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技術 超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法

出願人 山陽特殊製鋼株式会社
発明者 杉本隼之藤松威史
出願日 2018年8月27日 (2年3ヶ月経過) 出願番号 2018-158484
公開日 2020年3月5日 (9ヶ月経過) 公開番号 2020-034292
状態 未査定
技術分野 機械的応力負荷による材料の強さの調査
主要キーワード 含有状況 疲労サイクル 基準体積 水素拡散係数 水素チャージ後 繰返し速度 破断起点 CAE解析
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

鋼材中低頻度で存在する比較的大型の非金属介在物について、迅速に、低コストかつ精度良く検出することができ、それを利用して鋼中の最大介在物径予測可能介在物評価方法の提供。

解決手段

評価対象鋼材から危険体積400mm3以上の試験片複数本採取し、これらの試験片に水素チャージした後、次いで各試験片に超音波振動による応力負荷して試験片を破断させ、破断された各試験片の破面破壊起点である非金属介在物の直径を測定し、各試験片について測定された非金属介在物径から極値統計分布を求め、この極値統計分布より評価鋼材のより大きな任意の体積中に存在する最大の非金属介在物径を予測する超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法

概要

背景

軸受鋼等に供される高強度鋼では、鋼中に不可避的に含まれる非金属介在物応力集中源とした疲労破壊を生じる場合がある。鋼中の介在物とは、主として鋼の製造工程にて不可避的に生成し、除去されずに残ったものである。そして鋼の高清浄度化を担保するため、前述のような鋼中に存在する介在物の含有状況を精度よく評価する技術が望まれている。

鋼中の介在物を評価する方法としては、様々な方法が提案されており、検鏡による極値統計法を用いて基準体積内の最大介在物径予測する手法(たとえば非特許文献1参照。)や、水素侵入をさせた金属材料製サーボ式疲労試験片を用いた予測方法(たとえば特許文献1参照。)、さらには、超音波疲労試験による予測方法(たとえば特許文献2〜4参照。)などがある。

ところで、鋼中に比較的大型の介在物が存在することは低頻度であることから、鋼中に比較的大型の介在物が含有されていた場合であっても、試験小片には含まれないこととなり、想定よりも短寿命での破損(短寿命はく離)が引き起こされる場合がある。たとえば軸受の短寿命はく離を抑制していくには、鋼中に比較的低頻度で存在する大型介在物の大きさを低減することが有効であるが、その前提として大型介在物の存在を正しく捕捉して鋼の状態を適切に評価しておくことが重要である。

しかしながら、検鏡による極値統計法による評価方法は微視的であるため、短寿命はく離を引き起こす比較的大型の介在物を見つけることは容易な作業でなく、コストもかかるものであった。

そこで、こうした比較的大型の介在物を正しく評価するためには、試験片の危険体積内に大型の介在物が内包される確率を高くするために、試験片の危険体積を大きくとることが重要となる。そして、大きな危険体積で評価可能な試験方法として、油圧式のサーボ式疲労試験法がある。しかしながら、当該試験機応力負荷繰返し速度は20Hz〜1000Hz程度と遅いものであるから、試験片の破断までには非常に長時間を要してしまう。

ところで、超音波疲労試験機を用いた方法では、応力負荷の繰り返し速度が20000Hzと非常に高速であることから、試験片の破断に要する時間は10分以下に短縮されることとなるので、極めて迅速な試験方法となることが期待される。
しかしながら、特許文献2〜4に示される方法のように、実際の試験片をみると、その危険体積が総じて小さいものに限定されてしまっている。たとえば、特許文献2では14.14mm3、特許文献3では33mm3、特許文献4では48.4mm3である。しかしながら、このようなサイズでは、鋼中に低頻度で存在する大型の非金属介在物を評価する方法に用いることは困難であった。

概要

鋼材中に低頻度で存在する比較的大型の非金属介在物について、迅速に、低コストかつ精度良く検出することができ、それを利用して鋼中の最大介在物径が予測可能介在物評価方法の提供。評価対象鋼材から危険体積400mm3以上の試験片を複数本採取し、これらの試験片に水素チャージした後、次いで各試験片に超音波振動による応力負荷して試験片を破断させ、破断された各試験片の破面破壊起点である非金属介在物の直径を測定し、各試験片について測定された非金属介在物径から極値統計分布を求め、この極値統計分布より評価鋼材のより大きな任意の体積中に存在する最大の非金属介在物径を予測する超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法。

