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図面 (20)

課題

本発明は、従来技術よりも優れた気分障害新規診断方法および/または治療方法を提供することを課題とする。

解決手段

本発明は、抗SITH−1抗体及び抗HHV−6抗体の抗体レベル指標とした、気分障害の診断方法および/または治療方法を提供することにより、上記課題を解決する。

概要

背景

気分障害は、うつ病躁うつ病に代表される精神障害であり、近年増加傾向にあって大きな社会問題となっている。気分障害の治療の基本は薬物療法であり、三環系抗うつ薬選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが用いられている。

ヒトヘルペスウイルス−6(HHV;human herpesvirus)は、AIDS患者末梢血から見出されたウイルスで、ヘルペスウイルスβ亜科に属する。HHV−6にはHHV−6バリアントA(HHV−6A)とHHV−6 バリアントB(HHV−6B)の2つのバリアントが存在する。HHV−6Bは、乳幼児期にほとんどのヒトが初感染し、発症した場合は突発性発疹となる。HHV−6Bは、初感染の急性期において、非常に高率で脳内に移行して潜伏感染を生じ、それが成人となった後も維持される(非特許文献1)。なお、潜伏感染とは、ウイルスが宿主細胞内で感染性ウイルス粒子を産生せずに存続し続ける感染状態をいう。HHV−6Bは、脳内では主として前頭葉海馬領域などのグリア細胞に潜伏感染していることが示唆されている(非特許文献2および3)。また、HHV−6は末梢血中のマクロファージにも潜伏感染しており、日常生活の疲労等により再活性化して唾液中に放出される(特許文献1)。

HHV−6の潜伏感染状態には、ウイルス産生は全く行われないが、比較的安定で遺伝子発現活発な状態である「中間段階(intermediate stage)」が存在することが知られており、中間段階で発現するタンパク質としてSmall protein encoded by the Intermediate stage Transcript of HHV−6−1(以下、「SITH−1」と称する)が同定されている(特許文献2)。このSITH−1に対する抗体が、うつ病などの気分障害患者から特異的に検出されることから、被験者検体中の抗SITH−1抗体を検出・測定することを特徴とする気分障害の診断方法が開発されている(同上)。また、グリア細胞特異的発現プロモーターを連結したSITH−1遺伝子を、アデノウイルスベクターを用いてマウスの脳内に導入し、発現させたところ、マウスが精神疾患様の行動異常を起こすことが示されている(同上)。

概要

本発明は、従来技術よりも優れた気分障害の新規な診断方法および/または治療方法を提供することを課題とする。本発明は、抗SITH−1抗体及び抗HHV−6抗体の抗体レベル指標とした、気分障害の診断方法および/または治療方法を提供することにより、上記課題を解決する。なし

目的

特に、気分障害の診断や治療においては、更なる診断方法や治療方法の開発が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

嗅上皮細胞にSITH−1遺伝子を導入してなる形質転換嗅上皮細胞。

請求項2

嗅上皮細胞にSITH−1遺伝子を導入してなることを特徴とする気分障害モデル動物

請求項3

気分障害治療薬候補物質スクリーニングするスクリーニング方法であって、請求項2に記載の気分障害モデル動物に被験物質を与える工程と、上記気分障害モデル動物の(a)行動異常試験(b)ストレス脆弱性試験(c)嗅球アポトーシス検出試験(d)視床下部異常検出試験(e)脳ストレス因子の異常検出試験の少なくとも1つを指標として、上記被験物質が気分障害治療薬の候補物質であると判定する工程、とを備えることを特徴とする前記スクリーニング方法。

技術分野

0001

本発明は、気分障害診断治療又は予防する方法に関し、具体的には、特定の遺伝子を指標とした気分障害の新規の診断、治療又は予防する方法に関するものである。

背景技術

0002

気分障害は、うつ病躁うつ病に代表される精神障害であり、近年増加傾向にあって大きな社会問題となっている。気分障害の治療の基本は薬物療法であり、三環系抗うつ薬選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが用いられている。

0003

ヒトヘルペスウイルス−6(HHV;human herpesvirus)は、AIDS患者末梢血から見出されたウイルスで、ヘルペスウイルスβ亜科に属する。HHV−6にはHHV−6バリアントA(HHV−6A)とHHV−6 バリアントB(HHV−6B)の2つのバリアントが存在する。HHV−6Bは、乳幼児期にほとんどのヒトが初感染し、発症した場合は突発性発疹となる。HHV−6Bは、初感染の急性期において、非常に高率で脳内に移行して潜伏感染を生じ、それが成人となった後も維持される(非特許文献1)。なお、潜伏感染とは、ウイルスが宿主細胞内で感染性ウイルス粒子を産生せずに存続し続ける感染状態をいう。HHV−6Bは、脳内では主として前頭葉海馬領域などのグリア細胞に潜伏感染していることが示唆されている(非特許文献2および3)。また、HHV−6は末梢血中のマクロファージにも潜伏感染しており、日常生活の疲労等により再活性化して唾液中に放出される(特許文献1)。

0004

HHV−6の潜伏感染状態には、ウイルス産生は全く行われないが、比較的安定で遺伝子発現活発な状態である「中間段階(intermediate stage)」が存在することが知られており、中間段階で発現するタンパク質としてSmall protein encoded by the Intermediate stage Transcript of HHV−6−1(以下、「SITH−1」と称する)が同定されている(特許文献2)。このSITH−1に対する抗体が、うつ病などの気分障害患者から特異的に検出されることから、被験者検体中の抗SITH−1抗体を検出・測定することを特徴とする気分障害の診断方法が開発されている(同上)。また、グリア細胞特異的発現プロモーターを連結したSITH−1遺伝子を、アデノウイルスベクターを用いてマウスの脳内に導入し、発現させたところ、マウスが精神疾患様の行動異常を起こすことが示されている(同上)。

0005

日本国特許第4218842号
日本国特許第4920084号

先行技術

0006

Kondo K et al., J infect Dis, 167:1197-1200, 1993
Tuke et al., Multiple Sclerosis, 10: 355-359, 2004
Donati et al., Journal of Virology Vol. 79, No. 15:9439-9448, 2005

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、気分障害発症のメカニズムは未だ十分に解明されているとはいえない。特に、気分障害の診断や治療においては、更なる診断方法や治療方法の開発が望まれている。

0008

したがって、本発明は、従来技術よりも優れた気分障害の新規な診断方法および/または治療方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記の課題を解決するべく、従来技術よりも高い感度特異度で気分障害を診断および/または治療する方法について、鋭意検討を重ねた。その結果、生物学的試料中における特定の抗体のレベルを測定することにより、高感度かつ高特異度で気分障害を診断および/または治療することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。

0010

すなわち、本発明は以下の発明を包含する。

0011

[1]被験者が気分障害を有するか否かを診断するためのデータ取得方法であって、
該被験者から分離された生物学的試料中において、抗SITH−1抗体の抗体レベルを検出する検出過程、及び
該被験者から分離された生物学的試料中において、抗HHV−6抗体の抗体レベルを検出する検出過程、
を含むことを特徴とする診断のためのデータ取得方法。

0012

[2]被験者が気分障害を有しているか否かを診断する診断方法であって、
該被験者から分離された生物学的試料中の抗SITH−1抗体レベルを測定した結果、その値が高く、かつ、
該被験者から分離された生物学的試料中の抗HHV−6抗体レベルを測定した結果、その値が低い場合に、該被験者が気分障害を有していると診断する方法。

0013

[3][2]に記載の診断方法を行うための診断キット

0014

[4]被験者の嗅上皮細胞へのHHV−6感染を抑制することを特徴とする気分障害の治療方法。

0015

[5]被験者にHHV−6感染阻害剤投与することを特徴とする気分障害の治療方法。

0016

[6]被験者から分離された生物学的試料中の抗SITH−1抗体レベルを測定した結果、その値が高い被験者に、HHV−6感染阻害剤を投与することを特徴とする気分障害の治療方法。

0017

[7][2]に記載の方法により気分障害を有していると診断された被験者に、HHV−6感染阻害剤を投与することを特徴とする気分障害の治療方法。

0018

[8]被験者の嗅上皮細胞にHHV−6感染阻害剤を投与することを特徴とする[6]又は[7]に記載の気分障害の治療方法。

0019

[9]被験者から分離された生物学的試料中の抗HHV−6抗体レベルを測定した結果、その値が低い被験者に対し、HHV−6感染阻害剤を投与することを特徴とする、気分障害の治療方法。

0020

[10]被験者の嗅上皮細胞へHHV−6感染阻害剤を投与することを特徴とする、[9]に記載の治療方法。

0021

[11]HHV−6感染阻害剤を含むことを特徴とする気分障害治療剤

0022

[12]嗅上皮細胞にSITH−1遺伝子を導入してなる形質転換嗅上皮細胞。

0023

[13]嗅上皮細胞にSITH−1遺伝子を導入してなることを特徴とする気分障害モデル動物

0024

[14]気分障害治療薬候補物質スクリーニングするスクリーニング方法であって、
[13]に記載の気分障害モデル動物に被験物質を与える工程と、
上記気分障害モデル動物の
(a)行動異常試験
(b)ストレス脆弱性試験
(c)嗅球アポトーシス検出試験
(d)視床下部異常検出試験
(e)脳ストレス因子の異常検出試験
の少なくとも1つを指標として、上記被験物質が気分障害治療薬の候補物質であると判定する工程、
とを備えることを特徴とする前記スクリーニング方法。

発明の効果

0025

本発明は、気分障害に関与する特定の遺伝子を指標とすることにより、従来技術よりも高い感度と特異度で被験者が気分障害か否かを診断することができる。本発明はまた、気分障害に関与するウイルスの嗅上皮への感染を阻害することにより、あるいは、当該ウイルスが発現する気分障害に関与する特定の遺伝子が引き起こす障害対処することにより、被験者の気分障害を有効に治療または予防することができる。また、本発明の気分障害モデル動物は、嗅覚系細胞の障害、視床下部の異常、脳ストレス応答因子の異常発現およびストレス脆弱性を示すという優れた特性を有する。本発明はさらに、気分障害に関与する特定の遺伝子を導入した気分障害モデル動物を用いることにより、気分障害の候補物質を効率的にスクリーニングすることができる。

