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図面 (18)

課題

本発明は、急性血管拡張作用を主としない新規肺高血圧治療薬、および新規な肺高血圧の治療方法の提供を解決課題とする。

解決手段

本発明は、非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、血管リモデリング改善薬、ならびに、肺高血圧の予防および/または治療のための医薬である。当該非環式レチノイドとして、好ましくは、ペレチノインである。

概要

背景

肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は、肺動脈内皮障害(例えば、持続性血管収縮過形成、増殖および凝固障害など)、平滑筋増殖(例えば、平滑筋増殖とアポトーシス異常およびCaハンドリング異常など)、炎症および免疫異常などに起因する血管リモデリング背景とし、肺動脈圧上昇を伴う難知性疾患である(非特許文献1)。

現在、肺高血圧症の治療薬として主に使用されているのは、cyclicGMP経路に関係する血管拡張薬リオシグアトなど)、エンドセリン受容体拮抗薬アンブリセンタンおよびボセンタンなど)、プロスタサイクリン製剤などの血管拡張薬(エポプロステノールおよびベラプロストなど)である。これら血管拡張薬の併用療法によりPHの予後は改善されてきてはいるが、まだ十分とは言えず、依然として予後不良疾患である。
特に、強皮症肺高血圧症(SSc-PH)を始めとする膠原病性肺高血圧症(CTD-PH)においては、肺動脈のみならず肺静脈リモデリング合併し、従来の血管拡張薬では効果不十分な患者群や肺静脈狭窄に起因した肺水腫などの致命的合併症を来す患者群も少なからず存在している。このような肺静脈のリモデリングを伴う肺高血圧症についても有効に治療するためには、従来の血管拡張薬等とは異なる作用機序による治療薬の開発が必要である。

近年、PHにおける肺動脈に類腫瘍増殖が認められることから、抗腫瘍薬のPHへの応用が期待されている(非特許文献1)。ビタミン類の中にも抗腫瘍作用を示すものが存在する。ビタミンAおよびその誘導体レチノイド)は脂溶性ビタミン分類され、RARα、RARβ、RARγ、RXRα、RXRβおよびRXRγといった様々な受容体を介する作用(genomic pathway)とそれら受容体を介さない作用(non-genomic pathway)により効果を発揮し、その細胞増殖抑制効果により乾癬白血病治療薬として利用されている。PH患者においては、血中レチノイド濃度が低下しており、RARαのリガンドであるall trans retinoic acid (ATRA)にセロトニン負荷に伴う肺動脈平滑筋細胞増殖抑制作用があると報告されている(非特許文献2)。また、ATRAは、モノクロタリン誘導肺高血圧ラットモデルにおいても平滑筋増殖抑制効果があるとも報告されている(非特許文献3)。その一方で、低酸素誘導肺高血圧ラットモデルにおいてはPH改善作用が認められなかった(非特許文献4)。これらの報告から分かるように、レチノイドは肺高血圧と何らかの関連性を有していると思われるが、その詳細については未だ不明である。

以上のように、現状のPHの治療においては、血管拡張薬の投与が主たる方法になっているが、肺水腫などの致命的な合併症を回避する上でも、急性血管拡張惹起しない治療薬が切望されている。

概要

本発明は、急性の血管拡張作用を主としない新規な肺高血圧の治療薬、および新規な肺高血圧の治療方法の提供を解決課題とする。本発明は、非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、肺血管リモデリング改善薬、ならびに、肺高血圧の予防および/または治療のための医薬である。当該非環式レチノイドとして、好ましくは、ペレチノインである。なし

目的

本発明は、急性の血管拡張作用を主要効果としない新規な肺高血圧症治療薬の提供、および新規な高血圧症の治療方法の提供を解決課題とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、血管リモデリング改善薬

請求項2

前記非環式レチノイドがペレチノインである請求項1に記載の改善薬。

請求項3

非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、肺高血圧の予防および/または治療のための医薬

請求項4

前記非環式レチノイドがペレチノインである請求項3に記載の医薬。

技術分野

0001

本発明は、血管リモデリングを予防および/または改善することによる、肺高血圧症を予防および/または治療する医薬、ならびに該医薬の使用に関する。

背景技術

0002

肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は、肺動脈内皮障害(例えば、持続性血管収縮過形成、増殖および凝固障害など)、平滑筋増殖(例えば、平滑筋増殖とアポトーシス異常およびCaハンドリング異常など)、炎症および免疫異常などに起因する肺血管リモデリングを背景とし、肺動脈圧上昇を伴う難知性疾患である(非特許文献1)。

