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図面 (14)

課題

多能性幹細胞から軟骨細胞を製造することが課題である。

解決手段

次の工程を含む多能性幹細胞から軟骨細胞を製造する方法:(i)多能性幹細胞を接着培養することにより中胚葉細胞誘導する工程、(ii)前記工程(i)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質を含む培養液中で接着培養する工程、および(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質を含む培養液中で浮遊培養する工程。さらに、この方法で得られた軟骨細胞を含む医薬品を提供する。

概要

背景

および関節は軟骨組織から形成されており、軟骨組織は、軟骨細胞I型コラーゲンを含まず、II型コラーゲンIX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびプロテオグリカンを含む特定の細胞外マトリックスとで形成されている。関節損傷などで失われた軟骨組織は自然治癒することはないため、移植等の修復治療を行わなければ悪化してしまう。しかし、損傷部位へ移植するための軟骨組織の入手が必要であり、患者自身の別の部位の軟骨を用いるにはその損傷部位の大きさが限られる。このため、in vitroで取り出した軟骨細胞の拡大培養を行うと細胞が繊維化してしまい、移植には適さない(非特許文献1)。この他にも、間葉系幹細胞投与する方法が提案されているが、間葉系幹細胞は多数の種類の細胞へと分化するため、I型コラーゲンを発現する線維組織やX型コラーゲンを発現する肥大組織を移植することになってしまう(非特許文献2)。

そこで、近年、iPS細胞ES細胞といった多能性幹細胞から軟骨細胞へと誘導し、これを用いる方法が提案されている(非特許文献3〜7)。しかし、繊維軟骨の形成やテラトーマの形成など問題が提起されている。従って、これら多能性幹細胞からin vivoで癌を形成せず、上質の軟骨組織を製造する方法が必要となる。

概要

多能性幹細胞から軟骨細胞を製造することが課題である。次の工程を含む多能性幹細胞から軟骨細胞を製造する方法:(i)多能性幹細胞を接着培養することにより中胚葉細胞を誘導する工程、(ii)前記工程(i)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質を含む培養液中で接着培養する工程、および(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質を含む培養液中で浮遊培養する工程。さらに、この方法で得られた軟骨細胞を含む医薬品を提供する。

目的

本発明の課題は、多能性幹細胞から軟骨細胞を分化誘導する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

多能性幹細胞から誘導された誘導軟骨細胞であって、(1)当該軟骨細胞は、COL2A1遺伝子の発現量が、多能性幹細胞における対応する遺伝子の発現量と比較して、少なくとも100倍であり、(2)当該軟骨細胞は、SOX9遺伝子の発現量が、多能性幹細胞における対応する遺伝子の発現量と比較して、少なくとも250倍であり、および(3)当該軟骨細胞は、外来遺伝子が導入されていない(ただし、iPS細胞の製造に用いた外来遺伝子は除く)、前記誘導軟骨細胞。

請求項2

立体構造を有する軟骨様組織であって、当該軟骨様組織は、外膜および当該外膜に内包された内容物から構成されており、当該外膜は、COL1線維を含むが、COL2線維を含まず、当該外膜の厚さが、10μm以上50μm以下であり、当該内容物が、Col11線維、Col2線維、プロテオグリカンおよび請求項15に記載された細胞を含む、前記軟骨様組織。

技術分野

0001

本発明は、多能性幹細胞から軟骨細胞分化誘導する方法に関する。本発明はまた、そのようにして得られた軟骨細胞を含む治療剤に関する。

背景技術

0002

および関節は軟骨組織から形成されており、軟骨組織は、軟骨細胞とI型コラーゲンを含まず、II型コラーゲンIX型コラーゲン、XI型コラーゲンおよびプロテオグリカンを含む特定の細胞外マトリックスとで形成されている。関節損傷などで失われた軟骨組織は自然治癒することはないため、移植等の修復治療を行わなければ悪化してしまう。しかし、損傷部位へ移植するための軟骨組織の入手が必要であり、患者自身の別の部位の軟骨を用いるにはその損傷部位の大きさが限られる。このため、in vitroで取り出した軟骨細胞の拡大培養を行うと細胞が繊維化してしまい、移植には適さない(非特許文献1)。この他にも、間葉系幹細胞投与する方法が提案されているが、間葉系幹細胞は多数の種類の細胞へと分化するため、I型コラーゲンを発現する線維組織やX型コラーゲンを発現する肥大組織を移植することになってしまう(非特許文献2)。

0003

そこで、近年、iPS細胞ES細胞といった多能性幹細胞から軟骨細胞へと誘導し、これを用いる方法が提案されている(非特許文献3〜7)。しかし、繊維軟骨の形成やテラトーマの形成など問題が提起されている。従って、これら多能性幹細胞からin vivoで癌を形成せず、上質の軟骨組織を製造する方法が必要となる。

先行技術

0004

Roberts, S., et al. Knee 16, 398-404 (2009).
Mithoefer, K., et al. Am. J. Sports Med. 37, 2053-2063 (2009).
Koyama, N. et al. Stem cells and development 22, 102-113 (2013).
Hwang, N.S., et al.PLoS ONE 3, e2498 (2008).
Oldershaw, R.A. et al. Nat. Biotechnol. 28, 1187-1194 (2010).
Bai, H.Y., et al. Journal of biomedical materials research. Part A 94, 539-546 (2010).
Yamashita, A. et al. Scientific Reports 3 (2013).

発明が解決しようとする課題

0005

本発明の課題は、多能性幹細胞から軟骨細胞を分化誘導する方法を提供することにある。より具体的には、多能性幹細胞から中胚葉細胞を誘導し、さらにアスコルビン酸、BMP2、TGFβおよびGDF5を含む培養液中で接着培養浮遊培養を組み合わせて分化する工程を含む、軟骨細胞を分化誘導する方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、中胚葉細胞を誘導する工程を含むことで、軟骨細胞の誘導効率が高まること、および、アスコルビン酸、BMP2、TGFβおよびGDF5を含む培養液中で接着培養と浮遊培養を組み合わせることで、軟骨細胞の純度が高まることを見出し、多能性幹細胞から良質の軟骨細胞を分化誘導できることを初めて見出した。さらに、このように得られた軟骨細胞を動物モデルへ移植することで生着させることができることを見出した。本発明はそのような知見を基にして完成されたものである。

0007

すなわち、本発明は以下の特徴を有する:
[1]次の工程を含む多能性幹細胞から軟骨細胞を製造する方法:
(i)多能性幹細胞を接着培養することにより中胚葉細胞を誘導する工程、
(ii)前記工程(i)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質を含む培養液中で接着培養する工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5をから成る群より選択される1以上の物質含む培養液中で浮遊培養する工程。
[2]前記工程(iii)で得られた細胞を血清を含有する培養液中で培養する工程をさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]前記工程(i)、(ii)および(iii)の工程で用いる培養液が、さらに1%FBSを含む培養液である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記工程(iii)が、前記工程(ii)で得られた細胞を分離溶液を用いずに、浮遊培養を行う工程である、[1]から[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記工程(i)の中胚葉細胞を誘導する工程が、Wnt3aおよびアクチビンAを含む培養液中で培養する工程である、[1]から[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記工程(i)が、5日以下である、[1]から[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]前記工程(ii)が、15日以下である、[1]から[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]前記工程(iii)が、10日以上30日以下である、[1]から[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]前記工程(i)が、3日である、[6]に記載の方法。
[10]前記工程(ii)が、11日である、[7]に記載の方法。
[11]前記工程(iii)が、14日以上28日以下である、[8]に記載の方法。
[12][1]から[11]に記載の方法で製造された軟骨細胞を含む、医薬品。
[13]前記軟骨細胞が、軟骨細胞と細胞外マトリックスを含む塊である、[12]に記載の医薬品。
[14]関節軟骨損傷治療用である、[12]または[13]に記載の医薬品。
[15]多能性幹細胞から誘導された誘導軟骨細胞であって、
(1)当該軟骨細胞は、COL2A1遺伝子の発現量が、多能性幹細胞における対応する遺伝子の発現量と比較して、少なくとも100倍であり、
(2)当該軟骨細胞は、SOX9遺伝子の発現量が、多能性幹細胞における対応する遺伝子の発現量と比較して、少なくとも250倍であり、および
(3)当該軟骨細胞は、外来遺伝子が導入されていない(ただし、iPS細胞の製造に用いた遺伝子は除く)、前記誘導軟骨細胞。
[16]立体構造を有する軟骨様組織であって、
当該軟骨様組織は、外膜および当該外膜に内包された内容物から構成されており、
当該外膜は、COL1線維を含むが、COL2線維を含まず、
当該外膜の厚さが、10μm以上50μm以下であり、
当該内容物が、Col11線維、Col2線維、プロテオグリカンおよび請求項15に記載された細胞を含む、前記軟骨様組織。

発明の効果

0008

本発明によって多能性幹細胞(例えば、iPS細胞)から良質な軟骨細胞へ効率よく誘導することが初めて可能となった。本発明の方法で製造された軟骨細胞は、軟骨の再生医療に使用され得る。

