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図面 (15)

課題

光を直接照射しにくい領域又は直接照射されない領域に、ホスホリルコリン基を有する化合物共有結合した高分子膜を形成する。

解決手段

医療部材は、光透過性を有する基材と、前記基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子鎖を含む高分子膜と、を備え、前記基材は、前記基材の外表面側から所定強度の光を照射した場合に、前記内表面の少なくとも一部であって前記高分子膜を形成することが可能な強度の光が透過して到達する第1領域を含む。

概要

背景

生体内で使用される部材として、人工関節人工心臓用血液ポンプ等の医療部材が知られている。このような医療部材は、樹脂や金属等の基材で構成され、さらに用途に応じた適切な性質を付与するために様々な表面処理が施される。近年広く行われている医療部材の表面処理として、ホスホリルコリン基を有する高分子材料による高分子膜形成が挙げられる。

ホスホリルコリン基を有する高分子膜を形成する技術としては、物理的吸着による方法が知られている。例えば、基材を、ホスホリルコリン基を有するモノマー及びアルキルの側鎖を有するモノマーの共重合体を含むエタノール溶液に浸漬した後、乾燥させることにより、共重合体が基材に物理的に吸着して高分子膜が形成される。しかしながら、物理的吸着による方法では、高い親水性を示すホスホリルコリン基を有する高分子膜は、水に溶解しやすく耐水性に劣るため、生体内などの水環境下での使用が制限される。一方、ホスホリルコリン基を有する疎水性の高分子膜は、高分子膜が水和するまでの間、ぬれ性に劣り、ホスホリルコリン基を含有する高分子の性能が十分に発現するまでに時間を要する。

また、ホスホリルコリン基を有する高分子材料による高分子膜を形成する技術として、例えば、特許文献1が示す同時照射法によるグラフト重合法は、基材だけでなくモノマーにもラジカルが発生するため、グラフト重合において十分なグラフト密度(例えば、0.01chains/nm2以上)が得られない。さらに、ガンマ線などの放射線は基材の内部まで貫通し得るため、基材の内部において不必要な又は所望しない分子の切断が生じたりして、基材の劣化又は脆化を引き起こし得るという問題もある。さらに、特許文献1が示す前照射法によるグラフト重合法は、ラジカルを生成させるために、高エネルギー放射線、例えばガンマ線、電子線(ベータ線)、イオン線X線などを用いている。これらの放射線はそれ自体危険性が高く、さらにその放射線源の管理には大掛かりな設備が必要となり、安全性及び経済性の点で問題がある。また、発生した活性の高いラジカルは徐々に減衰するため、効率的にグラフト重合させることが困難であった。

さらに、他の技術によりグラフト重合を行う方法の一つとして、所定の波長の光を照射することによりグラフト重合反応を開始させる光開始グラフト重合法がある。例えば、特許文献2〜4には、医療部材のうち所定の光を照射した面に共有結合により高分子膜を形成する方法が開示されている。

しかしながら、従来の光開始グラフト重合法では、光重合開始剤が塗布され、かつ光が照射された領域、又は光反応開始基を有するポリマーが吸着し、かつ光が照射された領域にのみ高分子材料が共有結合した高分子膜が形成される。そのため、例えば細長い管状の基材の内表面や複雑な凹凸構造空孔の表面等、光を外部から直接照射しにくい領域への光開始グラフト重合法による高分子膜形成は困難であった。結果として、基材の表面に吸着したタンパク質等が原因となって、中空形状の一部が閉塞したり、細かい凹凸構造や空孔が埋まったりして、必要な機能を発揮できない場合があった。

また、光重合開始剤を用いた表面開始グラフト重合を実現するためには、光グラフト重合に用いる溶剤として、モノマーが可溶であると同時に、ラジカル開始剤不溶又は難溶であるような溶剤を選択することが必要であり、選択肢が限られるという問題もあった。さらに、その両者を満たす溶剤に対して、医療部材が不溶であることが求められる。

概要

光を直接照射しにくい領域又は直接照射されない領域に、ホスホリルコリン基を有する化合物が共有結合した高分子膜を形成する。医療部材は、光透過性を有する基材と、前記基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子鎖を含む高分子膜と、を備え、前記基材は、前記基材の外表面側から所定強度の光を照射した場合に、前記内表面の少なくとも一部であって前記高分子膜を形成することが可能な強度の光が透過して到達する第1領域を含む。A

目的

効果

実績

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請求項1

光透過性を有する基材と、前記基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物重合した高分子鎖を含む高分子膜と、を備え、前記基材は、前記基材の外表面側から所定強度の光を照射した場合に、前記内表面の少なくとも一部であって前記高分子膜を形成することが可能な強度の光が透過して到達する第1領域を含む、医療部材

請求項2

前記基材は開口部を有し、前記内表面の少なくとも一部は、前記開口部から前記所定強度の光を照射した場合に、前記高分子膜を形成することが可能な強度の光が直接的に照射されない第2領域を含む、請求項1に記載の医療部材。

請求項3

前記基材の光透過率は、10〜90%である、請求項1又は2に記載の医療部材。

請求項4

前記基材は管状である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療部材。

請求項5

前記基材は多孔質状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療部材。

請求項6

前記ホスホリルコリン基を有する化合物は、ポリ2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療部材。

請求項7

光透過性を有する基材の内表面とホスホリルコリン基を有する化合物を含有する溶液とを接触させる工程と、前記基材の外表面側から光を照射する工程と、前記基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子鎖を含む高分子膜を形成する工程と、を備える、医療部材の製造方法。

