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課題
超音波振動子の共振周波数の変化が小さく、かつ振動変位量の変化の小さいランジュバン型超音波振動子とその支持方法を提供する。
解決手段
鋼(s45c)製のフランジ3とフロントマス2を機械加工により一体で作成した。そして、フロントマス2の中心軸にメネジ穴を設け、棒ネジ8をそのメネジ穴にねじ込む。その棒ネジに分極処理をした圧電セラミックである圧電素子4(4a、4b)と電極板6(6a、6b)を挿入し、鋼(s45c)製のリアマス7に設けたメネジを締め込むことによりフランジ3を持つランジュバン型超音波振動子1を構成する。次にランジュバン型超音波振動子1に接続したフランジ3をハウジング9の外表面に設けたオネジと振動ナット5により締付けることで支持固定する。ハウジング9の内半径Hinと振動ナット5の底面に設けられた下側小径部の半径Ninの差をフロントマス外半径Frの0.1倍以上、1倍以下とする。
概要
背景
概要
超音波振動子の共振周波数の変化が小さく、かつ振動変位量の変化の小さいランジュバン型超音波振動子とその支持方法を提供する。鋼(s45c)製のフランジ3とフロントマス2を機械加工により一体で作成した。そして、フロントマス2の中心軸にメネジ穴を設け、棒ネジ8をそのメネジ穴にねじ込む。その棒ネジに分極処理をした圧電セラミックである圧電素子4(4a、4b)と電極板6(6a、6b)を挿入し、鋼(s45c)製のリアマス7に設けたメネジを締め込むことによりフランジ3を持つランジュバン型超音波振動子1を構成する。次にランジュバン型超音波振動子1に接続したフランジ3をハウジング9の外表面に設けたオネジと振動ナット5により締付けることで支持固定する。ハウジング9の内半径Hinと振動ナット5の底面に設けられた下側小径部の半径Ninの差をフロントマス外半径Frの0.1倍以上、1倍以下とする。
目的
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とする
効果
実績
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- 牽制数
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請求項1
ランジュバン型超音波振動子が、フランジを振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持され、そしてハウジングの内半径Hinと振動ナットの最小半径Ninの差がフランジと接する位置のフロントマスFrの半径の0.01倍以上、1倍以下とすることを特徴とするランジュバン型超音波振動子とその支持方法。
請求項2
ランジュバン型超音波振動子が、フランジと振動ナットを一体として作成し、その一体化した振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持することを特徴とするランジュバン型超音波振動子とその支持方法。
請求項3
ランジュバン型超音波振動子が、フランジを振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持され、そしてフランジと同じ2面とフロントマスの外周面で囲まれたフランジ部の中心軸においての振動方向と振動ナットの外周縁部の振動方向が逆であることを特徴とするランジュバン型超音波振動子とその支持方法。
請求項4
ランジュバン型超音波振動子がフランジを振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持され、ハウジングと支持部材の合計質量>ランジュバン型超音波振動子の中のフランジ部を含み、フランジ部と中心軸方向に同一方向に振動する部分の質量≧振動ナット質量あるいはハウジングと支持部材の合計質量>振動ナット質量≧ランジュバン型超音波振動子の中のフランジ部を含み、フランジ部と中心軸方向に同一方向に振動する部分の質量とすることを特徴とするランジュバン型超音波振動子とその支持方法。
