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技術 冷間圧延方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 志村眞弘白石利幸高浜義久
出願日 2018年8月21日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2018-154810
公開日 2020年2月27日 (10ヶ月経過) 公開番号 2020-028892
状態 未査定
技術分野 圧延の制御 圧延ロール・圧延スタンド・圧延機の駆動
主要キーワード 小ロール 潤滑油供給ノズル 油膜厚み 潤滑油濃度 油膜厚 摩擦係数値 エマルション濃度 潤滑油供給経路
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図面 (11)

課題

冷間圧延機ロールスタンドの入側において鋼板表面に潤滑油を供給しながら鋼板を冷間圧延するにあたり、冷間圧延する鋼板の鋼種が変わっても、スリップの発生を確実かつ安定して防止することができ、また特に高張力鋼など、圧下率の増大に伴ってスリップが発生しやすい鋼種を圧延する場合でも、スリップの発生を確実かつ安定して防止し得る冷間圧延方法を提供する。

解決手段

ロールスタンドの出側において鋼板の板速を実測し、出側板速と前記ロールスタンドにおけるワークロール周速とから先進率fsを求め、求められた先進率fsと圧延荷重Pとからワークロールと鋼板との間の摩擦係数μを算出し、先進率fsが、fs<0の場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させる。

概要

背景

近年、自動車建材向けの冷延鋼板としては、より薄手化が望まれており、そのため冷間圧延工程では、従来よりも圧下率を高めて圧延することが望まれるようになっている。
一方、冷間圧延において、ワークロール被圧延材鋼板に対して滑って回転する現象、すなわちスリップが発生すれば、鋼板の表面に疵が生じて外観品質を損なったり、また圧延機板厚制御のためのAGC制御誤差が生じて、出側板厚の精度が低下してしまう、などの問題を招く。そのため、スリップが発生することはできるだけ抑えることが必要である。

スリップの程度の指標としては、先進率fsが用いられている。先進率fsは、ワークロールの周速度をVR、圧延機の出側板速度をVOとして、
fs=(VO−VR)/VR
によって与えられる。したがってスリップが発生すれば、先進率が負の値となる。

スリップの指標となる先進率は、圧下率の変化に伴って変化するが、ワークロールと被圧延材の鋼板との間の摩擦係数によって先進率の変化の傾向は異なる。すなわち、摩擦係数が大きい場合には、圧下率の増加に伴って先進率も増加し、一方摩擦係数が低い場合には、その逆に、先進率が低下する傾向を示す。

したがって、摩擦係数が大きい状態で、高圧下率で圧延すれば、スリップが発生しやすくなる。そして各種の鋼のうちでも、高張力鋼ハイテン)等の高強度を有する鋼を冷間圧延する場合、スリップが発生しやすいことが知られている。なお、摩擦係数が大きすぎれば、圧延荷重の増加や鋼板表面の焼付き疵の発生を招きやすいことも知られている。

ところで、鋼板を冷間圧延するにあたっては、ワークロール表面に対する鋼板の焼き付きを防止するため、圧延機のロールスタンド入側において鋼板表面に潤滑油を供給することが一般的である。その場合、潤滑油供給量(例えば単位時間当たりの潤滑油供給量)によって、鋼板表面とワークロール表面との間の摩擦係数を調整することができる。

鋼板の冷間圧延における潤滑油供給量による摩擦係数の調整に関する技術としては、特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1では、高速圧延時におけるチャタリングの発生を防止することを目的とし、濃度の異なるエマルション圧延油(潤滑油)の2つの供給系統を設けて、圧延の供給量から摩擦係数と板表面粗さを逆算し、目標摩擦係数を維持するように、高濃度エマルションの供給量を調整することが示されている。

また鋼板の冷間圧延において、潤滑油の制御によってスリップの発生を防止しようとする技術が、特許文献2で提案されている。特許文献2の提案では、ロールバイト入口点における油膜厚さが、先進率、圧延荷重および板面粗さを案して定めた必要最小限の厚みとなる量のロールクーラント(潤滑油)を供給しつつ圧延を行うことが示されている。

概要

冷間圧延機のロールスタンドの入側において鋼板表面に潤滑油を供給しながら鋼板を冷間圧延するにあたり、冷間圧延する鋼板の鋼種が変わっても、スリップの発生を確実かつ安定して防止することができ、また特に高張力鋼など、圧下率の増大に伴ってスリップが発生しやすい鋼種を圧延する場合でも、スリップの発生を確実かつ安定して防止し得る冷間圧延方法を提供する。ロールスタンドの出側において鋼板の板速を実測し、出側板速と前記ロールスタンドにおけるワークロールの周速とから先進率fsを求め、求められた先進率fsと圧延荷重Pとからワークロールと鋼板との間の摩擦係数μを算出し、先進率fsが、fs<0の場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させる。

目的

特開2013−099757号公報
特開平2−169109号公報




塑性と加工(日本塑性加工学会誌)」第36巻 第418号 (19995−11)、p.1269〜p.1274






前述のように、鋼板の冷間圧延において潤滑油の制御によって摩擦係数を調整しようとする技術は、特許文献1で提案されているが、特許文献1の提案は、チャタリングの発生を防止することを目的とした

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

冷間圧延機ロールスタンドの入側において鋼板表面に潤滑油を供給しながら鋼板を冷間圧延するにあたり、前記ロールスタンドの出側において鋼板の板速を実測し、出側板速と前記ロールスタンドにおけるワークロール周速とから先進率fsを求め、求められた先進率fsと圧延荷重Pとからワークロールと鋼板との間の摩擦係数μを算出し、先進率fsが、fs<0の場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とする冷間圧延方法

請求項2

請求項1に記載の冷間圧延方法において、予め得られている圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータに基づき、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化し、fs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを基準摩擦係数μ0とし、前記算出された摩擦係数μがμ<μ0の場合には、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とする冷間圧延方法。