請求項8

前記基材の前記内表面に重合開始剤吸着させる工程をさらに備える、請求項7に記載の製造方法。

請求項9

前記光を照射する工程において、前記光の前記基材の前記外表面における光強度は15mW/cm2以下であり、前記光の前記基材の前記内表面における光強度は3mW/cm2以上である、請求項7又は8に記載の製造方法。

請求項10

前記光を照射する工程において、前記基材の前記内表面に前記ホスホリルコリン基を有する化合物を含有する溶液が接触している、請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項11

前記光を照射する工程において、前記ホスホリルコリン基を有する化合物を含有する溶液における、ホスホリルコリン基を有するモノマーの濃度は0.10mol/L以上2.00mol/L以下である、請求項10に記載の製造方法。

請求項12

前記光を照射する工程において、前記ホスホリルコリン基を有する化合物を含有する溶液は無機塩を含む、請求項10又は11に記載の製造方法。

請求項13

光透過性を有する基材の表面に、光反応開始基とホスホリルコリン基との両方を有する化合物を含有する溶液を接触させることで、前記基材の表面に前記化合物を吸着させる工程と、吸着された前記化合物が有する光反応開始基を励起させることが可能な強度の光を照射する工程と、前記基材の表面の少なくとも一部に前記化合物が共有結合した高分子膜を形成する工程と、を備え、前記高分子膜は、少なくとも前記基材のうち前記光が直接照射された面の裏側に形成される、医療部材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、医療部材及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

生体内で使用される部材として、人工関節人工心臓用血液ポンプ等の医療部材が知られている。このような医療部材は、樹脂や金属等の基材で構成され、さらに用途に応じた適切な性質を付与するために様々な表面処理が施される。近年広く行われている医療部材の表面処理として、ホスホリルコリン基を有する高分子材料による高分子膜形成が挙げられる。

0003

ホスホリルコリン基を有する高分子膜を形成する技術としては、物理的吸着による方法が知られている。例えば、基材を、ホスホリルコリン基を有するモノマー及びアルキルの側鎖を有するモノマーの共重合体を含むエタノール溶液に浸漬した後、乾燥させることにより、共重合体が基材に物理的に吸着して高分子膜が形成される。しかしながら、物理的吸着による方法では、高い親水性を示すホスホリルコリン基を有する高分子膜は、水に溶解しやすく耐水性に劣るため、生体内などの水環境下での使用が制限される。一方、ホスホリルコリン基を有する疎水性の高分子膜は、高分子膜が水和するまでの間、ぬれ性に劣り、ホスホリルコリン基を含有する高分子の性能が十分に発現するまでに時間を要する。

0004

また、ホスホリルコリン基を有する高分子材料による高分子膜を形成する技術として、例えば、特許文献1が示す同時照射法によるグラフト重合法は、基材だけでなくモノマーにもラジカルが発生するため、グラフト重合において十分なグラフト密度(例えば、0.01chains/nm2以上)が得られない。さらに、ガンマ線などの放射線は基材の内部まで貫通し得るため、基材の内部において不必要な又は所望しない分子の切断が生じたりして、基材の劣化又は脆化を引き起こし得るという問題もある。さらに、特許文献1が示す前照射法によるグラフト重合法は、ラジカルを生成させるために、高エネルギー放射線、例えばガンマ線、電子線(ベータ線)、イオン線X線などを用いている。これらの放射線はそれ自体危険性が高く、さらにその放射線源の管理には大掛かりな設備が必要となり、安全性及び経済性の点で問題がある。また、発生した活性の高いラジカルは徐々に減衰するため、効率的にグラフト重合させることが困難であった。

0005

さらに、他の技術によりグラフト重合を行う方法の一つとして、所定の波長の光を照射することによりグラフト重合反応を開始させる光開始グラフト重合法がある。例えば、特許文献2〜4には、医療部材のうち所定の光を照射した面に共有結合により高分子膜を形成する方法が開示されている。

0006

しかしながら、従来の光開始グラフト重合法では、光重合開始剤が塗布され、かつ光が照射された領域、又は光反応開始基を有するポリマーが吸着し、かつ光が照射された領域にのみ高分子材料が共有結合した高分子膜が形成される。そのため、例えば細長い管状の基材の内表面や複雑な凹凸構造空孔の表面等、光を外部から直接照射しにくい領域への光開始グラフト重合法による高分子膜形成は困難であった。結果として、基材の表面に吸着したタンパク質等が原因となって、中空形状の一部が閉塞したり、細かい凹凸構造や空孔が埋まったりして、必要な機能を発揮できない場合があった。

0007

また、光重合開始剤を用いた表面開始グラフト重合を実現するためには、光グラフト重合に用いる溶剤として、モノマーが可溶であると同時に、ラジカル開始剤不溶又は難溶であるような溶剤を選択することが必要であり、選択肢が限られるという問題もあった。さらに、その両者を満たす溶剤に対して、医療部材が不溶であることが求められる。

先行技術

0008

特開2008−53041号公報
特許第4156945号公報
特許第4963838号公報
特許第5555492号公報

発明が解決しようとする課題

0009

そこで、医療部材の基材の表面処理として光開始グラフト重合法を用いる場合に、光を直接照射しにくい又は直接照射されない構造を有する基材の表面にも高分子材料が共有結合した高分子膜を形成可能であることが求められている。