図面の簡単な説明

0009

図1は、Col11A2のプロモーター活性によりEGFPを発現させるCol11a2-EGFP-IRES-Puroのコンストラクトの模式図を示す。
図2は、iPS細胞株へCol11a2-EGFP-IRES-Puroを組み込んだCol11a2遺伝子レポーターiPS細胞をSCIDマウスの皮下に注入した際に得られたテラトーマの組織染色像を示す。
図3は、多能性幹細胞から軟骨細胞を誘導するプロトコールの模式図を示す。
図4aは、Col11a2遺伝子レポーターiPS細胞および野生型iPS細胞を各条件(A、ABTおよびABTG)を用いて誘導したday14の位相差顕微鏡像(上図)および蛍光顕微鏡像下図)を示す。図4bは、Col11a2遺伝子レポーターiPS細胞を各条件(A、ABTおよびABTG)を用いて誘導したday28における細胞のSOX9、AGGRECAN、COL2A1およびCOL11A2の発現量をRT-PCR計測した結果を示す。図中Chondrocyteは陽性対照としてCell Applications, Incより購入したヒト軟骨細胞(402RD-R10f)の結果を示す。図4cは、各条件(A、ABTおよびABTG)を用いて誘導したday42におけるHE染色およびサフラニンO染色像を示す。
図5は、従来法(Micromass)および本発明のプロトコールに従って誘導したday28の細胞におけるSOX9、AGGRECAN、COL2A1およびCOL11A2に対するRT-PCRの結果を示す。
図6aは、本発明のプロトコールに従って誘導したday28のパーティクルのHE染色およびサフラニンO染色像を示す。図6bは、本発明のプロトコールに従って誘導したday42のパーティクルのHE染色、サフラニンO染色、II型コラーゲンの染色およびI型コラーゲンの染色像を示す。図6cは、本発明のプロトコール(day42より血清含有培地交換)に従って誘導したday70のパーティクルのHE染色、サフラニンO染色、II型コラーゲンの染色およびI型コラーゲンの染色像を示す。図6dは、本発明のプロトコール(day42より血清含有培地に交換)に従って誘導したday56およびday70のパーティクルのSOX9の染色像を示す。図6eは、本発明のプロトコール(day42より血清含有培地に交換)に従って誘導したday56のパーティクルのGFPの蛍光顕微鏡像を示す。図6fは、本発明のプロトコール(day42より血清含有培地に交換)に従って誘導した場合の全細胞数に対するSOX9陽性細胞数の含有率継時的に測定した結果を示す。
図7aは、本発明のプロトコールのうちday42より軟骨培地のまま培養に変更したプロトコールに従って誘導したday70のパーティクルのHE染色、サフラニンO染色、II型コラーゲンの染色およびI型コラーゲンの染色像を示す。図7bは、本発明のプロトコールのうちday42より軟骨培地のまま培養に変更したプロトコールに従って誘導したday140のパーティクルのHE染色、サフラニンO染色、II型コラーゲンの染色およびI型コラーゲンの染色像を示す。
図8は、本発明のプロトコールのうちday14からday42においても接着培養した変更プロトコールに従って誘導したday42のパーティクルのHE染色、サフラニンO染色像を示す。
図9aは、day42における培養皿の底面に接着した細胞の位相差顕微鏡像(左図)および蛍光顕微鏡像(右図)を示す。図9bは、day42における本発明のプロトコールに従って誘導したパーティクルおよび培養皿の底面に接着した細胞におけるSOX9、AGGRECAN、COL2A1およびCOL11A2に対するRT-PCRの結果を示す。各遺伝子の発現量は、beta-アクチビン(ACTB)の発現量により標準化し、再分化した軟骨細胞(Chondrocyte)または繊維芽細胞(Fibroblast)の値を対照として算出した。
図10aは、本発明のプロトコールに従って誘導した軟骨細胞(day0からday70)、ヒト軟骨細胞(Cartilage)および従来法に従って誘導した軟骨細胞(differ 2WまたはHDFまたはBone)における各遺伝子のRT-PCRの結果を示す。結果は、beta-アクチビン(ACTB)の発現量により標準化し、HDF、分化2週目の細胞、正常関節軟骨細胞、または正常骨細胞の値を対照として算出した。値は、n=3の平均値を示す。図10bは、本発明のプロトコールに従って誘導した各時期(day0からday70)における生細胞数菱形)および細胞生存率(丸)のグラフを示す。
図11aは、本発明のプロトコールに従って誘導したday42のパーティクルをSCIDマウスの皮下へ投与した12週後のパーティクルのHE染色、サフラニンO染色、II型コラーゲンの染色およびI型コラーゲンの染色像を示す。図11bは、本発明のプロトコールに従って誘導したday42のパーティクルをSCIDマウスの皮下へ投与した12週後のパーティクルのSOX9の染色像を示す。図11cは、本発明のプロトコールに従って誘導したday42のパーティクルをSCIDマウスの皮下へ投与した12週後のパーティクルのヒトVIMENTINおよびDAPIの染色像ならびに位相差顕微鏡像を示す。図11dは、本発明のプロトコールに従って誘導したday42のパーティクルをSCIDマウスの皮下へ投与した4週後および12週後の各組織におけるヒトbeta-アクチビン (ACTB) およびマウスbeta-アクチビン(Actb)の発現量をRT-PCRで測定した結果示す。
図12は、iPS細胞由来の細胞を皮下移植した後の組織における、HE染色(上図)、サフラニンO染色(中央図)およびX型コラーゲン抗体での免疫染色(下図)の結果を示す。右図は、左図の枠内の拡大図であり、スケールバーは、左図では、500mm、中央図および右図では、50mmを示す。
図13aは、本発明のプロトコールに従って誘導したday28のパーティクルをSCIDラットの関節に投与した1週後(左図)および4週後(右図)のHE染色およびヒトVIMENTIN免疫染色像ならびにトルイジンブルー染色およびII型コラーゲンの免疫染色像を示す。図13bは、本発明のプロトコールに従って誘導したday28のパーティクルをSCIDラットの関節に投与した1週後(左図)および4週後(右図)のHE染色およびII型コラーゲンの免疫染色像を示す。図13cは、本発明のプロトコールに従って誘導したday28のパーティクルをSCIDラットの関節に投与した4週後および12週後の各組織におけるヒトbeta-アクチビン (ACTB) およびラットbeta-アクチビン(Actb)の発現量をRT-PCRで測定した結果を示す。

0010

本発明を以下に詳細に説明する。

0011

本発明は、次の工程を含む多能性幹細胞から軟骨細胞を製造する方法を提供する;
(i)多能性幹細胞を接着培養することにより中胚葉細胞を誘導する工程、
(ii)前記工程(i)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質を含む培養液中で接着培養する工程、および
(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群より選択される1以上の物質を含む培養液中で浮遊培養する工程。

0012

本発明で使用可能な多能性幹細胞は、生体に存在するすべての細胞に分化可能である多能性を有し、かつ、増殖能をも併せもつ幹細胞であり、それには、特に限定されないが、例えば胚性(ES)細胞、核移植により得られるクローン胚由来の胚性幹(ntES)細胞、精子幹細胞(「GS細胞」)、胚性生殖細胞(「EG細胞」)、人工多能性幹(iPS)細胞、培養線維芽細胞骨髄幹細胞由来の多能性細胞(Muse細胞)などが含まれる。好ましい多能性幹細胞は、ES細胞、ntES細胞、およびiPS細胞である。

0013

(A)胚性幹細胞
ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物初期胚(例えば胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。
ES細胞は、受精卵の8細胞期、桑実胚後のである胚盤胞の内部細胞塊に由来する胚由来の幹細胞であり、成体を構成するあらゆる細胞に分化する能力、いわゆる分化多能性と、自己複製による増殖能とを有している。ES細胞は、マウスで1981年に発見され (M.J. Evans and M.H. Kaufman (1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された (J.A. Thomson et al. (1998), Science 282:1145-1147; J.A. Thomson et al. (1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848;J.A. Thomson et al. (1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall (1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。

0014

ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞フィーダー上で培養することによって樹立することができる。また、継代培養による細胞の維持は、白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor (LIF))、塩基性線維芽細胞成長因子(basicfibroblast growth factor (bFGF))などの物質を添加した培養液を用いて行うことができる。ヒトおよびサルのES細胞の樹立と維持の方法については、例えばUSP5,843,780; Thomson JA, et al. (1995), Proc Natl. Acad. Sci. U S A. 92:7844-7848; Thomson JA, et al. (1998), Science. 282:1145-1147; H. Suemori et al. (2006), Biochem. Biophys. Res. Commun., 345:926-932; M. Ueno et al. (2006), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:9554-9559; H. Suemori et al. (2001), Dev. Dyn., 222:273-279;H. Kawasaki et al. (2002), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99:1580-1585;Klimanskaya I, et al. (2006), Nature. 444:481-485などに記載されている。

