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課題
解決手段
概要
背景
エネルギーを化石燃料に頼らない持続可能な社会を実現するために、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電が急速に普及している。しかし、これらの発電量は電力使用量と必ずしも一致しない場合も多い。どの瞬間にも電力の需給バランスが安定して保たれる必要があるため、需給差分を他の電源で補う必要がある。この補償のために、蓄電装置による充放電や、火力や水力発電の電力を負荷に応じて変化させる必要がある。これらの調整力は、再生可能エネルギー発電が増えるほど、ますます多く必要になってくる。
近年、特に太陽光発電が急速に普及しており、この調整力が足りなくなっている。それに伴い、系統運用者は太陽光発電の導入制限や、発電電力の受入れ制限を課すことが増えており、発電業者は投資の回収が遅れたり、装置の稼働率低下により、収入が得づらくなったりしている。このため、再生可能エネルギー発電の普及が伸びない懸念がある。
系統運用者は、太陽光発電事業者に対して、太陽光発電の受入れ制限を少なくする方法として、蓄電設備の併設を促している。系統運用者にとっては、計画的で予測可能な発電運用が重要であり、太陽光発電が気象条件によって不測に上下することに備えるコストを抑制できれば良い。
したがって、各発電事業者は発電計画をたて、それに沿って発電するということが最も望ましいことから、計画値同時同量という制度も導入されている。これは、ある所定の単位時間、例えば30分や1時間毎の発電計画を前日にあらかじめ入札し、実際の発電時に発電業者が計画通りになるように電力を調整するものであって、その実績を後から検証し、精算する仕組みである。実績発電量と計画値との差が許容値を超えると、発電事業者にペナルティ料金を課されるのが一般的である。許容値はたとえば3%に設定されている例もある。
特許文献1には、風力発電とガスタービン発電を合計した出力を調整する方法が記載されている。特許文献2には、自然エネルギーを利用した発電とガスタービン発電機による電力供給を、気象条件に伴う発電量変化を補完する電力供給管理システムが記載されている。特許文献3では、消費電力量および太陽光発電量を予測し、予測値と実際の値が異なっていた場合であっても、太陽光発電量を有効に利用することができる電力供給システムが記載されている。
概要
計画値同時同量を満たすと共に、経済的に電力を供給することができる。制御装置は、電力供給システムから送配電網へ単位時間に送電する電力量である送電電力量に対し、単位時間毎の送電電力量の計画値を取得し、計画値に基づいて送電電力量の許容範囲を算出し、単位時間よりも短い時間間隔で、送配電網に接続される電力計測装置の計測結果を取得し、計測結果に基づいて、単位時間毎の送電電力量の実績値を算出し、実績値に基づいて、単位時間毎の送電電力量の予測値を算出し、予測値が許容範囲内であるという送電電力量条件の下で、蒸気タービン発電機の供給電力を変化させる、ように構成されている。
目的
そこで、本実施例では、この余剰な蒸気を有効活用するため、プラントに蒸気タービンを設置して発電することで、プラント内の電力を賄い、さらに余剰の電力を自社内の他のプラントやビルなどに託送、さらには、電力卸売市場に売電するための電力供給システムを提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
電力供給システムであって、電力線を介して送配電網に接続される発電機と、電力線を介して前記送配電網に接続される電力機器と、制御線を介して、前記発電機に接続される制御装置と、を備え、前記電力機器により供給又は消費される電力は、変動し、前記制御装置は、前記電力供給システムから前記送配電網へ単位時間に送電する電力量である送電電力量に対し、単位時間毎の前記送電電力量の計画値を取得し、前記計画値に基づいて前記送電電力量の許容範囲を算出し、前記送配電網に接続される電力計測装置の計測結果を取得し、前記計測結果に基づいて、前記単位時間毎の前記送電電力量の実績値を算出し、前記実績値に基づいて、前記送電電力量の予測値を算出し、前記予測値が前記許容範囲内であるという送電電力量条件の下で、前記発電機の供給電力を変化させる、ように構成されている、電力供給システム。
