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図面 (16)

課題

本発明は、心的外傷後ストレス障害治療するための手段または爆風由来脳障害防御剤を提供することを目的とする。

解決手段

本発明により、心的外傷後ストレス障害の治療のため、または爆風由来の脳障害防御のために用いられる、有効成分として水素を含む組成物が提供される。

概要

背景

近年、水素ガス分子水素、H2)が医療用ガスとして臨床医学の分野において導入されてきている(非特許文献1)。虚血再灌流障害及び脳梗塞疾患治療のための有効な抗酸化剤として、水素分子を含む気体使用可能なことが、知られている(特許文献1)。水素ガスをから吸入すると、水素拡散や血液を介して全身分布し、活性酸素に関連した病気を抑制し、細胞障害を引き起す酸化力の強いフリーラジカル還元して消去することから、虚血再灌流障害と脳梗塞に有効というものである。水素ガスにより臨床医学においてもたらされる効果は、水素ガスが有する抗酸化作用や抗アポトーシス作用抗炎症作用に起因すると考えられている(特許文献1)。

心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder、PTSD)は、命の安全が脅かされるような出来事戦争天災事故犯罪虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能障害をもたらしているストレス障害である。外傷的出来事を直接または間接的に体験した後、各種の症状(侵入症状、回避症状、思考や気分に対する悪影響、覚醒レベルと反応の変化)が一月以上継続し、症状によって重大な苦痛が生じているか、日常生活に大きな支障をきたしている場合にPTSDと診断される。PTSDは、小児期を含む生涯のいずれかの時点で約9%の人が発症すると推定されている。

PTSDの治療において、専門家による心理療法持続エクスポージャー療法など)が主に施され、症状の緩和のために、SSRI系の抗うつ薬などが処方される。
簡単に作製された爆発装置衝突テロリズムにおいて使用されているので、近年の戦闘地域やテロリズムが発生する地域では爆風障害が大きな脅威となっている。また、この爆風により生じる軽度脳障害(bmTBI)は、精神学的な影響を及ぼすことが知られている。

一方、げっ歯類を用いたbmTBIモデルで過剰な活性酸素種(ROS)が生成されることが報告されている。近年、還元剤である水素分子が、反応性の高いROSであるヒドロキシルラジカル(・OH)やペルオキシナイトライト(ONOO−)と選択的に反応し、これらを還元して消去することが示された。また、水素分子は副作用のない最小の分子であり、電気的に中性であるため、容易に標的臓器に到達して、細胞膜を通過して細胞内で急速に拡散し、さらに神経を防御する機能を持つ血液脳関門を通過することが示されている。

概要

本発明は、心的外傷後ストレス障害を治療するための手段または爆風由来の脳障害防御剤を提供することを目的とする。本発明により、心的外傷後ストレス障害の治療のため、または爆風由来の脳障害防御のために用いられる、有効成分として水素を含む組成物が提供される。なし

目的

しかし、爆風衝撃波精神心理学的な影響を与えるメカニズムは知られておらず、また効果的な治療法も未だ不十分であるので、新しい治療法の開発が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

水素を含有する気体または液体を含む、精神心理学的影響の改善に用いるための組成物であって、前記精神心理学的影響が、社会行動障害、うつ様行動、および/または、心的外傷後ストレス障害である組成物。

請求項2

前記社会行動の障害、前記うつ様行動、および/または、前記心的外傷後ストレス障害の原因が、戦争天災事故暴力虐待、および/または、犯罪被害である請求項1に記載の組成物。

請求項3

前記社会行動の障害、前記うつ様行動、および/または、前記心的外傷後ストレス障害の原因が、爆風衝撃波由来である請求項1に記載の組成物。

請求項4

慢性疼痛を伴う心的外傷後ストレス障害の治療のために用いられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。

請求項5

水素を含有する気体であって、対象により吸入されるように用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。

請求項6

水素を含有する気体であって、経肺投与のために用いられる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。

請求項7

体積%以上の水素ガスを含有する気体の形態で、水素ガスが吸入される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。

請求項8

水素ガスが1日当たり30分間以上吸入されるように用いられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。

請求項9

医薬組成物又は脳障害防御剤として用いられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。

技術分野

0001

本発明は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療用または予防用組成物に関する。さらに本発明は、PTSDの治療方法または予防方法、特に本発明は、水素ガスを対象に投与することを含む、PTSDの治療方法または予防方法に関する。

0002

さらに本発明は、衝突テロリズム現場において生じる爆風由来脳障害を改善させる脳障害防御剤に関する。

背景技術

0003

近年、水素ガス(分子水素、H2)が医療用ガスとして臨床医学の分野において導入されてきている(非特許文献1)。虚血再灌流障害及び脳梗塞疾患治療のための有効な抗酸化剤として、水素分子を含む気体使用可能なことが、知られている(特許文献1)。水素ガスをから吸入すると、水素拡散や血液を介して全身分布し、活性酸素に関連した病気を抑制し、細胞障害を引き起す酸化力の強いフリーラジカル還元して消去することから、虚血再灌流障害と脳梗塞に有効というものである。水素ガスにより臨床医学においてもたらされる効果は、水素ガスが有する抗酸化作用や抗アポトーシス作用抗炎症作用に起因すると考えられている(特許文献1)。