技術分野
0001
本発明は、ランジュバン型超音波振動子とその支持する方法に関する。
背景技術
0002
従来、ランジュバン型超音波振動子とその支持方法は、ランジュバン型超音波振動子の内部に振動の節部があり、その節部附近を支持するためのフランジを設け、そしてフランジを支持部材で支持する方法であった。この構成については非特許文献1に詳しく記述されている。
先行技術
0003
実吉純一他、「超音波技術便覧」、日刊工業新聞、昭和60年12月、p1028「圧電セラミック振動子の電気的試験方法」、社団法人電子情報技術産業協会、2010年9月、p1〜p11岩田佳雄他、「機械振動学」、株式会社数理工学社、2011年5月、p112〜p119
発明が解決しようとする課題
0004
通常、ランジュバン型超音波振動子は振動の節部付近に設けたフランジを支持部材で保持する。超音波加工装置に用いるランジュバン型超音波振動子には、様々な形状の工具が取り付けられる。そして、ランジュバン型超音波振動子に工具を取付けることにより、ランジュバン型超音波振動子の振動の節位置が変化してフランジの支持位置は振動の節位置と一致しなくなってくる。
0005
その場合、フランジは振動の節からより離れるため、フランジを支持部材で固く保持すると振動に対する抵抗が大きくなり、かつ超音波振動子の振動が支持部材などに伝播してしまう。このため同じ電力を与えてもランジュバン型超音波振動子の振動の節がフランジ位置から離れるに従いランジュバン型超音波振動子の振動がより多く支持部材に伝播し、振動損出が大きくなってしまう。
0006
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、ランジュバン型超音波振動子に工具などを取り付けても、ランジュバン型超音波振動子の超音波振動の大きさと共振周波数の変化の小さいランジュバン型超音波振動子とその支持方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
0007
本発明は、ランジュバン型超音波振動子が、フランジを振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持され、そしてハウジングの内半径Hinと振動ナットの最小半径Ninの差がフランジと接する位置のフロントマスFr半径の0.01倍以上、1倍以下とするものである。
0008
本発明はまた、ランジュバン型超音波振動子が、フランジと振動ナットを一体として作成し、その一体化した振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持するものである。
0009
本発明はまた、ランジュバン型超音波振動子がフランジを振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持され、
ハウジングと支持部材の合計質量>ランジュバン型超音波振動子の中のフランジ部を含み、フランジ部と中心軸方向に同一方向に振動する部分の質量≧振動ナット質量
あるいは
ハウジングと支持部材の合計質量>振動ナット質量≧ランジュバン型超音波振動子の中のフランジ部を含み、フランジ部と中心軸方向に同一方向に振動する部分の質量
とするランジュバン型超音波振動子とその支持方法とするものである。
0010
本発明はまた、ランジュバン型超音波振動子が、フランジを振動ナットと外周面にオネジを持つハウジングで締付けることにより支持され、そしてフランジと同じ2面とフロントマスの外周面で囲まれたフランジ部の中心軸においての振動方向と振動ナットの外周縁部の振動方向が逆であるランジュバン型超音波振動子とその支持方法とするものである。
発明の効果
0011
本発明のランジュバン型超音波振動子の支持方法により、共振周波数の変化の小さい、振動変位量の変化の小さい縦振動モードを励起することができる。また、超音波振動子の中に振動の節を待たない振動モードを励起することができる。さらにフランジの厚さを大きくすることにより支持剛性を高めることができるので、精度の高い超音波加工ができる。
