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技術 ガス浸炭用肌焼鋼及びガス浸炭部品

出願人 大同特殊鋼株式会社
発明者 辻井健太田中優樹
出願日 2018年9月10日 (2年3ヶ月経過) 出願番号 2018-169095
公開日 2020年3月19日 (9ヶ月経過) 公開番号 2020-041186
状態 未査定
技術分野 金属質材料の表面への固相拡散
主要キーワード 切欠底 目標未達 応力集中係数α ノッチ底 ビッカース硬さ試験機 含有質量 熱間鍛造性 結晶粒界近傍
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年3月19日)のものです。
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図面 (4)

課題

製造コストの上昇を抑えつつ、ガス浸炭焼入れ時に生成される不完全焼入層深さを低減して浸炭部品疲労強度を高めることが可能なガス浸炭肌焼鋼を提供する。

解決手段

ガス浸炭用肌焼鋼は、質量%で、C:0.10〜0.30%,Si:0.01〜1.50%以下,Mn:0.30〜2.00%,P:0.03%以下,S:0.05%以下,Cu:0.01〜1.00%,Ni:0.01〜3.00%,Cr:0.01〜3.00%,Mo:0.01〜2.00%,Al:0.10〜2.00%,N:0.050%以下,O:0.0015%以下,残部がFe及び不可避的不純物であり、且つ下記式(1)を満たすことを特徴とする。 F1≧0.1・・式(1) 但しF1=[Al]-1.9[N]-1.1[O](F1の式中[ ]は、[ ]内元素含有質量%を表す)

概要

背景

自動車部品として用いられるギヤシャフトといった部品では、表面の強度および内部の靭性を確保するため、ガス浸炭処理が用いられている。

ガス浸炭処理では、結晶粒界近傍に固溶するCr,Mn,Si等と、浸炭雰囲気中に含まれる酸素が結びついて、鋼表層粒界酸化層が生成される。このとき粒界酸化層の周りには、Cr,Mn,Si等の濃度が低く、焼入れ性の低下した領域が生じる。そして、この領域では、ガス浸炭焼入れ時、マルテンサイトとは異なる不完全焼入層が生成される。この不完全焼入層の存在は、浸炭部品曲げ疲労強度を低下させる要因のひとつとされ、不完全焼入層深さの低減が指向されていた。

従来、不完全焼入層深さの低減には、「Si量低減(による粒界酸化層の低減)」、および「Ni,Mo増量(による表層の焼入れ性向上)」が有効とされており、これらを施行したガス浸炭高強度鋼が種々提案されている(例えば下記特許文献1〜4参照)。これらガス浸炭用高強度鋼からなるガス浸炭部品は、SCRSCMといった浸炭スタンダード鋼からなるガス浸炭部品と比べ、高い曲げ疲労強度が得られる。

しかしながら、Si量低減は、鋼材被削性低下を招くため加工コストが高くなり、またNi,Mo増量は、鋼材コストを上昇させる。このように従来公知のガス浸炭用高強度鋼では、製造コストが上昇してしまう問題があり、ガス浸炭用高強度鋼の普及の妨げとなっていた。

概要

製造コストの上昇を抑えつつ、ガス浸炭焼入れ時に生成される不完全焼入層深さを低減して浸炭部品の疲労強度を高めることが可能なガス浸炭用肌焼鋼を提供する。ガス浸炭用肌焼鋼は、質量%で、C:0.10〜0.30%,Si:0.01〜1.50%以下,Mn:0.30〜2.00%,P:0.03%以下,S:0.05%以下,Cu:0.01〜1.00%,Ni:0.01〜3.00%,Cr:0.01〜3.00%,Mo:0.01〜2.00%,Al:0.10〜2.00%,N:0.050%以下,O:0.0015%以下,残部がFe及び不可避的不純物であり、且つ下記式(1)を満たすことを特徴とする。 F1≧0.1・・式(1) 但しF1=[Al]-1.9[N]-1.1[O](F1の式中[ ]は、[ ]内元素含有質量%を表す) なし

目的

本発明は以上のような事情背景とし、製造コストの上昇を抑えつつ、ガス浸炭焼入れ時に生成される不完全焼入層深さを低減して浸炭部品の疲労強度を高めることが可能なガス浸炭用肌焼鋼及びこれを用いたガス浸炭部品を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%でC:0.10〜0.30%Si:0.01〜1.50%Mn:0.30〜2.00%P:0.03%以下S:0.05%以下Cu:0.01〜1.00%Ni:0.01〜3.00%Cr:0.01〜3.00%Mo:0.01〜2.00%Al:0.10〜2.00%N:0.050%以下O:0.0015%以下残部がFe及び不可避的不純物であり、且つ下記式(1)を満たすことを特徴とするガス浸炭肌焼鋼。F1≧0.1・・式(1)但し、F1=[Al]-1.9[N]-1.1[O](F1の式中[]は、[]内元素含有質量%を表す)

