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技術 歯科材料用組成物、歯科材料、および該歯科材料に使用される微細繊維状セルロース

出願人 王子ホールディングス株式会社学校法人大阪歯科大学
発明者 山中実央山根教郎有田憲司篠永ゆかり
出願日 2018年8月23日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2018-156360
公開日 2020年2月27日 (10ヶ月経過) 公開番号 2020-029423
状態 未査定
技術分野 歯科用製剤
主要キーワード さく軸 コロダイルシリカ 湿式微粒化装置 コロイダルシリカ量 接触強度 裏層材 恒温庫 平均繊維幅
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

フッ化物イオン溶出能を減じることなく、または向上させつつ、曲げ強度等の機械的強度に優れた歯科材料が得られる歯科材料用組成物および該歯科材料用組成物から得られる歯科材料を提供すること。さらに、前記歯科材料に使用される、微細繊維状セルロースを提供すること。

解決手段

繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、グラスアイオノマーセメントとを含有する、歯科材料用組成物。

概要

背景

グラスアイオノマーセメントは、歯冠色で生体親和性に優れ、無処理での安定した歯質接着性フッ化物イオン溶出能を有し、齲蝕による欠損が生じた歯牙に対し、修復物充填する歯科治療に広く使用されている。
特許文献1には、従来のグラスアイオノマーセメントと同様の操作性を持ちながら、硬化後のセメント混合物物理的強度、とくに圧縮強度が高い歯科用グラスアイオノマーセメントを得ることができる歯科用グラスアイオノマー液を提供することを目的として、30〜60質量%のα−β不飽和カルボン酸重合体と、コロイダルシリカ量として0.1〜10質量%の、平均粒子径が1〜100nmのコロイダルシリカがSiO2濃度1〜50質量%に水に対して単分散状態となっているシリカ水性ゾルと、残部である40〜70質量%の水とからなる歯科用グラスアイオノマーセメント液が開示されている。

概要

フッ化物イオン溶出能を減じることなく、または向上させつつ、曲げ強度等の機械的強度に優れた歯科材料が得られる歯科材料用組成物および該歯科材料用組成物から得られる歯科材料を提供すること。さらに、前記歯科材料に使用される、微細繊維状セルロースを提供すること。繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、グラスアイオノマーセメントとを含有する、歯科材料用組成物。なし

目的

特許文献1には、従来のグラスアイオノマーセメントと同様の操作性を持ちながら、硬化後のセメント混合物の物理的強度、とくに圧縮強度が高い歯科用グラスアイオノマーセメントを得ることができる歯科用グラスアイオノマー液を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

請求項2

請求項1に記載の歯科材料用組成物を硬化してなる、歯科材料

請求項3

フッ化物イオン溶出量が、50μg/cm2/週以上500μg/cm2/週以下である、請求項2に記載の歯科材料。

請求項4

3点曲げ強さが7MPa以上150MPa以下である、請求項2または3に記載の歯科材料。

請求項5

圧縮強さが60MPa以上500MPa以下である、請求項2〜4のいずれかに記載の歯科材料。

請求項6

微細繊維状セルロースの含有量が、歯科材料の全固形分質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下である、請求項2〜5のいずれかに記載の歯科材料。

請求項7

微細繊維状セルロースの軸比が、20以上10,000以下である、請求項2〜6のいずれかに記載の歯科材料。

請求項8

微細繊維状セルロースが、イオン性置換基を有する、請求項2〜7のいずれかに記載の歯科材料。

請求項9

グラスアイオノマーセメントと混合して歯科材料を作製するために使用される、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロース。

技術分野

0001

本発明は、歯科材料用組成物歯科材料および該歯科材料に使用される微細繊維状セルロースに関する。

背景技術

0002

グラスアイオノマーセメントは、歯冠色で生体親和性に優れ、無処理での安定した歯質接着性フッ化物イオン溶出能を有し、齲蝕による欠損が生じた歯牙に対し、修復物充填する歯科治療に広く使用されている。
特許文献1には、従来のグラスアイオノマーセメントと同様の操作性を持ちながら、硬化後のセメント混合物物理的強度、とくに圧縮強度が高い歯科用グラスアイオノマーセメントを得ることができる歯科用グラスアイオノマー液を提供することを目的として、30〜60質量%のα−β不飽和カルボン酸重合体と、コロイダルシリカ量として0.1〜10質量%の、平均粒子径が1〜100nmのコロイダルシリカがSiO2濃度1〜50質量%に水に対して単分散状態となっているシリカ水性ゾルと、残部である40〜70質量%の水とからなる歯科用グラスアイオノマーセメント液が開示されている。

先行技術

0003

特開2007−091689号公報

発明が解決しようとする課題

0004

グラスアイオノマーセメントとして広く使用されているものは、ポリカルボン酸フルオロアルミノシリケートガラス粉末、および水を主成分としたものであり、従来型グラスアイオノマーセメントと呼ばれている。従来型グラスアイオノマーセメントは、曲げ強度を始めとした機械的強度が十分ではないという問題がある。
また、特許文献1に記載された発明では、コロダイルシリカの増粘効果が強すぎるために、配合した際に均一な液を得ることが困難であるという問題がある。

0005

本発明は、フッ化物イオン溶出能を減じることなく、または向上させつつ、曲げ強度等の機械的強度に優れた歯科材料が得られる歯科材料用組成物および該歯科材料用組成物から得られる歯科材料を提供することを目的とする。さらに本発明は、前記歯科材料に使用される、微細繊維状セルロースを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者等は、微細繊維状セルロースと、グラスアイオノマーセメントを含有する歯科材料により、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>〜<9>に関する。
<1>繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、グラスアイオノマーセメントとを含有する、歯科材料用組成物。
<2> <1>に記載の歯科材料用組成物を硬化してなる、歯科材料。
<3>フッ化物イオンの溶出量が、50μg/cm2/週以上500μg/cm2/週以下である、<2>に記載の歯科材料。
<4> 3点曲げ強さが7MPa以上150MPa以下である、<2>または<3>に記載の歯科材料。
<5>圧縮強さが60MPa以上500MPa以下である、<2>〜<4>のいずれかに記載の歯科材料。
<6> 微細繊維状セルロースの含有量が、歯科材料の全固形分質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下である、<2>〜<5>のいずれかに記載の歯科材料。
<7> 微細繊維状セルロースの軸比が、20以上10,000以下である、<2>〜<6>のいずれかに記載の歯科材料。
<8> 微細繊維状セルロースが、イオン性基を有する、<2>〜<7>のいずれかに記載の歯科材料。
<9> グラスアイオノマーセメントと混合して歯科材料を作製するために使用される、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロース。

発明の効果

0007

本発明によれば、フッ化物イオン溶出能を減じることなく、または向上させつつ、曲げ強度等の機械的強度に優れた歯科材料が得られる歯科材料用組成物を提供することができた。さらに本発明によれば、前記歯科材料に使用される、微細繊維状セルロースを提供することができた。

図面の簡単な説明

0008

図1は、リン酸基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度との関係を示すグラフである。
図2は、カルボキシ基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度との関係を示すグラフである。
図3は、実施例および比較例における3点曲げ試験の結果を示すグラフである。
図4は、実施例および比較例における圧縮試験の結果を示すグラフである。
図5は、実施例および比較例におけるフッ化物イオン溶出量の測定結果を示すグラフである。

0009

[歯科材料用組成物]
本発明の歯科材料用組成物は、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースと、グラスアイオノマーセメントとを含有する。
従来のグラスアイオノマーセメントを含有する歯科材料用組成物から得られた歯科材料では、その機械的強度が十分ではなく、更なる機械的強度の向上が望まれていた。とくに、曲げ強度が十分ではなく、曲げ強度の向上が望まれていた。
一方で、一般には、機械的強度を向上させると、フッ化物イオン溶出量が低下する傾向にある。したがって、フッ化物イオン溶出量を減じることなく、または向上させつつ、機械的強度が向上した歯科材料が得られる歯科材料用組成物が求められていた。
本発明者らは、鋭意検討した結果、グラスアイオノマーセメントと、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースとを含有する歯科材料用組成物を採用することにより、フッ化物溶出量を減じることなく、または向上させつつ、機械的強度、とくに曲げ強度の向上した歯科材料が得られることを見出した。上記の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。
すなわち、微細繊維状セルロースが、歯科材料中でフィラーとして機能することで、曲げ強度などの機械的強度が向上したものと考えられる。また、微細繊維状セルロースは、繊維幅がナノメートルオーダーであるにも関わらず、歯科材料用組成物中での分散性に優れることから、フィラートして有効に機能したものと推定される。
なお、微細繊維状セルロースを配合した歯科材料において、フッ化物イオン溶出量の低下が生じかなった理由は不明であるが、驚くべきことに、本発明の歯科材料は、微細繊維状セルロースを含有しない歯科材料に比べて、フッ化物イオンの溶出量が減少せず、または増加するものであった。

0010

本発明において、「歯科材料用組成物」とは、繊維幅が1,000nm以下の微細繊維状セルロースおよびグラスアイオノマーセメントとを含有する、硬化前の歯科材料用の組成物を意味する。一方、「歯科材料」は、前記歯科用組成物が硬化して形成されたものである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。

0011

<微細繊維状セルロース>
本発明の歯科材料用組成物および歯科材料は、微細繊維状セルロースを含有し、該微細繊維状セルロースは、繊維幅が1,000nm以下の繊維状セルロースである。なお、繊維状セルロースの繊維幅は、たとえば電子顕微鏡観察などにより測定することが可能である。