請求項3

請求項1に記載の冷間圧延方法において、予め実際の冷間圧延操業で使用される種々の径のワークロールのうちの最小径予測しておき、その最小径のワークロールについて、予め得られている圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータに基づき、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化し、fs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを最小径ロール基準摩擦係数μ0pとし、実際に使用しているワークロールの径が前記最小径以上のいずれの径であっても、前記算出された摩擦係数μがμ<0pの場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とする冷間圧延方法。

請求項4

請求項1に記載の冷間圧延方法において、前記算出された摩擦係数μがμ<0.042の場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とする冷間圧延方法。

請求項5

請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の冷間圧延方法において、圧下率rがr≧20%の条件下で、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とする冷間圧延方法。

請求項6

請求項1〜請求項5のいずれかの請求項に記載の冷間圧延方法において、前記摩擦係数μを増加させるにあたり、ロールスタンドの入側において鋼板表面に供給する潤滑油の供給量を減少させることを特徴とする冷間圧延方法。

請求項7

請求項1〜請求項5のいずれかの請求項に記載の冷間圧延方法において、前記摩擦係数μを増加させるにあたり、ロールスタンドの入側において鋼板表面に供給する潤滑油の濃度を低下させることを特徴とする冷間圧延方法。

技術分野

0001

本発明は、鋼板冷間圧延する方法に関するものである。

背景技術

0002

近年、自動車建材向けの冷延鋼板としては、より薄手化が望まれており、そのため冷間圧延工程では、従来よりも圧下率を高めて圧延することが望まれるようになっている。
一方、冷間圧延において、ワークロール被圧延材の鋼板に対して滑って回転する現象、すなわちスリップが発生すれば、鋼板の表面に疵が生じて外観品質を損なったり、また圧延機板厚制御のためのAGC制御誤差が生じて、出側板厚の精度が低下してしまう、などの問題を招く。そのため、スリップが発生することはできるだけ抑えることが必要である。

0003

スリップの程度の指標としては、先進率fsが用いられている。先進率fsは、ワークロールの周速度をVR、圧延機の出側板速度をVOとして、
fs=(VO−VR)/VR
によって与えられる。したがってスリップが発生すれば、先進率が負の値となる。

0004

スリップの指標となる先進率は、圧下率の変化に伴って変化するが、ワークロールと被圧延材の鋼板との間の摩擦係数によって先進率の変化の傾向は異なる。すなわち、摩擦係数が大きい場合には、圧下率の増加に伴って先進率も増加し、一方摩擦係数が低い場合には、その逆に、先進率が低下する傾向を示す。

0005

したがって、摩擦係数が大きい状態で、高圧下率で圧延すれば、スリップが発生しやすくなる。そして各種の鋼のうちでも、高張力鋼ハイテン)等の高強度を有する鋼を冷間圧延する場合、スリップが発生しやすいことが知られている。なお、摩擦係数が大きすぎれば、圧延荷重の増加や鋼板表面の焼付き疵の発生を招きやすいことも知られている。

0006

ところで、鋼板を冷間圧延するにあたっては、ワークロール表面に対する鋼板の焼き付きを防止するため、圧延機のロールスタンド入側において鋼板表面に潤滑油を供給することが一般的である。その場合、潤滑油供給量(例えば単位時間当たりの潤滑油供給量)によって、鋼板表面とワークロール表面との間の摩擦係数を調整することができる。

0007

鋼板の冷間圧延における潤滑油供給量による摩擦係数の調整に関する技術としては、特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1では、高速圧延時におけるチャタリングの発生を防止することを目的とし、濃度の異なるエマルション圧延油(潤滑油)の2つの供給系統を設けて、圧延の供給量から摩擦係数と板表面粗さを逆算し、目標摩擦係数を維持するように、高濃度エマルションの供給量を調整することが示されている。

0008

また鋼板の冷間圧延において、潤滑油の制御によってスリップの発生を防止しようとする技術が、特許文献2で提案されている。特許文献2の提案では、ロールバイト入口点における油膜厚さが、先進率、圧延荷重および板面粗さを案して定めた必要最小限の厚みとなる量のロールクーラント(潤滑油)を供給しつつ圧延を行うことが示されている。

0009

特開2013−099757号公報
特開平2−169109号公報

先行技術

0010

塑性と加工(日本塑性加工学会誌)」第36巻 第418号 (19995−11)、p.1269〜p.1274

発明が解決しようとする課題

0011

前述のように、鋼板の冷間圧延において潤滑油の制御によって摩擦係数を調整しようとする技術は、特許文献1で提案されているが、特許文献1の提案は、チャタリングの発生を防止することを目的としたものであって、スリップの発生防止のための技術ではない。
一方特許文献2の提案は、鋼板の冷間圧延において潤滑油の油膜厚みを制御することによってスリップの発生を防止しようとするものであるが、特許文献2に開示されている技術事項を実施しただけでは、スリップの発生を確実に抑えることは困難であり、スリップ発生防止の技術としては不十分と言わざるを得ない。

0012

ところで、冷間圧延の対象となる鋼板の鋼種としては、普通鋼や高張力鋼など、種々のものがある。そして高張力鋼などの高強度を有する鋼板では、普通鋼と比較してスリップが発生しやすいなど、鋼種によってスリップの発生傾向が異なり、そこで、潤滑油の調整によってスリップの発生を防止しようとする場合、鋼種ごとに適切な条件を設定することが必要であると考えられていた。したがって種々の鋼種の鋼板を冷間圧延する場合、鋼種ごとにスリップ発生防止のための最適な条件を設定、調整しなければならず、そのための手間や管理が煩雑とならざるを得なかったのが実情である。

