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課題

商業開発に適した規模での全長ラブリシン組換え産生方法を提供する。

解決手段

優れた潤滑特性及び新規グリコシル化パターンを有する、ヒト様ラブリシン又はPRG4糖タンパク質の新たな組換えアイソフォームと、商業的産生を可能にする高レベルでのこれらの製造のための方法であって、少なくとも30重量%のグリコシド残基を含むラブリシン糖タンパク質を少なくとも0.4g/リットル培地中濃度で産生するのに十分な時間及び培養条件下で、ヒトPRG4遺伝子をトランスフェクトされそれを発現しその発現産物翻訳後にグリコシル化するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地中で培養する工程と、前記培地からラブリシン糖タンパク質を精製する工程とを含む、組換えラブリシン糖タンパク質の製造方法。

概要

背景

[0003]プロテオグリカン4(PRG4)遺伝子は、ラブリシン巨核球刺激因子(MSF)又は表在ゾーンタンパク質(SZP)と命名された、高度にグリコシル化された表面潤滑タンパク質をコードする(Jay, Curr. Opin. Orthop. 15, 355 (2004);米国特許第6,743,774号;米国特許第6,960,562号を参照)。ラブリシンは、12エクソンに及ぶ全長を有するPRG4遺伝子(配列番号2)から発現されるが、複数の天然起源トランケートバージョン報告されている。940アミノ酸の大型の「ムチン様」中央ドメイン(エクソン6にコードされる)は、約70+KEPAPTT様配列を含み、重度にグリコシル化される。この糖タンパク質は、コア2グリコシル化残基及び多重コア1グリカンO結合型β(1−3)Gal−GalNAcオリゴ糖)を含み、そのうち少なくとも後者は、その主要な生理的機能境界潤滑を媒介することが示されている(Jay et al., Glycoconj J 18, 807 (2001))。PRG4は、軟骨滑膜及び半月板の表面、涙膜ならびに他の解剖学的部位に存在することが示されている。PRG4は、並置された関節軟骨表面の境界潤滑に寄与することが示されている。PRG4は、単量体としてのみならず、N及びC末端の両方における保存されたシステインリッチドメインを介してジスルフィド結合された二量体及び多量体としても存在することが示されている(Schmidt etal., BiochimBiophys Acta. 1790(5):375-84 (2009); Kooyman et al., Paper No.255, 56th Ann. Meet of Orthop. Res. Soc., 2010)。

[0004]滑膜結合部の軟骨界面において働いている潤滑には少なくとも2種の物理化学的モードが存在する。これらは、「境膜(fluid film)」及び「境界」として分類された。稼働潤滑モードは、関節組織における垂直抗力及び接線力、これらの表面間の接線運動相対速度、ならびに負荷及び運動の両方の時間履歴に依存する。摩擦係数、μ(無次元単位、相対運動における2個の接触表面間の測定された摩擦力の、加えられた垂直抗力に対する比)は、潤滑の定量的尺度をもたらす。

[0005]流体媒介性潤滑又は「境膜」モードの1種は、静水力学的である。負荷の開始時及び典型的には延長された持続時間において、組織の二相的性質のため、軟骨内間質液加圧され、また流体は、浸出(weeping機構により関節表面間の凹凸へと押しやられる場合もある。ヒアルロン酸を含む加圧された間質液及びトラップされた潤滑剤プールは、したがって、剪断応力に対し殆ど抵抗せずに垂直(normal)負荷に耐えることにかなり寄与し、これによって摩擦係数が非常に低くなりやすくなる。また、負荷及び/又は運動の開始時に、スクイズ膜(squeeze film)、水力学及び弾性流体力学型の境膜潤滑が起こることができ、相対運動において、加圧、運動及び変形は、粘稠性潤滑剤が2表面間の間隙から及び/又はそこを通って押し出されるように作用する。

[0006]境界潤滑において、負荷は、表面−表面の接触によって支持され、関連する摩擦特性は、潤滑剤表面分子、即ち、ラブリシン種によって決定される。対向する軟骨層は、かみ合い平らになった凹凸により総面積の+/−10%にわたって接触し、これは摩擦の大部分が起こる場所である可能性が高いため、このモードは重要である。境界潤滑は、本質的に、「スティックスリップ(stick-slip)」(Meyer et al., Nanoscience: Frictioin and Rheology on the Nanometer Scale, World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd, River Edge, N.J., (2002), pp. 373)、即ち、界面荷重負荷軟骨表面が互いに滑る際に起こり得る自発ジャーキング運動を軽減し、したがって、定常運動及び運動のスタートアップの両方に対する抵抗減少として現れる。軟骨表面の典型的な摩耗パターンは、関節軟骨の境界潤滑が、関節表面構造の保護及び維持に重大であることを示唆する。例えば、ラブリシンヌルマウスは、摩耗を示すが、荷重負荷がない新生仔マウス(nice)は示さない(Jay et al., Arthritis and Rheumatism,56:3662-3669 (2007))。

[0007]負荷時間及び静水圧散逸が増加するほど、潤滑剤コーティングされた表面は、加圧された流体に対しますます高い配分の負荷に耐え、結果的に、μは、境界モードの潤滑がますます支配的となり得る。したがって、境界モードの潤滑は、相対的滑り速度及び軸負荷等、境膜形成に影響を与える因子に関して不変である、定常滑りにおける摩擦係数によって示される。関節軟骨では、流体加圧及び他の機構によって補完されるが、境界潤滑が確実に起こることが結論付けられた。瞬目の際の角膜及び眼瞼の界面における潤滑機構は、かなりの負荷を伴うことはなく、したがって、有効潤滑のための物理化学的要件緩和されるので、軟骨潤滑とは全く異なる可能性がある。しかし、ドライアイ疾患等、涙膜が損なわれた場合、境界モードの潤滑が優占的となり得ることが提案されている。

[0008] その注目すべき潤滑特性の原因となると考えられる滑液の2種の機械的構成成分は、ラブリシン及びヒアルロン酸(又はヒアルロネート(hyaluronate)もしくは「HA」、以後互換的に用いる)である。ラブリシンは、関節結合部における境界潤滑剤として機能し、摩擦力、細胞接着及びタンパク質沈着から軟骨表面を保護することが示された。例えば、米国特許第6,960,562号及び同第6,743,774号は、実質的に純粋なPRG4アイソフォームを含む潤滑ポリペプチドと、全身投与又は組織に直接的に投与することにより結合部又は他の組織を潤滑する方法とを開示する。HAそれ自体は、境界モード潤滑で、軟骨−軟骨界面において生理食塩水よりもμを減少させることが示されており(3.3mg/ml HAにおける0.12vs.PBSにおけるほぼ0.24)、ラブリシン単独は、更により低いレベルまでμを減少させるが、ラブリシンと組み合わせてHAを含む滑液は、ラブリシン単独又はHA及びラブリシンの合成混合物によっては達成されない摩擦係数を表面に付与することができる。ラブリシン及びHAの合成組成物は未だに、天然型滑液によって付与される低い摩擦係数を完全に再現することはできていない。様々な供給源由来の様々な分子量のHAが、滑膜細胞からin vitroで発現されたラブリシン、ウシラブリシン、滑液から抽出されHA中で「再構成」されたラブリシン、及びラブリシンを作製するための初期努力において組換えDNA技術を用いてマイクログラム量で発現されたラブリシンとの混合物において検査されてきた。

[0009] 商業開発に適した規模での全長ラブリシンの組換え産生における以前の試みは、成功したとはいえない。CHO細胞から発現されるヒトラブリシン種の、1リットル当たり1又は2桁のミリグラム数という非常に低い産生量は、商業製品を支持するには低すぎると考慮される。この問題を解決するためのアプローチの1つは、エクソン6における反復数をトランケートし、したがって、少なくともある程度の潤滑能力を保持しつつ、グリコシル化側鎖の質量を低下させることである(例えば、米国特許第7,642,236号及び同第7,893,029号を参照)。このアプローチは、報告によれば、1リットル当たり3〜4百ミリグラムのトランケート型コンストラクトの総産生量(精製前の)をもたらした。

概要

商業開発に適した規模での全長ラブリシンの組換え産生方法を提供する。優れた潤滑特性及び新規グリコシル化パターンを有する、ヒト様ラブリシン又はPRG4糖タンパク質の新たな組換えアイソフォームと、商業的産生を可能にする高レベルでのこれらの製造のための方法であって、少なくとも30重量%のグリコシド残基を含むラブリシン糖タンパク質を少なくとも0.4g/リットル培地中濃度で産生するのに十分な時間及び培養条件下で、ヒトPRG4遺伝子をトランスフェクトされそれを発現しその発現産物翻訳後にグリコシル化するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地中で培養する工程と、前記培地からラブリシン糖タンパク質を精製する工程とを含む、組換えラブリシン糖タンパク質の製造方法。

目的

組換えPRG4の精製
[0073] 精製プロトコールの開発の目標は、これを夾雑物から分離し、凝集を回避し、高収率を維持しながら、発現されたラブリシン産物及びその多量体複合体潤滑機能を保持することである

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

少なくとも30重量%のグリコシド残基を含むラブリシン糖タンパク質を少なくとも0.4g/リットル培地中濃度で産生するのに十分な時間及び培養条件下で、ヒトPRG4遺伝子をトランスフェクトされそれを発現しその発現産物翻訳後にグリコシル化するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地中で培養する工程と、前記培地からラブリシン糖タンパク質を精製する工程とを含む、組換えラブリシン糖タンパク質の製造方法。

請求項2

前記CHO細胞が、前記ヒトPRG4遺伝子をコードする核酸を含むCHO−M細胞である、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記CHO細胞が、クロマチンエレメントをコードする核酸を含む第1のベクター及び前記ヒトPRG4遺伝子をコードする核酸を含む第2のベクターをトランスフェクトされる、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

前記クロマチンエレメントが、境界エレメントマトリックス付着領域遺伝子座調節領域又はユニバーサルクロマチンオープニングエレメントである、請求項3に記載の方法。

請求項5

前記クロマチンエレメントが、マトリックス付着領域である、請求項4に記載の方法。

請求項6

前記細胞が、前記ラブリシン糖タンパク質を少なくとも0.5g/リットルの培地中濃度で産生するのに十分な時間及び培養条件下で培養される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項7

前記細胞が、前記ラブリシン糖タンパク質を少なくとも0.8g/リットルの培地中濃度で産生するのに十分な時間及び培養条件下で培養される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項8

前記細胞が、前記ラブリシン糖タンパク質を少なくとも1.0g/リットルの培地中濃度で産生するのに十分な時間及び培養条件下で培養される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項9

前記細胞が、前記ラブリシン糖タンパク質を少なくとも2.0g/リットルの培地中濃度で産生するのに十分な時間及び培養条件下で培養される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項10

前記ラブリシン糖タンパク質のグリコシル化の少なくとも95重量%が、コア1のグリコシル化である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

請求項11

前記ラブリシン糖タンパク質のグリコシル化の少なくとも99重量%が、コア1のグリコシル化である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

請求項12

前記グリコシド残基が、天然ヒトラブリシンと比較して硫酸化糖類側鎖に富む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。

