1とステップS2との間で行っても良い。

0042

上記の構成によれば、対象部材2が陰極と陽極部材3が陽極となるような直流電圧を印加すると共に、上記のクーロン斥力が発生する直流電圧の印加の直後など、5分以内に、対象部材の地中からの引き抜きや、対象部材の地中への打ち込み(埋設)などの施工を開始する。上記の直流電圧の印加により、印加直後から極めて短時間で生じる、対象部材2と地中Gを構成する土粒子gとの間のクーロン斥力により、対象部材2が周囲の土砂から受ける摩擦抵抗を低減される。したがって、上記の直流電圧の印加後、迅速に、対象部材2の施工を開始することができる。また、より小さな引き抜き荷重または押込み荷重により施工を行うことが可能となると共に、対象部材2に対する施工の開始を早期化する分だけ短期間で施工を完了することが可能となるので、対象部材2の施工をより効率的に行うことができる。

0043

さらに、上記のように対象部材2に対する摩擦抵抗が低減された状態で引き抜き施工を行うことによって、引き抜いた際に対象部材2に付着している土砂を少なくすることができる。例えば、図6に示す例示では、引き抜き対象の鋼部材が陰極、陽極部材3が陽極となるような直流電圧を印加した場合(図6(a)参照)に対象部材2に付着した土砂は約1.2gであった。直流電圧を印加しない場合(図6(b)参照)に対象部材2に付着した土砂は約81.3gであったので、上記の直流電圧の印加により、引き抜き対象の鋼部材への付着土砂は約1/70に低減されている。よって、引き抜かれた対象部材2と共に大量の土が一緒に抜け上がること(共上がり)で地中Gに生じる空隙を小さくすることができ、この空隙による地表面沈下などのトラブルが発生する可能性を小さくすることができる。また、対象部材2の再利用のためなどに行う清掃作業に要する負担やコストを小さくすることができる。

0044

よって、従来は、このような鋼部材の引き抜きに伴う沈下対策として、引き抜き速度極端に遅くして空洞の発生を抑制しながら引き抜く方法や、引き抜き直後に地表部から砂やソイルセメント等を注入して空洞を埋める方法が取られていたが、その必要性を小さくできる。このため、沈下対策によって施工に必要な時間が多くなり非効率になることや、注入用の材料を用意するためのなどのコストの増加を回避することができる。

0045

次に、上述した電圧印加ステップ(S1)に関する幾つかの実施形態について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係るフリクションカット率と電流密度との関係を示す図である。

0046

幾つかの実施形態では、図7に示すように、電圧印加ステップ(S1)は、対象部材2と陽極部材3との間に直流電圧を印加することにより流れる電流の電流値を、対象部材2における地中Gに埋設されている部分の表面積で除算した値である電流密度が、0よりも大きく、15以下の範囲内の設定値αになるように、上述した直流電圧を印加する。つまり、電流密度が設定値αとなるように、印加する直流電圧の電圧値(印加電圧V)を決定し、その印加電圧Vを、上述した電圧印加装置4を用いるなどして実際に印加する。

0047

本発明者らは、鋭意研究により、上記の直流電圧の印加時の引張荷重あるいは押込み荷と、印加していない時の引張荷重あるいは押込み荷重との比(例えば電圧印加時の荷重÷電圧非印加時の荷重。以下、フリクションカット率と称す。)は、直流電圧の印加により流れる電流を、対象部材2における地中に埋設されている部分の表面積で割った値(つまり電流密度)と相関関係を有していることを見出した。具体的には、図7に示すように、フリクションカット率は、電流密度を大きくするのに従って下限値(図7では0.3〜0.4の間の値)付近までは下がるが、その下限値付近以降は電流密度を大きくしてもほとんど変化しないように推移する。

0048

具体的には、本発明者らは、様々な形状(平型やH型など)や大きさを有する鋼部材であって、その長手方向が重力方向に沿うよう土砂に埋められた状態や、その短手方向が重力方向に沿うよう土砂に埋めた状態の鋼部材に対して、鋼部材が陰極、陽極部材3が陽極になるように印加する直流電圧の印加電圧Vの大きさを変えて、フリクションカット率を計測した。そして、本発明者らは、試行錯誤を通して、印加した直流電圧あるいは電流値とフリクションカット率との間の関係性ではなく、フリクションカット率の計測データと、鋼部材の土砂に埋設されている部分の表面積のデータと、直流電圧の印加時の電流値の計測データとに着目することにより、図7に示すような、フリクションカット率と、電流密度との相関関係を見出した。