0012

微細繊維状セルロースの繊維幅は、100nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、8nm以下であることがさらに好ましい。また、繊維幅は2nm以上であることが好ましい。
微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば1000nm以下である。微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば2nm以上1000nm以下であることが好ましく、2nm以上100nm以下であることがより好ましく、2nm以上50nm以下であることがさらに好ましく、2nm以上10nm以下であることがとくに好ましい。微細繊維状セルロースの平均繊維幅を2nm以上とすることにより、セルロース分子として水に溶解することを抑制し、微細繊維状セルロースによる強度や剛性、寸法安定性の向上という効果をより発現しやすくすることができる。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば単繊維状セルロースである。

0013

繊維状セルロースの平均繊維幅は、たとえば電子顕微鏡を用いて以下のようにして測定される。まず、濃度0.05質量%以上0.1質量%以下の繊維状セルロースの水系懸濁液を調製し、この懸濁液を親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察試料とする。幅の広い繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。次いで、観察対象となる繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を目視で読み取る。このようにして、少なくとも互いに重なっていない表面部分の観察画像を3組以上得る。次いで、各画像に対して、直線X、直線Yと交差する繊維の幅を読み取る。これにより、少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。そして、読み取った繊維幅の平均値を、繊維状セルロースの平均繊維幅とする。

0014

微細繊維状セルロースの繊維長は、とくに限定されないが、たとえば0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.1μm以上800μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上600μm以下であることがさらに好ましい。繊維長を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの結晶領域破壊を抑制できる。また、微細繊維状セルロースのスラリー粘度を適切な範囲とすることも可能となる。なお、微細繊維状セルロースの繊維長は、たとえばTEM、SEMAFMによる画像解析より求めることができる。

0015

微細繊維状セルロースはI型結晶構造を有していることが好ましい。ここで、微細繊維状セルロースがI型結晶構造を有することは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて同定できる。具体的には、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
微細繊維状セルロースに占めるI型結晶構造の割合は、たとえば30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。これにより、耐熱性低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求められる(Seagalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。

0016

微細繊維状セルロースの軸比(繊維長/繊維幅)は、とくに限定されないが、たとえば20以上10,000以下であることが好ましく、50以上1,000以下であることがより好ましく、100以上1,000以下であることがさらに好ましい。軸比を上記下限値以上とすることにより、歯科材料の機械的強度の向上効果により優れる点で好ましい。軸比を上記上限値以下とすることにより、たとえば微細繊維状セルロースを水分散液として扱う際に、希釈等のハンドリングがしやすくなる点で好ましい。

0017

本発明の歯科材料用組成物および後述する本発明の歯科材料において、微細繊維状セルロースの含有量は、全固形分質量に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。微細繊維状セルロースの含有量が上記範囲内であると、歯科材料において、フッ化物イオンの溶出量を減じることなく、機械的強度を向上させることができる点で好ましい。
微細繊維状セルロースの含有量は、歯科材料用組成物の全固形分質量に対して、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、よりさらに好ましくは3.0質量%以上である。また、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下である。

0018

本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえば結晶領域と非結晶領域をともに有している。とくに、結晶領域と非結晶領域をともに有し、かつ軸比が高い微細繊維状セルロースは、後述する微細繊維状セルロースの製造方法により実現されるものである。

0019

本実施形態における微細繊維状セルロースは、たとえばイオン性置換基および非イオン性置換基のうちの少なくとも1種を有する。分散媒中における繊維の分散性を向上させ、解繊処理における解繊効率を高める観点からは、微細繊維状セルロースがイオン性置換基を有することがより好ましい。イオン性置換基としては、たとえばアニオン性基およびカチオン性基のいずれか一方または双方を含むことができる。また、非イオン性置換基としては、たとえばアルキル基およびアシル基などを含むことができる。本実施形態においては、イオン性置換基としてアニオン性基を有することがとくに好ましい。
なお、微細繊維状セルロースには、イオン性置換基を導入する処理が行われていなくてもよい。

0020

イオン性置換基としてのアニオン性基としては、たとえばリン酸基またはリン酸基に由来する置換基(単にリン酸基ということもある)、カルボキシ基またはカルボキシ基に由来する置換基(単にカルボキシ基ということもある)、およびスルホン基またはスルホン基に由来する置換基(単にスルホン基ということもある)から選択される少なくとも1種であることが好ましく、リン酸基およびカルボキシ基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、リン酸基であることがとくに好ましい。

0021

リン酸基またはリン酸基に由来する置換基は、たとえば下記式(1)で表される置換基であり、リンオキソ酸基またはリンオキソ酸に由来する置換基として一般化される。

0022

0023

式(1)中、a、bおよびnは自然数である(ただし、a=b×mである)。α1,α2,・・・,αnおよびα’のうちa個がO−であり、残りはR,ORのいずれかである。なお、各αnおよびα’の全てがO−であっても構わない。Rは、各々、水素原子飽和直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、不飽和−環状炭化水素基、芳香族基、またはこれらの誘導基である。

0024

飽和−直鎖状炭化水素基としては、メチル基エチル基、n−プロピル基、またはn−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロピル基、またはt−ブチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、またはシクロヘキシル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−直鎖状炭化水素基としては、ビニル基、またはアリル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−分岐鎖状炭化水素基としては、i−プロペニル基、または3−ブテニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。不飽和−環状炭化水素基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられるが、とくに限定されない。芳香族基としては、フェニル基、またはナフチル基等が挙げられるが、とくに限定されない。

0025

また、Rにおける誘導基としては、上記各種炭化水素基の主鎖または側鎖に対し、カルボキシ基、ヒドロキシ基、またはアミノ基などの官能基のうち、少なくとも1種類が付加または置換した状態の官能基が挙げられるが、とくに限定されない。
また、Rの主鎖を構成する炭素原子数はとくに限定されないが、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。Rの主鎖を構成する炭素原子数を上記範囲とすることにより、リン酸基の分子量を適切な範囲とすることができ、繊維原料への浸透を容易にし、微細セルロース繊維収率を高めることもできる。

0026

βb+は有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、または芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウムカリウム、もしくはリチウム等のアルカリ金属イオンや、カルシウム、もしくはマグネシウム等の2価金属の陽イオン、または水素イオン等が挙げられるが、とくに限定されない。これらは1種または2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、またはカリウムのイオンが好ましいが、とくに限定されない。

0027

なお、リン酸基は、たとえばリン酸からヒドロキシ基を取り除いたものにあたる、2価の官能基である。具体的には−PO3H2で表される基である。リン酸基に由来する置換基には、リン酸基の塩、リン酸エステル基などの置換基が含まれる。なお、リン酸基に由来する置換基は、リン酸基が縮合した基(たとえばピロリン酸基)として微細繊維状セルロースに含まれていてもよい。
また、リン酸基は、たとえば、亜リン酸基ホスホン酸基)であってもよく、リン酸基に由来する置換基は、亜リン酸基の塩、亜リン酸エステル基などであってもよい。

0028

微細繊維状セルロースに対するイオン性置換基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、微細繊維状セルロースに対するイオン性置換基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり3.65mmol/g以下であることが好ましく、3.50mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。イオン性置換基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易とすることができ、微細繊維状セルロースの安定性を高めることが可能となる。また、イオン性置換基の導入量を上記範囲内とすることにより、歯科材料中での分散性の向上にも寄与しているものと推定される。
ここで、単位mmol/gにおける分母は、イオン性置換基の対イオンが水素イオン(H+)であるときの繊維状セルロースの質量を示す。
微細繊維状セルロースに対するイオン性置換基の導入量は、たとえば伝導度滴定法により測定することができる。伝導度滴定法による測定では、得られた微細繊維状セルロースを含有するスラリーに、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを加えながら伝導度の変化を求めることにより、導入量を測定する。

0029

図1は、リン酸基を有する微細繊維状セルロースに対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
微細繊維状セルロースに対するリン酸基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を観察し、図1に示すような滴定曲線を得る。図1に示すように、最初は急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。このように、滴定曲線には、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致する。このため、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。したがって、上記で得られた滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、リン酸基導入量(mmol/g)となる。

0030

なお、上述のリン酸基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の微細繊維状セルロースの質量を示すことから、酸型の微細繊維状セルロースが有するリン酸基量(以降、リン酸基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、リン酸基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの微細繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである微細繊維状セルロースが有するリン酸基量(以降、リン酸基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
リン酸基量(C型)=リン酸基量(酸型)/{1+(W−1)×A/1000}
A[mmol/g]:繊維状セルロースが有するリン酸基由来の総アニオン量(リン酸基の強酸性基量と弱酸性基量を足した値)
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)

0031

図2は、カルボキシ基を有する微細繊維状セルロースに対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
微細繊維状セルロースに対するカルボキシ基の導入量は、たとえば次のように測定される。
まず、微細繊維状セルロースを含有するスラリーを強酸性イオン交換樹脂で処理する。なお、必要に応じて、強酸性イオン交換樹脂による処理の前に、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を加えながら電気伝導度の変化を観察し、図2に示すような滴定曲線を得る。なお、必要に応じて、後述の解繊処理工程と同様の解繊処理を測定対象に対して実施してもよい。滴定曲線は、図2に示すように、電気伝導度が減少した後、伝導度の増分(傾き)がほぼ一定となるまでの第1領域と、その後に伝導度の増分(傾き)が増加する第2領域に区分される。なお、第1領域、第2領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。そして、滴定曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象の微細繊維状セルロース含有スラリー中の固形分(g)で除して得られる値が、カルボキシ基の導入量(mmol/g)となる。