0013

本発明は以上の事情背景としてなされたもので、冷間圧延する鋼板の鋼種が変わっても、スリップの発生を確実かつ安定して防止することができ、また特に高張力鋼など、圧下率の増大に伴ってスリップが発生しやすい鋼種を圧延する場合でも、スリップの発生を確実かつ安定して防止し得る冷間圧延方法を提供することを課題としている。

課題を解決するための手段

0014

前述の課題を解決するため、各種の鋼板について、圧下率及び摩擦係数とスリップの発生傾向(先進率)との関係を詳細に調べたところ、摩擦係数が小さい場合には、圧下率が増加するにしたがって先進率が小さくなって負の値となりやすく(すなわちスリップが発生しやすく)なるが、その傾向は鋼種を問わず、たとえば普通鋼でも高張力鋼でも同じ傾向を示すことが認識された。このことから、冷間圧延進行中における先進率を実測して、先進率fsと圧延荷重Pとから圧延進行中の摩擦係数μを計算によって求めて、先進率fsの値に応じて、ワークロールと鋼板との間の摩擦係数μを調整する(フィードバック制御する)ことによって、鋼種を問わず、スリップの発生を抑え得ることを見出した。

0015

また一方、実験実績、もしくは計算やシミュレーションによって予め得られている圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータに基づき、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化し、そのグラフにおけるfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを、評価のための基準摩擦係数μ0とすれば、前述のように冷間圧延進行中における実測した先進率fsと圧延荷重Pとから計算によって求めた圧延進行中の摩擦係数μが基準摩擦係数μ0より小さい場合に、鋼種を問わず、先進率fsが負の値となりやすいこと、すなわちスリップが発生しやすくなることを見出した。逆に言えば、圧延進行中に先進率fsを実測して、圧延進行中の摩擦係数μの値が基準摩擦係数μ0以上となるように調整する(摩擦係数を増加させる)フィードバック制御を行うことによって、鋼種を問わず、スリップの発生を確実に防止することが可能となることを見出した。

0016

さらに、実際の冷間圧延操業においては、入側板厚や出側板厚、圧下率あるいは鋼種等に応じてワークロールとして異なる径のものに交換することがあるが、同じ摩擦係数でもロール径が小さいほど、先進率fsが小さくなってスリップが発生しやすくなる傾向を示すこと、逆に言えば、同じ摩擦係数でもロール径が大きいほど、先進率fsが大きくなってスリップが発生しにくくなる傾向を示すことを認識している。そこで、使用することが予想される最小径のワークロールに関して、予め実験や実績もしくは計算やシミュレーションによって得られている圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータに基づき、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を前記と同様に、圧下率rを横軸、先進率fsを縦軸としてグラフ化して、fs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを、基準摩擦係数(最小ロール径基準摩擦係数)μ0pとすれば、実際に使用しているワークロールの径が前記最小径以上の如何なる径であっても、圧延進行中の摩擦係数μの値が最小ロール径基準摩擦係数μ0p以上となるように摩擦係数μを増加させれば、実際に使用しているロール径にかかわらず、スリップの発生の抑制を確実に抑制し得ることを見出した。

0017

またここで、一般的な冷間圧延操業では、ワークロールの径が最小でφ290mm以上あることが多く、その場合、評価基準摩擦係数μ0pを0.042と置くことができ、そこで圧延進行中の摩擦係数μの値が0.042以上となるように摩擦係数μを増加させれば、φ290mm以上のワークロールによる冷間圧延では、実際に使用しているワークロールの径にかかわらず、スリップの発生を抑制し得ることを見出した。

0018

さらに、圧延進行中の摩擦係数μの値が前述のような基準摩擦係数μ0(もしくはμ0p)よりも小さい場合に先進率fsが負の値となる傾向(スリップが発生しやすくなり傾向)は、圧下率が20%以上である場合に生じやすいことを見出した。したがって、圧延進行中の摩擦係数μの値が基準摩擦係数μ0(もしくはμ0p)以上となるように摩擦係数μを増加させるという前述の制御は、圧延率が20%以上の場合に行えば、実際上、スリップの発生を有効に抑制し得ると認識した。

0019

そして以上のような本発明者等の新規な知見に基づき、以下に示すような本発明をなすに至ったのである。

0020

すなわち本発明の基本的な態様(第1の態様)の冷間圧延方法は、
冷間圧延機のロールスタンドの入側において鋼板表面に潤滑油を供給しながら鋼板を冷間圧延するにあたり、
前記ロールスタンドの出側において鋼板の板速を実測し、
側板速と前記ロールスタンドにおけるワークロールの周速とから先進率fsを求め、
求められた先進率fsと圧延荷重Pとからワークロールと鋼板との間の摩擦係数μを算出し、
先進率fsが、fs<0の場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とするものである。

0021

また本発明の第2の態様の冷間圧延方法は、
前記第1の態様の冷間圧延方法において、
予め得られている圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータに基づき、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化し、fs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを基準摩擦係数μ0とし、前記算出された摩擦係数μがμ<μ0の場合には、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とするものである。

0022

また本発明の第3の態様の冷間圧延方法は、
前記第1の態様の冷間圧延方法において、
予め実際の冷間圧延操業で使用される種々の径のワークロールのうちの最小径を予測しておき、
その最小径のワークロールについて、予め得られている圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータに基づき、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化し、fs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを最小径ロール基準摩擦係数μ0pとし、
実際に使用しているワークロールの径が前記最小径以上のいずれの径であっても、前記算出された摩擦係数μがμ<μ0pの場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とするものである。

0023

また本発明の第4の態様の冷間圧延方法は、
前記第1の態様の冷間圧延方法において、
前記算出された摩擦係数μがμ<0.042の場合に、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とするものである。

