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技術 被覆切削工具

出願人 株式会社タンガロイ
発明者 福島直幸
出願日 2018年9月4日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2018-165117
公開日 2020年3月12日 (8ヶ月経過) 公開番号 2020-037150
状態 未登録
技術分野 フライス加工 CVD 穴あけ工具 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット
主要キーワード 結晶学的組織 方位パラメータ 深切り 衝撃回数 特殊な特性 結晶学的方位 コーティング膜厚 微小分析
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (2)

課題

本発明は、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命延長することができる被覆切削工具を提供する。

解決手段

基材1と、基材の表面に形成された被覆層5とを備える被覆切削工具であって、被覆層は、基材側から被覆層の表面側に向かって順に積層された下部層2、中間層3及び上部層4を含み、下部層が、Ti化合物層を1層又は2層以上含有し、中間層が、α型Al2O3を含有し、上部層が、TiCNを含有し、下部層の平均厚さが4.0μm以上10.0μm以下であり、中間層の平均厚さが3.0μm以上10.0μm以下であり、上部層の平均厚さが1.5μm以上6.5μm以下であり、上部層の特定の領域における全粒界合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上60%以下であり、上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上である。

概要

背景

従来、超硬合金からなる基材の表面に化学蒸着法により3〜20μmの総膜厚被覆層蒸着形成してなる被覆切削工具が、鋼や鋳鉄等の切削加工に用いられていることは、よく知られている。上記の被覆層としては、例えば、Tiの炭化物、窒化物炭窒化物炭酸化物及び炭窒酸化物並びに酸化アルミニウムからなる群より選ばれる1種の単層又は2種以上の複層からなる被覆層が知られている。

例えば、特許文献1には、超硬合金、サーメットセラミック、鋼又は立方晶窒化ホウ素の基材、及び総コーティング膜厚が5から25μmであり、化学蒸着法(CVD)又は中温化学蒸着法(MT−CVD)により蒸着された少なくとも2つの耐火コーティング層を含む多層耐摩耗性コーティングからなり、少なくとも2つの耐火コーティング層が、互いの上に蒸着された第1のコーティング層及び第2のコーティング層を含むコーティング切削工具であって、第1のコーティング層が、窒化チタンアルミニウム又は炭窒化チタンアルミニウムTi1-uAluCvNw(0.2≦u≦1.0、0≦v≦0.25及び0.7≦w≦1.15)からなり、600℃から900℃の範囲の反応温度でCVDによって蒸着され、第2のコーティング層が、炭窒化チタンTixCyN1-y(0.85≦x≦1.1及び0.4≦y≦0.85)からなり、600℃から900℃の範囲の反応温度でMT−CVDによって第1のコーティング層の上に蒸着され、第2のTixCyN1-yコーティング層が、柱状の粒形態を有し、TixCyN1-yコーティング層の全体の繊維集合組織が、集合組織係数TC(111)>2によって特徴づけられたコーティング切削工具が記載されている。

概要

本発明は、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命延長することができる被覆切削工具を提供する。基材1と、基材の表面に形成された被覆層5とを備える被覆切削工具であって、被覆層は、基材側から被覆層の表面側に向かって順に積層された下部層2、中間層3及び上部層4を含み、下部層が、Ti化合物層を1層又は2層以上含有し、中間層が、α型Al2O3を含有し、上部層が、TiCNを含有し、下部層の平均厚さが4.0μm以上10.0μm以下であり、中間層の平均厚さが3.0μm以上10.0μm以下であり、上部層の平均厚さが1.5μm以上6.5μm以下であり、上部層の特定の領域における全粒界合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上60%以下であり、上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上である。

目的

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる被覆切削工具を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

基材と、該基材の表面に形成された被覆層とを備える被覆切削工具であって、前記被覆層は、前記基材側から前記被覆層の表面側に向かって順に積層された下部層、中間層及び上部層を含み、前記下部層が、Tiと、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とのTi化合物からなるTi化合物層を1層又は2層以上含有し、前記中間層が、α型Al2O3を含有し、前記上部層が、TiCNを含有し、前記下部層の平均厚さが4.0μm以上10.0μm以下であり、前記中間層の平均厚さが3.0μm以上10.0μm以下であり、前記上部層の平均厚さが1.5μm以上6.5μm以下であり、前記上部層の特定の領域における全粒界合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上60%以下であり、前記上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上である、被覆切削工具。

請求項2

前記上部層の(111)面の粒子の割合が、55面積%以下である、請求項1に記載の被覆切削工具。

請求項3

前記上部層の塩素(Cl)の含有量が、0.1原子%以下である、請求項1又は2に記載の被覆切削工具。

請求項4

前記被覆層の平均厚さが、10.0μm以上25.0μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

請求項5

前記Ti化合物層は、TiN、TiC、TiCN、TiCNO、TiON及びTiB2からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

請求項6

前記基材は、超硬合金サーメットセラミックス又は立方晶窒化硼素焼結体のいずれかである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆切削工具。

技術分野

0001

本発明は、被覆切削工具に関するものである。

背景技術

0002

従来、超硬合金からなる基材の表面に化学蒸着法により3〜20μmの総膜厚被覆層蒸着形成してなる被覆切削工具が、鋼や鋳鉄等の切削加工に用いられていることは、よく知られている。上記の被覆層としては、例えば、Tiの炭化物、窒化物炭窒化物炭酸化物及び炭窒酸化物並びに酸化アルミニウムからなる群より選ばれる1種の単層又は2種以上の複層からなる被覆層が知られている。