0032

なお、上述のカルボキシ基導入量(mmol/g)は、分母が酸型の微細繊維状セルロースの質量であることから、酸型の微細繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(酸型)と呼ぶ)を示している。一方で、カルボキシ基の対イオンが電荷当量となるように任意の陽イオンCに置換されている場合は、分母を当該陽イオンCが対イオンであるときの微細繊維状セルロースの質量に変換することで、陽イオンCが対イオンである繊維状セルロースが有するカルボキシ基量(以降、カルボキシ基量(C型))を求めることができる。
すなわち、下記計算式によって算出する。
カルボキシ基量(C型)=カルボキシ基量(酸型)/{1+(W−1)×(カルボキシ基量(酸型))/1000}
W:陽イオンCの1価あたりの式量(たとえば、Naは23、Alは9)

0033

<微細繊維状セルロースの製造方法>
(セルロースを含む繊維原料)
微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料(以下、単に「繊維原料」ともいう。)から製造される。
セルロースを含む繊維原料としては、とくに限定されないが、入手しやすく安価である点からパルプを用いることが好ましい。パルプとしては、たとえば木材パルプ非木材パルプ、および脱墨パルプが挙げられる。木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプDP)、ソーダパルプAP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)および酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプセミケミカルパルプSCP)およびケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)およびサーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、とくに限定されないが、たとえばコットンリンターおよびコットンリント等の綿系パルプ、麦わらおよびバガス等の非木材系パルプが挙げられる。脱墨パルプとしては、とくに限定されないが、たとえば古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。本実施態様のパルプは上記の1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
上記パルプの中でも、入手のしやすさという観点からは、たとえば木材パルプおよび脱墨パルプが好ましい。また、木材パルプの中でも、セルロース比率が大きく解繊処理時の微細繊維状セルロースの収率が高い観点や、パルプ中のセルロースの分解が小さく軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる観点から、たとえば化学パルプがより好ましく、クラフトパルプ、サルファイトパルプがさらに好ましい。なお、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを用いると粘度が高くなる傾向がある。

0034

セルロースを含む繊維原料としては、たとえばホヤ類に含まれるセルロースや、酢酸菌が生成するバクテリアセルロースを利用することもできる。
また、セルロースを含む繊維原料に代えて、その一部として、キチンキトサンなどの直鎖型含窒素多糖高分子が形成する繊維を用いることもできる。

0035

上述のようなイオン性置換基を導入した微細繊維状セルロースを得るためには、上述したセルロースを含む繊維原料にイオン性置換基を導入するイオン性置換基導入工程、洗浄工程、アルカリ処理工程(中和工程)、解繊処理工程をこの順で有することが好ましく、洗浄工程の代わりに、または洗浄工程に加えて、酸処理工程を有していてもよい。イオン性置換基導入工程としては、リン酸基導入工程およびカルボキシ基導入工程が例示される。以下、それぞれについて説明する。

0036

(イオン性置換基導入工程)
〔リン酸基導入工程〕
セルロース繊維にリン酸基を導入する工程(リン酸基導入工程)について以下に説明する。
リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料が有する水酸基と反応することで、リン酸基を導入できる化合物から選択される少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」ともいう)をセルロースを含む繊維原料に作用させる工程である。この工程により、リン酸基導入繊維が得られることとなる。

0037

本実施形態に係るリン酸基導入工程では、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を、尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」ともいう)の存在下で行ってもよい。一方で、化合物Bが存在しない状態において、セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応を行ってもよい。

0038

化合物Aを化合物Bとの共存下で繊維原料に作用させる方法の一例としては、乾燥状態または湿潤状態またはスラリー状の繊維原料に対して、化合物Aと化合物Bを混合する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料を用いることが好ましく、とくに乾燥状態の繊維原料を用いることが好ましい。繊維原料の形態は、とくに限定されないが、たとえば綿状や薄いシート状であることが好ましい。
化合物Aおよび化合物Bは、それぞれ粉末状または溶媒に溶解させた溶液状または融点以上まで加熱して溶融させた状態で繊維原料に添加する方法が挙げられる。これらのうち、反応の均一性が高いことから、溶媒に溶解させた溶液状、とくに水溶液の状態で添加することが好ましい。また、化合物Aと化合物Bは繊維原料に対して同時に添加してもよく、別々に添加してもよく、混合物として添加してもよい。化合物Aと化合物Bの添加方法としては、とくに限定されないが、化合物Aと化合物Bが溶液状の場合は、繊維原料を溶液内に浸漬し吸液させたのちに取り出してもよいし、繊維原料に溶液を滴下してもよい。また、必要量の化合物Aと化合物Bを繊維原料に添加してもよいし、過剰量の化合物Aと化合物Bをそれぞれ繊維原料に添加した後に、圧搾濾過によって余剰の化合物Aと化合物Bを除去してもよい。

0039

本実施態様で使用する化合物Aとしては、リン酸もしくはその塩、脱水縮合リン酸もしくはその塩、無水リン酸五酸化二リン)などが挙げられるが、とくに限定されない。リン酸としては、種々の純度のものを使用することができ、たとえば100%リン酸(正リン酸)や85%リン酸を使用することができる。脱水縮合リン酸は、リン酸が脱水反応により2分子以上縮合したものであり、たとえばピロリン酸、ポリリン酸等を挙げることができる。リン酸塩、脱水縮合リン酸塩としては、リン酸または脱水縮合リン酸のリチウム塩ナトリウム塩カリウム塩アンモニウム塩などが挙げられ、これらは種々の中和度とすることができる。
これらのうち、リン酸基の導入の効率が高く、後述する解繊工程で解繊効率がより向上しやすく、低コストであり、かつ工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、またはリン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸、リン酸二水素ナトリウムリン酸水素二ナトリウム、またはリン酸二水素アンモニウムがより好ましい。

0040

繊維原料に対する化合物Aの添加量は、とくに限定されないが、たとえば化合物Aの添加量をリン原子量に換算した場合において、繊維原料(絶対乾燥質量、以下、「絶乾質量」ともいう。)に対するリン原子の添加量が0.5質量%以上100質量%以下となることが好ましく、1質量%以上50質量%以下となることがより好ましく、2質量%以上30質量%以下となることがさらに好ましい。繊維原料に対するリン原子の添加量を上記範囲内とすることにより、微細繊維状セルロースの収率をより向上させることができる。一方で、繊維原料に対するリン原子の添加量を上記上限値以下とすることにより、収率向上の効果とコストのバランスをとることができる。ここで、「絶対乾燥質量(絶乾質量)」は、ISO 638:2008に記載の方法で測定され、恒量に達した絶乾状態の質量のことである。

0041

本実施態様で使用する化合物Bは、上述のとおり尿素およびその誘導体から選択される少なくとも1種である。化合物Bとしては、たとえば尿素、ビウレット、1−フェニル尿素、1−ベンジル尿素、1−メチル尿素、および1−エチル尿素などが挙げられる。
反応の均一性を向上させる観点から、化合物Bは水溶液として用いることが好ましい。また、反応の均一性をさらに向上させる観点からは、化合物Aと化合物Bの両方が溶解した水溶液を用いることが好ましい。
繊維原料(絶乾質量)に対する化合物Bの添加量は、とくに限定されないが、たとえば1質量%以上500質量%以下であることが好ましく、10質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上350質量%以下であることがさらに好ましい。

0042

セルロースを含む繊維原料と化合物Aの反応においては、化合物Bの他に、たとえばアミド類またはアミン類を反応系に含んでもよい。アミド類としては、たとえばホルムアミドジメチルホルムアミドアセトアミドジメチルアセトアミドなどが挙げられる。アミン類としては、たとえばメチルアミンエチルアミントリメチルアミントリエチルアミンモノエタノールアミンジエタノールアミントリエタノールアミンピリジンエチレンジアミンヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。これらの中でも、とくにトリエチルアミンは良好な反応触媒として働くことが知られている。

0043

リン酸基導入工程においては、繊維原料に化合物A等を添加または混合した後、当該繊維原料に対して加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度としては、繊維の熱分解加水分解反応を抑えながら、リン酸基を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。加熱処理温度は、たとえば50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理には、種々の熱媒体を有する機器を利用することができ、たとえば撹拌乾燥装置、回転乾燥装置円盤乾燥装置ロール型加熱装置プレート型加熱装置、流動層乾燥装置気流乾燥装置減圧乾燥装置赤外線加熱装置遠赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いることができる。

0044

本実施形態に係る加熱処理においては、たとえば薄いシート状の繊維原料に化合物Aを含浸等の方法により添加した後、加熱する方法や、ニーダー等で繊維原料と化合物Aを混練または撹拌しながら加熱する方法を採用することができる。これにより、繊維原料における化合物Aの濃度ムラを抑制して、繊維原料に含まれるセルロース繊維表面へより均一にリン酸基を導入することが可能となる。これは、乾燥に伴い水分子が繊維原料表面に移動する際、溶存する化合物Aが表面張力によって水分子に引き付けられ、同様に繊維原料表面に移動してしまう(すなわち、化合物Aの濃度ムラを生じてしまう)ことを抑制できることに起因するものと考えられる。
また、加熱処理に用いる加熱装置は、たとえばスラリーが保持する水分および化合物Aと繊維原料中のセルロース等が含む水酸基等との脱水縮合(リン酸エステル化)反応に伴って生じる水分を常に装置系外に排出できる装置であることが好ましい。このような加熱装置としては、たとえば送風方式のオーブン等が挙げられる。装置系内の水分を常に排出することにより、リン酸エステル化の逆反応であるリン酸エステル結合の加水分解反応を抑制できることに加えて、繊維中の糖鎖酸加水分解を抑制することもできる。このため、軸比の高い微細繊維状セルロースを得ることが可能となる。

