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技術 微生物においてプラスミドを維持する方法

出願人 味の素株式会社
発明者 高倉淳横川明梨福井啓太羽城周平林和之安枝寿
出願日 2018年8月29日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2018-160593
公開日 2020年3月5日 (8ヶ月経過) 公開番号 2020-031573
状態 未査定
技術分野 酵素・酵素の調製 微生物による化合物の製造 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 使用データベース デヒドロシキミ酸 基礎講座 減少度合い ムギネ酸 物質変換 ホモシステイナーゼ リン酸ポリマー
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年3月5日)のものです。
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図面 (11)

課題

微生物においてプラスミドを維持する方法を提供する。

解決手段

糖の資化能の低下とプラスミドによるその補完とを組み合わせることにより、糖が選択圧として機能し、以て微生物においてプラスミドを維持することができる。

概要

背景

生命工学の分野では、プラスミド微生物に導入することにより微生物に所望の表現型を付与する技術が広く用いられている。

導入したプラスミドを微生物において維持するためには、選択圧として、典型的には抗生物質が利用されている。しかしながら、抗生物質の利用は、コスト等の観点で問題がある。

そのため、抗生物質に代わる選択圧により微生物においてプラスミドを維持する技術が望まれている。そのような技術としては、例えば、栄養要求性等の表現型の欠陥をプラスミド上の遺伝子により補完する方法(特許文献1〜6)や、亜リン酸唯一リン源として含有する培地亜リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含むプラスミドを導入した微生物を培養する方法(特許文献7)が知られている。

また、Escherichia coliやCorynebacterium glutamicum等の細菌において、PTS(phosphotransferase system)や解糖系酵素をコードする遺伝子を破壊することにより、糖を炭素源とする生育が低下することが知られている(非特許文献1〜6)。

概要

微生物においてプラスミドを維持する方法を提供する。糖の資化能の低下とプラスミドによるその補完とを組み合わせることにより、糖が選択圧として機能し、以て微生物においてプラスミドを維持することができる。なし

目的

そのため、抗生物質に代わる選択圧により微生物においてプラスミドを維持する技術が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

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請求項1

微生物においてプラスミドを維持する方法であって、糖を含有する培地でプラスミドを有する微生物を培養する工程を含み、前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列を含む、方法。

請求項2

目的物質の製造方法であって、糖を含有する培地で目的物質生産能とプラスミドを有する微生物を培養して該目的物質を生成する工程を含み、前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列と前記目的物質の生産に有効な第2の塩基配列を含む、方法。

請求項3

前記培地が、さらに、前記目的物質の前駆体を含む、請求項2に記載の方法。

請求項4

目的物質の製造方法であって、糖を含有する培地で目的物質生産能とプラスミドを有する微生物を培養して該プラスミドを有する菌体を生成する工程、および前記菌体を利用して前記目的物質の前駆体を該目的物質に変換する工程を含み、前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列と前記目的物質の生産に有効な第2の塩基配列を含む、方法。

請求項5

さらに、前記目的物質を回収することを含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

前記資化能が、前記糖の資化に関与するタンパク質P1の活性が低下することにより、低下した、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

請求項7

前記タンパク質P1の活性が、該タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより、または該遺伝子を破壊することにより、低下した、請求項6に記載の方法。

請求項8

前記タンパク質P1の活性が、該タンパク質のアミノ酸配列の一部または全部の欠失により、低下した、請求項6または7に記載の方法。

請求項9

前記第1の塩基配列が、前記糖の資化に関与するタンパク質P2をコードする遺伝子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。

請求項10

前記タンパク質P1およびP2が、それぞれ、前記糖の取り込み系および前記糖の代謝酵素から選択されるタンパク質である、請求項9に記載の方法。

請求項11

前記タンパク質P1およびP2が、それぞれ、解糖系酵素から選択されるタンパク質である、請求項9または10に記載の方法。

請求項12

前記タンパク質P1およびP2が、それぞれ、6−ホスホフルクトキナーゼである、請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法。

請求項13

前記6−ホスホフルクトキナーゼが、それぞれ、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、請求項12に記載の方法:(a)配列番号38、72、または74に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;(b)配列番号38、72、または74に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、6−ホスホフルクトキナーゼ活性を有するタンパク質;(c)配列番号38、72、または74に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、6−ホスホフルクトキナーゼ活性を有するタンパク質。

請求項14

前記第2の塩基配列が、活性の増大により目的物質生産能を付与または増強できるタンパク質をコードする遺伝子および前記目的物質をコードする遺伝子から選択される遺伝子である、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。

請求項15

前記活性の増大により目的物質生産能を付与または増強できるタンパク質が、前記目的物質の生合成酵素である、請求項14に記載の方法。

請求項16

前記第2の塩基配列が、芳香族カルボン酸レダクターゼをコードする遺伝子である、請求項2〜15のいずれか1項に記載の方法。

請求項17

前記目的物質が、SAM依存性代謝物アルデヒド、L−アミノ酸核酸有機酸、γ−グルタミルペプチドスフィンゴイド、タンパク質、RNAから選択される、請求項2〜16のいずれか1項に記載の方法。

請求項18

前記目的物質が、バニリンベンズアルデヒドシンナムアルデヒドバニリン酸メラトニンエルゴチオネインムギネ酸フェルラ酸ポリアミングアイアコール、4−ビニルグアイアコール、4−エチルグアイアコールクレアチン、L−メチオニンから選択される、請求項2〜17のいずれか1項に記載の方法。

請求項19

前記前駆体が、プロトカテク酸プロトカテクアルデヒド、バニリン酸、安息香酸桂皮酸、L−トリプトファン、L−ヒスチジン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アルギニン、L−オルニチングリシンから選択される、請求項3〜18のいずれか1項に記載の方法。

請求項20

前記目的物質がバニリン酸である、請求項2〜19のいずれか1項に記載の方法。

請求項21

前記目的物質がバニリンであり、前記前駆体がバニリン酸である、請求項3〜19のいずれか1項に記載の方法。

請求項22

前記糖が、グルコースまたはスクロースである、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。

請求項23

前記微生物が、細菌または酵母である、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。

請求項24

前記微生物が、コリネ型細菌または腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。

請求項25

前記微生物が、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌またはエシェリヒア(Escherichia)属細菌である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。

請求項26

前記微生物が、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)またはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。

請求項27

前記培地が、抗生物質を実質的に含有しない、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、微生物においてプラスミドを維持する方法およびその利用に関する。

背景技術

0002

生命工学の分野では、プラスミドを微生物に導入することにより微生物に所望の表現型を付与する技術が広く用いられている。

0003

導入したプラスミドを微生物において維持するためには、選択圧として、典型的には抗生物質が利用されている。しかしながら、抗生物質の利用は、コスト等の観点で問題がある。

0004

そのため、抗生物質に代わる選択圧により微生物においてプラスミドを維持する技術が望まれている。そのような技術としては、例えば、栄養要求性等の表現型の欠陥をプラスミド上の遺伝子により補完する方法(特許文献1〜6)や、亜リン酸唯一リン源として含有する培地亜リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含むプラスミドを導入した微生物を培養する方法(特許文献7)が知られている。

0005

また、Escherichia coliやCorynebacterium glutamicum等の細菌において、PTS(phosphotransferase system)や解糖系酵素をコードする遺伝子を破壊することにより、糖を炭素源とする生育が低下することが知られている(非特許文献1〜6)。

0006

特開平6-086669
特開平7-067685
特表2004-517624
特表2004-524817
特開2006-067884
特表2008-509677
特開2017-195907

先行技術

0007

LovingshimerMR, et al., Construction of an inducible, pfkA and pfkB deficient strain of Escherichia coli for the expression and purification of phosphofructokinase from bacterial sources. Protein Expr Purif. 2006 Apr;46(2):475-82.
Siedler S, et al., Reductive whole-cell biotransformation with Corynebacterium glutamicum: improvement ofNADPH generation from glucose by a cyclized pentose phosphate pathway using pfkA and gapA deletion mutants. Appl Microbiol Biotechnol. 2013 Jan;97(1):143-52.
FongSS, et al., Latent pathway activation and increased pathway capacity enable Escherichia coli adaptation to loss of key metabolic enzymes. J Biol Chem. 2006 Mar 24;281(12):8024-33.
Lindner SN, et al., Phosphotransferase system-independent glucose utilization in corynebacterium glutamicum by inositol permeases and glucokinases. Appl Environ Microbiol. 2011 Jun;77(11):3571-81.
Lindner SN, et al., Cg2091 encodes a polyphosphate/ATP-dependent glucokinase of Corynebacterium glutamicum. Appl Microbiol Biotechnol. 2010 Jun;87(2):703-13.
Moon MW, et al., Analyses of enzyme II gene mutants for sugar transport and heterologous expression of fructokinase gene in Corynebacterium glutamicumATCC13032. FEMS Microbiol Lett. 2005 Mar 15;244(2):259-66.

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、微生物においてプラスミドを維持する方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記のような抗生物質に代わる選択圧を利用する技術は、培地組成の厳密な制御を要求し、例えば、半合成培地天然培地を利用する培養系においては上首尾には機能しづらいことを見出した。一方、本発明者らは、炭素源として用いられる糖を微生物においてプラスミドを維持するための選択圧として利用できることを見出し、本発明を完成させた。

0010

すなわち、本発明は以下の通り例示できる。
[1]
微生物においてプラスミドを維持する方法であって、
糖を含有する培地でプラスミドを有する微生物を培養する工程を含み、
前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、
前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列を含む、方法。
[2]
目的物質の製造方法であって、
糖を含有する培地で目的物質生産能とプラスミドを有する微生物を培養して該目的物質を生成する工程を含み、
前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、
前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列と前記目的物質の生産に有効な第2の塩基配列を含む、方法。
[3]
前記培地が、さらに、前記目的物質の前駆体を含む、前記方法。
[4]
目的物質の製造方法であって、
糖を含有する培地で目的物質生産能とプラスミドを有する微生物を培養して該プラスミドを有する菌体を生成する工程、および
前記菌体を利用して前記目的物質の前駆体を該目的物質に変換する工程を含み、
前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、
前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列と前記目的物質の生産に有効な第2の塩基配列を含む、方法。
[5]
さらに、前記目的物質を回収することを含む、前記方法。
[6]
前記資化能が、前記糖の資化に関与するタンパク質P1の活性が低下することにより、低下した、前記方法。
[7]
前記タンパク質P1の活性が、該タンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることにより、または該遺伝子を破壊することにより、低下した、前記方法。
[8]
前記タンパク質P1の活性が、該タンパク質のアミノ酸配列の一部または全部の欠失
より、低下した、前記方法。
[9]
前記第1の塩基配列が、前記糖の資化に関与するタンパク質P2をコードする遺伝子である、前記方法。
[10]
前記タンパク質P1およびP2が、それぞれ、前記糖の取り込み系および前記糖の代謝酵素から選択されるタンパク質である、前記方法。
[11]
前記タンパク質P1およびP2が、それぞれ、解糖系の酵素から選択されるタンパク質である、前記方法。
[12]
前記タンパク質P1およびP2が、それぞれ、6−ホスホフルクトキナーゼである、前記方法。
[13]
前記6−ホスホフルクトキナーゼが、それぞれ、下記(a)、(b)、または(c)に記載のタンパク質である、前記方法:
(a)配列番号38、72、または74に示すアミノ酸配列を含むタンパク質;
(b)配列番号38、72、または74に示すアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸残基置換、欠失、挿入、および/または付加を含むアミノ酸配列を含み、且つ、6−ホスホフルクトキナーゼ活性を有するタンパク質;
(c)配列番号38、72、または74に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、6−ホスホフルクトキナーゼ活性を有するタンパク質。
[14]
前記第2の塩基配列が、活性の増大により目的物質生産能を付与または増強できるタンパク質をコードする遺伝子および前記目的物質をコードする遺伝子から選択される遺伝子である、前記方法。
[15]
前記活性の増大により目的物質生産能を付与または増強できるタンパク質が、前記目的物質の生合成酵素である、前記方法。
[16]
前記第2の塩基配列が、芳香族カルボン酸レダクターゼをコードする遺伝子である、前記方法。
[17]
前記目的物質が、SAM依存性代謝物アルデヒド、L−アミノ酸核酸有機酸、γ−グルタミルペプチドスフィンゴイド、タンパク質、RNAから選択される、前記方法。
[18]
前記目的物質が、バニリンベンズアルデヒドシンナムアルデヒドバニリン酸メラトニンエルゴチオネインムギネ酸フェルラ酸ポリアミングアイアコール、4−ビニルグアイアコール、4−エチルグアイアコールクレアチン、L−メチオニンから選択される、前記方法。
[19]
前記前駆体が、プロトカテク酸プロトカテクアルデヒド、バニリン酸、安息香酸桂皮酸、L−トリプトファン、L−ヒスチジン、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アルギニン、L−オルニチングリシンから選択される、前記方法。
[20]
前記目的物質がバニリン酸である、前記方法。
[21]
前記目的物質がバニリンであり、前記前駆体がバニリン酸である、前記方法。
[22]
前記糖が、グルコースまたはスクロースである、前記方法。
[23]
前記微生物が、細菌または酵母である、前記方法。
[24]
前記微生物が、コリネ型細菌または腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌である、前記方法。
[25]
前記微生物が、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌またはエシェリヒア(Escherichia)属細菌である、前記方法。
[26]
前記微生物が、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)またはエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)である、前記方法。
[27]
前記培地が、抗生物質を実質的に含有しない、前記方法。

発明の効果

0011

本発明により、微生物においてプラスミドを維持することができる。また、一態様においては、本発明により、微生物においてプラスミドを維持し、目的物質を製造することができる。

図面の簡単な説明

0012

プラスミドpBS4SΔrncの構築手順を示す図。
rnc遺伝子欠損確認のためのアガロースゲル電気泳動図(写真)。
プラスミドpVC7-sacBの構築手順を示す図。
プラスミドpBS4SΔpfkAの構築手順を示す図。
pfkA遺伝子欠損確認のためのアガロースゲル電気泳動図(写真)。
プラスミドpVC7-Pf1-Hv-iapの構築手順を示す図。
プラスミドpVC7-Pf1-Hv-iap-Pf1revの構築手順を示す図。
プラスミドpVC7H2-Pf1-Hviap-Pf1rev-Pbl-pfkA、pVC7H2-Pf1-Hviap-Pf1rev-PmsrA-pfkA、およびpVC7H2-Pf1-Hviap-Pf1rev-Plac-pfkAの構築手順を示す図。
抗生物質無添加培養系におけるdsRNAの生産結果を示す電気泳動図(写真)。
プラスミドpPK4-Pbl-pfkA-dGFPおよびpPK4-Plac-pfkA-dGFPの構築手順を示す図。
抗生物質無添加培養系におけるGFPの生産結果を示す図(写真)。

0013

以下、本発明を詳細に説明する。

0014

本明細書に記載の方法においては、糖を選択圧として微生物においてプラスミドを維持することができる。すなわち、本明細書に記載の方法は、糖を選択圧として微生物においてプラスミドを維持する方法である。

0015

「微生物においてプラスミドが維持される」とは、プラスミドを有する微生物の培養の際に微生物においてプラスミドが維持されることを意味する。すなわち、「微生物においてプラスミドが維持される」とは、言い換えると、プラスミドを保持したまま微生物が生育(増殖)することを意味してよく、また、培養によりプラスミドを有する菌体が生成することを意味してよい。プラスミドの維持は、例えば、プラスミドを保持したままの細胞が、プラスミドの脱落した細胞よりも優先的に生育できることによるものであってよい。微生物においてプラスミドが維持されることを、「プラスミドの安定化」ともいう。プラスミドの維持の程度は、培養の目的等の諸条件に応じて許容可能な限り、特に制限されな
い。「微生物においてプラスミドが維持される」とは、具体的には、例えば、プラスミドを有する微生物を培養した際に、培養後の菌体の内のプラスミドを保持する菌体の比率が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、99.5%以上、99.7%以上、または99.9%以上であることを意味してもよい。また、「微生物においてプラスミドが維持される」とは、具体的には、例えば、プラスミドを有する微生物を培養した際に、培養後の菌体における菌体当たりのプラスミドの平均コピー数が、培養前の菌体(すなわち植菌時の菌体)における菌体当たりのプラスミドの平均コピー数の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、99.5%以上、99.7%以上、または99.9%以上であることを意味してもよい。

0016

「糖を選択圧として微生物においてプラスミドが維持される」とは、糖の存在に依拠して微生物においてプラスミドが維持されることを意味する。すなわち、「糖を選択圧として微生物においてプラスミドが維持される」とは、具体的には、糖の存在下で微生物を培養した場合にプラスミドが維持されることを意味してよい。「糖を選択圧として微生物においてプラスミドが維持される」とは、より具体的には、糖の非存在下で微生物を培養した場合にはプラスミドが維持されない(すなわち、「微生物においてプラスミドが維持される」という条件を満たさない)が、糖の存在下で微生物を培養した場合にはプラスミドが維持されることを意味してもよい。「糖を選択圧として微生物においてプラスミドが維持される」とは、さらに具体的には、糖の非存在下で微生物を培養した場合には他の選択圧を使用しないとプラスミドが維持されない(すなわち、「微生物においてプラスミドが維持される」という条件を満たさない)が、糖の存在下で微生物を培養した場合には他の選択圧を使用しなくてもプラスミドが維持されることを意味してもよい。

0017

本明細書に記載の方法においては、具体的には、糖の資化能の低下とプラスミドによるその補完とを組み合わせることにより、糖が選択圧として機能し、以て微生物においてプラスミドを維持することができる。すなわち、微生物としては、糖の資化能が低下するように改変されたものを用いることができる。また、プラスミドとしては、低下した糖の資化能を補完する塩基配列(第1の塩基配列)を有するもの用いることができる。

0018

すなわち、本明細書に記載の方法は、具体的には、下記の方法であってよい:
微生物においてプラスミドを維持する方法であって、
糖を含有する培地でプラスミドを有する微生物を培養する工程を含み、
前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、
前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列を含む、方法。

0019

また、微生物が目的物質生産能を有する場合、本明細書に記載の方法を利用して目的物質を製造することもできる。すなわち、微生物が目的物質生産能を有する場合、上記のようにして培養を実施することにより、または上記のような培養により得られる菌体を利用することにより、目的物質を製造することができる。すなわち、本明細書に記載の方法の一態様は、目的物質の製造方法である。目的物質の生産に目的物質を製造する場合、プラスミドとしては、目的物質の生産に有効な塩基配列(第2の塩基配列)をさらに有するもの用いることができる。

0020

すなわち、目的物質の製造方法の一態様は、下記の方法であってよい:
目的物質の製造方法であって、
糖を含有する培地で目的物質生産能とプラスミドを有する微生物を培養して該目的物質を生成する工程を含み、
前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、
前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列と前記目的物質の生産に有効な第2の塩基配列を含む、方法。

0021

また、目的物質の製造方法の一態様は、下記の方法であってもよい:
目的物質の製造方法であって、
糖を含有する培地で目的物質生産能とプラスミドを有する微生物を培養して該プラスミドを有する菌体を生成する工程、および
前記菌体を利用して前記目的物質を生成する工程を含み、
前記微生物が、前記糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されており、
前記プラスミドが、前記低下した資化能を補完する第1の塩基配列と前記目的物質の生産に有効な第2の塩基配列を含む、方法。