0004

心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder、PTSD)は、命の安全が脅かされるような出来事戦争天災事故犯罪虐待など)によって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能障害をもたらしているストレス障害である。外傷的出来事を直接または間接的に体験した後、各種の症状(侵入症状、回避症状、思考や気分に対する悪影響、覚醒レベルと反応の変化)が一月以上継続し、症状によって重大な苦痛が生じているか、日常生活に大きな支障をきたしている場合にPTSDと診断される。PTSDは、小児期を含む生涯のいずれかの時点で約9%の人が発症すると推定されている。

0005

PTSDの治療において、専門家による心理療法持続エクスポージャー療法など)が主に施され、症状の緩和のために、SSRI系の抗うつ薬などが処方される。
簡単に作製された爆発装置が軍事衝突やテロリズムにおいて使用されているので、近年の戦闘地域やテロリズムが発生する地域では爆風障害が大きな脅威となっている。また、この爆風により生じる軽度脳障害(bmTBI)は、精神学的な影響を及ぼすことが知られている。

0006

一方、げっ歯類を用いたbmTBIモデルで過剰な活性酸素種(ROS)が生成されることが報告されている。近年、還元剤である水素分子が、反応性の高いROSであるヒドロキシルラジカル(・OH)やペルオキシナイトライト(ONOO−)と選択的に反応し、これらを還元して消去することが示された。また、水素分子は副作用のない最小の分子であり、電気的に中性であるため、容易に標的臓器に到達して、細胞膜を通過して細胞内で急速に拡散し、さらに神経を防御する機能を持つ血液脳関門を通過することが示されている。

0007

WO2007/021034

先行技術

0008

Ohta S., et al., MethodsEnzymol. 2015; 555: 289-317.

発明が解決しようとする課題

0009

PTSDは、戦争、震災などの自然災害、火事、事故、暴力犯罪被害などを原因し、あらゆる年代の誰もが罹患しうる疾患であるが、その治療方法は十分とはいえず、PTSDの治療のための安全かつ有効な手段が強く求められている。

0010

bmTBIは、イラクやアフガニスタンでの紛争で注目されるようになった。また、軍事衝突だけでなくテロリズムや民間人が関わる災害においてもbmTBIの危険性が増加している。特に、アメリカ合衆国における退役軍人ではbmTBIによる明らかな精神心理学的な影響が深刻化している。しかし、爆風衝撃波が精神心理学的な影響を与えるメカニズムは知られておらず、また効果的な治療法も未だ不十分であるので、新しい治療法の開発が望まれていた。

0011

本発明が解決しようとする課題は、bmTBIによる精神心理学的な影響を改善させるための脳障害防御剤を提供することである。

課題を解決するための手段

0012

本発明者は、そのような課題の解決のために研究を行い、PTSDの患者において水素ガス吸入による症状の改善効果を見いだし、以下の発明を完成させた。
[1]心的外傷後ストレス障害の治療のために用いられる、有効成分として水素を含む組成物

0013

[2]中程度から重度の心的外傷後ストレス障害の治療のために用いられる、[1]に記載の組成物。
[3]慢性疼痛を伴う心的外傷後ストレス障害の治療のために用いられる、[1]または[2]に記載の組成物。

0014

[4]水素を含有する気体または液体の形態である、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]水素を含有する気体であって、対象により吸入されるように用いられる、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。

0015

[6]水素を含有する気体であって、経肺投与のために用いられる、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]4体積%以上の水素ガスを含有する気体の形態で、水素ガスが吸入される、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。

0016

[8]6体積%以上の水素ガスを含有する気体の形態で、水素ガスが吸入される、[1]〜[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]水素ガスが1日当たり30分間以上吸入されるように用いられる、[1]〜[8]のいずれかに記載の組成物。

0017

[10]水素ガスが1日当たり60分間以上吸入されるように用いられる、[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]水素ガスの吸入が1週間以上にわたり行われる、[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。

0018

[12]医薬組成物として用いられる、[1]〜[11]のいずれかに記載の組成物。
[13]水素を含有する気体または液体を含む爆風由来の脳障害防御剤。
[14]前記脳障害防御剤は、社会行動の障害やうつ様行動に改善効果を示す[13]に記載の脳障害防御剤。

発明の効果

0019

本発明により、PTSDを治療するための手法、およびPTSDの症状を緩和するための手法が提供される。本発明により提供される手法は、副作用などの問題が少なく、鎮痛剤などを常用する患者において長期にわたり実施するための手法としても優れている。

0020

また本発明により、bmTBIを治療するための手法、およびbmTBIの症状を緩和するための手法が提供される。本発明により提供される手法は、副作用などの問題が少なく、鎮痛剤などを常用する患者において長期にわたり実施するための手法としても優れている。