0003

例えば、特許文献1には、超硬合金、サーメットセラミック、鋼又は立方晶窒化ホウ素の基材、及び総コーティング膜厚が5から25μmであり、化学蒸着法(CVD)又は中温化学蒸着法(MT−CVD)により蒸着された少なくとも2つの耐火コーティング層を含む多層耐摩耗性コーティングからなり、少なくとも2つの耐火コーティング層が、互いの上に蒸着された第1のコーティング層及び第2のコーティング層を含むコーティング切削工具であって、第1のコーティング層が、窒化チタンアルミニウム又は炭窒化チタンアルミニウムTi1-uAluCvNw(0.2≦u≦1.0、0≦v≦0.25及び0.7≦w≦1.15)からなり、600℃から900℃の範囲の反応温度でCVDによって蒸着され、第2のコーティング層が、炭窒化チタンTixCyN1-y(0.85≦x≦1.1及び0.4≦y≦0.85)からなり、600℃から900℃の範囲の反応温度でMT−CVDによって第1のコーティング層の上に蒸着され、第2のTixCyN1-yコーティング層が、柱状の粒形態を有し、TixCyN1-yコーティング層の全体の繊維集合組織が、集合組織係数TC(111)>2によって特徴づけられたコーティング切削工具が記載されている。

先行技術

0004

特表2017−530019号公報

発明が解決しようとする課題

0005

近年の切削加工では、高送り化及び深切り込み化がより顕著となり、従来よりも工具耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが求められている。特に、鋼の高送り及び深切り込みとなる条件での加工は、被覆切削工具に大きな負荷が作用するような切削加工が増えている。上述のような過酷な切削条件下において、従来の工具では被覆層の粒子脱落を起因としたクレータ摩耗及び欠損が生じる。これが引き金となって、工具寿命を長くできないという問題がある。特許文献1に記載の被覆切削工具では、α型Al2O3層を有していないため、クレータ摩耗が進行しやすい加工において、耐摩耗性が十分ではない。また、600℃から900℃の範囲の反応温度で、MT−CVDによってTiCN層を形成しているため、粒界エネルギーが比較的高い結晶粒粒界(以下、「結晶粒界」という。)の割合が多いと推定され、耐クレータ摩耗性が不十分であると考えられる。

0006

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる被覆切削工具を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は、上述の観点から、被覆切削工具の工具寿命の延長について研究を重ねたところ、被覆層として、Ti化合物層を含有する下部層、α型Al2O3を含有する中間層及びTiCNを含有する上部層をこの順で積層し、上部層において(111)面の粒子の割合を制御し、且つ、粒界エネルギーが比較的低い結晶粒界の割合が特定の範囲のTiCN層を含有する上部層を特定の厚さとなるような構成にすると、切削温度が上昇するまでの摩耗を抑制すると共に、α型Al2O3層の粒子の脱落を抑制することができるので、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、被覆切削工具の工具寿命を延長できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0008

すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]
基材と、該基材の表面に形成された被覆層とを備える被覆切削工具であって、
前記被覆層は、前記基材側から前記被覆層の表面側に向かって順に積層された下部層、中間層及び上部層を含み、
前記下部層が、Tiと、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とのTi化合物からなるTi化合物層を1層又は2層以上含有し、
前記中間層が、α型Al2O3を含有し、
前記上部層が、TiCNを含有し、
前記下部層の平均厚さが4.0μm以上10.0μm以下であり、
前記中間層の平均厚さが3.0μm以上10.0μm以下であり、
前記上部層の平均厚さが1.5μm以上6.5μm以下であり、
前記上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上60%以下であり、
前記上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上
である、被覆切削工具。
[2]
前記上部層の(111)面の粒子の割合が、55面積%以下である、[1]に記載の被覆切削工具。
[3]
前記上部層の塩素(Cl)の含有量が、0.1原子%以下である、[1]又は[2]に記載の被覆切削工具。
[4]
前記被覆層の平均厚さが、10.0μm以上25.0μm以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の被覆切削工具。
[5]
前記Ti化合物層は、TiN、TiC、TiCN、TiCNO、TiON及びTiB2からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[4]のいずれかに記載の被覆切削工具。
[6]
前記基材は、超硬合金、サーメット、セラミックス又は立方晶窒化硼素焼結体のいずれかである、[1]〜[5]のいずれかに記載の被覆切削工具。

発明の効果

0009

本発明によると、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる被覆切削工具を提供することができる。

図面の簡単な説明

0010

本発明の被覆切削工具の一例を示す模式図である。

0011

以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。

0012

本実施形態の被覆切削工具は、基材と、該基材の表面に形成された被覆層とを備える被覆切削工具であって、記被覆層は、基材側から被覆層の表面側に向かって順に積層された下部層、中間層及び上部層を含み、下部層が、Tiと、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とのTi化合物からなるTi化合物層を1層又は2層以上含有し、中間層が、α型Al2O3を含有し、上部層が、TiCNを含有し、下部層の平均厚さが4.0μm以上10.0μm以下であり、中間層の平均厚さが3.0μm以上10.0μm以下であり、上部層の平均厚さが1.5μm以上6.5μm以下であり、上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上60%以下であり、上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上である。

