図面 (/)

この項目の情報は公開日時点(2020年3月19日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (5)

課題

フタル酸エステル類簡易分析する方法を提供すること

解決手段

前記課題は、以下の(1)〜(3)の工程を含む、被験物質中のフタル酸エステル類の測定方法によって解決される:(1)被験物質を準備する工程、(2)前記被験物質中のフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する工程、および(3)得られた色素を検知する工程。

概要

背景

近年、フタル酸エステル類は、ヒトへの有害性への懸念から多くの国で様々な規制を受けており、フタル酸エステル類を検出・測定できる方法に対するニーズが存在している。サンプル中のフタル酸エステル類を検出する方法として種々の方法が提案されている。例えば、非特許文献1には、ソックスレー抽出及び熱分解抽出したフタル酸エステル類をガスクロマトマトグラフィー質量分析機を使用して検出する方法が記載されている。しかし、これらの方法は、高価で大型の装置が求められる。そのため、オンサイト分析には適していない上、高いランニングコストも求められる。非特許文献2には、エステル結合ヒドロキサム酸鉄(III)法と呼ばれる呈色反応を用いて検出する方法が報告されている。大型の装置も必要としない方法であるが、この呈色方法ではフタル酸エステル類だけでなく全てのエステルを呈色してしまう。そのため、母体ポリエステル系プラスチックである場合、判別が困難である欠点がある。また、特許文献1には、フタル酸エステル加水分解し、精製し、精製後の上層水溶液採取して、そこに塩酸溶液PBS溶液硝酸銅溶液二酸化炭素溶液を順次加え、蛍光を発するヒドロキシフタル酸塩転化し、反応後に二酸化マンガンおよび強塩基溶液を添加して放置するかまたは遠心分離を行い、上澄み水溶液を被験液とし、最後に蛍光法を用いて被験液を試験する方法が記載されている。この方法では、前記ヒドロキシフタル酸塩はリガンドとして使用されるものであり、これがCuやZnと錯体を形成することによって初めて蛍光が得られ、検出・測定が可能になると考えられる。このような方法では、他の妨害金属が存在する場合および/またはより強い他のリガンド(例えばEDTA)が存在する場合、蛍光性が低減してしまうおそれがある。

概要

フタル酸エステル類を簡易に分析する方法を提供すること 前記課題は、以下の(1)〜(3)の工程を含む、被験物質中のフタル酸エステル類の測定方法によって解決される:(1)被験物質を準備する工程、(2)前記被験物質中のフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する工程、および(3)得られた色素を検知する工程。

目的

本発明の目的は、簡易にフタル酸エステル類を検出可能な色素に変換する事で評価する方法またはそのためのキットを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

以下の(1)〜(3)の工程を含む、被験物質中のフタル酸エステル類測定方法:(1)被験物質を準備する工程、(2)前記被験物質中のフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する工程、および(3)得られた色素を検知する工程。

請求項2

前記フタル酸エステル類が下記の一般式(I)で表される、請求項1に記載の測定方法(式中、R1およびR2は、互いに独立にそれぞれ、水素原子ハロゲン原子炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、又はベンジル基を表す)。

請求項3

前記工程(1)と(2)の間に、前記被験物質中のフタル酸エステル類を溶媒で抽出する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の測定方法。

請求項4

前記抽出工程における溶媒が、炭素数1〜4の低級アルコールアセトンテトラヒドロフランn−ヘキサンおよびクロロホルムからなる群から選択される、請求項3に記載の測定方法。

請求項5

前記工程(2)におけるフタル酸エステル類から色素への変換が、以下の(2−1)および(2−2)の工程を含む工程によって行われる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の測定方法:(2−1)被験物質中のフタル酸エステル類を加水分解してフタル酸を得、当該フタル酸の分子脱水により無水フタル酸を得る工程、および(2−2)得られた無水フタル酸を、ヒドロキシ芳香族化合物と、任意選択的に触媒の存在下において、反応させることにより、色素に変換する工程。

請求項6

前記ヒドロキシ芳香族化合物が、一般式(II)[式中、R3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基水酸基アミノ基、ジメチルアミノ基ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]で表されるフェノール類、一般式(II’)[式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]で表される1−ナフトール類、および一般式(II’’)[式中、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]で表される2−ナフトール類、からなる群から選択される、請求項5に記載の測定方法。

請求項7

前記工程(2−2)における反応が、酸性条件下で行われる、請求項5または6に記載の測定方法。

請求項8

前記フェノール類が以下の式(III)〜(V)からなる群から選択される、請求項6または7に記載の測定方法。

請求項9

前記色素が、可視領域に吸収帯または発光帯を有する発色団を含むフェノール誘導体である、請求項1〜8のいずれか1つに記載の測定方法。

請求項10

前記フェノール誘導体が、以下の式(VI)〜(VIII)からなる群から選択される、請求項9に記載の測定方法。

請求項11

電機電子部品自動車部品玩具文具工具建築資材食品包装材料プラスチック中、塗料コーティング中もしくは接着剤などの高分子材料中にまたは環境中に存在するフタル酸エステル類を測定するための、請求項1〜10のいずれか1つに記載の測定方法。

請求項12

以下:−フタル酸エステル類をフタル酸に加水分解するための加水分解用試薬、および−無水フタル酸と反応させて色素を得るための一般式(II):[式中、R3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]で表されるフェノール類、一般式(II’):[式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]で表される1−ナフトール類、および一般式(II’’):[式中、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]で表される2−ナフトール類からなる群から選択されるヒドロキシ芳香族化合物、および、任意選択的に前記反応のための触媒、を含む、フタル酸エステル測定キット

請求項13

前記加水分解用試薬が、水酸化ナトリウム水酸化カリウム炭酸水素ナトリウム炭酸ナトリウム塩酸硝酸硫酸およびこれらのうちの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、前記フェノール類が以下の式(III)〜(V)からなる群から選択され、前記触媒が硫酸および塩化亜鉛からなる群から選択される、請求項12に記載のキット

請求項14

−被験物質中のフタル酸エステルを抽出するための溶媒、をさらに含む、請求項12または13に記載のキット。

請求項15

前記溶媒が、炭素数1〜4の低級アルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサンおよびクロロホルムからなる群から選択される、請求項14に記載のキット。

請求項16

−フタル酸を分子内脱水により無水フタル酸にするための分子内脱水用試薬、をさらに含み、当該分子内脱水用試薬が濃硫酸である、請求項12〜15のいずれか1つに記載のキット。

請求項17

請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法を用いてフタル酸エステルを測定するための、請求項12〜16のいずれか1つに記載のキット。

請求項18

電機電子部品、自動車部品、玩具、文具、工具、建築資材、食品包装材料のプラスチック中、塗料コーティング中もしくは接着剤などの高分子材料中にまたは環境中に存在するフタル酸エステルを測定するための、請求項12〜17のいずれか1つに記載のキット。