図面の簡単な説明
0012
本発明に用いるランジュバン型超音波振動子の平面図である。図1のA−A線での断面を示す図である。フランジと振動ナットを一体化した断面図である。図1のランジュバン型超音波振動子の往復振動を説明する断面図である。図4の振動モードを別の方法で説明する断面図である。ランジュバン型超音波振動子のフロントマスの中に振動の節がある振動モードを説明する断面図である。ランジュバン型超音波振動子の中に振動の節が2つあり、かつフランジ、振動ナットそしてハウジングの接触部付近に振動の節を持つ振動モードを説明する断面図である。ランジュバン型超音波振動子、ホーンそして工具を接続した構成の中に振動の節が3つ有り、かつフランジ、振動ナットそしてハウジングの接触部付近に振動の節を持つ振動モードを説明する断面図である。評価に用いたランジュバン型超音波振動子を説明する図である。図8のランジュバン型超音波振動子をハウジング により支持した図である。別のランジュバン型超音波振動子を示す図である。
実施例
0013
(ランジュバン型超音波振動子とその支持方法)
まず、本発明を実現させるためのランジュバン型超音波振動子とその支持方法について説明する。図1の平面図と図1のA−A線での断面を示す図2を用いて、ランジュバン型超音波振動子1の構造を説明する。鋼(s45c)製のフランジ3とフロントマス2を機械加工により一体で作成した。そして、フロントマス2の中心軸にメネジ穴を設け、棒ネジ8をそのメネジ穴にねじ込む。その棒ネジに分極処理をした圧電セラミックである圧電素子4と電極板6を挿入し、鋼(s45c)製のリアマス7に設けたメネジを締め込むことによりフランジ3を持つランジュバン型超音波振動子1を構成する。またフロントマス2の点線で示すフランジ3の両面の延長面である2面とフロントマスの外周面で囲まれた部分をフランジ部18と称する。
0014
次にランジュバン型超音波振動子1に接続したフランジ3をハウジング9の外表面に設けたオネジと振動ナット5により締付けることで支持固定する。ここでフランジ3の振動を振動ナット5に確実に伝搬させ、フランジ3と振動ナット5及びハウジング9の接触部付近を振動の節とする、フランジ部18と振動ナット5の振動位相が逆になるようにさせるため、ハウジング9の内半径Hinと振動ナット5の底面に設けられた下側小径部の半径Ninの差をフロントマス外半径Frの0.01倍以上、1倍以下とする。ハウジング9の内側には電極板6そして図示しない配線があるので、その容量を確保するためハウジング9の内径を大きくしなければならない。そのためハウジング9とフランジ3の接触面積は、小さくなる。それに対して振動ナット9はフロントマス2の直径より大きくすればよく、振動ナット9とフランジ3の接触面積は、ハウジング9とフランジ3の接触面積より大きくできる。フランジ3と振動ナット9の接触部分をより大きくすることにより、フランジ3の振動を振動ナット9によく伝搬することができる。
0015
さらに、加工装置にランジュバン型超音波振動子1を装着するためにハウジング9に支持部材15を取付け、支持部材15を加工装置にさらに取付ける。したがって通常、ランジュバン型超音波振動子1はハウジング9と支持部材15により支持される。また、ハウジング9と支持部材15は金属材料であり、鉄を全体の質量の50%以上含むものである。
0016
ここで振動ナット5について詳しく説明する。振動ナット5はその機能から「リング状釣り合い重り」とも称する。振動ナット5は、ネジ部の下側に、内径が該ネジ部の内径より小さい下側小径部が形成されていて、その下側小径部の内周面と円筒状部品(フロントマス9)の側面との間に空隙が形成されているものを言う。
0017
さらにフロントマス2と振動ナット5の距離を縮め、図3の断面図で示すフロントマス2、フランジ3そして振動ナット5を一体化した。そして、これに棒ネジ8をねじ込み、その棒ネジ8に圧電素子4a、4b、電極板6a、6bを挿入し、リアマス7のメネジにより締め込み一体化し、ランジュバン型超音波振動子1を作成した。
