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図面 (20)

課題

悪性ヒト癌細胞性質を低段階の良性又は正常の体細胞組織細胞様の状態に再プログラムするための組成物を提供すること。

解決手段

組成物は、SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ少なくとも1つのマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を1mg/mL以下の濃度で含有し、前記pre-miRNAは、低段階の良性又は正常の体細胞組織の細胞様の状態へのヒト癌細胞の再プログラミング誘導するべく、少なくとも1つのヒト癌細胞を含んだ細胞検体と接触させて使用され、SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAは、原核細胞内で真核プロモーターにより駆動されるRNAの転写を使用することにより生産される。

概要

背景

発明の背景
幹細胞宝箱の如く、その内に、幹細胞成長/再生の誘発や損傷/老化組織回復及び/又は再生、或いは退行性疾患の処置腫瘍/癌症形成の防止に用いられる複数種の有効成分が含まれている。したがって、本発明者はこれらの幹細胞を新薬の同定や製造の手段とすることが理解できる。このことから、得られた新薬は薬学及び/又は治療への応用の発展、例えば生物薬の利用、診断装置及び/又は装備、幹細胞の生成、幹細胞の研究及び/又は治療、組織/器官の回復及び/又は再生、傷口治癒処理、腫瘍抑制、癌症の治療及び/又は予防、疾患処置、薬物の製造、及びそれらの組み合わせに用いられる。

マイクロリボ核酸mir-302はヒト胚性幹細胞(human embryonic stem,hEScell)と誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem,iPS cell)において発見された最も主要なマイクロリボ核酸(microRNA,miRNA)であるが、その機能の多くはまだ明らかではない。従来の研究では、mir-302の異所性(extopic)過剰発現、即ちヒト幹細胞(hES cells)内のレベルよりも高い発現が、遅い細胞周期速度(20〜24時間/周期)と休眠細胞様細胞形態を有している正常のhES様多能性幹細胞にヒト正常細胞癌細胞再プログラムできることを示した(Lin氏ら,2008と2011(非特許文献1及び2);US 12/792,413,EP2198025(特許文献1))。相対静止はこれらのmir-302による再プログラムで生成された多能性幹細胞(mirPS)の明確な特徴の1つであるが、一方、ヒト幹細胞(hES)及び従来の報告での3/4個の因子(即ち、Oct4-Sox2-Klf4-c-MycまたはOct4-Sox2-Nanog-Lin28)により誘発されたiPS細胞は、高度の増殖能力(12〜15時間/周期)及び容赦のない腫瘍形成傾向を呈している(Takahashi氏ら,2006(非特許文献3);Yu氏ら,2007(非特許文献4);Wernig氏ら,2007(非特許文献5))。mirPS細胞の抗増殖特性裏付け機構のほとんどはまだ解明されていないが、mir-302の標的となる2つのG1チェックポイント調節因子(G1-checkpoint regulators)が関与している可能性を発見した。これらは、サイクリン依存性キナーゼ2(cyclin-dependent kinase 2,CDK2)とサイクリンD(cyclin D)である(Lin氏ら,2010(非特許文献6);US 12/792,413)。真核細胞の細胞周期の進行はサイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinases,CDKs)の活性化により駆動され、サイクリン依存性キナーゼは、正の調節サブユニット(positive regulatory subunits)であるサイクリン及び負の調節因子(negative regulators)であるサイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDK inhibitors、CKI,例えばp14/p19Arf、p15Ink4b、p16Ink4a、p18Ink4c、p21Cip1/Waf1及びp27Kip1)と機能性複合体を形成する。哺乳動物細胞においては、異なるサイクリン−サイクリン依存性キナーゼ複合体(cyclin−CDK complexes)が細胞周期における異なる時期の移行の調節に関与し、例えば、G1期進行に関与するcyclin-D-CDK4/6、G1-S期の移行に関与するcyclin-E-CDK2、S期進行に関与するcyclin-A-CDK2、及びM期進入に関与するcyclinA/B-CDC2(cyclin-A/B-CDK1)である。これにより、mir-302の抗増殖機能はG1−S期移行期間においてCDK2とcyclin Dが共抑制された結果であることが理解できる。

しかし、ヒトmir-302の類似体であるマウスmir-291/294/295ファミリーに関する研究では、ヒト細胞におけるmir-302と機能が全く違う結果が示された。マウス胚性幹細胞(mES)においては、mir-291/294/295の異所性発現はp21Cip1(又はCDKN1Aと言う)とセリン/スレオニンプロテインキナーゼLats2(Wang氏ら,2008(非特許文献7))を直接サイレンシングすることにより、細胞の急速な増殖を促進し、形質移入された細胞の高度の腫瘍形成を引き起こした。p21Cip1/Waf1遺伝子が欠損した遺伝子導入マウスはG1チェックポイントによる制御が欠けている場合、正常の成長を示した(Deng氏ら,1995(非特許文献8))ことが知られている。しかし、Lats2は、有糸分裂開始時にλ-チューブリン(gamma-tubulin)を動員する、及び紡錘体の形成に関与するなどの機能を有しているため、その役割はまだ解明されていない。また、マウス胚におけるLats2の欠損は、有糸分裂の重度欠陥を引き起こし、致命的であると発見されたことも、Lats2のサイレンシングは細胞分裂の促進ではなく、それを阻害することを示している(Yabuta氏ら,2007(非特許文献9))。以上により、p21Cip1のサイレンシングはmir-291/294/295により誘発された腫瘍形成の裏にある主要な機構のように思われる。しかし、我々がヒトp21Cip1遺伝子のmir-302の標的部位スクリーニングした結果はすべてが陰性であった。同様な陰性の結果は最も有名な2つのオンラインのマイクロリボ核酸-標的予測プログラムである「TARGETSCAN」(http://www.targetscan.org/)及び「PICTAR-VERT」(http://pictar.mdc-berlin.de/)によっても示された。したがって、mir-302とmir-291/294/295は相同類似体であっても、それらの細胞の腫瘍形成の制御での機能は実質的に逆である。これは相同マイクロリボ核酸が同一の機能を有しない可能性があることを示した。上記の発見より、現在小干渉リボ核酸などの模倣体(mimics)が天然マイクロリボ核酸に取って代わる研究により天然マイクロリボ核酸と同じ結果が得られない可能性があることも示した。

mir-302をコードする遺伝子配列はヒト第4染色体遺伝子座4q25に位置し、長寿によく関わる保守的な領域である。さらに言えば、mir-302はLaリボ核タンパク質ドメインファミリーメンバー7(La ribonucleoprotein domain family member 7(LARP7))遺伝子のイントロン領域によりコードされ、且つイントロンマイクロリボ核酸の生合成経路により発現される(Barroso-delJesus,2008(非特許文献10);Ying氏とLin氏,2004(非特許文献11);図13)。天然mir-302には4個の相同センスファミリーメンバー(mir-302b、c、a及びd)及び3個の区別できるアンチセンスメンバー(mir-302b*、c*及びa*)が含まれ、それらが他のmiRNA、即ちmir-367と一緒に、多シストロン性リボ核酸クラスター(polycistronic RNA cluster)に転写される(Suh氏ら,2004(非特許文献12))。我々の過去の発明であったUS 12/792,413では、発明者はmir-302が他のmiRNA、例えばmir-92、mir-93、mir-367、mir-371、mir-372、mir-373、mir-374、及びmir-520ファミリーメンバー全体の発現を刺激できることを見出した。ウェブサイト「Sanger miRBase::Sequences」(http://microrna.sanger.ac.uk/)のオンラインプログラム「TARGETSCAN」と「PICTAR-VERT」を使用して分析を行ったところ、さらにmir-302とこれらの発現が刺激されるmiRNAとが400個以上の標的遺伝子共有していることが示された。これにより、これらの発現が刺激されるmiRNAとmir-302は類似した役割を果たす可能性があることを証明した。これらの共有している標的遺伝子はRAB/RAS連発癌遺伝子のメンバー、ECT関連発癌遺伝子、多形性腺腫遺伝子、E2F転写因子、サイクリンD結合Myb様(cyclin D binding Myb-like)転写因子、HMGボックス転写因子、Sp3転写因子、転写因子CP2様(CP2-like)タンパク質、NFkB活性化タンパク質遺伝子、サイクリン依存性キナーゼ、MAPK/JNK関連キナーゼ、SNF関連キナーゼ、ミオシン軽鎖キナーゼ、TNF-α−誘導タンパク質遺伝子、DAZ関連タンパク質遺伝子、LIM関連ホメオボックス遺伝子、DEAD/Hボックスタンパク質遺伝子、フォークヘッド(forkhead)ボックスタンパク質遺伝子、BMP調節因子、Rho/Racグアニンヌクレオチド交換因子、IGF受容体(IGFR)、エンドセリン受容体、左右決定因子(Lefty)、サイクリン、p53誘導性核タンパク質遺伝子、RB様1、RB結合タンパク質遺伝子、Max結合タンパク質遺伝子、c-MIR免疫認識細胞調節因子、Bcl様アポトーシス促進因子、カドヘリンインテグリンs4/s8、インヒビンアンキリン、SENP1、NUFIP2、FGF9/19、SMAD2、CXCR4、EIF2C、PCAF、MECP2、ヒストンアセチルトランスフェラーゼMYST3、核RNP H3、及び多くの核受容体や因子を含むが、これらに制限されない。これらの標的遺伝子の大部分はの発生及び癌症/腫瘍の形成に高度に関与している。要するに、miR-302はその相同miRNAs、例えばmiR-92、miR-93、miR-367、miR-371、miR-372、miR-373、miR-374及びmiR-520をさらに促進してその機能を向上及び/又は維持させることができる。

MiRNAは細胞質中の遺伝子抑制因子(inhibitor)であり、その通常の機能は高度な相補性(complementarity)により特定の標的部位と結合し、その標的遺伝子の転写物(mRNAs)の翻訳を抑制することであり、そしてRNA-誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成してmRNAsを阻害又は分解する。よって、miRNAと標的遺伝子との結合の厳密度によって該miRNAの本来の機能が決められる。これに対し、我々の過去の研究(Lin氏ら,2010(非特許文献6);US 12/792,413)ではmir-302で調節される腫瘍抑制を裏付ける機構について重要な解釈を提供した。ヒト細胞において、mir-302の標的となる複数の細胞周期調節因子はCDK2、cyclins D1/D2、及びBMI-1遺伝子を含んでサイレンシングを行うが、興味深いことに、p21Cip1が含まれていない。前記したように、細胞周期においてCDK2とcyclin Dとの共同サイレンシングはG1期からS期への移行を阻害し、且つ比較的遅い細胞増殖率をもたらす。また、BMI-1のサイレンシングによって主要な2つの腫瘍抑制因子であるp16Ink4aとp14ARFの発現が刺激され、それによりさらに細胞増殖を減少させて腫瘍形成を抑制する。ヒト細胞において、p16Ink4a/p14ARFの発現が増加してp21Cip1が影響を受けないため、mir-302はcyclin-E−CDK2及びcyclin-D−CDK4/6を共抑制する経路以外、p16Ink4a−Rb及び/又はp14/19ARF−p53経路を通じて抗腫瘍形成機能を発揮する可能性がある。

前述したmir-302の抗腫瘍形成の特徴に基づき、我々はmir-302を用いてヒト腫瘍と癌症の治療薬とすることができる。しかし、この試みに4つの主要な問題がある可能性がある:(1)遺伝子サイレンシングエフェクターとして、mir-302はその前駆体として機能を発揮する必要がある。現在ヘアピン様の73〜75ヌクレオチドの長さであるRNAを生成する有効なリボ核酸合成技術はない。その配列の正確度を確保するために、合成されるRNAの最大長さが約45〜55ヌクレオチドであるが、mir-302前駆体(pre-mir-302)の形成にはそれが十分ではない。(2)我々には濃度がhES細胞内のmir-302レベルよりも高いmir-302発現が必要であり、それによりその抗腫瘍/癌症効果を誘起する(Lin氏ら,2010(非特許文献6))。しかし、現在ではそれほど多くのpre-mir-302を生産して薬物生産に供する方法がない。hESまたはiPS細胞からのpre-mir-302単離は高価であり、そのうち細菌コンピテント細胞により高度二次構造を有するpre-mir-302を生産することができない。(3)合成されたsiRNAなどの模倣体(mimics)は動物試験において一度も成功したことがない。siRNAなどの模倣体の短い生命周期(3〜5日間)及びその高い毒性のため、インビボ(in vivo)の条件で天然mir-302の代わりにsiRNAを使用することができない。また、siRNAなどの模倣体の使用によって細胞内のmicroRNA経路の過飽和が引き起こされ、毒性も起こす報告がある(Grimm氏ら,2006(非特許文献13))。(4)mir-302の完全の機能はその前駆体中のmir-302センス及びそのmir-302*アンチセンス鎖(例えばmir-302a*、mir-302b*及びmir-302c*)に依存する。そのため、mir-302で調節する抗腫瘍/癌症療法及びその関連薬物の開発から、経済的で有効なpre-mir-302の生産及び/又は単離方法要件である。

要するに、mir-302及びその前駆体、並びにその関連相同体/誘導体を製造、単離及び使用する有効で安全な方法が必要である。
発明の概要
本発明はマイクロリボ核酸前駆体(microRNA precursors,pre-miRNAs)を癌症治療の治療薬及び/又はワクチンとして使用する設計及び方法である。具体的には、本発明は組換え核酸組成物を使用する設計及び方法に関し、この組換え核酸組成物がヒト細胞に送達された後、小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクター(small RNA-based gene silencing effector)に処理され、mir-302の標的となる細胞周期調節因子及び/又は発癌遺伝子に対する特定の遺伝子サイレンシング効果を引き起こし、腫瘍抑制及び/又は癌症予防などの効果をもたらし、これにより腫瘍/癌細胞の成長、増殖、侵入及び転移の抑制に用いることができる。これらの小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクターは腫瘍抑制因子マイクロリボ核酸(TS-miRNA)、例えばmir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、mir-302e、mir-302f、それらの前駆体(pre-miRNAs)、及びそれらの手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸(shRNA)様相同体/誘導体、並びにそれらの組み合わせを含むことが好ましい。小ヘアピンリボ核酸相同体/誘導体の設計はshRNA及びそれと相同の小干渉リボ核酸(small interfering RNA,siRNA)構造における個別の単一ユニット又は複合クラスター(cluster)内のミスマッチ(mismatched)及びパーフェクトマッチ(perfectly matched)核酸組成物を含む。それらは標的特異性を促進するとともに、送達及び治療に必要なmir-302の数量(コピー数,copy number)を低減することができる。前記ヒト細胞はインビトロエクスビボ及び/又はインビボの正常細胞及び/又は腫瘍/癌細胞を含む。

天然マイクロリボ核酸(miRNA)は、長さが約18〜27個のヌクレオチド(nucleotides,nt)で、マイクロリボ核酸(miRNA)とその標的との間の相補性によって、その標的となるメッセンジャーリボ核酸(messemger RNA,mRNA)を直接分解し、又はその標的となるメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の翻訳を抑制することができる。Mir-302ファミリー(mir-302s)は高度な相同性を有し、数多くの哺乳動物に保存(conserved)されているマイクロリボ核酸(miRNAs)である。Mir-302ファミリー(mir-302s)は4つの主要なファミリーメンバーを含み、それらは5'から3'への順番で、mir-302b、mir-302c、mir-302a、mir-302d、及びmir-367を含む非コードリ核酸クラスター(non-coding RNA cluster)に転写される(Suh氏ら,2004(非特許文献12))。最近、科学者は本来のファミリークラスターのほかに、5つ目と6つ目のmir-302メンバーであるmir-302eとmir-302fを発見した。mir-367とmir-302sは自然状況で共発現されるが、これらの機能は実に互いに異なっている。本発明では、抗腫瘍形成の機能に基づき、我々はmir-302sのみを発現させるような傾向にある。ある実施例において、我々はさらに、細胞内の送達及び発現のために、5'-GCTAAGCCAG GC-3' (SEQ.ID.NO.1)と5'-GCCTGGCTTA GC-3' (SEQ.ID.NO.2)のような手動で再設計したヘアピンループ(hairpin loops)を用いて、本来のmir-302前駆体(pre-mir-302)のヘアピンループを代替することができる。通常、mir-302はマウス以外のヒト胚性(hES)細胞及び誘導多能性幹(iPS)細胞のみにおいて大量に発現され、しかし、他の分化された体細胞においてはそうではない(Tang氏ら,2007(非特許文献14);Suh氏ら,2004(非特許文献12))。mir-302sは相同の小型抑制性RNAsで、それと高度に相補的な標的遺伝子をサイレンシングすることができるので、mir-302sはhES及びiPS細胞において発癌遺伝子の活性化の不規則(errant)及び早熟(premature)の防止に関連する可能性がある。そのため、それは抗腫瘍/癌症治療薬物の開発にも用いられる。実際に、桑実胚期(morula stage,32〜64細胞期)前のhES細胞は、通常、mir-302により誘発された多能性幹(mirPS)細胞のように比較的遅い細胞周期速度を示す(Lin氏ら,2010(非特許文献6))。これはmir-302が正常幹細胞の制御及び腫瘍/癌細胞形成の予防という二重の役割を果たすことを示唆した。

全てのmir-302メンバーは、5'末端配列の最初にある17個のヌクレオチドにおいて完全一致な配列を共有し、そのうちシードモチーフ(seed motif)である5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3' (SEQ.ID.NO.3)を含み、また、同様に23個のヌクレオチドを有する成熟したマイクロリボ核酸(miRNA)において、85%以上の配列相同性(homology)を有する。オンライン演算プログラム「TARGETSCAN」(http://www.targetscan.org/)及び「PICTAR-VERT」(http://pictar.mdc-berlin.de/)による現在の予測結果に基づき、これらのメンバーは同時にほぼ同じ細胞遺伝子を標的とし、そのうちに607個を超えるヒト遺伝子が含まれている。さらに、mir-302は機能上においてある程度似ているかもしれないmir-92、mir-93、mir-200c、mir-367、mir-371、mir-372、mir-373、mir-374及びmir-520ファミリーメンバーとも、多数の標的遺伝子を共有している。これらの標的遺伝子の多くは、初期胚発生中の系列特異的な細胞分化(lineage-specific cell differentiation)の開始及び/又は確立に関与する発生シグナル(developmental signals)及び転写因子である(Lin氏ら,2008(非特許文献1))。そして、標的遺伝子の多くは既知の発癌遺伝子(oncogenes)でもある。これらの標的となる発生シグナルと分化関連転写因子の多くは発癌遺伝子であるため、mir-302は腫瘍抑制機能も有しており、正常hES細胞の成長が腫瘍/癌細胞の形成へ進行することを防止することができる。

ある好ましい実施例において、本発明はヒト腫瘍/癌症の治療に用いられる非ベクター(non-vector-based)のpre-mir-302の製造及び送達の方法である。前記したように、pre-mir-302の長さが約73〜75ヌクレオチドであるが、45〜55ヌクレオチド長さの制限で、我々は従来のRNA合成技術により合成することができない。そのため、我々は、薬物生産に供するように、新しい方法を採用しpre-mir-302を生成してその量を増加させる必要がある。従って、本発明において原核によりmiRNA前駆体(生成物がpro-miRNA)を生産する技術を使用し、pre-mir-302の模倣体を調製する。該技術は優先権出願であるUS 13/572,263の派生発明である。Pro-miRNAは原核コンピテント細胞、例えば大腸菌DH5α細胞株から製造される新しいヘアピン様pre-miRNA模倣体である。当業者にとって知られるように、原核と真核との転写機構は非常に異なっており、且つ互いに相容れないので、我々は真核遺伝子とpre-miRNAsを転写できるように原核転写システム修正する必要がある。本願の優先権出願であるUS 13/572,263の発明には、ある化学的誘導により、原核細胞が真核pol-2とpol-2様(即ちCMV)プロモーターを用い、大量のpre-mir-302様のヘアピン様RNAs(生成物がpro-mir-302)を転写することができることが既に開示されている。この転写誘導物により原核転写システムと真核遺伝子発現とが相容れるようになるだけではなく、原核細胞内の真核遺伝子転写物の二次構造を安定させることもできる。Pro-miRNA技術の利点は、第1に、細菌コンピテント細胞の速くて簡単な成長天性のため、特定のpre-miRNA又は若干の(必要な)pre-miRNAの生産は費用便益原則に合致していること;第2に、数グラムからキログラムレベルの工業的規模の量産が期待できること;第3に、腫瘍又は哺乳動物細胞を培養して融合させる必要がないため、操作上では簡単で高価ではないこと;第4に、化学試薬により誘導されるpol-2様プロモーターの転写により、高い配列正確度が確保されること;最後に、原核細胞においてはDicer及び他のmiRNAの発現が欠けているため、純度の高いpre-miRNA生成物が得られることにある。得られたpro-miRNAは細菌抽出物及び/又は溶解生成物から簡単に単離して(実施例20)さらに精製される(実施例21)ことができ、該抽出物と溶解生成物が多くの薬学上及び治療上の応用の開発に用いられる。

我々は既に数多くのpre-mir-302様のpro-miRNA、pro-mir-302を製造して(実施例18〜21)それを傷口治癒の促進に使用した(実施例22)。治療に使用するために、単離されるpro-mir-302は予め用意されたカカオバター綿実油オリーブオイルピルビン酸ナトリウム及び白色ワセリンを含有する軟膏から調製された。軟膏内のpro-mir-302の濃度は10 μg/mLである。そして解剖メスで皮膚を切り開いて、開放創を形成した。pro-mir-302を含む又は含まない軟膏はそれぞれ傷口に直接塗布され、創部全体を覆った。そして、さらに液状包帯でこの領域をシールした。図14に示すように、2週間以内に、pro-mir-302で処理された創部の治癒速度が著しく向上し、中でも他のコントロール群のすべてよりも二倍以上速い結果を示した。なお、pro-mir-302で治癒された領域では正常の毛の再生が現れ、かつ瘢痕も残っていない(例えば黒い矢印で示す箇所)。それに対し、他の処理群では少しの瘢痕が残り、かつ毛の成長がない。この結果から明らかなように、pro-mir-302は正常の組織回復と再生を刺激する機能を有する。

我々も前記pro-mir-302を精製して液体薬剤に調製し、注射を施してインビボで肝臓癌/悪性肝腫瘍の治療をテストした(実施例23)。図15に示すように、3回の注射後、pro-mir-302を含む薬剤体内移植された肝臓癌細胞/悪性肝腫瘍の90%に近い体積縮小させ、即ち未処理グループと比較すると、腫瘍の平均サイズが未処理グループの10%に縮減した。なお、H&E染色で組織学的試験を行った結果により、この癌症/悪性腫瘍に対する治療結果はmir-302の抗腫瘍形成の性質による(Lin氏ら,2010)だけではなく、以前認められていなかった新しく発見された再プログラム機能にもよることがさらに示された。例えば、図16に示すように、mir-302は体内の高度悪性のヒト肝臓癌移植体を正常の肝臓組織近似した比較的良性の状態に再プログラムできることが明らかに示された。治療された癌細胞移植体はさらに正常の肝臟構造、例えば典型的な肝小葉中心静脈(CV)及び門脈三管(PT)を形成することができる。従って、mir-302は腫瘍/癌の成長を抑制することができるだけではなく、体内環境で正常組織の回復及び/又は再生にも寄与し、癌症治療に有利な効果に達する。