課題を解決するための手段

0010

本発明の実施形態に係る医療部材は、光透過性を有する基材と、前記基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物重合した高分子鎖を含む高分子膜と、を備え、前記基材は、前記基材の外表面側から所定強度の光を照射した場合に、前記内表面の少なくとも一部であって前記高分子膜を形成するために必要な強度の光が透過して到達する第1領域を含む。

0011

また、本発明の実施形態に係る医療部材の「grafting from」法(詳細は後述)による製造方法は、光透過性を有する基材の内表面とホスホリルコリン基を有する化合物を含有する溶液とを接触させる工程と、前記基材の外表面側から光を照射する工程と、前記基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子鎖を含む高分子膜を形成する工程を備える。

0012

また、本発明の実施形態に係る医療部材の「grafting to」法(詳細は後述)による製造方法は、光透過性を有する基材の表面に、光反応開始基とホスホリルコリン基との両方を有する化合物を含有する溶液を接触させることで、前記基材の表面に前記化合物を吸着させる工程と、吸着された前記化合物が有する光反応開始基を励起させることが可能な強度の光を照射する工程と、前記基材の表面の少なくとも一部に前記化合物が共有結合した高分子膜を形成する工程と、を備え、前記高分子膜は、少なくとも前記基材のうち前記光が直接照射された面の裏側に形成される。

発明の効果

0013

本発明の実施形態によれば、ホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子鎖を含む高分子膜が、光透過性を有する基材の表面であって光を直接照射しにくい領域又は直接照射されない領域、例えば、細い管状部材内面、複雑な表面構造を有する部材の内面及び多孔質状部材の孔内に共有結合している。これによれば、上記領域においても高い生体適合性や高い防汚性を発揮することが可能となる。すなわち、生体内において、血液適合性及び親水性などの生体適合性に加えて、一般的な物理的吸着の場合と比較して基材表面へのタンパク質の吸着及び細胞接着等の抑制などの防汚性を比較的長期間にわたって発揮することができる。

図面の簡単な説明

0014

本発明の実施形態に係る医療部材を示す斜視図である。
本発明の実施形態に係る医療部材を示す断面図である。
本発明の実施形態に係る医療部材を示す斜視図である。
本発明の実施形態に係る医療部材を示す断面図である。
本発明の実施形態に係る医療部材を示す斜視図である。
本発明の実施形態に係る医療部材を示す斜視図である。
基材の厚さと紫外線透過率相関を示す図である。
基材の密度と紫外線透過率の相関を示す図である。
MPCポリマー処理後の照射面及び照射背面のフーリエ変換赤外線分光測定の結果を示す図である。
MPCポリマー処理を施した基材の照射面の断面のTEM画像である。
MPCポリマー処理を施した基材の照射背面の断面のTEM画像である。
紫外線照射強度紫外線照射時間を変化させた際に形成するMPCポリマー層の膜厚を示す図である。
MPC濃度を変化させた際に形成するMPCポリマー層の膜厚を示す図である。
MPC濃度を変化させた際に「grafting to」法により形成するMPCポリマー層の膜厚を示す図である。

0015

以下、図面を参照して、本発明に係る医療部材の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明の範囲は以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。

0016

<医療部材の概要
本発明に係る医療部材は、光透過性を有する基材と、前記基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子鎖を含む高分子膜と、を備える。基材は、基材の外表面側から所定強度の光を照射した場合に、前記内表面の少なくとも一部であって前記高分子膜を形成することが可能な強度の光が透過して到達する第1領域を含む。

0017

図1A図3Bは、本発明の実施形態に係る医療部材の例である。
図1A及び図1Bに斜視図及び断面図が示される遠心血液ポンプ1は、開口部(入口ポート12及び出口ポート13)を備えた中空形状の光透過性の基材であるケーシング11と、ケーシング11の内部のインペラ14等を備え、少なくともケーシング11の内表面又はインペラ14の表面に高分子膜(図示せず)を備える。
また、図2A及び図2Bに斜視図及び拡大断面図が示される頭蓋骨プレート2は、光透過性部材である基材21の外表面22、及び基材21を貫通する貫通孔23の内表面23Aに、高分子膜24を備える。
また、図3Aに示される医療部材3は、両端に開口部32及び33を備えた中空形状(円筒状)の光透過性部材である基材31と、基材31の内表面34全体に形成された高分子膜(図示せず)を備える。
また、図3Bに示される医療部材4は、両端に開口部42及び43を備えた中空の四角柱状の基材41と、基材41の内表面44全体に形成された高分子膜(図示せず)を備える。
ここで、本発明に係る医療部材は、例えば、人工血管中空糸人工肺人工心臓ポンプカテーテルステントダイアライザ神経誘導管シャントチューブ及び脊椎ケージなどの中空形状のものを含むが、それらに限られるものではない。
以下、医療部材の構成要素について、詳細に説明する。

0018

<基材>
本実施形態の基材は、光透過性部材である。
基材は、内表面に高分子膜を備える。本発明において、内表面とは、中空形状をなす基材の内側の面だけでなく、図1A図1Bに示す中空の基材(ケーシング11)内のインペラ14の表面、図2A図2Bに示す複雑な凹凸構造(貫通孔23)の表面、及び図3A図3Bに示す細長い管状構造の内側面を含む。
基材は、開口部を有していてもよく、当該開口部は、通常は開口していないが開口可能な機構又は構造であってもよい。すなわち、後述するように、光重合開始剤又は光反応開始基とホスホリルコリン基の両方を有する化合物を吸着させることが可能な形状及び構造であればよい。また、開口部の形状、大きさ及び数は、特に限定されるものではない。例えば、基材が多数の小さな開口部を有して網目状又は多孔質状になっていてもよい。また、基材内表面に十分な強度の光を照射できれば、基材外表面の一部又は全部に金属蒸着が施されていたり、金属メッシュなどを組み合わせられていたりしてもよい。