請求項2
電力供給システムであって、電力線を介して送配電網に接続される発電機と、電力線を介して前記送配電網に接続される電力機器と、制御線を介して、前記発電機に接続される制御装置と、を備え、前記電力機器により供給又は消費される電力は、変動し、前記制御装置は、前記電力供給システムから前記送配電網へ単位時間に送電する電力量である送電電力量に対し、単位時間毎の前記送電電力量の計画値を取得し、前記計画値に基づいて前記送電電力量の許容範囲を算出し、前記単位時間よりも短い時間間隔で、前記送配電網に接続される電力計測装置の計測結果を取得し、前記計測結果に基づいて、前記単位時間毎の前記送電電力量の実績値を算出し、前記実績値に基づいて、前記単位時間毎の前記送電電力量の予測値を算出し、前記予測値が前記許容範囲内であるという送電電力量条件の下で、前記発電機の供給電力を変化させる、ように構成されている、電力供給システム。
請求項3
請求項1または2に記載の電力供給システムであって、電力線を介して前記送配電網に接続され、制御線を介して前記制御装置に接続される蓄電池を備えることを特徴とする電力供給システム。
請求項4
請求項3に記載の電力供給システムであって、前記蓄電池は、前記制御装置からの指示に基づいて電力を供給し、前記制御装置は、前記送電電力量条件の下で、前記発電機及び電源の少なくとも何れかの供給電力を変化させることを特徴とする電力供給システム。
技術分野
0001
本発明は、電力供給システムに関する。
背景技術
0002
エネルギーを化石燃料に頼らない持続可能な社会を実現するために、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー発電が急速に普及している。しかし、これらの発電量は電力使用量と必ずしも一致しない場合も多い。どの瞬間にも電力の需給バランスが安定して保たれる必要があるため、需給差分を他の電源で補う必要がある。この補償のために、蓄電装置による充放電や、火力や水力発電の電力を負荷に応じて変化させる必要がある。これらの調整力は、再生可能エネルギー発電が増えるほど、ますます多く必要になってくる。
0003
近年、特に太陽光発電が急速に普及しており、この調整力が足りなくなっている。それに伴い、系統運用者は太陽光発電の導入制限や、発電電力の受入れ制限を課すことが増えており、発電業者は投資の回収が遅れたり、装置の稼働率低下により、収入が得づらくなったりしている。このため、再生可能エネルギー発電の普及が伸びない懸念がある。
0004
系統運用者は、太陽光発電事業者に対して、太陽光発電の受入れ制限を少なくする方法として、蓄電設備の併設を促している。系統運用者にとっては、計画的で予測可能な発電運用が重要であり、太陽光発電が気象条件によって不測に上下することに備えるコストを抑制できれば良い。
0005
したがって、各発電事業者は発電計画をたて、それに沿って発電するということが最も望ましいことから、計画値同時同量という制度も導入されている。これは、ある所定の単位時間、例えば30分や1時間毎の発電計画を前日にあらかじめ入札し、実際の発電時に発電業者が計画通りになるように電力を調整するものであって、その実績を後から検証し、精算する仕組みである。実績発電量と計画値との差が許容値を超えると、発電事業者にペナルティ料金を課されるのが一般的である。許容値はたとえば3%に設定されている例もある。
0006
特許文献1には、風力発電とガスタービン発電を合計した出力を調整する方法が記載されている。特許文献2には、自然エネルギーを利用した発電とガスタービン発電機による電力供給を、気象条件に伴う発電量変化を補完する電力供給管理システムが記載されている。特許文献3では、消費電力量および太陽光発電量を予測し、予測値と実際の値が異なっていた場合であっても、太陽光発電量を有効に利用することができる電力供給システムが記載されている。
先行技術
発明が解決しようとする課題
0008
