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図面 (20)

課題

口腔疾患(例えば、齲蝕)の防止および治療のための、1つ以上の酸化鉄ナノ粒子および過酸化水素を含む組成物の提供。

解決手段

(a)1つ以上の鉄ナノ粒子と、(b)過酸化水素とを含む、バイオフィルムを防止および/または処理するための組成物であって、前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリックス分解酵素過酸化物生成酵素、および、それらの組み合わせからなる群から選択される酵素コンジュゲートされているナノ粒子を含む、組成物。

概要

背景

バイオフィルムは、表面に強固に付着し、自己生成した三次元(3D)細胞外トリ
クス中に包まれる微生物構造化共同体である。バイオフィルムは生体表面や非生体表面
上に形成され、自然環境および工業環境中に存在することができる。例えば、バイオフィ
ルムは、冷却塔プールスパなどの人工の水関連システム汚染し得る。工業環境では
、バイオフィルムは配管内部表面に発生して目詰まり腐食の原因となることがある。
バイオフィルムはまた、埋め込まれた医療チューブ内および医療デバイス内や、人体内(
粘膜表面)に形成され、患者感染症を引き起こす可能性がある。同様に、バイオフィル
ムは口腔内で発生して齲蝕などの口腔疾患を引き起こす可能性がある。このようなバイオ
フィルム細胞外マトリックスは、エキソポリサッカライドEPS)などのポリマー
質を含む。微生物が産生するマトリックスはバイオフィルムを構築するための実質的な足
場を提供することができる。さらに、マトリックスは微生物の拡散を妨げつつ微生物の付
着および凝集を促進するため、バイオフィルムの処理や表面からの除去は極めて困難とな
る。

口腔に関して、マトリックスのコアを形成するEPSは齲蝕原性(すなわち齲蝕発生
)バイオフィルム(歯垢とも呼ばれる)の主要な構成要素である。EPS豊富なこの細胞
外マトリックスは、バイオフィルム中に高酸性ミクロ環境を作る一助となる拡散を阻害
するだけでなく、高粘着性高接着性のバイオフィルムの形成を促進する。このような高
酸性度は、齲蝕原性フローラ生存および成長を促進し、また高分子細胞外マトリックス
の産生をさらに誘導し得るため、隣接する歯エナメル質酸溶解を促進しつつ、確実に病
原性バイオフィルムを蓄積させる。この細胞外マトリックスはまた、抗体、抗生物質およ
免疫細胞(これらは、高密度の細胞外マトリックスを通過して細胞外マトリックスに埋
め込まれた微生物を殺すことができない)によって口腔内および人体内の微生物バイオフ
ィルムや、生体材料インプラント、医療デバイスなど)上の微生物バイオフィルムを排
除することを困難とする一因である。さらに、EPS豊富な細胞外マトリックスの酸性p
Hは、一部の抗生物質の有効性を低下させる可能性がある。

齲蝕原性バイオフィルムを抑制するためのある種のアプローチは、マトリックスの破壊
を標的とせず、クロルヘキシジン(CHX)などの標準的な殺菌剤に限定されている。C
HXは浮遊性ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mu
tans)を殺すことができるものの、バイオフィルムに対しては有効性が低く、また、
歯石の形成や歯の着色などの悪影響があるため毎日治療用途には適さない。また、化学
剤や生物剤は歯やの変色、口腔粘膜落屑および痛み、不快な味、毒性などのいくつか
の欠点を有する可能性があり、複雑な口腔フローラの不均衡も引き起こす可能性もある。

ある種の抗菌性ナノ粒子口腔バイオフィルムを破壊し得るアプローチとして検討され
ている。しかし、その多くはCHXと同様の制限がある。銀ナノ粒子および銅ナノ粒子
どの金属ナノ粒子は広範な抗菌活性を示す。しかしながら、これらの薬剤はマトリックス
を標的とせず、酸性のミクロ環境下では十分機能しない可能性があり、抗バイオフィルム
効果は制限される。口腔バイオフィルムを抑制するための有効な治療法の開発は、口内に
局所的に導入した薬剤が保持性生物活性欠如することの影響も受ける。そのため、マ
トリクッスの分解と、埋め込まれた細菌(口腔内に発生し得るものを含むが、これらに限
定されない)の殺菌とを同時に行うことによって一般のバイオフィルムを効果的に処理す
ることができる組成物を提供する必要性があった。

概要

口腔疾患(例えば、齲蝕)の防止および治療のための、1つ以上の酸化鉄ナノ粒子および過酸化水素を含む組成物の提供。(a)1つ以上の鉄ナノ粒子と、(b)過酸化水素とを含む、バイオフィルムを防止および/または処理するための組成物であって、前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリックス分解酵素過酸化物生成酵素、および、それらの組み合わせからなる群から選択される酵素コンジュゲートされているナノ粒子を含む、組成物。

目的

微生物が産生するマトリックスはバイオフィルムを構築するための実質的な足
場を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

(a)1つ以上の鉄ナノ粒子と、(b)過酸化水素とを含む、口腔疾患を防止および/または治療するための組成物

請求項2

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリックス分解酵素過酸化物生成酵素、および、それらの組み合わせからなる群から選択される酵素コンジュゲートされているナノ粒子を含む、請求項1に記載の組成物。

請求項3

マトリックス分解酵素、過酸化物生成酵素、および、それらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の酵素にコンジュゲートされている1つ以上の鉄ナノ粒子を含む、口腔疾患を防止および/または治療するための組成物。

請求項4

(a)1つ以上の鉄ナノ粒子と、(b)過酸化水素とを含む、バイオフィルムを防止および/または処理するための組成物。

請求項5

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリックス分解酵素、過酸化物生成酵素、および、それらの組み合わせからなる群から選択される酵素にコンジュゲートされているナノ粒子を含む、請求項4に記載の組成物。

請求項6

前記口腔疾患は齲蝕を含む、請求項1、2または3に記載の組成物。

請求項7

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、直径が約1nm〜約1,000nmのナノ粒子を含む、請求項1、2、3、4,5または6に記載の組成物。

請求項8

フッ化物、銅、リン酸カルシウム、または、それらの組み合わせをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。

請求項9

前記鉄ナノ粒子は金属でドープされている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。

請求項10

請求項11

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、ポリマーコーティングを有するナノ粒子を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。

請求項12

前記ポリマーコーティングは、生体ポリマーデキストランキトサン、または、それらの組み合わせを含む、請求項11に記載の組成物。

請求項13

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、ポリマーコーティングを有さないナノ粒子を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。

請求項14

1つ以上の鉄ナノ粒子と、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、フッ化物、銅、リン酸カルシウム、および、それらの組み合わせからなる群から選択される化合物とを含む、バイオフィルムを排除するための組成物。

請求項15

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリックス分解酵素、過酸化物生成酵素、および、それらの組み合わせからなる群から選択される酵素にコンジュゲートされているナノ粒子を含む、請求項14に記載の組成物。

請求項16

前記化合物は過炭酸ナトリウムである、請求項14に記載の組成物。

請求項17

前記バイオフィルムはバイオフィルム形成微生物により産生される、請求項4または14に記載の組成物。

請求項18

前記バイオフィルム形成微生物は、ストレプトコッカスミュータンスシュードモナスエルジノーサ、エシェリヒアコリー、エンテロコッカスフェカーリスバチリスサブチリススタフィロコッカスアウレウスビブリオコレラカンジタ・アルビカンス、および、それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。

請求項19

前記バイオフィルムは、歯の表面、工業材料船舶材料、皮膚、粘膜軟組織、歯の内部(例えば、歯内管)、(例えば、嚢胞性線維症)、尿路、または、医療デバイスに存在する、請求項4または14に記載の組成物。

請求項20

1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物を対象に投与するステップを含む、バイオフィルム関連疾患を防止および/または治療する方法。

請求項21

有効量の過酸化水素を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。

請求項22

有効量のフッ化物を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。

請求項23

前記組成物は、フッ化物、銅、リン酸カルシウム、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、および、それらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項20に記載の方法。

請求項24

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリックス分解酵素、過酸化物生成酵素、および、それらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の酵素にコンジュゲートされているナノ粒子を含む、請求項20に記載の方法。

請求項25

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、ポリマーコーティングを有するナノ粒子を含む、請求項20に記載の方法。

請求項26

前記1つ以上の鉄ナノ粒子は、ポリマーコーティングを有さないナノ粒子を含む、請求項20に記載の方法。

請求項27

前記過酸化水素は、過酸化水素を約0.1%〜約3.0%の濃度で含む溶液で投与される、請求項21に記載の方法。

請求項28

前記過酸化水素は、過酸化水素を約0.1%〜約1.0%の濃度で含む溶液で投与される、請求項21に記載の方法。

請求項29

前記組成物内の前記鉄ナノ粒子の濃度は、約0.01〜約1.0mg/mlである、請求項20に記載の方法。

請求項30

前記バイオフィルム関連疾患は、齲蝕、粘膜感染症、口腔疾患、尿路感染症カテーテル感染症、中耳炎創傷移植医療デバイスの感染症、骨疾患、ヒト感染症、および、それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。

請求項31

バイオフィルムを有する表面を、マトリックス分解酵素および/または過酸化物生成酵素にコンジュゲートされた1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物と接触させるステップを含む、バイオフィルムを防止、排除および/または処理する方法。

請求項32

前記バイオフィルムは、歯の表面、粘膜組織表面、軟組織表面、皮膚表面、アパタイト表面インプラント表面、医療デバイス表面、歯の内面、肺表面、尿路表面、工業材表面、船舶表面、ウォータークラフト表面、船体、またはパイプ表面に存在する、請求項31に記載の方法。

請求項33

表面を1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物と接触させるステップを含む、表面上のバイオフィルムの形成を防止する方法。

請求項34

前記表面は、歯の表面、粘膜組織表面、軟組織表面、皮膚、アパタイト表面、インプラント表面、医療デバイス表面、工業材表面、船舶表面、ウォータークラフト表面、船体、またはパイプ表面からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。

請求項35

前記表面を、過酸化水素を含む溶液と接触させるステップを更に含み、前記1つ以上の鉄ナノ粒子および過酸化水素が反応して、バイオフィルムの形成を防止する1つ以上のラジカルが形成される、請求項33に記載の方法。

請求項36

バイオフィルムを有する表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物と接触させるステップを含む、バイオフィルムを防止および/または処理する方法。

請求項37

前記表面を、過酸化水素を含む溶液と接触させるステップを更に含み、前記1つ以上の鉄ナノ粒子および過酸化水素が反応して、バイオフィルムのマトリックス消化し、かつ同時に埋め込まれた細菌を殺菌する1つ以上のラジカルが形成される、請求項36に記載の方法。

請求項38

バイオフィルムを有する表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物と接触させるステップを含み、前記1つ以上の鉄ナノ粒子は前記表面に結合して鉄を放出し、前記バイオフィルム内の細菌の成長阻害する、バイオフィルム内の細菌の成長を防止する方法。

請求項39

バイオフィルムを有する歯のエナメル質表面またはアパタイト表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物と接触させるステップを含み、前記1つ以上の鉄ナノ粒子は前記表面に結合かつ/または鉄を放出してエナメル質またはアパタイトの溶解を阻害する、歯またはアパタイトの脱灰を防止する方法。

請求項40

前記アパタイト表面は骨表面である、請求項39に記載の方法。

請求項41

表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物でコーティングするステップを含む、バイオフィルムの形成および/または発生を防止する方法。

請求項42

(a)1つ以上の鉄ナノ粒子を含む組成物を含む第1の容器と、 (b)過酸化水素を含む第2の容器とを含む、バイオフィルムを防止、排除および/または処理するためのキット

請求項43

1つ以上の鉄ナノ粒子を含む組成物を含む、バイオフィルムを防止、排除および/または処理するためのキット。

請求項44

前記組成物は、単一容器内に過酸化水素または過炭酸ナトリウムをさらに含む、請求項43に記載のキット。

請求項45

前記組成物はフッ化物をさらに含む、請求項43または44に記載のキット。

請求項46

請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物を含む、口腔ケア製品

技術分野

0001

[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年2月13日に出願された米国仮出願第62/115,968号の
優先権を主張するものであり、参照によりその全体を本明細書に援用する、

背景技術

0002

バイオフィルムは、表面に強固に付着し、自己生成した三次元(3D)細胞外トリ
クス中に包まれる微生物構造化共同体である。バイオフィルムは生体表面や非生体表面
上に形成され、自然環境および工業環境中に存在することができる。例えば、バイオフィ
ルムは、冷却塔プールスパなどの人工の水関連システム汚染し得る。工業環境では
、バイオフィルムは配管内部表面に発生して目詰まり腐食の原因となることがある。
バイオフィルムはまた、埋め込まれた医療チューブ内および医療デバイス内や、人体内(
粘膜表面)に形成され、患者感染症を引き起こす可能性がある。同様に、バイオフィル
ムは口腔内で発生して齲蝕などの口腔疾患を引き起こす可能性がある。このようなバイオ
フィルム細胞外マトリックスは、エキソポリサッカライドEPS)などのポリマー
質を含む。微生物が産生するマトリックスはバイオフィルムを構築するための実質的な足
場を提供することができる。さらに、マトリックスは微生物の拡散を妨げつつ微生物の付
着および凝集を促進するため、バイオフィルムの処理や表面からの除去は極めて困難とな
る。

0003

口腔に関して、マトリックスのコアを形成するEPSは齲蝕原性(すなわち齲蝕発生
)バイオフィルム(歯垢とも呼ばれる)の主要な構成要素である。EPS豊富なこの細胞
外マトリックスは、バイオフィルム中に高酸性ミクロ環境を作る一助となる拡散を阻害
するだけでなく、高粘着性高接着性のバイオフィルムの形成を促進する。このような高
酸性度は、齲蝕原性フローラ生存および成長を促進し、また高分子細胞外マトリックス
の産生をさらに誘導し得るため、隣接する歯エナメル質酸溶解を促進しつつ、確実に病
原性バイオフィルムを蓄積させる。この細胞外マトリックスはまた、抗体、抗生物質およ
免疫細胞(これらは、高密度の細胞外マトリックスを通過して細胞外マトリックスに埋
め込まれた微生物を殺すことができない)によって口腔内および人体内の微生物バイオフ
ィルムや、生体材料インプラント、医療デバイスなど)上の微生物バイオフィルムを排
除することを困難とする一因である。さらに、EPS豊富な細胞外マトリックスの酸性p
Hは、一部の抗生物質の有効性を低下させる可能性がある。

0004

齲蝕原性バイオフィルムを抑制するためのある種のアプローチは、マトリックスの破壊
を標的とせず、クロルヘキシジン(CHX)などの標準的な殺菌剤に限定されている。C
HXは浮遊性ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mu
tans)を殺すことができるものの、バイオフィルムに対しては有効性が低く、また、
歯石の形成や歯の着色などの悪影響があるため毎日治療用途には適さない。また、化学
剤や生物剤は歯やの変色、口腔粘膜落屑および痛み、不快な味、毒性などのいくつか
の欠点を有する可能性があり、複雑な口腔フローラの不均衡も引き起こす可能性もある。