0019

基材は、光(例えば、波長10〜400nmの紫外線、より好ましくは波長200〜380nmの紫外線)を通す部材である。具体的には、基材の少なくとも一部における光透過率が、好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。光透過率は、基材を構成する材料の種類及び厚さに応じて異なるが、例えば、基材を構成する材料がポリオレフィン部材の場合、0.05〜2.0mmの厚さであることが好ましく、0.1〜1.0mmの厚さであることがさらに好ましい。
なお、基材は、高分子膜の形成に十分な量の光を透過し得ることに加えて、照射される光に対する耐劣化性を有してもよい。

0020

基材は、例えば、光透過性部材であるポリオレフィン部材又は芳香族ポリエーテルケトン部材で構成される。
ポリオレフィン部材として、例えば、ポリエチレン低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weight Polyethylene、UHMWPE)等を用いることができる。HDPEやUHMWPEは、耐薬品性や生体適合性に優れ、生体内に使用される医療部材の材料として好適である。
また、芳香族ポリエーテルケトン部材として、例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等の薄膜材料を用いることができる。PEEKは、耐薬品性及び機械的特性に優れ、生体内の医療部材として用いられる材料として好適である。

0021

このような基材は、粉末状、粒状又はペレット状のポリオレフィン又は芳香族ポリエーテルケトンを金型投入し、圧縮成型押し出し成型又は射出成型することで得ることができる。なお、成型して得られた基材をそのまま、高分子膜形成工程に供してもよく、シート状又はフィルム状の基材を中空形状(円筒状)に丸め、高周波などで加熱溶着する加工、切削などの追加加工により形状を整えたのちに高分子膜形成工程に供してもよい。ここで、ポリオレフィン又は芳香族ポリエーテルケトンは、熱可塑性樹脂であるが、溶融温度以上でも流動性が低いため、固体状のポリオレフィン又は芳香族ポリエーテルケトンを金型に投入して高熱高圧条件下で成型すればよい。
なお、基材は、例えば抗酸化剤架橋剤、炭素繊維等の強化材を添加して成形してもよい。また、基材は、1種の樹脂のみで形成されたものに限られず、例えば異なる構造又は物性を持つ複数の樹脂などを混練して成形されたものでもよい。

0022

<高分子膜>
本実施形態の高分子膜は、ホスホリルコリン基を有するポリマー、例えばホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子鎖を含む高分子膜であって、ポリマーがグラフト鎖として基材に共有結合して形成されている。具体的には、ホスホリルコリン基がメタクリロイルオキシアルキル基を介して基材に結合して形成された高分子膜は、化学的に安定であり、かつ重合法によって形成し易い。

0023

高分子膜の厚さは、好ましくは5〜200nmであり、さらに好ましくは10〜100nmである。厚さを5nm以上とした場合、血液、体液等に対して高い防汚性が得られ、例えば生体内に埋め込んで使用した場合に、タンパク質の吸着を効果的に抑制することができる。これにより、優れた耐久性を有する医療部材とすることができる。

0024

高分子膜は、基材の内表面の少なくとも一部に設けられる。高分子膜が設けられる領域は、基材の外表面側から所定強度の光を照射した場合に、高分子膜を形成可能な光が基材を透過して到達し得る領域(第1領域)を含む。
例えば、図1A図1Bに示される遠心血液ポンプ1の場合、図1Bの左側から所定強度の光を照射すると、基材11の内表面及びインペラ14の表面に高分子膜を形成可能な光が基材11を透過して到達する。
なお、「所定強度の光」とは、当該光を照射されることによって基材が劣化しない程度の強度(基材の材質等によって異なるが、例えばポリエチレンの場合、10mW/cm2以下)の光である。また、「高分子膜を形成可能な強度の光」とは、基材や高分子膜の種類に応じて異なるが、例えばポリエチレンの場合、1mW/cm2以上の強度の光である。

0025

また、好ましくは、高分子が設けられる領域は、開口部から所定強度の光を照射した場合に、高分子膜を形成可能な光が直接は照射されない領域(第2領域)を含む。
例えば、図3Aの基材3において、内表面34の中央付近の領域34Aは、開口部32、33のいずれからも離れているため、基材31が光透過性でない場合、領域34Aに照射される光の強度は、基材の外表面(開口部32又は33付近)の光の強度と比較して大きく減衰している。特に紫外線のように波長が短い光は、大気中や水中で減衰しやすいため、小さい開口部32又は33を通して十分な強度の光を領域34Aへ直接照射することが難しい。なお、光源から発する光を強くすることにより、開口部32又は33を通して領域34Aへ到達する光も強くすることができるが、その場合、開口部32又は33付近に非常に強い光が照射されることとなり、開口部32又は33付近の基材の劣化を引き起こす可能性が高い。

0026

<医療部材の製造方法>
次に、本実施形態の医療部材の製造方法について、高分子膜の形成方法を含めて具体的に説明する。
まず、上述のようにして、中空形状で光透過性を有する基材を形成する。例えば、ポリオレフィン又は芳香族ポリエーテルケトンを材料として、周知の方法を用いて中空形状に成形する。