0015

ES細胞作製のための培養液として、例えば0.1mM2-メルカプトエタノール、0.1mM非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン酸、20%KSRおよび4ng/ml bFGFを補充したDMEM/F-12培養液を使用し、37℃、2% CO2/98% 空気の湿潤雰囲気下でヒトES細胞を維持することができる(O. Fumitaka et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:215-224)。また、ES細胞は、3〜4日おきに継代する必要があり、このとき、継代は、例えば1mM CaCl2および20% KSRを含有するPBS中の0.25%トリプシンおよび0.1mg/mlコラゲナーゼIVを用いて行うことができる。

0016

ES細胞の選択は、一般に、アルカリホスファターゼ、Oct-3/4、Nanogなどの遺伝子マーカーの発現を指標にしてReal-TimePCR法で行うことができる。特に、ヒトES細胞の選択では、OCT-3/4、NANOG、ECADなどの遺伝子マーカーの発現を指標とすることができる(E. Kroon et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26:443-452)。

0017

ヒトES細胞株は、例えばWA01(H1)およびWA09(H9)は、WiCell Research Instituteから、KhES-1、KhES-2およびKhES-3は、京都大学再生医科学研究所(京都、日本)から入手可能である。

0018

(B)精子幹細胞
精子幹細胞は、精巣由来の多能性幹細胞であり、精子形成のための起源となる細胞である。この細胞は、ES細胞と同様に、種々の系列の細胞に分化誘導可能であり、例えばマウス胚盤胞に移植するとキメラマウス作出できるなどの性質をもつ(M. Kanatsu-Shinohara et al. (2003) Biol. Reprod., 69:612-616; K. Shinohara et al. (2004), Cell, 119:1001-1012)。神経膠細胞系由来神経栄養因子(glial cell line-derived neurotrophic factor (GDNF))を含む培養液で自己複製可能であるし、またES細胞と同様の培養条件下で継代を繰り返すことによって、精子幹細胞を得ることができる(竹林正則ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊),41〜46頁,土社(東京、日本))。

0019

(C)胚性生殖細胞
胚性生殖細胞は、胎生期の始原生殖細胞から樹立される、ES細胞と同様な多能性をもつ細胞であり、LIF、bFGF、幹細胞因子(stem cell factor)などの物質の存在下で始原生殖細胞を培養することによって樹立しうる(Y. Matsui et al. (1992), Cell, 70:841-847; J.L. Resnick et al. (1992), Nature, 359:550-551)。

0020

(D)人工多能性幹細胞
人工多能性幹(iPS)細胞は、特定の初期化因子を、DNA又はタンパク質の形態で体細胞に導入することによって作製することができる、ES細胞とほぼ同等の特性、例えば分化多能性と自己複製による増殖能、を有する体細胞由来の人工の幹細胞である(K. Takahashi and S. Yamanaka (2006) Cell, 126:663-676; K. Takahashi et al. (2007), Cell, 131:861-872; J. Yu et al. (2007), Science, 318:1917-1920; Nakagawa, M.ら,Nat. Biotechnol. 26:101-106 (2008);国際公開WO 2007/069666)。初期化因子は、ES細胞に特異的に発現している遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNAまたはES細胞の未分化維持に重要な役割を果たす遺伝子、その遺伝子産物もしくはnon-cording RNA、あるいは低分子化合物によって構成されてもよい。初期化因子に含まれる遺伝子として、例えば、Oct3/4、Sox2、Sox1、Sox3、Sox15、Sox17、Klf4、Klf2、c-Myc、N-Myc、L-Myc、Nanog、Lin28、Fbx15、ERas、ECAT15-2、Tcl1、beta-catenin、Lin28b、Sall1、Sall4、Esrrb、Nr5a2、Tbx3またはGlis1等が例示され、これらの初期化因子は、単独で用いても良く、組み合わせて用いても良い。初期化因子の組み合わせとしては、WO2007/069666、WO2008/118820、WO2009/007852、WO2009/032194、WO2009/058413、WO2009/057831、WO2009/075119、WO2009/079007、WO2009/091659、WO2009/101084、WO2009/101407、WO2009/102983、WO2009/114949、WO2009/117439、WO2009/126250、WO2009/126251、WO2009/126655、WO2009/157593、WO2010/009015、WO2010/033906、WO2010/033920、WO2010/042800、WO2010/050626、WO 2010/056831、WO2010/068955、WO2010/098419、WO2010/102267、WO 2010/111409、WO 2010/111422、WO2010/115050、WO2010/124290、WO2010/147395、WO2010/147612、Huangfu D, et al. (2008), Nat. Biotechnol., 26: 795-797、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 2: 525-528、Eminli S, et al. (2008), Stem Cells. 26:2467-2474、Huangfu D, et al. (2008), Nat Biotechnol. 26:1269-1275、Shi Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3, 568-574、Zhao Y, et al. (2008), Cell Stem Cell, 3:475-479、Marson A, (2008), Cell Stem Cell, 3, 132-135、Feng B, et al. (2009), Nat Cell Biol. 11:197-203、R.L. Judson et al., (2009), Nat. Biotech., 27:459-461、Lyssiotis CA, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:8912-8917、KimJB, et al. (2009), Nature. 461:649-643、Ichida JK, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:491-503、Heng JC, et al. (2010), Cell Stem Cell. 6:167-74、Han J, et al. (2010), Nature. 463:1096-100、Mali P, et al. (2010), Stem Cells. 28:713-720、Maekawa M, et al. (2011), Nature. 474:225-9.に記載の組み合わせが例示される。

0021

上記初期化因子には、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤[例えば、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA、酪酸ナトリウム、MC 1293、M344等の低分子阻害剤、HDACに対するsiRNAおよびshRNA(例、HDAC1 siRNA Smartpool (Millipore)、HuSH 29mer shRNA Constructs against HDAC1 (OriGene)等)等の核酸発現阻害剤など]、MEK阻害剤(例えば、PD184352、PD98059、U0126、SL327およびPD0325901)、Glycogen synthase kinase-3阻害剤(例えば、BioおよびCHIR99021)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、5-azacytidine)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX-01294 等の低分子阻害剤、Suv39hl、Suv39h2、SetDBlおよびG9aに対するsiRNAおよびshRNA等の核酸性発現阻害剤など)、L-channel calcium agonist (例えばBayk8644)、酪酸、TGFβ阻害剤またはALK5阻害剤(例えば、LY364947、SB431542、616453およびA-83-01)、p53阻害剤(例えばp53に対するsiRNAおよびshRNA)、ARID3A阻害剤(例えば、ARID3Aに対するsiRNAおよびshRNA)、miR-291-3p、miR-294、miR-295およびmir-302などのmiRNA、Wnt Signaling(例えばsoluble Wnt3a)、神経ペプチドY、プロスタグランジン類(例えば、プロスタグランジンE2およびプロスタグランジンJ2)、hTERT、SV40LTUTF1、IRX6、GLISl、PITX2、DMRTBl等の樹立効率を高めることを目的として用いられる因子も含まれており、本明細書においては、これらの樹立効率の改善目的にて用いられた因子についても初期化因子と別段の区別をしないものとする。

0022

初期化因子は、タンパク質の形態の場合、例えばリポフェクション細胞膜透過性ペプチド(例えば、HIV由来のTATおよびポリアルギニン)との融合、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入してもよい。

0023

一方、DNAの形態の場合、例えば、ウイルスプラスミド人工染色体などのベクター、リポフェクション、リポソーム、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入することができる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクターレンチウイルスベクター(以上、Cell, 126, pp.663-676, 2006; Cell, 131, pp.861-872, 2007; Science, 318, pp.1917-1920, 2007)、アデノウイルスベクター(Science, 322, 945-949, 2008)、アデノ随伴ウイルスベクターセンダイウイルスベクター(WO 2010/008054)などが例示される。また、人工染色体ベクターとしては、例えばヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC、PAC)などが含まれる。プラスミドとしては、哺乳動物細胞用プラスミドを使用しうる(Science, 322:949-953, 2008)。ベクターには、核初期化物質が発現可能なように、プロモーターエンハンサーリボゾーム結合配列ターミネーターポリアデニル化イトなどの制御配列を含むことができるし、さらに、必要に応じて、薬剤耐性遺伝子(例えばカナマイシン耐性遺伝子アンピシリン耐性遺伝子ピューロマイシン耐性遺伝子など)、チミジンキナーゼ遺伝子ジフテリアトキシン遺伝子などの選択マーカー配列緑色蛍光タンパク質(GFP)、βグルクロニダーゼ(GUS)、FLAGなどのレポーター遺伝子配列などを含むことができる。また、上記ベクターには、体細胞への導入後、初期化因子をコードする遺伝子もしくはプロモーターとそれに結合する初期化因子をコードする遺伝子を共に切除するために、それらの前後にLoxP配列を有してもよい。

0024

また、RNAの形態の場合、例えばリポフェクション、マイクロインジェクションなどの手法によって体細胞内に導入しても良く、分解を抑制するため、5-メチルシチジンおよびpseudouridine (TriLink Biotechnologies)を取り込ませたRNAを用いても良い(Warren L, (2010) Cell Stem Cell. 7:618-630)。