他の好ましい実施例において、本発明はさらに、mir-302を発現し、腫瘍/癌症を治療するベクターを提供する。本願の優先権出願であるUS 12/792,413に開示されるように、発明者は既に誘導可能なpTet-On-tTS-miR302s発現ベクター(図1A)を設計、開発しており、さらにウィルス感染電気穿孔法又はリポソーム/ポリソーム(polysomal)形質移入法によって正常及び/又はヒト癌細胞中にmir-302を送達する。再設計されたmir-302構造は同じクラスター中のmir-302a、mir-302b、mir-302c、及びmir-302dという4つの小非コードリボ核酸メンバー(small non-coding RNA members)を含む(mir-302s;図1B)。ドキシサイクリン(Doxycycline,Dox)による刺激において、このmir-302s構造は、テトラサイクリン応答要素(tetracycline-responsive element,TRE)に制御されるサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターによって駆動され、発現される。感染/形質移入後、mir-302の発現は天然マイクロリボ核酸(miRNA)生合成経路に沿って行われる。そのうち、mir-302s構造は、赤方偏移蛍光タンパク質(red-shifted fluorescent protein,RGFP)のようなレポーター遺伝子とともに共転写され、そしてさらにスプライセオソーム複合体(spliceosomal components)及び/又は細胞質内のRNAエンドリボヌクレアーゼ(RNaseIII)であるダイサー(Dicers)(図2A)(Lin氏ら,2003(非特許文献15))によって、単独のmir-302メンバーに処理される。この施策による結果は、マイクロリボ核酸マイクロアレイ分析(実施例3)において、センス(sense)mir-302メンバーの全てがドキシサイクリンによる刺激後、形質移入された細胞で有効的に発現された(図1C)。mir-302発現ベクターをヒト細胞に形質導入する工程は図2Bに説明される。

本発明者は天然のイントロンマイクロリボ核酸(intronic miRNA)の生合成経路を模倣して(図2A)、組換えRGFP遺伝子を転写するように、イントロンマイクロリボ核酸発現系、即ちSpRNAi-RGFPを設計した。SpRNAi-RGFPは、人造/人工スプライシング可能なイントロン(splicing competent intron、SpRNAi)を含有し、該イントロンはイントロンマイクロリボ核酸(intronic miRNA)及び/又は小ヘアピンリボ核酸様(shRNA-like)遺伝子サイレンシングエフェクターを生成することができる(Lin氏ら,2003(非特許文献15);Lin氏ら,(2006) MethodsMol Biol.342:295-312(非特許文献16))。SpRNAiとRGFPはII型RNAポリメラーゼ(Pol-II RNA polymerase)によって共転写されてSpRNAi-RGFP遺伝子のメッセンジャーリボ核酸前駆体/プレメッセンジャーリボ核酸(pre-mRNA)中に包含され、しかも、RGFPはRNAスプライシング複合体(RNA splicing components)によって切り出される。そして、スプライス済みのSpRNAiは更に天然マイクロリボ核酸(native miRNA)及び人工小ヘアピンリボ核酸(shRNAs)のような成熟した遺伝子サイレンシングエフェクターに処理されることで、標的遺伝子に対する特定のリボ核酸干渉効果(RNA interference,RNAi)を誘発する。同時に、イントロンスプライシング(intron splicing)後、SpRNAi-RGFP遺伝子転写物(transcript)のエクソン(exons)が連結されることによって、成熟したメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を形成し、その後、miRNA/shRNAの発現を識別するために用いるRGFPレポータータンパク質に翻訳される。定量上では、1倍濃度のRGFPは4倍濃度のmir-302発現に相当する。また、RGFPの代わりに機能性タンパク質エクソン、例えば体細胞再プログラム(somatic cell reprogramming,SCR)中のhES遺伝子マーカーを選択的に用いて付加的な遺伝子機能を提供してもよい。現在、脊椎動物において、機能不明の天然マイクロリボ核酸が1000種類以上発見され、また、より多くの新しいマイクロリボ核酸も相次ぎ識別されているため、我々のイントロンマイクロリボ核酸発現系はインビトロ及びインビボでの上記マイクロリボ核酸機能の測定に有利なツールとなることができる。

SpRNAiイントロンは、5'スプライス部位(5'-splice site)、分岐点配列(Branch-Point,BrP)、ポリピリミジントラクト(poly-pyrimidine tract)、及び3'スプライス部位(3'-splice site)を有する幾つかの共通ヌクレオチド組成分を含む。また、5'スプライス部位と分岐点配列との間に挿入されるヘアピンマイクロリボ核酸(miRNA)又は小ヘアピンリボ核酸(shRNA)前駆体も含む。イントロンのこの部分は通常RNAスプライシングと処理中に投げ縄(lariat)構造を形成する。なお、SpRNAiの3'末端は、イントロンRNAスプライシング(intronic RNA splicing)と処理の正確度を増すために、様々な翻訳終止コードン領域(translational stop codon region(T codon))を含む。このT codonは細胞質内のメッセンジャーリボ核酸(mRNA)に発現されると、細胞内のナンセンス仲介減衰(nonsense-mediated decay,NMD)システム活性化シグナルを生じさせ、細胞毒性の発生を防ぐために細胞内に蓄積したあらゆる非構造化のリボ核酸を分解する。しかし、高度に構造化された小ヘアピンリボ核酸(shRNA)及びマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)が保留され、更にダイサー(Dicer)によって切断され、それぞれ成熟した小干渉リボ核酸(siRNA)及びマイクロリボ核酸(miRNA)を形成する。我々は、イントロンmiRNA/shRNAを発現させるために、SpRNAiを手動でRGFP遺伝子のDraII制限部位に組み込んで(Lin氏ら,2006と2008(非特許文献16及び1))、組換えSpRNAi-RGFP遺伝子を形成した。DraII制限酵素によるRGFPの切断によって、各末端に3個の陥凹ヌクレオチドをもつAG-GNヌクレオチド切断部位が生じ、SpRNAi挿入後にそれぞれ5'及び3'スプライス部位を形成する。このイントロン挿入は、RGFPタンパク質完全性破壊するが、これはイントロンのスプライシングによって完全性を回復できるので、我々は形質移入された細胞中に現れる赤色の赤方偏移蛍光タンパク質(RGFP)によって、成熟したmiRNA/shRNAの発現を測定することができる。RGFP遺伝子は、RNAスプライシングの正確度と効率を向上させるように、複数のエクソンスプライシングエンハンサー(exonic splicing enhancers,ESEs)も備えている。

詳細には、SpRNAiイントロンは、5'-GTAAGAGK-3' (SEQ.ID.NO.4)又はGU(A/G)AGU (SEQ.ID.NO.35)モチーフ(即ち5'-GTAAGAGGAT-3'(SEQ.ID.NO.36)、5'-GTAAGAGT-3'(SEQ.ID.NO.37)、5'-GTAGAGT-3'(SEQ.ID.NO.38)及び5'-GTAAGT-3' (SEQ.ID.NO.39))のいずれかと相同である5'スプライス部位(5'- splicing site)を含み、該SpRNAiイントロンの3'末端は、GWKSCYRCAG(SEQ.ID.NO.5)又はCT(A/G)A(C/T)NG(SEQ.ID.NO.40)モチーフ(即ち5'-GATATCCTGCAG-3' (SEQ.ID.NO.41)、5'-GGCTGCAG-3' (SEQ.ID.NO.42)及び5'-CCACAG-3' (SEQ.ID.NO.43))と相同である3'スプライス部位(3'- splicing site)である。また、分岐点配列(branch point sequence)は5'末端と3'末端のスプライス部位の間に位置し、5'-TACTAAC-3' (SEQ.ID.NO.44)及び5'-TACTTAT-3' (SEQ.ID.NO.45)のような5'-TACTWAY-3' (SEQ.ID.NO.6)モチーフと高度相同である。分岐点配列のアデノシン(adenosine)である「A」ヌクレオチドは、ほぼ全てのスプライセオソームイントロン(spliceosomal introns)において細胞の2'-5'オリゴアデニル酸合成酵素((2'-5')-oligoadenylate synthetases)とスプライセオソーム(spliceosomes)によって、(2'-5')結合型の投げ縄イントロンRNA(intron RNA)の一部を形成することができる。なお、ポリピリミジントラクト(poly-pyrimidine tract)が分岐点配列と3'スプライス部位との間に近接して位置し、高T(チミジル酸)又は高C(シチジル酸)含有量の配列であって、5'-(TY)m(C/-)(T)nS(C/-)-3' (SEQ.ID.NO.7)又は5'-(TC)nNCTAG(G/-)-3' (SEQ.ID.NO.8)モチーフのいずれかと相同である。そのうち、符号「m」及び「n」は複数の重複を示し、≧1であり、最も好ましくは、mは1〜3、nは7〜12である。符号「-」は、該配列内にスキップしてもよいヌクレオチドがあることを示す。また、合成されたイントロン成分の全てを連結するために、配列には幾つかのリンカーヌクレオチド配列も含まれる。米国特許法施行規則(37 CFR)1.822におけるヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データを示す符号及び書式に関するガイドラインに基づき、符号Wはアデニン(A)又はチミン(T)/ウラシル(U)、符号Kはグアニン(G)又はチミン(T)/ウラシル(U)、符号Sはシトシン(C)又はグアニン(G)、符号Yはシトシン(C)又はチミン(T)/ウラシル(U)、符号Rはアデニン(A)又はグアニン(G)、符号Nはアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)又はチミン(T)/ウラシル(U)を示す。

別の可能性のある実施例において、本発明は直接の(エクソン型)mir-302 miRNA/shRNA発現系であって、細胞内のRNAスプライシング及び/又はNMD機構を経ず、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを直接に生成することができる。しかし、この方法の欠点はmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターの発現が、ナンセンス仲介減衰(NMD)のようないずれかの細胞内監視システム(surveillance system)にも制御されないため、天然マイクロリボ核酸生合成経路の過飽和によって細胞毒性を生成するおそれがある(Grimm氏ら,2006(非特許文献13))。この方法に用いられる発現系は、プラスミド(plasmid)、ウィルスベクター(viral vector)、レンチウィルスベクター(lentiviral vector)、トランスポゾン(transposon)、レトロトランスポゾン(retrotransposon)、ジャンピング遺伝子(jumpinggene)、タンパク質コード遺伝子(protein-coding gene)、非コード遺伝子(non-coding gene)、人工組換え導入遺伝子(artificially recombinant transgene)及びこれらの組み合わせから選ばれる直鎖状または環状の核酸組成物であってもよい。マイクロリボ核酸、小ヘアピンリボ核酸、小干渉リボ核酸、及びこれらの前駆体と相同体/誘導体を含むmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは、組織特異的または非特異的なリボ核酸(RNA)プロモーターの制御により発現される。RNAプロモーターはII型RNAポリメラーゼ(type-II RNA polymerase,Pol-II)、ウィルスポリメラーゼ(viral polymerase)、III型RNAポリメラーゼ(type-III RNA polymerase,Pol-III)、I型RNAポリメラーゼ(type-I RNA polymerase,Pol-I)、及びテトラサイクリン応答要素に制御されるRNAポリメラーゼ(TRE)プロモーターから選ばれる。ウィルスプロモーターはPol-II様RNAプロモーターであり、サイトメガロウィルス(cytomegalovirus,CMV)、レトロウィルス末端反復配列(retrovirus long-terminal region,LTR)、B型肝炎ウィルス(hepatitis B virus,HBV)、アデノウィルス(adenovirus,AMV)、及びアデノ関連ウィルス(adeno-associated virus,AAV)から単離されるが、これらに限らない。例として、レンチウィルスLTRプロモーターは1つの細胞において五十万ものプレメッセンジャーリボ核酸転写物(pre-mRNAtranscript)(コピー)を生産することができる。また、薬剤感受性抑制体(drug-sensitive repressor、即ちtTS)をRNAポリメラーゼプロモーターの前に挿入することによって遺伝子サイレンシングエフェクターの転写速度を制御することも可能である。抑制因子は化学薬剤、又はG418、ネオマイシン(neomycin)、テトラサイクリン(tetracycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、アンピシリン(ampicillin)、カナマイシン(kanamycin)、ピューロマイシン(puromycin)、及びこれらの誘導体などから選ばれる抗生物質により抑制される。

一方で、幾つかのイントロン遺伝子サイレンシングエフェクターを発現する複数の導入遺伝子(transgenes)及び/又はベクターを用いて、mir-302の標的遺伝子に対して遺伝子サイレンシング効果を実現してもよい。また、複数の遺伝子サイレンシングエフェクターは、1つのイントロンインサート(intronic insert)によって生成することができる。例えば、ゼブラフィッシュ中のマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を含有する抗EGFP(anti-EGFP)イントロンの異所性発現(ectopic expression)で、2種類の異なるサイズのmiRNA、即ちmiR-EGFP(282/300)及びmiR-EGFP(280-302)が生成されるとの報告があった。これは、1つのSpRNAiインサートが複数の遺伝子サイレンシングエフェクターを生成できることを示している(Lin氏ら(2005) Gene 356:32-38(非特許文献17))。ある例において、イントロン遺伝子サイレンシングエフェクターは標的遺伝子転写物(即ち、メッセンジャーリボ核酸,mRNA)とハイブリダイゼーションすることで、2本鎖小干渉リボ核酸(siRNAs)を形成してリボ核酸干渉二次効果(RNAi)を引き起こすことができる。これらの遺伝子サイレンシングエフェクターは導入遺伝子ベクターによって絶えず生成されるので、RNAのインビボにおける素早い分解の懸念が軽減される。この施策の利点は、ベクター導入遺伝子による形質移入又はウィルス感染によって、確実で長期的な遺伝子サイレンシング効果を提供することができることにある。

一部の天然プレマイクロリボ核酸(pre-miRNAs)のステムループ(stem-loop)構造が過大及び/又は複雑でマイクロリボ核酸発現系/ベクターに適合しないため、本発明者は天然プレマイクロリボ核酸のループに代わって、手動で再設計したメチオニル運搬リボ核酸ループ(tRNAmet loop、即ち5'-(A/U)UCCAAGGGGG-3'(SEQ.ID.NO.46))を用いる場合が多い。tRNAmetループは天然マイクロリボ核酸と同様な輸送機構によって、Ran-GTP及びエクスポーチン-5(Exportin-5)を介して、手動で再設計したマイクロリボ核酸(miRNA)を細胞核から細胞質への輸送を有効的に実行できる(Lin氏ら,2005(非特許文献17))。本発明の利点は、5'-GCTAAGCCAG GC-3' (SEQ.ID.NO.1)と5'-GCCTGGCTTA GC-3' (SEQ.ID.NO.2)を含む人工改良した1対のプレマイクロリボ核酸ループを使用することにより、手動で再設計したマイクロリボ核酸(pre-miRNA)に天然プレマイクロリボ核酸と同じ核外への輸送(nucleus export)効率をあげるとともに、tRNA輸出には干渉しないことができる。なお、この改良は、mir-302a-mir-302a*のデュプレックスとmir-302c-mir-302c*のデュプレックスの形成を促進し、mir-302s全体の機能及び安定性を向上させることができる。これらの新しいプレマイクロリボ核酸ループの設計はtRNAmetループとmir-302b/mir-302aの短鎖ステムループを組み合わせて修飾することによって完成され、そのうち、mir-302b/mir-302aの短鎖ステムループはヒトES細胞では高度に発現しているが、他の分化した組織細胞ではそうでない。従って、mir-302構造内のこれらの組換え/人造/人工ヘアピンループの使用は、人体での天然miRNA経路に干渉しないため、細胞毒性を低減させ、安全性を向上させる。

Mir-302プレマイクロリボ核酸のファミリークラスターは、合成されたmir-302相同体のハイブリダイゼーション及び連鎖/ライゲーションによって形成され、5'末端から3'末端に向けてmir-302a、mir-302b、mir-302c、及びmir-302dのプレマイクロリボ核酸(pre-miRNAs、図1B)の4つの部分を含む。これら全ての手動で再設計したmir-302 miRNA/shRNA分子は、その5'末端配列の最初に、同じ17個のヌクレオチド[例えば、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3' (SEQ.ID.NO.3)]がある。Mir-302のプレマイクロリボ核酸クラスターに使用される合成オリゴヌクレオチドとして、mir-302a-センス:5'-GTCACGCGTT CCCACCACTT AAACGTGGAT GTACTTGCTT TGAAACTAAA GAAGTAAGTG CTTCCATGTTTTGGTGATGG ATAGATCTCT C-3' (SEQ.ID.NO.9)、mir-302a-アンチセンス:5'-GAGAGATCTA TCCATCACCA AAACATGGAAGCACTTACTT CTTTAGTTTC AAAGCAAGTA CATCCACGTT TAAGTGGTGG GAACGCGTGA C-3' (SEQ.ID.NO.10)、mir-302b-センス:5'-ATAGATCTCT CGCTCCCTTC AACTTTAACA TGGAAGTGCT TTCTGTGACT TTGAAAGTAA GTGCTTCCAT GTTTTAGTAG GAGTCGCTCATATGA-3' (SEQ.ID.NO.11)、mir-302b-アンチセンス:5'-TCATATGAGC GACTCCTACT AAAACATGGA AGCACTTACT TTCAAAGTCA CAGAAAGCAC TTCCATGTTA AAGTTGAAGG GAGCGAGAGA TCTAT-3' (SEQ.ID.NO.12)、mir-302c-センス:5'-CCATATGGCT ACCTTTGCTT TAACATGGAG GTACCTGCTG TGTGAAACAG AAGTAAGTGC TTCCATGTTT CAGTGGAGGC GTCTAGACAT-3' (SEQ.ID.NO.13)、mir-302c-アンチセンス:5'-ATGTCTAGAC GCCTCCACTG AAACATGGAA GCACTTACTT CTGTTTCACA CAGCAGGTAC CTCCATGTTA AAGCAAAGGT AGCCATATGG-3' (SEQ.ID.NO.14)、mir-302d-センス:5'-CGTCTAGACA TAACACTCAA ACATGGAAGC ACTTAGCTAA GCCAGGCTAA GTGCTTCCAT GTTTGAGTGT TCGCGATCGC AT-3' (SEQ.ID.NO.15)、及びmir-302d-アンチセンス:5'-ATGCGATCGC GAACACTCAA ACATGGAAGC ACTTAGCCTG GCTTAGCTAA GTGCTTCCAT GTTTGAGTGT TATGTCTAGA CG-3' (SEQ.ID.NO.16)を含む。また、手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸(shRNA)を使用してもよい。該手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸は合成miR-302s-センス:5'-GCAGATCTCG AGGTACCGAC GCGTCCTCTT TACTTTAACA TGGAAATTAA GTGCTTCCAT GTTTGAGTGG TGTGGCGCGA TCGATATCTC TAGAGGATCCACATC-3' (SEQ.ID.NO.17)及びmir-302s-アンチセンス:5'-GATGTGGATC CTCTAGAGAT ATCGATCGCG CCACACCACT CAAACATGGA AGCACTTAAT TTCCATGTTA AAGTAAAGAG GACGCGTCGG TACCTCGAGA TCTGC-3' (SEQ.ID.NO.18)のハイブリダイゼーションによって形成され、mir-302プレマイクロリボ核酸クラスター(mir-302 pre-miRNA cluster)に代わって、簡単なイントロン挿入を行う。Mir-302小ヘアピンリボ核酸(mir-302 shRNA)は、全ての天然mir-302メンバーと85%よりも高い相同性を有し、同じヒト細胞遺伝子を標的とする。mir-302相同体の設計に当たって、ウラシルの代わりにチミンを使ってもよく、逆の場合も同様である。

mir-302のプレmiRNA/shRNAのイントロン挿入(intronic insertion)については、組換えSpRNAi-RGFP導入遺伝子の挿入部位の側面において、それぞれ5'末端にPvuI及び3'末端にMluI制限/クローニング部位があることから、最初のインサートを除去し、様々なプレmiRNA/shRNAインサート(例えば、mir-302のプレmiRNA/shRNA)で置き換えることができる。これらのプレmiRNA/shRNAインサートはPvuI及びMluI制限部位とマッチする付着末端(cohesive ends)を有する。異なる遺伝子転写物を標的とするイントロンインサートを変えることで、本発明のイントロンmir-302s(intronic mir-302s)発現系は、インビトロ(in vitro)、エクスビボ(ex vivo)、及びインビボ(in vivo)で標的遺伝子サイレンシングを誘発する強力なツールとして使用できる。イントロン挿入後、イントロン挿入部位にmir-302を含有するこのSpRNAi-RGFP導入遺伝子は更にドキシサイクリンにより誘導されるpSingle-tTS-shRNAベクターの制限/クローニング部位(即ち、XhoI-HinDIII制限/クローニング部位)に挿入され、細胞内で発現できるpTet-On-tTS-miR302s発現ベクターを形成する(図1A)。

pre-mir-302様(pro-mir-302)又はmir-302を発現する核酸組成物をヒト細胞に送達させる方法として、リポソーム/ポリソーム/化学的形質移入(liposomal/polysomal/chemical transfection)、DNA組換え(DNA recombination)、電気穿孔法(electroporation)、遺伝子銃による貫入(gene gun penetration)、トランスポゾン/レトロトランスポゾン挿入(transposon/retrotransposon insertion)、ジャンピング遺伝子組み込み(jumpinggene integration)、マイクロインジェクション(micro-injection)、ウィルス感染(viral infection)、レトロウィルス/レンチウィルス感染(retroviral/lentiviral infection)、及びこれらの組み合わせから選ばれる非遺伝子導入方法又は遺伝子導入方法が用いられる。ランダムな導入遺伝子挿入及び細胞の突然変異リスクを防ぐために、本発明はリポソーム又はポリソーム形質移入法を用いて、mir-302発現ベクター及び/又はmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクター(例えばpre-mir-302及び/又はpro-mir-302)を標的ヒト細胞(即ち、腫瘍/癌細胞)に送達することが好ましい。形質導入後、mir-302sの発現レベルはmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターの濃度又は各濃度のドキシサイクリンにおいて、pTet-On-tTS-miR302sベクターにおけるTREに制御されるCMVプロモーターの発現速度によって決められる。従って、本発明は、既知の薬剤(即ち、ドキシサイクリン)又はpre-/pro-mir-302濃度の使用による制御可能な機構を提供することによって、mir-302のインビトロ、エクスビボ、インビボでの発現レベルを調節する。これにより、我々は被検細胞において、RNA蓄積又は過飽和による任意の細胞毒性を防ぐことができる。また、CMVプロモーターにより制御されるmir-302発現は、常にヒト細胞内で1ヶ月の活性化状態を経てDNAメチル化によってサイレンシングされる。その1ヶ月の活性化機構は、処理された細胞におけるRNAの長期的蓄積又は過飽和を回避できるため、癌症の治療に有益である。

要するに、本発明は新規な設計及び施策を採用し、ベクター発現又は非発現のmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを治療薬として、腫瘍抑制及び癌症治療に使用する。mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは、mir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、これらのヘアピン様マイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNAs及び/又はpro-miRNAs)、及び手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸(shRNA)相同体/誘導体、並びにこれらの組み合わせを含む。好ましい実施例では、本発明は、処理された腫瘍/癌症細胞内で送達可能で十分量のmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターに処理され、mir-302の標的となる細胞周期調節因子と発癌遺伝子を抑制し、腫瘍/癌症の治療に有益な効果を達成する組換え核酸組成物を使用してヒト腫瘍及び癌症を治療する設計及び方法を提供する。この組換え核酸組成物は、処理された細胞内で持続的プロモーター(即ち、CMV)または薬剤誘導性プロモーター(即ち、TRE-CMV)によって駆動される転写によってmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを発現させることができる。一方で、該組換え核酸組成物は原核細胞により駆動されるpre-mir-302の生産(生成物がpro-mir-302)に用いられる。前記pro-mie-302はヒト腫瘍/癌症を治療するmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターとして使用することができる。好ましくは、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは組換えmir-302ファミリークラスター(mir-302s;SEQ.ID.NOs.9〜16の雑種)又は手動で再設計したmir-302小ヘアピンリボ核酸相同体(shRNA、即ちSEQ.ID.NOs.17と18との雑種)から転写される。該処理された細胞マトリックスはインビトロ、エクスビボ又はインビボでmir-302の標的となる細胞遺伝子を発現させることができる。本発明は、mir-302の標的となる細胞遺伝子をサイレンシングすることによって、腫瘍/癌細胞の形成を抑制することができ、高度悪性の癌細胞を比較的良性の低段階状態に再プログラムすることもできる。この現象は癌の退縮(cancer regression)という。