請求項13

前記ラブリシン糖タンパク質が、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの静止摩擦係数の150%以下の静止摩擦係数を生ずる多量体タンパク質を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

請求項14

前記ラブリシン糖タンパク質が、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの静止摩擦係数の120%以下の静止摩擦係数を生ずる多量体タンパク質を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

請求項15

前記ラブリシン糖タンパク質が、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの静止摩擦係数の110%以下の静止摩擦係数を生ずる多量体タンパク質を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。

請求項16

前記ラブリシン糖タンパク質が、前記培養培地から多量体ラブリシン種と共精製され、前記多量体ラブリシン種と混合してる単量体ラブリシン種を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。

請求項17

前記ラブリシン糖タンパク質が、二量体ラブリシン種を含む、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。

請求項18

前記ラブリシン糖タンパク質が、ジスルフィド結合又は非共有結合により会合した個々のグリコシル化アミノ酸鎖を少なくとも5個含み、少なくとも1200kDaの分子量を有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。

請求項19

前記細胞が、少なくとも10、50又は100リットルの培地において培養される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。

請求項20

前記ラブリシン糖タンパク質が、少なくとも35重量%のグリコシド残基を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。

請求項21

請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法によって産生されるラブリシン糖タンパク質。

請求項22

宿主細胞培養液においてヒトPRG4遺伝子から発現された組換え多量体ラブリシン糖タンパク質であって、少なくとも30重量%のグリコシド残基を含み、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの動摩擦係数の150%以下の動摩擦係数を生ずる組換え多量体ラブリシン糖タンパク質を含む組成物

請求項23

前記ラブリシン糖タンパク質が、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの動摩擦係数の120%以下の動摩擦係数を生ずるものとして特徴付けられる、請求項22に記載の組成物。

請求項24

前記ラブリシン糖タンパク質が、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの動摩擦係数の110%以下の動摩擦係数を生ずるものとして特徴付けられる、請求項22に記載の組成物。

請求項25

前記ラブリシン糖タンパク質が、少なくとも35重量%のグリコシド残基を含む、請求項22〜24のいずれかに記載の組成物。

請求項26

前記ラブリシン糖タンパク質が、少なくとも40重量%のグリコシド残基を含む、請求項22〜24のいずれかに記載の組成物。

請求項27

前記ラブリシン糖タンパク質のグリコシル化の少なくとも99重量%が、コア1のグリコシル化である、請求項22〜26のいずれかに記載の組成物。

請求項28

前記グリコシド残基が、天然ヒトラブリシンと比較して硫酸化糖類側鎖に富む、請求項22〜27のいずれかに記載の組成物。

請求項29

多量体ラブリシン種と混合している単量体ラブリシン種を更に含む、請求項22〜28のいずれかに記載の組成物。

請求項30

二量体ラブリシン種を含む、請求項22〜29のいずれかに記載の組成物。

請求項31

少なくとも1200kDaの分子量を有する、ジスルフィド結合又は非共有結合により会合した個々のグリコシル化アミノ酸鎖を少なくとも5個含むラブリシン種を含む、請求項22〜30のいずれかに記載の組成物。

請求項32

前記ラブリシン糖タンパク質と混合しているヒアルロン酸又はその塩を更に含む、請求項22〜31のいずれかに記載の組成物。

請求項33

関節内補充療法による関節結合部の処置のための医薬の調製のための、請求項22〜32のいずれかに記載の組成物。

請求項34

組織表面への局所的適用のための医薬の調製のための、請求項22〜32のいずれかに記載の組成物。

請求項35

ドライアイ疾患の処置のための医薬の調製のための、請求項22〜32のいずれかに記載の組成物。

請求項36

後に接着又は線維性結合組織が形成されるのを阻害するための、外科手術における身体表面への適用のための医薬の調製のための、請求項22〜32のいずれかに記載の組成物。

請求項37

脈管構造内の細胞−細胞接着又は運動性を阻害するための、全身注射のための医薬の調製のための、請求項22〜32のいずれかに記載の組成物。

請求項38

トラブリシン100gを含む溶液を含む組成物であって、前記ラブリシンが、少なくとも99重量%がコア1のグリコシル化であるグリコシル化を含む組成物。

請求項39

前記ヒトラブリシンが、組換えヒトラブリシンである、請求項38に記載の組成物。

請求項40

溶液における前記ラブリシンの濃度が、少なくとも0.5g/Lである、請求項38又は39に記載の組成物。

技術分野

0001

関連出願の相互参照
[0001] 本願は、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその内容全体を組み込む、2013年10月22日に出願された米国特許仮出願第61/894,366号に対する優先権及び利益を主張するものである。

0002

[0002] 本明細書に開示されている発明は、トランスフェクトされた細胞を用いた、組換えヒトラブリシンを含む商業的な量の組成物を産生する方法に関する。より具体的には、本発明は、優れた潤滑特性を有し、また、製剤化して、例えば、関節痛からドライアイ疾患に及ぶ様々な状態の予防的又は治療的処置のために用いることができる、新規型のラブリシンの商業的規模での産生に関する。

背景技術

0003

[0003]プロテオグリカン4(PRG4)遺伝子は、ラブリシン、巨核球刺激因子(MSF)又は表在ゾーンタンパク質(SZP)と命名された、高度にグリコシル化された表面潤滑タンパク質をコードする(Jay, Curr. Opin. Orthop. 15, 355 (2004);米国特許第6,743,774号;米国特許第6,960,562号を参照)。ラブリシンは、12エクソンに及ぶ全長を有するPRG4遺伝子(配列番号2)から発現されるが、複数の天然起源トランケートバージョン報告されている。940アミノ酸の大型の「ムチン様」中央ドメイン(エクソン6にコードされる)は、約70+KEPAPTT様配列を含み、重度にグリコシル化される。この糖タンパク質は、コア2グリコシル化残基及び多重コア1グリカンO結合型β(1−3)Gal−GalNAcオリゴ糖)を含み、そのうち少なくとも後者は、その主要な生理的機能境界潤滑を媒介することが示されている(Jay et al., Glycoconj J 18, 807 (2001))。PRG4は、軟骨滑膜及び半月板の表面、涙膜ならびに他の解剖学的部位に存在することが示されている。PRG4は、並置された関節軟骨表面の境界潤滑に寄与することが示されている。PRG4は、単量体としてのみならず、N及びC末端の両方における保存されたシステインリッチドメインを介してジスルフィド結合された二量体及び多量体としても存在することが示されている(Schmidt etal., BiochimBiophys Acta. 1790(5):375-84 (2009); Kooyman et al., Paper No.255, 56th Ann. Meet of Orthop. Res. Soc., 2010)。

0004

[0004]滑膜結合部の軟骨界面において働いている潤滑には少なくとも2種の物理化学的モードが存在する。これらは、「境膜(fluid film)」及び「境界」として分類された。稼働潤滑モードは、関節組織における垂直抗力及び接線力、これらの表面間の接線運動相対速度、ならびに負荷及び運動の両方の時間履歴に依存する。摩擦係数、μ(無次元単位、相対運動における2個の接触表面間の測定された摩擦力の、加えられた垂直抗力に対する比)は、潤滑の定量的尺度をもたらす。

0005

[0005]流体媒介性潤滑又は「境膜」モードの1種は、静水力学的である。負荷の開始時及び典型的には延長された持続時間において、組織の二相的性質のため、軟骨内間質液加圧され、また流体は、浸出(weeping機構により関節表面間の凹凸へと押しやられる場合もある。ヒアルロン酸を含む加圧された間質液及びトラップされた潤滑剤プールは、したがって、剪断応力に対し殆ど抵抗せずに垂直(normal)負荷に耐えることにかなり寄与し、これによって摩擦係数が非常に低くなりやすくなる。また、負荷及び/又は運動の開始時に、スクイズ膜(squeeze film)、水力学及び弾性流体力学型の境膜潤滑が起こることができ、相対運動において、加圧、運動及び変形は、粘稠性潤滑剤が2表面間の間隙から及び/又はそこを通って押し出されるように作用する。

0006

[0006]境界潤滑において、負荷は、表面−表面の接触によって支持され、関連する摩擦特性は、潤滑剤表面分子、即ち、ラブリシン種によって決定される。対向する軟骨層は、かみ合い平らになった凹凸により総面積の+/−10%にわたって接触し、これは摩擦の大部分が起こる場所である可能性が高いため、このモードは重要である。境界潤滑は、本質的に、「スティックスリップ(stick-slip)」(Meyer et al., Nanoscience: Frictioin and Rheology on the Nanometer Scale, World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd, River Edge, N.J., (2002), pp. 373)、即ち、界面荷重負荷軟骨表面が互いに滑る際に起こり得る自発ジャーキング運動を軽減し、したがって、定常運動及び運動のスタートアップの両方に対する抵抗減少として現れる。軟骨表面の典型的な摩耗パターンは、関節軟骨の境界潤滑が、関節表面構造の保護及び維持に重大であることを示唆する。例えば、ラブリシンヌルマウスは、摩耗を示すが、荷重負荷がない新生仔マウス(nice)は示さない(Jay et al., Arthritis and Rheumatism,56:3662-3669 (2007))。

0007

[0007]負荷時間及び静水圧散逸が増加するほど、潤滑剤コーティングされた表面は、加圧された流体に対しますます高い配分の負荷に耐え、結果的に、μは、境界モードの潤滑がますます支配的となり得る。したがって、境界モードの潤滑は、相対的滑り速度及び軸負荷等、境膜形成に影響を与える因子に関して不変である、定常滑りにおける摩擦係数によって示される。関節軟骨では、流体加圧及び他の機構によって補完されるが、境界潤滑が確実に起こることが結論付けられた。瞬目の際の角膜及び眼瞼の界面における潤滑機構は、かなりの負荷を伴うことはなく、したがって、有効潤滑のための物理化学的要件緩和されるので、軟骨潤滑とは全く異なる可能性がある。しかし、ドライアイ疾患等、涙膜が損なわれた場合、境界モードの潤滑が優占的となり得ることが提案されている。

0008

[0008] その注目すべき潤滑特性の原因となると考えられる滑液の2種の機械的構成成分は、ラブリシン及びヒアルロン酸(又はヒアルロネート(hyaluronate)もしくは「HA」、以後互換的に用いる)である。ラブリシンは、関節結合部における境界潤滑剤として機能し、摩擦力、細胞接着及びタンパク質沈着から軟骨表面を保護することが示された。例えば、米国特許第6,960,562号及び同第6,743,774号は、実質的に純粋なPRG4アイソフォームを含む潤滑ポリペプチドと、全身投与又は組織に直接的に投与することにより結合部又は他の組織を潤滑する方法とを開示する。HAそれ自体は、境界モード潤滑で、軟骨−軟骨界面において生理食塩水よりもμを減少させることが示されており(3.3mg/ml HAにおける0.12vs.PBSにおけるほぼ0.24)、ラブリシン単独は、更により低いレベルまでμを減少させるが、ラブリシンと組み合わせてHAを含む滑液は、ラブリシン単独又はHA及びラブリシンの合成混合物によっては達成されない摩擦係数を表面に付与することができる。ラブリシン及びHAの合成組成物は未だに、天然型滑液によって付与される低い摩擦係数を完全に再現することはできていない。様々な供給源由来の様々な分子量のHAが、滑膜細胞からin vitroで発現されたラブリシン、ウシラブリシン、滑液から抽出されHA中で「再構成」されたラブリシン、及びラブリシンを作製するための初期努力において組換えDNA技術を用いてマイクログラム量で発現されたラブリシンとの混合物において検査されてきた。