0018
フロントマス2、フランジ3と一体化した振動ナット5に外周面にオネジを持つハウジング9をねじ込むことにより、ランジュバン型超音波振動子1をハウジング9に支持固定した。
0019
この構成では、フランジ3の振動は、そのまま振動ナット5に伝達するが、振動ナット5とフランジ3は一体であるので、振動ナット5は単独では振動できない。したがって、振動ナット5の作用は、一体化した影響を受けて小さくなる可能性もある。一方、一体化することでランジュバン型超音波振動子と支持方法を簡単にすることができる。
0020
(往復振動モード)
図3と図4を用いて、ハウジング9で支持されたランジュバン型超音波振動子1の中心軸方向の往復振動モードについて説明する。図3は、フランジ3、振動ナット5及びハウジング9の接触部付近の黒丸で示す振動の節11として、ランジュバン型超音波振動子1が矢印の直線で示す中心軸方向に下方向に振動するとき、振動ナット5は同じ振動の節11を持ち、振動ナット5の外周は図の実線の細線で示す上方向に振動する。なお、円環状の振動の節11の断面を示す2つの黒丸を結ぶ実線の細線はフランジ部18振動変位を示し、フランジ部の変位方向は振動ナットの外表面の振動方向と逆である。
0021
図4は、図3と同じであるが、振動変位を別の方法で示す。フランジ3とフランジ部18そして振動ナット5の振動変位を点線で示す。フランジ部18の中心軸方向の振動方向と、振動ナット5の外表面の振動方向は逆である。
0022
図3、図4で示したようにランジュバン型超音波振動子1と振動ナット5は、フランジ3をバネとして作用させてフランジ部18と互いに逆方向に振動する。またフランジ3であるバネに接続するハウジング9は振動ナット5が存在しない時はフランジ部18と逆方向に振動する。このように振動ナット5はハウジング9の肩代わりをして振動する。これを非特許文献1に記載されている動吸振器と考察する。なお、ハウジング9の振動ナット5との接触部のハウジング9は振動する。したがって、ハウジング9の振動の小さくなる部分は、ハウジング9の振動ナット5との接触部より後方部である。
0023
ここで、ランジュバン型超音波振動子1の振動をハウジング9に伝搬させないため、ランジュバン型超音波振動子1とハウジング9と支持部材の合計の質量は大きく異なり、ランジュバン型超音波振動子と振動ナット5の質量がほぼ等しいことが望まれる。そして、ハウジング9と支持部材の合計の質量がランジュバン型超音波振動子1より大きいことがランジュバン型超音波振動子1と振動ナット5をだけを振動させる条件として求められる。ここでランジュバン型超音波振動子1とハウジング9と支持部材の合計の質量が大きく異なるとは、ハウジング9と支持部材の合計の質量がランジュバン型超音波振動子1の質量の1.5倍より大きいことである。またハウジングだけの質量がランジュバン型超音波振動子1の質量の1.5倍より大きければ、支持部材は考慮しなくても良い。そして、ランジュバン型超音波振動子1と振動ナット5との質量の差は1.3倍以内が望ましい。
0024
また、振動ナット5の振動をハウジング9に伝搬させないため、振動ナット5の質量とハウジング9と支持部材の合計の質量が大きく異なり、ランジュバン型超音波振動子1と振動ナット5の質量が等しいことが望まれる。そして、ハウジング9と支持部材の合計の質量が振動ナット5より大きいことが構成上求められる。
0025
動吸振器として作用するには振動ナット5の質量がランジュバン型超音波振動子1の質量とがほぼ同じで、そして互いに逆方向に振動することが必要であるが、ランジュバン型超音波振動子1と振動ナット5の質量が異なるときは、ハウジング9に振動が伝播してしまう。ただし、両者の質量の差が小さい時は、ハウジング9への振動の伝播は小さい。したがってランジュバン型超音波振動子1の質量に対して振動ナット5の質量は、1倍を中心として0.7倍以上、1.3倍以下が望ましい。
0026
(ランジュバン型超音波振動子の中に振動の節を1個持つ振動モード)