本発明は、以下の方面でmir-302媒介の抗腫瘍/癌症治療が成功したことを証明した:第1に、正常のヒト細胞に対する安全性である。図1E〜1Fと3A〜3Bに示すように、mir-302を正常ヒト細胞(mirPS-hHFC)に形質移入することにより、細胞周期が軽く減衰するが、アポトーシス又は細胞死を引き起こさない。第2に、mir-302をヒト細胞に形質移入することにより、細胞を幹細胞様状態へ再プログラムすることができ、損傷組織の治療に有益である(図4A〜4Bと図5A〜5D)。第3に、mir-302をヒト腫瘍/癌細胞(例えば前立腺癌細胞PC3、皮膚癌細胞Colo、乳癌細胞MCF7、肝臓癌細胞HepG2及び奇形腫細胞NTera-2)に形質移入することにより、これらの腫瘍/癌細胞の成長が強力に抑制され、>98%の細胞死又はアポトーシスを引き起こす(図6A〜6Dと12A〜12C)。第4に、mir-302は、サイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)、サイクリンD1/D2(cyclin D1/D2)とBMI-1のような複数の細胞周期調節因子を共抑制するのみならず、腫瘍抑制因子、例えばp16INK4a及びp14/p19Arfを活性化することにもよって、腫瘍の形成を抑制できる(図7B〜7D)。最後に、インビボでmir-302を腫瘍/癌細胞に送達することによって、>90%の腫瘍/癌細胞の成長を抑制することができる(図8A〜8C及び図15)。また、mir-302はテロメア短縮(telomere shortening)による細胞老化(cell senescence)を引き起こすことはない(図9A〜9C)。注意すべきなのは、我々はmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクター及び/又はその発現ベクターを調製し、そしてインビボの標的腫瘍/癌細胞内に形質移入するに成功し、レトロウィルス感染及び導入遺伝子の突然変異というリスクを回避することができた(図8A〜8Cと図15)。これらの発見は、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを抗腫瘍/癌症治療の治療薬及び/又はワクチンとして使用できる強力な証拠を提供した。また、mir-302は損傷したヒト組織を回復及び再生させる機能をも有しているため(Lin氏ら,2008と2010(非特許文献1及び6))、本発明は抗腫瘍/癌症治療への応用に有益であるだけではなく、さらに組織の回復及び/又は器官の再生にも用いられる。

明らかに言えば、以下で説明される図面はただ例示するためのものであり、本発明を制限するものではない。

概要

悪性のヒト癌細胞の性質を低段階の良性又は正常の体細胞組織の細胞様の状態に再プログラムするための組成物を提供すること。組成物は、SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ少なくとも1つのマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を1mg/mL以下の濃度で含有し、前記pre-miRNAは、低段階の良性又は正常の体細胞組織の細胞様の状態へのヒト癌細胞の再プログラミングを誘導するべく、少なくとも1つのヒト癌細胞を含んだ細胞被検体と接触させて使用され、SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAは、原核細胞内で真核プロモーターにより駆動されるRNAの転写を使用することにより生産される。

目的

本発明はさらに、mir-302を発現し、腫瘍/癌症を治療するベクターを提供する

効果

実績

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請求項1

悪性ヒト癌細胞性質を低段階の良性又は正常の体細胞組織細胞様の状態に再プログラムするための組成物であって、前記組成物は、SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ少なくとも1つのマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を1mg/mL以下の濃度で含有し、前記pre-miRNAは、低段階の良性又は正常の体細胞組織の細胞様の状態へのヒト癌細胞の再プログラミング誘導するべく、少なくとも1つのヒト癌細胞を含んだ細胞検体と接触させて使用され、SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAは、原核細胞内で真核プロモーターにより駆動されるRNAの転写を使用することにより生産される、組成物。

請求項2

前記原核細胞がルリアベルターニ(LB)培地で培養される、請求項1に記載の組成物。

請求項3

前記原核細胞がE. coli DH5αのコンピテント細胞である、請求項1に記載の組成物。

請求項4

SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAは、mir-302ファミリークラスターをコードする組換えプラスミドから転写される、請求項1に記載の組成物。

請求項5

SEQ.ID.NO.3の配列を含んだ前記pre-miRNAが少なくともmir-302a、mir-302b、mir-302c又はmir-302dの配列を含有する、請求項1に記載の組成物。

請求項6

前記悪性のヒト癌細胞の性質を低段階の良性又は正常の体細胞組織の細胞様の状態に再プログラムすることは癌の逆転と呼ばれる抗癌機構である、請求項1に記載の組成物。

請求項7

前記ヒト癌細胞が肝臓癌細胞である、請求項1に記載の組成物。

請求項8

前記pre-miRNAが薬学用途又は治療用途で用いられる、請求項1に記載の組成物。

請求項9

前記薬学用途又は治療用途が抗癌薬の開発を含む、請求項8に記載の組成物。

技術分野

0001

優先権の主張
本発明は2012年12月28日に提出された出願番号が61/761,890で、標題が「汎用抗癌薬及びワクチンの開発」である米国仮出願の優先権を主張する。本発明はさらに2010年6月2日に提出された出願番号が12/792,413で、標題が「汎用的抗癌薬及びワクチンの開発」である米国出願の優先権を主張する。本発明はさらに2012年8月10日に提出された出願番号が13/572,263で、標題が「原核細胞内においてII型真核ポリメラーゼプロモーター動性転写作用を使用するための誘導可能な遺伝子発現組成物及びその応用」である米国出願の優先権を主張する。本願は、2010年6月2日に提出された標題が「汎用的抗癌薬及びワクチンの開発」である米国特許出願12/792,413、2012年8月10日に提出された標題が「原核細胞内においてII型真核ポリメラーゼプロモーター駆動性転写作用を使用するための誘導可能な遺伝子発現組成物及びその応用」である米国特許出願13/572,263の一部継続出願(continuation-in-part)である。これらの出願の内容のすべては参照としてここに組み込まれている。

0002

発明の分野
本発明は一般に新規DNA/RNA治療薬及び/又はワクチンの癌症治療での製品設計と関連使用に関する。より詳細には、本発明は新規核酸組成物を使用する設計及び方法に関し、該核酸組成物がヒト細胞送達された後、小型リボ核酸(small RNA)遺伝子サイレンシングエフェクターに処理され、mir-302の標的となる細胞周期調節因子及び/又は発癌遺伝子特定遺伝子サイレンシング効果を引き起こし、さらに腫瘍/癌細胞成長侵入及び転移に対する腫瘍抑制及び/又は癌症予防の効果を奏する。小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクターは、mir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、mir-302e、mir-302f、それらの前駆体(プレマイクロリボ核酸,pre-miRNAs)、及びそれらの手動で再設計及び/又は修飾された小ヘアピンリボ核酸/小干渉リボ核酸(shRNA/siRNA)などの相同体/誘導体、並びにそれらの組み合わせのような腫瘍抑制因子マイクロリボ核酸(tumor suppressor microRNA,TS-miRNA)を含むことが好ましい。興味を示す該ヒト細胞は、エクスビボ(ex vivo)及び/又はインビボ(in vivo)の正常体細胞又は腫瘍/癌細胞を含む。

背景技術

0003

発明の背景
幹細胞宝箱の如く、その内に、幹細胞成長/再生の誘発や損傷/老化組織回復及び/又は再生、或いは退行性疾患の処置や腫瘍/癌症形成の防止に用いられる複数種の有効成分が含まれている。したがって、本発明者はこれらの幹細胞を新薬の同定や製造の手段とすることが理解できる。このことから、得られた新薬は薬学及び/又は治療への応用の発展、例えば生物薬の利用、診断装置及び/又は装備、幹細胞の生成、幹細胞の研究及び/又は治療、組織/器官の回復及び/又は再生、傷口治癒処理、腫瘍抑制、癌症の治療及び/又は予防、疾患処置、薬物の製造、及びそれらの組み合わせに用いられる。

0004

マイクロリボ核酸mir-302はヒト胚性幹細胞(human embryonic stem,hEScell)と誘導多能性幹細胞(induced pluripotent stem,iPS cell)において発見された最も主要なマイクロリボ核酸(microRNA,miRNA)であるが、その機能の多くはまだ明らかではない。従来の研究では、mir-302の異所性(extopic)過剰発現、即ちヒト幹細胞(hES cells)内のレベルよりも高い発現が、遅い細胞周期速度(20〜24時間/周期)と休眠細胞様細胞形態を有している正常のhES様多能性幹細胞にヒト正常細胞と癌細胞を再プログラムできることを示した(Lin氏ら,2008と2011(非特許文献1及び2);US 12/792,413,EP2198025(特許文献1))。相対静止はこれらのmir-302による再プログラムで生成された多能性幹細胞(mirPS)の明確な特徴の1つであるが、一方、ヒト幹細胞(hES)及び従来の報告での3/4個の因子(即ち、Oct4-Sox2-Klf4-c-MycまたはOct4-Sox2-Nanog-Lin28)により誘発されたiPS細胞は、高度の増殖能力(12〜15時間/周期)及び容赦のない腫瘍形成傾向を呈している(Takahashi氏ら,2006(非特許文献3);Yu氏ら,2007(非特許文献4);Wernig氏ら,2007(非特許文献5))。mirPS細胞の抗増殖特性裏付け機構のほとんどはまだ解明されていないが、mir-302の標的となる2つのG1チェックポイント調節因子(G1-checkpoint regulators)が関与している可能性を発見した。これらは、サイクリン依存性キナーゼ2(cyclin-dependent kinase 2,CDK2)とサイクリンD(cyclin D)である(Lin氏ら,2010(非特許文献6);US 12/792,413)。真核細胞の細胞周期の進行はサイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinases,CDKs)の活性化により駆動され、サイクリン依存性キナーゼは、正の調節サブユニット(positive regulatory subunits)であるサイクリン及び負の調節因子(negative regulators)であるサイクリン依存性キナーゼ抑制因子(CDK inhibitors、CKI,例えばp14/p19Arf、p15Ink4b、p16Ink4a、p18Ink4c、p21Cip1/Waf1及びp27Kip1)と機能性複合体を形成する。哺乳動物細胞においては、異なるサイクリン−サイクリン依存性キナーゼ複合体(cyclin−CDK complexes)が細胞周期における異なる時期の移行の調節に関与し、例えば、G1期進行に関与するcyclin-D-CDK4/6、G1-S期の移行に関与するcyclin-E-CDK2、S期進行に関与するcyclin-A-CDK2、及びM期進入に関与するcyclinA/B-CDC2(cyclin-A/B-CDK1)である。これにより、mir-302の抗増殖機能はG1−S期移行期間においてCDK2とcyclin Dが共抑制された結果であることが理解できる。

0005

しかし、ヒトmir-302の類似体であるマウスmir-291/294/295ファミリーに関する研究では、ヒト細胞におけるmir-302と機能が全く違う結果が示された。マウス胚性幹細胞(mES)においては、mir-291/294/295の異所性発現はp21Cip1(又はCDKN1Aと言う)とセリン/スレオニンプロテインキナーゼLats2(Wang氏ら,2008(非特許文献7))を直接サイレンシングすることにより、細胞の急速な増殖を促進し、形質移入された細胞の高度の腫瘍形成を引き起こした。p21Cip1/Waf1遺伝子が欠損した遺伝子導入マウスはG1チェックポイントによる制御が欠けている場合、正常の成長を示した(Deng氏ら,1995(非特許文献8))ことが知られている。しかし、Lats2は、有糸分裂開始時にλ-チューブリン(gamma-tubulin)を動員する、及び紡錘体の形成に関与するなどの機能を有しているため、その役割はまだ解明されていない。また、マウス胚におけるLats2の欠損は、有糸分裂の重度欠陥を引き起こし、致命的であると発見されたことも、Lats2のサイレンシングは細胞分裂の促進ではなく、それを阻害することを示している(Yabuta氏ら,2007(非特許文献9))。以上により、p21Cip1のサイレンシングはmir-291/294/295により誘発された腫瘍形成の裏にある主要な機構のように思われる。しかし、我々がヒトp21Cip1遺伝子のmir-302の標的部位スクリーニングした結果はすべてが陰性であった。同様な陰性の結果は最も有名な2つのオンラインのマイクロリボ核酸-標的予測プログラムである「TARGETSCAN」(http://www.targetscan.org/)及び「PICTAR-VERT」(http://pictar.mdc-berlin.de/)によっても示された。したがって、mir-302とmir-291/294/295は相同類似体であっても、それらの細胞の腫瘍形成の制御での機能は実質的に逆である。これは相同マイクロリボ核酸が同一の機能を有しない可能性があることを示した。上記の発見より、現在小干渉リボ核酸などの模倣体(mimics)が天然マイクロリボ核酸に取って代わる研究により天然マイクロリボ核酸と同じ結果が得られない可能性があることも示した。

0006

mir-302をコードする遺伝子配列はヒト第4染色体遺伝子座4q25に位置し、長寿によく関わる保守的な領域である。さらに言えば、mir-302はLaリボ核タンパク質ドメインファミリーメンバー7(La ribonucleoprotein domain family member 7(LARP7))遺伝子のイントロン領域によりコードされ、且つイントロンマイクロリボ核酸の生合成経路により発現される(Barroso-delJesus,2008(非特許文献10);Ying氏とLin氏,2004(非特許文献11);図13)。天然mir-302には4個の相同センスファミリーメンバー(mir-302b、c、a及びd)及び3個の区別できるアンチセンスメンバー(mir-302b*、c*及びa*)が含まれ、それらが他のmiRNA、即ちmir-367と一緒に、多シストロン性リボ核酸クラスター(polycistronic RNA cluster)に転写される(Suh氏ら,2004(非特許文献12))。我々の過去の発明であったUS 12/792,413では、発明者はmir-302が他のmiRNA、例えばmir-92、mir-93、mir-367、mir-371、mir-372、mir-373、mir-374、及びmir-520ファミリーメンバー全体の発現を刺激できることを見出した。ウェブサイト「Sanger miRBase::Sequences」(http://microrna.sanger.ac.uk/)のオンラインプログラム「TARGETSCAN」と「PICTAR-VERT」を使用して分析を行ったところ、さらにmir-302とこれらの発現が刺激されるmiRNAとが400個以上の標的遺伝子共有していることが示された。これにより、これらの発現が刺激されるmiRNAとmir-302は類似した役割を果たす可能性があることを証明した。これらの共有している標的遺伝子はRAB/RAS連発癌遺伝子のメンバー、ECT関連発癌遺伝子、多形性腺腫遺伝子、E2F転写因子、サイクリンD結合Myb様(cyclin D binding Myb-like)転写因子、HMGボックス転写因子、Sp3転写因子、転写因子CP2様(CP2-like)タンパク質、NFkB活性化タンパク質遺伝子、サイクリン依存性キナーゼ、MAPK/JNK関連キナーゼ、SNF関連キナーゼ、ミオシン軽鎖キナーゼ、TNF-α−誘導タンパク質遺伝子、DAZ関連タンパク質遺伝子、LIM関連ホメオボックス遺伝子、DEAD/Hボックスタンパク質遺伝子、フォークヘッド(forkhead)ボックスタンパク質遺伝子、BMP調節因子、Rho/Racグアニンヌクレオチド交換因子、IGF受容体(IGFR)、エンドセリン受容体、左右決定因子(Lefty)、サイクリン、p53誘導性核タンパク質遺伝子、RB様1、RB結合タンパク質遺伝子、Max結合タンパク質遺伝子、c-MIR免疫認識細胞調節因子、Bcl様アポトーシス促進因子、カドヘリンインテグリンs4/s8、インヒビンアンキリン、SENP1、NUFIP2、FGF9/19、SMAD2、CXCR4、EIF2C、PCAF、MECP2、ヒストンアセチルトランスフェラーゼMYST3、核RNP H3、及び多くの核受容体や因子を含むが、これらに制限されない。これらの標的遺伝子の大部分はの発生及び癌症/腫瘍の形成に高度に関与している。要するに、miR-302はその相同miRNAs、例えばmiR-92、miR-93、miR-367、miR-371、miR-372、miR-373、miR-374及びmiR-520をさらに促進してその機能を向上及び/又は維持させることができる。

0007

MiRNAは細胞質中の遺伝子抑制因子(inhibitor)であり、その通常の機能は高度な相補性(complementarity)により特定の標的部位と結合し、その標的遺伝子の転写物(mRNAs)の翻訳を抑制することであり、そしてRNA-誘導サイレンシング複合体(RISC)を形成してmRNAsを阻害又は分解する。よって、miRNAと標的遺伝子との結合の厳密度によって該miRNAの本来の機能が決められる。これに対し、我々の過去の研究(Lin氏ら,2010(非特許文献6);US 12/792,413)ではmir-302で調節される腫瘍抑制を裏付ける機構について重要な解釈を提供した。ヒト細胞において、mir-302の標的となる複数の細胞周期調節因子はCDK2、cyclins D1/D2、及びBMI-1遺伝子を含んでサイレンシングを行うが、興味深いことに、p21Cip1が含まれていない。前記したように、細胞周期においてCDK2とcyclin Dとの共同サイレンシングはG1期からS期への移行を阻害し、且つ比較的遅い細胞増殖率をもたらす。また、BMI-1のサイレンシングによって主要な2つの腫瘍抑制因子であるp16Ink4aとp14ARFの発現が刺激され、それによりさらに細胞増殖を減少させて腫瘍形成を抑制する。ヒト細胞において、p16Ink4a/p14ARFの発現が増加してp21Cip1が影響を受けないため、mir-302はcyclin-E−CDK2及びcyclin-D−CDK4/6を共抑制する経路以外、p16Ink4a−Rb及び/又はp14/19ARF−p53経路を通じて抗腫瘍形成機能を発揮する可能性がある。

0008

前述したmir-302の抗腫瘍形成の特徴に基づき、我々はmir-302を用いてヒト腫瘍と癌症の治療薬とすることができる。しかし、この試みに4つの主要な問題がある可能性がある:(1)遺伝子サイレンシングエフェクターとして、mir-302はその前駆体として機能を発揮する必要がある。現在ヘアピン様の73〜75ヌクレオチドの長さであるRNAを生成する有効なリボ核酸合成技術はない。その配列の正確度を確保するために、合成されるRNAの最大長さが約45〜55ヌクレオチドであるが、mir-302前駆体(pre-mir-302)の形成にはそれが十分ではない。(2)我々には濃度がhES細胞内のmir-302レベルよりも高いmir-302発現が必要であり、それによりその抗腫瘍/癌症効果を誘起する(Lin氏ら,2010(非特許文献6))。しかし、現在ではそれほど多くのpre-mir-302を生産して薬物生産に供する方法がない。hESまたはiPS細胞からのpre-mir-302単離は高価であり、そのうち細菌コンピテント細胞により高度二次構造を有するpre-mir-302を生産することができない。(3)合成されたsiRNAなどの模倣体(mimics)は動物試験において一度も成功したことがない。siRNAなどの模倣体の短い生命周期(3〜5日間)及びその高い毒性のため、インビボ(in vivo)の条件で天然mir-302の代わりにsiRNAを使用することができない。また、siRNAなどの模倣体の使用によって細胞内のmicroRNA経路の過飽和が引き起こされ、毒性も起こす報告がある(Grimm氏ら,2006(非特許文献13))。(4)mir-302の完全の機能はその前駆体中のmir-302センス及びそのmir-302*アンチセンス鎖(例えばmir-302a*、mir-302b*及びmir-302c*)に依存する。そのため、mir-302で調節する抗腫瘍/癌症療法及びその関連薬物の開発から、経済的で有効なpre-mir-302の生産及び/又は単離方法要件である。

0009

要するに、mir-302及びその前駆体、並びにその関連相同体/誘導体を製造、単離及び使用する有効で安全な方法が必要である。
発明の概要
本発明はマイクロリボ核酸前駆体(microRNA precursors,pre-miRNAs)を癌症治療の治療薬及び/又はワクチンとして使用する設計及び方法である。具体的には、本発明は組換え核酸組成物を使用する設計及び方法に関し、この組換え核酸組成物がヒト細胞に送達された後、小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクター(small RNA-based gene silencing effector)に処理され、mir-302の標的となる細胞周期調節因子及び/又は発癌遺伝子に対する特定の遺伝子サイレンシング効果を引き起こし、腫瘍抑制及び/又は癌症予防などの効果をもたらし、これにより腫瘍/癌細胞の成長、増殖、侵入及び転移の抑制に用いることができる。これらの小型リボ核酸遺伝子サイレンシングエフェクターは腫瘍抑制因子マイクロリボ核酸(TS-miRNA)、例えばmir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、mir-302e、mir-302f、それらの前駆体(pre-miRNAs)、及びそれらの手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸(shRNA)様相同体/誘導体、並びにそれらの組み合わせを含むことが好ましい。小ヘアピンリボ核酸相同体/誘導体の設計はshRNA及びそれと相同の小干渉リボ核酸(small interfering RNA,siRNA)構造における個別の単一ユニット又は複合クラスター(cluster)内のミスマッチ(mismatched)及びパーフェクトマッチ(perfectly matched)核酸組成物を含む。それらは標的特異性を促進するとともに、送達及び治療に必要なmir-302の数量(コピー数,copy number)を低減することができる。前記ヒト細胞はインビトロ、エクスビボ及び/又はインビボの正常細胞及び/又は腫瘍/癌細胞を含む。

0010

天然マイクロリボ核酸(miRNA)は、長さが約18〜27個のヌクレオチド(nucleotides,nt)で、マイクロリボ核酸(miRNA)とその標的との間の相補性によって、その標的となるメッセンジャーリボ核酸(messemger RNA,mRNA)を直接分解し、又はその標的となるメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の翻訳を抑制することができる。Mir-302ファミリー(mir-302s)は高度な相同性を有し、数多くの哺乳動物に保存(conserved)されているマイクロリボ核酸(miRNAs)である。Mir-302ファミリー(mir-302s)は4つの主要なファミリーメンバーを含み、それらは5'から3'への順番で、mir-302b、mir-302c、mir-302a、mir-302d、及びmir-367を含む非コードリ核酸クラスター(non-coding RNA cluster)に転写される(Suh氏ら,2004(非特許文献12))。最近、科学者は本来のファミリークラスターのほかに、5つ目と6つ目のmir-302メンバーであるmir-302eとmir-302fを発見した。mir-367とmir-302sは自然状況で共発現されるが、これらの機能は実に互いに異なっている。本発明では、抗腫瘍形成の機能に基づき、我々はmir-302sのみを発現させるような傾向にある。ある実施例において、我々はさらに、細胞内の送達及び発現のために、5'-GCTAAGCCAG GC-3' (SEQ.ID.NO.1)と5'-GCCTGGCTTA GC-3' (SEQ.ID.NO.2)のような手動で再設計したヘアピンループ(hairpin loops)を用いて、本来のmir-302前駆体(pre-mir-302)のヘアピンループを代替することができる。通常、mir-302はマウス以外のヒト胚性(hES)細胞及び誘導多能性幹(iPS)細胞のみにおいて大量に発現され、しかし、他の分化された体細胞においてはそうではない(Tang氏ら,2007(非特許文献14);Suh氏ら,2004(非特許文献12))。mir-302sは相同の小型抑制性RNAsで、それと高度に相補的な標的遺伝子をサイレンシングすることができるので、mir-302sはhES及びiPS細胞において発癌遺伝子の活性化の不規則(errant)及び早熟(premature)の防止に関連する可能性がある。そのため、それは抗腫瘍/癌症治療薬物の開発にも用いられる。実際に、桑実胚期(morula stage,32〜64細胞期)前のhES細胞は、通常、mir-302により誘発された多能性幹(mirPS)細胞のように比較的遅い細胞周期速度を示す(Lin氏ら,2010(非特許文献6))。これはmir-302が正常幹細胞の制御及び腫瘍/癌細胞形成の予防という二重の役割を果たすことを示唆した。