0005

ある種の抗菌性ナノ粒子口腔バイオフィルムを破壊し得るアプローチとして検討され
ている。しかし、その多くはCHXと同様の制限がある。銀ナノ粒子および銅ナノ粒子
どの金属ナノ粒子は広範な抗菌活性を示す。しかしながら、これらの薬剤はマトリックス
を標的とせず、酸性のミクロ環境下では十分機能しない可能性があり、抗バイオフィルム
効果は制限される。口腔バイオフィルムを抑制するための有効な治療法の開発は、口内に
局所的に導入した薬剤が保持性生物活性欠如することの影響も受ける。そのため、マ
トリクッスの分解と、埋め込まれた細菌(口腔内に発生し得るものを含むが、これらに限
定されない)の殺菌とを同時に行うことによって一般のバイオフィルムを効果的に処理す
ることができる組成物を提供する必要性があった。

0006

本開示の主題は、(1)バイオフィルムの処理および/または排除、(2)バイオフィ
ルム形成の防止、(3)バイオフィルムの細胞外マトリックスの分解、(4)バイオフィ
ルム内での細菌の生存および増殖の阻害、および/または、(5)歯またはアパタイト
脱灰の防止、のための酸化鉄ナノ粒子組成物およびその配合物を提供する。

0007

ある実施形態では、本開示は、1つ以上の鉄ナノ粒子および過酸化水素を含む、バイオ
フィルム関連疾患(口腔疾患など)を防止および/または治療するための組成物を提供す
る。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子は、1つ以上の酵素コンジュゲートされ
る。例えば、限定されず、1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリックス分解酵素および/また
過酸化物生成酵素にコンジュゲートされる。ある実施形態では、口腔疾患は齲蝕である
。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子は、約1nm〜約1,000nmの直径を有
することができる。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子はポリマーコーティング
有する。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子はポリマーコーティングを有さない。

0008

本開示はさらに、1つ以上の鉄ナノ粒子および過酸化水素を含む、バイオフィルムを防
止および/または処理するための組成物を提供する。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナ
粒子は、1つ以上のマトリックス分解酵素および/または過酸化物生成酵素にコンジュ
ゲートされる。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子は、約1nm〜約1,000n
mの直径を有することができる。ある実施形態では、組成物はさらにフッ化物を含む。あ
る実施形態では、1つ以上のナノ粒子は、マンガンコバルトカルシウムニッケル
マグネシウムストロンチウムバリウムスカンジウムチタンバナジウムクロム
亜鉛アルミニウムイットリウムジルコニウムニオブモリブデンルテニウム
ロジウムパラジウムハフニウムタンタルタングステンレニウムオスミウム
イリジウム白金、銅、または、それらの組合せなどの金属でドープされるが、これら
に限定されない。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子は、ポリマーコーティングを
有するか、またはポリマーコーティングを有しない。ある実施形態では、ポリマーコーテ
ィングはデキストランを含む。ある実施形態では、バイオフィルムは、ストレプトコッカ
ス・ミュータンス(S.mutans)、シュードモナスエルジノーサ(P.aeru
ginosas)、エシェリヒアコリー(E.coli)、エンテロコッカス・フェカ
リス(E.faecalis)、バチリス・サブチリス(B.subtilis)、ス
タフィロコッカスアウレウス(S.aureus)、ビブリオコレラ(Vibrio
cholerae)、カンジタ・アルビカンス(Candida albicans)
、または、それらの組み合わせによって生成される。バイオフィルムは、歯の表面、粘膜
表面、医療デバイス、工業材料船舶材料(naval material)、皮膚、歯
の内部(例えば、歯内管)、(例えば、嚢胞性線維症)、または、尿路に存在し得る。

0009

本開示は、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む組成物の有効量を対象に投与するステップを含
む、口腔疾患を防止、排除および/または治療する方法を提供する。ある実施形態では、
組成物中の鉄ナノ粒子の濃度は、約0.1〜約1.0mg/mlである。ある実施形態で
は、本方法は、対象に有効量の過酸化水素を投与するステップをさらに含むことができる
。ある実施形態では、過酸化水素は、約0.1%〜約3.0%の濃度の過酸化水素を含む
溶液で投与される。ある実施形態では、本方法は、対象に有効量のフッ化物を投与するス
テップをさらに含むことができる。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子は、マトリ
ックス分解酵素および/または過酸化物生成酵素にコンジュゲートされる。ある実施形態
では、組成物は、フッ化物、過酸化水素、リン酸カルシウム、銅、過炭酸ナトリウム、ま
たは、それらの組み合わせをさらに含むことができる。ある実施形態では、1つ以上の鉄
ナノ粒子は、約1nm〜約1,000nmの直径を有することができる。ある実施形態で
は、1つ以上の鉄ナノ粒子は、ポリマーコーティングを有するか、またはポリマーコーテ
ィングを有しない。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子はポリマーコーティングを
有する。

0010

本開示は、バイオフィルムを有する表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成
物と接触させるステップを含む、バイオフィルムを防止、排除および/または処理する方
法を提供する。ある実施形態では、バイオフィルムは、歯の表面、粘膜組織表面、軟組織
表面、皮膚、アパタイト表面インプラント表面、医療デバイス表面、工業材表面、船舶
(naval vessel)表面、ウォータークラフト表面、船体、またはパイプ表面
に存在する。ある実施形態では、本方法は、表面を過酸化水素含有溶液と接触させるステ
ップをさらに含むことができ、1つ以上の鉄ナノ粒子は、過酸化水素を触媒して.バイオ
フィルムマトリックスを分解かつ/または埋め込まれた細菌を殺菌することができる1つ
以上のフリーラジカルが形成される。ある実施形態では、1つ以上のフリーラジカルは、
同時に、バイオフィルムマトリックスを分解し、埋め込まれた細菌を殺菌する。

0011

ある実施形態では、バイオフィルム中の細菌増殖を防止する方法は、バイオフィルムを
有する表面を1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物と接触させるステップを含み、
1つ以上の鉄ナノ粒子は当該表面に結合し、鉄を放出してバイオフィルム内の細菌の増殖
を阻害する。本開示はさらに、表面上でバイオフィルムの形成を防止する方法を提供する
。ある実施形態では、表面上でバイオフィルムの形成を防止する方法は、1つ以上の鉄ナ
ノ粒子を含む有効量の組成物でバイオフィルム発生のリスクがある表面を処理するステッ
プを含むことができる。ある実施形態では、表面は、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量
の組成物でコーティングすることができる。ある実施形態では、組成物は、1つ以上の鉄
ナノ粒子および過酸化水素および/または過炭酸ナトリウムを含むことができる。例えば
、限定されないが、そのようなリスクのある表面には、歯の表面、粘膜表面、インプラン
トの表面、デバイスの表面、および、パイプの表面が含まれる。

0012

本開示の主題は、歯またはヒドロキシアパタイトHA)の脱灰を防止する方法をさら
に提供する。ある実施形態では、歯の脱灰を防止する方法は、バイオフィルムを有する歯
エナメル質またはアパタイト(例えば骨)表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の
組成物と接触させるステップを含むことができる。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ
粒子は表面に結合してエナメル質またはアパタイトの溶解を阻害かつ/または防止する。

0013

本開示は、1つ以上の鉄ナノ粒子を有する組成物を含む第1の容器と、過酸化水素溶液
を含む第2の容器とを含む、バイオフィルムを防止および/または処理するためのキット
を提供する。ある実施形態では、キットは、1つ以上の鉄ナノ粒子および過酸化水素を有
する組成物を含む容器を含むことができ、過酸化水素は不活性化および/または複合体化
され、口腔内でまたは水と接触したときに活性化および/または放出することができる。

図面の簡単な説明

0014

図1は、触媒性ナノ粒子(catalytic nanoparticles;CAT−NP)によるH2O2の活性化によるin situでのバイオフィルムの排除/破壊の提案モデルの模式図を示す。
図2は、バイオフィルム内の3次元(3D)細胞外マトリックスおよび酸性pHニッチの画像を示す。図2Aは、成熟バイオフィルム内のEPSマトリックス(赤色)および細菌(緑色)を示す。図2Bは、バクテリアを保持し、区画化構造体を形成しているEPSを示す細胞マトリックス構造組織の拡大図を示す。図2Cは、高酸性のミクロ環境(ドット領域)を有するintactなバイオフィルムのin situでのpH画像を示す。
図3は、本開示の非限定的な実施形態に従って調製および特性解析した酸化鉄ナノ粒子(IO−NP)のTEM画像を示す。スケールバーは500nmである。
図4A〜4Cは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって特性解析したストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans)バイオフィルム上のIO—NP保持の画像を示す。図4AはIO−NPで処理したバイオフィルムの形態を示す。図4Bは、バイオフィルムに結合したIO−NPの拡大図を示す。図4Cはバイオフィルム上のIO−NP(ピンク分布を示すSEM画像元素分析を示す。
図5A〜5Bは、0.5%H2O2と組み合わせたIO−NPによる殺菌およびマトリックス分解のグラフを示す。図5Aはバイオフィルム内のストレプトコッカス・ミュータンスの効果的な殺菌のグラフを示す。図5BはEPSマトリックス分解のグラフを示す。
図6A〜6Cは、低pH下での細菌阻害、IO−NPからの鉄放出およびフリーラジカル生成のグラフを示す。図6Aは、グルコースを含む培地中、低pH下でIO−NPが細菌生存を阻害することを示すグラフを示す。
図6Bは、37℃で低pH(5.5未満)下でのIO−NPからの鉄放出を示すグラフである。
図6Cは、低pH(pH4〜5)でIO−NPがH2O2を触媒してフリーラジカルを迅速に生成することを示すグラフである。
図7A〜7Cは、IO−NPが酸性条件下でヒドロキシアパタイト(HA)の脱灰を減少させることを示す画像を示す。図7Aは未処理HAビーズの画像である。図7B酸性緩衝液(pH4.5)中のHAビーズの画像である。図7C酸性緩衝液中でIO−NPを有するHAビーズの画像であって、HAの酸溶解に対するIO−NPの保護効果を示す。
図8A〜8Eは、触媒性ナノ粒子(CAT−NP)の特性解析および触媒活性を示す。図8A〜8BはTEMによるCAT−NPの画像を示す。図8CはCAT−NPのサイズ分布(213.3±26.5nm)を示すグラフである。図8Dは3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)法によって測定したCAT−NP活性のグラフである。図8EはAMPLEX(登録商標)UltraRed(568/581nmで励起発光)によって測定したCAT−NP活性のグラフである。データは平均±s.d.で示す。
図9A〜図9Bは、例示的な実験デザインおよびインビトロでの唾液被覆ハイドロキシアパタイト(saliva−coated hydroxyapatite;sHA)バイオフィルムモデルを示す。図9Aは例示的なバイオフィルム実験設計および局所処理レジメンを示す。図9Bは24ウェルプレート内のsHAディスク垂直配置およびsHAディスク表面上のバイオフィルムの形成を示す。
図10A〜10Fは、バイオフィルム内のCAT−NPの保持および触媒活性を示す。図10Aは結合したCAT−NP(矢印)を有するバイオフィルムの形態を示す。図10A1は図10A中の選択された領域内のCAT−NPの拡大図を示す。図10A2はバイオフィルム上の鉄(ピンク)の分布を示すSEM/EDS画像を示す。図10Bは、ICP−MSで鉄量を測定して測定した、バイオフィルム内の結合CAT−NPの量を示すグラフを示す。図10Cは、バイオフィルム(EPS(赤色)、細菌(緑色)、CAT−NP(白色)は共焦点顕微鏡で観察したものである)内のCAT−NPの空間分布を示す。図10Dは、バイオフィルムの厚さ全体のCAT−NPの直交方向分布を示すグラフを示す。図10Eは、バイオフィルム内のCAT−NPの触媒活性を示すグラフである(挿入図:CAT−NP処理バイオフィルムのH2O2およびTMBへの暴露前後の画像(青色はin situでのH2O2触媒作用を介したフリーラジカル生成を示す))。
図11は、別のペルオキシダーゼ基質(3,3’−ジアミノベンジジン;DAB)を用いたバイオフィルム内の結合CAT−NPの活性を示す画像を示す。色はH2O2触媒作用を介したフリーラジカル生成を示す。
図12は、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)反応によって測定した、様々なpH値におけるバイオフィルム内の結合CAT−NPの触媒活性を示すグラフである。
図13A〜13Dは、CAT−NPおよびH2O2の組み合わせによって達成される殺菌、EPS分解およびバイオフィルム破壊を示す。図13Aは、H2O2暴露から5分後のCAT−NP処理バイオフィルム内のストレプトコッカス・ミュータンスの生存率を示すグラフである。
図13Bは、H2O2曝露30分後のバイオフィルム内のEPS分解を示すグラフである。
図13Cは、GtfBから産生される不溶性グルカンおよびGtfDから産生される可溶性グルカンの分解を示すグラフである。
図13Dは、CAT−NP+H2O2による局所処置後のバイオフィルム破壊の挙動を示す共焦点顕微鏡画像を示す。バイオフィルムをCAT−NPで局所処置し、その後直ちにH2O2に暴露(CAT−NP+H2O2)または酢酸ナトリウム緩衝液に暴露(CAT−NP単独)した(1日2回)。CAT−NPの非存在下でH2O2処理したバイオフィルムについては、バイオフィルムを酢酸ナトリウム緩衝液で処理し、その後直ちにH2O2暴露した。対照群は緩衝液のみで処理したバイオフィルムとした。細菌細胞をSYTO9(緑色)で染色し、EPSをAlexa Fluor647(赤色)で標識した。データは平均±s.d.で示す。*P≦0.001(vs対照)。
図14A〜14Bは、様々な濃度のH2O2を用いたCAT−NPの抗バイオフィルム活性を示すグラフを示す。図14Aは生存細胞総数コロニー形成単位、CFU)を計数することによって測定した抗菌活性を示すグラフである。図14Bはバイオフィルムのバイオマス乾燥重量)の減少を示すグラフである。データは平均±s.d.で示す。
図15A〜図15Cは、処理バイオフィルム内の細菌およびEPSの生体容積(biovolume)の定量分析を示す。図15Aは、COMSTATによる、43時間の時点での処理バイオフィルム内の細菌の生体容積のグラフを示す。図15Bは、COMSTATによる、43時間の時点での処理バイオフィルム内のEPSの生体容積のグラフを示す。図15Cは、COMSTATによる、43時間の時点での処理バイオフィルム内の細菌およびEPSの生体容積の定量分析を示す表である。データは平均±s.d.で示す。
図16A〜16Bは、齲蝕病変発生に対するCAT−NP/H2O2処理による保護を示す画像およびグラフを示す。図16Aは、述べたとおりに処置したラットの歯の画像を示す。緑色の矢印はエナメル質領域が脱灰されて白くなった初期病変形成を示し、青色の矢印はエナメル質領域が白色不透明または損傷を受けた中程度の齲蝕病変を示す。一部の領域ではエナメル質が侵食され、最も重篤な齲蝕病変(赤色の矢印)であるキャビテーションが生じた。図16Bは、Keyesのスコアリング・システムのLarson改良に従って齲蝕病変重症度ステージおよび程度として記録したスコアを示すグラフを示す:初期の病変(表面エナメル質が白色);中程度の病変(エナメル質が白色不透明);広範囲の病変(キャビテーションが起こり、エナメル質が侵食されて下の象牙質露出している状態)。データは平均±s.d.で示す。*P≦0.001(vs対照);**P≦0.05(vs対照);δは未検出を示す。
図17は、CAT−NPおよび/またはH2O2で処置した動物歯肉組織および口蓋組織の組織病理画像を示すものであり、細胞毒性効果は示されず、3週間の局所処置後の細胞異常は全くない。
図18A〜18Cは、CAT−NP処理によるsHA酸溶解の減少の画像、グラフおよび図を示す。図18Aは、未処理sHAビーズ(直径80μm)、酸性緩衝液(pH4.5)中のsHAビーズ、および、酸性緩衝液中のCAT−NPを有するsHAビーズの画像を示す。図18Bは酸溶解後のsHAの残存量を示す例示的グラフを示す。図18Cは、pH4またはpH7でのインキュベーション後にCAT−NPから放出された鉄の量を示す例示的なグラフを示す。データは、平均±s.d.で示す。
図19A〜図19Bは、修飾CAT−NPの触媒活性の比較を示すグラフを示す図である。図19Aは、同量の様々なタイプのCAT−NP(CAT−NP、デキストラン被覆CAT−NP、および、デキストランで被覆され、かつ、マンガン(Mn)でドープされたCAT−NP)の触媒活性(TMB法による)のキネティクスを示すグラフである。図19Bは、修飾CAT−NPの触媒活性と比較したCAT−NPの触媒活性を示すグラフを示す。データ(未修飾CAT−NPに対する活性)は平均±s.d.で表し、修飾により触媒活性が増強されることを明確に示している。
図20はIO−NPの有効性を最適化し得る修飾を示す。
図21は、ルミノールからの光の発生により示されるデキストラン被覆IO−NPによるH2O2のin vitro触媒作用を示す画像である。
図22A〜22Bは、バイオフィルムに結合したIO−NPの触媒活性を示す。図22AはH2O2およびTMBへの暴露前後のIO−NP処理バイオフィルムを示す画像であり、青色は、H2O2触媒作用を介したin situでのROS生成を示す。図22BはOD652で測定した発生フリーラジカルの量を示すグラフである。
図23A〜23Bは、酸化鉄ナノ粒子と24時間インキュベートした後の細胞生存率を示す。図23Aは酸化鉄ナノ粒子と24時間インキュベートした後のBJ5ta細胞の細胞生存率を示すグラフである。図23Bは酸化鉄ナノ粒子と24時間インキュベートした後のHepG2細胞の細胞生存率を示すグラフである。データは細胞に対して毒性作用を示さない。