技術分野

0001

本発明は、検体中に含まれるフタル酸エステル類検出方法、ならびに検体中に含まれるフタル酸エステル類の検出キットに関する。

背景技術

0002

近年、フタル酸エステル類は、ヒトへの有害性への懸念から多くの国で様々な規制を受けており、フタル酸エステル類を検出・測定できる方法に対するニーズが存在している。サンプル中のフタル酸エステル類を検出する方法として種々の方法が提案されている。例えば、非特許文献1には、ソックスレー抽出及び熱分解抽出したフタル酸エステル類をガスクロマトマトグラフィー質量分析機を使用して検出する方法が記載されている。しかし、これらの方法は、高価で大型の装置が求められる。そのため、オンサイト分析には適していない上、高いランニングコストも求められる。非特許文献2には、エステル結合ヒドロキサム酸鉄(III)法と呼ばれる呈色反応を用いて検出する方法が報告されている。大型の装置も必要としない方法であるが、この呈色方法ではフタル酸エステル類だけでなく全てのエステルを呈色してしまう。そのため、母体ポリエステル系プラスチックである場合、判別が困難である欠点がある。また、特許文献1には、フタル酸エステル加水分解し、精製し、精製後の上層水溶液採取して、そこに塩酸溶液PBS溶液硝酸銅溶液二酸化炭素溶液を順次加え、蛍光を発するヒドロキシフタル酸塩転化し、反応後に二酸化マンガンおよび強塩基溶液を添加して放置するかまたは遠心分離を行い、上澄み水溶液を被験液とし、最後に蛍光法を用いて被験液を試験する方法が記載されている。この方法では、前記ヒドロキシフタル酸塩はリガンドとして使用されるものであり、これがCuやZnと錯体を形成することによって初めて蛍光が得られ、検出・測定が可能になると考えられる。このような方法では、他の妨害金属が存在する場合および/またはより強い他のリガンド(例えばEDTA)が存在する場合、蛍光性が低減してしまうおそれがある。

0003

CN105866089A
EP0468821A1

先行技術

0004

Journal of Analytical Chemistry,November 2013,Volume 68,Issue11,pp959−960
水溶液中の呈色反応によるエステルの検出 −ヒドロキサム酸鉄(III)法における陽イオン界面活性剤活用化学教育巻:60 号:3ページ:124−127
Christian A. Malapit,“SYNHESIS OFFLUORESCEIN, a fluorescent dye”,[online],インターネット<URL:https://chimique.files.wordpress.com/2010/11/synthesis−of−fluorescein.pdf>
Chemical Education Journal (CEJ), Vol. 13, No. 1 /Registration No. 13−11/Received July 29, 2009(http://chem.sci.utsunomiya−u.ac.jp/cejrnlE.html)
無水フタル酸芳香族化合物フリーデルクラフツ反応による縮合成物に関する研究(第10報)α‐ナフトールとの縮合生成物異性体について,有機合成化学協会誌 1954年12巻11号 p.464−465

発明が解決しようとする課題

0005

本発明の目的は、簡易にフタル酸エステル類を検出可能な色素に変換する事で評価する方法またはそのためのキットを提供することにある。

0006

本発明のさらなる目的は、高価で大型の装置を使用することなく、低コストでフタル酸エステル類を検出できる方法またはキットを提供することである。

0007

本発明の別の目的は、フタル酸エステル類のみを特異的に検出することができる方法またはキットを提供することである。

0008

本発明の他の目的は、以下の記載から明らかとなろう。

課題を解決するための手段

0009

本発明者等は、フタル酸エステル類を簡易に分析する方法として、フタル酸エステル自体を色素に変換する方法が最適であるとの知見を得て本発明をなすに至った。

0010

すなわち、本発明は、以下に関する
1.以下の(1)〜(3)の工程を含む、被験物質中のフタル酸エステル類の測定方法
(1)被験物質を準備する工程、
(2)前記被験物質中のフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する工程、および
(3)得られた色素を検知する工程。
2.前記フタル酸エステル類が下記の一般式(I)で表される、上記1に記載の測定方法

0011

0012

(式中、R1およびR2は、互いに独立にそれぞれ、水素原子ハロゲン原子炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、又はベンジル基を表す)。
3.前記工程(1)と(2)の間に、前記被験物質中のフタル酸エステル類を溶媒で抽出する工程をさらに含む、上記1または2に記載の測定方法。
4.前記抽出工程における溶媒が、炭素数1〜4の低級アルコールアセトンテトラヒドロフランn−ヘキサンおよびクロロホルムからなる群から選択される、上記3に記載の測定方法。
5.前記工程(2)におけるフタル酸エステル類から色素への変換が、以下の(2−1)および(2−2)の工程を含む工程によって行われる、上記1〜4のいずれか1つに記載の測定方法:
(2−1)被験物質中のフタル酸エステル類を加水分解してフタル酸を得、当該フタル酸の分子脱水により無水フタル酸を得る工程、および
(2−2)得られた無水フタル酸を、ヒドロキシ芳香族化合物と、任意選択的に触媒の存在下において、反応させることにより、色素に変換する工程。
6.前記ヒドロキシ芳香族化合物が、
一般式(II)

0013

0014

[式中、R3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基水酸基アミノ基、ジメチルアミノ基ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表されるフェノール類
一般式(II’)

0015

0016

[式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表される1−ナフトール類、および
一般式(II’’)

0017

0018

[式中、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表される2−ナフトール類、
からなる群から選択される、上記5に記載の測定方法。
7.前記工程(2−2)における反応が、酸性条件下で行われる、上記5または6に記載の測定方法。
8.前記フェノール類が以下の式(III)〜(V)からなる群から選択される、上記6または7に記載の測定方法。

0019

0020

9.前記色素が、可視領域に吸収帯または発光帯を有する発色団を含むフェノール誘導体である、上記1〜8のいずれか1つに記載の測定方法。
10.前記フェノール誘導体が、以下の式(VI)〜(VIII)からなる群から選択される、上記9に記載の測定方法。

0021

0022

11.電機電子部品自動車部品玩具文具工具建築資材食品包装材料プラスチック中、塗料コーティング中もしくは接着剤などの高分子材料中にまたは環境中に存在するフタル酸エステル類を測定するための、上記1〜10のいずれか1つに記載の測定方法。
12.以下:
− フタル酸エステル類をフタル酸に加水分解するための加水分解用試薬、および
−無水フタル酸と反応させて色素を得るための一般式(II):

0023

0024

[式中、R3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表されるフェノール類、一般式(II’):

0025

0026

[式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表される1−ナフトール類、および一般式(II’’):

0027

0028

[式中、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表される2−ナフトール類からなる群から選択されるヒドロキシ芳香族化合物、および、任意選択的に前記反応のための触媒、
を含む、フタル酸エステル測定キット
13.前記加水分解用試薬が、水酸化ナトリウム水酸化カリウム炭酸水素ナトリウム炭酸ナトリウム塩酸硝酸硫酸およびこれらのうちの2種以上の組み合わせからなる群から選択され、前記フェノール類が以下の式(III)〜(V)からなる群から選択され、前記触媒が硫酸および塩化亜鉛からなる群から選択される、上記12に記載のキット。

0029

0030

14.−被験物質中のフタル酸エステルを抽出するための溶媒、
をさらに含む、上記12または13に記載のキット。
15.前記溶媒が、炭素数1〜4の低級アルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサンおよびクロロホルムからなる群から選択される、上記14に記載のキット。
16.−フタル酸を分子内脱水により無水フタル酸にするための分子内脱水用試薬
をさらに含み、当該分子内脱水用試薬が濃硫酸である、上記12〜15のいずれか1つに記載のキット。
17.上記1〜11のいずれか1つに記載の方法を用いてフタル酸エステルを測定するための、上記12〜16のいずれか1つに記載のキット。
18.電機電子部品、自動車部品、玩具、文具、工具、建築資材、食品包装材料のプラスチック中、塗料コーティング中もしくは接着剤などの高分子材料中にまたは環境中に存在するフタル酸エステルを測定するための、上記12〜17のいずれか1つに記載のキット。