0013

本実施形態の被覆切削工具は、上記の構成を備えることにより、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることができ、その結果、工具寿命を延長することができる。本実施形態の被覆切削工具の耐摩耗性及び耐欠損性が向上する要因は、以下のように考えられる。ただし、本発明は、以下の要因により何ら限定されない。すなわち、まず、本実施形態の被覆切削工具は、被覆層の下部層として、Tiと、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とのTi化合物からなるTi化合物層を1層以上含有する。本実施形態の被覆切削工具は、基材とα型酸化アルミニウム(α型Al2O3)を含有する中間層との間に、このような下部層を備えると、耐摩耗性及び密着性が向上する。また、本実施形態の被覆切削工具は、下部層の平均厚さが4.0μm以上であることにより、耐摩耗性が向上し、一方、下部層の平均厚さが10.0μm以下であることにより、被覆層の剥離が抑制されることに主に起因して耐欠損性が向上する。また、本実施形態の被覆切削工具は、α型Al2O3を含有する中間層の平均厚さが、3.0μm以上であると、すくい面における耐クレータ摩耗性が一層向上し、一方、α型Al2O3を含有する中間層の平均厚さが、10.0μm以下であると被覆層の剥離がより抑制され、耐欠損性が一層向上する傾向にある。また、本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層がα型Al2O3を含有する中間層よりも外層に有することにより、α型Al2O3層よりも先に上部層のTiCN層が被削材と接触することになる。これにより、本実施形態の被覆切削工具は、特に切削温度が上昇するまでのAl2O3層のクレータ摩耗を抑制できる。このメカニズムは明らかではないが、低温における硬度が、TiCN層の方がα型Al2O3層よりも高いためであると推定している。また、本実施形態の被覆切削工具は、上部層がTiCNを含有することにより、硬さが高くなるため、耐摩耗性が向上する。また、本実施形態の被覆切削工具において、TiCNを含有する上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上であると、粒界エネルギーが比較的低い結晶粒界の割合が多いことを示す。本実施形態の被覆切削工具において、粒界エネルギーが低いと、機械特性が向上するので、耐クレータ摩耗性が向上する。また、本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が60%以下であると、結晶粒の粗粒化を抑制できるので、耐チッピング性が向上する。また、本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上であると、硬度が高くなるので、耐クレータ摩耗性に優れる。また、本実施形態の被覆切削工具は、上部層の平均厚さが1.5μm以上であると、上部層を有することによる効果を得ることができ、一方、上部層の平均厚さが6.5μm以下であると、被覆層の剥離が抑制されることに主に起因して耐欠損性が向上する。そして、これらの構成が組み合わされることにより、本実施形態の被覆切削工具は、耐摩耗性及び耐欠損性が向上し、その結果、工具寿命を延長することができるものと考えられる。

0014

図1は、本実施形態の被覆切削工具の一例を示す断面模式図である。被覆切削工具6は、基材1と、基材1の表面に被覆層5が形成されており、被覆層5には、下部層2、中間層3、及び上部層4がこの順序で上方向に積層されている。

0015

本実施形態の被覆切削工具は、基材とその基材の表面に形成された被覆層とを備える。被覆切削工具の種類として、具体的には、フライス加工用若しくは旋削加工用刃交換切削インサートドリル及びエンドミルを挙げることができる。

0016

本実施形態に用いる基材は、被覆切削工具の基材として用いられ得るものであれば、特に限定されない。そのような基材として、例えば、超硬合金、サーメット、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体及び高速度鋼を挙げることができる。それらの中でも、基材が、超硬合金、サーメット、セラミックス又は立方晶窒化硼素焼結体のいずれかであると、耐摩耗性及び耐欠損性に更に優れるので好ましく、同様の観点から、基材が超硬合金であるとより好ましい。

0017

なお、基材は、その表面が改質されたものであってもよい。例えば、基材が超硬合金からなるものである場合、その表面に脱β層が形成されてもよい。また、基材がサーメットからなるものである場合、その表面に硬化層が形成されてもよい。これらのように基材の表面が改質されていても、本発明の作用効果は奏される。

0018

本実施形態に用いる被覆層は、その平均厚さが、10.0μm以上25.0μm以下であることが好ましい。本実施形態の被覆切削工具は、被覆層の平均厚さが10.0μm以上であると、耐摩耗性が向上し、被覆層の平均厚さが25.0μm以下であると、被覆層の剥離が抑制されることに主に起因して耐欠損性が向上する。なお、本実施形態の被覆切削工具における各層及び被覆層全体の平均厚さは、各層又は被覆層全体における3箇所以上の断面から、各層の厚さ又は被覆層全体の厚さを測定して、その相加平均値を計算することで求めることができる。

0019

[下部層]
本実施形態に用いる下部層は、Tiと、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とのTi化合物からなるTi化合物層を1層又は2層以上含有する。本実施形態の被覆切削工具は、基材とα型酸化アルミニウム(α型Al2O3)を含有する中間層との間に、このような下部層を備えると、耐摩耗性及び密着性が向上する。

0020

Ti化合物層としては、例えば、TiCからなるTiC層、TiNからなるTiN層、TiCNからなるTiCN層、TiCOからなるTiCO層、TiCNOからなるTiCNO層、TiONからなるTiON層、及びTiB2からなるTiB2層が挙げられる。

