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技術 歯科用硬化性組成物及びその製造方法

出願人 クラレノリタケデンタル株式会社
発明者 井上将史平松尚悟堀口広敬
出願日 2018年8月24日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2018-157204
公開日 2020年2月27日 (10ヶ月経過) 公開番号 2020-029438
状態 未査定
技術分野 歯科用製剤
主要キーワード ニードルチップ 球状充填材 重合硬化前 画像写真 ブリリアントカーミン6B 固体間 凝結体 微粒子無機フィラー
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2020年2月27日)のものです。
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図面 (1)

課題

本発明は、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度定性に優れる歯科用硬化性組成物及びその製造方法を提供すること。

解決手段

無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を含む歯科用硬化性組成物であって、該無機充填材(A)が表面処理剤表面処理されており、該無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まず、かつ50℃にて1ヶ月保存した後における歯科用硬化性組成物の稠度維持率が85%以上である、歯科用硬化性組成物。

概要

背景

重合性単量体フィラー及び重合開始剤から構成される歯科用硬化性組成物は、コンポジットレジンと呼ばれ、歯の欠損部や齲蝕修復するための材料として今日最も多用される歯科材料となっている。コンポジットレジンは、重合硬化後の硬化物において、天然歯置換可能な十分な機械的強度、天然歯と同等の光沢を得るための研磨性及び滑沢耐久性等が要求され、重合硬化前ペースト状態では、歯科用インスツルメントを用いて窩洞への充填操作をするのに適した賦形性及び操作性等があることが要求され、その指標となるのが稠度である。使用者は、好みの稠度を持っている場合が多く、稠度が経時的に変化してしまうと、使用者の作業性を損なうことになり、臨床上のトラブルを引き起こす原因にもなり得る。

高い機械的強度及び研磨性、またペーストの操作性及び稠度安定性を実現するために、有機無機複合フィラーに60℃ における粘度が10Pa・s以下の重合性単量体をあらかじめ含浸させることで、経時的にペーストが硬くなることを抑制する技術が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この技術では重合性単量体の含浸工程が増えるため有機無機複合フィラーの作製が煩雑になるという課題があった。

有機無機複合フィラーを用いない場合、高い研磨性を実現するために平均粒子径が0.01〜5μm程度の微粒子無機フィラーを重合性単量体に充填する手法が挙げられる。しかしながら、この粒子径無機フィラー表面積が大きいために高含量で充填することが困難であり、コンポジットレジンにおける無機フィラーの含有量が少なくなり、十分な機械的強度が得られず、またペーストの操作性を損なう問題があった。このような問題を解決するために、アルキル鎖の長いシランカップリング剤で無機フィラーを表面処理する方法が挙げられている(特許文献2)。しかしながら、本発明者らが検討した結果、この方法では稠度の経時変化を防止することができず改善の余地があった。

また、無機フィラーに表面処理を施すことで重合性単量体との馴染みが向上し、ペースト状になりやすくなることが知られており、表面処理効率を向上させることで、ペーストの操作性及び稠度安定性を向上できることが期待できる。表面処理効率を向上させるためには、無機フィラーを均一に分散させる必要があり、その方法として特許文献3に記載の方法が挙げられる。具体的には、ビーズミルホモジナイザー超音波分散)等の分散方法が記載されている。しかしながら、本発明者らが検討したところ、ビーズミル分散では、均一に分散できる一方で粒子自体が破壊されてしまい、その結果無機フィラーの表面積が変化してしまい、ペーストの稠度安定性が低下するという問題があり改善の余地があった。また超音波分散では、粒子の破壊は起こらないが、無機フィラーの種類によっては均一に分散できない場合があり、機械的強度や研磨性、ペーストの操作性が損なわれてしまい改善の余地があった。

概要

本発明は、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れる歯科用硬化性組成物及びその製造方法を提供すること。無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を含む歯科用硬化性組成物であって、該無機充填材(A)が表面処理剤で表面処理されており、該無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まず、かつ50℃にて1ヶ月保存した後における歯科用硬化性組成物の稠度維持率が85%以上である、歯科用硬化性組成物。なし

目的

本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れる歯科用硬化性組成物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を含む歯科用硬化性組成物であって、該無機充填材(A)が表面処理剤表面処理されており、該無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まず、かつ50℃にて1ヶ月保存した後における歯科用硬化性組成物の稠度維持率が85%以上である、歯科用硬化性組成物。

請求項2

無機充填材(A)の平均一次粒子径が0.01〜5μmである、請求項1に記載の歯科用硬化性組成物。

請求項3

重合性単量体(B)が、(メタアクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である、請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。

請求項4

無機充填材(A)を含む懸濁液を加圧して貫通孔を有するノズル部に高速流で圧送し、貫通孔を介して懸濁液同士を高速で衝突させ、得られるエネルギーにより無機充填材(A)を分散させる工程、該無機充填材(A)を表面処理剤により処理する工程、並びに、表面処理された無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を混合する工程を有する、歯科用硬化性組成物の製造方法。

請求項5

前記貫通孔の大きさがφ0.1〜5mmであり、懸濁液を圧送する圧力が60〜300MPaであることを特徴とする、請求項4に記載の歯科用硬化性組成物の製造方法。

請求項6

請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物からなる歯科材料

請求項7

請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯科用硬化性組成物からなる歯科用コンポジットレジン

技術分野

0001

本発明は、歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料、特に歯科用コンポジットレジンとして好適に使用される歯科用硬化性組成物及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

重合性単量体フィラー及び重合開始剤から構成される歯科用硬化性組成物は、コンポジットレジンと呼ばれ、歯の欠損部や齲蝕修復するための材料として今日最も多用される歯科材料となっている。コンポジットレジンは、重合硬化後の硬化物において、天然歯と置換可能な十分な機械的強度、天然歯と同等の光沢を得るための研磨性及び滑沢耐久性等が要求され、重合硬化前ペースト状態では、歯科用インスツルメントを用いて窩洞への充填操作をするのに適した賦形性及び操作性等があることが要求され、その指標となるのが稠度である。使用者は、好みの稠度を持っている場合が多く、稠度が経時的に変化してしまうと、使用者の作業性を損なうことになり、臨床上のトラブルを引き起こす原因にもなり得る。

0003

高い機械的強度及び研磨性、またペーストの操作性及び稠度安定性を実現するために、有機無機複合フィラーに60℃ における粘度が10Pa・s以下の重合性単量体をあらかじめ含浸させることで、経時的にペーストが硬くなることを抑制する技術が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この技術では重合性単量体の含浸工程が増えるため有機無機複合フィラーの作製が煩雑になるという課題があった。