図5を用いて、ハウジング9で支持されたランジュバン型超音波振動子1の中に振動の節11を持ち、かつフランジ3、振動ナット5及びハウジング9の接触部付近の黒丸で示す振動の節11を持つ振動モードについて説明する。まず、フランジ3、振動ナット5及びハウジング9の接触部付近の黒丸で示す振動の節11を生じさせるには、フランジ3が接続する部分のフランジ部18を含むフロントマス2の中心軸方向の振動方向と振動ナット5の外周の振動方向が逆であり、フランジ3を含むフロントマス2の質量と、振動ナット5の質量がほぼ同じである必要がある。
0027
そして振動モードは、フロントマス2中の振動の節11としてランジュバン型超音波振動子1が点線で示す方向に伸びるとき、フランジ3と、フランジ3と同じ面とフロントマス2の外周面で囲まれたフロントマス2のフランジ部18は、点線で示す曲線のように撓む。そしてフランジ3に接続する振動ナットの外周縁部は、フランジ3と、フランジ3と同じ面とフロントマスの外周面で囲まれたフロントマス2のフランジ部18の点線で示す曲線の撓み方向と逆方向に振動する。
0028
ここで、フロントマスの振動の節より上の部分、フランジ部、圧電素子そしてリアマス部の合計質量と振動ナットの質量がほぼ等しい。
0029
(ランジュバン型超音波振動子の中に振動の節を2個持つ振動モード)
図6は、フランジ3、振動ナット5そしてハウジング9の接触部附近に振動の節11を有し、かつランジュバン型超音波振動子1の中に振動の節11を2個持つ振動モードを示す。ランジュバン型超音波振動子1の中には、振動の節11をフロントマス2中と、圧電素子4とリアマス7の境界付近に持つ。フランジ部18を挟んで存在する前記2個の振動の間は、同じ方向に振動し、図中では矢印で示す上向き方向である。そして、2個の振動の節11の間に存在するフランジ部18も当然、上向きの振動になる。また、フランジ3、振動ナット5そしてハウジング9の接触部附近の振動の節により、振動ナット5の外周部は下向きの振動となる。
0030
また、ランジュバン型超音波振動子1の上端のリアマス7と下端のフロントマス2は同じ方向である下向きに振動する。図からわかるように、前記上端のリアマス7と下端のフロントマス2は、振動ナット5に影響を与えない。
0031
ここで、下側の振動の節より上側のフロントマス2部、フランジ部18そして上の振動の節より下側の圧電素子4の合計質量と振動ナット5の質量がほぼ等しい。
0032
(ランジュバン型超音波振動子などの中に振動の節を3個持つ振動モード)
図7は、ランジュバン型超音波振動子1の先端に振動を拡大するためにホーン20を接続し、そのホーン20に工具21を接続した構成である。この構成には3個の振動の節11がある。
0033
また、ランジュバン型超音波振動子1の支持は、フランジ3をハウジング9の外周に設けたオネジと振動ナット5により締付け、ハウジング9に支持固定する。さらにこのハウジング9を支持部材に接続し、加工装置に取付けることもある。
0034
フランジ3、振動ナット5とハウジング9の接触部付近にも振動の節が生じる。図中に示す黒丸で示す振動の節と、矢印で示す振動方向を用いて振動モードを説明する。フランジ部18の上下の振動の節の間は振動方向が下向きである。この振動によりフランジ部18は曲線で示すようにフランジ部18の中心部は下向きに振動する。この振動はフランジ3、振動ナット5とハウジング9の接触部付近の振動の節により、振動ナット5の外周部は上向きの振動となる。
0035
したがって、振動ナット5の質量は、フランジ部18を挟んだ節の間の振動に寄与する質量と等しいことが望まれる。ここで振動に寄与する質量は、おおよそランジュバン型超音波振動子1の中でフランジ部を含み、フランジ部とランジュバン型振動子の中心軸方向に関して同一方向に振動する部分の質量である。さらに、振動ナットの質量を精度高く求めるには、有限要素法を用いて計算することが望ましい。
0036
(ハウジングの質量)