図面の簡単な説明

0021

図1は、水素吸入開始後のPTSDの症状改善を示すグラフである。
図2は、水素吸入開始後のPTSDの症状改善を示すグラフである。
図3は、本発明の効果の確認に使用した爆風発生装置の概略図である。
図4は、本発明の効果の確認における水素ガス吸入と測定日タイムスケジュールである。
図5は、Aは、爆風発生装置で生成された爆風(駆動圧0.8 MPa)の典型的な圧—時間特性測定記録、Bは、爆風発生装置で生成された爆風(駆動圧2.0 MPa)の典型的な衝撃波圧—時間特性の測定記録である。
図6は、低レベルの爆風暴露を受けたマウス脳の解剖写真である。
図7は、Aは、ジヒドロエチジウムを用いた組織化学染色写真(Sham群)、Bは、ジヒドロエチジウムを用いた組織化学染色写真(bmTBI群)、Cは、ジヒドロエチジウムを用いた組織化学染色写真(bMTBI+H2群)である。
図8は、Aは、オープンフィールドテストの結果を示したグラフ、Bは、加速ロータロッドテストの結果を示したグラフである。
図9は、高架式十字迷路テストの結果を示したグラフである。
図10は、Y迷路テストの結果をしたグラフである。
図11は、Aは、社交性テストの結果を示したグラフ、Bは、嗅覚テストの結果を示したグラフ、Cは、新奇性テストの結果を示したグラフである。
図12は、Aは、尾懸垂テストの結果を示したグラフ、Bは、強制遊泳テストの結果を示したグラフである。
図13は、水素吸入開始後のPTSDの症状改善を示すグラフである。
図14は、実施例1の症例におけるスコアの詳細を示す表である。
図15は、実施例2の症例におけるスコアの詳細を示す表である。
図16は、実施例3の症例におけるスコアの詳細を示す表である。

0022

本発明は、PTSDを治療のために用いられる。PTSDは、追体験(フラッシュバック)、回避行動、および過覚醒(入困難、易刺激性、および集中困難など)などの症状を基本症状とし、1月以上症状が継続することを特徴とする。大半のケースストレス因子になる重大なショックを受けてから6か月以内に発症するが、6か月以上遅れて発症する「遅延型」も存在する。本発明の組成物を用いた処置は、対象においてPTSDの症状が確認された後であれば、特に処置開始時期は限定されない。

0023

本発明の組成物は、中程度または重度のPTSDの患者に適用することができ、例えば、発症から6ヵ月以上症状が継続する患者、より具体的には発症から1年以上症状が継続
する患者、さらに具体的には発症から2年以上症状が継続する患者に適用することができる。PTSDの重篤度は、例えば、CAPS(Clinician Administered PTSD Scale)な
どの尺度指標としてPTSDの重篤度を判断することができる。CAPSは、アメリカ精神医学会が発行するDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)に記載のバージョンを利用することができる。本発明の組成物は慢性PTSDの患者に適用することができる。

0024

本発明の組成物は、PTSDに加えて、抑うつ障害、物質関連障害、不安症、または双極性障害などの他の疾患を罹患する患者にも適用することができ、他の疾患の治療剤と併用することができる。

0025

本発明の実施形態に係る脳障害防御剤は、水素を含有する気体または液体からなり、その使用方法は特に限定されないが、爆風由来の脳障害に用いることができる。
水素を含有した気体としては、空気または吸入麻酔薬が混合され、水素ガス濃度が、爆発下限濃度未満の10%以下に設定することが望ましい。爆発下限濃度を超える水素ガス濃度の場合は、静電気や火気により、爆発を起こす危険性があるので、好ましくない。また、水素を含有する液体としては、水素分子を水または生理食塩液などの注射用液剤に溶解させることができる。水素を含有する液体として摂取する方法としては、水素水として飲用、または輸液として静脈内に点滴することができる。

0026

また、本発明に係る脳障害抑制剤の使用方法は、水素を含有する気体または液体を、呼吸を介して吸引、飲用として経口摂取、または注射液として点滴するものである。本発明の対象になる疾患は、爆風由来の脳障害に限定されず、爆風以外の原因で生じる社会行動の障害やうつ様行動も含まれる。すなわち、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)の罹患により生じるうつ様行動も対象疾患として例示できる。水素を含有する気体を吸引させる時間は、患者の症状にもよるが、30分〜8時間を例示することができる。また、水素水として飲用する場合は1日当たり1〜4回、点滴する場合は1日当たり1〜3回に分け
て摂取することが例示できる。

0027

一つの側面において、本発明の組成物は医薬組成物として使用することができる。本発明の方法は、自宅に設置可能な水素発生装置により調製可能な組成物の吸入により行うことができるため、別の側面において、本発明の組成物は医療行為以外の方法、または治療行為以外の方法において使用することができる。