請求項2

請求項1において、質量%でTi:0.005〜0.20%を更に含有することを特徴とするガス浸炭用肌焼鋼。

請求項3

請求項1,2の何れかにおいて、更に下記式(2)を満たすことを特徴とするガス浸炭用肌焼鋼。F2≧0.14・・式(2)但し、F2=([Ni]+[Mo])/(10[Si]+[Mn]+[Cr])(F2の式中[]は、[]内元素の含有質量%を表す)

請求項4

請求項1〜3の何れかにおいて、更に質量%で、Si:0.50〜1.50%を含有することを特徴とするガス浸炭用肌焼鋼。

請求項5

請求項1〜4の何れかにおいて、質量%でNb:0.20%以下を更に含有することを特徴とするガス浸炭用肌焼鋼。

請求項6

請求項1〜5の何れかにおいて、質量%でB:0.01%以下を更に含有することを特徴とするガス浸炭用肌焼鋼。

請求項7

請求項1〜6の何れかにおいて、質量%でPb:0.01〜0.20%Bi:0.005〜0.10%Ca:0.0003〜0.0100%の何れか1種若しくは2種以上を更に含有することを特徴とするガス浸炭用肌焼鋼。

請求項8

請求項1〜7の何れかに記載のガス浸炭用肌焼鋼からなり、ガス浸炭後の表層に生成された不完全焼入層深さが15μm以下であることを特徴とするガス浸炭部品

技術分野

0001

この発明は、自動車部品素材として好適に用いられるガス浸炭肌焼鋼及びガス浸炭部品に関する。

背景技術

0002

自動車の部品として用いられるギヤシャフトといった部品では、表面の強度および内部の靭性を確保するため、ガス浸炭処理が用いられている。

0003

ガス浸炭処理では、結晶粒界近傍に固溶するCr,Mn,Si等と、浸炭雰囲気中に含まれる酸素が結びついて、鋼表層粒界酸化層が生成される。このとき粒界酸化層の周りには、Cr,Mn,Si等の濃度が低く、焼入れ性の低下した領域が生じる。そして、この領域では、ガス浸炭焼入れ時、マルテンサイトとは異なる不完全焼入層が生成される。この不完全焼入層の存在は、浸炭部品曲げ疲労強度を低下させる要因のひとつとされ、不完全焼入層深さの低減が指向されていた。

0004

従来、不完全焼入層深さの低減には、「Si量低減(による粒界酸化層の低減)」、および「Ni,Mo増量(による表層の焼入れ性向上)」が有効とされており、これらを施行したガス浸炭用高強度鋼が種々提案されている(例えば下記特許文献1〜4参照)。これらガス浸炭用高強度鋼からなるガス浸炭部品は、SCRSCMといった浸炭スタンダード鋼からなるガス浸炭部品と比べ、高い曲げ疲労強度が得られる。

0005

しかしながら、Si量低減は、鋼材被削性低下を招くため加工コストが高くなり、またNi,Mo増量は、鋼材コストを上昇させる。このように従来公知のガス浸炭用高強度鋼では、製造コストが上昇してしまう問題があり、ガス浸炭用高強度鋼の普及の妨げとなっていた。

先行技術

0006

特開平6−306572号公報
特開2003−27142号公報
特開2002−327237号公報
特開平5−59528号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は以上のような事情背景とし、製造コストの上昇を抑えつつ、ガス浸炭焼入れ時に生成される不完全焼入層深さを低減して浸炭部品の疲労強度を高めることが可能なガス浸炭用肌焼鋼及びこれを用いたガス浸炭部品を提供することを目的としてなされたものである。

課題を解決するための手段

0008

而して本発明の請求項1は、「ガス浸炭用肌焼鋼」に関するもので、質量%で、C:0.10〜0.30%,Si:0.01〜1.50%以下,Mn:0.30〜2.00%,P:0.03%以下,S:0.05%以下,Cu:0.01〜1.00%,Ni:0.01〜3.00%,Cr:0.01〜3.00%,Mo:0.01〜2.00%,Al:0.10〜2.00%,N:0.050%,O:0.0015%以下,残部がFe及び不可避的不純物であり、且つ下記式(1)を満たすことを特徴とする。
F1≧0.1・・式(1) 但し、F1=[Al]-1.9[N]-1.1[O]
(F1の式中[ ]は、[ ]内元素含有質量%を表す)