0021

下部層は、1層で構成されていてもよく、複層(例えば、2層又は3層)で構成されてもよいが、複層で構成されていることが好ましく、2層又は3層で構成されていることがより好ましく、3層で構成されていることが更に好ましい。下部層は、耐摩耗性及び密着性がより一層向上する観点から、TiN層、TiC層、TiCN層、TiCNO層、TiON層、及びTiB2層からなる群より選ばれる少なくとも1種の層を含むことが好ましい。また、本実施形態の被覆切削工具は、下部層の少なくとも1層がTiCN層であると、耐摩耗性が一層向上する傾向にある。また、本実施形態の被覆切削工具は、下部層の少なくとも1層がTiN層であり、該TiN層を基材の表面に形成すると、密着性が一層向上する傾向にある。また、本実施形態の被覆切削工具は、下部層の少なくとも1層がTiCNO層であり、該TiCNO層がα型Al2O3を含有する中間層と接するように形成すると、密着性が一層向上する傾向にある。下部層が3層で構成されている場合には、基材の表面に、TiC層又はTiN層を第1層として形成し、第1層の表面に、TiCN層を第2層として形成し、第2層の表面に、TiCNO層又はTiCO層を第3層として形成してもよい。それらの中では、下部層が基材の表面にTiN層を第1層として形成し、第1層の表面に、TiCN層を第2層として形成し、第2層の表面に、TiCNO層を第3層として形成してもよい。

0022

本実施形態に用いる下部層の平均厚さは、4.0μm以上10.0μm以下である。本実施形態の被覆切削工具は、下部層の平均厚さが4.0μm以上であることにより、耐摩耗性が向上する。一方、本実施形態の被覆切削工具は、下部層の平均厚さが10.0μm以下であることにより、被覆層の剥離が抑制されることに主に起因して耐欠損性が向上する。

0023

TiC層又はTiN層の平均厚さは、耐摩耗性及び耐欠損性を一層向上する観点から、0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。同様の観点から、TiC層又はTiN層の平均厚さは、0.10μm以上0.5μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上0.3μm以下であることが更に好ましい。

0024

TiCN層の平均厚さは、耐摩耗性及び耐欠損性を一層向上する観点から、3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。同様の観点から、TiCN層の平均厚さは、3.5μm以上9.5μm以下であることがより好ましく、4.0μm以上9.0μm以下であることが更に好ましい。

0025

TiCNO層又はTiCO層の平均厚さは、耐摩耗性及び耐欠損性を一層向上する観点から、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。同様の観点から、TiCNO層又はTiCO層の平均厚さは、0.2μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。

0026

Ti化合物層は、Tiと、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とのTi化合物からなる層であるが、下部層による作用効果を奏する限りにおいて、上記元素以外の成分を微量含んでもよい。

0027

[中間層]
本実施形態に用いる中間層は、α型Al2O3を含有する。

0028

本実施形態に用いる中間層の平均厚さは、3.0μm以上10.0μm以下である。α型Al2O3を含有する中間層の平均厚さが、3.0μm以上であると、被覆切削工具のすくい面における耐クレータ摩耗性が一層向上する傾向にあり、α型Al2O3を含有する中間層の平均厚さが、10.0μm以下であると被覆層の剥離がより抑制され、被覆切削工具の耐欠損性が一層向上する傾向にある。

0029

中間層は、α型酸化アルミニウム(α型Al2O3)を含有していればよく、本発明の作用効果を奏する限りにおいて、α型酸化アルミニウム(α型Al2O3)以外の成分を含んでもよく、含まなくてもよい。

0030

[上部層]
本実施形態に用いる上部層は、TiCNを含有する。本実施形態の被覆切削工具は、上部層がTiCNを含有することにより、硬さが高くなるため、耐摩耗性が向上する。また、本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層を、α型Al2O3を含有する中間層よりも外層に有する。本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層を、α型Al2O3を含有する中間層よりも外層に有することにより、α型Al2O3層よりも先に上部層のTiCN層が被削材と接触することになる。これにより、本実施形態の被覆切削工具は、特に切削温度が上昇するまでのα型Al2O3層のクレータ摩耗を抑制できる。

0031

また、本実施形態の被覆切削工具は、上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上60%以下である。TiCNを含有する上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が20%以上であると、粒界エネルギーが比較的低い結晶粒界の割合が多くなる。本実施形態の被覆切削工具において、粒界エネルギーが比較的低い結晶粒界の割合が多いと、機械特性が向上するので、耐クレータ摩耗性が向上する。また、本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合が60%以下であると、結晶粒の粗粒化を抑制できるので、耐チッピング性が向上する。同様の観点から、上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合は、55%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。なお、ここで、上部層の特定の領域とは、後述の電子後方散乱回折(以下、「EBSD」とも表記する。)を備えた走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」とも表記する。)によって観察する上部層の領域である。

0032

本実施形態におけるTiCNを含有する上部層は、粒界エネルギーが比較的高い結晶粒界と粒エネルギーが比較的低い結晶粒界とを有する。通常、結晶粒界は原子の並びが不規則乱れておりランダムに配列されるため、隙間が多く、比較的高い粒界エネルギーを有する。一方、結晶粒界の中には、原子の並びが規則的であり隙間の少ない粒界もあり、そのような結晶粒界は比較的低い粒界エネルギーを有する。このような比較的低い粒界エネルギーを有する結晶粒界の代表例として対応格子(Coincidence Site Lattice)結晶粒界が挙げられる(以下、「CSL結晶粒界」と表記する。)。結晶粒界は、緻密化、クリープ及び拡散のような重要な焼結プロセスに対して、電気的、光学的、及び機械的特性に対してと同様に有意義な影響を及ぼす。結晶粒界の重要性は、いくつか因子、例えば、物質中の結晶粒界密度、界面の化学組成、及び結晶学的組織、すなわち結晶粒界面方位及び結晶粒方位差に依存する。CSL結晶粒界は、特別な役割を果たしている。CSL結晶粒界の分布の程度を示す指標として、Σ値が知られており、それは結晶粒界において接する2つの結晶粒の結晶格子密度と、両方の結晶格子を重ね合わせた際に一致する格子点の密度との比率として定義される。単純な構造の場合、低いΣ値を有する粒界は、低界面エネルギー及び特殊な特性を有する傾向にあることが一般的に認められる。したがって、CSL結晶粒界の割合及び結晶粒方位差の分布を制御することは、上部層の特性及びその向上にとって重要であると考えられる。