0028

本発明の組成物または脳障害抑制剤は、水素ガスを有効成分として含有する。本発明の一つの態様において、水素ガスは、水素ガス含有する気体の形態で用いられる。
水素ガスを含有する気体は、例えば、水素ガスを含む空気、または水素ガスと酸素ガス混合ガスであり得る。水素ガスを含有する気体における水素ガスの濃度は、特に限定されないが、例えば、水素ガスの爆轟下限濃度未満である18.3体積%以下、例えば、0.5〜18.3体積%、具体的には1〜10体積%、より具体的には2〜8体積%、さらに具体的には3〜6体積%、更に具体的には4〜6体積%、さらに具体的には4〜5体積%である。水素ガスを含有する気体における水素ガスの濃度は、好ましくは1〜10体積%、2〜9体積%、3〜8体積%、より好ましくは3〜5体積%である。

0029

水素ガス以外の気体が空気である場合には、空気の濃度は、例えば81.7〜99.5体積%の範囲である。水素ガス以外の気体が酸素ガスである場合には、酸素ガスの濃度は、例えば21〜99.5体積%の範囲である。水素ガスを含有する気体は、水素の他、2以上の気体を含んでいてもよく、その例として、空気、酸素ガス、窒素ガス二酸化炭素ガス、などの気体が挙げられる。水素ガスは可燃性であり、爆発性であるため、安全の観点から、水素ガスの爆発限界未満の濃度で用いるのが好ましい。

0030

安全な濃度に希釈された水素ガス組成物吸入の際の組成物の流量は、例えば、1〜10L/分、1〜6L/分、1〜4L/分、具体的には2〜4L/分とすることができる。過呼吸がある患者においては、6〜8L/分とすることができる。本発明の一つの態様において、水素ガス組成物の吸入は、組成物中に含まれる水素の量に換算して、70ml/分以上、80ml/分以上、140ml/分以上、または280ml/分以上の流量で行うことができる。

0031

水素ガスを含有する気体は、所定の水素ガス濃度となるように配合された後に、耐圧容器(例えば、アルミ缶ペットボトルなど)に充填して保存することができる。あるいは、水素ガスを含有する気体は、公知の水素ガス供給装置を用いてその場で調製し、吸入のために使用してもよい。

0032

水素ガス供給装置は、水素発生剤(例えば、金属アルミニウムなど)と水の反応により発生する水素ガスを、希釈用ガス(例えば、空気、酸素など)と所定に比率で混合することを可能にする(特許第5228142号)。あるいは、当該装置は、水の電気分解を利用して発生した水素ガスを、希釈ガスと混合することを可能にする(特許5502973号、特許第5900688号)。これによって、0.5〜18.5体積%の範囲内の水素ガスを含有する気体を調製することができる。

0033

本発明において、水素ガスは吸入により対象に投与される。投与された水素ガスは、投与後肺に達するまでの気道や肺において粘膜から吸収されることが想定される。肺などから取り込まれた水素ガスは、血液を介して全身に送達されるのみではなく、肺からの拡散によっても各組織に送達されうる。本発明の組成物は経肺投与のために用いられてもよい。

0034

水素ガスを吸入する場合には、口およびを覆うマスク型器具、または鼻カニューラなどを使用することができる。
吸入により生体内に取り込まれた水素ガスは、脳、肺、筋肉に多く分布し、組織内水素量(Area under the curve:AUC)が経口投与腹腔内投与静脈内投与などの他の投与方法の場合よりも大きい。ヒトが水素水として飲用した場合と、水素ガスとして吸入した場合を比較すると、水素水の飲用の場合は、水素分子の大部分は腸管から拡散により腹部の組織や臓器に到達し、一部が腸壁から吸収されて血流により全身の組織や臓器に分布する。一方、水素ガスの吸入の場合には、水素分子が、[1]吸気に混合されて肺組織移行し、周辺の組織に拡散により分布する経路、[2]肺におけるガス交換により血液に溶解されて全身に移行する経路、さらに[3]鼻粘膜より直接、血液−脳関門(BBB)を解さず、脳組織に移行する経路がある。

0035

上記水素濃度の気体を、1日当たり、1回または複数回(例えば2〜3回)投与してもよい.投与期間としては、例えば、1週間以上、2週間以上、4週間以上、2ヵ月以上、3ヵ月以上、6ヵ月以上、1年以上、2年以上、3年以上の期間を設定することができる。1回当たりの投与時間としては、例えば、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、30分以上、40分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上の時間を設定することができる。投与時間は連続していても、複数回に分けられていてもよい。投与期間および投与時間は、対象の状態を考慮の上で適宜設定してもよい。水素ガスの吸入は対象の健康への負担が軽く、有害事象の報告が少ないことから、長期の処置に適している。本発明の一つの態様において、PTSDの症状が緩和または消滅するまで、本発明の組成物を用いた処置を継続することができる。

0036

対象による水素ガスの摂取は、水素ガスを含む気体で満たされた空間内で対象が一定時
間を過ごすことによっても実現できる。空間内の気圧は、標準大気圧(約1.013気圧)であってもよく、またはそれを超える7気圧以下の範囲の加圧状態、例えば、1.02気圧〜7.0気圧、具体的には1.02気圧〜5.0気圧、より具体的には1.02気圧〜4.0気圧、さらに具体的には1.02気圧〜1.35気圧であってもよい。対象における水素の体内吸収が促進される点において、高気圧環境における水素摂取は好ましい。加圧下での水素摂取のために、十分な強度を持つように設計された高気圧カプセルを使用することができる。