発明の効果

0031

上述のような本発明の方法またはキットを用いると、フタル酸エステルの検出が、溶媒で抽出したフタル酸エステル類の溶液に、複数の試薬を加え加熱し、フェノール類化合物を加える操作により、簡便かつ効率的に行える。

0032

本発明によれば、抽出した溶液におけるフタル酸エステルの存在を、高価で大型の装置を使用せずに、目視で簡便に検出することができる。したがって、電子電気機器などの管理や、環境(ヘルスケアを含む)に関わる全ての分野における、フタル酸エステルのモニタリングのための核心的な技術として極めて有用である。

図面の簡単な説明

0033

図1は、実施例1において、(A)無水フタル酸からフルオレセインを合成した際に得られた吸収スペクトル、および(B)無水フタル酸とレゾシノールを酸性条件またはアルカリ条件で反応させた結果を示す。
図2は、各種有機溶媒を用いた場合の色素の合成結果を示す。
図3は、様々な量のDEHPエタノール中)をフルオレセインに変換し測定した結果を示す。
図4は、本発明の実施形態の測定を示すフロー図(A)とフタル酸エステルから色素(フルオレセイン)が生成されるまでの反応工程図(B)を示す。

0034

上記のように、本発明の方法またはキットを使用することにより、1つまたは複数のフタル酸エステル類を検出することができる。なお、本明細書では、被験物質(サンプル/検体)中に含まれるフタル酸エステル類の存在の有無および/または当該エステル類の量を確認および/または評価することを表す際に、「検出」、「分析」、「測定」および「検知」といった用語を用いるが、これらは互換的に使用することができる。

0035

本明細書において、「フタル酸エステル類」とは、フタル酸とアルコールとのエステルの総称であり、モノエステルおよびジエステルが含まれる。フタル酸エステル類の例としては、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)、ジメチルフタレートDMP)、ジエチルフタレート(DEP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)等が挙げられる。また、前記フタル酸エステル類は、オルト−フタル酸部分とアルコール部分からなるエステル構造基本骨格として有しているエステルであればよく、例えばトリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルも含まれる。本発明の1つの実施態様において、前記フタル酸エステル類は、フタル酸エステル(オルト体)、トリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルからなる群から選択される。

0036

本発明では、前記フタル酸エステル類のオルト位の部分が、有機合成的な手法による色素への変換のための反応に大きく寄与しており、当該オルト位に関する選択性が非常に高いものであることが見出された。従って、本発明の方法またはキットを用いると、フタル酸エステルやトリメリット酸エステルおよびピロメリット酸エステルのようなフタル酸エステル類を包括的に検出できる一方で、これらのフタル酸エステル類を非常に高い特異性で検出することもできる。例えばPET製品の分析の場合、分析系中にPET由来テレフタル酸モノマーが生じてしまう可能性があるが、本発明では、このようなテレフタル酸モノマーから区別して、前記フタル酸エステル類だけを特異的に検出することができる。

0037

本発明では、上記のようなフタル酸エステル類を幅広く測定することができるが、本発明の1つの好ましい実施態様において、測定対象は、フタル酸エステル、すなわちフタル酸(オルト−フタル酸)とアルコールとの脱水反応から得ることができるエステルである。フタル酸エステルは、モノエステルまたはジエステルであることができる。

0038

本発明の1つの実施態様において、上記フタル酸エステル類は、下記の一般式(I)で表されるフタル酸エステルである:

0039

0040

(式中、R1およびR2は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基又はベンジル基を表す)。

0041

前記一般式(I)において、R1およびR2は同一であっても、異なっていてもよい。R1およびR2は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数5〜20、炭素数6〜15、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基、またはベンジル基を表す。好ましくは、R1およびR2は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐のアルキル基、またはベンジル基を表す。好ましくは、R1およびR2は、同時にHではない。

0042

本発明の1つの好ましい実施態様において、一般式(I)におけるR1およびR2は、互いに独立にそれぞれ、炭素数1〜15、好ましくは炭素数4〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、より好ましくは、2−エチルヘキシル、イソノニルブチルイソブチルイソデシルn−オクチルエチルおよびメチルからなる群から選択される。本発明のさらなる実施態様において、一般式(I)におけるR1およびR2は同一であり、R1およびR2はいずれも、炭素数1〜15、好ましくは炭素数4〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基であり、より好ましくは、2−エチルヘキシル、イソノニル、ブチル、イソブチル、イソデシル、n−オクチル、エチルおよびメチルからなる群から選択される。

0043

本発明の別の好ましい実施態様において、一般式(I)におけるR1およびR2は異なっており、R1は、炭素数1〜15、好ましくは炭素数4〜10の直鎖もしくは分岐のアルキル基、例えばブチルを表し、R2はベンジル基を表す。

0044

上記のようなフタル酸エステルの例としては、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP),フタル酸ジイソブチル(DIBP)等が挙げられる。

0045

本発明の1つの実施態様において、本発明は、以下の(1)〜(3)の工程を含む、被験物質中のフタル酸エステル類の測定方法に関する:
(1)被験物質を準備する工程、
(2)前記被験物質中のフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する工程、および
(3)得られた色素を検知する工程。

0046

前記の(1)の工程において、被験物質を準備する。被験物質(サンプル/検体)は、そこにおけるフタル酸エステル類の有無(および必要に応じて当該エステル類の量)を確認すべき物質(サンプル/検体)、例えばフタル酸エステル類を含むことが推測される物質(サンプル/検体)である。被験物質は、例えば固体液体または気体の形態にあることができる。被験物質は特に限定されないが、工程(2)に直接付すことができる物質、またはそこにフタル酸エステル類が含まれている場合に、溶媒を用いて当該エステル類を抽出できる物質が好ましい。フタル酸エステル類は、多様な用途において多種多様な製品中、例えば電気電子部品床材壁材テーブルクロス人工皮革園芸用ホース、プラスチック、玩具、塗料コーティング、食品包装材料、接着剤中において使用されており、本発明では、これらの中に存在するフタル酸エステル類を測定することも可能である。特に、フタル酸エステル類はプラスチック製品の製造における可塑剤として広く使用されており、従って、前記の被験物質はプラスチック、例えば、ポリ塩化ビニルポリエチレンポリプロピレンポリスチレンポリエチレンテレフタラートABS樹脂ポリカーボネート樹脂であることができる。従って、本発明の1つの実施態様において、電機電子部品、自動車部品、玩具、文具、工具、建築資材、食品包装材料のプラスチック中、塗料コーティング中もしくは接着剤などの高分子材料中に存在するフタル酸エステル類を測定することができる。

0047

また、本発明の方法では、環境中、例えば、水、大気または空気中に存在するフタル酸エステル類を測定することも可能であり、従って、前記被験物質は、水(例えば海水河川水工業用水工業排水)、大気または空気であってもよい。

0048

なお、被験物質は、その種類、形状および形状に応じて、直接、工程(2)に付すこともできるし、または前記被験物質中のフタル酸エステル類を予め溶媒で抽出してから、工程(2)に付すこともできる。当業者であれば、被験物質ごとに、例えばその種類、形状および形状に応じて、当該抽出工程の要否を判断することが可能である。例えば、通常、被験物質が液体(例えば、フタル酸エステル類の溶液または懸濁液、好ましくは溶液)である場合には直接工程(2)に付すことができるが、被験物質が固体または気体の場合には予め溶媒で抽出した後に工程(2)に付すことが好ましい。