0025

iPS細胞誘導のための培養液としては、例えば、10〜15%FBSを含有するDMEM、DMEM/F12又はDME培養液(これらの培養液にはさらに、LIF、penicillin/streptomycin、puromycin、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)または市販の培養液[例えば、マウスES細胞培養用培養液(TX-WES培養液、トロンボX社)、霊長類ES細胞培養用培養液(霊長類ES/iPS細胞用培養液、リプセル社)、無血清培地(mTeSR、Stemcell Technology社)]などが含まれる。

0026

培養法の例としては、例えば、37℃、5%CO2存在下にて、10%FBS含有DMEM又はDMEM/F12培養液上で体細胞と初期化因子とを接触させ約4〜7日間培養し、その後、細胞をフィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上に播きなおし、体細胞と初期化因子の接触から約10日後からbFGF含有霊長類ES細胞培養用培養液で培養し、該接触から約30〜約45日又はそれ以上ののちにiPS様コロニーを生じさせることができる。

0027

あるいは、37℃、5% CO2存在下にて、フィーダー細胞(たとえば、マイトマイシンC処理STO細胞、SNL細胞等)上で10%FBS含有DMEM培養液(これにはさらに、LIF、ペニシリン/ストレプトマイシンピューロマイシン、L-グルタミン、非必須アミノ酸類、β-メルカプトエタノールなどを適宜含むことができる。)で培養し、約25〜約30日又はそれ以上ののちにES様コロニーを生じさせることができる。望ましくは、フィーダー細胞の代わりに、初期化される体細胞そのものを用いる(Takahashi K, et al. (2009),PLoS One. 4:e8067またはWO2010/137746)、もしくは細胞外基質(例えば、Laminin-5(WO2009/123349)およびマトリゲル(BD社))を用いる方法が例示される。

0028

この他にも、血清を含有しない培地を用いて培養する方法も例示される(Sun N, et al. (2009), Proc Natl Acad Sci U S A. 106:15720-15725)。さらに、樹立効率を上げるため、低酸素条件(0.1%以上、15%以下の酸素濃度)によりiPS細胞を樹立しても良い(Yoshida Y, et al. (2009), Cell Stem Cell. 5:237-241またはWO2010/013845)。

0029

上記培養の間には、培養開始2日目以降から毎日1回新鮮な培養液と培養液交換を行う。また、核初期化に使用する体細胞の細胞数は、限定されないが、培養ディッシュ100cm2あたり約5×103〜約5×106細胞の範囲である。

0030

iPS細胞は、形成したコロニーの形状により選択することが可能である。一方、体細胞が初期化された場合に発現する遺伝子(例えば、Oct3/4、Nanog)と連動して発現する薬剤耐性遺伝子をマーカー遺伝子として導入した場合は、対応する薬剤を含む培養液(選択培養液)で培養を行うことにより樹立したiPS細胞を選択することができる。また、マーカー遺伝子が蛍光タンパク質遺伝子の場合は蛍光顕微鏡で観察することによって、発光酵素遺伝子の場合は発光基質を加えることによって、また発色酵素遺伝子の場合は発色基質を加えることによって、iPS細胞を選択することができる。

0031

明細書中で使用する「体細胞」なる用語は、卵子卵母細胞、ES細胞などの生殖系列細胞または分化全能性細胞を除くあらゆる動物細胞(好ましくは、ヒトを含む哺乳動物細胞)をいう。体細胞には、非限定的に、胎児(仔)の体細胞、新生児(仔)の体細胞、および成熟した健全なもしくは疾患性の体細胞のいずれも包含されるし、また、初代培養細胞、継代細胞、および株化細胞のいずれも包含される。具体的には、体細胞は、例えば(1)神経幹細胞造血幹細胞、間葉系幹細胞、歯髄幹細胞等の組織幹細胞体性幹細胞)、(2)組織前駆細胞、(3)リンパ球上皮細胞内皮細胞筋肉細胞、線維芽細胞(皮膚細胞等)、毛細胞肝細胞胃粘膜細胞、腸細胞脾細胞膵細胞(外分泌細胞等)、脳細胞、肺細胞腎細胞および脂肪細胞等の分化した細胞などが例示される。

0032

また、iPS細胞を移植用細胞の材料として用いる場合、拒絶反応が起こらないという観点から、移植先の個体のHLA遺伝子型が同一もしくは実質的に同一である体細胞を用いることが望ましい。ここで、「実質的に同一」とは、移植した細胞に対して免疫抑制剤により免疫反応が抑制できる程度にHLA遺伝子型が一致していることであり、例えば、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRの3遺伝子座あるいはHLA-Cを加えた4遺伝子座が一致するHLA型を有する体細胞である。

0033

(E)核移植により得られたクローン胚由来のES細胞
ntES細胞は、核移植技術によって作製されたクローン胚由来のES細胞であり、受精卵由来のES細胞とほぼ同じ特性を有している(T. Wakayama et al. (2001), Science, 292:740-743; S. Wakayama et al. (2005), Biol. Reprod., 72:932-936; J. Byrne et al. (2007), Nature, 450:497-502)。すなわち、未受精卵の核を体細胞の核と置換することによって得られたクローン胚由来の胚盤胞の内部細胞塊から樹立されたES細胞がntES(nuclear transfer ES)細胞である。ntES細胞の作製のためには、核移植技術(J.B.Cibelli et al. (1998), Nature Biotechnol., 16:642-646)とES細胞作製技術(上記)との組み合わせが利用される(若山清香ら(2008),実験医学,26巻,5号(増刊), 47〜52頁)。核移植においては、哺乳動物の除核した未受精卵に、体細胞の核を注入し、数時間培養することで初期化することができる。

0034

(F) Multilineage-differentiating Stress Enduring cells(Muse細胞)
Muse細胞は、WO2011/007900に記載された方法にて製造された多能性幹細胞であり、詳細には、線維芽細胞または骨髄間質細胞を長時間トリプシン処理、好ましくは8時間または16時間トリプシン処理した後、浮遊培養することで得られる多能性を有した細胞であり、SSEA-3およびCD105が陽性である。

0035

本発明において、軟骨細胞とは、コラーゲンなど軟骨を構成する細胞外マトリックスを産生する細胞、または、このような細胞となる前駆細胞を意味する。また、このような軟骨細胞は、軟骨細胞マーカーを発現する細胞であってもよく、軟骨細胞マーカーとしてII型コラーゲン(COL2A1)またはSOX9が例示される。本発明において、COL2A1には、NCBIのアクセッション番号として、ヒトの場合、NM_001844またはNM_033150、マウスの場合、NM_001113515またはNM_031163に記載されたヌクレオチド配列を有する遺伝子並びに当該遺伝子にコードされるタンパク質、ならびにこれらの機能を有する天然に存在する変異体が包含される。本発明において、SOX9には、NCBIのアクセッション番号として、ヒトの場合、NM_000346、マウスの場合、NM_011448に記載されたヌクレオチド配列を有する遺伝子並びに当該遺伝子にコードされるタンパク質、ならびにこれらの機能を有する天然に存在する変異体が包含される。

0036

(i)多能性幹細胞を接着培養により中胚葉細胞を誘導する工程
本発明において、中胚葉細胞とは、動物発生期原腸胚期において、内胚葉と外肺葉の間に発生する細胞を意味し、好ましくは、BRACHYURYが陽性である細胞を意味する。本発明において、BRACHYURYには、NCBIのアクセッション番号として、ヒトの場合、NM_001270484またはNM_003181、マウスの場合、NM_009309に記載されたヌクレオチド配列を有する遺伝子並びに当該遺伝子にコードされるタンパク質、ならびにこれらの機能を有する天然に存在する変異体が包含される。

0037

本発明において、多能性幹細胞から中胚葉細胞を誘導する方法は、特に限定されないが、Activin AおよびGSK-3β阻害剤を含有する培養液で培養する方法が例示される。

0038

本工程(i)では、好ましくは、多能性幹細胞をフィーダー細胞を含まない条件下で接着培養し、適度な大きさ(1から2×105細胞を含有する細胞塊)になった時点で、Activin AおよびGSK-3β阻害剤を含有する培養液へ交換し培養する方法である。

0039

本発明において、接着培養とは、細胞外基質によりコーティング処理された培養容器を用いて培養することによって行い得る。コーティング処理は、細胞外基質を含有する溶液を培養容器に入れた後、当該溶液を適宜除くことによって行い得る。