0033

近年、EBSDとして知られるSEMをベースとした技術が、物質中の結晶粒界の研究に用いられている。EBSDは、後方散乱電子によって発生する回折パターン自動分析に基づいている。

0034

対象とする物質の各結晶粒について、結晶学的方位は、対応する回折パターンのインデックスを作成した後に決定される。EBSDを市販のソフトウェアと共に用いることにより、組織分析及び粒界性格分布(Grain Boundary Character Distribution:GBCD)の決定が比較的容易に行われる。界面をEBSDにより測定及び解析することにより、界面の大きなサンプル集団での結晶粒界の方位差を明らかにすることができる。通常、方位差の分布は、物質の処理及び/又は物性に関連する。結晶粒界の方位差は、オイラー角、角/軸の対(angle/axis pair)、又はロドリゲスベクトルなどの通常の方位パラメータから得られる。

0035

TiCNを含有する上部層のCSL結晶粒界は、通常、Σ3粒界の他、Σ5粒界、Σ7粒界、Σ9粒界、Σ11粒界、Σ13粒界、Σ15粒界、Σ17粒界、Σ19粒界、Σ21粒界、Σ23粒界、Σ25粒界、Σ27粒界、及びΣ29粒界からなる。Σ3粒界は、TiCNを含有する上部層のCSL結晶粒界の中で最も低い粒界エネルギーを有すると考えられる。ここで、Σ3粒界の長さとは、EBSDを備えたSEMで観察される視野(特定の領域)中のΣ3粒界の合計長さを示す。このΣ3粒界は、その他のCSL結晶粒界と比較して、対応格子点密度が高くなり、低い粒界エネルギーを有する。言い換えれば、Σ3粒界は一致する格子点が多いCSL結晶粒界であり、Σ3粒界を粒界とする2つの結晶粒は単結晶又は双晶に近い挙動を示し、結晶粒が大きくなる傾向を示す。そして、結晶粒が大きくなると、耐チッピング性等の被膜特性が低下する傾向がある。

0036

ここで、全粒界とは、CSL結晶粒界以外の結晶粒界とCSL結晶粒界とを合計したものである。以下、CSL結晶粒界以外の結晶粒界を「一般結晶粒界」という。一般結晶粒界は、EBSDを備えたSEMで観察した場合のTiCNを含有する上部層の結晶粒の全粒界からCSL結晶粒界を除いた残りの粒界となる。したがって、「全粒界の合計長さ」とは「CSL結晶粒界の長さと一般結晶粒界の長さとの和」として表すことができる。

0037

本実施形態において、上部層の特定の領域における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合は、次のようにして算出することができる。

0038

被覆切削工具を基材の表面と平行な方向に上部層の断面を露出させて観察面を得る。上部層の断面を露出させる方法としては、例えば、切断及び研磨が挙げられる。このうち、上部層の観察面をより平滑にする観点から研磨が好ましい。このとき、被覆層の厚さ方向において上部層の平均厚さの50%以上が残った位置で観察面を得るのが好ましい。被覆層の厚さ方向において上部層の平均厚さの50%以上90%以下が残った位置で観察面を得るのがより好ましい。特に、観察面は、より平滑である観点から鏡面であると好ましい。上部層の鏡面観察面を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、ダイヤモンドペースト又はコロイダルシリカを用いて研磨する方法やイオンミリング等を挙げることができる。

0039

その後、上記の観察面を、EBSDを備えたSEMによって観察する。該観察領域としては、平坦な面(逃げ面等)を観察することが好ましい。

0040

SEMは、EBSD(TexSEM Laboratories社製)を備えたSU6600(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いる。

0041

観察面の法線は、入射ビームに対して70°傾斜させ、分析は、15kVの加速電圧および1.0nA照射電流で電子線を照射する。データ収集は、観察面上、50×30μmの面領域に相当する500×300ポイントについて、0.1μm/ステップのステップにて行う。

0042

データ処理は、市販のソフトウェアを用いて行う。任意のΣ値に対応するCSL結晶粒界を計数し、全結晶粒界に対する比として表すことによって確認することができる。以上より、Σ3粒界の長さ及び全粒界の合計長さを求めて、全粒界の合計長さに対するΣ3粒界の長さの割合を算出することができる。

0043

本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上である。本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層の(111)面の粒子の割合が、30面積%以上であると、硬度が高くなるので、耐クレータ摩耗性に優れる。同様の観点から、TiCNを含有する上部層の(111)面の粒子の割合は、34面積%以上であることが好ましい。また、本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層の(111)面の粒子の割合が、55面積%以下であることが好ましい。本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層の(111)面の粒子の割合が、55面積%以下であると、硬度と靭性とのバランスに優れ、耐チッピング性が向上する傾向にある。同様の観点から、TiCNを含有する上部層の(111)面の粒子の割合は、50面積%以下であることがより好ましい。

0044

本実施形態において、上部層の(111)面の粒子の割合とは、方位差が0度以上45度以下である粒子の断面積に対する、方位差が0度以上10度未満である粒子の断面積の割合(単位:面積%)を意味する。ここで、方位差とは、上部層の表面から、基材側に向かって1μmまでの範囲内であって、基材の表面と平行な断面において、断面の法線と、上部層におけるTiCN層の粒子の(111)面の法線とがなす角度(単位:度)のことである。