0024

また本発明の第5の態様の冷間圧延方法は、
前記第1〜第4のいずれかの態様の冷間圧延方法において、
圧下率rがr≧20%の条件下で、先進率fs≧0となるように摩擦係数μを増加させることを特徴とするものである。

0025

さらに本発明の第6の態様の冷間圧延方法は、前記第1〜第5のいずれかの態様の冷間圧延方法において、
前記摩擦係数μを増加させるにあたり、ロールスタンドの入側において鋼板表面に供給する潤滑油の供給量を減少させることを特徴とするものである。

0026

また本発明の第7の態様の冷間圧延方法は、前記第1〜第5の態様の冷間圧延方法において、
前記摩擦係数μを増加させるにあたり、ロールスタンドの入側において鋼板表面に供給する潤滑油の濃度を低下させることを特徴とするものである。

発明の効果

0027

本発明によれば、冷間圧延機を用いて、ロールスタンドの入側にて潤滑油を供給しながら鋼板を冷間圧延するにあたり、冷間圧延する鋼板の鋼種が変わっても、スリップの発生を確実かつ安定して防止することができ、また特に高張力鋼など、圧下率の増大に伴ってスリップが発生しやすい鋼種を圧延する場合でも、スリップの発生を確実かつ安定して防止することができる。

図面の簡単な説明

0028

本発明の冷間圧延方法が適用される冷間圧延設備の一例の全体構成を示す模式図である。
本発明の冷間圧延方法を実施するための冷間圧延設備における一つの圧延機スタンド及びその制御系統の一例を示す模式図である。
ロール径がφ290mmの場合における、普通鋼についての、摩擦係数を変化させた場合の圧下率と先進率との関係の実験結果を示すグラフである。
ロール径がφ290mmの場合における、高張力鋼についての、摩擦係数を変化させた場合の圧下率と先進率との関係の実験結果を示すグラフである。
ロール径がφ350mmの場合における、普通鋼についての、摩擦係数を変化させた場合の圧下率と先進率との関係の実験結果を示すグラフである。
ロール径がφ350mmの場合における、高張力鋼についての、摩擦係数を変化させた場合の圧下率と先進率との関係の実験結果を示すグラフである。
ロール径がφ480mmの場合における、普通鋼についての、摩擦係数を変化させた場合の圧下率と先進率との関係の実験結果を示すグラフである。
ロール径がφ480mmの場合における、高張力鋼についての、摩擦係数を変化させた場合の圧下率と先進率との関係の実験結果を示すグラフである。
先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線を説明するためのグラフである。
実施例1で用いた冷間圧延機を示す模式図である。

0029

以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。

0030

図1には、本発明の冷間圧延方法を適用する冷間圧延設備の例を模式的に示す。
図1の例では、鋼板2を連続的に冷間圧延するための、タンデム冷間圧延用の複数基、例えば5基のロールスタンドF1〜F5を直列状に配列した冷間圧延設備1を示している。各ロールスタンドF1〜F5は、それぞれ上下のワークロール3A、3Bと上下のバックアップロール4A、4Bとを有する4重式圧延機(4Hiミル)で構成されている。そして各ロールスタンドF1〜F5の入側には、鋼板2の上下の板面に潤滑油を供給するための潤滑油供給装置6A、6Bが配設されている。これらの潤滑油供給装置6A、6Bは、例えば潤滑油原液を水等によってエマルションとした状態で鋼板2の板面に向けて、各ロールスタンドF1〜F5における入側ロールバイトに近い位置で噴射するノズルによって構成される。ここまで説明した構成は、従来の一般的な冷間圧延設備と同様である。

0031

以上のような図1に示される第1の実施形態の冷間圧延設備によって鋼板2を冷間圧延するにあたっては、図1の左方から被圧延材として鋼板2が第1段目ロールスタンドF1に向けて連続的に送給されて、各ロールスタンドF1〜F5の上下のワークロール3A、3B間を順次通過することにより、所定の圧下率で順次圧下が加えられて減厚され、最終的に第5段目ロールスタンド(最終スタンド) F5を出て、所定の冷延板製品となる。

0032

ここで、各ロールスタンドF1〜F5の入側では、潤滑油供給装置(ノズル)6A、6Bから鋼板2の表面に、例えばエマルションの状態で潤滑油が供給されて、鋼板2とワークロール3A、3Bとの間の潤滑がなされる。

0033

各ロールスタンドF1〜F5のうち、いずれか1以上のロールスタンドにおいては、ワークロールと鋼板との間の摩擦係数μの調整を、フィードバック制御によって行う。そこで、このような調整を行うロールスタンドをFnとし、そのロールスタンドFnにおける摩擦係数調整のための構成の一例を図2に示す。

0034

図2において、ロールスタンドFnには、圧下率やロール回転周速度VR等の設定および制御を行うための圧延条件設定・制御装置8が設けられている。この圧延条件設定・制御装置8は、AGC制御部などを含む、従来の一般的な圧延条件設定・制御装置と同様であればよい。なおこの圧延条件設定・制御装置8からは、ロール回転周速度VRについての信号、圧延荷重Pについての信号、圧下率rについての信号が出力されるようになっている。

0035

そしてロールスタンドFnの上下のワークロール3A、3Bにおけるロールバイトの入側の上下に、潤滑油供給装置(ノズル)6A、6Bが配設されていて、例えばエマルションの状態で潤滑油が鋼板2の上下両面に供給されるようなっている。潤滑油エマルションは、例えばタンクなどの供給源10から、圧送用ポンプ12、および潤滑油量調整弁14を経て各潤滑油供給装置6A、6Bに送られ、鋼板2の上下両面に噴射、供給される。ここで、その潤滑油供給量は、潤滑油量制御部16によって制御される。

0036

一方、ロールスタンドFnの出側には、圧延された鋼板2の板速(出側速度)を検出するための板速計18が配設されており、圧延進行中に出側板速VOを連続的に測定し、その出側板速VOについての信号を、連続的に出力するようになっている。