0003

現在、肺高血圧症の治療薬として主に使用されているのは、cyclicGMP経路に関係する血管拡張薬リオシグアトなど)、エンドセリン受容体拮抗薬アンブリセンタンおよびボセンタンなど)、プロスタサイクリン製剤などの血管拡張薬(エポプロステノールおよびベラプロストなど)である。これら血管拡張薬の併用療法によりPHの予後は改善されてきてはいるが、まだ十分とは言えず、依然として予後不良疾患である。
特に、強皮症肺高血圧症(SSc-PH)を始めとする膠原病性肺高血圧症(CTD-PH)においては、肺動脈のみならず肺静脈リモデリング合併し、従来の血管拡張薬では効果不十分な患者群や肺静脈狭窄に起因した肺水腫などの致命的合併症を来す患者群も少なからず存在している。このような肺静脈のリモデリングを伴う肺高血圧症についても有効に治療するためには、従来の血管拡張薬等とは異なる作用機序による治療薬の開発が必要である。

0004

近年、PHにおける肺動脈に類腫瘍増殖が認められることから、抗腫瘍薬のPHへの応用が期待されている(非特許文献1)。ビタミン類の中にも抗腫瘍作用を示すものが存在する。ビタミンAおよびその誘導体レチノイド)は脂溶性ビタミン分類され、RARα、RARβ、RARγ、RXRα、RXRβおよびRXRγといった様々な受容体を介する作用(genomic pathway)とそれら受容体を介さない作用(non-genomic pathway)により効果を発揮し、その細胞増殖抑制効果により乾癬白血病治療薬として利用されている。PH患者においては、血中レチノイド濃度が低下しており、RARαのリガンドであるall trans retinoic acid (ATRA)にセロトニン負荷に伴う肺動脈平滑筋細胞増殖抑制作用があると報告されている(非特許文献2)。また、ATRAは、モノクロタリン誘導肺高血圧ラットモデルにおいても平滑筋増殖抑制効果があるとも報告されている(非特許文献3)。その一方で、低酸素誘導肺高血圧ラットモデルにおいてはPH改善作用が認められなかった(非特許文献4)。これらの報告から分かるように、レチノイドは肺高血圧と何らかの関連性を有していると思われるが、その詳細については未だ不明である。

0005

以上のように、現状のPHの治療においては、血管拡張薬の投与が主たる方法になっているが、肺水腫などの致命的な合併症を回避する上でも、急性血管拡張惹起しない治療薬が切望されている。

0006

EP2604263A1

先行技術

0007

Guignabertら, CHEST 147:529-537 2015
Prestonら,Circulation 111:782-790 2005
Xinら, Genetics and Molecular Research 14:14308-14313 2015
Zhangら, Circ J 74:1696-1703 2010
Okitaら, J Gastroenterol 50:191-202 2011

発明が解決しようとする課題

0008

記事情に鑑み、本発明は、急性の血管拡張作用を主要効果としない新規な肺高血圧症治療薬の提供、および新規な高血圧症治療方法の提供を解決課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、環式レチノイドのATRAとは異なり、RARβおよびRXRαのリガンドである非環式レチノイドペレチノインを、肺動脈性肺高血圧モデルマウス(低酸素誘導肺高血圧モデル)に投与したところ、急性期の血管拡張作用を介さずに肺血管リモデリングを改善するという効果を見出し、本発明を完成させた。
ペレチノインは、肝細胞癌再発抑制においてすでにヒトを対象とした第II層試験まで終了し、問題となるような副作用が生じないことが確認されている。この点で、ヒトへの臨床応用が非常に行いやすいと考えられる(特許文献1および非特許文献5)。

0010

すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)である。
(1)非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、肺血管リモデリング改善薬
(2)前記非環式レチノイドがペレチノインである上記(1)に記載の改善薬。
(3)非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、肺高血圧の予防および/または治療のための医薬。
(4)前記非環式レチノイドがペレチノインである上記(3)に記載の医薬。

発明の効果

0011

本発明の医薬は、肺血管リモデリングの進行の予防および改善を介し、肺高血圧症の治療に優れた効果を発揮する。

0012

本発明の医薬は、既存の肺高血圧症の治療薬とは異なり、急性期の血管拡張を惹起することなく肺高血圧の病態を改善することから、既存の血管拡張薬に無反応または血管拡張薬では状態憎悪を来してしまう肺高血圧(例えば、CTD-PHなど)の病態でも適用可能である。

0013

本発明の医薬は、投与した患者において問題となる副作用が生じる可能性が低い。

図面の簡単な説明

0014

肺高血圧で増悪する心臓動態に対するペレチノインの投与の効果(1)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群のPAT(Pulmonary Accelation Time)とPAT/ET(Ejection Time)の値を示す。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
肺高血圧で増悪する心臓動態に対するペレチノインの投与の効果(2)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群の圧・容量曲線PVloop)の分析結果を示す。
肺高血圧で増悪した心臓動態に対するペレチノインの投与の効果(3)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群のRVSP(right ventricular systolic pressure)、RV(right venticule)/IVS(interventricular septum)+LV(left venticule)、HR(heart rate)およびBW(body weight)の値を示す。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
肺高血圧で増悪する心臓動態に対するペレチノインの投与の効果(4)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群のCO(cardiac output)、SV(stroke volume)、RVEDV(right ventricular end-diastolic volume)およびEa(arterial elastance)の値を示す。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
肺高血圧で増悪する心臓動態に対するペレチノインの投与の効果(5)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群のRVEF(right ventricular ejection fraction)の値を示す。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
急性期血行動態に対するペレチノインの投与の影響。C57B6/6Jマウスにエポプロステノール(epoprostenol)とペレチノイン(pretinoin)を投与し(各薬剤の投与時点を矢印で示す)、右心室内圧の変動(上図)と心拍出量下図)を測定した結果を示す。