0027

次に、以下に説明するように、基材の表面に、共有結合を伴うグラフト重合により高分子膜を形成する。このようなグラフト重合は、(1)表面開始グラフト重合、いわゆる「grafting from」法と、(2)基材に吸着させたポリマーをグラフト結合ディップコーティングなどで高分子膜を形成する高分子材料を医療部材表面に吸着させた後、架橋やポリマー中反応性官能基により結合)させる方法、いわゆる「grafting to」法とに大別される。

0028

ここで、グラフト重合法の例として、所定の波長の光を照射することによりグラフト重合反応を開始させる光開始グラフト重合法がある。光開始グラフト重合の重合開始剤としては、ラジカル開始剤を主として用いることができる。また、後述するように、グラフト重合法のうち、上記(1)の「grafting from」法のためには処理表面にラジカル開始剤を、上記(2)の「grafting to」法のためには処理表面に光反応開始基を有するポリマーを、予め吸着させて(塗布して)おけばよい。

0029

基材の表面の所定領域にホスホリルコリン基を有する化合物(以下、PC化合物)を「grafting from」法によりグラフトさせる場合には、通常、基材表面の所定領域に光重合開始剤を吸着させておく。光重合開始剤を吸着させる方法としては、例えば、基材を、光重合開始剤を添加した有機溶媒に所定の時間浸漬した後、乾燥させて有機溶媒を除去する。
次に、基材の内表面とPC化合物である重合性モノマーを含有する溶液とを接触させる。具体的には、本実施形態においては、所定の形状に成形された光透過性を有する基材を、PC化合物である重合性モノマー及び水溶性無機塩を含有する溶液(以下、「重合処理液」)に浸漬する。

0030

本実施形態で用いる重合性モノマーは、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、4−メタクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−メタクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、ω−メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン、4−スチリルオキシブチルホスホリルコリンなどである。これらの中でも、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下では、「MPC」という)が特に好ましい。
MPCは、下記構造式に示すような化学構造を有しており、ホスホリルコリン基及び重合性メタクリル酸ユニットを有する重合性モノマーである。MPCは、ラジカル重合により容易に重合し、高分子量ホモポリマーを形成する(Ishiharaら:Polymer Journal誌22巻 355頁(1990))。そのため、本実施形態の重合処理液には、実際のところ、PC化合物として、重合性モノマーだけでなくホモポリマーも存在している。

0031

また、本実施形態で用いる水溶性無機塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩である。アルカリ金属塩は、ナトリウム塩カリウム塩リチウム塩及びセシウム塩群から選ばれる一種以上である。アルカリ土類金属塩は、カルシウム塩ストロンチウム塩バリウム塩及びラジウム塩からなる群から選ばれる1種以上である。

0032

次に、基材に外表面側から光を照射する。具体的には、上記工程を経た基材の少なくとも内表面に重合処理液が接した状態で、外表面側から光(好ましくは紫外線)を照射する。

0033

また、基材の表面の所定領域にPC化合物を「grafting to」法によりグラフトさせる場合には、通常、その所定領域に光反応開始基とホスホリルコリン基の両方を構造内に含有するPC化合物(ポリマー)を吸着させて(塗布して)おく。PC化合物を吸着させる方法としては、例えば、基材を、PC化合物を添加した有機溶媒に所定の時間浸漬した後、乾燥させて有機溶媒を除去する。次いで、基材の外表面側から光(好ましくは紫外線)を照射する。

0034

本実施形態で用いるPC化合物である光反応開始基とホスホリルコリン基の両方を構造内に有するポリマーは、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ブチルメタクリレート及びベンゾフェノンメタクリレートの共重合体、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ブチルメタクリレート及びベンゾフェノンメタクリレートの共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ブチルメタクリレート及びアセトフェノンの共重合体などである。これらの中でも、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ブチルメタクリレート及びベンゾフェノンメタクリレートの共重合体(以下では、「PMBBP」という)が特に好ましい。

0035

光照射について>
重合開始剤/重合開始基の種類に応じて適した波長範囲の光(好ましくは紫外線)を照射する。
本実施形態における紫外線の照射光源は、例えば高圧水銀ランプ(理工科産業株式会社製 UVL-400HA)、発光ダイオードランプ(株式会社ワイ・イー・ブイ製 MeV365-P601JMM)、UVクロスリンカー(株式会社フナコシ製 CL-1000)などである。
本実施形態の光重合開始剤は、例えばアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤アルキルフェノン系光重合開始剤アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びオキシムエステル光重合剤などであるが、好ましくは、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、1,4-ジベンゾイルベンゼン、2-イソプロピルチオキサントン、及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンである。

0036

本実施形態の基材は、光透過性を有することから、光が直接に照射された面が劣化又は脆化することなく、光が直接照射されない面にも十分な強度の光が照射される。従って、照射光源から直接的に光を照射しにくい領域にも高分子膜を形成することが可能となる。
このようにして、基材の内表面の少なくとも一部に共有結合したホスホリルコリン基を有する化合物が重合した高分子膜を形成する。
なお、本実施形態においては、基材の外部の照射光源から出射された光が最初に到達する基材上の領域(又は表面)を「照射面」と定義する。そして、本実施形態において、照射領域(又は表面)から基材に入射した光が基材を透過して出射する領域(又は表面)を「照射背面」と定義する。