0045

加熱処理の時間は、たとえば繊維原料から実質的に水分が除かれてから1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。本実施形態では、加熱温度と加熱時間を適切な範囲とすることにより、リン酸基の導入量を好ましい範囲内とすることができる。

0046

リン酸基導入工程は、少なくとも1回行えばよいが、2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上のリン酸基導入工程を行うことにより、繊維原料に対して多くのリン酸基を導入することができる。本実施形態においては、好ましい態様の一例として、リン酸基導入工程を2回行う場合が挙げられる。

0047

繊維原料に対するリン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.00mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、繊維原料に対するリン酸基の導入量は、たとえば微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.20mmol/g以下であることが好ましく、3.65mmol/g以下であることがより好ましく、3.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。

0048

〔カルボキシ基導入工程〕
カルボキシ基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、オゾン酸化フェントン法による酸化、TEMPO酸化処理などの酸化処理やカルボン酸由来の基を有する化合物もしくはその誘導体、またはカルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物もしくはその誘導体によって処理することにより行われる。

0049

カルボン酸由来の基を有する化合物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイン酸コハク酸フタル酸フマル酸グルタル酸アジピン酸イタコン酸等のジカルボン酸化合物クエン酸アコニット酸等のトリカルボン酸化合物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては、とくに限定されないが、たとえばマレイミドコハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物としては、とくに限定されないが、たとえば無水マレイン酸無水コハク酸無水フタル酸無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。また、カルボン酸由来の基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては、とくに限定されないが、たとえばジメチルマレイン酸無水物ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が、アルキル基、フェニル基等の置換基により置換されたものが挙げられる。

0050

カルボキシ基導入工程において、TEMPO酸化処理を行う場合には、たとえばその処理をpHが6以上8以下の条件で行うことが好ましい。このような処理は、中性TEMPO酸化処理ともいう。中性TEMPO酸化処理は、たとえばリン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.8)に、繊維原料としてパルプと、触媒としてTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)等のニトロキシラジカル犠牲試薬として次亜塩素酸ナトリウムを添加することで行うことができる。さらに亜塩素酸ナトリウムを共存させることによって、酸化の過程で発生するアルデヒドを、効率的にカルボキシ基まで酸化することができる。
また、TEMPO酸化処理は、その処理をpHが10以上11以下の条件で行ってもよい。このような処理は、アルカリTEMPO酸化処理ともいう。アルカリTEMPO酸化処理は、たとえば繊維原料としてのパルプに対し、触媒としてTEMPO等のニトロキシラジカルと、共触媒として臭化ナトリウムと、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを添加することにより行うことができる。

0051

繊維原料に対するカルボキシ基の導入量は、置換基の種類によっても変わるが、たとえばTEMPO酸化によりカルボキシ基を導入する場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり0.10mmol/g以上であることが好ましく、0.20mmol/g以上であることがより好ましく、0.50mmol/g以上であることがさらに好ましく、0.90mmol/g以上であることがとくに好ましい。また、2.5mmol/g以下であることが好ましく、2.20mmol/g以下であることがより好ましく、2.00mmol/g以下であることがさらに好ましい。その他、置換基がカルボキシメチル基である場合、微細繊維状セルロース1g(質量)あたり5.8mmol/g以下であってもよい。

0052

(洗浄工程)
本実施形態における微細繊維状セルロースの製造方法においては、必要に応じてイオン性置換基等の置換基導入繊維に対して洗浄工程を行うことができる。洗浄工程は、たとえば水や有機溶媒により置換基導入繊維を洗浄することにより行われる。また、洗浄工程は後述する各工程の後に行われてもよく、各洗浄工程において実施される洗浄回数は、とくに限定されない。

0053

(アルカリ処理工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性置換基等の置換基導入工程と、後述する解繊処理工程との間に、繊維原料に対してアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえばアルカリ溶液中に、置換基導入繊維を浸漬する方法が挙げられる。
アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物は、とくに限定されず、無機アルカリ化合物であってもよいし、有機アルカリ化合物であってもよい。本実施形態においては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムをアルカリ化合物として用いることが好ましい。また、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水または有機溶媒のいずれであってもよい。中でも、アルカリ溶液に含まれる溶媒は、水、またはアルコールに例示される極性有機溶媒などを含む極性溶媒であることが好ましく、少なくとも水を含む水系溶媒であることがより好ましい。アルカリ溶液としては、汎用性が高いことから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液が好ましい。

0054

アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上80℃以下であることが好ましく、10℃以上60℃以下であることがより好ましい。アルカリ処理工程における置換基導入繊維のアルカリ溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上30分以下であることが好ましく、10分以上20分以下であることがより好ましい。アルカリ処理におけるアルカリ溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえば置換基導入繊維の絶乾質量に対して100質量%以上100,000質量%以下であることが好ましく、1,000質量%以上10,000質量%以下であることがより好ましい。

0055

アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の使用量を減らすために、イオン性置換基等の置換基導入工程の後であってアルカリ処理工程の前に、置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄してもよい。アルカリ処理工程の後であって解繊処理工程の前には、取り扱い性を向上させる観点から、アルカリ処理を行った置換基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。

0056

(酸処理工程)
微細繊維状セルロースを製造する場合、イオン性置換基等の置換基を導入する工程と、後述する解繊処理工程の間に、繊維原料に対して酸処理を行ってもよい。たとえば、置換基導入工程、酸処理、アルカリ処理および解繊処理をこの順で行ってもよい。
酸処理の方法としては、とくに限定されないが、たとえば酸を含有する酸性液中に繊維原料を浸漬する方法が挙げられる。使用する酸性液の濃度は、とくに限定されないが、たとえば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。また、使用する酸性液のpHは、とくに限定されないが、たとえば0以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。酸性液に含まれる酸としては、たとえば無機酸、スルホン酸カルボン酸等を用いることができる。無機酸としては、たとえば硫酸硝酸塩酸臭化水素酸ヨウ化水素酸次亜塩素酸亜塩素酸塩素酸過塩素酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。スルホン酸としては、たとえばメタンスルホン酸エタンスルホン酸ベンゼンスルホン酸p−トルエンスルホン酸トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸としては、たとえばギ酸酢酸、クエン酸、グルコン酸乳酸シュウ酸酒石酸等が挙げられる。これらの中でも、塩酸または硫酸を用いることがとくに好ましい。

0057

酸処理における酸溶液の温度は、とくに限定されないが、たとえば5℃以上100℃以下が好ましく、20℃以上90℃以下がより好ましい。酸処理における酸溶液への浸漬時間は、とくに限定されないが、たとえば5分以上120分以下が好ましく、10分以上60分以下がより好ましい。酸処理における酸溶液の使用量は、とくに限定されないが、たとえば繊維原料の絶乾質量に対して100質量%以上100000質量%以下であることが好ましく、1000質量%以上10000質量%以下であることがより好ましい。

0058

(解繊処理)
イオン性置換基等の置換基導入繊維を解繊処理工程で解繊処理することにより、微細繊維状セルロースが得られる。
解繊処理工程においては、たとえば解繊処理装置を用いることができる。解繊処理装置は、とくに限定されないが、たとえば高速解繊機グラインダー石臼粉砕機)、高圧ホモジナイザー超高圧ホモジナイザー高圧衝突型粉砕機ボールミルビーズミルディスク型リファイナー、コニカルリファイナー二軸混練機振動ミル高速回転下でのホモミキサー超音波分散機、またはビーターなどを使用することができる。上記解繊処理装置の中でも、粉砕メディアの影響が少なく、コンタミネーションのおそれが少ない高速解繊機、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザーを用いるのがより好ましい。

0059

解繊処理工程においては、たとえば置換基導入繊維を、分散媒により希釈してスラリー状にすることが好ましい。分散媒としては、水、および極性有機溶媒などの有機溶媒から選択される1種または2種以上を使用することができる。極性有機溶媒としては、とくに限定されないが、たとえばアルコール類多価アルコール類ケトン類エーテル類エステル類非プロトン極性溶媒等が好ましい。アルコール類としては、たとえばメタノールエタノールイソプロパノールn−ブタノールイソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコールプロピレングリコールグリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトンメチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテルテトラヒドロフランエチレングリコールモノメチルエーテルエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル酢酸ブチル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシドDMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。

0060

解繊処理時の微細繊維状セルロースの固形分濃度は適宜設定できる。また、置換基導入繊維を分散媒に分散させて得たスラリー中には、たとえば水素結合性のある尿素などの置換基導入繊維以外の固形分が含まれていてもよい。

0061

脱溶媒工程)
本発明において、解繊処理後の微細繊維状セルロースに対して、さらに脱溶媒工程を行ってもよい。脱溶媒工程は、繊維状セルロースを含むスラリーから分散媒の一部または全部を除去する工程を含む。本実施形態においては、たとえば分散媒の一部または全部を除去することにより、繊維状セルロースまたは繊維状セルロースと分散媒が含有された固形状物またはゲル状物が得られる。
脱溶媒工程は、たとえば繊維状セルロースを含有するスラリーに濃縮剤を添加してゲル化を行う濃縮工程を含む。当該濃縮工程により、たとえば繊維状セルロースと分散媒を含むゲル状物が得られることとなる。
濃縮剤としては、たとえば酸、アルカリ、多価金属の塩、カチオン系界面活性剤アニオン系界面活性剤カチオン性高分子凝集剤、およびアニオン性高分子凝集剤などが挙げられる。これらの中でも、多価金属の塩を濃縮剤として用いることが好ましい。多価金属の塩としては、たとえば硫酸アルミニウム硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム塩化カルシウム塩化アルミニウム塩化マグネシウム硫酸カルシウム、および硫酸マグネシウム等を挙げることができる。