目的

そして鋼の高清浄度化を担保するため、前述のような鋼中に存在する介在物の含有状況を精度よく評価する技術が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

評価対象鋼材から危険体積400mm3以上の試験片複数本採取し、これらの試験片に水素チャージした後、次いで各試験片に超音波振動による応力負荷して試験片を破断させ、破断された各試験片の破面破壊起点である非金属介在物の直径を測定し、各試験片について測定された非金属介在物径から極値統計分布を求め、この極値統計分布より評価鋼材のより大きな任意の体積中に存在する最大の非金属介在物径を予測する超音波疲労試験による鋼材中最大介在物径予測方法

請求項2

超音波疲労試験における試験片への負荷応力を550MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。

請求項3

超音波疲労試験における試験片への負荷応力を600MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。

請求項4

超音波疲労試験における試験片への負荷応力を650MPa以上としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法

請求項5

試験片に水素をチャージする手段が、電解溶液中にあって試験片を陰極とした電気分解による電解チャージによるものであって、さらに電解溶液の温度が20℃以上80℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法。

技術分野

0001

本発明は、超音波疲労試験による鋼材中最大介在物径予測方法に関する。

背景技術

0002

軸受鋼等に供される高強度鋼では、鋼中に不可避的に含まれる非金属介在物応力集中源とした疲労破壊を生じる場合がある。鋼中の介在物とは、主として鋼の製造工程にて不可避的に生成し、除去されずに残ったものである。そして鋼の高清浄度化を担保するため、前述のような鋼中に存在する介在物の含有状況を精度よく評価する技術が望まれている。

0003

鋼中の介在物を評価する方法としては、様々な方法が提案されており、検鏡による極値統計法を用いて基準体積内の最大介在物径を予測する手法(たとえば非特許文献1参照。)や、水素侵入をさせた金属材料製サーボ式疲労試験片を用いた予測方法(たとえば特許文献1参照。)、さらには、超音波疲労試験による予測方法(たとえば特許文献2〜4参照。)などがある。

0004

ところで、鋼中に比較的大型の介在物が存在することは低頻度であることから、鋼中に比較的大型の介在物が含有されていた場合であっても、試験小片には含まれないこととなり、想定よりも短寿命での破損(短寿命はく離)が引き起こされる場合がある。たとえば軸受の短寿命はく離を抑制していくには、鋼中に比較的低頻度で存在する大型介在物の大きさを低減することが有効であるが、その前提として大型介在物の存在を正しく捕捉して鋼の状態を適切に評価しておくことが重要である。

0005

しかしながら、検鏡による極値統計法による評価方法は微視的であるため、短寿命はく離を引き起こす比較的大型の介在物を見つけることは容易な作業でなく、コストもかかるものであった。

0006

そこで、こうした比較的大型の介在物を正しく評価するためには、試験片の危険体積内に大型の介在物が内包される確率を高くするために、試験片の危険体積を大きくとることが重要となる。そして、大きな危険体積で評価可能な試験方法として、油圧式のサーボ式疲労試験法がある。しかしながら、当該試験機応力負荷繰返し速度は20Hz〜1000Hz程度と遅いものであるから、試験片の破断までには非常に長時間を要してしまう。

0007

ところで、超音波疲労試験機を用いた方法では、応力負荷の繰り返し速度が20000Hzと非常に高速であることから、試験片の破断に要する時間は10分以下に短縮されることとなるので、極めて迅速な試験方法となることが期待される。
しかしながら、特許文献2〜4に示される方法のように、実際の試験片をみると、その危険体積が総じて小さいものに限定されてしまっている。たとえば、特許文献2では14.14mm3、特許文献3では33mm3、特許文献4では48.4mm3である。しかしながら、このようなサイズでは、鋼中に低頻度で存在する大型の非金属介在物を評価する方法に用いることは困難であった。

0008

特開2010−217076号公報
特開2009−281738号公報
特許第3944568号公報
特開2012−73059号公報

先行技術

0009

上敬宜,「金属疲労微小欠陥と介在物の影響」,養賢堂P112〜124,(1993).
R.Takahashi; M.Shibuya. The maximum of planar sections of random spheares and its application to metallurgy. Annals of the Institute of Statistical Mathematics, Vol.48, No.1, P.127-144 (1998)
R.Takahashi; M.Shibuya. Prediction of maximum size in Wickesell's corpuscle problem. Annals of the Institute of Statistical Mathematics, Vol.50, No.2, P.361-377 (1998)