0037

本明細書において、対象とは、哺乳動物、例えば、ヒトを含む霊長類;マウス、ラットなどの齧歯類イヌネコなどのコンパニオン動物動物園飼育されている動物などの観賞用動物を含む。本発明の対象は、好ましくはヒトである。

0038

以下に、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
幼少期の虐待経験によりPTSDを発症して10年以上が経過している成人女性を対象として、水素発生器MHG−2000α、Miz株式会社製)を用いて濃度7%の水素ガ
スの、1日少なくとも1時間(最大4時間)、7週間にわたって吸入を行った。吸入を行った期間も含めて、対象は医師の処方による疼痛を処置するための鎮痛剤を常用していた。

0039

PTSDの症状についてPTSD Checklist for DSM-5(PCL-5;National Center for PTSDにより公表)を用いて医師による問診より数値化を行った。PCL-5の内容を以下の表に示す。

0040

0041

各週の平均吸入時間とPCL-5によるスコアの合計を表2に示し、そのグラフを図1に示
す。吸入開始後のPTSDの症状の改善傾向が確認された。

0042

0043

[実施例2]
軍隊での任務中に受けた強い心理的衝撃によりPTSDを発症した成人女性を対象として、水素発生器(MHG−2000α、Miz株式会社製)を用いて濃度7%の水素ガスの
、1日少なくとも2時間(最大4時間)、3週間にわたって吸入を行った。吸入を行った期間も含めて、対象は医師の処方による疼痛を処置するための鎮痛剤を常用していた。

0044

PTSDの症状について医師による問診により数値化を行った。吸入開始以降の症状を図2および表3に示す。吸入開始後のPTSDの症状の改善傾向が確認された。

0045

0046

[実施例3]
幼少期およびその後の身体的虐待を受けたことによる強い心理的衝撃によりPTSDを発症した成人女性を対象として、水素発生器(MHG−2000α、Miz株式会社製)を
用いて濃度7%の水素ガスの、1日1〜3時間、3週間にわたって吸入を行った。吸入を行った期間も含めて、対象は医師の処方による疼痛を処置するための鎮痛剤を常用していた。