0049

図7のグラフは、縦軸をフリクションカット率、横軸を電流密度[A/m2]としたグラフである。図7に示すように、フリクションカット率は、電流密度が所定値図7の例では10付近)までは、電流密度が大きくなるに従って、フリクションカット率は2次関数指数関数)的に減少していき(図7では0.3付近まで低下)、鋼部材に対する引張荷重などが、直流電圧の印加がない場合に比べて低減されていることが分かる。また、電流密度を所定値よりも大きくしても、フリクションカット率はほとんど変化しないようになり、一定に近づくように推移するのがわかる。

0050

そして、図7に示すように、直流電圧の印加時の電流密度の設定値αは3以上10以下であれば、フリクションカット率は下限値に近い0.3〜0.4の間にある。また、5付近であれば、電流密度の減少割合に対するフリクションカット率の減少割合の大きさが比較的大きい。よって、直流電圧の印加時の電流密度の設定値αを3以上10以下、あるいは、5付近とすることにより、直流電圧のための供給電力最大限低くしつつ、摩擦抵抗の低減効果を最大化することが可能である。

0051

上記の構成によれば、対象部材2および陽極部材3への印加電圧Vを、直流電圧の印加時の電流密度が0よりも大きく、15以下の範囲の設定値αにする。より具体的には、上記の設定値αを、3以上10以下(例えば5)などにする。これによって、直流電圧の印加のための電力消費を抑制しつつ、クーロン斥力による比較的大きな摩擦低減効果を得ることができる。

0052

また、幾つかの実施形態では、図1に示すように、地中フリクションカット施工方法は、施工ステップ(S2)の実行中に、上述した電流密度が上記の設定値αになるように直流電圧を調節する電圧調節ステップ(S3)を、さらに備えても良い。地中Gに埋設されている対象部材2の表面積は、対象部材2の引き抜き量が大きくなるにしたがって小さくなり、対象部材2の打ち込みが進み、埋設されている部分が多くなるにしたがって大きくなるなど、施工が進むにつれて変化する。よって、対象部材2の施工中に電流密度が設定値αになるように調節する。

0053

具体的には、図2に示すように、施工装置1は、対象部材2と陽極部材3との間を流れる電流を計測するための電流計5を、さらに備えている。そして、この電流計5の計測値Iと、対象部材2の引き抜き量あるいは打ち込み量となる施工量hの計測値と、に基づいて電流密度を施工中に算出し、その算出値が設定値αになるように、電圧印加装置4を操作するなどして直流電圧の印加電圧Vを調節する。なお、地中Gに埋設されている部分の表面積は、施工量hに応じてどのように変化するかを予め表や算出式として用意しておき、施工量hの計測値から簡易に求まるようにされていると良い。

0054

より具体的には、図2に示すように、施工装置1が、電圧印加装置4が印加すべき直流電圧の指示値を算出する印加電圧決定装置6を備えることによって、ステップS3に相当する内容を実行しても良い。図2に示す実施形態では、印加電圧決定装置6には、電流計5の計測値Iと、施工量hの計測値とが入力されるようになっており、印加電圧決定装置6は、これらの入力値と、内部の記憶装置(不図示)に保持している、施工量hから地中Gに埋設されている部分の表面積を算出可能な上述した表や算出式などの算出関数と、に基づいて電流密度を算出する。そして、印加電圧決定装置6は、算出した電流密度が設定値αになるように、電圧印加装置4の電圧を自動で調整するようになっている。

0055

ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、印加電圧決定装置6は、電流密度の算出結果をディスプレイに表示するところまで実行し、電圧印加装置4が印加する印加電圧Vの調節は、ディスプレイに表示される電流密度の算出結果が設定値αになるように、人手で行っても良い。

0056

上記の構成によれば、電圧調節ステップ(S3)によって施工ステップ(S2)の実行中に電流密度が設定値αになるように印加電圧Vを調節する。これによって、直流電圧の印加電圧Vが不必要に高い状況や、印加電圧が小さく摩擦抵抗の低減効果が十分に得られないような状況を防止し、適切な直流電圧を印加することができる。

0057

ただし、本実施形態に本発明は限定されない。他の幾つかの実施形態では、施工前に、電流密度が設定値αとなるように印加電圧Vを決定し、施工中には、上述したような電圧調節ステップ(S3)による印加電圧Vの調整は行わなくても良い。また、対象部材2の地中Gに埋設されている部分の長さが不明な場合には、その部分の表面積の想定値や、全体の表面積を用いても良い。

0058

次に、上述した地中フリクションカット施工方法(施工装置1)を行うのに適した土砂について、説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る土砂の種類に応じた鋼部材の沈下実験の結果を示す図であり、フリクションカット率は、対象部材の50mm挿入時の比である。また、図9は、本発明の一実施形態に係る粘性土と砂との構成比に応じたフリクションカット率と印加電圧Vとの関係を示す図である。