ここで、ランジュバン型超音波振動子1の振動をハウジング9に伝搬させないため、目的とする振動モードにおいてのランジュバン型超音波振動子1の部分の質量とハウジング9の質量は大きく異なり、目的とする振動モードにおいてのランジュバン型超音波振動子1のフランジ部18を含み、同一方向に振動する部分の質量と振動ナット5の質量がほぼ等しいことが望まれる。そして、ハウジング9の質量がランジュバン型超音波振動子1のフランジ部18を含み、同一方向に振動する部分の質量より大きいことがランジュバン型超音波振動子1を支持する条件として求められる。
0037
ランジュバン型超音波振動子1の中に振動の節がない場合は、フランジ3、振動ナット5とハウジング9の接触部付近にも振動の節として、ランジュバン型超音波振動子1と振動ナットが互いに逆方向に振動するものであるので、当然ランジュバン型超音波振動子1と振動ナット5の質量がほぼ同じであることが求められる。ここで、ハウジング9の質量は、ランジュバン型超音波振動子1の質量、振動ナット5の質量と大きく異なることが求められる。
0038
ランジュバン型超音波振動子1のフランジ部18を含み、同一方向に振動する部分の質量と振動ナット5の質量が異なるときは、ハウジング9に振動が伝播する。ただし、両者の質量の差が小さい時は、ハウジング9への振動の伝播は小さい。
0039
以上を纏めると、フランジ3を振動ナット5とハウジング9により締付けることにより支持されたランジュバン型超音波振動子1において、フランジ3をバネとして作用させ、ランジュバン型超音波振動子1とハウジング9の振動を、ランジュバン型超音波振動子1と振動ナット5の振動にする動吸振器として作用させるには、振動ナット5の質量とランジュバン型超音波振動子1のフランジ部18を含み、同一方向に振動する部分の質量の関係を以下のようにする。
0040
ハウジング質量>ランジュバン型超音波振動子1の中でフランジ部を含み、フランジ部とランジュバン型振動子の中心軸方向に関して同一方向に振動する部分の質量≧振動ナット質量
あるいは
ハウジング質量>振動ナット質量≧ランジュバン型超音波振動子1の中でフランジ部を含み、フランジ部とランジュバン型振動子の中心軸方向に関して同一方向に振動する部分の質量
0041
以上は、ハウジング9がその他の支持部材15に接続されていない場合を示した。もし、ハウジング9とその他の支持部材15の音響インピーダンスの差が20%以内であり、そして両者とも金属材料で接続されているなら、ハウジング9と支持部材15の合計質量をハウジング質量とする。
0042
(振動ナットの拘束)
まず、振動ナットの効果を確認するために振動ナットを拘束して、縦1次振動モードの共振周波数とアドミッタンスをインピーダンスアナライザーにより測定した。その結果を表1に示す。
0043
0044
表1から、棒の長さが50mmでアドミッタンスが最大になっている。これは棒の長さ50mmを装着した時に、振動の節の位置にフランジが最も接近するためと考えられる。また、実際の用途であるドリルまたはエンドミルで一般的な使用される長さは40mmから70mmであるので、その範囲の変化率を求めた。共振周波数は約15%であり、アドミッタンスは約49%であった。
0045
(振動ナットの拘束なし)
次に、振動ナットの拘束を解除して、縦1次振動モードの共振周波数とアドミッタンスをインピーダンスアナライザーにより測定した。その結果を表2に示す。棒の長さ60mmにおいて、アドミッタンスが4.5mSとなっているが、共振ピークが割れて小さな値になっているため参考値としているが、共振ピークが割れなければ、ほぼ棒の長さ50mmと同じ数値であると推測する。また、実際の用途であるドリルまたはエンドミルで一般的な使用される長さは40mmから70mmであるので、その範囲の変化率を求めた。共振周波数は約8%であり、棒の長さ60mmを除くアドミッタンスは約34%であった。
0046
0047
振動ナットを拘束した場合と、拘束しない場合でのインピーダンスアナライザーによる評価では、共振周波数そしてアドミッタンスとも振動ナットを振動させた方が優れている結果であった。
0048
(振動ナットの効果)