図面の簡単な説明

0026

図1は、尾懸垂試験における無動時間の結果を示す。(A)empty/Adv鼻腔投与マウス30匹とSITH−1/Adv鼻腔投与マウス30匹の尾懸垂試験を10分間実施し、無動時間を比較した結果を示す図である。(B)SITH−1/Adv鼻腔投与前2週間からSSRIを投与したマウス21匹の尾懸垂試験を10分間実施し、無動時間を比較した結果を示す図である(SITH−1/Adv−SSRI)。
図2は、脳内におけるうつ病関連因子の遺伝子発現の結果を示す。(A)CRH遺伝子の結果を示す図である。(B)REDD1遺伝子の結果を示す図である。(C)Urocortin遺伝子の結果を示す図である。
図3は、嗅球におけるアポトーシス関連因子の遺伝子発現の結果を示す。(A)アポトーシス抑制因子Bcl−2の遺伝子発現の結果を示す図である。(B)アポトーシス促進因子Baxの遺伝子発現の結果を示す図である。(C)アポトーシス指標Bax/Bcl−2比を示す図である。
図4は、嗅球のTUNEL染色の結果を示す。(A)empty/Adv鼻腔投与マウスとSITH−1/Adv鼻腔投与マウスの嗅球のTUNEL染色像を示す図である。(B)嗅球のTUNEL染色陽性細胞数を計数した結果を示す図である。
図5は、嗅上皮の抗SITH−1抗体による免疫組織染色の結果を示す。empty/Adv鼻腔投与マウスとSITH−1/Adv鼻腔投与マウスの嗅上皮細胞の免疫組織染色像を示す図である。
図6は、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスのストレス脆弱性試験の結果を示す。
図7は、HHV−6感染U373におけるSITH−1の発現の結果を示す。
図8は、HHV−6感染U373におけるSITH−1の発現の結果を示す。
図9は、SITH−1の構造および機能を示す。(A)SITH−1の構造、HHV−6Bゲノム内のSITH−1mRNAの位置、ならびにI型およびII型のHHV−6B潜伏転写産物(H6LT)を示す図である。(B)HHV−6Bを感染させたときのSITH−1mRNA量とH6LT mRNA量の比率を示す図である。(C)哺乳類ツーハイブリッドシステムにより、SITH−1とCAMLとの結合を示す図である。(D)SITH−1をU373細胞内で構成的に発現させたときの免疫蛍光染色の結果を示す図である。(E)fura 2−AMにより細胞内カルシウム濃度を測定した結果を示す図である。
図10は、抗SITH−1抗体価、ストレス、および自殺企図の関連を示す。(A)唾液中のHHV−6BDNAコピー数と1週間の労働時間との関連を比較した結果を示す図である。(B)アストロサイトでSITH−1を発現しているマウスの末梢血における抗SITH−1IgG抗体価を示す図である。(C)健常者対照)と自殺企図患者の血漿中の抗SITH−1抗体の量を調べた間接蛍光抗体アッセイの結果を示す図である。(D)健常者(対照)および自殺企図患者における抗SITH−1抗体価を示す図である。
図11は、アストロサイトでSITH−1を発現しているマウスにおける気分障害様の行動を示す。(A)ウイルスベクターの投与後(p.i.)3週目に、脳スライスを、間接蛍光抗体法により染色した結果を示す図である。(C−E、I、J)ウイルスベクターの投与後3週目または5週目のマウス全脳におけるmRNAの発現を示す図である。(F、K)ウイルスベクターの投与後3週目(F)または5週目(K)のプレパルスインヒビションの割合を示す図である。(G、L)ウイルスベクターの投与後3週目(G)または5週目(L)の尾懸垂試験の結果を示す図である。(H)ウイルスベクターの投与後5週目の回転輪活動を示す図である。
図12は、SITH−1への暴露およびその臨床症状を示す。(A)自殺企図の方法(飛び降り、薬物中毒、自傷行為、および自絞)間での、抗SITH−1抗体価の比較を示す図である。(B)健常者(対照)と自殺企図患者における抗SITH−1抗体Avidity Index(AI)を示す図である。(C)抗SITH−1 AIとベックうつ病特性尺度(BDI)全スコアとの関連を示す図である。(D)健常者(対照)、気分障害(MD)を患う患者、統合失調症または他の精神疾患(SCH)を患う患者、および他の精神疾患(Others)を患う患者間における抗SITH−1抗体AIの比較を示す図である。(E)MDを患うと診断された患者と健常者(対照)における、抗HHV−6B抗体および抗SITH−1抗体AIとの関係を示す図である。
図13は、HHV−6B潜伏遺伝子SITH−1の同定結果を示す。(A)SITH−1クローニングのためのプライマー設計および同定されたSITH−1を示す図である。上のパネルは、直接繰り返し(DR)配列を含むHHV−6Bの構造を示す図である。下のパネルは、HHV−6B潜伏転写産物H6LTの構造を示す図である。(B)ダブルネストRTPCRにより、潜伏転写産物を増幅した結果を示す。(C)潜伏関連遺伝子からのmRNAの構造を決定するために使用される、3’−および5’−RACEプライマーを示す図である。(D)5’−RACEおよび3’−RACEにより増幅された産物の電気泳動の結果を示す図である。
図14は、SITH−1遺伝子の細胞特異的発現の結果を示す。
図15は、SITH−1遺伝子のCAMLmRNA発現への影響を調べた結果を示す。
図16は、抗SITH−1抗体の抗原特異性の試験(吸着実験を用いたELISA)の結果を示す。
図17は、現在の年齢、精神疾患の発症年齢、および自殺行為(SB)が始まった年齢による対象の分布を示す。(A)健常者(対照)および自殺企図患者の現在の年齢の分布を示した図である。(B)自殺企図患者の精神疾患の発症年齢の分布を示した図である。(C)自殺企図患者における、SBが始まった年齢の分布を示した図である。
図18は、Avidity Indexアッセイのための適当な尿素濃度の同定の結果を示す。
図19は、自殺企図した代表的な対象の血漿における抗SITH−1抗体の間接蛍光抗体検出の結果を示す。(A)自殺企図患者および健常者(対照)からの血漿におけるSITH−1の免疫蛍光染色の結果を示す図である。(B)自殺企図患者および健常者(対照)における人口統計学および抗体反応性の詳細(年齢、性別、抗SITH−1抗体の存在、自己抗体の存在)を示した図である。
図20は、自殺企図を予測するために、抗SITH−1抗体価の感度および特異性を調べた結果を示す。
図21は、アストロサイト内にSITH−1を発現している(SITH−1)、および発現していない(vector)マウスの体重を調べた結果を示す。投与後(p.i.)3週間(A)および投与後5週間(B)での結果を示す。
図22は、ウイルス特異的抗体の概算の結果を示す。
図23は、異なる人種間に渡る、抗SITH−1抗体価および抗SITH−1 AIの比較の結果を示す。(A)日本人対照、アフリカ系アメリカ人および白人の年齢を比較した結果を示す図である。(B)日本人対照からの血漿、ならびにアフリカ系アメリカ人および白人の血清における抗SITH−1抗体価を示す図である。(C)日本人対照からの血漿、ならびにアフリカ系アメリカ人および白人の血清における抗SITH−1抗体AIを示す図である。
図24は、SITH−1と慢性疲労症候群(CFS)との関連を調べた結果を示す。(A)健常者(対照)とCFSを患う患者の現在の年齢の分布を示す図である。(B)抗SITH−1抗体AIとCFSの初期兆候である疲労との関連を調べた結果を示す図である。(C−E)心配(C)、抑うつ気分(D)、および自尊心の低下(E)の抑うつ状態の有無でのCFS患者における抗SITH−1抗体AIを示す図である。
図25は、うつ病患者から採取された検体中のHHV−6量を示す。

0027

本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(A、またはAより大きい)B以下(B、またはBより小さい)」を意味する。

0028

〔1〕用語の説明
まず、本願明細書にて用いられる主な用語について、その意味を説明する。

0029

本発明において、「気分障害」とは、ある程度の期間にわたって持続する気分(感情)の変調により、苦痛感じたり、日常生活に何らかの支障をきたしたりする状態のことをいう。代表的なものとして、うつ症状のみが現れるうつ病や、躁状態とうつ状態を繰り返す躁うつ病が挙げられる。気分障害には様々な原因が考えられているが、詳細はわかっていないことも多い。医学的には米国精神医学会によって導入された精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders:DSM)または国際疾病基準である疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems:ICD)によって定められた診断基準により操作的に診断される。

0030

生物学的試料」は、抗体の量、抗体価、またはHHV−6量を測定しうる生体由来試料であれば特に限定されない。好ましくは、血液、血清、血漿、脳脊髄液唾液鼻汁リンパ液、及び母乳からなる群から選択される1種または2種以上である。抗体を検出する場合、生物学的試料は、好ましくは、血液、血清、血漿、又は脳脊髄液である。また、抗SITH−1抗体の検出に用いる生物学的試料、抗HHV−6抗体の検出に用いる生物学的試料、及びHHV−6量の測定に用いる生物学的試料は、同じでも異なっていてもよい。HHV−6量の測定に用いる生物学的試料としては、唾液をより好ましく使用することができる。

0031

本発明において、「HHV−6」とは、ヒトヘルペスウイルス−6(HHV;ヒトヘルペスウイルス)であり、β−ヘルペスウイルスに属する。HHV−6にはHHV−6バリアントA(HHV−6A)とHHV−6 バリアントB(HHV−6B)の2つのバリアントが存在するが、本発明においてHHV−6は、好ましくは、HHV−6Bである。

0032

本発明において、「SITH−1」とは、Small protein encoded by the Intermediate stage Transcript ofHHV−6(HHV−6の潜伏感染中間段階転写物によってコードされる小タンパク質)−1であり、ヒトヘルペスウイルス−6の潜伏感染に関与する因子、より詳細にはヘルペスウイルスの潜伏感染時に発現するタンパク質として発見された。さらに、本発明者は、SITH−1が、アストロサイト系細胞での非増殖感染においても発現することを本明細書実施例で見出した(図14)。SITH−1タンパク質は、159アミノ酸からなる、分子量約17.5kDaのタンパク質である(GenBank受託番号HV763913.1およびHV763914.1)。SITH−1タンパク質をコードする核酸塩基配列(配列番号2)については後述する。

0033

本発明において、「抗体」とは、免疫グロブリンIgAIgDIgEIgGIgM及びこれらのFabフラグメント、F(ab’)2フラグメントFcフラグメント)を意味する。例としては、ポリクローナル抗体モノクローナル抗体単鎖抗体抗イディオタイプ抗体及びヒト化抗体が挙げられるがこれらに限定されるものではない。

0034

本発明において、「抗SITH−1抗体」とは、SITH−1タンパク質を認識する抗体であり、SITH−1タンパク質に特異的に結合し得る完全な分子及び抗体フラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2フラグメント)を含むことを意味する。抗SITH−1抗体は、好ましくは、IgGである。

0035

限定されるものではないが、本発明においては、抗SITH−1抗体は、抗原結合力のより高い抗体、すなわち高アビディティ抗体であってよい。感染初期のIgG抗体は抗原結合力が弱く、感染の経過に従って高アビディティの抗体が産生される。このような高アビディティ抗体は、例えばアッセイ系における被験者抗体の洗浄過程において、タンパク質変性剤添加洗浄液を用いて洗浄することにより、検出・測定することができる。このようなタンパク質変性剤として、例えば、尿素グアニジン塩ドデシル硫酸Naなどを使用することができるが、好ましくは尿素である。

0036

本発明において、「抗HHV−6抗体」とは、HHV−6を認識する抗体であり、HHV−6粒子に特異的に結合し得る完全な分子及び抗体フラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2フラグメント)を含むことを意味する。抗HHV−6抗体は、好ましくは、HHV−6Bを認識する抗体である。また抗HHV−6抗体は、好ましくは、IgM、IgG、IgAである。限定されるものではないが、生物学的試料が血液、血漿、血清等の場合はIgGが好ましく、唾液、鼻汁の場合はIgAが好ましい。また限定されるものではないが、抗HHV−6抗体はHHV−6の中和抗体であってもよい。また、抗HHV−6抗体は、高アビディティ抗体であってもよい。

0037

本発明において、「抗体レベル」とは、生物学的試料中に含まれる当該抗体の量あるいは抗体価をいう。これらの値の測定は、公知の方法を用いて行うことが可能である。限定されるものではないが、例えば、(間接)蛍光抗体法ドットブロットアッセイ法ウエスタンブロット法酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA、サンドイッチELISA法を含む)、放射性イムノアッセイ法RIA)、及び免疫拡散アッセイ法のような伝統的な免疫組織学的方法を利用したアッセイ法で検出できる。あるいは、in vivoでの画像解析等によって検出することもできる。

0038

また、高アビディティ抗体の抗体レベルを判定する指標としてAvidity Indexを用いることもできる。Avidity Indexは、例えば、アッセイ系における被験者抗体の洗浄過程において、タンパク質変性剤添加洗浄液を用いて測定した抗体量を、タンパク質変性剤非添加の通常の洗浄液を用いて測定した抗体量で除算して得ることができる。このようなタンパク質変性剤として、例えば、尿素、グアニジン塩、ドデシル硫酸Naなどを使用することができるが、より好ましくは尿素である。

0039

〔2〕抗SITH−1抗体および/または抗HHV−6抗体のレベルと気分障害との関係等について
本発明者らは、抗SITH−1抗体の抗体レベルが高い気分障害患者では、抗SITH−1抗体の抗体レベルが低い気分障害患者と比べ、抗HHV−6抗体の値が有意に低いことを見出した(図12E)。これは、SITH−1がHHV−6の潜伏感染特異的タンパク質であること、一般に再活性化したウイルスが増加すると当該ウイルスに対する抗体が増加すること、を考慮すると、予想外の驚くべき結果であった。以上の知見により、抗SITH−1抗体測定による気分障害診断法の感度・特異度を著しく向上させることが可能となった。すなわち、健常者にも抗SITH−1抗体の抗体レベルが高い者(偽陽性者)が一部ながら存在するが、抗SITH−1抗体レベルが高い被験者の中から、抗HHV−6抗体の抗体レベルが低い被験者を選抜することにより、抗SITH−1抗体が偽陽性の健常者の多くが除かれて、当該被験者が気分障害患者である確率が大きく向上する。

0040

従って、本発明の一態様は、被験者が気分障害を有しているか否かを診断する診断方法であって、該被験者から分離された生物学的試料中の抗SITH−1抗体レベルを測定した結果、その値が高く、かつ、該被験者から分離された生物学的試料中の抗HHV−6抗体レベルを測定した結果、その値が低い場合に、該被験者が気分障害を有していると診断する方法である。なお、このような診断のためのデータ取得方法も本発明の一態様である。また、本発明の一態様として、抗SITH−1抗体、好ましくは高アビディティ抗SITH−1抗体の抗体レベルの指標として、Avidity Indexを用いてもよい。Avidity Indexの値が高い時、高アビディティ抗体の抗体レベルが高いと判断できる。

0041

また、本発明者らは、抗SITH−1抗体の抗体レベルが高い患者の方が、抗SITH−1抗体の抗体レベルが低い患者と比べ、気分障害の症状がより重いことを見出した(図12C)。従って、本発明の一態様は、被験者の気分障害の程度を診断する診断方法であって、該被験者から分離された生物学的試料中の抗SITH−1抗体レベルを測定した結果、その値が高い場合に、気分障害の症状がより重篤であると判断する診断方法である。

0042

なお、後述のとおり、HHV−6が嗅上皮細胞に頻回感染することにより、気分障害の症状は一層重篤となるため、測定する抗SITH−1抗体は、高アビディティ抗体であってよい。以上のような、本発明の診断のためのデータ取得方法も本発明の一態様である。

0043

業者は、健常者における定量値正常値)、典型的な気分障害患者の定量値(疾患値)や、軽度、中度または重度の気分障害患者の定量値(疾患値)を参考に、適切に閾値を設定することができる。すなわち、一般に診断薬における閾値(いわゆるカットオフ値)は、臨床試験から得られた健常者や患者の多くの測定値を基に、その目的に合わせて当業者が適切に設定するものであり(例えば、スクリーニング検査のように、疾患群を見逃さないことを最優先として二次検査以降で確定診断するような場合には、特異度よりも感度を優先し、カットオフ値を低く設定する、気分障害の症状の程度を診断する場合には、軽度、中度、重度の気分障害患者の定量値を参考に閾値を高く設定する等)、本明細書に開示されている記載から、当業者は容易に診断のための閾値を決定することができる。

0044

すなわち、例えば「抗体レベルの値が高い」ということは、測定した抗体レベルが前記閾値(例えば、健常者の抗体レベルの値)を上回るか否かによって判断することができ、「抗体レベルの値が低い」ということは、測定した抗体レベルが前記閾値を下回るか否かによって判断することができる。

0045

なお、本発明の診断を行うためのデータを取得する方法も、本発明の一態様である。すなわち、上記診断方法の各工程を含むことを特徴とする診断のためのデータ取得方法も本発明に含まれる。