0059

幾つかの実施形態では、上述した地中Gを構成する土砂は、粒径が0.075mm未満の細粒分を40%以上有する土を含む。より詳細には、地中Gを構成する土砂は、粒径が0.065mm以下の細粒分を40%以上有する土を含んでいても良い(図9参照)。これは、本発明者らが、鋭意研究により、砂(細粒分が15%未満)は飽和砂であっても負に帯電しないことを見出したことによる。

0060

詳述すると、図8に示すグラフは、様々な種類の土砂の上にそれぞれ鋼部材を設置し、その鋼部材と、予め土砂に埋設した陽極部材3との間に直流電圧を印加した際に、自重で沈下する際の重力方向に沿ってかかる沈下荷重[N]を計測した計測結果(縦軸)を、時間軸(横軸)に対してプロットしたグラフである。図8には、日本統一土質分類法における土の工学的分類方法による砂(細粒分が15%未満の土)と、乾燥した粘性土(木節粘性土)と、飽和木節粘性土(塑性限界Wp=40%の木節粘性土)についての実験結果が示されている。そして、図8から、直流電圧を印加した場合、砂は、飽和砂であっても、自沈せず、沈下荷重が大きくなることはない。つまり、砂は負に帯電せず、クーロン斥力が発生しないことが分かる。

0061

また、図9のグラフには、土砂を構成する粘土(粒径が0.065mm以下の土)と砂(細粒分が15%未満の土)との構成比が異なる複数種類の土砂に、それぞれ、鋼部材と陽極部材3とを設置して、鋼部材が陰極、陽極部材3が陽極になるように印加する直流電圧の印加電圧Vの大きさを変えたときの、フリクションカット率の変化が示されている。砂が60%以下では、砂の割合(砂分)が大きくなるほど、同一の印加電圧Vを印加した場合のクーロン斥力による摩擦低減効果は概ね、小さくなっている。逆に言うと、粘土が40%以上では、粘土の割合が大きくなるほど、同一の印加電圧Vを印加した場合のクーロン斥力による摩擦低減効果は概ね大きくなっている。つまり土砂中の粘土分が多いほど、打ち込み開始時の挿入抵抗力の大きな低減が得られるといえる。

0062

したがって、本発明の地中フリクションカット施工方法は、地中を構成する土砂の土粒子gの粒径が0.075mm未満の細粒分を40%以上有する場合に適用される。これは、日本統一土質分類法における土の工学的分類方法の主にシルト、粘性土などに分類される土(細粒分が50%以上)や、砂質土(細粒分が5%以上50%未満)の一部であり、対象部材2と陽極部材3とに上述した直流電圧を印加することにより生じるクーロン斥力によって、対象部材2が周囲の土砂から受ける摩擦抵抗を低減させることができる。

0063

また、図8から粘性土であっても乾燥した粘性土では、やはり、クーロン斥力は発生しないことが分かる。また、飽和粘性土であっても、細粒分が多く、塑性が高いほど電気的に高活性であり、クーロン斥力による効果を得やすいことが分かる。換言すれば、既往の粘性土の活性に関する研究により、土粒子gの帯電度合い比表面積ζ電位に比例し、この比表面積とζ電位は粘土分含有率塑性指数(Ip)に比例するので、塑性指数が高く、粘土分を多く含有する地盤ほどフリクションカット効果は大となる。
よって、幾つかの実施形態では、施工ステップ(S2)では、少なくとも一部が地下水位以下に埋設された対象部材2の引き抜きを開始するか、あるいは、少なくとも一部を地下水位以下に埋設されるように打ち込みを開始する。

0064

つまり、クーロン斥力が生じるためには土砂が飽和している必要があり、地下水位以下の地盤では土粒子g間が水で充填されている(飽和土)ため、対象部材2と陽極部材3とに上述した直流電圧を印加することにより生じるクーロン斥力により、対象部材2が周囲の土砂から受ける摩擦抵抗を低減することができる。なお、飽和状態は、土粒子gがイオン化(帯電)する状態であり、土粒子g間の間隙の全てに水が存在する。

0065

要するに、土砂が飽和状態になければ土粒子gがイオン化せず、帯電しない(フリクションカット効果なし)。さらに、飽和状態であっても砂(鉱物)は帯電しないので、本工法の対象は地下水位以下の粘性土地盤とするのが適切と言える。なお、シルトや粘性土であっても塑性指数がゼロの非塑性シルト・粘土では帯電度合いは低いため、フリクションカット効果が低下することになる(Ip>15の地盤で優位)。

0066

本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。

0067

1地中フリクションカット施工装置
2対象部材
3陽極部材
4電圧印加装置
5電流計
6印加電圧決定装置
9重機
G 地中
Gm模擬地盤
L所定距離
h施工量
g土粒子
I電流の計測値
V 印加電圧
Wp 塑性限界

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