0047

PTSDの症状について医師による問診により数値化を行った。吸入開始以降の症状を図13および表4に示す。

0048

0049

[実施例4]
実験動物
本発明に関わる動物実験はすべて防衛医科大学校の動物実験倫理ガイドライン準拠して行われ、また防衛医科大学校の動物実験委員会により承認された。本実験には近交系のC57BL/6系マウスを用いた。すべての実験に使用したマウスは同年齢同腹の雄であった。マウスは室温24±1℃で、12時間の明暗サイクル飼育室内で飼育し、飲水飼料を自由に与えた。
衝撃波管の設計>
本発明者らは研究所に設置可能な圧力ガスで駆動できる衝撃波管を設計した。衝撃波管は駆動部と被駆動部で構成され、これらの部分は図3に示すようなポリエステル製の隔膜で隔てられている。駆動部にはガス流入バルブを通して窒素ガスが充満圧縮され、このバルブは駆動部にガスが一度、充満されると閉鎖される。トリガーをかけると針がポリエステルの隔膜を破裂させ、駆動部のガスが急速に膨張して被駆動部に沿って移動することにより爆風圧が形成される。
<衝撃波の暴露>
10週齢のマウスに塩酸メデトミジン(0.3 mg/kg、Domitol、明治製
ファーマ社)、ミダゾラム(4.0 mg/kg、Dormice、アステラス製薬
)およびブドルファノール(5.0 mg/kg、Vetorphale、明治製菓ファ
ーマ社)を含む混合麻酔薬を腹腔内投与し麻酔した。図3に示すように衝撃波管の出口から5cmに位置に頭部がくるように、マウスホルダーでマウスを固定した。マウスの身体の長軸は衝撃波管と平行になるようにした。爆風暴露の終了後にマウスを麻酔から回復させ、その後、飼育ケージに戻した。
<衝撃波の記録>
衝撃波の圧力を圧電センサ(PCB113B26、Piezotoronics社、Depew、ニューヨーク)を使い0.5MHzの共振頻度で測定した。圧電センサのア
ナログ出力を解析オシロスコープ(DSO7104A、Agilent Techno
logies社、Santa Clara、カルフォニア)に20 MSa/sのサンプリングレートで記録した。
<水素ガスの吸入>
爆風暴露の直後から7日間、図4に示すようにマウスに水素ガスを吸入させた。水素ガスを吸引させるため湿度が保たれたチャンバー内に1日当たり6時間、マウスを収容させた。水素ガス供給装置(MiZ社)により空気で希釈された水素ガス(4%)を2L/分の供給量でチャンバー内に供給した。チャンバー内でマウスに飲水と飼料を自由摂取させた。
<ROS産生の評価>
ROSの産生を評価するためにヒドロエチジン(ジヒドロエチジウム)を用いた組織化学染色を行った。マウスを爆風暴露の6日後に安楽死させ、脳を摘出後、直ちに凍結保存
した。脳は10μmの凍結切片としてスライドグラス上に乗せ、再蒸留水で3分間洗浄し、1μMのジヒドロエチジウム(DHE溶液内で暗条件の下、30分間静置した。酸化産物であるエチジウムはROSによりDHEから生成され、細胞内に蓄積された。その後、スライドグラスを洗浄し、電子倍増EMCCDカメラ(ImagEM、浜松ホトクス社)を接続させた蛍光顕微鏡ニコン社)でエチジウム由来の赤色蛍光を観察した。4匹のマウスから得た4スライド検体を1群当たりの実験に用いた。
行動学的解析>
爆風暴露の7日後に行動学的解析を行った。行動解析に使用したすべてのマウスは同週齢で同腹の雄であった。各々のマウスの行動は、特別に記載しない限りコンピュータ制御ビデオ追跡システム(SMART、Panlab社、バルセロナスペイン)でモニターし解析した。アーム装置を使う試験では、マウスの4本の肢が各アームに入った時にアームに入ったとカウントした。各試験の後でこの装置を洗浄した。行動研究には11〜12週齢のマウスを用いて行った。
<オープンフィールドテスト>
オープンフィールドテストを用いて新しい環境に対する情動反応を測定した。マウスの活動性は10分間に移動した総距離(メートル)として測定した。
<ロータロッドテスト>
ロータロッド(大原社)テストは回転する棒を使って協調運動平衡性を評価する方法である。この方法は、他の行動試験において影響が出やすい運動障害スクリーニングするために行われている。マウスを棒の上に置き、マウスが平衡を保ったら、その棒を4分間かけて2.5〜70 r.p.mまで加速させた。マウスは回転する棒の上でバランス
を取るが、その後の棒の回転速度上昇により、マウスが耐え切れなくなり、落下または回転棒の上でマウスが回転する。そこで、マウスが落下または回転するまでの時間を測定した。少なくとも30分間隔で3回の連続した実験を行った。
<高架式十字迷路テスト>
高架式十字迷路テストを常法に従い行った。一般的にマウスは開放された環境よりも閉鎖された環境を好む性質がある。オープンアームで費やした時間の比率(%)を不安様行動の指標として評価した。
<Y迷路テスト>
Y迷路テストを常法に従い行った。本テストは空間の作業記憶評価方法として位置付けられる。11週齢のマウスを使用した。
<社交性テスト>
社交性テストを常法に従い行った。嗅覚と最小限の触覚が得られる2個の円筒状ケージを使ったオープンフィールドを用いて、生きたマウスおよびぬいぐるみのマウスへ近づいた時間を計測した。円筒状ケージの高さ、側面の直径および格子の間隔はそれぞれ10cm、9cmおよび7mmであった。
<嗅覚テスト>
嗅覚テストを常法に従い行った。すなわち、新しい食物ブルーベリーチーズ)の風味にマウスを慣れさせた。その後、マウスを48時間断食させ、ブルーベリーチーズ1個を新鮮ケージ床敷きの下2cmに埋めた。マウスが埋められたブルーベリーチーズを発見するまでの時間を測定した。
<新奇性テスト>
新奇性テストを常法に従い行った。マウスの活動度を10分の間に無生命新奇対象物(赤いチューブ)と関わる総時間として測定した。
<尾懸垂テスト>
うつ様行動の評価方法である尾懸垂テストを行った。すなわち、マウスの尾を接着テープの端に貼り付けマウスを吊した。接着テープは尾の先端から約5〜10mmの位置に取り付けた。懸垂されたマウスは床から600mm離した。マウスの無動(頭の下向きを伴う肢の動き欠如)時間を6分間測定した。
強制水泳テスト
強制水泳テストは行動的な絶望試験として知られているが、げっ歯類のうつ様行動として評価されている。強制水泳テストを常法に従い行った。すなわち、シリンダー(直径25cm、深さ46cm)の2/3まで水(25±1℃)を満たし、その中にマウス1匹を6分間入れた。マウスはシリンダーから逃げることができず、また後肢を底に付けることもできない。マウスは水の中で逃げ道を捜して泳ぐ。この試験は尾懸垂テストの24時間後に行った。マウスが水の中で浮かぶ時間に対する泳ぐ時間を測定した。遊泳行動は単に頭を水の上に置く行動と比べて活動的な水平行動と位置付け、さらに「希望に満ちた行動」として評価した。マウスが平衡を保ち、水の上に鼻を上げる行動だけでなく、動かないで浮かぶ行動はうつ様行動のサインで、「希望のない行動」として評価した。各試験の後でマウスを軽くタオルで拭き、ケージに戻した。シリンダー内の水は試験毎に交換した。<統計学的解析>
測定値について統計解析ソフト(GraphPad Prism 6.0、GraphPadソフトウェア社、サンジェゴ、カルフォルニア)を用いた統計学的な解析を行った。すなわち、2群間の比較の場合はStudentのt検定を用い、また多群間の比較の場合はOne−wayANOVA一元配置分散分析)またはTwo−way repeated measured ANOVA(反復測定二元配置分散分析)を行い、これらの検定で統計学的に有意差があれば、さらに多重比較検定であるBonferroniのPost hoc Test(事後検定)を実施してControl群、bmTBI群、およびbmTBI+H2群の間の統計学的な有意差を調べた。測定データは平均値±標準誤差として示し、各群間の統計学的有意差はp<0.05の場合を統計学的に有意とした。
《結果》
<衝撃波の解析>
図5は0.8MPaと2.0MPaで駆動させた爆風波により、測定ポイント(マウスの頭)に圧力センサで置いて爆風波の圧を測定した圧—時間関係を示している。駆動部で0.8MPaと2.0MPaの圧力を測定した時のピーク圧はそれぞれ25.0kPaと38.0kPaであった(図5)。波形は衝撃波に相当する急激な上昇圧とその後に続く圧の減少と陰性相から成り立っていた(図5)。本発明者らは駆動部の圧とピーク平均圧の間の関係が20〜60kPa の間にあり、ほぼ直線関係にあることを確認している
。生成された圧波形と駆動部における平均ピーク波形が一致し、再現性があった。本発明者らは、0.8MPaで生成された25kPaの衝撃波を本研究における行動研究に使用した。
<マウスの脳の肉眼的観察>
25.0kPaの衝撃は図6に示すように、明確な脳出血を起こさなかった。しかし、脳浮腫攣縮頭蓋内出血皮質の細胞損失、および軸索変性症の可能性は否定できなかった。
<ROS産生の評価>
ROS産生の評価のため、爆風暴露の6日後にヒドロエチジン組織化学染色を行った。図7対照(Sham)(図7A)に比べて爆風暴露(bmTBI)(図7B)では、より多くのROSが産生されていることを示している。これに比べて爆風後に水素を吸入されたマウス(bmTBI+H2)(図7C)では爆風単独(bmTBI、図7B)に比べてROSが顕著に減少していた。この結果は衝撃波が脳の酸化ストレスを誘発し、水素ガス吸入がそれを減少させることを示している。
一般行動への影響>
新しい環境での行動の活動度を評価するために、オープンフィールドテストを行った。総移動距離によって評価した結果、対照(Sham)と比較して、爆風暴露をうけたマウス(bmTBI)は、水素ガス吸入にかかわらず、異常動作を示さなかった。(図8
、一元配置ANOVAのp>0.05)。