0009

[0009] 商業開発に適した規模での全長ラブリシンの組換え産生における以前の試みは、成功したとはいえない。CHO細胞から発現されるヒトラブリシン種の、1リットル当たり1又は2桁のミリグラム数という非常に低い産生量は、商業製品を支持するには低すぎると考慮される。この問題を解決するためのアプローチの1つは、エクソン6における反復数をトランケートし、したがって、少なくともある程度の潤滑能力を保持しつつ、グリコシル化側鎖の質量を低下させることである(例えば、米国特許第7,642,236号及び同第7,893,029号を参照)。このアプローチは、報告によれば、1リットル当たり3〜4百ミリグラムのトランケート型コンストラクトの総産生量(精製前の)をもたらした。

課題を解決するための手段

0010

[0010] ヒトPRG4遺伝子を用いて、大規模な商業的な量の、以後単純に「ラブリシン」と称する新規の高度にグリコシル化されたヒト様型のラブリシン、多量体ラブリシン、rhラブリシン又はrhPRG4を産生することができることが今や発見された。これは、本明細書に開示されている通りに、大規模な発現タンパク質翻訳後グリコシル化能があることが発見されたある特定の修飾チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にヒトPRG4遺伝子(hPRG4)をトランスフェクトし、続いてこの細胞を商業的規模の容量の培地、例えば、少なくとも10リットル、より典型的には少なくとも50リットル、好ましくは少なくとも100リットル又は少なくとも500リットル、最も好ましくは1,000リットル以上で培養することにより成し遂げられる。

0011

[0011] 本発明のラブリシンは、二量体及び多量体ならびに任意選択により遊離単量体を形成する、多分散ラブリシン単量体単位を含む。各単位は、重度に且つ可変的にグリコシル化されており、グリコシド残基側鎖は、その分子量の少なくとも30%、多くの場合、35%又は40%、恐らく45%以上もの高さに寄与する。

0012

[0012]天然ヒトラブリシンにおいて、グリコシル化は、その少なくとも60%がシアル酸末端置換されているコア1のO結合型GalNAc−Gal(N−アセチルガラクトサミンガラクトース二糖と、また、様々な異性立体配置におけるGlcNac(N−アセチルグルコサミン単糖のコア1への付加を伴うコア2グリコシル化からなる(例えば、Estrella et al., Biochem J., 429(2):359-67 (2010)を参照)。

0013

[0013] 本明細書に開示されている通りに産生された組換え材料は、天然型ヒトラブリシンと比較して、コア1グリカンに富む。そのグリコシル化は、少なくとも95%コア1側鎖、より可能性が高いことには、98%又は99%超を含む。更に、側鎖は多くの場合、天然ヒトラブリシンでは見られない程度にまで硫酸化されている。この事実は、天然hPRG4から本発明のrhPRG4を区別する。硫酸化含量が増加すると、ムチン性(mucinous)糖タンパク質に更に負電荷を加え、これは付近生体分子を追い払うその能力を増強することで潤滑性を増加させ、また、分子構造硬化させ、分子の観点からこれをより強固にすることに役立つ可能性がある。これはナノスケール及びメソスケール(mesoscale)摩擦を低下させることで機能するその能力の補助になり得ると考えられる。

0014

[0014]全長(非トランケート型)ラブリシン単量体配列(配列番号1)は、コアタンパク質において1404アミノ酸又はおよそ151kDaを含む。ヒトラブリシンのシグナル配列は、配列番号1の残基1〜24である。したがって、成熟型のヒトラブリシンは、配列番号1の残基25〜1404である。本明細書に開示されている通りに産生された組換え産物の完全還元は、SDS tris−アセテート3〜8%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を含む多数の分子量決定技法における分子量標準との比較によって推定される約300kDa〜460kDaの見かけ上の分子量を有する単量体種を生じる。質量分析法及び他の研究を組み合わせて用いたグリコシル化解析は、グリコシル化された組換え単量体の真の分子量(ゲル移動度から推論される分子量とは反対に)が、220〜280kDaの範囲内に収まる可能性が高く、約300kDaを超える可能性が低いことを示唆した。ラブリシン単量体の配列におけるO結合型グリコシル化部位として潜在的に利用できる総計約329個の可能なO結合(そのうち284個はスレオニン)のうち多数が、その数はばらつきがあり未知であるが、置換される(100〜150、恐らく200又は220個もの多さ)。総グリコシル化のうち、約半分が2糖単位(GalNAc−Gal)を含み、半分は3糖単位(GalNAc−Gal−シアル酸)を含む。最も豊富な型は硫酸化Gal−GalNacであり、次に最も豊富なのはシアル酸付加Gal−GalNacである。

0015

[0015]ラブリシン発現産物は、単量体又は二量体ラブリシン種への崩壊に対し抵抗性であるが、影響がない(immune)訳ではない。完全還元の結果は、これが、単量体単位の間及びその内にジスルフィド架橋を含むことを暗示する。また、還元なしの変性バッファーによる処理は、より低分子量の産物をもたらすことができ、疎水性相互作用水素結合物理的な絡み合い及び/又は自己集合を可能にする他の非共有結合的会合によっても同様に鎖が一体に結び付けられた、より高次四次構造を示唆する。二量体及び多量体は多分散である。その内にある分子種は典型的には、少なくとも約450〜600kDaの分子量を有し、多量体種は多くの場合2,000kDa以上である。典型的には、還元していない複合体の一部の分子種は、電気泳動実験における3〜8%SDS−PAGEゲルに基本的に入っていかない。複合体のより大型の分子種は、3〜5の間、恐らくは20もの多さの単量体単位を含むと考えられる。

0016

[0016] 理論に制約されることは望まないが、斯かるより大型の超分子構成成分は、単量体/二量体濃度に応じて形成されると考えられる。現在、少なくとも約0.5mg/ml単量体/二量体の濃度が、より大型の複合体の自発的形成に最適であると考えられる。これを優に下回る濃度、例えば、約0.1mg/ml未満は、単量体及び二量体ならびにごく少量の複合体を含む;優に上回る濃度は、った又は濁った溶液として肉眼で目に見え凝集塊を形成することができる。サーファクタント、好ましくは、一般に安全と考慮される生理的に適合性非イオン性サーファクタント、例えば、ポリオキシエチレンに基づくサーファクタント又は賦形剤を用いて、常に二量体種と共に存在すると思われる複合体の形成を可能にしつつ、大型の凝集塊形成を防止することができる。

0017

[0017] 本発明のラブリシンを含む調製物の検査は、負荷下におけるその潤滑及び組織保護特性が、本技術分野において今までに知られた組換えラブリシンを超え得ることを示す。理論に制約されることは望まないが、本発明者らは、負荷下の非潤滑界面組織の移動の際にスティックスリップ現象が起こるが、本発明のラブリシンのコーティングは、その下層の軟骨表面から多分散ラブリシンのコーティング内の層へと剪断を移動することができると仮定する。即ち、本発明者らは、負荷及び往復運動において、コーティング内のラブリシン分子が互いにスリップし、続いて負荷が取り除かれると再編成する可能性があるため、その下層の表面が受ける剪断が少なく、その完全性を保持すると考える(例えば、Lee et al., PNAS, 110(7):E567-574 (2013)を参照)。本発明者らは、結合部摩耗が、摩擦係数と直接的には関係しないが、スティックスリップ滑りとより直接的に関係し、結合部の異なる分子構成成分が相乗的に作用して、摩耗を防止することを記述する。

0018

[0018] いずれにせよ、本発明のラブリシン産物は、検査した場合、優れた潤滑特性を示し、多くの場合、本明細書に開示されている軟骨−軟骨(cartilage-on-cartilage)の潤滑検査によって測定される、精製された天然ウシラブリシンの係数の150%、120%、110%以内又は基本的に等しい摩擦係数(静止摩擦係数及び動的摩擦係数の両方)をもたらす。このような検査で、本発明のヒト様糖タンパク質は、両者共に定常的接触区域(stationary area of contact)によるin vitroでの軟骨ベアリングにおける減圧軟骨によって測定される、0.5以下及び0.2に満たない(本明細書に開示されている検査条件に依存)の静止摩擦係数ならびに多くの場合約0.1以下の動的摩擦係数を達成する。ヒアルロン酸(HA)と組み合わせると、これらの値は、ある特定の静止時における測定に関して約0.3を下回る及び0.1未満(滞留時間に依存)ならびに動的測定に関して0.1未満へと改善し、これは滑液に認容される値に極めて近い。したがって、斯かる組成物は、結合部摩耗を劇的に低下させることができる。

0019

[0019] したがって、本発明の一態様は、ラブリシンの商業的産生のための方法を含む。一実施形態において、本方法は、ラブリシン糖タンパク質を産生するのに十分な時間及び培養条件下で、ヒトPRG4遺伝子をトランスフェクトされそれを発現しその発現産物を翻訳後にグリコシル化するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培地中で培養する工程と、前記培地からラブリシン糖タンパク質を精製する工程とを含む。例えば、一部の実施形態において、ラブリシン糖タンパク質は、少なくとも部分的に精製するために、細胞外ブロスにおける宿主細胞タンパク質及び他の夾雑物から分離する。組換えタンパク質は、本発明の方法の目的のために精製するためには、培養培地から濃縮されていれば十分であり、均一になるまで精製されている必要はない。本方法は、少なくとも30重量%のグリコシド残基を有するラブリシン糖タンパク質を少なくとも0.4g/Lの培地中濃度で産生するのに十分である。

0020

[0020] 一部の実施形態において、CHO細胞は、ヒトPRG4遺伝子をコードする核酸を含むCHO−M細胞である。他の実施形態において、CHO細胞は、クロマチンエレメントをコードする核酸を含む第1のベクターをトランスフェクトされ、かつヒトPRG4遺伝子をコードする核酸を含む第2のベクターをトランスフェクトされる。クロマチンエレメントは、境界エレメントマトリックス付着領域遺伝子座調節領域又はユニバーサルクロマチンオープニングエレメントであってよい。好ましい実施形態において、クロマチンエレメントは、マトリックス付着領域である。

0021

[0021] 更に別の実施形態において、CHO細胞は、クロマチンエレメントをコードし、ヒトPRG4遺伝子をコードする核酸を含む第1のベクターをトランスフェクトされ、かつクロマチンエレメントをコードし、ヒトPRG4遺伝子をコードする核酸を含む第2のベクターをトランスフェクトされる。好ましい実施形態において、第1及び第2のベクターにおけるクロマチンエレメントは、マトリックス付着領域である。