0037

すなわち、上述のようにして「grafting from」法では、光照射を行なうことによって、光重合開始剤ラジカルが発生して基材表面からプロトンが引き抜かれ、これにより、基材表面に重合開始点が形成され、PC化合物の末端が重合開始点と反応する。これにより、基材の表面にPC化合物がグラフト鎖として共有結合し、さらにそのPC化合物が重合反応によりグラフトポリマー鎖へと成長していく。例えば、図3Aのような均一な厚さの中空(円筒)状の基材31の場合、基材31全体が光を透過して、基材31の照射面のみでなく、照射背面にも十分な強度の光が照射される。その結果、基材31上又は基材31内の光重合開始剤が吸着され且つ重合処理液に接している領域全体において、光開始グラフト重合が起こり、高分子膜が形成される。ここで、光重合開始剤を添加した有機溶媒又は重合処理液が、基材31の中空内部に充填されている場合には、高分子膜は基材31の内表面34にのみ形成される。

0038

また、「grafting to」法では、光照射を行なうことによって、光反応開始基とホスホリルコリン基の両方を構造内に含有するPC化合物の光反応開始基からラジカルが発生してPC化合物に重合開始点が形成され、基材表面の末端が重合開始点と反応する。これにより、基材の表面にPC化合物が共有結合し、グラフトポリマー層が形成される。なお、図3Aのような均一な厚さの中空(円筒)状の基材の場合、基材31全体が光を透過して、基材31の照射面のみでなく、照射背面にも十分な強度の光が照射される。その結果、基材31上又は基材31内の光反応開始基とホスホリルコリン基との両方を有する化合物が吸着された領域全体において、光開始グラフト結合が起こり、高分子膜が形成される。なお、光反応開始基とホスホリルコリン基との両方を有する化合物を添加した有機溶媒が、基材31の中空内部に充填されている場合には、高分子膜は基材31の内表面34側にのみ形成される。

0039

以上のように、「grafting from」法及び「grafting to」法のいずれを採用した場合においても、光開始グラフト重合によってPC化合物の高分子鎖を基材の表面に共有結合させ、安定に固定することが可能となる。
なお、本実施形態の高分子膜として、ホスホリルコリン基を有する単一の重合性モノマーから構成したホモポリマーを含む例を説明したが、これに限定されるものではなく、ホスホリルコリン基を有する重合性モノマーと例えば他の(メタアクリレート化合物モノマーから成る共重合体を含む高分子膜を形成することもできる。この場合、用いる他のビニル化合物の種類に応じて、高分子膜に機械的強度向上などの機能を付加することもできる。
以上の工程を経て、本実施形態の医療部材を製造することができる。

0040

このようにして製造された本発明の実施形態にかかる医療部材によれば、光を透過可能な基材の表面に、所定の条件(MPC(ポリマー)濃度、光照射強度及び光照射時間)でMPCポリマー処理を施すことで、光が直接照射された照射面だけでなく、照射背面にもMPCポリマー層を形成することができる。このように照射背面にMPCポリマー層を形成させることができることから、直接的には十分な強度の光を照射しにくい領域を含む、細い管状部材の内面、複雑な表面構造(凹凸構造など)を有する部材の内面及び多孔質状部材の孔内にも、MPCポリマー層を「grafting from」法によって光開始グラフト重合させること又は「grafting to」法によって光開始グラフト結合させることが可能となる。

0041

これにより、当該表面においても高い生体適合性や高い防汚性を発揮することが可能となる。すなわち、生体内において、血液適合性及び親水性(親和性)などの生体適合性に加えて、基材表面へのタンパク質の吸着及び細胞の接着等の抑制などの防汚性を比較的長期間にわたって発揮することができる。その結果、基材の表面に吸着したタンパク質等が原因となって、中空構造の一部が閉塞したり、細かい凹凸構造や空孔が埋まったりすることが効果的に低減されて(抗血栓性など)、必要な機能を、例えば物理的吸着により高分子膜を形成した場合と比較して、長期間にわたって発揮することが可能となる。
具体的な例として、本発明の実施形態は、人工血管、中空糸、人工心臓ポンプ、ステント(血管拡張用)及びダイアライザに適用することによって、抗血栓性及び血液適合性の少なくとも一方を効果的に発揮することができる。また、本発明の実施形態は、頭蓋骨プレート、カテーテル、ステント(血管拡張用以外)、神経誘導管、シャントチューブ、脊椎ケージ及び人工肺に適用することによって、防汚性を効果的に発揮することができる。

0042

なお、変形例として、光重合開始基分子構造内に含有する基材(例えば、PEEK)の表面にPC化合物をグラフトさせる場合には、光重合開始剤を吸着させる工程は不要である。

0043

<基材の厚さに対する紫外線透過率の検討>
基材として、厚さの異なる4種のポリエチレンシート(密度0.93g/cm2)を準備した。基材の大きさは、縦50mm、横10mm、厚さ0.4mm、0.6mm、0.8mm及び1.0mmである。
準備した各基材に対し、一方の面(照射面)への入射角が0度となるように紫外線を照射した。照射面における紫外線強度を1〜15mW/cm2の範囲内で変化させ、他方の面(照射背面)における紫外線強度を測定し、透過率を以下の式(1)に従って算出した。
式(1):(紫外線透過率(%))
={(照射面における紫外線強度)/(照射背面における紫外線強度)}×100