発明が解決しようとする課題

0010

上述のとおり、比較的大型の介在物が混入していると、想定外に早期の短寿命はく離を起こすことがある。しかし、大型の介在物が混入している含有状況を的確に把握したり予測することは容易とはいえない。
既存の試験で精度を高めようとすると、試験結果を得るまでに長時間を要するものであったりして迅速に実施できなかった。たとえば、特許文献1に示された方法によると、長時間を要するところ、試験片へ水素侵入させることで、水素脆化によって寿命を促進させれば、試験の短時間化を図ることができることとなる。もっとも、そのような促進策をとったところで、試験片の破断までには数時間を要することとなり、依然として時間を要することから、さらに端的に結果が得られるような、試験の迅速化が望まれている。

0011

また、超音波試験機が付与できる超音波の出力には限りがあることから、単に試験片を大きくしたところで、今度は負荷することのできる最大応力負荷応力)が小さくなるので、試験片が破断できなくなってしまうこととなり、測定そのものが困難となってしまう。

0012

すると、試験片のサイズを小さくせざるを得ないこととなるが、試験片の危険体積が小さすぎると、迅速に試験はできるものの、低頻度でしか存在しない比較的大型の介在物を適切に捕捉することができなくなるので、不十分な試験結果に基づく以上、鋼全体での状況を予測しようとしても的確な推測が困難となってしまう。そこで、実用の所定の部品のサイズの鋼中全体に含有されるであろう非金属介在物径を適切に予測することが困難となってしまう。

0013

そこで、本発明が解決しようとする課題は、迅速かつ低コストでありながら、試験片を用いて、試験片体積よりも大きな体積中の比較的大型の鋼中非金属介在物を精度よく評価する方法を提供すること、すなわち、大きなサイズの試験片を用いつつも、超音波疲労試験によって迅速に大きな試験片を破断させ、得られた結果を統計的に解析することで個々の試験片体積よりも大きな鋼材に含有する非金属介在物径を適切に推測評価しうる方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0014

本発明者は、従来は、超音波疲労試験片の危険体積が14.14mm3〜48.4mm3程度であったものを、たとえば770mm3といったサイズへと大幅に増大したものを用いることで、従来困難であった、低頻度に存在する比較的大型な介在物の存在を捕捉容易とすることができ、超音波疲労試験片として有用であることを見出した。なお、試験片1本あたりの評価対象部位の体積を危険体積といい、試験片を複数本測定した場合の各危険体積の合計を評価体積という。この評価体積に基づいて推定したい鋼材の体積が予測体積である。

0015

もっとも、超音波疲労試験機には最大出力上の制約があることから、試験片を単純に大型化しても破断できず測定ができない。すなわち、試験片が大型化すると、それに伴って試験片に負荷することができる最大応力(負荷応力)は小さくなるため、そのままでは破損させることができないのである。

0016

そこで本発明者は、さらに大型化した試験片にあらかじめ水素チャージを行うことで、鋼材の水素脆化を利用することとし、これにより試験片のサイズが大型化して負荷できる応力が低応力となった場合であっても、短時間で介在物起点試験片を破断させうることを見出した。

0017

すなわち、こうした通常では破断しない大きなサイズの試験片を用いつつ、水素チャージによる水素脆化を利用することで、従来は、既存の超音波疲労試験機では破断させる測定手法が適用困難であった大型のサイズの試験片を、超音波疲労試験機によって短時間で破断する方法を用いて試験を実施し、そして、得られた超音波疲労試験片の破面上に現出した破断の起点となった非金属介在物径に基づき、極値統計法を適用することで、本発明者は、迅速かつ低コストにて、従来技術では精度の良い推定が不可能なほどの大体積中に存在しうる最大非金属介在物径を予測することができることを見出した。

0018

そこで、本発明の課題を解決するための第1の手段は、評価対象の鋼材から危険体積400mm3以上の試験片を複数本採取し、これらの試験片に水素をチャージした後、次いで各試験片に超音波振動による応力を負荷して試験片を破断させ、破断された各試験片の破面の破壊起点である非金属介在物の直径を測定し、各試験片について測定された非金属介在物径から極値統計分布を求め、この極値統計分布より評価鋼材のより大きな任意の体積中に存在する最大の非金属介在物径を予測する超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。
なお、ここでの試験片1個あたりの危険体積とは、図2に示すような平行部を設けた超音波疲労試験片においては、試験片中央部の平行部の体積を指す。試験片中央部が平行部ではなくテーパー状部である場合も、試験片の負荷応力の90%以上が作用する領域の体積を危険体積とする。