しかしながら、太陽光発電を持つ発電事業者が計画発電を行う場合には、自家で調整力を持つ必要がある。自家用の調整力としては、特許文献1にあるように蓄電池、ガスタービン発電装置、ディーゼル/ガスエンジンなどが考えられる。しかし、蓄電池の初期コストは高く、ガスやディーゼルの燃料費は高いため、発電事業者としては採算が合わなくなる場合がある。また、調整力は負荷変化率の限界が決まっているため、瞬時に電力量を調整ができない。
課題を解決するための手段
0009
上記課題を解決するために、本発明の一態様である電力供給システムは、電力線を介して送配電網に接続される発電機と、電力線を介して前記送配電網に接続される電力機器と、制御線を介して、前記発電機に接続される制御装置と、を備え、前記電力機器により供給又は消費される電力は、変動し、前記制御装置は、 前記電力供給システムから前記送配電網へ単位時間に送電する電力量である送電電力量に対し、単位時間毎の前記送電電力量の計画値を取得し、前記計画値に基づいて前記送電電力量の許容範囲を算出し、前記送配電網に接続される電力計測装置の計測結果を取得し、前記計測結果に基づいて、前記単位時間毎の前記送電電力量の実績値を算出し、前記実績値に基づいて、前記送電電力量の予測値を算出し、前記予測値が前記許容範囲内であるという送電電力量条件の下で、前記発電機の供給電力を変化させる、ように構成されている。
発明の効果
0010
計画値同時同量を満たすと共に、経済的に電力を供給することができる。
図面の簡単な説明
0011
実施例1の電力供給システムを示す。
制御装置10の制御ロジックを示す。
計画値と実績値の一例を示す。
変形例における計画値を示す。
変形例の制御装置10の制御ロジックを示す。
送電電力の時間変化を示す。
蒸気発電の出力減少量が不足する場合の送電電力の時間変化を示す。
変形例の送電電力の時間変化を示す。
実施例2の電力供給システムを示す。
0012
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、重複する説明は、適宜、省略する。
0013
図1は、実施例1の電力供給システムを示す。
0014
プラント1は、電力設備として、蒸気発電装置111と、電力負荷201と、太陽光発電装置101と、ガスタービン発電装置121と含む。蒸気発電装置111と太陽光発電装置101とガスタービン発電装置121の夫々の発電電力量は、は、制御装置10によって監視・制御される。遮断器16は、プラント1と外部の送配電網との接続点(連系点)である。電力測定器160における電力がプラント1の内部から外部に流れることで、プラント1から送配電網へ送電する。電力測定器160は、プラント1の現在の送電電力を制御装置10へ送る。制御装置10は、一定間隔の時間で送電計画と比較している。制御装置10は、ここで測定された電力量から、蒸気発電装置111と太陽光発電装置101とガスタービン発電装置121の発電電力量を除算することによって、電力負荷201の電力を知ることができる。蒸気発電装置111と、太陽光発電装置101と、ガスタービン発電装置121とは、制御線を介して、制御装置10に接続されている。蒸気発電装置111と、電力負荷201と、太陽光発電装置101と、ガスタービン発電装置121とは、電力線と遮断器16を介して送配電網に接続されている。
0015
蒸気発電装置111は、ボイラ301から蒸気を受取り、発電する。ボイラ301は、プラント1の内部に有っても、外部に合ってもよい。ボイラ301は、プラント1へ蒸気を送る他に、プロセス蒸気401A、401B、401Cを、他のプラントへ送っている。ボイラ301は、大容量化による高効率を実現しており、また、他のプラントが化学プラントである場合、一定の圧力と温度のプロセス蒸気401が必要とされるため、ボイラ301は、基本的に一定出力である。このため、ボイラ301は、蒸気発電装置111向けにも一定の圧力と温度の蒸気を送る。
0016