0022

上記微生物を、「本明細書に記載の微生物」ともいう。上記プラスミドを、「本明細書に記載のプラスミド」ともいう。

0023

<1>微生物
本明細書に記載の微生物は、糖の資化能が低下するように改変された、本明細書に記載のプラスミドを有する微生物である。

0024

本明細書に記載の微生物は、糖を選択圧としてプラスミドを維持できる限り、さらに、その他の任意の性質(例えば改変)を有していてよい。微生物は、例えば、目的物質生産能を有していてもよく、いなくてもよい。また、微生物は、例えば、アミノ酸要求性等の栄養要求性を有していてもよく、いなくてもよい。また、微生物は、例えば、他のプラスミド(すなわち、本明細書に記載のプラスミド以外のプラスミド)を有していてもよく、いなくてもよい。

0025

本明細書に記載の微生物は、下記のような微生物に対し糖の資化能の低下や本明細書に記載のプラスミドの導入等の改変を実施することにより、構築することができる。すなわち、本明細書に記載の微生物は、下記のような微生物に由来する改変株であってよい。微生物を構築するための改変は、任意の順番で実施することができる。例えば、糖の資化能が低下するように微生物を改変し、その後、本明細書に記載のプラスミドを導入してよい。なお、本明細書に記載の微生物またはそれを構築するための親株を、「宿主」ともいう。

0026

<1−1>親株として用いられる微生物
本明細書に記載の微生物を構築するための親株として用いられる微生物は、特に制限されない。微生物としては、細菌や酵母が挙げられる。

0027

細菌としては、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌やコリネ型細菌が挙げられる。

0028

腸内細菌科に属する細菌としては、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルニア(Erwinia)属、フォトラブダス(Photorhabdus)属、プロビデンシア(Providencia)属、サルモネラ(Salmonella)属、モルガネラ(Morganella)等の属に属する細菌が挙げられる。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌を用いることができる。

0029

エシェリヒア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学専門家に知られている分類によりエシェリヒア属に分類されている細菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌とし
ては、例えば、Neidhardtらの著書(Backmann, B. J. 1996. Derivations and Genotypes
of some mutant derivatives of Escherichia coli K-12, p. 2460-2488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.)に記載されたものが挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。エシェリヒア・コリとして、具体的には、例えば、W3110株(ATCC27325)やMG1655株(ATCC 47076)等のエシェリヒア・コリK-12株;エシェリヒア・コリK5株(ATCC 23506);BL21(DE3)株等のエシェリヒア・コリB株;およびそれらの派生株が挙げられる。

0030

エンテロバクター属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエンテロバクター属に分類されている細菌が挙げられる。エンテロバクター属細菌としては、例えば、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)が挙げられる。エンテロバクター・アグロメランスとして、具体的には、例えば、エンテロバクター・アグロメランスATCC12287株が挙げられる。エンテロバクター・アエロゲネスとして、具体的には、例えば、エンテロバクター・アエロゲネスATCC13048株、NBRC12010株(Biotechonol Bioeng. 2007 Mar 27; 98(2) 340-348)、AJ110637株(FERM BP-10955)が挙げられる。また、エンテロバクター属細菌としては、例えば、欧州特許出願公開EP0952221号明細書に記載されたものが挙げられる。なお、Enterobacter agglomeransには、Pantoea agglomeransと分類されているものも存在する。

0031

パントエア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりパントエア属に分類されている細菌が挙げられる。パントエア属細菌としては、例えば、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が挙げられる。パントエア・アナナティスとして、具体的には、例えば、パントエア・アナナティスLMG20103株、AJ13355株(FERM BP-6614)、AJ13356株(FERM BP-6615)、AJ13601株(FERM BP-7207)、SC17株(FERM BP-11091)、SC17(0)株(VKPM B-9246)、及びSC17sucA株(FERM BP-8646)が挙げられる。なお、エンテロバクター属細菌やエルビニア属細菌には、パントエア属に再分類されたものもある(Int. J. Syst. Bacteriol., 39, 337-345(1989); Int. J. Syst. Bacteriol., 43, 162-173 (1993))。例えば、エンテロバクター・アグロメランスのある種のものは、最近、16SrRNAの塩基配列分析等に基づき、パントエア・アグロメランス、パントエア・アナナティス、パントエア・ステワルティイ等に再分類された(Int. J. Syst. Bacteriol., 39, 337-345(1989))。パントエア属細菌には、このようにパントエア属に再分類された細菌も包含されてよい。

0032

エルビニア属細菌としては、エルビニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)が挙げられる。クレブシエラ属細菌としては、クレブシエラ・プランティコーラ(Klebsiella planticola)が挙げられる。

0033

コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、およびミクロバクテリウム(Microbacterium)属等の属に属する細菌が挙げられる。

0034

コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような種が挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)
コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)
コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)
コリネバクテリウム・クレナタム(Corynebacterium crenatum)
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)
コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)
コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola)
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシエンス)(Corynebacterium thermoaminogenes (Corynebacterium efficiens))
コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium divaricatum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・フラバム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium
flavum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・イマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))
ブレビバクテリウム・アルバム(Brevibacterium album)
ブレビバクテリウム・セリナム(Brevibacterium cerinum)
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)

0035

コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような菌株が挙げられる。
Corynebacterium acetoacidophilumATCC13870
Corynebacterium acetoglutamicum ATCC 15806
Corynebacterium alkanolyticum ATCC 21511
Corynebacterium callunae ATCC 15991
Corynebacterium crenatum AS1.542
Corynebacterium glutamicum ATCC 13020, ATCC 13032, ATCC 13060, ATCC 13869, FERM BP-734
Corynebacterium lilium ATCC 15990
Corynebacterium melassecola ATCC 17965
Corynebacterium efficiens (Corynebacterium thermoaminogenes) AJ12340 (FERM BP-1539)
Corynebacterium herculis ATCC 13868
Brevibacterium divaricatum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 14020
Brevibacterium flavum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 13826, ATCC 14067, AJ12418(FERM BP-2205)
Brevibacterium immariophilum ATCC 14068
Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 13869
Brevibacterium roseum ATCC 13825
Brevibacterium saccharolyticum ATCC 14066
Brevibacterium thiogenitalis ATCC 19240
Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis) ATCC 6871, ATCC 6872
Brevibacterium album ATCC 15111
Brevibacterium cerinum ATCC 15112
Microbacterium ammoniaphilum ATCC 15354

0036

なお、コリネバクテリウム属細菌には、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属統合された細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))も含まれる。また、コリネバクテリウム・スタティオニスには、従来コリネバクテリウム・アンモニアゲネスに分類されていたが、16SrRNAの塩基配列解析等によりコリネバクテリウム・スタティオニスに再分類された細菌も含まれる(Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 60, 874-879(2010))。

0037

酵母は出芽酵母であってもよく、分裂酵母であってもよい。酵母は、一倍体の酵母であってもよく、二倍体またはそれ以上の倍数性の酵母であってもよい。酵母としては、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属ピチアシフェリイ(Pichia ciferrii)、ピチア・シドウィオラム(Pichia sydowiorum)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)等のピヒア属(ウィッカーハモマイセス(Wickerhamomyces)属ともいう)、キャンディダユティリス(Candida utilis)等のキャンディダ属、ハンゼヌラポリモルファ(Hansenula polymorpha)等のハンゼヌラ属、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロマイセス属に属する酵母が挙げられる。

0038

これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャーコレクション住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることが出来る。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることが出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、これらの菌株は、例えば、各菌株が寄託された寄託機関から入手することができる。

0039

<1−2>糖の資化能の低下
本明細書に記載の微生物は、糖の資化能が低下するように改変されている。微生物は、具体的には、糖の資化能が非改変株と比較して低下するように改変されている。「糖の資化能」とは、糖を利用して生育する能力を意味してよい。微生物においては、1種の糖の資化能が低下していてもよく、2種またはそれ以上の糖の資化能が低下していてもよい。微生物においては、少なくとも、選択圧として用いる糖の資化能が低下していればよい。

0040

糖の資化能の低下の程度は、糖を選択圧としてプラスミドを維持できる限り、特に制限されない。糖の資化能は、完全に欠損してもよく、そうでなくてもよい。糖の資化能の低下は、例えば、糖を唯一炭素源として微生物を培養した際の生育の低下として測定することができる。「糖の資化能が低下する」とは、具体的には、例えば、糖を唯一炭素源とする液体最少培地で培養した際の改変株(すなわち、糖の資化能が低下するように改変した後の株)の比増殖速度が、非改変株(すなわち、糖の資化能が低下するように改変する前の株)の50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、2%以下、または1%以下であることを意味してもよい。また、「糖の資化能が低下する」とは、具体的には、例えば、糖を唯一炭素源とする最少培地(例えば、液体最少培地または固体最少培地)で培養した際に、非改変株は生育(すなわち増殖)できるが、改変株は生育(すなわち増殖)できないことを意味してもよい。なお、低下した糖の資化能は本明細書に記載のプラスミドにより補完されるため、糖の資化能が低下しているか否かは同プラスミドを有さない状態で判断される。すなわち、「糖の資化能が低下する」という場合の「糖の資化能」とは、本明細書に記載のプラスミドを有さない状態での糖の資化能を意味する。言い換えると、「糖の資化能が低下する」という形質は、本明細書に記載のプラスミドを有さない状態での宿主の形質である。

0041

糖の資化能を低下させる方法は、所望の程度に糖の資化能が低下する限り、特に制限さ
れない。糖の資化能は、例えば、糖の資化に関与するタンパク質の活性を低下させることにより、低下させることができる。すなわち、微生物は、例えば、糖の資化に関与するタンパク質の活性が低下するように改変されていてよい。微生物は、具体的には、非改変株と比較して糖の資化に関与するタンパク質の活性が低下するように改変されていてよい。タンパク質の活性を低下させる手法については後述する。糖の資化に関与するタンパク質の活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子を破壊等することにより、低下させることができる。糖の資化に関与するタンパク質を、「糖資化タンパク質」ともいう。糖の資化に関与するタンパク質をコードする遺伝子を、「糖資化遺伝子」ともいう。糖の資化能を低下させるために活性を低下させる糖資化タンパク質を、後述するタンパク質P2(第1の塩基配列がコードする糖資化タンパク質)との区別の便宜のため、「タンパク質P1」ともいう。微生物においては、1種の糖資化タンパク質の活性が低下していてもよく、2種またはそれ以上の糖資化タンパク質の活性が低下していてもよい。

0042

以下、糖資化遺伝子および糖資化タンパク質について説明する。なお、以下の説明は、糖の資化能を低下させるために改変される遺伝子またはタンパク質の説明に加えて、低下した糖の資化能を補完するために利用される遺伝子またはタンパク質の説明を兼ねる。微生物において活性が低下するタンパク質は、非改変株(すなわち、糖の資化能が低下するように改変する前の株)が有するタンパク質から選択される。非改変株が有するタンパク質としては、非改変株の染色体上に存在する遺伝子にコードされるタンパク質が挙げられる。

0043

糖資化遺伝子および糖資化タンパク質としては、上記例示した微生物等の各種生物のものが挙げられる。すなわち、糖資化遺伝子および糖資化タンパク質として、具体的には、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌(例えば、E. coli等のEscherichia属細菌)やコリネ型細菌(例えば、C. glutamicum等のCorynebacterium属細菌)のものが挙げられる。また、糖資化遺伝子および糖資化タンパク質としては、以下に個別に例示する生物のものも挙げられる。各種生物由来の糖資化遺伝子の塩基配列およびそれらにコードされる糖資化タンパク質のアミノ酸配列は、例えば、NCBI等の公開データベースや特許文献等の技術文献から取得できる。

0044

糖資化タンパク質としては、糖の資化経路を構成するタンパク質が挙げられる。すなわち、糖の資化経路を構成するタンパク質の活性を低下させることにより、糖の資化経路を弱化することができ、以て糖の資化能を低下させることができる。微生物が或る糖について2種またはそれ以上の資化経路を有する場合、その糖の資化能を低下させるためには、それら資化経路から選択される1種の資化経路を弱化してもよく、それら資化経路から選択される2種またはそれ以上(例えば全て)の資化経路を弱化してもよい。或る資化経路が2種またはそれ以上のタンパク質で構成される場合、その資化経路を弱化するためには、それらタンパク質から選択される1種のタンパク質の活性を低下させてもよく、それらタンパク質から選択される2種またはそれ以上(例えば全て)のタンパク質の活性を低下させてもよい。

0045

糖の資化経路を構成するタンパク質としては、糖の取り込み系や糖の代謝酵素が挙げられる。

0046

糖の取り込み系としては、PTS(phosphotransferase system)が挙げられる。「PTS(phosphotransferase system)」とは、PEP(phosphoenolpyruvate)をリン酸供与体として糖をリン酸化し細胞内に輸送する活性を有するシステムを意味してよい。同活性を、「PTS活性」ともいう。例えば、グルコース、スクロース、フルクトースは、それぞれ、グルコース−6−リン酸、スクロース−6−リン酸、フルクトース−1−リン酸に変換されて細胞内に輸送されてよい。PTSは、3種のタンパク質:Enzyme I(EI)、Histidine-phosp
horylatable protein(HPr)、Enzyme II(EII)から構成されてよい。すなわち、PTSとしては、EI、HPr、EIIが挙げられる。PTSにおいて、具体的には、PEPに由来するリン酸基がEI、HPr、EIIへと順に転移し、EIIが糖をリン酸化して細胞内に輸送してよい。PTSの活性を低下させるためには、例えば、EI、HPr、EIIから選択される1種のタンパク質の活性を低下させてもよく、EI、HPr、EIIから選択される2種またはそれ以上(例えば全て)のタンパク質の活性を低下させてもよい。

0047

EIは、糖の種類に依らず共通に用いられ得る。EIとしては、ptsI遺伝子にコードされるPtsIタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のptsI遺伝子(NCgl1858)の塩基配列を配列番号1に、同遺伝子がコードするPtsIタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に示す。E. coli K-12 MG1655株のptsI遺伝子の塩基配列を配列番号15に、同遺伝子がコードするPtsIタンパク質のアミノ酸配列を配列番号16に示す。

0048

HPrは、糖の種類に依らず共通に用いられ得る。HPrとしては、ptsH遺伝子にコードされるPtsHタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のptsH遺伝子(NCgl1862)の塩基配列を配列番号3に、同遺伝子がコードするPtsHタンパク質のアミノ酸配列を配列番号4に示す。E. coli K-12 MG1655株のptsH遺伝子の塩基配列を配列番号17に、同遺伝子がコードするPtsHタンパク質のアミノ酸配列を配列番号18に示す。

0049

EIIとしては、それぞれの糖に特異的なEIIが挙げられる。EIIとして、具体的には、グルコース特異的EII(EIIGlc)、スクロース特異的EII(EIIScr)、フルクトース特異的EII(EIIFru)が挙げられる。EIIは、例えば、3種のコンポーネント:EIIA、EIIB、EIICから構成されてよい。これらのコンポーネントは、単独で、あるいは適宜組み合わせて、遺伝子にコードされていてよい。EIIAを、「Enzyme III(EIII)」ともいう。EIIGlcとしては、ptsGおよびcrr遺伝子にそれぞれコードされるPtsGおよびCrrタンパク質が挙げられる。EIIScrとしては、ptsS、scrA、およびcrr遺伝子にそれぞれコードされるPtsS、ScrA、およびCrrタンパク質が挙げられる。EIIFruとしては、ptsF、fruA、およびfruB遺伝子にそれぞれコードされるPtsF、FruA、およびFruBタンパク質が挙げられる。

0050

例えば、C. glutamicum等のコリネ型細菌の場合、ptsG遺伝子はグルコース特異的EIIBCA(EIIBCAGlc)を、ptsS遺伝子はスクロース特異的EIIBCA(EIIBCAScr)を、ptsF遺伝子はフルクトース特異的EIIBCA(EIIBCAFru)を、それぞれコードし得る。C. glutamicumATCC13869株のptsG遺伝子(NCgl1305)の塩基配列を配列番号5に、同遺伝子がコードするPtsGタンパク質のアミノ酸配列を配列番号6に示す。C. glutamicum ATCC 13869株のptsS遺伝子(NCgl2553)の塩基配列を配列番号7に、同遺伝子がコードするPtsSタンパク質のアミノ酸配列を配列番号8に示す。C. glutamicum ATCC 13869株のptsF遺伝子(NCgl1861)の塩基配列を配列番号9に、同遺伝子がコードするPtsFタンパク質のアミノ酸配列を配列番号10に示す。

0051

例えば、E. coli等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌の場合、ptsG遺伝子はグルコース特異的EIIBC(EIIBCGlc)を、crr遺伝子はグルコースとスクロースの両方に特異的なEIIA(EIIAGlc,Scr)を、scrA遺伝子はスクロース特異的EIIBC(EIIBCScr)を、fruA遺伝子はフルクトース特異的EIIBC(EIIBCFru)を、fruB遺伝子はフルクトース特異的EIIAとHPrの融合タンパク質(fused EIIAFru/HPr)を、それぞれコードし得る。E. coli K-12 MG1655株のptsG遺伝子の塩基配列を配列番号19に、同遺伝子がコードするPtsGタンパク質のアミノ酸配列を配列番号20に示す。E. coli K-12 MG1655株のcrr遺伝子の塩基配列を配列番号21に、同遺伝子がコードするCrrタンパク質のアミノ酸配列を配列番号22に示す。Salmonella entericaにおいて見出されたプラスミドpUR400に搭載されたscrA遺伝子の塩基配列を配列番号23に、同遺伝子がコードするScrAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号24に示す。E. coli K-12 MG1655株のfruA遺伝子の塩基配列を配列番号
25に、同遺伝子がコードするFruAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号26に示す。E.
coli K-12 MG1655株のfruB遺伝子の塩基配列を配列番号27に、同遺伝子がコードするFruBタンパク質のアミノ酸配列を配列番号28に示す。

0052

また、糖の取り込み系としては、非PTS取り込み系も挙げられる。「非PTS取り込み系」とは、糖をリン酸化せずに細胞内に輸送する活性を有するシステムを意味してよい。同活性を、「非PTS取り込み活性」ともいう。糖の非PTS取り込み系としては、グルコースの非PTS取り込み系やスクロースの非PTS取り込み系が挙げられる。

0053

グルコースの非PTS取り込み系としては、galP遺伝子にコードされるGalPタンパク質が挙げられる。GalPタンパク質は、ガラクトースパーミアーゼとして知られている。E. coli K-12 MG1655株のgalP遺伝子の塩基配列を配列番号29に、同遺伝子がコードするGalPタンパク質のアミノ酸配列を配列番号30に示す。グルコースの非PTS取り込み系としては、iolT1およびiolT2遺伝子にそれぞれコードされるIolT1およびIolT2タンパク質も挙げられる。IolT1およびIolT2タンパク質は、ミオイノシトールトランスポーターとして知られている。C. glutamicumATCC13032株のiolT1遺伝子(NCgl0178)の塩基配列を配列番号11に、同遺伝子がコードするIolT1タンパク質のアミノ酸配列を配列番号12に示す。C. glutamicum ATCC 13032株のiolT2遺伝子(NCgl2953)の塩基配列を配列番号13に、同遺伝子がコードするIolT2タンパク質のアミノ酸配列を配列番号14に示す。