0019

第2の手段は、超音波疲労試験における試験片への負荷応力を550MPa以上としたことを特徴とする第1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。

0020

第3の手段は、超音波疲労試験における試験片への負荷応力を600MPa以上としたことを特徴とする第1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。

0021

第4の手段は、超音波疲労試験における試験片への負荷応力を650MPa以上としたことを特徴とする第1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。

0022

第5の手段は、試験片に水素をチャージする手段が、電解溶液中にあって試験片を陰極とした電気分解による電解チャージによるものであって、さらに電解溶液の温度が20℃以上80℃以下であることを特徴とする第1〜第4のいずれか1の手段に記載の超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法である。
なお、電解溶液の温度が高くなると、後述するように水素チャージによって試験片にチャージされる水素量を増加させることができる。

発明の効果

0023

本発明の供する予測方法、すなわち、試験片を超音波疲労試験することで、評価鋼材のより大きな任意の体積中に存在する最大の非金属介在物径を予測する手順を含んでなる超音波疲労試験による鋼材中の最大介在物径の予測方法によると、試験片中にあらかじめ水素チャージを行うことで鋼材の水素脆化によって比較的大型の試験片であっても破断応力を低下させることが可能であることから、超音波疲労試験によって通常は破断できない大きな試験片であっても小さい負荷応力で短時間に破断させることができるので、試験片のサイズを大きくすることができる。

0024

すると、破断が困難であり超音波疲労試験に用いることができなかった大きな危険体積を有する試験片であっても破壊疲労試験に供することができるので、試験片に基づいて、実際の鋼中における介在物の状況をより適切に推測しうるものとなる。そこで、本発明の方法によると、従来は試験できずに見落とされていた鋼中に含まれる比較的大型な非金属介在物の径が予測できることとなるので、超音波疲労試験によって試験片よりも大きな体積の鋼材中に含有される最大の非金属介在物径を精度良く予測し、評価することができる。

0025

また、超音波疲労試験において試験片に負荷する応力をより高めていくと、水素チャージと相俟ってより短時間で迅速に試験片を破断させることができる。そこで、より効率的に評価鋼材の試験片体積よりもより大きな任意の体積中に存在する最大の非金属介在物径を短時間でより迅速に適切に予測することができる。
なお、負荷応力を高めていくと発熱しやすくなる鋼材もあるので、出力を上昇させることが難しい場合であっても、水素チャージによって出力(負荷応力)を高めすぎることなく試験片を破断させることができるので、迅速性を犠牲にしすぎることなく低出力で試験を行うことができる。

0026

また、水素チャージを、試験片を陰極とした電気分解による電解チャージとし、さらに電解液温度を高くすることで試験片への水素チャージ量を増やすことができる。そこで、水素脆化によってより迅速かつ低コストで試験片を破断させることができる。すると、評価鋼材中に存在する、従来は見落とされていた比較的大型な非金属介在物を迅速に捉えることができるようになるので、破断起点となった非金属介在物径から、極値統計法によって、試験片よりも大きな任意の体積中に含まれるであろう最大の非金属介在物径を精度良く推測することができることとなり、より安定して評価ができる。

図面の簡単な説明

0027

本発明の方法の実施工程を示したフローチャートである。
実施形態の試験片の形状の一例を示す図である。
実施形態の試験片の水素チャージの有無または水素チャージの際の電解溶液温度によって試験片破断までに要する疲労サイクル数を示す図である。
超音波疲労試験後に破断した試験片破面を示す、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像した二次電子像である。
図4で破壊起点として現出した介在物部分を拡大し、SEMで撮像した二次電子像である。
本発明における実施例より得られた非金属介在物の寸法データを極値統計法によって解析した極値統計グラフである。
図6で示された寸法データに加えて、検鏡法および本発明よりも小サイズの試験片を用いた超音波疲労試験によって得られた非金属介在物の寸法データを、極値統計法によって解析し、それらを1図上に重ねて示した極値統計グラフである。