0062

また、繊維状セルロースを含むスラリーの分散媒が水である場合、脱溶媒工程は、たとえば繊維状セルロースを含有するスラリーを有機溶媒によって処理することによりゲル化を行う濃縮工程を含んでいてもよい。当該濃縮工程により、たとえば繊維状セルロースと分散媒を含むゲル状物が得られることとなる。なお、脱溶媒工程においては、繊維状セルロースを含有するスラリーに対して、濃縮剤の添加と、有機溶媒による処理と、のどちらか一方のみを施してもよく、これらの双方を施してもよい。
上記有機溶媒としては、とくに限定されないが、たとえば次のものを使用することができる:メタノール、エタノール、1−プロパノールn−プロパノール)、1−ブタノール(n−ブタノール)、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール(イソプロパノール、2−プロパノール)、イソペンチルアルコールイソアミルアルコール)、t−ブチルアルコール(2−メチル−2−プロパノール)、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルシクロヘキサノールメチルシクロヘキサノン、メチル−ノルマル−ブチルケトン、エチルエーテル(ジエチルエーテル)、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートセロソルブアセテート)、エチレングリコールモノ−ノルマル−ブチルエーテルブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF、N,N−ジメチルホルムアミド)、ジメチルアセトアミド(DMAc、DMA、N,N−ジメチルアセトアミド)、オルトジクロルベンゼンキシレンクレゾールクロルベンゼン酢酸イソブチル酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル酢酸イソアミル)、酢酸エチル、酢酸ノルマル−ブチル、酢酸ノルマル−プロピル、酢酸ノルマル−ペンチル(酢酸ノルマル−アミル)、酢酸メチルシクロヘキサノールシクロヘキサノンジクロルメタン二塩化メチレン)、スチレンテトラクロルエチレンパークロルエチレン)、1,1,1−トリクロルエタントルエンノルマルヘキサンクロロホルム四塩化炭素、1,2−ジクロルエタン(二塩化エチレン)、1,2−ジクロルエチレン二塩化アセチレン)、1,1,2,2−テトラクロルエタン四塩化アセチレン)、トリクロルエチレン二硫化炭素ガソリンコールタールナフサソルベントナフサを含む。)、石油エーテル石油ナフサ石油ベンジンテレビン油ミネラルスピリットミネラルシンナーペトロリウムスピリットホワイトスピリットおよびミネラルターペンを含む。)

0063

濃縮工程は、さらに酸による処理を含んでもよい。濃縮工程における酸による処理は、上記濾過処理工程の前後に設けられることが好ましく、上記濾過処理工程の後に設けられることがより好ましい。酸による処理が濾過処理工程の後に設けられる場合、当該処理は濃縮剤を除去するための酸洗浄工程であってもよい。
濃縮工程における酸による処理は、たとえば硫酸、塩酸、硝酸、およびリン酸等に例示される無機酸;ギ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、セバシン酸ステアリン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、およびグルコン酸等に例示される有機酸を用いて行うことが好ましい。本実施形態においては、たとえば得られた濃縮物を酸性液に浸漬することにより当該処理を行うことができる。使用する酸性液の濃度はとくに限定されないが、たとえば10%以下が好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。酸性液の濃度を上記範囲とすることにより、セルロースの分解による劣化を抑制することができる。
濃縮工程において、酸による上記処理の後には、濾過を行うことが好ましい。この濾過処理工程では、さらに圧縮工程を行ってもよい。

0064

濃縮工程は、さらにアルカリ性の溶液による処理を含んでいてもよい。これにより、得られる固形状物またはゲル状物を再分散させる際に、微細繊維状セルロースの電荷が高まり再分散しやすくなる。とくに有機溶媒の存在下でアルカリ性の溶液を添加することが、効率的な濃縮を行う観点からより好ましい。
脱溶媒工程は、たとえば乾燥工程を含んでいてもよい。当該乾燥工程により、たとえば繊維状セルロースを含む固形状物が得られることとなる。濃縮工程が実施される場合、乾燥工程は、たとえば濃縮工程の後に行われる。また、濃縮工程が酸処理工程を含む場合には、乾燥工程は、酸処理工程の後に行われることが好ましい。乾燥工程は、オーブンによる乾燥処理であることが好ましい。この場合、たとえば30〜70℃に設定をしたオーブンで、1〜60分間乾燥を行うことが好ましい。
なお、脱溶媒工程は、濃縮工程を含まずに、乾燥工程のみを含んでいてもよい。

0065

繊維状セルロース含有物が固形状物またはゲル状物である場合、微細繊維状セルロース含有物に含まれる微細繊維状セルロースの含有量は、たとえば微細繊維状セルロース含有物の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることがとくに好ましい。また、微細繊維状セルロース含有物が固形状物またはゲル状物である場合、微細繊維状セルロース含有物に含まれる微細繊維状セルロースの含有量の上限値は、とくに限定されないが、たとえば99.5質量%とすることができる。微細繊維状セルロースの含有量を上記範囲とすることにより、よりハンドリング性に優れた微細繊維状セルロース含有物を得ることができる。
繊維状セルロース含有物が固形状物またはゲル状物である場合、繊維状セルロース含有物に含まれる溶媒の含有量は、たとえば微細繊維状セルロース含有物の全質量に対して90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましく、70質量%以下であることがとくに好ましい。溶媒の含有量の上限値を上記範囲とすることにより、ハンドリング性に優れた微細繊維状セルロース含有物を得ることができる。一方で、繊維状セルロース含有物に含まれる溶媒の含有量の下限値は、とくに限定されず、たとえば0質量%であってもよい。本実施形態においては、繊維状セルロース含有物に含まれる溶媒の含有量は、たとえば微細繊維状セルロース含有物の全質量に対して0.5質量%以上とすることができる。

0066

また、繊維状セルロース含有物が固形状物またはゲル状物である場合、繊維状セルロース含有物は、たとえば前述した濃縮工程において用いられる濃縮剤を含んでいてもよい。たとえば濃縮剤が金属成分である場合、繊維状セルロース含有物中における金属成分の含有量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.15質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以下であることがとくに好ましい。また、濃縮剤が金属成分である場合、繊維状セルロース含有物中における金属成分の含有量の下限値は、とくに限定されないが、たとえば0.0001質量%とすることができる。金属成分の含有量を上記範囲とすることにより、水など所定の分散媒への再分散性に優れた繊維状セルロース含有物を得ることができる。
微細繊維状セルロース含有物が粉粒物である場合、微細繊維状セルロース含有物は、粉状物および粒状物のうちの一方または双方を含む。ここで、粉状物は、粒状物よりも小さいものをいう。一般的には、粉状物は粒子径が1nm以上0.1mm未満の微粒子をいう。また、粒状物は、粒子径が0.1mm以上10mm以下の粒子をいう。粉粒物の粒子径は、たとえばレーザー回折法を用いて測定・算出することができる。レーザー回折法による測定は、たとえばレーザー回折散乱粒子径分布測定装置(Microtrac3300EXII、日機装株式会社)を用いて行うことができる。

0067

固形状物またはゲル状物である微細繊維状セルロース含有物は、たとえば水等の溶媒に再分散させた再分散スラリーとして用いることができる。このような再分散スラリーを得るために使用する溶媒の種類は、とくに限定されないが、たとえば水、有機溶媒、および水と有機溶媒との混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類ハロゲン類、非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。アルコール類としては、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。エーテル類としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。エステル類としては、たとえば酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。炭化水素類としては、たとえばn−ヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ハロゲン類としては、塩化メチレントリクロロエチレン、クロロホルム等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としてはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)等が挙げられる。

0068

<グラスアイオノマーセメント>
本発明の歯科材料用組成物はグラスアイオノマーセメントを含有し、また、本発明の歯科材料は、グラスアイオノマーセメントを含有する歯科材料用組成物を硬化してなる。
グラスアイオノマーセメントは、ポリカルボン酸、フルオロアルミノシリケートガラス粉末、および水を主成分としたセメントであり、従来型グラスアイオノマーセメントであることが好ましいが、従来型グラスアイオノマーセメントに重合性モノマーを添加したレジン強化型グラスアイオノマーセメントであってもよい。
すなわち、少なくともフルオロアルミノシリケートガラス粉末、ポリカルボン酸、および水を含有する硬化性材料であれば、とくに限定されない。

0069

本発明で使用するフルオロアルミノシリケートガラス粉末は、従来から歯科用セメントで用いられているものが使用可能である。フルオロアルミノシリケートガラス粉末は、主要成分としてAl3+、Si4+、F−、O2−を含み、さらにSr2+および/またはCa2+を含むフルオロアルミノシリケートガラス粉末が好ましく、とくに主要成分の割合がガラスの総質量に対してAl3+:10〜21質量%、Si4+:9〜21質量%、F−:1〜20質量%、Sr2+とCa2+の合計:10〜34質量%であることが好ましい。フルオロアルミノシリケートガラス粉末には酸化亜鉛が含まれると、セメント硬化体の透明性が大きく低下してしまうので酸化亜鉛は含まないことが好ましい。

0070

グラスアイオノマーセメントにおいては、フルオロアルミノシリケートガラス粉末と、ポリカルボン酸とが、中和反応によって硬化する。したがって、上記フルオロアルミノシリケートガラス粉末に加え、ポリカルボン酸と、水とが必要である。
なお、一般に、グラスアイオノマーセメントは、少なくともフルオロアルミノシリケートガラス粉末を含む粉末材料と、少なくとも水を含む液体材料とのキットとして供給され、使用時に粉末材料と液体材料とを混合して使用する。