0049

従って、本発明の1つの実施態様において、本発明は、前記工程(1)と(2)の間に、前記被験物質中のフタル酸エステル類を溶媒で抽出する工程をさらに含む、前記測定方法に関する。この場合、前記測定方法は少なくとも以下の工程を含む:
− 被験物質を準備する工程;
− 前記被験物質中のフタル酸エステル類を溶媒で抽出する工程;
− 抽出したフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する工程;および
− 得られた色素を検知する工程。

0050

前記の被験物質は、工程(2)に適切な容器、例えばガラス試験管中に入れて、工程(2)に付すことができる。

0051

また、前記測定方法が溶媒での抽出工程を含む場合、前記の被験物質は、例えば、溶媒での抽出を実施できる容器、例えばガラス製試験管中に入れて、前記抽出工程に付すことができる。被験物質が前記容器よりも大きい場合には、例えば小片にしてから当該容器に入れることができる。また、被験物質をそのまま前記容器に入れられる場合であっても、例えば溶媒での抽出を容易にするために、小片にしてから当該容器に入れてもよい。例えば、塩化ビニル樹脂を被験物質と使用する場合には、ハサミで細かく刻んだサンプル小片を試験管に入れて後続の工程に付してもよい。

0052

被験物質中のフタル酸エステル類を溶媒で抽出するための方法は当業者に知られており、従ってそのような公知の抽出方法を使用することができる。例えば、適当な容器、例えばガラス製試験管中の前記被験物質に溶媒を添加し、5分〜1日、10分〜12時間、15分〜6時間、例えば20分〜2時間の間両者を接触させることにより、フタル酸エステル類の抽出を行うことができる。添加する溶媒の量は、当業者であれば適切に決定することができる。例えば被験物質として100mgのプラスチック樹脂を用いる場合には、使用する溶媒にもよるが、通常、100μ〜20ml、好ましくは500μl〜10ml、より好ましくは1ml〜5mlの溶媒を添加することができる。抽出は、例えば、4〜50℃、好ましくは10〜30℃の温度、例えば室温で行うことができる。簡易性およびコスト低下の観点から、室温で抽出を行うことが好ましい。また、抽出は、加圧下または減圧下で行うこともできるが、簡易性およびコスト低下の観点から常圧下/大気圧下で行うことが好ましい。抽出の効率を上げるために、抽出の間、被験物質を含む溶媒を超音波処理に付してもよい。

0053

フタル酸エステル類を抽出可能な溶媒についても、当業者には知られている。例えば、水、有機溶媒およびそれらの混合物を使用することができ、前記有機溶媒の例としては、炭素数1〜4の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール2−プロパノールおよびn−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、クロロホルムを挙げることができる。本発明の1つの実施態様において、前記溶媒は、炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜3の低級アルコールである。

0054

本発明では、フタル酸エステル類にも加水分解用試薬、例えば水酸化ナトリウムにも溶解しやすい溶媒、例えば前記の低級アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、2−プロパノールまたはブタノール、特にエタノールまたは2−プロパノールを溶媒として用いた場合に、他の溶媒と比較して、最終的に合成される色素の効率が特に良いことが見出された。

0055

上記のような抽出工程で抽出したフタル酸エステル類(好ましくは当該溶媒における溶液として存在)を、任意選択的に被験物質から単離した後に、工程(2)に付すことができる。当該単離は、当業者に公知の方法によって行うことができ、例えば、遠心分離、ろ過、デカンテーションピペッティング等によって行うことができる。

0056

前記(2)の工程において、前記被験物質中のフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する。なお、上記のように抽出工程を含む態様の場合には、被験物質から抽出したフタル酸エステル類を有機合成的な手法で色素に変換する。工程(2)および(3)は、前記方法が抽出工程を含むか否かにかかわらずに実質的に同じなので、以下では主に、抽出工程を含まない実施態様について説明する。

0057

本明細書において、有機合成的な手法とは、有機化合物との反応または当該反応を含むプロセスによってフタル酸エステル類を色素に変換することを意味する。これは、フタル酸エステル類を有機化合物との反応を経て色素化合物に変換することを意図するものであって、当該反応において無機化合物が存在してはならないことを意味しない。本明細書において、有機化合物とは、炭素を成分とする化合物を意味するが、簡単な炭素化合物、例えば酸化物(CO、CO2等)、シアンもしくはシアン化物(KCN等)、炭化物(CaC2等)、炭酸塩(K2CO3等)は除く。無機化合物とは、有機化合物以外の化合物を意味する。好ましくは、前記の有機合成的な手法は、錯化反応を含まない。また、好ましくは、前記の有機合成的な手法は、遷移金属を反応系に含む反応を含まず、例えば、前記の有機合成的な手法は、銅(Cu)および/または亜鉛(Zn)を反応系に含む反応を含まない。

0058

本発明の1つの好ましい実施態様において、前記の有機化合物との反応はフリーデルクラフツ(Friedel−Crafts)反応である。

0059

GCMSを使用しない本発明のようなフタル酸エステル類の簡易分析構築は、プラスチック、玩具、塗料コーティング、食品包装材料などの検査法などの応用面で重要である。フタル酸エステルの簡易分析法を開発する際に二つの観点からの考察が必要であった。一つは、検出法自体の高いS/Nの達成、もう一つは従来の方法よりも簡易であることである。前者については、フタル酸エステルそのものを色素に変換することで高いS/N比を達成することができた。仮にフタル酸エステルのある特定の波長Xnmの吸光度が0.001とすると、得られる色素のXnmの吸光度が1.0だった場合、S/Nは1000倍になる。フタル酸エステルから色素への反応が化学量論的に1:1で起こるようにデザインできれば、定量的かつ高いS/Nが達成できる。また、蛍光測定に応用すれば、蛍光そのものを検出できる蛍光光度法の方が原理的には吸光光度法よりも高感度になり、従来法であるGCMSと同等に近い感度が得られると考えられる。後者は、有機合成的な手法を積極的に取り入れることが有用であると考えた。これらの理由により、有機化合物との反応を利用することで、簡便で高感度な簡易分析を達成することができる。

0060

また、例えば特許文献1に記載のようなヒドロキシフタル酸塩を用いる方法では、上記のように、他の妨害金属やより強い他のリガンドが存在する場合に、蛍光性が低下してしまうという問題がある。しかしながら、本発明では、フタル酸エステル類を有機化合物との反応を経て色素化合物そのものに変換するため、金属を使用せずに検出できる利点がある。そのため、上記のような問題も生じない。さらに、複雑な合成経路を必要とする上記のようなヒドロキシ化よりも、本発明のような有機合成的手法、好ましくはフリーデルクラフツ反応を用いる方法の方が、反応系がシンプルであり、必要に応じて反応対象反応条件を変更することも容易である。

0061

前記工程(2)において、有機合成的な手法により、フタル酸エステル類から色素(色素化合物)が得られるが、本発明の1つの実施態様において、前記色素は錯塩ではない。ここで、錯塩とは、金属イオンが他の原子(団)と結合した形で存在する塩を意味する。また、本発明のさらなる実施態様において、前記色素は遷移金属を含まず、例えば、前記色素は銅(Cu)および/または亜鉛(Zn)を含まない。さらに、前記色素は、フリーデルクラフツ反応生成物であることができる。

0062

本発明の1つの実施態様において、前記工程(2)におけるフタル酸エステル類の色素への変換は、以下の(2−1)および(2−2)の工程を含む工程によって行われる:
(2−1)被験物質中のフタル酸エステル類を加水分解してフタル酸を得、当該フタル酸の分子内脱水により無水フタル酸を得る工程、および
(2−2)得られた無水フタル酸を、ヒドロキシ芳香族化合物、例えば前記一般式(II)で表されるフェノール類と、任意選択的に触媒の存在下において、反応させることにより、色素に変換する工程。