0015

肺高血圧で肥厚する肺動脈中膜に対するペレチノインの効果の組織学的検討(1)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群のマウスの肺動脈中膜の組織切片を、EVG(Eastica Van Gieson)染色した結果を示す。
肺高血圧で肥厚する肺動脈中膜に対するペレチノインの効果の組織学的検討(2)。図7の画像をImage Jで解析して算出した。解析においては各マウスより直径25μm-50μmの肺動脈を20個ランダムに抽出し、下記に示すMedial well thickness、% wall thicknessおよびMedial thickness indexを解析した。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test) Medial well thickness:(outer diameter-inner diameter)/2 % wall thickness:(medial wall thickness/outer diameter)×100 Medial thickness index:[(area ext-area int)/area ext]×100 Medial well thickness :肺動脈中膜の厚さ outer diameter:肺動脈の外径inner diameter:肺動脈の内径% wall thickness:肺動脈の外径に対する中膜の厚さの割合 Medial thickness index:中膜の厚さの指標area ext :外弾性板で取り囲まれる領域の面積area int:内弾性板で取り囲まれる領域の面積
肺高血圧で肥厚する肺動脈中膜に対するペレチノインの効果の組織学的検討(3)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群のマウスの肺動脈由来の組織切片を、抗アクチン抗体で免疫染色した結果を示す。
肺血管リモデリングに関連する遺伝子発現に対するペレチノインの影響の検討(1)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群の肺組織から調製したRNAを用いて、IL-6、ET1、survivin140およびTGFβの発現量をqRT-PCTで測定した結果を示す。データは、平均値±SEMで示す(各群n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
肺血管リモデリングに関連する遺伝子発現に対するペレチノインの影響の検討(2)。対照群、PH群およびペレチノイン投与群の肺組織から調製したRNAを用いて、αSMAおよびFn(フィブロネクチン)の発現量をqRT-PCTで測定した結果を示す。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)

0016

肺血管リモデリングに対するATRAとペレチノインの効果の比較(1)。対照群、PH群、ペレチノイン投与群およびATRA投与群のCO、RVSV、EaおよびRV/IVS+LVの値を示す。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
肺血管リモデリングに対するATRAとペレチノインの効果の比較(2)。対照群、PH群、ペレチノイン投与群およびATRA投与群のEF(ejection fraction)の値を示す。データは、平均値±SEMで示す(対照群:n=7、PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=6、ATRA投与群:n=6)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)

0017

リモデリングした肺血管に対するペレチノイン投与の効果の検討(1)。PH群およびペレチノイン投与群(図1〜13とは異なり、肺高血圧モデルマウスの完成後に当該モデルマウスにペレチノインの投与を開始した。図15において同じ。)の、RV/IVS+LV、RVEDV、EaおよびPmax(RVSPと同義で、右室最大圧)の値を示す。データは、平均値±SEMで示す(PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=4)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
リモデリングした肺血管に対するペレチノイン投与の効果の検討(2)。PH群およびペレチノイン投与群の、Emax(maximum elastance)およびEFの値を示す。データは、平均値±SEMで示す(PH群:n=5、ペレチノイン投与群:n=4)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
リモデリングした肺動脈中膜に対するペレチノイン投与の影響の組織学的検討(1)。対照群(Control(B6))、SU5416投与3週間後の群(HySU 3 weeks)、SU5416投与およびペレチノイン投与3週間の群(HySU/ACR3 weeks)、SU5416投与5週間後の群(HySU 5 weeks)およびSU5416を3週間投与後にSU5416投与と共にペレチノインを2週間投与した群(HySU 3 weeks+HYSU/ACR 2 weeks)のマウスの肺動脈中膜の組織切片を、EVG染色した結果を示す。
リモデリングした肺動脈中膜に対するペレチノイン投与の影響の組織学的検討(2)。図16の画像を図8と同様にImage Jで解析して、Medial well thicknessを算出した。データは、平均値±SEMで示す(HySU 3 weeks:n=5、HySU/ACR 3 weeks:n=6、HySU 5 weeks:n=4、HySU 3 weeks+HYSU/ACR 2 weeks:n=4)。* p<0.05(Mann-Whitney U-test)
エコーによる肺高血圧モデルマウスへのペレチノイン投与の効果の確認。 肺高血圧モデルマウス(PH群)と肺血圧モデル完成後にペレチノインを投与したマウス(ペレチノイン投与群)の心臓短軸断面のエコー(上図)とHE染色像(下図)を示す。