0022

[0022] 一部の実施形態において、二量体又は多量体ラブリシン糖タンパク質の重量の少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%又は少なくとも45%は、グリコシド残基の重量である。一部の実施形態において、二量体又は多量体ラブリシン糖タンパク質の重量の30%超、35%超、40%超又は45%超は、グリコシド残基の重量である。組換えヒト様ラブリシンのグリコシル化は、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99重量%がコア1のグリコシル化であるため、グリコシド残基は、天然ヒトラブリシンのものとは異なることができる。また、一部の実施形態において、グリコシド残基は、天然ヒトラブリシンと比較して、硫酸化単糖に富む。

0023

[0023]本プロセスは、予想外なことに、商業的に存立可能な量の全長ラブリシン糖タンパク質を産生することができる。例えば、細胞は、1リットル当たり少なくとも約0.4グラム又は0.5グラム組換えラブリシン、好ましくは、1リットル当たり少なくとも0.8グラム、最も好ましくは、例えば、少なくとも約10、50又は100リットルの培養において培養培地1リットル当たり少なくとも1.0グラムのラブリシンの培養培地中ラブリシン糖タンパク質濃度を生ずるのに十分な時間及び培養条件下で培養することができる。本プロセスは、最適化されると、培養1リットル当たり2.0、少なくとも2.5又は少なくとも3.0グラムもの多さのラブリシンを産生することができる。最適化された精製プロトコールの開発に応じて、1リットル当たり少なくとも約200ミリグラムの精製された組換えラブリシン、好ましくは、少なくとも300mg/L、より好ましくは、少なくとも500mg/L、最も好ましくはそれ以上を得ることが可能となるであろう。本出願人らが認識する限りにおいて、これらのレベルの産生量は、いかなるムチン様タンパク質又はラブリシンにサイズが匹敵するタンパク質の組換え発現においてもこれまでに達成されたことがなく、PRG4の発現における以前の試みのうち、本明細書に記載されている産物の特性を有する材料を製造することに成功したものはない。

0024

[0024] 好ましい実施形態において、単量体ラブリシン種は、多くの場合、多量体タンパク質種と混合されて、培養培地から共精製される。多量体種は、二量体ラブリシン種に富む。例えば、一部の実施形態において、本方法は、単量体、二量体及び多量体ラブリシン種を含む組換えラブリシンの混合物を産生する。一部の実施形態において、ラブリシン糖タンパク質は、ジスルフィド結合又は非共有結合により会合した個々のグリコシル化アミノ酸鎖を少なくとも5個含み、少なくとも1200kDaの分子量を有する。

0025

[0025] 本発明の方法に従って産生された糖タンパク質は、下に概要を述べるプロトコールを用いて検査されると、精製された天然哺乳類ラブリシンに関してこれまでに観察された最低値に近い摩擦係数を生ずる。例えば、一部の実施形態において、組換えラブリシン糖タンパク質は、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの静止摩擦係数の150%以下の静止摩擦係数を生ずる多量体タンパク質である。他の実施形態において、組換えラブリシン糖タンパク質は、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの静止摩擦係数の120%以下の静止摩擦係数を生ずる多量体タンパク質である。更に他の実施形態において、組換えラブリシン糖タンパク質は、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの静止摩擦係数の110%以下の静止摩擦係数を生ずる多量体タンパク質である。

0026

[0026] 本発明の別の態様は、宿主細胞培養液においてヒトPRG4遺伝子から発現された組換え多量体ラブリシン糖タンパク質の組成物を対象にする。組換えラブリシン糖タンパク質は、少なくとも30重量%がグリコシド残基であり、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの動摩擦係数の150%以下の動摩擦係数を生ずる。

0027

[0027] 一部の実施形態において、組換えラブリシン糖タンパク質は、少なくとも35%、少なくとも40%又は少なくとも45重量%がグリコシド残基である。

0028

[0028] 一部の実施形態において、組換えラブリシン糖タンパク質は、軟骨−軟骨摩擦検査において測定される、精製された天然ウシラブリシンの動摩擦係数の110%以下又は120%以下の動摩擦係数を生ずる。

0029

[0029] 一部の実施形態において、組換えラブリシンのグリコシル化は、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも99重量%がコア1のグリコシル化であるため、組換えラブリシンのグリコシド残基は、天然ものとは異なる可能性がある。また、一部の実施形態において、組換えラブリシンのグリコシド残基は、天然ヒトラブリシンと比較して、硫酸化単糖に富む。

0030

[0030] 一部の実施形態において、組換えラブリシンは、単量体、二量体及び多量体種の混合物である。一部の実施形態において、ラブリシンは、単量体種を含む。一部の実施形態において、ラブリシンは、二量体種を含む。一部の実施形態において、ラブリシンは、多量体種を含む。一部の実施形態において、ラブリシンは、多量体及び単量体種の混合物である。

0031

[0031] 一部の実施形態において、ラブリシン糖タンパク質は、ジスルフィド結合又は非共有結合により会合した個々のグリコシル化アミノ酸鎖を少なくとも5個含み、少なくとも1200kDaの分子量を有する。

0032

[0032] 一部の実施形態において、組換えラブリシン糖タンパク質の組成物は、ラブリシンと混合しているヒアルロン酸又はその塩を更に含む。

0033

[0033] 別の実施形態において、本発明は、ヒトラブリシン100グラムを含む溶液を含む組成物を対象とし、このラブリシンのグリコシル化は、少なくとも99重量%がコア1のグリコシル化である。一実施形態において、ラブリシンは、組換えヒトラブリシンである。更に別の実施形態において、溶液におけるラブリシンの濃度は、少なくとも0.5g/Lである。更に別の実施形態において、溶液は、細胞培養培地である。

0034

[0034] 本発明の組成物は、身体との接触を目的とする様々なデバイスのコーティングとして(例えば、米国特許出願公開第2009/0068247号及び同第2011/0142908号を参照);結合部潤滑の増強によるヒトもしくは動物における関節結合部の処置のため(米国特許出願公開第2004/0229804号)又は関節内補充療法(米国特許出願公開第2008/0287369号);例えば、後に接着又は線維性結合組織が形成されるのを阻害するための外科手術における組織表面への局所的適用のため(米国特許出願公開第2004/0229804号);ドライアイ疾患の処置のため(米国特許出願公開第2011/0059902号);口渇疾患の処置のため(米国特許出願公開第2013/0039865号);間質性膀胱炎の処置のため(米国特許出願公開第2012/0321693号);潤滑剤として(米国特許出願公開第2012/0052077号);コンタクトレンズケア及び貯蔵溶液のため(米国特許出願公開第2012/0321611号)或いは例えば、脈管構造内の細胞−細胞接着又は運動性を阻害するための全身注射のため(例えば、2013年11月26日に出願された米国特許仮出願第61/908,959号を参照)を含む、PRG4糖タンパク質のいずれかの公知の又は今後発見される医学的又は他の使用のための医薬の調製に用いることができる。

図面の簡単な説明

0035

[0035]本発明のプロセスにおいて用いられるラブリシン発現CHO−Mクローン構築において用いられる、hPRG4の全長配列をコードするベクターのプラスミドマップを示す図である。
[0035]本発明のプロセスにおいて用いられるラブリシン発現CHO−Mクローンの構築において用いられる、hPRG4の全長配列をコードするベクターのプラスミドマップを示す図である。
[0036]本発明のrhラブリシンの構造の評価において有用なポリアクリルアミドゲルを示す写真である。
[0036]本発明のrhラブリシンの構造の評価において有用なポリアクリルアミドゲルを示す写真である。
[0037]トランスフェクトされたCHO−M細胞の培養液1リットル当たりの経時的に産生されたラブリシンのマイクログラム量を測定する、1回のラブリシン産生における産生量をグラフに示す図である。各回収日付に3種類のバーが存在する。左のバーは、「検量線14年6月24日」である。中央のバーは、「検量線14年7月24日」であり、右のバーは、「検量線14年7月25日」である。
[0038]本発明のrhラブリシンのコア1グリカンを示す図である。
[0039]本発明のrhラブリシンにおけるSER及びTHR残基における様々な二及び三糖側基の相対的存在量を示す、ピークを標識したクロマトグラフである。
[0040]ヒト滑液から抽出された天然ラブリシンにおけるコア2構造に及ぶ、より大きな範囲のグリカンを示す図である。
[0041]天然ヒトラブリシンにおける様々な糖残基の相対的存在量を示す、ピークを標識したクロマトグラフである。
[0042]rhPRG4濃度増加に伴う表面張力の低下を示す、表面張力対rhPRG4及び/又はポリオキシエチレンサーファクタント濃度プロットを示す図である。
[0042]rhPRG4濃度増加に伴う表面張力の低下を示す、表面張力対rhPRG4及び/又はポリオキシエチレンサーファクタント濃度のプロットを示す図である。
[0042]rhPRG4濃度増加に伴う表面張力の低下を示す、表面張力対rhPRG4及び/又はポリオキシエチレンサーファクタント濃度のプロットを示す図である。
[0043]精製された天然ウシPRG4、生理食塩水(PBS)及びウシ滑液に対し、どちらのPRG4調製物も450μg/mLである、rhPRG4溶液の静止(図11A)及び動的(図11B)摩擦係数を比較するデータを示す図である。記号表示a、b及びcは、結果における統計的有意差を示す(p<0.05)。n=7。図11Bにおける各バーの上の「b」の存在によって示す通り、rh−PRG4(組換え)及びnPRG4(天然)の結果に統計的有意差は存在しなかった。
[0043]精製された天然ウシPRG4、生理食塩水(PBS)及びウシ滑液に対し、どちらのPRG4調製物も450μg/mLである、rhPRG4溶液の静止(図11A)及び動的(図11B)摩擦係数を比較するデータを示す図である。記号表示a、b及びcは、結果における統計的有意差を示す(p<0.05)。n=7。図11Bにおける各バーの上の「b」の存在によって示す通り、rh−PRG4(組換え)及びnPRG4(天然)の結果に統計的有意差は存在しなかった。
[0044]生理食塩水、rhPRG4単独及びウシ滑液に対し、rhPRG4は450μg/mLであり、HA(1.5MDa)は3.33mg/mLである、HAプラスrhPRG4溶液の静止(図12A)及び動的(図12B)摩擦係数を比較するデータを示す図である。図12Bにおける各バーの上の記号表示a、b、c及びdは、結果における統計的有意差を示す(p<0.05)、n=4。
[0044]生理食塩水、rhPRG4単独及びウシ滑液に対し、rhPRG4は450μg/mLであり、HA(1.5MDa)は3.33mg/mLである、HAプラスrhPRG4溶液の静止(図12A)及び動的(図12B)摩擦係数を比較するデータを示す図である。図12Bにおける各バーの上の記号表示a、b、c及びdは、結果における統計的有意差を示す(p<0.05)、n=4。
[0045]天然ウシPRG4の消化及びrhPRG4の適用後の、界面ウシ組織表面における潤滑性の再建を示すデータの図である。
[0046]生理食塩水中300μg/mlの天然ウシPRG4及びrhPRG4ならびに生理食塩水単独の、ヒト角膜−眼瞼界面(図14A−静止、図14B−動的)及びヒト角膜−PDMS(図14C−静止、図14D−動的)界面の境界潤滑におけるrhPRG4の効果を示すデータの図である。値は平均±SEM(n=6)であり、それぞれ角膜−眼瞼(AB)及び角膜−PDMS(CD)界面の平均垂直応力(normal stress)は、14.1±2.2及び16.9±5.3(平均±SD)である。これらのデータは、低負荷潤滑タスクにおけるrhPRG4及び精製された天然PRG4の実質的に同一の潤滑特性を説明する。
[0046]生理食塩水中300μg/mlの天然ウシPRG4及びrhPRG4ならびに生理食塩水単独の、ヒト角膜−眼瞼界面(図14A−静止、図14B−動的)及びヒト角膜−PDMS(図14C−静止、図14D−動的)界面の境界潤滑におけるrhPRG4の効果を示すデータの図である。値は平均±SEM(n=6)であり、それぞれ角膜−眼瞼(AB)及び角膜−PDMS(CD)界面の平均垂直応力(normal stress)は、14.1±2.2及び16.9±5.3(平均±SD)である。これらのデータは、低負荷潤滑タスクにおけるrhPRG4及び精製された天然PRG4の実質的に同一の潤滑特性を説明する。
[0046]生理食塩水に溶解した300μg/mlの天然ウシPRG4及びrhPRG4ならびに生理食塩水単独の、ヒト角膜−眼瞼界面(図14A − 静止、図14B−動的)及びヒト角膜−PDMS(図14C−静止、図14D−動的)界面の境界潤滑におけるrhPRG4の効果を示すデータの図である。値は平均±SEM(n=6)であり、それぞれ角膜−眼瞼(AB)及び角膜−PDMS(CD)界面の平均垂直応力(normal stress)は、14.1±2.2及び16.9±5.3(平均±SD)である。これらのデータは、低負荷潤滑タスクにおけるrhPRG4及び精製された天然PRG4の実質的に同一の潤滑特性を説明する。
[0046]生理食塩水に溶解した300μg/mlの天然ウシPRG4及びrhPRG4ならびに生理食塩水単独の、ヒト角膜−眼瞼界面(図14A−静止、図14B−動的)及びヒト角膜−PDMS(図14C−静止、図14D−動的)界面の境界潤滑におけるrhPRG4の効果を示すデータの図である。値は平均±SEM(n=6)であり、それぞれ角膜−眼瞼(AB)及び角膜−PDMS(CD)界面の平均垂直応力(normal stress)は、14.1±2.2及び16.9±5.3(平均±SD)である。これらのデータは、低負荷潤滑タスクにおけるrhPRG4及び精製された天然PRG4の実質的に同一の潤滑特性を説明する。
[0047]1404アミノ酸の長さである全長ヒトラブリシンのアミノ酸配列を示す図である。シグナル配列残基(1〜24)を太字で示す。
[0048]全長ヒトラブリシンをコードする核酸配列を示す図である。