プラント1から送配電網へ送ることができる送電電力は、「送電電力=蒸気発電+太陽光発電−電力負荷+ガスタービン発電」となる。電力負荷と太陽光発電の実際の電力量は、計画と異なる。このため、連系点における送電電力は、計画値とずれてしまう。一方、電力の託送において、30分ないし1時間の単位時間の電力量の実績値を計画値と同量にしなければ、ペナルティを課される。このため、実運転時、制御装置10は、単位時間の発電計画を守るために、単位時間より短い計測時間の周期で発電を計測し、予測し、リアルタイムにプラント1内の電力を調整する。
0017
このとき、実績値の電力量は、リアルタイムの電力を単位時間当たりで積分した値となる。制御装置10は、計画値と実績値の差分を許容値(たとえば3%)以下に抑えなくてはならない(送電電力条件)。
0018
蒸気発電やガスタービン発電においては、通常、燃料投入量を操作することができるので、計画通りに発電でき、その効率は、定格出力すなわち最大出力の場合に最も効率が良い。したがって、プラント1のような構成では、太陽光発電の実績値が計画値よりも大きい場合、太陽光発電を抑制することが考えられる。一方、本実施例では、制御装置10は、太陽光発電を抑制せず、蒸気発電を抑制する。通常、蒸気発電を抑制すると発電効率が下がり、経済的ではないが、本実施例の着眼点を以下に説明する。
0019
先進国などでは人件費の高騰により国内の製造コストが上昇し、製造業が海外に移転している。したがって、以前は最大の稼働率で運転していた大型の化学プラントなどが一部操業を停止・中止するケースが多い。従来、石油化学コンビナートでは、大規模なボイラで集中的に蒸気を生成し、その蒸気を様々な化学プラントに分配していた。しかし、現在、石油化学コンビナート内の一部のプラントが停止していることで、既存のボイラの蒸気が余剰になっている場合がある。あるいは、最大の稼働率で最適化されていたプラント内の自家発電における熱と電気のエネルギーマネジメントが、プラントの一部の休止に伴って変化した熱電バランスに対して適切な配分ではなくなり、蒸気が余剰になっている場合がある。
0020
そこで、本実施例では、この余剰な蒸気を有効活用するため、プラントに蒸気タービンを設置して発電することで、プラント内の電力を賄い、さらに余剰の電力を自社内の他のプラントやビルなどに託送、さらには、電力卸売市場に売電するための電力供給システムを提供する。これにより、既存の大型ボイラを高効率で運転し、プラント内だけでなく、他プラントにも送電することにより、自社内でのエネルギーの自給率を上げることができる。
0021
化学プラントなどに用いるプロセス蒸気は、一定温度・一定圧力が必要なので、複数のプラント向けに蒸気を生成する既存の大型ボイラも一定負荷運転となる。このため、蒸気発電は、このようなプロセス蒸気を用いると、一定出力運転しかできない。そこで、本実施例では、蒸気発電装置111の蒸気取入経路(配管)に、蒸気バイパス弁311を設ける。蒸気バイパス弁311、制御装置10からの指示に基づいて、蒸気取入経路の内部から外部へ蒸気を逃がす。制御装置10は、蒸気バイパス弁311の開度を制御し、ボイラ301からの蒸気圧を調節することで、蒸気発電の出力を調整する。蒸気バイパス弁311は、制御線を介して、制御装置10に接続されている。また、制御装置10は、蒸気バイパス弁311を制御することで、ボイラを制御することに比べて、蒸気発電装置111の出力の変化速度を速くすることができる。
0022
このとき、蒸気発電装置111は、最大負荷運転している場合で、電力測定器160の計測値が計画よりも余剰になりそうな場合には、蒸気バイパス弁311を開け、蒸気タービンの発電を抑制する。これにより、太陽光発電装置101を抑制せずに済むため、蒸気発電に比べ売電価格が高い太陽光発電の電力を増やすことができ、発電事業者の収入が増える。このとき、余剰の蒸気を廃棄することになるが、余剰の蒸気を暖房など別用途に使うことも可能であることは言うまでもない。
0023
一方、実績値が計画値よりも不足しそうな場合、制御装置10は、最大負荷運転している蒸気発電の出力を増やせないため、ガスタービン発電装置121などで出力を補填する。例えば、制御装置10は、計画にガスタービン発電を含めず、不足時のみにガスタービン発電を起動することで、燃料費は計画との不足時のみにしか生じず、ランニングコストを抑えることができる。このように本実施例の特徴は、発電電力量の計画値と実績値の差分をリアルタイムで補償する際に、不足時と余剰時で担当する電源を変えることにある。