0018

本発明の第1の実施形態は、非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、肺血管リモデリング改善薬である。
ここで、「レチノイド」とは、ビタミンAおよびその誘導体のことで、その構造的特徴から、環式レチノイドと非環式レチノイドに分類される。環式レチノイドとしては、前出のATRA(all trans retinoic acid)の他、9-シスレチノイン酸(アリトレチノイン)などを挙げることができる。
本発明の実施形態において、「非環式レチノイド」とは、その分子内に環構造を持たないレチノイドのことを意味する。「非環式レチノイド」としては、特に限定はしないが、例えば、ペレチノイン(CAS番号:81485-25-8)、ゲラニルゲラノイン酸ジヒドロゲラニルゲラノイン酸(2, 3-ジヒドロゲラニルゲラノイン酸、4, 5-ジデヒドロ-10, 11-ジヒドロゲラニルゲラノイン酸および14, 15-ジヒドロゲラニルゲラノイン酸など)、テトラヒドロゲラニルゲラノイン酸などを挙げることができ、好ましくは、ペレチノインである。

0019

本発明の実施形態において、非環式レチノイドの塩を使用してもよい。非環式レチノイドの塩としては、薬学上許容される塩であればよく、例えば、酸性基が存在する場合には、リチウムナトリウムカリウムマグネシウムカルシウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩アンモニアメチルアミンジメチルアミントリメチルアミンジシクロヘキシルアミントリス(ヒドロキシメチルアミノメタン、N,N−ビスヒドロキシエチルピペラジン2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールエタノールアミンN−メチルグルカミン、L−グルカミン等のアミンの塩;またはリジン、δ−ヒドロキシリジンアルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩などを挙げることができる。塩基性基が存在する場合には、塩酸臭化水素酸硫酸硝酸リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸ベンゼンスルホン酸パラトルエンスルホン酸酢酸プロピオン酸塩酒石酸フマル酸マレイン酸リンゴ酸シュウ酸コハク酸クエン酸安息香酸マンデル酸ケイ皮酸乳酸グリコール酸グルクロン酸アスコルビン酸ニコチン酸サリチル酸等の有機酸との塩;またはアスパラギン酸グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩などを挙げることができる。

0020

また、本発明の実施形態においては、非環式レチノイドまたはその塩の溶媒和物を使用してもよい。溶媒和物を形成する溶媒としては、限定はしないが、例えば、水、薬学上許容される有機溶媒(例えば、エタノールアセトン酢酸エチルおよびヘキサン)などを挙げることができる。
非環式レチノイドおよびその塩ならびにそれらの溶媒和物は、公知の方法によって製造でき、例えば、ペレチノインについては、当業者であれば、特開昭56-140949号、WO2012/041949号などを参照し容易に製造することができる。また、本発明の実施においては、市販の非環式レチノイドを使用してもよい。

0021

「肺血管リモデリング」とは、血管内皮細胞障害、血管異常攣縮、血管内皮細胞等のアポトーシス抵抗性炎症細胞浸潤および外膜線維化などの様々な要因により、肺血管内皮細胞や肺血管平滑筋細胞腫瘍と類似した細胞増殖性変化を呈し、肺血管壁肥大、肥厚または線維化が引き起こされ、血管内腔狭小化および/または閉塞が生じることをいう。
本実施形態における「改善薬」とは、肺血管リモデリングの進行を抑制する効果の他、リモデリング状態にある血管を元の状態あるいはそれに近い状態に戻す(リバースリモデリング:reverse remldeling)効果を有する薬剤のことである。

0022

本発明の第2の実施形態は、非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む、肺高血圧の予防および/または治療のための医薬である。
本発明の第2の実施形態にかかる医薬は、肺血管リモデリングを抑制および/または回復させることで、肺高血圧の予防薬および/または治療薬としての薬効を有する。従って、本実施形態にかかる医薬が対象とする肺高血圧には、肺血管リモデリングを伴い、肺動脈圧の上昇をきたす疾患であればすべて含まれる。そのような肺高血圧としては、特に限定はしないが、例えば、突発性肺動脈性肺高血圧症、遺伝性肺動脈性肺高血圧症、薬物および毒物誘発性肺動脈性肺高血圧症、他の疾患(結合組織病HIV感染症門脈圧亢進症先天性心疾患および住血吸虫症など)に関連する肺動脈性肺高血圧症などの肺動脈正肺高血圧症、肺静脈閉塞性疾患および/または肺毛細血管腫症、新生児遷延性肺高血圧症左室収縮機能障害左室拡張機能障害弁膜症先天性後天性左心流入路流出路障害および先天性心筋症などの左心性疾患に伴う肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患間質性肺疾患拘束型閉塞型混合型を示すその他の呼吸器疾患睡眠呼吸障害肺胞低換気障害、高地への慢性暴露成長障害などに起因する肺疾患および/または低酸素血症による肺高血圧症、慢性血栓閉塞性肺高血圧症、血液疾患(慢性溶血性貧血、骨随増殖性疾患脾摘出など)、全身疾患(サルコイドーシス、肺組織球増殖症、リンパ脈管筋腫症など)、代謝疾患糖尿病ゴーシェ病甲状腺疾患)、その他の疾患(腫瘍閉塞、線維性縦隔洞炎慢性腎不全区域性肺高血圧症)などの原因不明複合的要因による肺高血圧症、などを挙げることができる。