0045

本実施形態において、上部層の(111)面の粒子の割合は、以下の方法により求めることができる。上部層の表面から、基材側に向かって1μmまでの範囲内であって、基材の表面と平行な断面において、断面の法線と、上部層におけるTiCN層の粒子の(111)面の法線とがなす角度の方位差が0度以上45度以下である粒子断面の面積の合計を100面積%とし、方位差が0度以上10度未満である粒子断面の面積の合計が、方位差が0度以上45度以下である粒子断面の面積の合計に対して何面積%を占めるかを求めて、これを上部層の(111)面の粒子の割合とすればよい。上部層の(111)面の粒子の割合(面積%)を求めるに際して、例えば、走査電子顕微鏡(SEM)、電解放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等に付属した電子後方散乱解析像装置(EBSD)を用いて、各粒子の断面の面積を測定できる。EBSDを用いて、粒子の各結晶の結晶方位を特定し、特定した各結晶方位の粒子断面の面積を、例えば、5度のピッチ毎の区分割り振り、区分毎の粒子断面の面積を求める。その後、例えば、0度以上10度未満の区分、10度以上20度未満の区分、20度以上30度未満の区分、及び30度以上45度以下の区分のそれぞれの区分の粒子断面の面積の合計を求める。なお、この場合、0度以上45度以下の粒子断面の面積の合計は100面積%となる。そして、これら各区分の内、方位差が0度以上10度未満の範囲内にある粒子の断面積を、方位差が0度以上45度以下である粒子断面の面積の合計に対する比率として表したものを(111)面の粒子の割合として算出することができる。

0046

本実施形態に用いる上部層において、塩素(Cl)の含有量は、0.1原子%以下であることが好ましい。本実施形態の被覆切削工具は、TiCNを含有する上部層のClの含有量が、0.1原子%以下であると、硬さが高くなるため、耐摩耗性が向上する傾向にある。上部層のClの含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0原子%である。
なお、本実施形態において、塩素(Cl)の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。

0047

本実施形態に用いる上部層の平均厚さは、1.5μm以上6.5μm以下である。本実施形態の被覆切削工具は、上部層の平均厚さが1.5μm以上であると、上部層を有することによる効果を得ることができ、一方、上部層の平均厚さが6.5μm以下であると、被覆層の剥離が抑制されることに主に起因して耐欠損性が向上する傾向にある。同様の観点から、上部層の平均厚さは2.0μm以上6.0μm以下であることが好ましい。

0048

上部層は、TiCNを含有していればよく、本発明の作用効果を奏する限りにおいて、TiCN以外の成分を含んでもよく、含まなくてもよい。

0049

本実施形態の被覆切削工具において、被覆層を構成する各層は、化学蒸着法によって形成してもよく、物理蒸着法によって形成してもよい。各層の形成方法の具体例としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。ただし、各層の形成方法はこれに限定されない。

0050

(化学蒸着法)
例えば、Tiの窒化物層(以下、「TiN層」ともいう。)からなるTi化合物層は、原料組成をTiCl4:5.0〜10.0mol%、N2:20〜60mol%、H2:残部とし、温度を850〜950℃、圧力を300〜400hPaとする化学蒸着法で形成することができる。

0051

Tiの炭化物層(以下、「TiC層」ともいう。)からなるTi化合物層は、原料組成をTiCl4:1.5〜3.5mol%、CH4:3.5〜5.5mol%、H2:残部とし、温度を950〜1050℃、圧力を70〜80hPaとする化学蒸着法で形成することができる。

0052

Tiの炭窒化物層(以下、「TiCN層」ともいう。)からなるTi化合物層は、原料組成をTiCl4:5.0〜7.0mol%、CH3CN:0.5〜1.5mol%、H2:残部とし、温度を800〜900℃、圧力を60〜80hPaとする化学蒸着法で形成することができる。

0053

Tiの炭窒酸化物層(以下、「TiCNO層」ともいう。)からなるTi化合物層は、原料組成をTiCl4:3.0〜4.0mol%、CO:0.5〜1.0mol%、N2:30〜40mol%、H2:残部とし、温度を950〜1050℃、圧力を50〜150hPaとする化学蒸着法で形成することができる。

0054

Tiの炭酸化物層(以下、「TiCO層」ともいう。)からなるTi化合物層は、原料組成をTiCl4:1.0〜2.0mol%、CO:2.0〜3.0mol%、H2:残部とし、温度を950〜1050℃、圧力を50〜150hPaとする化学蒸着法で形成することができる。

0055

α型Al2O3層(以下、単に「Al2O3層」ともいう。)からなる中間層は、例えば、以下の方法により形成される。

0056

まず、基材の表面に、1層以上のTi化合物層からなる下部層を形成する。次いで、それらの層のうち、基材から最も離れた層の表面を酸化する。その後、基材から最も離れた層の表面にα型Al2O3層を含有する中間層を形成する。

0057

より具体的には、上記基材から最も離れた層の表面の酸化は、ガス組成をCO2:0.3〜1.0mol%、H2:残部とし、温度を950〜1050℃、圧力を50〜70hPaとする条件により行われる(酸化工程)。このときの酸化処理時間は、1〜3分であることが好ましい。

0058

その後、α型Al2O3層は、原料ガス組成をAlCl3:2.0〜5.0mol%、CO2:2.5〜4.0mol%、HCl:2.0〜3.0mol%、H2S:0.30〜0.40mol%、H2:残部とし、温度を950〜1050℃、圧力を60〜80hPaとする化学蒸着法で形成される(成膜工程)。