実施例

0028

本発明に係る実施の形態の一例を、図1に示す試験方法のフローチャートに沿って、順に説明する。なお、この実施例では軸受鋼のSUJ2鋼を評価鋼材の代表例として用いて説明する。もちろん本発明の測定方法鋼種の対象を特段限定するものではないので、他の鋼材においても鋼材の特質に合わせて試験片を測定し、鋼中の介在物径を適切に予測することができる。

0029

(工程A:超音波疲労試験片の採取と調整について)
超音波疲労試験片の作製にあたっては、評価対象の鋼材について、適切な熱処理を実施した後、一例として図2に所望されるような試験片形状へと粗加工を実施する。その後、適切な焼入焼戻しを施した後、仕上げ加工をして試験片とする。こうした試験片を複数本、たとえば10本程度作製する。
なお、試験片は評価対象となる危険体積を可能な限り増やす意図から、図2に示すように試験片中央部に平行部を設けたものが好ましい。もっとも、試験片中央部が平行部ではなくテーパー状部であってもよく、その場合の危険体積は試験片の負荷応力の90%以上が作用する領域の体積とする。こうした試験片への負荷応力はCAE解析で合理的に推定することができる。

0030

0031

仕上げ加工された試験片は、その共振周波数が試験に供する試験機の発振周波数(たとえば以下では20000Hzであることを前提に説明する。)を満たしている必要があるため、試験に際しては、事前に加工された試験片の共振周波数を確認し、適宜調整する。
20000Hzの超音波試験機であれば、試験片の共振周波数は20000Hz±200Hz以内であることが望ましく、さらには、20000Hz±30Hz以内であることが望ましい。試験片の共振周波数が望ましい範囲内にない場合は、試験片長さを調節することで望ましい共振周波数の範囲内となるように適宜調整する。

0032

(工程A:具体例)
実施例で用いた超音波疲労試験は、SUJ2鋼のφ65mm圧延材を評価対象の鋼材とした。まず、焼ならしならびに球状化焼きなましとして、865℃にて1時間保持空冷し、その後最高点加熱温度を800℃とし、その温度にて保持後に徐冷を行った。そこから、図2に示す試験片形状へと粗加工を施した。粗加工された試験片は焼入焼戻し(835℃,30min.保持→油冷(O.Q.)→180℃,1.5h.保持→空冷(A.C.))処理を行った後、さらに仕上げ加工した。

0033

なお、今回用いた超音波疲労試験機の共振周波数は20000Hz±500Hzである。実施例として作製された試験片の共振周波数は19980Hzであり、前述の条件を満たしていることを確認した。
比較試験1)

0034

ところで、超音波疲労試験機の定格出力に対して、試験片のサイズを大きくして危険体積を増大させると、試験片へと負荷できる最大応力は危険体積の大きさに伴って低下することとなる。たとえば実施例での試験に供した超音波疲労試験機に図2に示されるような形状の試験片を適用すると、試験片へと負荷できる最大応力は870MPaとなる。

0035

そこで、比較試験1として、試験片に対して最大応力に近い840MPaの試験応力にて超音波疲労試験を行った。しかし、5.0×109サイクル経過後でも試験片は破断に至らなかった。後述のように、この試験は超音波発振休止を繰り返す間欠試験であるから、5.0×109サイクルとは、6.75日の試験時間に相当する。すなわち、約1週間かけても、図2の試験片を超音波試験機では破断させることができなかった。試験片を破断できなければ、その後の解析によって評価鋼材中の非金属介在物径を予測することができない。

0036

そこで、図2のような大きさサイズの試験片では、超音波試験機で付与できる負荷応力が小さくなり、破断に至りにくく、超音波試験機でありながら、試験時間が長期となりで試験効率極端に下がってしまうので、大きなサイズの試験片では実効性が低いことが明らかとなった。

0037

(工程B:試験片への水素チャージ方法
そこで、超音波疲労試験にて大型の試験片(前述の図2の試験片)をより迅速に破断させるために、試験片への水素チャージによる水素脆化によって試験片の破断応力を低下させることとする。

0038

試験片への水素チャージ方法としては、種々の電解液に浸漬させる方法、高圧水素ガス中暴露する方法、さらには電解液中にて試験片を陰極とした電気分解を実施する方法等が適用でき、試験片への水素チャージ方法は特に限定されるものではない。
たとえば、水素チャージは試験片を陰極とする電機分解によるものとし、純粋に3%塩化ナトリウム+0.3%チオシアン酸アンモニウムを添加した電解液を用い、試験片を陰極として電気分解する陰極チャージ法を行う。