0023

本発明の第2の実施形態は、非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物を含む医薬(以下「本発明の医薬」とも記載する)であり、好ましい非環式レチノイドはペレチノインである。本発明の医薬は、有効成分である非環式レチノイドもしくはその塩、またはそれらの溶媒和物自体を投与する形態でもよいが、一般的には、これらの有効成分の他、1または2以上の製剤用添加物を含む医薬組成物(以下「本発明の医薬組成物」とも記載する)の形態で投与することが望ましい。また、本発明の実施形態にかかる医薬組成物中には、公知の他の薬剤を併せて配合してもよい。

0024

本発明の医薬または医薬組成物は、経口または非経口用の剤型であってもよく、特に限定はしないが、例えば、錠剤カプセル剤顆粒剤散剤シロップ剤懸濁剤、座剤、軟膏クリーム剤ゲル剤貼付剤吸入剤または注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。なお、液体製剤にあっては、用時、水または他の適当な溶媒に溶解または懸濁するものであってもよい。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明の抗体またはその機能的断片を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水あるいはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また、緩衝剤保存剤を添加してもよい。

0025

本発明の医薬または医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、あるいは、医薬または医薬組成物の製造方法は、その形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機または有機物質、あるいは、固体または液体物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して、例えば、0.1重量%〜99.9重量%、1重量%〜95.0重量%、または1重量%〜90.0重量%の間で配合することができる。具体的には、製剤用添加物の例として乳糖ブドウ糖マンニットデキストリンシクロデキストリンデンプン蔗糖メタケイ酸アルミン酸マグネシウム合成ケイ酸アルミニウムカルボキシメチルセルロースナトリウムヒドロキシプロピルデンプンカルボキシメチルセルロースカルシウムイオン交換樹脂メチルセルロースゼラチンアラビアゴムヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロースポリビニルピロリドンポリビニルアルコール軽質無水ケイ酸ステアリン酸マグネシウムタルクトラガントベントナイトビーガム酸化チタンソルビタン脂肪酸エステルラウリル硫酸ナトリウムグリセリン脂肪酸グリセリンエステル精製ラノリングリセロゼラチンポリソルベートマクロゴール植物油ロウ流動パラフィン白色ワセリンフルオロカーボン非イオン性界面活性剤プロピレングルコールまたは水等が挙げられる。

0026

経口投与用固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分、例えば、乳糖、澱粉結晶セルロース乳酸カルシウムまたは無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロースまたはポリビニルピロリドンなどの結合剤カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式または乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤及び顆粒剤をそのまま、あるいは、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒または錠剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートメタクリル酸メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤被覆して腸溶剤製剤、あるいは、エチルセルロースカルナウバロウまたは硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤または顆粒剤を硬カプセル充填するか、有効成分をそのまま、あるいは、グリセリン、ポリエチレングリコールゴマ油またはオリーブ油などに溶解した後ゼラチンで被覆し軟カプセルとすることができる。

0027

注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて、塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、さらに、マンニトール、デキストリン、シクロデキストリンまたはゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシンポリソルベート80またはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化させ、注射剤用乳剤とすることもできる。

0028

直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂脂肪酸のトリ、ジおよびモノグリセリドまたはポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し、型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコールまたは大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。

0029

本発明の実施形態にかかる医薬または医薬組成物の投与量および投与回数は特に限定されず、治療対象疾患の悪化・進展の防止および/または治療の目的、疾患の種類、患者の体重や年齢などの条件に応じて、医師または薬剤師の判断により適宜選択することが可能である。
一般的には、経口投与における成人1日あたりの投与量は0.01〜1,000 mg(有効成分重量)程度であり、1日1回または数回に分けて、あるいは数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して1日量0.001〜100mg(有効成分重量)を連続投与または間欠投与することが望ましい。

0030

本発明の実施形態にかかる医薬または医薬組成物は、植込錠またはマイクロカプセル封入された送達ステムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。そのような担体として、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物ポリグリコール酸コラーゲンポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの、生物分解性および生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬学上許容される担体として使用することができる。リポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリンコレステロールおよびPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG-PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製することができる。