0046

HHV−6の抗体レベルは、HHV−6脳炎リスク評価にも使用することができる。具体的にはHHV−6の抗体レベルが低い場合にはHHV−6脳炎リスクはより高く、抗体レベルが高い場合にはHHV−6脳炎リスクはより低いと評価することができる。また前者の場合には、被験者に対し予防的に抗ウイルス薬等の投薬を行うことができる。

0047

本発明において、「キット」とは、本発明の検出方法又は診断方法を実施するためのものであればよく、具体的な構成、材料、機器等は、特に限定されるものではないが、抗SITH−1抗体を免疫学的に検出するために、以下のいずれかの物質が含まれていることが好ましい:(1)SITH−1タンパク質、(2)(1)の部分断片エピトープ保有ペプチドを含むことが好ましい)、(3)(1)又は(2)を固定化した検出器具。また、抗HHV−6抗体を免疫学的に検出するために、以下のいずれかの物質が含まれていることが好ましい:(1)HHV−6コートタンパク質、(2)(1)の部分断片(エピトープ保有ペプチドを含むことが好ましい)、(3)(1)又は(2)を固定化した検出器具。

0048

本発明において上記(1)又は(2)を固定化する対象は、固体または不溶性材料(例えば、濾過沈殿磁性分離などにより反応混合物から分離することができる材料)である担体であれば特に限定されない。また、固体担体の形状は、ビーズ磁性ビーズ薄膜微細管フィルタープレートマイクロプレートカーボンナノチューブセンサーチップなどを含むがこれらに限定されない。薄膜やプレートなどの平坦な固体担体は、当該技術分野で知られているように、ピット、溝、フィルター底部などを設けてもよい。

0049

また、本発明において上記(1)又は(2)を固定化する対象は、上記(1)又は(2)を発現させるための細胞であってもよい。特に(間接)蛍光抗体法により測定を行う場合、このような態様が好ましい。なお、細胞は、公知技術に基づき当業者が適宜選択することができる。例えば、ヒト由来細胞サル由来細胞昆虫細胞を好ましく使用することができ、最も好ましくはヒト由来細胞である。

0050

本発明において、「治療」とは、気分障害の症状を完治又は軽減させること、気分障害の症状の悪化を抑制することを含む。本発明において、「予防」とは、気分障害の症状の発症を抑制すること、又は遅延させることを含む。

0051

〔3〕HHV−6と気分障害との関係等について
ところで、本発明者らは、本発明者らが見出した前記の気分障害と抗HHV−6抗体量との関係、及び、HHV−6が嗅上皮に感染するということ(文献11)から、HHV−6の嗅上皮細胞への感染と気分障害との関係に着目し、鋭意研究を続けた結果、驚くべき結果を得た。

0052

すなわち、本発明者らが、マウスの嗅上皮細胞(本書面において、嗅神経鞘細胞を含む嗅上皮の細胞をいう。)においてSITH−1遺伝子を発現させたところ、当該マウス(以下「SITH−1発現マウス」と称する。)は、嗅覚系細胞の障害、さらにはストレス脆弱性を生じ、気分障害を発症したのである。これは、HHV−6が脳内各器官に感染又は移行しなくとも、嗅上皮細胞でSITH−1が発現するだけで気分障害が引き起こされることを意味しており、驚くべき結果であった。

0053

上記嗅覚系細胞の障害の一例として、嗅球細胞のアポトーシスが挙げられる。SITH−1発現マウスは対照マウスと比べ、嗅球において、アポトーシスの指標となるBax/Bcl−2比が増大し(実施例2.3の項)、TUNEL染色による嗅球の組織観察においても、より多くのアポトーシス細胞が検出された(実施例2.4の項)。

0054

また、SITH−1発現マウスでは、全脳においてCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)とウロコルチン(Urcortin)の異常産生が見られた(実施例2.3の項)。これらは視床下部のバイオマーカーであることから、視床下部に何らかの異常が生じていることを強く示唆している。また脳ストレス応答因子であるREDD1の発現上昇も見られた(実施例2.3の項)。

0055

そしてSITH−1発現マウスは、マイルドなストレスに晒すと気分障害症状を引き起こし(実施例2.5の項)、ストレス脆弱性を示した。なお、ストレス脆弱性とは、弱いストレッサーに対して適切な応答ができない状態をいう。

0056

さらに、SITH−1発現マウスは、行動異常試験(尾懸垂試験)の結果、無動時間が延長し、うつ状態になっていることが分かった(実施例2.2の項)。この行動異常はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)投与によって改善された(実施例2.2の項)。

0057

以上の一連の結果から、本発明者らは、HHV−6による気分障害発症について、次のような作用機序を見出した。

0058

すなわち、HHV−6が嗅上皮に感染しSITH−1タンパク質を発現すると、嗅覚系が障害され嗅球細胞のアポトーシスを生じる。このような嗅覚系の機能障害により、強い不正なシグナルが視床下部に伝達された結果、不正なストレス応答を起こしやすくなる状態である「ストレス脆弱性」を生じる。そして「ストレス脆弱性」が生じると、環境中のマイルドなストレスであっても過敏に反応してしまい、気分障害を発症する。なお、本発明は、この作用機序に限定されるものではない。

0059

上記のとおり、本発明者らは、HHV−6が嗅上皮細胞に感染してSITH−1を発現することで、さまざまな障害が生じることを見出した。ここで障害とは、嗅覚系細胞の障害、視床下部の異常、脳ストレス応答因子の異常発現、ストレス脆弱性、並びに、気分障害である。なお、限定されるものではないが、嗅覚系細胞の障害の一例として嗅覚系細胞のアポトーシス増加が、視床下部の異常の例としてCRH及び/又はウロコルチンの異常産生が、異常発現する脳ストレス応答因子の一つとしてREDD1が、それぞれ挙げられる。

0060

従って、本発明は、嗅上皮細胞へのHHV−6感染を抑制することを特徴とする上記障害の治療方法を提供する。

0061

なお、本明細書において、「治療」及び「予防」の定義は上記のとおりであるが、いずれの場合も本発明の作用機序は同じである。従って、「治療方法」および「予防方法」は、それぞれ「予防方法」および「治療方法」に置換可能である。すなわち、被験者がSITH−1による障害を生じていない場合、「治療」は「予防」を意味する。よって、本発明の一態様として、被験者の嗅上皮細胞へのHHV−6感染を抑制することを特徴とする気分障害の予防方法、被験者にHHV−6感染阻害剤を投与することを特徴とする気分障害の予防方法、が当然に含まれる。

0062

本発明において、嗅上皮細胞へのHHV−6の感染を抑制するための、HHV−6感染阻害剤を用いることができる。

0063

本発明におけるHHV−6感染阻害剤としては、HHV−6の細胞への感染を阻害するものであればよいが、好ましくは、抗HHV−6抗体、ヘパラン硫酸ヘパリン、HHV−6ワクチン糖加水分解酵素グリコシダーゼ)阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、ペプチド、糖鎖、糖鎖ポリペプチド糖誘導体、等であり、より好ましくは、ヘパラン硫酸、ヘパリン、HHV−6ワクチンである。また、これらを適宜組み合わせてもよい。抗HHV−6抗体としては、中和抗体を好ましく使用できる。

0064

このようなHHV−6感染阻害剤は、嗅上皮細胞へのHHV−6感染を抑制できる任意の態様で投与することができる。例えば、HHV−6ワクチンを皮下に接種すると免疫誘発が起こり、抗HHV−6抗体が増加してHHV−6感染を抑制できる。限定されるものではないが、HHV−6感染阻害剤は、嗅上皮に投与することが好ましい。実際の治療にあたっては、これらのHHV−6感染阻害剤を、適量を鼻腔噴霧する等して嗅上皮に投与することができる。

0065

従って、本発明の一態様は、被験者の抗HHV−6抗体量を増加させることにより、該被験者の嗅上皮細胞へのHHV−6感染を抑制することを特徴とする気分障害の治療方法、であってよい。この治療方法には、抗HHV−6抗体を被験者の嗅上皮細胞に直接投与する態様と、HHV−6ワクチンを投与して抗HHV−6抗体を間接的に増加させる態様の両方が含まれる。

0066

本発明で用いるHHV−6ワクチンは、好ましくは不活化ワクチンまたは弱毒化ワクチン、より好ましくは不活化ワクチンである。不活化HHV−6ワクチンは、公知のウイルス不活化処理、例えば、ホルマリン化学処理、熱や放射線などの物理的処理によってウイルスの複製能を失わせることにより、作製することができる。このワクチンには、適宜アジュバントを添加してもよい。当業者は公知のアジュバントを適宜選択し、使用することができる。限定するものではないが、アルミニウム塩アジュバント水酸化アルミニウムリン酸アルミニウム等)、乳化剤アジュバント(CFA、IFA、スクワレンMF59等)、ポリマー微粒子アジュバント(リポソームバイオポリマー等)、Toll様受容体dsRNA、CpG−オリゴDNALPS、βグルカン等)、イノシトールリン酸(WO2014/065229)等を好ましく使用することができる。

0067

なお、イノシトール5リン酸等のアジュバントは、ワクチンなしで単独で鼻腔に噴霧してもよい。これにより免疫が賦活化されて鼻腔中に存在するHHV−6に対する抗体の産生が高められることにより、HHV−6感染を抑制することができる。

0068

また、本発明で用いるワクチンは、限定されるものではないが、好ましくは経鼻ワクチンである。HHV−6ワクチンを鼻粘膜に噴霧し、鼻汁中に主に抗HHV−6IgA抗体を産生させることにより、HHV−6の鼻腔から脳への侵入を抑制することができる。

0069

経鼻ワクチンを使用するにあたっては、適宜鼻腔での付着性を向上させる物質、例えばゲル化剤増粘剤を用いてもよい。なお、経鼻ワクチンを用いる場合に、ワクチンをカチオン性ナノ粒子に内包させることによって、アジュバントを用いることなく、全身性及び粘膜免疫応答を引き起こす技術が開発されており(日本国特許第5344558号)、また、不活性化ウイルス粒子抗原を経粘膜に投与する場合に、ペネトラチン又はその改変ペプチドを共に経鼻投与することにより該ウイルスに対する免疫を効率よく誘導する技術も開発されている(日本国公開特許公報2012−219041号)。本発明においてこのような技術を使用することもできる。また、本発明において、嗅上皮細胞でのSITH−1発現を抑制することのできるsiRNAやmiRNAなどの干渉RNAを、気分障害治療剤として用いることもできる。このような干渉RNAは、SITH−1遺伝子の塩基配列と公知技術に基づき、当業者が容易に作成することができる。そして、このような干渉RNAを含む治療剤を、嗅上皮に噴霧して嗅上皮細胞で発現させることで、気分障害を治療することができる。このような干渉RNAを用いた気分障害の治療方法も本発明の一態様である。

0070

〔4〕本発明の治療方法の対象
本発明の治療方法の対象の一例として、生物学的試料中の抗SITH−1抗体の抗体レベルの高い被験者が挙げられる。このような被験者は、未だ気分障害について診断を受けていない被験者であってよい。また、生物学的試料中の抗SITH−1抗体の抗体レベルが高く、かつ、DSMやICDなどに基づき、気分障害患者として診断された患者(以下「気分障害患者」と称する)は、本発明の好ましい対象の一例である。

0071

また、本発明の治療方法の対象として、限定されるものではないが、抗SITH−1抗体の抗体レベルが高い被験者が好ましく、本発明の気分障害診断方法により陽性と判断された被験者がより好ましい。抗SITH−1抗体の抗体レベルが高い被験者は、上記作用機序で気分障害を発症している可能性が高く、本発明の気分障害診断方法により陽性と判断された被験者は、更にその可能性が高い。本発明の治療方法により、このような被験者のHHV−6の嗅上皮細胞への頻回感染を防ぎ、発症あるいは症状悪化を抑制することができる。

0072

ところで、ウイルスに対する免疫能は、遺伝的要因による個体差が大きい。ここで、HHV−6への免疫能が低い被験者、すなわち、被験者から分離された生物学的試料中の抗HHV−6抗体レベルを測定した結果、その値が低い被験者は、気分障害を発症していなくても、上記作用機序から、HHV−6による気分障害の高リスク者であることは明らかである。実施例3.1の項には、血清中の抗HHV−6抗体量が少ない場合、HHV−6の感染に晒され、宿主細胞において発現するSITH−1量が多くなることが示されている。従って、このような被験者は、上記治療方法(予防方法)の対象として好ましい。また、気分障害の高リスク者か否かを判別するために、抗HHV−6抗体量を測定することを特徴とする実験データ取得方法も本発明の一態様である。

0073

ところで、ヒトは疲労度が高まると、潜伏感染しているHHV−6が再活性化し、唾液に放出されることが知られているが(日本国特許第4218842号)、その結果、HHV−6の嗅上皮への暴露リスクは高まることになる。一般に再活性化したウイルスが増加すると当該ウイルスに対する抗体が増加する。しかしながら、驚くべきことに、上記のとおり、抗SITH−1抗体陽性の気分障害患者の検体中の抗HHV−6抗体レベルは低いにもかかわらず、このような患者の検体中のHHV−6量は、抗SITH−1抗体陰性の気分障害患者と比べて有意に多いことが確認された(図25)。これは、上記作用機序により初めて説明することができることからも、上記作用機序は裏付けられている。そして、この結果から、抗SITH−1抗体陽性の被験者であり、かつ、該被験者から分離された生物学的試料中のHHV−6量を測定した結果、その値が高い被験者は、本発明のHHV−6感染阻害剤を用いた治療方法の対象として有効であることは明らかである。