0039

また、鋼中への水素拡散係数温度依存性を示すことから、電解液温度を高くすることで水素チャージを高効率化することができる。そこで、電解液を例えば室温よりも高い温度としてもよく、水素チャージが容易に調整できる。

0040

(工程B:具体例)
水素脆化によって試験片の破断応力を低下させるに十分な水素量を鋼中へとチャージするため、前述の電解液を用いた陰極チャージ法にて、24時間の連続した水素チャージを行った。試験片に流れる平均電流密度は1.0mA/cm2となるように設定した。

0041

試験片への水素チャージにおける電解液温度を、25℃または50℃の2通りに設定し、水素チャージの結果をガスクロマトグラフによる昇温脱離分析より測定した。試験片への水素チャージは、電解液温度が25℃のときは3.5wt・ppm、50℃のときは6.8wt・ppmとなり、電解液温度を高くすることで水素チャージ量を増やせることが確認された。

0042

(工程C:超音波疲労試験について)
試験片にチャージされた水素は、試験片を大気中へと取り出した後は徐々に放出されるため、水素チャージ後は速やかに超音波疲労試験へと供することが望ましい。そこで、水素チャージ後に行う超音波疲労試験について説明する。

0043

超音波疲労試験は、試験片に対して超音波振動により引張・圧縮の繰返し軸加重を負荷する超音波試験機を用いるところ、試験片に連続して超音波による加振を行うと、引張と圧縮の高速繰返しによる摩擦熱によって試験片が発熱することが知られている。そのため、適切な試験を実施するためには、必要に応じて例えばチラーで冷却した圧縮エアーを試験片に吹き付けることによる冷却ならびに、超音波の発振と停止を繰返す、間欠運転によって発熱を抑えるなどをすることが望ましい。

0044

さらに、硬度の低い鋼材においては、試験時の摩擦力が大きくなることから発熱しやすくなる。すなわち、迅速化しようと単純に超音波疲労試験機の最大応力を負荷することはできない場合があり、発熱等を考慮すると、試験に用いる応力は必ずしも大きくできないので、試験片の硬さに応じ、すなわち評価鋼材の種類に応じ、試験応力を適切に選定する必要がある。

0045

(工程C:具体例)
本実施例で試験に供したSUJ2鋼(硬さ720HV)では、冷却を考慮して、圧縮エアーの吹きつけ、ならびに0.11secの超音波加振と0.40secの停止を繰返す間欠運転によって、負荷応力840MPaにおいても過度に発熱させることなく適切に試験をすることができた。

0046

図3は、試験片に対する水素チャージの有無または水素チャージの際の溶液温度によって試験片が破断するまでに要する疲労サイクル数の違いを示す図である。前述のとおり、水素チャージを実施しない場合、試験片が破断することはなかった。他方、試験片に水素チャージをすることで破断応力は大きく低下したことから、840MPaのみならず、750MPaや、さらにより低い負荷応力においても、試験片を破断させることが可能であった。たとえば、図3における試験片の破断寿命は、負荷応力660Mpaのときは、4.89×106サイクルであり、負荷応力620MPaのときは、9.05×106サイクルであり、水素チャージなしには破断が困難であった低い負荷応力を用いた場合であっても、合理的な時間で試験片を破断しうることが確認されている。

0047

さらに、水素チャージを実施する際の電解液温度を25℃から50℃とすることで、鋼中への水素侵入量は3.5wt・ppmから6.8wt・ppmへと増加していることが、ガスクロマトグラフを用いた昇温脱離分析法から明らかとなっている。そして、水素侵入量の増加に対して試験片の破断までに要するサイクル数が短くなる傾向も認められることから、水素チャージの際の電解液を高温とすることは、超音波疲労試験の迅速化に有効といえる。

0048

また評価鋼材をSCM420鋼(硬さ420HV)に代えて超音波疲労試験をした。もっとも、SCM420鋼では、負荷応力750MPaとやや出力を抑えた場合であっても、SUJ2鋼の時と同様の冷却を実施しただけでは試験片の発熱が顕著に認められた。前述のとおり、評価鋼材の硬さに応じ、より低い負荷応力で試験を実施することが必要であり、SCM420では、さらに出力を抑えて最大710MPaの負荷応力とすることで、発熱を抑え、試験を遂行することができる。