0054

スクロースの非PTS取り込み系としては、cscB遺伝子にコードされるCscBタンパク質が挙げられる。CscBタンパク質は、スクロースパーミアーゼとして知られている。E. coli EC3132株のcscB遺伝子の塩基配列を配列番号31に、同遺伝子がコードするCscBタンパク質のアミノ酸配列(NCBIACCESSION P30000)を配列番号32に示す。

0055

糖の代謝酵素としては、解糖系の酵素が挙げられる。解糖系としては、糖またはリン酸化糖アセチルCoAとCO2に変換する一連代謝経路が挙げられる。解糖系として、具体的には、エムデン・マイヤーホフ経路(EM経路)、エントナー・ドウドロフ経路(ED経路)、ペントースリン酸経路(PP経路)が挙げられる。解糖系の酵素として、具体的には、例えば、グルコキナーゼ(glucokinase)、ホスホグルコースイソメラーゼ(phosphoglucose isomerase)、6−ホスホフルクトキナーゼ(6-phosphofructokinase)、フルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(fructose 1,6-bisphosphate aldolase)、トリオースリン酸イソメラーゼ(triose phosphate isomerase)、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglycerate kinase)、ホスホグリセリン酸ムターゼ(phosphoglycerate mutase)、エノラーゼ(enolase)、ピルビン酸キナーゼ(pyruvate kinase)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)、スクロース−6−リン酸ヒドロラーゼ(sucrose-6-phosphate hydrolase)、1−ホスホフルクトキナーゼ(1-phosphofructokinase)、インベルターゼ(invertase)、フルクトキナーゼ(fructokinase)が挙げられる。解糖系の酵素としては、特に、6-phosphofructokinaseが挙げられる。

0056

「グルコキナーゼ(glucokinase)」とは、PEPをリン酸供与体としてグルコースをリン酸化し、グルコース−6−リン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.7.1.2)。同活性を、「glucokinase活性」ともいう。glucokinaseをコードする遺伝子を、「glucokinase遺伝子」ともいう。glucokinaseとしては、glk遺伝子にコードされるGlkタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のglk遺伝子の塩基配列を配列番号33に、同遺伝子がコードするGlkタンパク質のアミノ酸配列を配列番号34に示す。E. coli K-12 MG1655株のglk遺伝子の塩基配列を配列番号67に、同遺伝子がコードするGlkタンパク質のアミノ酸配列を配列番号68に示す。

0057

「ホスホグルコースイソメラーゼ(phosphoglucose isomerase)」とは、グルコース−6−リン酸を異性化してフルクトース−6−リン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 5.3.1.9)。同活性を、「phosphoglucose isomerase活性」ともいう。phosphoglucose isomeraseをコードする遺伝子を、「phosphoglucose isomerase遺伝子」ともいう。phosphoglucose isomeraseとしては、pgi遺伝子にコードされるPgiタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のpgi遺伝子の塩基配列を配列番号35に、同遺伝子がコードするPgiタンパク質のアミノ酸配列を配列番号36に示す。E. coli K-12 MG1655株のpgi遺伝子の塩基配列を配列番号69に、同遺伝子がコードするPgiタンパク質のアミノ酸配列を配列番号70に示す。

0058

「6−ホスホフルクトキナーゼ(6-phosphofructokinase)」とは、ATPをリン酸供与体としてフルクトース−6−リン酸をリン酸化してフルクトース−1,6−ビスリン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.7.1.11)。同活性を、「6-phosphofructokinase活性」ともいう。6-phosphofructokinaseをコードする遺伝子を、「6-phosphofructokinase遺伝子」ともいう。6-phosphofructokinaseとしては、pfk遺伝子(例えばpfkA遺伝子やpfkB遺伝子)にコードされるPfkタンパク質(例えばPfkAタンパク質やPfkBタンパク質)が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のpfk遺伝子(pfkA遺伝子ともいう)の塩基配列を配列番号37に、同遺伝子がコードするPfkタンパク質のアミノ酸配列を配列番号38に示す。E. coli K-12 MG1655株のpfkA遺伝子の塩基配列を配列番号71に、同遺伝子がコードするPfkAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号72に示す。E. coli K-12 MG1655株のpfkB遺伝子の塩基配列を配列番号73に、同遺伝子がコードするPfkBタンパク質のアミノ酸配列を配列番号74に示す。6-phosphofructokinaseの活性を低下させるためには、例えば、PfkAタンパク質およびPfkBタンパク質の一方または両方の活性を低下させてよい。

0059

「フルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(fructose 1,6-bisphosphate aldolase)」とは、フルクトース−1,6−ビスリン酸を分解してジヒドロキシアセトンリン酸とグリセルアルデヒド−3−リン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 4.1.2.13)。同活性を、「fructose 1,6-bisphosphate aldolase活性」ともいう。fructose 1,6-bisphosphate aldolaseをコードする遺伝子を、「fructose
1,6-bisphosphate aldolase遺伝子」ともいう。fructose 1,6-bisphosphate aldolaseとしては、fbaA遺伝子にコードされるFbaAタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のfbaA遺伝子の塩基配列を配列番号39に、同遺伝子がコードするFbaAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号40に示す。E. coli K-12 MG1655株のfbaA遺伝子の塩基配列を配列番号75に、同遺伝子がコードするFbaAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号76に示す。

0060

「トリオースリン酸イソメラーゼ(triose phosphate isomerase)」とは、ジヒドロキシアセトンリン酸を異性化してグリセルアルデヒド−3−リン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 5.3.1.1)。同活性を、「triose phosphate isomerase活性」ともいう。triose phosphate isomeraseをコードする遺伝子を、「triose phosphate isomerase遺伝子」ともいう。triose phosphate isomeraseとしては、tpiA遺伝子にコードされるTpiAタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のtpiA遺伝子の塩基配列を配列番号41に、同遺伝子がコードするTpiAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号42に示す。E. coli K-12 MG1655株のtpiA遺伝子の塩基配列を配列番号77に、同遺伝子がコードするTpiAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号78に示す。

0061

「グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)」とは、リン酸および電子受容体の存在下でグリセルアルデヒド−3−リン酸をリン酸化および酸化して1,3−ビスホスホグリセリン酸を生成する反応を触媒す
る活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 1.2.1.12, EC 1.2.1.13, EC.1.2.1.59等)。同活性を、「glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase活性」ともいう。glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseをコードする遺伝子を、「glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase遺伝子」ともいう。電子受容体としては、NAD+やNADP+が挙げられる。glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseは、例えば、これらの電子受容体の少なくとも1つを利用できるものであってよい。glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenaseとしては、gapA遺伝子にコードされるGapAタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のgapA遺伝子の塩基配列を配列番号43に、同遺伝子がコードするGapAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号44に示す。E. coli K-12 MG1655株のgapA遺伝子の塩基配列を配列番号79に、同遺伝子がコードするGapAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号80に示す。

0062

「ホスホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglycerate kinase)」とは、1,3−ビスホスホグリセリン酸とADPから3−ホスホグリセリン酸とATPを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.7.2.3)。同活性を、「phosphoglycerate kinase活性」ともいう。phosphoglycerate kinaseをコードする遺伝子を、「phosphoglycerate kinase遺伝子」ともいう。phosphoglycerate kinaseとしては、pgk遺伝子にコードされるPgkタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のpgk遺伝子の塩基配列を配列番号45に、同遺伝子がコードするPgkタンパク質のアミノ酸配列を配列番号46に示す。E. coli K-12 MG1655株のpgk遺伝子の塩基配列を配列番号81に、同遺伝子がコードするPgkタンパク質のアミノ酸配列を配列番号82に示す。

0063

「ホスホグリセリン酸ムターゼ(phosphoglycerate mutase)」とは、3−ホスホグリセリン酸を異性化して2−ホスホグリセリン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 5.4.2.11またはEC 5.4.2.12)。同活性を、「phosphoglycerate mutase活性」ともいう。phosphoglycerate mutaseをコードする遺伝子を、「phosphoglycerate mutase遺伝子」ともいう。phosphoglycerate mutaseとしては、gpm遺伝子(例えばgpmA遺伝子やgpmM遺伝子)にコードされるGpmタンパク質(例えばGpmAタンパク質やGpmMタンパク質)が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のgpmA遺伝子の塩基配列を配列番号47に、同遺伝子がコードするGpmAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号48に示す。C. glutamicum ATCC 13869株のgpmM遺伝子の塩基配列を配列番号49に、同遺伝子がコードするGpmMタンパク質のアミノ酸配列を配列番号50に示す。E. coli K-12 MG1655株のgpmA遺伝子の塩基配列を配列番号83に、同遺伝子がコードするGpmAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号84に示す。E. coli K-12 MG1655株のgpmM遺伝子の塩基配列を配列番号85に、同遺伝子がコードするGpmMタンパク質のアミノ酸配列を配列番号86に示す。phosphoglycerate mutaseの活性を低下させるためには、例えば、GpmAタンパク質およびGpmMタンパク質の一方または両方の活性を低下させてよい。

0064

「エノラーゼ(enolase)」とは、2−ホスホグリセリン酸を脱水してPEPを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 4.2.1.11)。同活性を、「enolase活性」ともいう。enolaseをコードする遺伝子を、「enolase遺伝子」ともいう。enolaseとしては、eno遺伝子にコードされるEnoタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のeno遺伝子(NCgl0935)の塩基配列を配列番号51に、同遺伝子がコードするEnoタンパク質のアミノ酸配列を配列番号52に示す。E. coli K-12 MG1655株のeno遺伝子の塩基配列を配列番号87に、同遺伝子がコードするEnoタンパク質のアミノ酸配列を配列番号88に示す。

0065

「ピルビン酸キナーゼ(pyruvate kinase)」とは、PEPとADPからピルビン酸とATPを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.7.1.40)。同活性を、「pyruvate kinase活性」ともいう。pyruvate kinaseをコードする遺伝子を、「pyru
vate kinase遺伝子」ともいう。pyruvate kinaseとしては、pyk遺伝子(例えばpykA遺伝子やpykF遺伝子)にコードされるPykタンパク質(例えばPykAタンパク質やPykFタンパク質)が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のpykA遺伝子の塩基配列を配列番号53に、同遺伝子がコードするPykAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号54に示す。C. glutamicum ATCC 13869株のpykF遺伝子の塩基配列を配列番号55に、同遺伝子がコードするPykFタンパク質のアミノ酸配列を配列番号56に示す。E. coli K-12 MG1655株のpykA遺伝子の塩基配列を配列番号89に、同遺伝子がコードするPykAタンパク質のアミノ酸配列を配列番号90に示す。E. coli K-12 MG1655株のpykF遺伝子の塩基配列を配列番号91に、同遺伝子がコードするPykFタンパク質のアミノ酸配列を配列番号92に示す。pyruvate kinaseの活性を低下させるためには、例えば、PykAタンパク質およびPykFタンパク質の一方または両方の活性を低下させてよい。

0066

「ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase)」とは、ピルビン酸を酸化的に脱炭酸してアセチルCoAを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい。同活性を、「pyruvate dehydrogenase活性」ともいう。pyruvate dehydrogenaseをコードする遺伝子を、「pyruvate dehydrogenase遺伝子」ともいう。pyruvate dehydrogenaseは、3種のサブユニット:ピルビン酸デヒドロゲナーゼ/デカルボキシラーゼ(pyruvate dehydrogenase/decarboxylase;E1;EC 1.2.4.1)、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(dihydrolipoyl acetyltransferase;E2;EC 2.3.1.12)、ジヒドロリポイルデヒドロゲナーゼ(dihydrolipoyl dehydrogenase;E3;EC 1.8.1.4)から構成されてよい。すなわち、pyruvate dehydrogenaseとしては、E1、E2、E3が挙げられる。pyruvate dehydrogenaseにおいて、具体的には、E1がピルビン酸の脱炭酸とE2へのアセチル基の転移を、E2がアセチルCoAの生成を、E3がNADHの生成を、それぞれ担ってよい。pyruvate dehydrogenaseの活性を低下させるためには、例えば、E1、E2、E3から選択される1種のタンパク質の活性を低下させてもよく、E1、E2、E3から選択される2種またはそれ以上(例えば全て)のタンパク質の活性を低下させてもよい。E1としては、aceE遺伝子にコードされるAceEタンパク質が挙げられる。E2としては、aceF遺伝子にコードされるAceFタンパク質が挙げられる。E3としては、lpd遺伝子にコードされるLpdタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のaceE遺伝子の塩基配列を配列番号57に、同遺伝子がコードするAceEタンパク質のアミノ酸配列を配列番号58に示す。C. glutamicum ATCC 13869株のaceF遺伝子の塩基配列を配列番号59に、同遺伝子がコードするAceFタンパク質のアミノ酸配列を配列番号60に示す。C. glutamicum ATCC 13869株のlpd遺伝子の塩基配列を配列番号61に、同遺伝子がコードするLpdタンパク質のアミノ酸配列を配列番号62に示す。E. coli K-12 MG1655株のaceE遺伝子の塩基配列を配列番号93に、同遺伝子がコードするAceEタンパク質のアミノ酸配列を配列番号94に示す。E. coli K-12 MG1655株のaceF遺伝子の塩基配列を配列番号95に、同遺伝子がコードするAceFタンパク質のアミノ酸配列を配列番号96に示す。E. coli K-12 MG1655株のlpd遺伝子の塩基配列を配列番号97に、同遺伝子がコードするLpdタンパク質のアミノ酸配列を配列番号98に示す。

0067

「スクロース−6−リン酸ヒドロラーゼ(sucrose-6-phosphate hydrolase)」とは、スクロース−6−リン酸を加水分解してグルコース−6−リン酸とフルクトースを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 3.2.1.B3)。同活性を、「sucrose-6-phosphate hydrolase活性」ともいう。sucrose-6-phosphate hydrolaseをコードする遺伝子を、「sucrose-6-phosphate hydrolase遺伝子」ともいう。sucrose-6-phosphate hydrolaseとしては、scrB遺伝子にコードされるScrBタンパク質が挙げられる。C.
glutamicumATCC13869株のscrB遺伝子(NCgl2554)の塩基配列を配列番号63に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号64に示す。Salmonella entericaにおいて見出されたプラスミドpUR400に搭載されたscrB遺伝子の塩基配列を配列番号99に、同遺伝子がコードするScrBタンパク質のアミノ酸配列を配列番号100に示す。なお、sucrose-6-phosphate hydrolaseは、さらに、invertase活性を有していてもよい。

0068

「1−ホスホフルクトキナーゼ(1-phosphofructokinase)」とは、ATPをリン酸供与体としてフルクトース−1−リン酸をリン酸化してフルクトース−1,6−ビスリン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.7.1.56)。同活性を、「1-phosphofructokinase活性」ともいう。1-phosphofructokinaseをコードする遺伝子を、「1-phosphofructokinase遺伝子」ともいう。1-phosphofructokinaseとしては、fruK遺伝子にコードされるFruKタンパク質が挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のfruK遺伝子(NCgl1860)の塩基配列を配列番号65に、同遺伝子がコードするFruKタンパク質のアミノ酸配列を配列番号66に示す。E. coli K-12 MG1655株のfruK遺伝子の塩基配列を配列番号101に、同遺伝子がコードするFruKタンパク質のアミノ酸配列を配列番号102に示す。

0069

「インベルターゼ(invertase)」とは、スクロースを加水分解してグルコースとフルクトースを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 3.2.1.26)。同活性を、「invertase活性」ともいう。invertaseをコードする遺伝子を、「invertase遺伝子」ともいう。invertaseとしては、cscA遺伝子にコードされるCscAタンパク質が挙げられる。E. coli EC3132株のcscA遺伝子の塩基配列を配列番号103に、同遺伝子がコードするCscAタンパク質のアミノ酸配列(NCBIACCESSION P40714)を配列番号104に示す。なお、invertaseは、さらに、sucrose-6-phosphate hydrolase活性を有していてもよい。

0070

「フルクトキナーゼ(fructokinase)」とは、ATPをリン酸供与体としてフルクトースをリン酸化してフルクトース−6−リン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.7.1.4)。同活性を、「fructokinase活性」ともいう。fructokinaseをコードする遺伝子を、「fructokinase遺伝子」ともいう。fructokinaseとしては、cscK遺伝子にコードされるCscKタンパク質が挙げられる。E. coli EC3132株のcscK遺伝子の塩基配列を配列番号105に、同遺伝子がコードするCscKタンパク質のアミノ酸配列(NCBIACCESSION P40713)を配列番号106に示す。

0071

すなわち、糖資化遺伝子は、例えば、上記例示した塩基配列等の公知の塩基配列を有する遺伝子であってよい。また、糖資化タンパク質は、例えば、上記例示したアミノ酸配列等の公知のアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。なお、「(アミノ酸または塩基)配列を有する」という表現は、特記しない限り、当該「(アミノ酸または塩基)配列を含む」ことを意味してよく、当該「(アミノ酸または塩基)配列からなる」場合も包含してよい。

0072

糖資化遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示した糖資化遺伝子(例えば、上記例示した塩基配列等の公知の塩基配列を有する遺伝子)のバリアントであってもよい。同様に、糖資化タンパク質は、元の機能が維持されている限り、上記例示した糖資化タンパク質(例えば、上記例示したアミノ酸配列等の公知のアミノ酸配列を有するタンパク質)のバリアントであってもよい。なお、そのような元の機能が維持されたバリアントを「保存的バリアント」という場合がある。また、上記遺伝子名で特定される遺伝子および上記タンパク質名で特定されるタンパク質には、それぞれ、上記例示した遺伝子およびタンパク質に限られず、それらの保存的バリアントも包含されてよい。すなわち、例えば、「pfk遺伝子」という用語は、上記例示したpfk遺伝子(例えば、配列番号37、71、または73に示す塩基配列を有する遺伝子)に加えて、それらの保存的バリアントを包含してよい。同様に、例えば、「Pfkタンパク質」という用語は、上記例示したPfkタンパク質(例えば、配列番号38、72、または74に示すアミノ酸配列を有するタンパク質)に加えて、それらの保存的バリアントを包含してよい。保存的バリアントとしては、例えば、上記例示した遺伝子やタンパク質のホモログや人為的な改変体が挙げられる。

0073

「元の機能が維持されている」とは、遺伝子またはタンパク質のバリアントが、元の遺伝子またはタンパク質の機能(例えば、活性や性質)に対応する機能(例えば、活性や性質)を有することを意味する。遺伝子についての「元の機能が維持されている」とは、遺伝子のバリアントが、元の機能が維持されたタンパク質をコードすることを意味してよい。すなわち、糖資化遺伝子についての「元の機能が維持されている」とは、遺伝子のバリアントが対応する糖資化タンパク質をコードすることを意味してよい。また、糖資化タンパク質についての「元の機能が維持されている」とは、タンパク質のバリアントが対応する糖資化タンパク質の活性を有することを意味してよい。例えば、6-phosphofructokinase遺伝子についての「元の機能が維持されている」とは、遺伝子のバリアントが6-phosphofructokinaseをコードすることを意味してよい。また、6-phosphofructokinaseについての「元の機能が維持されている」とは、タンパク質のバリアントが6-phosphofructokinase活性を有することを意味してよい。