実施例

0036

[0049] 本発明者らは、無血清成長培地において哺乳類細胞活用する懸濁培養を伴う産生プロセスの作成を目標として、組換えDNA技法を用いた公知ヒトラブリシン糖タンパク質の産生のための選択肢について検討した。組換えDNA技法を用いてタンパク質を産生するための、本出願人らが知るいかなる以前の取り組みとも異なり、本課題は、その価値が、その生化学的特性とは反対に、そのナノスケールの機械的特性にある複合体の大型のバイオポリマーの商業的な量を産生することであり、これらの物理的特性は、遺伝子操作された細胞においてこれまでに観察されたことのない規模での、翻訳後グリコシル化過程の利用に成功することに依存した。

0037

[0050]全長ラブリシンの組換え産生における以前の試みは、1リットル当たり僅かなミリグラム数の量しか生じず、1リットル当たり少なくとも約1〜2グラムを産生する方法が必要とされた。文献の再検討は、全長の適切にグリコシル化されたラブリシンの商業的規模での成功した組換え産生に関するいかなる報告も、いかなるムチン又はムチン様タンパク質の商業的規模発現も明らかにしなかった。この探索から、ラブリシン等の高度にグリコシル化された糖タンパク質の発現が、極めて困難であったことを示唆する報告が見出された。例えば、「発現パラメータを最適化し、およそ76〜78種のKEPAPTT類似配列全ての機能的な必要性について検討するために、異なるO結合型オリゴ糖置換の程度を有する組換えラブリシンタンパク質の合成を可能にするラブリシン発現コンストラクトを設計した」ことを記す、米国特許第7,642,236号を参照されたい。トランケート型ラブリシンコンストラクトを発現する組換え細胞株の産生量データは、この特許において開示されていない。

0038

[0051] 本発明者らは、スイスジュネーブのSelexis S.A.を探し出し最終的にはそれに従って、発現が困難なタンパク質の産生を増強するためにエピジェネティック調節因子を発現させることを伴うSelexis技術の報告された能力に部分的に基づき、ラブリシン発現クローン培養液を作製した(ここに本明細書の一部を構成するものとしてその開示内容を組み込む、Selexis米国特許第7,129,062号及び同第8,252,917号ならびに米国特許出願公開第2011/0061117号、同第2012/0231449号及び同第2013/0143264号;Girod et al., Nat Methods4(9):747-53 (2007); Harraghy et al., Curr Gene Ther. 8(5):353-66 (2008)を参照)。

0039

[0052] Selexis技術の適用は、ラブリシンの発現に成功したクローンの構築をもたらした。解析、スケールアップ及び精製後に、新たに開発された組換え産生手によって、これまでに記載されたことがない、多量体が重度に且つ異なったかたちでグリコシル化された形態のヒト様ラブリシンと、斯かる重度にグリコシル化された、分子量が高いムチン様糖タンパク質の、前例のないレベルの収率とをもたらしたことが発見された。新たな組換えラブリシン型に富む調製物の検査は、予想外の特性を実証し、改善された生理的に適合性の組織潤滑組成物の産生を可能にした。

0040

rhラブリシン製造プロセス
宿主細胞
[0053]クロマチンの動的組織化を制御するDNAに基づくエレメント、いわゆるマトリックス付着領域を含有するその専売CHO−M細胞株を用いて、Selexisクローン産生研究を行った。CHO−M細胞株は、無血清培養条件に適応させた、組換えタンパク質の産生に用いられる、CHO−K1細胞(ATCC、Cat.#CCL−61、Lot.4765275)に由来するチャイニーズハムスター卵巣細胞株である。CHO等、安定的高発現真核細胞株の構築のためにMARを使用するための方法のためのマトリックス付着領域(MAR)と、ER膜を越えた発現産物の転位置及び/又は細胞質膜を越えた分泌関与するタンパク質を発現するようトランスフェクトされた細胞に関する、上に同定されたGirod et al.、Nat Methods4(9):747−53(2007)ならびにSelexis米国特許及び刊行物を参照されたい。CHO−Mは、治療用組換えタンパク質の産生に用いられ、より高くより安定的な発現を可能にする。その使用は、組換えタンパク質の産生における使用のための所望の高レベル発現を示すクローンの単離を可能にした。

0041

[0054]マトリックス付着領域(「MAR」)は、in vitroにおいて高親和性で単離された核スキャフォールド又は核マトリックスに結合するDNA配列である(Hart et al., Curr OpinGenet Dev, 8(5):519-25 (1998))。そのようなものとして、包含するシス調節エレメントのみが、ドメイン内の遺伝子の発現を制御するように、これは、独立的クロマチンドメインの境界を定義することができる。MAR配列は、局所的クロマチン到達性を増加させるためのエンハンサー相互作用することが示されており(Jenuweinet al., Nature, 385: 269-272 (1997))、細胞培養系統における異種遺伝子の発現を増強させることができる。ニワトリリゾチーム5’MARエレメントを有するプラスミドと、1種又は複数の発現ベクターとの同時トランスフェクションは、安定的導入遺伝子発現の増加をもたらし、これは、対照コンストラクトと比較して発現を20倍増加させことが示された。

0042

[0055] MARは、本明細書に参照されているSelexis出願及び刊行物において開示されている「クロマチンエレメント」(本明細書において、Selexis遺伝因子又はSGEとも称される)の1種である。クロマチンエレメント又はSGEは、宿主染色体への異種遺伝子の組み込み部位周囲のクロマチンが、組み込まれた遺伝子の発現レベルに影響を与えることを防止するために用いられる。クロマチンエレメントは、境界エレメント又はインスレーターエレメント(BE)、マトリックス付着領域(MAR)、遺伝子座調節領域(LCR)及びユニバーサル又は遍在性クロマチンオープニングエレメント(UCOE)を含む。発現ベクターが宿主細胞染色体に組み込まれ、これにより、導入遺伝子が非常に転写活性な状態に維持されたら、SGEはクロマチンを形作る。

0043

[0056] 8mM L−グルタミンヒポキサンチン及びチミジン(1×HT、Invitrogen)を補充したSFM4CHO培地(HyClone)において、CHO−M宿主細胞を培養した。加湿したインキュベーター内で37℃及び5%CO2にて揺動下で(120rpm、25mmストローク)細胞を維持した。

0044

ベクター構築
[0057]全長1404AAヒトラブリシンタンパク質をコードするPRG4遺伝子(配列番号2)を、哺乳類細胞における遺伝子発現の増強のための、Selexis S.A.(ジュネーブ、スイス)から市販される専売のプラスミドベクターに挿入した。全長ヒトラブリシンをコードする別の配列は、GenBank受託番号NM_005807.3により入手できる。

0045

[0058] 2種の発現ベクターを構築した。ラブリシン遺伝子を、ピューロマイシン抵抗性を保有する発現ベクター及びハイグロマイシン抵抗性を保有する別のベクターにクローニングした。ピューロマイシン抵抗性を含むベクターを、pSVpuro_C+_EF1アルファ(KOZAK-ext9)EGFP_BGHpA>X_S29(2*HindIII、SalI充填)(Mw=9861)と命名した。ハイグロマイシン抵抗性を含むベクターを、pSVhygro_C+_EF1アルファ(KOZAK-ext9)EGFP_BGH pA>X_29(2*HindIII、SalI充填)(Mw=10299)と命名した。発現ベクターは、アンピシリン抵抗性を付与するトランスポゾンTn3(AmpR)由来の細菌ベータラクタマーゼ遺伝子、及び細菌ColE1複製起点を含んでいた。pGL3Control(Promega)の誘導体として、発現ベクターのターミネーター領域は、BGHポリアデニル化シグナルの下流に配置されたSV40エンハンサーを含んでいた。各ベクターは、SV40プロモーターの制御下に、発現カセットの下流の1個のヒトX_29SGE、及び組み込まれたピューロマイシン又はハイグロマイシン抵抗性遺伝子も含んでいた。X_29SGEは、本明細書において参照されているSelexis出願及び刊行物において開示されている、Selexis遺伝因子(「SGE」)、この場合はマトリックス付着領域(MAR)を指す。両方の発現ベクターは、CMVエンハンサーにカップリングされたhEF−1−アルファプロモーターの制御下で、目的の遺伝子(PRG4)をコードした。配列決定によってプラスミドを検証した。