0024
図2は、制御装置10の制御ロジックを示す。
0025
この図に示された制御ロジックは、発電装置の種類毎に、出力調整優先度と、出力調整方向と、実績値性質とを示す。出力調整優先度は、当該発電装置を調整する優先度を示す。出力調整方向は、出力を調整する方向を示す。例えば、当該発電装置の出力調整方向が「減」を示す場合、当該発電装置は出力を減らすことができることを示す。実績値性質は、当該発電装置の出力の実績値が計画値と一致するか否かを示す。例えば、実績値性質が「不一致」を示す場合、当該発電装置の出力の実績値は計画値と一致しないことを示す。
0026
本実施例では、計画値と実績値の差が生じる予測となった場合に、制御装置10は、それを修正するために、もっとも優先して蒸気発電を制御する。制御装置10は、蒸気発電の制御は主に余剰が生じた場合に抑制する。もし、蒸気発電を抑制しても抑制量が足りない時、制御装置10は、太陽光発電を抑制する。この場合、制御装置10は、太陽光発電のインバータを制御することで、出力を減少させる。太陽光発電よりも優先して蒸気発電を抑制し、太陽光発電の出力制限をできるだけ短くすることで、発電事業者は、高い売電収入を確保することができる。
0027
次に、送電量が不足する予測となった場合、制御装置10は、蒸気発電に余力があればそれを優先し、余力がない場合には、ガスタービン発電で補填する。蒸気発電は、高い出力で高効率なので、送電計画時には最大出力で計画したほうが良い。そのため、実送電時に送電不足の場合にさらに蒸気発電を増やすことは困難である。そのため、他の電源が必要である。他の電源とはガスタービン発電装置121(GT)、ガスエンジン発電機、ディーゼル発電機、蓄電池などが考えられる。これにより、他の電源の燃料費を抑えることができる。もし他の電源が駆動していた場合、制御装置10は、それらを利用して、送電不足にも余剰にも対応できることは言うまでもない。
0028
また、送電不足の場合の最後の手段として、電力負荷を切り離して消費を減らすという方法がある。例えば、制御装置10は、電力負荷を制御してもよいし、電力負荷の管理者に電力消費の抑制の要求を送信してもよい。
0029
図3は、計画値と実績値の一例を示す。
0031
ここでの蒸気発電(蒸気発電装置111)の計画値は、最大出力で一定である。太陽光発電(太陽光発電装置101)の計画値は、天気予測を元に算出される。電力負荷(電力負荷201)の計画値は、過去の実績に基づき算出される。制御装置10は、すべての計画値を合計して送電計画を作り、実際の送電時には、これに合うように各電源を制御する。7時から11時までの期間において、太陽光発電の実績値が計画値より多いので、制御装置10は、蒸気発電を抑制する。12時から15時までの期間において、電力負荷の実績値が計画値よりも大きく、送電可能量が不足するため、制御装置10は、他電源(ガスタービン発電装置121)の出力を増加させる。15時から19時までの期間において、電力負荷が計画よりも小さくなり、送電の実績値が計画値よりも余剰になるため、制御装置10は、蒸気発電を抑制する。このように制御することで、他電源に必要な燃料は最小限に、余剰な蒸気を有効利用することができる。また、太陽光発電や電力負荷等の電力機器の、供給または消費の電力の変動に応じて、蒸気発電および他電源を制御することで、計画値同時同量を満たすことができる。
0032
図4は、変形例における計画値を示す。
0033
各発電装置の発電電力に対して、出力調整可能範囲の上限値と下限値が予め設定される。蒸気発電(蒸気発電装置111)の出力の計画値は、出力調整可能範囲の中央値より上に設定される。他発電(ガスタービン発電装置121)の出力の計画値は、出力調整可能範囲の中央値より下に設定される。これにより、出力を減らす場合、蒸気発電の出力の減少量を大きく確保することができると共に、蒸気発電の出力の減少量が不足する場合、他発電の出力を減少させることができる。また、出力を増やす場合、他発電の出力の増加量を大きく確保することができると共に、他発電の出力の増加量が不足する場合、蒸気発電の出力を増加させることができる。