0015

本開示の主題は、バイオフィルムの排除、バイオフィルム形成の阻止、マトリックス分
解および/またはバイオフィルム内の微生物の生存および増殖の阻害のための酸化鉄ナノ
粒子(IO−NP)組成物およびその配合物を提供する。本開示の主題は、口腔疾患の治
療ならびに工業用途および他の医療用途のための本開示の組成物および配合物の使用方法
をさらに提供する。

0016

明細書中において「バイオフィルム」は、細胞外マトリックスと、1つ以上の微生物
、例えば、限定されないが、細菌(バクテリア)、真菌藻類原生動物とを含み、表面
に付着する。例えば、限定されないが、このような表面には、歯、粘膜、アパタイト、骨
非生物(例えば、インプラント、義歯、パイプなど)の表面が含まれ得る。バイオフィ
ルムは、生体表面または非生体表面上上に形成され、自然環境および工業環境中に存在す
ることができる。

0017

本開示の組成物および/または配合物によって防止、排除および/または処理すること
ができるバイオフィルムには、口腔内、例えば、歯の表面、歯肉歯周組織などの粘膜/
軟組織の表面、および歯の管の内部(例えば、歯内管)に存在するバイオフィルムが含ま
れるが、これらに限定されない。ある実施形態では、本開示の組成物および/または配合
物によって防止、排除および/または処理することができるバイオフィルムには、尿路、
肺、胃腸管慢性創傷上および/または慢性創傷内のバイオフィルムが含まれ、表面(イ
プラントなど)や、医療デバイスおよび医療ライン、例えば、カテーテル医療機器
よび医療用チューブの内部に存在する。バイオフィルムの更なる非限定的な例には、工業
装置および工業材料、例えば、水、下水オイルなどの物質のためのパイプ内に存在する
バイオフィルムが含まれる。ある実施形態では、本開示の組成物および/または配合物は
、船舶および他のウォータークラフトの船体の処理または洗浄に使用され得る。

0018

本明細書において「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特
定の値の許容誤差範囲内を意味し、値がどのように測定ないし決定されるか(すなわち、
測定システム限界)に部分的に依存する。例えば、「約」は、所定の値の最大20%、
最大10%、最大5%、および/または、1%までの範囲を意味し得る。

0019

上述したように、本開示の組成物は、バイオフィルム中の細菌などの1つ以上の微生物
の成長を低減させ、かつ/または当該微生物の生存を阻害するために使用することができ
る。例えば、限定されないが、細菌には、ストレプトコッカス・ミュータンス(S.mu
tans)、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobr
inus)、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus san
guinis)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gor
donii)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oral
is)、ストレプトコッカス・ミチス(Streptococcus mitis)、ア
チノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyti
cus)、アクチノマイセス・ビスコーカス(Actinomyces viscosu
s)、アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatiba
cter actinomycetemcomitans)、ラクトバチルスspp.(
Lactobacillus spp.)、ポルフィロモナスジンジバリス(Porph
yromonas gingivalis)、プレボテラインテルメディア(Prev
otella intermedia)、バクテロイデスフォーサイス(Bacter
oides forsythus)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponem
a denticola)、フソバクテリウムヌクレアタム(Fusobacteri
um nucleatum)、カンピロバクターレクタス(Campylobacte
r rectus)、オイコネラコロデンス(Eikenella corroden
s)、ベイロネラspp.(Veillonella spp.)、ミクロナス・ミク
ロス(Micromonas micros)、ポルフィロモナス・カンジンジバリス(
Porphyromonas cangingivalis)、フェモリラス・アクチノ
ミセテムコタンス(Haemophilus actinomycetemcomit
ans)、アクチノマイセスspp.(Actinomyces spp.)、バチリスs
pp.(Bacillus spp.)、マイクロバクテリウムspp.(Mycoba
cterium spp.)、フソバクテリウムspp.(Fusobacterium
spp.)、ストレプトコッカスspp.(Streptococcus spp.)、
スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ス
トレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ス
トレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalectia
e)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、クレブシエラ
ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター
pp.(Acinetobacter spp.)、エンテロコッカスspp.(Ent
erococcus spp.)、プレボテーラspp.(Prevotella sp
p.)、ポルフィロモナスspp.(Porphyromonas spp.)、クロス
トリジウムspp.(Clostridium spp.)、ステノトロフォモナスマル
トフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、ポルフィ
ロモナス・カンジンジバリス(P.cangingivalis)、カンジタ・アルビカ
ンス(Candida albicans)、エシェリヒア・コリー(E.coli)、
および/または、シュードモナス・エルジノーサ(P.aeruginosas)が含ま
れ得る。ある実施形態では、細菌はS.mutansであり、これは,口腔内、例えば歯
の表面上に見出されるバイオフィルム内に存在する。

0020

酸化鉄ナノ粒子(Iron Oxide Nanoparticles;IO−NP)
およびIO−NP組成物
本開示の主題は、バイオフィルムを処理および/または排除および/またはバイオフィ
ルム形成を防止するための、1つ以上のIO−NP(本明細書では触媒ナノ粒子、CAT
−NPおよびMNPともいう)を含む組成物を提供する。例えば、限定されないが、本明
細書に開示される組成物は、存在するバイオフィルム、例えば既に表面上に存在するバイ
オフィルムを処理するために使用することができる。ある実施形態では、本開示の組成物
は、例えば、開示された組成物で表面をコーティングすることによって、バイオフィルム
の発生および/または形成を防止するために使用することができる。

0021

本明細書に開示されるように、本開示のIO−NPは、歯表面に結合し、また、バイオ
フィルム内に浸透・保持されてバイオフィルムの細胞外マトリックスを破壊して、バイオ
フィルム内に埋め込まれた細菌の増殖の減少および/または殺菌をすることができる、例
えば、限定されないが、開示される主題のIO−NPは、バイオフィルム内に鉄を放出し
てバイオフィルム内の細菌の増殖を減少することができる。ある実施形態では、IO−N
Pは、バイオフィルムの酸性ミクロ環境中で鉄を放出する。例えば、限定されないが、I
O−NPは、pH約5.5以下、pH約4.5以下またはpH約4.0以下で鉄を放出す
ることができる。ある実施形態では、IO−NPはpH約7で鉄を顕著に放出しない。

0022

ある実施形態では、本開示のIO−NPは、酸化鉄から製造されたナノ粒子とすること
ができる。例えば、限定されないが、IO−NPは、Fe3O4、Fe2O3、酸化鉄を
含むナノ材料、または、その組み合わせから製造することができる。ある実施形態では、
IO−NPは、約0.01〜約10.0mg/mlの鉄濃度を有することができる。例え
ば、限定するものではないが、IO−NPは、約0.01〜約9.0mg/ml、約0.
01〜約8.0mg/ml、約0.01〜約7.0mg/ml、約0.01〜約6.0m
g/ml、約0.01〜約5.0mg/ml、約0.01〜約4.0mg/ml、約0.
01〜約3.0mg/ml、約1.0〜約2.0mg/ml、約2.0〜約10.0mg
/ml、約3.0〜約10.0mg/ml、約4.0〜約10.0mg/ml、約5.0
〜約10.0mg/ml、約6.0〜約10.0mg/ml、約7.0〜約10.0mg
/ml、約8.0〜約10.0mg/mlまたは約9.0〜約10.0mg/mlの鉄濃
度を有することができる。ある実施形態では、IO−NPは、約5.0〜約6.0mg/
mlの鉄濃度を有することができる。

0023

ある実施形態では、本開示のIO−NPはポリマーコーティングを含まない。ある実施
形態では、本開示のIO−NPはポリマーコーティングを含むことができ、例えば、限定
されないが、ポリマーコーティングは、キトサンポリアクリル酸)、デキストラン、
ポリ(オリゴエチレングリコールメタクリレート−co−メタクリル酸)、ポリグリ
シジルメタクリレート、ポリ(ビニルアルコール)、ジオールカテコールドーパミン
ヒドロキサム酸ホスフィンオキシドシラン、および、当業者に知られている他のコ
ティングを含むことができる。ある実施形態では、ポリマーコーティングは、デキス
ランまたは修飾デキストランとすることができる。例えば、限定されないが、デキストラ
ンは架橋アミノ化カルボキシル化、またはジエチルアミノエチル部分で修飾すること
ができる。本開示のIO−NPとして使用することができる市販のデキストラン被覆酸化
鉄ナノ粒子の非限定的な例には、Feridex(登録商標)、Combidex(登録
商標)およびFeraheme(登録商標)が挙げられる。ある実施形態では、本開示の
IO−NPのコーティングに使用されるデキストランは、約1kDa〜約100kDa、
例えば、約1kDa〜約90kDa、約1kDa〜約80kDa、約1kDa〜約70k
Da、約1kDa〜約60kDa、約1kDa〜約50kDa、約1kDa〜約40kD
a、約1kDa〜約30kDa、約1kDa〜約20kDa、約1kDa〜約10kDa
、約1kDa〜約5kDa、約5kDa〜約100kDa、約10kDa〜約100kD
a、約20kDa〜約100kDa、約30kDa〜約100kDa、約40kDa〜約
100kDa、約50kDa〜約100kDa、約60kDa〜約100kDa、約70
kDa〜約100kDa、約80kDa〜約100kDaまたは約90kDa〜約100
kDaの分子量を有することができる。

0024

ある実施形態では、本開示のIO−NPは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)によ
る測定で、約1ナノメートル(nm)〜約1,000nmの直径を有することができる。
例えば、限定されないが、IO−NPは、約1nm〜約900nm、約1nm〜約800
nm、約1nm〜約700nm、約1nm〜約600nm、約1nm〜約500nm、約
1nm〜約400nm、約1nm〜約300nm、約1nm〜約200nm、約1nm〜
約100nm、約1nm〜約75nm、約1nm〜約50nm、約1nm〜約25nm、
約25nm〜約900nm、約75nm〜約900nm、約100nm〜約900nm、
約200nm〜約900nm、約300nm〜約900nm、約400nm〜約900n
m、約500nm〜約900nm、約600nm〜約900nm、約700nm〜約90
0nmまたは約800nm〜約900nmである。ある実施形態では、IO−NPは約2
00nm〜約300nmの直径を有することができる。ある実施形態では、IO−NPは
約185nm〜約240nm、例えば、約213nmの直径を有することができる。

0025

ある実施形態では、本開示のIO−NPは約1nm〜約1,000nmの流体力学直径
を有することができる。例えば、限定されないが、IO−NPは、約10nm〜約100
nm、約15nm〜約100nm、約20nm〜約100nm、約25nm〜約100n
m、約30nm〜約100nm、約35nm〜約100nm、約40nm〜約100nm
、約45nm〜約100nm、約50nm〜約100nm、約55nm〜約100nm、
約60nm〜約100nm、約65nm〜約100nm、約70nm〜約100nm、約
75nm〜約100nm、約80nm〜約100nm、約85nm〜約100nm、約9
0nm〜約100nm、約95nm〜約100nm、約5nm〜約95nm、約5nm〜
約90nm、約5nm〜約85nm、約5nm〜約80nm、約5nm〜約75nm、約
5nm〜約70nm、約5nm〜約65nm、約5nm〜約60nm、約5nm〜約55
nm、約5nm〜約50nm、約5nm〜約45nm、約5nm〜約40nm、約5nm
〜約35nm、約5nm〜約30nm、約5nm〜約25nm、約5nm〜約20nm、
約5nm〜約15nm、または約5nm〜約10nmの範囲内である。ある実施形態では
、IO−NPは約30nm〜約50nmの流体力学直径を有することができる。

0026

ある実施形態では、本開示のIO−NP、例えばIO−NPのコアは、金属(例えば金
属塩として)でドープすることができる。例えば、限定するものではないが、金属は、マ
ガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、ストロ
ンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジ
ウム(V)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、イッ
トリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテ
ウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル
(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(
Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)またはそれらの組み合わせである。ある実施形態では
、金属はMnCl2、CoCl2、NiCl2、MgCl2などの塩として存在すること
ができるが、これらに限定されない。ある実施形態では、本開示のIO−NPは、リン酸
カルシウムなどのカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属でドープすることができる
が、これに限定されない。ある実施形態では、ドーピング金属は、約1重量%〜約50重
量%、例えば、約1重量%〜約40重量%、約1重量%〜約30重量%、約1重量%〜約
20重量%、約1重量%〜約10重量%、約1重量%〜約5重量%、約5重量%〜約50
重量%、約10重量%〜約50重量%、約20重量%〜約50重量%、約30重量%〜約
50重量%、または約40重量%〜約50重量%の量でIO−NP中に(例えば、IO−
NPのコア内に)存在することができる。ある実施形態では、金属でドープされたIO−
NPは、約0.01〜約10.0mg/ml、例えば、約0.01〜約9.0mg/ml
、約0.01〜約8.0mg/ml、約0.01〜約7.0mg/ml、約0.01〜約
6.0mg/ml、約0.01〜約5.0mg/ml、約0.01〜約4.0mg/ml
、約0.01〜約3.0mg/ml、約1.0〜約2.0mg/ml、約2.0〜約10
.0mg/ml、約3.0〜約10.0mg/ml、約4.0〜約10.0mg/ml、
約5.0〜約10.0mg/ml、約6.0〜約10.0mg/ml、約7.0〜約10
.0mg/ml、約8.0〜約10.0mg/ml、または約9.0〜約10.0mg/
mlのドーピング金属濃度を有することができる。ある実施形態では、金属でドープされ
たIO−NPは、約5.0〜約6.0mg/mlのドーピング金属濃度を有することがで
きる。