0004

有機無機複合フィラーを用いない場合、高い研磨性を実現するために平均粒子径が0.01〜5μm程度の微粒子無機フィラーを重合性単量体に充填する手法が挙げられる。しかしながら、この粒子径無機フィラー表面積が大きいために高含量で充填することが困難であり、コンポジットレジンにおける無機フィラーの含有量が少なくなり、十分な機械的強度が得られず、またペーストの操作性を損なう問題があった。このような問題を解決するために、アルキル鎖の長いシランカップリング剤で無機フィラーを表面処理する方法が挙げられている(特許文献2)。しかしながら、本発明者らが検討した結果、この方法では稠度の経時変化を防止することができず改善の余地があった。

0005

また、無機フィラーに表面処理を施すことで重合性単量体との馴染みが向上し、ペースト状になりやすくなることが知られており、表面処理効率を向上させることで、ペーストの操作性及び稠度安定性を向上できることが期待できる。表面処理効率を向上させるためには、無機フィラーを均一に分散させる必要があり、その方法として特許文献3に記載の方法が挙げられる。具体的には、ビーズミルホモジナイザー超音波分散)等の分散方法が記載されている。しかしながら、本発明者らが検討したところ、ビーズミル分散では、均一に分散できる一方で粒子自体が破壊されてしまい、その結果無機フィラーの表面積が変化してしまい、ペーストの稠度安定性が低下するという問題があり改善の余地があった。また超音波分散では、粒子の破壊は起こらないが、無機フィラーの種類によっては均一に分散できない場合があり、機械的強度や研磨性、ペーストの操作性が損なわれてしまい改善の余地があった。

先行技術

0006

特開2011−098941号公報
国際公開第2014/083842号
国際公開第2014/021343号

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、従来技術が抱える上記の課題を解決すべくなされたものであって、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れる歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を含む歯科用硬化性組成物において、無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まないものを用いて、かつ特定の稠度維持率を有する歯科用硬化性組成物とすることによって、上記課題を一挙に解決できることを見い出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。

0009

本発明は、以下の発明を包含する。
[1]無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を含む歯科用硬化性組成物であって、該無機充填材(A)が表面処理剤で表面処理されており、該無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まず、かつ50℃にて1ヶ月保存した後における歯科用硬化性組成物の稠度維持率が85%以上である、歯科用硬化性組成物。
[2]無機充填材(A)の平均一次粒子径が0.01〜5μmである、[1]に記載の歯科用硬化性組成物。
[3]重合性単量体(B)が、(メタアクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体である、[1]又は[2]に記載の歯科用硬化性組成物。
[4]無機充填材(A)を含む懸濁液を加圧して貫通孔を有するノズル部に高速流で圧送し、貫通孔を介して懸濁液同士を高速で衝突させ、得られるエネルギーにより無機充填材(A)を分散させる工程、該無機充填材(A)を表面処理剤により処理する工程、並びに、表面処理された無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を混合する工程を有する、歯科用硬化性組成物の製造方法。
[5]前記貫通孔の大きさがφ0.1〜5mmであり、懸濁液を圧送する圧力が60〜300MPaであることを特徴とする、[4]に記載の製造方法。
[6][1]〜[3]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物からなる歯科材料。
[7][1]〜[3]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物からなる歯科用コンポジットレジン。

発明の効果

0010

本発明の歯科用硬化性組成物は、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れている。

図面の簡単な説明

0011

図1は、本発明の無機充填材(A)の分散工程に用いる装置の一実施形態にかかる模式図である。

0012

本発明の歯科用硬化性組成物は、無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を含み、該無機充填材(A)が表面処理剤で表面処理されており、該無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まず、かつ特定の稠度維持率を有することを特徴とする。これにより、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れる歯科用硬化性組成物を提供できる。

0013

この効果が発現する要因は定かではないが、例えば以下のように推測される。無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まず分散されていることによって、高効率で表面処理することができ、その結果重合性単量体(B)との相溶性が著しく向上し、ペーストの操作性を損なうことなく、多くの無機充填材(A)を充填することができ、高い機械的強度を発現するものと考えられる。また、無機充填材(A)に表面処理されていない部分があると重合性単量体(B)との作用により稠度が変化することが考えられる。分散によって無機充填材(A)の粒子が破壊されると表面積が大きくなり、表面処理剤の量が不足してしまい、表面処理されていない部分が増加し稠度安定性が低下する。粒子が破壊されると、粒子径の変化に加えて形状も変化するため、結果として表面積が大きく変化し、表面積変化の制御は非常に困難になり、適切な表面処理剤の量を設定することも非常に困難であり、単に表面処理剤の量を増やすのみでは、稠度安定性の低下の問題を解決できない。単純に表面処理剤の量を過剰に増やすと、粒子と反応しなかった余剰な表面処理剤が強度低下を招くことになる。さらには、粒子の破壊により表面状態も変化するため、表面処理剤との反応性が変化し、適切な表面処理剤の量を設定することがさらに困難である。本発明の歯科用硬化性組成物は、例えば後述する無機充填材(A)を分散させる特定の工程により、分散によって無機充填材(A)の粒子が破壊されないことから、無機充填材(A)の表面積の変化がなく、特定の稠度維持率を達成することができ、稠度安定性に優れるものと考えられる。

0014

〔無機充填材(A)〕
本発明における無機充填材(A)としては、歯科用コンポジットレジンの充填材として用いられている公知の無機粒子を用いることができる。当該無機粒子としては、例えば、各種ガラス類(例えば、二酸化珪素石英石英ガラスシリカゲル等)、珪素を主成分とし各種重金属とともにホウ素及び/又はアルミニウムを含有するものなど)、アルミナ、各種セラミック類、珪藻土カオリン粘土鉱物モンモリロナイト等)、活性白土合成ゼオライトマイカシリカフッ化カルシウム、フッ化イッテルビウムリン酸カルシウム硫酸バリウム二酸化ジルコニウムジルコニア)、二酸化チタンチタニア)、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。なお、無機充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

0015

本発明の歯科用硬化性組成物において、無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まないことが重要である。ここでいう「凝集」とは、フィラー同士の固体固体間架橋により形成されるものであり、表面処理されていないフィラーが溶媒留去等の濃縮時に形成するフィラーを示す。また、「凝結」とは焼成フィラー及び有機無機複合フィラーのことを示す。上記焼成フィラーとは、無機充填材(A)を500〜1000℃程度の高温条件下で焼成したものを示す。また上記有機無機複合フィラーとは、無機充填材(A)に重合性単量体(B)を予め添加してペースト状にした後、重合硬化させ、粉砕して得られる有機無機複合粒子のことを示す。「無機充填材(A)が凝集及び凝結を実質的に含まない」とは、該歯科用硬化性組成物の硬化物断面顕微鏡観察した際に、顕微鏡観察で取得された当該断面の画像全体面積(100%)において、凝集及び凝結に相当する領域の面積の割合(以下、「凝集体及び凝結体面積割合」と称することがある)が5%以下であることを指す。凝集体及び凝結体の面積割合が5%以下であると、ペーストの操作性に優れ、重合性単量体(B)中に無機充填材(A)を多く充填することができ機械的強度に優れる。このような観点から、凝集体及び凝結体の面積割合は、4%以下が好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。