0044

図4は、基材の厚さを変化させた際の紫外線透過率を示す。式(1)により算出される紫外線透過率は、基材の厚さが0.4mmの場合に約67%、0.6mmの場合に約63%、0.8mmの場合に約54%、1.0mmの場合に約36%であり、厚さに応じて異なっていることが分かった。

0045

<基材の密度に対する紫外線透過率の検討>
基材として、密度が異なる4種のポリエチレンシート(密度:0.92g/cm2、0.925g/cm2、0.935g/cm2及び0.96g/cm2)を準備した。基材の大きさは、縦50mm、横10mm、厚さ0.6mmである。
準備した各基材に対し、照射面への入射角が0度となるように紫外線を照射した。照射面における紫外線強度を1〜15mW/cm2の範囲内で変化させ、照射背面における紫外線強度を測定し、紫外線透過率を上記式(1)に従って算出した。

0046

図5は、基材の密度を変化させた際の紫外線透過率を示す。式(1)により算出される紫外線透過率は、基材の密度が0.92g/cm3の場合に約66%、0.96g/cm3の場合に約45%であり、密度に応じて異なっていることが分かった。

0047

<照射面及び照射背面におけるMPCポリマー層>
実施例1で使用した基材の中で厚さが1.0mmのものを用いて、「grafting from」法により、基材の照射面及び照射背面にMPCポリマー処理を施した。
重合開始剤としてベンゾフェノン(1.0g/dL)を含有するアセトン溶液に基材を30秒間浸漬した後、直ちに引き上げて室温で溶媒を除去して、ベンゾフェノンを基材の両面に吸着させた。
次いで、0.3mol/LのMPCモノマー及び2.5mol/Lの塩化ナトリウムを含む重合処理液をあらかじめ60℃に保持した後、十分に脱気してベンゾフェノンを十分に吸着させた基材を浸漬した状態で、紫外線(波長:300〜400nm)を90分間照射した。

0048

基材を重合処理液から引き上げた後、純水及びエタノールで十分に洗浄して、MPCポリマー処理を施した基材を得た。
紫外線は、照射面への入射角が0度であり、照射面における強度が5.0mW/cm2となるように照射した。その場合、実施例1で用いた厚さ1.0mmの基材の紫外線透過率は36%であった。つまり、照射背面における紫外線強度は1.8mW/cm2であった。
以上のようにしてMPCポリマー処理を施した基材の表面構造を、以下の方法で分析した。

0049

(1)フーリエ変換赤外線分光測定
MPCポリマー処理を施した基材の照射面及び照射背面のそれぞれに対し、全反射測定法ATR法)によるフーリエ変換赤外線分光(FT−IR)測定を行った結果を図6に示す。FT−IR測定は、FT−IR装置(日本分光株式会社製FT/IR-6300 type A)を用い、分解能4cm−1、積算回数64回として測定した。
図5に示されるように、照射面及び照射背面のFT−IR測定により得られたスペクトルは、それぞれMPCに由来すると推定されるピークを有し、ほぼ同じ形状であった。

0050

(2)TEM画像観察
図7A及び図7Bは、MPCポリマー処理を施した基材の断面のTEM画像を示す。照射面(図7A)及び照射背面(図7B)のいずれにもMPCポリマー層が形成され、形成された層の厚さも同等であった。

0051

上より、実施例3における条件を適用することによって、紫外線透過率が36%の光透過性部材からなる基材において、照射面及び照射背面に、同一厚さ(約80nm)のMPCポリマー層が形成されることが確認された。なお、条件の変更により、照射面及び照射背面に、互いに異なる厚さのMPCポリマー層を形成することもできる。

0052

<紫外線強度及び紫外線照射時間の違いによるMPCポリマー層の膜厚変化
実施例1で使用した基材の中で厚さが0.6mm(紫外線透過率:約63%)のものに対して「grafting from法」によるMPCポリマー処理を施した。
MPCポリマー処理は、照射面における紫外線強度を2.5mW/cm2、5.0mW/cm2及び10.0mW/cm2とした他は、実施例3と同様の条件にて行なった。

0053

また、紫外線照射時間15分、30分、60分及び90分において、基材の照射背面に形成されるMPCポリマー層の膜厚を測定した。膜厚は、分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製 Lincoln型)によって測定した。測定は70度の入射角で行ない、膜厚はコーシーモデルを用いて、波長632.8nmの際の屈折率を1.49として算出した。
なお、上述のように、図4に示す通り、基材の厚さが0.6mm(紫外線透過率:約63%)であるため、例えば照射面における紫外線強度が5.0mW/cm2の場合には、照射背面における紫外線強度は約3.2mW/cm2である。実施例4の結果としては、照射面における紫外線強度が5.0mW/cm2の場合には、図8に示されるように、紫外線照射時間が30分以下ではMPCポリマー層の形成を明確に確認することが出来なかったが、60分では厚さ約80nmのMPCポリマー層の形成が確認された。そして、90分後に再度測定したところ、厚さの変化はなく、約80nmであった。

0054

具体的には、照射面における紫外線強度に応じて次の通りの結果が得られた。照射面における紫外線強度が10.0mW/cm2の場合(照射背面における紫外線強度は約6.3mW/cm2)には、15分で約30nm、30分以上で約80nmのMPCポリマー層が形成され、30分以上では厚さの変化はなかった。形成されるMPCポリマー層の厚さは、照射面における紫外線強度が5.0mW/cm2の場合(照射背面における紫外線強度は約3.2mW/cm2)には、15分及び30分の紫外線照射で約5nm以下であったが、60分以上では約80nmであった。照射面における紫外線強度が2.5mW/cm2の場合(照射背面における紫外線強度は約1.6mW/cm2)には、15分の紫外線照射で約5nm、30分で約15nmのMPCポリマー層が形成された。90分以上の紫外線照射では、厚さの変化はなく、約60nmであった。