0046

[0059]ピューロマイシン抵抗性遺伝子を保有する及びハイグロマイシン抵抗性遺伝子を保有するベクターのプラスミドマップを、それぞれ図1及び図2に示す。

0047

トランスフェクション
[0060] CHO−M細胞のためのパルス条件(1250V、20ms及び3パルス)を定義するMicroPorator(商標)(NanoEnTek Inc.、韓国)を用いたマイクロポレーション(microporation)により、細胞をトランスフェクトした。GFP発現ベクターを並行して用いてトランスフェクション効率を調節したところ、50〜70%の間のトランスフェクション効率が認められた。CHO−M細胞をまず、ピューロマイシンPRG4発現ベクターでトランスフェクトし、最初はピューロマイシンを含有する培地において培養することにより、安定的にトランスフェクトされた細胞を選択した。より具体的には、希釈物を96ウェルプレート分注し、翌週の間に、全ウェルに100μLの新鮮選択培地を添加することにより補給した(5μg/mLのピューロマイシンを含む8mM L−グルタミン、1×HTを補充したSFM4CHO培地)。プレーティング15日後に、対応する96ウェルから、同じ培地を加え(prime)た24ウェルプレートの1ウェルへと完全細胞懸濁液を移すことにより、24ウェルプレートに27個のミニプールを再び播種(reset)した。4日以内に、24ウェル上清を解析し、14個のミニプールを6ウェルプレートに移した(選択を含む(incl. selection)1mLの細胞懸濁液+2mLの新鮮な成長培地)。最も良く発現するミニプール8個を、3日後にスピンチューブ(5mLの作業容量)における懸濁及び回収により増やし、3日後に、振盪フラスコ(20mLの作業容量)において培養した。その後の継代を1回、バンク寄託(banking)前に行った。

0048

[0061]振盪フラスコにおいて抵抗性細胞のプールを増やして、予備試験に必要な材料を作製した(1〜2mg総計)。800gで5分間の細胞培養液遠心分離により、無細胞培地試料を得た。ドットブロット解析により、組換えPRG4の発現をアッセイした。10マイクロリットルの無細胞培地(濃縮試料)を、PVDF膜(Millipore)上にスポットして試料を乾燥させた。80μg/mlのPRG4を2.5μg/mlまで系列希釈することにより、PRG4標準を作製した。PRG4のラブリシン合成ペプチドに対して作製されたポリクローナル抗体(Pierce)によって組換えPRG4を検出した。

0049

[0062] 第2の選択マーカー、ハイグロマイシン抵抗性カセットを用いて、最良成績のミニプール由来の細胞を次にスーパー(super)トランスフェクトした(既に選択されたミニプール集団に対する追加的なトランスフェクション)。上述と同じトランスフェクションプロトコールを用いた。この第2のトランスフェクションの1日後に、8mM L−グルタミン及び1×HTを再度補充したが、1000μg/mLのハイグロマイシンを含むSFM4CHO培地において選択を開始した。培地交換後に、4日以内に、3個のプールを6ウェルプレートに移した;4日後にスピンチューブ(5mLの作業容量)、3日以内に振盪フラスコ(20mLの作業容量)へと移して全三(3)個のプールを増やした。

0050

クローン作製
[0063] 次に、細胞特性最大化する試みにおいて、スーパートランスフェクトされたプールを培養し、複数の連続的実験において成長潜在力を解析した。

0051

[0064] 第1の実験において、8mM L−グルタミン、1×HT及びCell Boost5(商標)(HyClone)(選択なし)を含む半固体培地(2×SFM4CHO培地(HyClone)及びCloneMatrix(Genetics))における100細胞/mL(プール毎に2プレート)の濃度の培地交換後に、3個のスーパートランスフェクトされたプール(P01ST、P05ST及びP14STと命名)を6ウェルプレートに移した。16日後に、プレーティングされた細胞をスクリーニングし(ClonePix(商標)システム(Molecular Devices))、22個の候補を採取し、上述の成長培地(但し選択なし)の入った96ウェルプレートに移した。6日後に、対応する96ウェルから24ウェルプレートの1ウェル(1mLの培地を準備)へと完全細胞懸濁液を移すことにより、全18個の成長する候補を24ウェルプレートに再び播種した。3日以内に、24ウェルの上清を解析し、12個の候補を6ウェルプレートに移した(選択を含む1mLの細胞懸濁液+2mLの新鮮な成長培地)。7個の最も良く発現する候補を、5日後にスピンチューブ(5mLの作業容量)中の培地(選択なし)、5日以内に振盪フラスコ(20mLの作業容量)における懸濁培養に移して増やした。

0052

[0065] 全細胞株をバンク寄託した。フェドバッチ(fed-batch)培養(補給戦略−本来の容量のCB5溶液(HyClone)の16%、52mg/mL、0、3、4、5、6、7日目に補給)内の振盪フラスコ(3×105細胞/mL、20mLの培養容量を播種)において、3個の最良の候補の性能を比較した。8日目までに、培養液は、4.22×106〜4.95×106細胞/mLを含み、生存率は94%〜96%だった。これらのプールの細胞集団計数し、単細胞プレーティングのために希釈した(濃度1細胞/ウェル、2プレート)。11日後に、1ウェル当たり100μl成長培地(選択なし)を添加することにより、単一コロニーに補給した。17日後に、対応する96ウェルから24ウェルプレートの1ウェル(1mLの培地を準備)へと完全細胞懸濁液を移すことにより、99クローンを24ウェルプレートに再び播種した。4日以内に、24を6ウェルプレートに移した(選択を含む3mLの新鮮な成長培地)。8クローンを、4日後にスピンチューブ(5mLの作業容量)における懸濁培養に移して増やし、1回の培地交換(SFM4CHO培地、8mM L−グルタミン及び1×HTを補充)後に、全8クローンを、振盪フラスコ(20mLの作業容量)に移して増やした。全候補のバンク寄託前にその後の継代を1回行った。

0053

[0066]フェドバッチ培養(補給戦略A、本来の容量のCB5溶液(HyClone)の16%、52mg/mL、0、3、4、5、6、7日目に補給)による振盪フラスコ(3×105細胞/mL、20mLの培養容量を播種)において、5個の最良の候補の性能の比較を行った。3日目に、それぞれの培養液における細胞数は1.61×106〜3.46×106細胞/mLの範囲、倍加時間は19.8〜30.7時間の範囲だった。8日目に、細胞濃度は4.02×106〜9.48×106細胞/mLの範囲、細胞生存率は88.6%〜97.7%の範囲だった。

0054

[0067] 第2の実験において、3個の異なるスーパートランスフェクトされたプール(P14STcp08、P05ST11及びP14ST33と命名)を上に概要を述べた手順と同じ手順で処理した。その結果、4個のクローン細胞株がもたらされた。再度、振盪フラスコにおけるこれらのクローンの性能を比較したところ、3.5×106〜9.48×106細胞/mLの範囲の8日目の細胞濃度、及び75.3%〜88.1%の間の生存率をもたらした。

0055

[0068] 8日目に6.03×106細胞/mL及び95.5%生存率を示した、上述の第1ラウンドのClonePix(商標)システム選択由来のクローン(P14ST15)を、振盪フラスコ(20mLの作業容量)において解凍した。1回のその後の継代後に、8mM L−グルタミン、1×HT及びCell Boost5(商標)、選択なしを含む上述の半固体培地プラスCloneMatrixにおける200細胞/mL(1プレート)の濃度で、単一のプレートに候補を移した。12日後にClonePix(商標)システムを用いてプレーティングされた細胞をスクリーニングし、84クローンを採取し、96ウェルプレート(選択なし)に移した。ウェル当たり100μl成長培地を添加することにより、単一コロニーに補給した。プレーティング18日後に96ウェル上清のスクリーニングを行った。対応する96ウェルから24ウェルプレートの1ウェル(1mLの培地(選択なし)を準備)へと完全細胞懸濁液を移すことにより、最良の24個の成長するクローンを24ウェルプレートに再び播種した。3日以内に24ウェル上清を解析し、12クローンを6ウェルプレート(選択を含む1mLの細胞懸濁液+2mLの新鮮な成長培地)に移した。6個の最も良く発現するクローンを、4日後にスピンチューブ(5mLの作業容量)、4日以内に振盪フラスコ(20mLの作業容量)における懸濁培養に移して増やした。バンク寄託前に2回のその後の継代を行った。6個のクローン細胞株をバンク寄託した。

0056

[0069] 上述の振盪フラスコにおいて、6個の最良の候補の性能を比較した。8日目に、細胞密度は9.04×106〜6.40×106細胞/mLの間の範囲、生存率は74.6%〜93.1%の間であった。

0057

凍結保存(Cryoconservation)及び検査
[0070]クローンプールの複数回の継代後に(6〜31)、プールをバイアルにおいて6×106細胞/バイアルで凍結保存し、液体窒素中に貯蔵した。Venor(登録商標)Gemマイコプラズマ検出キット(Minerva Biolabs)を用いることにより、全細胞株に対しマイコプラズマの非存在を確認した。製造業者のプロトコール(Heipha、Caso-Bouillon TSB)に従って、無菌性検査物接種し、インキュベートした。全ミニプール及びスーパートランスフェクトされたミニプールの無菌性を確認した。

0058

スケールアップした培養
[0071] P05ST11−cp05と命名された細胞株をスケールアップのために選択した。200リットルランのために、次の条件及びプロトコールを用いた:

0059

0060

[0072] 1〜8日目に200リットル培養において、rhPRG4の発現は、生細胞密度VCD)と共に増加する。VCDは、8日目までにプラトーに達し、続いて降下し始めるが、これは、条件がもはや高密度細胞培養系の代謝要求に最適ではなくなると典型的に見られる。それにもかかわらず、rhPRG4の発現は不変であり続け、12〜14×106細胞/mlのVCDを有する培養系におけるその発現は、培養13日目に最大濃度に達した。図5は、HPLCプロットの曲線下面積を用いて測定された、経時的な組換えラブリシンの累積量を示し、少なくとも99%純粋ラブリシンであると考えられるものの系列希釈した試料のHPLC精製により作成された3種の異なる検量線との比較によるこの面積解釈を示す。図示されている通り、この手順によって、組換えラブリシン産生は2.5g/mlに近いと推定された。更に産生を繰り返したところ、様々な技法によって測定される見かけ上の収率が変動した。ある1回では、競合ELISAによって測定された1.5g/リットルレベルのラブリシンを産生した。別の回では、1.4g/リットルの読み取り値を産生した。

0061

組換えPRG4の精製
[0073] 精製プロトコールの開発の目標は、これを夾雑物から分離し、凝集を回避し、高収率を維持しながら、発現されたラブリシン産物及びその多量体複合体潤滑機能を保持することである。これは、ラブリシンの重度グリコシル化、その高い分子量、その抗接着及び表面潤滑特性、ならびに複合体を形成し、純度が増加するにつれて凝集して不溶性微小粒子を形成する傾向のため、これが難題であった。初期実験は、回収した培地におけるラブリシン力価が高かったため、フロースルーモードクロマトグラフィーが、精製損失の回避に必要となり得ることを示唆した。フロースルーにラブリシン産物を保持しながら、クロマトグラフィー吸着により夾雑物を抽出するための戦略を開発した。開発の経過において、収率が、例えば、ソルビタンラウリン酸モノエステルポリオキシエチレン誘導体等、非イオン性サーファクタント構成成分の使用に感受性であったことが発見された。ラブリシンプールにおける斯かるサーファクタントの省略は、クロマトグラフィー分離工程後の限外濾過ダイアフィルトレーション及び0.2μm濾過における産物の著しい損失をもたらした。たった0.1重量%のサーファクタントの使用は、収率を大いに改善した。試行錯誤により、より低濃度のサーファクタントが、機能の保持及び収率の改善に成功したことが発見された。