0011

全てのmir-302メンバーは、5'末端配列の最初にある17個のヌクレオチドにおいて完全一致な配列を共有し、そのうちシードモチーフ(seed motif)である5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3' (SEQ.ID.NO.3)を含み、また、同様に23個のヌクレオチドを有する成熟したマイクロリボ核酸(miRNA)において、85%以上の配列相同性(homology)を有する。オンライン演算プログラム「TARGETSCAN」(http://www.targetscan.org/)及び「PICTAR-VERT」(http://pictar.mdc-berlin.de/)による現在の予測結果に基づき、これらのメンバーは同時にほぼ同じ細胞遺伝子を標的とし、そのうちに607個を超えるヒト遺伝子が含まれている。さらに、mir-302は機能上においてある程度似ているかもしれないmir-92、mir-93、mir-200c、mir-367、mir-371、mir-372、mir-373、mir-374及びmir-520ファミリーメンバーとも、多数の標的遺伝子を共有している。これらの標的遺伝子の多くは、初期胚発生中の系列特異的な細胞分化(lineage-specific cell differentiation)の開始及び/又は確立に関与する発生シグナル(developmental signals)及び転写因子である(Lin氏ら,2008(非特許文献1))。そして、標的遺伝子の多くは既知の発癌遺伝子(oncogenes)でもある。これらの標的となる発生シグナルと分化関連転写因子の多くは発癌遺伝子であるため、mir-302は腫瘍抑制機能も有しており、正常hES細胞の成長が腫瘍/癌細胞の形成へ進行することを防止することができる。

0012

ある好ましい実施例において、本発明はヒト腫瘍/癌症の治療に用いられる非ベクター(non-vector-based)のpre-mir-302の製造及び送達の方法である。前記したように、pre-mir-302の長さが約73〜75ヌクレオチドであるが、45〜55ヌクレオチド長さの制限で、我々は従来のRNA合成技術により合成することができない。そのため、我々は、薬物生産に供するように、新しい方法を採用しpre-mir-302を生成してその量を増加させる必要がある。従って、本発明において原核によりmiRNA前駆体(生成物がpro-miRNA)を生産する技術を使用し、pre-mir-302の模倣体を調製する。該技術は優先権出願であるUS 13/572,263の派生発明である。Pro-miRNAは原核コンピテント細胞、例えば大腸菌DH5α細胞株から製造される新しいヘアピン様pre-miRNA模倣体である。当業者にとって知られるように、原核と真核との転写機構は非常に異なっており、且つ互いに相容れないので、我々は真核遺伝子とpre-miRNAsを転写できるように原核転写システム修正する必要がある。本願の優先権出願であるUS 13/572,263の発明には、ある化学的誘導により、原核細胞が真核pol-2とpol-2様(即ちCMV)プロモーターを用い、大量のpre-mir-302様のヘアピン様RNAs(生成物がpro-mir-302)を転写することができることが既に開示されている。この転写誘導物により原核転写システムと真核遺伝子発現とが相容れるようになるだけではなく、原核細胞内の真核遺伝子転写物の二次構造を安定させることもできる。Pro-miRNA技術の利点は、第1に、細菌コンピテント細胞の速くて簡単な成長天性のため、特定のpre-miRNA又は若干の(必要な)pre-miRNAの生産は費用便益原則に合致していること;第2に、数グラムからキログラムレベルの工業的規模の量産が期待できること;第3に、腫瘍又は哺乳動物細胞を培養して融合させる必要がないため、操作上では簡単で高価ではないこと;第4に、化学試薬により誘導されるpol-2様プロモーターの転写により、高い配列正確度が確保されること;最後に、原核細胞においてはDicer及び他のmiRNAの発現が欠けているため、純度の高いpre-miRNA生成物が得られることにある。得られたpro-miRNAは細菌抽出物及び/又は溶解生成物から簡単に単離して(実施例20)さらに精製される(実施例21)ことができ、該抽出物と溶解生成物が多くの薬学上及び治療上の応用の開発に用いられる。

0013

我々は既に数多くのpre-mir-302様のpro-miRNA、pro-mir-302を製造して(実施例18〜21)それを傷口治癒の促進に使用した(実施例22)。治療に使用するために、単離されるpro-mir-302は予め用意されたカカオバター綿実油オリーブオイルピルビン酸ナトリウム及び白色ワセリンを含有する軟膏から調製された。軟膏内のpro-mir-302の濃度は10 μg/mLである。そして解剖メスで皮膚を切り開いて、開放創を形成した。pro-mir-302を含む又は含まない軟膏はそれぞれ傷口に直接塗布され、創部全体を覆った。そして、さらに液状包帯でこの領域をシールした。図14に示すように、2週間以内に、pro-mir-302で処理された創部の治癒速度が著しく向上し、中でも他のコントロール群のすべてよりも二倍以上速い結果を示した。なお、pro-mir-302で治癒された領域では正常の毛の再生が現れ、かつ瘢痕も残っていない(例えば黒い矢印で示す箇所)。それに対し、他の処理群では少しの瘢痕が残り、かつ毛の成長がない。この結果から明らかなように、pro-mir-302は正常の組織回復と再生を刺激する機能を有する。

0014

我々も前記pro-mir-302を精製して液体薬剤に調製し、注射を施してインビボで肝臓癌/悪性肝腫瘍の治療をテストした(実施例23)。図15に示すように、3回の注射後、pro-mir-302を含む薬剤体内移植された肝臓癌細胞/悪性肝腫瘍の90%に近い体積縮小させ、即ち未処理グループと比較すると、腫瘍の平均サイズが未処理グループの10%に縮減した。なお、H&E染色で組織学的試験を行った結果により、この癌症/悪性腫瘍に対する治療結果はmir-302の抗腫瘍形成の性質による(Lin氏ら,2010)だけではなく、以前認められていなかった新しく発見された再プログラム機能にもよることがさらに示された。例えば、図16に示すように、mir-302は体内の高度悪性のヒト肝臓癌移植体を正常の肝臓組織近似した比較的良性の状態に再プログラムできることが明らかに示された。治療された癌細胞移植体はさらに正常の肝臟構造、例えば典型的な肝小葉中心静脈(CV)及び門脈三管(PT)を形成することができる。従って、mir-302は腫瘍/癌の成長を抑制することができるだけではなく、体内環境で正常組織の回復及び/又は再生にも寄与し、癌症治療に有利な効果に達する。

0015

他の好ましい実施例において、本発明はさらに、mir-302を発現し、腫瘍/癌症を治療するベクターを提供する。本願の優先権出願であるUS 12/792,413に開示されるように、発明者は既に誘導可能なpTet-On-tTS-miR302s発現ベクター(図1A)を設計、開発しており、さらにウィルス感染電気穿孔法又はリポソーム/ポリソーム(polysomal)形質移入法によって正常及び/又はヒト癌細胞中にmir-302を送達する。再設計されたmir-302構造は同じクラスター中のmir-302a、mir-302b、mir-302c、及びmir-302dという4つの小非コードリボ核酸メンバー(small non-coding RNA members)を含む(mir-302s;図1B)。ドキシサイクリン(Doxycycline,Dox)による刺激において、このmir-302s構造は、テトラサイクリン応答要素(tetracycline-responsive element,TRE)に制御されるサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターによって駆動され、発現される。感染/形質移入後、mir-302の発現は天然マイクロリボ核酸(miRNA)生合成経路に沿って行われる。そのうち、mir-302s構造は、赤方偏移蛍光タンパク質(red-shifted fluorescent protein,RGFP)のようなレポーター遺伝子とともに共転写され、そしてさらにスプライセオソーム複合体(spliceosomal components)及び/又は細胞質内のRNAエンドリボヌクレアーゼ(RNaseIII)であるダイサー(Dicers)(図2A)(Lin氏ら,2003(非特許文献15))によって、単独のmir-302メンバーに処理される。この施策による結果は、マイクロリボ核酸マイクロアレイ分析(実施例3)において、センス(sense)mir-302メンバーの全てがドキシサイクリンによる刺激後、形質移入された細胞で有効的に発現された(図1C)。mir-302発現ベクターをヒト細胞に形質導入する工程は図2Bに説明される。

0016

本発明者は天然のイントロンマイクロリボ核酸(intronic miRNA)の生合成経路を模倣して(図2A)、組換えRGFP遺伝子を転写するように、イントロンマイクロリボ核酸発現系、即ちSpRNAi-RGFPを設計した。SpRNAi-RGFPは、人造/人工スプライシング可能なイントロン(splicing competent intron、SpRNAi)を含有し、該イントロンはイントロンマイクロリボ核酸(intronic miRNA)及び/又は小ヘアピンリボ核酸様(shRNA-like)遺伝子サイレンシングエフェクターを生成することができる(Lin氏ら,2003(非特許文献15);Lin氏ら,(2006) MethodsMol Biol.342:295-312(非特許文献16))。SpRNAiとRGFPはII型RNAポリメラーゼ(Pol-II RNA polymerase)によって共転写されてSpRNAi-RGFP遺伝子のメッセンジャーリボ核酸前駆体/プレメッセンジャーリボ核酸(pre-mRNA)中に包含され、しかも、RGFPはRNAスプライシング複合体(RNA splicing components)によって切り出される。そして、スプライス済みのSpRNAiは更に天然マイクロリボ核酸(native miRNA)及び人工小ヘアピンリボ核酸(shRNAs)のような成熟した遺伝子サイレンシングエフェクターに処理されることで、標的遺伝子に対する特定のリボ核酸干渉効果(RNA interference,RNAi)を誘発する。同時に、イントロンスプライシング(intron splicing)後、SpRNAi-RGFP遺伝子転写物(transcript)のエクソン(exons)が連結されることによって、成熟したメッセンジャーリボ核酸(mRNA)を形成し、その後、miRNA/shRNAの発現を識別するために用いるRGFPレポータータンパク質に翻訳される。定量上では、1倍濃度のRGFPは4倍濃度のmir-302発現に相当する。また、RGFPの代わりに機能性タンパク質エクソン、例えば体細胞再プログラム(somatic cell reprogramming,SCR)中のhES遺伝子マーカーを選択的に用いて付加的な遺伝子機能を提供してもよい。現在、脊椎動物において、機能不明の天然マイクロリボ核酸が1000種類以上発見され、また、より多くの新しいマイクロリボ核酸も相次ぎ識別されているため、我々のイントロンマイクロリボ核酸発現系はインビトロ及びインビボでの上記マイクロリボ核酸機能の測定に有利なツールとなることができる。

0017

SpRNAiイントロンは、5'スプライス部位(5'-splice site)、分岐点配列(Branch-Point,BrP)、ポリピリミジントラクト(poly-pyrimidine tract)、及び3'スプライス部位(3'-splice site)を有する幾つかの共通ヌクレオチド組成分を含む。また、5'スプライス部位と分岐点配列との間に挿入されるヘアピンマイクロリボ核酸(miRNA)又は小ヘアピンリボ核酸(shRNA)前駆体も含む。イントロンのこの部分は通常RNAスプライシングと処理中に投げ縄(lariat)構造を形成する。なお、SpRNAiの3'末端は、イントロンRNAスプライシング(intronic RNA splicing)と処理の正確度を増すために、様々な翻訳終止コードン領域(translational stop codon region(T codon))を含む。このT codonは細胞質内のメッセンジャーリボ核酸(mRNA)に発現されると、細胞内のナンセンス仲介減衰(nonsense-mediated decay,NMD)システム活性化シグナルを生じさせ、細胞毒性の発生を防ぐために細胞内に蓄積したあらゆる非構造化のリボ核酸を分解する。しかし、高度に構造化された小ヘアピンリボ核酸(shRNA)及びマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)が保留され、更にダイサー(Dicer)によって切断され、それぞれ成熟した小干渉リボ核酸(siRNA)及びマイクロリボ核酸(miRNA)を形成する。我々は、イントロンmiRNA/shRNAを発現させるために、SpRNAiを手動でRGFP遺伝子のDraII制限部位に組み込んで(Lin氏ら,2006と2008(非特許文献16及び1))、組換えSpRNAi-RGFP遺伝子を形成した。DraII制限酵素によるRGFPの切断によって、各末端に3個の陥凹ヌクレオチドをもつAG-GNヌクレオチド切断部位が生じ、SpRNAi挿入後にそれぞれ5'及び3'スプライス部位を形成する。このイントロン挿入は、RGFPタンパク質完全性破壊するが、これはイントロンのスプライシングによって完全性を回復できるので、我々は形質移入された細胞中に現れる赤色の赤方偏移蛍光タンパク質(RGFP)によって、成熟したmiRNA/shRNAの発現を測定することができる。RGFP遺伝子は、RNAスプライシングの正確度と効率を向上させるように、複数のエクソンスプライシングエンハンサー(exonic splicing enhancers,ESEs)も備えている。

0018

詳細には、SpRNAiイントロンは、5'-GTAAGAGK-3' (SEQ.ID.NO.4)又はGU(A/G)AGU (SEQ.ID.NO.35)モチーフ(即ち5'-GTAAGAGGAT-3'(SEQ.ID.NO.36)、5'-GTAAGAGT-3'(SEQ.ID.NO.37)、5'-GTAGAGT-3'(SEQ.ID.NO.38)及び5'-GTAAGT-3' (SEQ.ID.NO.39))のいずれかと相同である5'スプライス部位(5'- splicing site)を含み、該SpRNAiイントロンの3'末端は、GWKSCYRCAG(SEQ.ID.NO.5)又はCT(A/G)A(C/T)NG(SEQ.ID.NO.40)モチーフ(即ち5'-GATATCCTGCAG-3' (SEQ.ID.NO.41)、5'-GGCTGCAG-3' (SEQ.ID.NO.42)及び5'-CCACAG-3' (SEQ.ID.NO.43))と相同である3'スプライス部位(3'- splicing site)である。また、分岐点配列(branch point sequence)は5'末端と3'末端のスプライス部位の間に位置し、5'-TACTAAC-3' (SEQ.ID.NO.44)及び5'-TACTTAT-3' (SEQ.ID.NO.45)のような5'-TACTWAY-3' (SEQ.ID.NO.6)モチーフと高度相同である。分岐点配列のアデノシン(adenosine)である「A」ヌクレオチドは、ほぼ全てのスプライセオソームイントロン(spliceosomal introns)において細胞の2'-5'オリゴアデニル酸合成酵素((2'-5')-oligoadenylate synthetases)とスプライセオソーム(spliceosomes)によって、(2'-5')結合型の投げ縄イントロンRNA(intron RNA)の一部を形成することができる。なお、ポリピリミジントラクト(poly-pyrimidine tract)が分岐点配列と3'スプライス部位との間に近接して位置し、高T(チミジル酸)又は高C(シチジル酸)含有量の配列であって、5'-(TY)m(C/-)(T)nS(C/-)-3' (SEQ.ID.NO.7)又は5'-(TC)nNCTAG(G/-)-3' (SEQ.ID.NO.8)モチーフのいずれかと相同である。そのうち、符号「m」及び「n」は複数の重複を示し、≧1であり、最も好ましくは、mは1〜3、nは7〜12である。符号「-」は、該配列内にスキップしてもよいヌクレオチドがあることを示す。また、合成されたイントロン成分の全てを連結するために、配列には幾つかのリンカーヌクレオチド配列も含まれる。米国特許法施行規則(37 CFR)1.822におけるヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データを示す符号及び書式に関するガイドラインに基づき、符号Wはアデニン(A)又はチミン(T)/ウラシル(U)、符号Kはグアニン(G)又はチミン(T)/ウラシル(U)、符号Sはシトシン(C)又はグアニン(G)、符号Yはシトシン(C)又はチミン(T)/ウラシル(U)、符号Rはアデニン(A)又はグアニン(G)、符号Nはアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)又はチミン(T)/ウラシル(U)を示す。

0019

別の可能性のある実施例において、本発明は直接の(エクソン型)mir-302 miRNA/shRNA発現系であって、細胞内のRNAスプライシング及び/又はNMD機構を経ず、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを直接に生成することができる。しかし、この方法の欠点はmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターの発現が、ナンセンス仲介減衰(NMD)のようないずれかの細胞内監視システム(surveillance system)にも制御されないため、天然マイクロリボ核酸生合成経路の過飽和によって細胞毒性を生成するおそれがある(Grimm氏ら,2006(非特許文献13))。この方法に用いられる発現系は、プラスミド(plasmid)、ウィルスベクター(viral vector)、レンチウィルスベクター(lentiviral vector)、トランスポゾン(transposon)、レトロトランスポゾン(retrotransposon)、ジャンピング遺伝子(jumpinggene)、タンパク質コード遺伝子(protein-coding gene)、非コード遺伝子(non-coding gene)、人工組換え導入遺伝子(artificially recombinant transgene)及びこれらの組み合わせから選ばれる直鎖状または環状の核酸組成物であってもよい。マイクロリボ核酸、小ヘアピンリボ核酸、小干渉リボ核酸、及びこれらの前駆体と相同体/誘導体を含むmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは、組織特異的または非特異的なリボ核酸(RNA)プロモーターの制御により発現される。RNAプロモーターはII型RNAポリメラーゼ(type-II RNA polymerase,Pol-II)、ウィルスポリメラーゼ(viral polymerase)、III型RNAポリメラーゼ(type-III RNA polymerase,Pol-III)、I型RNAポリメラーゼ(type-I RNA polymerase,Pol-I)、及びテトラサイクリン応答要素に制御されるRNAポリメラーゼ(TRE)プロモーターから選ばれる。ウィルスプロモーターはPol-II様RNAプロモーターであり、サイトメガロウィルス(cytomegalovirus,CMV)、レトロウィルス末端反復配列(retrovirus long-terminal region,LTR)、B型肝炎ウィルス(hepatitis B virus,HBV)、アデノウィルス(adenovirus,AMV)、及びアデノ関連ウィルス(adeno-associated virus,AAV)から単離されるが、これらに限らない。例として、レンチウィルスLTRプロモーターは1つの細胞において五十万ものプレメッセンジャーリボ核酸転写物(pre-mRNAtranscript)(コピー)を生産することができる。また、薬剤感受性抑制体(drug-sensitive repressor、即ちtTS)をRNAポリメラーゼプロモーターの前に挿入することによって遺伝子サイレンシングエフェクターの転写速度を制御することも可能である。抑制因子は化学薬剤、又はG418、ネオマイシン(neomycin)、テトラサイクリン(tetracycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、アンピシリン(ampicillin)、カナマイシン(kanamycin)、ピューロマイシン(puromycin)、及びこれらの誘導体などから選ばれる抗生物質により抑制される。

0020

一方で、幾つかのイントロン遺伝子サイレンシングエフェクターを発現する複数の導入遺伝子(transgenes)及び/又はベクターを用いて、mir-302の標的遺伝子に対して遺伝子サイレンシング効果を実現してもよい。また、複数の遺伝子サイレンシングエフェクターは、1つのイントロンインサート(intronic insert)によって生成することができる。例えば、ゼブラフィッシュ中のマイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNA)を含有する抗EGFP(anti-EGFP)イントロンの異所性発現(ectopic expression)で、2種類の異なるサイズのmiRNA、即ちmiR-EGFP(282/300)及びmiR-EGFP(280-302)が生成されるとの報告があった。これは、1つのSpRNAiインサートが複数の遺伝子サイレンシングエフェクターを生成できることを示している(Lin氏ら(2005) Gene 356:32-38(非特許文献17))。ある例において、イントロン遺伝子サイレンシングエフェクターは標的遺伝子転写物(即ち、メッセンジャーリボ核酸,mRNA)とハイブリダイゼーションすることで、2本鎖小干渉リボ核酸(siRNAs)を形成してリボ核酸干渉二次効果(RNAi)を引き起こすことができる。これらの遺伝子サイレンシングエフェクターは導入遺伝子ベクターによって絶えず生成されるので、RNAのインビボにおける素早い分解の懸念が軽減される。この施策の利点は、ベクター導入遺伝子による形質移入又はウィルス感染によって、確実で長期的な遺伝子サイレンシング効果を提供することができることにある。

0021

一部の天然プレマイクロリボ核酸(pre-miRNAs)のステムループ(stem-loop)構造が過大及び/又は複雑でマイクロリボ核酸発現系/ベクターに適合しないため、本発明者は天然プレマイクロリボ核酸のループに代わって、手動で再設計したメチオニル運搬リボ核酸ループ(tRNAmet loop、即ち5'-(A/U)UCCAAGGGGG-3'(SEQ.ID.NO.46))を用いる場合が多い。tRNAmetループは天然マイクロリボ核酸と同様な輸送機構によって、Ran-GTP及びエクスポーチン-5(Exportin-5)を介して、手動で再設計したマイクロリボ核酸(miRNA)を細胞核から細胞質への輸送を有効的に実行できる(Lin氏ら,2005(非特許文献17))。本発明の利点は、5'-GCTAAGCCAG GC-3' (SEQ.ID.NO.1)と5'-GCCTGGCTTA GC-3' (SEQ.ID.NO.2)を含む人工改良した1対のプレマイクロリボ核酸ループを使用することにより、手動で再設計したマイクロリボ核酸(pre-miRNA)に天然プレマイクロリボ核酸と同じ核外への輸送(nucleus export)効率をあげるとともに、tRNA輸出には干渉しないことができる。なお、この改良は、mir-302a-mir-302a*のデュプレックスとmir-302c-mir-302c*のデュプレックスの形成を促進し、mir-302s全体の機能及び安定性を向上させることができる。これらの新しいプレマイクロリボ核酸ループの設計はtRNAmetループとmir-302b/mir-302aの短鎖ステムループを組み合わせて修飾することによって完成され、そのうち、mir-302b/mir-302aの短鎖ステムループはヒトES細胞では高度に発現しているが、他の分化した組織細胞ではそうでない。従って、mir-302構造内のこれらの組換え/人造/人工ヘアピンループの使用は、人体での天然miRNA経路に干渉しないため、細胞毒性を低減させ、安全性を向上させる。

0022

Mir-302プレマイクロリボ核酸のファミリークラスターは、合成されたmir-302相同体のハイブリダイゼーション及び連鎖/ライゲーションによって形成され、5'末端から3'末端に向けてmir-302a、mir-302b、mir-302c、及びmir-302dのプレマイクロリボ核酸(pre-miRNAs、図1B)の4つの部分を含む。これら全ての手動で再設計したmir-302 miRNA/shRNA分子は、その5'末端配列の最初に、同じ17個のヌクレオチド[例えば、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3' (SEQ.ID.NO.3)]がある。Mir-302のプレマイクロリボ核酸クラスターに使用される合成オリゴヌクレオチドとして、mir-302a-センス:5'-GTCACGCGTT CCCACCACTT AAACGTGGAT GTACTTGCTT TGAAACTAAA GAAGTAAGTG CTTCCATGTTTTGGTGATGG ATAGATCTCT C-3' (SEQ.ID.NO.9)、mir-302a-アンチセンス:5'-GAGAGATCTA TCCATCACCA AAACATGGAAGCACTTACTT CTTTAGTTTC AAAGCAAGTA CATCCACGTT TAAGTGGTGG GAACGCGTGA C-3' (SEQ.ID.NO.10)、mir-302b-センス:5'-ATAGATCTCT CGCTCCCTTC AACTTTAACA TGGAAGTGCT TTCTGTGACT TTGAAAGTAA GTGCTTCCAT GTTTTAGTAG GAGTCGCTCATATGA-3' (SEQ.ID.NO.11)、mir-302b-アンチセンス:5'-TCATATGAGC GACTCCTACT AAAACATGGA AGCACTTACT TTCAAAGTCA CAGAAAGCAC TTCCATGTTA AAGTTGAAGG GAGCGAGAGA TCTAT-3' (SEQ.ID.NO.12)、mir-302c-センス:5'-CCATATGGCT ACCTTTGCTT TAACATGGAG GTACCTGCTG TGTGAAACAG AAGTAAGTGC TTCCATGTTT CAGTGGAGGC GTCTAGACAT-3' (SEQ.ID.NO.13)、mir-302c-アンチセンス:5'-ATGTCTAGAC GCCTCCACTG AAACATGGAA GCACTTACTT CTGTTTCACA CAGCAGGTAC CTCCATGTTA AAGCAAAGGT AGCCATATGG-3' (SEQ.ID.NO.14)、mir-302d-センス:5'-CGTCTAGACA TAACACTCAA ACATGGAAGC ACTTAGCTAA GCCAGGCTAA GTGCTTCCAT GTTTGAGTGT TCGCGATCGC AT-3' (SEQ.ID.NO.15)、及びmir-302d-アンチセンス:5'-ATGCGATCGC GAACACTCAA ACATGGAAGC ACTTAGCCTG GCTTAGCTAA GTGCTTCCAT GTTTGAGTGT TATGTCTAGA CG-3' (SEQ.ID.NO.16)を含む。また、手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸(shRNA)を使用してもよい。該手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸は合成miR-302s-センス:5'-GCAGATCTCG AGGTACCGAC GCGTCCTCTT TACTTTAACA TGGAAATTAA GTGCTTCCAT GTTTGAGTGG TGTGGCGCGA TCGATATCTC TAGAGGATCCACATC-3' (SEQ.ID.NO.17)及びmir-302s-アンチセンス:5'-GATGTGGATC CTCTAGAGAT ATCGATCGCG CCACACCACT CAAACATGGA AGCACTTAAT TTCCATGTTA AAGTAAAGAG GACGCGTCGG TACCTCGAGA TCTGC-3' (SEQ.ID.NO.18)のハイブリダイゼーションによって形成され、mir-302プレマイクロリボ核酸クラスター(mir-302 pre-miRNA cluster)に代わって、簡単なイントロン挿入を行う。Mir-302小ヘアピンリボ核酸(mir-302 shRNA)は、全ての天然mir-302メンバーと85%よりも高い相同性を有し、同じヒト細胞遺伝子を標的とする。mir-302相同体の設計に当たって、ウラシルの代わりにチミンを使ってもよく、逆の場合も同様である。