0063

前記の工程(2−1)において、被験物質中のフタル酸エステル類(溶媒での抽出を行った場合には、抽出したフタル酸エステル類)を加水分解してフタル酸とし、当該フタル酸を分子内脱水に付すことにより、無水フタル酸を得る。

0064

このようにフタル酸エステル類から無水フタル酸を加水分解および分子内脱水により得る方法は、当業者に公知である。

0065

前記加水分解は、公知の方法により、例えば、フタル酸エステル類を水の存在下で酸性塩基性環境下に、5分〜1日、10分〜12時間、15分〜6時間、例えば20分〜2時間の間置くことにより行うことができる。本明細書においては、このようにフタル酸エステル類を水の存在下で酸性または塩基性にして加水分解するための物質を「加水分解用試薬」(または「第1試薬」)とも呼ぶ。加水分解用試薬の例としては、任意選択的に水溶液の形態にある、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩酸、硝酸、硫酸またはこれらのうちの2種以上の組み合わせ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうちの2種以上の組み合わせ、または塩酸、硝酸および硫酸のうちの2種以上の組み合わせ)が挙げられる。従って、加水分解は、典型的には加水分解用試薬、例えば水酸化ナトリウム水溶液(1M水酸化ナトリウム)をフタル酸エステル類に添加することによって行うことができる。添加する加水分解用試薬の量は、当業者であれば適切に決定することができる。例えば、被験物質中のフタル酸エステル類(または抽出したフタル酸エステル類)の量が100mgである場合には、使用する加水分解用試薬の種類にもよるが、通常、100μl〜10ml、好ましくは500μl〜5ml、より好ましくは1ml〜3mlの加水分解用試薬(水溶液)を添加することができる。加水分解は、4〜50℃、好ましくは10〜30℃の温度、例えば室温で行うことができる。簡易性およびコスト低下の観点から、加水分解は室温で行うことが好ましい。また、加水分解は、加圧下または減圧下で行うこともできるが、簡易性およびコスト低下の観点から常圧下/大気圧下で行うことが好ましい。加水分解の効率を上げるために、フタル酸エステル類と加水分解用試薬の混合物を超音波処理に付してもよい。

0066

このような加水分解によりフタル酸エステル類からフタル酸を得ることができる。なお、得られた反応生成物は、中和するかもしくは酸性にしてもよい。中和または酸性化は、当業者であれば、使用した加水分解用試薬の種類や量等に応じて適宜行うことが可能である。例えば、塩基性環境下で加水分解を行った場合には、酸、例えば塩酸(または濃塩酸)を添加することにより、得られた反応生成物を中和するかもしくは酸性にしてもよい。

0067

濃塩酸が使用される場合、例えば30%以上または38%以上のものが使用される。添加する酸の量は、当業者であれば適切に決定することができる。例えば加水分解用試薬として1M水酸化ナトリウム1.5mlを使用した場合には、通常、10μl〜5ml、好ましくは50μl〜1ml、より好ましくは100μl〜500μlの酸を添加することができる。このような酸の添加は、4〜50℃、好ましくは10〜30℃の温度、好ましくは室温で行うことができる。またはこのような酸の添加は、加圧下または減圧下で行うこともできるが、簡易性およびコスト低下の観点から常圧下/大気圧下で行うことが好ましい。

0068

引き続き、加水分解によって得られたフタル酸を分子内脱水閉環に付すことにより無水フタル酸を得ることができる。このような分子内脱水の方法に関しても当業者に公知であり、従ってそのような公知の方法を使用することができる。例えば、フタル酸の分子内脱水は、フタル酸の加熱によりおよび/または濃硫酸の添加により行うことができる。加熱の場合、例えば、80〜200℃、好ましくは100〜150℃、より好ましくは120〜130℃にフタル酸を加熱することができる。加熱時間は、例えば、1分〜6時間、好ましくは3分〜1時間、より好ましくは5分〜30分間である。このような加熱によりフタル酸が脱水され、無水フタル酸が得られる。濃硫酸が使用される場合、例えば65%以上または72%以上のものが使用される。当業者であれば、濃硫酸の添加条件、例えば濃硫酸の添加量、温度、圧力、時間を、適切に設定することにより無水フタル酸を得ることが可能である。本明細書では、前記濃硫酸のようなフタル酸の分子内脱水のために使用する物質を「分子内脱水用試薬」(または「第5試薬」)とも呼ぶ。

0069

前記分子内脱水により得られた生成物は乾燥することができる。乾燥は、当業者に公知の装置・方法を用いて行うことができる。例えば、乾燥は、80〜200℃、好ましくは100〜150℃、より好ましくは120〜130℃の温度で行うことができる。また、乾燥時間は、例えば、1分〜6時間、好ましくは3分〜1時間、より好ましくは5分〜30分間である。好ましくは、当該乾燥により、固体形態の無水フタル酸が得られる。

0070

なお、本発明の1つの実施態様では、前記の加熱と乾燥は別々の工程として行わずに、1つの統合された工程として行ってもよい。すなわちこの実施態様では、フタル酸を1回の加熱工程に付すことにより、当該加熱がフタル酸の脱水用加熱と生成物の乾燥の両方としての役割を果たし、従って、前記の加熱と乾燥を別々に行わなくとも、1回の加熱工程により、フタル酸から固体の無水フタル酸を得ることが可能である。

0071

前記の工程(2−2)において、上記のように得られた無水フタル酸を、1つまたは複数のヒドロキシ芳香族化合物と、任意選択的に触媒の存在下において、反応させることにより、色素に変換する。

0072

ここで、ヒドロキシ芳香族化合物とは、芳香環に結合している1〜4個、好ましくは1または2個、より好ましくは1個の水酸基を有する単環、多環(例えば二環もしくは三環)または縮合環芳香族化合物を意味する。

0073

ここで芳香族化合物は、5つ以上の原子から構成される芳香族性を有する環状構造(芳香環)を有し、その芳香環を構成する原子上に少なくとも1つの水素原子を有する。芳香族化合物は、炭素環芳香族化合物(芳香族炭化水素)であっても、複素環芳香族化合物であってもよいが、好ましくは、炭素環芳香族化合物である。

0074

芳香族炭化水素の単環芳香族化合物としては、例えば、ベンゼントルエンo−キシレンm−キシレンp−キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼンエチルベンゼン等のアルキルベンゼン類を挙げることができる。

0075

芳香族炭化水素の多環芳香族化合物としては、例えば、ビフェニルジフェニルメタントリフェニルメタンテトラフェニルメタン等が挙げられる。

0076

芳香族炭化水素の縮合環芳香族化合物としては、ナフタレンアントラセンフェナントレンピレンクリセントリフェニレンインデンアズレンフルオレンナフタセン、ピレン、トリフェニレンなどが挙げられる。

0077

好ましくは、前記ヒドロキシ芳香族化合物は、単環式多環式(例えば二環式もしくは三環式)または縮合環式のヒドロキシ芳香族化合物、より好ましくはモノヒドロキシ芳香族化合物(芳香環に結合している1個の水酸基を有する芳香族化合物)である。本発明の1つの好ましい実施態様において、前記ヒドロキシ芳香族化合物は、フェノール類およびナフトール類からなる群から選択され、より好ましくは、前記式(II)で表されるフェノール類、前記式(II’)で表される1−ナフトール類および前記式(II’’)で表される2−ナフトール類からなる群から選択される。