0050

次に総体的な運動機能を評価するためにマウスに加速ロータロッドテストを行った。水
素ガスを吸入した場合(bmTBI+H2)も吸入しない場合(bmTBI)も爆風暴露により加速ロータロッドテストにおける影響を示さなかった(図8B、二元配置ANOVAのp>0.05)。この結果は水素吸入に無関係に爆風暴露により総体的な運動機能が影響を受けないことを示している。
<不安に関連した行動への影響>
爆風暴露が不安関連行動に影響を与えるかどうかを調べるために高架十字迷路テストを行った。不安関連行動はオープンアームで費やした時間のパーセントを指標とした。その結果、対照(Sham)群、bmTBI群、bmTBI+H2群のマウスはオープンアームで費やした時間のパーセントに有意な差を示さなかった(図9、一元配置ANOVAのp>0.05)。この結果は、マウスの不安関連行動が水素ガス吸入に関係なく爆風暴露の影響を受けないことを示している。
<空間作業記憶への影響>
作業記憶は複雑な認知作業を行うために一時的に情報を保持することができる能力である。空間作業記憶を評価するためにマウスにY迷路試験を行なった。この試験はマウスが先に選んだアームの位置を覚えているかどうかを試験するものである。元来、げっ歯類は先に選んだものと異なるアームを捜すものである。しかし、作業記憶が損なわれていれば、正しい選択の数が減少する。

0051

その結果、対照(Sham)群、bmTBI群、およびbmTBI+H2群における正しい選択はそれぞれ、62.6±1.8%、62.3±3.4%、および60.4±3.4%であった(図10、一元配置ANOVAのp>0.05)。対照(Sham)群、bmTBI群、およびbmTBI+H2群の選択結果はランダムに選択した結果よりも優れていた(ランダム選択=50%、上記ケースにおけるt検定はp<0.0001)。
<社会行動への影響(1)>
マウスは社会性のある種であり、また社会的相互作用の行動を示す。社交性テストは無生命的な対象物(ぬいぐるみマウス)に対する社交性対象物(生きたマウス)に近づいた時間を調べるために行った。その結果、対照(Sham)群に比べて、爆風暴露されたマウス(bmTBI群)は生きたマウスに近づいた時間が減少した(図11A)。一方、bmTBI+H2群では対照群と同等な生きたマウスに近づいた時間を示した(図11A)。一元配置ANOVAでは統計学的な有意差が確認された(F=5.02、p=0.0
14)。

0052

さらに、対照(Sham)群に比べて爆風暴露されたマウス(bmTBI群)はぬいぐるみマウスに近づいた時間が増加した。しかし、bmTBI+H2群では対照群と同等なぬいぐるみマウスに近づいた時間を示した(図11A、一元配置ANOVAのF=5.0
6、p=0.013)。