0023

mir-302のプレmiRNA/shRNAのイントロン挿入(intronic insertion)については、組換えSpRNAi-RGFP導入遺伝子の挿入部位の側面において、それぞれ5'末端にPvuI及び3'末端にMluI制限/クローニング部位があることから、最初のインサートを除去し、様々なプレmiRNA/shRNAインサート(例えば、mir-302のプレmiRNA/shRNA)で置き換えることができる。これらのプレmiRNA/shRNAインサートはPvuI及びMluI制限部位とマッチする付着末端(cohesive ends)を有する。異なる遺伝子転写物を標的とするイントロンインサートを変えることで、本発明のイントロンmir-302s(intronic mir-302s)発現系は、インビトロ(in vitro)、エクスビボ(ex vivo)、及びインビボ(in vivo)で標的遺伝子サイレンシングを誘発する強力なツールとして使用できる。イントロン挿入後、イントロン挿入部位にmir-302を含有するこのSpRNAi-RGFP導入遺伝子は更にドキシサイクリンにより誘導されるpSingle-tTS-shRNAベクターの制限/クローニング部位(即ち、XhoI-HinDIII制限/クローニング部位)に挿入され、細胞内で発現できるpTet-On-tTS-miR302s発現ベクターを形成する(図1A)。

0024

pre-mir-302様(pro-mir-302)又はmir-302を発現する核酸組成物をヒト細胞に送達させる方法として、リポソーム/ポリソーム/化学的形質移入(liposomal/polysomal/chemical transfection)、DNA組換え(DNA recombination)、電気穿孔法(electroporation)、遺伝子銃による貫入(gene gun penetration)、トランスポゾン/レトロトランスポゾン挿入(transposon/retrotransposon insertion)、ジャンピング遺伝子組み込み(jumpinggene integration)、マイクロインジェクション(micro-injection)、ウィルス感染(viral infection)、レトロウィルス/レンチウィルス感染(retroviral/lentiviral infection)、及びこれらの組み合わせから選ばれる非遺伝子導入方法又は遺伝子導入方法が用いられる。ランダムな導入遺伝子挿入及び細胞の突然変異リスクを防ぐために、本発明はリポソーム又はポリソーム形質移入法を用いて、mir-302発現ベクター及び/又はmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクター(例えばpre-mir-302及び/又はpro-mir-302)を標的ヒト細胞(即ち、腫瘍/癌細胞)に送達することが好ましい。形質導入後、mir-302sの発現レベルはmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターの濃度又は各濃度のドキシサイクリンにおいて、pTet-On-tTS-miR302sベクターにおけるTREに制御されるCMVプロモーターの発現速度によって決められる。従って、本発明は、既知の薬剤(即ち、ドキシサイクリン)又はpre-/pro-mir-302濃度の使用による制御可能な機構を提供することによって、mir-302のインビトロ、エクスビボ、インビボでの発現レベルを調節する。これにより、我々は被検細胞において、RNA蓄積又は過飽和による任意の細胞毒性を防ぐことができる。また、CMVプロモーターにより制御されるmir-302発現は、常にヒト細胞内で1ヶ月の活性化状態を経てDNAメチル化によってサイレンシングされる。その1ヶ月の活性化機構は、処理された細胞におけるRNAの長期的蓄積又は過飽和を回避できるため、癌症の治療に有益である。

0025

要するに、本発明は新規な設計及び施策を採用し、ベクター発現又は非発現のmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを治療薬として、腫瘍抑制及び癌症治療に使用する。mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは、mir-302a、mir-302b、mir-302c、mir-302d、これらのヘアピン様マイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNAs及び/又はpro-miRNAs)、及び手動で再設計した小ヘアピンリボ核酸(shRNA)相同体/誘導体、並びにこれらの組み合わせを含む。好ましい実施例では、本発明は、処理された腫瘍/癌症細胞内で送達可能で十分量のmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターに処理され、mir-302の標的となる細胞周期調節因子と発癌遺伝子を抑制し、腫瘍/癌症の治療に有益な効果を達成する組換え核酸組成物を使用してヒト腫瘍及び癌症を治療する設計及び方法を提供する。この組換え核酸組成物は、処理された細胞内で持続的プロモーター(即ち、CMV)または薬剤誘導性プロモーター(即ち、TRE-CMV)によって駆動される転写によってmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを発現させることができる。一方で、該組換え核酸組成物は原核細胞により駆動されるpre-mir-302の生産(生成物がpro-mir-302)に用いられる。前記pro-mie-302はヒト腫瘍/癌症を治療するmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターとして使用することができる。好ましくは、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは組換えmir-302ファミリークラスター(mir-302s;SEQ.ID.NOs.9〜16の雑種)又は手動で再設計したmir-302小ヘアピンリボ核酸相同体(shRNA、即ちSEQ.ID.NOs.17と18との雑種)から転写される。該処理された細胞マトリックスはインビトロ、エクスビボ又はインビボでmir-302の標的となる細胞遺伝子を発現させることができる。本発明は、mir-302の標的となる細胞遺伝子をサイレンシングすることによって、腫瘍/癌細胞の形成を抑制することができ、高度悪性の癌細胞を比較的良性の低段階状態に再プログラムすることもできる。この現象は癌の退縮(cancer regression)という。

0026

本発明は、以下の方面でmir-302媒介の抗腫瘍/癌症治療が成功したことを証明した:第1に、正常のヒト細胞に対する安全性である。図1E〜1Fと3A〜3Bに示すように、mir-302を正常ヒト細胞(mirPS-hHFC)に形質移入することにより、細胞周期が軽く減衰するが、アポトーシス又は細胞死を引き起こさない。第2に、mir-302をヒト細胞に形質移入することにより、細胞を幹細胞様状態へ再プログラムすることができ、損傷組織の治療に有益である(図4A〜4Bと図5A〜5D)。第3に、mir-302をヒト腫瘍/癌細胞(例えば前立腺癌細胞PC3、皮膚癌細胞Colo、乳癌細胞MCF7、肝臓癌細胞HepG2及び奇形腫細胞NTera-2)に形質移入することにより、これらの腫瘍/癌細胞の成長が強力に抑制され、>98%の細胞死又はアポトーシスを引き起こす(図6A〜6Dと12A〜12C)。第4に、mir-302は、サイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)、サイクリンD1/D2(cyclin D1/D2)とBMI-1のような複数の細胞周期調節因子を共抑制するのみならず、腫瘍抑制因子、例えばp16INK4a及びp14/p19Arfを活性化することにもよって、腫瘍の形成を抑制できる(図7B〜7D)。最後に、インビボでmir-302を腫瘍/癌細胞に送達することによって、>90%の腫瘍/癌細胞の成長を抑制することができる(図8A〜8C及び図15)。また、mir-302はテロメア短縮(telomere shortening)による細胞老化(cell senescence)を引き起こすことはない(図9A〜9C)。注意すべきなのは、我々はmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクター及び/又はその発現ベクターを調製し、そしてインビボの標的腫瘍/癌細胞内に形質移入するに成功し、レトロウィルス感染及び導入遺伝子の突然変異というリスクを回避することができた(図8A〜8Cと図15)。これらの発見は、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを抗腫瘍/癌症治療の治療薬及び/又はワクチンとして使用できる強力な証拠を提供した。また、mir-302は損傷したヒト組織を回復及び再生させる機能をも有しているため(Lin氏ら,2008と2010(非特許文献1及び6))、本発明は抗腫瘍/癌症治療への応用に有益であるだけではなく、さらに組織の回復及び/又は器官の再生にも用いられる。

0027

明らかに言えば、以下で説明される図面はただ例示するためのものであり、本発明を制限するものではない。

0028

欧州特許出願公開第2198025号明細書

先行技術

0029

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図面の簡単な説明

0030

図1A〜1Fは誘導性のmir-302発現及び正常ヒト毛嚢細胞(hHFC)を増殖する効果を示す。図1Aはドキシサイクリン(Dox)により誘導可能なpTet-On-tTs-miR302sベクターの構造。
図1Bはmir-302ファミリー(mir-203s)の構造。
図1Cは10μMドキシサイクリン(Dox)により処理され(n=3、p<0.01)、6時間経過後、誘導発現されたmir-302をマイクロリボ核酸マイクロアレイ分析した結果。
図1Dはコア再プログラム転写因子Oct3/4−Sox2−Nanongとメラニン細胞(melanocytic)のマーカー遺伝子TRP1のタンパク質生成物サイトケラチン(cytokeratin 16)の発現パターンに対するmir-302の用量依存効果(n=5、p<0.01)をノーザン及びウェスタンブロット分析法で分析した。
図1EはmirPS-hHFC細胞クラスターの有糸分裂(M期)と休眠(G0/G1期)の変化に対するmir-302の用量依存効果を示すフローサイトメトリー分析結果の棒グラフ
図1Fは10 μMドキシサイクリン(Dox)による処理後、各mirPS細胞株におけるmir-302の誘導によるアポトーシスDNA断裂のDNAラダーリング(DNA laddering)の特徴。
図2A〜2Cはmir-302sの生合成及びmirPS細胞の生成を示す。図2Aはイントロンmir-302の生合成機構。Mir-302ファミリークラスターは赤色蛍光タンパク質をコードする遺伝子(RGFP)と共に転写され、さらにスプライセオソーム複合体(spliceosomal components)及び細胞質酵素であるRNAエンドリボヌクレアーゼ(RNaseIII)のダイサー(Dicers)によって、単独のmir-302メンバーにスプライスされる。そのうち、赤色蛍光タンパク質をmir-302生成量指標とする。1倍濃度の赤色蛍光タンパク質は4倍濃度のmir-302生成に相当する。
図2Bはリポソーム/ポリソーム/電気穿孔法により、mir-302を形質移入する工程を示す。誘導性のmir-302発現ベクターpTet-On-tTs-miR302s(図1A)は低浸透圧pH緩衝液(200μl、Eppendorf)において、300〜400 Vで150μsecの電気穿孔法によって成熟(adult)hHFC細胞に導入された。試験毎に10 μg pTet-On-tTs-miR302sを用いて、2つのヒト毛嚢(真皮乳頭)由来の培養された200,000個のhHFC細胞に形質移入した。ドキシサイクリン(doxyxycline,Dox)により誘導され発現された後、mir-302の生合成は天然のイントロンマイクロリボ核酸(intronic miRNA)経路に基づいた。
図2Cはリポソーム/ポリソーム/電気穿孔法により、mir-302を形質移入する工程を示す。誘導性のmir-302発現ベクターpTet-On-tTs-miR302s(図1A)は低浸透圧pH緩衝液(200μl、Eppendorf)において、300〜400 Vで150μsecの電気穿孔法によって成熟(adult)hHFC細胞に導入された。試験毎に10 μg pTet-On-tTs-miR302sを用いて、2つのヒト毛嚢(真皮乳頭)由来の培養された200,000個のhHFC細胞に形質移入した。ドキシサイクリン(doxyxycline,Dox)により誘導され発現された後、mir-302の生合成は天然のイントロンマイクロリボ核酸(intronic miRNA)経路に基づいた。
図3A〜3Cはドキシサイクリン(Dox=5又は10 μg)により誘導された後に発現されたmir-302がmirPS-hHFC細胞特性に対して起こした変化を示す。図3Aはドキシサイクリンにより細胞の再プログラムを誘導する前後の、細胞形態と細胞周期の速度の変化を示す。各細胞周期段階とそれに対応するDNA含有量のフローサイトメトリー分析結果を細胞形態学の上にグラフで示す(n=3、p<0.01)。グラフにおいて、第1(左)と第2(右)のピークは、それぞれ全ての被検細胞クラスターに対する休止期(G0/G1)細胞及び有糸分裂期(M)細胞の比率を示す。スケール=100 μm。
図3Bはドキシサイクリンにより細胞の再プログラムを誘導する前後の、細胞形態と細胞周期の速度の変化を示す。各細胞周期段階とそれに対応するDNA含有量のフローサイトメトリー分析結果を細胞形態学の上にグラフで示す(n=3、p<0.01)。グラフにおいて、第1(左)と第2(右)のピークは、それぞれ全ての被検細胞クラスターに対する休止期(G0/G1)細胞及び有糸分裂期(M)細胞の比率を示す。スケール=100 μm。
図3Cは限界希釈後、単一のmirPS-hHFC細胞が胚様体(EB)を形成する時間経過。細胞周期は、最初では約20〜24時間であったが、72時間後に徐々に加速したと推測される。スケール=100 μm。
図4A〜4Bは多能性マーカーの発現の分析及びインビボでの多能性分化と同化を示す。図4Aはヒト胚性幹細胞(hES)マーカー遺伝子がmirPS細胞において高濃度のmir-302により誘導された後の発現パターンと、ヒト胚性幹細胞(hES)マーカー遺伝子がヒト胚性幹細胞であるWA01-H1(H1)及びWA09-H9(H9)における発現パターンとのノーザンブロット分析による比較の結果(n=5、p<0.01)。7.5 μMドキシサイクリン(Dox)処理後のmirPS細胞におけるmir-302の濃度は、H1及びH9細胞における濃度より30%高くなり(未処理のhHFCの>30倍)、主要な多能性マーカーであるOct3/4、Sox2、Nanog、Lin28及び未分化胚性細胞転写因子1(UTF1)の共発現を誘発し始めた。
図4BはmirPS細胞を免疫不全SCID-beigeマウスに移植してから1週間経過後、mirPS細胞により分化された組織が注射部位付近周辺組織に同化された。白い矢印は注射の方向を示す。境界板(intercalated disks)の位置は黄色い三角形標記する。mirPS-hHFC由来の組織嚢腫はマウスの子宮及び腹腔以外の器官/組織で成長することはない。我々はさらに、移植後1週間経過時、解剖を行い、注射部位の周辺組織形成検査した。解剖の前日にマウスに尾静脈注射により10 μgドキシサイクリンを投与した。我々は、腹膜内注射後に形成された腸上皮組織、心臓注射後の心筋、及び背側脇腹(dorsal flank)注射後に形成された骨格筋を含む、RGFP陽性を呈するmirPS細胞が移植位置の周辺組織と同じ種類の細胞に分化したことを観察した。また、同化されたmirPS細胞も、例えば腸上皮のMUC2、心筋のトロポニンT2 (troponin T type 2、cTnT)、及び骨格筋のミオシン重鎖(myosin heavy chain、MHC)のような周辺組織と同様な組織特異的マーカーを発現した。
図5A〜5Dはドキシサイクリン(Dox=10 μM)により誘導されたmirPS-hHFCsがヒト胚性様幹細胞(hES-like)の特性を得たことを示す。図5Aはヒトゲノム遺伝子チップ(Human genome GeneChip U133 plus 2.0 array、Affymetrix)を用いて、mir-302により誘導される体細胞の再プログラム(SCR)前後の全遺伝子発現パターンを分析した結果(n=5、p<0.01〜0.05)。
図5Bは制限酵素HpaIIにより切断された後、比較的小さいDNA断片出現と増加は、5μMではなく10 μMのドキシサイクリン(Dox)による処理後、mirPS細胞におけるゲノム体範囲の全CpGメチル化の大幅減少を証明した。
図5Cは重亜硫酸塩DNA配列決定法によりOct3/4とNanogのプロモーター領域の配列を決定して得られた詳細なメチル化地図。黒い円形と白い円形はそれぞれメチル化と非メチル化シトシン部位を表している。
図5DはmirPS-hHFCsにより多能性分化された奇形腫様組織嚢腫(teratoma-like tissue cysts)が3つの胚葉(embryonic germ layers)に由来する各種の組織を含む。
図6A〜6Eは、10 μMドキシサイクリン(Dox)によりmir-302を誘導して発現させた後、各種の腫瘍/癌細胞に由来するmirPS細胞のインビトロ腫瘍形成能力の分析を示す。図6Aはドキシサイクリン(Dox)によりmir-302の発現を誘導する前後の、細胞形態と細胞周期の速度の変化を示す。各細胞周期段階とそれに対応するDNA含有量のフローサイトメトリー分析結果を細胞形態学の上にグラフで示す(n=3、p<0.01)。
図6Bはドキシサイクリン(Dox)によりmir-302の発現を誘導する前後の、細胞形態と細胞周期の速度の変化を示す。各細胞周期段階とそれに対応するDNA含有量のフローサイトメトリー分析結果を細胞形態学の上にグラフで示す(n=3、p<0.01)。
図6Cは各種の腫瘍/癌細胞に由来するmirPS細胞クラスターの有糸分裂(M期)と休眠(G0/G1期)の変化に対するmir-302の用量依存効果を示すフローサイトメトリー分析結果の棒グラフ。
図6DはMir-302による腫瘍(及び/又は癌細胞)の抑制がMatrigelチャンバー中で現れた侵入行為の機能的分析(n=4、p<0.05)。
図6Eはドキシサイクリン誘導のmir-302の発現の前後、細胞がヒト骨髄内皮細胞(hBMECs)単層接着する比率の比較結果(n=4、p<0.05)。
図7A〜7Dはルシフェラーゼの3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子試験(luciferase 3'-UTR reporter gene assay)により、標的となるG1チェックポイント調節因子(G1-checkpoint regulators)においてmir-302が誘発した遺伝子サイレンシング効果を示す。図7Aはルシフェラーゼ3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子の構造は3'末端非翻訳領域に2つの正常(T1+T2)の、又は2つの突然変異(M1+M2)の、又は正常と突然変異との混合(T1+M2又はM1+T2)のmir-302標的部位がある。突然変異部位は、正常の標的部位の一致する3'-CTT末端の代わりに、ミスマッチ(mismatched)TCCモチーフを含有する。
図7Bはドキシサイクリン(Dox)により誘導されたmir-302発現がルシフェラーゼ発現に対する影響(n=5、p<0.01)。Dox濃度=5又は10 μM。CCND1とCCND2は、それぞれサイクリンD1とサイクリンD2を示す。
図7Cと図7Dはウェスタンブロット分析法で高濃度(10 μM Dox)と低濃度(5 μM Dox)のmir-302誘導において、mir-302の主要な標的となるG1チェックポイント調節因子がmirPS細胞、及びヒト胚性幹細胞(hES)であるWA01-H1(H1)及びWA09-H9(H9)における変化の比較結果(n=4、p<0.01)。
図8A〜8Cはインビボ(in vivo)での腫瘍形成能力の分析により、腫瘍NTera2細胞がベクターにより発現されたmir-302s (NTera2+mir-302s)又はmir-302d* (NTera2+mir-302d*)(n=3、p<0.05)に対する反応を示す。形質移入された腫瘍細胞NTera-2中のmir-302sとmir-302d*は、それぞれpCMV-miR302sとpCMV-miR302d*ベクターから転写された。図8Aはインサイチュー注射(post-is)を実施して3週間経過後、腫瘍の平均サイズに対して形態学評価を行った。全ての腫瘍は本来の移植部位に位置した(黒い矢印で示す箇所)。いずれの被検マウスでも悪液質又は腫瘍転移徴候は観察されなかった。図8Bはノーザンブロット分析とウェスタンブロット分析により、インビボでmir-302がコア再プログラム転写因子Oct3/4-Sox2-Nanogとmir-302の標的となるG1チェックポイント調節因子であるサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)、サイクリンD1/D2(cyclins D1/D2)、BMI-1、及びp16Ink4aとp14Arfの発現パターンに対する効果を示す。
図8Cは免疫組織化学染色分析により、インビボでmir-302がコア再プログラム転写因子Oct3/4-Sox2-Nanogとmir-302の標的となるG1チェックポイント調節因子であるサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)、サイクリンD1/D2(cyclins D1/D2)、BMI-1、及びp16Ink4aとp14Arfの発現パターンに対する効果を示す。
図9A〜9Cは10 μMドキシサイクリンにより誘導されるmir-302の発現において、mirPS-hHFCと各種の腫瘍/癌細胞に由来するmirPS細胞株のテロメラーゼ活性分析を示す。図9Aはテロメアリピート増幅プロトコル試験(TRAP)でテロメラーゼ活性を分析した(n=5、p<0.01)。テロメラーゼの活性はRNase処理に影響される(hHFC+RNase)。
図9Bはウェスタンブロット法の分析により、各種のmirPS細胞株におけるヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の発現が一致的に増加するが、AOF2とHDAC2の発現が減少することを証明した(n=5、p<0.01)。
図9CはテロメラーゼPCRELISA試験でテロメラーゼ活性を測定した(OD470-OD680;n=3、p<0.01)。
図10A〜10Dの分析結果により、標的となるエピジェネティック遺伝子(epigenetic gene)に対してmir-302が誘発したサイレンシング効果を示す。図10Aはルシフェラーゼ3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子の構造は、3'末端非翻訳領域に2つの正常の(T1+T2)又は2つの突然変異の(M1+M2)、又は正常と突然変異との混合の(T1+M2又はM1+T2)mir-302の標的部位がある。突然変異部位は正常の標的部位の一致する3'末端CTTの代わりに、ミスマッチのTCCモチーフを含有する。
図10Bはドキシサイクリン(Dox)により誘導して発現されたmir-302のルシフェラーゼ発現に対する影響(n=5、p<0.01)。
図10Cと図10Dはウェスタンブロット分析法で高濃度(10 μM Dox)と低濃度(5 μM Dox)のmir-302の誘導において、mir-302の主要な標的となるエピジェネティック遺伝子(epigenetic gene)はmirPS細胞及びヒト胚性幹細胞であるWA01-H1(H1)及びWA09-H9(H9)における発現の変化の比較結果(n=4、p<0.01)。
図11はmir-302媒介の体細胞再プログラム(somatic cell reprogramming、SCR)と細胞周期調節機構の模式図である。従来及び現在の研究に基づき、我々は平行する2つの事象を発見した。第1に、mir-302は、複数種のエピジェネティック調節因子(epigenetic regulators)であるAOF1/2、MECP1/2及びHDAC2に対する強力なサイレンシング作用によって再プログラムを開始すると共に、全ゲノムDNAの脱メチル化を引き起こすことで、さらにSCRを誘発するのに必要な(灰色マーカー)ヒト胚性幹細胞の細胞マーカー遺伝子を活性化する。第2に、G1チェックポイント調節因子サイクリン依存性キナーゼ(CDK2)、サイクリンD1/D2(cyclins D1/D2)とBMI-1の共抑制及びp16Ink4aとp14/p19Arfの活性化によって、細胞周期の減衰を引き起こすことで、SCRに備える(黒色マーカー)ように全細胞活動を抑制する。休眠期(G0/G1)の休止も可能なランダム成長(random growth)及び/又は再プログラムされた多能性幹細胞の腫瘍様形質転換(transformation)を防止する。要するに、これら2つの事象の協同効果の結果は、より精確且つ安全な再プログラムプロセスと、早熟(pre-mature)及び腫瘍の形成も同時に抑制できることである。
図12A〜12Cはmir-302様のRNA分子をヒト上皮初代培養細胞(hpESC)、ヒト前立腺癌細胞(PC3)及びヒト初代黒色腫細胞(Colo)に導入遺伝子発現した後、細胞形態及び細胞増殖の変化を示す。mir-302の形質移入後、mir-302発現が陽性である細胞はそれぞれhpESC+mir-302、PC3+mir-302及びColo+mir-302である。
図13はイントロンmiRNA miR-302の天然の生合成機構を模式的に示す。Mir-302はLaリボ核タンパク質ドメインファミリーメンバー7遺伝子(La ribonucleoprotein domain family member 7 (LARP7))のイントロン領域によりコードされる天然イントロンmiRNAである。mir-302の生合成では、初級のmiRNA前駆体(pri-miRNA)はまずII型RNAポリメラーゼ(Pol-II)によりLARP7遺伝子の転写物と共に転写され、次に細胞スプライセオソームによってヘアピン様のmiRNA前駆体(pre-miRNA)に修飾される。Pre-miRNAはエクスポーチン5(Xpo5)によって細胞核から輸出され、且つ、さらに細胞質中のDicer様のリボ核酸エンドリボヌクレアーゼRNase IIIによって成熟したmiRNAsに処理される。続いて、成熟したmir-302分子はArgonauteタンパク質(Ago 1〜4)と共に、RNA-inducedサイレンシング複合体(RISC)に結合し、特定の遺伝子のサイレンシングを誘発することができる。
図14はpro-mir-302を用いてマウス皮膚開放創を治療するインビボでの新薬臨床前試験(pre-IND)の結果を示す。試験には、上のブランク群、即ち軟膏のみでの処理、中のpro-mir-434濃度10 μg/mLの軟膏(ネガティブコントロール群)、下のpro-mir-302濃度10 μg/mLの軟膏という異なる3つの治療を含む。
図15はpro-mir-302を注射薬剤として、SCIDヌードマウスにおいて異種移植(xenografts)されたヒト肝臓癌細胞を治療するインビボでの新薬臨床前試験(pre-IND)の結果を示す。3回の処理(週に1回)後、pro-mir-302(pre-mir-302)薬が腫瘍を728±328 mm3(未処理のブランク群、コントロール群C)から75±15 mm3(pro-mir-302による処理、グループT)に減少させたことに成功し、平均腫瘍サイズの90%に近い減少率を示した。同じ工程で合成siRNAなどの模倣体(siRNA-302)によって処理された後、顕著な治療効果が発見されなかった。更なる組織学的試験(最右)では、pro-mir-302によって処理された異種移植された肝臓癌細胞/腫瘍のみで正常肝小葉のような構造(黒い矢印で示す丸)が観察され、他の処理グループ又はコントロール群では観察されなかったことを示した。この結果は再プログラム機構が悪性の癌細胞性質を比較的正常の状態に回復させることができる(癌の逆転、cancer reversion)ことを示唆した。
図16は正常肝臓組織とpro-mir-302で処理されたin vivo異種移植されたヒト肝臓癌細胞/腫瘍との組織学的な相似性を示す。3回の処理(週に1回)後、pro-mir-302(pre-mir-302)薬が高度(grade IV)の異種移植されたヒト肝臓癌を比較的良性である低段階(grade IIより低い)状態に再プログラムすることに成功した。正常の肝臓組織(上図)のように、処理された異種移植の癌(腫瘍)は、中心静脈(CV)様および門脈三管(PT)様の構造(黒い矢印で示す箇所)を有する典型的な肝小葉を形成することができる。一般的には、正常の肝細胞と比べて、癌細胞が酸性を示し、ヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色の結果により、癌細胞の色が比較的紫であり、正常の肝細胞の色が比較的赤であることを示す。
図17はSCID-beigeヌードマウス体内の、未処理の、siRNAによる処理の、pro-mir-302による処理の異種移植されたヒト肝臓癌(腫瘍)と正常の肝臓組織との病理組織学的比較を示す。未処理では(上図)、異種移植されたヒト肝臓癌(腫瘍)が、正常組織、例えば筋肉と血管に侵略的に侵入し、大規模の細胞-細胞及び癌-組織の融合構造を形成し、その高度悪性及び転移を示した。siRNAなどの模倣体(siRNA-302)による処理では、異種移植された肝腫瘍(中上図)の悪性が著しく低下しなかった。その理由はsiRNA分子のインビボでの短い半減期にある可能性がある。それに反して、pro-mir-302 (=pre-mir-302)による治療では、異種移植された癌細胞を正常肝細胞様の形態(未融合)に再プログラムしただけではなく、癌(細胞)の周囲の正常組織への侵入を抑制することに成功した(中下図)。正常肝臓組織(下図)と比較して、pro-mir-302で処理された悪性腫瘍では肝小葉様の構造、正常腺細胞様の配列、及び細胞-細胞と癌-組織の接合部位(黒い矢印)の非常に明らかな境界を示した。これは、処理された癌(腫瘍)が比較的良性の状態になったことを証明した。