0016

ここで、無機充填材(A)の凝集体及び凝結体の面積割合は、画像解析粒度分布ソフトウェア(株式会社マウンテック製「Macview」等)を用いて求めることができる。例えば、走査電子顕微鏡(SEM;例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU3500H−800NA型」等)画像写真を撮り、そのSEM画像中で確認可能な全ての凝集体及び凝結体の面積(凝集体及び凝結体の合計面積)を測定し、これを該SEM画像全体の面積で除すことにより求めることができ、より具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。

0017

本発明の歯科用硬化性組成物は、50℃にて1ヶ月保存した後における稠度維持率が50℃1ヶ月保存前の稠度に対して85%以上であることが重要である。歯科用硬化性組成物のペーストにおける稠度の経時的な変化について、歯科用硬化性組成物が通常30℃以下で保存又は使用される際、各成分の含有量にもよるが稠度の変化は数ヶ月〜数年に渡って徐々に進行する。一方、歯科用硬化性組成物を50℃で保存する加速試験を行うことで、比較的短時間で稠度の変化を確認することができる。本発明の歯科用硬化性組成物は、50℃にて1ヶ月保存した後における歯科用硬化性組成物の稠度維持率が50℃1ヶ月保存前の稠度に対して85%以上であり、88%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。これによって長期に亘り使用者の作業性を損なうことがなく、臨床上のトラブルを低減できる。

0018

歯科用硬化性組成物の稠度は、ガラス板上に歯科用硬化性組成物を計量し、その上からガラス板を載せ、一定時間経過後のサンプルの長径短径をガラス板越しに測定することで求められる。稠度維持率に関しては、初期の稠度を、所定条件での保管後の稠度で除すことで求めることができ、より具体的には実施例において後述する方法により求めることができる。

0019

歯冠修復材料に望まれる重要な物性として、天然歯と同様の透明性とX線造影性とが挙げられる。このうち透明性は無機充填材(A)と重合性単量体(B)の重合体屈折率をできるだけ一致させることにより達成することができる。一方、X線造影性は、無機充填材(A)として、ジルコニウムバリウムチタンランタンストロンチウム等の重金属元素を含む無機充填材(酸化物など)を用いることにより付与することができる。このような重金属元素を含む無機充填材の屈折率は通常高く、1.5〜1.6の範囲内にある。本発明において、例えば、重合体を形成する重合性単量体(B)として(メタ)アクリレート系重合性単量体を用いる場合、(メタ)アクリレート系重合性単量体の屈折率は通常、1.5〜1.6の範囲内にあることから、このようなX線造影性を有する屈折率の高い無機充填材と組み合わせても屈折率差を小さく調節することができ、得られる歯科用硬化性組成物の透明性を向上させることができる。

0020

上記したX線造影性を付与することのできる屈折率の高い無機充填材としては、例えば、バリウムボロシリケートガラス(例えば、Esstech社製の「E−3000」やショット社製の「8235」、「GM27884」、「GM39923」等)、ストロンチウムボロアルミシリケートガラス(例えば、Esstech社製の「E−4000」やショット社製の「G018−093」、「GM32087」等)、ランタンガラス(例えば、ショット社製の「GM31684」等)、フルオロアルミノシリケートガラス(例えば、ショット社製の「G018−091」、「G018−117」等)、ジルコニアを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−310」、「G018−159」等)、ストロンチウムを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−163」、「G018−093」、「GM32087」等)、酸化亜鉛を含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−161」等)、カルシウムを含有するガラス(例えば、ショット社製の「G018−309」等)などが挙げられる。

0021

無機充填材(A)の形状に特に制限はなく、例えば、破砕状、板状、鱗片状、繊維状(短繊維長繊維等)、針状、ウィスカー、球状など、各種形状のものを用いることができる。無機充填材は、本発明の要件を満たす限り上記の形状の内、異なる形状のものが組み合わさったものであってもよい。

0022

本発明における無機充填材(A)の平均一次粒子径は、0.01〜5μmであることが好ましい。当該範囲の平均一次粒子径を有する無機充填材(A)を用いることで、硬化物の研磨性に優れた歯科用硬化性組成物となる。このような観点から、無機充填材(A)の平均一次粒子径は、0.02μm以上であることがより好ましく、0.04μm以上であることがさらに好ましく、また、3μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましい。平均一次粒子径が0.01μmよりも小さいとペーストの操作性が損なわれやすく、また5μmよりも大きいと研磨性が損なわれるおそれがある。

0023

前記無機充填材(A)の平均一次粒子径は、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が簡便であり、0.1μm未満の粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μm以上であるか否かの判別にはレーザー回折散乱法を採用すればよい。

0024

レーザー回折散乱法では、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製「SALD−2100」等)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液分散媒に用いて測定することで平均一次粒子径を求めることができる。

0025

電子顕微鏡観察では、例えば、粒子の走査電子顕微鏡(SEM;例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU3500H−800NA型」等)画像写真を撮り、そのSEM画像写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製「Macview」等)を用いて測定することにより平均一次粒子径を求めることができる。このとき、粒子の粒子径は、その粒子の面積と同一の面積をもつ円の直径である円相当径として求められ、粒子の数とその粒子径より平均一次粒子径が算出される。

0026

本発明における無機充填材(A)の含有量としては、特に限定されないが、歯科用硬化性組成物の全量に対して、50〜95質量%が好ましく、55〜90質量%がより好ましく、60〜85質量%がさらに好ましい。

0027

〔重合性単量体(B)〕
本発明で用いられる重合性単量体(B)は、歯科用コンポジットレジン等に使用される公知の重合性単量体が何ら制限無く用いられるが、一般には、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。ラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸桂皮酸ソルビン酸マレイン酸イタコン酸等のエステル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体等の(メタ)アクリルアミド系重合性単量体;ビニルエステル類ビニルエーテル類モノ−N−ビニル誘導体スチレン誘導体等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリレート系重合性単量体及び(メタ)アクリルアミド系重合性単量体からなる群から選ばれる1種以上の重合性単量体であることが好ましく、(メタ)アクリレートがより好ましい。なお、本発明において「(メタ)アクリル」との表記メタクリルとアクリルの両者を包含する意味で用いられ、「(メタ)アクリレート」との表記はメタクリレートとアクリレートの両者を包含する意味で用いられる。