0037

板速計18からの出側板速VOの信号は、圧延制御装置8からのワークロール周速度VRについての信号とともに、先進率演算装置20に与えられ、先進率fsが、
fs=(VO−VR)/VR
によって算出される。先進率演算装置20で算出された先進率fsについての信号は、摩擦係数演算部22および潤滑油量制御部16に与えられる。

0038

摩擦係数演算部22においては、先進率fsおよび圧延荷重P等の圧延情報に基づいて、その時点での摩擦係数μを算出する。
摩擦係数μを求める手法は特に限定されるものではないが、例えば非特許文献1のp1270に記載されている手法によって求めることができる。

0039

すなわち、式(1)に示すHillの圧延荷重式から求められた変形抵抗式、および式(2)に示すBland&Fordの先進率式を用いて、先進率fsおよび圧延荷重Pから逆算することによって摩擦係数μを求めることができる。

0040

0041

0042

但し、式(1)、式(2)において、Re(扁平ロール半径)は、圧延時の圧延荷重によって扁平したロールの半径であって、次の式(3)によって求められる値である。

0043

0044

なお、(1)式〜(3)式における各記号の定義は次の通りである、
fs:先進率、μ:摩擦係数、P:圧延荷重、Ke:変形抵抗、σb:後方張力、σf:前方張力、Re:扁平ロール半径、H:入側板厚、h:出側板厚、r:圧下率、ν:ポアソン比、E:ヤング率、b:板幅、R:ロール半径

0045

このようにして、摩擦係数演算部22において求められた、その時点での摩擦係数μについての信号は、圧下率rについての信号および先進率fsについての信号とともに、潤滑油量制御部16に与えられる。
潤滑油量制御部16は、基本的には、先進率fsがfs<0の場合の場合に、先進率fsがfs≧0となるように、例えば潤滑油供給装置6A、6Bから供給する潤滑油量を減少させる制御を行って、摩擦係数μを増加させればよい。

0046

ここで、潤滑油量制御部16における制御の具体的態様としては、次のAもしくはB、あるいはCのうちのいずれかの制御態様を適用することが望ましい。

0047

A:実験やこれまでの冷間圧延操業の実績、もしくは計算やシミュレーションによって、圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータの相関関係を調べておく。そして、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化しておく。そのグラフにおけるfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを基準摩擦係数μ0とする。そして前述のように式(1)〜式(3)から算出された摩擦係数μがμ<μ0の場合には、先進率fs≧0となるように、潤滑油量を減少させる制御を行って、摩擦係数μを増加させる。

0048

B:実際の冷間圧延操業においては、入側板厚や出側板厚、圧下率あるいは鋼種等に応じてワークロールとして異なる径のものに交換することがある。この場合、既に述べたように(また後述する実験結果に示すように)、同じ摩擦係数でもロール径が小さいほど、先進率fsが小さくなってスリップが発生しやすくなる傾向を示すこと、逆に言えば、同じ摩擦係数でもロール径が大きいほど、先進率fsが大きくなってスリップが発生しにくくなる傾向を示すことを認識している。
そこで、予め実際の冷間圧延操業で使用される種々の径のワークロールのうちの最小径を予測しておき、その最小径のワークロールに関して、前記Aの制御態様の場合と同様に、実験やこれまでの冷間圧延操業の実績、もしくは計算やシミュレーションによって、圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータの相関関係を調べておく。そして、最小径のワークロールについて、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸、先進率fsを縦軸としてグラフ化しておき、そのグラフにおけるfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数μを、最小径ロール基準摩擦係数μ0pとする。そして、実際に使用しているワークロールの径の如何にかかわらず(すなわち実際に使用しているワークロールの径が前記最小径以上のどのような径であっても)、前述のように式(1)〜式(3)から算出された摩擦係数μがμ<μ0pの場合には、先進率fs≧0となるように、潤滑油量を減少させる制御を行って、摩擦係数μを増加させる。

0049

C:基準摩擦係数μ0を0.042と定めておき、前述のように式(1)〜式(3)から算出された摩擦係数μがμ<0.042の場合に、先進率fs≧0となるように、潤滑油量を減少させる制御を行って、摩擦係数μを増加させる。なおこの制御態様Cも、実際に使用しているワークロールの径の如何にかかわらず(すなわち実際に使用しているワークロールの径がどのような径であっても)、算出された摩擦係数μがμ<0.042の場合には、先進率fs≧0となるように、潤滑油量を減少させる制御を行う。

0050

以上のような各制御態様A、もしくはB、またはCを適用することが、スリップの抑制に有効であることは、本発明者等の次のような実験によって見出されたことである。その実験について、次に説明する。

0051

普通鋼もしくは高張力鋼を、種々のロール径のワークロールによって冷間圧延するにあたって、式(1)〜式(3)によって計算した先進率fsに及ぼす圧下率rと摩擦係数μの影響を調べた結果を、各摩擦係数μの値ごとに、圧下率rを横軸、先進率fsを縦軸としてグラフ化して、図3図8に示す。なお普通鋼としてはSPCC、高張力鋼としては980MPa級高張力鋼DP鋼)を用いた。

0052

図3は、ロール径がφ290mmの場合についての普通鋼の例を示し、図4は同じくロール径がφ290mmの場合の高張力鋼の例を示し、いずれも摩擦係数μは0.030、0.042、0.050、0.060の4段階で変化させた。
図5は、ロール径がφ350mmの場合についての普通鋼の例を示し、図6は同じくロール径がφ350mmの場合の高張力鋼の例を示し、いずれも摩擦係数μは0.030、0.042、0.050、0.060の4段階で変化させた。
図7は、ロール径がφ480mmの場合についての普通鋼の例を示し、図8は同じくロール径がφ480mmの場合の高張力鋼の例を示し、いずれも摩擦係数μは0.020、0.031、0.050、0.060の4段階で変化させた。