0034
図5は、変形例の制御装置10の制御ロジックを示す。
0035
実施例1の制御ロジックに対して、変形例の制御ロジックでは、出力調整方向の設定値が異なる。ここで、出力調整方向「減(主)」は、出力を減らす場合に主に当該発電装置の出力を減らすことを示す。また、出力調整方向「減(副)」は、出力を減らす場合であって主の発電装置の出力の減少量が不足する場合に、副の発電装置の出力を減らすことを示す。また、出力調整方向が「増(主)」は、出力を増やす場合に主に当該発電装置の出力を増やすことを示す。また、出力調整方向「増(副)」は、出力を増やす場合であって主の発電装置の出力の増加量が不足する場合に、副の発電装置の出力を増やすことを示す。
0036
この図の例では、出力を減らす場合、制御装置10は、まず蒸気発電の出力を減らし、減少量が足りない場合に、他発電の出力を減らす。また、出力を増やす場合、制御装置10は、まず他発電の出力を減らし、増加量が足りない場合に、蒸気発電の出力を増やす。
0037
次に、制御装置10による制御の具体例について説明する。
0038
図6は、送電電力の時間変化を示す。
0040
単位時間を30分とする。時刻t1からt2までの時間と、t2からt4までの時間との夫々が30分である。30分間の送電電力の計画値の積分値が、計画電力量であり、「計画」の長方形に囲まれた領域の面積である。これに対して、送電電力カーブの実績値が「実績」の実線で示され、送電電力量の実績値である実績電力量が送電電力カーブの下側の領域の面積である。領域Aの面積と領域Bの面積は等しいので、時刻t1からt2までの期間における実績電力量は計画通りである。しかし、制御装置10により、時刻t2以降では実績電力量が計画電力量よりも多いことが予測される。そこで、制御装置10は、時刻t2とt4の間のt3で蒸気発電の出力を下げ始める。このt3を決めるのは、蒸気発電の出力変化レートの最大値(最大変化率、最大変化速度)である。通常の蒸気発電設備では、数%/分の出力変化率(以下ランプレート)が最大である。したがって、この蒸気発電設備の最大ランプレートを考慮し、領域Cの面積と領域Eの面積が同じになるように、時刻t3から蒸気発電の電力を抑制し始める必要がある。このような予測は、他電源設備であるガスタービン発電装置121に対しても同様で行われる。制御装置10は、実績電力量を予測し、送電電力量を調整する電源のランプレートを考慮し、予め出力を調整することにより、実績電力量を計画電力量に合わせることができる。
0041
図7は、蒸気発電の出力減少量が不足する場合の送電電力の時間変化を示す。
0042
この図に示すように、計画値と実績値の差が大きく、蒸気発電の出力変化率を最大にしても、t2からt4の間で、領域Fの面積と領域Gの面積とを等しくできない場合もありうる。この場合、前述の変形例の制御ロジックを用いてもよい。
0043
図8は、変形例の送電電力の時間変化を示す。
0044
この場合、制御装置10は、蒸気発電と他発電を用いて最大変化率を大きくする。この場合の他発電は、蒸気発電装置111よりも出力変化率の大きなガスタービン発電装置121やガスエンジン、ディーゼルエンジンなどを用いる。これにより、制御装置10は、t2からt4の間で、領域Faの面積と領域Gaの面積とを等しくでき、単位時間毎の計画電力量と実績電力量を一致させることができる。
0045
本実施例によれば、太陽光発電等の再生可能エネルギー発電機を持つ発電事業者が、計画値同時同量を運用可能にすると共に、経済的に電力を供給することができる。
0046
なお、電力供給システムは、太陽光発電装置と、電力負荷と、プラント内でプロセス蒸気として使用しない蒸気を利用した発電とを合計した電力を、或る単位時間ごとに計画発電してもよい。実運用時、電力供給システムは、計画との差分を所定の範囲に収めるために、単位時間よりも短い周期で定期的に発電量を計測・予測し、単位時間の発電量の積分値が計画を上回りそうな場合には、他の発電設備よりも優先して蒸気発電を抑える。
0047