0028

本発明における(メタ)アクリレート系及び(メタ)アクリルアミド系の重合性単量体の例を以下に示す。

0029

(I)一官能性(メタ)アクリレート系及び(メタ)アクリルアミド系の重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシデシルアンモニウムクロライド、10−メルカプトデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。

0030

(II)二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−〔3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシフェニルプロパン、2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン(通称Bis−GMA)、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(例えば、エトキシ基平均付加モル数2.6)、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロポキシ〕エタンペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレート(通称UDMA)、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンチルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。

0031

(III)三官能性以上の(メタ)アクリレート系重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、N,N’−(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン)ビス〔2−(アミノカルボキシ)プロパン−1,3−ジオール〕テトラ(メタ)アクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタン等が挙げられる。

0032

また、これらの(メタ)アクリレート系及び(メタ)アクリルアミド系の重合性単量体の他に、カチオン重合可能な、オキシラン化合物オキセタン化合物も好適に用いられる。

0033

前記重合性単量体(B)は、いずれも、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を併用したり、後述の重合開始剤(C)等と併用して重合性単量体含有組成物として用いてもよい。また、本発明で用いられる重合性単量体(B)は液体状であることが好ましいが、常温で液体状である必要は必ずしも無く、重合性単量体(B)を無機充填材(A)に接触させる工程の環境下で液体であれば何ら差し支えない。さらに、固体状の重合性単量体(B)であっても、液体状の、その他の重合性単量体(B)と混合溶解させて使用することができる。

0034

本発明における重合性単量体の含有量としては、特に限定されないが、歯科用硬化性組成物の全量に対して、5〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましい。

0035

〔重合開始剤(C)〕
次に、重合開始剤(C)について説明する。該重合開始剤(C)としては、加熱重合開始剤光重合開始剤化学重合開始剤が挙げられる。これらは、1種単独で用いてよく、2種以上を併用してもよい。

0036

加熱重合開始剤としては、有機過酸化物アゾ化合物等が挙げられる。

0039

前記ヒドロペルオキシドとしては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドt−ブチルヒドロペルオキシド及び1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。

0040

前記ジアシルペルオキシドとしては、アセチルペルオキシドイソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドデカノイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド及びラウロイルペルオキシド等が挙げられる。

0041

前記ジアルキルペルオキシドとしては、ジ−t−ブチルペルオキシドジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピルベンゼン及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン等が挙げられる。

0042

前記ペルオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン及び4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレリックアシッドn−ブチルエステル等が挙げられる。

0043

前記ペルオキシエステルとしては、α−クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、2,2,4−トリメチルペンチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタラート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート及びt−ブチルペルオキシマレリックアシッド等が挙げられる。

0044

前記ペルオキシジカーボネートとしては、ジ−3−メトキシペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペルオキシジカーボネート及びジアリルペルオキシジカーボネート等が挙げられる。

0045

これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。

0046

前記アゾ化合物としては、2,2−アゾビスイソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチラート、2,2−アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド等が挙げられる。

0047

光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類クマリン類等が挙げられる。

0048

前記(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ−(2,6−ジメチルフェニルホスホネート、及びこれらの塩等が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、及びこれらの塩等が挙げられる。

0049

これら(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド及び2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドナトリウム塩が好ましい。

0050

前記α−ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3−ペンタジオン、2,3−オクタジオン、9,10−フェナントレンキノン、4,4’−オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。この中でも、カンファーキノンが好適である。

0051

前記クマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−チエノイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−6−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−8−メトキシクマリン、3−ベンゾイルクマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3,5−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3−ベンゾイル−6−ブロモクマリン、3,3’−カルボニルビスクマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3−カルボキシクマリン、3−カルボキシ−7−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−6−メトキシクマリン、3−エトキシカルボニル−8−メトキシクマリン、3−アセチルベンゾ[f]クマリン、7−メトキシ−3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−(p−ニトロベンゾイル)クマリン、3−ベンゾイル−6−ニトロクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、7−ジメチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−メトキシベンゾイル)クマリン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノ)クマリン、7−メトキシ−3(4−メトキシベンゾイル)クマリン、3−(4−ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3−(4−エトキシシンナモイル)−7−メトキシクマリン、3−(4−ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3−(4−ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3−[(3−ジメチルベンゾチアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3−[(1−メチルナフト[1,2−d]チアゾール−2−イリデン)アセチル]クマリン、3,3’−カルボニルビス(6−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−アセトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジメチルアミノクマリン)、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジブチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾイミダゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジオクチルアミノ)クマリン、3−アセチル−7−(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)、3,3’−カルボニル−7−ジエチルアミノクマリン−7’−ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10−[3−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1−オキソ−2−プロペニル]−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11オン、10−(2−ベンゾチアゾイル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル1H,5H,11H−[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−オン等の特開平9−3109号公報、特開平10−245525号公報に記載されている化合物が挙げられる。

0052

上述のクマリン化合物の中でも、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)及び3,3’−カルボニルビス(7−ジブチルアミノクマリン)が好適である。

0053

これらの光重合開始剤の中でも、歯科用硬化性組成物に広く使われている(ビス)アシルホスフィンオキシド類、α−ジケトン類、及びクマリン類からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。

0054

また、かかる光重合開始剤は、必要に応じて、さらに重合促進剤と組み合わせることで、光重合をより短時間で効率的に行うことができる場合がある。

0055

光重合開始剤に好適な重合促進剤としては、主として第3級アミン類アルデヒド類チオール基を有する化合物、スルフィン酸及び/又はその塩等が挙げられる。

0056

第3級アミン類としては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルp−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸(2−メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル、N−メチルジエタノールアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノントリメチルアミントリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート等が挙げられる。

0057

アルデヒド類としては、ジメチルアミノベンズアルデヒドテレフタルアルデヒド等が挙げられる。チオール基を有する化合物としては、2−メルカプトベンゾオキサゾールデカンチオール、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランチオ安息香酸等が挙げられる。

0058

スルフィン酸及びその塩としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸カリウム、p−トルエンスルフィン酸カルシウム、トルエンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられる。

0059

化学重合開始剤としては、有機過酸化物及びアミン系;有機過酸化物、アミン及びスルフィン酸(又はその塩)系等のレドックス系重合開始剤が好ましく用いられる。レドックス系重合開始剤を使用する場合、酸化剤と還元剤が別々に包装された包装形態をとり、使用する直前に両者を混合する必要がある。レドックス系重合開始剤の酸化剤としては、有機過酸化物が挙げられる。レドックス系重合開始剤の酸化剤として有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、前記加熱重合開始剤で例示した有機過酸化物が挙げられる。