0053

これらの実験結果について検討すれば、まずロール径がφ290mmでは、図3に示す普通鋼の場合と図4に示す高張力鋼の場合のいずれにおいても、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を示す曲線は、摩擦係数μが0.042の場合に、先進率fs>0の領域内で実質的に水平となること、言い換えれば先進率fsの値が圧下率rの値によらずに、fs>0の領域内でほぼ一定となることが分かる。これに対して、摩擦係数μ<0.042では、鋼種によらず、圧下率rが大きくなるにつれて先進率fsが低下すること、そして特に圧下率r≧20%の領域では、図3に示す普通鋼の場合と図4に示す高張力鋼の場合のいずれにおいても先進率fsが負になること(スリップが発生すること)が読み取れる。

0054

次にロール径がφ350mmでは、図5に示す普通鋼の場合と図6に示す高張力鋼の場合のいずれにおいても、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を示す曲線は、摩擦係数μが0.037の場合には、先進率fs>0の領域内で実質的に水平となること、言い換えれば先進率fsの値が圧下率rの値によらずに、fs>0の領域内でほぼ一定となることが分かる。これに対して、摩擦係数μ<0.037では、鋼種によらず、圧下率rが大きくなるにつれて先進率fsが低下すること、そして特に圧下率r≧20%の領域では、図5に示す普通鋼の場合と図6に示す高張力鋼の場合のいずれにおいても先進率fsが負になること(スリップが発生すること)が読み取れる。

0055

さらにロール径がφ480mmでは、図7に示す普通鋼の場合と図8に示す高張力鋼の場合のいずれにおいても、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を示す曲線は、摩擦係数μが0.031の場合には、先進率fs>0の領域内で実質的に水平となること、言い換えれば先進率fsの値が圧下率rの値によらずに、fs>0の領域内でほぼ一定となることが分かる。これに対して、摩擦係数μ<0.031では、鋼種によらず、圧下率rが大きくなるにつれて先進率fsが低下すること、そして特に圧下率r≧20%の領域では、図7に示す普通鋼の場合と図8に示す高張力鋼の場合のいずれにおいても先進率fsが負になること(スリップが発生すること)が読み取れる。

0056

これらの結果から、いずれのロール径の場合も、前記制御態様Aとして記載したように、各摩擦係数μごとに圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化したfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して実質的に水平な曲線における摩擦係数μを基準摩擦係数μ0とすれば、冷間圧延進行中に算出した摩擦係数μがその基準摩擦係数μ0より小さい場合に、摩擦係数μが増加する方向に制御する(例えば潤滑油量を減少させる)ことによって、普通鋼と高張力鋼のいずれでも、先進率fsを増加させて、fsを0(ゼロ)もしくは正の値とする(すなわちスリップ発生を防止する)ことが可能となることが分かる。

0057

但し、図3図8に示す結果から、いずれの鋼種、いずれのロール径の場合も、冷間圧延進行中に算出した摩擦係数μがその基準摩擦係数μ0より小さくなって先進率μが負の値となる傾向は、圧下率が20%以上の場合に生じること、したがって圧下率が20%より小さい場合には、上記のような制御を行わなくても、先進率μが負の値となってスリップが発生することを回避し得ることが分かる。このことから、スリップ発生防止のために摩擦係数μを増加させる制御は、いずれの鋼種、いずれのロール径の場合も、圧下率が20%以上の場合に適用すれば足りることになる。

0058

以上のように、鋼種を問わず、同じ制御態様でスリップの発生を防止し得ることは、本発明者等が初めて見出したことであり、制御の容易化に大きく貢献することができる。

0059

以上のところにおいて、基準摩擦係数μ0を規定するための実質的に水平な曲線(圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としてグラフ化したfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して実質的に水平な曲線)とは、厳密に水平である必要はなく、水平線に対して若干の許容誤差範囲内のほぼ水平な曲線であればよいことを意味する。その点について図9を参照して次に説明する。

0060

図9に模式的に示しているように、圧下率rを横軸とするとともに先進率fsを縦軸としたグラフにおいて、fs=f(r)を示すある曲線の、圧下率が10〜30%の範囲内における、先進率fsの最大値をfsmax、最小値をfsmin、平均値をfsaveとする。すなわち、
fsave=(fsmax+fsmin)/2
とする。
そして、
fsmax−fsave<+0.08%
でかつ
fsmin−fsave<−0.08%
の範囲内にある場合を、前記曲線が水平であるとみなすこととする。言い換えれば、圧下率が10〜30%の範囲内における、先進率fsの最大値fsmax、最小値fsminとの差Δfs=fsmax−fsminが、±0.08%内の範囲内にある場合を、前記曲線が水平であるとみなすこととする。
ちなみに、上記のΔfs=fsmax−fsminが、±0.08%内の範囲を、図3〜図8に記載した各鋼種、各ロール径のグラフ中に付記している。

0061

ところで、実際の冷間圧延操業においては、入側板厚や出側板厚、圧下率あるいは鋼種等に応じてワークロールを異なる径のものに交換することがある。
ここで、普通鋼についての図3図5図7の比較、並びに高張力鋼についての図4図6図8の比較から、ロール径が小さいほど、先進率fsが小さくなってスリップが発生しやすくなる傾向を示すこと、逆に言えば、同じ摩擦係数でもロール径が大きいほど、先進率fsが大きくなってスリップが発生しにくくなる傾向を示すことが分かる。そしてまた、各グラフ上でfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して水平な曲線における摩擦係数(基準摩擦係数μ0)も、ロール径が大きいほど大きくなることが分かる。
このことから、前述の制御態様Bに示したように、予め実際の冷間圧延操業で使用される種々の径のワークロールのうちの最小径を予測しておき、その最小径のワークロールについての基準摩擦係数μを求めて、その値(最小径ロール基準摩擦係数μ0p)を基準として、実際に使用しているワークロールの径の如何にかかわらず(すなわち実際に使用しているワークロールの径がどのような径であっても)、式(1)〜式(3)から算出された摩擦係数μがμ<μ0pの場合に、先進率fs≧0となるように、潤滑油量を減少させる制御を行って、摩擦係数μを増加させてもよい。