0027

ある実施形態では、本開示のIO−NPは1つ以上のマトリックス分解酵素および/ま
たは過酸化物生成酵素にコンジュゲートすることができる。例えば、限定されないが、I
O−NPとコンジュゲートした酵素は、バイオフィルムマトリックス内の成分、例えばグ
ルカンおよびフルクタンを分解してグルコースおよびフルクトースを生成し、H2O2を
バイオフィルム内に放出することができる。そして、IO−NPは、H2O2を触媒して
マトリックス分解および/または殺菌のためのフリーラジカルを生成することができる。
さらに、マトリックス分解酵素はバイオフィルムマトリックス分解に役立ち得る。適切な
酵素の非限定的な例としては、デキストラナーゼムタナーゼ、グルコース/フルクト
ス/ガラクトースオキシダーゼおよびそれらの組み合わせが挙げられる。マトリックス
分解酵素の更なる非限定的な例には、DNAse、ヌクレアーゼディスパーシン、グリ
コシドヒドロラーゼ、プロテアーゼズブチリシン、および、グルカノヒドロラーゼが含
まれる。当技術分野で公知の任意の技術を用いて酵素をIO−NPにコンジュゲートする
ことができる。ある実施形態では、酵素は、酵素の帯電基へのIO−NPの静電的付着に
よりIO−NPにコンジュゲートすることができる。代替的にまたは追加的に、グルタル
アルデヒドまたはカルボジイミド/N−ヒドロキシスクシンイミドを用いて酵素をポリマ
ー被覆IO−NPにコンジュゲートしてIO−NPを活性化した後、活性化されたIO−
NPを酵素のアミン基に架橋することができる。

0028

本開示は、本明細書に記載の1つ以上のIO−NP、例えば、IO−NPおよび/また
は酵素にコンジュゲートされたIO−NPとH2O2とを含む組成物をさらに提供する。
ある実施形態では、組成物中に存在するIO−NPはポリマーコーティング、例えばデキ
トランを有する。ある実施形態では、組成物中に存在するIO−NPはポリマーコーテ
ィングを有さない。ある実施形態では、組成物中に存在するH2O2は、過炭酸ナトリウ
ムのような他の化学物質から生成され得る。例えば、限定するものではないが、本開示の
組成物は過炭酸ナトリウムを含むことができ、過炭酸ナトリウムがH2O2を生成する。

0029

ある実施形態では、組成物は、約0.01%〜約3.0%(v/v)の濃度でH2O2
を含むことができる。ある実施形態では、組成物は、約0.05%〜約3.0%、5%、
0.1%〜約0.25%、約0.1%〜約0.5%、約0.1%〜約0.75%、約0.
1%〜約1.0%、約0.1%〜約1.5%、約0.1%〜約1.75%、約0.1%〜
約2.0%、約0.1%〜約2.25%、約0.1%〜約2.5%、または約0.1%〜
約2.75%の濃度でH2O2を含むことができる。ある実施形態では、1つ以上のIO
−NPはH2O2を触媒して、バイオフィルムの細胞外マトリックスの分解および/また
消化し、かつ/または細菌を殺菌することができる1つ以上のフリーラジカルを形成す
る。例えば、限定されないが、1つ以上のフリーラジカルは、バイオフィルムの細胞外マ
トリックスを分解すると同時に細菌を殺菌することができる。ある実施形態では、IO−
NPはH2O2を触媒してフリーラジカル、例えば、限定するものではないが、ヒドロキ
シルラジカル(・OH)を生成することができる。

0030

ある実施形態では、本開示の組成物は、サイズ(例えば、直径)および組成が異なるI
O−NPを含むことができる。例えば、限定するものではないが、本開示の組成物は、ポ
リマーコーティングを有するIO−NPと、ポリマーコーティングを有さないIO−NP
との混合物を含むことができる。ある実施形態では、本開示の組成物は、異なるポリマー
コーティングを有するIO−NPの混合物を含むことができ、例えば、組成物内の1つ以
上のIO−NPはデキストランコーティングを有することができ、組成物内の1つ以上の
IO−NPは変性デキストランコーティングを有することができる。代替的または追加的
に、ある実施形態では、本開示の組成物は、組成が異なるIO−NPを含み得る。例えば
、本開示の組成物は、様々な金属、例えばMgおよび/またはMnでドープされたIO−
NPの混合物を含むことができる。

0031

配合物および製品
本開示の主題は、開示されたIO−NP組成物、例えば、1つ以上のIO−NPを含む
組成物および/または1つ以上のIO−NPおよびH2O2を含む組成物を組み込んだ配
合物をさらに提供する。例えば、限定するものではないが、配合物には、組成物を口腔内
送達するための口腔ケア製品および製品、および、組成物を医療デバイス、船舶材料お
よび/または船舶または工業材料に送達するための市販の製品が含まれる。ある実施形態
では、組成物は、医療デバイス(例えば、医療用チューブ、カテーテル)製造用材料、口
腔用補綴物(例えば、義歯、インプラント)製造用材料、および、工業材料(例えば、パ
イプ、船体)製造用材料に組み込むことができる。ある実施形態では、本開示の配合物は
局所的に適用することができ、例えば、治療として慢性創傷または皮膚疾患に適用するこ
とができる。ある実施形態では、本開示の配合物は、工業材料または船体の1つ以上の表
面をコーティングするためのスプレーおよび/または塗料として使用することができる。

0032

ある実施形態では、本開示の組成物および/または配合物は、上述のIO−NPを、約
0.01mg/ml〜約5mg/ml、例えば、約0.01mg/ml〜約4mg/ml
、約0.01mg/ml〜約3mg/ml、約0.01mg/ml〜約2mg/ml、約
0.01mg/ml〜約1mg/ml、約0.01mg/ml〜約0.75mg/ml、
約0.01mg/ml〜約0.5mg/ml、約0.01mg/ml〜約0.1mg/m
l、約0.01mg/ml〜約0.05mg/ml、約0.05mg/ml〜約5mg/
ml、約0.1mg/ml〜約5mg/ml、約0.5mg/ml〜約5mg/ml、約
1mg/ml〜約5mg/ml、約2mg/ml〜約5mg/ml、約3mg/ml〜約
5mg/ml、または約4mg/ml〜約5mg/mlの濃度で含むことができる。ある
実施形態では、本開示の配合物および/または組成物はIO−NPを約0.5mg/ml
の濃度で含むことができる。

0033

ある実施形態では、本開示の配合物は、上述の組成物と、フッ化物、例えばフッ化ナト
リウムとを含むことができる。ある実施形態では、フッ化物は、約10ppm(part
s per million)〜約5,000ppm、例えば、約100ppm〜約4,
500ppm、約100ppm〜約4,000ppm、約100ppm〜約3,500p
pm、約100ppm〜約3,000ppm、約100ppm〜約2,500ppm、約
100ppm〜約2,000ppm、約100ppm〜約1,500ppm、約100p
pm〜約1,000ppm、約100ppm〜約500ppm、または約200ppm〜
約400ppmの濃度で、本開示の配合物中に存在することができる。ある実施形態では
、フッ化物は約200ppm〜約300ppm、例えば、約250ppmの濃度で存在す
る。ある実施形態では、フッ化物は約5,000ppmの濃度で存在する。

0034

ある実施形態では、本開示のIO−NP組成物、例えば酵素にコンジュゲートした1つ
以上のIO−NPを含む組成物は、当該組成物を口腔に送達するための配合物に組み込む
ことができる。例えば、限定されるものではないが、組成物を液体配合物またはゲル配合
物、スプレーに組み込むことができる。ある実施形態では、液体配合物は担体を含むこと
ができ、例えば、限定されないが、生理食塩水デキストロース、水、等張食塩水、植物
油または鉱油などの油、油性エステルエチルアルコールなどのアルコールである。ある
実施形態では、液体配合物は、懸濁剤、分散または湿潤剤乳化剤粘滑剤保存剤、緩
衝剤、塩、着香剤着色剤甘味剤増粘剤を含む、1つ以上の他の成分をさらに含むこ
とができる。ある実施形態では、本開示のIO−NP組成物は口腔ケア製品に組み込むこ
とができる。口腔ケア製品の非限定的な例には、練り歯磨き口内洗浄剤、歯美白製品、
研磨性歯磨ジェル義歯洗浄剤、非研磨性歯磨ジェル、義歯洗浄剤または浸漬液、義歯接
着剤またはセメント、ゲル、エマルジョンワニス修復材料(例えば、セラミック、樹
脂など)、歯科充填材、口腔ゲルストリップ製品、チューインガムキャンデー、および
、飲料が含まれる。口腔用途が意図される配合物は当技術分野で公知の任意の方法に従っ
て調製することができる。

0035

ある実施形態では、本開示のIO−NP組成物は、当該組成物を医療デバイスまたは工
業材料に送達するための配合物に組み込むことができる。例えば、組成物は上述したよう
に液体配合物に組み込むことができる。ある実施形態では、組成物は、様々なpH値およ
イオン強度を有する希釈剤(例えば、トリス、クエン酸塩酢酸塩またはリン酸塩緩衝
液);TWEEN(商標)またはポリソルベートなどの可溶化剤チメロサールパラ
ン、ベンジルアルコニウムクライドまたはベンジルアルコールなどの保存剤;アスコル
ビン酸またはメタ重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;および、リジンまたはグリシン
どの他の成分を含む、潤滑剤、軟膏クリームまたはゲルに組み込むことができる。代替
的にまたは追加的に、カテーテルまたはチューブの表面および/またはその内部のバイオ
フィルムの形成を防止するために、カテーテルまたは医療用チューブ材料に本開示のIO
−NP組成物を含浸させることができる。

0036

使用方法
本開示の主題は、開示された組成物および/または配合物を使用する方法をさらに提供
する。本開示の方法は、バイオフィルムおよび/またはバイオフィルム関連感染症を治療
および/または防止するために使用することができる。例えば、限定するものではないが
、本開示の組成物または配合物の投与は、バイオフィルムの形成を阻害し、バイオフィル
ムの更なる蓄積を阻害し、存在するバイオフィルムの破壊または分解を促進し、および/
または存在するバイオフィルムを弱体化する。例えば、限定するものではないが、本開示
の組成物および/または配合物は、口腔疾患を促進するバイオフィルムを処理するために
使用することができる。口腔疾患には、口腔または関連する医学的状態に影響を及ぼす疾
患および障害が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、口腔疾患には、齲蝕や、
歯肉炎成人歯周炎早期発症性歯周炎インプラント周囲炎および歯内感染症などの歯
周病が含まれるが、これらに限定されない。

0037

ある実施形態では、本開示の組成物または配合物は、例えば、義歯の口内炎および口腔
カンジダ症を含む、バイオフィルム関連粘膜感染症を治療および/または防止するために
使用することができる。ある実施形態では、開示される主題の方法は、限定するものでは
ないが、齲蝕、粘膜感染症、口腔疾患、尿路感染症、カテーテル感染症、中耳炎創傷
人工関節および人工弁などの移植医療デバイスの感染症、および、ヒト感染症などを含む
、バイオフィルム関連疾患などの疾患または障害を治療および/または防止するために使
用することができる。

0038

本明細書において「治療」(および「治療する」などのその文法的変形)は、治療対象
の個体の自然経過を変えようとする臨床的介入を意味し、予防のためにまたは疾患の治療
過程中に行うことができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の防止、症
状の緩和、疾患の直接的または間接的な病理学的影響の減少、疾患の進行速度の低下また
疾患状態の改善が含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、本開示の組
成物および配合物は、疾患の発症遅延させるために、または疾患の進行を遅らせるため
に使用することができる。ある実施形態では、治療は、存在するバイオフィルムの排除、
除去および/または低減を指し得る。ある実施形態では、防止とは、表面上のバイオフィ
ルムの発生または形成を妨げることを指し得る。

0039

本明細書において交換可能に使用される「個体」、「患者」または「対象」は哺乳動物
を指す。哺乳動物には、限定されないが、家畜(例えば、ウシヒツジネコイヌ、ウ
マ)、霊長類(例えば、ヒトや、サルなどの非ヒト霊長類)、ウサギげっ歯類(例えば
マウス、ラット)が含まれる。ある実施形態では、個体または対象はヒトである。

0040

ある実施形態では、対象における口腔疾患の防止および治療、および/または、バイオ
フィルムの防止および治療をする方法は、有効量の本開示の組成物および/または配合物
を対象に投与するステップを含み得る。ある実施形態では、この方法は、IO−NPおよ
び/または酵素にコンジュゲートしたIO−NPを含む組成物または配合物を対象に投与
するステップを含む。ある実施形態では、本開示の組成物および/または配合物は、限定
されないが、約10分未満、約9分未満、約8分未満、約7分未満、約6分未満、約5分
未満、約4分未満、約3分未満、約2分未満または約1分未満などの期間の短い時間間隔
で対象に投与することができる。

0041

本明細書で使用される「有効量」は、必要な用量および期間において、所望の治療また
は予防結果を達成するのに有効な量を指す。疾患の防止または治療のために、本開示の組
成物または製剤の適切な量(例えば有効量)は、治療または防止対象の疾患のタイプ、疾
患の重篤度および経過に依存する。投薬レジメンは最適な治療レスポンスが得られるよう
に調節され得る。

0042

ある実施形態では、上記方法は、過酸化水素を含む溶液の投与などにより、対象に過酸
水素の投与するステップをさらに含むことができる。代替的または追加的に、過酸化水
素はIO−NPを含む組成物および/または配合物中に存在することができる。例えば、
限定するものではないが、過酸化水素は、過炭酸ナトリウムを使用して、ゲル様製品、例
えば練り歯磨きに配合することができ、ゲル様製品はさらに1つ以上のIO−NPを含む
。ある実施形態では、過炭酸ナトリウムは、組成物および/または配合物内に存在して、
水の存在下でまたは口内に入れたときに過酸化水素を放出することができる。このような
組成物および/または配合物は、水溶液と接触したときに、または口内に入れたときに組
成物および/または配合物から過酸化水素を放出させることができ、それにより、過酸化
水素とIO−NPとの反応をin situで発生させることができる。

0043

ある実施形態では、溶液、組成物および/または配合物は、約0.1%〜約0.25%
、約0.1%〜約0.5%、約0.1%〜約0.75%、約0.1%〜約1.0%、約0
.1%〜約1.5%、約0.1%〜約1.75%、約0.1%〜約2.0%、約0.1%
〜約2.25%、約0.1%〜約2.5%、約0.1%〜約2.75%または約0.1%
〜約3.0%の濃度で過酸化水素を含むことができる。ある実施形態では、溶液、組成物
および/または配合物は、約0.1%〜約1.0%の濃度で過酸化水素を含むことができ
る。ある実施形態では、溶液、組成物および/または配合物は、約0.1%〜約0.5%
の濃度で過酸化水素を含むことができる。