0060

これらの有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルペルオキシドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルペルオキシドがより好ましく用いられる。

0061

レドックス系重合開始剤の還元剤としては、通常、芳香環電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンが用いられる。芳香環に電子吸引性基を有しない第3級芳香族アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジイソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリンが挙げられる。

0062

化学重合開始剤は、必要に応じて、さらに重合促進剤を組み合わせて使用してもよい。化学重合開始剤の重合促進剤は、一般工業界で使用されている重合促進剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合促進剤が好ましく用いられる。また、重合促進剤は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて使用される。具体的には、アミン類、スルフィン酸及びその塩、銅化合物スズ化合物等が挙げられる。

0063

化学重合開始剤の重合促進剤として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香環に電子吸引性基を有する芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンとしては、例えば、n−ブチルアミンn−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン等の第1級脂肪族アミンジイソプロピルアミンジブチルアミンN−メチルエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミン等が挙げられる。これらの中でも、組成物硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN−メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。

0064

また、化学重合開始剤の重合促進剤として用いられる芳香環に電子吸引性基を有する第3級芳香族アミンとしては、例えば、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸n−ブトキシエチル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4−(N,N−ジメチルアミノ安息香酸)n−ブトキシエチル及び4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられる。

0065

重合促進剤として用いられるスルフィン酸及びその塩としては、上記した光重合開始剤の重合促進剤として例示したものが挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが好ましい。

0066

重合促進剤として用いられる銅化合物としては、例えば、アセチルアセトン銅酢酸第2銅、オレイン酸銅塩化第2銅、臭化第2銅等が好適に用いられる。

0067

重合促進剤として用いられるスズ化合物としては、例えば、ジ−n−ブチル錫ジマレエートジ−n−オクチル錫ジマレエート、ジ−n−オクチル錫ジラウレート、ジ−n−ブチル錫ジラウレート等が挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ−n−オクチル錫ジラウレート及びジ−n−ブチル錫ジラウレートである。

0068

これらのなかでも、光重合開始剤と加熱重合開始剤を併用することが好ましく、(ビス)アシルホスフィンオキシド類とジアシルペルオキシドの組合せがより好ましい。

0069

本発明における重合開始剤(C)の含有量は、特に限定されないが、得られる組成物の硬化性等の観点から、重合性単量体(B)100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましい。重合開始剤(C)の含有量が重合性単量体(B)100質量部に対して、0.001質量部以上の場合、重合が十分に進行して機械的強度の低下を招くおそれがなく、より好適には0.05質量部以上であり、さらに好適には0.1質量部以上である。一方、重合開始剤(C)の含有量が、重合性単量体(B)100質量部に対して、30質量部以下であると、重合開始剤自体の重合性能が低い場合にでも十分な機械的強度が得られ、さらには組成物からの析出を招くおそれがなく、より好適には20質量部以下である。

0070

本発明の歯科用硬化性組成物には、前記成分以外に、目的に応じて、pH調整剤紫外線吸収剤酸化防止剤着色剤顔料抗菌剤X線造影剤増粘剤蛍光剤などをさらに添加することも可能である。

0071

前記顔料としては、歯科用コンポジットレジン又は歯科用セメントに用いられている公知の顔料が何ら制限なく用いられる。前記顔料としては、無機顔料及び/又は有機顔料のいずれでもよく、無機顔料としては、例えば、黄鉛亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩紺青等のフェロシアン化物;銀カドミウム黄硫化亜鉛カドミウムレッド等の硫化物;硫酸バリウム、硫酸亜鉛硫酸ストロンチウム等の硫酸塩;アンチモン白、亜鉛華チタン白ベンガラ鉄黒酸化クロム等の酸化物;水酸化アルミニウム等の水酸化物ケイ酸カルシウム群青等のケイ酸塩カーボンブラックグラファイト等の炭素等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY等の二トロン系顔料;ナフトールS、リソールファストイエロー2G等のニトロ系顔料;パーマネントレッド4Rブリリアントファストスカレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー等の不溶性アゾ系顔料リソールレッドレーキレッドCレーキレッドD等の難溶性アゾ系顔料;ブリリアントカーミン6BパーマネントレッドF5R、ピグメントスカーレット3Bボルドー10B等の可溶性アゾ系顔料;フタロシアニンブルーフタロシアニングリーンスカイブルー等のフタロシアニン系顔料ローダミンレーキマラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の塩基性染料系顔料;ピーコックブルーレーキ、エオシンレーキ、キノリンイエローレーキ等の酸性染料系顔料等が挙げられる。前記顔料は1種又は2種以上の組み合わせで用いることができ、目的とする色調に応じて適宜選択される。

0072

歯科用硬化性組成物における顔料の含有量は、所望の色調によって適宜調整されるため、特に限定されないが、歯科用硬化性組成物100質量部に対して、好ましくは0.000001質量部以上であり、より好ましくは0.00001質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは1質量部以下である。また、顔料の含有量は、歯科用硬化性組成物100質量部に対して、好ましくは0.000001〜5質量部であり、より好ましくは0.00001〜1質量部である。

0073

本発明に用いる歯科用硬化性組成物は、用途に応じた状態(1ペースト状態、2ペースト状態、粉−液状態成型された状態)として製造することができる。なお、化学重合開始剤もしくは化学重合性及び光重合性をあわせ持つ重合開始剤(C)を使用する場合は、有機過酸化物を含む組成物と還元剤を含む組成物が別々に包装された包装形態をとり、使用する直前に両者を混合する必要がある。

0074

本発明の歯科用硬化性組成物の製造方法は、無機充填材(A)を含む懸濁液を加圧して貫通孔を有するノズル部に高速流で圧送し、貫通孔を介して懸濁液同士を高速で衝突させ、得られるエネルギーにより無機充填材(A)を分散させる工程(分散工程)、該無機充填材(A)を表面処理剤により処理する工程(表面処理工程)、並びに、表面処理された無機充填材(A)、重合性単量体(B)及び重合開始剤(C)を混合する工程(混錬工程)を有する。