0062

[0074]精製プロセスにおいて用いられる非イオン性サーファクタントに加えて、[(3−コールアミドプロピル(cholamidopropyl))ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸塩CHAPS)及び/又はリジン等、生理的に適合性の形態の賦形剤は、本発明のラブリシンの溶液と混合することができ、例えば、0.4又は0.6mg/mlの濃度を超える濃度を含有する溶液におけるラブリシンの凝集を回避又は低下させるために、溶液の安定化において有益な効果を有することができる。

0063

[0075] 反復検査によって、下に表記する精製手順が開発された。

0064

[0076] 沈降によって清澄化された培地(100mL)を、5mLの200mM Tris、40mM MgCl2、pH8.2で希釈し、400ユニットのBenzonase(250ユニット/μl、Novagen)と混合して、可溶性ポリヌクレオチドを除去した。この溶液を4時間室温で混合し、次に37.8g尿素と混合して、尿素濃度を6Mに調整し、120mLの溶液をもたらした。これに1N NaOHを添加して、pH11及び0.01%Tween20(ソルビタンラウリン酸モノエステル、Sigma)に調整した。

0065

[0077] 次にBenzonase後の材料を、樹脂に夾雑物が結合するが産物が結合しないフロースルー(FT)モードにおいて、6M尿素及び0.01%Tween20の存在下でpH11のGE Q Big Beads(商標)陰イオン交換樹脂を用いて処理した。カラムをまず0.1N NaOHで消毒し;次に、100mM NaPO4、1.5M NaCl、pH7.2を入れ;200mM Tris−ホウ酸塩、6M尿素、pH10で再平衡化した。次に、30ml容量(XK26×6cm)カラムに、流速20ml/分(240cm/時間)にて120ml溶液を4ml/ml樹脂で負荷し、続いて平衡化バッファー−100mM Tris−ホウ酸塩、100mM NaCl、6M尿素、0.01%Tween20、pH11で洗浄した。負荷の直後に、ストリップ(strip)溶液0.1N NaOH+1M NaClの添加まで、洗浄(290mLの総容量)により産物を収集した。

0066

[0078] この部分的に精製されたフロースルーラブリシンプールを1Mクエン酸塩pH=7.5でpH調整し、ヒドロキシアパタイトカラム(BioRad CHT)を通過させた;カラム容量−14ml(XK16×7cm)、カラム負荷−21ml負荷/ml樹脂、流速=10ml/分(300cm/時間)。カラムをまず0.1N NaOH及び1M NaClで消毒し、500mM NaPO4、pH6.5を入れ;500mM NaPO4/6M尿素、pH7.4で再平衡化し;上の工程から得た290mLのフロースルーを負荷した。これに続き、平衡化バッファー、15mM NaPO4、6M尿素、0.01%Tween20、pH7.4で洗浄して、産物を含有する305mlのフロースルーを産生した。

0067

[0079]ヒドロキシアパタイトカラム由来のフロースルーを、1Mクエン酸塩でpH4.8に調整し、水で希釈し、続いてGE SP Big Bead樹脂を通過させた;カラム容量−6ml(XK1.6×3cm)、カラム負荷−58ml負荷/ml樹脂、流速=6.7ml/分(200cm/時間)。カラムをまず0.5N NaOHで消毒し、100mM NaPO4、1.5M NaCl、pH7.4を入れ;50mMクエン酸Na/6M尿素、0.01%Tween20、pH4.8で再平衡化し;上の工程から得た350mLのフロースルーを負荷した。これに続いて、平衡化バッファー、50mMクエン酸Na/6M尿素、0.01%Tween20、pH4.8で洗浄して、産物を含有する378mlのフロースルーを得た。次に、フロースルーを10N NaOH(pH7.2)で中和した。

0068

[0080] 50kDa分子量カットオフTangenX0.01m2フラットシーツ膜(TangenX Technology Corporation)、LPスクリーンチャネルを用いて、濃縮及びバッファー交換のため、陽イオン交換後のフロースルー産物プールを濾過した。ダイアフィルトレーションバッファーは、10mM NaPO4、150mM NaCl、pH7.2(PBS)及び0.1%Tween20であった。0.1N NaOHによる消毒;MilliQ水によるリンス;及び10mM NaPO4、150mM NaCl、pH7.2による平衡化後に、膜に、15,000ml/m2;クロスフロー70ml/分;膜横断圧力=6〜7psi;透過フロー=5〜6ml/分で負荷して、溶液をおよそ50mlに濃縮した。

0069

[0081] 最後に、UFDF後の産物プールを、ほぼ17,000ml/m2の膜負荷及び45〜50ml/分の流速でSartorius Sartopore2、150〜0.015m2膜を通した0.2μm濾過に付した。膜をまず10mM NaPO4、150mM NaCl、pH7.4で準備し、次に産物を濾過し、続いてほぼ40mlのバッファーで後追い(chase)濾過し、最後にフィルター水気を切った。

0070

[0082] UFDF及び0.2um濾過からの最終精製産物の回収を改善するための追加的な賦形剤が現在試験されている。この手順は、少なくとも96%純度の、回収した培地1リットル当たりの産物の量を大きくすることができる。代替精製戦略は、当業者には明らかであろう。

0071

ラブリシン産物の特徴付け
電気泳動
[0083]全長ラブリシンアミノ酸骨格の分子量は、150,918ダルトンである。グリコシル化の程度及び種類は、分子間で変動する。本明細書に開示されている通りに二量体種として作られた組換えPRG4は、約450kDaを超える平均分子量を有すると考えられる。単量体は、220〜280kDa且つ約300kDa以下の重量を有する筈である。

0072

[0084]図3は、精製されたまま還元していないrhPRG4、ならびに還元及びアルキル化したrhPRG4の両方のクーマシー染色ゲル(Tris-Ac3〜8%NuPAGE(登録商標)SDS-PAGEポリアクリルアミドゲル電気泳動システム、Invitrogen)を示す。番号を振ったバンドは全て、ヒト(homo sapien)PRG4(UniProt受託番号Q92954;配列番号1)にマッチするアミノ酸配列を有するラブリシンとしてMS/MSによって確認された。見て分かる通り、上述通りに産生された組換えラブリシン(NR)は、ほぼ460kDaの、分子量標準との比較によって推定されるおよその分子量を有する主要バンドを含み、その一方は、これを僅かに超え、一方は、ゲル中に侵入することができずにゲルの上部に存在する。

0073

[0085]図4におけるL−NOと標識されたレーンに示す通り、rhPRG4をノイラミニダーゼ(NaNase 1)及びO−グリコシダーゼDSにより消化して、rhPRG4のアミノ酸コアの分子量を曝露することにより、翻訳後プロセシング構成物の同定を行った。コアの予測される分子量は151kDaであり、これは、この4〜12%SDS−PAGEにより実験的に確認される。ノイラミニダーゼ単独による消化は、分子量に対する低減効果を有し、これから、グリコシル化が、ノイラミン酸により不完全キャッピングされていることが分かる。O結合型β(1−3)GalNAc−Gal残基を除去するO−グリコシダーゼDS及びノイラミニダーゼによる消化は、このタンパク質バッチが、大まかに30重量%グリコシル化されていることを暗示する。O−グリカナーゼ単独による消化は、一部のキャッピングされていないGalNAC−Gal残基の除去においてしか有効でない可能性が高い。

0074

グリコシル化解析
[0086]タンパク質を更に特徴付けるために、組換えラブリシン及び正常滑膜ラブリシン由来のO−グリカンの質量分析的解析を行って比較した。簡潔に説明すると、DEAEクロマトグラフィーを用いて滑液から滑膜ラブリシンを単離した。3〜8%Tris−アセテートゲルを用いたSDS−PAGEにより組換え及び滑膜ラブリシンを分離し、その後PVDF膜に転写した。次に、還元的β−脱離によりラブリシンブロットからO−グリカンを放出させ、続いてLC−MS/MS解析のために清浄化した。線形イオントラップ質量分析計LTQ(Thermo Scientific)におけるデータ依存的な方法を用いたネガティブモードにおけるMS/MS解析前の多孔性黒鉛化カーボンクロマトグラフィーによりO−グリカンを分離した。

0075

[0087]組換えラブリシン試料の解析は、コア1 O−グリカン構造のみを同定した(図6)。同定されたグリカンを表示する抽出されたイオンクロマトグラフ図7に示す。シアル酸付加された構造、[M−H]−675は、2個の主要ピークとして示される。これらは、同じ異性体であり、保持時間21.4分間の第2のピークは、β−脱離プロセスの際に作製された化学的誘導体である。硫酸化構造の3種の異性体([M−H]−464)を同定した。モノ硫酸化モノシアル酸付加構造の数種類の異性体も同定された。ジシアル酸付加構造は、存在量が非常に低く、クロマトグラフにおいて観察できなかった。同定されたグリカンのそれぞれの比率の推定を表1に示す(糖構造の鍵のため、図6を参照)。この解析は、表1における構造のそれぞれのあらゆる異性体、誘導体及び付加体を組み合わせる。

0076

[0088]

0077

[0089] 正常ヒト滑膜ラブリシンは、コア2構造へと伸長するより大きな範囲のグリカンを有する(図8)。これらの構造のうち最も豊富なものを、抽出されたイオンクロマトグラフにおいて図9に示す。

0078

[0090] 例えば、図9図7の比較から容易に認めることができる通り、rhラブリシンのグリコシル化パターンは、天然ヒト糖タンパク質とは非常に異なる。天然滑膜ラブリシンにおいて、シアル酸付加されたコア1構造は、最も豊富なグリカンであるが、様々な種類の有意なコア2グリコシル化と、ごく少量の硫酸化多糖が存在する。組換え糖タンパク質において、シアル酸付加及び非修飾コア1は、グリカンの半分超を構成し、硫酸化コア1構造は、同定されたO−グリカンの約3分の1を構成し、全3種の可能な異性体が同定された。

0079

rhラブリシンの物理化学的特性
サーファクタント様(両親媒性)特性
[0091] rhPRG4の重要な性状は、物理化学的吸着により生物学的及び非生物学的表面の両方をコーティングするその能力である。天然PRG4は、表面活性であり、大型のムチン様ドメインによって隔てられた末端球状ドメインが組み込まれている。これらは、その構造内で極性及び無極性ドメインへと分離する可能性がある。ヒト滑液ラブリシンについての表面力装置による研究から示されているように、中央ムチンドメインは自身に向かって折り返されることがあり、この配向性が達成されると、グリコシル化部分同士が離れることが示唆される。全体的に見て、ムチンドメインは、そのN又はC末端のいずれよりも親水性となる。このことの重要性は、グリコシル化部分を消化すると、潤滑能力が除去されることになるという知見によって裏付けられる(Jay et al., J Glycobiol 2001)。この両親媒性質は、rhPRG4にも存在する。これは、脂肪性及び水性界面の間の界面張力の低下の評価により容易に測定することができる。