0074

糖資化タンパク質の機能(例えば、活性や性質)は、いずれも、例えば、公知の手法により測定することができる。すなわち、糖の代謝酵素等の酵素の活性は、例えば、酵素を対応する基質インキュベートし、酵素および基質依存的な対応する産物の生成を測定することにより、測定することができる。具体的には、例えば、6-phosphofructokinase活性は、ATPの存在下で酵素を対応する基質(すなわち、フルクトース−6−リン酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的な対応する産物(すなわち、フルクトース−1,6−ビスリン酸)の生成を測定することにより、測定することができる。また、糖の取り込み系の活性は、例えば、タンパク質を発現する菌体を糖とインキュベートし、同タンパク質依存的な菌体内への糖の取り込みを測定することにより、測定することができる。糖資化タンパク質は、少なくとも1つの適切な条件下で測定される糖資化タンパク質の機能(例えば、活性や性質)を有していればよい。なお、本明細書に記載の他の全てのタンパク質についても、少なくとも1つの適切な条件下で測定される対応する機能(例えば、活性や性質)を有していればよい。

0075

以下、保存的バリアントについて例示する。

0076

糖資化遺伝子のホモログまたは糖資化タンパク質のホモログは、例えば、上記例示した塩基配列等の公知の塩基配列または上記例示したアミノ酸配列等の公知のアミノ酸配列を問い合わせ配列として用いたBLAST検索FASTA検索によって公開データベースから容易に取得することができる。また、糖資化遺伝子のホモログは、例えば、コリネ型細菌等の生物の染色体を鋳型にして、上記例示した塩基配列等の公知の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドプライマーとして用いたPCRにより取得することができる。

0077

糖資化遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したアミノ酸配列等の公知のアミノ酸配列において、1若しくは数個の位置での1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするものであってもよい。例えば、コードされるタンパク質は、そのN末端および/またはC末端が、延長または短縮されていてもよい。なお、上記「1又は数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には、例えば、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜10個、1〜5個、または1〜3個であってよい。

0078

上記の1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加は、タンパク質の元の機能が維持される保存的変異である。保存的変異の代表的なものは、保存的置換である。保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸
ある場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換する変異である。保存的置換とみなされる置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。また、上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加等には、遺伝子が由来する生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。

0079

また、糖資化遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示したアミノ酸配列等の公知のアミノ酸配列全体に対して、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。

0080

また、糖資化遺伝子は、元の機能が維持されている限り、上記例示した塩基配列等の公知の塩基配列から調製され得るプローブ、例えば上記例示した塩基配列等の公知の塩基配列の全体または一部に対する相補配列、とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子、例えばDNA、であってもよい。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味してよい。一例を示せば、同一性が高いDNA同士、例えば、50%以上、65%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または99%以上の同一性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより同一性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好ましくは60℃、0.1×SSC、0.1% SDS、より好ましくは68℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度および温度で、1回、好ましくは2〜3回洗浄する条件を挙げることができる。

0081

上述の通り、上記ハイブリダイゼーションに用いるプローブは、遺伝子の相補配列の一部であってもよい。そのようなプローブは、上記例示した塩基配列等の公知の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、上述の遺伝子を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。例えば、プローブとしては、300 bp程度の長さのDNA断片を用いることができる。プローブとして300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件としては、50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。

0082

また、宿主によってコドン縮重性が異なるので、糖資化遺伝子は、任意のコドンをそれと等価のコドンに置換したものであってもよい。すなわち、糖資化遺伝子は、遺伝コードの縮重による上記例示した糖資化遺伝子のバリアントであってもよい。例えば、糖資化遺伝子は、使用する宿主のコドン使用頻度に応じて最適なコドンを有するように改変されてよい。

0083

なお、アミノ酸配列間の「同一性」とは、blastpによりデフォルト設定のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11, Extension=1;Compositional Adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味する。また、塩基配列間の「同一性」とは、blastnによ
りデフォルト設定のScoring Parameters(Match/Mismatch Scores=1,-2;Gap Costs=Linear)を用いて算出される塩基配列間の同一性を意味する。

0084

なお、上記の遺伝子やタンパク質の保存的バリアントに関する記載は、糖資化遺伝子および糖資化タンパク質以外の任意の遺伝子およびタンパク質にも準用できる。

0085

糖の資化能を低下させるために活性を低下させる糖資化タンパク質(タンパク質P1)は、例えば、糖の種類や糖の資化経路の種類等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、PTSを介したグルコースの資化能を低下させるためには、EI、HPr、EIIGlc、phosphoglucose isomerase、6-phosphofructokinase、fructose 1,6-bisphosphate aldolase、triose phosphate isomerase、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、phosphoglycerate kinase、phosphoglycerate mutase、enolase、pyruvate kinase、pyruvate dehydrogenaseから選択される1種またはそれ以上の活性を低下させてよい。また、例えば、PTSを介したスクロースの資化能を低下させるためには、EI、HPr、EIIScr、phosphoglucose isomerase、6-phosphofructokinase、fructose 1,6-bisphosphate aldolase、triose phosphate isomerase、glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase、phosphoglycerate kinase、phosphoglycerate mutase、enolase、pyruvate kinase、pyruvate dehydrogenase、sucrose-6-phosphate hydrolase、fructokinaseから選択される1種またはそれ以上の活性を低下させてよい。微生物においては、例えば、解糖系の酵素から選択される1種またはそれ以上のタンパク質の活性が低下していてよい。微生物においては、特に、6-phosphofructokinaseの活性が低下していてよい。

0086

<1−3>目的物質生産能
本明細書に記載の微生物は、目的物質生産能を有していてもよい。

0087

「目的物質生産能」とは、目的物質を生産する能力を意味する。すなわち、「目的物質生産能を有する微生物」とは、目的物質を生産することができる微生物を意味してよい。

0088

「目的物質生産能を有する微生物」とは、微生物が発酵法に用いられる場合にあっては、目的物質を発酵により生産することができる微生物を意味してよい。すなわち、「目的物質生産能を有する微生物」とは、目的物質を糖から生産することができる微生物を意味してよい。「目的物質生産能を有する微生物」とは、具体的には、培地(例えば、糖を含有する培地)で培養したときに、目的物質を生産し、回収できる程度に培養液中(例えば、培地中、菌体表層、菌体内、またはそれらの組み合わせ)に蓄積することができる微生物を意味してよい。

0089

「目的物質生産能を有する微生物」とは、微生物が生物変換法に用いられる場合にあっては、目的物質を生物変換により生産することができる微生物を意味してよい。すなわち、「目的物質生産能を有する微生物」とは、目的物質を該目的物質の前駆体から生産することができる微生物を意味してよい。「目的物質生産能を有する微生物」とは、具体的には、培地(例えば、糖と目的物質の前駆体を含有する培地)で培養したときに、目的物質を生産し、回収できる程度に培養液中(例えば、培地中、菌体内、またはそれらの組み合わせ)に蓄積することができる微生物を意味してよい。また、「目的物質生産能を有する微生物」とは、具体的には、反応液中で目的物質の前駆体に作用させたときに、目的物質を生産し、回収できる程度に反応液中(例えば、液画分、菌体内、またはそれらの組み合わせ)に蓄積することができる微生物を意味してよい。「液画分」とは、反応液から菌体を除いた残部を意味してよい。

0090

目的物質生産能を有する微生物は、例えば、0.01 g/L以上、0.05 g/L以上、0.1 g/L以上、0.5 g/L以上、または1.0 g/L以上の量の目的物質を培地または反応液に蓄積すること
ができてもよい。

0091

微生物は、1種の目的物質を生産することができてもよく、2種またはそれ以上の目的物質を生産することができてもよい。また、微生物は、1種の目的物質前駆体から目的物質を生産することができてもよく、2種またはそれ以上の目的物質前駆体から目的物質を生産することができてもよい。

0092

目的物質は、微生物を利用して生産できるものであれば特に制限されない。目的物質としては、SAM依存性代謝物、アルデヒド、L−アミノ酸、核酸、有機酸、γ−グルタミルペプチド、スフィンゴイド、タンパク質、RNAが挙げられる。

0093

「SAM依存性代謝物」とは、生合成S−アデノシルメチオニン(S-adenosylmethionine;SAM)を要求する代謝物を意味してよい。SAM依存性代謝物としては、バニリン(vanillin)、バニリン酸(vanillic acid)、メラトニン(melatonin)、エルゴチオネイン(ergothioneine)、ムギネ酸(mugineic acid)、フェルラ酸(ferulic acid)、ポリアミン(polyamine)、グアイアコール(guaiacol)、4−ビニルグアイアコール(4-vinylguaiacol)、4−エチルグアイアコール(4-ethylguaiacol)、クレアチン(creatine)が挙げられる。ポリアミンとしては、スペルミジン(spermidine)やスペルミン(spermine)が挙げられる。

0094

アルデヒドとしては、芳香族アルデヒドが挙げられる。芳香族アルデヒドとしては、バニリン(vanillin)、ベンズアルデヒド(benzaldehyde)、シンナムアルデヒド(cinnamaldehyde)が挙げられる。

0095

L−アミノ酸としては、L−リジン、L−オルニチン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、L−シトルリン等の塩基性アミノ酸、L−イソロイシン、L−アラニン、L−バリン、L−ロイシン、グリシン等の脂肪族アミノ酸、L−スレオニン、L−セリン等のヒドロキシモノアミノカルボン酸であるアミノ酸、L−プロリン等の環式アミノ酸、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−トリプトファン等の芳香族アミノ酸、L−システイン、L−シスチン、L−メチオニン等の含硫アミノ酸、L−グルタミン酸、L−アスパラギン酸等の酸性アミノ酸、L−グルタミン、L−アスパラギン等の側鎖にアミド基を持つアミノ酸が挙げられる。「アミノ酸」とは、特記しない限り、L−アミノ酸を意味してよい。

0096

核酸としては、プリン系物質が挙げられる。プリン系物質としては、プリンヌクレオシドおよびプリンヌクレオチドが挙げられる。プリンヌクレオシドとしては、イノシングアノシンキサントシン、およびアデノシンが挙げられる。プリンヌクレオチドとしては、プリンヌクレオシドの5’−リン酸エステルが挙げられる。プリンヌクレオシドの5’−リン酸エステルとしては、イノシン酸(イノシン−5’−リン酸エステル;IMP)、グアニル酸(グアノシン−5’−リン酸エステル;GMP)、キサンチル酸(キサントシン−5’−リン酸エステル;XMP)、およびアデニル酸(アデノシン−5’−リン酸エステル;AMP)が挙げられる。

0097

有機酸としては、ジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、炭素数が3つから8つのジカルボン酸(C3−C8ジカルボン酸)が挙げられる。ジカルボン酸として、具体的には、α−ケトグルタル酸(α−KG;別名2−オキソグルタル酸)、リンゴ酸フマル酸コハク酸イタコン酸マロン酸アジピン酸グルタル酸ピメリン酸スベリン酸が挙げられる。

0098

γ−グルタミルペプチドとしては、γ−グルタミルジペプチドやγ−グルタミルトリペプチドが挙げられる。γ−グルタミルジペプチドとしては、γ-Glu-Valが挙げられる。γ
−グルタミルトリペプチドとしては、γ-Glu-Val-Gly(CAS 38837-70-6、Gluvalicineともいう)が挙げられる。

0099

スフィンゴイドとしては、スフィンゴイド塩基スフィンゴ脂質が挙げられる。スフィンゴイド塩基としては、フィトスフィンゴシン(phytosphingosine;PHS)が挙げられる。スフィンゴ脂質としては、フィトセラミド(phytoceramide;PHC)が挙げられる。

0100

タンパク質としては、微生物を宿主として発現可能な任意のタンパク質が挙げられる。タンパク質は、宿主由来のタンパク質であってもよく、異種由来のタンパク質(異種タンパク質)であってもよい。「異種タンパク質」(heterologous protein)とは、同タンパク質を生産する宿主(すなわち本明細書に記載の微生物)にとって外来性(exogenous)であるタンパク質をいう。タンパク質は、例えば、天然に存在するタンパク質であってもよく、それらを改変したタンパク質であってもよく、人工的にアミノ酸配列をデザインしたタンパク質であってもよい。タンパク質は、例えば、微生物由来のタンパク質であってもよく、植物由来のタンパク質であってもよく、動物由来のタンパク質であってもよく、ウイルス由来のタンパク質であってもよい。タンパク質は、単量体タンパク質であってもよく、多量体タンパク質であってもよい。タンパク質は、分泌性タンパク質であってもよく、非分泌性タンパク質であってもよい。なお、「タンパク質」には、オリゴペプチドポリペプチド等の、ペプチドと呼ばれるものも包含される。

0101

タンパク質として、具体的には、酵素、生理活性タンパク質レセプタータンパク質抗原タンパク質、その他のタンパク質が挙げられる。

0103

生理活性タンパク質としては、成長因子増殖因子)、ホルモンサイトカイン、抗体関連分子が挙げられる。

0104

成長因子(増殖因子)としては、上皮成長因子(Epidermal growth factor;EGF)、インスリン様成長因子-1(Insulin-like growth factor-1;IGF-1)、トランスフォーミング成長因子(Transforming growth factor;TGF)、神経成長因子(Nerve growth factor;NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor;BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(Vesicular endothelial growth factor;VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte-colony stimulating factor;G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Granulocyte-macrophage-colony stimulating factor;GM-CSF)、血小板由来成長因子(Platelet-derived growth factor;PDGF)、エリスロポエチン(Erythropoietin;EPO)、トロンボポエチン(Thrombopoietin;TPO)、酸性線維芽細胞増殖因子(acidic fibroblast growth factor;aFGFまたはFGF1)、塩基性線維芽細胞増殖因子basicfibroblast growth factor;bFGFまたはFGF2)、角質細胞増殖因子(keratinocyto growth
factor;KGF-1またはFGF7, KGF-2またはFGF10)、肝細胞増殖因子(Hepatocyte growth factor;HGF)が挙げられる。

0105

ホルモンとしては、インスリングルカゴンソマトスタチン(somatostatin)、ヒト成長ホルモン(human growth hormone;hGH)、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)、カルシトニン(calcitonin)、エキセナチド(exenatide)が挙げられる。

0106

サイトカインとしては、インターロイキンインターフェロン腫瘍壊死因子(Tumor
Necrosis Factor;TNF)が挙げられる。

0107

また、生理活性タンパク質は、タンパク質全体であってもよく、その一部であってもよい。タンパク質の一部としては、例えば、生理活性を有する部分が挙げられる。生理活性を有する部分として、具体的には、例えば、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)の成熟体のN末端34アミノ酸残基からなる生理活性ペプチドTeriparatideが挙げられる。

0108

「抗体関連分子」とは、完全抗体を構成するドメインから選択される単一のドメインまたは2もしくはそれ以上のドメインの組合せからなる分子種を含むタンパク質を意味してよい。完全抗体を構成するドメインとしては、重鎖のドメインであるVH、CH1、CH2、およびCH3、ならびに軽鎖のドメインであるVLおよびCLが挙げられる。抗体関連分子は、上述の分子種を含む限り、単量体タンパク質であってもよく、多量体タンパク質であってもよい。なお、抗体関連分子が多量体タンパク質である場合には、単一の種類のサブユニットからなるホモ多量体であってもよく、2またはそれ以上の種類のサブユニットからなるヘテロ多量体であってもよい。抗体関連分子として、具体的には、完全抗体、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fc、重鎖(H鎖)と軽鎖(L鎖)からなる二量体Fc融合タンパク質、重鎖(H鎖)、軽鎖(L鎖)、単鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、diabody、VHHフラグメント(nanobody(登録商標))が挙げられる。抗体関連分子として、より具体的には、トラスツズマブが挙げられる。

0109

レセプタータンパク質としては、生理活性タンパク質やその他の生理活性物質に対するレセプタータンパク質が挙げられる。その他の生理活性物質としては、ドーパミン等の神経伝達物質が挙げられる。なお、レセプタータンパク質は、対応するリガンドが知られていないオーファン受容体であってもよい。

0110

抗原タンパク質は、免疫応答惹起できるものであれば特に制限されない。抗原タンパク質は、例えば、想定する免疫応答の対象に応じて適宜選択できる。抗原タンパク質は、例えば、ワクチンとして使用することができる。

0111

その他のタンパク質としては、Liver-type fatty acid-binding protein(LFABP)、蛍光タンパク質イムノグロブリン結合タンパク質アルブミンフィブロイン様タンパク質細胞外タンパク質が挙げられる。蛍光タンパク質としては、Green Fluorescent Protein(GFP)が挙げられる。イムノグロブリン結合タンパク質としては、Protein A、Protein G、Protein Lが挙げられる。アルブミンとしては、ヒト血清アルブミンが挙げられる。フィブロイン様タンパク質としては、WO2017/090665やWO2017/171001に開示されたものが挙げられる。細胞外タンパク質としては、フィブロネクチンビトロネクチンコラーゲンオステオポンチンラミニン、それらの部分配列が挙げられる。部分配列としては、ラミニンのE8断片であるラミニンE8が挙げられる。

0112

タンパク質は、例えば、上記のようなタンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質であってよい。また、タンパク質は、例えば、上記のようなタンパク質のアミノ酸配列のバリアント配列を有するタンパク質であってもよい。バリアント配列については、糖資化タンパク質のバリアントについての記載を準用できる。

0113

RNAとしては、微生物を宿主として発現可能な任意のRNAが挙げられる。RNAは、宿主由来のRNAであってもよく、異種由来のRNA(異種RNA)であってもよい。「異種RNA」(heterologous RNA)とは、同RNAを生産する宿主(すなわち本明細書に記載の微生物)にとって外来性(exogenous)であるRNAをいう。RNAは、例えば、天然に存在するRNAであってもよく、それらを改変したRNAであってもよく、人工的に塩基配列をデザインしたRNAであっ
てもよい。RNAは、例えば、微生物由来のRNAであってもよく、植物由来のRNAであってもよく、動物由来のRNAであってもよく、ウイルス由来のRNAであってもよい。RNAは、例えば、mRNA(messenger RNA)であってもよく、rRNA(ribosomal RNA)、tRNA(transfer RNA)、miRNA(micro RNA)、siRNA(small interfering RNA)、リボザイム(ribozyme)、RNAアプタマー等のノンコーディングRNAであってもよい。mRNAは、例えば、何らかの機能を有するタンパク質をコードするものであってもよく、それ自体は機能を有さないタンパク質をコードするものであってもよい。mRNAがコードするタンパク質としては、目的物質として例示したタンパク質が挙げられる。