0074

さらには、被験者から分離された生物学的試料中の抗HHV−6抗体レベルを測定した結果その値が低く、かつ、該被験者から分離された生物学的試料中のHHV−6量を測定した結果その値が高い被験者は、気分障害を発症していなくても、上記作用機序から、HHV−6による気分障害の高リスク者であることは明らかであり、上記治療方法(予防方法)の対象として好ましい。

0075

なお、生物学的試料中のHHV−6量の測定は、従来公知の方法でよく、当業者であれば適宜設定可能であるが、ウイルス核酸を測定する方法、ウイルスタンパク質を測定する方法等が挙げられる(日本国特許第4218842号)。

0076

〔5〕気分障害の治療剤、気分障害の治療方法、形質転換細胞、気分障害モデル動物等
Bcl−2(B細胞リンパ腫−2)ファミリータンパク質は、アポトーシス制御の中心的役割を担っている。Bcl−2ファミリータンパク質は、BaxやBid等のアポトーシス促進因子と、Bcl−2やBcl−XL等のアポトーシス抑制因子とに分けられ、両者の細胞内でのバランスにより、アポトーシスが起こるか否かが決定される(文献12)。一方、気分安定薬や、アミトリプチリンデシプラミンイミプラミンフルオキセチンレボキセチントラニルシプロミンベンラファキシン(これらの塩を含む)といった気分障害治療剤は、脳におけるBcl−2発現を促進することが知られている(文献13〜文献16)。また、アポトーシス促進因子Bidのアンタゴニスト(BO−11A7、BI−2A7)を投与することにより、マウスの精神障害様行動異常が抑制されることが示されている(文献17)。

0077

以上の事実を踏まえた上で、本発明者が見出した上記気分障害の作用機序、特に嗅上皮細胞におけるSITH−1発現がアポトーシス抑制因子Bcl−2の発現を抑制することを考慮すると、上記の薬剤はBcl−2発現を促進し、BidのアンタゴニストはBid発現を抑制することから、これらの薬剤やBidのアンタゴニストは、SITH−1発現により生じる気分障害の治療薬として使用することができることは明らかである。

0078

なお、このようなBidのアンタゴニストとして公知のものを使用できる(US20100261788、US7741521、WO2006004622)が、好ましくは、BO−11A7又はBI−2A7、より好ましくはBO−11A7である。

0079

すなわち、本発明の一態様は、抗SITH−1抗体の抗体レベルが高い被験者、本発明の気分障害診断方法により陽性と判断された被験者に対して、アミトリプチリン、デシプラミン、イミプラミン、フルオキセチン、レボキセチン、トラニルシプロミン、ベンラファキシン及びこれらの塩から選択される気分障害治療薬、気分安定薬、又はBidのアンタゴニストのいずれかを投与することを特徴とする気分障害の治療方法である。

0080

また、本発明は、HHV−6感染阻害剤を含む上記障害の治療剤(予防剤を含む)を提供する。

0081

さらに、HHV−6感染阻害剤の、上記障害の治療(予防を含む)のための使用も、本発明に含まれる。

0082

本発明は、嗅上皮細胞にSITH−1遺伝子を導入してなることを特徴とする形質転換細胞を提供する。この嗅上皮細胞は、好ましくはヒト嗅上皮細胞である。このような細胞を用いることにより、嗅上皮細胞においてSITH−1遺伝子が発現することによって生じる不正シグナルを抑える物質をスクリーニングすることが可能となる。

0083

限定されるものではないが、不正シグナルの例として、GABAトランスポーターGABA受容体嗅覚受容体アドレナリン受容体グルタミン酸トランスポーターグルタミン酸受容体等の発現異常が挙げられる。従って、嗅上皮細胞における、これらの全て又は一部の発現量を指標として、嗅覚系細胞への不正シグナルを抑える物質をスクリーニングすることができる。

0084

さらに本発明は、嗅上皮細胞にSITH−1遺伝子を導入してなることを特徴とする上記障害モデル動物を提供する。

0085

嗅上皮細胞に導入するSITH−1遺伝子としては、SITH−1タンパク質(以下、「(a)のタンパク質」と称する場合もある。)をコードする配列番号2のポリヌクレオチドが挙げられる。また、配列番号1のアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、嗅上皮細胞に導入すると嗅覚系細胞でアポトーシスを誘導するタンパク質(以下、「(b)のタンパク質」と称する場合もある。)をコードする遺伝子が挙げられる。

0086

上記「1個又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により置換、欠失、挿入、及び/又は付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されることを意味する。このように、上記(b)のタンパク質は、上記(a)のタンパク質の変異タンパク質であるといえる。なお、ここでいう「変異」は、主として公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する同様の変異タンパク質を単離精製したものであってもよい。

0087

また、嗅上皮細胞に導入する別のSITH−1遺伝子としては、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、90%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上、より好ましくは99.5%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるタンパク質であって、嗅上皮細胞に導入すると嗅覚系細胞でアポトーシスを誘導するタンパク質(以下、「(c)のタンパク質」と称する場合もある。)をコードする遺伝子が挙げられる。

0088

アミノ酸配列の同一性パーセントは、視覚検査および数学的計算によって決定してもよい。あるいは、アミノ酸配列の同一性パーセントは、Needleman, S. B. 及びWunsch, C. D. (J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)のアルゴリズムに基づき、ウィスコシン大学遺伝学コンピューターグループ(UWGCG)より入手可能なGAPコンピュータープログラムを用いた配列情報を比較することにより、決定してもよい。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメーターには:(1)Henikoff, S. 及びHenikoff, J. G.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919, 1992)に記載されるような、スコアリングマトリックス、blosum62;(2)12のギャップ加重;(3)4のギャップ長加重;及び(4)末端ギャップに対するペナルティなし、が含まれる。

0089

当業者が使用するその他の配列比較プログラムを用いてもよい。アミノ酸配列の同一性パーセントは、例えば、Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されているBLASTプログラムを用いて、配列情報と比較し、決定することが可能である。当該プログラムは、インターネット上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)、あるいはDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから利用することが可能である。BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、同サイトに詳しく記載されており、一部の設定を適宜変更することが可能であるが、検索は、通常、デフォルト値を用いて行う。その他、アミノ酸配列の同一性パーセントは、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス製)などのプログラム、または、FASTAアルゴリズムなどを用いて決定してもよい。その際、検索は、デフォルト値を用いて行ってもよい。

0090

配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)の潜伏感染時に特異的に発現するタンパク質として単離・同定されたものであり、SITH−1タンパク質と称する。SITH−1タンパク質は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、159アミノ酸からなる、分子量約17.5kDaのタンパク質である。SITH−1タンパク質は、SITH−1遺伝子によってコードされている。このSITH−1遺伝子のcDNAは、配列番号3に示すように、1795塩基対(約1.79kbp)のサイズを有しており、954番目から956番目の塩基配列が開始コドン(Kozak ATG)であり、1431番目から1433番目の塩基配列が終止コドン(TAA)である。したがって、上記SITH−1遺伝子は、配列番号3に示す塩基配列のうち、954番目から1430番目までの塩基配列をオープンリーディングフレーム(ORF)領域として有しており、このORFは、477塩基対(約0.48kbp)のサイズを有している。SITH−1のcDNAのうち、ORF領域を表す塩基配列を配列番号2に示す。なお、配列番号2に示す塩基配列は、ストップコドンの3塩基を含んで記載している。

0091

さらに、導入するSITH−1遺伝子として、配列番号2に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、嗅上皮細胞に導入すると嗅覚系細胞でアポトーシスを誘導するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。

0092

上記「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズ」するとは、少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性、最も好ましくは少なくとも97%の同一性が配列間に存在するときにのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。

0093

「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」の具体的な例として、例えば、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄する条件を挙げることができる。また、上記ハイブリダイゼーションは、後述する文献10に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができ、特に限定されるものではない。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなる(ハイブリダイズし難くなる)。

0094

なお、本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「核酸」又は「核酸分子」と交換可能に使用される。「ポリヌクレオチド」はヌクレオチド重合体を意味する。

0095

したがって、本明細書での用語「遺伝子」には、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖及びアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNA(mRNA等)を包含する。アンチセンス鎖は、プローブとして又はアンチセンス薬剤として利用できる。

0096

「DNA」には、例えばクローニングや化学合成技術、又はそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNA等が含まれる。すなわち、DNAとは、動物のゲノム中に含まれる形態であるイントロンなどの非コード配列を含む「ゲノム」形DNAであってもよいし、また逆転写酵素ポリメラーゼを用いてmRNAを経て得られるcDNA、すなわちイントロンなどの非コード配列を含まない「転写」形DNAであってもよい。

0097

さらに、本発明に係る遺伝子は、上記(a)、(b)又は(c)に記載のアミノ酸をコードする配列以外に、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。また、これらのmRNAまたはcDNAの翻訳領域の末端及び/又は内部に調節配列ポリアデニル配列等の任意のポリヌクレオチドが含まれていてもよい。また、本発明に係るタンパク質が複数の対立遺伝子によってコードされ得る場合には、全ての対立遺伝子、それらの転写産物、およびcDNAがかかる核酸に含まれる。

0098

なお、本明細書において、「核酸」なる語には、任意の単純ヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチドからなるポリヌクレオチド、例えばcDNA、mRNA、全RNA、hnRNA、等が含まれる。「修飾ヌクレオチド」には、イノシンアセチルシチジンメチルシチジンメチルアデノシンメチルグアノシンを含むリン酸エステルの他、紫外線化学物質の作用で後天的に発生し得るヌクレオチドも含まれる。

0099

用語「塩基配列」は、「核酸配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(それぞれA、G、C及びTと省略される)の配列として示される。また、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドの「塩基配列」は、DNA分子又はポリヌクレオチドに対してのデオキシリボヌクレオチドの配列を意図し、そしてRNA分子又はポリヌクレオチドに対してのリボヌクレオチド(A、G、C及びU)の対応する配列(ここで特定されるデオキシヌクレオチド配列における各チミジンデオキシヌクレオチド(T)は、リボヌクレオチドのウリジン(U)によって置き換えられる)を意図する。

0100

例えば、デオキシリボヌクレオチドの略語を用いて示される「配列番号2又は3の配列を有するRNA分子」とは、配列番号2又は3の各デオキシヌクレオチドA、G又はCが、対応するリボヌクレオチドA、G又はCによって置換され、そしてデオキシヌクレオチドTが、リボヌクレオチドUによって置き換えられる配列を有するRNA分子を示すことを意図する。また、「配列番号2又は3に示される塩基配列を含むポリヌクレオチド又はそのフラグメント」とは、配列番号2又は3の各デオキシヌクレオチドA、G、C及び/又はTによって示される配列を含むポリヌクレオチド又はその断片部分を意図する。

0101

上記SITH−1遺伝子の嗅上皮細胞への導入方法は、従来公知の手法を用いることができ、特に限定されるものではないが、アデノウイルスベクターを用いる方法、レトロウイルスベクターを用いる方法、遺伝子のトランスフェクションによる方法等が挙げられる。また、一般的なトランスジーントランスジェニックマウス作成)による遺伝子導入を用いてもよい。

0102

導入の対象となる動物は、実験動物として利用可能なものであれば特に限定されるものではないが、哺乳動物が好ましく、例えば、マウス、ラット、サル等を挙げることができる。本発明のモデル動物は、気分障害の治療法の検討、薬剤の効果の検討、判定、薬剤以外の治療方法(温熱療法等)の評価等に好適に利用することができる。特に本発明のモデル動物は、上記のとおりBcl−2の発現が抑制されているが、これは精神障害様行動異常と関係が深いことが示唆されている(文献17)ことを考慮すると、気分障害のモデル動物として非常に優れた特徴を有しているといえる。

0103

〔6〕気分障害治療薬の候補物質をスクリーニングするスクリーニング方法
さらに、本発明の上記障害モデル動物は、上記障害治療薬、好ましくは気分障害治療薬の候補物質をスクリーニングする方法に用いることができる。すなわち、本発明のモデル動物に上記障害治療薬の候補物質を投与した後に、驚愕反応試験、尾懸垂試験、自発運動量試験、ストレス脆弱性試験等、公知の行動異常試験を行った結果、異常行動が改善されていれば、上記候補物質は気分障害及び/又はストレス脆弱性を改善する作用を有していると判断し得る。

0104

また、本発明のモデル動物に上記障害の治療薬の候補物質を投与した後に、本発明のモデル動物の脳内のバイオマーカーを検出・測定した結果、異常が改善されていれば、上記候補物質は抗障害作用を有していると判断し得る。このようなバイオマーカーとして、嗅球のアポトーシスを検出するマーカー、視床下部の異常を検出するマーカー、及び/又は、脳ストレス応答因子が挙げられる。限定されるものではないが、嗅球のアポトーシスを検出するマーカーとしてBcl−2が、視床下部の異常を検出するマーカーとしてCRHやウロコルチンが、脳ストレス応答因子の一つとしてREDD1が、それぞれ挙げられる。

0105

上記のとおり本発明のモデル動物は健常動物と比べて、Bcl−2量が減少し、CRH量やウロコルチン量が増大し、REDD1の発現が上昇するといった異常を生じるため、これらの少なくとも1つの異常が改善されていることを指標に治療薬の候補物質のスクリーニングを行うことができる。さらに、上記行動異常試験によるスクリーニングと、上記バイオマーカー検出によるスクリーニングは、適宜併用することもできる。

0106

従って、本発明のモデル動物に被験物質を投与し、該モデル動物の脳内の上記バイオマーカーの少なくとも1つを検出及び/又は測定した結果、異常が改善されていた場合に、該被験物質が気分障害治療薬の候補物質であると判定することを特徴とする、気分障害のスクリーニング方法は、本発明の一態様である。