0071

ポリカルボン酸は、水に含有させてフルオロアルミノシリケートガラス粉末に供給してもよい。
ポリカルボン酸としては、α,β−不飽和モノカルボン酸、α,β−不飽和ジカルボン酸等のカルボキシ基含有エチレン性不飽和化合物重合体の粉末が例示される。具体的には、アクリル酸メタクリル酸、2−クロロアクリル酸、3−クロロアクリル酸、アコニット酸、メサコン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、グルタコン酸、シトラコン酸等の単独重合体または共重合体が例示される。これらの共重合体はα,β−不飽和カルボン酸同士の共重合体であってもよく、α,β−不飽和カルボン酸と共重合可能な成分との共重合体でもよい。この場合α,β−不飽和カルボン酸の割合は50%以上であることが好ましい。共重合可能な成分とは、たとえばアクリルアミドアクリロニトリルアクリル酸エステルメタクリル酸エステルアクリル酸塩類、塩化ビニル塩化アリル酢酸ビニル等が例示される。α,β−不飽和カルボン酸の重合体の中で、とくに好ましいものとしてはアクリル酸またはイタコン酸の単独重合体または共重合体である。
ポリカルボン酸は、得られる歯科材料の機械的強度を向上させる観点から、重量平均分子量が、好ましくは3,000以上、より好ましくは4,000以上、さらに好ましくは5,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは30,000以下である。
粉末状のポリカルボン酸を使用する場合、その使用量は、フルオロアルミノシリケートガラス粉末を含む粉末中、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは3質量%以上15質量%以下である。
また、ポリカルボン酸を液体成分中に配合する場合には、ポリカルボン酸の配合量は、液体成分中に20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。20質量%未満では歯科材料用組成物が硬化した歯科材料の強度が劣る傾向があり、50質量%を超えると練和が困難となる傾向がある。

0072

フルオロアルミノシリケートガラス粉末と、ポリカルボン酸との中和反応は、水の存在下で反応が進行するため、水の存在は必須である。
水としてはとくに限定されないが、歯科材料用組成物の硬化や、歯牙等との接触強度、歯科材料の機械的強度に対して悪影響を及ぼすような不純物を含有していないものが好ましく、具体的には、蒸留水およびイオン交換水が好ましい。
水の含有量は、硬化性および硬化した歯科材料の機械的強度の観点から、粉末材料100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下、とくに好ましくは10質量部以下である。

0073

本発明において、液体材料には、必要に応じてpH調整用に酸を添加することもできる。用いられる酸としてはリン酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、エチレンジアミン四酢酸トリカルバリル酸レブリン酸酸性アミノ酸ピログルタミン酸、L−アスパラギン酸、L−アルギニン、クエン酸、グリシングリコール酸、DL−グリセリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタル酸、アセトンジカルボン酸シクロペンタンテトラカルボン酸ジグリコール酸、ジエチルマロン酸、L−システイン酸、シュウ酸、スルホサリチル酸タルトロン酸、トリカルバリル酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、トリメリット酸、乳酸、ベンゼンペンタカルボン酸、マロン酸、DL−マンデル酸ベンゼンヘキサカルボン酸、リンゴ酸等が挙げられ、これらの酸は単独または2種以上を混合して使用してもよい。なお、pH調整用の酸の液中の配合量は20質量%以下であることが好ましい。前記範囲内であると、高い曲げ強度の歯科材料が得られる。

0074

グラスアイオノマーセメントとして、従来型グラスアイオノマーセメントに限定されず、重合性モノマーを添加したレジン強化型グラスアイオノマーセメントであってもよい。歯面の前処理が不要である点、フッ化物イオンの溶出能に優れる点、および優れた生体親和性を有する点から、本発明において、グラスアイオノマーセメントとしては、従来型グラスアイオノマーセメントが好ましい。
レジン強化型グラスアイオノマーセメントは、上記のフルオロアルミノシリケートガラス粉末、ポリカルボン酸、および水に加え、さらに、重合性モノマーおよび重合開始剤を含有する。
重合性モノマーとしては、少なくとも1個の不飽和二重結合を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含有することが好ましい。少なくとも1個の不飽和二重結合を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、メチル(メタアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニルプロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが例示される。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートおよびアクリレートの総称であり、「(メタ)アクリロキシ」等の記載についても同様である。
また、分子中にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートが例示され、とくにウレタン結合を有するものの中では、ジ−2−(メタ)アクリロキシエチル−2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、下記構造式で示される化合物が好ましい。

0075

0076

上記式中、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、−(A)−は−(CH2)6−、1,4−フェニレン基、または下記の2価の基を表す。

0077

0078

重合性モノマーとして、酸性基を有する重合性モノマーを使用することも好ましい。
酸性基を有する重合性モノマーは、歯質および歯科用補綴物に対する更なる接着性向上に寄与する。酸性基を有する重合性モノマーとしては、たとえば、リン酸基、ホスホン酸基、ピロリン酸基、カルボン酸基スルホン酸基チオリン酸基等の酸性基を少なくとも一つ以上有し、かつ、アクリロイル基メタクリロイル基、ビニル基、スチレン基等の重合可能な不飽和基を有する重合性モノマーが挙げられる。

0079

リン酸基含有重合性モノマーとしては、たとえば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジハイドロジェンホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルジハイドロジェンホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルジハイドロジェンホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルジハイドロジェンホスフェート、7−(メタ)アクリロイルオキシヘプチルジハイドロジェンホスフェート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、12−(メタ)アクリロイルオキサイドデシルジハイドロジェンホスフェート、16−(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔9−(メタ)アクリロイルオキシノニル〕ハイドロジェンホスフェート、ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕ハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチル(4−メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピル(4−メトキシフェニル)ハイドロジェンホスフェート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールホスフェートペンタ(メタ)アクリレート等の重合性モノマー、およびこれらの酸塩化物等が挙げられる。

0080

ホスホン酸基含有重合性モノマーとしては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスホネート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノプロピオネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノプロピオネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−3−ホスホノアセテート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−3−ホスホノアセテート等の重合性モノマー、およびこれらの酸塩化物等が挙げられる。

0081

ピロリン酸基含有重合性モノマーとしては、たとえば、ピロリン酸ビス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、ピロリン酸ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシブチル〕、ピロリン酸ビス〔6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル〕、ピロリン酸ビス〔8−(メタ)アクリロイルオキシオクチル〕、ピロリン酸ビス〔10−(メタ)アクリロイルオキシデシル〕等の重合性モノマー、およびこれらの酸塩化物等が挙げられる。
カルボン酸基含有重合性モノマーとしては、たとえば、マレイン酸、メタクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシオクチルオキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルオキシカルボニルフタル酸、およびこれらの酸無水物;5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ヘキサンジカルボン酸、8−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−オクタンジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−デカンジカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等の重合性モノマー、およびこれらの酸塩化物等が挙げられる。

0082

スルホン酸基含有重合性モノマーとしては、たとえば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等の重合性モノマー、およびこれらの酸塩化物等が挙げられる。
チオリン酸基含有重合性モノマーとしては、たとえば、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンジチオホスフェート等の重合性モノマー、およびこれらの酸塩化物等が挙げられる。
これらの酸性基を有する重合性モノマーの中でも、歯質および歯科用補綴物への接着性に優れることから、リン酸基またはチオリン酸基を有する重合性モノマーを用いることが好ましい。その中でも、分子内に主鎖の炭素数が6〜20のアルキル基またはアルキレン基を有する2価のリン酸基含有重合性モノマーがより好ましく、10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート等の分子内に主鎖の炭素数が8〜12のアルキレン基を有する2価のリン酸基含有重合性モノマーが最も好ましい。

0083

重合性モノマーは、1種単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸性基を有する重合性モノマーを使用する場合、その配合量は、フルオロアルミノシリケートガラス粉末100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部の範囲がさらに好ましい。

0084

レジン強化型グラスアイオノマーセメントである場合には、重合開始剤を含有する。重合開始剤としては、一般工業界で使用されている公知の化学重合開始剤および/または光重合開始剤から選択して使用できる。

0085

重合開始剤における化学重合開始剤に関し、接着性と保存安定性の観点から、過酸化物、芳香族第2級アミンおよび/または芳香族第3級アミン、および芳香族スルフィン酸塩を含む3元系化学重合開始剤が好ましい具体例として挙げられる。

0086

化学重合開始剤に用いられる過酸化物としては、たとえば、ペルオキソ二硫酸塩などの無機過酸化物や、ジアシルパーオキサイド類パーオキシエステル類、パーオキシカーボネート類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類などの有機過酸化物が挙げられる。具体的には、ペルオキソ二硫酸塩としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウムペルオキソ二硫酸カリウムペルオキソ二硫酸アルミニウムペルオキソ二硫酸アンモニウム等が挙げられる。ジアシルパーオキサイド類としては、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。パーオキシエステル類としては、たとえば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ビス−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。パーオキシカーボネート類としては、たとえば、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイド類としては、たとえば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。パーオキシケタール類としては、たとえば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。ケトンパーオキサイド類としては、たとえば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド等が挙げられる。ハイドロパーオキサイド類としては、たとえば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド等が挙げられる。

0087

化学重合開始剤に用いられる芳香族スルフィン酸塩としては、たとえば、ベンゼンスルフィン酸、p−トルエンスルフィン酸、o−トリエンスルフィン酸、エチルベンゼンスルフィン酸、デシルベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、クロルベンゼンスルフィン酸、ナフタリンスルフィン酸などのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩マグネシウム塩カルシウム塩ストロンチウム塩鉄塩銅塩亜鉛塩、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩テトラエチルアンモニウム塩等を挙げることができる。