0114

RNAは、例えば、上記のようなRNAの塩基配列を有するRNAであってよい。また、RNAは、例えば、上記のようなRNAの塩基配列の部分配列を有するRNAであってもよい。また、RNAは、例えば、上記のようなRNAの塩基配列やそれらの部分配列の相補配列を有するRNAであってもよい。また、RNAは、例えば、上記のようなRNAの塩基配列、それらの部分配列、またはそれらの相補配列のバリアント配列を有するRNAであってもよい。バリアント配列については、糖資化遺伝子のバリアントについての記載を準用できる。また、RNAは、例えば、上記のようなRNAの塩基配列、それらの部分配列、それらの相補配列、およびそれらのバリアント配列から選択される2つまたはそれ以上の塩基配列を組み合わせて有していてもよい。RNAとして、具体的には、ニジュウヤホシテントウのアポトーシス阻害因子のmRNAの部分配列や、コロラドポテトビートル液胞中のATPアーゼを構成するサブユニットAとEのmRNAの部分配列が挙げられる。

0115

RNAは、例えば、一本鎖RNA(1分子RNA鎖からなるRNA)であってもよく、二本鎖RNA(2分子のRNA鎖からなるRNA)であってもよい。二本鎖RNAは、単一の種類のRNA分子からなる二本鎖ホモ二本鎖)であってもよく、2種の異なるRNA分子からなる二本鎖(ヘテロ二本鎖)であってもよい。二本鎖RNAとして、具体的には、或るRNA鎖とその相補鎖からなる二本鎖RNAが挙げられる。また、RNAは、例えば、1分子のRNA鎖と1分子のDNA鎖からなる二本鎖であってもよい。RNAは、一本鎖の領域と二本鎖の領域の両方を含んでいてもよい。すなわち、例えば、一本鎖RNAは、分子内で部分的に二本鎖構造(例えば、ステムループ構造)を形成していてもよい。また、例えば、二本鎖RNAは、部分的に一本鎖構造を含んでいてもよい。

0116

目的物質が塩の形態を取り得る化合物である場合、目的物質は、フリー体として生産されてもよく、塩として生産されてもよく、それらの混合物として生産されてもよい。すなわち、「目的物質」とは、特記しない限り、フリー体の目的物質、もしくはその塩、またはそれらの混合物を意味してよい。塩としては、例えば、硫酸塩、塩酸塩炭酸塩アンモニウム塩ナトリウム塩カリウム塩が挙げられる。目的物質の塩としては、1種の塩を用いてもよく、2種またはそれ以上の塩を組み合わせて用いてもよい。

0117

本明細書に記載の微生物は、本来的に目的物質生産能を有するものであってもよく、目的物質生産能を有するように改変されたものであってもよい。目的物質生産能を有する微生物は、例えば、上記のような微生物に目的物質生産能を付与することにより、または、上記のような微生物の目的物質生産能を増強することにより、取得できる。本明細書に記載のプラスミドが第2の塩基配列(目的物質の生産に有効な塩基配列)を有する場合、プラスミドの導入により目的物質生産能を向上させることができる。すなわち、目的物質生産能は、プラスミドの導入により付与または増強されたものであってもよい。微生物は、例えば、プラスミドの導入により、またはプラスミドの導入と他の改変の組み合わせにより、目的物質生産能を獲得したものであってもよい。

0118

目的物質生産能を付与または増強する方法は、特に制限されない。目的物質生産能を付与または増強する方法としては、例えば、公知の方法を利用できる。SAM依存性代謝物の
生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2018/079687、WO2018/079686、WO2018/079685、WO2018/079684、WO2018/079683に開示されている。アルデヒドの生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2017/073701、WO2018/079705、WO2017/122747に開示されている。L−アミノ酸の生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2015/060391やWO2018/030507に開示されている。核酸の生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2015/060391に開示されている。有機酸の生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2016/104814に開示されている。γ−グルタミルペプチドの生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2015/133547やWO2017/039001に開示されている。スフィンゴイドの生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2017/033463やWO2017/033464に開示されている。タンパク質の生産能を付与または増強する方法は、例えば、WO2018/074578やWO2018/074579に開示されている。

0119

以下、目的物質生産能を付与または増強する方法について具体的に例示する。なお、以下に例示するような目的物質生産能を付与または増強するための改変は、いずれも、単独で用いてもよく、適宜組み合わせて用いてもよい。

0120

目的物質は、目的物質の生合成に関与する酵素の作用により生成し得る。そのような酵素を、「目的物質生合成酵素」ともいう。よって、微生物は、目的物質生合成酵素を有していてよい。言い換えると、微生物は、目的物質生合成酵素をコードする遺伝子を有していてよい。そのような遺伝子を、「目的物質生合成遺伝子」ともいう。微生物は、本来的に目的物質生合成遺伝子を有するものであってもよく、目的物質生合成遺伝子が導入されたものであってもよい。遺伝子を導入する手法については後述する。

0121

また、目的物質生合成酵素の活性の増大により、微生物の目的物質生産能を向上させることができる。すなわち、目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、目的物質生合成酵素の活性を増大させる方法が挙げられる。すなわち、微生物は、目的物質生合成酵素の活性が増大するように改変されていてよい。微生物においては、1種の目的物質生合成酵素の活性が増大していてもよく、2種またはそれ以上の目的物質生合成酵素の活性が増大していてもよい。タンパク質(酵素等)の活性を増大させる手法については後述する。タンパク質(酵素等)の活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子の発現を増大させることにより、増大させることができる。

0122

目的物質生合成遺伝子および目的物質生合成酵素としては、上記例示した微生物等の各種生物のものが挙げられる。目的物質生合成遺伝子および目的物質生合成酵素として、具体的には、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌(例えば、E. coli等のEscherichia属細菌)やコリネ型細菌(例えば、C. glutamicum等のCorynebacterium属細菌)のものが挙げられる。また、目的物質生合成遺伝子および目的物質生合成酵素としては、以下に個別に例示する生物のものも挙げられる。各種生物由来の目的物質生合成遺伝子の塩基配列およびそれらにコードされる目的物質生合成酵素のアミノ酸配列は、例えば、NCBI等の公開データベースや特許文献等の技術文献から取得できる。目的物質生合成遺伝子および目的物質生合成酵素以外の、目的物質生産能の付与または増強に利用される遺伝子およびタンパク質についても同様である。

0123

目的物質は、例えば、糖および/または該目的物質の前駆体から、生成し得る。よって、目的物質生合成酵素としては、例えば、糖および/または前駆体の目的物質への変換を触媒する酵素が挙げられる。例えば、3−デヒドロシキミ酸(3-dehydroshikimic acid)は、シキミ酸経路の一部によって生産され得る。当該シキミ酸経路の一部は、3−デオキシ−D−アラビノヘプツソン酸−7−リン酸シンターゼ(3-deoxy-D-arabino-heptulosonic acid 7-phosphate synthase;DAHP synthase)、3−デヒドロキナ酸シンターゼ(3-dehydroquinate synthase)、および3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ(3-dehydro
quinate dehydratase)により触媒されるステップを含んでいてよい。3−デヒドロシキミ酸は、3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ(3-dehydroshikimate dehydratase;DHSD)の作用によりプロトカテク酸(protocatechuic acid)へと変換され得る。プロトカテク酸は、O−メチルトランスフェラーゼ(O-methyltransferase;OMT)または芳香族アルデヒドオキシドレダクターゼ(aromatic aldehyde oxidoreductase)(芳香族カルボン酸レダクターゼ(aromatic carboxylic acid reductase;ACAR)ともいう)の作用により、それぞれ、バニリン酸(vanillic acid)またはプロトカテクアルデヒド(protocatechualdehyde)へと変換され得る。バニリン酸またはプロトカテクアルデヒドは、それぞれ、ACARまたはOMTの作用により、バニリンへと変換され得る。また、ベンズアルデヒドおよびシンナムアルデヒドは、それぞれ、ACARの作用により安息香酸(benzoic acid)およびケイ皮酸(cinnamic acid)から生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素として、具体的には、例えば、DAHP synthase、3-dehydroquinate synthase、3-dehydroquinate dehydratase、DHSD、OMT、ACARが挙げられる(WO2018/079687、WO2018/079686、WO2018/079685、WO2018/079684、WO2018/079683、WO2017/073701、WO2018/079705)。

0124

「3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソン酸−7−リン酸シンターゼ(3-deoxy-D-arabino-heptulosonic acid 7-phosphate synthase;DAHP synthase)」とは、D−エリトロース4−リン酸とホスホエノールピルビン酸をD−アラビノ−ヘプツロン酸−7−リン酸(DAHP)とリン酸に変換する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.5.1.54)。同活性を、「DAHP synthase活性」ともいう。DAHP synthaseをコードする遺伝子を、「DAHP synthase遺伝子」ともいう。DAHP synthaseとしては、aroF、aroG、aroH遺伝子にそれぞれコードされるAroF、AroG、AroHタンパク質が挙げられる。これらの内、AroGタンパク質が主要なDAHP synthaseとして機能し得る。E. coli K-12 MG1655株のaroG遺伝子の塩基配列を配列番号107に、同遺伝子がコードするAroGタンパク質のアミノ酸配列を配列番号108に示す。

0125

DAHP synthase活性は、例えば、酵素を基質(すなわち、D−エリトロース4−リン酸とホスホエノールピルビン酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的な産物(すなわち、DAHP)の生成を測定することにより、測定できる。

0126

「3−デヒドロキナ酸シンターゼ(3-dehydroquinate synthase)」とは、DAHPを脱リン酸化して3−デヒドロキナ酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 4.2.3.4)。同活性を、「3-dehydroquinate synthase活性」ともいう。3-dehydroquinate synthaseをコードする遺伝子を、「3-dehydroquinate synthase遺伝子」ともいう。3-dehydroquinate synthaseとしては、aroB遺伝子にコードされるAroBタンパク質が挙げられる。E. coli K-12 MG1655株のaroB遺伝子の塩基配列を配列番号109に、同遺伝子がコードするAroBタンパク質のアミノ酸配列を配列番号110に示す。

0127

3-dehydroquinate synthase活性は、例えば、酵素を基質(すなわち、DAHP)とインキュベートし、酵素および基質依存的な産物(すなわち、3−デヒドロキナ酸)の生成を測定することにより、測定できる。

0128

「3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ(3-dehydroquinate dehydratase)」とは、3−デヒドロキナ酸を脱水して3−デヒドロシキミ酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 4.2.1.10)。同活性を、「3-dehydroquinate dehydratase活性」ともいう。3-dehydroquinate dehydrataseをコードする遺伝子を、「3-dehydroquinate dehydratase遺伝子」ともいう。3-dehydroquinate dehydrataseとしては、aroD遺伝子にコードされるAroDタンパク質が挙げられる。E. coli K-12 MG1655株のaroD遺伝子の塩基配列を配列番号111に、同遺伝子がコードするAroDタンパク質のアミノ酸配列を配列番号112に示す。

0129

3-dehydroquinate dehydratase活性は、例えば、酵素を基質(すなわち、3−デヒドロキナ酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的な産物(すなわち、3−デヒドロシキミ酸)の生成を測定することにより、測定できる。

0130

「3−デヒドロシキミ酸デヒドラターゼ(3-dehydroshikimate dehydratase;DHSD)」とは、3−デヒドロシキミ酸を脱水してプロトカテク酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 4.2.1.118)。同活性を、「DHSD活性」ともいう。DHSDをコードする遺伝子を、「DHSD遺伝子」ともいう。DHSDとしては、asbF遺伝子にコードされるAsbFタンパク質が挙げられる。DHSDとして、具体的には、Bacillus thuringiensis、Neurospora crassa、Podospora pauciseta等の各種生物のものが挙げられる。Bacillus thuringiensis BMB171株のasbF遺伝子の塩基配列を配列番号113に、同遺伝子がコードするAsbFタンパク質のアミノ酸配列を配列番号114に示す。

0131

DHSD活性は、例えば、酵素を基質(すなわち、3−デヒドロシキミ酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的な産物(すなわち、プロトカテク酸)の生成を測定することにより、測定できる。

0132

シキミ酸経路の酵素(DAHP synthase、3-dehydroquinate synthase、3-dehydroquinate
dehydratase等)をコードする遺伝子の発現は、tyrR遺伝子にコードされるチロシンリプレッサーTyrRにより抑制される。よって、シキミ酸経路の酵素の活性は、チロシンリプレッサーTyrRの活性を低下させることによっても、増大させることができる。E. coli K-12
MG1655株のtyrR遺伝子の塩基配列を配列番号115に、同遺伝子がコードするTyrRタンパク質のアミノ酸配列を配列番号116に示す。

0133

「O−メチルトランスフェラーゼ(O-methyltransferase;OMT)」とは、メチル基供与体の存在下で基質の水酸基メチル化する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 2.1.1.68等)。同活性を、「OMT活性」ともいう。OMTをコードする遺伝子を、「OMT遺伝子」ともいう。OMTは、本明細書に記載の方法において目的物質が生産される生合成経路の種類に応じて、必要な基質特異性を有していてよい。例えば、プロトカテク酸からバニリン酸への変換を介して目的物質を生産する場合、少なくともプロトカテク酸を基質とするOMTを用いることができる。また、例えば、プロトカテクアルデヒドからバニリンへの変換を介して目的物質を生産する場合、少なくともプロトカテクアルデヒドを基質とするOMTを用いることができる。すなわち、「O−メチルトランスフェラーゼ(O-methyltransferase;OMT)」とは、具体的には、メチル基供与体の存在下でプロトカテク酸および/またはプロトカテクアルデヒドをメチル化してバニリン酸および/またはバニリンを生成する反応(すなわちメタ位の水酸基のメチル化)を触媒する活性を有するタンパク質を意味してもよい。OMTは、通常はプロトカテク酸とプロトカテクアルデヒドの両方に特異的であってよいが、それには限られない。メチル基供与体としては、S−アデノシルメチオニン(SAM)が挙げられる。

0134

OMTとしては、各種生物のOMT、例えば、Homo sapiens(Hs)のOMT(GenBankAccession
No. NP_000745, NP_009294)、Arabidopsis thalianaのOMT(GenBank Accession No. NP_200227, NP_009294)、Fragaria x ananassaのOMT(GenBank Accession No. AAF28353)、その他WO2013/022881A1に例示されている哺乳動物、植物、微生物の各種OMTが挙げられる。Homo sapiensのOMT遺伝子には4つの転写バリアントおよび2種のOMTアイソフォームが知られている。それら4つの転写バリアント(transcript variant 1-4;GenBank Accession No. NM_000754.3, NM_001135161.1, NM_001135162.1, NM_007310.2)の塩基配列を配列番号117〜120に、長いOMTアイソフォーム(MB-COMT;GenBank Accession No. NP_000745.1)のアミノ酸配列を配列番号121に、短いOMTアイソフォーム(S-COMT;
GenBank Accession No. NP_009294.1)のアミノ酸配列を配列番号122に、それぞれ示す。配列番号122は、配列番号121のN末端50アミノ酸残基を欠くアミノ酸配列に相当する。OMTとしては、さらに、Bacteroidetes門細菌(すなわちBacteroidetes門に属する細菌)のOMTが挙げられる。Bacteroidetes門細菌としては、Niastella属、Terrimonas属、またはChitinophaga属等に属する細菌が挙げられる(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2007), 57, 1828-1833)。Niastella属細菌としては、Niastella koreensisが挙げられる。Niastella koreensisのOMT遺伝子の塩基配列を配列番号123に、同遺伝子がコードするOMTのアミノ酸配列を配列番号124に示す。

0135

また、OMTは、副反応として、プロトカテク酸および/またはプロトカテクアルデヒドをメチル化してイソバニリン酸および/またはイソバニリンを生成する反応(すなわちパラ位の水酸基のメチル化)を触媒し得る。OMTは、メタ位の水酸基のメチル化を選択的に触媒してよい。「メタ位の水酸基のメチル化を選択的に触媒する」とは、プロトカテク酸からバニリン酸を選択的に生成すること、および/または、プロトカテクアルデヒドからバニリンを選択的に生成することを意味してよい。「プロトカテク酸からバニリン酸を選択的に生成する」とは、OMTをプロトカテク酸に作用させた際に、例えば、モル比で、イソバニリン酸の3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、または30倍以上のバニリン酸を生成することを意味してよい。また、「プロトカテク酸からバニリン酸を選択的に生成する」とは、OMTをプロトカテク酸に作用させた際に、例えば、モル比で、バニリン酸とイソバニリン酸の総量に対して、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上のバニリン酸を生成することを意味してもよい。この比率、すなわちバニリン酸とイソバニリン酸の総量に対するバニリン酸の量を、「VA/(VA+iVA)比」ともいう。また、「プロトカテクアルデヒドからバニリンを選択的に生成する」とは、OMTをプロトカテクアルデヒドに作用させた際に、例えば、モル比で、イソバニリンの3倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、25倍以上、または30倍以上のバニリンを生成することを意味してよい。また、「プロトカテクアルデヒドからバニリンを選択的に生成する」とは、OMTをプロトカテクアルデヒドに作用させた際に、例えば、モル比で、バニリンとイソバニリンの総量に対して、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上のバニリンを生成することを意味してもよい。この比率、すなわちバニリンとイソバニリンの総量に対するバニリンの量を、「Vn/(Vn+iVn)比」ともいう。メタ位の水酸基のメチル化を選択的に触媒するOMTとしては、本明細書に記載の「特定の変異」を有するOMTが挙げられる。

0136

「特定の変異」を有するOMTを、「変異型OMT」ともいう。また、変異型OMTをコードする遺伝子を、「変異型OMT遺伝子」ともいう。

0137

「特定の変異」を有さないOMTを、「野生型OMT」ともいう。また、野生型OMTをコードする遺伝子を、「野生型OMT遺伝子」ともいう。なお、ここでいう「野生型」とは、「野生型」のOMTを「変異型」のOMTと区別するための便宜上の記載であり、天然に得られるものには限定されず、「特定の変異」を有さないあらゆるOMTを包含してよい。野生型OMTとしては、例えば、上記例示したOMTが挙げられる。また、上記例示したOMTの保存的バリアントは、「特定の変異」を有さない限り、いずれも野生型OMTに包含される。

0138

「特定の変異」としては、WO2013/022881A1に記載の変異型OMTが有する変異が挙げられる。すなわち、「特定の変異」としては、野生型OMTの198位のロイシン残基(L198)が、ロイシン残基よりも疎水性インデックス(hydropathy index)が低いアミノ酸残基に置換される変異や、野生型OMTの199位のグルタミン酸残基(E199)が、pH7.4において側鎖が無電荷または正電荷となるアミノ酸残基(amino acid residue having either a neutral
or positive side-chain charge at pH 7.4)に置換される変異が挙げられる。変異型OMTは、これらの変異のいずれか一方を有していてもよく、両方を有していてもよい。

0139

「ロイシン残基よりも疎水性インデックス(hydropathy index)が低いアミノ酸残基」としては、Ala, Arg, Asn, Asp, Cys, Glu, Gln, Gly, His, Lys, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyrが挙げられる。「ロイシン残基よりも疎水性インデックス(hydropathy index)が低いアミノ酸残基」としては、特に、Ala, Arg, Asn, Asp, Glu, Gln, Gly, His,
Lys, Met, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyrから選択されるアミノ酸残基が挙げられ、さらに特には、Tyrが挙げられる。