0107

本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。

0108

(1) SITH−1発現アデノウイルスの調製
モデル動物に感染し、SITH−1を発現させるウイルスとして組換えアデノウイルス構築した。組換えアデノウイルスの構築は、Adenovirus Expression Vector Kit(Takara bio)の標準プロトコールに従った。

0109

グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターを含むpGfa2Lacプラスミドは、Kazuyoshi Ikuta博士オリジナルは、Michael Brenner博士)から提供を受けた。

0110

pGfa2Lacプラスミドより得たGFAPプロモーターと、PCRによって増幅したSITH−1遺伝子とを、標準的な方法で、アデノウイルスコスミドベクターにクローニングした(Ad−GFAP−SITH−1)。このAd−GFAP−SITH−1コスミドベクター、および対照として目的遺伝子が挿入されていないコスミドベクター(pAxcwit)をHEK293細胞にトランスフェクションした。

0111

HEK293細胞を、10%ウシ胎児血清を含有するダルベッコ改変イーグル培地DMEM)で培養した。組換えアデノウイルスを293細胞で調製し、Adeno−X Virus Purification Kits(Clontech)を用いて精製した。さらに、精製したウイルスの力価はAdeno−X rapid titer kits(Clontech)によって決定した。

0112

(2) SITH−1発現アデノウイルスを鼻腔投与したマウス
嗅上皮細胞にSITH−1を発現させた際の行動および遺伝子発現の変化を解析するために、SITH−1発現アデノウイルス(SITH−1/Adv)をマウスの鼻腔に投与した。対照として、SITH−1遺伝子が挿入されていないコスミドベクター由来のアデノウイルス(empty/Adv)を使用した。

0113

(2.1) SITH−1発現アデノウイルスの鼻腔投与
週齢のC57BL/6NCrSlcマウスは、室温24±1℃、消灯12時間、点灯12時間の照明時間で飼育した。マウスにイソフルラン麻酔をかけた後、鼻腔に2.5×107ifu相当のSITH−1/Advもしくはempty/Advを滴下し、呼吸と共に吸引させ、飼育ケージに戻した。

0114

(2.2) SITH−1発現アデノウイルスを鼻腔投与したマウスの尾懸垂試験
SITH−1/Advもしくはempty/Advの鼻腔投与から7日後に、10分間の尾懸垂試験を行い、無動時間をTailSuspScanTopScan(CleverSys社)で計測した。尾懸垂試験は、尾の端から1cmの箇所をテーピングすることにより、各マウスを懸垂して行った。懸垂の間に、活動的ではなく全く動かない場合に、マウスは無動であるとした。なお、いずれの群のマウスも30匹ずつ実験に用いた。

0115

empty/Adv鼻腔投与マウスとSITH−1/Adv鼻腔投与マウスの無動時間を比較した結果を図1Aに示す。統計学的有意(*は、P<0.05を示し、**は、P<0.01を示し、***は、P<0.001を示す)は、Mann−Whitney U−testを用いて算出した。

0116

図1Aより、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスの無動時間はempty/Adv鼻腔投与マウスの無動時間よりも有意に増加していた。従って、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスは、うつ病様行動を示すことが明らかとなった。

0117

続いて、抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がSITH−1/Advの鼻腔投与によって誘導される無動時間の増加を抑制するかについて検討した。6週齢のマウスに飲料水として80mg/L Fluoxetine溶液を与え(文献18)、2週間飼育した。2週間後にSITH−1/Advを鼻腔投与し、鼻腔投与後7日目に10分間の尾懸垂試験を行った。SITH−1/Advの鼻腔投与後も80mg/L Fluoxetine溶液を与えて飼育した。このようなSSRI投与群としてマウス21匹を実験に使用した。SSRIの投与による無動時間への影響を図1Bに示す。統計学的有意(*は、P<0.05を示し、**は、P<0.01を示し、***は、P<0.001を示す)は、Mann−Whitney U−testを用いて算出した。

0118

図1Bより、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスで観察された無動時間の増加は、SSRIの投与により抑制されたことから、SITH−1/Advの鼻腔投与で誘導されるうつ病様行動はSSRIの投与によって改善されることが示された。なお、FluoxetineはBcl−2発現を促進する(文献13)ことを考慮すると、この結果は、Bcl−2発現を促進する気分障害治療剤が、SITH−1発現により生じる気分障害の治療薬として使用できることを裏付けている。

0119

(2.3) SITH−1発現アデノウイルスを鼻腔投与したマウスの遺伝子発現解析
SITH−1/Advを鼻腔投与した結果、遺伝子発現が変化するかを検討するために、尾懸垂試験から24時間後に、empty/Adv鼻腔投与マウスおよびSITH−1/Adv鼻腔投与マウスの嗅球と脳を採取した。嗅球と脳のRNAを精製し、うつ病に関わる因子およびアポトーシス関連因子のmRNA量をリアルタイムRT−PCRで定量した。リファレンス遺伝子として、β−アクチン遺伝子を用いた。

0120

うつ病に関わる因子として、嗅球を除く全脳のCRH、REDD1、およびUrocortin遺伝子の発現量を図2に示す。なお、図2(B)のDdit4は、REDD1の別名である。さらに、嗅球のBcl−2、Bax遺伝子の発現量およびその比(Bax/Bcl−2)を図3に示す。統計学的有意(*は、P<0.05を示し、**は、P<0.01を示し、***は、P<0.001を示す)は、Mann−Whitney U−testを用いて算出した。

0121

うつ病に関わる因子については、empty/Adv鼻腔投与マウス25匹とSITH−1/Adv鼻腔投与マウス25匹の全脳(嗅球を除く)の各遺伝子の発現量を比較した。一方、アポトーシス関連因子については、empty/Adv鼻腔投与マウス20匹とSITH−1/Adv鼻腔投与マウス20匹の嗅球のアポトーシス関連遺伝子の発現量を比較した。

0122

図2より、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスの全脳におけるCRH、REDD1、およびUrocortin遺伝子の発現量は、empty/Adv鼻腔投与マウスよりも有意に増加していた。従って、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスは、うつ病患者と同様に、CRH、REDD1、およびUrocortinの発現増加を示すことが明らかとなった。

0123

また、図3より、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスの嗅球において、empty/Adv鼻腔投与マウスよりもアポトーシス抑制因子であるBcl−2の発現が有意に低下していた(図3A)。一方、アポトーシス促進因子であるBaxの発現量に有意な差は見られなかった(図3B)。アポトーシス指標となるBax/Bcl−2比を求めた結果、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスの嗅球で有意な上昇が認められた(図3C)。

0124

従って、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスは、嗅球においてアポトーシスが誘導されており、この結果は、うつ病患者で観察される嗅球の萎縮に関連していると考えられる。

0125

(2.4) SITH−1発現アデノウイルスを鼻腔投与したマウスの免疫組織染色
尾懸垂試験から24時間後に、empty/Adv鼻腔投与マウスおよびSITH−1/Adv鼻腔投与マウスを10%中性緩衝ホルマリン溶液で固定し、頭蓋骨上顎部位のパラフィン切片を作製した。

0126

(2.4.1)マウス頭蓋骨上顎部位パラフィン切片のTUNEL染色
パラフィン切片スライドのTUNEL染色は、in situ Apoptosis Detection Kit(TaKaRa Bio)の標準プロトコールに従った。核の対比染色としてPIを含む封入剤VECTASHIELD Mounting Medium with PI(VECTOR Laboratories)を使用した。

0127

蛍光顕微鏡で観察した結果を図4Aに、嗅球に存在するTUNEL染色細胞数を計数した結果を図4Bに示す。図4Aでは、アポトーシスによって断片化されたゲノムがTUNEL染色により緑色に染色されており、細胞の核がPIにより赤色に染色されている。図4Bにおいて、統計学的有意(*は、P<0.05を示し、**は、P<0.01を示し、***は、P<0.001を示す)は、Mann−Whitney U−testを用いて算出した。empty/Adv鼻腔投与マウスと比較して、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスの嗅球で、TUNEL染色された細胞が多数観察された。この結果は、遺伝子発現解析の結果と一致しており、SITH−1/Advの鼻腔投与は、嗅球のアポトーシスを誘導することが示された。

0128

(2.4.2)マウス嗅上皮細胞のSITH−1発現
SITH−1/Advを鼻腔投与することにより、嗅上皮細胞でSITH−1タンパク質が発現していることを確認するために、パラフィン切片の免疫組織染色を行った。パラフィン切片スライドは、脱パラフィン処理した後に、98℃のTris−EDTABuffer(100mM Tris,10mM EDTA,0.5% Tween20,pH9.0)に20分間浸すことで抗原の賦活化を行った。賦活化後のスライドにImage−iT(商標) FX Signal Enhancer(Life technologies)を滴下し、室温で30分間静置することでブロッキング反応を行った。

0129

その後、Can Get Signal immunostain Solution A(TOYOBO)でウサギ抗SITH−1抗体およびマウス抗GFAP抗体(Abcam)を100倍希釈した溶液を滴下し、4℃で一晩静置した。反応終了後スライドグラスを0.2% Tween20/PBS溶液で3回洗浄した。

0130

Can Get Signal immunostain Solution AでAlexa Fluor 488 goat anti−rabbitIgG(H+L)(invitrogen)およびAlexa Fluor 594 goat anti−mouse IgG(H+L)(invitrogen)をそれぞれ250倍、400倍希釈した溶液を滴下し、37℃で1時間静置した。

0131

反応終了後にスライドグラスを0.2% Tween20/PBS溶液で3回洗浄し、スライドを乾燥させ、封入剤ProLong Gold Antifade Reagent with DAPI(Life technologies)を用いてカバーグラスを固定した。蛍光顕微鏡で観察した結果を図5に示す。

0132

図5において、矢印で示す細胞はSITH−1タンパク質の発現が見られるアストロサイトである。図5より、抗SITH−1抗体と抗GFAP抗体の両方で染色される細胞はSITH−1/Adv鼻腔投与マウスの嗅上皮細胞でのみ観察された。すなわち、SITH−1/Advの鼻腔投与により、マウスの嗅上皮細胞でSITH−1タンパク質が発現することを確認できた。

0133

(2.5) SITH−1発現アデノウイルスを鼻腔投与したマウスのストレス脆弱性試験
SITH−1/Advを鼻腔投与することにより、マウスがストレスに対して過敏になり脆弱性が増す可能性を検討するために、ストレス脆弱性の検討を行った。

0134

8週齢のマウスを単離飼育し、SITH−1/Advを投与する3日前から、飲料水として、水と1%スクロース溶液を与え、2種類の飲料の飲水割合を平衡化させた。3日後にSITH−1/Advを鼻腔投与し、半数のマウスのケージを20度に傾けて飼育した。24時間毎飲水量を記録した。

0135

SITH−1/Adv鼻腔投与後7日目において、水平の飼育ケージで単離飼育したマウス(normal;n=20)と20度に傾けたケージで単離飼育したマウス(slant;n=20)の1%スクロース溶液の飲水割合(1%スクロース溶液の飲水量/全飲水量(水の飲水量+1%スクロース溶液の飲水量))を図6に示した。統計学的有意(*は、P<0.05を示し、**は、P<0.01を示し、***は、P<0.001を示す)は、Mann−Whitney U−testを用いて算出した。

0136

図6より、ケージを傾けるマイルドストレスの付与によりSITH−1/Adv鼻腔投与マウスのスクロース嗜好性は低下していた。従って、SITH−1/Adv鼻腔投与マウスはマイルドストレスに対して過敏になり、うつ病患者で観察される「喜び喪失」行動を示すことから、嗅上皮アストロサイトにおけるSITH−1タンパク質の発現はストレス脆弱性を引き起こすと考えられる。

0137

(3)HHV−6感染阻害剤によるSITH−1発現の抑制
HHV−6感染阻害剤によって、HHV−6宿主細胞におけるSITH−1発現が抑制されるかどうかを検証した。

0138

(3.1)HHV−6中和抗体によるSITH−1の発現抑制
HHV−6感染阻害剤としてHHV−6の中和抗体を用いて、実験を行った。中和抗体として抗HHV−6B p98(gH)モノクローナル抗体を使用した。また、健常人血清においても抗HHV−6抗体が含まれていることから、10倍の希釈系列を作成して実験に使用した。

0139

健常人血清を56℃で30分間置いた(非働化)。HHV−6 HST株ウイルス液(2.9×106ffu/ml)と、非働化した健常人血清(希釈なし、培地(10%FBS含有DMEM)にて10倍、100倍希釈)又は抗HHV−6B p98(gH)モノクローナル抗体(Clone:OHV−3)(培地にて10倍希釈)、及び対照として培地のみを同量混合し、37℃で1時間反応させた。

0140

次に、処理したウイルス液をU373アストロサイトーマ細胞に遠心法で細胞1個に対するウイルス数(multiplicity of infection:MOI)3で感染させ、CO2インキュベーターにて、37℃で48時間培養した。得られた感染細胞からRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて、標準プロトコールに従い、RNAを精製した。さらに、PrimeScriptRTReagent Kit(Takara Bio)を用いて、cDNAを合成した。

0141

最後にSITH−1、GAPDmRNA発現量をApplied Biosystems 7300 Real−TimePCRsystem(Life Technologies)を用いて測定した。測定は、下記の条件で2回行った。リアルタイムPCR条件:Premix Ex Taq(Perfect Real Time)(Takara Bio Inc.) 12.5μl、PCRフォワードプライマー(100μM) 0.225μl、PCRリバースプライマー(100μM) 0.225μl、TaqManプローブ(10μM) 0.625μl、Rox reference dye 0.5μl、cDNA2μl、PCR等級水 8.925μlの計25μl。初期ステップが、95℃で30秒、次に、95℃で5秒、60℃で31秒を45サイクル