0059

さらに、α型Al2O3層の表面にTiの炭窒化物層(以下、「TiCN層」ともいう)からなる上部層を形成する。

0060

TiCN層は、原料組成をTiCl4:7.0〜8.0mol%、CH3CN:0.7〜2.0mol%、N2:15.0〜25.0mol%、H2:残部とし、温度を980〜1050℃、圧力を70〜120hPaとする化学蒸着法で形成することができる(上部層形成工程)。

0061

上部層の(111)面の粒子の割合(面積%)を特定値以上とするためには、上部層形成工程において、温度を制御したり、原料組成中のCH3CNの割合を制御したりすればよい。より具体的には、上部層形成工程における温度を高くしたり、原料組成中のCH3CNの割合を大きくしたりすることにより、上部層の(111)面の粒子の割合(面積%)を大きくすることができる。

0062

また、上部層における全粒界の合計長さ100%に対するΣ3粒界の長さの割合を特定範囲とするためには、上部層形成工程において、圧力を制御したり、原料組成中のTiCl4及び/又はN2の割合を制御したりすればよい。より具体的には、上部層形成工程における圧力を低くしたり、原料組成中のTiCl4及び/又はN2の割合を大きくしたりすることにより、上部層のΣ3粒界の長さの割合(%)を大きくすることができる。

0063

さらに、上部層の塩素(Cl)の含有量(原子%)を特定値以下とするためには、上部層形成工程において、温度及び/又は圧力を制御すればよい。より具体的には、上部層形成工程における温度を高くしたり、圧力を低くしたりすることにより、上部層の塩素(Cl)の含有量(原子%)を少なくすることができる。

0064

本実施形態の被覆切削工具の被覆層における各層の厚さは、被覆切削工具の断面組織を、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、又は電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)等を用いて観察することにより測定することができる。なお、本実施形態の被覆切削工具における各層の平均厚さは、刃先稜線部から被覆切削工具のすくい面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、各層の厚さを3箇所以上測定し、その相加平均値として求めることができる。また、本実施形態の被覆切削工具の被覆層における各層の組成は、被覆切削工具の断面組織から、エネルギー分散X線分光器(EDS)や波長分散型X線分光器(WDS)等を用いて測定することができる。

0065

本実施形態の被覆切削工具は、優れた耐欠損性及び耐摩耗性を有することに起因して、従来よりも工具寿命を延長できるという効果を奏すると考えられる。特に、本実施形態の被覆切削工具は、高送り及び深切り込みとなる条件で負荷が作用し、且つ、切削温度が急激に上昇しない切削加工条件下において、粒子の脱落を抑制することにより、クレータ摩耗を向上させることができ、さらに加工初期における摩耗の進行を抑制することができると共に耐欠損性も向上させることができ、その結果、従来よりも工具寿命を延長できるという効果を奏すると考えられる。また、本実施形態の被覆切削工具は、切削温度が高くなったときに、α型Al2O3層の損傷が小さい状態であるため、α型Al2O3層の効果が従来よりも持続するので、耐クレータ摩耗性が向上し、その結果、従来よりも工具寿命を延長できるという効果を奏すると考えられる。ただし、工具寿命を延長できる要因は上記に限定されない。

0066

以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0067

基材として、CNMG120412のインサート形状に加工し、87.0WC−8.6Co−2.0TiN−2.0NbC−0.4Cr3C2(以上質量%)の組成を有する超硬合金を用意した。この基材の刃先稜線部にSiCブラシにより丸ホーニングを施した後、基材の表面を洗浄した。

0068

[発明品1〜11及び比較品1〜9]
基材の表面を洗浄した後、被覆層を化学蒸着法により形成した。まず、基材を外熱式化学蒸着装置装入し、表1に示す原料ガス組成、温度及び圧力の条件の下、表2に組成を示す下部層を、第1層、第2層、第3層の順で、表2に示す平均厚さになるよう、基材の表面に形成した。次いで、CO2:0.5mol%、H2:99.5mol%のガス組成、1000℃の温度、及び60hPaの圧力の条件の下、1分間、下部層の表面に酸化処理を施した。次に、表1に示す原料ガス組成、温度及び圧力の条件の下、α型酸化アルミニウムからなる中間層を、表2に示す平均厚さになるよう、酸化処理を施した後の下部層の表面に形成した。最後、表3に示す原料ガス組成、温度及び圧力の条件の下、表2に示す組成の上部層を、表2に示す平均厚さになるよう、中間層の表面に形成した。こうして、発明品1〜11及び比較品1〜9の被覆切削工具を得た。

0069

0070

0071

0072

[各層の平均厚さ]
得られた試料の各層の平均厚さを下記のようにして求めた。すなわち、FE−SEMを用いて、被覆切削工具の刃先稜線部からすくい面の中心部に向かって50μmの位置の近傍における断面での3箇所の厚さを測定し、その相加平均値を平均厚さとして求めた。測定結果を表2に示す。

0073

[各層の組成]
得られた試料の各層の組成は、被覆切削工具の刃先稜線部からすくい面の中心部に向かって50μmまでの位置の近傍の断面において、EDSを用いて測定した。測定結果を表2に示す。

0074

[Σ3粒界の長さ]
得られた試料の上部層のΣ3粒界の長さを以下のとおり測定した。
被覆切削工具を基材の表面と平行な方向に上部層の断面が露出するまで研磨して観察面を得た。このとき、被覆層の厚さ方向において上部層の平均厚さの70%が残った位置で観察面を得た。また、得られた観察面を、コロイダルシリカを用いて研磨して鏡面観察面を得た。