0078

また、前記触媒に関して、当業者であれば、無水フタル酸と反応させる化合物の種類に応じて適宜適切な触媒を選択することが可能であり、例えば、濃硫酸、塩化亜鉛を触媒として使用することができる。

0079

本発明の1つの実施態様では、前記の工程(2−2)において、上記のように得られた無水フタル酸を、一般式(II)で表される1つまたは複数のフェノール類と、任意選択的に触媒の存在下において、反応させることにより、色素に変換する。

0080

0081

[式中、R3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]。

0082

本発明の1つの好ましい実施態様において、当該(2−2)の工程は、無水フタル酸と1つまたは複数のフェノール類とを触媒の存在下で反応させるフリーデルクラフツ反応である。

0083

好ましくは、前記フェノール類としては、無水フタル酸との反応後に可視領域(例えば360nm〜830nm、好ましくは400〜769nm)に吸収帯または発光体を有する発色団を含むフェノール誘導体を色素としてもたらすようなものが選択される。当業者であれば、無水フタル酸と種々のフェノール類との間の公知の反応を考慮することにより、そのようなフェノール類を適宜選択することが可能である。

0084

本発明の1つの実施態様において、前記一般式(II)におけるR3、R4、R5、R6およびR7は、同一であっても、異なっていてもよい。R3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20、炭素数6〜15、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す。

0085

本発明の1つの好ましい実施態様において、一般式(II)におけるR3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、水酸基、ジメチルアミノ基およびジエチルアミノ基からなる群から選択される。

0086

本発明の1つの実施態様では、前記フェノール類は以下の一般式(III)で表される化合物(レゾルシノール)である。

0087

0088

この化合物は、一般式(II)において、R3、R5、R6、R7がHであり、R4が水酸基である化合物に相当する。この場合、以下の一般式(VI)で表されるフルオレセインを色素として得ることができる。このように無水フタル酸と一般式(III)で表される化合物からフルオレセインを得る反応は、当業者に知られており、例えば非特許文献3に記載されている。

0089

0090

本発明の別の実施態様では、前記フェノール類は以下の一般式(IV)で表される化合物である。

0091

0092

この化合物は、一般式(II)において、R3、R5、R6、R7がHであり、R4がジエチルアミノ基である化合物に相当する。この場合、以下の一般式(VII)で表されるローダミンを色素として得ることができる。このように無水フタル酸と一般式(IV)で表される化合物からローダミンを得る反応は、当業者に知られており、例えばEP0468821A1に記載されている。

0093

0094

本発明のさらに別の実施態様では、前記フェノール類は以下の一般式(V)で表される化合物である。

0095

0096

この化合物は、一般式(II)において、R3、R4、R5、R6、R7が全てHである化合物に相当する。この場合、以下の一般式(VIII)で表されるフェノールフタレインを色素として得ることができる。このように無水フタル酸と一般式(V)で表される化合物からフェノールフタレインを得る反応は、当業者に知られており、例えば非特許文献4(Chemical Education Journal (CEJ), Vol. 13, No. 1 /Registration No. 13−11/Received July 29, 2009)に記載されている。

0097

0098

上記以外にも、無水フタル酸とフェノール類との反応により色素を得る方法は、種々のフェノール類に関しておよび従って種々の色素に関して当業者に知られている。

0099

本発明の別の実施態様では、前記の工程(2−2)において、上記のように得られた無水フタル酸を、一般式(II’)で表される1つまたは複数の1−ナフトール類と、任意選択的に触媒の存在下において、反応させることにより、色素に変換する。

0100

0101

[式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]。

0102

本発明の1つの好ましい実施態様において、当該(2−2)の工程は、無水フタル酸と1つまたは複数の1−ナフトール類とを触媒の存在下で反応させるフリーデルクラフツ反応である。

0103

好ましくは、前記1−ナフトール類としては、無水フタル酸との反応後に可視領域(例えば360nm〜830nm、好ましくは400〜769nm)に吸収帯または発光体を有する発色団を含む1−ナフトール誘導体を色素としてもたらすようなものが選択される。当業者であれば、無水フタル酸と種々の1−ナフトール類との間の公知の反応を考慮することにより、そのような1−ナフトール類を適宜選択することが可能である。

0104

本発明の1つの実施態様において、前記一般式(II’)におけるR8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、同一であっても、異なっていてもよい。R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20、炭素数6〜15、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す。

0105

本発明の1つの好ましい実施態様において、一般式(II’)におけるR8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、水酸基、ジメチルアミノ基およびジエチルアミノ基からなる群から選択される。

0106

本発明の1つの実施態様では、前記ヒドロキシ芳香族化合物は1−ナフトール(R8〜R14が全てHである一般式(II’)の化合物に相当)であり、この場合、2−(1’−オキシ−2’−ナフトイル安息香酸(II)を色素として得ることができる。このように無水フタル酸と1−ナフトールから2−(1’−オキシ−2’−ナフトイル)安息香酸(II)を得る反応は、当業者に知られており、例えば非特許文献5に記載されている。

0107

本発明の別の実施態様では、前記の工程(2−2)において、上記のように得られた無水フタル酸を、一般式(II’’)で表される1つまたは複数の2−ナフトール類と、任意選択的に触媒の存在下において、反応させることにより、色素に変換する。

0108

0109

[式中、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]。

0110

本発明の1つの好ましい実施態様において、当該(2−2)の工程は、無水フタル酸と1つまたは複数の2−ナフトール類とを触媒の存在下で反応させるフリーデルクラフツ反応である。

0111

好ましくは、前記2−ナフトール類としては、無水フタル酸との反応後に可視領域(例えば360nm〜830nm、好ましくは400〜769nm)に吸収帯または発光体を有する発色団を含む2−ナフトール誘導体を色素としてもたらすようなものが選択される。当業者であれば、無水フタル酸と種々の2−ナフトール類との間の公知の反応を考慮することにより、そのような2−ナフトール類を適宜選択することが可能である。

0112

本発明の1つの実施態様において、前記一般式(II’’)におけるR15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、同一であっても、異なっていてもよい。R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20、炭素数6〜15、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す。

0113

本発明の1つの好ましい実施態様において、一般式(II’’)におけるR15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、水酸基、ジメチルアミノ基およびジエチルアミノ基からなる群から選択される。本発明の1つの実施態様では、前記ヒドロキシ芳香族化合物は2−ナフトールである。

0114

上記以外にも、無水フタル酸と1−ナフトール類または2−ナフトール類との反応により色素を得る方法は、種々の1−ナフトール類または2−ナフトール類に関しておよび従って種々の色素に関して当業者に知られている。

0115

このように、本発明では、工程(2−2)におけるように、無水フタル酸と芳香族化合物(好ましくはヒドロキシ芳香族化合物)のフリーデル・クラフツ反応による縮合反応を用いることにより得られた化合物を色素として使用することが可能である。

0116

以下、工程(2−2)を、無水フタル酸を前記フェノール類としてのレゾシノールと反応させて色素フルオレセインに変換する反応を例として説明する。当業者であればこれらの説明や関連の公知技術を参照することにより、他のフェノール類(または1−もしくは2−ナフトール類)を用いて他の色素を得る他の実施態様についても適切に理解することが可能であろう。