0075

前記分散工程において、エネルギーを供給するのに適した市販の装置の一例はナノヴェイタ(登録商標)システム型式:L−ES、吉田機械興業株式会社製)であり、数gのラボスケールから数kgの製造スケールまで対応可能である。前記分散工程に用いる分散装置(例えばナノヴェイタ(登録商標)システム)としては、原料である無機充填材(A)の供給部、加圧機構を備える送液部、貫通孔を有するノズル部を備える処理部、及び吐出部を備える。このような装置としては、例えば、図1に記載の装置が挙げられる。図1の装置では、供給部から供給された無機充填材(A)は、加圧機構3を備える送液部で圧力を受けて、ノズル部2を備える処理部に供給され、分散処理を行った後、吐出部に送られる。加圧機構3としては、プランジャポンプ等が挙げられる。ノズル部としては、分散のために発生させるエネルギーが大きいクロス(X型)ノズル、発生させるエネルギーを抑えたストレート型ノズルが使用でき、さらに、特許第2788010号公報、特開平9−201521号公報、特開平9−201522号公報、特開2010−188288号公報(例えば、図2)等に記載されたものも使用できる。具体的に、ストレート型ノズルは、2枚の硬質プレート材にそれぞれ2つの貫通孔を形成するとともに、2枚の硬質のプレート材の対向面に、2つの貫通孔に連通する溝を形成して、2枚の硬質のプレート材を2つの溝がクロスするように重ね合わせた構成である。送液部において圧送された懸濁液が2つの溝を超高速で中央側に向かって流れて衝突して溶媒中の無機充填材(A)を分散させる。前記クロス(X型)ノズルの材質は、単結晶イヤモンド、焼結ダイヤモンド等を使用できる。ストレート型ノズルの材質は、単結晶タイヤモンドを使用できる。例えば、前記クロス(X型)ノズルでは、ある流路から押し込まれた高速流が中央のクロス部分で、90°曲げられ、前記流路に垂直な別の流路に送り込まれる。これにより、中央のクロス部分で起こる、強力な乱流によって起こるせん断応力によって無機充填材(A)が処理される。このような分散装置としては、例えば、特開2003−10663号公報に記載の微粒化装置等が挙げられる。

0076

前記分散工程において、前記ノズル部が有する貫通孔の大きさはφ0.1〜5mmが好ましく、貫通孔の大きさがこの範囲にあることで、均一に分散された無機充填材(A)を得ることができる。このような観点から、貫通孔の大きさはφ0.3〜3mmがより好ましく、φ0.5〜2mmがさらに好ましい。貫通孔の大きさがφ0.1mmよりも小さいと懸濁液を圧送するために必要な圧力が高くなりすぎるため製造効率が低下し、φ5mmよりも大きくなると無機充填材(A)の分散性が低下するリスクがある。

0077

また、送液部において懸濁液を圧送する圧力は60〜300MPaが好ましく、この範囲にあることで、均一に分散され、かつ粒子が破壊されていない無機充填材(A)を得ることができる。このような観点から、懸濁液を圧送する圧力は80〜180MPaがより好ましく、90〜150MPaがさらに好ましい。60MPaよりも小さいと無機充填材(A)の分散性が低下し、300MPaよりも大きくなると粒子が破壊されるリスクがある。例えば、懸濁液を圧送する圧力が200MPaの場合、ノズル部(例えば、クロス(X型)ノズルの中央のクロス部分)の高速流は290m/sとなり、発生する超高速せん断応力を利用して無機充填材(A)の粒子を破壊せずに均一に分散されることができる。前記高速流は180m/s以上が好ましい。また前記高速流は350m/s以下であってもよい。無機充填材(A)の懸濁液に使用する溶媒としては、例えば、メタノールエタノール等のアルコール系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。

0078

前記分散工程により無機充填材(A)を分散させることで、メディアを用いなくとも、凝集及び凝結を実質的に含まず均一に分散され、かつ粒子が破壊されていない無機充填材(A)を得ることができる。メディアとはアルミナやジルコニア材料等の金属材料から構成される分散媒体のことを示し、通常はメディア同士の衝突により無機充填材(A)を分散することができる一方で、メディア同士が衝突することで摩耗が生じメディアを構成する材料が無機充填材(A)に混じりコンタミネーションが発生する恐れがある。本発明の歯科用硬化性組成物の製造方法ではメディアを用いないことが好ましく、コンタミネーションの発生を抑制しつつ無機充填材(A)を適切に分散させることができる。

0079

表面処理工程において、表面処理剤により無機充填材(A)を処理することで、重合性単量体(B)との馴染みが向上して、無機充填材(A)と重合性単量体(B)とがペースト状になりやすくなる。表面処理の方法としては、公知の方法を特に限定されずに用いることができ、例えば、分散された無機充填材(A)を含む溶液(懸濁液)中で表面処理剤のアルコキシ基酸触媒により加水分解してシラノール基へ変換し、該溶液中で無機充填材(A)の表面に付着させた後、溶媒を除去する方法が挙げられる。その後、通常50〜150℃の範囲で加熱することにより、無機充填材(A)の表面と表面処理剤との反応を完結させ、表面処理を行うことができる。

0080

かかる表面処理剤としては、公知の表面処理剤を用いることができ、有機ケイ素化合物有機チタン化合物有機ジルコニウム化合物有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物、及びリン酸基ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基スルホン酸基カルボン酸基等の酸性基を少なくとも1個有する酸性基含有有機化合物を用いることができる。表面処理剤を2種以上使用する場合は、2種以上の表面処理剤の混合物表面処理層としてもよいし、異なる表面処理層を複数積層した複層構造の表面処理層としてもよい。また、表面処理方法としては、特に制限なく公知の方法を用いることができる。

0081

有機ケイ素化合物としては、R1nSiX(4-n)で表される化合物が挙げられる(式中、R1は炭素数1〜12の置換又は無置換の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基ヒドロキシル基ハロゲン原子又は水素原子を示し、nは0〜3の整数であり、但し、R1及びXが複数ある場合にはそれぞれ、同一でも異なっていてもよい)。

0082

具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランフェニルトリメトキシシランジフェニルジメトキシシランメチルトリエトキシシランジメチルジエトキシシランフェニルトリエトキシシランジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランビニルトリエトキシシランビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノールメチルトリクロロシランメチルジクロロシランジメチルジクロロシラントリメチルクロロシランフェニルトリクロロシランジフェニルジクロロシランビニルトリクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ω−(メタ)アクリイルオロキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリイルオロキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12、例、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等〕等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリロイルオキシ」との表記は、メタクリロイルオキシとアクリロイルオキシの両者を包含する意味で用いられる。

0083

この中でも、重合性単量体(B)と共重合し得る官能基を有するシランカップリング剤、例えばω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ω−(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリエトキシシラン〔(メタ)アクリロイルオキシ基とケイ素原子との間の炭素数:3〜12〕、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が好ましく用いられる。

0084

有機チタン化合物としては、例えば、テトラメチルチタネートテトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート等が挙げられる。