0009

請求項2のものは、請求項1において、質量%で、Ti:0.005〜0.20%を更に含有することを特徴とする。

0010

請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、更に下記式(2)を満たすことを特徴とする。
F2≧0.14・・式(2) 但し、F2=([Ni]+[Mo])/(10[Si]+[Mn]+[Cr])
(F2の式中[ ]は、[ ]内元素の含有質量%を表す)

0011

請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、更に質量%で、Si:0.50〜1.50%を含有することを特徴とする。

0012

請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、質量%で、Nb:0.20%以下を更に含有することを特徴とする。

0013

請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、質量%で、B:0.01%以下を更に含有することを特徴とする。

0014

請求項7のものは、請求項1〜6の何れかにおいて、質量%で、Pb:0.01〜0.20%、Bi:0.005〜0.10%、Ca:0.0003〜0.0100%の何れか1種若しくは2種以上を更に含有することを特徴とする。

0015

請求項8は、「ガス浸炭部品」に関するもので、請求項1〜7の何れかに記載のガス浸炭用肌焼鋼からなり、ガス浸炭後の表層に生成された不完全焼入層深さが15μm以下であることを特徴とする。

0016

かかる本発明は、Al2O3系介在物やAlN等の析出物を除いた鋼中に固溶しているAl(以下、フリーAlと称する)が、C濃度の高い浸炭層領域において、焼入れ性を高める効果を有している、との知見に基づくもので、本発明のガス浸炭用肌焼鋼は、鋼中のフリーAlを従来鋼よりも増量したことを特徴とする。
本発明のガス浸炭用肌焼鋼によれば、粒界酸化層の周りに生成されたCr,Mn,Si等の濃度が低くなった領域における焼入れ性の低下を、フリーAlの増量によって補い、ガス浸炭焼入れ時、鋼表層に生成される不完全焼入層深さの低減を図っている。

0017

具体的には、フリーAlの量を規定する指数F1を設け、指数F1が式(1)の条件を満たすように各合金元素含有量を規定することで、不完全焼入れ層深さの低減を図っている。

0018

本発明のガス浸炭用肌焼鋼では、SCR,SCMといった浸炭用スタンダード鋼と比べ、不完全焼入層深さを低減させることができる。一方、従来公知のガス浸炭用高強度鋼とは不完全焼入れ層深さの低減を実現させるための手段が異なり、本発明のガス浸炭用肌焼鋼では、必ずしもSi量を低減する必要はなく被削性の低下を回避できる。また必ずしもNi,Moを増量する必要はなく鋼材コストの上昇を抑えることができる。すなわち従来のガス浸炭用高強度鋼に比べて、所定の疲労強度を備えた浸炭部品を製造するのに要するコストを低く抑えることができる。

0019

次に本発明における各化学成分の限定理由を以下に詳述する。尚、以降の説明では、特にことわりがない限り「%」は「質量%」を意味するものとする。
C:0.10〜0.30%
Cは、芯部硬さを確保するために有効な元素である。必要な硬さを得るには0.10%以上の添加を必要とする。但し、過剰な添加は被削性の低下を招くため、その上限を0.30%とする。好適なCの範囲は、0.11〜0.29%であり、芯部硬さを安定して確保することができる。より好ましくは、0.11〜0.25%であり、芯部硬さを安定して確保することができ、且つ安定した被削性を確保することができる。

0020

Si:0.01〜1.50%
Siは、軟化抵抗性を向上させて面疲労強度を確保するのに有効な元素である。但し、過剰な添加は熱間加工性の低下を招き、不完全焼入層深さの増加を招くため、その上限を1.50%とする。好適なSiの範囲は、0.02〜1.50%である。より好ましくは、0.50〜1.50%であり、安定して面疲労強度を確保することができ、且つ安定した熱間加工性を確保することができ、且つ不完全焼入層の形成を抑制できる。

0021

Mn:0.30〜2.00%
Mnは、焼入れ性を確保するのに有効な元素である。但し、過剰な添加は不完全焼入層深さの増加を招くため、その上限を2.00%とする。好適なMnの範囲は、0.30〜1.90%であり、安定して焼入れ性を確保することができる。より好ましくは、0.30〜1.00%であり、安定して焼入れ性を確保することができ、且つ不完全焼入層の形成を抑制できる。