0140

「pH7.4において側鎖が無電荷または正電荷となるアミノ酸残基」としては、Ala, Arg,
Asn, Cys, Gln, Gly, His, Ile, Leu, Lys, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, Valが挙げられる。「pH7.4において側鎖が無電荷または正電荷となるアミノ酸残基」としては、特に、AlaまたはGlnが挙げられる。

0141

任意の野生型OMTにおける「L198」および「E199」とは、それぞれ、「配列番号122に示すアミノ酸配列の198位のロイシン残基に相当するアミノ酸残基」および「配列番号122に示すアミノ酸配列の199位のグルタミン酸残基に相当するアミノ酸残基」を意味してよい。これらのアミノ酸残基の位置は相対的な位置を示すものであって、アミノ酸の欠失、挿入、付加などによってその絶対的な位置は前後することがある。例えば、配列番号122に示すアミノ酸配列において、X位よりもN末端側の位置で1アミノ酸残基が欠失した、または挿入された場合、元のX位のアミノ酸残基は、それぞれ、N末端から数えてX−1番目またはX+1番目のアミノ酸残基となるが、「配列番号122に示すアミノ酸配列のX位のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基」とみなされる。また、「L198」および「E199」は、それぞれ、通常はロイシン残基およびグルタミン酸残基であるが、そうでなくてもよい。すなわち、「特定の変異」には、「L198」および「E199」がそれぞれロイシン残基およびグルタミン酸残基でない場合に、当該アミノ酸残基を上述した変異後のアミノ酸残基に置換する変異も包含されてよい。

0142

任意のOMTのアミノ酸配列において、どのアミノ酸残基が「L198」または「E199」であるかは、当該任意のOMTのアミノ酸配列と配列番号122に示すアミノ酸配列とのアライメントを行うことにより決定できる。アライメントは、例えば、公知の遺伝子解析ソフトウェアを利用して行うことができる。具体的なソフトウェアとしては、日立ソリューションズ製のDNASISや、ゼネティックス製のGENETYXなどが挙げられる(Elizabeth C. Tyler et al., Computers and Biomedical Research, 24(1), 72-96, 1991;Barton GJ et al.,
Journal of molecular biology, 198(2), 327-37. 1987)。

0143

「特定の変異」としては、さらに、以下のアミノ酸残基における変異が挙げられる(WO2018/079683):D21、L31、M36、S42、L67、Y90、P144。「特定の変異」は、1つのアミノ酸残基における変異であってもよく、2つまたはそれ以上のアミノ酸残基における変異の組み合わせであってもよい。すなわち、「特定の変異」は、例えば、以下のアミノ酸残基の1つまたはそれ以上における変異を含んでいてよい:D21、L31、M36、S42、L67、Y90、P144。

0144

アミノ酸残基を特定するための上記表記において、数字は配列番号124に示すアミノ酸配列における位置を、数字の左側の文字は配列番号124に示すアミノ酸配列における各位置のアミノ酸残基(すなわち、各位置の改変前のアミノ酸残基)を、各々示す。すなわち、例えば、「D21」とは、配列番号124に示すアミノ酸配列における21位のD(Asp)残基を示す。任意の野生型OMTにおいて、これらのアミノ酸残基は、それぞれ、「配列番号124に示すアミノ酸配列における当該アミノ酸残基に相当するアミノ酸残基」を示
す。すなわち、例えば、任意の野生型OMTにおける「D21」とは、配列番号124に示すアミノ酸配列における21位のD(Asp)残基に相当するアミノ酸残基を示す。

0145

上記各変異において、改変後のアミノ酸残基は、改変前のアミノ酸残基以外のいずれのアミノ酸残基であってもよい。改変後のアミノ酸残基として、具体的には、K(Lys)、R(Arg)、H(His)、A(Ala)、V(Val)、L(Leu)、I(Ile)、G(Gly)、S(Ser)、T(Thr)、P(Pro)、F(Phe)、W(Trp)、Y(Tyr)、C(Cys)、M(Met)、D(Asp)、E(Glu)、N(Asn)、Q(Gln)の内、改変前のアミノ酸残基以外のものが挙げられる。改変後のアミノ酸残基としては、目的物質の生産に有効なもの(例えば、OMTのVA/(VA+iVA)比および/またはVn/(Vn+iVn)比を増大させるもの)を選択してよい。

0146

「特定の変異」として、具体的には、以下の変異が挙げられる:D21Y、L31H、M36(K, V)、S42C、L67F、Y90(A, C, G, S)、P144(E, G, S, V, Y)。すなわち、D21、L31、M36、S42、L67、Y90、およびP144のアミノ酸残基における変異は、例えば、それぞれ、D21Y、L31H、M36(K, V)、S42C、L67F、Y90(A, C, G, S)、およびP144(E, G, S, V, Y)であってよい。「特定の変異」は、例えば、以下の変異の1つまたはそれ以上を含んでいてよい:D21Y、L31H、M36(K, V)、S42C、L67F、Y90(A, C, G, S)、P144(E, G, S, V, Y)。

0147

変異を特定するための上記表記において、数字およびその左側の文字の意味は前記と同様である。変異を特定するための上記表記において、数字の右側の文字は、各位置の改変後のアミノ酸残基を示す。すなわち、例えば、「D21Y」とは、配列番号124に示すアミノ酸配列における21位のD(Asp)残基がY(Tyr)残基に置換される変異を示す。また、例えば、「M36(K, V)」とは、配列番号124に示すアミノ酸配列における36位のM(Met)残基がK(Lys)残基またはV(Val)残基に置換される変異を示す。任意の野生型OMTにおいて、これらの変異は、それぞれ、「配列番号124に示すアミノ酸配列における当該変異に相当する変異」を示す。「配列番号124に示すアミノ酸配列におけるX位のアミノ酸残基における変異に相当する変異」とは、「配列番号124に示すアミノ酸配列におけるX位のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基における変異」と読み替えるものとする。すなわち、例えば、任意の野生型OMTにおいて、「D21Y」とは、配列番号124に示すアミノ酸配列における21位のD(Asp)残基に相当するアミノ酸残基がY(Tyr)残基に置換される変異を示す。

0148

変異の組み合わせは特に制限されない。変異の組み合わせとして、具体的には、D21Y/M36K/L67F、D21Y/M36K/L67F/Y90A、L31H/M36K/L67F/P144V、L31H/L67F/Y90A、M36K/S42C/L67F、M36K/L67F、M36K/L67F/Y90A、M36K/L67F/Y90A/P144E、M36K/L67F/Y90C、M36K/L67F/Y90C/P144V、M36K/L67F/Y90G、M36K/L67F/Y90S/P144G、M36K/L67F/P144S、M36K/L67F/P144Y、M36K/Y90A/P144V、M36K/P144E、M36V/L67F/P144Sが挙げられる。すなわち、「特定の変異」は、例えば、これらのいずれかの組み合わせを含んでいてよい。

0149

組み合わせを特定するための上記表記において、数字およびその左側と右側の文字の意味は前記と同様である。組み合わせを特定するための上記表記において、「/」で区切られた2またはそれ以上の変異の併記は、二重変異またはそれ以上の多重変異を示す。すなわち、例えば、「M36K/P144E」は、M36KとP144Eの二重変異を示す。

0150

「L198」および「E199」における変異に関する記載(例えば、絶対的な位置を特定するための記載)は、他の「特定の変異」(例えば、D21、L31、M36、S42、L67、Y90、およびP144に相当するアミノ酸残基における変異)にも準用できる。ただし、これら他の「特定の変異」については、配列番号124に示すアミノ酸配列を野生型OMTの参照配列とする。

0151

変異型OMT遺伝子は、例えば、野生型OMT遺伝子を、コードされるOMTが「特定の変異」を有するよう改変することにより取得できる。改変の元になる野生型OMT遺伝子は、例えば、野生型OMT遺伝子を有する生物からのクローニングにより、または、化学合成により、取得できる。あるいは、変異型OMT遺伝子は、野生型OMT遺伝子を介さずに取得することもできる。変異型OMT遺伝子は、例えば、変異型OMT遺伝子を有する生物からのクローニングにより、または、化学合成により、直接取得してもよい。取得した変異型OMT遺伝子は、そのまま、あるいはさらに改変して利用してよい。改変の元になる野生型OMT遺伝子または変異型OMT遺伝子は、本明細書に記載の微生物が由来する微生物等の、宿主に由来するものであってもよく、そうでなくてもよい。

0152

遺伝子の改変は公知の手法により行うことができる。例えば、部位特異的変異法により、DNAの目的部位に目的の変異を導入することができる。部位特異的変異法としては、PCRを用いる方法(Higuchi, R., 61, in PCR technology, Erlich, H. A. Eds., Stockton press (1989);Carter, P., Meth. in Enzymol., 154, 382 (1987))や、ファージを用いる方法(Kramer, W. and Frits, H. J., Meth. in Enzymol., 154, 350 (1987);Kunkel,
T. A. et al., Meth. in Enzymol., 154, 367 (1987))が挙げられる。

0153

OMT活性は、例えば、SAMの存在下で酵素を基質(例えば、プロトカテク酸またはプロトカテクアルデヒド)とインキュベートし、酵素および基質依存的な産物(例えば、バニリン酸またはバニリン)の生成を測定することにより、測定できる(WO2013/022881A1)。また、同様の条件下での副生物(例えば、イソバニリン酸またはイソバニリン)の生成を測定し、産物の生成と比較することにより、OMTが産物を選択的に生成するかどうかを決定できる。

0154

「芳香族アルデヒドオキシドレダクターゼ(aromatic aldehyde oxidoreductase)(芳香族カルボン酸レダクターゼ(aromatic carboxylic acid reductase;ACAR))」とは、電子供与体とATPの存在下で芳香族カルボン酸を還元して対応する芳香族アルデヒドを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 1.2.99.6等)。同活性を、「ACAR活性」ともいう。ACARをコードする遺伝子を、「ACAR遺伝子」ともいう。ACARは、本明細書に記載の方法において目的物質が生産される生合成経路の種類に応じて、必要な基質特異性を有していてよい。例えば、バニリン酸からバニリンへの変換を介して目的物質を生産する場合には、少なくともバニリン酸を基質とするACARを用いることができる。また、例えば、プロトカテク酸からプロトカテクアルデヒドへの変換を介して目的物質を生産する場合には、少なくともプロトカテク酸を基質とするACARを用いることができる。すなわち、「ACAR」とは、具体的には、電子供与体とATPの存在下でバニリン酸および/またはプロトカテク酸を還元してバニリンおよび/またはプロトカテクアルデヒドを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してもよい。ACARは、バニリン酸とプロトカテク酸の両方に特異的であってよいが、それには限られない。また、例えば、ベンズアルデヒドを製造する場合には、少なくとも安息香酸を基質とするACARを用いることができる。すなわち、「ACAR」とは、具体的には、電子供与体とATPの存在下で安息香酸を還元してベンズアルデヒドを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してもよい。また、例えば、シンナムアルデヒドを製造する場合には、少なくともケイ皮酸を基質とするACARを用いることができる。すなわち、「ACAR」とは、具体的には、電子供与体とATPの存在下でケイ皮酸を還元してシンナムアルデヒドを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してもよい。電子供与体としては、NADHやNADPHが挙げられる。ACARは、例えば、これらの電子供与体の少なくとも1つを利用できるものであってよい。

0155

ACARとしては、Nocardia sp. NRRL 5646株、Actinomyces sp.、Clostridium thermoace
ticum、Aspergillus niger、Corynespora melonis、Coriolus sp.、Neurospora sp.等の各種生物のACARが挙げられる(J. Biol. Chem. 2007, Vol. 282, No.1, p478-485)。Nocardia sp. NRRL 5646株は、Nocardia iowensisに分類されている。ACARとしては、さらに、Nocardia brasiliensisやNocardia vulneris等の、他のNocardia属細菌のACARも挙げられる。Nocardia brasiliensisATCC700358株のACAR遺伝子の塩基配列を配列番号125に、同遺伝子がコードするACARのアミノ酸配列を配列番号126に示す。また、Nocardia
brasiliensis ATCC 700358株のバリアントACAR遺伝子の一例の塩基配列を配列番号127に、同遺伝子がコードするACARのアミノ酸配列を配列番号128に示す。また、ACARとしては、Gordonia effusa等のGordonia属細菌、Novosphingobium malaysiense等のNovosphingobium属細菌、Coccomyxa subellipsoidea等のCoccomyxa属微生物のACARも挙げられる(WO2018/079705A1)。Gordonia effusaのACAR遺伝子の塩基配列を配列番号129に、同遺伝子がコードするACARのアミノ酸配列を配列番号130に示す。Novosphingobium malaysienseのACAR遺伝子の塩基配列を配列番号131に、同遺伝子がコードするACARのアミノ酸配列を配列番号132に示す。Coccomyxa subellipsoidea C-169株のACAR遺伝子の塩基配列を配列番号133に、同遺伝子がコードするACARのアミノ酸配列を配列番号134に示す。

0156

ACAR活性は、例えば、ATPおよびNADPHの存在下で酵素を基質(例えば、バニリン酸またはプロトカテク酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的なNADPHの酸化を測定することにより、測定できる(J. Biol. Chem. 2007, Vol. 282, No.1, p478-485に記載の手法を改変)。

0157

ACARは、ホスホパンテイニル化されることにより活性型酵素となり得る(J. Biol. Chem. 2007, Vol. 282, No.1, p478-485)。よって、タンパク質のホスホパンテテイニル化を触媒する酵素(「ホスホパンテテイニル化酵素」ともいう)の活性を増大させることにより、ACARの活性を増大させることができる。すなわち、目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、ホスホパンテテイニル化酵素の活性を増大させる方法が挙げられる。すなわち、微生物は、ホスホパンテテイニル化酵素の活性が増大するように改変されていてよい。ホスホパンテテイニル化酵素としては、ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(phosphopantetheinyl transferase;PPT)が挙げられる。

0158

「ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(phosphopantetheinyl transferase;PPT)」とは、ホスホパンテテイニル基供与体の存在下でACARをホスホパンテテイニル化する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい。同活性を、「PPT活性」ともいう。PPTをコードする遺伝子を、「PPT遺伝子」ともいう。ホスホパンテテイニル基供与体としては、補酵素ACoA)が挙げられる。PPTとしては、entD遺伝子にコードされるEntDタンパク質が挙げられる。PPTとして、具体的には、Nocardia brasiliensisのPPT、Nocardia farcinica IFM10152のPPT(J. Biol. Chem. 2007, Vol. 282, No.1, pp.478-485)、Corynebacterium glutamicumのPPT(App. Env. Microbiol. 2009, Vol.75, No.9, pp.2765-2774)、E. coliのEntDタンパク質等の各種生物のものが挙げられる。Corynebacterium
glutamicumATCC13032株のPPT遺伝子の塩基配列を配列番号135に、同遺伝子がコードするPPTのアミノ酸配列を配列番号136に、それぞれ示す。E. coli K-12 MG1655株のentD遺伝子の塩基配列を配列番号137に、同遺伝子がコードするEntDタンパク質のアミノ酸配列を配列番号138に、それぞれ示す。

0159

PPT活性は、例えば、CoAの存在下で酵素をACARとインキュベートし、ACAR活性の増強を指標として測定することができる(J. Biol. Chem. 2007, Vol.282, No.1, pp.478-485)。

0160

メラトニンは、L−トリプトファンから生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素と
しては、例えば、L−トリプトファン生合成酵素や、L−トリプトファンからメラトニンへの変換を触媒する酵素も挙げられる。L−トリプトファン生合成酵素としては、3−デオキシ−D−アラビノ−ヘプツロソン酸−7−リン酸シンターゼ(3-deoxy-D-arabinoheptulosonate-7-phosphate synthase;aroF, aroG, aroH)、3−デヒドロキナ酸シンターゼ(3-dehydroquinate synthase;aroB)、3−デヒドロキナ酸デヒドラターゼ(3-dehydroquinate dehydratase;aroD)、シキミ酸デヒドロゲナーゼ(shikimate dehydrogenase;aroE)、シキミ酸キナーゼ(shikimate kinase;aroK, aroL)、5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(5-enolpyruvylshikimate-3-phosphate synthase;aroA)、コリスミ酸シンターゼ(chorismate synthase;aroC)等の芳香族アミノ酸に共通の生合成酵素や、アントラニル酸シンターゼ(anthranilate synthase;trpED)、トリプトファンシンターゼ(tryptophan synthase;trpAB)が挙げられる。酵素名の後ろ括弧内には、各酵素をコードする遺伝子名の一例を示す(以下、同じ)。L−トリプトファンは、トリプトファン−5−ヒドロキシラーゼ(tryptophan 5-hydroxylase;EC 1.14.16.4)、5−ヒドロキシトリプトファンデカルボキシラーゼ(5-hydroxytryptophan decarboxylase;EC 4.1.1.28)、アラルキルアミン−N−アセチルトランスフェラーゼ(aralkylamine N-acetyltransferase;AANAT;EC 2.3.1.87)、およびアセチルセロトニン−O−メチルトランスフェラーゼ(acetylserotonin O-methyltransferase;EC 2.1.1.4)の作用により、順に、ヒドロキシトリプトファン(hydroxytryptophan)、セロトニン(serotonin)、N−アセチルセロトニン(N-acetylserotonin)、およびメラトニンへと変換され得る。すなわち、L−トリプトファンからメラトニンへの変換を触媒する酵素としては、これらの酵素が挙げられる。なお、acetylserotonin O-methyltransferaseは、SAMをメチル基供与体としてN−アセチルセロトニンをメチル化してメラトニンを生成するOMTの一例である。

0161

エルゴチオネインは、L−ヒスチジンから生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、L−ヒスチジン生合成酵素や、L−ヒスチジンからエルゴチオネインへの変換を触媒する酵素も挙げられる。L−ヒスチジン生合成酵素としては、ATPホスホリボシルトランスフェラーゼ(ATP phosphoribosyltransferase;hisG)、ホスホリボシルAMPシクロヒドロラーゼ(phosphoribosyl-AMP cyclohydrolase;hisI)、ホスホリボシルATPピロホスホヒドロラーゼ(phosphoribosyl-ATP pyrophosphohydrolase;hisI)、ホスホリボシルホルムイミノ−5−アミノイミダゾールカルボキシアミドリボイドイソメラーゼ(phosphoribosylformimino-5-aminoimidazole carboxamide ribotide isomerase;hisA)、アミドトランスフェラーゼ(amidotransferase;hisH)、ヒスチジノールリン酸アミノトランスフェラーゼ(histidinol phosphate aminotransferase;hisC)、ヒスチジノールホスファターゼ(histidinol phosphatase;hisB)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(histidinol dehydrogenase;hisD)が挙げられる。L−ヒスチジンは、egtB、egtC、egtD、およびegtE遺伝子にそれぞれコードされるEgtB、EgtC、EgtD、およびEgtEタンパク質の作用により、順に、ヘルシニン(hercynine)、ヘルシニル−γ−L−グルタミル−L−システインスルホキシド(hercynyl-gamma-L-glutamyl-L-cysteine
sulfoxide)、ヘルシニル−L−システインスルホキシド(hercynyl-L-cysteine sulfoxide)、およびエルゴチオネインへと変換され得る。また、ヘルシニンは、egt1遺伝子にコードされるEgt1タンパク質の作用により、ヘルシニル−L−システインスルホキシドへと変換され得る。すなわち、L−ヒスチジンからエルゴチオネインへの変換を触媒する酵素としては、これらの酵素が挙げられる。なお、EgtDは、SAMをメチル基供与体としてヒスチジンをメチル化してヘルシニンを生成するSAM依存的ヒスチジン−N,N,N−メチルトランスフェラーゼ(S-adenosyl-l-methionine (SAM)-dependent histidine N,N,N-methyltransferase)である。