0062

具体的には、使用されることが想定される最小径のワークロールに関して、実験やこれまでの冷間圧延操業の実績、もしくは計算やシミュレーションによって、圧下率rと先進率fsと摩擦係数μのデータの相関関係を調べておき、摩擦係数μを変化させた場合の、先進率fsと圧下率rとの関係fs=f(r)を、圧下率rを横軸、先進率fsを縦軸としてグラフ化して、そのグラフにおけるfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して実質的に水平な曲線における摩擦係数を最小径ロール基準摩擦係数μ0pとする。そして、実際に使用しているワークロールの径の如何にかかわらず式(1)〜式(3)から算出された摩擦係数μがμ<μ0pの場合に、先進率fs≧0となるように、潤滑油量を減少させる制御を行って、摩擦係数μを増加させればよく、これによって、実際に使用しているワークロールの径の如何にかかわらずスリップの発生を防止することができる。

0063

このように制御態様Bによる場合、使用することが予想される最小ロール径以上の径のロールであれば、ロール径が変化しても同じ態様で制御を行えばよく、したがってスリップ発生防止のための制御がより簡素化される。

0064

なお上記の制御態様Bの場合も、スリップ発生防止のために摩擦係数μを増加させる制御は、いずれの鋼種、いずれのロール径の場合も、圧下率が20%以上の場合に適用すれば足りる。

0065

さらに、一般的な普通鋼や高張力鋼の冷間圧延操業においては、ロール径が最小でφ290mmであることが多い。そして、ロール径がφ290mmである場合は、図3図4に示しているように、鋼種を問わず、圧下率rを横軸、先進率fsを縦軸とするグラフにおけるfs=f(r)を示す曲線群の内、横軸に対して実質的に水平な曲線における摩擦係数は0.042となる。そこで、制御態様Cとして示したように、その0.042の値を基準摩擦係数として、実際に使用しているワークロールの径の如何にかかわらず、式(1)〜式(3)から算出された摩擦係数μがμ<0.042の場合に、先進率fs≧0となるように、潤滑油量を減少させる制御を行って、摩擦係数μを増加させてもよい。これによって、ロール径が最小でφ290mmであるような一般的な冷間圧延操業では、ロール径の如何にかかわらず、スリップの発生を防止することができる。

0066

このように制御態様Cによる場合、最小ロール径がφ290mm程度であるような一般的な冷間圧延操業では、ロール径が変化しても同じ態様で制御を行えばよく、したがってスリップ発生防止のための制御がより一層簡素化される。

0067

なお上記の制御態様Cの場合も、スリップ発生防止のために摩擦係数μを増加させる制御は、いずれの鋼種、いずれのロール径の場合も、圧下率が20%以上の場合に適用すれば足りる。

0068

なお摩擦係数μを増加させる方向に制御する(例えば潤滑油量を減少させる)場合、制御態様Aでは摩擦係数μがμ≧μ0となるように制御することが望ましく、また制御態様Bの場合はμ≧μ0pとなるように制御することが望ましく、さらに制御態様Cの場合はμ≧0.042となるように制御することが望ましいが、過剰に摩擦係数を増加させれば、圧延荷重が過大となって、圧延制御が困難となったり、焼き付きが生じたりするおそれがある。そこで、摩擦係数を増加させる場合の摩擦係数値の上限は、およそ0.06とすることが望ましい。

0069

なお上記の説明では、摩擦係数を、潤滑油の供給量によって制御することとしているが、供給量ではなく、供給する潤滑油の濃度を変えることによっても、摩擦係数を制御することができる。すなわち、一般に同じ潤滑油原液を用いたエマルションであれば、鋼板に供給する潤滑油エマルションにおける原液濃度が低いほど摩擦係数は大きくなる。そこで、供給する潤滑油エマルションの原液濃度を変えることによって、摩擦係数を調整することができる。
具体的な手法としては、例えば潤滑油供給装置として、原液濃度の異なる潤滑油エマルションを供給する2以上のノズルを設置しておき、実際に鋼板に供給するノズルを、前述のような制御態様にしたがって切り替える手法がある。あるいは、潤滑油供給装置(ノズル)の上流に、原液濃度の異なる潤滑油エマルションを供給する2以上の潤滑油供給経路を設けておき、前述のような制御態様にしたがってノズルに供給する潤滑油供給経路を切り替える手法がある。
なお、潤滑油の供給量と濃度との両者を変えることによって摩擦係数を制御してもよいことはもちろんである。

0070

ここで、潤滑油の制御による摩擦係数の調整を、複数スタンドのタンデム冷間圧延設備に適用する場合、全てのロールスタンドに適用することが最も望ましいが、要はいずれか1以上のロールスタンドに適用すればよい。その場合において、どのロールスタンドに適用するかは、20%以上の圧下率となるスタンド、あるいは過去の実績等からスリップが生じやすいと推定されるスタンドを選択して適用すればよい。

0071

なお図1に示した冷間圧延設備では、5基のロールスタンドF1〜F5を配列した冷間圧延設備として示しているが、ロールスタンドの数は5基に限らず、要は2基以上の複数基であればよい。

0072

さらに、上記の各例では、4重式圧延機(4Hiミル)を使用したものとして示しているが、6重式圧延機(6Hiミル)を使用する場合にも、前記と同様に適用し得ることはもちろんである。