0044

ある実施形態では、上記方法は、有効量のフッ化物を投与するステップをさらに含むこ
とができる。ある実施形態では、フッ化物は、IO−NPおよび/または過酸化水素を含
む組成物および/または配合物中に存在し得る。例えば、限定されるものではないが、フ
化物は、上述したように、ゲル様製品中に配合することができ、ゲル様製品中はさらに
1つ以上のIO−NPおよび/または過酸化水素を含む。ある実施形態では、フッ化物は
、約10ppm(parts per million)〜約10,000ppm(例え
ば、約5,000ppm)の濃度で、本開示の組成物および/または配合物中に存在し得
る。

0045

ある実施形態では、本開示の組成物または配合物は、1回のまたは一連の治療にわたっ
て対象に投与することができる。ある実施形態では、複数に分割して毎日投与してもよく
、または治療状況の緊急性によって用量を比例的に減少させてもよい。例えば、限定する
ものではないが、本明細書に開示される組成物および配合物は、毎日2回、毎日1回、2
日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、1週間に1回、2週間に
1回、3週間に1回、毎月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回または1
年に1回、対象に投与することができる。ある実施形態では、本開示の組成物または配合
物、例えば、マトリックス分解酵素および/または過酸化物生成酵素にコンジュゲートさ
れた1つ以上のIO−NPおよび/または1つ以上のIO−NPを含む組成物を毎日2回
対象に投与することができる。ある実施形態では、1つ以上のIO−NPを、例えば口内
洗浄配合物に含む組成物を、毎日1回または2回対象に投与し、続いて、H2O2を、毎
日1回または2回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、ま
たは週に1回投与することができる。ある実施形態では、1つ以上のIO−NP、および
、H2O2を生成する過炭酸ナトリウムを含む組成物を、例えばゲル系配合物で、対象に
、毎日1回または2回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回
、または週に1回投与することができる。

0046

本開示はさらに、バイオフィルム内の細菌増殖の防止方法を提供する。ある実施形態で
は、本方法は、バイオフィルムを有する表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の本
明細書に開示する組成物および/または配合物と接触させるステップを含むことができる
。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子は表面に結合して鉄を放出し、バイオフィル
ム内の細菌の増殖を阻害する。

0047

本開示はさらに、表面上でバイオフィルムの形成を防止する方法を提供する。ある実施
形態では、表面上でバイオフィルムの形成を防止する方法は、バイオフィルムが発達する
「リスクのある」表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む、有効量の本明細書に開示される
組成物および/または配合物で処理するステップを含む。ある実施形態では、本方法は「
リスクのある」表面をH2O2と接触させるステップをさらに含むことができる。例えば
、限定されるものではないが、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の本明細書に開示され
る組成物および/または配合物を、スプレーまたは塗装などによって表面にコーティング
することができる。バイオフィルムが発達する「リスクのある」表面には、限定されない
が、アパタイト表面、例えば、骨および歯の表面、歯内管、インプラント表面、医療デバ
イス表面、例えば、カテーテルおよび機器、ならびに、工業材表面および船舶表面(na
val surface)、例えば、パイプ表面および船体表面が含まれる。ある実施形
態では、表面は、医療デバイスや工業材料および/または船舶材料の内面および/または
外面であり得る。

0048

本開示の主題は、歯の脱灰を防止する方法をさらに提供する。ある実施形態では、脱灰
を防止する方法は、バイオフィルムを有する歯エナメル質またはアパタイト(例えば、骨
)表面を、1つ以上の鉄ナノ粒子を含む有効量の組成物と接触させるステップを含むこと
ができる。ある実施形態では、1つ以上の鉄ナノ粒子は、表面に結合してエナメル質また
はアパタイトの溶解を阻害および/または防止する。

0049

本明細書に開示される主題はさらに、医療デバイスまたは料および/または船舶材料の
表面上において、バイオフィルムを処理および排除し、かつ/またはバイオフィルムの形
成を防止する方法を提供する。ある実施形態では、本方法は、医療デバイス、例えば、カ
テーテル、インプラント、人工関節、チューブ、移植デバイス、または、工業材料および
/または船舶材料、例えばパイプ、容器、リアクタタービンまたは船体を、本明細書中
に開示される組成物または配合物と接触させるステップを含むことができる。ある実施形
態では、上記方法は、医療デバイスまたは工業材料の表面を、酵素にコンジュゲートされ
たIO−NPまたはIO−NPを含む組成物または配合物と接触させるステップを含むこ
とができる。ある実施形態では、上記方法は、医療デバイスまたは工業材料の表面をH2
O2と接触させるステップをさらに含むことができる。ある実施形態では、本開示の組成
物または配合物を医療デバイスまたは工業材料および/または船舶材料を製造するための
材料に組み込み、医療デバイスまたは工業材料および/または船舶材料の表面上のバイオ
フィルムの形成を防止、最小化および/または低減することができる。

0050

キット
本明細書に開示される主題は、上記のバイオフィルムの処理および/または防止のため
のキットをさらに提供する。例えば、限定するものではないが、本開示のキットは、本明
細書に開示される1つ以上の組成物または配合物を、例えば、1つ以上の容器内に含むこ
とができる。

0051

ある実施形態では、キットは、本明細書に記載された1つ以上の組成物または配合物を
含む容器と、当該容器上のまたは当該容器と関連付けられたラベルまたは添付文書とを含
むことができる。ある実施形態では、本明細書に開示される主題のキットは、本開示の主
題のIO−NP組成物または配合物を含む容器を含むことができる。ある実施形態では、
本発明の主題のキットは、本明細書に開示された主題のIO−NP組成物または配合物を
含む第1の容器と、過酸化水素を含む第2の容器とを含むことができる。ある実施形態で
は、キットは、投薬レジメンなどの使用説明書をさらに含むことができる。適切な容器の
非限定的な例には、ボトルバイアル溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスやプ
ラスチックなどの様々な材料で形成することができる。

0052

以下の実施例は、本発明をより完全に説明するために提供されるが、本発明の範囲を限
定するものと解釈されるべきではない。

0053

実施例1
バイオフィルムは微生物が表面上に蓄積するにつれて発達し、エキソポリサッカリド
EPS)などのポリマー物質を含む細胞外マトリックス内に封入された構造化集団を形成
する。細胞外マトリックスは空間的・微環境的な不均一性を作り、またバイオフィルム内
拡散制限バリアを提供することにより、病原体の増殖および抗菌剤に対する防御を局所
的にモジュレートする。そのため、マトリックスはバイオフィルムおよびバイオフィルム
関連疾患の処理/治療に対する薬剤有効性を実質的に阻害する。

0054

複雑な口腔マイクロバイオーム内では、ストレプトコッカス・ミュータンス(s.mu
tans)が常に最も多く存在する生物であるとは限らないが、ストレプトコッカス・ミ
ュータンスは、スクロースに頻繁に曝されると、薄膜で被覆された歯の上において、薄膜
および細菌表面上のEPS合成を介する齲蝕原性バイオフィルムの形成を迅速に指揮する
ことができる。in situで形成されたEPSは、空間的に不均一な拡散を制限する
マトリックスを形成しながら、歯上への微生物の局所的な蓄積を促進する。並行して、糖
がマトリックスに埋め込まれた細菌によって発酵し、高酸性のミクロ環境が作り出される
図1)。齲蝕原性(酸耐性および酸産生)フローラが繁殖しつつ、低pHのニッチがE
PS合成を誘導する。その結果、局所的な酸性によって連続的なバイオフィルムの付着と
隣接歯のエナメル質の酸溶解が起こり、齲蝕が発症する。さらに、細胞外マトリックス
により形取られた局所的な細菌クラスターは抗菌剤に対して抵抗性となり、バイオフィル
ムの排除が極めて困難となる。マトリックスは薬物の有効性を阻害しつつ保護的な疾患発
症環境を作り出すため、これらのプロセスは他のバイオフィルムおよび関連する感染症を
代表するものである。

0055

バイオフィルムおよび微生物(例えば、EPS細胞外マトリックス内に取り込まれた微
生物)を効果的に排除するためには、酸性環境内で、抗バイオフィルム剤を局所的に保持
し、マトリックス構築物を破壊し、存在するマトリックスおよび/または標的の埋め込ま
れた細菌を分解する必要があろう。同時に、エナメル質の酸溶解は局所的に阻止されるべ
きである。本実施例は、病原性口腔バイオフィルムを排除するための、ペルオキシダーゼ
様活性などの生体模倣特性(Gao et al, Nature Nanotech, 2007)を有する酸化鉄ナノ粒
子(IO−NP;本明細書ではMNPおよびCAT−NPともいう)を含む抗バイオフィ
ルム剤を開示する。IO−NPは、そのナノ触媒特性、生物活性および安全性のために、
生物医学およびグリーンケミストリーの多くの分野において注目を集めている。さらに、
IO−NPは経済的であり(低コスト、製造容易)、環境に安全である(Hudson et al.,
Green Chemistry, 2014)。また、臨床用途FDA承認を受けた最初のナノ物質の1つ
でもある。

0056

この実施例の抗バイオフィルム組成物は、H2O2と相乗作用して齲蝕原性バイオフィ
ルムを効果的に破壊する生体模倣性(触媒性)およびpH応答性を有する生体適合性IO
−NPを使用するものであり、IO−NPを、低pHでEPS細胞外マトリックスを分解
できると共にバイオフィルム内の細菌を効果的に殺すことができるH2O2と併用したバ
イオフィルム排除のための刺激的革新的なアプローチを提供する(図1および図2)。

0057

IO−NPは、非常に低コストでスケールアップすることができる簡単かつ適切な手法
によって、容易に入手可能な材料を用いて合成することができる。IO−NPは従来の水
熱法(Gao et al., Nanoscale, 2014)によって生成した。簡潔に説明すると、塩化第二
鉄(FeCl3)および酢酸ナトリウムをオートクレーブ反応器中でエチレングリコール
と混合し、一定時間200℃でインキュベートする。その後、さらに適用するために、生
成したIO−NPを収集する。図3は、透過電子顕微鏡(TEM)下で視覚化した上記の
方法によって生成されたIO−NPを示す。

0058

H2O2と組み合わせたIO−NPの有効性を試験するために、十分に確立されたバイ
オフィルム形成性酸生成性・マトリックス生成性の口腔内病原体であるストレプトコッ
カス・ミュータンス(S.mutans)を用いて、唾液被覆ヒドロキシアパタイト(s
aliva coated hydroxyapatite;sHA)表面(歯のエナメ
様物質)上に成熟バイオフィルムを形成した。潜在的な臨床的治療レジメンシミュレ
ートするために、短時間(1分または5分)、低pH(4.5〜6.5)の低用量のH2
O2(≦0.5%)と組み合わせたIO−NPの局所適用を1日2回行った。IO−NP
はsHAに効果的に結合することができ、短時間の局所曝露にもかかわらず、バイオフィ
ルム内に保持された(図4)。

0059

図5Aに示されるように、H2O2と組み合わせたIO−NPの局所適用は、対照と比
較してバイオフィルム内に埋め込まれたS.mutansを有意に殺菌(>6−logの
減少)し、H2O2単独に対しては>4−logの減少を示し、生存細菌集団のほぼ全体
を排除した。さらに、H2O2と組み合わせたIO−NPは、齲蝕原性バイオフィルムマ
トリックスの主要なEPS成分である細胞外グルカンの分解を劇的に増加させることがで
き(図5B)、これは、バイオフィルムの構造的完全性を効果的に破壊し得る(Xiao et
al.,PLoS Pathog, 2012)。これらのデータは、多くの臨床用途で広く使用されている安
価で容易に入手可能な「グリーンケミカル物質」であるH2O2の抗菌効力および抗バイ
オフィルム活性を劇的に高めるIO−NPの可能性を実証している。

0060

低pHで効果的であることに加えて、IO−NPはまた、低pHで培地中の細菌の生存
を阻害する能力を有する。図6Aに示すように、S.mutansの増殖は、中性pHで
の細菌増殖と比較して、IO−NPを用いた酸性pH(pH5)で明らかに阻害された。
さらに、生理的温度(37℃)、低pH(pH4.5)でIO−NPから鉄が放出され(
図6B)、これは、酸性pHでの細菌増殖に対するIO−NPの阻害メカニズムを説明し
得る。さらに、図6Cに示すように、IO−NPはH2O2を触媒してフリーラジカルの
生成を劇的に増加させる(図6C)。これらのデータは、H2O2と組み合わせたIO−
NPが、病原性口腔バイオフィルム内に見出される酸性ミクロ環境下でフリーラジカルを
生成し得るという証拠となる

0061

図7に示すように、IO−NPはまた、ヒドロキシアパタイト(HA)ビーズの酸溶解
を同時にブロックすることができる。HAビーズは、未処理HAビーズと比較して、酸性
緩衝液中でのインキュベーション後にほぼ完全に溶解した(図7A〜B)。これとは全く
対照的に、HAビーズの酸溶解はIO−NPの存在下で大きく阻害され、これは、歯エナ
メル質の脱灰を防止するために、本開示の抗バイオフィルム組成物が使用できる可能性を
示している(図7C)。これらのデータは、本開示の抗バイオフィルム組成物が理想的な
抗バイオフィルム/齲蝕治療アプローチであり得ることを示す。これは、酸性ミクロ環境
下での脱灰を防ぎつつ、マトリックスの破壊を促進し、かつバイオフィルム内で抗菌作用
を有する包括的な多機能戦略統合する。特定の理論に拘束されることなく、上記抗バイ
オフィルム剤には以下の5つの生物学的特徴がある。すなわち、(1)IO−NP(すな
わち、MNP)はバイオフィルム形成のリスクのある表面である歯薄膜に効果的に結合し
、短時間の局所曝露後でもバイオフィルム内に保持されること;(2)IO−NPはpH
応答性であり、細菌増殖を抑制する鉄を酸性pHで放出すること;(3)IO−NPはH
2O2を触媒してマトリックス成分を効率的に分解するフリーラジカルを生成すること;
(4)IO−NPはバイオフィルム内に埋め込まれた細菌を迅速に殺菌することができる
こと;および、(5)アパタイトの脱灰を防止すること、である(図1)。

0062

本開示のIO−NP−H2O2アプローチは、バイオフィルム除去のための非常に有効
な戦略を提供することができる。IO−NPは、病原性口腔バイオフィルムを抑制するた
めの現在の化学的治療法よりも有利かつ効果的であり得る。第1に、IO−NPは、短時
間の局所曝露後であってもバイオフィルム内に結合・保持できる。第2に、IO−NPは
低濃度(0.1〜0.5%)のH2O2を迅速に触媒して、バイオフィルム・マトリッ
クスの破壊および埋め込まれた細菌の殺菌効力を高めるフリーラジカルを生成し、臨床治
療で典型的に使用されるH2O2の量を効果的に減少させることができる(最大10%)
。第3に、IO−NPにより開始される生物活性が酸性条件下で(正確に最も必要とされ
るときに)最も効果的となる、pH応答性プロセスであることである。第4に、歯エナメ
ル質および骨の脱灰の防止に重要である、ハイドロキシアパタイトの酸溶解を減少させる
ことができることである。さらに、IO−NPは、in situでのH2O2触媒作用
により歯の表面からのステイン除去を促進し得る。IO−NPおよびH2O2は、非常に
低コストで大規模に容易に合成することができる、FDAにより承認された持続可能な材
料であるため、練り歯磨きやマウスウォッシュを含む、様々な口腔ケア製品に組み込むこ
とができる。細胞外マトリックスや微生物殺菌の抵抗性は他のヒト疾患および産業関連問
題に関連するバイオフィルムの全てではないにしても大部分に内在するものであるため、
IO−NP−H2O2の使用は広範な適用性を有する。