0117

上述のように、無水フタル酸とレゾシノールとの反応は当業者に知られている。無水フタル酸とレゾシノールとの反応は、好ましくは、触媒の存在下で行うことができる。触媒としては、例えば、濃硫酸、塩化亜鉛を使用することができる。濃硫酸が使用される場合、例えば65%以上または72%以上のものが使用される。例えば、前記反応は、適切な容器(例えばガラス製試験管)に、フタル酸、レゾシノールおよび前記触媒を入れ、混合物を加熱することにより行われる。この際、レゾシノールは固体の形態で添加することもできる。反応温度は、例えば、80〜200℃、好ましくは、100〜150℃、より好ましくは110〜140℃、例えば120〜130℃である。反応時間は例えば、1分〜6時間、好ましくは3分〜1時間、より好ましくは5分〜30分間である。前記反応は加圧下または減圧下で行うこともできるが、簡易性およびコスト低下の観点から常圧下/大気圧下で行うことが好ましい。好ましくは、前記反応後に、当該反応混合物は室温まで冷却される。例えば、無水フタル酸の量が20mgである場合、20〜120mg、好ましくは20〜60mg、例えば20mg〜30mgの量のレゾシノールと反応させることができる。この場合、無水フタル酸とレゾシノールのモル比は、1:1〜1:8、好ましくは1:1〜1:4、例えば1:1〜1:2となる。また、前記触媒の量は、例えば10μ〜1ml、好ましくは50μl〜500μl、より好ましくは80〜150μlであることができる。

0118

このような反応により、無水フタル酸からフルオレセインを得ることができる。

0119

上述のように、無水フタル酸とヒドロキシ芳香族化合物、例えばフェノール類との反応により色素を得る種々の方法が当業者には知られており、従って当業者は、無水フタル酸を前記以外の種々のヒドロキシ芳香族化合物、例えばフェノール類と組み合わせることにより、種々の色素を適宜得ることが可能である。当該色素の例としては、可視領域(例えば360nm〜830nm、好ましくは400〜769nm)に吸収帯または発光体を有する発色団を含むフェノール誘導体(または1−もしくは2−ナフトール誘導体)が挙げられる。なお、好ましくは、前記色素は錯塩ではない。また、本発明の1つの実施態様において、前記色素は遷移金属を含まず、例えば、前記色素は銅(Cu)および/または亜鉛(Zn)を含まない。本発明のさらなる実施態様において、前記色素は、フリーデルクラフツ反応生成物であることができる。好ましくは、前記色素は、式(VI)〜(VIII)で表される化合物から選択される。

0120

なお、本発明では、無水フタル酸と前記ヒドロキシ芳香族化合物、例えば前記フェノール類との反応を酸性条件下、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下、より一層好ましくは3.0以下のpHで行うことにより、最終的な色素の測定をより高い精度で定量的に行えることが見出された。当業者であれば、例えば無水フタル酸およびヒドロキシ芳香族化合物、例えば前記フェノール類の量比の調節および/または触媒の選択や当該触媒の量の調節等により、このような反応系を酸性にすることが可能である。

0121

上記のような反応により得られた色素を、工程(3)に付すことができる。

0122

前記(3)の工程において、上記のように得られた色素を検知する。色素の検知は、色素の検出・測定に関して当業者に公知の手法で、色素の検出・測定のための公知の装置を適宜用いて行うことができる。

0123

色素の検知は、例えば目視でまたは装置を用いて行うことができる。簡易化およびコスト低下の観点から、色素の検出においては目視が好ましいが、必ずしもこの限りではない。

0124

例えば、上記のようにして色素を作成し、判別対象物蛍光光度計などと言った蛍光検出装置で、色素特有励起光照射して得られる蛍光を装置および目視で判別することができる。

0125

あるいは、上記のようにして色素を作成し、判別対象物を薄層クロマトグラフィTLC展開後、前記判別対象物に光エネルギーまたは薬剤を接触させ、判別対象物を検出することができる。

0126

また、本発明の別の実施態様では、上記のようにして色素を作成し、判別対象物をガスクロマトグラフィー(GC)、液体クロマトグラフィー(LC)を応用して判別対象物を検出することができる。本発明のさらに別の実施態様では、上記のようにして色素を作成し、核磁気共鳴(NMR)を使用して判別対象物を検出することができる。

0127

上記のような手法により、色素を定性的または定量的に検知することができる。

0128

本発明の1つの実施態様では、色素を目視または光学的手法により検知する。目視による場合、例えば、色素による呈色の有無または濃淡を検出することができる。本明細書において、「光学的手法」とは、光学的な計測を利用して化学物質の定性的または定量的分析を行うことを意味し、例えば分光光度計または蛍光光度計を用いる方法や、共焦点レーザー顕微鏡やCCDを用いて撮像された画像を処理することにより色の濃淡の差を検出する方法が挙げられる。特に、上記のような装置を用いた場合や、上記の光学的手法を用いた場合には、色素の定量的な検出が高い精度で可能となる。

0129

なお、前記検知は、例えば、工程(2)で得られた色素(色素を含む反応混合物)にエタノールを添加し、次いで上清回収し、その後それを1Mの水酸化ナトリウムに溶解した溶液を目視することにより、またはそれを光学的手法に付すことにより行うことができる。

0130

本発明の1つの好ましい実施態様において、前記色素は吸光光度計を用いて測定される。当業者であれは、得られた色素の吸収帯または発光帯に応じて、適切に測定を行うことが可能である。例えば、前記色素がフルオレセインである場合には、200〜600nmの吸収スペクトルを測定することにより、色素の検出を行うことができる。

0131

また、本発明のさらなる実施態様において、本発明は、以下を含む、フタル酸エステル測定キットに関する:
−フタル酸エステル類をフタル酸に加水分解するための加水分解用試薬(「第1試薬」とも呼ぶ)、および
−無水フタル酸と反応させて色素を得るための一般式(II):

0132

0133

[式中、R3、R4、R5、R6およびR7は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表されるフェノール類、一般式(II’):

0134

0135

[式中、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表される1−ナフトール類、および一般式(II’’):

0136

0137

[式中、R15、R16、R17、R18、R19、R20およびR21は、互いに独立にそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基、スルホン酸基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基またはニトロ基を表す]
で表される2−ナフトール類からなる群から選択されるヒドロキシ芳香族化合物(「第2試薬」とも呼ぶ)、および、任意選択的に前記反応のための触媒(「第3試薬」とも呼ぶ)。

0138

上記キットは、被験物質中のフタル酸エステルを抽出するための溶媒(「第4試薬」とも呼ぶ)をさらに含むことができる。当該溶媒は、前記キットの任意要素である。上述のように被験物質中のフタル酸エステル類を予め溶媒で抽出する場合に有用である。

0139

上記キットは、フタル酸を分子内脱水により無水フタル酸にするための分子内脱水用試薬(「第5試薬」とも呼ぶ)をさらに含むことができる。当該分子内脱水用試薬は、前記キットの任意要素である。上記のようなフタル酸の分子内脱水を濃硫酸の添加によって行う場合に有用である。濃硫酸を用いなくとも、加熱によりフタル酸の脱水により無水フタル酸を得ることができるのは上述のとおりである。

0140

ここで、加水分解用試薬、分子内脱水用試薬、フェノール類(または1−もしくは2−ナフトール類)、触媒および溶媒は、上記で述べたようなものを使用することができる。例えば、前記加水分解用試薬は、任意選択的に水溶液の形態にある、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩酸、硝酸、硫酸およびこれらのうちの2種以上の組み合わせからなる群から選択される。前記分子内脱水用試薬は、例えば濃硫酸である。前記フェノール類は、例えば、上記式(III)〜(V)からなる群から選択され、および/または前記1−もしくは2−ナフトール類は、1−ナフトールである。前記触媒は、例えば、硫酸および塩化亜鉛からなる群から選択される。