そこで実際にランジュバン型超音波振動子1に電力を印加して、図8(A)の平面図とそのA−A線での断面を示す図8(B)で示すランジュバン型超音波振動子1と、そのフランジ3をハウジング9の外周に設けたオネジと振動ナット5で締め付けた図9(A)の平面図とそのA−A線での断面を示す図9(B)で示すハウジング9に支持されたランジュバン型超音波振動子1とを比較した。
0049
直径4mmの超硬製の棒を用意し、図8のランジュバン型超音波振動子と、図9の示すハウジングの外周にオネジと振動ナットによりフランジを締め付けることによりランジュバン型超音波振動子を支持した場合を比較した。
まず、圧電素子に40Vp−pのサイン波電圧を印加して、ランジュバン型超音波振動子に駆動電圧の位相と電流位相が同相となる周波数を表3に示す。
0050
0051
ここで、ナット振動とは、ランジュバン型超音波振動子のフランジをハウジングに設けたオネジと振動ナットで締付けた状態で、縦1次振動モードで振動させ、かつ振動ナットも振動させるものである。
縦1次振動とは、ランジュバン型超音波振動子だけの縦1次振動モードの共振周波数で振動させるものである。そして、棒の長さとは、ランジュバン型超音波振動子にコレットチャックを装着して取付けた超硬製の直径4mmの棒の長さである。
0052
実際の用途であるドリルまたはエンドミルで一般的な使用される長さは40mmから70mmであるので、その範囲の変化率を求めた。ナット振動では、約7.6%の変化であり、そしてランジュバン型超音波振動子は約10%であった。このように、共振周波数の変化は縦1次振動に比較してナット振動の方が小さい。
0053
次に、圧電素子に40Vp−pのサイン波電圧を印加して、駆動電圧の位相と電流位相が同相となる電流値を表4に示す。
0054
実際の用途であるドリルまたはエンドミルで一般的な使用される長さは40mmから70mmであるので、その範囲の変化率を求めた。ナット振動では、約17%の変化であり、そしてランジュバン型超音波振動子は約36%であった。このように、電流値の変化は縦1次振動に比較してナット振動の方が小さい。
0055
0056
さらに、圧電素子に40Vp−pのサイン波電圧を印加して、駆動電圧の位相と電流位相が同相となる時の棒の先端の振動変位量を表5に示す。
0057
0058
実際の用途であるドリルまたはエンドミルで一般的な使用される長さは40mmから70mmであるので、その範囲の変化率を求めた。ナット振動では、約56%の変化であり、そしてランジュバン型超音波振動子は約233%であった。このように、振動変位量の変化は縦1次振動に比較してナット振動の方が小さい。
0059
このことは、実際に超音波加工機として使用する場合には大きな問題になる。ランジュバン型超音波振動子では、共振周波数の同じ電圧を印加してもドリルまたはエンドミルの振動変位量が約2.3倍も異なってしまう。つまり、駆動電圧の調整だけでは振動変位量を制御できないということである。
0060
これに対して、ナット振動では、ランジュバン型超音波振動子に比較して振動変位量の変化は約1/4となるので大幅に改善している。
0061
本発明のランジュバン型超音波振動子とその支持方法はまた、以下のようにしても実現できる。図10(A)の平面図と図10(A)の平面図でのA−A線での断面を示す図10(B)に示すようにランジュバン型超音波振動子1を工具軸19にフランジ3を一体で作成するか、または工具軸19にフランジ3を接合し、フランジ3より後部の工具軸19に圧電素子5を通し、工具軸19に設けたネジとリアマス7のメネジを締め付けることによりランジュバン型超音波振動子1を製作できる。ここで、フランジ3より前の工具軸19部はフロントマス2でもある。そしてフランジをハウジングの外周に設けたオネジと振動ナットにより締付けることによりランジュバン型超音波振動子1をハウジングに支持することができる。
0062
本発明のランジュバン型超音波振動子と支持方法は、特にランジュバン型超音波振動子に工具を取付ける使用する超音波加工装置に用いることができる。