0031

本発明の実施形態にかかる医薬または医薬組成物は、投与方法等の説明書と共にキットの形態で提供してもよい。キット中に含まれる医薬または医薬組成物は、有効成分の活性を長期間有効に持続し、剤等が容器内側吸着することなく、また、構成成分を変質させることのない材質で製造された容器により供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性不反応性を示すガスの存在下で封入されたバッファーなどを含んでもよい。
また、本キット使用説明は、紙などに印刷されたものであっても、CD-ROMまたはDVD-ROMなどの電磁的読み取り可能な媒体に保存され、供給されてもよい。

0032

本発明の第3の実施形態は、本発明の医薬または医薬組成物を患者に投与することを含む、肺高血圧の予防および/または治療方法である。
ここで「治療」とは、すでに肺高血圧を発症した患者において、その病態の進行および悪化を阻止または緩和することを意味し、これによって肺高血圧の進行および悪化を阻止または緩和することを目的とする処置のことである。
また、「予防」とは、肺高血圧を発症するおそれがある患者について、その発症を予め阻止することを意味し、これによって肺高血圧の発症を予め阻止することを目的とする処置のことである。

0033

本明細書が英語翻訳されて、単数形の「a」、「an」、および「the」の単語が含まれる場合、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限り、単数のみならず複数のものも含むものとする。
以下に実施例を示してさらに本発明の説明を行うが、本実施例は、あくまでも本発明の実施形態の例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。

0034

1.ペレチノインによるマウス肺高血圧の進行抑制効果の検討
1−1.肺高血圧モデルマウス
低酸素負荷状態でVEGFR拮抗薬を投与して飼育した肺高血圧モデルマウス(肺動脈性肺高血圧モデルマウス)を使用してペレチノインの効果を検討した。
肺高血圧モデルマウスとして、8週齢オスのC57B6/6Jマウスに、SU5416(AdooQ-BioScience社:#A1243)を一回投与量20mg/kgで、1週間毎に3回腹腔内投与しながら、低酸素チャンバー(8.5%酸素濃度)内で3週間飼育したものを用いた。初回のSU5416投与から3週間後に各種測定等を行った。肺高血圧モデルマウスのPH(肺高血圧)群は通常餌で飼育し、ペレチノイン投与群は、初回のSU5416投与時からペレチノイン0.06重量%含むで飼育した。また、対照群は、SU5416の投与はせずに、通常餌で通常の飼育環境(21% 酸素濃度)で飼育した。

0035

1−2.エコー測定
vevo 2100(フジフィルムビジュアルソニック社)を用いて、パルスドップラー法で右室流出路の拍出波形計測し、PAT(Pulmonary Accelation Time;心拍出開始から最高流速に到達するまでの時間)とET(Ejection Time;拍出時間)を測定した(図1)。
PH群と比較してペレチノイン投与群では、PAT、PAT/ET共に長くなっていた。PAT/ETは肺動脈圧と相関する(PAT/ETが短ければ肺動脈圧が高い)ことから、ペレチノインは、肺動脈圧を低下させると考えられる。

0036

1−3.コンダクタンスカテーテルを用いた肺動脈圧および右心室機能の測定
肺高血圧モデルマウスの肺動脈圧、右心室機能等を調べるために、コンダクタンスカテーテル(PVR 839およびPVR 1035;MPVS-Ultra圧容積システム;Millar Instruments社)を用いて、圧・容量曲線(PV loop)の分析を行った。測定は、Am J Physiol HeartCirc Physiol 301: H2198-H2206, 2011に記載の方法に準じて行った。
PV loopにおいてPH群では右室圧上昇と心拍出量の低下を示していたが、ペレチノイン投与群では右室圧の低下と心拍出量が改善しており、対照群の曲線にかなり類似していることが確認できた(図2)。
RVSP(right ventricular systolic pressure:右室収縮期圧)は、おおよそ肺動脈収縮期圧と同値であるが、ペレチノイン投与により、有意に低下した(図3、RVSP)。また、 RV/IVS+LVは、RV(right venticule:右心室)とIVS(interventricular septum:心室中隔)+LV(left venticule:左室)の重量比で、右室重量を反映し右心不全では高値となるが、ペレチノイン投与によりこの値が有意に低下した(図3、RV/VS+LV)。
なお、HR(heart rate:心拍数)とBW(body weight:体重)は、対照群、PH群およびペレチノイン投与群の間で有意差はなかった。
以上の結果から、肺動脈収縮期圧と右室重量の改善が確認できた。

0037

また、ペレチノイン投与により、CO(cardiac output:心拍出量)とSV(stroke volume:一回拍出量)は、上昇し(図4、COおよびSV)、Ea(arterial elastance:肺血管抵抗)は低下した。RVEF(right ventricular ejection fraction:右室駆出率)もペレチノインの投与により上昇し、収縮能力の改善が認められた(図5)。RVEDV(right ventricular end-diastolic volume:右室拡張末期容積)についても、ペレチノイン投与により低下した(図4、RVEDV)。
以上の結果から、心拍出量と右室後負荷の改善が確認できた。