0063

実施例2
口内へはアクセスが容易であるため、口腔バイオフィルムはバイオフィルム抑制の新し
概念を探索するための優れたモデルとなる。歯に形成された病原性バイオフィルムは、
EPS豊富なマトリックスの発達過程全体において、S.mutansなどの毒性種が如
何にして表面上に蓄積・保持されるかの例である(Koo et al., J Dent Res, 2013)。マ
トリックスに埋め込まれた病原体はpH値が4.5付近の高酸性のミクロ環境を生成し、
エナメル質−アパタイトの酸溶解をもたらし、齲蝕として知られる歯腐食プロセスの発症
および進行をもたらし得る(Koo et al., J Dent Res, 2013; Fejerskov et al., J Dent
Res, 1992)。これらの病理学的状態を模倣する実験モデルを用いることにより、本実施
例は、触媒ナノ粒子(CAT−NP)の抗バイオフィルムメカニズムおよびCAT−NP
のH2O2活性化有効性を実証する。本実施例はまた、H2O2と組み合わせたCAT−
NPがバイオフィルム関連口腔疾患の発症を防止する有効性を示す。

0064

バイオフィルム内の鉄ナノ粒子の効果的な保持および鉄ナノ粒子のin situの活
性は、インビボでの鉄ナノ粒子の生物学的有効性に寄与する(Hannig and Hannig, Natur
e Nanotechnol, 2010; Allaker and Memarzadeh, Int J. Antimicrob Agents, 2014)。
CAT−NPが短期曝露(5分または10分)の局所処置後にバイオフィルム内に保持さ
れているかどうかを調べるために以下の実験を行った。下記のとおりソルボサーマル法
よりCAT−NPを合成した(Gao et al., Nat Nanotechnol, 2007; Deng et al., Ange
w Chem Int Edit, 2005も参照)。この方法を用いて直径213±26nmの内在性ペル
オキシダーゼ様活性を有するナノ粒子を生成した(図8)。簡潔に説明すると、0.82
gのFeCl3を40mlのエチレングリコールに溶解して透明な溶液を得た。次いで、
3.6gのNaAcを30分間激しく撹拌しながら溶液に添加した。この混合物をテフ
ン(登録商標)で裏打ちされたステンレス鋼オートクレーブ(50ml)に移し、20
0℃で12時間インキュベートした。室温に冷却した後、沈殿物回収し、エタノール
数回リンスし、次いで60℃で3時間乾燥させた。走査型電子顕微鏡(SEM;Phil
ips XL−30フィールド、15kV)および透過型電子顕微鏡(TEM;HITA
CHI H7650、120kV)を用いて合成したナノ粒子の特性解析を行った。鉄ナ
ノ粒子のペルオキシダーゼ様活性を、20μgのCAT−NP、1%のH2O2および1
00μgのTMBを含む500μl NaOAc緩衝液(0.1M、pH4.5)の混合
物中で試験した。生成した青色は652nmの吸光度分光光度計により記録した。これ
らの条件はバイオフィルム上のCAT−NPの活性のアッセイにも使用した。CAT−N
Pの活性を確認するために、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)およびAMPLE
X(登録商標)UltraRed(Thermo−Fisher Scientific
;568/581nm)の2つの追加の基質も同じ反応条件下で使用した。化学物質およ
び材料は、別段の指定がない限り、Sigma−Aldrich社のものを使用した。

0065

十分に確立されたバイオフィルム形成性・酸生成性・マトリックス生成性の口腔内病原
体であるストレプトコッカス・ミュータンスを用いて、バイオフィルムを唾液被覆ヒドロ
シアパタイト(sHA)表面(歯エナメル質様物質)上に形成した(図9)。ヒドロキ
シアパタイトディスク(表面積2.7±0.2cm2)はClarkson Chrom
atographyから購入し、細菌株ストレプトコッカス・ミュータンスUA159は
ATCCから購入した。このバイオフィルム法は、唾液被覆ハイドロキシアパタイト(s
HA)ディスクモデルに基づく(Xiao et al.,PLoS Pathog. 2012; Klein et al., J Vi
s Exp. 2011; Falsetta et al., Infect Immun., 2014; Koo et al., J Bacteriol, 2010
; Koo et al., J Antimicrob Chemother, 2003を参照)。ハイドロキシアパタイトディ
クをフィルター滅菌した浄化全唾液でコーティングし、歯の自由な平滑表面を模倣するよ
うに設計されたカスタムメイドワイヤーディスクホルダーを用いて24ウェルプレート
に垂直に懸濁した(図9)(Klein et al., J Vis Exp. 2011)。ストレプトコッカス・
ミュータンスUA159細胞を、1%スクロースを含有する限外濾過(10−kDaカッ
トオフ;Millipore、Billerica、MA)トリプトン酵母抽出物(U
FYTE)ブロス中、37℃、5%CO2で、中間指数増殖期まで増殖させた。各sHA
ディスクを、ストレプトコッカス.ミュータンス(105CFU /ml)の規定された
微生物集団を有する接種材料を含む1%(w/v)スクロースを含む2.8mlのUFY
TE培地に入れ、37℃、5%CO2で19時間インキュベートした。実験期間(43時
間)が終了するまで、培地を新鮮な培地と1日2回交換した(19時間目および29時間
目)。特定の時点(19時間、29時間および43時間)で、バイオフィルムを収集し、
共焦点蛍光イメージング微生物学的分析および生化学分析によって分析した(Xiao e
t al., PLoS Pathog. 2012; Klein et al., J Vis Exp.2011; Falsetta et al., Infect
Immun., 2014; Koo et al., J Bacteriol, 2010; Koo et al., J Antimicrob Chemother,
2003)。

0066

病原性の状態を模倣するために、スクロースの存在下でバイオフィルムを形成する。ス
クロースは、エキソポリサッカライド(EPS)合成および酸生成(pH値はこのバイオ
フィルムモデルにおいて4.5〜5.0に達し、ヒトの病変部位におけるプラークのpH
と一致する)の基質を提供する(Koo et al., J Dent Res. 2013)。走査型電子顕微鏡法
(図10A1)、エネルギー分散型分光法(EDS)(図10A2)、および、誘導結合
プラズマ発光分析法(ICP−OES)(図10B)はすべて、CAT−NPがバイオフ
ィルムに結合することを示した。バイオフィルムへのCAT−NPの最大結合は、0.5
mg/mlの濃度で達成された(図10B)。

0067

バイオフィルム内のCAT−NP結合の定量的評価誘導結合プラズマ発光分析法(I
CP−OES)を用いて行った。簡潔に説明すると、特定の時点において、室温で5分ま
たは10分間、0.1M NaOAc(pH4.5)中のCAT−NP(0mg/ml、
0.125mg/ml、0.25mg/ml、0.5mg/ml、1mg/mlまたは2
mg/ml)でバイオフィルムを処理した(図9)。バイオフィルムをsHAディスクか
ら取り出し、標準的な水浴超音波処理、その後のプローブ音波処理によってホモジナイズ
した(Xiao et al.,PLoS Pathog, 2012)。懸濁液を遠心分離し、バイオフィルムペレッ
トを水で2回洗浄して非結合物質を除去した。次いでペレットを60℃で一晩、250μ
lの王水(HCl/HNO3=3:1)で溶解した(Naha et al., J Mater. Chem. Biol
. Med., 2014)。次いで、4.75mlのMilli−Q水を加え、サンプルの鉄含有量
をICP−OESによりについて分析した。別個の実験でintactなバイオフィルム
環境制御型SEMで検査し、同じSEM上でエネルギー分散分光法(EDS)によって
鉄の量を分析した。

0068

intactなバイオフィルムの3次元アーキテクチャ内のCAT−NPの保持および
空間分布を決定するために、多光子共焦点顕微鏡法およびコンピュータ分析を用いた(Xi
ao et al.,PLoS Pathog. 2012; Klein et al., J Vis Exp, 2011; Koo et al., J Bacte
riol, 2010)。1μMのAlexa Fluor 647標識デキストランコンジュゲー
ト(10kDa;647/668nm;Molecular Probes Inc.,
Invitrogen Corp.,Carlsbad、CA、USA)を用いてエキソ
ポリサッカライド(EPS)(赤色)を標識し、細菌(緑色)を2.5μMのSYTO
9(485/498nm;Molecular Probes Inc.)で染色した。
CAT−NP(白色)は、多光子共焦点顕微鏡法を用いて、それらの固有非線形光学
性により検出した(Xiao et al., PLoS Pathog, 2012; Klein et al., J Vis Exp, 2011;
Liao et al., Adv Funct Mater, 2013; Koo et al., J Bacteriol, 2010; Liao et al.,
Adv Funct Mater, 2013)。画像化は20×LPlan N(開口数1.05)の水浸
レンズを備えたLeica SP5多光子共焦点顕微鏡を用いて行った。励起波長は7
80nmであり、SYTO 9の検出に使用した発光波長フィルタは495/540 O
lyMPFC1フィルタであり、また、Alexa Fluor 647の検出に使用し
たフィルタはHQ655/40M−2pフィルタである。CAT−NPの励起波長は91
0nmであり、これは、SYTO 9またはAlexa Fluor647を励起しない
ソフトウェアを用いて共焦点画像を分析し、intactなバイオフィルム内のEPS
、細菌細胞およびCAT−NPを同時に可視化および定量化した。Amira 5.0.
2ソフトウェア・プラットフォーム(Mercury Computer System
s Inc.,Chelmsford,MS)を使用して、バイオフィルム内の各成分(
EPS、細菌およびCAT−NP)の三次元レンダリングを作成し、三次元アーテク
ャを視覚化した。COMSTATおよびImageJを使用して従来のとおりに定量分析
した(Xiao et al., PLoS Pathog. 2012; Klein et al., J Vis Exp. 2011; Koo et al.,
J Bacteriol, 2010)。

0069

図10Cに示すように、in situイメージングにより、CAT−NPが局所処理
後にバイオフィルム構造全体に効果的に保持されることが明らかとなった。バイオフィル
ムの厚さ全体(トップからボトムまで)の定量分析により、EPSおよび細菌バイオマス
の両方が最も多い25〜150μmの深さの位置にナノ粒子の大部分が見出されたことが
示された(図10D)。

0070

バイオフィルムに結合したCAT−NPが酸性pH(pH4.5)でH2O2を迅速に
触媒してin situでフリーラジカルを生成できるかどうかを調べるために、3,3
’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を用いた比色法を用いた(Gao et al.
, Nat Nanotechnol. 2007)。バイオフィルムに結合したナノ粒子は、H2O2の存在下
でTMB(ペルオキシダーゼ基質として働く)の反応を触媒し、フリーラジカル生成の結
果として青色を生成した(図10E)。青色は652nmで最大吸光度を有する。CAT
−NPで処理したバイオフィルムにペルオキシダーゼ様活性が存在するかさらに確認する
ために、さらなるペルオキシダーゼ基質(ジアゾアミノベンゼン)を用いて実験を繰り
返した(図11)。

0071

バイオフィルム内に吸着したCAT−NP量と一致して、試験条件下、0.5〜2.0
mg/mlの濃度において最大触媒活性が達成された(図10E)。CAT−NPによる
H2O2触媒作用はpHに依存する(Gao et al., Nat Nanotechnol, 2007)。したがっ
て、バイオフィルムに結合したCAT−NPのペルオキシダーゼ様活性をpH値4.5〜
6.5の範囲の緩衝液中で測定した。図10Fに示すように、バイオフィルムに結合した
CAT−NPは、酸性pH(4.5〜5.5)でより大きい触媒効率を発揮し、これは病
理学的条件で見出されるpH値と一致する(Mercier et al., J Antimicrob Chemother,
2002; Poschet et al. TrendsMol Med, 2002; Fejerskov et al., J Dent Res, 1992)
。これらのデータは、短時間の局所適用後に、CAT−NPがバイオフィルム内に保持さ
れ、in situでH2O2のpH応答性触媒作用を示したことを示す。

0072

CAT−NP介在型のH2O2触媒作用およびin situでのフリーラジカルの生
成が、バイオフィルム内に埋め込まれた細菌を殺菌し、またEPSマトリックスを分解す
ることができるかどうかを調べるために、以下の実験を行った。CAT−NP/H2O2
コンビネーションの抗バイオフィルム有効性を評価するために下記4つの処理液を調製し
た:対照(0.1M NaOAc、pH4.5)、CAT−NP単独(0.1M NaO
Ac、pH4.5中、0.5mg/ml)、1%H2O2(0.1M NaOAc、pH
4.5)、CAT−NP+H2O2(0.1M NaOAc、pH4.5中、1%H2O
2と0.5mg/mlのCAT−NP)。CAT−NP(0.5mg/ml)で処理した
バイオフィルムを直ちにH2O2(0.1〜1%、v/v)に暴露し、生存細胞数および
EPS含量を決定した(図13Aおよび図14)。

0073

sHAディスクおよびバイオフィルムを各溶液で5分間または10分間局所処置し、滅
菌生理食塩水(0.89%NaCl)で3回洗浄して非結合物質を除去し、次いで培地に
移した(図9)。最初の処理を唾液薄膜形成(sHA)の直後に施し、処理sHAディス
クをストレプトコッカス.ミュータンスを含む培地(105 CFU/ml)に移した。
バイオフィルムをsHAディスク上に6時間形成させ、その時点で二回目の処理を施した
。翌日、バイオフィルムを1日2回(19時間目および29時間目に)処理した。実験期
間(43時間)の終わりに、各バイオフィルム中の生存細胞の総数を、形成されたコロニ
ーの数を数えることによって評価した(Koo et al., J Bacteriol, 2010; Klein et al.,
J Vis Exp, 2011; Koo et al., J Antimicrob Chemother, 2003)。CFUおよび乾燥重
量を評価するため、バイオフィルムをsHAディスクから除去し、最大回収可能生菌カウ
ントを得つつ、細菌細胞を死滅させない標準的な超音波処理によってホモジナイズした。
均質化されたバイオフィルム懸濁液のアリコートを連続希釈し、血液寒天プレート上に播
種し、48時間のインキュベーション後に、コロニー目視で計数した。残りのバイオフ
ィルム懸濁液をMilli−Q水で2回洗浄し、(予め量したフォイルボート内で)
2時間オーブン乾燥し、秤量した。

0074

図13Aおよび図14に示すように、バイオフィルム内のストレプトコッカス・ミュー
タンス(S.mutans)に対する非常に強い殺生物効果があり、5分で>99.9%
の細菌が死滅した。1%H2O2曝露と組み合わせたCAT−NPは、対照バイオフィル
ムまたはH2O2を含まないCAT−NP処理バイオフィルムと比較して、生存細胞の数
が>5−log減少した(図13A)。図13Aに示されるように、CAT−NPおよび
H2O2の組み合わせは、H2O2単独よりも、ストレプトコッカス.ミュータンスの殺
菌に対して>5,000倍効果があり、これは、CAT−NPとH2O2との間に殺菌効
力を増強する明らかな相乗効果があることを示している。