0022

P:0.03%以下、S:0.05%以下
PおよびSは、不純物である。これらは部品の機械的性質にとって好ましくない元素であるため、その量は少ないほうが好ましい。PおよびSは、靭性を劣化させ疲労強度を低下させるため、Pについてはその上限を0.03%とし、Sについてはその上限を0.05%とする。

0023

Cu:0.01〜1.00%
Cuは、焼入れ性を高めるのに有効な元素である。但し、過剰な添加は熱間鍛造性の低下を招くほか、コストアップの要因にもなることから、その上限を1.00%とする。好適なCuの範囲は、0.01〜0.98%である。

0024

Ni:0.01〜3.00%
Niは、焼入れ性確保のため、また不完全焼入層の深さ低減効果による疲労強度向上のため添加される。但し、過剰な添加は鋼材コストを上昇させるため、その上限を3.00%とする。好適なNiの範囲は、0.01〜2.99%であり、安定した疲労強度が得られる。より好ましくは、0.01〜2.00%であり、鋼材コストを抑えつつ、より安定した疲労強度が得られる。

0025

Cr:0.01〜3.00%
Crは、焼入れ性を確保するために有効な元素である。但し、過剰な添加は鋼材コストを上昇させるため、その上限を3.00%とする。好適なCrの範囲は、0.02〜2.90%であり、安定した焼入れ性を確保することができる。より好ましくは、0.02〜2.00%であり、鋼材コストを抑えつつ、より安定した焼入れ性を確保できる。

0026

Mo:0.01〜2.00%
Moは、焼入れ性確保のため、また不完全焼入層の深さ低減効果による疲労強度向上のため添加される。但し、過剰な添加は鋼材コストの上昇に繋がるため、その上限を2.00%とする。好適なMoの範囲は、0.02〜1.99%である。

0027

Al:0.10〜2.00%
Alは、本発明において不可欠な元素で、不完全焼入層深さを低減して疲労強度を向上させる。その働きのために0.10%以上含有させる。但し、過剰な添加は、加工性の低下を招くため、その上限を2.00%とする。好適なAlの範囲は、0.10〜1.99%であり、安定した疲労強度を確保できる。より好ましくは、0.10〜1.00%であり、安定した疲労強度を確保でき、且つ安定した加工性を確保できる。
尚、より好適なAlの下限は0.109%であり、Alの範囲を0.109〜1.99%、更には0.109〜1.00%とし得る。

0028

N:0.050%以下
Nは、浸炭時の異常粒成長抑制のために有効な元素である。但し、過剰な添加は、疲労強度の低下を招くため、その上限を0.050%とする。好適なNの範囲は、0.001〜0.049%であり、浸炭時の異常粒成長の抑制に安定して寄与する。

0029

O:0.0015%以下
Oは、鋼中に酸化物を形成し、これが非金属介在物として疲労破壊の起点となり、疲労強度を低下させるため、その上限を0.0015%とする。

0030

F1≧0.1・・式(1) 但し、F1=[Al]-1.9[N]-1.1[O]
F1は、焼入れ性向上に寄与するフリーAlの量を規定する指数である。本発明者らが調査した結果によれば、指数F1が0.1以上になると、フリーAlによる焼入れ性向上の効果により、ガス浸炭焼入れ時の不完全焼入層深さを15μm以下にできることが確認された。このため本発明では、式(1)においてF1≧0.1と規定している。更に望ましくは、F1≧0.109であり、より安定してフリーAlによる焼入れ性向上の効果を発揮し得る。

0031

Ti:0.005〜0.20%
Tiは、Nと結合してTiNを生成する。これによりNがTiに固定されるため、AlNの生成が抑制される。即ちTiを添加することで、Tiよりも高価なAlの添加量を少なくすることができる。但し、過剰な添加は、加工性低下を招くため、その上限は0.20%とする。好適なTiの範囲は、0.005〜0.060%であり、安定してAlNの生成を抑制し得る。

0032

F2≧0.14・・式(2) 但し、F2=([Ni]+[Mo])/(10[Si]+[Mn]+[Cr])
上記フリーAlのほか、NiおよびMoも不完全焼入層深さを低減させる効果を有している。一方、Si,Mn,Crについては、逆に不完全焼入層深さを増加させる。このためこれら元素をバランスさせることで、不完全焼入層深さを更に低減させることができる。
本発明者らが調査した結果によれば、指数F2を0.14以上とすることで、ガス浸炭焼入れ時の不完全焼入れ層深さを8μm以下にまで低減できることが確認された。このため本発明では、式(2)においてF2≧0.14と規定している。