0038

肺血管抵抗の変動について検討した。C57B6/6J(野生型)マウスに、肺高血圧に従来使用されている肺血管拡張薬であるエポプロステノール(epoprostenol)とペレチノイン(pretinoin)を投与し(各薬剤の投与時点を矢印で示す)、右心室内圧の変動(図6、上の波形)と心拍出量(図6、下の波形)を検討した。その結果、エポプロステノール開始に伴い右室内圧低下がみられた。エポプロステノールの投与を中止したのち、ペレチノイン投与開始したところ、血圧がbase lineにまで回復した。右室内圧は血管抵抗と心拍出量によって規定されるが、心拍出量は不変であったことから、各薬剤の投与により、血管抵抗が変化した結果、圧が変化したものと考えられる。実際に、薬剤投与直後の血管抵抗(Ea)を計算しても、血管抵抗は、エポプロステノールで低下するのに対し、ペレチノインでは低下しないことが確認できた。
以上の結果から、ペレチノインの投与では、急性期の肺血管の拡張を惹起しないことから、従来の肺血管拡張剤投与に伴う副作用の発症を回避できるものと考えられる。

0039

1−4.組織学的検討
吸入麻酔により深鎮静を得たマウスの気管内に1%ホルマリンを投与し、20cmの圧をかけ肺を拡張させた後に10%ホルマリンにより一晩固定し、その後パラフィン包埋した組織標本を用い、Elastica Van Gieson (EVG) 染色を行なった(図7)。解析はImage Jを用い、Medial wll thickness(肺動脈中膜の厚さ)、% wall thickness(肺動脈の外径に対する中膜の厚さの割合)およびMedial thickness index(中膜の厚さの指標:大きいほど厚い)を算出した(図8)。図7および図8によりペレチノインは肺動脈中膜の肥厚を改善することが確認できた。
次に、対照群、PH群およびペレチノイン投与群のマウスの肺動脈由来の組織切片を、α-Actin抗体(1A4): sc-32251(santa cluz)で染色した。染色は、VECTOR M.O.M Immunodetection Peroxidase Kit 使用して行った。
図9から、肺動脈中膜の平滑筋細胞(αSMA陽性細胞)の減少が確認され、ペレチノイン投与により、平滑筋細胞の増殖が抑制されたことが示唆された。

0040

1−5.肺血管リモデリングに関連する遺伝子の発現への影響
肺血管リモデリングに伴う、炎症、外膜線維化、アポトーシス抵抗性に関与する遺伝子の発現が、ペレチノイン投与によりどのような影響を受けるか検討した。
肺組織から抽出した総RNAをテンプレートにして、qRT-PCRを行い、IL-6(炎症関連サイトカイン遺伝子)、ET1(線維化に関与する遺伝子)、survivin140(アポトーシス抵抗性遺伝子)およびTGFβ(肺高血圧では発現が増加し、それが異常増殖の原因の1つとなっている遺伝子)の発現を調べた。用いたプライマーを以下に示す。
・IL-6の増幅
Il6 forward:GATGGATGCTACCAAACTGGAT(配列番号1)
Il6 Reverse:CCAGGTAGCTATGGTACTCCAGA(配列番号2)
・ET1の増幅
ET-1 forward:CAAGGAGCTCCAGAAACAGC(配列番号3)
ET-1 Reverse:TCTGCACTCCATTCTCAGCTC(配列番号4)
・Survivin140の増幅
Survivin140 forward:TGGACAGACAGAGAGCCAAG(配列番号5)
Survivin140 Reverse:AGTTCTTGAAGGTGGCGATG(配列番号6)
・TGFβの増幅
Tgfb1 forward:GCAACATGTGGAACTCTACCAGAA(配列番号7)
Tgfb1 Reverse:GACGTCAAAAGACAGCCACTCA(配列番号8)
その結果、図10に示すように、PH群で発現が上昇したIL6、ET1、survivin140およびTGFβは、ペレチノイン投与により、対照群の各遺伝子発現レベルにまで低下した。

0041

また、肺血管中膜および外膜の構成要素でありαSMAおよびFn(フィブロネクチン)遺伝子についてもその発現を調べた。qRT-PCRに用いたプライマーは以下の通りである。
・αSMAの増幅
aSMA forward:GGCATCCACGAAACCACCTA(配列番号9)
aSMA reverse:CACGAGTAACAAATCAAAGC(配列番号10)
・Fnの増幅
Fn forward:ATGTGGACCCCTCCTGATAGT(配列番号11)
Fn Reverse:GCCCAGTGATTTCAGCAAAGG(配列番号12)
その結果、PH群において上昇したαSMAおよびFnの発現が、ペレチノイン投与により、両者共に低下することが確認された(図11)。
以上の結果から、ペレチノインは、肺血管の炎症、線維化、アポトーシス耐性などを改善し、肺血管外膜および中膜のリモデリングを抑制する効果を有することが示唆された。