0055

実施例4によると、照射面か照射背面かを問わずMPCポリマー層を形成する対象となる面における照射条件によって、形成されるMPCポリマー層の厚さが決まる。従って、例えば、紫外線照射時間15分以内に厚さ5nm以上のMPCポリマー層を形成させるためには、照射背面における紫外線強度を約2.5mW/cm2以上とする必要があることが分かった。また、照射面における紫外線強度を増加させることにより、照射背面における紫外線強度も増加させて短時間で所望の厚さのMPCポリマー層を形成することができるが、基材を劣化させない観点からは、照射面における紫外線強度は約10mW/cm2であることが好ましい。さらに、照射面の紫外線強度が約10mW/cm2で照射背面の紫外線強度約2.5mW/cm2以上(透過率25%)を実現可能な基材の厚さは、図4近似曲線線形):y(UV透過率) = −49.936x(PEの厚み)+89.835に基づくと約1.3mm以下である。

0056

<MPCモノマー濃度の違いによる照射背面に形成されるMPCポリマー層の膜厚変化>
実施例1で使用した基材の中で厚さが0.6mm(紫外線透過率:約63%)のものに対して「grafting from」法によるMPCポリマー処理を施した。
MPCポリマー処理は、照射面(及び照射背面)におけるMPCモノマー濃度を0.10、0.20、0.225、0.25及び0.30mol/Lとした他は、実施例3と同様に行なった。
紫外線照射時間90分における、基材の照射背面に形成されるMPCポリマー層の膜厚を実施例4と同様に測定した。
本実施例の結果としては、図9に示すように、0.10mol/L以上のすべてのMPCモノマー濃度において5nm以上のMPCポリマー層が形成された。また、異なる観点から考察すると、紫外線照射時間90分以内に厚さ5nm以上のMPCポリマー層を形成させるためには、MPCモノマー濃度は0.10mol/L以上であれば十分であることが分かった。

0057

<MPCポリマー濃度の違いによる照射背面に形成されるMPCポリマー層の膜厚変化>
実施例1で使用した基材の中で厚さが0.6mm(紫外線透過率:約63%)のものに対して「grafting to」法によるMPCポリマー処理を施した。MPCポリマーは、PMBBPを使用した。
0.05、0.10、0.15及び0.20wt%のMPCポリマーを含有するエタノール溶液に、基材を30秒間浸漬した後、直ちに引き上げて室温で溶媒を除去した。完全に溶媒を除去した後に、再びMPCポリマー溶液に基材を30秒間浸漬した後、直ちに引き上げて室温で溶媒を除去した。

0058

次いで、照射装置(UVクロスリンカー(株式会社フナコシ製 CL-1000))内で、MPCポリマーを吸着させた基材に紫外線(波長:200〜300nm、照射面における強度:5.0mW/cm2)を10分間照射した。照射装置から取り出した後、エタノールで十分に洗浄して、MPCポリマー処理を施した基材を得た。
ここで、基材の厚さが0.6mm(紫外線透過率:約63%)であるため、上述したように、照射面における紫外線強度が5.0mW/cm2の場合には、図4より、照射背面の紫外線強度は約3.0mW/cm2である。
MPCポリマー濃度が0.01、0.02、0.05、0.10、0.15及び0.20wt%において、基材の照射背面に形成されるMPCポリマー層の膜厚を測定した。膜厚測定は上述の実施例4と同一の方法によって行なった。

0059

実施例6の結果としては、図10に示すように、MPCポリマー濃度が0.01wt%以上のすべての濃度において5nm以上のMPCポリマー層が形成された。また、異なる観点から考察すると、紫外線照射時間10分において厚さ5nm以上のMPCポリマー層を形成させるためには、MPCポリマー濃度は0.01wt%以上である必要があることが分かった。

0060

以上、本発明の実施形態によれば、中空形状で光を透過可能な基材に、所定の条件(MPCモノマー又はポリマー濃度、光照射強度及び光照射時間)でMPCポリマー処理を施すことによって、光が直接照射された面だけでなく、照射背面にもMPCポリマー層を形成することができる。これによれば、これまで難しかった、基材の内側の面(中空基材の内部構造の表面、細長い管状部材の内側面、及び複雑な凹凸構造の表面を含む)にも、MPCポリマー層を光開始グラフト重合させることが可能となることから、当該面の性能を向上させることができる。

実施例

0061

なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施してよい。
例えば、本発明の実施形態に係る医療部材の形状は、図1A図3Bに示される形状に限定されるものではない。例えば、一端のみが開口した管状、一つ以上の開口部を有する中空の球状又は箱状、又は多孔質状等でもよい。
また、上記の実施形態では、高分子膜は、基材の内表面全体に形成されているとしたが、基材の外表面にも形成されていてもよい。また、高分子膜は、内表面の開口部近傍のみ、又は中央付近(例えば、図3の中央付近の領域14A)のみに形成されていてもよい。

0062

1、2、3、4・・・医療部材
11、21、31、41・・・基材
12、13、32、33、42、43・・・開口部
22・・・外表面
23・・・貫通孔
23A、34、44・・・内表面
24・・・高分子膜

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