0033

Nb:0.20%以下
Nbは、炭化物を形成して浸炭時の異常粒成長を抑制する効果を有している。但し、過剰な添加は、加工性の低下を招くため、その上限を0.20%とする。好適なNbの範囲は、0.015〜0.18%であり、安定して浸炭時の異常粒成長を抑制し、且つ安定した加工性を確保し得る。

0034

B:0.01%以下
Bは、芯部の焼入れ性を高める効果を有している。但し、過剰な添加は、加工性の低下を招くため、その上限を0.01%とする。好適なBの範囲は、0.0003〜0.0050%である。

0035

Pb:0.01〜0.20%
Bi:0.005〜0.10%
Ca:0.0003〜0.0100%
これらの元素は被削性を向上させる効果を有している。但し、過剰な添加は、熱間加工性低下を招くため、Pbについてはその上限を0.20%、Biについてはその上限を0.10%、Caについてはその上限を0.0100%とする。

発明の効果

0036

以上のような本発明によれば、製造コストの上昇を抑えつつ、ガス浸炭焼入れ時の不完全焼入層深さを低減して浸炭部品の疲労強度を高めることが可能なガス浸炭用肌焼鋼及びこれを用いたガス浸炭部品を提供することができる。

図面の簡単な説明

0037

疲労強度を評価するための試験片形状を表した図である。
4点曲げ疲労試験の説明図である。
実施例1及び比較例7についての走査形電子顕微鏡写真である。
各実施例および比較例の不完全焼入層深さと疲労強度との関係を示した図である。

0038

次に本発明の実施例を以下に説明する。ここでは、下記表1に示す実施例および比較例について試験片を作製し、各種評価を行った。
表1に示す比較例は、使用する鋼材の組成が本発明の範囲を外れている。なお、比較例7はSCR材、比較例8はSCM材、比較例9はこれらSCR材およびSCM材に対し低Si,高Ni,高Crとした従来のガス浸炭用高強度鋼材を用いた例である。

0039

1.試験片の製造
下記表1に示す化学成分の鋼塊150kgを真空誘導溶解炉にて溶製し、得られた鋼塊を1250℃でΦ30mmの丸棒鍛伸後、900℃で焼準処理を行った。その後、機械加工により図1に示す試験片10を作製した。その後、試験片10を900〜1050℃の温度で、所望の表層C量、C深さとなるようにガス浸炭焼入れを行った。焼入れは120℃の油で行った。そして、浸炭後の試験片10は140〜180℃で2時間の焼戻し処理を行った。このようにして得られた焼戻し後の試験片10について、表層C濃度・表層硬さ・不完全焼入層深さ・疲労強度を以下の方法により評価した。

0040

0041

2.試験片の評価
(表層C濃度)
試験片10のノッチ底部について、EPMAにより表層C濃度(単位はwt%)を測定した。

0042

(表層硬さ)
試験片10のノッチ底部について、ビッカース硬さ試験機を用い、表面下0.05mmの位置の硬さの5点平均を表層硬さとして測定した。この時の試験荷重は300gとした。

0043

(不完全焼入層深さ)
試験片10のノッチ部について、表層断面を鏡面研磨後ナイタールで腐食し、SEM倍率2000倍で計10視野、表層の不完全焼入層深さを観察した。そして、全視野中で最も深い不完全焼入層の深さを不完全焼入層深さとした。不完全焼入層深さの目標は、従来のガス浸炭用高強度鋼と同等以上の15.0μm以下とした。

0044

(曲げ疲労強度)
図1の試験片10(切欠底R1.5mm、応力集中係数α1.89である)を用いて4点曲げ疲労試験を行い、S−N線図を取得し、S−N線図から疲労強度(1×107回強度)を評価した。
4点曲げ疲労試験は、図2に示すように、試験片10を2個所の支持部14において下側から支持した状態で、2個所の入力部16において試験片10に対し下向きに荷重を加えて試験片10を曲げ変形させ、その後、荷重を取り除いて形状を元に戻した後再び荷重を負荷することを繰り返した。
疲労強度の目標は、従来のガス浸炭用高強度鋼と同等以上の1390MPa以上とした。