0075

H2O2触媒作用により生成したフリーラジカルがインビトロで多糖類を分解すること
もできることを考慮し(Gao et al., Nanoscale, 2014)、H2O2暴露後、CAT−N
P処理バイオフィルム中のEPS量を分析した。EPS分解の評価のために、精製グルコ
シルトランスフェラーゼ(GtfBまたはGtfD)によって産生された100μgの(
不溶性または可溶性)グルカン(Koo et al., Antimicrob Agents Chemother, 2002)を
処理溶液(0.1M NaOAc、pH4.5)と混合し、37℃で30分間インキュ
ベートした。グルカンは以下のように製造した。各Gtf酵素(10U)をスクロース基
質緩衝液(100mMスクロース、20μMデキストラン9,000、50mM KC
l、1.0mM KPO4,1.0mM CaCl2、0.1mM MgCl2、pH6
.5)と混合し、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、産生され
たグルカンを遠心分離によって集め、洗浄し、総量を標準的なフェノール硫酸比色アッ
セイにより求めた(Koo et al., J Antimicrob Chemother, 2003; Koo et al., Antimicr
ob Agents Chemother, 2002)。100μgのグルカンを各処理溶液(0.1M NaO
Ac、pH4.5中、300μlの総反応容量)と混合し、振盪しながら37℃で30分
間インキュベートした。インキュベーション後、Somogyi−Nelson比色分析
によって還元糖の量を決定した。

0076

図13Bに示すように、不溶性EPSの量と、また、それほどではないが可溶性EPS
の量は、CAT−NPおよびH2O2の存在下では、対照と比較して、あるいはH2O2
またはCAT−NP単独での処理と比較して、有意に減少した。不溶性EPSは主にα1
,3結合型グルカンで構成され、可溶性EPSは主にα1,6結合型グルカンであり、両
者が産生される(Bowen and Koo, Caries Res, 2011)。そのため、GtfB(α1,3
結合グルカンを合成)およびGtfD(α1,6結合型グルカンを合成)によって産生さ
れた精製細胞外グルカンがH2O2の存在下または非存在下でCAT−NPとのインキュ
ベーション後に分解されるかどうかをさらに分析した。図13Cは両方のグルカン(特に
GtfB由来のもの)が分解されたことを示し、これはCAT−NP/H2O2処理後に
当該多糖類から放出されたグルコースの量を測定して決定した。対照的に、H2O2単独
またはCAT−NP単独ではいずれもグルカンを切断することができず、バイオフィルム
内でEPSを減少させることができないという観察と一致した。グルカンまたは同等の多
糖類は他のバイオフィルムの多くのマトリックスのコアを形成するため(Flemming and W
ingender, Nat Rev Microbiol, 2010; Koo et al., J Dent Res. 2013)不溶性EPSの
分解は非常に関係しており、また、齲蝕および他のバイオフィルム関連疾患に関連してい
る(Hall-Stoodley et al., Nat Rev Microbiol, 2004; Flemming and Wingender, Nat R
ev Microbiol, 2010; Lebeaux et al., Microbiol Mol Biol Rev, 2014; Koo et al., J
Dent Res, 2013; Bowen and Koo, Caries Res, 2011)。まとめると、このインビトロ・
データは、CAT−NPとH2O2との組み合わせは有害なバイオフィルムを有意に抑制
できることを示唆している。

0077

CAT−NPがバイオフィルム内に保持され、H2O2をin situで触媒してバ
イオフィルム破壊を促進することが示されたことから、1日2回、CAT−NP(0.5
mg/ml)で局所処置した直後にH2O2(1%、w/v)に暴露する(CAT−NP
/H2O2)、臨床的に実現可能な併用療法が開発された。H2O2と組み合わせたCA
T−NPによってバイオフィルムが破壊され得るか否かを評価するために、この治療レジ
メンをまずインビトロで試験した。共焦点顕微鏡によるイメージングによって、CAT−
NP/H2O2による処理が細菌細胞(緑色)の蓄積およびEPS−マトリックス(赤色
)の発達の両方を害することが明らかとなった(図13Dおよび図15)。対照的に、C
AT−NPまたはH2O2単独による局所処理では、これらの薬剤を併用した場合の相乗
的増強と一致して、インビトロでは抗バイオフィルム効果が制限された。

0078

実施例3
齲蝕のげっ歯類モデルを使用して、CAT−NP/H2O2のインビボでの有効性を試
験し、またCAT−NP/H2O2がインビボで齲蝕の発症および重症度を抑制できるか
どうかを決定した(Bowen, Odontology, 2013; Falsetta et al., Infect Immun, 2014;
Horev et al., ACS Nano, 2015)。

0079

簡単に説明すると、十分に確立された齲蝕のげっ歯類モデルで動物実験を行った(Bowe
n, Odontology, 2013; Falsetta et al., Infect Immun, 2014; Horev, ACS Nano, 2015;
Koo et al., J Dent Res, 2005)。すなわち、15日齢のSprague−Dawle
yラットをHarlan Laboratories(Madison、WI、USA)
からダムと共に購入し、ストレプトコッカス.ミュータンスの感染についてスクリーニン
グした。接種前にストレプトコッカス.ミュータンスに感染していた全ての動物を研究か
ら排除した。次いで、動物を、ストレプトコッカス.ミュータンスUA159の活発増殖
対数中期培養物を用いて口腔感染させ、感染を口腔スワブチェックした。感染させ
た動物をランダムに4つの処置群(12匹/群)に分け、歯をカスタムメイドのアプリケ
ータを用いて1日2回局所的に処置した。処置群は下記の通りである:(1)対照(0.
1M NaOAc、pH4.5)、(2)CAT−NP単独(0.1M NaOAc、p
H4.5中、0.5mg/ml)、(3)1%H2O2(0.1M NaOAc、pH4
.5)、(4)CAT−NP+H2O2(0.1M NaOAc、pH4.5中、1%H
2O2と0.5mg/mlのCAT−NP)。臨床使用をシミュレートするために、薬剤
は、短時間(30秒)で、3週間毎日2回、局所適用した(経口;各ラット100μL)

0080

各群には、National Institutes of Healthの齲蝕原性
食餌2000および5%スクロース水を自由に与えた。実験は3週間続けた。すべての動
物の体重を毎週測定し、また身体の外観を毎日記録した。すべての動物は実験群の間で等
しく体重が増加し、また実験期間中の状態は良好であった。実験期間の終わりに、動物を
屠殺し、外科的に除去し、切り裂いた。全ての顎から肉を除去し、Keyesのシス
テムのLarson改良に従って齲蝕を評価するために歯を準備した(Larson, Animal m
odels in cariology: symposium and workshop proceedings special supplement of mic
robiology abstracts, 1981; Bowen, Odontology, 2013; Falsetta et al., Infect Immu
n, 2014; Horev, ACS Nano, 2015を参照)。顎の齲蝕スコアの決定は、キャリブレート
された1人の試験官によって行われた。さらに、歯肉組織および口蓋組織の両方を採取
組織病理学的分析のためにヘマトキシリンおよびエオシンHE染色処理した。

0081

この動物モデルでは、歯は、エナメル質脱灰の最初の領域(図16A、緑色の矢印)か
らさらに破壊(青色の矢印)に進んで齲蝕病変(ヒトで観察されるものに類似)を発症し
、キャビテーションにより特徴付けられる最も重篤な病変(赤色の矢印)が生じた。齲蝕
の発症に対するCAT−NP/H2O2処理の効果は顕著であった。定量的齲蝕スコアリ
ング分析により、CAT−NP/H2O2は、病変の発現および重症度の両方をビヒクル
対照に対して有意に軽減し(図16B)、また広範なエナメル質の損傷を完全にブロック
し、それによりキャビテーションの発症を防止することが明らかとなった。対照的に、H
2O2単独での処置は有意な効果がなかったが、CAT−NP単独での処置は、齲蝕病変
の重篤度をビヒクル対照と比較して若干低減させた(図16Aおよび図16B)。CAT
−NP/H2O2の優れた齲蝕防止効果は、臨床関連モデルにおけるインビボ有効性の強
力な証拠を提供する。さらに、CAT−NP/H2O2を局所適用したラットでは有害な
影響は観察されなかった。特に、CAT−NP/H2O2処置動物由来の歯肉組織および
口蓋組織の組織病理学的分析は、未処置(またはビヒクル処置)動物と比較した場合、増
殖の変化、炎症反応および/または壊死などの細胞毒性作用兆候を示さなかった(図1
7)。

0082

上に示したとおり、CAT−NP単独の処置は齲蝕病変の重篤度をある程度低下させた
。特定の理論に縛られることなく、鉄イオンが、鉄イオンの抗菌効果に加えて、エナメル
質の脱灰プロセスを妨害することによって齲蝕を抑制すると思われる(Rosalen et al.,
Arch Oral Biol, 1996; Pecharki et al., Caries Res, 2005; Delbem et al., Caries R
es, 2012; Ribeiro et al., Braz Oral Res, 2012)。酸性pH(4.5)でインキュベ
ートした場合、鉄イオンは数分以内でCAT−NPから迅速に放出することができるが、
pH7.0では放出されない(図18A)。

0083

CAT−NPが酸性pHで鉄を放出することによってアパタイトの酸溶解を低減させる
ことができるかどうかを調べるために、以下の唾液被覆HAビーズ酸溶解アッセイおよび
鉄放出アッセイを使用した。ハイドロキシアパタイト(BioRad Laborato
ries)ビーズを濾過滅菌した浄化全唾液でコーティングして唾液被覆ハイドロキシ
パタイト(sHA)を得た(Koo et al., Antimicrob Agents Chemother, 2002; Gregoir
e et al., Appl Environ Microbiol, 2011; Ambatipudi et al., J Proteome Res, 2010
)。sHA酸溶解アッセイのために、10mgのsHAビーズを0.5mg/mlのCA
T−NPを含有する0.1M NaOAc緩衝液(pH4.5)1ml中、2時間室温で
振盪しながらインキュベートした。次いで、上清を除去し、sHAビーズを1mlの新し
い酸性NaOAc緩衝液に再懸濁し、上記のとおりインキュベートした。このプロセスを
6回繰り返した。同じ手順をCAT−NPを含まないsHAビーズ(対照)で行った。酸
溶解の直前および直後のsHAのアリコートを採取し、光学顕微鏡(OM)およびSEM
により分析した。並行して、残りのsHAビーズを遠心分離によって収集し、オーブン
燥し、その乾燥重量を測定するために秤量した。CAT−NPで処理したsHAの残りの
乾燥重量を対照群と比較して、CAT−NPの脱灰減少効率を評価した。鉄放出アッセイ
のために、0.5mg/mlのCAT−NPを0.1M NaOAc(pH4.5)中、
室温で0分間、3分間、5分間、10分間、30分間、60分間、120分間インキュベ
ートした。混合物を10,000gで5分間遠心分離し、上清を回収して、鉄濃度をIr
on Assay Kit(Sigma−Aldrich)を製造元プロトコールに従
って測定した。対照として、0.1M NaOAc(pH7)中で放出された鉄の量を上
記と同じ手順を用いて測定した。

0084

図18Bおよび図18Cは、CAT−NPの存在下または非存在下で、酸性酢酸ナトリ
ウム緩衝液(pH4.5)中でインキュベートし、次いでSEMで調べ、酸インキュベー
ション後に残留した唾被覆ヒドロキシアパタイト(sHA)ビーズの量を分析して測定し
た唾被覆ヒドロキシアパタイト(sHA)ビーズのグラフを示す。図18Bに示すように
、CAT−NPで処理しなかったsHAビーズは、ほとんど完全に溶解した。対照的に、
sHAの酸溶解はCAT−NPの存在下で減少した(図18B)。これらの知見は、CA
T−NPが、アパタイトの酸溶解を低減させることによる齲蝕防止の更なる機序を提供し
得ることを示唆している。上記実験データの統計解析SAS9.5(SAS Inst
itute)を用いて行った(Falsetta et al., Infect Immun, 2014)。

0085

抗菌性ナノ粒子などの現在の治療アプローチは、主として細菌の活性阻害や細菌の死滅
焦点を当てており、バイオフィルムによって引き起こされる感染に対するそれらの有効
性を制限し得る保護性バイオフィルム・マトリックスや酸性ミクロ環境の存在に対処して
いない(Lebeaux et al., Microbiol Mol Biol Rev, 2014; Allaker and Memarzadeh, In
t J Antimicrob Agents, 2014)。

0086

本開示は、臨床的に意義のあるin vivoモデルにおいてバイオフィルム関連疾患
対抗するためにナノ粒子がどのように利用され得るかに関する証拠を提示する。図1
生体適合性・pH応答性戦略をまとめたものであり以下の4つの主要な特徴を有する。す
なわち、(1)短時間の局所暴露後にCAT−NPが三次元バイオフィルム構造内に保持
され、(2)CAT−NPは酸性pHでH2O2を速やかに触媒してin situでフ
リーラジカルを生成し、(3)同時にフリーラジカルはEPSを分解し、(4)バイオフ
ィルム内に埋め込まれた細菌を殺菌することである。さらに、CAT−NPは、酸性pH
で、アパタイトの脱灰を低下させる鉄イオンを放出し、これはバイオフィルム関連骨疾患
に対して潜在的な価値があり得る(Katsarelis et al., J Dent Res, 2015; Arciola et
al, Adv Exp Med Biol, 2015)。CAT−NPは、インビボで正常組織に影響を与えずに
、一般的なバイオフィルム関連疾患の発症を抑制し得る。Cat−NPは大規模かつ低コ
ストで合成できる一方、CAT−NP化学の柔軟性は、触媒性能をさらに向上させること
ができる更なるナノクリスタルコアの開発につながり得る(図19)。したがって、この
アプローチは、口腔疾患および他のヒト感染症、ならびに、工業における生物生着および
海の生物付着に対して局所使用するナノ触媒ベースの抗バイオフィルム治療剤を開発する
ための実現可能な新しいプラットフォームとなる可能性がある。

0087

実施例4
この実施例では、IO−NP合成化学の柔軟性を利用してIO−NPの保持、触媒活性
および脱灰ブロック効果をさらに向上させ、その結果、インビトロでのバイオフィルム抑
制に対するIO−NP/H2O2システムの有効性を最適化する。

0088

ナノ粒子によるH2O2触媒作用の速度およびレベルを高めるために様々な金属塩(M
nCl2など)をIO−NP構造に組み込むことができる。さらに、IO−NPは、歯/
バイオフィルム界面およびバイオフィルム内のIO−NPの保持を高める目的で、生体適
合性デキストランのバリエーションでコーティングすることができる。非晶質リン酸カル
シウムをIO−NPに添加して、酸性pHでのエナメル質脱灰に対する効果を改善するこ
とができる。最適化されたIO−NPの有効性はインビトロで評価することができ、また
現行のIO−NPに対して)最も有効なナノ粒子をさらなる評価のために選択すること
ができる。

0089

この実施例では、(保持強化のための)デキストランの表面コーティングおよび(触媒
作用強化のための)様々なドーパント材料を有する新規ナノクリスタルコアの小さなライ
ブラリーを製造した。以下に論じるデータは、かかる改変が可能であり、本開示の治療ア
ローチの有効性を高め得ることを実証する。様々なIO−NP配合物およびドープIO
−NP配合物を下記表1に示す。表1に示すデキストラン被覆酸化鉄ナノ粒子は、従来の
とおり合成した(Naha et al., J Mater Chem Biol Med, 2014)。簡単に説明すると、1
2.5gのデキストラン(分子量:10,000)を25mlの脱イオン水に溶解した。
得られた溶液を氷浴に入れ、攪拌しながら30分間窒素ガスパージして、フラスコから
酸素を完全に除去した。各配合物について、980mgの塩化第二鉄および360mgの
塩化第一鉄デキストラン溶液に添加した。シリンジポンプを用いて、15mlの濃縮水
酸化アンモニウムを6時間かけてデキストラン−鉄溶液に添加した。次いで、ナノ粒子懸
濁液を90℃に1時間加熱し、次いで室温で一晩攪拌した。得られたナノ粒子懸濁液を2
0k rcfで30分間遠心分離して凝集物を除去した。IO−NP含有上清を集め、1
5mlに濃縮し、100kDa MWダイアフィルトレーションカラムを用いてクエン酸
緩衝生理食塩水で洗浄した。様々な分子量の非修飾デキストラン(1kDa、5kDa、
10kDa、20kDaおよび40kDa)で被覆したIO−NPを合成した。