0141

好ましくは、前記キットは、前記の加水分解用試薬、分子内脱水用試薬(任意)、フェノール類(または1−もしくは2−ナフトール類)、触媒(任意)および溶媒(任意)を、それぞれ別々の容器において含む。

0142

また、前記キットは、前記方法を用いてフタル酸エステルを測定するために使用することができる。前記キットを用いると、上述のような被験物質中におけるフタル酸エステル類を測定することが可能である。さらに、上記のようなキットを用いることにより、簡易にかつ低いコストで被験物質中のフタル酸エステル類を測定することが可能である。

0143

さらに、本発明の1つの実施態様において、本発明は、フタル酸エステル類(例えば電機電子部品、自動車部品、玩具、文具、工具、建築資材、食品包装材料のプラスチック中、塗料コーティング中もしくは接着剤などの高分子材料中にまたは環境中に存在するフタル酸エステル類)を測定するための、好ましくは前記方法を用いてフタル酸エステル類を測定するための、前記キットの使用に関する。

0144

本発明の方法またはキットを用いることにより、フタル酸エステルを特異的かつ包括的に検出することができる。従って、例えば、前記方法またはキットはそれぞれ、種々の製品(例えば電機電子部品、自動車部品、玩具、文具、工具、建築資材、食品包装材料のプラスチック;塗料コーティング;もしくは接着剤などの高分子材料)をフタル酸エステル類の存在(および必要に応じて当該エステル類の存在)に関してスクリーニングするための方法またはキット、例えば種々の製品(例えば電機電子部品、自動車部品、玩具、文具、工具、建築資材、食品包装材料のプラスチック;塗料コーティング;もしくは接着剤などの高分子材料)をスクリーニングして、フタル酸エステル類を含まない製品、またはフタル酸エステル類の含有量が一定の基準量以下である製品を得るための方法またはキットとして使用することも可能である。なお、実際の測定では、例えば簡単な予備試験を経ることにより、被験物質中のフタル酸エステル量の大凡の量を把握した上で、上記の各工程の説明を参照しながら、抽出溶液希釈および/または各試薬の量の調節等を行うことにより、種々の被験物質中のフタル酸エステル類を測定することが可能がある。

0145

また、上述のように、本発明は、大型の装置を使用せずに、簡易にかつ低コストでフタル酸エステルを検出する方法の提供を目的とするものあり、従って前記方法またはキットは十分にその目的を達成するものであるが、もし必要であれば、検出されたフタル酸エステルに含まれる個々のエステルの種類についても、例えばガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を用いることにより同定することが可能である。

0146

本発明を、以下の実施例でさらに詳細に説明する。これらの実施例は、当該実施例により本発明を限定することを決して意図しない。

0147

実施例1
無水フタル酸からのフルオレセインの合成
フタル酸エステルから加水分解で得られる、無水フタル酸から色素(フルオレセイン)が定量的に合成できるように、以下の操作を行った。無水フタル酸(0〜20mg、0〜135μmol)とレゾルシノール(30mg、270μmol)と100μlの濃硫酸を試験管に入れ125℃で10分間加熱した。混合物を室温に冷却し、2.0mlのエタノールを添加した。10μlの上清を回収し、1Mの水酸化ナトリウム2.0mlに溶解し、溶液の吸光スペクトルを分光光度計で測定した。測定時には200〜600nmまで走査させ、走査速度は600nm/minで行った。合成されたフルオレセインの濃度は、494nmにおけるモル吸光係数(ε=68000 mol・cm/L)で評価した。すべての試料は、600nmでゼロ較正を行った後に測定した。実際に得られた吸収スペクトルを図1−Aに示す。無水フタル酸とレゾシノールを反応させる際、酸性条件とアルカリ条件で反応させた結果を図1−Bに示す。酸性条件(pH 3.0以下)の場合、494nmに特定のピークが得られ、定量的に無水フタル酸を検出できる。

0148

実施例2
効率良く、フタル酸エステルを加水分解する為に、様々な有機溶媒中のDEHP(100mg、25μmol)を試験管に添加した。加水分解のために、1Nの水酸化ナトリウム1.5mlを添加し、30分間超音波処理を行った。その後、250μlの濃塩酸で酸性溶液として、125℃で完全に乾燥させた。次に、レゾルシノール(15mg、130μmol)および濃硫酸100μlを添加し、125℃で10分間加熱した。その後、実施例1と同じ操作で溶液の吸光度を測定し、フタル酸エステルの量を見積もった。他の有機溶媒でも抽出と加水分解が可能であるが、図2に示すように、エタノールやイソプロパノールのような、フタル酸エステルにも水酸化ナトリウムにも溶解しやすい溶媒の方が、最終的に合成される色素の効率が良かった。なお、このような溶媒としては、メタノールやブタノールも挙げられる。

0149

実施例3
フタル酸エステルの依存性(DEHP)
様々な量のDEHP(エタノール中)を実施例2と同様の操作で色素(フルオレセイン)に変換し測定した結果を図3に示す。フタル酸エステルと色素特有の吸光度(494nm)には相関があり、DEHPを定量的に検出できる。装置による色素の吸光度測定が望ましいが、目視での判定も濃度によっては十分可能である。検体中に存在する、フタル酸エステルを抽出さえできれば、0.1μmol程度の分析が可能であった。本法は吸光光度法で行ったが、検体その物のシグナルを検出できる、蛍光光度計、共焦点レーザー顕微鏡などを使用することでさらに少ない量のフタル酸エステルの定量が期待できる。また、DEHPのみならず、また、他のフタル酸エステルやトリメリット酸エステルの検出も可能であった。

0150

0151

実施例4
実試料から抽出したフタル酸エステルとフタル酸エステルの定量
本実施例では、フタル酸エステルから加水分解で得られる、無水フタル酸から色素(フルオレセイン)が定量的に合成できるように、以下の操作を行った。

0152

実際の試料中のフタル酸エステル類の測定例を以下に示す。まず、ポリ塩化ビニル(PVC、100mg)、ポリエチレン(PE:100mg)などの試料を試験管に入れ、エタノール2.0mlを加え、超音波処理を30分間行った。溶液のみを取り出した後、水酸化ナトリウム(1 M,1.5ml,30分間)で加水分解を行った。塩酸で中和し、乾燥させた後に、レゾルシノール(30mg、270μmol)と濃硫酸100μlを添加し、試験管を125℃で10分間加熱した。混合物を室温に冷却し、2.0mlのエタノールを添加した。フルオレセインの濃度は、494nmでの吸光度を測定し、一般的な吸光光度計で吸光度の測定を行った。また、吸光度A=1.0の値を14.7mol/lとして判定した。フタル酸エステルの濃度が濃い場合は、希釈して、その希釈倍率から濃度を見積もった。ポリエチレンとPVC中に含まれるフタル酸エステルの総量を、従来法であるPy−GCMS法比較した結果を、表2に示す。従来法と比較としてほぼ同様の傾向が得られた。

0153

実施例

0154

以上のように、本発明によれば、被験物質(サンプル)におけるフタル酸エステルの存在を、高価で大型の装置を使用せずに、目視で簡便に検出することができる。また、分光光度計のような小型でかつランニングコストのあまり高くない装置を用いることにより、高い精度でフタル酸エステルの定量的な測定を行うことも可能であり、具体的には1μmol以下、好ましくは0.1μmol程度のフタル酸エステルを測定することが可能である。したがって、本発明の方法およびキットは、オンサイト分析にも適したものであり、電子電気機器などの管理や、環境(ヘルスケアを含む)に関わる全ての分野における、フタル酸エステルのモニタリングのための核心的な技術として極めて有用である。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