0053

対照(Sham)群のマウスやbmTBI+H2群のマウスはぬいぐるみマウスよりも生きたマウスに近づいた時間が多かったが(図11A、両者のt検定p<0.001)、bmTBI群のぬいぐるみマウスと生きたマウスに近づいたそれぞれの時間に有意差が認められなかった(図11A、t検定p>0.05)。
<社会行動への影響(2)>
社交性テストで見られたような差は嗅覚テスト(図11B、一元配置のANOVAのp>0.05)や新奇性テスト(図11C、一元配置ANOVAのp>0.05)では認められなかった。従って、爆風に由来した異常な社会行動は水素ガスの吸入により抑制されたと結論付けられる。
<うつ様行動への影響(1)>
爆風暴露がうつ様行動に及ぼす影響を調べるため、うつ様行動の評価法として広く使われている尾懸垂テストにマウスを供した。このテストでは、6分間における不動時間の合計と同様に最初に不動になるまでの時間を評価した。しかし、爆風暴露後に水素ガスを吸
入したマウス(bmTBI+H2群)は対照(Sham)群と同等な時間を示した(図12A左)。一元配置ANOVAにより統計学的な有意差が認められた(F=6.42、p=0.0051)。

0054

さらに、爆風を暴露されたマウス(bmTBI群)は対照マウス(Sham)に比べて不動時間を延長させた。しかし、水素ガス吸入マウス(bmTBI+H2群)は対照マウス(Sham)と同等な不動時間を示した(図12A、右、一元配置ANOVAのF=6.94、p=0.0036)。
<うつ様行動への影響(2)>
マウスを別のうつ様行動の評価方法である強制水泳テストに供した。爆風を受けたマウス(bmTBI群)の活動的な遊泳時間は対照マウス(Sham群)に比べて減少した。しかし、水素ガスを吸入されたマウス(bmTBI+H2群)は対照マウス(Sham群)と同等の遊泳時間を示した(図12B、左、一元配置AVOVAのF=5.95、p=0.059)。

0055

さらに、爆風を受けたマウス(bmTBI群)の浮遊時間は対照マウス(Sham群)に比べて増加した。しかし、水素ガスを吸入されたマウス(bmTBI+H2群)は対照マウス(Sham群)と同等の浮遊時間を示した(図12B、右、一元配置ANOVAのF=11.52、p<0.0001)。これらの結果は水素ガス吸入が爆風暴露によるうつ様行動を減弱させることを示している。
《考察》
この研究において、本発明者らは水素ガスの吸入が爆風暴露による社会行動の障害とうつ様行動を顕著に減弱することを示した。この結果は水素ガスの吸入が爆風暴露の酸化ストレスを抑制した免疫組織化学試験からも支持された。すなわち、水素ガスは抗酸化作用により爆風暴露により生じた異常行動を抑制する可能性があることが示された。

0056

本発明者らの研究における衝撃波のピーク圧は30kPaより低かった。この低レベルの衝撃波が与える行動障害の詳細なメカニズムを本発明における研究では調べなかったが、本発明は酸化ストレスが行動障害のメカニズムにおいて重要な役割を演じていることを示している。低レベル(10〜60kPa)の衝撃波のラットへの暴露が用量依存的に脳内圧を高め、認知機能を損なうことが知られている。そして、10kPa程度の衝撃波のラットへの暴露が認知機能の減少を示したことも知られている。脳内圧の上昇と酸化ストレスの関係が不明であるが、これらの低レベル衝撃波が行動障害を引き起こす可能性が考えられる。一方、本発明者らの研究では、衝撃波の暴露がY迷路テストにおける作業記憶の障害に影響を与えなかったが、社会行動の障害やうつ様行動に影響を与えることを示した。Y迷路テストは短時間の空間の記憶であり、長時間の記憶とは異なるため、低レベル衝撃波が影響を受けなかった可能性が考えられた。

0057

より高い衝撃波のピーク圧によって誘発された障害を水素ガスの吸入が改善させるかどうかは本発明では検討しなかった。さらに、ヒトに外挿するための種差がある可能性もある。しかし、水素に副作用がないことを治療の観点から考えると、低レベルの爆風暴露後の水素ガス吸入が社会行動の障害やうつ様行動を有意に減少させたことは非常に意義があることである。水素が心臓の虚血再灌流障害、動脈硬化発癌神経変性疾患難聴を含む多くの疾患の治療に有効な抗酸化剤であることを多くの研究が示している。これらの研究において、水素の臨床濃度で重篤な副作用は報告されていない。

実施例

0058

戦場において水素ガスの利用を想定すると、水素ガスボンベ砲弾が当たることなどにより爆発の危険性があるので、非常に危険である。しかし、本発明者らは本研究で水素ガスを容易で安全に供給できる方法である水を電気分解による電解法を用いた。さらに、この電解槽持ち運びをすることが可能である。これらのことより、本発明者らは水素ガス
の吸入が爆風由来の脳障害を減弱させる治療戦略に貢献すると結論付けた。

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