0042

2.環式レチノイドのATRAとの比較
2−1.ATRAの投与量
環式レチノイドであるATRAの肺血管リモデリングに対する効果について、ペレチノインと比較して、検討を行った。
比較実験には、前述の肺高血圧モデルマウス(肺動脈性肺高血圧モデルマウス)を使用した。既報(Kadaら, Arterioscler Thromb Vasc Biol. 27:1535-1541 2007)によると、ペレチノイン100mg/kg投与とATRA10mg/kgは、レチノイドとして同等の力価であることから、マウスの粉末餌に、ペレチノインとATRAを、各々、投与量100mg/kgおよび10mg/ml混入し、摂取させた。なお、ATRA100mg/kg/day含有餌をマウスに食べさせたところ、2週間で全例死亡した。

0043

2−2.ATRAの投与による肺血管および心臓動態への影響の検討
コンダクタンスカテーテルにより、CO、RVSP、EaおよびRV/IVS+LVを測定した。その結果、ペレチノイン投与群では全ての機能について改善がみられたのに対し、ATRA投与群ではほとんど効果を示さなかった(図12)。また、EF(ejection fraction:駆出率)についても、ATRA投与群では改善が見られなかった(図13)。
以上の結果から、ペレチノインの投与では、測定した全ての項目について改善が見られるのに対し、ATRAの投与では、ほとんど効果がないことが分かった。

0044

3.リモデリングした肺血管に対する、ペレチノインのリバースリモデリング効果の検討
上記1.では、モデルマウスを用いて、肺血管リモリンの進行と同時にペレチノインを投与した場合、肺高血圧症の進行が有効に抑制されることを示した。
次に、肺血管リモデリングがすでに生じているモデルマウスにペレチノインを投与(すなわち、肺高血圧症モデルマウスを作成したのち、当該モデルマウスに投与する。)した場合、リモデリングした肺血管を改善させることができるかどうか検討した。
3−1.肺高血圧モデルマウス
8週齢のオスのC57B6/6Jマウスに、SU5416を投与量20mg/kgで、1週間毎に3回腹腔内投与しながら、低酸素チャンバー(8.5%酸素濃度)内で3週間飼育し、肺高血圧マウスを作成した。この間、ペレチノインを含まない通常餌で飼育した。作成した肺高血圧マウスをペレチノイン0.06重量パーセント含有食群通常食継続群の2群に分け、継続して低酸素チャンバーでの飼育かつ週に一回のSU5416投与を2週間行い、その後(初回SU5416投与から5週後)に各種測定を行った。対照群は、SU5416の投与はせずに、通常餌で通常の飼育環境(21% 酸素濃度)で飼育した。

0045

3−2.コンダクタンスカテーテルを用いた測定
肺血管がリモデリングされた状態にある、肺高血圧モデルマウスにペレチノインを投与すると、RVEDV、EaおよびPmax(RVSPと同義で、右室最大圧のこと)は有意差を持って低下し、また、RV/IVS+LVについても有意差はないものの、低下の傾向を示した(図14)。
また、肺血管抵抗の増大により代償的に上昇していたEmax(maximum elastance:心室収縮期末最大エラスタンス収縮の指標の一つ)が有意に低下し、低下していたEFが有意に上昇した(図15)。
以上の結果から、肺血管リモデリングがすでに生じている状態でペレチノインを投与した場合においても、肺高血圧が改善することが分かった。

0046

3−3.組織学的検討
ペレチノインがリバースリモデリング効果を示すことをさらに確認する為に組織学的検討を行なった。検体採取、染色に関しては上記1−4に記載の方法で行った。EVG染色で肺動脈中膜肥厚の改善が確認され、ペレチノイン投与によりリバースリモデリングが得られることがされた(図16および図17の「HYSU 3 weeks + Hysu/ACR2 weeks」)。

0047

3−4.エコー測定
肺高血圧モデルマウス(PH群)と肺血圧リモデリングが生じた後にペレチノインを投与したマウス(ペレチノイン投与群)の心臓短軸断面のエコー(図18上図)とHE染色像(図18下図)を確認した。図17から、肺高血圧モデルマウスの拡大した右心図18A)が、ペレチノイン投与によって、縮小したことが分かった(図18B)。

実施例

0048

以上の結果から、すでに肺血管リモデリングが生じている肺高血圧に対しても、ペレチノインは効果を示すことを確認できた。

0049

本発明は、ペレチノインなどの非環式レチノイドを含有する肺高血圧の予防または治療薬を提供する。本発明にかかる医薬は、既存の医薬によって生じ得る副作用を低減させ、これまでにない治療効果を発揮するものである。従って、本発明は、医療分野における利用が大いに期待される。

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