0045

これらの評価結果を下記表2および図3図4に示す。

0046

0047

表2の評価結果により、以下のことが分かる。
浸炭用スタンダード鋼であるSCR材を用いた比較例7は、不完全焼入層深さが25.5μmと深く、疲労強度が1220MPaと低い。
同じく浸炭用スタンダード鋼であるSCM材を用いた比較例8も、不完全焼入層深さが27.1μmと深く、疲労強度が1270MPaと低い。

0048

一方、これら比較例7,8よりも低Siで且つ高Ni,高Moのガス浸炭用高強度鋼材を用いた比較例9は、不完全焼入層深さが15.2μmで、比較例7,8よりも不完全焼入層深さが浅い。また、この不完全焼入層深さ低減効果により、疲労強度は比較例7,8よりも高くなっている。しかしながら、比較例9は、Si量低減により被削性が低下し加工コストが高く、またNiおよびMo増量により鋼材コストも高い。比較例9にあっては、製造コストの上昇が問題である。

0049

このように、従来、ガス浸炭用の肌焼鋼として用いられていた比較例7,8,9は、何れもフリーAlの量が少なく(F1の値が0.10未満)、不完全焼入層深さ若しくは製造コストに問題があることが分かる。

0050

一方、比較例1は、Al量とO量が本発明の上限値を上回って過剰に添加されている例である。比較例1は、高Alの効果により不完全焼入層深さが4.0μmと改善されているが、実際に浸炭部品を製造した場合には、介在物(Al2O3)起点の破壊による疲労強度の低下が懸念される。

0051

比較例2は、Cr量が本発明の上限値を超えて過剰に添加されており、不完全焼入層深さおよび疲労強度が何れも目標未達である。

0052

比較例3は、S量が本発明の上限値を超えて過剰に添加されている。不完全焼入層深さは7.7μmと改善されているが、疲労強度は目標よりも低い。実際に浸炭部品を製造した場合には、介在物(MnS)起点の破壊による疲労強度の低下が懸念される。

0053

比較例4は、C量が本発明の下限値よりも低い例である。不完全焼入層深さは4.2μmと改善されているが、実際に浸炭部品を製造した場合には、内部降伏による疲労強度の低下が懸念される。

0054

比較例5は、Si量が本発明の上限値を超えて過剰に添加されており、不完全焼入層深さおよび疲労強度が何れも目標未達である。

0055

比較例6は、P量が本発明の上限値を超えて過剰に添加されており、疲労強度が低い。粒界脆弱により強度が低下したものと推測される。

0056

他方、鋼材の組成が本発明の範囲を満足する実施例1〜31においては、何れも不完全焼入層深さが15.0μm以下で目標を満足している。即ち各合金元素を式(1)の条件(F1≧0.10)を満足するように含有させ、フリーAlを増量したことによる効果が得られている。

0057

またこれら実施例は、疲労強度についても目標を満足しており、従来のガス浸炭用高強度鋼(比較例9)と同等以上の疲労強度が得られている。例えば、比較例9と、同じ疲労強度の実施例25とを比較すると、実施例25はSi量が高く被削性に優れ、またNi,Mo量も少なく安価な組成であり、比較例9に比べて浸炭部品を製造するのに要するコストを低く抑えることができることが分かる。

0058

もっとも、本発明においても低Siで且つ高Ni、高Moとすることは、不完全焼入層深さの低減、更には疲労強度の向上に有効である。表1に示す実施例のなかで、特に式(2)の要件を満たすものについては、表2及び図4に示すように、不完全焼入層深さが8.0μm以下にまで低減され、疲労強度については1500MPa以上にまで高めることができることが分かる。

0059

以上本発明について詳しく説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

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    【課題】オーステナイト系ステンレス鋼からなる鋼部品であって、拡散接合で製造された場合であっても、高硬度かつ、接合面での未接合部が少ない(接合率が高い)鋼部品、およびその製造方法を提供すること。【解決手... 詳細

  • 日本製鉄株式会社の「 合金管」が 公開されました。( 2020/10/15)

    【課題】高温浸炭環境において、耐浸炭性に優れる合金管を提供する。【解決手段】本開示の合金管は、化学組成が、質量%で、Cr:10.00〜25.00%未満、Ni:30.00%〜60.00%、及び、Al:2... 詳細

  • 山陽特殊製鋼株式会社の「 押出コンテナのライナー」が 公開されました。( 2020/10/08)

    【課題】耐久性に優れた、押出コンテナ2のライナー10の提供。【解決手段】押出コンテナ2のライナー10は、摺動面18の近傍に窒化層を有する。この窒化層は、摺動面18に露出する白層と、この白層に連続する拡... 詳細

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