0142

プローブ及びプライマーの配列は下記の通りである:
SITH−1フォワードプライマー:配列番号4、
SITH−1リバースプライマー:配列番号5、
SITH−1プローブ:配列番号6(5’末端にFAM配列、および3’末端にTAMRA配列が付加されている)、
GAPDHフォワードプライマー:配列番号7、
GAPDHリバースプライマー:配列番号8、および
GAPDHプローブ:配列番号9(5’末端にFAM配列、および3’末端にTAMRA配列が付加されている)。

0143

なお、データの解析は、Sequence Detection Software version 1.4(Applied Biosystems)を用いた。得られた結果を図7に示した。

0144

その結果、健常人血清については希釈するほどSITH−1発現量が増加した(図7A)ことから、健常人血清に含まれる抗HHV−6抗体によりHHV−6感染が妨げられ、SITH−1の発現が抑制されたと考えられる。また、HHV−6を感染前に血清ならびに抗HHV−6B p98(gH)モノクローナル抗体と反応させることで、U373細胞でのSITH−1の発現が抑制された(図7B)。

0145

以上から、抗HHV−6抗体を増加させることにより、SITH−1の発現を抑制することが示された。

0146

(3.2)ヘパリン、抗ヘパラン硫酸ペプチドによるSITH−1の発現抑制
HHV−6感染阻害剤としてヘパリン及び抗ヘパラン硫酸ペプチドを用いて、実験を行った。

0147

U373アストロサイトーマ細胞をトリプシン−EDTAを用いて剥離し、培地(10%FBS含有DMEM)を加えて、1×105細胞/mLとした。次にU373細胞とノボ・ヘパリン(持田製薬)10単位/mL又はanti−3−OS Heparan sulfate(HS) peptide trifluoroacetate salt(Sigma-Aldrich)0.1mM、及び対照として培地のみとを4℃で1時間反応させた。培地にて、得られた細胞を3回洗浄した。そしてHHV−6 HST株ウイルス液(2.9×106ffu/ml)を洗浄したU373細胞に遠心法にて、MOI3で感染させた。CO2インキュベーターにて、37℃で48時間培養した。

0148

得られた感染細胞からRNeasy Mini Kit(Qiagen)を用いて、標準プロトコールに従い、RNAを精製した。さらに、PrimeScriptRTReagent Kit(Takara Bio)を用いて、cDNAを合成した。最後にSITH−1、GAPDHmRNA発現量を上記3.1と同様の方法で測定した。得られた結果を図8に示す。

0149

ヘパリン、抗ヘパラン硫酸ペプチドのいずれを用いた場合も、HHV−6感染前にU373細胞と反応させることで、U373細胞でのSITH−1の発現が抑制された(図8A、8B)。

0150

(4) SITH−1の構造および機能
(4.1) SITH−1の同定
ヒトヘルペスウイルス−6バリアントB(HHV−6B)は、子供時代に多くの人々に感染し、突発性発疹を引き起こし、持続的感染または潜伏感染を確立する。ここでは、まず、脳特異的HHV−6B潜伏タンパク質を同定することを行った。HHV−6B潜伏タンパク質の同定は、下記の方法により行った。

0151

(4.1.1) SITH−1mRNAの単離方法
すなわち、我々は、マクロファージ初代培養細胞を含む、以前に公開されたHHV−6B潜伏感染システムを用いた(文献1および4)。再活性化刺激を用いて、促進HHV−6B潜伏転写産物発現の中間状態に入るように誘導した、HHV−6Bを潜伏感染させたマクロファージ(MΦ)の初代培養細胞からmRNAを単離した。これらの初代培養細胞から精製したmRNAを用いて、ランダムプライマーセンス転写産物の逆転写プライマーとしてIE4RB(配列番号10)、およびアンチセンス転写産物の逆転写プライマーとしてIE2FB(配列番号11)を用いて、逆転写反応を行った。

0152

続いて、プライマーIE4RBおよびIE2FBを用いたPCR、およびそれに続く内部プライマーIE4RA(配列番号12)およびIE2FA(配列番号13)を用いたダブルネスト(double−nested)PCRにより、逆転写産物(cDNA)を増幅した。H6LTと逆方向にコードされたmRNAの存在を確認するために、ランダムプライマー、H6LTと同じ方向にコードされたmRNA(センス鎖)についての逆転写プライマーとしてIE4RB、および逆方向にコードされたmRNA(アンチセンス鎖)についての逆転写プライマーとしてIE2FBを用いて、逆転写反応を行った。

0153

以前に報告された方法(文献4および9)を用いて5’−RACEおよび3’−RACEPCRを行った。約20個のdA残基をcDNAの5’末端に付加し、そこにアンカープライマーRL−1(配列番号14)をアニールした。

0154

PCRの最初の10サイクルについて、Taq polymerase(Roche Diagnostics)ならびにプライマーN2(配列番号15)およびαR1(配列番号16)を、下記の条件下で使用した:94℃で1分間の熱変性;55℃で1分間のアニーリング;および72℃で1分間の伸長反応。次のPCR増幅において、KODPlus DNA polymerase(Toyobo)ならびにプライマーN1(配列番号17)およびαR1を、下記の条件下で使用した:94℃で1分間の熱変性;65℃で30秒間のアニーリング;および68℃で1分間の伸長反応(15サイクル)。PCR増幅産物の塩基配列を決定した。

0155

続いて、cDNA−3’末端のポリテールに、アンカープライマーRL−1をアニールした。PCRの最初の10サイクルについて、Taq polymerase(Roche Diagnostics)ならびにプライマーN2およびαF1 (配列番号18)を、下記の条件下で使用した:94℃で1分間の熱変性;55℃で1分間のアニーリング;および72℃で1分間の伸長反応。次のPCR増幅において、KODPlus DNA polymerase(Toyobo)ならびにプライマーN1(配列番号19)およびαF1を、下記の条件下で使用した:94℃で1分間の熱変性;65℃で30秒間のアニーリング;および68℃で1分間の伸長反応(15サイクル)。PCR増幅産物の塩基配列を決定した(図13C参照)。

0156

(4.1.2) 結果
上記の方法で得られた脳特異的HHV−6B潜伏タンパク質を、SITH−1(HHV−6の中間段階の転写産物によりコードされた小タンパク質)−1と名付けた(図9Aおよび図13A−D)。

0157

なお、図9Aで示されたI型およびII型のHHV−6B潜伏転写産物(H6LT)は、以前に報告されていたものである(文献2および4)。図9A中、細線は、イントロンを示し、濃い矢印は、エクソンを示し、白色のボックスは、オープンリーディングフレームを示す。

0158

図13Bでは、ダブルネストRT−PCRにより潜伏転写産物を増幅させた結果を示す。レーン1−3は、HHV−6Bを潜伏感染させたマクロファージ(MΦ)の初代培養細胞からmRNAを単離した結果である。レーン4−6は、対照として、HHV−6Bを増殖感染させたMT−4細胞を、同じ方法を用いて試験した結果である。また、逆転写反応のために、以下に示すプライマーが用いられた:レーン1および4ではランダムプライマー、レーン2および5ではIE4RB、レーン3および6ではIE2FB。

0159

図13Bより、潜伏感染させたMΦについてのセンス鎖増幅産物が、遺伝子産物H6LTから増幅された351bpの産物であることが確認された。それはまた、潜伏感染に特異的であることも確認された(レーン2)。対照的に、925bpの産物がアンチセンス鎖で増幅された(レーン3)。HHV−6Bにより増殖感染させたMT−4細胞のmRNAを用いると、351bpの産物のみがセンス鎖から増幅された(レーン4−6)。さらに、HHV−6B DNAから、1242bpの産物を増幅した(レーン7)。

0160

また、図13Dより、5’−RACEおよび3’−RACEによって、1284bpおよび527bpの産物が増幅されたことが確認された。図13Dにおいて、レーン1は、5’−RACE産物を示し、レーン2は、3’−RACE産物を示す。Mは、サイズマーカーを示す。

0161

(4.2) SITH−1の組織特異的発現
SITH−1の発現態様を調べるために、マクロファージ(MΦ)細胞株THP−1およびHL−60、ならびにアストロサイト細胞株U373およびA172にHHV−6Bを感染させた。各細胞の培養およびウイルスの感染は、下記の方法で行った。

0162

(4.2.1)ウイルスおよび細胞
マクロファージ細胞株THP−1およびHL−60を、10%ウシ胎児血清を含有するRoswell Park Memorial Institute培地(RPMI1640)で培養した。アストロサイトーマ細胞株U373およびA172を、10%ウシ胎児血清を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。HHV−6BのHST株を用いて、遠心分離により(37℃、2000g、30分)、1の感染の多重度(MOI)でTHP−1およびHL−60細胞に、10のMOIでU373およびA172細胞に感染させた。

0163

(4.2.2)リアルタイムRT−PCR
BioRobot EZ1およびEZ1 RNA Cell Mini Kit(Qiagen)を用いて、上記ウイルス感染後7日目の細胞から全RNAを精製した。PrimeScript RT Reagent Kit(Takara Bio)を用いて、全RNAからcDNAを合成した。FastStart TaqMan Probe Master(Rox)(Roche Diagnostics)およびApplied Biosystems 7300 Real−Time PCR system(Life Technologies)を用いて、mRNA量を2回定量した。下記のプライマーおよびプローブを用いて、HHV−6Bセンス転写産物(「H6LT」ともいう。)を測定した。SITH−1およびGAPDHについては、上記(3.1)のプライマーを使用した。

0164

H6Sフォワードプライマー:配列番号20、
H6Sリバースプライマー:配列番号21、および
H6Sプローブ:配列番号22(5’末端にFAM配列、および3’末端にTAMRA配列が付加されている)。

0165

(4.2.3) 結果
図9Bおよび図14より、HHV−6Bは、アストロサイトおよびマクロファージの両方に、潜伏的に感染するが、SITH−1の発現が選択的にアストロサイト細胞株(グリア細胞)で生じることを確認できた。また、これらの細胞内でウイルスの複製は観察されなかった。なお、図14において、測定値は、SITH−1とGAPDHとの比率として示し、値は、平均±s.e.m.である。

0166

(4.3) SITH−1とカルシウムシグナル調節シクロフィリンリガンド(CAML)との結合
SITH−1と結合するタンパク質を探索するために、酵母ツーハイブリッドスクリーニングを行った。続いて、得られたSITH−1結合タンパク質について、哺乳類ツーハイブリッドアッセイにより、SEAP活性を測定した。

0167

(4.3.1)酵母ツーハイブリッドスクリーニング
Matchmaker Two−Hybrid System 2(Clontech Laboratories)を用いて、標準的なプロトコールに従い、SITH−1タンパク質と相互作用するタンパク質についてスクリーニングした。

0168

SITH−1をpAS2−1ベクターにクローン化し、SITH−1とGAL4DNA結合ドメイン(DNA−BD)との融合タンパク質を作製した。PCRにより、SITH−1cDNAからSITH−1を増幅した。

0169

SITH−1との相互作用を調べるために、標準的なプロトコールに従って、選択培養培地(ヒスチジンロイシンおよびトリプトファン不含)を用いることにより、ヒト胎児脳のMatchmakercDNALibrary pACT2(Clontech Laboratories)およびPretransformed Matchmaker cDNA Libraries Mouse 17−day Embryo(Clontech Laboratories)に対して、pAS2−1−SITH−1をスクリーニングした。約30個の酵母クローンが得られ、塩基配列を決定し、その多くがCAMLまたはCAML断片を含むものとして同定された。

0170

(4.3.2)哺乳類ツーハイブリッドアッセイ
Mammalian Matchmaker Two−Hybrid Assay Kit(Takara Bio)を用いて、哺乳類細胞内でのSITH−1とCAMLとの結合を確認した。SITH−1をpM(GAL4)プラスミドにクローン化した(pM−SITH−1)。ヒトCAMLおよびマウスCAMLをpVP−16プラスミドにクローン化した(pVP16−HsCAML、pVP16−MmCAML)PCRにより、pCMV−SPORT6−CAMLプラスミド(Invitrogen)からヒトCAMLを増幅した。PCRにより、マウス胎児脳cDNAからマウスCAMLを増幅した。293T細胞にpG5SEAPレポータープラスミド; pM−SITH−1もしくはpM(GAL4)プラスミド; pVP16−HsCAML、pVP16−MmCAMLもしくはpVP16プラスミド; および内部コントロールとしてのpMetLucコントロールプラスミドを共導入した。

0171

Great EscAPe SEAP Chemiluminescene Kit(Takara Bio)を用いて、SEAP活性を測定した。Secreted Luciferase Reporter System(Takara Bio)を用いて、分泌されたルシフェラーゼ活性を測定した。

0172

(4.3.3) 結果
図9Cより、SITH−1は、ヒトおよびマウスの両方において、脳で高発現しているタンパク質であるCAMLに結合することを確認できた。なお、図9Cにおいて、***は、P<0.0005を示す。

0173

(4.4) SITH−1のCAMLmRNA発現への影響
SITH−1がCAMLmRNAの発現に影響を与えているかを調べるために、SITH−1を発現させた細胞におけるCAML mRNAの発現状態を調べた。続いて、SITH−1を発現させた細胞における細胞内カルシウム濃度を調べた。SITH−1の細胞内での発現および発現量の測定(mRNAおよびタンパク質)、ならびに細胞内カルシウム濃度の測定は、下記の方法で行った。