0031

発明の詳細な説明
添付した図面を参照しながら本発明の特定の具体的実施例を説明するが、これらの具体的実施例は実施例に過ぎず、本発明の原理の応用を代表できる少数の可能性のある特定の具体的実施例のみを例示的に挙げることを理解すべきである。当業者であれば、各種の変更や修飾は、添付した特許請求の範囲でさらに定義される本発明の精神、範囲や意図に含まれると見なすべきである。

0032

本発明は、新規な核酸組成物、及び組換えのmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを利用してヒト腫瘍/癌細胞の増殖と腫瘍形成を抑制する方法を提供する。従来の小ヘアピンリボ核酸(shRNA)の設計と異なり、本発明に係る小ヘアピンリボ核酸は、天然mir-302の前駆体(pre-mir-302)に類似するミスマッチステムアーム(mismatched stem-arm)を含む。なお、本発明に係る小ヘアピンリボ核酸は改良されたpre-mir-302ステムループである5'-GCTAAGCCAG GC-3' (SEQ.ID.NO.1)及び5'-GCCTGGCTTA GC-3' (SEQ.ID.NO.2)を含み、該pre-mir-302ステムループは運搬リボ核酸(tRNA)の輸送に干渉せずに天然マイクロリボ核酸前駆体(pre-miRNAs)と同様な核外への輸送(nucleus export)効率を提供することができる。いかなる特定の理論に制限されず、本発明の抗増殖、抗腫瘍形成の効果は、新たに発見されたmir-302ファミリークラスター(mir-302s)又はmir-302と相同な小ヘアピンリボ核酸を発現できる組換え核酸組成物を形質移入することによって引き起こされるmir-302媒介の遺伝子サイレンシング機構を示す。全ての手動で再設計したmiRNA/shRNA分子は、その5'末端配列の最初の17個のヌクレオチドに同様な配列である5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3' (SEQ.ID.NO.3)を有する。mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクター、及びmir-302を発現する核酸組成物を構築する工程は実施例2及び3において記述する。mir-302と相同な配列を設計する際、ウラシル(U)に代わってチミン(T)を用いてもよい。

0033

ヒト細胞周期においてmir-302の役割を位置づけるために、我々は誘導可能なpTet-On-tTS-miR302s発現ベクターを設計し(図1A、実施例2)、正常のヒト細胞とヒト癌細胞中に形質移入した。Mir-302sはhES特有のマイクロリボ核酸(miRNA)ファミリーであり、ファミリークラスターにmir-302b、mir-302c、mir-302a、及びmir-302d(mir-302s;図1B)という4つの小型非コード(non-coding)RNAメンバーが含まれる(Suh氏ら,2004)。本発明では、mir-302sの発現は、ドキシサイクリン(Dox)の刺激下で、テトラサイクリン応答要素(tetracycline-response-element,TRE)により制御されるサイトメガロウィルスプロモーター(cytomegaloviral (CMV) promoter)によって駆動される。形質移入後、mir-302の生合成は天然のイントロンマイクロリボ核酸の生合成経路に基づいて行われ、そのうち、mir-302が赤色蛍光タンパク質をコードするレポーター遺伝子(RGFP)とともに転写され、さらにスプライセオソーム複合体(spliceosomal components)及び細胞質RNAエンドリボヌクレアーゼRNaseIIIであるダイサー(Dicers)によって、単独のmir-302メンバーにスプライスされる(図2A)(Lin氏ら,2008)。定量上では、1倍濃度のRGFPは4倍濃度のmir-302に相当する。マイクロリボ核酸のマイクロアレイ分析によって、ドキシサイクリン(Dox)の刺激下で、mir-302b*以外の全てのmir-302メンバーが形質移入された細胞において有効的に発現することを確認した(図1C、実施例3)。pTet-On-tTS-miR302s発現ベクターで細胞を形質移入する工程については図2B〜2Cにおいて概略に記述する。

0034

また、pTet-On-tTS-miR302sのようなmir-302を発現する核酸組成物は、真核細胞における翻訳効率を向上させるKozak翻訳開始共通配列(Kozak consensus translation initiation site)、mir-302を発現させる構造物(mir-302 construct)の下流側に位置する複数のSV40ポリアデニル化シグナル(SV40 polyadenylation signals)、原核細胞増殖のためのpUC複製起点、mir-302を発現させる構造物(即ち、SpRNAi-RGFP)を該核酸組成物に組み込むための少なくとも2箇所の制限部位、SV40 T抗原を発現させる哺乳動物細胞において複製に必要な選択的SV40複製起点、及び複製可能な原核細胞で抗生物質耐性遺伝子を発現させるための選択的SV40初期プロモーターを含む。抗生物質耐性遺伝子の発現は、導入遺伝子が発現した陽性クローニングを単離するための選択的マーカーとして用いられる。これらの抗生物質は、G418、ネオマイシン(neomycin)、ピューロマイシン(puromycin)、ペニシリンG(penicillin G)、アンピシリン(ampicillin)、カナマイシン(kanamycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、エリスロマイシン(erythromycin)、スペクトロマイシン(spectromycin)、フォフォマイシン(phophomycin)、テトラサイクリン(tetracycline)、ドキシサイクリン(doxycycline)、リファピシン(rifapicin)、アンホテリシンB(amphotericin B)、ゲンタマイシン(gentamycin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)、セファロチン(cephalothin)、チロシン(tylosin)、及びこれらの組み合わせから選ばれる。

0035

Mir-302はアポトーシスを起こさずに正常細胞の細胞周期を減衰させる
我々の過去の研究では、ヒト黒色腫細胞Colo-829及び前立腺癌細胞PC3において、mir-302発現の増加はこれらの悪性癌細胞をhES様の多能性の(pluripotent)状態に再プログラムできることを示した(Lin氏ら,2008)。体細胞の再プログラム(SCR)の過程において、mir-302が98%より多くの(>98%)の癌細胞のアポトーシスを引き起こすとともに、さらに残りの(<2%)再プログラム細胞増殖速度を大幅に低減した。確かにこれらの特性は癌症治療に有益であるが、mir-302が正常ヒト細胞における機能はまだ確実ではない。その効果を評価するために、我々は誘導可能なpTet-On-tTs-miR302s発現ベクターを正常ヒト毛嚢細胞(hHFCs)中に導入した。hHFCsを選んだ理由はその量が十分で、到達性を有し、且つ成長が速いことにある。我々は、ドキシサイクリン(Dox)の濃度が10 μMまで増加することにつれ、ドキシサイクリン濃度が7.5 μMより高い(>7.5 μM)(図1D、実施例5)の閾値で、コア再プログラム因子(core reprogramming factors)Oct4−Sox2−Nanogが一斉に促進されるとともに、増殖性細胞クラスターが70%減少し、即ち、本来の37%±2%から11%±2%まで減少した(図1E、M期、実施例7)ことを観察できた。それに応じて、休眠細胞クラスターが41%増加し、即ち、本来の56%±3%から79%±5%まで増加し(図1E、G0/G1期、実施例7)、我々が以前、mir-302によって再プログラムされた多能性幹細胞(mir-302−reprogrammed pluripotent stem cells)において発見された(mirPS cells;Lin氏ら,2008)強力な抗増殖作用相似することを示唆した。しかし、mir-302により再プログラムされたhHFC細胞(mirPS-hHFC)はアポトーシスを測定できるDNAラダーリング(DNA laddering)又は細胞死のいずれの徴候も示さない(図1F、実施例6)ことから、腫瘍/癌細胞と比較して、正常細胞の方がよりmir-302による抗増殖作用を耐えられることを示した。腫瘍/癌細胞はその旺盛な新陳代謝及び急速な成長拡張により、このような休眠状態における生存が極めて困難となると考えられる。

0036

注意すべきなのは、7.5 μMより高い濃度のドキシサイクリンで処理した後、mirPS-hHFCの形態は、紡錘状轉から休眠細胞様の球状に変わったことである(図3A-3B、赤色RGFP陽性細胞)。7.5 μMドキシサイクリンの刺激下で生成された細胞のmir-302濃度はヒト胚性幹細胞H1及びH9細胞中のmir-302濃度水準の約1.3倍である(図4A、実施例4)。このより高い濃度水準下で、mirPS-hHFCsはOct3/4、Sox2、Nanog、及びその他の標準ヒト胚性幹細胞(hES)マーカーを強く発現した(図4A)。全遺伝子発現のマイクロアレイ分析では、約半分のトランスクリプトーム(transcriptome)がhHFC体細胞のパターンからhES様の発現パターンに変化し、且つ、H1/H9細胞と93%よりも高い(>93%)相似性を有することがさらに示された(図5A、実施例8)。体細胞の再プログラム(SCR)開始の最初の徴候である全ゲノムDNAの脱メチル化は、これらのmirPS-hHFCsにおいても明確に測定でき、且つ脱メチル化のパターンもH1/H9細胞中のと同じである(図5B及び5C、実施例9)。また、個々のmirPS-hHFC細胞は胚様体様の単一のコロニーに成長するとともに、1サイクルあたり20〜24時間の細胞分裂速度もmir-302の抗増殖効果に一致している(図3C)。我々は、これらのmirPS-hHFCsは偽妊娠免疫不全のSCID-beigeマウスの子宮及び腹腔中にのみ奇形腫様組織嚢腫を形成するため、これらのmirPS-hHFCsは多能性(pluripotent)であるが、腫瘍形成能力(tumoregenetic)を有しないことに特に注意した。これらの奇形腫様嚢腫は、外胚葉中胚葉、及び内胚葉という3つの胚葉(embryonic germ layer)組織に由来する種々の組織を含む(図5D、実施例10)。また、mirPS-hHFCsが正常の雄性マウスの体内に異種移植されると、mirPS-hHFCsが周辺組織に同化され、それらと同様な組織マーカーを呈するようになった。このことは、mir-302が損傷細胞の治癒に用いられる可能性も示した(図4B)。以上の発見をまとめると、mir-302は体細胞hHFCsをhES様のiPS細胞(誘導多能性幹細胞)に再プログラムできることを示唆している。Oct3/4とSox2などの転写因子はmir-302の発現にとって重要であり(Marson氏ら,2008;Card氏ら,2008)、mir-302はOct3/4−Sox2に代わって、体細胞再プログラム(SCR)の発生を誘導できるかもしれない。

0037

Mir-302に誘導されるSCRと細胞周期の減衰と平行に行われることは、mir-302の濃度によって決まる。我々は、mir-302の濃度がヒト胚性幹細胞H1/H9における濃度の1.3倍を超えると、それらはほぼ同時に起こることを発見したことから、この特殊な濃度は前記2つの事象を開始させる最小閾値であることを示した。過去の実験では、単一のmir-302メンバー、又はH1/H9細胞中の比較的低濃度に相当する濃度のmir-302を使用した場合、前記事象を誘発することができなかった。また、我々は比較的低濃度の5 μMドキシサイクリンにより誘導されたmir-302の濃度ではレポーター遺伝子の標的部位又は標的となるG1チェックポイント調節因子をサイレンシングできないことを証明した。自然の発育と比較して、桑実胚期(morula stage,32〜64細胞期)の前の胚性細胞はmirPS細胞の状況と相似な非常に遅い細胞周期速度を示している場合が多いが、このような細胞周期調節作用胚盤胞由来の(blastocyst-derived)hES細胞では見つからなかった。これより、hES細胞質において比較的低濃度のmir-302では、標的となるG1チェックポイント調節因子及び発癌遺伝子をサイレンシングするのに足りないことが推測できる。これは、胚盤胞由来のhESはなぜ劇的な増殖能力及び腫瘍形成傾向を有する理由を解釈できるかもしれない。従って、本発明は幹細胞治療においてhES細胞の腫瘍形成能力(tumorigenecity)を低減させるためにも適用できる。

0038

Mir-302が腫瘍形成能力を抑制するとともに、様々な腫瘍/癌細胞のアポトーシスを誘導する
mir-302は癌細胞のアポトーシス及び細胞周期の減衰を引き起こす機能を有することに鑑みて、我々はmir-302を汎用的ヒト腫瘍/癌細胞の治療薬として使用する可能性を引き続き検討した。我々の過去の研究では、黒色腫(melanoma)と前立腺癌細胞における可能性を既に示した(Lin氏ら,2008)が、現行の研究で、乳癌細胞MCF7、肝臓癌細胞Hep G2、及び胚性奇形腫細胞NTera-2における可能性をさらに試した。図6A-6Bに示すように、3種類の腫瘍/癌細胞はpTet-On-tTS-miR302sベクターによって形質移入され、且つ、10μMドキシサイクリンの刺激下で、全てが休眠mirPS細胞に再プログラムされ、且つ、胚様体様コロニー(embryoid body-like colonoes)を形成した。3種類の腫瘍/癌細胞の全てにおいて、該濃度水準のmir-302は顕著なアポトーシスも引き起こした(>95%)(図1F、実施例6)。さらに、フローサイトメトリーによって、細胞周期の各時期のDNA含有量を分析した結果、全てのmirPS細胞中の有糸分裂細胞クラスターが著しく減少したことを示した(図6C、実施例7)。有糸分裂細胞クラスター(M期)はmirPS-MCF7細胞中では49%±3%から11%±2%まで78%低減し、mirPS-HepG2細胞中では46%±4%から17%±2%まで63%低減し、mirPS-NTera2細胞中では50%±6%から19%±4%まで62%低減した。逆に、休止/休眠の細胞クラスター(G0/G1期)は、mirPS-MCF7、mirPS-HepG2及びmirPS-NTera2細胞では、mirPS-MCF7細胞中では41%±4%から74%±5%まで、mirPS-HepG2細胞中では43%±3%から71%±4%まで、mirPS-NTera2細胞中では40%±7%から69%±8%まで、それぞれ80%、65%及び72%増加した。これらの結果は、mir-302がこれらの腫瘍/癌細胞の速い細胞周期速度を有効的に低減し、顕著なアポトーシスを誘発することができたことを示唆している。

0039

細胞侵入試験(Matrigelチャンバーを使用)及び細胞接着試験(細胞がヒト骨髄内皮細胞(hBMEC)の単細胞層に接着する)などのインビトロでの腫瘍形成能力試験(In vitro tumorigenecity assays)では、mir-302が抗増殖特性を有するほか、さらに2種類の抗腫瘍形成の効果も示された。細胞侵入試験(Cell invasion assay)は、全ての3種類の休眠mirPS-腫瘍/癌細胞がその移動能を失ったが(<1%まで低下)、本来の腫瘍/癌細胞がより高い栄養物が補充された区画エリアに強引的に侵入し、MCF7細胞では9%±3%以上の、Hep G2細胞では16%±4%の、NTera-2細胞では3%±2%の細胞クラスターを占めることを示した(図6D、実施例11)。細胞接着試験(Cell adhesion assay)も一貫してこれらのmirPS-腫瘍/癌細胞がhBMEC単細胞層に接着できないことを示したが、本来のMCF7、Hep G2細胞が50分間の培養を経た後、そのうちのかなりの細胞クラスター(MCF7 7%±3%、Hep G2 20%±2%)は速やかにhBMEC単細胞層に転移した(図6E、実施例12)。総括すれば、これまで全ての発見は、mir-302がヒト腫瘍抑制因子であり、細胞の速い成長を減速させ、腫瘍/癌細胞のアポトーシスを誘発でき、腫瘍/癌細胞の侵入(invasion)及び転移(metastasis)を抑制できることを、再びに強く示した。最も重要なのは、このmir-302の新規な機能は、悪性の皮膚癌(Colo-829)、前立腺癌(PC-3)、乳癌(MCF7)、及び肝臓癌(HepG2)に限らない多様なヒト腫瘍/癌に対抗でき、且つ奇形腫(NTera-2)に様々な異なる組織が含まれる観点から、各種の腫瘍に対する汎用的な治療を提供できる。

0040

Mir-302媒介の抗増殖機能は、CDK2、cyclin-D1/D2、及びBMI-1に対する共抑制によって達成される
mir-302とその標的となるG1チェックポイント調節因子との間の実際の相互作用を確認するために、我々はルシフェラーゼの3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子(luciferase 3'UTR region reporter)試験を行った(図7A、実施例15)。その結果、異なる濃度のmir-302による処理は、サイクリン依存性キナーゼ2 (CDK2)、サイクリンD1/D2 (cyclins-D1/D2)とBMI-1ポリコームリングフィンガー発癌遺伝子(BMI1 polycomb ring finger oncogene)を含む標的となるG1チェックポイント調節因子に対して、大きく異なる抑制効果を引き起こすこととなった。10 μMドキシサイクリンの存在下で、mir-302はCDK2、cyclins D1/D2、及びBMI-1転写物の標的部位に効果的に結合し、80%より多く(>80%)のレポータールシフェラーゼの発現をサイレンシングすることに成功した(図7B、実施例15)。mirPS細胞中で真の標的遺伝子に対するMir-302の抑制効果をウェスタンブロット分析法によって確認した結果は、ルシフェラーゼの3'末端非翻訳領域レポーター遺伝子試験(図7C、実施例5)による結果と一致する。これに反して、5 μMのドキシサイクリンにより誘導されるmir-302の比較的少量の発現では、レポーター遺伝子の標的部位、又はサイクリンD2以外の標的となるG1チェックポイント調節因子のいずれに対しても顕著なサイレンシング効果を誘発できない(図7B及び7D)。これはmir-302発現の用量依存性(dose-dependent manner)及びmir-302が該用量依存性に基づいて細胞周期速度を微調整する能力を示している。哺乳動物細胞周期では、G1−S期の移行は通常、代償性の2つのサイクリン−サイクリン依存性キナーゼ複合体(cyclin−CDK complexes)であるcyclin-D−CDK4/6及びcyclin-E−CDK2によって制御される(Berthet氏ら,2006)。我々は、高濃度のmir-302がCDK2及びcyclins D1/D2に対する共抑制を通じて2つの複合体を失活させることで、G1−S期移行を制御する2つの経路を阻害するとともに、再プログラムされたmirPS細胞中の細胞周期速度を低下することを発見した。hHFCs及びmirPS細胞において、cyclin D3の有限な発現量は、mirPS細胞におけるcyclins D1/D2損失代償に及ばない。