0088

化学重合開始剤に用いられる芳香族第2級アミンおよび/または芳香族第3級アミンとしては、たとえば、N−メチルアニリン、N−メチル−p−トルイジン、N−メチル−m−トルイジン、N−メチル−o−トルイジン、N−エタノール−p−トルイジン、N−エタノール−m−トルイジン、N−エタノール−o−トルイジン、p−メチルアミノ安息香酸エチル、m−メチルアミノ安息香酸エチル、o−メチルアミノ安息香酸エチル、p−メチルアミノアニソール、m−メチルアミノアニソール、o−メチルアミノアニソール、1−メチルアミノナフタレン、2−メチルアミノナフタレン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジエタノール−p−トルイジン、N,N−ジエタノール−m−トルイジン、N,N−ジエタノール−o−トルイジン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、m−ジメチルアミノ安息香酸エチル、o−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノアニソール、m−ジメチルアミノアニソール、o−ジメチルアミノアニソール、1−ジメチルアミノナフタレン、2−ジメチルアミノナフタレンなどを挙げることができる。

0089

重合開始剤における光重合開始剤としては、α−ジケトン類ケタール類チオキサントン類アシルホスフィンオキサイド類、α−アミノアセトフェノン類が例示される。α−ジケトン類の具体例としては、カンファーキノン、ベンジル、2,3−ペンタンジオンが挙げられる。ケタール類の具体例としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタールが挙げられる。チオキサントン類の具体例としては、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド類の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドジベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(2,4−ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、トリス(2−メトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイル−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイドおよび特公平3−57916号公報に開示の水溶性アシルホスフィンオキサイド化合物が挙げられる。α−アミノアセトフェノン類の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−2−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1、2−ベンジル−2−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ペンタノン−1が挙げられる。
重合開始剤は、1種類単独を用いてもよく、複数種類を併用してもよい。重合開始剤の配合量(重合開始剤として含まれる化合物の合計量)は、硬化性および硬化した歯科材料の機械的強度の観点から、重合性モノマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜5質量部の範囲がより好ましい。なお、本発明の歯科材料用組成物を製造するためのキットとするためには、保存安定性を考慮し、重合開始剤として用いる成分を適宜分包することが好ましい。

0090

本発明の歯科材料用組成物において、上記の重合開始剤(化学重合開始剤および/または光重合開始剤)の重合開始能を高めるために、さらに脂肪族アミン類芳香族アミン類アルデヒド類チオール化合物等の重合促進剤を併用してもよい。

0091

本発明の歯科材料用組成物は、必要に応じてX線造影剤を含んでもよい。これは充填操作モニタリングや充填後の変化を追跡することができるからである。X線造影剤としては、たとえば、硫酸バリウム次炭酸ビスマス酸化ビスマス酸化ジルコニウム、フッ化イッテルビウムヨードホルムバリウムアパタイトチタン酸バリウムランタンガラス、バリウムガラスストロンチウムガラス等から選択される1つまたは2つ以上が挙げられる。
また、本発明の歯科材料用組成物は、流動性改質硬化物である歯科材料の機械的強度のさらなる向上を目的として、さらにフィラーを配合してもよい。フィラーは、1種単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。フィラーとしては、カオリンクレー雲母マイカ等のシリカ基材とする鉱物;シリカを基材とし、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、BaO、La2O3、SrO、ZnO、CaO、P2O5、Li2O、Na2Oなどを含有するセラミックスおよびガラス類が例示される。ガラス類としては、ソーダガラス、リチウムボロシリケートガラス亜鉛ガラス、ホウ珪酸ガラスバイオガラスが好適に用いられる。結晶石英アルミナ酸化チタン酸化イットリウム水酸化アルミニウムも好適に用いられる。

0092

本発明の歯科材料用組成物には、フッ化物イオン溶出能を高めるために、機械的強度および接着性に悪影響を及ぼさない範囲内で、さらに公知の水溶性フッ化化合物を配合してもよい。たとえば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウムフッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化亜鉛、フッ化アルミニウム、フッ化マンガン、フッ化銅、フッ化鉛、フッ化銀、フッ化アンチモン、フッ化コバルト、フッ化ビスマスフッ化スズ、フッ化ジアンミン銀モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化チタンカリウム、フッ化スズ酸塩フルオロ珪酸塩等の水溶性の金属フッ化物を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。配合に際しては、たとえば金属フッ化物を微粒子化する方法、または金属フッ化物をポリシロキサンで被覆する方法などを使用することが好ましい。
本発明の歯科材料用組成物には、必要に応じて通常用いられる抗菌剤顔料等も、適宜配合することができる。

0093

本発明の歯科材料用組成物は、製品形態として、歯科材料用組成物の成分を分包したキットとすることができる。製品形態のキットとするためには、各種の形態が考えられ、粉末・液、ペースト・液、ペースト・ペーストなどの2材形態が例示される。
いずれの形態においても、フルオロアルミノシリケートガラス粉末、ポリカルボン酸および、水を共存させることは、保存安定性の観点から困難である。保存安定性の観点から、以下の粉末(粉末材料)・液(液体材料)、または粉末・粉末の分包形態が好ましい。
(1)少なくともフルオロアルミノシリケートガラス粉末、およびポリカルボン酸を含む粉末材料と、微細繊維状セルロースおよび水を含む液体材料とに分包されている粉液型の歯科材料用組成物キット
(2)少なくともフルオロアルミノシリケートガラス粉末およびポリカルボン酸を含む粉末材料と、微細繊維状セルロースおよび水を含む液体材料、またはウェットパウダー材料(粉末材料)とに分包されている歯科材料用組成物キット
(3)少なくともフルオロアルミノシリケートガラス粉末を含む粉末材料と、微細繊維状セルロース、ポリカルボン酸、および水を含む液体材料、またはウェットパウダー(粉末材料)とに分包されている歯科材料用組成物キット
なお、本発明の歯科材料用組成物は、上記の態様に限定されるものではない。

0094

[歯科材料]
本発明の歯科材料は、本発明の歯科材料用組成物を硬化してなる。
グラスアイオノマーセメントが、従来型グラスアイオノマーセメントである場合には、フルオロアルミノシリケートガラス粉末と、ポリカルボン酸との中和反応により硬化する。また、グラスアイオノマーセメントが、レジン強化型グラスアイオノマーセメントである場合には、上記の反応に加え、重合性モノマーの重合反応によっても硬化する。
本発明の歯科材料は多様な応用が可能であり,その使用目的により求められる特性は異なる。合着用や予防填塞用は流動性や被膜厚さ,充填用裏層用には強度が重視される。よって,機械的強度には下限と上限を示す。

0095

本発明の歯科材料は、微細繊維状セルロースを含有したことにより、機械的強度に優れ、フッ化物イオン溶出能が向上し、あるいはフッ化物イオン溶出能を減じることがない。
本発明の歯科材料のフッ化物イオンの溶出量は、歯の再石灰化を促進する観点から、好ましくは50μg/cm2/週以上、より好ましくは60μg/cm2/週以上、さらに好ましくは70μg/cm2/週以上である。また、機械的強度との両立の観点から、好ましくは500μg/cm2/週以下、より好ましくは400μg/cm2/週以下、さらに好ましくは300μg/cm2/週以下である。
なお、グラスアイオノマーセメントとして従来型グラスアイオノマーセメントを使用する場合、本発明の歯科材料のフッ化物イオンの溶出量は、好ましくは100μg/cm2/週以上、より好ましくは120μg/cm2/週以上、さらに好ましくは150μg/cm2/週以上である。また、機械的強度との両立の観点から、好ましくは500μg/cm2/週以下、より好ましくは400μg/cm2/週以下、さらに好ましくは300μg/cm2/週以下である。
歯科材料のフッ化物イオン溶出能は、実施例に記載の方法により測定される。

0096

本発明の歯科材料は、機械的強度に優れることが好ましく、3点曲げ強さが、好ましくは7MPa以上、より好ましくは8MPa以上、さらに好ましくは9MPa以上、とくに好ましくは10MPa以上である。上限はとくに限定されないが、設計容易性の観点から、好ましくは150MPa以下、より好ましくは130MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。
なお、グラスアイオノマーセメントとして従来型グラスアイオノマーセメントを使用する場合、本発明の歯科材料の3点曲げ強さの上限は、設計容易性の観点から、好ましくは50MPa以下、より好ましくは40MPa以下、さらに好ましくは30MPa以下である。
歯科材料の3点曲げ強さは、実施例に記載の方法により測定される。

0097

本発明の歯科材料は、機械的強度に優れることが好ましく、圧縮強さが、好ましくは60MPa以上、より好ましくは65MPa以上、さらに好ましくは70MPa以上、とくに好ましくは75MPa以上である。上限はとくに限定されないが、設計容易性の観点から、好ましくは500MPa以下、より好ましくは400MPa以下、さらに好ましくは350MPa以下である。
なお、グラスアイオノマーセメントとして従来型グラスアイオノマーセメントを使用する場合、本発明の歯科材料の圧縮強さの上限は、設計容易性の観点から、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下、さらに好ましくは200MPa以下である。
歯科材料の圧縮強さは、実施例に記載の方法により測定される。

0098

本発明の歯科材料用組成物および歯科材料は、歯牙患部の欠損部に対する充填材、歯牙患部の欠損部と補綴物の合着材、う蝕歯周病の予防材裏層材等、種々の用途に好適に用いることができる。