0040

本発明において、細胞外基質とは、細胞の外に存在する超分子構造体であり、天然由来であっても、人工物組換え体)であってもよい。例えば、コラーゲン、プロテオグリカン、フィブロネクチンヒアルロン酸テネイシンエンクチンエラスチンフィブリリンラミニンといった物質またはこれらの断片が挙げられる。これらの細胞外基質は、組み合わせて用いられてもよく、例えば、BD Matrigel(TM)などの細胞からの調製物であってもよい。人工物としては、ラミニンの断片が例示される。本発明において、ラミニンとは、α鎖β鎖γ鎖をそれぞれ1本ずつ持つヘテロ三量体構造を有するタンパク質であり、特に限定されないが、例えば、α鎖は、α1、α2、α3、α4またはα5であり、β鎖は、β1β2またはβ3であり、ならびにγ鎖は、γ1、γ2またはγ3が例示される。本発明において、ラミニンの断片とは、インテグリン結合活性を有しているラミニンの断片であれば、特に限定されないが、例えば、エラスターゼにて消化して得られる断片であるE8フラグメントが例示される。

0041

本工程(i)において使用される培養液は、動物細胞の培養に用いられる基礎培地へActivin AおよびGSK-3β阻害剤を添加して調製することができる。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)培地、Ham’s F12培地、RPMI1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地などが挙げられる。培地には、血清(例えば、FBS)が含有されていてもよいし、または無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミントランスフェリン、KnockOut Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)(Invitrogen)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸インスリン亜セレン酸ナトリウム、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、GlutaMAX(Invitrogen)、非必須アミノ酸(NEAA)、ビタミン増殖因子、低分子化合物、抗生物質抗酸化剤ピルビン酸緩衝剤無機塩類などの1つ以上の物質も含有しうる。本工程の1つの実施形態において、基礎培地は、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、および1%血清を含むDMEM/F12である。

0042

本工程(i)において、Activin Aには、ヒトおよび他の動物由来のActivin A、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、R&D systems社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるActivin Aの濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0043

本工程(i)において、GSK-3β阻害剤は、GSK-3βの機能、例えば、キナーゼ活性を直接または間接的に阻害できるものである限り特に限定されず、例えば、Wnt3a、インジルビン誘導体であるBIO(別名、GSK-3β阻害剤IX;6-ブロモインジルビン3'-オキシム)、マレイミド誘導体であるSB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、フェニルαブロモメチルケトン化合物であるGSK-3β阻害剤VII(4-ジブロモアセトフェノン)、細胞膜透過型リン酸化ペプチドであるL803-mts(別名、GSK-3βペプチド阻害剤;Myr-N-GKEAPPAPPQSpP-NH2)および高い選択性を有するCHIR99021(Nature (2008) 453: 519-523)が挙げられる。これらの化合物は、例えば、Stemgent、CalbiochemやBiomol社等から入手可能であり、また自ら作製してもよい。本工程で用いる好ましいGSK-3β阻害剤としては、Wnt3aが挙げられる。Wnt3aには、ヒトおよび他の動物由来のWnt3a、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、R&D systems社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるGSK-3β阻害剤の濃度は、使用するGSK-3β阻害剤に応じて当業者に適宜選択可能であるが、例えば、GSK-3β阻害剤としてWnt3aを用いる場合、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0044

本工程(i)において、培養温度は特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは約5%である。本工程の培養時間は、例えば5日以下の培養であり、好ましくは3日である。

0045

(ii)前記工程(i)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群から選択される1以上の物質を含む培養液中で接着培養する工程
本工程(ii)では、前記工程(i)で得られた細胞培養物の培養液を除去し、BMP2、TGFβおよびGDF5から成る群から選択される1以上の物質を含有する培養液を添加して行い得る。従って、前記工程(i)において細胞培養物は、培養皿へ接着していることから、本工程(ii)は接着培養によって行い得る。

0046

本工程(ii)において使用される培養液は、動物細胞の培養に用いられる基礎培地へBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群から選択される1以上の物質を添加して調製することができる。好ましくは、少なくともTGFβを含む培養液、BMP2およびTGFβを含む培養液、アスコルビン酸、BMP2およびTGFβを含む培養液、GDF5、BMP2およびTGFβを含む培養液、または、アスコルビン酸、BMP2、TGFβおよびGDF5を含む培養液であり、より好ましくは、bFGF、アスコルビン酸、BMP2、TGFβおよびGDF5を含む培養液である。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)培地、Ham’s F12培地、RPMI1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地などが挙げられる。培地には、血清(例えば、FBS)が含有されていてもよいし、または無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、KnockOut Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)(Invitrogen)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、GlutaMAX(Invitrogen)、非必須アミノ酸(NEAA)、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有しうる。本工程の1つの実施形態において、基礎培地は、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、および1%血清を含むDMEMである。

0047

本工程(ii)において、bFGFには、ヒトおよび他の動物由来のbFGF、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、WAKO社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるbFGFの濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0048

本工程(ii)において、アスコルビン酸は、例えば、Nakarai社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるアスコルビン酸の濃度は、5 μg/mlから500 μg/ml、好ましくは、10 μg/mlから100 μg/ml、より好ましくは、50 μg/mlである。

0049

本工程(ii)において、BMP2には、ヒトおよび他の動物由来のBMP2、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、Osteopharma社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるBMP2の濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。本発明において、BMP2は、BMP4に置き換えてもよい。

0050

本工程(ii)において、TGFβには、ヒトおよび他の動物由来のTGFβ、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、PeproTech社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるTGFβの濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0051

本工程(ii)において、GDF5には、ヒトおよび他の動物由来のGDF5、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、PeproTech社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるGDF5の濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0052

本工程(ii)において、培養温度は、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは約5%である。本工程の培養時間は、例えば15日以下の培養であり、好ましくは11日である。

0053

(iii)前記工程(ii)で得られた細胞をBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群から選択される1以上の物質を含む培養液中で浮遊培養する工程
本工程(iii)では、前記工程(ii)で得られた細胞培養物を培養容器より剥離させ、浮遊培養することで行い得る。本工程(iii)において、細胞培養物を剥離させる方法は、力学的分離方法ピペッティング等)により行うことが好ましく、プロテアーゼ活性および/またはコラゲナーゼ活性を有する分離溶液(例えば、トリプシンとコラゲナーゼの含有溶液Accutase(TM)およびAccumax(TM)(Innovative Cell Technologies, Inc)が挙げられる)を用いない方法が好ましい。

0054

本発明の方法において使用される浮遊培養とは、細胞を培養皿へ非接着の状態で培養することであり、特に限定はされないが、細胞との接着性を向上させる目的で人工的に処理(例えば、細胞外マトリックス等によるコーティング処理)されていない培養容器、または、人工的に接着を抑制する処理(例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸(poly-HEMA)によるコーティング処理)した培養容器を使用して行うことが好ましい。

0055

本工程(iii)において使用される培養液は、動物細胞の培養に用いられる基礎培地へBMP2、TGFβおよびGDF5から成る群から選択される1以上の物質を添加して調製することができる。好ましくは、少なくともTGFβを含む培養液、BMP2およびTGFβを含む培養液、アスコルビン酸、BMP2およびTGFβを含む培養液、GDF5、BMP2およびTGFβを含む培養液、または、アスコルビン酸、BMP2、TGFβおよびGDF5を含む培養液であり、より好ましくは、アスコルビン酸、BMP2、TGFβおよびGDF5を含む培養液である。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)培地、Ham’s F12培地、RPMI1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地などが挙げられる。培地には、血清(例えば、FBS)が含有されていてもよいし、または無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、KnockOut Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)(Invitrogen)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、GlutaMAX(Invitrogen)、非必須アミノ酸(NEAA)、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有しうる。本工程の1つの実施形態において、基礎培地は、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、および1%血清を含むDMEMである。

0056

本工程(iii)において、アスコルビン酸は、例えば、Nakarai社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるアスコルビン酸の濃度は、5 μg/mlから500 μg/ml、好ましくは、10 μg/mlから100 μg/ml、より好ましくは、50 μg/mlである。

0057

本工程(iii)において、BMP2には、ヒトおよび他の動物由来のBMP2、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、Osteopharma社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるBMP2の濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0058

本工程(iii)において、TGFβには、ヒトおよび他の動物由来のTGFβ、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、PeproTech社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるTGFβの濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0059

本工程(iii)において、GDF5には、ヒトおよび他の動物由来のGDF5、ならびにこれらの機能的改変体が包含され、例えば、PeproTech社等の市販されているものを使用することができる。本工程で用いるGDF5の濃度は、0.1 ng/mlから1000 ng/ml、好ましくは、1 ng/mlから100 ng/ml、より好ましくは、5 ng/mlから50 ng/ml、10 ng/mlである。

0060

本工程(iii)において、培養温度は、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは約5%である。本工程の培養時間は、例えば10日以上30日以下の培養であり、好ましくは14日以上28日以下である。

0061

(iv)前記工程(iii)で得られた細胞をさらに浮遊培養する工程
前記工程(iii)により、軟骨細胞を製造することが可能であるが、より成熟した軟骨細胞を得るために、前記工程(iii)で得られた細胞培養物をさらに、浮遊培養してもよい。