0174

(4.4.1) 構成的SITH−1発現U373細胞の作製
標準的な方法に従って、Retro−X Universal Packaging System(Takara Bio)を用いて、SITH−1発現組み換えレトロウイルスを調製した。レトロウイルスベクターpQCXIPにSITH−1をクローン化した(pQC−SITH−1−IP)。このベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)早期段階プロモーターの制御下で、SITH−1、IRESおよびピューロマイシン耐性についての遺伝子を構成的に発現するように作製することができる。

0175

パッケージング細胞GP2−293およびリン酸カルシウム法を用いて、エンベロープベクターp10A1とpQC−SITH−1−IPまたはpQCXIP(挿入なし)を共導入した。組み換えレトロウイルスをGP2−293細胞内で調製し、導入の48時間後にウイルス上清回収した。U373−MGアストロサイトーマ細胞に組み換えレトロウイルスを感染させた。感染後、細胞を1μg/mLピューロマイシン(Calbiochem)で処理し、構成的にSITH−1を発現するU373細胞(U373-SITH−1)またはレトロウイルスベクターを感染させたU373細胞 (挿入なし; U373-Vector)を選択した。

0176

(4.4.2)CAMLmRNAの測定
BioRobot EZ1およびEZ1 RNA Cell Mini Kit(Qiagen)を用いて、U373-SITH−1およびU373−Vector細胞から全RNAを精製した。PrimeScriptRTReagent Kit(Takara Bio)を用いて、全RNAからcDNAを合成した。SYBR Premix Ex Taq(Takara Bio)およびApplied Biosystems 7300 Real−TimePCRsystem(Life Technologies)を用いて、ヒトCAML mRNAを2回定量した。下記のプライマーを用いて測定を行った:
HsCAMLフォワードプライマー:配列番号23、および
HsCAMLリバースプライマー:配列番号24。

0177

(4.4.3) 抗体の作製
PCRにより増幅したSITH−1をpET−42a(+)DNAプラスミドにクローン化した(pET42−SITH−1)。次いで、シャペロンコンピテントpG−TF2/BL21細胞内でGSTタグ化SITH−1タンパク質を発現させた。ウサギに精製したGSTタグ化SITH−1タンパク質を投与し、抗SITH−1ウサギポリクローナル抗体を作製した。

0178

(4.4.4)免疫蛍光染色
U373-SITH−1およびU373−Vector細胞を、冷アセトンメタノールで10分間固定した。固定した細胞を、37℃で1時間、抗SITH−1ウサギポリクローナル抗体および抗CAMLヤギポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology)と反応させた。

0179

PBSでの洗浄後、Alexa Fluor 594ロバ抗ウサギ二次抗体(Molecular Probes)およびAlexa Fluor 488ロバ抗ヤギ二次抗体 (Molecular Probes)を加えて、37℃で30分間反応させた。次いで、PBSでの洗浄を繰り返した。サンプルをカバーグラスと共にスライド上に載せた後、Olympus BX51顕微鏡およびCCDカメラDP70, Olympus)を用いて、同じ光学条件下でそれらを観察した。

0180

(4.4.5)細胞内カルシウム濃度の測定
SITH−1を発現するU373細胞[SITH−1(+)]またはSITH−1を発現しないU373細胞[SITH−1(−)]を、グラススライド上で培養した。蛍光カルシウム試薬fura−2 acetoxymethyl ester(fura−2AM, Molecular Probes)を、10%FBSを含有するDMEM培地に加えて、暗条件下で、37℃で30分間反応させ、細胞に試薬を取り込ませた。

0181

スライド上で細胞を洗浄し、続いて、カルシウムの有無条件下で、Hanks’s Balanced Salt Solution(HBSS)に浸した。calciumATPase inhibitor thapsigargin(100nM, Calbiochem)で細胞を刺激した。CCDカメラ(IX71,DP70, Olympus)およびLumina Vision software(Mitani Corporation)を備えた顕微鏡の下で、340nmおよび380nmの励起波長でのイメージを得た。ImageJ(NIH)を用いて、6個の細胞の平均輝度を測定した。

0182

(4.4.6) 結果
図9Dおよび図15より、SITH−1は、CAMLmRNAの発現レベルを変えることなく、CAMLタンパク質のアストロサイトへの蓄積を引き起こすことを確認できた。CAMLタンパク質の発現は、SITH−1を発現しないU373細胞(対照)で弱かったが、SITH−1を発現するU373細胞で増加した(図9D)。SITH−1はまた、神経毒性を生じ得るアストロサイトにおけるカルシウム流入の増加を促進することを確認できた(図9E)。すなわち、細胞外カルシウムが存在する場合に、TG刺激により、SITH−1が細胞内へのカルシウム流入を促進する機能を有することが判明した。なお、図9Dにおいて、赤色は、SITH−1を示し、緑色は、CAMLを示す。スケールバーは、100μmである。図9Eでは、タプシガルギン(TG)を用いて、0時点で細胞を刺激した。値は、平均±s.e.m.である。また、図15では、測定値は、HsCAMLとGAPDHとの比率として示し、値は、平均±s.e.m.である。

0183

(5) 抗SITH−1抗体価、ストレス、および自殺企図の関連
(5.1)HHV−6Bと労働時間との関連
HHV−6Bの再活性化が労働時間と関連しているか調べるため、29人の健常なボランティアで試験した。具体的には、下記の方法により試験を行った。

0184

(5.1.1)試験対象
ストレスと唾液中のHHV−6Bとの関係を調べるために、29人の健常なボランティア(42.6±1.8[平均±s.e.m.];15人の女性および14人の男性)を試験に登録した。株式会社総医研ホールディングスによる広告を用いて、健常なボランティアを募集した(文献5)。慢性的に薬剤もしくは補助ビタミンを摂取している参加者、または40kg未満の体重である参加者は除外された。試験の1ヶ月以内に献血を受けた参加者、血液ヘモグロビンレベルが12.0g/dL未満の参加者、または睡眠時間が7時間未満の参加者はまた除外された。

0185

(5.1.2)唾液サンプル
製造者のプロトコールに従って、BioRobot EZ1 workstationおよびEZ1 virus mini kit v2.0(Qiagen)を用いた自動単離により、400μLの唾液サンプルからウイルスDNAを抽出した。90μLの溶出バッファーでDNAを溶出した。

0186

Applied Biosystems 7300 Real−TimePCRsystemを備えたリアルタイムPCRにより、唾液サンプル中のHHV−6B DNAのコピー数を定量した。25μL Premix Ex Taq(Perfect Real Time; Takara Bio Inc., Otsu, Japan)、0.45μL PCRフォワードプライマー(100μm)、0.45μL PCRリバースプライマー(100μm)、1.25μL TaqMan probe(10μM)、1μL Rox reference dye、5 μLウイルスDNA、および16.85μL PCR等級水を含む全量50μLで2回の増幅を行った。下記のプライマーがリアルタイムPCRのために使用された:
HHV−6Bフォワードプライマー:配列番号25、
HHV−6Bリバースプライマー:配列番号26、 および
HHV−6Bプローブ:配列番号27(5’末端にFAM配列、および3’末端にTAMRA配列が付加されている)。

0187

熱プロファイルは、95℃で30分間、その後、95℃で5秒間および60℃で31秒間を50サイクルであった。Sequence Detection Software version 1.4(Life Technologies)を用いて、データ解析を行った。

0188

(5.1.3) 結果
図10Aより、29人の健常なボランティア(15人の女性および14人の男性)において、唾液(持続的HHV−6Bの主要な保存場所)中のHHV−6BDNAコピー数および1週間にわたって記録された労働時間が正の相関を示すことを確認できた。このことは、ストレスが持続的HHV−6Bの再活性化を増大させることを示唆している。

0189

なお、図10Aにおいて、ρ = 0.44であり、P<0.05である。また、スピアマン順位相関係数により検定が行われた。

0190

(5.2) SITH−1IgG抗体
脳へのHHV−6B感染を血漿抗SITH−1抗体試験により評価し得ることを証明するために、マウスにコントロールベクターまたはSITH−1を投与した後、末梢血における抗SITH−1 IgG抗体価を調べた。コントロールベクターまたはSITH−1の投与、および抗SITH−1 IgG抗体価の測定は、下記の方法で行った。

0191

(5.2.1)マウスおよびSITH−1投与
妊娠したC57BL/6CrSlcマウスをSLC Japanから購入した。マウスを、温度および湿度制御条件下、各々12時間の明暗サイクル(9時に着灯)、食餌および水へのアクセス自由な条件で、動物室内の標準的なケージで維持した。誕生の日に、30Gシリンジを用いて、新生児マウスの脳の右側頭葉にAd−GFAP−SITH1(SITH1)またはAxcwit(ベクター)組み換えアデノウイルスを投与した。すべての動物実験は、動物実験規制に基づいて行われ、東京慈恵会医科大学の動物実験委員会により承認された。

0192

(5.2.2)間接蛍光抗体(IFA)アッセイ
標準的な分子生物学的な手法を用いて、SITH−1をCMVプロモーター(pFLAG-SITH−1−CMV2)の制御下でpFLAG−CMV2(Sigma-Aldrich)にクローン化した。LipofectamineLTX(Invitrogen)を用いて、Lab−Tek chamber slides(Nunc)上で培養したHEK293T細胞にpFLAG-SITH−1−CMV2を導入した。

0193

免疫反応エンハンサー溶液Can Get Signal immunostain solution(Toyobo)を用いて、血漿を160倍に希釈した。血漿をスライド上で、4℃で一晩反応させた。PBS−0.05% TweeN20で洗浄後、スライドを、37℃で1時間、Can Get Signal immunostain solutionで200倍に希釈したAlexa Fluor 488ヤギ抗ヒト二次抗体(Molecular Probes)と反応させた。PBS−0.05% TweeN20で洗浄後、カバーグラスをスライド上に載せた。Olympus BX51顕微鏡およびCCDカメラを用いて、すべてのサンプルを同じ条件下で観察した。

0194

(5.2.3) 結果
図10Bより、SITH−1がマウスアストロサイトで産生されるときに、血液中のSITH−1IgG抗体価が増大することを確認できた。このことは、これらの細胞が血液脳関門を構成しているとの示唆と一致している。

0195

なお、図10Bにおいて、値は、平均±s.e.m.であり、RLUは、相対発光量を示す。

0196

(5.3) 抗SITH−1抗体価と自殺企図との関連
続いて、抗SITH−1抗体価と自殺企図との関連を調べるために、自殺企図により病院に収容された精神疾患を患う患者を集めた(図17A−C)。試験は、患者が病院に収容された日に(すなわち、患者が自殺企図を行った直後に)回収された血漿サンプルについて行われた。血漿中の抗SITH−1抗体を検出するために、上記の間接蛍光抗体アッセイが使用された。

0197

(5.3.1) 対象
自殺企図と血漿抗SITH−1抗体価との関係を調べるために、自殺を企図して失敗し、東京都立沢病院で緊急治療を受けた66人の患者(31人の男性、35人の女性)を試験に登録した(文献3)。

0198

DSM−IV 1軸疾患のための構築された臨床インタビュー(clinician version(SCID−I,CV))を用いて、これらの対象を診断した。試験集団は、主要な抑うつ疾患を患う33人の患者、双極性障害を患う11人の患者、統合失調症を患う11人の患者、および他の精神疾患を患う11人の患者から構成された。精神衛生相談歴のない40人の健常なボランティア(11人の男性、29人の女性)を対照群とした。HHV−6B再活性化に関連するストレス以外の要因として、薬剤性過敏症症候群や強度の免疫抑制が知られている。しかしながら、この試験での患者は、これらの状態を示す症状を全く有していなかった。

0199

(5.3.2) 結果
図10CおよびDより、対照群よりも自殺企図した集団において、抗SITH−1抗体価が有意に高いことを示した。抗SITH−1抗体は、66人の自殺企図者のうち38人(57.6%)で陽性であることを確認できた。

0200

なお、図10Cにおいて、スケールバーは、100μmである。また、図10Dにおいて、横線は、平均値を示し、**は、P<0.01を示す。

0201

また、自殺企図を予測するために、抗SITH−1抗体価の感度および特異性を調べた結果を図20に示す。図20において、黒丸は感度を示し、白丸は特異性を示す。また、X軸は、抗SITH−1抗体価を示す。抗SITH−1抗体価の感度は、70.0%の特異性で57.6%であり(10.1%カットオフ)、82.5%の特異性で、33.3%であった(15.6%カットオフ)。

0202

(5.4) 対象における精神疾患と年齢との関連
続いて、対象の年齢と精神疾患の発症等との関連性を調べるために、下記の実験を行った。

0203

(5.4.1)試験
(5.3.1)と同じ東京都立松沢病院で緊急治療を受けた66人の患者(31人の男性、35人の女性)を自殺企図群、精神科受診歴のない40人の健常者(11人の男性、29人の女性)を対照群として、精神疾患と年齢、発症年齢との関係を分析した。

0204

(5.4.2) 結果
対照群の年齢は、38.8±2.1歳(平均±s.e.m.)であり、自殺企図群の年齢は、38.7±1.8歳(平均±s.e.m.)であった(図17A)。したがって、2つの集団間で有意な差は観察されなかった(n.s.は、有意な差はなかったことを示す)。自殺企図群の疾患発症の平均年齢は、26.9±1.7歳(± s.e.m.)であり(図17B)、自殺企図群のSBが開始された平均年齢は、31.2 ± 2.1歳であった(図17C)。

0205

(6)アストロサイトにおけるSITH−1発現の影響
(6.1) SITH−1とストレス等との関連
HHV−6Bのアストロサイトへの不稔感染または持続的な感染の間に産生され得る潜伏タンパク質SITH−1の影響を調べるために、GFAPプロモーターの制御下でSITH−1を発現するアデノウイルスベクターをマウス脳へ投与して、アストロサイト特異的にSITH−1を産生させる実験を行った。マウスへの投与は、上記と同様の方法により行った。