0080

[0092] 本発明のプロセスを用いて作製されたrhラブリシンのサーファクタント特性を検査するように設計された実験において、希釈されていない疎水性シクロヘキサンによって覆われたPBSの溶液中に、増加する濃度のrhPRG4を加えた。rhPRG4を含有する水性副相(sub-phase)に置かれたDu Nouy環は上向きに引かれ、環が界面を突き抜ける臨界張力(Γi)を記録した。Attension Sigma 702ET張力計において、各濃度で5回測定値を収集した。rhPRG4の濃度の用量反応曲線をΓiに対しプロットし、これは図10Aを参照されたい。図示されている通り、PBSを含有する水性副相におけるrhPRG4の濃度が増加するにつれて、界面張力が減少する。

0081

[0093] rhラブリシン溶液は、残留する非イオン性サーファクタント(Tween 20)を含有していたため、このことが、組換え産物の添加によって誘導される表面張力の劇的な低下の原因となったか調べるために、まず様々な濃度のサーファクタント単独を使用して、次に非常に低濃度の本発明のrhPRG4を用いて実験を反復した。マイクロリットル量のサーファクタント及びPRG4を、15mLの水性副相に添加した。結果を図10B及び図10Cに示す。図示されている通り、PRG4単独(図10C)は、0.1%において商業的サーファクタント単独よりも表面張力を低下させる(図10B)。よって、いずれにも同じ量の目的の溶液が添加された場合、0.1%Tweenを含有する及びTweenを含有しないrhPRG4は、0.1%Tween単独よりもPBS及びシクロヘキサンの界面張力を低下させた。

0082

[0094] これらのデータは、低濃度であっても、rhPRG4が、水性−脂肪性界面に優先的に集合し、界面張力を低下させることを示す。この現象は、摩擦の低下において必要とされる表面結合相互作用を再現し、天然ラブリシンの挙動模倣する。更に、界面張力低下の活性は、rhPRG4産生の品質管理手順として用いることができる。

0083

潤滑特性
軟骨潤滑
[0095]新鮮な骨軟骨性試料(n=16)を、以前に記載された通りに、骨格的に成熟したウシ後膝関節結合部の膝蓋骨大腿溝から摩擦検査のために調製した。簡潔に説明すると、流体減圧を可能にするための中心孔半径=0.5mm)を両者共に有するコア(半径=6mm)及び弁輪(annulus)(外側半径=3.2mm及び内側半径=1.5mm)を骨軟骨性ブロックから回収した。試料をPBSにおいて4℃で激しく一晩リンスして、残留する滑液を関節表面から取り除き、潤滑の存在を検査することによりこれを確認した。次に、プロテイナーゼ阻害剤を含有するPBSにおいて−80℃で試料を凍結し、解凍し、PBSにおいて一晩再振盪して、表面上に残留するPRG4を表面から更に完全に枯渇させた。次に、翌日の潤滑検査に先立ち、約0.3mlのそれぞれの被験潤滑剤(後述)において4℃で一晩試料を完全に浸漬し、各検査後に、次の被験潤滑剤においてインキュベーションする前にPBSで再度リンスした。

0084

[0096] Bose Electroforce(登録商標)検査機器ELF3200、エデンプレーリーミネソタ州)を使用し、確立された軟骨−軟骨摩擦検査を用いてPRG4型のそれぞれ及び対照の境界潤滑能力を解析した。簡潔に説明すると、0.002mm/sの定速で、総軟骨厚さの18%まで、全試料を圧縮し、40分間応力緩和させて、間質液の減圧を可能にした。次に、減圧された軟骨−軟骨界面における境界モード潤滑を維持することが知られている有効速度で(0.3mm/s)、±2巡で試料を回転させた。1200、120、12及び1.2秒間の予すべり定常期間(pre-sliding stationary period)に放置した後、その後の定常期間それぞれの後に、+/−2巡で試料を回転した。次に反対方向の回転、つまり−/+2巡で検査順序(test sequence)を反復した。

0085

[0097] 2種の検査順序によって、単独及びHAとの組合せの両方のrhPRG4の軟骨境界潤滑能力を評価した。両方の検査順序において、PBSは陰性対照潤滑剤とし、ウシ滑液は陽性対照潤滑剤とした。rhPRG4及び精製された天然ウシPRG4の両方は、PBSにおいて450μg/mLの濃度で調製し、HA(1.5MDA Lifecore Biomedical、チャスカ、ミネソタ州)も、PBSにおいて3.33mg/mLの生理的濃度で調製した。仮定される潤滑能力増加(摩擦係数減少)順で、潤滑剤を検査した。検査順序1、rhPRG4対nbPRG4において、順序は、PBS、rhPRG4、nbPRG4、滑液(n=7)であり;検査順序2、rhPRG4対rhPRG4+HAにおいて、順序はPBS、rhPRG4、rhPRG4+HA、滑液(n=4)であった。

0086

[0098] 2種の摩擦係数;静止(μ静止,Neq)(静止状態からのスタートアップ運動の抵抗)及び動的(<μ動的,Neq>)(定常滑り運動の抵抗)を、以前に記載した通りに潤滑剤毎に計算した。結果を図11及び図12に示す。データを平均±SEMとして示す。ANOVAを用いて、1.2秒間の予すべり定常期間の<μ動的,Neq>におけるチューキー事後検定により、μ静止,Neq及び<μ動的,Neq>における反復因子として潤滑剤及び予すべり定常期間の効果を評価した。Systat12(Systat Software, Inc.、リッチモンド、カリフォルニア州)により統計解析を行った。

0087

[0099]図11に示す通り、組換えPRG4及び僅かにより低い値の天然ウシPRG4の測定された潤滑特性、動的摩擦係数の間に統計的有意性はなかった。図12に示す通り、HAと組み合わせたrhPRG4は、rhPRG4単独と比較して、静止時の潤滑性(図12A)及び動的(図12B)潤滑性の両方を改善する。全測定値はPBSにおいて最高であり、ウシ滑液において最低であり、rh−PRG4及びrhPRG4+HAは中間であった。rhPRG4+HAの混合溶液は、rhPRG4単独よりも有意に低い摩擦係数の傾向を有し(p=0.075)、ウシ滑液と統計的に同様であった(0.021±0.001、p=0.20)。

0088

[00100]ヒアルロニダーゼによる2時間酵素消化を用いて、ベアリングとしての使用を目的とするウシ軟骨からの、天然ラブリシンの除去を保証するための努力も為された。ヒアルロニダーゼ消化は、軟骨外植片の表在ゾーンから天然PRG4(P<0.050)を除去することを目的とする。この処理は、関節軟骨の機械的特徴に有意に影響を与えることなく、表面PRG4を除去する。このような表面へのrhPRG4の適用ならびにBSF及びPBS対照に対する摩擦応答の比較は、本発明のrhPRG4により低COFを再確立することができることを示す。図13は、介在する潤滑剤としてのrhPRG4、BSF及びPBSによる、ヒアルロニダーゼ処理したウシ内側顆状突起軟骨外植片のCOF値を示す。上に記述されているプロトコールに従って、上述の潤滑剤の後に骨軟骨性外植片を検査した。図示されている通り、組換えヒト様PRG4は、低COFを再確立した(rhPRG4 N=18;BSF N=6;PBS(N=8))。

0089

眼表面の潤滑
[00101]アルバータリオン(Southern Alberta Lions)アイバンクから、3mmの強膜を有する正常ヒト角膜を得た。カルガリー大学(University of Calgary)献体プログラムの新鮮な屍体からヒト眼瞼を得た。これらの組織の使用及び出(appropriatioin)の承認は、衛生研究倫理委員会(Health Research Ethics Board)から得た。角膜(n=6)は、コンドロイチン硫酸に基づく角膜貯蔵培地(Optisol-GS)において4℃で貯蔵し、2週間以内に用いた。眼瞼(n=6)を凍結し、使用時に解凍した。

0090

[00102] rhPRG4種の純度は、3〜8%Tris−アセテートNUPAGEドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動により、50%であると評価された。濃縮rhPRG4調製物の濃度をアッセイし、純度レベルを考慮に入れて調整した。

0091

[00103] 軸及び回転アクチュエータならびに軸負荷及びトルクセンサーを備えるBoseELF3200に、組織試料マウントした。強膜にシアノアクリレート接着剤(スーパーグルー)を塗布することにより、切除された角膜を半球シリコーンゴムプラグ(半径=6mm)の端に固定した。角膜−プラグ装置の周囲にシリコーンゴムスリーブを装着し、これは、潤滑剤流体の保持に役立った。次に、この装置をBose ELF3200の回転アクチュエータに取り付け、これにより、底部関節表面を形成した。モデルPDMS材料(ほぼ0.4mm厚UntrSylgard 184、Dow Corning)又はヒト眼瞼組織から弁輪(外半径=3.2mm、内半径=1.5mm)を穿孔し、弁輪ホルダーのり付けた。次に、この弁輪ホルダーを線形アクチュエータに取り付け、これにより、上部関節表面を形成した。

0092

[00104]試料をマウントした後に、0.3mlの被験潤滑剤を角膜上に置いて潤滑剤浴とし、関節表面を被験潤滑剤で少なくとも5分間平衡化した。0.3±0.02、0.5±0.03及び0.7±0.03Nの軸負荷に相当する3個の手動で決定された軸位置において、組織試料同士を接触させて、(24.6mm2)の接触面積に基づくと12.2〜28.5kPaの範囲の軸圧力をもたらす。所定の軸位置において接触したら、試料は、4種の異なる有効滑り速度で(νeff=30、10、1.0、0.3mm/s)両方向における4巡を受けた;式中、νeff=ω・reff及びreff=2/3[(ro3−ri3)/(ro2−ri2)]。回転の際に20Hzで軸負荷及びトルクを収集した。各巡の間に12秒間の滞留時間があった。後述する各検査順序は、組織が生理食塩水浴において記載の検査プロトコールを受けるプレコンディショニング工程を含んだ。

0093

[00105]ヒト角膜−眼瞼(検査1)及びヒト角膜−ポリジメチルシロキサン(PDMS、検査2)界面におけるrhPRG4調製物の境界潤滑能力を決定するために、次の検査順序を用いた:生理食塩水における300μg/mL PRG4、生理食塩水における300μg/mL rhPRG4、続いて生理食塩水(Sensitive Eyes Saline Plus、Bausch &Lomb)。

0094

[00106] この2種の界面における被験潤滑剤の有効性を判断するために、静止及び動的摩擦係数を計算した。図14に図示されている通り、PRG4及びrhPRG4の両方が、有意に且つ同様に、ヒト角膜−PDMS界面(図14C及び図14D参照)及び角膜眼瞼界面(図14A及び図14B)における摩擦を低下させた。

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