0162

グアイアコールは、バニリン酸から生成し得る。よって、グアイアコールに対する目的物質生合成酵素については、上述したバニリン酸に対する目的物質生合成酵素についての
記載を準用できる。バニリン酸は、バニリン酸デカルボキシラーゼ(vanillic acid decarboxylase;VDC)の作用により、グアイアコールへと変換され得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、VDCも挙げられる。

0163

フェルラ酸、4−ビニルグアイアコール、および4−エチルグアイアコールは、L−フェニルアラニンまたはL−チロシンから生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、L−フェニルアラニン生合成酵素、L−チロシン生合成酵素、およびL−フェニルアラニンまたはL−チロシンからフェルラ酸、4−ビニルグアイアコール、または4−エチルグアイアコールへの変換を触媒する酵素も挙げられる。L−フェニルアラニン生合成酵素としては、上記例示した芳香族アミノ酸に共通の生合成酵素や、コリスミ酸ムターゼ(chorismate mutase;pheA)、プレフェン酸デヒドラターゼ(prephenate dehydratase;pheA)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(tyrosine amino transferase;tyrB)が挙げられる。コリスミ酸ムターゼおよびプレフェン酸デヒドラターゼは、二機能酵素としてpheA遺伝子にコードされてよい。L−チロシン生合成酵素としては、上記例示した芳香族アミノ酸に共通の生合成酵素や、コリスミ酸ムターゼ(chorismate mutase;tyrA)、プレフェン酸デヒドロゲナーゼ(prephenate dehydrogenase;tyrA)、チロシンアミノトランスフェラーゼ(tyrosine amino transferase;tyrB)が挙げられる。コリスミ酸ムターゼおよびプレフェン酸デヒドロゲナーゼは、二機能酵素としてtyrA遺伝子にコードされてよい。L−フェニルアラニンは、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(phenylalanine ammonia lyase;PAL;EC 4.3.1.24)の作用により桂皮酸(cinnamic acid)へ、次いで桂皮酸−4−ヒドロキシラーゼ(cinnamic acid 4-hydroxylase;C4H;EC 1.14.13.11)の作用によりp−クマル酸(p-coumaric acid)へと変換され得る。また、L−チロシンは、チロシンアンモニアリアーゼ(tyrosine ammonia lyase;TAL;EC 4.3.1.23)の作用により、p−クマル酸へと変換され得る。p−クマル酸は、ヒドロキシ桂皮酸−3−ヒドロキシラーゼ(hydroxycinnamic acid 3-hydroxylase;C3H)、O−メチルトランスフェラーゼ(O-methyltransferase;OMT)、フェルラ酸デカルボキシラーゼ(ferulic acid decarboxylase;FDC)、およびビニルフェノールレダクターゼ(vinylphenol reductase;VPR)の作用により、順に、コーヒー酸(caffeic acid)、フェルラ酸、4−ビニルグアイアコール、および4−エチルグアイアコールへと変換され得る。すなわち、L−フェニルアラニンまたはL−チロシンからフェルラ酸、4−ビニルグアイアコール、または4−エチルグアイアコールへの変換を触媒する酵素としては、これらの酵素が挙げられる。フェルラ酸、4−ビニルグアイアコール、または4−エチルグアイアコールを生産するためには、少なくともコーヒー酸を利用するOMTを用いることができる。

0164

ポリアミンは、L−アルギニンまたはL−オルニチンから生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、L−アルギニン生合成酵素、L−オルニチン生合成酵素、およびL−アルギニンまたはL−オルニチンからポリアミンへの変換を触媒する酵素も挙げられる。L−オルニチン生合成酵素としては、N−アセチルグルタミン酸シンターゼ(N-acetylglutamate synthase;argA)、N−アセチルグルタミン酸キナーゼ(N-acetylglutamate kinase;argB)、N−アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ(N-acetylglutamyl phosphate reductase;argC)、アセチルオルニチントランスアミナーゼ(acetylornithine transaminase;argD)、アセチルオルニチンデアセチラーゼ(acetylornithine deacetylase;argE)が挙げられる。L−アルギニン生合成酵素としては、上記例示したL−オルニチン生合成酵素や、カルバモイルリン酸シンターゼ(carbamoyl phosphate synthetase;carAB)、オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ(ornithine carbamoyl transferase;argF, argI)、アルギニノコハク酸シンターゼ(argininosuccinate synthetase;argG)、アルギニノコハク酸リアーゼ(argininosuccinate lyase;argH)が挙げられる。L−アルギニンは、アルギニンデカルボキシラーゼ(arginine decarboxylase;speA;EC 4.1.1.19)の作用によりアグマチン(agmatine)へ、次いでアグマチンウレオヒドロラーゼ(agmatine ureohydrolase;speB;EC 3.5.3.11)の作用によりプト
シン(putrescine)へと変換され得る。また、L−オルニチンは、オルニチンデカルボキシラーゼ(ornithine decarboxylase;speC;EC 4.1.1.17)の作用によりプトレシンへと変換され得る。プトレシンは、スペルミジンシンターゼ(spermidine synthase;speE;EC 2.5.1.16)の作用によりスペルミジンへ、次いでスペルミンシンターゼ(spermine synthase;EC 2.5.1.22)の作用によりスペルミンへと変換され得る。アグマチンは、また、アグマチン/トリアミンアミノプロピルトランスフェラーゼ(agmatine/triamine aminopropyl transferase)の作用によりアミノプロピルアグマチン(aminopropylagmatine)へ、次いでアミノプロピルアグマチンウレオヒドロラーゼ(aminopropylagmatine ureohydrolase)の作用によりスペルミジンへと変換され得る。すなわち、L−アルギニンまたはL−オルニチンからポリアミンへの変換を触媒する酵素としては、これらの酵素が挙げられる。なお、spermidine synthase、spermine synthase、およびagmatine/triamine aminopropyl transferaseは、いずれも、SAMの脱炭酸によって生じ得る脱炭酸SAM(decarboxylated S-adenosyl methionine;dcSAM)からプロピルアミン基を対応する基質へと転移する反応を触媒する。

0165

クレアチンは、L−アルギニンおよびグリシンから生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、L−アルギニン生合成酵素、グリシン生合成酵素、およびL−アルギニンおよびグリシンからクレアチンへの変換を触媒する酵素も挙げられる。L−アルギニンおよびグリシンは、アルギニン:グリシンアミジノトランスフェラーゼ(arginine:glycine amidinotransferase;AGAT;EC 2.1.4.1)の作用により、結合してグアニジノ酢酸(guanidinoacetate)およびオルニチン(ornithine)を生成し得る。グアニジノ酢酸は、グアニジノ酢酸−N−メチルトランスフェラーゼ(guanidinoacetate N-methyltransferase;GAMT;EC 2.1.1.2)の作用により、SAMをメチル基供与体としてメチル化されクレアチンを生成し得る。すなわち、L−アルギニンおよびグリシンからクレアチンへの変換を触媒する酵素としては、これらの酵素が挙げられる。

0166

ムギネ酸は、SAMから生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、SAMからムギネ酸への変換を触媒する酵素も挙げられる。ニコチアナミンシンターゼ(nicotianamine synthase;EC 2.5.1.43)の作用により、3分子のSAMから1分子のニコチアナミンが合成され得る。ニコチアナミンは、ニコチアナミンアミノトランスフェラーゼ(nicotianamine aminotransferase;EC 2.6.1.80)、3”−デアミノ−3”−オキソニコチアナミンレダクターゼ(3"-deamino-3"-oxonicotianamine reductase;EC 1.1.1.285)、および2’−デオキシムギネ酸−2’−ジオキシゲナーゼ(2'-deoxymugineic-acid 2'-dioxygenase;EC 1.14.11.24)の作用により、順に、3”−デアミノ−3”−オキソニコチアナミン(3"-deamino-3"-oxonicotianamine)、2’−デオキシムギネ酸(2'-deoxymugineic-acid)、およびムギネ酸へと変換され得る。すなわち、SAMからムギネ酸への変換を触媒する酵素としては、これらの酵素が挙げられる。

0167

L−メチオニンは、L−システインから生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、L−システイン生合成酵素や、L−システインからL−メチオニンへの変換を触媒する酵素も挙げられる。L−システイン生合成酵素としては、本明細書に記載の、CysIXHDNYZタンパク質、Fpr2タンパク質、CysKタンパク質が挙げられる。L−システインからL−メチオニンへの変換を触媒する酵素としては、シスタチオニン−γ−シンターゼ(cystathionine-gamma-synthase)やシスタチオニン−β−リアーゼ(cystathionine-beta-lyase)が挙げられる。

0168

また、上述したように、ベンズアルデヒドおよびシンナムアルデヒドは、例えば、それぞれ、ACARの作用により安息香酸およびケイ皮酸から生成し得る。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、ACARに加えて、安息香酸生合成酵素やケイ皮酸生合成酵素も挙げられる。具体的には、ケイ皮酸は、例えば、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(
phenylalanine ammonia lyase;PAL;EC 4.3.1.24)の作用によりL−フェニルアラニンから生成し得る。すなわち、ケイ皮酸生合成酵素としては、例えば、L−フェニルアラニン生合成酵素やPALが挙げられる。

0169

また、ベンズアルデヒドは、例えば、L−フェニルアラニンからも生成し得る(WO2017/122747)。すなわち、目的物質生合成酵素としては、例えば、L−フェニルアラニン生合成酵素や、L−フェニルアラニンからベンズアルデヒドへの変換を触媒する酵素も挙げられる。L−フェニルアラニンは、アミノ酸デアミナーゼ(amino acid deaminase;AAD;EC 1.4.3.2)、4−ヒドロキシマンデル酸シンターゼ(4-hydroxymandelate synthase;HMAS;EC 1.13.11.46)、(S)−マンデル酸デヒドロゲナーゼ((S)-mandelate dehydrogenase;SMDH;EC 1.1.99.31)、およびベンゾイル蟻酸デカルボキシラーゼ(Benzoylformate decarboxylase;BFDC;EC 4.1.1.7)の作用により、順に、フェニルピルビン酸、(S)−マンデル酸、ベンゾイル蟻酸、およびベンズアルデヒドへと変換され得る。すなわち、L−フェニルアラニンからベンズアルデヒドへの変換を触媒する酵素としては、これらの酵素が挙げられる。

0170

また、目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、目的物質以外の物質(例えば、目的物質の生産中に中間体として生成する物質や、目的物質の前駆体として利用される物質)の取り込み系の活性を増大させる方法が挙げられる。すなわち、微生物は、そのような取り込み系の活性が増大するように改変されていてよい。「物質の取り込み系」とは、物質を細胞外から細胞内へ取り込む機能を有するタンパク質を意味してよい。同活性を、「物質の取り込み活性」ともいう。そのような取り込み系をコードする遺伝子を、「取り込み系遺伝子」ともいう。そのような取り込み系としては、バニリン酸取り込み系やプロトカテク酸取り込み系が挙げられる。バニリン酸取り込み系としては、vanK遺伝子にコードされるVanKタンパク質が挙げられる(M. T. Chaudhry, et al., Microbiology, 2007. 153:857-865)。C. glutamicumATCC13869株のvanK遺伝子(NCgl2302)の塩基配列を配列番号139に、同遺伝子がコードするVanKタンパク質のアミノ酸配列を配列番号140に、それぞれ示す。プロトカテク酸取り込み系としては、pcaK遺伝子にコードされるPcaKタンパク質が挙げられる(M. T. Chaudhry, et al., Microbiology, 2007. 153:857-865)。C. glutamicum ATCC 13869株のpcaK遺伝子(NCgl1031)の塩基配列を配列番号141に、同遺伝子がコードするPcaKタンパク質のアミノ酸配列を配列番号142に、それぞれ示す。

0171

物質の取り込み活性は、例えば、公知の手法(M. T. Chaudhry, et al., Microbiology, 2007. 153:857-865)により測定することができる。

0172

また、目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、目的物質以外の物質の副生に関与する酵素の活性を低下させる方法が挙げられる。そのような目的物質以外の物質を、「副生物」ともいう。そのような酵素を、「副生物生成酵素」ともいう。副生物生成酵素としては、例えば、目的物質の資化に関与する酵素や、目的物質の生合成経路から分岐して目的物質以外の物質を生成する反応を触媒する酵素が挙げられる。タンパク質(酵素等)の活性を低下させる手法については後述する。タンパク質(酵素等)の活性は、例えば、同タンパク質をコードする遺伝子を破壊等することにより、低下させることができる。例えば、コリネ型細菌において、バニリンは、バニリン→バニリン酸→プロトカテク酸の順に代謝され、資化されることが報告されている(Current Microbiology, 2005, Vol.51, p59-65)。すなわち、副生物生成酵素として、具体的には、バニリンからプロトカテク酸への変換を触媒する酵素や、プロトカテク酸のさらなる代謝を触媒する酵素が挙げられる。そのような酵素としては、バニリン酸デメチラーゼ(vanillate demethylase)、プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼ(protocatechuate 3,4-dioxygenase)、およびプロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼによる反応産物スクシニルCoAとアセ
チルCoAまでさらに分解する各種酵素(Appl. Microbiol. Biotechnol., 2012, Vol.95, p77-89)が挙げられる。また、バニリンは、アルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase;ADH)の作用により、バニリルアルコールへと変換され得る(Kunjapur AM. et
al., J. Am. Chem. Soc., 2014, Vol.136, p11644-11654.; Hansen EH. et al., App. Env. Microbiol., 2009, Vol.75, p2765-2774.)。すなわち、副生物生成酵素として、具体的には、ADHも挙げられる。また、バニリン生合成経路の中間体である3−デヒドロシキミ酸は、シキミ酸デヒドロゲナーゼ(shikimate dehydrogenase)の作用によりシキミ酸へと変換され得る。すなわち、副生物生成酵素として、具体的には、shikimate dehydrogenaseも挙げられる。

0173

「バニリン酸デメチラーゼ(vanillate demethylase)」とは、バニリン酸を脱メチル化してプロトカテク酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい。同活性を、「バニリン酸デメチラーゼ活性」ともいう。バニリン酸デメチラーゼをコードする遺伝子を、「バニリン酸デメチラーゼ遺伝子」ともいう。バニリン酸デメチラーゼとしては、vanAB遺伝子にコードされるVanABタンパク質が挙げられる(Current Microbiology, 2005, Vol.51, p59-65)。vanA遺伝子およびvanB遺伝子は、それぞれ、バニリン酸デメチラーゼのサブユニットAおよびサブユニットBをコードする。バニリン酸デメチラーゼ活性を低下させる場合、例えば、vanAB遺伝子の両方を破壊等してもよく、片方のみを破壊等してもよい。C. glutamicumATCC13869株のvanAB遺伝子の塩基配列を配列番号143と145に、同遺伝子がコードするVanABタンパク質のアミノ酸配列を配列番号144と146に、それぞれ示す。なお、vanAB遺伝子は、通常、vanK遺伝子とvanABKオペロンを構成している。よって、バニリン酸デメチラーゼ活性を低下させるためにvanABKオペロンをまとめて破壊等(例えば、欠損)してもよい。その場合、改めて宿主にvanK遺伝子を導入してもよい。例えば、菌体外に存在するバニリン酸を利用する場合であって、vanABKオペロンをまとめて破壊等(例えば、欠損)した場合は、改めてvanK遺伝子を導入するのが好ましい。

0174

バニリン酸デメチラーゼ活性は、例えば、酵素を基質(すなわち、バニリン酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的な産物(すなわち、プロトカテク酸)の生成を測定することにより、測定できる(J Bacteriol, 2001, Vol.183, p3276-3281)。

0175

「プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼ」とは、プロトカテク酸を酸化してβ−カルボキシルcis,cis-ムコン酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい。同活性を、「プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼ活性」ともいう。プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼをコードする遺伝子を、「プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼ遺伝子」ともいう。プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼとしては、pcaGH遺伝子にコードされるPcaGHタンパク質が挙げられる(Appl. Microbiol. Biotechnol., 2012, Vol.95, p77-89)。pcaG遺伝子およびpcaH遺伝子は、それぞれ、プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼのαサブユニットおよびβサブユニットをコードする。プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼ活性を低下させる場合、例えば、pcaGH遺伝子の両方を破壊等してもよく、片方のみを破壊等してもよい。C. glutamicumATCC13032株のpcaGH遺伝子の塩基配列を配列番号147と149に、同遺伝子がコードするPcaGHタンパク質のアミノ酸配列を配列番号148と150に、それぞれ示す。

0176

プロトカテク酸3,4−ジオキシゲナーゼ活性は、例えば、酵素を基質(すなわち、プロトカテク酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的な酸素消費を測定することにより、測定できる(Meth. Enz., 1970, Vol.17A, p526-529)。

0177

「アルコールデヒドロゲナーゼ(alcohol dehydrogenase;ADH)」とは、電子供与体の存在下でアルデヒドを還元してアルコールを生成する反応を触媒する活性を有するタンパ
ク質を意味してよい(EC 1.1.1.1、EC 1.1.1.2、EC 1.1.1.71等)。同活性を、「ADH活性」ともいう。ADHをコードする遺伝子を、「ADH遺伝子」ともいう。ADHの基質となるアルデヒドとしては、目的物質として例示したアルデヒド、例えば、バニリン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等の芳香族アルデヒドが挙げられる。すなわち、「ADH活性」の説明において言及されるアルデヒドとアルコールの組み合わせとしては、バニリンとバニリルアルコールの組み合わせ、ベンズアルデヒドとベンジルアルコールの組み合わせ、シンナムアルデヒドとシンナミルアルコールの組み合わせ等の、芳香族アルデヒドと芳香族アルコールの組み合わせが挙げられる。芳香族アルデヒド、バニリン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒドを基質とするADHを、それぞれ、「芳香族アルコールデヒドロゲナーゼ(aromatic alcohol dehydrogenase)」、「バニリルアルコールデヒドロゲナーゼ(vanillyl alcohol dehydrogenase)」、「ベンジルアルコールデヒドロゲナーゼ(benzyl alcohol dehydrogenase)」、「シンナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(cinnamyl alcohol dehydrogenase)」ともいう。また、芳香族アルデヒド、バニリン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒドを基質とするADH活性を、それぞれ、「芳香族アルコールデヒドロゲナーゼ(aromatic alcohol dehydrogenase)活性」、「バニリルアルコールデヒドロゲナーゼ(vanillyl alcohol dehydrogenase)活性」、「ベンジルアルコールデヒドロゲナーゼ(benzyl alcohol dehydrogenase)活性」、「シンナミルアルコールデヒドロゲナーゼ(cinnamyl alcohol dehydrogenase)活性」ともいう。ADHは、1種のアルデヒドを基質としてもよく、2種またはそれ以上ののアルデヒドを基質としてもよい。電子供与体としては、NADHやNADPHが挙げられる。ADHは、例えば、これらの電子供与体の少なくとも1つを利用できるものであってよい。