0075

その後、上記の観察面を、EBSDを備えたSEMによって観察した。該観察領域としては、逃げ面を観察した。

0076

SEMは、EBSD(TexSEM Laboratories社製)を備えたSU6600(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いた。

0077

観察面の法線は、入射ビームに対して70°傾斜させ、分析は、15kVの加速電圧および1.0nA照射電流で電子線を照射する。データ収集は、観察面上、50×30μmの面領域に相当する500×300ポイントについて、0.1μm/ステップのステップにて行った。

0078

データ処理は、市販のソフトウェアを用いて行った。任意のΣ値に対応するCSL結晶粒界を計数し、全結晶粒界に対する比として表すことによって確認した。以上より、Σ3粒界の長さ及び全粒界の合計長さを求めて、全粒界の合計長さに対するΣ3粒界の長さの割合を算出した。

0079

[(111)面の粒子の割合]
得られた試料の上部層の(111)面の粒子の割合を以下のとおり算出した。
まず、得られた試料の上部層における、上部層の表面から、基材側に向かって0.5μmにあり、基材の表面と平行な断面をFE−SEMで観察し、FE−SEMに付属したEBSDを用いて、方位差が0度以上45度以下の範囲内にある各層の粒子断面の面積の合計を測定した。そして、方位差が0度以上45度以下の範囲内にある粒子の断面積を5度のピッチ毎に区分して、区分毎の粒子断面の面積を求めた。次に、方位差が0度以上10度未満の区分、10度以上20度未満の区分、20度以上30度未満の区分、及び30度以上45度以下の区分のそれぞれの区分の粒子断面の面積の合計を求めた。なお、0度以上45度以下の粒子断面の面積の合計は100面積%となる。これら各区分の内、方位差が0度以上10度未満の範囲内にある粒子の断面積を、方位差が0度以上45度以下の範囲内にある各層の粒子断面の面積の合計に対する比率として表したものを(111)面の粒子の割合とした。以上の測定結果を表4に示す。なお、EBSDによる測定は、以下のようにして行った。試料をFE−SEMにセットした。試料に70度の入射角度で、15kVの加速電圧及び1.0nA照射電流で電子線を照射した。測定範囲30μm×50μmにて、0.1μmのステップサイズというEBSDの設定で、各粒子の方位差及び断面積の測定を行った。測定範囲内における上部層の粒子断面の面積は、その面積に対応するピクセルの総和とした。すなわち、各層の粒子の、方位差に基づいた10度又は15度のピッチ毎の各区分おける粒子断面の面積の合計は、各区分に該当する粒子断面が占めるピクセルを集計し、面積に換算して求めた。

0080

[塩素(Cl)の含有量]
得られた試料の上部層の塩素(Cl)の含有量を以下のとおり測定した。
まず、被覆層の厚さを測定する時と同様の断面(鏡面観察面)を作製した。そして、上部層の断面を電子プローブ微小分析器(EPMA)により、測定した。上部層の厚さが50%の位置を3点以上測定し、その相加平均値をClの含有量とした。測定結果を表4に示す。

0081

0082

得られた発明品1〜11及び比較品1〜9を用いて、下記の条件にて切削試験1及び切削試験2を行った。切削試験1は耐摩耗性を評価する摩耗試験であり、切削試験2は耐欠損性を評価する欠損試験である。各切削試験の結果を表5に示す。

0083

[切削試験1]
被削材:SCM440の丸棒
切削速度:200m/分、
送り:0.30mm/rev、
切り込み:2.0mm、
クーラント:使用、
評価項目:試料が欠損又は最大逃げ面摩耗幅が0.3mmに至ったときを工具寿命とし、工具寿命までの加工時間を測定した。また、工具寿命に至った時における損傷状態をSEMで確認した。

0084

[切削試験2]
被削材:S45Cの4本の溝入り丸棒、
切削速度:120m/分、
送り:0.30mm/rev、
切り込み:1.5mm、
クーラント:使用、
評価項目:試料が欠損又は最大逃げ面摩耗幅が0.3mmに至ったときを工具寿命とし、工具寿命までの衝撃回数を測定した。衝撃回数は、15000回までとした。

0085

切削試験1(摩耗試験)の工具寿命に至るまでの加工時間について、21分以上を「A」、16分以上21分未満を「B」、16分未満を「C」として評価した。また、切削試験2(欠損試験)の工具寿命に至るまでの衝撃回数について、13000回以上を「A」、11000回以上12999回以下を「B」、10999回以下を「C」として評価した。この評価では、「A」が最も優れており、次に「B」が優れており、「C」が最も劣っていることを意味し、A又はBを多く有するほど切削性能に優れることを意味する。得られた評価の結果を表5に示す。

0086

0087

表5に示す結果より、発明品の摩耗試験及び欠損試験の評価は、どちらも「A」又は「B」の評価であった。一方、比較品の評価は、摩耗試験及び欠損試験の両方又はいずれかが、「C」であった。特に、摩耗試験において、発明品の評価はいずれも「B」以上であり、比較品の評価はいずれも「C」であった。よって、発明品の耐摩耗性は、比較品と比べて、総じて、より優れていることが分かる。

実施例

0088

以上の結果より、発明品は、耐摩耗性及び耐欠損性に優れる結果、工具寿命が長いことが分かった。

0089

本発明の被覆切削工具は、耐欠損性を低下させることなく、しかも優れた耐摩耗性を有することにより、従来よりも工具寿命を延長できるので、そのような観点から、産業上の利用可能性がある。

0090

1…基材、2…下部層、3…中間層、4…上部層、5…被覆層、6…被覆切削工具。

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