0073

さらに、本発明の方法が適用される鋼種、成分組成は特に限定されないが、通常は成分組成(質量%)として、例えばC:0.02〜0.15%、Mn:0.9〜2.7%,Si:0.2〜1.7%,Al:0.005〜3%を必須成分として含有し、不純物のP:0.1%以下、S:0.05%以下の鋼を含むものとする。

0074

また本明細書において、普通鋼とは、冷延鋼板での強度レベルとして引張強さTSが270MPa〜390MPaのものであり、高張力鋼とは、冷延鋼板での強度レベルとして引張強さTSが390MPa以上のものである。

0075

次に、本発明の方法の実施例について、比較例とともに説明する。

0076

<実施例1>
この実施例1は、ワークロール径がφ290mmの1スタンドの4重式冷間圧延機(4Hiミル)を用いて、980MPa級高張力鋼を試験材鋼板として、実験的に冷間コイル圧延を行ったモデル実験例である。
すなわち、図10に示しているように、4段圧延機(4Hiミル)からなる1スタンドのロールスタンドFの入側に、2対の潤滑油供給ノズル61A、61B;62A、62Bを設置して、冷間圧延を行った。2対のノズルのうち、一対のノズル61A、61Bは、高濃度(本例では原液濃度2.0%)の潤滑油エマルションを供給するノズルとし、他の一対のノズル62A、62B61Bは、低濃度(本例では原液濃度1.0%)の潤滑油エマルションを供給するノズルとした。
そして摩擦係数μが0.038,0.042となるように式(1)〜式(3)を用いて圧延条件を決定し、圧下率を15%と25%の2水準とした。この圧延条件において高濃度側のノズル61A、61Bにより原液濃度2.0%の潤滑油エマルションを供給しながら冷間圧延した。なお潤滑油エマルションの鋼板表面への供給量は、4L/min、6L/minの2水準とした。
各条件における先進率およびスリップ発生の有無を調べた。その結果を、表1の左側の「調整前」の欄に示す。

0077

0078

表1の「調整前」の欄に示すように、摩擦係数μが0.042の場合には、どの圧下率でもスリップを起こすことなく圧延ができた。
一方、摩擦係数μが0.038でも圧下率が15%の場合にはスリップは発生しなかったが、圧下率が25%の場合にはスリップが発生した。

0079

さらに、上記のようにスリップが発生した圧下率25%、潤滑油エマルション濃度2.0%、潤滑油量6L/min、摩擦係数0.038のケースにおいて、潤滑油エマルション濃度および摩擦係数以外の圧延条件は維持しながら、潤滑油エマルション供給ノズルを高濃度側のノズル61A、61Bから低濃度側のノズル61A、61Bに切り替え、原液濃度1.0%の潤滑油エマルションを、6L/minの供給量で供給しながら冷間圧延した。
このケースについて、前記と同様に先進率およびスリップ発生の有無を調べた。その結果を、表1の右側の「調整後」の欄に示す。
この場合、潤滑油エマルションの濃度を2.0%から1.0%に切り替えることにより、摩擦係数μは0.051に上昇して、先進率は正の値となり、スリップは抑制された。

0080

<実施例2>
この実施例2は、実機5スタンドタンデム冷間圧延機によって、普通鋼と980MPa級高張力鋼を試験材として実機試験を行った例である。鋼板の初期厚み(元厚)は普通鋼と980MPa級高張力鋼でそれぞれ、2.7mmと2.5mmであり、5スタンドにより最終的にそれぞれ0.404mmと1.27mmまで冷間圧延するものとした。
普通鋼、高張力鋼についての、その他の圧延条件について、それぞれ表2、表3に示す。

0081

0082

0083

5スタンドのうち第4段目のスタンド(ワークロール径はφ290mm)の入側に、実施例1で説明した図10に示しているように、2対の潤滑油供給ノズル61A、61B;62A、62Bを設置して、タンデム冷間圧延を行った。2対のノズルのうち、一対のノズル61A、61Bは、高濃度(本例では原液濃度2.0%)の潤滑油エマルションを供給するノズルとし、他の一対のノズル62A、62B61Bは、低濃度(本例では原液濃度1.0%)の潤滑油エマルションを供給するノズルとし、潤滑油濃度の切り替えを行うようにした。なお第4段目スタンド以外のスタンドでは、エマルション濃度は1.0%で固定した。各潤滑油エマルション供給量は、200L/minとした。

0084

第4段目スタンドの入側において、高濃度側のノズル61A、61Bを用いて濃度2.0%の潤滑油エマルションを供給しながら、普通鋼および高張力鋼をそれぞれタンデム冷間圧延した。その結果を表4、表5の左側の「制御前」の欄に示す。
さらに第4段目スタンドの入側のノズルを、低濃度側のノズル62A、62Bに切り替え、濃度1.0%の潤滑油エマルションを供給しながら、普通鋼および高張力鋼をそれぞれタンデム冷間圧延した。第4段目スタンド出側における先進率、スリップ発生状況を調べた結果を、表4、表5の右側の「制御後」の欄に示す。

0085

0086

0087

表4、表5に示すように、濃度2.0%の潤滑油エマルションを供給してタンデム冷間圧延を行った場合、摩擦係数μは、普通鋼と980MPa級高張力鋼のいずれにおいても0.042より小さい値であって、先進率が負の値となり、スリップが発生することが確認された。
そこで、供給する潤滑油エマルションの濃度を2.0%から1.0%に低下させた結果、普通鋼と980MPa級高張力鋼のいずれにおいても、摩擦係数μが0.042以上に増加してスリップの発生はなくなった。

実施例

0088

以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。

0089

2鋼板
3A、3Bワークロール
6A、6B潤滑油供給装置6A、6B
F1〜F5 ロールスタンド

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