0062

本工程(iv)において使用される培養液は、動物細胞の培養に用いられる基礎培地である。基礎培地としては、例えば、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle’s Minimum Essential Medium(EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco’s modified Eagle’s Medium(DMEM)培地、Ham’s F12培地、RPMI1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地などが挙げられる。培地には、血清(例えば、FBS)が含有されていてもよいし、または無血清でもよい。必要に応じて、例えば、アルブミン、トランスフェリン、KnockOut Serum Replacement(KSR)(ES細胞培養時のFBSの血清代替物)(Invitrogen)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(Invitrogen)、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール、3’-チオールグリセロールなどの1つ以上の血清代替物を含んでもよいし、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、GlutaMAX(Invitrogen)、非必須アミノ酸(NEAA)、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などの1つ以上の物質も含有しうる。本工程の1つの実施形態において、基礎培地は、10%血清を含むDMEMである。

0063

本工程(iv)において、培養温度は、特に限定されないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃であり、CO2含有空気の雰囲気下で培養が行われる。CO2濃度は、約2〜5%、好ましくは約5%である。本工程の培養時間は、特に長期にわたることにより軟骨細胞の製造に問題を生じないことから、例えば20日以上の培養期間が例示され、好ましくは28日以上である。

0064

本発明は、上述のとおり多能性幹細胞から誘導された誘導軟骨細胞を提供する。当該誘導軟骨細胞は、以下の(1)から(3)の特徴を有する細胞である;
(1)当該軟骨細胞は、COL2A1遺伝子の発現量が、多能性幹細胞における対応する遺伝子の発現量と比較して、少なくとも100倍であり、
(2)当該軟骨細胞は、SOX9遺伝子の発現量が、多能性幹細胞における対応する遺伝子の発現量と比較して、少なくとも250倍であり、および
(3)当該軟骨細胞は、外来遺伝子が導入されていない(ただし、iPS細胞の製造に用いた外来遺伝子は除く)。

0065

本発明において、COL2A1遺伝子の発現量およびSOX9遺伝子の発現量は、単位細胞あたりのmRNAの量として、当業者に周知の方法によって測定され得る。測定方法としては、RT-PCR法、ノーザンブロット法などが例示され、PCR法は、後述する実施例にて詳細を示す。

0066

本発明の提供する誘導軟骨細胞におけるCOL2A1遺伝子の発現量は、多能性幹細胞の当該遺伝子の発現量と比較して、少なくとも50倍以上、100倍以上、150倍以上、200倍以上、250倍以上、260倍以上、270倍以上、280倍以上、290倍以上、300倍以上、400倍以上、500倍以上、600倍以上、700倍以上、800倍以上、900倍以上、または、1000倍以上でありことが好ましい。より好ましくは、280倍以上である。

0067

本発明の提供する誘導軟骨細胞におけるSOX9遺伝子の発現量は、多能性幹細胞の当該遺伝子の発現量と比較して、少なくとも50倍以上、100倍以上、150倍以上、200倍以上、250倍以上、260倍以上、270倍以上、280倍以上、290倍以上、300倍以上、400倍以上、500倍以上、600倍以上、700倍以上、800倍以上、900倍以上、または、1000倍以上でありことが好ましい。より好ましくは、500倍以上である。
本発明の提供する誘導軟骨細胞は、前記工程(iv)で用いる培養液で培養することができる。培養温度その他条件もまた、前記工程(iv)と同様である。

0068

本発明は、上記の誘導軟骨細胞を培養することによって得られる立体構造を有する軟骨様組織を提供する。当該軟骨様組織は、外膜および当該外膜に内包された内容物から構成されており、当該外膜は、COL1線維を含むが、COL2線維を含まず、当該外膜の厚さが、10μm以上50μm以下であり、当該内容物が、Col11線維、Col2線維、プロテオグリカンおよび前記誘導軟骨細胞を含む。
本発明が提供する軟骨様組織は、直径が0.5mm以上、5mm以下の球状の物質であるが、当該球状の物質を融合することが可能であることから、長径が少なくとも0.5mm以上であれば、特に限定されない。

0069

本発明において、外膜の厚さは、軟骨様組織が生体内の関節にて許容できる力学的強度を有しており、生体内へ移植した際に、当該移植部の組織と癒合ができる限り特に厚さは限定されないが、例えば、10μm以上50μm以下、15μm以上40μm以下、20μm以上30μm以下が挙げられる。外膜の厚さは、軟骨様組織の切片を用意し、COL1に対する抗体で染色したのち、当該染色部分顕微鏡像より測定することができる。測定に用いる切片は、好ましくは、当該軟骨様組織の面積が最大になるよう切断された切片である。外膜の厚さは、一つの軟骨様組織の切片において均一ではない場合、当該切片における最大値を外膜の厚さとすることができる。

0070

本発明において、COL1線維とは、COL1遺伝子によってコードされるタンパク質が3重らせん構造を形成している線維である。
本発明において、COL2線維とは、COL2遺伝子によってコードされるタンパク質が3重らせん構造を形成している線維である。
本発明において、COL11線維とは、COL11遺伝子によってコードされるタンパク質が3重らせん構造を形成している線維である。
本発明において、プロテオグリカンとは、コアタンパク質のアミノ酸であるセリン糖質キシロースガラクトースグルクロン酸)が結合し、コンドロイチン硫酸などの2糖単位で連続する多糖体が結合した化合物である。

0071

本発明では、上述した方法により得られた軟骨細胞を含む医薬品を提供する。患者への医薬品の投与方法としては、例えば、上述の方法により得られた軟骨細胞と産生された細胞外マトリックスから成る培養物(パーティクル)をフィブリン糊で固めて、投与部位に適した大きさの軟骨細胞と産生された細胞外マトリックスから成る培養物として、患者の軟骨欠損部位に投与する方法がある。この他にも、パーティクルをゼラチンゲルおよび/またはコラーゲンゲルおよび/またはヒアルロン酸ゲル等と混合し、患部へ投与する方法、パーティクルを幹部に投与し、骨膜等で固定する方法などが例示される。

0072

本医薬品により治療される疾患として、鼻軟骨耳介軟骨などの顔面軟骨および関節軟骨欠損が例示され、好ましくは、関節軟骨損傷である。

0073

本発明において、本医薬品に含まれるパーティクルの数は、移植片が投与後に生着できれば特に限定されなく、患部の大きさや体躯の大きさに合わせて適宜増減して調製されてもよい。

0074

以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。

0075

ヒトiPS細胞
Nature Methods8, 409-412 (2011)に記載のエピソーマルベクターによる初期化因子導入法を用いてヒト皮膚線維芽細胞から樹立した409B2株、HDF-11株、KF4009-1株、および、ヒト末梢血から樹立した604B1株の合計4株のヒトiPS細胞を以降の実験に用いた。なお、409B2株(Nat Methods. 8, 409-412(2011))および604B1株(Stem Cells. 31, 458-466(2013))は、京都大学iPS細胞研究所より受領した。樹立したiPS細胞は、フィーダー細胞(マイトマイシンC処理を行ったSNL細胞)上に播き直し、ヒトES細胞維持培地を添加した上で維持培養を行った。ヒトES細胞維持培地は、DMEM/F12 (Sigma), 20%KSR(Invitrogen), 2mM L-グルタミン(Invitrogen), 1×10-4M非必須アミノ酸(Invitrogen), 1×10-4M2-メルカプトエタノール(Invitrogen), 50units/mlペニシリン(Invitrogen), 50mg/mlストレプトマイシン(Invitrogen), 4ng/ml bFGF(WAKO)を混合することにより調製した。その後、iPS細胞をマトリゲル(Invitrogen)コートディッシュ上に播種し、Essential 8培地(Life Technologies)に50units/ml ペニシリンおよび50mg/ml ストレプトマイシンを添加した培地を加え、フィーダーフリー環境下で維持培養を行った。フィーダーフリー維持培養を開始して10〜15日目に、1〜2×105細胞から成るコロニーを用いて以下に詳述する軟骨細胞への分化誘導を行った。