0090

表1:デキストラン被覆IO−NP配合物およびドープIO−NP配合物の合成および
特性評価

0091

新しく開発したナノ粒子は新規なものであるが、これらは、生体適合性が高く、また既
MRI造影剤として臨床的に認可されている材料をベースとしている(Fan et al., Wi
res Nanomed Nanobi, 2013)。ドーパント金属はIO−NPの触媒活性を高めることが示
され(例えば、MnCl2)、体内に見出される。さらに、ナノ粒子は大規模に合成する
ことができ、最終生成物は非常に手である。したがって、開示されたシステムの臨床用
途の可能性は大きい。

0092

酸化鉄ナノ粒子は、Feridex、CombidexおよびFerahemeなど、
患者での使用が認可されているデキストラン被覆酸化鉄ナノ粒子をベースとしている(Wa
ng, Quantitative imaging in medicine and surgery, 2011)。これらの酸化鉄ナノ粒子
は、無害天然物質(すなわち、鉄および糖分子)に分解するため、生体適合性が高いと
見なされている(Tassa et al., Accounts of chemical research, 2011; Koo et al., J
ournal of bacteriology, 2010)。プラットフォームを改善・最適化するために、コーテ
ィング、コアのドーピング、および、リン酸カルシウム含有、の3つの修飾を行うことの
効果を調査できる(図20)。

0093

コーティングがIO−NPの活性に及ぼす効果を調べるために、デキストラン被覆酸化
鉄ナノ粒子を上記のように合成することができる(Naha et al., J Mater Chem Biol Med
, 2014)。様々な分子量の未修飾デキストラン(1kDa、5kDa、10kDa、20
kDaおよび40kDa)または修飾デキストラン(例えば、アミノ化、架橋、カルボ
シおよびジエチルアミノエチル)被覆IO−NPを合成する。 また、臨床的に利用可
な製剤であるFerahemeも研究する。デキストランコーティングの種類を変化させ
ると、H2O2のナノ粒子表面へのアクセス性が変化し、これは触媒性能を変化させ得る
。IO−NPコーティングがH2O2の触媒作用に及ぼす効果を前述のTMBアッセイを
用いて測定した。図19B(薄灰色のバー)は、デキストラン被覆酸化鉄が過酸化水素の
活性化を触媒すること、および、デキストランは被覆を有していないIO−NPに最も近
い触媒活性を提供する生体適合性コーティングであることを示している。さらに、様々な
タイプのデキストランコーティングが歯/バイオフィルム界面およびEPS豊富な齲蝕原
性バイオフィルム内でのIO−NP保持を高め得る。従前の研究により、歯薄膜上に存在
するストレプトコッカス・ミュータンス由来のグルコシルトランスフェラーゼ(Gtfs
)によるEPS合成に外因性デキストランがプライマーとして使用され得、バイオフィル
ムの発生に、触媒活性に影響を及ぼすことなく(Gao et al., Nat Nanotechnol, 2007)
、マトリックスに組み込まれ得ることが示されている(Xiao et al.,PLoS pathogens, 2
012; Bowen and Koo, Caries research, 2006; Koo et al., Journal of dental researc
h, 2013)。さらに、グルカン同士の接着相互作用を介して保持が増強され得る(図21
)(Xiao et al., PLoS pathogens, 2012; Bowen and Koo, Caries research, 2011; Koo
et al., Journal of dental research, 2013; Banas and Vickerman, Critical reviews
in oral biology and medicine: an official publication of the American Associati
on of Oral Biologists, 2003)。

0094

IO−NPコアの金属ドーピング効果を調べるために、以下の方法を用いることができ
る。MnCl2、CoCl2およびNiCl2(1%、5%、10%および20%、また
はそれ以上)などの様々な割合のドーパント金属塩をコアに含有させて合成を行う。ドー
パント金属の添加は触媒性能を向上させる戦略である(Mohamed et al., Mat Sci Eng R,
2012; Bin Asif et al., Nanoscale research letters, 2014; Wang et al., Journal o
f Molecular Catalysis a-Chemical, 2013)。20%Mnドープデキストラン被覆IO−
NPを合成し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によりMnの含有量を確認
した。図19Bは、過酸化水素の活性化速度未ドープのIO−NPと比較して4.7倍
増加したことを示す。このプロセスにより、元のIO−NP、例えばドープされたコアを
有さないIO−NPと比較して、大幅に改善された触媒性能を有するコアを開発すること
ができる。

0095

IO−NPは、ナノ粒子の脱灰ブロック効果を向上させ(かつ場合によっては再石灰化
を促進する)ために、添加剤としてのリン酸カルシウムを含有させて修飾することができ
る。IO−NP溶液を硝酸カルシウムと混合し、次いでリン酸カリウムを1.67:1の
Ca:P比滴下することにより、リン酸カルシウムをIO−NPに含有させることがで
きる(Sun et al., J Res Natl Inst Stan, 2010; Liou et al., Biomaterials, 2004)
。リン酸カルシウムに対するIO−NPの比率を変更することによってバリエーションを
合成することができる。脱灰ブロック、IO−NP保持およびH2O2触媒作用に対する
リン酸カルシウムの効果を調べることができる。あるいは、上記のドーピング法によって
、または逆マイクロエマルジョン合成法(Kong et al., Curr Appl Phys, 2005)を使用
してカルシウムを含有させることができる。また、リン酸カルシウムを含有させることが
ナノ粒子の触媒活性に著しく悪影響を与える場合、リン酸カルシウムナノ粒子(CP−N
P)を別途作製しておき、IO−NPおよびCP−NPの混合物を適用することができる
。これらのIO−NPは、透過型電子顕微鏡(TEM、FEITecnai T12)
、動的光散乱(DLS)によるサイズの特性解析、またゼータ電位(Zetasizer
ZS90、Malvern Instruments)の特性解析ができ、濃度はIC
P−MSを用いて決定することができる(Naha et al., J Mater Chem, 2014)。これら
の分析により、ナノ粒子の標準化されたサイズおよび濃度が保証される。これらの様々な
パラメーターの最適化は後述するアッセイを用いて行うことができ、最良の特徴(例えば
、リン酸カルシウムを含む改変されたコーティングを有するドープコア)を組み合わせた
IO−NPを合成することができる。

0096

以下の方法を用いて修飾IO−NPの触媒活性および生物活性を評価することができる
。ナノ粒子がH2O2活性化触媒として機能する能力は、ルミノールアッセイを用いた経
時的な発光強度の測定により評価される。簡潔に説明すると、ナノ粒子を過酸化水素およ
びルミノールと最大10分間混合する。過酸化水素は酸化鉄ナノ粒子表面上で反応して、
ルミノールを活性化させて光を生成するラジカルを生成する(Triantis et al., Chem En
g J, 2008)。図21はルミノールアッセイからのデータを示す。最良の触媒は最も強い
発光を生じる。ルミノールアッセイはまた、基質として3,3’,5,5’−テトラメチ
ベンジジン(TMB)を使用する確立された比色法で補完される。TMBはIO−NP
によって触媒されるフリーラジカルと反応した後、652nmに特異的な吸収を有する青
色を経時で生成する(Gao et al., Nat Nanotechnol, 2007)。全てのナノ粒子を同じ条
件下(すなわち、上で使用したように0.5mg/mlおよび0.5%H2O2)で試験
して、触媒速度および触媒レベルに関して活性を比較する。スクリーニング吸着緩衝液
(唾液のイオン強度を模倣する)および浄化ヒト全唾液(生物学的環境をシミュレートす
るため)で行う(Horev et al., ACS nano, 2015)。その後選択されるリードナノ粒子候
補について、最小の用量で最大の有効性を達成するために、様々なIO−NPおよびH2
O2濃度の組み合わせを試験することができる。

0097

IO−NP保持アッセイには、以下の方法を用いることができる。バイオフィルム内の
ナノ粒子の保持は、唾液被覆ヒドロキシアパタイトバイオフィルムモデルを用いて評価さ
れる。臨床治療レジメンをシミュレートするために、各IO−NP(0.5mg/ml)
の短時間の暴露(1分または5分)を1日2回する局所適用が使用される。局所処理され
たバイオフィルムを洗浄して、未結合または緩く結合したIO−NPを除去する。次いで
、バイオフィルムを除去し、ホモジナイズする(Bowen and Koo, Caries research, 2011
; Koo et al., J Antimicrob Chemoth, 2003)。バイオフィルム内に保持されているIO
−NPの量は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)(Naha et al., J Mater Che
m B, 2014)によってバイオフィルムの鉄含有量を分析することによって決定される。バ
イオフィルム内に結合したIO−NPが活性であることを確認するために、比色分析(T
MB)アッセイ(Gao et al., Nat Nanotechnol, 2007)でH2O2(0.5%)の触媒
活性を測定する(図22)。

0098

H2O2存在下でのIO−NPの殺菌効果は、上記と同じバイオフィルムモデルおよび
局所処置を用いて評価することができる。IO−NP処理したバイオフィルムをH2O2
に暴露し、ストレプトコッカス・ミュータンスの乾燥重量および全生存細胞を標準的な培
養法およびqPCRベースの方法を用いて決定する(Cury and Koo, Analytical biochem
istry, 2007; Klein et al., Mol Oral Microbiol, 2012)。このモデルでは、最大72
個のバイオフィルムを1回の実験で同時に形成することができるため、新規開発IO−N
Pのスクリーニングが容易となる。

0099

さらに、H2O2の存在下で酸化的切断によりグルカンを分解するIO−NPの能力は
以下の方法によって決定することができる。簡潔に説明すると、不溶性グルカンおよび可
溶性グルカン(ストレプトコッカス・ミュータンスのGtfsによって産生されるもの)
を使用する。100μgの不溶性グルカンまたは可溶性グルカンを同じ条件でIO−NP
およびH2O2とともにインキュベートし、それらの活性を比較し、標準的な比色法を使
用して分解生成物の量を測定することができる(Koo et al., J Antimicrob Chemoth, 20
03; Kopec et al., Glycobiology, 1997)。

0100

IO−NPの存在下または非存在下で唾液被覆HAビーズおよび唾液被覆歯エナメル質
(sTE)スラブの酸溶解量を測定することによって、ナノ粒子の脱灰ブロック効果を分
析することができる。簡単に説明すると、sHAビーズまたはsTEスラブを37℃で4
時間、酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)中でインキュベートする。sHAビーズを遠
心分離し、3回洗浄して溶解アパタイトを除去し、カルシウムおよびリン酸の量をICP
−MSおよび比色アッセイを用いて測定する(Naha et al., J Mater Chem B, 2014)。
残ったsHAビーズ(非溶解)を収集して乾燥重量を測定する。STEスラブ(処理後)
を高度に標準化された表面微小硬度(surface microhardness;S
MH)法を用いて脱灰量について分析する(Arthur et al., Journal of oral diseases,
2014; Hara et al., Caries research, 2005; Zero et al., Journal of dental resear
ch, 1992; Hara et al., European journal of oral sciences, 2014; Cury et al., Car
ies research, 1997)。簡単に説明すると、電動式マイクロメータ・ステージに接続した
硬度計を用いてエナメル質のSMHを測定する。負荷50g、滞留時間11秒のヌープ
イヤモンドを使用する。エナメル質のSMHは、ベースライン(処置前)および処置後で
専用画像解析システムを使用して窪みの長さ(μm)を測定することによって決定し、S
MH変化率(%)として算出する。SMH変化率(%)は脱灰レベルと直接関連する。

0101

生体適合性のインビトロ評価をするために、以下の方法を用いることができる。このシ
ステムは、生体適合性でかつ臨床的使用が承認されているIO−NPおよびH2O2を含
むことができる。さらに、使用濃度臨床現場で現在使用されている濃度よりも低く、I
O−NPとバイスタンダー組織との接触は、処置が短期的・局所的であるため最小限であ
る。インビボデータは、IO−NP/H2O2コンビネーションの1日2回の暴露は細胞
毒性効果を引き起こさないことを示した。しかしながら、最適化されたナノ粒子(H2O
2有りまたはH2O2無し)の潜在的な細胞傷害性は、哺乳類細胞の生存率に影響を与え
ないように、口腔(歯肉および粘膜)の上皮細胞および線維芽細胞を用いて評価すること
ができる。簡単に説明すると、生体適合性は、これらの細胞をナノ粒子単独でまたはH2
O2と組み合わせて最大10分間(局所曝露を模倣するために)曝露することによって評
価することができる。標準的なプロトコールを用いて、IO−NP濃度(10〜1,00
0μg/ml)およびH2O2(0.5〜1%v/v)の範囲を評価し、またMTSまた
MTTアッセイを実施して細胞生存率を決定する(Naha et al., J Mater Chem B, 201
4)。このアッセイは、顕微鏡下の細胞の定性的観察によって補完することができる。細
胞をIO−NPで10分間インキュベートした後、経時的に追跡し、細胞の生存率を24
時間、72時間および168時間の時点で測定する、タイムフレーム1〜10分の範囲の
インキュベーションおよびパルスチェイス実験を行うことができる。図23は、デキスト
ラン被覆IO−NPの生体適合性を示す。包括的スクリーニングにより、齲蝕原性バイオ
フィルムの抑制および齲蝕防止のための最も効果的で生体適合性のあるIO−NPを確実
に選択することができる。

0102

IO−NP合成の柔軟性を利用することによって、触媒活性および生物活性を向上する
ためにIO−NP特性のさらなる最適化を実施することができる。H2O2の活性化を触
媒することができる様々な新規ナノ粒子を合成することができる。未触媒の速度よりも1
,000倍速い速度で過酸化水素を活性化する触媒を同定することができる。また、それ
らの触媒特性について研究するために様々なドープ酸化鉄ナノ粒子を作製することができ
る(Cormode et al., Contrast Media Mol Imaging, 2014; Naha et al., J Mater Chem
B, 2014)。困難が生じた場合には、様々なドーパント金属塩比、様々なドーパント金属
(例えば、Mg、Ca)、様々なコーティング(ドーパミンまたはリン酸塩ベースリガ
ンドなど)を使用することによってIO−NPの合成を変更することができる。

0103

本開示は、言及された目的および利点ならびにその中に内在する利点を達成するために
十分に適合される。上述の特定の実施形態は例示のみを目的とする。本開示は、異なる方
法であるが、本明細書の教示の利益を有する当業者に明らかな均等な方法で改変、実施さ
れ得るからである。さらに、添付の特許請求の範囲に記載されたもの以外に、本明細書に
示された構成または設計の詳細に制限は意図されていない。したがって、上で開示した特
定の例示的な実施形態は、変更または改変することができ、そのようなすべての変形は、
本開示の範囲および趣旨内にあると考えられることは明らかである。

実施例

0104

様々な刊行物、特許および特許出願が本明細書に引用されており、その内容は参照によ
りその全体が本明細書に援用される。

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