0085

有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシドジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。

0086

有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機酸塩キレート化合物等が挙げられる。

0087

リン酸基を含有する酸性基含有有機化合物としては、2−エチルヘキシルアシッドホスフェートステアリルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキシドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシ−(1−ヒドロキシメチル)エチル〕ハイドロジェンホスフェート、及びこれらの酸塩化物アルカリ金属塩アンモニウム塩等が挙げられる。

0088

また、ピロリン酸基、チオリン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、カルボン酸基等の酸性基を有する酸性基含有有機化合物としては、例えば、国際公開第2012/042911号に記載のものを好適に用いることができる。

0089

上記の表面処理剤は、1種単独を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機充填材(A)と重合性単量体(B)との化学結合性を高めて硬化物の機械的強度を向上させるために、重合性単量体(B)と共重合し得る官能基を有する酸性基含有有機化合物を用いることがより好ましい。

0090

表面処理剤の使用量は、特に限定されず、例えば、無機充填材(A)100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましい。

0091

混錬工程において、本発明の効果を奏する限り特に混練する方法は限定されず、公知の方法を採用することができる。混練機は通常の混練機を用いることができる。この際、必要に応じて真空脱泡等の処理を行うこともできる。

0092

かくして本発明により、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れる歯科用硬化性組成物を提供することができる。

0093

本発明で製造される歯科用硬化性組成物は歯科材料として好適に用いることができる。具体的には、歯科医療の分野において、天然歯の一部分又は全体を代替し得る歯科材料(特に歯科用コンポジットレジン)に好適に用いることができる。

0094

以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。

0095

無機充填材(A)
UF2.0:バリウムガラス(平均一次粒子径2.0μm、ショット社製)
NF180:バリウムガラス(平均一次粒子径0.180μm、ショット社製)
YbF3:フッ化イッテルビウム球状充填材(平均一次粒子径0.10μm、Sukgyung社製)
Ox−50:微粒子シリカ(平均一次粒子径0.04μm、日本アエロジル株式会社製)
表面処理剤
γ−MPS:γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
11−MUS:11−メタクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
重合性単量体(B)
D2.6E:2,2−ビス〔4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン(エトキシ基の平均付加モル数2.6)
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
Bis−GMA:2,2−ビス〔4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン
DD:1,10−デカンジオールジメタクリレート
重合開始剤(C)
CQ:カンファーキノン
重合促進剤
JJA:4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エチル
TPP:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド

0096

〔無機充填材の製造例1〕
100質量部のNF180とエタノール300質量部を混合し、得られた懸濁液をナノヴェイタ(登録商標)システム(型式:L−ES、貫通孔の大きさ:φ0.2mm、ノズル:クロス(X型)ノズル、吉田機械興業株式会社製)を用いて懸濁液を圧送する圧力(以下、処理圧力という。)100MPaで分散した。これにγ−MPS7質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材(F1)を得た。

0097

〔無機充填材の製造例2〕
100質量部のUF2.0とエタノール300質量部を混合し、得られた懸濁液をナノヴェイタ(登録商標)システム(型式:L−ES、貫通孔の大きさ:φ0.2mm、ノズル:クロス(X型)ノズル、吉田機械興業株式会社製)を用いて処理圧力100MPaで分散した。これにγ−MPS2質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材(F2)を得た。

0098

〔無機充填材の製造例3〕
80質量部のUF2.0及び20質量部のNF180、エタノール300質量部を混合し、得られた懸濁液をナノヴェイタ(登録商標)システム(型式:L−ES、貫通孔の大きさ:φ0.2mm、ノズル:クロス(X型)ノズル、吉田機械興業株式会社製)を用いて処理圧力100MPaで分散した。これにγ−MPS2.25質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材(F3)を得た。

0099

〔無機充填材の製造例4〕
85質量部のOx−50及び15質量部のYbF3、とエタノール300質量部を混合し、得られた懸濁液をナノヴェイタ(登録商標)システム(型式:L−ES、貫通孔の大きさ:φ0.2mm、ノズル:クロス(X型)ノズル、吉田機械興業株式会社製)を用いて処理圧力100MPaで分散した。これにγ−MPS7質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材(F4)を得た。

0100

〔無機充填材の製造例5〕
100質量部のNF180とエタノール300質量部を混合し、得られた懸濁液をナノヴェイタ(登録商標)システム(型式:L−ES、貫通孔の大きさ:φ0.2mm、ノズル:クロス(X型)ノズル、吉田機械興業株式会社製)を用いて処理圧力100MPaで分散した。これに11−MUS11質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材(F5)を得た。
〔無機充填材の製造例6〕
100質量部のNF180とエタノール300質量部を混合し、得られた懸濁液を超音波発振器によって、出力720W及び周波数40kHzの条件で60分間超音波分散した。これにγ−MPS7質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材(F6)を得た。

0101

〔無機充填材の製造例7〕
100質量部のNF180とエタノール300質量部を混合し、得られた懸濁液を大量循環型ビーズミル、及びメディアとしてφ3mmのジルコニアボールを用いて分散させた。これにγ−MPS7質量部、酢酸0.15質量部及び水5質量部を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、さらに90℃で3時間乾燥することによって、表面処理剤で表面処理された無機充填材(F7)を得た。

0102

各無機充填材の製造例を下記表1に示す。

0103

0104

〔重合性単量体含有組成物の製造例1〕
70質量部のD2.6E及び30質量部の3Gに、光重合開始剤としてCQを0.2質量部、重合促進剤としてJJAを0.3質量部、TPPを0.25質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M1)を調製した。

0105

〔重合性単量体含有組成物の製造例2〕
70質量部のBis−GMA及び30質量部の3Gに、光重合開始剤としてCQを0.2質量部、重合促進剤としてJJAを0.3質量部、TPPを0.25質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M2)を調製した。

0106

〔重合性単量体含有組成物の製造例3〕
70質量部のD2.6E及び30質量部のDDに、光重合開始剤としてCQを0.2質量部、重合促進剤としてJJAを0.3質量部、TPPを0.25質量部溶解させて、重合性単量体含有組成物(M3)を調製した。

0107

各重合性単量体含有組成物の製造例を下記表2に示す。

0108

0109

実施例1〜7、比較例1、2
表1及び2に記載の無機充填材及び重合性単量体含有組成物を混合練和して均一にしたものを真空脱泡し、表3に示す実施例1〜7及び比較例1、2のペースト状の歯科用硬化性組成物を製造した。調製した歯科用硬化性組成物について以下の特性評価試験を実施した。結果を表3に示す。