0076

RNAの単離と定量リアルタイムRT-PCR
RT-PCRを実施するためのRNAは、所望の細胞からRNeasy Mini Kit (Qiagen)を用いて、カラム内でDNae Iでの消化する条件下で製造業者のプロトコールに従って回収された。パーティクル内の細胞からRNAを回収する場合、モルタル処理によりホモジナイズした後に回収した。テンプレートとして用いるため、全RNAのうち500 ngをReverTra Ace (TOYOBO)を用いてcDNAへ変換した。リアルタイムPCRは、KAPA SYBRFAST qPCR kit Master MixABIprism (KAPA BIOSYSTEMS)を用いてStep One system (ABI)にて行われた。PCRに用いたプライマーを、以下に示す。
プライマー名 配列
ACTB F TGGCACCACACCTTCTACAATGAGC(配列番号:1)
ACTB R GCACAGCTTCTCCTTAATGTCACGC(配列番号:2)
OCT3/4 FGACAACAATGAGAACCTTCA(配列番号:3)
OCT3/4 R TTCTGGCGCCGGTTACAGAA(配列番号:4)
NANOG F CAAAGGCAAACAACCCACTT(配列番号:5)
NANOG R CTGGATGTTCTGGGTCTGGT(配列番号:6)
BRACHYURY FTATGAGCCTCGAATCCACATAGT(配列番号:7)
BRACHYURY R CCTCGTTCTGATAAGCAGTCAC(配列番号:8)
KDR F GGCCCAATAATCAGAGTGGCA(配列番号:9)
KDR R CCAGTGTCATTTCCGATCACTTT(配列番号:10)
SOX5 F CAGCCAGAGTTAGCACAATAGG(配列番号:11)
SOX5 R CTGTTGTTCCCGTCGGAGTT(配列番号:12)
SOX6 F GGATGCAATGACCCAGGATTT(配列番号:13)
SOX6 R TGAATGGTACTGACAAGTGTTGG(配列番号:14)
SOX9 F AGACCTTTGGGCTGCCTTAT(配列番号:15)
SOX9 R TAGCCTCCCTCACTCCAAGA(配列番号:16)
AGGRECAN F TGAGGAGGGCTGGAACAAGTACC(配列番号:17)
AGGRECAN R GGAGGTGGTAATTGCAGGGAACA(配列番号:18)
COL2A1 F TTTCCCAGGTCAAGATGGTC(配列番号:19)
COL2A1 R CTTCAGCACCTGTCTCACCA(配列番号:20)
COL11A2 F TGTGATGACTACGGGGACAA(配列番号:21)
COL11A2 R CCATATTCCTCTGCCTGGAA(配列番号:22)
LUBRICIN F AAAGTCAGCACATCTCCCAAG(配列番号:23)
LUBRICIN R GTGTCTCTTTAGCGGAAGTAGTC(配列番号:24)
IHH F AACTCGCTGGCTATCTCGGT(配列番号:25)
IHH R GCCCTCATAATGCAGGGACT(配列番号:26)
COL10A1 F ATGCTGCCACAAATACCCTTT(配列番号:27)
COL10A1 R GGTAGTGGGCCTTTTATGCCT(配列番号:28)
COL1A1 F GTCGAGGGCCAAGACGAAG(配列番号:29)
COL1A1 R CAGATCACGTCATCGCACAAC(配列番号:30)
COL1A2 F AATTGGAGCTGTTGGTAACGC(配列番号:31)
COL1A2 R CACCAGTAAGGCCGTTTGC(配列番号:32)
OSTEOCALCIN F CACTCCTCGCCCTATTGGC(配列番号:33)
OSTEOCALCIN R CCCTCCTGCTTGGACACAAAG(配列番号:34)
Taqman human ACTB Hs01060665-gl
Taqman mouse Actb Mn00607939-sl
Taqman rat Actb Rn00667869-ml
eGFPCOL11A2 F CATACAATGGGGTACCTTCTGG(配列番号:35)
eGFP COL11A2 R GCATGGACGAGCTGTACAAGTAA(配列番号:36)

0077

軟骨細胞特異的にGFP発現を行うiPS細胞の作製
軟骨細胞特異的Col11a2遺伝子(XI型コラーゲンα2鎖遺伝子)のプロモーター/エンハンサーに結合したトランスジーンのコンストラクト(Col11a2-EGFP-IRES-Puro、図1参照)を含むpiggyBacベクターをヒトiPS細胞に導入した。導入から10日後に、Col11a2遺伝子特異的に緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するレポーターiPS細胞株を選別した。選別されたiPS細胞株へのレポーター遺伝子の組み込みは、RT-PCRにより確認した。選別されたCol11a2遺伝子レポーターiPS細胞をSCIDマウスの皮下に注入することで形成されたテラトーマを採取して組織染色を行ったところ、軟骨、腸管神経組織の形成が確認されたが、特に軟骨細胞特異的な発現を示すこともあわせて確認された(図2)。

0078

軟骨細胞への分化誘導の最適化
上述したフィーダーフリー維持培養を開始して10〜15日目のCol11a2遺伝子レポーターiPS細胞の培地を中胚葉培地(DMEM/F12に対し10ng/ml Wnt3A(R&D), 10ng/mlアクチビンA(R&D), 1%インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム(Invitrogen), 1%牛胎児血清, 50units/mlペニシリン, 50mg/mlストレプトマイシンを混合して調製)に交換して3日間培養を行った(day3)。その後、DMEM/F12に対し1% インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム, 1% FBS, 50units/ml ペニシリン, 50mg/ml ストレプトマイシンを混合した調製溶液へ以下(1)〜(3)に示した各組成の軟骨誘導用添加剤を加え、分化誘導開始から14日目(day14)まで培養を行った。なお、この14日間の培養工程は、全て接着培養法によって行った。また、day3〜day14に増殖を促すために10ng/ml bFGFを加えた。
(1)A: 50μg/mlアスコルビン酸(Nakarai)
(2)ABT: 50μg/mlアスコルビン酸、10ng/ml BMP2(Osteopharma)および10ng/ml TGFβ(Pepro Tech)の混合溶液
(3)ABTG: 50μg/mlアスコルビン酸、10ng/ml BMP2(Osteopharma)、10ng/ml TGFβ(Pepro Tech)および10ng/mlGDF5の混合溶液

0079

day14において、位相差顕微鏡により観察したところ(図4a)、添加剤ABTおよび添加剤ABTGを加えた細胞分化培養の場合には細胞が積層した構造を呈する細胞小塊の形成が認められたが、(1)の条件であるアスコルビン酸のみを加えた場合には小塊の形成は認められなかった。

0080

なお、本明細書において、分化誘導工程において培養期間を示すために使用される「day0」、「day3」、「day10」、「day14」、「day15」、「day21」、「day28」、「day42」、「day52」、「day56」、「day70」、「day140」は、それぞれ、「分化誘導の開始日」、「分化誘導の開始から3日目」、「分化誘導の開始から10日目」、「分化誘導の開始から14日目」、「分化誘導の開始から15日目」、「分化誘導の開始から21日目」、「分化誘導の開始から28日目」、「分化誘導の開始から42日目」、「分化誘導の開始から52日目」、「分化誘導の開始から56日目」、「分化誘導の開始から70日目」、「分化誘導の開始から140日目」を意味する。

0081

分化誘導開始から14日目(day14)に、ディッシュ上の細胞小塊をピペッティングにより剥離し、ペトリ皿上に移し、同じ培地で浮遊培養を行った。細胞小塊は、軟骨細胞外基質(ECM)の作用による接着能低下により安易に剥離が可能であった。このとき培地交換は2〜7日間隔で行った。分化誘導開始から28日目(day28)に、得られたパーティクルのRNAを抽出し、リアルタイムPCRを用いて軟骨細胞マーカー遺伝子の発現量を計測した(図4b)。その結果、軟骨細胞マーカー遺伝子が有意に上昇していたことから、ABTGを添加した軟骨培地を用いることが軟骨細胞誘導に有効であることが示された。分化誘導開始から42日目(day42)に得られたパーティクルを軟骨基質を染色するサフラニンOによって染色し、光学顕微鏡で観察した(図4c)。その結果、ABTG添加培地を用いて培養を行った細胞パーティクルが最も強くサフラニンOにより染色された。

0082

これらの結果から、day3〜day14における接着培養工程、および、day14〜day42における浮遊培養工程において、ABTGを添加剤として用いた培養液が軟骨細胞を得る上で最も効率的であることが判明したため、以降の実験においてABTGを添加剤として用いることにした。

0083

他のヒトiPS細胞株(409B2株、HDF-11株、KF4009-1株、および、604B1株)においても同様のプロトコールにより軟骨細胞の誘導ができることを確認した(day42)。

0084

さらに、従来技術である浮遊培養工程(Micromass形成)で軟骨細胞を誘導する方法(Sci Rep. 3, 1978(2013))と培養day0からday3の中胚葉の誘導工程(Wnt3AおよびアクチビンAを添加した培地で接着培養する工程)を含む本発明のプロトコールの方法により得られた軟骨細胞をRT-PCRにて軟骨細胞マーカー遺伝子を比較したところ、中胚葉誘導工程を含むプロトコールの方が有意にこれらのマーカー遺伝子の発現量が高かった(図5)。この結果から、iPS細胞から中胚葉への誘導工程は、軟骨細胞誘導に有用であることが示された。