また、電力供給システムは、太陽光発電装置と、プラント内でプロセス蒸気として使用しない蒸気を利用した発電装置と、それとは別の燃料による発電装置のそれぞれの電力の合計から電力負荷を除いた電力を、或る単位時間ごとに計画発電してもよい。実発電時、電力供給システムは、単位時間よりも短い周期で定期的に発電量を計測・予測し、予め定めた発電計画との差を積分値で評価しながら遂次発電装置の出力を調整して、計画値との差を許容値に収める制御をする。発電量の抑制は主に蒸気発電装置が担い、発電量の補填は主に蒸気以外の燃料による発電装置・または電源が担う。
0048
また、電力供給システムは、太陽光発電と、一台以上の電源のそれぞれの電力の合計から電力負荷を除いた電力を、或る単位時間ごとに計画発電してもよい。実発電時に、電力供給システムは、単位時間よりも短い周期で定期的に発電量を計測・予測し、予め定めた発電計画との差を積分値で評価しながら遂次電源の出力を調整して計画値との差を許容値に収める制御をする。この場合において、電源の出力の変化速度の最大値を考慮して単位時間の電力積分値を予測し、それに基づいて該電源の出力を修正する。
0049
また、電源の一つは、プラント内でプロセス蒸気として使用しない蒸気を利用した発電装置である。それ以外の電源の一つは、蒸気発電装置よりも高い出力変化率である。電力供給システムは、蒸気発電だけで計画調整できない場合に、それ以外の電源で調整出力を補う。
0050
ここでは、一つの事業者が、複数の事業所を管理している場合について説明する。
0051
図9は、実施例2の電力供給システムを示す。
0052
実施例2の電力供給システムは、プラント1Bとオフィスビル2と制御装置10Bを含む。プラント1Bとオフィスビル2は、一つの事業者により管理されている。実施例1のプラント1と比較すると、実施例2のプラント1Bは、太陽光発電装置101を含まない。オフィスビル2には、電力負荷201Aと太陽光発電装置101とを含む。プラント1Bは、送配電線20を通じて、電力をオフィスビル2に自己託送する。事業者は、プラント1Bとオフィスビル2の合計の電力を計画する。
0053
この場合、オフィスビル2では、太陽光発電により、発電電力が計画とずれる。事業者は、この電力の過不足分でペナルティを課されないように、プラント1Bの発電電力を制御することで、プラント1Bとオフィスビル2の合計の送電電力を調整する。制御装置10Bは、実施例1の制御装置10と同様にして、過不足に対し、蒸気発電装置111、ガスタービン発電装置121、および電力負荷201A、201Bを制御する。
0054
本実施例によれば、事業者は、複数の事業所の間で電力の自己託送を行うことにより、複数の事業所の合計の送電電力量の実績値を計画値に合わせることができる。
0055
蒸気タービン発電機は、蒸気発電装置111および蒸気バイパス弁311等に対応する。蒸気タービンは、蒸気発電装置111等に対応する。調整装置は、蒸気バイパス弁311等に対応する。電力機器は、電力負荷201、太陽光発電装置101等に対応する。電源は、ガスタービン発電装置121等に対応する。電力計測装置は、電力測定器160等に対応する。許容範囲は、実績値と計画値との差が許容値以下である実績値の範囲等に対応する。第1供給電力範囲は、蒸気発電装置111の出力調整可能範囲等に対応する。第2供給電力範囲は、ガスタービン発電装置121の出力調整可能範囲等に対応する。第1設備は、プラント1B等に対応する。第2設備は、オフィスビル2等に対応する。
実施例
0056
以上、本発明の実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲を上記構成に限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
0057
1、1B…プラント、 2…オフィスビル、 10、10B…制御装置、 16…遮断器、 20…送配電線、 101…太陽光発電装置、 111…蒸気発電装置、 121…ガスタービン発電装置、 160…電力測定器、 201、201A…電力負荷、 301…ボイラ、 311…蒸気バイパス弁、 401…プロセス蒸気