0099

[微細繊維状セルロース]
本発明の微細繊維状セルロースは、グラスアイオノマーセメントと混合して歯科材料を作製するために使用され、繊維幅が1000nm以下である。
微細繊維状セルロースは、ウェットパウダー状、パウダー状、スラリー状のいずれの状態であってもよく、とくに限定されない。また、粉末材料や液体材料に含有されていてもよく、微細繊維状セルロースの乾燥粉末または含水の粉末(ウェットパウダー)でグラスアイオノマーセメントと混合してもよく、とくに限定されない。

0100

以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。

0101

<製造例1>
原料パルプとして、王子製紙製の針葉樹クラフトパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度CSF)が700ml)を使用した。この原料パルプに対してリン酸化処理を次のようにして行った。まず、上記原料パルプ100質量部(絶乾質量)に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を添加して、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素120質量部、水150質量部となるように調整し、薬液含浸パルプを得た。次いで、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。

0102

次いで、得られたリン酸化パルプに対して洗浄処理を行った。洗浄処理は、リン酸化パルプ100g(絶乾質量)に対して10Lのイオン交換水を注いで得たパルプ分散液を、パルプが均一に分散するよう撹拌した後、濾過脱水する操作を繰り返すことにより行った。ろ液の電気伝導度が100μS/cm以下となった時点で、洗浄終点とした。
洗浄後のリン酸化パルプに対して、さらに上記リン酸化処理、上記洗浄処理をこの順に1回ずつ行った。

0103

次いで、洗浄後のリン酸化パルプに対してアルカリ処理(中和処理)を次のようにして行った。まず、洗浄後のリン酸化パルプを10Lのイオン交換水で希釈した後、撹拌しながら1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加することにより、pHが12以上13以下のリン酸化パルプスラリーを得た。次いで、当該リン酸化パルプスラリーを脱水して、アルカリ処理(中和処理)が施されたリン酸化パルプを得た。

0104

次いで、中和処理後のリン酸化パルプに対して、上記洗浄処理を行った。これにより得られたリン酸化パルプに対しFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルの測定を行った。その結果、1230cm−1付近にリン酸基に基づく吸収が観察され、パルプにリン酸基が付加されていることが確認された。また、得られたリン酸化パルプを供試して、X線回折装置にて分析を行ったところ、2θ=14°以上17°以下付近と2θ=22°以上23°以下付近の2箇所の位置に典型的なピークが確認され、セルロースI型結晶を有していることが確認された。

0105

(解繊処理)
得られたリン酸化パルプにイオン交換水を添加し、固形分濃度が2質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、湿式微粒化装置(株式会社スギマシン製、スターバースト)で200MPaの圧力にて4回処理し、微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液(A)(固形分濃度2質量%)を得た。

0106

微細繊維状セルロース分散液(A)(固形分濃度2質量%)500gに対し、0.5質量%に希釈した塩化カルシウム水溶液を250g加えて、ゲル化させた。得られたゲルを濾過した後、濾紙で圧搾し、固形分濃度20質量%の微細繊維状セルロース含有物を得た。この微細繊維状セルロース含有物(固形分濃度20質量%)を0.1N塩酸水溶液250gに30分間浸漬した後、これを濾過し、さらに濾紙にて圧搾した。このようにして、固形分濃度25質量%の微細繊維状セルロース含有物(濃縮物)を得た。さらに、この微細繊維状セルロース含有物(濃縮物)をミキサー(岩谷産業株式会社製、ミルサー800DG)を用いて粉砕し、100質量部の濃縮物に対し、0.35N水酸化ナトリウム水溶液を100質量部、ノニオン性界面活性剤サンノプコ株式会社製、SNウェットPUR)を1質量部加え、薬さじでよく練り混ぜ、微細繊維状セルロースの濃度が14.78%のウェットパウダー状の微細繊維状セルロース含有物(濃縮物)を得た。

0107

X線回折により、この微細繊維状セルロースがセルロースI型結晶を維持していることが確認された。
また、微細繊維状セルロースの繊維幅を透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、3〜5nmであった。さらに、微細繊維状セルロースの繊維長を後述の方法により測定したところ、1,000〜2,000nmであり、軸比は200以上であった。
また、後述する測定方法で測定されるリン酸基量(強酸性基量)は、1.7mmol/gだった。

0108

(リン酸基量の測定)
微細繊維状セルロースのリン酸基量は、対象となる微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース分散液をイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈して作製した微細繊維状セルロース含有スラリーに対し、イオン交換樹脂による処理を行った後、アルカリを用いた滴定を行うことにより測定した。
イオン交換樹脂による処理は、上記微細繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社製、コンディショニング済)を加え、1時間振とう処理を行った後、目開き90μmのメッシュ上に注いで樹脂とスラリーを分離することにより行った。
また、アルカリを用いた滴定は、イオン交換樹脂による処理後の微細繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を、30秒に1回、50μLずつ加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測することにより行った。リン酸基量(mmol/g)は、計測結果のうち図1に示す第1領域に相当する領域において必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して算出した。

0109

(微細繊維状セルロースの繊維幅の測定)
微細繊維状セルロースの繊維幅を下記の方法で測定した。
湿式微粒化装置にて処理をして得られた上記微細繊維状セルロース分散液の上澄み液を、微細繊維状セルロースの濃度が0.01質量%以上0.1質量%以下となるように水で希釈し、親水化処理したカーボングリッド膜に滴下した。これを乾燥した後、酢酸ウラニルで染色し、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEOL−2000EX)により観察した。

0110

(微細繊維状セルロースの繊維長の測定)
微細繊維状セルロースの繊維長は、微細繊維状セルロース分散液(固形分濃度2質量%)を10万倍に希釈したサンプルをAFMで観察し、画像解析によって求めた。

0111

<実施例1>
Ketac Cem Easymix(3M社製)の粉末材料を使用した。該粉末材料は、フルオロアルミノシリケートガラスおよびポリカルボン酸としてアクリル酸マレイン酸共重合体を含有する。
上述の粉末材料と、製造例1で得られた14.78質量%の微細繊維状セルロースを含有するウェットパウダーを、表1に示す配合量(質量部)にて混合して、歯科材料用組成物を調製した。
調製した歯科材料用組成物を用いて、以下の評価を行なった。

0112

(3点曲げ試験)
上述した歯科材料用組成物を用いて、2×2×25mmの直方体の歯科材料の試料を作製した。得られた試料を人工唾液(サリベート、帝人ファーマ株式会社製)中に浸漬し、37℃の恒温庫にて保存した、練和開始(粉末材料とウェットパウダーとの混合の開始)から24時間後に、万能試験機(AGS−X、株式会社島津製作所製)にて、JIS T 6609−2:2014に準拠し、クロスヘッドスピード0.5mm/分、支点間距離20mmにて、3点曲げ試験を行い、曲げ強さを測定した。n=5で試料の作製、および測定を行い、平均値を算出した。
結果を図3に示す。

0113

(圧縮試験)
上述した歯科材料用組成物を用いて、直径4mm×高さ6mmの歯科材料の円柱状試料を作製した。得られた試料を人工唾液(サリベート、帝人ファーマ株式会社製)中に浸漬し、37℃の恒温庫にて保存した。練和開始(粉末材料とウェットパウダーとの混合の開始)から24時間後に、万能試験機(AGS−X、株式会社島津製作所製)にて、ISO 9917−1に準拠して、クロスヘッドスピード1.0mmにて圧縮試験を行い、圧縮強さを測定した。n=6で試料の作製、および測定を行い、平均値を算出した。
結果を図4に示す。

0114

(フッ化物イオンの溶出量の測定)
上述した歯科材料用組成物を用いて、直径10mm×厚さ2mmの歯科材料の円盤状試料を作製した。得られた試料を脱イオン水8mlに浸漬し、37℃の恒温庫にて1週間保存した。1週間後に2mlの新鮮な脱イオン水にて試料を洗浄し、洗浄液を含めた10mlの浸漬液中に含まれるフッ化物イオン量を、イオンメーター(D−53、株式会社堀場製作所製)に取り付けたフッ化物イオン選択電極(6561−10C、株式会社堀場製作所製)にて測定した。なお、フッ化物イオン選択電極で得られた溶出量(ppm)を、試料の表面積あたりのイオン溶出量(μg/cm2)に換算し、フッ化物イオンの溶出量(μg/cm2/週)を求めた。n=6で試料の作製、および測定を行い、平均値を算出した。
結果を図5に示す。
なお、図3図5において、統計学的検討は、t−testにて行った(p<0.05)。

0115

<比較例1>
実施例1において、ウェットパウダーの代わりに、蒸留水を使用した以外は実施例1と同様にして、表1に示す配合量(質量部)で歯科材料用組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行なった。

0116

実施例

0117

実施例および比較例の結果から、実施例の微細繊維状セルロースおよびグラスアイオノマーセメントを含有する歯科材料用組成物から得られた歯科材料は、曲げ強さおよび圧縮強さが、比較例の微細繊維状セルロースを含有しないグラスアイオノマーセメントから得られた歯科材料に比べて、有意に向上しており、機械強度の向上効果に優れることが示された。
さらに、驚くべきことに、実施例および比較例では、1週間後のフッ化物イオン溶出量が、実施例で有意に高く、フッ化物イオン溶出量を減じることなく、むしろ増加させていることが示された。

0118

本発明により、グラスアイオノマーセメントに微細繊維状セルロースを添加することで、フッ化物イオン溶出量を減じることなく、有意に機械的強度が向上した歯科材料が得られることが明らかとなり、本発明の歯科材料用組成物および歯科材料は、歯牙患部の欠損部に対する充填材、歯牙患部の欠損部と補綴物の合着材、予防材、裏層材等への応用が期待される。

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