0110

試験例1〔凝集体及び凝結体の面積割合〕
製造した各実施例及び比較例の歯科用硬化性組成物を真空脱泡後、テフロン型(直径10mm、厚み2.0mm)に充填した。上下面をスライドガラス圧接し、上側からのみ歯科用可視光線照射器ペンキアー2000、株式会社モリタ製)で、10秒間光照射して硬化させて、試験片とした。テフロン型から試験片を取り出し、綺麗な平滑面を#1000研磨紙、#2000研磨紙、#3000研磨紙、ラッピングフィルムの順に乾燥条件下で研磨した。これを走査電子顕微鏡(SEM;株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU3500H−800NA型」)を用いて300倍で撮影した。得られたSEM画像から、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製「Macview」)を用いて凝集体及び凝結体の合計面積及び全体の面積を求め、以下の式(I)により凝集体及び凝結体の面積割合を算出した。なお、凝集体及び凝結体の面積割合が5%以下の場合、無機充填材の分散性は良好と判断し、2%以下でさらに良好である。
凝集体及び凝結体の面積割合(%)=(凝集体及び凝結体の合計面積/全体の面積)×100 ・・・式(I)

0111

試験例2〔稠度維持率〕
製造した各実施例及び比較例の歯科用硬化性組成物を25℃の恒温室湿度50%)に1日間静置した後、ガラス板上に該歯科用硬化性組成物を0.5mL計量した。その上に40gのガラス板(5cm×5cm)を載せ、120秒経過後のサンプルの長径と短径をガラス板越しに測定し、その両者の算術平均を算出し、これを初期稠度(mm)とした。50℃の恒温器(湿度50%)に1ヶ月(30日)間静置した後、25℃の恒温室(湿度50%)に1日間静置した各実施例及び比較例の歯科用硬化性組成物に関して、上記の方法で稠度を測定し、これを50℃1ヶ月保存後における稠度(mm)とした。得られた各稠度の値から、式(II)に従い稠度維持率(%)を算出することで、歯科用硬化性組成物の稠度安定性を評価した。なお、稠度維持率が85%以上の場合、稠度安定性は良好と判断し、稠度維持率90%以上はさらに良好である。
稠度維持率(%)=(50℃1ヶ月保存後における稠度/初期稠度)×100・・・式(II)

0112

試験例3〔ペーストの操作性〕
製造した各実施例及び比較例の歯科用硬化性組成物(ペースト)を真空脱泡後、シリンジに1.5mL充填し、シリンジの先端部にニードルチップを装着し、シリンジの他端にプランジャを装着した。ガラス板をシリンジの下に置き、ニードルの先端を下向きにしたまま、ニードルの先端がガラス板より1〜2cm上方になるようにシリンジを配置し、プランジャを押してペーストを吐出した。ペーストを吐出した後、ニードル先端部を上方に引き上げた際の、ガラス板上のペーストとニードル先端部に付着したペーストの状態を目視で確認し、以下の評価基準に従って、ペーストの操作性を評価した。
1:ペーストがニードルの先端部から直ぐに離れ、ガラス板上のペーストも半球状を形成する
2:ペーストがニードルの先端部に1cm程ついた後離れ、ガラス板上のペーストが若干角を形成する
3:ペーストがニードルの先端部に2〜3cmついた後離れ、ガラス板上のペーストが角を形成する
4:ペーストがニードルの先端部に4cm以上ついた後離れ、ガラス板上のペーストが角を形成する

0113

試験例4〔曲げ試験
製造した各実施例及び比較例の歯科用硬化性組成物を真空脱泡後、ステンレス製金型(寸法2mm×2mm×25mm)に充填し、上下をスライドガラスで圧接し、歯科用可視光線照射器(ペンキュアー2000、株式会社モリタ製)で1点10秒、片面を5点ずつ、両面に光を照射して硬化させた。各実施例及び比較例について、硬化物を5本ずつ作製した。硬化物を金型から取り出した後、37℃の蒸留水中に24時間保管したものを試験片とした。万能試験機(株式会社島津製作所製、商品コード「AG−I 100」)を用いて、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分の条件下で硬化物の試験片の曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定し、各試験片の測定値平均値を算出し、曲げ強さ及び曲げ弾性率とした。曲げ強さは150MPa以上を良好と判断し、180MPa以上はさらに良好である。また、曲げ弾性率は8GPa以上を良好と判断し、10GPa以上はさらに良好である。機械的強度としては、前記曲げ強さ及び曲げ弾性率の両方の基準を満たすものを合格とした。

0114

試験例5〔研磨性〕
製造した各実施例及び比較例の歯科用硬化性組成物を真空脱泡後、テフロン型(直径10mm、厚み2.0mm)に充填した。上下面をスライドガラスで圧接し、上側からのみ歯科用可視光線照射器(ペンキュアー2000、株式会社モリタ製)で、10秒間光照射して硬化させて、試験片とした。テフロン型から試験片を取り出し、綺麗な平滑面を#600研磨紙にて乾燥条件下で研磨した。さらに、技工エンジンとしてVolvereRX(株式会社ナカニシ製)を使用し、注水条件下、シリコンポイント色(株式会社松風製)を用いて回転速度約5000rpmで10秒間研磨し、続けてシリコンポイント青色(株式会社松風製)を用いて回転速度約5000rpmで10秒間研磨した。この研磨面の光沢を、光沢度計(日本電色工業株式会社製、VG 2000)を用い、鏡を100%としたときの割合で示した。測定の角度は60°とした。光沢度70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。

0115

0116

実施例1〜7において得られたペーストの操作性は全て良好であり、稠度維持率も88%以上であった。さらにその硬化物において凝集及び凝結を実質的に含んでおらず、機械的強度に優れることがわかった。これに対して、比較例1で得られたペーストの硬化物を観察すると多数の凝集が確認され、分散性に劣っており、高い稠度安定性は得られなかった。また、それに伴いペーストの操作性、機械的強度、研磨性が低かった。また、比較例2で得られたペーストは凝集及び凝結がなく無機充填材の分散性は良好であったが、稠度の変化が著しく、稠度安定性に劣っていた。さらに、比較例2では分散工程において無機充填材の粒子が破壊され表面積が大きくなり、表面処理剤の量が不足したためか、機械的強度や研磨性が低かった。

実施例

0117

以上の結果より、本発明の歯科用硬化性組成物は、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れることがわかった。

0118

本発明の歯科用硬化性組成物は、高い機械的強度及び審美性を有し、ペーストの操作性及び稠度安定性に優れる。すなわち取り扱いに優れ、天然歯と置換可能な十分な機械的強度を有しており、歯の欠損部や齲蝕を修復するための材料として好適に用いられる。

0119

1無機充填材(A)
2ノズル部
3 加圧機構

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