0049

(工程D:SEM観察による破壊起点となった介在物の確認について)
試験片の破壊起点となった非金属介在物(起点介在物)の確認は走査型電子顕微鏡(SEM)によって行う。破壊起点となっている非金属介在物の組成は、エネルギー分散X線分光器(EDS)により得られた特性X線に基づいて分析する。また、介在物径の測定は投影面積平方根(√area)として求める。

0050

(工程D:具体例)
図4は、超音波疲労試験後の試験片の破面を撮影したSEM画像である。その破壊形態は、図中の破線の領域で示されるような試験片内部の非金属介在物を起点としたフィッシュアイ模様を呈していた。

0051

図5図4の中で示される破線の領域中から破壊起点となった非金属介在物を拡大したSEM画像である。EDSによる元素分析より、この場合の起点介在物はCaO−Al2O3、CaS系からなる酸化物であった。また、非金属介在物直径の測定は、投影面積の平方根(√area)として求めた。

0052

(工程Eおよび工程F:測定された非金属介在物径を基にした極値統計評価について)
評価鋼材より作成された複数の試験片について超音波疲労試験を行い、それぞれの試験片破面から観察された破壊起点となった介在物径のデータを極値統計法によって解析し、任意の鋼材の体積中に含まれる最大介在物径を推定する。

0053

(工程Eおよび工程F:具体例)
表1に、試験に供した11本の試験片の結果を示す。なお、試験応力は破断までに要する試験時間と関係があるものの、応力の違いは現出する介在物径には影響を与えていない。
また、図6に得られた11本の試験片破面から観察された破壊起点となった起点介在物の非金属介在物径のデータをもとにした、極値統計解析によって得られた極値統計グラフを示す。なお、極値統計プロット近似曲線は、最小二乗近似によって求めた。

0054

極値統計グラフにおける基準化変数(Y)はY=−ln(−ln(F))であらわされる数値であり、この時のFは基準化係数を表す。基準化係数FはF=(T−1)/Tで表され、Tは再帰期間を表す。さらに再帰期間Tは、T=(V+V0)/V0であらわされる。ここでVは推定したい鋼材の体積であり、V0は試験片1本あたりの危険体積である。

0055

一例を示すと、再帰期間を300、すなわち試験片300個分に相当する体積(231000mm3)の鋼中に存在する非金属介在物径は、図6にも示されるように、最大で68μmと推定される。この予測体積(推定したい鋼材の体積)は、目的に応じて選択されるものであって、ここで例示した試験片300個分相当の体積のみに限定されるものではない。

0056

対比として、試験片のサイズを危険体積が33mm3に変更して実施した超音波疲労試験から得られた極値統計解析結果と検鏡法による極値統計解析結果を比較例として合わせて図7に示す。

0057

図7は、検鏡法による極値統計分布を基準としてデータを重ねたものであるが、検鏡法は二次元的な検査であるため、検査基準面積に対して、測定された介在物径の平均値を、評価した試験片の厚みと仮定して、そこから近似的に評価基準体積を求めることにより3次元的な検査とみなしている。

0058

さて、図7に示されるように、従来技術よりも危険体積を大幅に増大させた試験片を用いることで、評価体積が8700mm3(本比較例での検鏡法における1試験片あたりの評価体積0.8mm3相当である場合の基準化変数8.0に相当)を上回るような大体積を評価する場合には、図7グラフから、より大きな非金属介在物径の存在が予測できていることが明らかである。そこで、これまで推定が困難であった、より大体積の鋼中における最大介在物径を、大きな試験片を用いることで、精度よく、安定して推定できることが示された。

0059

以上のように、比較的大きな試験片を測定するには、負荷応力が不足して破断しにくかった超音波疲労試験機を用いる場合でも、本発明によると、あらかじめ試験片に水素チャージすることで水素脆化によって破断しやすくなるので、試験機の出力を高めたり試験機を大型化することなしに、大きな試験片に付与しうる負荷応力のみでもって迅速に破断させることができる。そこで、本発明の方法によると、通常出力の超音波疲労試験機でもって迅速に測定ができるので、比較的大きな試験片を用いることによって、より大体積の鋼中における最大介在物径を精度よく推定することができる。

0060

1試験片
2 危険体積部分測定部位

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