0085

パーティクルの評価
図3に記載の細胞分化培養プロトコールにより、iPS細胞を誘導し、day28、day42、day 70およびday140で得られたパーティクルを組織染色により評価した(図6)。なお、day3〜day42に用いた軟骨培地には、DMEM/F12に対し1%インスリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム, 1%牛胎児血清, 50units/mlペニシリン, 50mg/mlストレプトマイシンおよびABTGを添加した調製溶液を用いた。その結果、day28のパーティクルは、サフラニンOでわずかに染色されるECMで包まれていることが確認された(図6a)。day42におけるパーティクルは、サフラニンOにより強く染まったことから、ECMも成熟状態にあることが分かった。ただし、I型コラーゲンとII型コラーゲンのいずれもがECMに含有されていた。一方、day42まで用いた軟骨培地を用いて培養を継続したところ、day70またはday140においては、I型コラーゲンの発現が維持されていたが(図7aおよびb)、day42以降において、軟骨培地をDMEMおよび10% 牛胎児血清のみから組成される通常培地に交換して、培養を続けたところ、day70においてI型コラーゲンの発現が低下し、II型コラーゲンの発現が増大した(図6bおよびc)。ただし、X型コラーゲンの発現は検出限界以下であった。また、パーティクルの表層部は、I型コラーゲンの発現量の増大が確認された。このような変化は、軟骨培地で培養を継続した際には見られなかった。これは、表層部により、パーティクルの内部での硝子軟骨への成熟に寄与するためと考えられる。軟骨細胞に特異的に発現するSOX9を指標としてday56およびday70における、表層部を除くパーティクル内のSOX9陽性の細胞数を調べたところ(図6d)、パーティクル内の軟骨細胞密度はそれぞれ91.8%±0.91%および99.7%±0.2%と時間経過とともに増加することが確認された(図6f)。また、day56でのCOLIIA2-EGFPはほぼ全ての細胞で陽性であることが確認された(図6e)。これらの結果から、パーティクルの三次元構造は、軟骨培地での継続培養を必要としない硝子軟骨の成熟化に重要で効果的であることが示唆された。

0086

浮遊培養による効果
本発明のプロトコールにおいて、day14以降は浮遊培養により行われたが、day14以降においても接着培養を続けたところ、day42においてもほとんど軟骨形成が確認されなかった(図8)。この結果より、浮遊培養は軟骨の成熟化を促進させることが示唆された。ところで、day14において浮遊培養するために細胞を培養皿へ移し培養を継続すると、培養皿の底面は接着した細胞でおおわれる。この培養皿底面の細胞は、紡錘状の形状をしており、COL11A2-EGFPは陰性であった(図9a)。これらの細胞をRT-PCRで測定したところ、軟骨細胞マーカー遺伝子の発現はほとんど確認できなかった(図9b)。従って、所望の軟骨細胞以外の細胞が培養皿へ接着することにより、浮遊培養により軟骨細胞が濃縮されると考えられる。

0087

軟骨細胞の分化誘導工程における経時的観測
本プロトコールは、細胞分化培養の当初から軟骨培地を用いず、生体内での中胚葉から軟骨細胞への発生系模倣するため、day0〜day3においては軟骨培地ではなく中胚葉培地を用いる点を特長とした。そこで、培地の交換と共に、分化培養中のヒトiPS細胞にどのような変化が見られるのか、多能性マーカー、中胚葉マーカーおよび軟骨細胞マーカーを用いて、分化誘導開始から特定日数毎の細胞の経時的観測を行った。観測結果図10aに示す。

0088

day0における観測後、中胚葉培地としてWnt3aおよびアクチビンAを加えたところ、day3の細胞において多能性マーカーの発現量が減少し、初期段階の中胚葉状態に固有のマーカーであるBRACHYURYの発現量が一過的に増加した。続いて、day3に中胚葉培地を軟骨培地に切り替えたところ、day7〜day14にかけてさらに多能性マーカーの発現量が減少し、中胚葉に固有のマーカーであるKDRの発現量がday7において一過的に増加した。さらに培養を継続したパーティクルでは、軟骨細胞または細胞外マトリクスに特異的な指標であるAGGRECAN、COL2A1、LUBRICINなどの発現量が、ポジティブコントロールとして用いた関節軟骨の発現量を上回る現象が見られた。一方、軟骨肥大に係る指標であるIHHおよびCOL10A1の発現は、ポジティブコントロールとして用いた関節軟骨とは異なり殆ど観測されなかった。

0089

一方、各時期において、生細胞数を測定し、経時的な変化を計測した(図10b)。生細胞は、トリパンブルー染色によって計測した。その結果、day0〜day3までの間、培養により細胞分裂が開始しているにも拘らず、細胞数が増加せず、生細胞の減少が確認されることから、この条件では、非中胚葉細胞は死滅して、中胚葉細胞が濃縮されると示唆された。その後細胞数は14日まで増加を続けた。day14において、接着培養から浮遊培養へと変更をするが、本実施例においては、浮遊しているパーティクルの細胞数を計測したため、day14にて細胞数の減少が見られた。全培養工程終了後の生細胞数は、day0におけるヒトiPS細胞の細胞数の約7倍であった。day0におけるヒトiPS細胞の平均細胞数は1.6±0.1×105/35mmディッシュ、day14における平均生存細胞数は9.0±0.72×105/35mmディッシュであった。その内、パーティクルを構成するに至った平均細胞数は4.06±0.04×105であった。この細胞数はday42には10.4±0.2×105に達した。

0090

1ディッシュあたりの平均パーティクル数は14.6±3.96であった。また、パーティクルの平均直径は、day21において0.69±0.2mm、day28において0.8±0.16mm、day42において1.13±0.18mm、day70において1.4±0.47mmであった。

0091

なお、本プロトコールにおいて用いたFBS量は、軟骨細胞が生存維持するための最低量の成長因子を供給する量であるため、本条件下においては非軟骨細胞が死滅し、パーティクルから死滅した非軟骨細胞が離脱したものと考えられる。また、非軟骨細胞は培養皿の底面に蓄積するため、浮遊しているパーティクルのみを抽出すれば、別途ソートを行うことなく純度良く軟骨細胞が得られることとなる。また、接着培養から浮遊培養へと移行する際にも、軟骨細胞は潤滑性があり容易に剥離させることが可能であるのに対し、非軟骨細胞は培養皿底面への接着度が高いため、同工程においても軟骨細胞と非軟骨細胞の接着力の違いに基づき純度良く軟骨細胞が選別することが可能となる。

0092

マウスにおける腫瘍形成の確認
上記により得られたヒトiPS細胞由来の軟骨細胞のin vivo環境下における機能解析のため、SCIDマウスの皮下にday42における軟骨細胞を注入した。注入から12週後に組織化学分析を行ったところ、全6箇所の注入箇所の内4箇所において、軟骨組織の形成が確認された(図11a)。この軟骨組織の内、96.4±0.84%がSOX9陽性細胞であった(図11b)。また、SOX9発現により硝子軟骨の形成が確認された軟骨組織は、I型コラーゲンの発現により表層の形成が認められるものであった。さらに、非ヒト由来ビメンチン抗体を用いて免疫染色を行ったところ、皮下形成組織のうち硝子軟骨部位についてはヒトiPS細胞由来、周囲の膜層についてはマウス由来であることが分かった(図11c)。軟骨細胞を移植したいずれの部位においても、腫瘍の形成は確認されず、また腫瘍形成の兆候となるような組織変化も見られなかった。これらの結果から、ヒトiPS細胞由来の軟骨細胞は、in vivo環境において硝子軟骨を組織形成し、少なくとも12週間は同組織形態を保ち得ることが分かった。

0093

また、SCIDマウスの頸部腹腔腋窩リンパ節鼠径部リンパ節を含む各組織およびリンパ節においてヒトβアクチンmRNAは検出されなかったため、組織転移の可能性も否定された(図11d)。従って、day42におけるヒトiPS細胞由来の軟骨細胞は移植用途に適した細胞であることが示唆された。

0094

in vivoでの長期評価
上述と同様にSCIDマウスの皮下にday42における軟骨細胞を注入し、12ヶ月後に移植部位を取り出し、組織化学分析を行った。その結果、6例全てにおいて、X型コラーゲンの発現により、軟骨の一部が肥大化していることが確認された(図12)。5例において、軟骨の大部分は骨端軟骨様の形態を保ちながら、軟骨の一部が骨様組織に置き換わっていることが確認された。これらの結果により、本方法で得られたヒトiPS細胞由来の細胞は、ゆっくりではあるが、肥大化していることが示唆された。このことは、関節軟骨欠損に移植した場合に、軟骨内骨化に寄与する可能性が想定される。また、移植部位には、12か月後であってもテラトーマやその他腫瘍形成は見られなかった。

実施例

0095

ヒトiPS細胞由来軟骨細胞の移植
SCIDラットの関節軟骨に予め浅い欠損部位を形成しておき、day42におけるヒトiPS細胞由来の軟骨細胞を当該欠損部位に移植した。ラットの関節軟骨に設けられた浅い欠損部位に移植するには、day42における潤滑性を呈する成熟した軟骨細胞パーティクルは適していなかったため、day28における軟骨細胞パーティクルを用いた。その結果、移植を行った全4箇所の膝部位関節の内3箇所において、4週間後も移植細胞が死滅することなく保持されていたことが組織染色により確認できた(図13a)。また、移植先の関節軟骨と移植細胞とが相互に馴染み強く結合していることも確認された(図13b)。さらに、移植から4週間後および12週間後の時点において、全4箇所の移植箇所全てにおいて腫瘍形成が認められず、また、転移の形跡が見られないことを確認した(図13c)。このことから、day28におけるヒトiPS細胞由来の軟骨細胞は移植に適した細胞であることが示唆された。一方、欠損が深い場合は、成熟したday42を用いることが可能であると考えられる。

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