0041

我々は、BMI-1のサイレンシングに伴って、p16Ink4a及びp14Arfの発現は微増する(hHFCsにおける上昇比率はそれぞれ63%±17%と57%±13%である)ことをさらに検知したが、p21Cip1の発現の変化は見られなかった(図7C)。発癌性の癌症幹細胞(oncogenic cancer stem cell)マーカーであるBMI-1の欠乏は、p16Ink4a及びp14Arfなどの腫瘍抑制因子の活性を増加させることによって、G1−S期移行を抑制する(Jacobs氏ら,1999)。このような状況では、16Ink4aは、cyclin-Dに依存するCDK4/6 (cyclin-D-dependent CDK4/6)が網膜芽細胞腫タンパク質(retinoblastoma protein,Rb)をリン酸化する活性を直接抑制することで、RbがS期に入るために必要なE2Fを放出することを防止し、さらにE2F依存性転写(E2F-dependent transcription)を行う(Parry氏ら,1995;Quelle氏ら,1995)。また、p14ArfはHDM2とp53との結合を防止しながら、G1期の停止又はアポトーシスの役割を担うp53依存性転写(p53-dependent transcription)を許容する(Kamijo氏ら,1997)。しかし、現在知られている限りでは、胚性幹細胞はcyclin-D依存性のCDK(cyclin-D-dependent CDK)による調節を受けない(Burdon氏ら,2002;Jirmanova氏ら,2002;Stead氏ら,2002)ことから、hES細胞の細胞周期調節については、CDK2はG1−S期移行を誘発するために主要な決定因子であると認知されている。そのため、CDK2のサイレンシングがmirPS細胞のG1期の停止(G1-arrest)に最も影響を与える可能性が大きく、cyclin-DとBMI-1の共抑制及びp16Ink4aとp14Arfの共活性化は、腫瘍の生成シグナルにより誘発される(tumorigenetic signal-induced)細胞増殖を付加的に抑制する。また、cyclin-Dの損失及びp16Ink4aの活性化は、胚性幹細胞においてcyclin-D依存性(cyclin-D−dependent)のCDKの活性不足についても解釈できる。

0042

従って、マイクロリボ核酸(miRNA)と標的遺伝子との相互作用の厳密度はマイクロリボ核酸本来の機能を決定できる。異なる細胞条件によって、マイクロリボ核酸は遺伝子標的の異なる嗜好を表す。本発明はその重要なディテールを発見するとともに、mir-302がヒトとマウス細胞における機能が大いに異なることを初めて開示した。mir-302は、ヒト細胞において、CDK2、cyclins D1/D2、及びBMI-1を標的として強く狙うが、興味深いことに、p21Cip1が含まれていない。マウスp21Cip1と違って、ヒトp21Cip1にはmir-302の標的部位がいずれも含まれていない。この遺伝子標的の相違は両者の細胞周期調節における重要な分岐(schism)を招いた。マウス胚性幹細胞(mES)において、mir-302はp21Cip1をサイレンシングするとともに、腫瘍様(tumor-like)の細胞増殖を促進する(Wang氏ら,2008;Judson、2009)が、ヒトmirPS細胞中では、p21Cip1の発現が維持されるとともに、比較的遅い細胞増殖と比較的低い腫瘍形成能力をもたらす。また、マウスのBMI-1も、適切な標的部位を欠けているためmir-302の標的遺伝子とならない。我々は、mirPS細胞において、ヒトBMI-1のサイレンシングは、p16Ink4a/p14ARFの発現をわずかに刺激し、細胞増殖を減弱させるが、一方、mir-302はマウスBMI-1をサイレンシングすることによって、マウス細胞において同様な効果を引き起こすことができないことを開示した。mirPS細胞において、p16Ink4a/p14ARFの発現が増加し、p21Cip1が影響を受けないことから、ヒトmirPS細胞における抗増殖効果及び抗腫瘍形成効果はcyclin-E−CDK2及びcyclin-D−CDK4/6を共抑制する経路以外、p16Ink4a−Rb及び/又はp14/19ARF−p53経路を通じて発揮する可能性が最も大きいと理解されるべきである。Mir-302のヒト及びマウス遺伝子を標的とする嗜好における顕著な違いは、両者の細胞周期調節機構に根本的な相違があることを示唆している。

0043

Mir-302の処理は幹細胞の多能性を変えずにインビボでの腫瘍細胞の成長を90%よりも多く減少させる
我々は、mir-302の腫瘍抑制機能及びその正常と腫瘍/癌細胞との間における異なる作用を確認した後、次に8週齢雄性胸腺欠損マウス(BALB/c-nu/nu種)のインビボNTera2由来の奇形腫を治療する薬物としてmir-302が使用できるか否かの試験を行った(実施例13)。腫瘍Tera-2細胞株(neoplastic Tera-2,NTera-2)は多能性ヒト胚性奇形腫細胞株(human embryonalteratocarcinoma cell line)であって、インビボで多種の原始的体細胞組織(primitive somatic tissue)、特に原始的腺組織及び原始的神経組織に分化することができる(Andrews氏ら,1984)。その多能性のため、NTera-2由来の奇形腫はインビボでの様々な腫瘍を治療するモデルになることができる。薬剤の投与では、我々はインサイチュー(in situ)注射によってポリエチレンイミン(polyethylenimine,PEI)で調製されたpCMV-miR302s発現ベクターを腫瘍にできるだけ近い部位に注射した。pCMV-miR302sベクターはテトラサイクリン応答要素により制御される(TRE-controlled)CMVプロモーターを一般のCMVプロモーターに変えることで構成されたが(実施例2)、DNAメチル化のため、pCMV-miR302sのヒト細胞における発現は1ヶ月くらい期間に続く。上限値の10μg/マウス体重(g)(1回の注射の最大量)のpCMV-miR302sベクターを注射した後、マウスに疾患又は悪液質(cachexia)の徴候が観察されなかったため、この方法の安全性が証明された。組織学的検査においても、脳、心臓、肝臓腎臓、及び脾臓組織損傷(lesion)が検出されなかったことが示された。

0044

本発明の実施例では、2 μg/マウス体重(g)のpCMV-miR302sで5回の処理(3日置きに処理する)を行ったところ、奇形腫の成長に対して顕著な抑制作用があることを見出した。図8A(実施例13)に示すように、pCMV-miR302sベクターで処理した後、NTera2由来の奇形腫の平均サイズ(11±5mm3、n=6)は未処理のグループ(104±23mm3,n=4)と比較して、89%より多く(>89%)減少した。これに反して、PEIで調製した等量のアンチセンス-mir-302d(antisense-mir-302d)発現ベクター(pCMV-miR302d*)の投与は、奇形腫のサイズを本来の140%(250±73mm3,n=3)に増大させた。以上の結果により、本発明はNTera-2細胞が中程度のmir-302を発現することを発見した(図8B)。ノーザンブロット分析の結果も、これらの異なる処理を受けた奇形腫細胞において、mir-302の発現は腫瘍の大きさ(図8B)と負の相関関係であることを示し、つまり、mir-302の発現を調節することでインビボの奇形腫の成長を有効に制御することができることを示唆している。過去のインビトロ(in vitro)での発見を証明するために、我々はウェスタンブロット分析を行ってmir-302で処理した奇形腫において、G1チェックポイント調節因子CDK2−cyclins-D1/D2−BMI-1の共抑制及びコア再プログラム因子Oct3/4−Sox2−Nanogの共活性化を確認した(図8B)。免疫組織化学(immunochemical,IHC)染色法で奇形腫組織におけるこれらのタンパク質を分析したところ、同様な結果が証明された(図8C、実施例14)。最も注目すべきなのは、我々は自然の多能分化能に影響せずにmir-302が奇形腫細胞の成長を抑制できることを発見した。このことから、高濃度のmir-302が腫瘍抑制因子と再プログラム因子との両役を担うことも示唆した。mir-302の二重機能及びインビトロとインビボで(in vitro,in vivo)得られた一致した結果に基づき、我々は、インビトロで発見されたmir-302の抗増殖機構はインビボの奇形腫成長の抑制に適用することができ、そのため、各種の腫瘍に対して治療法としての可能性があると推測した。

0045

Mir-302がヒト上皮初代培養細胞(hpESC)、ヒト前立腺癌細胞(PC3)及びヒト黒色腫細胞Colo-829(Colo)を抑制する
我々は、試験したhpESC、PC3及びColo細胞においてmir-302の標的となる遺伝子を形質移入によってサイレンシングするために、連結したmir-302a−mir-302b−mir-302c−mir-302dであるpre-miRNAクラスター(SEQ.ID.NOs.9〜16)又は手動で再設計したpre-mir-302などの模倣体(例えば、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3'(SEQ.ID.NO.3)を含むヘアピン状の配列)を含む一連のmir-302の構成を設計して試験した。Mir-302a、mir-302b、mir-302c及びmir-302dの成熟配列はそれぞれ、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUUGG UGA-3' (SEQ.ID.NO.71)、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUUAG UAG-3' (SEQ.ID.NO.72)、5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUCAG UGG-3' (SEQ.ID.NO.73)及び5'-UAAGUGCUUC CAUGUUUGAG UGU-3' (SEQ.ID.NO.74)である。注意すべきなのは、これらの相同のmir-302様の遺伝子サイレンシングエフェクターは、5'末端領域にある最初の17個のヌクレオチドが高い保存性(100%相同性)、即ち配列5'-UAAGUGCUUC CAUGUUU-3'(SEQ.ID.NO.3)を共有している。これらのmir-302の相同配列において、ウラシル(U)の代わりにチミン(T)を用いてもよい。

0046

これらの実験において、我々は、hpESC及びPC3細胞にmir-302a-mir-302b-mir-302c-mir-302dのpre-miRNAクラスターを、PC3細胞に再設計したmir-302相同体(SEQ.ID.NO.75)をそれぞれ形質移入した。これらのmir-302の形質移入後、全ての細胞株はその細胞形態(下図)が紡錘形又はアメーバ状からより丸い外形に転換するが、これは細胞が細胞移動能を失う可能性があり、且つ幹細胞の成長と相似する極めて遅い細胞複製速度を有することを示唆している(図12A〜12C)。異なる細胞周期段階(x軸)のDNA含有量(y軸)を示すフローサイトメトリー分析(上図)では、有糸分裂細胞集団が67%以上減少し、mir-302形質移入細胞の遅い細胞増殖速度が確認されたが、細胞集団の数は各細胞周期段階のDNA含有量によって示されている。1番目(左)と2番目(右)のピークはそれぞれ、被検細胞集団全体における休眠のG0/G1期と有糸分裂のM期の細胞集団数のレベルを示している。mir-302形質移入後、有糸分裂細胞集団数は、hpESC細胞では36.1%から10.9%に、PC3細胞では38.4%から12.6%に、またColo細胞では36.5%から11.5%に減少したが、空ベクター又はmir-gfpを含むpre-miRNAを発現するベクターで形質移入されたグループでは、形質移入後、細胞形態又は細胞増殖のいずれにおいても有意な変化はない。mir-gfpを含むpre-miRNAは、ヒト及びマウスの遺伝子と相同性がないホタルのEGFP遺伝子を標的とするために用いられる。これらの知見に基づき、我々は、mir-302相同体の導入遺伝子発現がヒト初代培養細胞及び癌細胞を幹細胞(ES)の形態及び複製速度のように形質転換できることを示しているが、これは以前のiPS細胞研究で観察された変化と相似している(Okita氏ら,(2007) Nature 448: 313-317; Wernig氏ら,(2007) Nature 448: 318-324)。

0047

Mir-302がインビボで異種移植された高度悪性のヒト肝臓癌を低段階の良性状態に再プログラムする
遺伝子の蓄積突然変異のため、癌の進行過程不可逆的であるとされている。しかし、本発明はマイクロリボ核酸mir-302の前駆体(pre-mir-302)の新規な機能、即ち高度悪性の癌/腫瘍を低段階に再プログラムして良性状態とすることを開示し、自発性の癌の退縮(Cancer regression)と呼ばれる稀な自然療癒過程に属する可能性もある。自発性の癌の退縮は発生率が約100,000名の癌患者中の1名で、非常に稀に発生する。本発明者は、pre-mir-302による治療で稀な癌の退縮の発生率を約90%に向上させることができることを発見した。図15に示すように、pre-mir-302などの模倣体(pro-mir-302)をSCID-beigeヌードマウスの異種移植された悪性のヒト肝腫瘍の治療薬として使用した結果、pro-mir-302薬が悪性腫瘍を728±328 mm3(未処理のブランク群、コントロール群C)から75±15 mm3(pro-mir-302による処理、グループT)に減少させたことに成功したことを示しており、平均腫瘍サイズの90%に近い減少率を示した。それに比べて、他の合成siRNAなどの模倣体(siRNA-302)による処理ではいかなる近似した治療効果も示さなかった。更なる組織学的試験(最右)では、pro-mir-302で処理された異種移植された悪性腫瘍のグループのみで正常肝小葉のような構造(黒い矢印で示す丸)が観察され、他の処理グループ又はコントロール群では観察されなかったことを示しており、再プログラム機構の発生により悪性の癌細胞性質を比較的正常の状態に回復させた(癌の逆転,cancer reversion)ことを証明した。この新規な再プログラム機構はmir-302の腫瘍抑制因子の機能と関連するかもしれない。この機構は複数のヒト発癌遺伝子を同時で特に標的としてサイレンシングを行い、且つ腫瘍のシグナル伝達経路起動を解消/予防する。しかし、多能性Oct4陽性幹細胞の現れが確認されていなかったため、この再プログラム機構は以前報告されたmir-302の体細胞に対する再プログラム機能とは異なるかもしれない(Lin氏ら,2008と2011)。

0048

より詳細な組織学的試験では、pro-mir-302薬により高度(grade IV)の異種移植されたヒト肝臓癌細胞/腫瘍を比較的良性である低段階(grade IIより低い)状態に再プログラムすることに成功したことをさらに開示した。図16に示すように、処理された異種移植された癌(腫瘍)は中心静脈(CV)様及び門脈三管(PT)様の構造(黒い矢印で示す箇所)を有する典型的な肝小葉を形成することができ、正常の肝臓組織構造(上図)と高度に相似する。SCID-beigeヌードマウス体内の、未処理の、siRNAによる処理の、pro-mir-302による処理の異種移植されたヒト肝臓癌(腫瘍)と正常の肝臓組織とを比較して(図17)、未処理では(上図)、異種移植されたヒト肝臓癌(腫瘍)が、周囲の正常組織、例えば筋肉と血管に侵略的に侵入し、大規模の細胞-細胞及び癌-組織の融合構造を形成したことを発見し、その高度悪性及び転移を示した。siRNAなどの模倣体(siRNA-302)による処理では、異種移植された肝臓癌細胞/腫瘍(中上図)の悪性が著しく低下しなかった。その理由はsiRNA分子のインビボでの短い半減期にある可能性がある。それに反して、pro-mir-302(=pre-mir-302)による治療では、異種移植された癌細胞を正常肝細胞様の形態(未融合)に再プログラムしただけではなく、癌(細胞)の周囲の正常組織への侵入を抑制することに成功した(中下図)。正常肝臓組織(下図)と比較して、pro-mir-302で処理された悪性腫瘍では肝小葉様の構造、正常腺細胞様の配列、及び細胞-細胞と癌-組織の接合部位(黒い矢印)の非常に明らかな境界を示した。これは処理された癌(腫瘍)が比較的良性の状態になったことを証明した。次に6回以上のpro-mir-302を含む薬物による連続した治療により、全ての6つのサンプル中の異種移植された癌細胞/腫瘍が完全に解消された。

0049

Mir-302はテロメアを短縮させるのではなく、p16Ink4a/p14ARFの活性化によって、細胞老化(cell senescence)を誘発する
ヒト誘導多能性幹細胞(iPS)には老化を加速し、拡張を制限する問題があるという報告がある(Banito氏ら,2009;Feng氏ら,2010)。正常の成熟細胞は、有限数量の分裂を行い、最終的に複製老化(replective senescence)と呼ばれる静止状態(quiescence state)に至る。複製老化を回避した細胞は大抵腫瘍/癌細胞のような不死化細胞(immortal cells)となるため、複製老化は腫瘍/癌細胞の形成に対抗する正常の防御機構である。本発明では、我々は、mir-302はBMI-1を直接サイレンシングすることによって、p16Ink4a/p14ART関連の細胞周期調節を引き起こすことができることを発見した。他の研究では、BMI-1によってヒトテロメラーゼ逆転写酵素(human telomerase reverse transcriptase,hTERT)の転写作用が活性化され、テロメラーゼの活性が高められることによって複製老化が回避されて、細胞寿命が増長されるとのことがさらに指摘された(Dimri氏ら,2002)。このことから、mir-302の過剰発現はmirPS細胞のhTERT随伴性老化(hTERT-associated senescence)を引き起こすことが分かる。これを解明するために、我々はテロメアリピート増幅プロトコル試験(telomeric repeat amplification protocol,TRAP)(実施例16)を行い、テロメラーゼの活性を測定した。図9Aに示すように、10 μMのドキシサイクリンで処理した全てのmirPS細胞は、意外にもその本来の腫瘍/癌細胞及びヒト幹細胞H1/H9細胞に相似し、強烈なテロメラーゼ活性を示した。また、ウェスタンブロット分析は、これらのmirPS細胞において、hTERTの発現は減少ではなく、増加したことが示された(図9B)。テロメラーゼPCRELISA試験によって、テロメラーゼの相対活性が増加したことが証明された(図9C)。また、我々はmirPS細胞中のリジン特異的ヒストンデメチラーゼ(lysine-specific histone demethylase AOF2、又はKDM1/LSD1とも言う)及びヒストンデアセチラーゼ(histone deacetylase HDAC2)のサイレンシングもさらに検出できた(図9B)。過去の研究では、hTERT転写の抑制にAOF2が必要であり、AOF2とHDAC2の両者の欠乏がhTERTの過剰発現を引き起こすことは指摘された(Won氏ら,2002;Zhu氏ら,2008)。我々はまた、本発明において、AOF2とHDAC2はmir-302の強い標的であり、且つmirPS細胞中ではいずれもサイレンシングされたことを発見した(図10)。そのため、mirPS細胞中では、mir-302は実際にhTERT随伴性老化を誘発するのではなく、mirPS細胞のテロメラーゼの活性を増強させる。しかしながら、hTERT活性増大の効果はmir-302により引き起こされたBMI-1の抑制とp16Ink4a/p14ARFの活性化で中和され、mir-302細胞中で腫瘍/癌細胞の形成を防ぐバランスに達している。

0050

要するに、本発明では癌症治療薬として新規な腫瘍抑制機能のあるmir-302を使用する。我々は、mir-302媒介の細胞周期調節は、G1チェックポイント調節因子の共抑制とCDK抑制因子の活性化との間の高度協調的な機構を含むことを発見した。G1−S進行中にいかなるミスを防ぐために、これらの事象は同時に起こる必要がある。細胞周期中のG0/G1期の静止が体細胞の再プログラム(SCR)の開始にとって極めて重要である。該休眠状態において、体細胞ゲノムが大量に脱メチル化され、且つ91%より多くの細胞トランスクリプトームがhES様の遺伝子発現パターンに再プログラムされる。我々は、mir-302とその標的遺伝子との間の相互作用を解明することによって、SCR期間におけるmir-302と関連する細胞周期調節の複雑な機構を認識することができた(図11)。我々の過去の研究では、mir-302はその標的となるエピジェネティック調節因子(epigenetic regulators)をサイレンシングする一方、Oct3/4−Sox2−Nanogの共発現を活性化させ、続いてこれらの再プログラム転写因子はSCRを引き起こすことを証明した(Lin氏ら,2008)。本発明はさらに、mir-302がSCR期間中にCDK2、cyclins D1/D2、及びBMI-1を同時にサイレンシングすることで、細胞分裂を減弱させることを率先的に明らかにした。細胞周期速度を適度に制御することは、SCR期間でよく活性化される発癌遺伝子の腫瘍形成能力を防止することにおいて生物学上の重要性を有している。このことについて、mir-302はCDK2及びcyclins D1/D2をサイレンシングするとともに、G1−S期移行を阻害する。同時に、BMI-1の抑制はp16Ink4aとp19Arfの腫瘍抑制因子の活性をさらに増大させる。これらの細胞周期経路の協調的な調節を介して、mir-302は細胞の腫瘍形成(tumorigenecity)へ悪化せずに、体細胞の再プログラム(SCR)の進行を開始させることができる。

0051

本発明は、少なくとも5つの正面的な革新がある。第1に、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは4つのコア再プログラム転写因子Oct−Sox2−Klf−c-Myc及びOct4−Sox2−Nanog−Lin28の全てを代替することで、ヒト細胞をhES様幹細胞に再プログラムすることができる。これらの再プログラム細胞は幹細胞治療法に有益である。第2に、mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターは小さいサイズ(約23個のリボヌクレオチドを含む)を有するため、このようなサイズの小さいmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターの発現ベクターは構造上でよりコンパクトであることで、インビボでの形質移入効率を向上させることができる。第3に、細胞内のナンセンス仲介減衰(NMD)システム及び誘導性の発現系はRNAと関連する細胞毒性を防止することができる。第4に、mir-302媒介のアポトーシスは腫瘍/癌細胞のみで起こり、正常ヒト細胞では起こらない。最後に、本発明はレトロウィルス/レンチウィルス感染の代わりに、ポリソーム(polysomal)、リポソーム(liposomal)、及び電気穿孔法による形質移入を用いて、mir-302を発現する核酸組成物を腫瘍/癌細胞に送達させることによって、安全性及びインビトロ(in vitro)とインビボ(in vivo)での治療におけるmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターの使用を確保する。総括すると、これらの革新はmir-302様遺伝子サイレンシングエフェクター及び該mir-302様遺伝子サイレンシングエフェクターを発現する組成物を使用することによって、腫瘍/癌を治療する可能性を示し、汎用的癌症治療薬物及び/又はワクチンに発展できる新規な設計を提供した。

0052

A.定義
本発明をより理解しやすくするために、下記のように、幾つかの用語を定義する。
ヌクレオチド(Nucleotide):糖成分(五炭糖、pentose)、リン酸基(phosphate)及び窒素複素環塩基(nitrogenous heterocyclic base)を含む単分子デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)である。該塩基はグリコシド炭素(glycosidic carbon、該五炭糖の1'炭素)によって該糖成分と結合し、該塩基と糖の組み合わせがヌクレオシド(nucleoside)である。該五炭糖の3'末端や5'末端の位置に少なくとも1つのリン酸基が結合しているヌクレオシドはヌクレオチド(nucleotide)である。つまり、DNAとRNAは異なるヌクレオチド単位、即ちデオキシリボヌクレオチドとリボヌクレオチド単位でそれぞれ構成される。

0053

オリゴヌクレオチド(Oligonucleotide):2個以上、好ましくは3個以上、通常は10個以上のデオキシリボヌクレオチド(DNAs)又はリボヌクレオチド(RNAs)を含む分子である。長さが13個のヌクレオチドモノマーを超えるオリゴヌクレオチドはポリヌクレオチドとも呼ばれる。正確な長さは多くの要因によって決まり、さらに該オリゴヌクレオチドの最適な機能又は用途によって決まる。オリゴヌクレオチドは化学合成DNA複製RNA転写逆転写、又はこれらの組み合わせを含むいかなる方法で生成してもよい。

0054

ヌクレオチド類似体(Nucleotide Analog):プリン(purine)又はピリミジン(pyrimidine)ヌクレオチドであって、構造において、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)又はU(ウラシル)ヌクレオチドは異なるが、十分に類似しており、核酸分子中で正常のヌクレオチドと置換できる。

0055

核酸組成物(Nucleic Acid Composition):1本鎖又は2本鎖分子構造の形式で存在するデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はデオキシリボ核酸とリボ核酸との混合(DNA/RNA)のようなオリゴヌクレオチド(oligonucleotide)又はポリヌクレオチド(polynucleotide)を指す。

0056

遺伝子(Gene):核酸組成物であって、そのヌクレオチド配列はRNA及び/又はポリペプチド(タンパク質)をコードする。遺伝子はRNA又はDNAのいずれであってもよい。遺伝子は非コード(non-coding)RNA、例えば小ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、運搬RNA(tRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、核内低分子RNA(snRNA)及びこれらのRNA前駆体と誘導体をコードしてよい。一方、遺伝子はまた、タンパク質/ペプチド類の合成に必須のタンパク質コード(protein-coding)RNA、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)及びそのRNA前駆体と誘導体をコードしてよい。幾つかの例において、タンパク質コードRNAは少なくとも1つのmiRNA又はshRNAの配列を含んでもよい。