0206

(6.1.1)免疫蛍光染色
3週齢のSITH−1発現マウスからの全脳の免疫染色のために、最初に4% PFAを用いて、組織還流固定した。2%ウシ血清アルブミン(BSA)でスライスをブロック後、それらを、25℃で16時間、抗SITH−1ウサギ抗体(1:1000希釈)および抗GFAPポリクローナルニワトリ抗体(Abcam;1:500希釈)と反応させた。

0207

PBSでの洗浄後、Alexa Fluor 594ロバ抗ウサギ二次抗体(1:400希釈)およびAlexa Fluor 488ヤギ抗ニワトリ二次抗体(Molecular Probes;1:400希釈)を加えて、37℃で30分間反応させて、SITH−1およびGFAPを検出した。次いで、PBSでの洗浄を繰り返した。サンプルをカバーグラスと共にスライド上に載せた後、Olympus BX51顕微鏡およびCCDカメラ(DP70, Olympus)を用いて、それらを観察した。

0208

(6.1.2)リアルタイムRT−PCR
SITH−1を発現するアデノウイルスベクターをマウス脳へ投与した3週目と5週目の試料を用いて、リアルタイムRT=PCRを行った。BioRobot EZ1およびEZ1 RNA Universal Tissue Kit(Qiagen)を用いて、マウス全脳から全RNAを精製した。PrimeScript RT Reagent Kit(Takara Bio)を用いて、全RNAからcDNAを合成した。

0209

FastStart TaqMan Probe Master(Rox)(Roche Diagnostics)およびApplied Biosystems 7300 Real−TimePCRsystem (Life Technologies)を用いて、mRNA量を2回定量した。下記のプライマーおよびプローブを用いて、CRH、マウスBDNF、およびβ−アクチン(ACTB)を測定した。SITH−1については、上記(3)のプライマーを使用した。

0210

BDNFフォワードプライマー:配列番号28、
BDNFリバースプライマー:配列番号29、
BDNFプローブ:配列番号30(5’末端にFAM配列、および3’末端にTAMRA配列が付加されている)、
MmACTBフォワードプライマー:配列番号31、
MmACTBリバースプライマー:配列番号32、および
MmACTBプローブ:配列番号33(5’末端にFAM配列、および3’末端にTAMRA配列が付加されている)。

0211

CRHフォワードプライマー:配列番号34、
CRHリバースプライマー:配列番号35、および
CRHプローブ:配列番号36(5’末端にFAM配列、および3’末端にTAMRA配列が付加されている)。

0212

(6.1.3)プレパルス阻害測定
SR−LAB startle response system(San Diego Instruments)を用いて、PPIを測定した。試験セッションは、32個のトライアルからなり、各トライアルは、120dBの刺激と対をなすプレパルス音(0、74、78、82または86dB)からなる。
PPIの割合は、下記の通り計算した:
[(プレパルス無しのトライアルのASR増幅)−(プレパルス有りのトライアルのASR増幅)]/(プレパルス無しのトライアルのASR増幅)×100、
ここで、ASRは、聴覚驚愕反応である。

0213

(6.1.4)尾懸垂試験
上記(2.2)に記載された方法と同様の方法で行った。

0214

(6.1.5)歩行活性の測定
投与後(p.i.)5週目の回転輪活動を測定した。回転輪活動は、回転輪(幅5cm×直径20cm)を備えたケージ(幅9cm×奥行22cm×高さ9cm)内にマウスを個々に入れ、コンピューターシステム(CLEA Japan)を用いて、回転輪活動の量(1回転=3カウント)を測定した。48時間にわたる全活性、暗期での活性、および明期での活性を示す。

0215

(6.1.6) 結果
図11は、SITH−1とストレス等との関連を調べた結果を示す。図11Aにおいて、赤色は、SITH−1を示し、緑色は、GFAPを示す。また、スケールバーは、図11Aで100μmであり、図11Bで1mmである。図11D−Lにおいて、白色カラム(Vector)は、対照アデノウイルスベクターを投与したときの結果を示し、黒色カラム(SITH−1)は、SITH−1保持アデノウイルスを投与したときの結果を示す。図11C−E、I、Jは、ウイルスベクターの投与後(p.i.)3週目または5週目のマウス全脳におけるmRNAの発現を示した結果であり、β—アクチン(ACTB)との比率を示す。図11F、Kは、対となるプレパルス(74、78、82および86dB)およびパルス(120dB)刺激を与えた際の3週目(F)または5週目(K)のプレパルス・インヒビションの割合を示す。図11G、Lは、ウイルスベクターの投与後(p.i.)3週目(G)または5週目(L)の尾懸垂試験の結果を示す。0〜5分間、5〜10分間、および0〜10分間の時間ブロックにおける無動(秒単位で)の持続を示している。なお、図11において、値は、平均±s.e.m.である。また、*は、P<0.05を示し、***は、P<0.005を示す。

0216

図11AおよびBより、投与後3週目でアストロサイトにSITH−1が発現していることを確認できた。このSITH−1の発現は、投与後(p.i.)5週目よりも3週目で、より大きいことを確認できた(図11C)。

0217

また、図11D−Gにより、投与後(p.i.)3週目で、CRHの増加、脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加、音響驚愕反応のプレパルス抑制(PPI)の低下、および尾懸垂試験(TST)における無動時間の短縮を確認できた。ここで示されたすべてのマーカーは、重度のストレス、不安、および過敏についてのものであった。

0218

さらに、図11H、JおよびL、ならびに図21より、投与後(p.i.)5週目で、回転輪活動およびBDNF発現の減少、ならびにTSTでの延長した無動状態を確認できた。ここで示されたすべてのマーカーは、抑うつについてものであった。図11Iより、5週目で、CRHのレベルは、通常に戻った。

0219

これらのデータは、SITH−1がその産生の早期段階において、増加したCRHにより過敏および不安を誘導し、SITH−1の産生が時間と共に減少するにつれて抑うつを生じたことを示す。

0220

(7) SITH−1への暴露および臨床症状
(7.1) SITH−1産生と自殺企図との関連
SITH−1の産生は、動物モデルにおいて気分障害様の行動を生じたので、SITH−1産生と自殺企図患者の症状との関係を調べた。SITH−1産生の測定は、上記(5.3)と同様の方法で、抗SITH−1抗体価を比較することにより行った。対象(自殺企図患者)についても、上記(5.3)と同様である。

0221

(7.1.1)結果
図12Aでは、様々な自殺企図の方法(飛び降り、薬物中毒、自傷行為、および自絞)との関連を調べた。図12Aより、高い抗SITH−1抗体価により示されるように、高いレベルのSITH−1に最近曝された患者は飛び降り自殺を企図する傾向があった。したがって、このマーカーは、より重篤な自殺企図患者を識別できることが示唆される。この結果は、SITH−1産生の早期段階における不安および過敏を示したマウスモデルでの結果と一致している。

0222

(7.2) Avidity Index(AI)アッセイのための適当な尿素濃度の決定
AIアッセイにおける適当な尿素濃度を決定するために、SITH−1抗原に結合したビーズ(SITH−1−TM2融合タンパク質)を作製した。続いて、SITH−1−TM2融合タンパク質と血漿とを反応させた後、0、2、4、6、または8Mの尿素で洗浄したときの抗SITH−1抗体価を測定した。

0223

(7.2.1) SITH−1タマビジン融合タンパク質およびSITH−1ビオチンの作製
抗原としてのSITH−1とアビジン様結合タンパク質タマビジン2(E.coliで発現)との融合タンパク質を用いたビーズ—ELISA法によりSITH−1抗体を検出するために(文献8)、下記の構築体を作製した:
pTrc99Aプラスミド内でのSITH−1とタマビジン2との融合タンパク質(pTrc99A-SITH−1−TM2);pET104.1−DESTベクタープラスミドにSITH−1を挿入することにより作製されたBioEaseタグ化融合SITH−1(pET104.1−SITH−1);およびタマビジン2(pTrc99A−TM2)。突然変異タマビジン2遺伝子(LATM2)をpKK233−2プラスミドにクローン化した(pKK233−2-LATM2)。

0224

Takakura et alの方法に従って(文献8)、pTrc99A-SITH−1−TM2、pTrc99A-SITH−1-ビオチン、およびpTrc99A−TM2プラスミドを用いて、SITH−1−TM2融合タンパク質、SITH−1-ビオチン融合タンパク質、またはTM2タンパク質をE.coliのBL21株に発現させた。

0225

E.coliを、Overnight Express Instant LB midum(Novagen)中、18℃で64時間培養した。溶液を遠心分離することによりE.coliペレットを回収し、それをComplete−0.1MHEPES−KOH(pH7.4)に懸濁し、超音波断片化にかけることにより、可溶性タンパク質を得た。遠心分離により、細胞片および不可溶性タンパク質を除去した。SITH−1とタマビジンとの融合タンパク質(SITH−1−TM2)、SITH−1-ビオチン融合タンパク質(SITH−1−biotin)、およびタマビジンタンパク質(TM2)のためのライセートとして、上清を用いた。

0226

(7.2.2) 抗SITH−1IgG抗体ELISA
血漿中の抗SITH−1 IgG抗体価の測定方法は、下記のとおりである。すなわち、1mLの100mg/mL EZ−Link NHS−PEG12−biotin solution(Pierce)と10mL DynabeadsM−270 Amine beads(Invitrogen)とを、室温で30分間反応させることによりビオチン化磁気ビーズを作製した。ビオチン化磁気ビーズを0.1%BSA/PBS/0.01% Tween20で5回洗浄し、続いて、20mL 0.01% azide/1×PBS(−)に懸濁した。タンパク質濃度が2mg/μLになるように、SITH−1−TM2ライセートまたはTM2ライセートをビオチン化ビーズに加えて、室温で1時間、溶液を反応させた。ビーズをTBS/0.2% Tween20で5回洗浄し、続いて、ビオチン化のために使用した磁気ビーズ溶液の量と等量の20.01% sodium azide/1×PBS(−)溶液に懸濁して、SITH−1−TM2ビーズまたはTM2ビーズを得た。SITH−1−TM2ビーズ(5μL)を、200μL希釈ヒト血漿(LATM2ライセートで1:1000に希釈)または200μLのマウス血漿(LATM2ライセートで1:100に希釈)と、室温で1時間反応させた。

0227

SITH−1特異的高アビディティ抗体を測定するために、200μLの0.2% Tween20−TBSまたは200μLの0.2% Tween20中、0、2、4、6、または8Mの尿素−TBSでビーズを3回洗浄した。

0228

洗浄後、ビーズを、200μLペルオキシダーゼ共役ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories; LATM2ライセートで1:10000に希釈)と、室温で1時間反応させた。続いて、ビーズを0.2% Tween20/TBSで3回洗浄した。上清を除去した後、各サンプルに50μL SuperSignalELISAFemto Stable Peroxide Solution(Pierce)を加え、ビーズを白色の96ウェルプレートに移した。

0229

SuperSignalELISAFemto Luminol/Enhancer(50μL; Pierce)を加えて、TriStar LB 941 luminometer(Berthold Technologies)を用いることにより、発光強度(RLU)を、41秒毎に45回測定し、値を合計した。各アッセイのために、同じ標準血漿がアッセイされた。各サンプルの値は、標準血漿で標準化された。

0230

(7.2.3)結果
図18より、対象サンプルは、抗SITH−1抗体について陽性であることを確認できた。また、対象の血漿サンプル中の高アビディティ抗SITH−1抗体は、2M尿素での洗浄後においても、抗原に結合したままであることを確認できた。

0231

(7.3) 抗SITH−1抗体Avidity Index
抗体AIは、抗原への過去の暴露または反復暴露で増加するので、SITH−1産生の反復による影響を調べるために、抗SITH−1抗体Avidity Index(AI)を調べた。

0232

(7.3.1) 抗SITH−1IgG抗体ELISA
通常のELISA法は、特異性が低く、結合力が低い抗体を検出する可能性がある。

0233

そこで、SITH−1特異的高アビディティ抗体を測定するために、上記(7.2.2)の洗浄工程のみを修正してアッセイを行った(その他の工程は、(7.2.2)と同様である。)。

0234

すなわち、200μLの0.2% Tween20−TBSまたは200μLの0.2% Tween20中、2M尿素−TBSでビーズを3回洗浄した。4個のウェルの合計で、各サンプルを測定した:2個のウェルでは、洗浄溶液は、尿素を含んでおらず、他の2個のウェルでは、高結合力の抗SITH−1抗体を測定するために、洗浄溶液は、2Mの尿素を含んでいた。

0235

(7.3.2) 抗SITH−1抗体Avidity Indexの測定
抗SITH−1抗体AIを計算するために、低アビディティの抗SITH−1抗体を測定する必要がある。低アビディティの抗SITH−1抗体を測定するために、上記と同じ方法(ただし、2M尿素による洗浄は行わない)を用いて、血漿抗SITH−1IgG抗体価を測定した。

0236

SITH−1特異的低アビディティ抗体の抗体価を決定するために、我々は、SITH−1−TM2ビーズの代わりにTM2ビーズ、ならびに38人の患者および47人の健常なボランティアからの血漿サンプルを用いて、血漿の非特異的反応を調べた。低結合力の抗SITH−1抗体について陽性の血漿サンプルを用いて、AIを下記の通り得た:
AI(%)=(尿素を用いて洗浄されたときに測定された抗SITH−1抗体価/尿素無しで洗浄されたときに測定された抗SITH−1抗体価)。

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