0178

ADHとしては、yqhD遺伝子、NCgl0324遺伝子、NCgl0313遺伝子、NCgl2709遺伝子、NCgl0219遺伝子、NCgl2382遺伝子にそれぞれコードされるYqhDタンパク質、NCgl0324タンパク質、NCgl0313タンパク質、NCgl2709タンパク質、NCgl0219タンパク質、NCgl2382タンパク質が挙げられる。yqhD遺伝子およびNCgl0324遺伝子は、いずれも、vanillyl alcohol dehydrogenaseをコードする。yqhD遺伝子は、例えば、E. coli等の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の細菌に見出され得る。NCgl0324遺伝子、NCgl0313遺伝子、NCgl2709遺伝子、NCgl0219遺伝子、NCgl2382遺伝子は、例えば、C. glutamicum等のコリネ型細菌に見出され得る。E. coli K-12 MG1655のyqhD遺伝子の塩基配列を配列番号151に、同遺伝子がコードするYqhDタンパク質のアミノ酸配列を配列番号152に示す。C. glutamicumATCC13869株のNCgl0324遺伝子、NCgl0313遺伝子、NCgl2709遺伝子の塩基配列を配列番号153、155、157に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号154、156、158に、それぞれ示す。また、C. glutamicum ATCC 13032株のNCgl0219遺伝子、NCgl2382遺伝子の塩基配列を配列番号159、161に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号160、162に、それぞれ示す。

0179

微生物においては、1種のADHの活性を低下させてもよく、2種またはそれ以上のADHの活性を低下させてもよい。例えば、NCgl0324タンパク質、NCgl2709タンパク質、およびNCgl0313タンパク質から選択される1種またはそれ以上、例えば全て、のADHの活性を低下させてよい。また、少なくとも、NCgl0324タンパク質およびNCgl2709タンパク質の一方または両方の活性を低下させてもよい。すなわち、例えば、少なくともNCgl0324タンパク質の活性を低下させてもよく、さらにNCgl2709タンパク質の活性を低下させてもよい。あるいは、少なくともNCgl2709タンパク質の活性を低下させてもよく、さらにNCgl0324タンパク質の活性を低下させてもよい。ADHと目的物質の組み合わせは、コリネ型細菌においてADHの活性を低下させることにより目的物質の生産が増大する限り、特に制限されない。例えば、少なくとも、目的物質として生産されるアルデヒドを基質とするADHの活性を低下させてよい。すなわち、例えば、バニリン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等の芳香族アルデヒドの生産のためには、それぞれ、vanillyl alcohol dehydrogenase、benzyl alcohol dehydrogenase、cinnamyl alcohol dehydrogenase等のaromatic alcohol deh
ydrogenaseの活性を低下させてよい。例えば、バニリンを生産する場合、YqhDタンパク質の活性を低下させてもよい。また、例えば、バニリンを生産する場合、NCgl0324タンパク質およびNCgl0313タンパク質の一方または両方の活性を低下させてもよく、少なくともNCgl0324タンパク質の活性を低下させてもよい。また、例えば、ベンズアルデヒドを生産する場合、NCgl0324タンパク質およびNCgl2709タンパク質の一方または両方の活性を低下させてもよい。また、例えば、シンナムアルデヒドを生産する場合、NCgl0324タンパク質およびNCgl2709タンパク質の一方または両方の活性を低下させてもよい。YqhDタンパク質は、vanillyl alcohol dehydrogenase活性を有していてよい。NCgl0324タンパク質は、vanillyl alcohol dehydrogenase活性、benzyl alcohol dehydrogenase活性、およびcinnamyl
alcohol dehydrogenase活性の全てを有していてよい。NCgl2709タンパク質は、benzyl alcohol dehydrogenase活性およびcinnamyl alcohol dehydrogenase活性の両方を有していてよい。

0180

ADH活性は、例えば、NADPHまたはNADHの存在下で酵素を基質(例えば、バニリン等のアルデヒド)とインキュベートし、酵素および基質依存的なNADPHまたはNADHの酸化を測定することにより、測定できる。

0181

「シキミ酸デヒドロゲナーゼ(shikimate dehydrogenase)」とは、電子供与体の存在下で3−デヒドロシキミ酸を還元してシキミ酸を生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 1.1.1.25)。同活性を、「shikimate dehydrogenase活性」ともいう。shikimate dehydrogenaseをコードする遺伝子を、「shikimate dehydrogenase遺伝子」ともいう。電子供与体としては、NADHやNADPHが挙げられる。shikimate dehydrogenaseは、例えば、これらの電子供与体の少なくとも1つを利用できるものであってよい。shikimate dehydrogenaseとしては、aroE遺伝子にコードされるAroEタンパク質が挙げられる。E. coli K-12 MG1655のaroE遺伝子の塩基配列を配列番号163に、同遺伝子がコードするAroEタンパク質のアミノ酸配列を配列番号164に示す。

0182

shikimate dehydrogenase活性は、例えば、NADHまたはNADPHの存在下で酵素を基質(すなわち、3−デヒドロシキミ酸)とインキュベートし、酵素および基質依存的なNADHまたはNADPHの酸化を測定することにより、測定できる。

0183

また、SAM依存性代謝物やL−メチオニン等の目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、L−システイン生合成酵素の活性を増大させる方法が挙げられる(WO2018/079687)。

0184

「L−システイン生合成酵素」とは、L−システインの生合成に関与するタンパク質を意味してよい。L−システイン生合成酵素をコードする遺伝子を、「L−システイン生合成遺伝子」ともいう。L−システイン生合成酵素としては、硫黄の利用に関与するタンパク質が挙げられる。硫黄の利用に関与するタンパク質としては、cysIXHDNYZ遺伝子およびfpr2遺伝子にそれぞれコードされるCysIXHDNYZタンパク質およびFpr2タンパク質が挙げられる。CysIXHDNYZタンパク質は、特に、硫酸塩や亜硫酸塩等の無機硫黄化合物の還元に関与する。Fpr2タンパク質は、特に、亜硫酸塩の還元のための電子伝達に関与してよい。L−システイン生合成酵素としては、O−アセチルセリンチオール)リアーゼ(O-acetylserine (thiol)-lyase)も挙げられる。O-acetylserine (thiol)-lyaseとしては、cysK遺伝子にコードされるCysKタンパク質も挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のcysIXHDNYZ遺伝子、fpr2遺伝子、およびcysK遺伝子(NCgl2473)の塩基配列を配列番号165、167、169、171、173、175、177、179、181に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号166、168、170、172、174、176、178、180、182に、それぞれ示す。1種のL−システイン生合成酵素の活性を増大させてもよく、2種またはそれ以上のL−システイン生合成酵素の活性を増大
させてもよい。例えば、CysIXHDNYZタンパク質、Fpr2タンパク質、およびCysKタンパク質の内の1種またはそれ以上の活性を増大させてもよく、CysIXHDNYZタンパク質およびFpr2タンパク質の内の1種またはそれ以上の活性を増大させてもよい。

0185

L−システイン生合成酵素の活性は、例えば、L−システイン生合成酵素をコードする遺伝子(すなわち、cysIXHDNYZ遺伝子、fpr2遺伝子、cysK遺伝子等のL−システイン生合成遺伝子)の発現を増大させることにより、増大させることができる。

0186

L−システイン生合成遺伝子の発現は、例えば、同遺伝子の発現制御因子の活性を改変(例えば、増大または低下)することにより、増大させることができる。すなわち、L−システイン生合成遺伝子の発現は、例えば、同遺伝子の正の発現制御因子(例えば、アクチベーター)の活性を増大させることにより、増大させることができる。また、L−システイン生合成遺伝子の発現は、例えば、同遺伝子の負の発現制御因子(例えば、リプレッサー)の活性を低下させることにより、増大させることができる。そのような制御因子を、「制御タンパク質」ともいう。そのような制御因子をコードする遺伝子を、「制御遺伝子」ともいう。

0187

上記のようなアクチベーターとしては、cysR遺伝子およびssuR遺伝子にそれぞれコードされるCysRタンパク質およびSsuRタンパク質が挙げられる。CysRタンパク質の活性の増大により、cysIXHDNYZ遺伝子、fpr2遺伝子、およびssuR遺伝子の内の1種またはそれ以上の発現が増大し得る。また、SsuRタンパク質の活性の増大により、有機硫黄化合物の利用に関与する遺伝子の発現が増大し得る。C. glutamicumATCC13869株のcysR遺伝子(NCgl0120)およびssuR遺伝子の塩基配列を配列番号183と185に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号184と186に、それぞれ示す。CysRタンパク質およびSsuRタンパク質の一方または両方の活性を増大させてよい。例えば、少なくとも、CysRタンパク質の活性を低下させてもよい。そのようなアクチベーターの活性は、例えば、同アクチベーターをコードする遺伝子の発現を増大させることにより、増大させることができる。

0188

上記のようなリプレッサーとしては、mcbR遺伝子にコードされるMcbRタンパク質が挙げられる。McbRタンパク質の活性の低下により、cysR遺伝子およびssuR遺伝子の内の1種またはそれ以上の発現が増大し得る、また、それにより、cysIXHDNYZ遺伝子およびfpr2遺伝子の内の1種またはそれ以上の発現が増大し得る。そのようなリプレッサーの活性は、例えば、同リプレッサーをコードする遺伝子の発現を低下させることにより、または同リプレッサーをコードする遺伝子を破壊することにより、低下させることができる。

0189

すなわち、具体的には、L−システイン生合成酵素の活性は、例えば、cysIXHDNYZ遺伝子、fpr2遺伝子、cysR遺伝子、およびssuR遺伝子の内の1種またはそれ以上の発現を増大させることにより、増大させることができる。すなわち、「L−システイン生合成酵素の活性が増大する」とは、例えば、cysIXHDNYZ遺伝子、fpr2遺伝子、cysR遺伝子、およびssuR遺伝子の内の1種またはそれ以上の発現が増大することを意味してよい。例えば、少なくとも、cysR遺伝子の発現を増大させてもよい。また、例えば、これらの遺伝子の全ての発現を増大させてもよい。cysIXHDNYZ遺伝子、fpr2遺伝子、およびssuR遺伝子の内の1種またはそれ以上の発現は、cysR遺伝子の発現を増大させることにより増大してもよい。

0190

また、SAM依存性代謝物やL−メチオニン等の目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、NCgl2048タンパク質の活性を低下させる方法が挙げられる(WO2018/079686)。

0191

「NCgl2048タンパク質」とは、NCgl2048遺伝子にコードされるタンパク質を意味してよ
い。C. glutamicumATCC13869株のNCgl2048遺伝子の塩基配列を配列番号187に、同遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号188に示す。なお、保存的バリアントに関して、NCgl2048タンパク質の「元の機能」とは、配列番号188のアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を意味してよく、微生物において活性を低下させることにより目的物質の生産が増大する性質を意味してもよい。

0192

また、SAM依存性代謝物やL−メチオニン等の目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、エノラーゼ(enolase)の活性を低下させる方法が挙げられる(WO2018/079684)。enolaseについては、上述した通りである。なお、糖の資化能の低下および補完のためにenolaseの活性を低下および増大させる場合は、目的物質生産能の付与または増強のために、補完後のenolaseの活性を非改変株(すなわち、糖の資化能が低下するように改変する前の株)より低くなるように制限してもよい。

0193

また、SAM依存性代謝物やL−メチオニン等の目的物質生産能を付与または増強するための方法としては、S−アデノシル−L−ホモシステインヒドロラーゼ(S-adenosyl-L-homocysteine hydrolase)の活性を増大させる方法が挙げられる(WO2018/079684)。

0194

「S−アデノシル−L−ホモシステインヒドロラーゼ(S-adenosyl-L-homocysteine hydrolase)」とは、S−アデノシル−L−ホモシステイン(S-adenosyl-L-homocysteine;SAH)を加水分解してL−ホモシステインとアデノシンを生成する反応を触媒する活性を有するタンパク質を意味してよい(EC 3.3.1.1)。同活性を、「S-adenosyl-L-homocysteine hydrolase活性」ともいう。S-adenosyl-L-homocysteine hydrolaseは、「アデノシルホモシステイナーゼ(adenosylhomocysteinase)」ともいう。S-adenosyl-L-homocysteine hydrolaseをコードする遺伝子を、「S-adenosyl-L-homocysteine hydrolase遺伝子」ともいう。S-adenosyl-L-homocysteine hydrolaseとしては、sahH遺伝子にコードされるSahHタンパク質が挙げられる。S-adenosyl-L-homocysteine hydrolaseとして、具体的には、酵母、Streptomyces属細菌、コリネ型細菌等の各種生物のものが挙げられる。C. glutamicumATCC13869株のsahH遺伝子(NCgl0719)の塩基配列を配列番号189に、同遺伝子がコードするSahHタンパク質のアミノ酸配列を配列番号190に示す。

0195

S-adenosyl-L-homocysteine hydrolase活性は、例えば、酵素を基質(例えば、S−アデノシル−L−ホモシステイン)およびDTNB(5,5'-Dithiobis(2-nitrobenzoic acid))とインキュベートし、産物(例えば、ホモシステイン)依存的なTNB(5-Mercapto-2-nitrobenzoic acid)の生成を412 nmの吸光度に基づいて測定することにより、測定できる(J
Mol Microbiol Biotechnol 2008, 15: 277-286)。

0196

活性を改変するタンパク質は、例えば、目的物質の種類、目的物質が生産される生合成経路の種類、および微生物が本来的に有するタンパク質の種類や活性等の諸条件に応じて適宜選択できる。例えば、バニリンをプロトカテク酸からの生物変換により製造する場合は、特に、OMT、ACAR、PPT、およびプロトカテク酸取り込み系の1種またはそれ以上の活性を増大させてよい。また、例えば、バニリンをバニリン酸からの生物変換により製造する場合は、特に、ACAR、PPT、およびバニリン酸取り込み系の1種またはそれ以上の活性を増大させてよい。また、バニリンをプロトカテクアルデヒドからの生物変換により製造する場合は、特に、OMTの活性を増大させてよい。

0197

目的物質が遺伝子の発現産物(例えば、タンパク質やRNA)である場合、本明細書に記載の微生物は、少なくとも目的物質をコードする遺伝子を有することに依拠して目的物質生産能を有する。目的物質をコードする遺伝子を、「目的物質遺伝子」ともいう。すなわち、微生物は、目的物質遺伝子を有していてよい。微生物は、例えば、目的物質遺伝子を有することにより、あるいは目的物質遺伝子を有することと他の性質との組み合わせによ
り、目的タンパク質生産能を有していてよい。また、目的物質生産能を付与または増強する方法としては、目的物質遺伝子を微生物に導入する方法が挙げられる。遺伝子を導入する手法については後述する。

0198

タンパク質は、例えば、菌体外(例えば、培地中または菌体表層)に分泌生産されてもよく、菌体内に蓄積してもよい。例えば、シグナルペプチドを利用することにより、タンパク質を分泌生産することができる。目的のタンパク質をコードする遺伝子(目的タンパク質遺伝子)は、発現可能に宿主に保持されていればよい。具体的には、例えば、5’から3’方向に宿主で機能するプロモーター配列、宿主で機能するシグナルペプチドをコードする塩基配列、および目的のタンパク質をコードする塩基配列を含むタンパク質の発現ユニットを宿主に保持させ、目的のタンパク質を発現することにより、目的のタンパク質を分泌生産することができる。目的のタンパク質をコードする塩基配列は、シグナルペプチドをコードする塩基配列の下流に、シグナルペプチドとの融合タンパク質として目的のタンパク質が発現するよう連結されていればよい。すなわち、目的タンパク質遺伝子としては、このような融合タンパク質をコードする遺伝子も挙げられる。タンパク質の分泌生産には、例えば、コリネ型細菌を宿主として用いることができる。タンパク質の分泌生産に用いるコリネ型細菌としては、例えば、細胞表層タンパク質の活性が低下した株が挙げられる。そのような株としては、C. glutamicum AJ12036 (FERM BP-734) の細胞表層タンパク質PS2の欠損株であるC. glutamicum YDK010株(WO2004/029254)やその改変株が挙げられる。また、コリネ型細菌についてタンパク質の分泌生産能を付与または増強するための方法としては、細胞表層タンパク質の活性を低下させる方法(WO2013/065869、WO2013/065772、WO2013/118544、WO2013/062029)、ペニシリン結合タンパク質の活性を低下させる方法(WO2013/065869)、メタロペプチダーゼをコードする遺伝子の発現を増大させる方法(WO2013/065772)、変異型リボソームタンパク質S1遺伝子(変異型rpsA遺伝子)を有するように宿主を改変する方法(WO2013/118544)、変異型phoS遺伝子を有するように宿主を改変する方法(WO2016/171224)、RegX3タンパク質の活性を低下させる方法(WO2018/074578)、HrrSAシステムの活性を低下させる方法(WO2018/074579)、Gln-Glu-Thrを含むアミノ酸配列をシグナルペプチドと目的のタンパク質の間に挿入して目的のタンパク質を発現する方法(WO2013/062029)、Tat系分泌装置等のタンパク質の分泌系を増強する方法(特許第4730302号)が挙げられる。

0199

RNAは、例えば、菌体内に蓄積してよい。目的のRNAをコードする遺伝子(目的RNA遺伝子)は、発現可能に宿主に保持されていればよい。具体的には、例えば、5’から3’方向に宿主で機能するプロモーター配列および目的のRNAをコードする塩基配列(目的RNA遺伝子)を含むRNAの発現ユニットを宿主に保持させ、目的のRNAを発現することにより、目的のRNAを生産することができる。RNAの生産には、例えば、コリネ型細菌を宿主として用いることができる。目的RNA遺伝子の転写態様は、目的のRNAが得られる限り、特に制限されない。目的RNA遺伝子は、例えば、一方向に(すなわち二本鎖の片方のストランドのみを鋳型として)転写されてもよく、双方向に(すなわち二本鎖のそれぞれのストランドを鋳型として)転写されてもよい。目的RNA遺伝子を双方向に転写することは、同遺伝子を挟んで逆向きに配置されたプロモーター(すなわち二本鎖のそれぞれのストランドにおいて同遺伝子の5’側に配置されたプロモーター)から同遺伝子を転写することにより実施できる。すなわち、RNAの発現ユニットは、そのような2つのプロモーターを含んでいてもよい。その場合、両プロモーターは同一であってもよく、なくてもよい。目的RNA遺伝子を一方向に転写することにより、典型的には、一本鎖RNAが得られる。目的RNA遺伝子を双方向に転写することにより、典型的には、二本鎖RNAが得られる。また、二本鎖RNAのそれぞれのストランドを個別の発現ユニットから転写することによっても、二本鎖RNAが得られる。

0200

また、RNAの生産能を付与または増強するための方法としては、リボヌクレアーゼIII(
ribonuclease III;RNaseIII)の活性を低下させる方法が挙げられる。

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