0057

一次リボ核酸転写物(Primary RNA Transcript):遺伝子により転写され、いかなるRNA処理又は修飾も施されていないRNA配列である。一次リボ核酸転写物には、mRNA、ヘテロ核RNA(hnRNA)、rRNA、tRNA、snoRNA、snRNAプレマイクロRNA、ウィルスRNA、及びこれらのRNA前駆体と誘導体が含まれる。

0058

プレメッセンジャーリボ核酸(Precursor messenger RNA,pre-mRNA):真核細胞において、タンパク質をコードする遺伝子が転写(transcription)と呼ばれる細胞内機構によって、II型真核RNAポリメラーゼ(Pol-II)によって生成される一次RNA転写物(primary RNA transcript)である。プレメッセンジャーリボ核酸配列には、5'末端非翻訳領域(5'-untranslated region,5'-UTR)、3'末端非翻訳領域(3'-untranslated region,3-UTR)、エクソン(exon)及びイントロン(intron)が含まれる。

0059

イントロン(Intron):非タンパク質読み枠をコードする遺伝子転写物配列の一部分又は複数の部分である。例えば、インフレームイントロン(in-frame intron)、5'末端非翻訳領域(5'-UTR)及び3'末端非翻訳領域(3'-UTR)である。

0060

エクソン(Exon):タンパク質読み枠(cDNA)をコードする遺伝子転写物配列の一部分又は複数の部分である。該cDNAは、例えば、細胞遺伝子、増殖因子インシュリン、抗体及びこれらの類似体/相同体と誘導体である。

0061

メッセンジャーリボ核酸(Messenger RNA,mRNA):プレメッセンジャーリボ核酸のエクソンから組み合わせてなる。プレメッセンジャーリボ核酸が細胞質内RNAスプライシング機構(intracellular RNA splicingmachineries,spliceosomes)によるイントロン除去後に形成されるとともに、ペプチド類/タンパク質合成においてタンパク質をコードするRNAとして機能する。mRNAがコードするペプチド類/タンパク質は酵素、増殖因子、インシュリン、抗体及びこれらの類似体/相同体と誘導体を含むが、これらに限定されない。

0062

相補的デオキシリボ核酸(cDNA):mRNA配列と相補的な配列を有し、イントロン配列が全く含まれない1本鎖又は2本鎖デオキシリボ核酸(DNA)である。
センス核酸(Sense):配列順及び組成が相同なmRNAと同じ核酸分子である。符号「+」、「s」又は「sense」で該センス核酸構造形態を示す。

0063

アンチセンス核酸(Antisense):個々のmRNA分子と相補的な核酸分子である。符号「-」でこのアンチセンス核酸構造形態を示し、又は、「aDNA」又は「aRNA」のように、「a」もしくは「antisense」をDNA又はRNAの前に付けて示す。

0064

塩基対(Base Pair,bp):2本鎖DNA分子中のアデニン(adenine,A)とチミン(thymine,T)、又はシトシン(cytosine,C)とグアニン(guanine,G)のマッチ(partnership)である。RNAでは、チミン(thymine,T)の代わりにウラシル(uracil,U)となる。RNAでは、ウラシルはグアニンとマッチしてもよい。一般に、このマッチは水素結合(hydrogen bonding)を介して連結される。例として、センス核酸配列の「5'-A-T-C-G-U-3'」とそのアンチセンス核酸配列である「5'-A-C-G-A-T-3'」又は「5'-G-C-G-A-T-3'」とは相補的である。

0065

5'末端(5'-end):連続したヌクレオチドの5'末端位置で1つのヌクレオチドを欠く末端である。該連続したヌクレオチドにおいて、1つのヌクレオチドの5'ヒドロキシル基リン酸ジエステル結合によって次のヌクレオチドの3'ヒドロキシル基に連結される。該末端に、1つ又は複数のリン酸基のような他の基が存在してもよい。

0066

3'末端(3'-end):連続したヌクレオチドの3'末端位置で1つのヌクレオチドを欠く末端である。該連続したヌクレオチドにおいて、1つのヌクレオチドの5'ヒドロキシル基がリン酸ジエステル結合によって次のヌクレオチドの3'ヒドロキシル基に連結される。該末端に、他の基が存在してもよく、通常はヒドロキシル基である。

0067

テンプレート(Template):核酸ポリメラーゼによってコピーできる核酸分子である。異なるポリメラーゼにより、テンプレートは1本鎖、2本鎖、又は部分的な2本鎖であってもよい。合成されたコピーはこのテンプレート、2本鎖テンプレートの少なくとも1本鎖、又は部分的な2本鎖テンプレートと相補的である。RNA及びDNAの両者は5'末端から3'末端への方向に合成される。核酸デュプレックス(duplex)の2本の鎖は常にアラインメントしているので、これらの2本鎖の5'末端は該デュプレックスの反対側の末端に位置する(必要があれば、これらの2本鎖の3'末端も同様)。

0068

核酸テンプレート(Nucleic Acid Template):2本鎖DNA分子、2本鎖RNA分子、雑種分子(例えば、DNA-RNAもしくはRNA-DNA雑種)、又は1本鎖のDNAもしくはRNA分子である。
保存性(Conserved):ヌクレオチド配列が予め選択された配列(参照配列)に精確に相補するものと非ランダムにハイブリダイゼーションする場合、両者の配列は保存性を有する。

0069

相同又は相同性(Homologous or Homology):ポリヌクレオチドと遺伝子又はメッセンジャーRNA配列との間の相同性を指す。核酸配列は特定の遺伝子又はメッセンジャーRNA配列と部分的又は完全に相同である可能性がある。例として、相同性は、全ヌクレオチド数のうちの同じヌクレオチドが占める比率で表すことができる。

0070

相補(Complemetary、又はcomplementarity又はcomplementation):塩基対規則(base pair(bp) rule)に従って塩基のマッチが生じた2つのポリヌクレオチド(即ち、mRNAとcDNAの配列)である。例えば、配列「5'-A-G-T-3'」は配列「5'-A-C-T-3'」と「5'-A-C-U-3'」とそれぞれ相補している。相補は、2本のDNA鎖間、1本のDNA鎖と1本のRNA鎖の間、又は2本のRNA鎖間で生じてよい。相補は「部分」又は「完全」又は「全体」であってもよい。幾つかの核酸塩基のみが塩基対規則に従ってマッチした場合は、部分相補(partial complementarity又はcomplementation)となる。これらの核酸鎖間で塩基が完全又は完璧にマッチした場合は、完全又は全体相補(Complete or total complementarity or complementation)となる。核酸鎖間の相補の程度は核酸鎖間のハイブリダイゼーションにおける効率及び強度に大きく影響する。これは増幅(amplification)反応、さらに核酸間の結合(binding)に依存する検出方法にとって非常に重要である。相補率(Percent complementarity又はcomplementation)とは、該核酸の1本鎖におけるミスマッチの塩基数全塩基数との比のことである。従って、50%の相補率とは、塩基の半分がミスマッチで、半分がマッチしていることを意味する。核酸の2本鎖は、この2本鎖の塩基数が異なっても相補することができる。この場合、短い方の鎖の塩基とペアを成している一部の比較的長い方の鎖間に相補が生じる。

0071

相補的塩基(complemetary base):DNA又はRNAが2本鎖の構造をとる場合に、正常にマッチしているヌクレオチドである。
相補的ヌクレオチド配列(Complemetary Nucleotide Sequence):1本鎖分子のDNA又はRNAにおけるヌクレオチド配列が、もう一方の1本鎖のヌクレオチド配列と十分に相補しており、水素結合によって、2本鎖間で特異的にハイブリダイゼーションする。

0072

ハイブリダイゼーション(Hybridize及びHybridization):塩基対形成によって複合体を形成するのに十分相補的なヌクレオチド配列間のデュプレックスの形成である。プライマー(又はスプライステンプレート)が標的(テンプレート)と「ハイブリダイゼーション」する場合、ハイブリダイゼーションで形成された複合体(又は雑種,hybrids)は十分に安定しているので、DNAポリメラーゼによってDNA合成を開始するために必要なプライミング機能が提供される。2つの相補的ポリヌクレオチド間には、競合的に抑制(competitively inhibited)される特異的な相互作用がある(即ち、非ランダムである)。

0073

転写後遺伝子サイレンシング(Posttranscriptional Gene Silencing):mRNA分解又は翻訳抑制における、標的遺伝子ノックアウト(knockout)又はノックダウン(knockdown)の効果であって、一般的に外来/ウィルスDNA又はRNA導入遺伝子又は小型抑制性RNAのいずれかによって引き起こされる。

0074

リボ核酸干渉(RNA interference,RNAi):真核細胞における転写後遺伝子サイレンシング機構であって、マイクロリボ核酸(miRNA)、小ヘアピンリボ核酸(shRNA)及び小干渉リボ核酸(siRNA)のような小型抑制性RNA分子によって誘発することができる。これらの小型RNA分子は一般的に遺伝子サイレンサーとして機能し、細胞内のこれらの小型RNAと完全又は部分的に相補的な遺伝子の発現を干渉する。

0075

非コードリボ核酸(Non-coding RNA):細胞内翻訳機構によってペプチド類又はタンパク質の合成に用いることができないRNA転写物である。非コードRNAには、miRNA、小ヘアピンRNA、小干渉RNA及び2本鎖RNAのような長い及び短い調節性RNA分子が含まれる。これらの調節性RNA分子は一般的に遺伝子サイレンサーとして機能し、細胞内における非コードRNAと完全又は部分的に相補的な遺伝子の発現を干渉する。

0076

マイクロリボ核酸(MicroRNA,miRNA):該マイクロリボ核酸(miRNA)と部分的に相補な標的遺伝子転写物に結合できる1本鎖RNAである。MiRNAは通常長さが約17〜27個のオリゴヌクレオチドで、該miRNAとその標的mRNAとの間の相補程度によって、細胞内のmRNA標的を直接分解するか、又はその標的mRNAのタンパク質翻訳を抑制することができる。天然のmiRNAはほぼ全ての真核細胞で発見され、その役割はウィルス感染に対抗する防御物のようなものであるとともに、動植物の発育期間における遺伝子発現を調節することができる。原則的には、1つのmiRNAは複数の標的となるRNAsを標的としてその機能を完全に実現し、又は、複数のmiRNAの標的となる同じ遺伝子を標的として完全の遺伝子サイレンシングを促進する。

0077

マイクロリボ核酸前駆体(MicroRNA Precursor,Pre-miRNA):細胞内RNAエンドリボヌクレアーゼRNaseIIIであるDicerと相互作用するステムアーム(stem-arm)及びステムループ(stem-loop)領域を含むヘアピン様の1本鎖リボ核酸であって、1つ又は複数の成熟したマイクロリボ核酸(miRNAs)を生成し、これらのマイクロリボ核酸の標的遺伝子、又はこれらのマイクロリボ核酸配列と相補的な遺伝子をサイレンシングすることができる。プレマイクロリボ核酸(pre-miRNA)のステムアーム領域は完全(100%)又は部分的(ミスマッチ)にハイブリダイゼーションしたデュプレックスを形成し、そのステムループ領域は該ステムアームデュプレックスの一端と連結して、円形又はヘアピンループ状の環状構造を形成することにより、Argonauteタンパク質(AGO)とともにRNA-inducedサイレンシング複合体(RISC)を組み合わせる。

0078

原核生成マイクロリボ核酸(Prokaryote-produced MicroRNA Precursor,Pro-miRNA):天然リボ核酸前駆体(pre-miRNA)と相似する小ヘアピン様リボ核酸であるが、人工で原核コンピテント細胞のmiRNA発現プラスミドに導入して転写させる。例として、構造上で、pro-miRNAはpre-mir-302と相似するが、コンピテント大腸菌DH5α細胞株のpLVX-Grn-miR302+367又はpLenti-EF1alpha-RGFP-miR302ベクターから転写される(実施例18)。通常、原核細胞が真核pre-miRNAのような高度二次構造を発現しないので、原核細胞におけるpro-miRNAの生成には通常、RNA二次構造の生成を安定させるように、化学的刺激が必要である(Lin,UA13/572,263)。

0079

小干渉リボ核酸(Small interfering RNA,siRNA):短鎖の2本鎖リボ核酸であって、約18〜27個の完全な塩基対を有するリボヌクレオチドデュプレックスであって、それにほぼ完全相補的である標的遺伝子転写物を分解できる。

0080

小ヘアピン又は短鎖ヘアピンリボ核酸(small hairpin又はshort hairpin RNA,shRNA):部分的又は完全にマッチする1対のステムアームヌクレオチド配列を含む1本鎖リボ核酸であって、該ステムアーム配列はミスマッチのループ状オリゴヌクレオチドによって分けられ、ヘアピン様構造を形成する。多くの天然マイクロリボ核酸(miRNAs)はヘアピン様リボ核酸前駆体、即、プレマイクロリボ核酸(pre-miRNA)に由来する。

0081

ベクター(Vector):異なる遺伝子環境において移動又は定着が可能な組換え核酸組成物であって、例えば、組換えDNA(recombinant DNA,rDNA)である。一般に、他の核酸分子はこれに操作的に連結される。該ベクターは細胞中で自己複製が可能であり、そのうち、該ベクターとその連結した断片も複製される。好ましいベクターは、エピソーム(episome)、即ち、染色体外で複製可能な核酸分子である。好ましいベクターは自己複製及び発現可能な核酸である。1つ又は複数のポリペプチド及び/又は非コード(non-coding)RNAをコードする遺伝子の発現を誘導できるベクターを、ここでは「発現ベクター(expression vector)」又は「発現コンピテントベクター(expression-competent vector)」と呼ぶ。特に重要なベクターは、逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いてmRNAsからcDNAをクローニングできる。ベクターの成分は、ウィルスプロモーター、II型(Type-II)RNAポリメラーゼ(Pol-II又はpol-2)プロモーターもしくはこれらの両者、Kozak翻訳開始共通配列(Kozak consensus translation initiation site)、ポリアデニル化シグナル(polyadenylation signals)、複数の制限/クローニング部位(restriction/cloning site)、pUC複製起点(pUC origin of replication)、複製コンピテント原核細胞で抗生物質耐性遺伝子を少なくとも1つ発現させるためのSV40初期プロモーター(SV40 early promoter)、哺乳動物細胞での複製のための選択的SV40複製起点(SV40 origin)、及び/又はテトラサイクリン応答要素を含む。ベクターの構造は1本鎖または2本鎖DNAの直鎖状もしくは環状であってもよく、且つプラスミド、ウィルスベクター、トランスポゾン、レトロトランスポゾン、DNA導入遺伝子、ジャンピング遺伝子及びこれらの組み合わせから選ばれる。

0082

プロモーター(Promoter):ポリメラーゼ分子により認識され、又はそれに結合され、RNA転写を抑制する核酸である。本発明では、プロモーターは、既知のポリメラーゼ結合部位、エンハンサー(enhancer)又はその類似体、必要なポリメラーゼによりRNA転写物の合成を開始する配列であってもよい。

0083

真核プロモーター(Eukaryotic Promoter):遺伝子転写に必要な核酸モチーフ配列であって、該配列はII型真核RNAポリメラーゼ(type II RNA polymerase (pol-2))、pol-2等価物及び/又はpol-2適合性ウィルスポリメラーゼにより認識される。

0084

II型RNAポリメラーゼプロモーター(Type-II RNA Polymerase(Pol-II又はpol-2) promoter):II型真核RNAポリメラーゼ(Pol-II又はpol-2)によって認識され、かつそれに結合されるRNAプロモーターであって、真核メッセンジャーリボ核酸(mRNA)及び/又はマイクロリボ核酸(miRNA)を転写するためのものである。例として、pol-2プロモーターは哺乳類RNAプロモーター又はサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターであってもよいが、これらに限らない。

0085

II型RNAポリメラーゼ等価物(Type-II RNA Polymerase (Pol-II又はpol-2) Equivalent):真核転写機構であり、哺乳類II型RNAポリメラーゼ(Pol-II又はpol-2)及びPol-II適合性ウィルスRNAポリメラーゼからなる群から選ばれる。

0086

II型RNAポリメラーゼ適合性ウィルスプロモーター(Pol-II(pol-2) Compatible Viral Promoter):真核pol-2又は真核転写機構を用いて遺伝子発現を行うことができるウィルスRNAプロモーターである。例として、pol-2適合性ウィルスプロモーターは、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーター又はレンチウィルスLTR(retroviral long terminal repeat)プロモーターであってもよいが、これらに限らない。

0087

シストロン(Cistron):DNA分子中のヌクレオチド配列であって、アミノ酸残基配列をコードし、上流及び下流のDNA発現制御要素を含む。
イントロン切除(Intron Excision):RNA処理、成熟、及び分解を担当する細胞機構であって、RNAスプライシング(RNA splicing)、エキソソーム消化(exosome difestion)、ナンセンス仲介減衰(nonsense-mediated decay,NMD)、及びこれらの組み合わせを含む。

0088

リボ核酸処理(RNA Processing):RNAの成熟、修飾及び分解に関連する細胞機構であって、RNAスプライシング、エキソソーム消化(exosome digestion)、ナンセンス仲介減衰(nonsense-mediated decay,NMD)、RNAエディティング(RNA editing)、RNA処理及びこれらの組み合わせを含む。

0089

供与スプライス部位(Donor Splice Site):SEQ.ID.NO.4配列、SEQ.ID.NO.4に相同な配列、又は5'-GTAAG-3' (SEQ.ID.NO.47)配列を含む核酸配列である。
受容スプライス部位(Acceptor Splice Site):SEQ.ID.NO.5配列、SEQ.ID.NO.5に相同な配列、又は5'-CTGCAG-3' (SEQ.ID.NO.48)配列を含む核酸配列である。

0090

分岐点配列(Branch Point):核酸配列におけるアデノシンであって、該核酸配列はSEQ.ID.NO.6配列、SEQ.ID.NO.6に相同な配列、又は5'-TACTAAC-3' (SEQ.ID.NO.44)配列を含む。

0091

ポリピリミジントラクト(Poly-Pyrimidine Tract):高割合のチミジル酸とシチジル酸を含む核酸配列であって、該核酸配列はSEQ.ID.NO.7、SEQ.ID.NO.8配列又はこれらに相同な配列を含む。

0092

標的細胞(Targeted Cell):体細胞、組織、幹細胞、生殖細胞、奇形腫細胞、腫瘍細胞、癌細胞、及びこれらの組み合わせから選ばれる1個又は複数個のヒト細胞である。
癌組織(Cancerous Tissue):皮膚癌、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、肺癌脳腫瘍/癌、リンパ癌、白血病、及びこれらの組み合わせから選ばれる腫瘍組織である。

0093

発現コンピテントベクター(Expression-Competent Vector):直鎖状又は環状の1本鎖または2本鎖DNAであって、プラスミド、ウィルスベクター、トランスポゾン、レトロトランスポゾン、DNA組換え遺伝子、ジャンピング遺伝子、及びこれらの組み合わせから選ばれる。

0094

抗生物質耐性遺伝子(Antibiotic Resistance Gene):抗生物質を分解する能力を備えるように発現する遺伝子であって、該抗生物質はペニシリンG、ストレプトマイシン、アンピシリン(Amp)、ネオマイシン、G418、カナマイシン、エリスロマイシン、パロマイシン、フォフォマイシン、スペクトロマイシン、テトラサイクリン(Tet)、ドキシサイクリン(Dox)、リファピシン、アンホテリシンB、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール、セファロチン、チロシン及びこれらの組み合わせから選ばれる。

0095

制限/クローニング部位(Restriction/Cloning Site):制限酵素の切断部位であるDNAモチーフ(DNA motif)であって、これらの制限/クローニング部位はAatII、AccI、AflII/III、AgeI、ApaI/LI、AseI、Asp718I、BamHI、BbeI、BclI/II、BglII、BsmI、Bsp120I、BspHI/LU11I/120I、BsrI/BI/GI、BssHII/SI、BstBI/U1/XI、ClaI、Csp6I、DpnI、DraI/II、EagI、Ecl136II、EcoRI/RII/47III/RV、EheI、FspI、HaeIII、HhaI、HinPI、HindIII、HinfI、HpaI/II、KasI、KpnI、MaeII/III、MfeI、MluI、MscI、MseI、NaeI、NarI、NcoI、NdeI、NgoMI、NotI、NruI、NsiI、PmlI、Ppu10I、PstI、PvuI/II、RsaI、SacI/II、SalI、Sau3AI、SmaI、SnaBI、SphI、SspI、StuI、TaiI、TaqI、XbaI、XhoI、XmaIの切断部位を含むが、これらに限らない。

0096

遺伝子送達(Gene Delivery):遺伝子工学方法であって、ポリソーム(polysomal)形質移入、リポソーム(liposomal)形質移入、化学的形質移入、電気穿孔法、ウィルス感染、DNA組換え、トランスポゾン挿入、ジャンピング遺伝子挿入、マイクロインジェクション、遺伝子銃による貫入、及びこれらの組み合わせから選ばれる。

0097

遺伝子工学(Genetic Engineering):DNA組換え方法であって、DNA制限酵素反応とライゲーション反応相同組換え、導入遺伝子の組み込み、トランスポゾン挿入、ジャンピング遺伝子挿入、レトロウィルス感染、及びこれらの組み合わせから選ばれる。

0098

細胞周期調節因子(Cell Cycle Regulator):細胞分裂及び細胞増殖の速度を制御することに関与する細胞遺伝子であって、サイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、サイクリン依存性キナーゼ6(CDK6)、サイクリン(cyclins)、BMI-1、p14/p19Arf、p15Ink4b、p16Ink4a、p18Ink4c、p21Cip1/Waf1、p27Kip1、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限らない。

0099

腫瘍の抑制効果(Tumor Suppression Effect):細胞の抗腫瘍及び/又は抗癌の機構及び反応であって、細胞周期の減衰、細胞周期の停止(arrest)、腫瘍細胞成長の抑制、細胞の腫瘍形成の抑制、腫瘍/癌細胞の形質転換の抑制、腫瘍/癌のアポトーシスの誘導、正常細胞への回復の誘導、高度悪性の癌細胞の比較的良性の低段階状態への再プログラム(腫瘍の退縮)及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限らない。

0100

癌の治療効果(Cancer Therapy Effect):薬物処理による細胞反応及び/又は細胞機構であって、発癌遺伝子の発現の抑制、癌細胞の増殖の抑制、癌細胞の侵入及び/又は移動の抑制、癌細胞の転移の抑制、癌細胞の細胞死の誘発、腫瘍/癌の発生の回避、癌の再発の回避、癌の進行の抑制、損傷組織細胞の回復、高度悪性腫瘍の比較的良性で比較的低段階の状態への再プログラム(癌の退縮/寛解)及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限らない。

0101

遺伝子サイレンシング効果(Gene Silencing Effect):遺伝子機能が抑制された後の細胞反応であって、発癌遺伝子の発現の抑制、細胞増殖の抑制、細胞周期停止、G0/G1チェックポイント停止、細胞周期減衰、腫瘍抑制、抗腫瘍形成、癌の退縮、癌の回避、癌細胞のアポトーシス、細胞回復/再生、細胞再プログラム、疾患細胞の相対的正常の状態への再プログラム(自発的治療)及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限らない。

0102

転写誘導物(Transcription Inducer):原核細胞においてpol-2又はpol-2様プロモーターに対して真核遺伝子の転写を誘発及び/又は強化可能な化学剤である。例として、転写誘導物は3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(3-(N-Morpholino)propanesulfonic acid (MOPS))、エタノールグリセリン又はこれらの混合物と類似する化学構造を含むが、これらに限らない。

0103

抗体:予め選択した保存ドメイン構造(domain structure)を持つペプチド類又はタンパク質分子であって、予め選択したリガンドと結合する受容体とすることができる。
薬学上及び/又は治療上の応用:生物医学的使用、装置及び/又は設備であって、診断、幹細胞の生成、幹細胞研究及び/又は治療発展、組織/器官の回復及び/又は再生、傷口の治癒処理、腫瘍抑制、癌の治療及び/又は予防、疾患処理、薬の製造及びこれらの組み合わせに用いられる。

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